剣士「大丈夫かい、アンタ」女剣士「なぜ助けたのです?」(138)

酒場──

ギャハハハ……! ワイワイ……!

剣士(さっきの仕事、どうすっかな……)

剣士(引き受けるべきか、断るべきか……)

剣士(話を聞いた限り、一人だとちょっとキツイかもな)

剣士(どっかにそれなりに腕が立つ剣士はいないものか……)チラ…

「そしたらよぉ~」 「え~マジっすか!?」 「もっと酒持ってこい!」

剣士(ま、ろくな奴がいないわな)

剣士(こんな酒場で探す方がおかしいってもんだ)グビッ

剣士「……ん」

続けて(^ω^)

つまんね

チンピラ「げへへ、姉ちゃんよ」

チンピラ「一人でミルク、ツマミにチーズなんて寂しすぎるにも程があんだろ!?」

チンピラ「どうよ、俺がちょっと付き合ってやろうか!?」

女剣士「結構です」モグモグ…

女剣士「全く寂しくなどありませんし、仮に寂しいとしても──」

女剣士「あなたとご一緒するぐらいなら、寂しい方がマシですから」モグモグ…

チンピラ「な、な、な……!」

女剣士「分かったら、お引き取り下さい」

チンピラ「ざけんじゃねえ! このアマ、ブッ殺してやるッ!」

剣士A(さっきの仕事、どうすっかな……)

剣士B(引き受けるべきか、断るべきか……)

剣士C(話を聞いた限り、一人だとちょっとキツイかもな)

剣士D(どっかにそれなりに腕が立つ剣士はいないものか……)チラ…

「そしたらよぉ~」 「え~マジっすか!?」 「もっと酒持ってこい!」

剣士E(ま、ろくな奴がいないわな)

剣士F(こんな酒場で探す方がおかしいってもんだ)グビッ

剣士G「……ん」

剣士「あ、兄さん、こんなとこで会うなんて奇遇だね」
チンピラ「おい、お前・・・」
剣士「また、そんなことしてるんだ、前にわかれた時と全く変わってないね」
チンピラ「う・・・」
剣士「母さん心配してたよ、家戻って仕事継げば?」

剣士「やめとけって」

チンピラ「あァ!?」

剣士「なんなら、俺がお付き合いしてやろうか?」

チンピラ「うるせ──」

ドシュッ!

チンピラ「ひっ……!」

剣士「おおっと……突き合いどころか一発で終わっちまうとこだったな」

剣士「次は頬をかすめるだけじゃなく、刺しちまうぞ」

チンピラ「う、ぐっ……! く、くそっ……!」ダッ

剣士「大丈夫かい、アンタ」

女剣士「なぜ助けたのです?」

剣士「は?」

女剣士「あの程度の暴漢、私一人でも十分制圧することができました」

女剣士「なのになぜ、余計な手出しをしたのですか?」

女剣士「私が女だからと、侮っているのですか?」

剣士「いや……そんなんじゃねえって」

剣士「悪いことしてない奴が一方的に絡まれてんなら、助けるのが人間ってもんだろ」

女剣士「果たして、本当にそうでしょうか」

剣士「……どういうことだよ」

女剣士「例えばもし、私がぶ厚い鎧をつけた筋骨隆々の大男だったら」

女剣士「あなたは助けましたか?」

剣士「いや、それは……」

女剣士「でしょう? やはりあなたは私を侮っていたのです」

剣士「…………」

剣士「……でもさ」

女剣士「はい?」

剣士「筋骨隆々の大男に、絡み酒をするチンピラはいねえだろ」

女剣士「…………」

剣士「…………」

女剣士「……たしかに、そうですね」

剣士「だろ」

続けろ

女剣士「…………」

女剣士「なるほど、どうやら舌戦は私の敗北のようです」

剣士(舌戦ってほどのことでもない気がしたが……)

女剣士「ですが私とて剣士のはしくれ、このままでは収まりがつきません」

女剣士「舌で敗れた一敗、この剣で取り戻すことといたしましょう」チャキッ

剣士「は?」

女剣士「表に出て下さい」

女剣士「勝負です」

剣士(コイツ……大人しそうなツラしてえらい好戦的だな……!)

酒場の外──

女剣士「さて、始めましょうか」

女剣士「剣を使う者同士、正々堂々と戦いましょう」

剣士(なんでこんなことになってんだ……!?)

剣士(しかもこの女……)

剣士(構えで分かる……。実力は間違いなく本物……!)

女剣士「では──」シュッ

ギィンッ!

剣士(力はさほどじゃないが、速いっ!)

キィンッ! ギィンッ! ギンッ!

剣士「──くうっ!」ギンッ

女剣士「…………」キンッ

キィンッ! キンッ!

剣士(くそっ、こっちからも攻めに出たいが……)

剣士(激しく動いたら酔いが回ってきやがった……! クラクラしやがる!)クラッ

剣士(しかも女の方はどんどんペースを上げてきたし……ヤバイ!)

剣士(もうこっちから攻撃なんて絶対無理だ! 絶対斬られる!)

キンッ! キィンッ!

剣士(女のスタミナが切れるまで、凌ぎ切れるかっ!?)

女剣士「……なるほど、そういうことですか」スッ

女剣士「やめにしましょう」

剣士「え?」

女剣士「攻撃に転じず、勝負なしにしようというおつもりですね」

女剣士「あくまでも、あなたは私を侮られているのですね」

剣士(い、いや違うんだけど)

女剣士「侮られて黙っていられるほど気は長くありませんが」

女剣士「戦意のない者に刃を向け続けるほど、愚かでもありません」

女剣士「先ほどのチンピラへの突き、手加減したものでしょうがかなりの鋭さでした」

女剣士「あなたとは是非とも全力で戦ってみたかったのですが、残念です」

女剣士「さようなら……」ザッ

剣士(た、助かった……)ホッ

剣士(でも……なんだか後味悪いな)

剣士(それに剣の実力は俺に引けを取らない……)

