ほむら「「泣いた赤鬼」を慰めてあげたかったの」杏子「…」(169)

見滝原という町に杏子という魔法少女がおりました。

杏子は、見滝原に住む他の魔法少女たち、マミやさやか達と本当は仲良くしたいと思っているのですが、
気持ちのすれ違いから嫌われておりました。

杏子「よお、おまえら、魔女退治に行くのか?」

マミ「……佐倉さん。また縄張りを奪いにきたの?
今日は使い魔退治よ。あなたは魔女以外とは戦わないんでしょう?」

さやか「どうせあなたはグリーフシードが欲しいだけなんでしょう。
あんたみたいな奴、同じ魔法少女だと思いたくないのよね。」

杏子「……いや、だって一度魔力が使えなくなったら
魔女を倒すこともできなくなるし、そしたらグリーフシードも手に入らなくなっておしまいじゃねえか。
使い魔退治にいちいち力入れたって意味ないだろ?
だからそのなんならあたしもてつだ……」

マミ「何をたくらんでいるのか知らないけど、もう私たちに関わらないでちょうだい」

さやか「それ以上近づかないでよね!」


杏子「何だと!?」

まどか(びくっ)

さやかの友人であり、普通の女の子のまどかも杏子を怖がって敬遠しておりました。

マミ「鹿目さん、大丈夫よ。あなたに手出しはさせないから」

さやか「ふん、あたしたち二人には勝てそうにないから、普通の人間のまどかにすごむの?
程度が知れるわね。」

まどか(杏子ちゃんって、やっぱり怖い人なのかなぁ)

杏子「そんなんじゃねえよ!…………ちっ! うざい奴らだ。
勝手にしな! せいぜい二人で頑張って使い魔を狩っていろよ」

さやか「ふん! 二度と来ないでよね!」

その日も杏子はマミたちと仲たがいして、去っていきました。


杏子は自分の気持ちが分かってもらえないのが悔しくて、悲しくてたまりませんでした

杏子(また喧嘩になっちまった。…………なんでこうなっちまうんだろ)

杏子(でもあいつらだってあそこまで言うことないのになぁ)

杏子(…………マミには昔世話になってたんだよなぁ。
それなのに、父さんたちが死んだときのいら立ちをぶつけて、気まずくなったまんまだし。

さやかは最初の印象が悪かったからなぁ。
…………昔のあたしと似てるから、つい絡む感じになっちまったし。
でもだからこそ、なんか放っておけない気がするんだよなぁ)


そこへ、ほむらというもう一人の魔法少女がやってきました。

ほむらはこの街にもうすぐやって来る強力な魔女、「ワルプルギスの夜」を迎え撃つために
杏子に協力を頼み、それから時折、一緒に過ごすようになったのでした。

ほむら(どうにかお菓子の魔女はマミたちと接触する前に倒せたけれど、
美樹さやかは結局契約してしまった…………。この先どうしたものかしら・・・あら?)

ほむら「どうしたの? こんなところで。なんだかずいぶんしょぼくれているけれど。
おなかでもすいているの?」

杏子「…………」

ほむら「?」


杏子「いや、今日魔女狩りしてたらさあ、マミたちと出くわしちまってな。

あいつらがグリーフシード持ってない使い魔なんて狩ろうとしてるから
そんなこと意味ないって言ったら、喧嘩腰になってきてさ・・・」

ほむら「…………」

杏子「マミの奴もさ、正しい魔法少女はこうあるべきだ、
あなたは間違ってるって決めつけてきやがるんだよ。馬鹿じゃねえのか?

…………何でもかんでも救おうとして自分一人で抱え込みやがって
いつか限界が来て、心も体もぽっきり折れちまうぜ、あれじゃあ」

ほむら「?」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/10/28(日) 10:46:35.74 ID:T/Mo2CNeP

見滝原という町にマミという魔法少女がおりました。
マミは仲間と一緒に魔獣を退治して、街の平和を日々守っておりました。

マミ「……今日も瘴気が濃いわね。暁美さんたちに手伝ってもらえばよかったかしら」

QB「頑張って、マミ!」

キュウべえはマミを契約によって魔法少女にした張本人です。

マミは交通事故にあって、両親を失った際に、自分も死に瀕したため
生き延びることをキュウべえに願い、代わりに魔獣を退治する魔法少女になったのでした。


杏子「それで、最近契約したばかりのさやかってやつも馬鹿な奴でな、
他の人間を救うために魔法少女になったんだと!

