イケメン「へえ、最強を決めるトーナメントか……」 (94)

町──

ヒロイン「ねえねえ、イケメン君! あそこの看板見て!」

イケメン「ん?」



『 “最強”を目指す強者よ集え! 第二回最強トーナメント開幕! 』



イケメン「へえ、最強を決めるトーナメントか……」

ヒロイン「優勝賞金100万ゴールドだって! 出てみたら!?」

イケメン(前の仕事を辞めて格闘家になって以来、収入も心細くなってたしな……)

イケメン「そうだな……修業の成果を試したいし、出てみようかな!」

ヒロイン「そうこなくっちゃ!」

イケメン「それじゃさっそく、出場申し込みに行こう」

受付──

イケメン「今からでも出場できますか?」

受付「はい、ちょうどあなたで出場枠が埋まります」

イケメン「おお、ラッキー」

ヒロイン「よかったね!」

すると──

ライバル「お、見たツラだと思ったら、イケメンとヒロインちゃんじゃないか」

イケメン&ヒロイン「!」

ライバル「よう、久しぶり」

イケメン「ライバル!?」

ヒロイン「ライバル君じゃない!」

ライバル「ったく、前の職場を辞めた時はビックリしたぜ」

イケメン「ごめん……」

ライバル「ま、俺もお前を追うように辞めちまったけどな。今はお前と同じく格闘家さ」

ライバル「ところで、もしかして……お前もトーナメントに出るのか?」

イケメン「うん、そのつもりだよ。 ──ってもしかして、君も?」

ライバル「ああ、俺も出る」

ライバル「この大会でどっちが上か、決着つけようぜ!」

イケメン「ああ!」

ヒロイン(ライバル君も出るのかぁ……)

ヒロイン(もし二人が対決することになったら、どっちを応援しよっかな……)

会場──

ガヤガヤ……

イケメン「出場者はボクたち含めて8人か……ずいぶん少ないな」

ライバル「なにしろ、素手であること以外はほとんどルールがないからな」

ライバル「いくら賞金がよくっても、出る奴なんかそうそういねえさ」

ライバル「俺や、お前みたいな物好きじゃなきゃな」ニヤッ

イケメン「ハハッ、いえてる」

ライバル「さて……他の6人はいったいどんな奴なんだ?」

記者「今大会の自信のほどは?」

エリート「もちろん、私の優勝で間違いありませんよ」

オォ~……!



イケメン「一人だけ大勢の記者に囲まれて……。すごい自信だな……」

ライバル「前回優勝者らしいぜ。ダントツの優勝候補ってヤツだな」



巨漢「ぐへへへ……どいつもこいつもぶっ潰してやる!」ズシンッ



イケメン「大きい……身長2メートルはあるんじゃないか?」

ライバル「ありゃ、典型的なパワータイプだな。捕まったらオシマイだぜ」

老人「ホッホ……久しぶりに現役復帰といくかのう」



イケメン「あんなお爺さんも出るのか! 大丈夫なのか……?」

ライバル「年寄りの冷や水だな……試合中にポックリいっちまうんじゃねえか?」



博士「小生の計算と理論の正しさを証明する!」



イケメン「理論で戦うタイプっぽいな」

ライバル「ふん……理論が正しくても体がついていかなきゃ、どうしようもねえさ」



青年「うわぁ~……緊張するなぁ……」ドキドキ…



イケメン「まだあどけなさが残る子だね」

ライバル「あんな大人しそうな奴が、ホントに戦えるのかよ……」

仮面「…………」



イケメン「!」ゾクッ

イケメン「不気味な仮面をつけた上に、全身を黒い服で包んでいる……」

ライバル「よほどツラに自信がないんだろうな」

イケメン(いや……奴が仮面をつけてるのはそんな理由じゃない!)

イケメン(なんて禍々しい気だ……。なんというか人間とは思えない……!)