剣士「待てっ!!!」

女剣士「はい?」クルッ

剣士「なあ、俺と一仕事やってみないか?」

女剣士「!」

剣士「俺はアンタを侮ってなんかいないし」

剣士「ましてや侮ってる奴に、仕事の協力を頼むほどバカじゃねえ……」

剣士「どうだ?」

面白そう

女剣士「どうだ、といわれても」

剣士「え?」

女剣士「仕事の内容を聞いてもいないうちから、とても返事などできません」

剣士「あっ……そ、そりゃそうだよな、悪かった」

剣士「えぇっと……かいつまんで説明すると、ある商人の商品保管庫が」

剣士「ならず者集団に占拠されちまったから、追っ払ってくれって依頼なんだ」

女剣士「妙ですね」

女剣士「そんな商売の命運にも関わるような一大事、なぜ国の兵士に頼まないのです?」

剣士「……実は商人っていうのは、武器商人なんだ」

剣士「かなり非人道的な、法に違反するような刀剣類も取り扱ってるらしい」

剣士「国なんかに頼んだら、自分の首を絞めることになりかねないんだ」

剣士「それでなくとも、今王国軍は無数の派閥ができてゴタついてるって聞くしな」

女剣士「そういうことでしたか」

剣士「腕自慢が危険な刀剣が山ほどある武器庫を占拠……厄介なのは間違いない」

剣士「かといってせっかく来た話、断るのももったいない」

剣士「最近は俺たちみたいな稼業に、国の目も厳しくなってるしな」

剣士「だから、一緒に戦える心強い相棒が欲しかった」

剣士「そこにアンタが現れてくれた……」

剣士「さて、これで俺は話すべきことは話したぜ」

剣士「もう一度聞こう。どうだ?」

女剣士「いいでしょう」

女剣士「女である私との直接対決を望んでいないあなたに」

女剣士「私の実力を示すいいチャンスでもありますしね」

剣士(それは誤解なんだが……まあいいや)

剣士「決まりだな」

剣士「んじゃあ明日、俺と商人の屋敷に同行してくれ」

女剣士「分かりました」

安心させてレイプする展開だよな?な?そうだと言ってくれ頼む

商人の屋敷──

商人「さて約束通り、一晩待ったが、返答はいかがかな?」

剣士「引き受けましょう」

商人「おお、ありがとう!」

剣士「ただし、報酬を二人分用意して欲しいのですが」

商人「二人分?」

女剣士「はじめまして」

商人「ほう、女性の剣士とは……珍しい」

剣士「昨夜酒場で──」

女剣士「この方とは何度も仕事をこなしており、女ではありますが腕は保証いたします」

商人(二人か……ま、大丈夫だろう)

商人「分かった。こちらとしても早いところ商売を再開したいのだ」

商人「奴らを撃退してくれたら、報酬は二人分用意しよう!」

剣士「首尾よくいったな」

剣士「でも、なんで俺と何度も仕事をこなしたなんて、ウソをついたんだ?」

女剣士「あの商人は私が女ということで、怪訝な表情をしていました」

女剣士「それでなくとも、昨日今日あなたと知り合った人間に、追加で金を出すほど」

女剣士「商人も甘くはないでしょうから」

剣士「あ、なるほど……」

女剣士「ウソをつくのは本意ではありませんが、仕事で真実にすればいいだけのこと」

女剣士「さっそくあの商人の武器庫に向かいましょう」

剣士「武器庫は国の目をくらます意味もあって、町外れの森の奥にある」

剣士「さっさと行って、とっとと追っ払っちまおう」

武器庫──

槍使い「オイ、また商人に雇われたバカが来たぜ」

槍使い「今回は二人だ」

赤目「ほぉう、珍しいですね」

赤目「あの手の野良犬は、たかがならず者退治など一人で十分だと」

赤目「過信と功名心から単独で動くことが多いのですがね」

首領「慎重な野良犬も、中にはいるということだ」

首領「だが、俺たち三人が出るまでもあるまい」

首領「キサマらでケリをつけろ」

「はっ!」 「了解しました!」 「必ずや!」

剣士「おっ、ゾロゾロ出てきやがった」

女剣士「大それたことをしただけあって、一応統率は取れているようですね」

ならず者「何の用だ?」

ならず者「まさか俺たちを倒そうなどと、寝言をほざくつもりではあるまいな?」

剣士「そのつもりだが」

女剣士「あいにく寝てはおりません」

ならず者「チッ、野良犬風情が……!」

剣士「ふん、他人の物置を占拠するお前らよりはマシだろ」

ならず者「あいにくここにある武具の数々は、俺たちの今後に必要なのだ」

ならず者「明け渡すわけにはいかん」

女剣士「大量の武器で何かよからぬことを企んでいるようですが」

女剣士「私たちがここに来た以上──」

女剣士「あなたたちの野望は、ここで頓挫する運命ということですね」

ならず者「かかれぇっ!」バッ

ワアァァァァァ……! ウオォォォォォ……!

剣士「どいつもこいつも、見たこともない武器で武装してやがる」

剣士「気をつけろよ」チャキッ

女剣士「今の言葉、そっくりお返しします」チャッ



キィンッ! ザクッ! ズバッ! ブオンッ! ギインッ!

ヒュンッ! ドサァッ! ビシュッ! キンッ! ドゴッ!

武器庫──

バタンッ!

ならず者「た、大変ですっ!」

ならず者「今回の二人組……つ、強すぎます!」

ならず者「もうすでに30人のうち、20人以上が……」

槍使い「はぁ? マジかよ!?」

赤目「おやおや、だらしないですねぇ……」

首領「なかなか優秀な野良犬のようだな」

首領「だがいくら強かろうとしょせんは野良犬、駆除される定めにある」チラッ

槍使い「たしか男女のコンビだよな? 女は俺がもらうぜ」スクッ

槍使い「一度女の肉にコイツを突き刺してみたかったんだ」

赤目「では私はもう一人を相手しましょう」スクッ

赤目「どんな猛者をも一撃で死に至らしめる、この剣でね」

やべえステキな感じに厨二っぽい

剣士「ふぅ~……団体さんは片付いたな」

女剣士「倒した人数は私が17、あなたは13、私の方がやや上ですね」

剣士「ぐっ……」

剣士「アンタのが剣が速いんだから、当然だろ」

剣士「ところで、一応全員生かしてるか?」

女剣士「とりあえずは」

剣士「そろそろ手強いのが出てくる頃合い──」

槍使い「おうおう、よくもやってくれたな! 次は俺たちが相手だ!」

赤目「この剣の威力、試させてもらいますよ」

剣士「……やっぱな」

女剣士「この二人がリーダー格のようですね」

槍使い「そっちの女、俺のタイプのツラしてやがるぜ」ヒヒッ

槍使い「コイツを、てめえの柔らかそうな肉に刺したらどうなるかなぁ~?」ブオンッ

剣士(なんだ、あのデカイ槍は……)