…………人のために願いを叶えて自分はどうなってもいいなんて思っていたって
絶対心のどこかじゃ、自分だって報われたいと思ってんだよ。
そのうち無理が来るね。見ていられないぜ、まったく」

ほむら「??」

杏子「そのうえ、その二人を心配してついて来ているまどかってやつが
またどんくさいんだ。

・・・ああいう大人しそうな奴が魔法少女の戦いに首突っ込むなよな。
怪我でもしたら目も当てられねえっつうの!」

ほむら「???…………ええっと」


杏子「なんだよ?」

ほむら「もしかして、本当はみんなと仲良くしたいの?」

杏子「いっ! いつあたしがそんなこと言ったよ!?」

ほむら「…………だって悪口言いながら、なんだかんだ心配しているじゃない」

杏子「あのな、あたしは元々この見滝原っていう絶好の狩場が欲しくて来たんだよ。
なのに魔女になる前の使い魔まであいつらが狩ろうとするから (ゴニョゴニョ)」

ほむら「それ本気で言っているのかしら?」


杏子「な、何でだよ?」

ほむら「だって、そもそもあなたには元々あなたの縄張りが、別の狩場があったんでしょう?

いくら見滝原がいい魔女の狩場って言っても、もう私も含めて4人も魔法少女がいるのよ?
その時点でもうここに居るメリットなんて、有って無いようなものだわ。
前の街に戻った方がいいくらいかも知れない。

…………といって、マミたちを力ずくで無理やり排除するわけでもない」

杏子「いや、何度か衝突はしてるぜ?」

ほむら「口論が行き過ぎた時だけでしょう?

本気で排除しようと思ったら、油断して寝ているときでも、
魔女退治で力を使い果たした時でもいくらでもやり様はあるのに、そうしないで、ただただ、マミたちにちょっかいを出している。

本音は、見滝原という狩場ではなく、マミたちのほうが気になっているんじゃないのかしら?」


杏子「…………ふん」

杏子は顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまいました。

ほむら(…………本当は仲良くしたいのに言葉にできない、か)

ほむらは杏子をじっと見つめました。
友達になりたいのに素直な態度をとれないその姿に、身につまされるものがあったのかもしれません。

ほむら「…………ねえ、杏子」

杏子「あん?」

ほむら「もし良かったら、あの子たちと仲良くなれるきっかけを私が作りましょうか」

杏子「えっ? どうやってだよ?」

ほむら「別に複雑な話ではないわ。
私が縄張りを奪いにやってきた敵対的な魔法少女を演じるの。そしてマミたちを苦しめる。
それをあなたが正義の魔法少女として助けに来て、やっつける。

そうしたらきっと、マミたちもあなたと友達になってくれると思うわ。
…………簡単でしょう?」


杏子「で、でもそんなことしたらあんたが嫌われちまうぜ?」

ほむら「私はいま現在でも、マミたちから何を考えてるかわからないからって警戒されているわ。
…………まどかに近づこうとするキュウべえを排除しようとしたからなんだけど。

だからまあ、私のことは気にしないで。」

ほむらは優しく微笑んで杏子に言いました。

杏子はほむらと出会って、数週間ともに過ごし、一緒に魔女退治をしたこともありましたが
ほむらはどこかで他人を自分の中に踏み込ませない、かたくななところがありました。
けれども、杏子は今のほむらの目に、これまで彼女が見せようとしなかった暖かい何かを感じるのでした。

杏子「う、うん」

ほむら「よし。…………そうと決まれば細かい打ち合わせをしましょう」

ほむらは杏子に芝居の段取りを説明しました。


数日後、マミたちはいつものように魔女狩りに出かけました。

マミ「このあたりに魔女がいるみたいなんだけど」

QB「うん、間違いないね」

さやか「この路地ですかね?」

まどか「二人とも気を付けてね」

そこへ物陰からほむらが現れて立ちふさがりました。

さやか「転校生!?」
まどか「ほむらちゃん!?」

ほむら「……その魔女は私が狩らせてもらうわ」

なんで一行目あけてんの?


マミ「暁美さん?何のつもり?私たちと一緒に魔女を狩るということ?」

ほむら「いいえこの先、見滝原の魔女はすべてわたしがもらうということよ。
貴方たちはすっこんでいてちょうだい」

QB「暁美ほむら、君は一体何を考えているんだい?」

ほむら「ふん!」ドキューン!

