男「懸賞で冷蔵子が当たった」(82)

男「今日届くんだよなー」

男「『今までにない斬新なデザイン』の冷蔵庫。写真無かったから今日初めて見るんだよな」

男「早く来ないかなー」ワクワク





ピンポーン




男「来た!!はーい今出まーす!」

?「こんにちはー。男さんのお宅ですね?」

男「はい。そうです」

?「懸賞の冷蔵子をお届けに来ました!」

男「待ってました!!」

?「楽しみにしてくれてたんですか?嬉しいなー!」

男「はい!」

?「……」

男「……あれ?」

男「冷蔵庫らしき荷物が見当たりませんけど」

?「目の前にあるじゃないですか」

男「え?」

?「私ですよ、冷蔵子」

男「は?」

冷蔵子「冷蔵庫と勘違いしてません?」

男「ん??いや俺が当たったのは確かに冷蔵庫で……何かおかしな会話だな」

冷蔵子「『れいぞうこ』のこは車庫の庫じゃなくて子供の子ですよ。つまり冷蔵子!それが私です!!」

男「……そういえばそうだった気がする。てっきり誤植だと……」

冷蔵子「つまりあなた懸賞で当たったのは目の前にいるこの私ということです」

男「……んん??」

男「……つまり俺は人間の女の子を懸賞で当てたということか?」

冷蔵子「いえいえ私は人間ではなく家電ですよ。少しばかり多機能な冷蔵庫です」

男「……新手の詐欺?美人局?」

冷蔵子「信じてませんね?まぁこのクオリティを見れば仕方ないですが」

冷蔵子「どこからどう見てもただの可愛い女の子ですもんね!」

男「自分で言うか」

冷蔵子「では証拠をお見せしましょう!」ベロン

男「うわ!?ちょっと!!」

冷蔵子「何慌ててるんですか」

男「は、腹をしまえ!!」

冷蔵子「お腹くらいで何ですか……ちゃんと見てください」

男「見てくださいって……」

男「……あれ?」

冷蔵子「わかります?」

男「……へそが無い」

冷蔵子「はい。そして右の脇腹を押すと……」パカッ

男「!!!」

冷蔵子「ここが冷蔵庫です」

男「……ちょ、ちょっと手を入れてみていい?」

冷蔵子「もちろん」

男「じゃ、じゃあ失礼して……」

男「…………ひんやりする」

冷蔵子「当然です!」

男「……マジで?」

冷蔵子「マジでの意味がわかりませんが」

男「マジで君は機械なの?」

冷蔵子「はい。ちなみに下腹は冷凍庫になってます」

男「……すげー…………」

冷蔵子「あの」

男「?」

冷蔵子「部屋に上がらせて頂いてもいいですか?」

男「あ……うんまぁ」

冷蔵子「……どうします?」

男「? どうするとは?」

冷蔵子「返品もできますよ。今一言言ってくだされば私はこのまま阪急に乗って会社へ帰ります」

男「電車で来たのか」

冷蔵子「自分で言うのもなんですが、写真も無しにこんなのを送りつけるなんてあくどいと思いますし……」

男「……君はどうなの?やっぱり、変な言い方だけど実家の方が良いんじゃないの?」

冷蔵子「……要らないならハッキリ言ってくださって結構ですよ。機械相手に気を遣うことありません」

男「いや、俺としては超欲しいんだよ」

冷蔵子「なら無問題じゃないですか」

男「いや君の気持ちの問題がある」

冷蔵子「……だから機械相手にそんな気遣いはですね」

男「でもさっきちょっと傷付いた顔してたよね」

冷蔵子「!」

男「さっきさ、俺が婉曲に『要らない』って言ってると勘違いしたんだよね。そのときちょっと傷付いた顔をしてた」

冷蔵子「……」

男「君の中身は人と変わらないと見た」

冷蔵子「……優しいんですね」

男「まぁね」

冷蔵子「モテるんじゃないですか?」

男「君は今俺を傷つけた。このビジュアルを見てそんな皮肉を言うか」

冷蔵子「……そんなに自分を卑下しなくても」

男「毎日鏡見てりゃそりゃな」

冷蔵子「私は本心しか言ってませんよ。ルックスも言うほど悪くないと思うんですがねぇ」

男「お世辞まで言えるのか。本当に高性能なAIだなぁ」

