芳佳「軍曹はもうトイレに行けません!!」美緒「……」 (104)

~深夜 501基地~

美緒「異常、なし」

美緒(さて、見回りはもういいな。そろそろ寝るか)

……ァァァァ……

美緒「……!?」

美緒「誰だ!! まだ起きている者がいるのか!!」

芳佳「――さ、坂本さん!!」

美緒「宮藤!? お前、なんという格好で出歩いている!! ズボンをはけ!!」

芳佳「あ……あ……!!」

美緒「どうした? 何かあったのか?」

芳佳「ト、トイレに……お、おば……おばけが……!!」

美緒「なに……?」

芳佳「うぅぅ……」ギュゥゥ

美緒「宮藤。この世に幽霊など存在しない」

芳佳「坂本さぁん……」

美緒「ネウロイと戦う魔女が幽霊に怯えてどうする」

芳佳「ネウロイとおばけは違います!!」

美緒「ネウロイのほうが恐ろしいと思うがな」

芳佳「うぅ……」モジモジ

美緒「どうした? まさか、お前……」

芳佳「まだ、済ませてません……」

美緒「消灯時間はとっくに過ぎている。さっさと済ませてこい」

芳佳「ひ、ひとりじゃ無理です!!」

美緒「……」

芳佳「そ、傍にいてください……」

美緒「情けない奴だ。全く」

芳佳「すいません。でも、本当におばけが……」

美緒「ちなみに聞くが、どんな物の怪が出たんだ?」

芳佳「まず私がズボンをおろして……」

美緒「詳しく説明しなくてもいい。何があったのかだけを言え」

芳佳「隣の個室から変な声がしたんです」

美緒「誰かがいただけだろう」

芳佳「こんな深夜にですか?」

美緒「可能性はあるだろう。現にお前が使用していたわけだしな」

芳佳「でも……人の声には……。呻き声でしたし……」

美緒「ほら、ついたぞ。行って来い」

芳佳「と、扉の前にいてください」

美緒「子どもではないだろう、宮藤。早く行け」

芳佳「でも、また……声がしたら……!! そうだ!! さ、坂本さん、個室の中を確認してきてもらえませんか?」

美緒「……待っていろ」

芳佳「あ、ありがとうございます!!!」

美緒「何がおばけだ……」ガチャ

芳佳「ど、どうですか?」

美緒「誰もいない。早く済ませろ」

芳佳「よ、よかったぁ」

美緒「では、私は戻る」

芳佳「……」ギュゥゥ

美緒「宮藤!」

芳佳「20秒で済ませますから……」

美緒「……さっさと行け!!」

芳佳「は、はい!!」バタンッ

美緒(幽霊か。まぁ、この建物も古いからな。それに軍事施設だ。黒い噂がないわけでもないが……)

美緒「いや。ないな。幽霊などいてたまるか」

芳佳『さかもとさーん。あの、5分に延長してもいいですか……?』

美緒「長い。1分で終わらせろ」

芳佳『りょ、りょうかい!!』

美緒「……」

芳佳『さかもとさーん』

美緒「……」コンコン

芳佳『さ、さかもとさん!!!』

美緒「……」コンコン

芳佳『は、はいってます!! だから、向こうに行ってください!!』

美緒「違う。私が居ることを伝えただけだ」

芳佳『はぁ……意地悪しないでくださいよぉ……』

美緒「もう2分だぞ」

芳佳『も、もうすこしですから!! 待っていてください!!』

美緒「扶桑の撫子が聞いて呆れるな」

……ゥゥゥゥ……

美緒「……宮藤。変な声を出すな」

芳佳『ち、ちがいます。わたしじゃ……ないです……』

美緒「……」

……ゥゥゥゥ……

芳佳『さ、坂本さん!! さかもとさん!!!』

美緒「お前は早く事を済ませろ」

芳佳『む、むりです!! ひっこんじゃいました!!!』

美緒「個室からではないな……。清掃用具を仕舞っているところからか……」

芳佳『あー!! あー!!』

美緒「誰だ!! 出て来い!!」

……ゥゥゥゥ……

美緒「おい!! 出て来いと言っている!!」

芳佳「わぁー!!!」バンッ!!!