係員「それでは組み合わせを決めるくじ引きを行います!」

係員「選手の皆さまはこちらにどうぞ!」

トーナメント表──



          ┌─  イケメン
      ┌─┤
      │  └─  巨漢
  ┌─┤
  │  │  ┌─  エリート
  │  └─┤
  │      └─  老人
─┤

  │      ┌─  仮面
  │  ┌─┤
  │  │  └─  博士
  └─┤
      │  ┌─  ライバル
      └─┤
          └─  青年

控え室──

ライバル「イケメン、俺と当たるまで負けるんじゃねえぞ! 決勝で会おうぜ!」

イケメン「もちろん!」

巨漢「ぐへへへ……」ズイッ

イケメン&ライバル「!」

巨漢「ずいぶん気の早い話をしてるじゃねえか」

巨漢「残念ながら、テメェらが決勝で会うことはねえよ!」

巨漢「なぜなら、そっちの軟弱ヤロウは一回戦で俺にぶっ潰されるんだからな!」

イケメン「やれるものなら、やってみろ!」

試合場──

ワアァァァァァ……!

「まだかーっ!」 「早くしろーっ!」 「待ちくたびれたぞぉっ!」

実況『大変長らくお待たせいたしました!』

実況『ただいまより第一試合、イケメン対巨漢戦を開始いたします!』

ワアァァァァァ……!

ヒロイン「イケメン君頑張ってー!」

客「クックック……」

ヒロイン(な、なにこの不気味な奴……)

客(さあて、まずは観戦といこうか……)

客(人間のレベルがどの程度のものか、品定めさせてもらうぞ)

<一回戦第一試合 イケメンVS巨漢>

審判「両者、前へ!」

イケメン「いい試合をしよう」

巨漢「予告してやる。テメェは一分でぶっ潰す!」グッ

イケメン「どうかな……」ニッ

実況『さあ、いよいよ試合開始ですッ!』

審判「始めっ!」バッ

巨漢「挨拶代わりだァッ!」

ズドンッ!

実況『巨漢選手のボディブローが、イケメン選手の脇腹にヒットォ!』

オォッ……!

イケメン「…………」

巨漢「なっ!?」

イケメン「アバラ二、三本イッちゃったか……」

巨漢「お、おい……」

イケメン「いや四本か……。うぐぅぅぅぅぅ……!」ガクン

イケメン「ギ、ギブアップ……」ゲホッ

審判「それまでっ!」バッ

巨漢(なんて脆さだ……挨拶代りのパンチだったのに……!)

巨漢「オイ、立てるか?」

イケメン「肩を貸してくれると、ありがたい……」ヨロッ…

巨漢「すまねえな、やりすぎちまった」グイッ

実況『巨漢選手、勝利だァ~~~~~!』

実況『しかし、敗れたイケメン選手も、素晴らしい試合を見せてくれましたァッ!』

ワアァァァァァ……!

ヒロイン「ウソ……負けちゃった……」

客「クックック……」

<一回戦第二試合 エリートVS老人>

エリート「これはこれは……お年寄りが相手とは、私としてもやりづらい」

老人「お手柔らかに頼みますぞ」

エリート「ご安心下さい」

エリート「20%の力でお相手して差し上げましょう」

老人「ホホ……それはありがたい」

実況『前大会覇者と80歳を過ぎた老人の対決!』

実況『果たして試合になるのでしょうか!?』

エリート(なるわけないだろう……。ジジイが……一瞬で終わらせるッ!)

審判「始めっ!」バッ

エリート「はあッ!」シュッ

ベシッ!

実況『エリート選手の鋭いキックが炸裂ゥ!』

老人「ぎゃふっ!」ドサッ…

老人「あうっ……うぐっ……がはっ……」ピクピク…

審判「それまでっ!」バッ

エリート「えっ」

実況『やはり試合にはなりませんでしたァ~~~~~!』

実況『しかし、ご老体でありながら、このような大会に出場したガッツは素晴らしい!』

パチパチパチパチパチ……!