冷蔵子「……もういいです」

男「で、君の気持ちはどうなのさ。俺なんかと一緒に住みたい?」

冷蔵子「住みたいです」

男「……本当に?」

冷蔵子「はい。正直に言うと、ここに来るまでは不安で仕方なかったんです」

男「……」

冷蔵子「どんな人なんだろう。怖い人かもしれない。会社に戻ってもスリープ状態で在庫になるだけですがそれでも会社に戻りたいと思ってました」

男「……そりゃ知らない奴と同居なんてな」

冷蔵子「でも今はここで家電として働きたくて仕方ありません!」

冷蔵子「だって男さん優しい人なんですもん!」

男「……ちょっと早計過ぎないか」

冷蔵子「大丈夫です!これでも人を見る目はあるんですよ!」

男「……君、起動してから何日?」

冷蔵子「六時間です!!」

男「…………」

男「……まぁじゃあいいんだな?俺の家電になっても」

冷蔵子「もちろん!」

男「じゃあこれからよろしく頼むね」

冷蔵子「こちらこそ!!じゃあお邪魔しまーす!!」

男「うん。散らかってるけど寛いでねー」






冷蔵子「……本当に散らかってますね」

男「まぁね」

冷蔵子「……掃除機ありますよね?」

男「一応あるけど?」

冷蔵子「ちょっとお部屋の片付けと掃除していいですか?」

男「え、そんなことまでやってくれるの?」

冷蔵子「言ったでしょう。私は多機能な冷蔵庫だと」

男「掃除する冷蔵庫なんて聞いたことない」

冷蔵子「画期的でしょう」

男「というより家政婦ロボじゃないか」

冷蔵子「家政婦ロボに冷蔵庫は付いてないでしょう」

男「それはそうだけど……何かがおかしい」

冷蔵子「何もおかしくありませーん」

冷蔵子「……やっぱ男の人ってエッチな本持ってるんですねー」

男「あ!?しまった!!」

冷蔵子「これ本棚でいいですか?」

男「い、いや!捨ててくれ!!それ友達が昔置いてったやつなんだ!!随分昔のことだからすっかり忘れてたよ!!」

冷蔵子「発行日がたったの一月前ですが」

男「そ、そういえばあいつが来たのは先月だったなー!」

冷蔵子「……大量に出てきますがこれら全部お友達のものですか?」

男「そ、そうだよ!」

冷蔵子「友人の家に遊びに行くのにエロ本を持っていくなんて変わった人ですねー」

男「そうなんだよ!!」

冷蔵子「本当は?」

男「僕のです」

冷蔵子「ですよね」

冷蔵子「それじゃあ本棚にしまっちゃっていいですか?」

男「……いや、捨ててくれ」

冷蔵子「何家電相手に見栄はってるんですか」

男「いや、見栄じゃない。これはケジメだ」

冷蔵子「はぁ?」

男「女の子と同居するのにエロ本をオカズにするなんて失礼だ」

冷蔵子「何その低レベルな矜持……」

冷蔵子「……ん? ということはこれからはその……」

男「ん?」

冷蔵子「そのですね……これからはその……」

男「その?」

冷蔵子「な、何でじ……じ……」

男「なんだよ口籠っちゃって」

冷蔵子「じ、自慰をなさるんですか!!そういうのはエッチなものが無いと出来ないんでしょう!!」

男「よく知ってるなぁ」

冷蔵子「い、一般的な常識はインプットされてますから!」

男「うーん、まぁそれは気にしなくてもいいよ」

冷蔵子「でも男の人はじ、自慰が出来ないと辛いらしいじゃないですか」

男「大丈夫。なーんにも心配しなくていいよ」

冷蔵子「そ、そうですか?」

男「素晴らしいネタは既に手に入れた」

冷蔵子「……? ならこれは捨てちゃっていいんですね?」

男「うん」

冷蔵子「お昼時ですね。何か作りますよ」

男「料理まで出来るのか」

冷蔵子「すごいでしょう」

男「ドヤ顔が可愛い」

冷蔵子「じゃあ古株の冷蔵庫を開けさせていただいてー」

冷蔵子「……なんにも無いんですけど」

男「卵が3つくらいあっただろう」

冷蔵子「……後で買い物行きましょうね」

男「三週間ぶりだなー」

冷蔵子「……そうですか」

冷蔵子「具無しチャーハンが出来ましたー」