美緒「なっ!?」

芳佳「さ、坂本さん!! い、行きましょう!!!」ギュゥゥ

美緒「お前、終わったのか?」

芳佳「終わってないです!! でも、もう無理です!! 早くここを離れましょう!!!」

美緒「お、おい!! 待て!! 宮藤!!! せめてズボンをはけ!!! 馬鹿者!!!」

~廊下~

芳佳「はぁ……はぁ……」

美緒「宮藤、途中だったのなら早く行け。体に悪いぞ」

芳佳「もうトイレにはいけません……」

美緒「ならばどこでする気だ?」

芳佳「くさむらで……」

美緒「……サバイバルの訓練にはなるか」

芳佳「坂本さん、一緒に……」

美緒「私はあの声の正体を突き止めねばならん。一人で行け」

芳佳「……!」フルフル

美緒「宮藤。お前も軍人の端くれなら、それぐらいは自力で乗り越えろ」

芳佳「明日からはもっともっと訓練がんばりますから!! だから、今日だけは!!!」

美緒「……」

芳佳「お願いします……」

美緒「こっちにこい。誰にも見られないであろう場所がある」

~中庭~

芳佳「――終わりました」

美緒「埋めたか?」

芳佳「はい。こんなの初体験です」

美緒「遭難時は誰もが必ずすることだ。経験しておいて損はない」

芳佳「はい」

美緒「では、お前は部屋に戻れ」

芳佳「坂本さんは?」

美緒「あの声がなんだったのか調べなくてはならない」

芳佳「怖くないんですか……?」

美緒「光線が飛んでくるわけでもあるまい。何を恐れることがある」

芳佳「でも、おばけには坂本さんの刀は通じないかもしれないのに」

美緒「塩でも持っていく。それでいいだろう?」

芳佳「……わ、私もいきますっ」

美緒「足手まといだ。早く寝ろ」

芳佳「いえ、迷惑をかけてしまったので、私もお手伝いします!!」

美緒「……正直に言ってみろ。何が望みだ」

芳佳「一人で眠るのが怖いです」

美緒「そうか。よし、リーネの部屋にでも行け。私は行く」

芳佳「坂本さんっ! 一人にしないでください!!」ギュゥゥ

美緒「宮藤、甘えるのもいい加減にしろ」

芳佳「でもぉ……」

美緒「上官命令だ! 戻れ!」

芳佳「きけません!」

美緒「おい」

芳佳「きけません……」ギュゥゥ

美緒「もういい。私から離れるな」

芳佳「はいっ。離れません!」ギュゥゥ

美緒「誰が抱きついていいといった」

芳佳「だ、だめなんですか?」

~トイレ~

美緒「誰かいるのか!!!」

芳佳「……いますか?」ギュゥゥ

美緒「先ほどは清掃用具入れから聞こえてきたからな……」

芳佳「あ、あけるんですか?」

美緒「確認しないわけにもいくまい」

芳佳「治癒はまかせてください!!」

美緒「お前の魔法で呪いにも効くのか」

芳佳「わかりません!」

美緒「さてと……」ガチャ

芳佳「ひっ……」

美緒「ブラシ等があるだけか」

芳佳「や、やっぱり、おばけ……!!」

美緒「時間が随分と空いたからな。出て行った後なのかもしれん」

芳佳「誰かがいた様子とか、ありますか……?」

美緒「見た限りでは誰かがいたという感じはしないな」

芳佳「おばけです!! おばけです!!」

美緒「明日、このトイレを使った者を探してみるか。それで解決だ」

芳佳「本当ですか……?」

美緒「幽霊など、存在しない!!」キリッ

芳佳「坂本さんがそういうと、なんとなく信じたくなります!!」

美緒「そうだろう。はっはっはっは」

芳佳「はっはっはっは」

美緒「うむ。元気が出たようだな。もう夜も遅い。早く部屋に戻れ」

芳佳「はい!!」

美緒「おやすみ、宮藤」

芳佳「おやすみなさい、坂本さん」

美緒「もうこんな時間か……」

芳佳「……」

美緒「早朝訓練をしてから、早朝ミーティング時にはサーニャ以外は集まるからそのときに聞き出すか」

~坂本の部屋~

美緒「……」ガチャ

芳佳「お邪魔します」

美緒「……おい」

芳佳「ゆ、床で寝ますから!!」

美緒「一人が嫌ならリーネの部屋に行け」

芳佳「でも、リーネちゃんを起こすのも悪いですし……」

美緒「なるほど。少佐である私の部屋に押しかけるのは悪いことではない、と宮藤は考えているわけか」

芳佳「あ、そういうわけじゃ……」

美緒「……」

芳佳「あの!! なんなら、タンスの中でもいいんで!! 立ったまま寝ろっていうなら寝ますから!!」

美緒「風邪を引かれても困る。ほら、こっちにこい」

芳佳「いいんですか……?」

美緒「ならば、出て行け」

芳佳「一緒に寝ます!!」

美緒「こういうことは今日限りにしてくれ。他の者に示しがつかないからな」

芳佳「坂本さん……ごめんなさい……」ギュゥゥ

美緒「抱きつくと汗をかくぞ?」

芳佳「でも、今日はこうしていないと眠れそうになくて……」

美緒「そんなに怖かったのか」

芳佳「怖いですよぉ……。坂本さんは平気そうで、羨ましいです。慣れてるんですか?」

美緒「幽霊に慣れている者などいないだろう。私はもっと恐ろしい経験をしてきたというだけだ」

芳佳「かっこいいですね……」

美緒「そんなことはない。お前が情けないだけだ」

芳佳「坂本さんは、かっこいいですよぉ。尊敬してます」

美緒「こんなことで尊敬されても困る」

芳佳「坂本さん……」ギュッ

美緒「もう寝ろ」

芳佳「は……ぃ……」

美緒(宮藤はもう少ししっかりしていると思っていたが、やはりヒヨッコか)