QB「・・・」(ドサッ)

マミ「キュウべえッ!なっ!何をするのッ! ゆるさないッ!」

ほむら「…………私はキュウべえが大嫌いなのよ。

何も知らない少女を利用するために近づいてきて、優しいふりをする態度に虫酸が走るの。
その淫獣を私に近づけないでちょうだい」

物陰で様子を見ていた杏子も迫真の演技に感心するばかりです。

杏子(…………すげえなぁ、ほむら。何というかまさに悪役だ!)

マミ「なんですって? あなただって願いを叶えてもらったのに、その態度は……」

ほむら「うるさいわね」

マミ「……なんですって?」

ほむら「胸にばかり栄養が回って、言葉も通じないほど頭が悪いのかしら?

あなたみたいに自分を盲信して、正義の味方気取ってるやつに限って
その価値観を押し付けて、周りを道連れに心中しようとしたりするのよね。

いい迷惑だわ、まったく」

マミ「…………暁美さん、三途の川の渡し賃は持っているのよね?」

さやか「て、転校生、あんたいくらなんでも言葉が過ぎるわよ」

ほむら「偽善者に意見されたくないわね」

さやか「ぎ、偽善者? あたしが?」

ほむら「あなたみたいに、無理して善人ぶってるやつに限って
自分に都合の悪い展開になると、とたんに周りに泣き言や不満を漏らし始めて
あげくに絶望して、大暴れするんだから。本当に参るわね」

さやか「何をおお!」

まどか(ほむらちゃん…………なんかすごくとげとげしい。
こんなひどいこと言える娘だったの?)


マミ「どうやら実力で排除するしかないみたいね!」

さやか「二度と偉そうな口叩けないようにしてあげる!」

マミたちはほむらの挑発に乗って、魔法少女に変身してほむらに襲いかかりました。

さやかは剣で斬りかかり、その背後からマミがマスケット銃でほむらを狙います。
ほむらはあくまでも挑発的な態度を崩しません。

さやか「くらえ!」

ほむら(私がさやかの攻撃をよけようと右に避けると…………)

マミ「はっ!」

ほむら(…………おっと、マミが攻撃。

たぶんマミの攻撃をよけるとさやかが切りかかる。
…………つまりさやかはマミの射線に入らないようにしつつ、お互いの攻撃範囲をフォローしあっている。
単純だけど、この狭い路地裏では有効なフォーメーションね。…………だけど)


さやか「逃がさない!」

ほむら(時間停止)カチッ

…………

マミ「!! ちょっと、美樹さん!! なんで私に向かってきてるの!?」

さやか「あれ? あれ!? わたし確かに、転校生に斬りかかったのに?」

マミ「?? あれ、暁美さんは?」


ほむら「…………こっちよ」

マミとさやかが声の聞こえた方へ振り向いた瞬間、激しい音と閃光が二人を襲います。

カッ!!
ビイイイイイイイイン!!

マミ「う、まぶしい!」

さやか「くっ!(音で頭がくらくらする!)」

ほむら(…………スタングレネードよ、夕暮れの路地裏の薄暗さに慣れた目には効くでしょう)

ほむらは、時間を止めている間につけていた耳栓と対閃光ゴーグルを捨てると、
そのまま路地裏の奥へ走りました。

マミ「待ちなさい!」


マミはつい逃がすまいと追ってしまいます。
しかし目がくらんでしまったために、自分の足元に気がまわりませんでした。

マミ「あれ、今何か足に…………」
ブァサッ!

マミの足元に大きなネットが仕掛けられており、ネットにつながっているワイヤーが引き上げられたのでした。

マミ「くっ身動きが取れない! でもこんなネット、魔力で強化した体なら引きちぎって…………」

ほむら「無駄よ。軍用に開発された特殊繊維が編みこまれているうえに、私の魔力で強化してあるの。
…………それと無理に引っ張ると電流が流れるわよ」

マミ「うあああああ!いたたたた!しび、れ!…………」

ほむら(…………ひどいことを言ったうえに、こんな目にあわせてごめんなさいね、巴マミ。
でもあなた、まともに戦えばわたしより強いから。
命を奪わずに負かそうと思ったら、こうするしかなかったのよ)

さやか「マミさあああん! 畜生! マミさんのかたき!」

さやかも後を追って、ほむらに斬りかかります。

ほむら(…………美樹さやか)

さやか(ズルっ)「うひゃあ!こんなところにバナナの皮が!」

さやか(クイッ)「つり下がっていたひもにつかまったら、上から金だらいが!」

さやか(ゴーーン)「・・・きゅうううう」

ほむら(そこいくと、あなたの方は単純で実に助かるわ)