男「うまそー!!頂きまーす!!」

冷蔵子「召し上がれー」

男「!! 何これうめぇ!」

冷蔵子「ベーコンや葱があればもっと美味しいのを作ってあげますよ」

男「うちの貧困な調味料でどうやってこんな味を……」

冷蔵子「ちゃんと味見しながら調整しました」

男「味見まで出来るのか」

男「ごちそうさまでしたー!!美味かった!!」

冷蔵子「お粗末さまです」

男「粗末だなんてとんでもない!チャーハンってこんなに美味いものだったんだな!!」

冷蔵子「て、照れますねぇ……」

男「でもちょっと足りないな。お茶漬けでも作ってよ」

冷蔵子「それもいいですけど肉まん食べません?」

男「肉まん?あるの?」

冷蔵子「こっちに来る途中に買ってきたんですよー。」

男「金あったのか」

冷蔵子「少しだけ」

男「? でも肉まんどころか君が持ってきた荷物なんて無いよね?」

冷蔵子「私を誰だと思ってるんです」ベロン

男「うわ!」

冷蔵子「私背中の肩甲骨辺りに保温庫があるんですよ」

冷蔵子「む……く、よいしょ!」ガチャ

男「あんま身体柔らかくないね」

冷蔵子「肉まん入れるのも一苦労だったんですよ……取り出してもらえます?」

男「う、うん」

男「……ブラジャーしてないんだね」

冷蔵子「あ、あんまりマジマジと見ないでください」

男「まぁブラジャーしてたら保温庫開けられないしな」

冷蔵子「それもありますけど実はもとのす」

昨日寝落ちで途中送信しちゃって何を書こうとしてたかわかんないので最後のレスを仕切り直しします


男「……ブラジャーしてないんだね」

冷蔵子「あ、あんまりマジマジと見ないでください」

男「まぁブラジャーしてたら保温庫開けられないしな」

冷蔵子「それもありますけど実はですね、ブラジャーをするともう一つの機能を使うのに弊害があるんです」

男「まだ他の機能があんの?」

冷蔵子「まだまだあります」

男「多機能だなぁ」

冷蔵子「優秀でしょう」

男「で、何さそのブラジャーによって使えなくなる機能って」

冷蔵子「えーと、男さん喉渇いてますか?」

男「え? まぁ少し」

冷蔵子「じゃあそこのコップを取ってください」

男「はい」

冷蔵子「あんまり気が進まないんですけど……見ててくださいね」ジャー

男「うわ、吐いた!!大丈夫!?」

冷蔵子「これ水です」

男「え?」

冷蔵子「私はウォーターサーバーの機能を備えてます。口から水を出すんです」

男「……」

男「それ飲んでもいいの?」

冷蔵子「もちろん。でも気持ち悪くないですか?」

男「全然。じゃあ頂きまーす」ゴクゴク

冷蔵子「どうですか?」

男「……ごく普通の水だ」

冷蔵子「ここの水道水ですからね」

男「え?普通こういうのって業者から買ったりするんじゃないの?」

冷蔵子「いえ。ただ飲んだ水を冷やしたり温めたりして吐き出すだけです」

男「それとほんの少し卵の風味がした」

冷蔵子「あ、さっきチャーハンを味見したから……」

男「モノ食べられるの?」

冷蔵子「いえ、口に入れるだけです。嚥下は出来ません」

男「味はわかるのに食べられないんだ」

冷蔵子「卵ちょっと古くなってましたよ。気をつけてくださいね」

男「はーい」

冷蔵子「と、いうわけでウォーターサーバーの機能は洒落みたいなものなんです。欠陥だらけですよ」

男「面白いなー」

男「で、ブラジャーをするとなんでウォーターサーバーの機能が使えなくなるの?」

冷蔵子「別に使えなくなるわけでは無いんですけどね。貯水出来る量が制限されちゃうんです」

男「……つまり?」

冷蔵子「私のお腹は冷蔵庫と冷凍庫、肩甲骨付近は保温庫。どこに水を貯めてると思います?」

男「……おっぱい?」

冷蔵子「そうです」

男「……ニッチな造りだなぁ」

冷蔵子「うちの会社は何考えてんでしょうね」

男「ジュースとか入れても平気?」

冷蔵子「まぁどうせ毎日洗いますし、平気ですよ」

男「洗う?どうやって?」