剣士(しかも先端の刃、刺すってより“刺しえぐる”って感じだな)

剣士(あんなもんで刺されたら、もし助かっても一生傷は回復しねえだろう)

剣士「オイ、ヤツとは俺がやる。アンタはあの真っ赤な目をしたのを頼む」

女剣士「槍使いは、私がやります」

剣士「だが、腕力のある俺の方が、あのデカイ槍には相性がいいし──」

女剣士「私がやります」

剣士「わ、分かった、分かった」

剣士「んじゃ、そっちの赤い目の野郎は俺が相手してやるよ」

赤目「相手……になればいいですがねぇ」

wktk

槍使い「オラオラァッ!」

ブオンッ! ビュウンッ!

槍使い「女! てめえの細腕じゃよォ、俺の槍を受けたら剣ごとぶっ飛んじまうぜ!」

ビュバッ! ブウンッ!

女剣士(口だけではない……)

女剣士(懐に斬り込むには、一工夫いりますね)



赤目「では、参りますかねぇ」

ヒュッ……!

ガキンッ!

赤目「ほう、私の初太刀を受け止めるとはなかなか……」

剣士「そっちこそな、ちょっとヒヤッとさせられた」

剣士「──ん!?」

グジュグジュ……

剣士(な、なんだ……!? 俺の剣が……黒く……!?)

剣士「毒剣か!」

赤目「おや、博識ですね。野良犬には気づかれまいと侮っていましたよ」

剣士「博識といっても剣限定、だけどな」

剣士(特殊な製法で刃に毒を染み込ませ)

剣士(たとえ敗れても、一太刀浴びせてれば勝者を半月後には死に至らしめるという)

剣士(いや……俺の剣の腐食具合から見て、そんな生易しい毒じゃねえな)

剣士(ほんの切り傷でももらったら、一時間と持たず死ぬだろう)

剣士(あっちのえげつない槍といい……ったく、とんでもねえ依頼人だな)

赤目「おやおや……冷たそうな汗をかいていますね」

赤目「理解できたからでしょう? この剣に少しでも斬られれば、死ぬと!」

シュバァッ!

ブオンッ! ビュバッ! ボッ!

槍使い「すばしっこいなァ、オイ!」

女剣士「あなたが遅いだけですよ」

槍使い「まともに突きを当てるのは、難しそうだ」

槍使い「だったらァ!」ブンッ

ドスッ!

女剣士(槍を地面に?)

槍使い「このえぐるような刃は、こんな使い方もできるんだぜ!?」

ドバァッ……!

女剣士(槍で土を巻き上げ──視界をっ!)

槍使い「オラァッ!」ギュルッ

ドゴォッ!

女剣士「ぐぁ……っ!」ゲホッ

槍使い「い~い声で鳴くじゃねえか! 次は柄じゃなく、刃をぶち込んでやるぜ!」

うむ

槍使い「オラ、もう一丁!」

ドスッ! ドバァッ……!

女剣士(たしかに私では、土を掘り返し目くらましにするような技は不可能……)

女剣士「ですが」

女剣士「舞い上がった土であれば、私にも利用できます」

バシッ!

槍使い(土を弾いた!?)

パサッ……

槍使い「あぐぁっ、目に! このアマァ!」

ブオンッ! ブウンッ! ブァオンッ!

女剣士「そんな大きい槍を、がむしゃらに振り回すものではありませんね」

女剣士「懐ががら空きです」ダッ

ザシィッ!

槍使い「うごぉぉ……っ!」ドザァッ

赤目「どうしました、避けるだけでは勝てませんよ?」ヒュバッ

赤目「もっとも、受けてしまっても勝てませんがねぇ……」ヒュンッ

剣士「毒剣……あまりに非人道的なため、現在では製造・流通が禁止されている」

赤目「おやぁ? 劣勢になったとたん相手の得物を非難とは、情けない」

剣士「だが、闇に葬られた理由がもうひとつ」

赤目「は?」

剣士「そいつは扱いが難しい、諸刃どころじゃねえ剣だってこった!」シュッ

ガッ!

赤目(私の持ち手に──蹴り!?)

サクッ

剣士「あ~あ、剣が頬をかすめちまったな」

赤目「ひっ! ──ど、ど、毒がァ! わわわわわっ!?」

赤目「よ、よ、よくもぉぉぉ!」

剣士「んなもんに頼ったお前が悪いんだ、諦めろ」

赤目「くっ!」ジャラジャラ…

剣士(錠剤……解毒剤か……!? えらく準備がいいな……)

赤目(これを飲めば──)ゴクン

赤目「ふぅ……あいにくでしたねぇ、さぁ勝負はここから──」

ガツンッ!

赤目「!?」ドサッ

剣士「戦闘中にお薬……ま、隙だらけだわな」

赤目「あが、が……」ピクピク

やるじゃん

ザッ……!