まどか「ほむらちゃん! ひどいよ! いくらなんでもやりすぎだよ!」

ほむら「…………邪魔者は消えた」(クルッ)

まどか(びくッ)

ほむら「まどかああああああ!!」

まどか「いやああ! 何するの! ほむらちゃん!!」

ほむらはまどかの体にめいっぱい抱きついてやりたい放題です。

ほむら「ふふふふ! かわいいわ、まどか!! 触らせて! もませて! なめさせてえええ!」

ほむら(・・・ごめんなさい、まどか。
本当はこんなことやりたくはないの。でも、私が悪役になることでみんなの心を一つにまとめることが出来る。

そして私以外の皆が一致団結して、ワルプルギスの夜に立ち向かえば、勝機が見えるかもしれない。
みんな助かるかもしれないの…………)

まどか「きゃあああ!!! だめだよお!! 下着の中に指入れないで!!」

ほむら(許してちょうだい、まどか。これは仕方のないことなの。そう仕方のな……)


ほむらの腕の中にいるまどかの表情が、ほむらの目に飛び込んできます。

まどかは、顔を恥ずかしそうに桜色に染めながら、必死に制服のスカートをおさえようとしますが
未成熟ながら健康的な少女の肢体と脚線美は隠しきれません。
怯えた子ウサギのような目はかすかにうるんでいます。
また純白の下着がちらちらと見えて、見るものの心の中の何かを刺激します。

ほむら「うふふっふふ!! 顔を赤らめているところも可愛いわ!
ああもう、そんなに暴れないでちょうだい! パンツが脱がせないわ!」

ほむら(それはそれとして…杏子、もうしばらく、そうあと30分くらい遅れて登場してもいいかも)

まどか「いやああああ!!!」


杏子は自分のために汚れ役に徹してくれるほむらに感動して胸が熱くなるのでした。

杏子(ほむら…………、あたしのためにそこまで嫌われ役を演じてくれるなんて!
しかもなんて名演技なんだ!

事前に打ち合わせしたあたしでさえ
「もしかして、日ごろの不満と本音をぶちまけつつ、ストレス解消しているだけなんじゃないか」と一瞬疑っちまうくらいだぜ!)

杏子(いや、いかんいかん。感動している場合じゃない。あたしもほむらの心意気にこたえなきゃな)

杏子「暁美ほむら! 狼藉はそこまでだぜ!!」

ほむら「むっ、何者!?」

マミ(・・・この声は)
さやか(・・・まさか)
まどか「杏子ちゃん!」

路地裏のビルの上から颯爽と杏子が降り立ちました。

ほむらはまどかを放して、杏子と向かい合います。

ほむら「…………さんざんこの子たちと敵対していたあなたが、どういう風の吹き回し?」

杏子「確かにこいつらとは考え方もあわないこともあるさ。

でもな、マミのまっすぐな信念やさやかのひたむきさは、
あたしにはどう頑張っても手に入らない、すごくまぶしいものに見えたんだよ。

そいつを何も分かってないあんたに馬鹿にされたり、踏みにじったりしてほしくない。それだけだよ」

マミ(!!佐倉さん…………)
さやか(杏子…………)

ほむら「ふ、愚かな。そんなことのために私を敵に回すというのね?
いいわ、地獄で後悔させてあげる」

杏子「そう簡単にいくかな?」

杏子は槍を構えました。

ほむら「ふん」カチッ(時間停止)

ほむらは気が付くと背後に回り、銃で杏子を狙ってきます。

杏子「おっと、不意打ちとはやってくれるな。
(…………いつもながらどうやって瞬時に移動してるんだろ?)

でも、当たらないなら意味がないぜ?」

ほむらは、続けざまに銃で狙いをつけようとしますが
杏子はそれをすべて狙いが定まる前に斬りかかって、ほむらの動きをかき乱します。

さやか「すごい!」

マミ「…………完全に暁美さんの動きを読み切っている!」

ほむら・杏子(…………だって打ち合わせしたとおりだもん)


ほむらが銃を構えると、杏子が斬りかかり、ほむらがそれを受け流す、そんな状況がしばらく続きました。

やがて、ほむらが肩で息をつき始めたところで、
杏子が(実際にはかする程度ですが)見た目は派手に槍をほむらに叩きつけました。

ほむら「くっ! これ以上やりあっても時間の無駄ね。いいわ、今日はあたしが引いてあげる」

杏子「おい、待て!」

ほむらが投げた手榴弾により、一瞬あたりは煙につつまれました。
そして煙が収まった時には、ほむらの姿は消えていました。

杏子「逃げられたか…………」

杏子はほむらがいなくなった後、マミたちの所へ行って介抱しました。

杏子「大丈夫か、お前ら。怪我とかしてないか?」

マミ「…………」
さやか「…………」
まどか「…………」

杏子(う、もしかして演技がわざとらしかったか?
…………それともタイミングよく現れたから怪しまれてる?)