~翌朝~

美緒「ん……。うぅん……」

芳佳「すぅ……すぅ……」

美緒「訓練に行くか」ゴソゴソ

芳佳「……あれ? さかもと、さん……?」

美緒「お前は寝ていろ。あと1時間は眠っていられるぞ」

芳佳「わたしも……いき、ます……」

美緒「そうか? ならば支度しろ」

芳佳「ふわぁぁ……」

美緒「ほら、しゃきっとしろ」

芳佳「は、はい」

美緒「行くぞ」

芳佳「あぅ……」フラフラ

美緒「トイレの件といい、今といい、お前は本当に軍人には見えないな」

芳佳「だって、まだ日が浅いですから……」

~海岸~

芳佳「でも、昨日のアレは私じゃなくても怖がってますよぉ」

美緒「例えばルッキーニか? 確かにありえるな」

芳佳「ペリーヌさんやリーネちゃんだって!! もしかしたらシャーリーさんも私と同じように悲鳴を……!!」

美緒「シャーリーが……?」


シャーリー『おばけー!!! きゃぁー!!! いやぁー!!』


美緒「はっはっはっはっはっは!!!」

芳佳「何がおかしいんですか!?」

美緒「想像しても違和感しかなくてな」

芳佳「……坂本さんの言うとおり、あのときトイレには人がいたんですか?」

美緒「そうとしか考えられないだろう」

芳佳「人の気配はありましたか?」

美緒「心配するな。この後、全員に訊く。それでわかるはずだ。あのトイレは我々しか使用しないからな。もしウィッチ以外がいたとなればミーナの制裁が待っているだけだ」

芳佳「それはそれで、怖いですけど……」

~ミーティングルーム~

美緒「もう一度、訊ねるぞ。深夜にあのトイレを使用したものはいないのだな?」

ミーナ「……いないようね」

エーリカ「トゥルーデじゃないの?」

バルクホルン「アリバイの証明はできないからな。疑うなら疑ってもらっても構わない」

ペリーヌ「宮藤さん、何かありまして?」

芳佳「それが、誰もいないはずのトイレから呻き声がきこえてきて……」

リーネ「え……!?」

ルッキーニ「ぎゃぁー!!! おばけー!!!」

シャーリー「……」

エイラ「シャーリー、どうした? 静かだな」

シャーリー「お腹痛いだけ」

エイラ「ふぅん」

美緒「となると、考えたくはないが……」

ミーナ「私も調べてみるわ。ウィッチに対して邪まな考えを持つ者がいないかどうか……ね」

ミーナ「みんな、冷静に。トイレの使用を控えるようにとはいえないけど、真相が分かるまでは警戒しておくように」

バルクホルン「了解」

エーリカ「トゥルーデじゃないのー?」

バルクホルン「トイレに潜むような趣味はない」

リーネ「でも、幽霊のほうがまだいいかな……」

芳佳「え!? ど、どうして!?」

リーネ「人がいたってほうが怖くないかな? だって、そこで何をしていたのかよくわからないし……」

ペリーヌ「そんなもの、不埒なことを考えていたに決まっていますわ!!」

リーネ「ですから、そのほうが私は怖いなって……」

芳佳「おばけでも人でもこわいよぉ」

ルッキーニ「やだぁー!! おばけいやぁー!!」

シャーリー「……」

エイラ「私、知ってるぞ。この基地に纏わる話」

ペリーヌ「な、なんですの、いきなり?」

エイラ「ここは軍事施設だろ? 過去に死んだ兵士だって当然いる」

芳佳「え……?」

エイラ「前線基地でもあるしな。死人が出るのは必然だ」

リーネ「エイラさん、やめてください……」

ルッキーニ「うにゃぁ……リーネぇ……」ギュゥゥ

エイラ「でもな、何も戦闘で死んだだけじゃないんだ。辛い戦争の日々に耐えかねて、自ら命を絶ったやつだっていたらしいぞ」

芳佳「えぇぇ……!!! ペリーヌさーん!!」ギュゥゥ

ペリーヌ「おやめなさい!! 朝から気分が悪いですわ!!」ギュゥゥ

エイラ「その自決したやつは自室では次に入ってくる兵士に悪いと思ったみたいでな。場所はどこがいいのか考えた」

エイラ「できるだけ死体は早く発見されたほうがいい。腐るとあれだし。行方不明扱いにされるとその分、人員が捜索に割かれてしまうから大変だろ?」

シャーリー「……」

エイラ「だから、そいつは誰もが毎日利用する場所で死ぬことを選んだんだ」

芳佳「そ、それ、どこですか……?」

エイラ「……宮藤が使った、トイレダー!!!!」

芳佳「いやぁー!!!!」

シャーリー「おい!! やめろ!!! トイレ、いけなくなるだろ!!!」

