女大名「天下とって、幕府開く」 (21)

作者はSSを書くのが初めてです。よって、色々と不備等あると思いますが見ていただけたら幸いです。
今後の参考にしたいと思いますので、どんなことでもお気づきになられた点があればご指摘いただければ幸いです。

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女大名「天下とって、幕府開く」
家老「幕府なら既に江戸で開かれてますけど」
女大名「で、あるか」
家老「何が『で、あるか』ですか。信長じゃあるまいし。既に幕府なら江戸に開かれてるって言ってるんですよ」
女大名「で、あるか」
家老「『で、あるか』じゃないですよ。既に天下は統一されて、徳川が幕府を開いてるって言ってるんですよ」
女大名「で、あるか」
家老「ダメだこいつ。話通じねえ」
女大名「え?どういう事?ワッチュウミーン?江戸に幕府が開かれてるなんて知っておる。それがどうしたと言うのか」
家老「え?分かって言ってたんですか?」

女大名「当たり前じゃろう。徳川の天下がどうした。そんな事はわしの野望には何の関係も無い。幕府が既に開かれておるなら、一回閉めてもらって開き直せばいいではないか」
家老「え?幕府って閉めれるんですか?」
女大名「閉めれるじゃろ。開けたんじゃから。開けるけど閉めれない襖なんて無いじゃろう?ならば、同じく幕府も閉めれるじゃろう」
家老「何て暴論・・・。まあ、いいか。良くないけど。話進まないし。じゃあ、どうやって閉めてもらうんですか?」
女大名「それにはわしに策がある」
家老「策・・ですか?」
女大名「説明して欲しいか」
家老「いえ、別に」
女大名「切腹申し付ける!」
家老「ああ、はいはい。説明して欲しいです」
女大名「それで良い」
家老「(面倒な人だ)」

女大名「何じゃ突然見つめおって。わしに惚れたか?」
家老「んなわけないでしょう・・。それより早く説明してください」
女大名「照れるな照れるな」
家老「(こんなのでも三万石の大名なんだから泰平の世ってホント恐ろしい)早くしていただけますか?」
女大名「何じゃまったく、つれないのお。まあ良い。わしの考えた幕府を閉めてもらう作戦。しかと聞くがよい」
女大名「時に家老よ。城下にわしの馴染みの店が多数あるのは知っておるよな?」
家老「そりゃ知ってますよ。公務サボっていつも行くところでしょ」
女大名「それじゃそれ。その中に気のいい爺さんがやっとった骨董品屋があったんじゃがな。その爺さんがつい先月のことじゃが亡くなって、店が閉まってしまったのじゃ」
家老「はあ」
女大名「それでその店が閉まった時わしはひらめいたんじゃ。『そうか!店主が死ぬと店は閉まるのか!』と」
家老「そりゃまあ閉まるでしょうね。他に継ぐ方がいらっしゃらなければ」

女大名「そして、それは幕府も同じこと・・。継ぐ者がおらねば、閉めざるを得ない・・」
家老「まさか・・」
女大名「そう!そのまさか!徳川一族を皆殺しにすれば、もれなく幕府は勝手に閉まる!つまり、わしが幕府開ける!わし大勝利!わし天才!」
家老「これが三万石の大名・・・」
女大名「何じゃその哀れんだような目は!おい!荷物をまとめてどうするつもりだ!おい!」
家老「国に帰らせて頂きます」
女大名「おい!お主の国はここじゃろ!おい!あ・・・。ちょ、ちょっと待ってわしが悪かったわしが悪かった!すまんかった!すまんかった!」

~三十分後~

女大名「わしが悪かったよお・・家老・・」
家老「分かりましたから泣き止んでください」
女大名「だって家老があ、家老があ!」
家老「わーかりました。分かりました。泣き止んでください。国に帰るとか全部冗談ですから」
女大名「・・ほんと?」
家老「本当ですよ」
女大名「じゃあ・・わしと一緒に幕府開いてくれる?」
家老「いやです」
女大名「うわーん!家老の馬鹿!!」
家老「何でまた泣くんですか!」
女大名「だって、家老が幕府開かないって・・・」
家老「何でそれで泣くんですか・・」
女大名「わし、本気だもん!開いてくれないんなら切腹するもん!」
家老「ちょ、刀なんて抜いたら危ない・・。ちょ、ちょ!分かりました!そこまで真剣に幕府開きたいんなら協力します!」
女大名「ほんとか!?」
家老「ほんとですよ・・・」
女大名「やったー!やったー!わーい!わーい!」
家老「ちょ、ちょっと嬉しいのは分かりましたから落ち着いてください!た・だ・し!協力するには条件があります!」