マミ「佐倉さああああああん!!!」(ひしっ!)

杏子「お、おい!」

マミは杏子に力いっぱい抱きついてきました。

マミ「今まで冷たくしていてごめんなさい!
でも! でも私! いつか佐倉さんが正義の心を取り戻してくれるって、ずっと信じていたの!!」

さやか「あはは、なんか助けてもらっちゃったみたいね。
…………あたし、あんたの事ちょっと誤解してた。ごめんね」

まどか「杏子ちゃん! 助けてくれてありがとう!
あたしお嫁にいけない体にされちゃうかと思ったよお!!」

杏子(意外とみんな単純だった!!!)


杏子「まあ、そのなんだ。あたしも本当はお前らと仲良くしたかったんだよ…………。

それで、その使い魔の退治にしたって3人で片付ければ、1人あたりの魔力の消耗はそれほどの負担にならないし、
上手く使い魔を追い込めば、魔女の居場所がつかめるかもしれないだろ?

だから、もし良かったら、これからはあたしも、その一緒に…………」

マミ「もちろんよ! 一緒に魔女退治しましょう!」

まどか「杏子ちゃんも今日からあたしの友達だよ!」

さやか「よろしくね、杏子!」

それから、杏子の楽しい日々が始まりました。

マミと必殺技の練習をしたあとケーキを一緒に食べたり、
さやかの家で泊まり込みで遊んだり、一緒に楽しい時間を過ごすようになりました
そして、杏子はまどかとも親しくなっていきました。

まどか「今日、うちのパパに料理教わる予定なんだけど、杏子ちゃん食べに来ない?」

杏子「いいのかよ? それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

マミ「ちょっと待ってちょうだい! 鹿目さん!
今日は、佐倉さんは私と必殺技の練習をすることになっていたのよ!?」

さやか「何いってるんですか、マミさん? 杏子は本当はあたしと遊びたがっているんですよ?
杏子、今日はあたしとの家に来るのよね?」

まどか「そんなぁ、私が最初に約束してたのに…………」
さやか「杏子! 私と遊ぶよね!」
マミ「いいえ! 佐倉さん! 私でしょう?」


杏子「おいおい、待ってくれよ。みんなの気持ちは嬉しいけど、あたしの体は一つしかないんだぜ?

まどかの家でごちそうになった後で、マミの約束はちゃんと守るから! な?
…………さやか、遊ぶのはまた今度にしようぜ」


さやか「そんな! 杏子この前、あたしのうちに泊まった時、
二人でベッドの上でプレイしてあんなに激しく盛り上がったじゃない!」

杏子(…………TVゲームの話だよな、それ)

マミ(私の佐倉さんとベッドの上で? 盛り上がった?)

マミ (ピクピク)「美樹さん。この前佐倉さんのことについてはお互い抜け駆けはしないって私と約束しなかった?」

さやか(ニヤニヤ)「いやあ、約束はしましたけどね。でも杏子の方から私を求めてきたんだから仕方ないですよね」

マミ「何が「求めてきた」よ。どうせ佐倉さんの優しさに付け込んであなたが強引に誘ったんでしょう?
…………悪いけれど、佐倉さんと一番付き合いが長いのは私なのよ。

佐倉さん。今日は私の家に泊まらない? 私は一人暮らしなんだから気兼ねすることはないわ。
一緒にお風呂で洗いっこしましょう!」


さやか「杏子。この前あたしとずっといたいっていったよね?」

マミ「佐倉さん。私のこと誰よりも信頼してるって言ってくれたわよね?」

まどか「杏子ちゃん、この前あたしに、
「何があっても絶対に守ってやる、危ないことがあったらあたしに言え」って言ったもん。
あれ、私を一番大事に思っているってことじゃないかな?」