エイラ「え?」

シャーリー「……ルッキーニたちが」

エイラ「なんでだ? これ、そんなに怖い話か?」

シャーリー「見てみろ」

ルッキーニ「こわいぃ……こわいぃ……」

リーネ「うんうん……私も怖いよ……ルッキーニちゃん……」

ペリーヌ「ひぃ……ゆうれいなんて……いません……いません……」ガタガタ

芳佳「ペリーヌさん……ペリーヌさん……」ギュゥゥ

エイラ「なんだよー。これ、そんなに怖いか? サーニャに話したら鼻で笑われたんだぞー?」

シャーリー「エイラ。怖い話をするときは、あれだ。今から怖いことを言うからって前置きしてからにしてくれよ」

エイラ「そうなのか?」

シャーリー「心臓に悪いだろ。常識で考えれば分かることだ」

エイラ「なんか、悪かったな」

美緒「怪談もその辺にしろ。ほら、任務と訓練が待っているぞ。急げ」

芳佳「は、はい……」

~滑走路~

芳佳「……」ブゥゥゥン

美緒「宮藤の奴、乗れていないな……。今朝の怪談が効いているのか」

ミーナ「美緒。いいかしら?」

美緒「結果は?」

ミーナ「予想はしていたけど、誰もその時間にトイレは使用していないそうよ」

美緒「まぁ、素直に答えるわけもないか」

ミーナ「どうする?」

美緒「見回りを強化するしかない。助かったぞ、ミーナ」

ミーナ「いいのよ。でも、今までそんなことをする人はいなかったのに」

美緒「何かの拍子に人は変わるものだ。わからんさ」

ミーナ「美緒、それじゃあ悪いけれど巡回のほうは任せるわね。私も警戒しておくけど」

美緒「無理はするなよ。お前は昼間に働き詰めだからな」

ミーナ「ありがとう」

美緒(さて、早く皆を安心させる意味でも正体を探らなくてはな)

~廊下~

美緒「……ん?」

芳佳「どうしよう?」

リーネ「もう、外でしようよ……」

芳佳「えー、でも……」

美緒「どうした、二人とも」

芳佳「あ、坂本さん!! よかったぁ!!!」

美緒「な、なにがだ?」

リーネ「お、おトイレ……行きたいんですけど……」

美緒「そうか。行ってくるといい」

芳佳「一緒に……」

美緒「何を言っている」

リーネ「今日だけ!! 今日だけお願いします!!」

芳佳「私も今日だけですから!!」

美緒「……」

芳佳「リーネちゃん、一緒の個室に入る?」

リーネ「え、それは……でも……」

芳佳「今日だけ!! お願い!!」

リーネ「なら、今日だけ……」

芳佳「わーい。リーネちゃんと一緒なら安心ー」ガチャ

リーネ「私も芳佳ちゃんと一緒なら……」バタンッ

美緒(精神力を鍛える必要があるな。気持ちはわからんでもないが)

芳佳『あ、私、こっち向いてるから!!!』

リーネ『う、うん!』

美緒「宮藤」

芳佳『なんですか?』

美緒「用事を思い出した。私は行く」

芳佳『そ、そんなぁ!!! ま、待ってください!!!』

リーネ『芳佳ちゃん!!! ダメ!!! 行かないで!!! もう止められないから!!!』

美緒(慣れればもう甘えることもしなくなるだろう……)

~中庭~

美緒「いい天気だ」

……ガサガサガサガサ……

美緒「誰だ?」

ルッキーニ「ふぃー。すっきりしたぁー」

美緒「ルッキーニ。何をしている?」

ルッキーニ「え? トイレだけど」

美緒「トイレを使え。馬鹿者」

ルッキーニ「だってぇ……おばけでるんでしょ?」

美緒「そんなものは出ない」

ルッキーニ「……」

美緒「安心しろ。私が守ってやる」

ルッキーニ「ほんとぉ?」

美緒「ああ。だから、外ではするな」

美緒(割と深刻だな。急ぐか)

~深夜 廊下~

美緒(あのトイレを使うにはここを通る他ない。ここを見張っていればいいだけだが……)

美緒「誰も通る気配はないな。となると、あの声は……」

バルクホルン「少佐。まだいたのか」

美緒「バルクホルン。どうした?」

バルクホルン「どうしたといわれても、トイレだが」

美緒「そうか。気をつけろよ」

バルクホルン「少佐がいるんだ。何も心配はしていない」

美緒「そういわれるとやる気が出てしまうな。はっはっはっは」

バルクホルン「何かあれば言ってくれ。幾らでも協力させてもらう」

美緒「そのときは頼むぞ」

バルクホルン「了解」

美緒「……」

美緒(あと1時間ほど見張って何もなければ寝るか)