女大名「な、何じゃそんなに熱く見つめて・・体か?・・わしの体が欲しいのか?」
家老「ち、違います!理由を聞かせてください!理由です!幕府を開く理由です!」
女大名「何じゃそんなことか!・・・期待させおって・・」
家老「え?」
女大名「な、何でもないわ!り、理由だな!?理由は・・・え~とその~」
家老「何ですか理由無いんですか?」
女大名「そ、そんな事はない!ただあのちょっと、国家機密というか・・」
家老「何ですか?理由なんて無いんですか?」
女大名「ち、違う!無いわけじゃない!ただ・・そのちょっと言いにくいと言うか・・」
家老「何ですかそれ・・。私は貴方がそこまで真剣なら何か考えがあるものと思ってこうして真剣に聞いているのに・・」
女大名「お主が真剣なのはありがたい!し、しかしだな!何でも言うと言うわけにも・・」
家老「もういいです!どうせ理由なんて無いんでしょう?あなたを信じた私が馬鹿でした。これは冗談でも何でも無く家老職を辞させて頂きます」

女大名「ちょ、か、家老!」
家老「何ですか、腕にまとまりつかないでくださいよ。うっとおしい」
女大名「うっとおしい・・。か、家老!何だその言い草は!」
家老「あなたこそ何ですか!?普段から仕事もせずに遊んでばかり、ふざけたような政策を打ち出しては私に丸投げ。正直やってられませんでした。何度もこうして怒鳴ってやりたいと思いました。でも、私は我慢してき

ました。あなたが家督を継いでからのこの三年間。どうしてか分かりますか?」
女大名「・・・・」
家老「あなたのお父上、大殿の言葉を信じてですよ」
女大名「!」
家老「死の間際。枕元に私を呼ぶと大殿は仰せになりました。私の娘はあの子は色々と誤解されやすい子だ。頭が回る上に周りに気を遣い過ぎるから、行動が裏目に出てしまうことが多々ある。常人には理解し難い行動

を取ることもあるだろう。でも信じてやってくれ」
家老「あの子はとてもいい子だから」
女大名「!」
家老「そして私の手をしかと握って、一言『あの子を頼む』とだけ言うと大殿は息を引き取られました」
家老「私は今まで、大殿との約束を守る為にただただ耐えてきました。でも、それももう限界なんです」

女大名「家老・・・」
家老「大殿はあなたを頭の回るとてもいい子だと言われました。しかし、それは大殿の勘違いだったようですね」
女大名「・・・」
家老「あなたは頭の回るいい子なんかじゃない。馬鹿でうざい我儘なガキですよ」
女大名「うっ・・うっ・・」
家老「そうやって泣けば何とかなるとでも思ってんですか?そういう所がガキなんですよ」
女大名「・・・まれ・・」
家老「何ですか?聞こえませんよ?
女大名「黙れと言ったんだ!」
家老「!」
女大名「家老。この時をもって家老職の任を解き、暇を与える」
女大名「この家から、いやこの国から出て行け!」
家老「・・・分かりました。今までお世話になりました」
女大名「これはせめてもの情けだ。持っていけ」
家老「あなたからの情けなど受けません。結構です」
女大名「・・っ!」
家老「この家ももう終わりですね、さようなら」


女大名「・・・行ったか。あれで良かったのじゃ。ふん、うるさい家老を追放できてせいせいしたわ」
女大名「・・本当に行ってしもうたのか・・・」
女大名「頭が回る何て嘘じゃ父上。わしは本当に・・・本当に・・・・うう・・・」
女大名「・・馬鹿じゃ・・。馬鹿じゃ!うわーん!」