剣士&女剣士「!」

首領「これまで幾人もの野良犬が挑戦してきたが」

首領「この二人をのしてみせたのは、キサマらが初めてだ」

首領「さすがは歴戦のコンビといったところか」

剣士「歴戦ってわけでもないがな……昨日知り合ったばかりだしよ」

女剣士「ようやく親玉のお出ましですか」

首領「だが、男の方は自慢の剣を毒でだいぶ腐らされ──」

首領「女の方は槍使いから手痛い一撃をもらっている」

首領「計画に支障はない」

首領「この俺が二人まとめて片付けてやる」

支援

格好いい

なんかSAOっぽい

首領「俺の武器はこれだ」ズンッ

剣士「巨大ハンマーか」

剣士(ハンマーの頭部に、刃が二つついてるのが気になる……)

剣士(アレにも、なにか仕掛けがあるのかもしれねえな)

剣士「オイ、アイツは俺が相手する」

女剣士「いえ、私がやります」

剣士「まあ聞け」

剣士「あのハンマー、絶対になんらかのカラクリがある」

剣士「もし初見で避けられないようなカラクリだった場合──」

剣士「性質を見抜ける可能性は、俺よりもアンタのが高いだろう」

剣士「ここはまず俺にやらせろ。もしやられたら次は頼む」

女剣士「分かりました」

女剣士「…………」

女剣士「気をつけて下さいね」

剣士「おう」

剣士かっこいい
俺みたいだな

>>43

首領「はああああっ!」

ブオォンッ! ブウゥンッ!

剣士(あんなでかいハンマーを軽々と……やるな。剣じゃとても受けられねえ)

剣士(だが斬り込むスキがないわけじゃねえ!)ダッ

首領「…………」ニヤ

シュバッ!

剣士「──つっ!」

剣士「なんだ!? ハンマーについてる刃が動いた!?」

首領「そのとおり」

首領「コイツは……俺が振るうだけでなく、自分で攻撃する機能もあるのだ」

剣士「自分で攻撃する武器……!?」

首領「さあ続きだ!」

ブオォンッ! ブウゥンッ!

首領「俺の武器はこれだ」ズンッ

剣士「巨大ハンマーか」

くすっと来た

これは右腕が疼くスレですね
支援

せっかくの特性を自分でしゃべっちゃったよ
見抜こうとしてた女が可哀想

ブオォンッ!

剣士(かわす!)サッ

ザシッ!

剣士「……ぐっ」

首領「これで傷五つ」

首領「俺のハンマーはかわせても、ハンマーの刃まではかわしきれないようだな」

剣士(くっ、なんでだ……なんであの刃をかわせない!?)

首領「そして六つ目!」ブオッ

ザシュッ!

剣士(しまった──足を!)

首領「これでもう素早く動けまい……まずは一人!」

女剣士「はあっ!」シュッ

首領「ぬっ!」ブオッ

ザシュッ!

「も、う……や、だ……」

女剣士「ぐっ……!」ドサッ

女剣士(今一瞬聞こえたのは……まさか)ググッ…

首領「助けに入ったのはいいが、代償は大きかったな。その傷、かなり深いと見た」

女剣士「えぇ……私としたことがうかつでした」ヨロ…

剣士「すまねぇ、大丈夫か!」

女剣士「大丈夫です……そしておかげで……あのハンマーの秘密が分かりました」

剣士「!」

首領「ほう……?」

女剣士「そのハンマーの中には……子供がいますね?」

剣士「え……?」

首領「正解だ」

首領「このハンマーの巨大な頭部の中には、孤児が一人仕込まれている」

首領「子供とはいえ、ヒト一人を振り回すわけだから並大抵の腕力では扱えぬ」

首領「この二つの刃は、中にいる子供の両腕と連動していてな」

首領「ハンマーの頭部をかわし体勢を崩した敵を、子供が切りつけるという仕組みだ」

首領「素人の攻撃というのは予測がつかず、意外によけにくいという性質も持つしな」

首領「一日一回食事を与えるだけで、回避困難のハンマーを維持できるというわけだ」

首領「仮に戦闘で中の子供が故障しても、代わりなどいくらでもいるしな」ニィッ

剣士「…………」

剣士「ふざけんじゃ」

剣士「ねええええっ!!!」ダッ

首領(やはりな……こういう類の話で怒る男だと予測していた!)

ブワオォンッ!

バキャアンッ!

剣士「ぐっ!」

首領(惜しい……だが剣を砕いた! 次は頭を潰してやる!)

女剣士「──私の剣を!」ブンッ

剣士「……サンキュー!」パシッ

首領「なにい!?」

剣士「お前らはもちろん、あの商人にも心底ムカついたが──」

剣士「まずは依頼を果たす……!」

ズバンッ!

ボトッ……

首領「ぎゃああああっ! み、右腕っ……!」

剣士「もう勝負ありだが……一発ブン殴っといてやる」

バキィッ!

首領「ぐはぁっ!」ドザァッ…

剣士「胸糞悪い武器を振り回しやがって……」

>>1
最近コードブレイカー見ただろ

ならず者「こ、こんな……これでは我々の計画が……!」

剣士「オイお前、こいつら一応全員生きてるはずだ」

剣士「とりあえず重傷そうな奴からでも、さっさと運んでとっとと消えろ」

剣士「で、二度とこの武器庫を使っての悪だくみなんて考えるんじゃねぇ」

剣士「分かったな!」ギロッ

ならず者「くうっ……!」ザッ

剣士「オイ、中の子供は無事か?」

女剣士「衰弱していますが、命に別状はなさそうですね」

剣士「そうか……よかった」

少女「うぅっ……」

剣士「女の子だったのか……!」

剣士「おい、もう大丈夫だぞ」

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

女剣士「この子は……どうしましょう?」

女剣士(できれば連れて行ってあげたいのですが……)

女剣士(今の私は、自分の身と生活を守るので精一杯な有様……)