老人「こ、このっ……! お手柔らかにといったじゃろうが!」ギロッ

エリート「す、すみません……」

エリート(5%で相手すべきでしたね……これじゃ悪役だ)

<一回戦第三試合 仮面VS博士>

博士「コンピュータで計算したところ……」

博士「小生が勝利する可能性は……97.15%だ」

仮面「…………」

審判「始めっ!」バッ

博士「はっ!」

バキィッ!

博士「かっ!」

ドゴォッ!

博士「せえっ!」

ズガッ!

仮面「ぬうっ……!」ドサッ…

実況『博士選手の必殺技“サイエンティスト三連打”が決まったァ!』

「すげェ!」 「こりゃ勝負あったな!」 「さっすが博士!」

ヒロイン(いえ……あの仮面の男、まだ力を隠しているわ!)

仮面「なるほど……このままでは勝てんか……」

博士「!」

仮面「ならば、正体を明かそう……」ピシッ

実況『おっと、仮面選手のつけていた仮面にヒビが……!?』

仮面「そして──」ピキピキッ

パキィンッ……!

悪魔「正体を明かしたからには、貴様は死あるのみだ」

博士(なんだコイツ……化け物じゃないか!)ゾクッ

ヒロイン「あれは人間じゃない……悪魔だわッ!」

実況『なんと仮面選手の正体は悪魔だったァ~~~~~!』

博士(バ、バカな……悪魔だと!? 計算違いだ……!)

博士(いや、落ちつけ……! すぐに再計算しなければ……!)

悪魔「死ね」

ギュアッ!

博士(再計算……完了!)

博士(小生が勝利する確率……99.83%!)

博士「はかせいッ!」シュッ

ベキィッ!

悪魔「ぐおあっ……!」ドサッ…

実況『博士選手の奥義“サイエンティスト手刀”がまともに入ったァッ!』

悪魔「ぐぐっ……おのれぇっ……」ググ…

悪魔「この私が……人間如きに敗れるとは……」ガクッ

審判「それまでっ!」

博士(そうか……。仮面が取れた分、防御力が下がり、勝率が上がったのか……)

実況『博士選手、悪魔を下し、堂々の二回戦進出ですッ!』

ヒロイン「ライバル君の二回戦の相手はあの博士か……要注意ね」

客(ふん……悪魔の恥晒しめが)

<一回戦第四試合 ライバルVS青年>

ワアァァァァァ……!

実況『いよいよ一回戦も、残り一試合!』

実況『二回戦進出の最後のキップを手にするのは』

実況『ライバル選手か!? それとも今大会最年少の青年選手か!?』

ライバル(イケメン……お前の分まで、この俺が勝ち抜いてやるぜ!)

青年「よろしくお願いしますっ!」ニコニコ…

ライバル「よろしく」

ライバル(なんだコイツ……試合直前だってのに、ニコニコして……)

ライバル(ま、一回戦から苦戦してられないよな!)

ライバル(コイツはすぐに片付けて、一気に優勝してやる!)

審判「始めっ!」バッ

ライバル「シッ!」シュッ

バチッ!

青年「へぶっ!」

ライバル「せいいっ!」ブオッ

ドゴォッ!

青年「がふっ……!」

実況『軽いジャブからの左ハイ、緩急あるコンビネーションが炸裂ゥ!』

青年「フフフ……やりますね」ニヤッ…

ライバル「!」

ライバル(効いてないだと……!?)

青年「まさか、一回戦から“あれ”を使うことになるなんて……」

ライバル「え? “あれ”っていったいなんなんだよ?」

ヒロイン「!」ハッ

ヒロイン「に、逃げてぇっ!!! ──危険だわッ!!!」

青年「帝王流秘奥義“魔炎咆哮絶命──」

ライバル「“あれ”って……なんなんだよォ!?」ギュオッ

青年「へ?」

ドゴォンッ!!!