~城 大手門~
家老「(大殿に拾われてからずっと、お世話になったこの家・・)」
家老「(だが、それも今日で最後。大殿に拾われた義理は十分に果たしただろう)」
家老「(しかし、聡明な大殿も娘は色眼鏡で見ずにはいられなかったのか・・まあ仕方あるまい。遅くに出来た娘だ。大殿と言えど人の親。という事か)」
家老「まあ、大殿亡きこの家にもはや未練は無い。あの馬鹿娘に出て行けと言われたし、さっさと出て行くとするか」

~城下町~
家老「城下町に来るのも久しぶりだな。こうして辺りを見渡すと、あの馬鹿娘に命じられて私が普請したものばかりだな・・」
家老「菜花を植えた謎の広場に始まり、妙に立派な街道に堤、そして図書館。そして、町中の謎のオブジェ・・・」
家老「この不景気、幕府からも質素倹約令が出されているというのに、まあ良くこれだけ作ったものだ。これも何も私の財政管理の賜物だな」
家老「あの馬鹿、余計なものを税で作っては飽きたら民間に押し付けるし、幕府からも税収を増やせと言われてるのに、税率を下げるし。全く何がしたかったのか。商業の利益が偶然増えたから、何とかなったものの・・」
家老「まああの馬鹿の事は良い。私が作ったも同然のこの町を最後に見ていこう」
?「あれ、家老様じゃないですか」
家老「ん?お主は?」


?「あ、これは失礼を。町の長のようなものをやらせて頂いているものです
家老「そうか、そうか。うちの殿が変なものを作りまくったせいで迷惑したろう。悪かったな」
町長「何をおっしゃいます。感謝こそすれど迷惑なんぞ滅相もない。殿様のお陰で、職にあぶれていたものも職を見つけ生活できるようになりましたし、商売は繁盛。不景気だっていうのに、道路まできれいにしてもらって

。本当にありがたいことです」
家老「それは本当か?」
町長「ええ。本当ですとも。それに殿様はよく城下へ遊びに来ては、我らの下々の者の話を親身になって聞いてくださります。本当に名君とはこの事。町一同感謝しております」
家老「し、しかし、殿は変なものをいっぱい作ったろ。ほら、あの菜の花の広場にしても、図書館にしても。しかも、町中に妙なオブジェが溢れかえる始末だし・・」
町長「ああ、それに関しても感謝がつきませぬ。菜の花の広場も最初は何なのだと思いましたが、綺麗な上に油も取れるという話。しかも、管理をわれらに任せ、油の利益を全て町にくださるとは素晴らしい事でございま

す。図書館も勉学に励みたいが本を買う金が無い。と困った若者が殿様に相談した所作っていただけたものですし、オブジェに関しては町に自由に作品を置いて良いということで隣国などからも芸術家が集まって、更に

その芸術家の評判を聞きつけた者が訪れ、と町に訪れる者が増え今や観光産業は大儲けでございます」
家老「な、何だと・・」
家老「(あんなものにそんな深い考えがあったとは・・。まさか。公共事業を増やしたのは雇用を増やすため・・・。しかも、下々の意見を・・。遊んでいたわけでは無かったのか・・)」
町長「どうなされました?家老様?」
家老「い、いや・・」
町長「そういえば、殿様が今日の朝こんな物を落として行かれました」
家老「こ、これは・・・!」
家老「馬鹿なのは私の方では無いか!大殿、やはりあなたは間違っておりませんでした・・」
家老「殿!今参ります!」
町長「家老様!?・・行ってしまわれた・・家老様もご多忙であるなあ・・」

~城~
家老「殿!」
女大名「!」
家老「殿、申し訳ありませんでした。数々の非礼お許し下さい!」
女大名「な、何じゃ、お主。わしは出て行けと申したぞ」
家老「本当に申し訳ございませんでした!」
女大名「ふ、ふん!今更謝ってもわしの心は変わらん!」
家老「しかし、殿もなぜこんな大事な事を話してくださらなんだのですか」
女大名「お、お主それを見たのか!?」
家老「はい。確認いたしました。まさか、幕府よりお取り潰し令が出ているとは・・」
女大名「仕方あるまい。殿が馬鹿ではな」
家老「殿は馬鹿ではありません!私が、私が間違っておりました。殿の政策の真意を理解できていなかったのです」
女大名「お主が理解出来なんだのはやはりわしが馬鹿だからじゃ。お主に非は無い。お主が理解できるよう、説明してこなかったわしが愚かだったのじゃ」
家老「そんな事はありません!」
女大名「!」
家老「私が馬鹿だったのです!」
家老「私は武家に生まれ、主家がお取り潰しにあった後すぐ大殿に拾われ、下々の者の暮らしを全く知りませんでした。ですから、殿の政策も意味が分からなかったのです。私は今まで良い政策とは、家を潤す政策だと