剣士「……俺が何とかしよう」

女剣士「ですが、あなたは大丈夫なのですか?」

剣士「もちろん、ずっと養うってわけにはいかねえが」

剣士「これでも多少は蓄えがあるし、今回の報酬もあるし」

剣士「せめて、この子の身の振り方が見えてくるくらいまではな」

女剣士「…………」

女剣士「あなたは……優しいのですね」

剣士「オイオイ、やっと気づいたのかよ。さ、商人のところに戻ろう」

商人の屋敷──

商人「なんと!?」

商人「あのならず者集団を全部倒したのか!?」

剣士「ええ、どうにか」

女剣士「えぐる槍、毒剣、子供が入れられたハンマー」

女剣士「全て撃破いたしました」

商人「おおお……!」

剣士「雇われた身でいうことじゃないかもしれませんが」

剣士「今後は悪趣味な武器の取り扱いは控えることですね」

剣士「特にあのハンマー……あれだけは絶対許せない」

剣士「今後もしあんなものを取り扱ったら、俺はあなたを斬るかもしれない」

商人「わ、分かった……肝に銘じておこう」

剣士「ようやく終わったな」

女剣士「えぇ」

剣士「色んな意味でキツイ仕事だったが、アンタと一緒に仕事ができて、楽しかったよ」

剣士「またどこかで縁があったらいいな」

女剣士「…………」

女剣士「私も楽しくない、ということはなかったです」

剣士「回りくどいよ」

剣士「じゃな!」

女剣士「さようなら」

少女「さよ、なら……」

女剣士「お元気で。大丈夫、あの方なら信頼できますから」

首領「ぐぅぅぅ……! くそぉぉぉっ!!!」

首領「あと少しだったというのに……まさかこんなことになるとは!」

槍使い「ちくしょう……」

赤目「無念です……!」

首領「だが、まだ手は残っている!」

首領「この敗北が伝わる前に、あの二人を始末してしまえばいい」

赤目「ですが……どうやって?」

赤目「正攻法で敗れた上、あなたは片腕を失い、もう戦えないでしょう」

首領「……方法は考えてある」

首領「オイ、今すぐ奴に連絡を入れろ」

ならず者「はっ!」

剣士の小屋──

剣士「今日はいい魚が獲れたぜ」

剣士「どうだ、美味いか?」

少女「うん……」モソモソ

剣士「あれから数日経って、だいぶまともにしゃべれるようになってきたな」

剣士「あんな牢獄よりもひでえ場所に閉じ込められてたんじゃ、なぁ」

少女「こわかった……」グスッ

剣士「あ、悪かった。思い出させちまったな」

剣士(これぐらいしゃべれりゃ、とりあえず生きてくことはできるだろ)

剣士(どっかお手伝いさんでも探してる金持ちでもいりゃいいんだが──)

コンコン

剣士「ん?」

鬱はやめてくれよ?

召使「失礼します」

剣士「なんだ、アンタ」

召使「私は先日あなたを雇った商人の召使です」

剣士「商人が……何の用だ? 仕事は済ませたし、金ももらったはずだが」

召使「詳しいことはなにも……取り急ぎ屋敷まで来ていただけますでしょうか」

剣士「ああ、分かった」

剣士「悪いが、用ができた。お前は留守番しててくれ」

少女「うん……」

商人の屋敷──

商人「いやぁ、急な呼び出しですまなかったね」

剣士「いったいなんでしょう?」

商人「実は、追加で依頼したいことができてしまったのだよ」

剣士「はぁ……」

商人「先日君たちが追い払ってくれた、ならず者集団」

商人「彼らが、なんと私に挑戦状を叩きつけてきたのだ!」

剣士「挑戦状……?」

商人「彼らは武器庫から、武器のリストが記載された書類を盗み取っていてね」

商人「それを証拠に、非合法武器の数々を国にバラすというのだ」

商人「そして書類を返して欲しければ──」

商人「一対一の決闘に応じろ、というんだ」

商人「もちろん私には彼らと戦う力はないし、兵隊もいない……」

商人「頼む! もう一度私に力を貸してもらえないだろうか!」

剣士(正直この商人とは二度と関わりたくなかったが……)

剣士(こうなったのは、奴らを逃がした俺にも原因がある)

剣士(……仕方ない)

剣士「分かりました、引き受けましょう」

商人「おお、ありがとう!」

剣士「その代わり、というわけではないのですが──」

剣士「例えば家のお手伝いさん、などの仕事の斡旋は可能ですか?」

商人「お手伝いって、まさか君が?」

剣士「いえまさか! 私の知り合いなんですが……仕事を探しているのがいまして」

商人「そのぐらい顔が広い私にとってはワケないことだ」

商人「ただし、話は決闘が済んでから、でいいかね?」

剣士「もちろんです」

剣士(よかった……これであの子の今後は大丈夫そうだな)

剣士の小屋──

剣士「明後日、あの商人の依頼で決闘をすることになった」

剣士「相手はお前を武器にしていた連中だ」

少女「けっとう……?」

剣士「心配するな、俺はこれでも強いんだ」

剣士(俺が右腕を奪った首領格が出てくるとは考えにくい……)

剣士(相手はおそらく、槍使いか赤い目の男、だろうな)

少女「うん……」

剣士「あと、この戦いが終わればお前にも仕事を見つけてやれそうだ」

剣士「もう少しで、この汚い小屋から抜け出させてやれるからな!」

少女「うん……」

剣士「にしても、あの連中も全く懲りてねえな」

剣士「普通はあんだけやられたら、足を洗うなりなんなりするもんなんだが」

剣士「まあ、たしかにプライドが高そうな連中だったしな……」

少女「あの……」

剣士「ん、どした?」

少女「…………」

 シャベッタラ

 コロスカラナ

少女「な、なんでもない……」フルフル

剣士「そっか、心配事があったらなんでもいえよ!」

剣士「解決できるかまでは保証できないがな! ハッハッハ!」

少女「…………」

二日後──

剣士「そろそろ時間だな」

少女「決闘、どこでやるの……?」

剣士「町をちょっと出たとこにある荒れ地だ」

剣士「あそこも武器庫があった森と同じく、人が通るような場所じゃないしな」

剣士「あ、いっとくけど来るなよ。お前を利用してた連中が勢ぞろいしてるんだからな」

剣士「お前も奴らの顔なんか二度と見たくねえだろ」

少女「うん、でも……」

剣士「どうした?」

少女「……なんでもない」

剣士「夕方には戻るから、その辺にあるパンでも食って待っててくれ」

剣士「んじゃ、行ってくる」ザッ

少女「あ……」

荒れ地──

首領「……来たか」

商人「書類は持ってきておるだろうな?」

首領「ちゃんと持ってきてある。もちろん複製もしていない」パサッ…

商人「うむ……たしかに」

首領「では互いに代表者を一人ずつ、出そうではないか」

商人「分かった」

商人「出てきてくれたまえ」

首領「来てくれ」



剣士「とっとと始め──」ザッ

女剣士「早いところ始めま──」ザッ



剣士&女剣士「!!!」

剣士「なんで……!」

女剣士「どうしてあなたが……!」

剣士&女剣士「…………」

剣士「──っと、一度仕事を引き受けた以上、こんなことを聞くのは野暮だな」

女剣士「えぇ、そうですね」

女剣士「酒場で対決したばかりの私たちが、次の日には手を組んだのと同様に」

女剣士「共に仕事をした翌日、敵同士にもなりうるのが私たちの稼業です」

剣士「んじゃ、始めるか!」チャッ

女剣士「はい」チャキッ

ビュアッ!