青年「ぐは……っ!」ドサッ

審判「それまでっ!」バッ

ヒロイン(ああ……やっぱり……)

ヒロイン(ライバル君は何かに疑問を抱いた時、普段の10倍の力を発揮するの)

ヒロイン(その状態のライバル君の攻撃は、非常に危険なのよ……!)

青年「あが、が……」ピクピク…

実況『青年選手、完全にノックダウン! 白目をむいています!』

ヒロイン(もう少し叫ぶのが早かったら、助けられたかもしれないのに……)

実況『以上で一回戦は終了ッ! 二回戦開始まで、しばらくお待ち下さい!』

客席──

ヒロイン「さてと、二回戦が始まる前に、お手洗い済ませておこうかな」スクッ

客「クックック……そろそろオレの出番かな」

ヒロイン(この人……いったい何をしようというの!?)



医務室──

ライバル「よう、イケメン」

イケメン「ライバル、二回戦進出おめでとう!」

ライバル「お前は負けちまったが……俺がお前の分まで勝ち抜いてやるから安心しな!」

ライバル「ところで、お前もヒロインちゃんと客席で観戦したらどうだ?」

イケメン「いや……ボクはもう少しここにいるよ。やることがあるからね」

<二回戦第一試合 巨漢VSエリート>

巨漢「ぐへへへ……ちっとは骨のありそうな相手だな」ザッ

エリート「フフフ、楽しませて下さいよ?」ザッ

実況『実力派同士の対決! 果たしてどちらが勝つのかッ!?』

審判「始め──」

客「ちょっと待った」フワッ…

実況『!? ──何事でしょう、客席から人が降りてきました!』

エリート「おやおや……行儀がよくないお客さんですね」

巨漢「大会のジャマすんじゃねえ! とっとと出ていきやがれ!」

客「クックック……“大会”か。そんな茶番はもう終わりだ」

巨漢「ンだとォ!?」

客「ただし、茶番とはいえ、この大会の世間からの注目度は大きい」

客「ようするに、我ら悪魔の力を見せるには格好の舞台というわけだ」

エリート「悪魔……? ということは、もしや先ほどの仮面の仲間ですか」

客「仲間とは心外だな。ヤツなど最下級の悪魔に過ぎん」

巨漢「なんだと!? アイツほどの実力で最下級なのかよ!?」

客「ちなみにオレは最上級悪魔……オレの戦闘力はおよそヤツの100倍だ」

エリート「100倍……!?」

客「手始めに……巨漢とエリート、キサマら二人を血祭りに上げる」

実況『な、な、なんと最上級の悪魔が試合に乱入だァ~~~~~!』

巨漢「なめんなよ……!」ギリッ…

エリート「いきなり現れて、我々を血祭りに上げるですって? ふざけた輩だ」

客「オレが恐ろしいか? なんなら二人がかりでもかまわんぞ」

巨漢「お、おもしれえ……やってやる!」ザッ…

エリート「ならば、二人がかりでやってあげましょう!」サッ…

客「来い」ニヤッ

実況『乱入者、巨漢選手とエリート選手を、同時に相手するようです!』

巨漢「とっとと出ていきやがれ!」ブンッ

エリート「はぁっ!」シュバッ

ドゴォッ! バキィッ!

客「ぐはァ……っ!」

客(つ、強すぎ……る……)ドサァッ…

実況『乱入者、あっという間にKOされたァ!』

実況『さぁ、気を取り直して試合再開といきましょう!』

審判「始めっ!」バッ

巨漢「ぬおりゃッ!」ブウンッ

ドゴォッ!

エリート「ぐうっ……!」ズザザッ…

実況『巨漢選手、凄まじいラリアット! ──が、エリート選手も倒れない!』

エリート「私の番ですね」バババッ

ガガガッ!

巨漢「ぐおぉ……っ!」ヨロッ…

実況『エリート選手の連続蹴りッ! タフな巨漢選手がよろついた!』

巨漢「ぐへへぇ……やるじゃねえか!」ザッ…

エリート「そちらこそ……。久々に出させてもらいますよ、100%の全力をね」ザッ…

「こいつら、すげえ!」 「最高の戦いだ!」 「どっちも頑張れッ!」

ワアァァァァァ……!