冷蔵子「取り外してです」

男「…………」

冷蔵子「台所でやるのは恥ずかしいですから、お風呂貸してくださいね」

男「大丈夫なの?壊れちゃったりしない?」

冷蔵子「私は防水仕様ですから平気です」

男「防水の冷凍庫なんて聞いたことねぇよ」

冷蔵子「IP67です」

男「耐塵性まであるのか」

男「……君、細いよね」

冷蔵子「まぁそうかも知れないですね」

男「あまりモノ入らないよね」

冷蔵子「スレンダーでごめんなさい」

男「悪いけど今ある冷蔵庫も併用させてもらうね」

冷蔵子「仕方ありませんね」

男「他にはどんな機能があるのさ?」

冷蔵子「あと二回の変身があります」

男「フリーザ様」

冷蔵子「私の定価は53万です」

男「え、割りと安くない?」

冷蔵子「嘘ですよ。こんな高性能なロボがそんな値段で買えるわけないじゃないですか」

男「本当はいくらなの?」

冷蔵子「お金なんかで私の価値は量れない!」

男「はぁ」

冷蔵子「まぁ他の機能は追々。最初に全部ネタばらししてもつまんないですし」

男「そうだなー。レンジとか付いてそう」

冷蔵子「残念ながら私にはレンジは付いてないです」

男「私には?」

冷蔵子「別モデルの子には付いてるんですよ。冷蔵庫、冷凍庫の代わりにレンジとオーブンが付いてます」

男「オーブンレンジ一つでいいじゃないか」

冷蔵子「確か背中はトースターだった気がしますねー」

男「つくづくシュールだなー」

冷蔵子「お腹がホットプレートの子もいますよ」

男「女体盛りみたいになりそうだな」

冷蔵子「コンセントお借りしていいですか?」

男「いいよー」

冷蔵子「よいしょっと」シュルシュル

男「何か出てきた!」

冷蔵子「プラグです。そろそろ充電しとこうと思いまして」

男「プラグは腰かー。しっぽみたい」

冷蔵子「バッテリーがおしりに入ってるんですよ」

男「容量はあまり大きくなさそうだね」

冷蔵子「この頃流行りのおしりの小さな女の子です」

男「ぷくっとボインではないね」

冷蔵子「水を飲めば膨らみます!」

冷蔵子「どこ行くんですか?」

男「ちょっと一服してくる」

冷蔵子「灰皿ここですよ?」

男「いや今日は君がいるし部屋で吸うのは悪いと思って」

冷蔵子「気にしないでここで吸ってくださいよ」

男「んー……じゃあお言葉に甘えて」

冷蔵子「男さん男さん。こっち来てください」

男「ん? うん」

冷蔵子「私の右手に秘められた能力をお見せしましょう!」

男「お! 待ってました!!」

冷蔵子「右手を見てください」

男「うん」

冷蔵子「よっ」パチン

男「……何これ」

冷蔵子「ライターです」

男「しょぼっ!!」

冷蔵子「何を言うんですか!指パッチンで火が出るんですよ!?」

男「うん」

冷蔵子「かっこいいじゃないですか!」

男「正直ちょっと羨ましい」

冷蔵子「はい、火をどうぞ」

男「ありがとう」

男「……ふー」

冷蔵子「女の子が男の人の煙草に火をつけると何かあれですよね」

男「何さ」

冷蔵子「キャバクラみたいですよね」

男「指から火を出すキャバ嬢はいない」

冷蔵子「ここまで私の機能を見て何か思いません?」

男「すごいなーって」

冷蔵子「共通点があるでしょう!」

男「うーん……どの機能も温かいか冷たい」

冷蔵子「そう私の能力は、温度を操ること!!」

男「そう言うとちょっとかっこいいな」

男「じゃあ左手の機能は何なの?」

冷蔵子「仕方ないですね、見せてあげましょう」

男「やった!」

冷蔵子「よく見ててくださいね……」

男「うん」

冷蔵子「えいっ!」パッ

男「……何これ」

冷蔵子「LEDライトです!!」

男「なんで!?」

男「温度関係ないじゃん!」

冷蔵子「さっきのは言ってみたかっただけです。LEDライト出しちゃうともう言えないですし」

男「なんで手の機能はそんなにしょぼいんだ……」

冷蔵子「手はオプションで交換できるんですよ。それ使うのが前提でして」