マミ「いいえ、残念だけど佐倉さんが一番大事なのは私よ、そうよね佐倉さん?」

さやか「そんなことないよね? あたしだよね!杏子!」

まどか「杏子ちゃん! はっきりして!」

杏子「…………いや、それは、ほらその、あれだよ。

あたし、家族もいないし、学校にも行ってないから、誰かとこんな風に過ごすのが本当にかけがえのない時間なんだ。

…………だからお前らと過ごしてるとすごく楽しいし、お前らみんなが家族みたいに大事なんだよ。
誰か一人でもいなくなったら、胸が張り裂けそうっていうかさ。

だから、誰か一人なんて選べないし、あたしのためにお前らが喧嘩するのは
…………なんか辛いんだ。
もしみんながあたしのことを思ってくれてるんだったら、その、前みたいに仲良くしていてほしいんだ。」

マミ「…………」
さやか「…………」
まどか「…………」

マミ「……私たちって馬鹿ね。
佐倉さんは、私たち全員の事、思ってくれていたのに、私たちは自分のことばかり考えて……。

もはや、佐倉さんにはかなわないわね。魔法少女としての実力だけでなく人間としての器でも!!」

まどか「あたし、杏子ちゃんと同じ空気吸えるだけで幸せだよお!!」

さやか「なんて健気なのかしら! 杏子!
お嫁さんになって! いやむしろお嫁さんにして! 抱いて! 私の事メチャクチャにして!!」

杏子「おいおい、お前らも大げさだなあ。あたしなんか大したことないって!」

杏子(ホント夢みたいだな、こんな楽しいことがずっと続けばいいのになぁ。
…………これもほむらのおかげだな、あれきり会っていないし、ちゃんとお礼言わないとな)

杏子がマミたちとすっかり仲良くなって数日後、街を歩いていた杏子は、ほむらと偶然出会いました。

ほむら「あら、杏子。…………どう?その後はマミたちと仲良くやっているの?」

杏子「ああ。…………あのさ、あたしあんたに言いたいことがあったんだよ。」

ほむら「言いたいこと?」

杏子「あのな、その…………」

杏子は、誰かが何の得にもならないのに自分のために何かをしてくれるという状況が
久しくなかったので、お礼を言うのが照れくさくてなかなか口にできません。

ほむら「?」

杏子(いうんだ。…………あたしのために本当にいろいろありがとうって!)

その時ほむらの背後から、マミとさやかが現れるのが杏子に見えました。

マミ「あら、佐倉さんと…………暁美さん?」

さやか「なんで杏子があんな奴と一緒に…………」

杏子「!!(まずい!ほむらと親しくしていると思われたら芝居がばれちまうかも!)」

バキッ!

気が付いた時には杏子は力いっぱいほむらを叩いていました。
そして全く言うつもりのなかったことを口走っていました。

杏子「これからはあたしたちに関わるんじゃねえぞ! このクズ野郎!」

ほむらはいきなり叩かれて膝をつきました。
そしてびっくりして、信じられないものを見る目で杏子を見上げました。

さやか「何? こいつまたあたしたちにちょっかい出すつもりだったの?」

マミ「よくもまあ、私たちの前に顔を出せたものね?」

マミたちが近づいてきました。
ほむらは一瞬遅れて、状況を理解したのか、立ち上がってうつむいて言いました。

ほむら「そう。それじゃ仕方がないわね。」

ほむらは杏子に背を向けて去っていきました。
その背中は泣いているように見えました。

マミ「大丈夫だった? 佐倉さん?」

杏子「あ、ああ」


杏子は芝居がばれないようにするためとはいえ、ほむらにひどいことを言ってしまったことを後悔していました。
早く謝りに行こうと思っていたのですが、その日はマミたちに誘われてしまい、結局会いに行けませんでした。

杏子はマミたちと過ごしていても、心の片隅ではほむらのことが気になっていました。
しかしタイミングを外してしまうと、今度は謝る勇気が出てきません。
1日、2日と時間が過ぎて、とうとう一週間が過ぎました。

杏子はその日、さりげなくマミたちに聞きました。

杏子「なあ、ところで最近ほむら見なかったか」

マミ「え、あの子? 知らないわ?」

まどか「先週から無断欠席が続いてるんだよ」

さやか「どうせあれでしょ、
杏子に負けてほかの街に魔女狩りの縄張りを探しに行ったんだよ!
…………あんな奴、気にすることないって」

杏子「そうか」

杏子(あいつ、助けた人間に、あんなこと言われてどんな風に思ったのかな…………。
あれがあたしの本音じゃないってわかってくれてるよな、きっと)