バキィッ! ガッ! ゴッ! ドゴッ! ベシィッ!

実況『速いッ! 重いッ! 激しいッ! 止まらないッ! ──凄まじい攻防ですッ!』

実況『まさに最強を決めるに相応しいバトル!』

実況『会場のボルテージも最高潮ォォォァ~~~~~ッ!』

ワアァァァァァ……!

「どっちが勝つんだ!?」 「どっちも譲らねえ!」 「興奮してきたァ~!」

巨漢「さすがは前回優勝者……しぶてえなあ」ハァ…ハァ…

エリート「ここまでタフな相手は初めてですよ」ハァ…ハァ…

巨漢「だが……そろそろ決めるぜぇ!」

エリート「私こそ、最大の技でお相手しましょう」

実況『両者、決着をつけるつもりだァ~~~~~!』



客席──

ライバル「よう」

ヒロイン「あ、ライバル君! 一回戦はおめでとう!」

ヒロイン「ところでこの勝負、どっちが勝つと思う?」

ライバル「…………」

ライバル「お互いに打撃技が得意だからな……」

ライバル「ラストは、巨漢は拳、エリートは足技で勝負に出るだろう」

ライバル「となると、破壊力の勝る巨漢が有利……!」

巨漢「ぬおりゃッ!」ビュアッ

実況『巨漢選手、なんとあの巨体でハイキックを繰り出しましたァ!』

エリート「セイィッ!」ギュンッ

バキィッ!

実況『が、エリート選手がキックをかいくぐり、カウンターでパンチを決めたァ!』

巨漢「うがっ……」ヨロッ

エリート「はあっ!」バッ

実況『さらにエリート選手、巨漢選手の右腕に飛びついて──』

実況『腕ひしぎ逆十字を決めたァ~~~~~! これは抜けられないッ!』

巨漢「ぐああああっ! 参ったァ!」ミシミシ…

審判「それまでっ!」バッ

実況『決まったァ~~~~~!』

実況『エリート選手、パンチから関節技のコンビネーションで決勝進出ゥッ!』

ワアァァァァァ……!

ライバル「……やっぱな」

医務室──

イケメン「いよいよ、二回戦だな」

ライバル「おう、必ず勝ってくるから安心しろ!」

イケメン(ライバルの実力なら、博士って相手なら問題なく勝てるはず……)

イケメン(だが、なぜだろう? ライバルが戦って勝つ姿が想像できない……!)



ワイワイ……

巨漢「どっちが勝つ方に賭ける?」

老人「ワシは博士に100ゴールドじゃ」

青年「じゃあボクはライバルさんに100ゴールド!」

悪魔「私はライバルに100ゴールド」

客「オレは博士に100ゴールド」

イケメン「コラコラ、皆さん安静にしてないと」

巨漢&老人&青年&悪魔&客「はぁ~い!」

<二回戦第二試合 博士VSライバル>

実況『さあ、試合場に両雄出揃いました! 試合開始待ったなしッ!』

博士「一回戦でライバル氏のデータは全て収集した……」

博士「そのデータと小生の戦闘力を計算した結果、小生が勝利する確率は──」

ライバル「…………」ゴクッ…

博士「0%……」

博士「というわけで棄権します」クルッ

審判「それまでっ!」バッ

実況『あァ~~~~~っと、ここで博士選手、棄権!』

実況『科学者らしい、実に合理的な選択といえましょうッ!』

ワアァァァァァ……!

「やるじゃねえか!」 「さっすが博士!」 「一味ちがうぜ!」

実況『観客も大いに盛り上がっています!』

ライバル(あと一試合か……。イケメン……約束通り優勝してやるからな!)