美緒「暫くは寝不足に悩ませるな」

~坂本の部屋~

美緒(結局、通ったのはバルクホルンだけだったか……)ガチャ

美緒「昨日の今日では相手も動かないか」

芳佳「すぅ……すぅ……」

リーネ「すぅ……うぅん……」

美緒「……」

芳佳「さかもと、さぁん……」

美緒「こいつらは。私の寝る場所がないではないか」

リーネ「ん……? あ、坂本少佐……お、おつ……」

美緒「おつ、ではない。何をしてる?」

リーネ「夜、眠るのが怖くて……」

美緒「怖がるのはトイレだけにしろ。そして私の部屋で寝るとはどういう料簡だ」

リーネ「ごめんなさい……。でも、芳佳ちゃんと一緒でも不安で……。だから、その坂本少佐と一緒なら……」

美緒「とにかく場所をあけてくれ。私も眠たくてな」

リーネ「あ、はい。どうぞ」

芳佳「すぅ……すぅ……」

美緒「全く。三人も眠れるようにはできていないのだぞ」

リーネ「声の正体はわかったんですか?」

美緒「いや。バルクホルン以外は通らなかったし、バルクホルンも声は聴いていないそうだ」

リーネ「そうですか……」

美緒「何もないんだ。これからは安心して利用しろ。いいな?」

リーネ「でも、怖いです」

美緒「外でするか?」

リーネ「それも、ちょっと……でも、どうしてものときは……」

美緒「馬鹿な考えはやめろ。動物じゃあるまいし」

リーネ「すいません」

美緒「野外演習をしているわけでもないんだ。決められた場所でしろ」

リーネ「はい」

美緒「暫くは私とミーナがずっと見張っている。何も心配することはない。いいな?」

リーネ「わかりました……ごめんなさい……」

~翌日 廊下~

シャーリー「うぅ……くっ……」モジモジ

美緒「どうした、シャーリー?」

シャーリー「しょ、少佐……あははは……なんでも……」

美緒「ならば、手で股間を押さえるのはやめたほうがいい」

シャーリー「い、いや……その……き、きのうから……我慢してて……流石にやば……」

美緒「我慢? 体に悪いことはやめろ。ほら、行け」

シャーリー「いやぁ……でもなぁ……」モジモジ

美緒「おい。顔色も悪いぞ」

シャーリー「ルッキーニ……みたいに割り切れたら、楽なのになぁ……これ……」

美緒「シャーリー。何があった?」

シャーリー「……うっ……くっ……もう、ダメ……」

美緒「シャーリー!! 大丈夫か!?」

シャーリー「しょうさぁ!! 一緒についてきてください!!!」

美緒「なに!? お前までか!?」

~食堂~

エーリカ「笑っていいの?」

シャーリー「笑うな!!」

バルクホルン「リベリアン。年齢は?」

シャーリー「か、関係ないだろ」

ミーナ「シャーリーさんまで……」

美緒「ここは徹底的に調査して、早急な解決を図るべきだ」

ミーナ「そうね……」

エイラ「ごめん。私が変な話をしたからだな」

サーニャ「エイラの所為なの?」

エイラ「ほら、前にしただろ。トイレで自殺した男の話」

サーニャ「あの、全く怖くない話のこと?」

エイラ「そう、それ。あれを広めたばかりに……」

ペリーヌ「あのような話だけでトイレに行けなくなるだなんて。軍人としてどうかと思いますわ」

シャーリー「うるさいなぁ。なんか気分悪いだろ」

~中庭~

美緒「サーニャ。暫くはお前のシフトを変更させてもらう」

サーニャ「わかりました」

ミーナ「今日からお願いできるかしら?」

サーニャ「はい。問題ありません」

美緒「エイラもよろしく頼む」

エイラ「任せろ。あの話を広めた責任はとる」

美緒「これで早期解決に繋がればいいがな」

ミーナ「そうね……」

……ガサガサガサガサ……

美緒「む? まさか……」

ミーナ「美緒?」

美緒「――おい!! ルッキーニ!!! またおまえはここで……」

ペリーヌ「ぁ」

美緒「……程々にな」

ペリーヌ「少佐!! 誤解ですわー!!! あの、その、そう!! そうですわ!!! トイレが満室だったから仕方なく、貴族としてのプライドを保つためにあえて外で!!!」