──ガキィンッ!

どうなる?
支援

キィンッ! ガキンッ! キンッ!

剣士「はっ!」シュッ

キンッ!

女剣士「やりますね」スッ

ギィンッ!

剣士「しっ!」ドシュッ

キィィンッ!

女剣士「させません」シュバッ

キンッ!

ギャリンッ! キンッ! ガキンッ!

剣士(酒場の時とは全然ちがう……!)

女剣士(酒場の時とはまるでちがいますね……)

剣士&女剣士(やはりとてつもなく強い……!)

首領「予想通り、実力伯仲……だな」

槍使い「ああ、俺をやった女の方がスピードはあるが」

槍使い「パワーはやはり男が上、といったところか」

赤目「これは我々にとっては好都合ですね」ニィッ



──ギィンッ!

ザッ……

剣士「さすがだな」ハァハァ

女剣士「あなたこそ、前戦った時とは動きがまるでちがいますね」ハァハァ

剣士「だが、いい加減決着をつけねえとな」チャキッ

女剣士「ええ」チャッ

支援

両者疲れたところを襲うと

剣士「勝負ッ!」ダダッ

ビュアッ!

女剣士「参ります」ダッ

ギュオッ!



首領(決まる!)

槍使い(さあ、どっちだ!)

赤目(まあ……どちらでもかまいませんがね)



女剣士(間合いに)

剣士(入った!)

ビュワァッ!



「待ってっ!!!」

ピタッ……

剣士「──なんでお前がここに!?」

女剣士「あなたはあの時、ハンマーに入れられていた……」

少女「よかった……間に合った……」ハァハァ

首領「バカな……」

槍使い「なんであのガキが!?」

赤目「まさか保護されていたとは……てっきりあの後野垂れ死にしたものかと……!」

商人(いったい何をしにここへ──まさか!)

少女「その人たちはただの悪者じゃない……現役の兵士なのよ!」

商人「こ……」

少女「商人さんとその人たちは、グルなのっ!」

剣士&女剣士「!」

商人「小娘を殺せぇっ!!!」

首領「かかれぇっ!!!」バッ

ワアァァァァァ……! ウオォォォォォ……!

ザシュッ! ビシュッ! ザンッ! ドズッ! ザンッ!

「ぐはぁっ!」ドサッ 「ぐおおっ……!」ドサッ 「がはっ!」ドサッ

商人「くっ……!」

首領「おのれ! あの人数をあっさりと……!」

少女「あたし、あの大きなハンマーに入れられるためにさらわれて」

少女「あの人たちの話、ずっと聞いてたの……」

少女「ごめんなさい……もっと早くに話してれば……」

少女「でもあの人たちにしゃべったら殺すって、脅されてて……ごめんなさい!」

剣士「謝ることなんかねえって」

剣士「ありがとよ」

女剣士「ええ、あなたは何も悪くありませんよ」

女剣士「ですがここは危ないですから、少し下がっていて下さい」

少女「うん……」タタタッ

剣士「なんとなく怪しい気はしてたが、まさかつるんでたとはな」

女剣士「えぇ、ですが思い返してみるとたしかに色々とおかしいところがありました」

女剣士「私たちを知りもしないはずのならず者が、私たちを歴戦のコンビといったり」

女剣士「依頼を達成したにもかかわらず、驚くだけで喜ばない依頼人……」

女剣士「前者は単なる思い込み──」

女剣士「後者は自分の武器が敗れたのがショックだったから、と解釈していましたが」

女剣士「前者は私にウソをつかれた商人から」

女剣士「私たちの情報を事前に受け取っていたから起こった勘違い」

女剣士「後者は単純に、商人は私たちに死んで欲しかったから、というわけですね」

剣士「──お前らが単なる無法者じゃなく、正規の兵士だとすると話も見えてくる」

剣士「今、王国軍は色々な派閥に分裂してると聞く」

剣士「お前らはその中の一派──」

剣士「非道な武器を使ってでも兵の強化をすべき、みたいな考えの連中ってとこか」

剣士「商人を依頼人にして、次々と傭兵稼業の連中をお前たちに挑ませていたのは」

剣士「上を納得させるには、実績がいるから……ってとこだろ?」

首領「ふん、察しの通り……」

首領「我々はこの商人と手を組み、違法武器を駆使する特殊部隊の設置を訴えていた」

首領「しかし、受け入れてはもらえず、兵士たちの支持も得られず」

首領「我々の一派は王国軍の中でも風前の灯だった」

首領「そこで我々はある条件を提示した。それは──」

首領「“非王国兵である職業戦士100人の首”」

首領「上の連中のほとんどは“兵は王に従うべき”という考えだから」

首領「キサマらのような連中を嫌っている」

首領「俺が出した条件は、快く受け入れてもらえたよ」

首領「そしてニセ依頼に釣られてくるバカどもを次々に抹殺し」

首領「100人まであとわずか、というところで……」

首領「キサマら二人に全てを台無しにされた!」

首領「もう少しで最凶の武具を身にまとう最強の兵団が完成したというのに!」

首領「同士討ちをさせてキサマら二人のうち勝った方を仕留める、という作戦も」

首領「その小娘のおかげで台無しになった」

首領「だが、もういい」

首領「俺はこのとおり、右腕を失ってしまったが」

首領「この前よりさらに強力な武器を装備した俺の部下が、この場でキサマらを葬る」

剣士「……無理だな」

剣士「武器に頼り切りじゃ、俺たちには通用しないってことを教えてやるよ」

女剣士「そうですね。彼らとの因縁、ここで決着をつけましょう」

槍使い「どぉ~だ、この槍!」ザンッ

槍使い「さらに刃が追加され、もう刺すどころかかするだけで肉をえぐるっ!」ブオンッ

赤目「私の剣も同様です」

赤目「この毒剣に染み込ませた毒の威力は、なんと以前の五倍!」ヒュッ

赤目「しかも、すでに解毒剤は飲んでおりますので自滅を誘う戦法は通じませんよ」ニヤッ

剣士「はぁ~……」

剣士「こいつら、全然分かってねえな」

女剣士「えぇ、あの敗北で目を覚ますどころか、さらにひどい悪夢を見ているようです」

槍使い「ほざくんじゃねえっ!」ダッ

赤目「すぐに毒に侵してあげましょう!」ダッ

ヒュンッ! ヒュバッ!