<決勝戦 エリートVSライバル>

実況『ついにこの時がやってまいりましたッ!』

実況『最強の座に名乗りを上げた8名の選手も、いよいよ残り2名!』

実況『この一戦に勝利し、トーナメント優勝の座に輝くのは──』

実況『すなわち“最強”の座を手にするのは、いったいどっちだ!?』

ワアァァァァァ……!

審判「始めっ!」バッ

ライバル「なぁ、エリートさん。ずっと気になってたんだが──」

ライバル「格闘エリートであるアンタが……なぜこんな危険な大会に出たんだ?」

エリート「…………」

エリート「私には……病気の妹がいるのですよ……」

──────

────

──

~ 回想 ~

妹「ケホッ、ケホッ……」

エリート「大丈夫か?」

妹「……お兄ちゃん、またあの大会出るの?」

エリート「もちろんさ」

エリート「なんたって、そのために格闘技のエリートと呼ばれるまでに腕を磨いたんだ」

エリート「お前の病気は、いいお医者さんなら治せる病気なんだ!」

エリート「優勝賞金で、いいお医者さんを見つけてやるからな」

エリート「お兄ちゃんが必ずお前の病気を治してやる!」ガシッ

妹「うん……でも無理しないでね」

妹「私のせいで、お兄ちゃんがケガでもしたら……イヤだから」

エリート「大丈夫だよ」

エリート「前回大会と同じく、あっという間に優勝してみせるさ!」

──

────

──────

ドゴォッ!!!

エリート「ぐはァ!」

ドサァッ……!

実況『決まったァ~~~~~!』

実況『エリート選手がなにやら物思いにふけっているスキを突いて』

実況『ライバル選手の一撃がヒットォ!』

実況『準決勝でのダメージが残っていたエリート選手、完璧にダウンッ!』

博士(しかも、ライバル氏はエリート氏に疑問を抱いていたため)

博士(10倍パワーアップしていた……あれを喰らったらひとたまりもあるまい)

ライバル「よっしゃァ~~~~~~~~~~!!!」

エリート(す、すまない……妹よ……)ガクッ

ライバル「──ん?」

ザワザワ……

実況『おや……? なにかアクシデントがあったもようです』

審判「どうしたのかね?」

ライバル「…………」

ライバル「脈拍と心拍、確認……」スッ…

ライバル「どっちも……止まっている! 呼吸もしていない……!」

ザワッ……!

ヒロイン「ウソでしょ……!?」

ライバル「おい、起きてくれ! しっかりしろ! 目を覚ませっ!」ユサユサ…

ライバル「妹さんのためにも、こんなところで死んじゃダメだ!」ユサユサ…

医者「あ~……こりゃダメですな。ご臨終です」

ライバル「そ、そんな……」ガタガタ…

実況『なんとォ~~~~~! エリート選手、死んでしまいましたァッ!』

実況『対戦相手であるライバル選手、顔面蒼白になっておりますッ!』

巨漢「マジかよ!?」

博士「エリート氏が……死んでしまったとは……」

老人「惜しい男を亡くしたのう……」

悪魔「ちくしょう……なんてことだ……! この世に神はいないのかッ!?」

青年「エリートさん……。ライバルさん……」

客「クックック……人の命とは、儚いものだな」グスッ…



「──いや、まだだッ!」

イケメン「昔を思い出すんだ、ライバルッ!」

イケメン「エリートさんは、まだ死んじゃいないッ!」ダダダッ

ライバル「イケメン!?」

イケメン「心肺停止から三分以内に必要な措置を取れば」

イケメン「後遺症なくエリートさんを救うことが十分に可能だ!」

ライバル(そういえばそうだ!)

イケメン「だが、救命措置は時間との勝負だッ!」

イケメン「ヒロイン、すぐに強心剤投与の準備を!」

ヒロイン「うんっ!」ババッ

イケメン「ライバルは急いでタンカを用意してくれ!」

イケメン「タンカの用意が済み次第、エリートさんを病院に運ぶ!」

イケメン「他の選手は、近くの病院までの道を確保してくれ!」

ライバル「……分かったぜ!」タタタッ

イケメン「戻ってこい……」グッグッ…

イケメン「戻ってこい……」グッグッ…

ヒロイン「強心剤、投与開始します!」チュゥゥ…

イケメン「戻ってこいッ!」グッグッ…

ザワザワ…… ドヨドヨ……

実況『イケメン選手が救命措置を施しておりますが……果たして……?』



巨漢(すげえ……アイツ、すげえよ!)