ミーナ「ハルトマンやバルクホルンにも協力してもらいましょう。あの二人もトイレには何も感じていないようだし」

美緒「それは心強いな」

ミーナ「でも、もし人ではなかったら」

美緒「ミーナもエイラの話を信じるのか?」

ミーナ「そういうわけじゃないけど」

美緒「確かに歴史ある場所だ。それなりのこともあった」

ミーナ「ええ……」

美緒「だが、幽霊は存在しない」

ミーナ「私もそう思っているわ」

美緒「怖いなら一緒に言ってやってもいいぞ?」

ミーナ「大丈夫です!」

美緒「はっはっはっは」


ペリーヌ「少佐ー!! 申し訳ありません!! 紙がきれてしまいましたわー!!」

~深夜 廊下~

美緒「こちら、坂本だ。そちらの様子はどうだ?」

バルクホルン『こちらバルクホルン。人が通る気配はない』

エーリカ『こっちも』

美緒「サーニャ。どうだ?」

サーニャ『いえ。何も反応ありません』

エイラ『こっちもないな』

美緒「了解。そのまま警戒態勢を怠るな」

美緒(今日も現れないか)

芳佳「さ、さかもとさん……」

美緒「どうした? 私の部屋で寝ていろ」

リーネ「あの、芳佳ちゃん、トイレに行きたいそうです」

美緒「……行くぞ」

芳佳「すいません、こんなときに……」

美緒「もう慣れた」

~トイレ~

芳佳「待っててください」

美緒「早くしろ」

芳佳「……」ガチャ

美緒「何が不安なんだ。これだけのウィッチに守られているというのに」

リーネ「やっぱり、無防備になるからじゃ……」

美緒「魔法を使えばいいだろう」

リーネ「そういう問題ではないような……」

……ゥゥゥゥ……

美緒「……!」

リーネ「ひっ!?」

芳佳『さかもとさぁーん!!! 助けてくださぁーい!!!』

美緒「どうした!? 何かあったのか!?」

芳佳『早く出たいのに紙がありませーん!!!」

美緒「紛らわしい!!! 今はそれどころではない!!!」

リーネ「あぁ……」

美緒「リーネ!! そちらの個室を開けて中を確認しろ!!」

リーネ「……!!」フルフル

美緒「ええい……!! サーニャ、エイラ!! 今すぐこちらにこい!! バルクホルン、ハルトマンはそのまま待機だ!!」

芳佳『坂本さん!!! もう出てもいいですか!!! 怖いです!!!』

美緒「待て!! リーネ!! 紙を投げ入れてやれ!!」

リーネ「……っ」フルフル

美緒「しっかりしろ!!」

サーニャ「どうかしたんですか?」

エイラ「なんだなんだ?」

美緒「エイラは宮藤に紙の補給を。サーニャ、個室の中を確認してくれ」

エイラ「了解!」

芳佳『だれかぁ……はやくしてください……』

サーニャ「あの少佐……? 私たち以外の反応は確認できませんけど……」

美緒「誰も、いないのか?」

サーニャ「はい。誰もいません」

美緒「しかし……」

……ゥゥゥゥゥ……

エイラ「なんだ、この声?」

サーニャ「……」

美緒「まさか、本当に幽霊か……?」

リーネ「いやぁ……」

バルクホルン『おい!! 何が起こっているんだ!!! 説明してくれ!!!』

エーリカ『トイレいきたい……』

芳佳「いやぁー!!」バンッ

エイラ「おぉ。宮藤、ちゃんと拭いたのか?」

芳佳「エ、エイラさん!!! 声が……声が……!!!」

エイラ「するなー。これ、なんだろうな」

サーニャ「ここから聞こえてきます。清掃用具入れから」

美緒「よし、開けてみてくれ」

サーニャ「え……?」

美緒「どうした?」

サーニャ「いえ、あの、ここは、少佐が」

美緒「しかし、今扉の近くにいるのはサーニャだろう」

サーニャ「……エイラっ」ギュッ

エイラ「うぇ!? な、なんだよぉ!?」

サーニャ「開けて」

エイラ「い、いや。こういうのは、少佐の役目だ」

芳佳「エイラさん……もしかして……」

エイラ「怖くないぞ。別に。でも、少佐にも花を持たせるべきだと思うだけで」

リーネ「うぅ……」

美緒「仕方ない。どいていろ」

エイラ「少佐!! たのむ!!」

サーニャ「頑張ってください」

美緒「結局、私が開けるのか……」ガチャ

美緒「ふむ……」

エイラ「どうだ? 生首とかあったか?」

サーニャ「血だらけの女の子とか……」

芳佳「やーめーてー!!」

リーネ「いやぁー!!」

美緒「見ろ。誰もいない」

エイラ「おぉ……」

サーニャ「逆に怖い」

芳佳「軍曹はもうトイレに行けません!!!」

リーネ「右に同じです!!」

美緒「待て!!」

エイラ「宮藤、リーネ! どこいくんだー!! おいてくなー!!」

サーニャ「まって、エイラっ」

美緒「はぁ……」