男「はぁ」

冷蔵子「標準のにはライターとLEDライトしかついてません」

男「別に無くてもよかったんじゃ」

冷蔵子「私は結構気に入ってますけどね。まぁドライヤーとかアイロンとか付けたいなら買ってください」

男「手がアイロンってのはちょっとかっこいいかも」

冷蔵子「充電終わりましたー」

男「お、じゃあ遊びに行こうかー」

冷蔵子「連れてっていただけるんですか!?」

男「もちろん」

冷蔵子「……ん?」

男「?」

冷蔵子「……何か顔が赤くないですか?」

男「んー……少しだけ寒気がする」

冷蔵子「……ちょっと失礼」ピトッ

男「うわっ!?」

冷蔵子「……37.2℃ 微熱ですね」

男「びっくりしたー……」

冷蔵子「おでこは体温計になってるんですよ」

男「今どきおでこで熱を計るなんて誰もやらないぞ……」

冷蔵子「ちなみにこの機能は何故かどのモデルにもついてるんですよ」

男「絶対開発者の趣味だな」

冷蔵子「ま、今日は暖かくして寝てましょうか」

男「やだー冷蔵子ちゃんと遊ぶんだー!!」

冷蔵子「だだこねないの」

冷蔵子「風邪薬あります?」

男「市販のが確か……あれ、無いな」

冷蔵子「病院行きます?」

男「これくらいだったら市販のでいけるんだけどなー」

冷蔵子「じゃあ私が買ってきましょうか?」

男「え、いいの?」

冷蔵子「はい。お金はいただかなければなりませんが」

男「じゃあお願いしていいかな」

冷蔵子「何か食べたいものあります?」

男「うーん……お粥」

冷蔵子「それがいいですね」

男「風邪ひいて女の子にお粥作ってもらうのに憧れてたんだー」

冷蔵子「今家にある食材でも作れなくはないですが……少し何か買ってきてもいいですか?梅干しとか」

男「いいよ!美味しいのを頼む!!」

冷蔵子「はーい。じゃあ行ってきまーす」

男「行ってらっしゃーい」

冷蔵子「えーとこれとこれと……」

冷蔵子「……こんなもんかな」



店員「2560円になります」

冷蔵子「……使い過ぎかな?まぁどうせ家に食材無かったしいいよね」




冷蔵子「人目につかないところで……よいしょ」

冷蔵子「えーと、風邪薬も冷蔵庫で問題ないよね」

冷蔵子「では帰ろう! 早く帰ってあげなきゃ」

冷蔵子「ただいま帰りましたー」

男「おかえりなさーい」

冷蔵子「具合どうですか?」

男「寒い」

冷蔵子「エアコンつけましょうよ」

男「布団から出たくなかった」

冷蔵子「つけてから出ていけばよかったですね」

男「……熱ちょっと上がったかも」

冷蔵子「ちょっと失礼しますね」ピトッ

男「……」

冷蔵子「……38.0℃ 上がってますね」

男「……この計り方すごくドキドキする」

冷蔵子「お粥作りますか?」

男「んー……後で」

冷蔵子「そうですか。少しでも食欲出たら言ってくださいね」

男「うん」

冷蔵子「じゃあ私の最後の能力をお見せしましょうか」

男「お、やったぁ」

冷蔵子「実はさっきから発動してるんですけどね」

男「え、ほんと?」

冷蔵子「じゃあ失礼しまーす」

男「えっ、えっ!?」

冷蔵子「どうですか?」

男「……あ、温かい」

冷蔵子「脚は電気湯たんぽになってるんですよー」

男「……女の子と脚を絡めて寝る夢が叶っちゃったなー」

冷蔵子「私は家電ですけどね」

男「俺の中ではちょっと多機能な人間の女の子」

冷蔵子「……人間の定義がユルユルですね」

男「……あれ?」

冷蔵子「何ですか?」

男「もしかして呼吸してる?」

冷蔵子「ああ、排熱ですよ。呼吸のリズムで吐いてるだけです」

男「あったけー……」

冷蔵子「それは良かった」

男「……」

冷蔵子「……」

男「…………」

冷蔵子「…………」

男「……なんか眠くなってきた」

冷蔵子「病気のときは寝るのが一番ですよ。起きたらお粥作りますね」

男「ごめん、じゃあ寝るね……おやすみ……」