その日の夜、杏子はほむらの家を訪れました。

杏子「こんな時間だっていうのに外灯もついてない。…………部屋の明かりもついてない?
どうなってんだ? 出かけてるのか?」

しばらく家の前で待ちましたが、ほむらは帰ってくる様子がありません。

杏子「もしかして、病気で寝込んでる? 部屋でずっと動けないのか?」

杏子は意を決して家の中に入ることにしました。
魔法で窓のかぎを開けて中に入ります。

しかし中は家具は残されているものの、生活に必要な消耗品はほとんど空っぽでした。

杏子「?? 誰も住んでないような感じだな、あれ? これは…………」

杏子は一枚の封筒を見つけました。表に『杏子へ』と書かれていました。
それはほむらの置き手紙でした。

『この手紙を読んでいるころには、たぶん私は遠く離れた場所にいると思う。
何も言わずにあなたの前から姿を消す非礼をどうか許してちょうだい。

だけど、もし私と一緒に居たり、普通に話しているところをマミたちに見られたら
芝居をうったことがばれてしまうかもしれない。

だからしばらくこの街を離れることにするわ。どうか、あなたは幸せに暮らしてね』

杏子「!!…………」

『マミの事だけれど、
彼女は、先輩として弱気なところを見せてはいけない、周りを導く「立派な魔法少女」でなくてはいけないと考えているの。

結果、その考えに彼女自身が縛られて、何もかも抱え込んで、無茶をすることがあるかもしれない。

彼女に必要なのは、後ろについてくる後輩ではなく
対等な存在として、隣に立って戦い、背中を守る相棒なの。

私ではその立場にはなれなかったけれど、あなたならできると思う。

どうか彼女を支えてあげて』

杏子「…………」

『さやかはマミにあこがれて、
見返りを求めない正義の魔法少女であろうとしている。

でも、あなたも指摘したように、あの娘はそこまで割り切ることはできない。

魔法少女が人のために願いを叶えても報われたりはしない、
その現実にさやかが押しつぶされそうになる時が来るかもしれない。

だからもしその時が来たらあなたが、さやかの力になってほしい』

杏子「…………」


『それから、まどかだけれど
あの娘はいつも誰かの役に立ちたいと考えている本当に優しい子なの。

だから、いつか自分を犠牲にしてでも、大事な友達を救いたいと考えて、魔法少女の契約を結ぼうとするかもしれない。

どうかそうならないように、あの娘の普通の女の子としての生活を守ってあげてちょうだい』

杏子「…………」

『杏子、あなたは、マミのように両親を亡くして孤独に戦い続ける苦しみも
さやかのように報われないのに他人のために願いを叶えてしまったつらさも知っている。

あなたならきっと誰よりも強くて優しい魔法少女になれると私は信じている。

あなたと過ごした時間は短かったけれど
私はその間、本当に久しぶりに他人と自分の気持ちを共有できた気がするの。
あなたといて楽しかったわ。
また会える日が来るかわからないけれど、どうか元気でいてちょうだい。

あなたの腹心の友 暁美ほむら』

杏子「…………」


杏子は黙って手紙を読みました。読んだ後でもう一度、隅から隅まで読みました。
そしてその場にへたりと座り込みました。

杏子「…………あたしは、あたしはとんだ大馬鹿だ。なんでもう少し早くほむらに会いに行こうとしなかったんだ」

杏子の頬を涙が伝って、手紙の字をにじませました。

杏子「…………ほむらのやつ、何が腹心の友だよ。

礼の一つくらい言わせないで行っちまったくせに。ちくしょう。…………ちくしょう!」


杏子は、ほむらの家を飛び出して、そのまま走りだしました。

杏子がほむらと過ごした時間は、ほんの数週間でしたが、それでも家族を亡くし長い間一人で生きてきた杏子にとって
その時間が自分にとってどれほど大切なものだったのか、杏子は気づくのでした。

一緒に作戦を立てて、魔女退治をしたこと。
おなかをすかせていたときに食事をおごってもらったこと。

一つひとつの思い出が、杏子の頭の中に浮かんでは消えていきました。

杏子「ほむら…………」

杏子は何度もつぶやくように、姿を消してしまった友達の名前を呼びました。

その日から、杏子の中で何かが変わりました。


ある日のこと、マミは魔女と一人戦っていました。
その魔女は攻撃力こそ強くありませんが、幻惑的な動きでマミを翻弄するのでした。

マミ(くっ!…………この魔女、煙幕みたいなのを出すから、マスケット銃の狙いがつけられない!
やっぱり美樹さんたちに手伝ってもらえばよかったかしら。
でも『今日はエリアごとに分かれて手分けしてパトロールしよう』って言い出したのは私だし。

…………それに、私だってリボンを使えば接近戦ができないわけじゃない!)