赤目「ハハハ、かわすので精一杯ですか!? ──ですよねえ!」

赤目「なんたって切り傷一つであなたは死ぬのですから!」シュバッ

剣士「…………」ザッ



ボバッ! ブオンッ!

槍使い「今度こそその柔らかい肉をえぐってやるぜ!」

槍使い「オラァッ!」バオッ

女剣士「…………」タンッ

熱い

しえん

剣士「毒剣……恐ろしい武器だ」

剣士「たった一撃与えれば必殺必勝が約束されるんだからな」

赤目「ふふふ、私はこの剣で王国軍をより強くしてみせますよ!」ビュンッ

剣士「だが、毒なんざ仕込むまでもなく剣ってのは元々そういうもんだろ」ヒュオッ

ザンッ!

赤目「ん……?」

赤目(急に足が……動かなくなった)チラッ

赤目(あれ……?)

赤目(私の上半身と下半身がずれ、て……る……)ズルッ

ドチャッ……

剣士「同じ一撃狙いとはいえ──」

剣士「切り傷狙いの野郎が、必殺狙いの俺に勝てるわけねえだろ」

かっこいい

支援

槍使い「オラオラオラァッ!」

槍使い「グッチャグチャにしてやるよぉっ!」

ボッ! ブオンッ! ブウンッ!

女剣士「あなたは無駄が多すぎます」ス…

槍使い「あぁ?」

サクッ

女剣士「頸動脈をいただきました」

槍使い「え」ブシュッ

女剣士「さようなら」

槍使い「このア、マ」ブシュウウウ…

ドシャアッ……

女剣士「わざわざ肉をえぐらずとも、急所を的確に狙えば人は死ぬのですから」

程良く厨2

なにこのストーリー神すぐる

首領「な……なぜだ!」

首領「先日は敗れはしたが、実力は拮抗していたのになぜこうもあっさり……!」

剣士「俺はなるべく依頼人のご意向に沿うタイプでね」

剣士「こないだは商人から“撃退しろ”“追っ払え”としかいわれてなかったから」

剣士「なるべくお前らを殺さないように戦ってやってたんだよ」

女剣士「奇遇ですね」

女剣士「あの時は私もそのようにしておりました」

剣士「お、やっぱアンタもそうだったのか」

剣士「だが、あの死んだ二人も決して弱くはなかった」

剣士「まともな剣や槍でかかってきてれば、もっとマシな勝負になってただろう」

剣士「悪趣味な武器が……奴らの腕を腐らせたんだ」

支援

女剣士「さてと、まずは私から……後始末を始めます」チャッ

首領「!?」ギョッ

首領「おい待て! 俺は丸腰だぞ! しかも右腕を失ってるんだ!」

女剣士「それがなにか?」

首領「俺は正規兵で、しかも王国軍では部隊長の身だ!」

首領「俺を殺せば……つまりは国を敵に回すことになるのだぞ!」

女剣士「それはないでしょうね」

女剣士「違法武器を扱う商人と手を組む兵士など、国にとっては大スキャンダル」

女剣士「表ざたにするはずがありません」

女剣士「もし100人斬りを達成し、あの商人の武器が軍に正式採用されていたら」

女剣士「話は違ったのでしょうが──」

女剣士「今のあなたは、国のお偉方にとっては兵士でもなんでもないのです」

首領「う、うぐぅ……」

よく考えてるなあ

何で女剣士はこんな奴らの依頼引き受けたんだよ

うぐぅわろた

女剣士「もっとも、仮に国を敵に回すとしても同じことですがね」

女剣士「あなたは“あの商人が改心しようとする自分たちに刺客を差し向けた”」

女剣士「“武器リストと引き換えに見逃して欲しいといっても聞き入れてもらえない”」

女剣士「“片腕では戦えないから、代わりに決闘して欲しい”と」

女剣士「私にウソの依頼をしました」

女剣士「私がもっとも残酷になれるのは、標的を狩る場面でなければ」

女剣士「自分や他人を守る局面、でもありません」

女剣士「依頼人に裏切られた瞬間ですから」

首領「お……おい近づくな、話せば分かる!」

首領「ま、待っ──」

ザシュッ!

ゴロン……

剣士「さてと、俺はアンタだ」

商人「あ、あわわ……」ガタガタ

商人「まあ落ちつけ、いくら欲しい!? 金ならいくらでも……!」

剣士「…………」

商人「そうだ、あの気の毒な小娘のために、金が必要だろう!?」

商人「あとで罰は受け入れる! だからこの場は見逃してくれっ! な、頼むっ!」

商人「これは神に誓ってウソじゃない!」

剣士「今度はウソじゃなさそうだな」

剣士「だけど俺も同じなんだ」

商人「へ……?」

剣士「俺が一番気がねなく人を斬れるのは、依頼人にはめられた時なんだよ」

商人「ひ、ひぃぃぃっ!」ダッ

ドズッ!