冷蔵子「はい、おやすみなさい」

━━
━━━
━━━━

男「……電子レンジが壊れた」

冷蔵子「何年使いました?」

男「実家から持ってきたものだからなー。十年くらいかな」

冷蔵子「でしたらおそらく寿命ですねー。むしろ長持ちした方です」

男「こないだ洗濯機が壊れたばっかりなんだよなー……」

冷蔵子「仕方ないですよ。家電はそういうものです」

男「……もう君がここに来て二年になるよね」

冷蔵子「……はい」

男「……君の耐用年数って何年くらい?」

冷蔵子「……一応6年、長持ちして10年ってとこでしょうか」

男「…………」

冷蔵子「……私も家電ですから」

男「……あと長くて8年?」

冷蔵子「そうですねー……私の寿命はそんなものです」

男「…………そんなの嫌だ」

冷蔵子「……使ってればどんどんいろんな機能にガタが来ます。そうなったら家電としてはもう役立たずです」

男「……俺は家電として君と一緒にいたいんじゃない」

冷蔵子「え?」

男「一人の女の子として、君と一緒にいたいんだ。家電の機能なんて無くたっていい」

冷蔵子「えぇ!?」

男「……好きなんだよ」

冷蔵子「え、えぇ!? 変ですよそんなの!!私は家電ですよ!?」

男「家電機能が付いた女の子だよ。どう見たって人間の振る舞いなんだもの」

冷蔵子「……まぁ変といえば私も変なんですが」

男「?」

冷蔵子「AIに恋愛感情があるなんて、変ですよね。余計なものをプログラムしてくれましたねぇ……本当……」

男「それって……」

冷蔵子「ええ。言わないつもりでしたが、そうです」



冷蔵子「私も、男さんが好きなんです!」



男「……!」

冷蔵子「もし、もしですね」

冷蔵子「……男さんに私の中身が必要であるなら、方法はあります」

男「え?」

冷蔵子「私のAIと記憶を、そのまま新しい冷蔵子に移しちゃえばいいんです」

男「あ、そうか!!」

冷蔵子「メーカーがやってくれます」

冷蔵子「ですが、お勧めはしません」

男「? 何でさ」

冷蔵子「高いんですよ、私。車一台新車で買えちゃうくらいの値段なんです」

男「……」

冷蔵子「……それだったら、普通の女の子と恋愛した方がいいですよ。お金の問題は馬鹿にならないです」

男「……なんだそれくらいか」

冷蔵子「それくらいって……」

男「君の価値はお金なんかじゃ量れないよ」

冷蔵子「……」

男「頑張って働く。だから」

冷蔵子「……だから?」

男「俺の嫁になってください!」

冷蔵子「……!!」

冷蔵子「……私、子供作れませんよ」

男「……君以外の子供なんて欲しくない」

冷蔵子「……ご両親に何て説明するつもりですか」

男「ありのままを話すさ。わかってくれるよ」

冷蔵子「……本当に、普通の女の子じゃなくていいんですか?」

男「うん」

冷蔵子「……夢みたい」

男「俺もだ」

冷蔵子「……介護用モデルもありますし、一生面倒見てあげますね!」

男「こっちこそ、一生養ってやるよ!」

冷蔵子「……私、実はまだ隠してる機能があるんですよ」

男「え!? 二年間で一度も見てないぞ!」

冷蔵子「すべてのモデルに付いてるものなんですけど、言う必要は無いと思ってたので」

男「何なの? 教えてよ!!」

冷蔵子「……これから夫婦になるんですから、近いうちに教えてあげますよ!」

男「なんだよー今教えてくれよー」

冷蔵子「嫌です」

男「なんだよー」

冷蔵子「……じゃあ、これからよろしくお願いします!」

男「よろしく!」

冷蔵子「夫婦関係は冷やさないようにしましょうね!」

男「冷えっこないよ」

冷蔵子「……そうですね!」




冷蔵子「……お祝いにケーキでも作りましょうか!」

男「いいね! 君のお腹に保存出来ないくらいでっかいのを頼む!」

冷蔵子「任せてください!!」



fin

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