考えていました。しかしそれは違ったのです。我らが潤すべきは家では無く、この国なのです」
家老「それが私には理解できておりませんでした・・。私が馬鹿でした・・。申し訳ありません」
女大名「良いのだ。わしもどうせ理解できないだろうと、たかをくくり碌に説明をしてこなかった。怖かったのだ、お主に全否定されるのが」

家老「殿・・」
女大名「生まれてこの方わしを理解してくれようとしたのは父上とお主だけじゃった。うつけと呼ばれたわしをきちんと見てくれるのも父上とお主だけじゃった。だが、父上が死にわしを見てくれるのはお主だけになった。そ

して、怖くなったのじゃ。お主がもし理解してくれなんだら、お主がもしわしを見放したら・・。わしは本当の本当に一人ぼっちになってしまう。それが怖かったのじゃ」
女大名「だからわしはあえてお主に説明をしなかった。お主に全て押し付けたのじゃ。お主の気持ちを理解しようともせずに、自分ばかり理解してもらおうとした。お主から逃げておった。結果、これじゃ。理解してもらおうと

することから逃げ続けた結果、お主は去り、家は潰された。これも全て、わしの弱さのせいじゃ」
家老「天下取るとか言い出したのは、お取り潰しの話がきたからですか?」
女大名「そうじゃ・・。幕府は何も分かっておらん『百姓とごまの油は絞れば絞るほど出てくる』などとほざき、不景気を増税で乗り切ろうとしておる。そして、わしの政策を理解せず、増税の命令に従わず質素倹約令を無視

した理由でお取り潰しにしようとしてきた。今もこの日ノ本には増税に苦しんでおる、下々の者がたくさんおる。しかも、この家が潰されたら、この国の民まで苦しむことになる。そんな事はどうしても許せなかったのだ」

家老「私にこの事を話していただけなかったのは、私が増税しろとか言うと思ったからですか?」
女大名「ああ・・・。その通りじゃ・・」
家老「私のせいで、殿はお苦しみになったのですね。私が馬鹿であったばかりに」
家老「しかし殿。私はもう理解しました。理解出来ました。もうあなたを否定なんてしませんよ」
女大名「家老・・。かろお・・・ううっ・・うえーん!!かろおー!!」
女大名「ううっかろお・・。かろお・・・ううっ」
家老「はい、殿」
女大名「わしと一緒に・・ううっ・・幕府開いてくれるか?」
家老「殿。それは駄目です」
女大名「!な、なんでじゃ!?わしを理解してくれたのではないのか!?」
家老「理解しているからこそです。殿」
女大名「どういうことじゃ・・?」
家老「さっき自分で仰られたではないですか。理解してもらおうとしなかったと。それから、逃げていたと。ご自分で分かっておられるなら、もう逃げてはいけませんよ。殿」
女大名「でも・・・」
家老「怖いですか?」
女大名「ああ・・」
家老「大丈夫です。たとえ日ノ本全てがあなたを否定しても、理解しなくても、私だけはあなたを肯定します」
女大名「家老・・」
家老「ですから、幕府の皆さんにも理解してもらおうとしましょう。努力だけでもしましょう」
女大名「しかし・・もし理解してもらえなんだらどうするのじゃ?」
家老「そうしたら・・」
家老「私と幕府を開いていただけますか?」
女大名「・・・うん!」

おわり

先に書いておいたのでとりあえず全部上げてさせて頂きました。
お目汚し失礼します。

作者です。初SSでしたので、投稿しただけで力尽きたので寝ます。
明日の夜にはまた来れると思います。

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