商人「えげぇ……」

ドチャッ……

剣士「大丈夫か?」

少女「うん、平気……」

女剣士「よかった……怪我はないようですね」

少女「ありがとう……二人とも」

剣士「せっかく仕事の斡旋をしてくれるっていってたのに、あの商人叩き斬っちまった」

剣士「もうちょいあの小屋での生活で我慢してくれ」

少女「うん……あの小屋嫌いじゃないし」

女剣士「──あの、よろしいですか」

剣士「ん?」

女剣士「さっきの私との戦い、の話なのですが」

いいスレみっけた

女剣士「あなたは……本気で戦ってくれましたか?」

剣士「もちろんだ」

剣士「猛毒の仕込まれた剣よりアンタの剣の方が、何倍も恐ろしかったぜ」

剣士「それにいったろ? 俺はアンタを侮ってなんかないって」

剣士「逆に聞くが、アンタこそ本気だったんだろうな?」

女剣士「もちろんです」

女剣士「肉をえぐり裂く槍に立ち向かうより、あなたと斬り合う方が恐怖を覚えました」

剣士「そうかい」ニッ

剣士「酒場の時とは動きが段違いだったから、驚いたよ」

女剣士「当然です」

女剣士「あのような私闘で全力で出すほど、私は愚かではありません」

デレるか?

俺の剣を受けてみろ!
ああっ…私の鞘には収まりません…

みたいなのはよ

剣士「実力はほぼ互角だった」

剣士「あのまま続けてたら、確実にどちらかがあの世に行ってただろう」

剣士「俺は、今こうして二人とも生きてるってことに感謝してるよ」

剣士「自分が死ぬのはイヤだし、アンタみたいないい女が死ぬってのもイヤだしな」

剣士「正直いって俺は、あいつらがグルだったことに内心感謝してるのかもしれねえ」

女剣士「…………」

女剣士「私もです」

剣士「お……もしかして俺のこと、少しは気に入ってくれたってことか?」

女剣士「いいえ」

女剣士「気に入った、などという生半可な感情ではありません」

女剣士「あなたにならどうされてもいい、と言い切れるほどの激情です」

女剣士「思えば酒場であなたと出会ったあの瞬間から」

女剣士「あなたは私の心に深く深く入り込んできました」

女剣士「無鉄砲ではありますが、強く、優しく、あの少女にも手を差し伸べるあなたに」

女剣士「私は魅了されてしまったのです」

女剣士「そんなあなたと全力で斬り合い」

女剣士「なおかつこうしてお互い無事でいることに、私は心から安堵しております」

女剣士「…………?」

女剣士「どうしました? お顔が真っ赤ですが、どこか具合が?」

剣士「い、いや……」

剣士(面と向かってここまでいわれて赤面しない男はいねえよ……嬉しいけど)

珍しいキャラだな

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

面白いぞ

女剣士「ありがとうございました」

女剣士「また一緒に仕事ができたらいいですね」

女剣士「では、さようなら」ペコッ

剣士「…………」

剣士「ま、待ってくれ!」

女剣士「はい」

剣士「俺、しばらくはこの子と過ごすわけだけど」

剣士「女の子の世話とかしたことないから、けっこうこの子にも不便を──」

剣士「いや……この子を理由にするのは、二人に失礼だな」

剣士「俺もアンタが好きだ」

剣士「だから、俺の相棒になってくれないか?」

女剣士「…………」

剣士「?」

女剣士「…………」

剣士「あの」

女剣士「…………」

剣士「もしもし?」

女剣士「申し訳ありません。嬉しさのあまり、しばし呆けておりました」

剣士(ビックリした……彼女だけ時間が止まったのかと思った)

剣士「でも嬉しいってことはつまり……」

女剣士「はい」

女剣士「微力ながら、あなたの相棒を務めさせていただきます」

剣士「……ありがとう!」

少女「ふふふ……お似合いだね!」

3pEND

女剣士「私は誓います」チャッ

女剣士「今後一剣士として、どのような運命が待ち受けていようと」

女剣士「この刃、決してあなたにだけは向けまいと」

剣士「お、かっちょいいね」

剣士「なら俺も誓わせてもらおう」チャッ

剣士「今後一剣士として、何があろうともこの刃、決してアンタには向けない」

少女「あ……あたしも! あたしも!」

剣士「おお、悪い悪い」

女剣士「そうでしたね。ではこの刃、お二人には向けません」チャッ

剣士「同じく!」チャッ

少女「あたしも……!」スッ

3pENDはよ

剣士「あたしも、ってまさか剣士になるつもりか?」

少女「うん……!」

少女「だって、お兄さんたち……あたしに傷をもらったこと忘れてない?」

剣士(そういえば……この子がハンマーに入ってた時、かなりやられたっけ)

剣士「よぉ~し、そういうつもりなら俺が立派な剣士にしてやるからな!」

女剣士「私も手伝いましょう」

剣士「そうと決まれば、今日は新たな出発の前祝いということでパーッとやるか!」

女剣士「そうですね」

少女「わ~い!」

………

……

半年後──

少女「えいっ! やぁっ! てりゃあっ!」

ビュンッ! ビュバッ! シュバッ!

剣士「おお、すげえ」

女剣士「あなたのパワーと私のスピードがうまく融合し」

女剣士「さらに彼女自身の天賦の才が加わり、かなりの使い手になりましたね」

剣士「こりゃあ……次の仕事はちょっと手伝ってもらおうかな」

女剣士「そうですね、そろそろいいかもしれませんね」

剣士「お~い、トレーニング中断してちょっとこっちに来てくれ」

少女「なになに?」タタタッ

久しぶりの良ssだ!

剣士「今度の仕事、町祭りの警備なんだが、お前にもちょこっと手伝ってもらう」

少女「え、ホント!?」

女剣士「ただし、絶対にムチャはダメですよ」

少女「ついにあたしもデビューね!」

少女「だったらいい機会だし……」

少女「二人も仕事の相棒とかじゃなく、そろそろちゃんとくっついたら?」

剣士「お、おいおい」

少女「あ、お姉さん顔赤くしてる!」

女剣士「し、してません!」

剣士(激レアだな……目に焼き付けておこう)

剣士「でもたしかに……いいタイミングかもしれないな。……どうだろ?」

女剣士「……はい」コクッ

少女「ふふふ、お似合いお似合い!」



                                   <おわり>

乙ん

やべえ感動
おっつ!

乙! 爽快だな

王道やね

これは素晴らしい!!

これは良い中2

おつ

乙乙乙

短い王道物は読むの楽だしスッキリするな

おつ

乙!
面白かったわ

乙!
久しぶりに夢中になって読んだわ

程よい厨ニが時に良ssを生む

乙!
良いssスレに出会ったわ

素晴らしいな

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