エーリカ「もれるっ。もれるっ」タタタッ

美緒「ハルトマン。来てくれたのか」

エーリカ「あ、ちょっと待ってて」バタンッ

バルクホルン「少佐。宮藤たちが泣き叫んでいたが、本当に幽霊がでたのか?」

美緒「いや、わからん。ただ……」

……ゥゥゥゥゥ……

バルクホルン「……」

美緒「声はする」

バルクホルン「声だったのか」

美緒「なに?」

エーリカ「あー。すっきりしたぁ。すこし出ちゃったときはどうなることかと思ったね」

バルクホルン「よかったな。カールスラントの誇りを穢さずに済んで」

美緒「バルクホルン、今の発言がとても引っかかる。どういうことだ?」

バルクホルン「どういうこととは?」

美緒「お前はこの声を耳にしたことがあるのか?」

バルクホルン「ああ。先日、少佐と通路ですれ違っただろう。あの日ここで耳にした。あのときは声だとは思わなかったが。確かに言われると呻き声のようにも聞こえるな」

……ゥゥゥゥゥ……

エーリカ「なにこれ、こわっ」

美緒「バルクホルン。初めて聞いた時はなんだと思った?」

バルクホルン「隙間風が奏でているものだと考えた」

美緒「隙間風……」

バルクホルン「この建物も古いからな。そういう音があっても不思議ではない」

美緒「……」

バルクホルン「どうかしたか。そんなに変なこといっただろうか?」

エーリカ「こわいってー。もうでよー、トゥルーデぇ」

バルクホルン「分かった。少佐、一応報告しておく。ここへ入りこんでくるような者はいなかった」

エーリカ「私も見てないよー」

美緒「あ、ああ。ご苦労だったな」

バルクホルン「さて、寝るか」

エーリカ「今日は一緒にねよー。怖くてねれなーい」

バルクホルン「お前が恐怖を感じるということに、私は驚愕している」

美緒「……」

……ゥゥゥゥ……

美緒「老朽化した家屋にはあって当然の音か……」

美緒「はっはっはっはっは」

美緒「くっ……」ガクッ

ミーナ「美緒!?」

美緒「ミーナ……か?」

ミーナ「なにかあったの? 宮藤さんたちが騒いでいたから心配したのよ」

美緒「宮藤たちはどうした?」

ミーナ「あなたの部屋にいるわ。今日だけは許してあげたら?」

美緒「……そうか」

ミーナ「どうしたの?」

美緒「なに……足に力が入らないだけだ……」

ミーナ「あなた、ずっと我慢してたの? どうしてそんな無理をするの?」

美緒「私が怖がったら、かっこ悪いだろう……」

ミーナ「美緒。私には言ってくれも」

美緒「お前はお前の仕事がある。無理はさせられない」

ミーナ「ほら、つかまって」

美緒「すまない」

ミーナ「こうして貴女の心配をするほうが疲れるのよ?」

美緒「そうなのか……。悪かった。反省し、今後の課題としよう」

ミーナ「それで幽霊の正体はわかったの?」

美緒「施設班に風が入り込んでいるような箇所がないか調べさせてくれ。あれば修理を頼む」

ミーナ「そう。幽霊は修理すればいなくなるのね」

美緒「恐らくな」

ミーナ「ふふっ。よかったわ。幽霊じゃなくて」

美緒「全くだ……」

ミーナ「貴女の部屋だけど、もう平気?」

美緒「――ああ。問題ない」

ミーナ「それじゃ、おやすみ」

~坂本の部屋~

美緒「――戻ったぞ」

芳佳「さかもとさぁぁん!!!!」

リーネ「坂本少佐ぁ!!!」

美緒「落ち着け」

エイラ「なぁ、トイレ増やしてくれ。なぁ」

サーニャ「中尉もトイレに行けません」

美緒「落ち着け!!!」

芳佳「ひぐっ」ビクッ

美緒「声の正体が分かった。老朽化した箇所から風が入り込み、それが鳴っている音だ。幽霊などではない!!!」

リーネ「そ、そうなんですか?」

美緒「お前たちが怖い怖いと思うから、あのような何の変哲もない音を声だと錯覚したんだ。修行が足りん証拠だ。明日からは厳しくいくぞ」

エイラ「ほら、私の言ったとおりだっただろ。そんなことだと思ったんだ」

サーニャ「よかった……」

芳佳「坂本さん……かっこいい……」

美緒「こんなことに時間をとらせるな」

芳佳「坂本さんはやっぱりすごいです!!!」

美緒「未熟なだけだ。私たちがな」

エイラ「サーニャ、これで安心だな。さ、部屋に戻ろう」

サーニャ「うん。坂本少佐。ご迷惑をおかけしました」

美緒「構わん。ゆっくり休め」

リーネ「芳佳ちゃんはどうする?」

芳佳「えーと……」

美緒「なんだ。用がないなら戻れ」

芳佳「あの、今日だけ、いいですか?」

美緒「何故だ?」

芳佳「あははは。あの、坂本さんと一緒だとよく眠れることがわかったんで……」

リーネ「それ、私も」