巨漢(俺にアバラを折られてるのに、あんな激しい心臓マッサージを……!)

巨漢(そういや、医務室でもアイツが治療してくれたおかげで)

巨漢(俺を含めた負けた奴らは、すぐ喋れるぐらいまで回復することができたんだ!)

博士(そういえば、あのイケメンという選手──どこかで見たことがある)ハッ

博士(まさか!?)

博士(若くして医学界の誰よりも優秀な医師となったが──)

博士(利益よりも患者を優先する姿勢が、上層部の反感を買い)

博士(半ば追放されるように医学界を去るはめになった、Dr.イケメン!?)

博士(となると近くで助手を務めるのは、伝説のナース、ヒロインか!)

博士(そういえば、ライバル氏も元は彼に次ぐレベルの医者だったハズ……)

博士(医学界を追放された若武者たちに、このようなところで会えるとは……)ゴクッ…



ドクンッ……

エリート「──がはっ!」ゲボッ

イケメン「よし、心拍と呼吸が戻った!」

イケメン「だが、念のため病院に輸送して、精密な治療を行う!」

巨漢「おうよ、輸送は任せとけ!」

ライバル(俺は心肺停止を確認した途端──)

ライバル(医者時代のイヤな思い出がフラッシュバックして)

ライバル(パニックになっちまったが……さすがだぜ、イケメン……!)

病院──

エリート「どうもありがとうございます……」

エリート「あなたがいなければ、今頃私は死んでいたでしょう……」

イケメン「いえ、医術を学んだ者として、当然のことをしたまでです」

エリート「ところで……虫のいい話なのですが……」

イケメン「妹さんのことですか?」

エリート「えっ……」

イケメン「ライバルから話は聞いています」

イケメン「このボクとライバルが共同で治療して、あなたの妹さんは必ず治します」

エリート「あ、ありがとう……ございます……!」

エリート「すぅ……すぅ……」

イケメン(……緊張が解けて、眠ってしまったか)

イケメン「もう大丈夫でしょう。あとはよろしくお願いします」

医者「任せて下され」

試合場──

イケメン「ライバル、優勝おめでとう!」

ライバル「おお、来てくれたのか!」

イケメン「エリートさんも容体が安定したし、一言だけでも祝福を、と思ってね」

ライバル「イヤ……」

イケメン「?」

ライバル「俺はトーナメントの優勝を辞退したんだ……」

イケメン「ええっ!? ──じゃあ、優勝はエリートさんか?」

ライバル「いいや、違う……」

ライバル「優勝者は、お前だよ!」

イケメン「!?」

ライバル「病院で眠ってるエリートも、会場の皆も、そう思ってるハズさ」

ライバル「そうだろ、みんな!」

巨漢「へっ、アンタにゃかなわねえよ」パチパチ…

老人「素晴らしい救命措置じゃった……天晴れじゃ!」パチパチ…

悪魔「悪魔であるこの私を泣かせるとはな……」パチパチ…

博士「もしよければ、君らの医学界復帰を支援させてくれ。力になれるハズだ」パチパチ…

青年「かっこよかったです!」パチパチ…

客「クックック……見事だ」パチパチ…

審判「感動させてもらったよ」パチパチ…

「すごかったぞォッ!」 「アンタが一番だ!」 「感動をありがとうッ!」

ヒロイン「おめでとう……イケメン君!」

ライバル「お前がナンバーワンだ!」

イケメン「みんな……ありがとう!」



実況『第二回最強トーナメント優勝者は、イケメン選手に決定いたしましたァッ!』




                                   <おわり>

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