芳佳「だよね! 坂本さんの匂いなのか、雰囲気なのかはわからないけど……」

美緒「勝手にしろ」

芳佳「坂本さーん」

美緒「汗をかくぞ。抱きつくな」

リーネ「今日だけですから」

美緒「昨日も言っていなかったか」

芳佳「私、早く坂本さんみたいに強くなりたいです」

リーネ「私もです」

美緒「お前たちならいつかはなれる。だが……」

芳佳「なんですか?」

美緒「こうして甘えているうちは無理だ」ギュッ

芳佳「むぐ……。すいません……」

リーネ「ぅうん……ごめんなさい……」

美緒「はっはっはっは。明日からは覚悟しておけ」

芳佳「覚悟してます!!」

リーネ「き、厳しくしてください!!」

美緒「いい心がけだ。では、寝ろ。……おやすみ」

~翌日 中庭~

ミーナ「点検したところ、老朽化して破損している箇所が見つかったそうよ。今から補修、修理を行うそうだから、夜には終わると思うわ」

美緒「やはりそうだったか」

ミーナ「これで幽霊騒ぎも終わりね」

美緒「いや。まだだ」

ミーナ「どういうこと?」

美緒「それは――」

……ガサガサガサガサ……

ミーナ「……ルッキーニさんかペリーヌさんなの?」

美緒「だろうな。これをやめさせなければならん。――おい。幽霊はいないと今朝説明しただろう。いい加減に……」

シャーリー「ぉ」

美緒「……」

シャーリー「あ、あの……さっきトイレいったら、工事しててさ……」

美緒「我慢、できなかったか」

シャーリー「面目ない」

~食堂~

ペリーヌ「おほほほ。なんですの。ただの音を声だ声だと怖がって。情けないったらないですわね」

エイラ「なんだとぉ……」

サーニャ「ペリーヌさん」ヌッ

ペリーヌ「きゃぁ!?!」

サーニャ「紅茶、どうぞ?」

ペリーヌ「ど、どうも……。いつもながら、気配がない人ですわ……」

エイラ「サーニャにビビんなよ。腹立つなぁ」

ペリーヌ「ビビってなんていわませんわ!!」

エーリカ「トゥルーデの言ったとおりだったんだ、あの声」

バルクホルン「幽霊などいないからな」

エーリカ「ま、幽霊もトイレなんかにいたくないだろうしね」

バルクホルン「臭うからな」

エーリカ「そうだ。トイレの声って言えばさ。たまにものすごいの聞こえない? ウォォォォ……みたいな奴」

バルクホルン「それは私だ」

~滑走路~

美緒「さぁー!! しっかり走れ!!! 風の音を声だと錯覚しなくなるまで心と体を鍛えるんだ!!!」

芳佳「はい!!! 鍛えます!!!」

美緒「リーネ!!! お前は誰になりたいと言った!!!」

リーネ「坂本少佐のようなウィッチになりたいです!!!」

美緒「宮藤は!!!」

芳佳「坂本さんのような強い人になりたいです!!!」

美緒「ならば、何をしなければならない!!!」

芳佳「いっぱい走ります!!!」

リーネ「夜、一人でトイレに行きます!!」

美緒「上出来だ!!! それを忘れるな!!! はっはっはっはっは!!!」

芳佳「ところで……」

美緒「なんだ?」

芳佳「どうして坂本さんも走っているんですか?」

美緒「私もまだまだ修行が足りんからだ!! 文句があるのか!!!」

~夜 廊下~

ルッキーニ「うぅ……!!」

美緒「ルッキーニ」

ルッキーニ「少佐!」

美緒「まだ怖いのか?」

ルッキーニ「うん……」

美緒「あれは声ではなく、風だ。そして、エイラが言っていた話もウソだ」

ルッキーニ「そうなの!?」

美緒「どこの世界に女子トイレで自決する男がいると思う? まぁ、いないとは言えんが、少なくとも自室で死ぬことを躊躇うような男が選ぶ場所ではない」

ルッキーニ「にゃはー!! そっかー!!」

美緒「さ、行って来い」

ルッキーニ「ありがと、少佐ー!!!」

美緒「ちゃんと拭くんだぞ」

ルッキーニ「あーい!!」

美緒「この部隊は手がかかるな。私も含めて」

~深夜 トイレ~

美緒「異常は……」

美緒「よし。声は聞こえないか。施設班に労いの言葉ぐらいは送るべきか」

美緒「さてとそろそろ寝――」

『ウォォ……ォォォ……』

美緒「……!?」ビクッ

『ウォォォ……ォォォォ……』

美緒(な、なんだ……この獣のような唸り声は……!!)

『ヌォォォォ……ォォォォ……!!!』

美緒「風……ではない……!! まさか……まさか……」

『ゥオォォォォ!!!!!』

美緒「……っ!!」

美緒「あぁ……ぁ……」

美緒「……!!」ダダダッ

『ォォ……ふぅ……今日は辛勝だったな……』

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