マミは鞭のようにリボンを扱って、魔女が吹き出した煙幕に飛び込みました。

マミ「もらった!……え?」

煙幕の中にいたのは使い魔でした。
いつの間にか煙幕から抜け出した魔女が真上からマミに襲いかかります。

杏子「あぶねえ!」

杏子が現れて、マミを襲う魔女を真横から串刺しにしました。
強力な奇襲に魔女は消滅します。

マミ「佐倉さん!」

杏子「……マミ、魔女と戦うなら無茶しないで、あたしにも声をかけてくれよ。」

マミ「え、でも、私その」

杏子は照れくさそうに顔をかきながら言葉をつづけました。

杏子「……その、昔、あんたはあたしに戦い方を教えてくれただろ。
だから、今度はあたしがマミの力になりたいと思っているんだ。

もう、あたしには先輩としての見本を見せなくていいんだよ。
きつい時にはあたしを頼ってくれよ。絶対に助けに行くから、さ」

マミ「…………佐倉さん」

マミは少しうつむいて、顔を赤くした後、声をつまらせて「ありがとう」と小さく答えました。


また別のある日の事、
さやかは、友人の仁美が恭介に恋心を抱いていると知ってしまいました。
仁美はさやかに自分が恭介に告白することを告げ、
もし恭介のことが好きなのであれば1日だけ待つとさやかに言うのでした。

さやか「明日の放課後に上條君に告白します、か。どうしたらいいんだろ」

まどか「さやかちゃん、仁美ちゃんとの話ってもしかして…………」

さやか「まどか、あたし……。後悔しそうになっちゃった。
あのとき、仁美を助けなければって、ほんの一瞬だけ、思っちゃった。 正義の味方失格だよ…………。

このままじゃ、仁美に恭介とられちゃうよ……でもあたし、何もできない」

杏子「何を悩んでるんだよ!?」

まどか「杏子ちゃん?」

さやか「杏子……だって、あたし魔法少女なんだよ?
普通の人には隠して魔女と戦い続けないといけないわけだし。説明したくたって、魔女なんて普通の人には見えないし」


杏子「魔法少女として戦いながら恋愛なんてできないってことか?
親しい人に隠し事を続けることになるからか?」

さやか「…………うん」

杏子「嘘だな」

さやか「え」

杏子「本当はお前は怖いんだ。
好きな人のために今までやってきたけれど、自分のことを向いてくれる保証なんてない。
気持ちを伝える努力をする前から結果を知るのを怖がってる。魔法少女のことは言い訳だ」

さやか「杏子」


杏子「さやか、自信を持てよ。おまえはいい女だって!
お前の優しさだって、そいつにきっと伝わってると思うぜ。
その恭介ってやつは、お見舞いに来ていた幼馴染に何の恩も感じない薄情な奴なのか?」

さやか「そんなことない!……と思う」

杏子「それじゃあ、喫茶店でも公園の散歩でも二人きりになれる時間を作ってくれるように頼めばいいさ。頑張って気持ちを伝えてこい。

…………いいか、今伝えなかったら、一生後悔するかもしれない。
「あの時伝えていれば」なんて気持ちをずっと抱えるよりも、勇気を出して前へ出るんだ。
そりゃあ、良い結果が出るとは限らないけど、確実なのは何もしなければ何も手に入らないってことだろ?」

さやか「杏子…………」

杏子「……もしお前の気持ちが報われなかったら、そん時はあたしがいつまででもそばにいてやるから、さ。
あたしじゃ役者不足かもしれないけど」

さやか「あはは、杏子が私をお嫁にもらってくれるんだ?」

杏子「…………ふん。
まあ、今日は魔女退治はあたしとマミで行く。おまえは告白のセリフでも考えとけ」

さやか「うん!」

さやかは笑って、うなづきました。

まどか(……杏子ちゃん、すごい。さやかちゃんを勇気づけちゃった)

またある日のこと、まどかは杏子の言動を思いだして、考えこむのでした。

まどか「杏子ちゃん、最近頑張っているよなぁ。魔女退治もして、マミさんとさやかちゃんを支えてあげて。
あたしもあんなふうに役に立ちたいけど…………」

QB「だったら、僕と契約して魔法少女になったらどうかな?」

まどか「キュウべえ!?」

QB「まどかが魔法少女になって、皆を助けられれば魔女退治もはかどる。
きっと杏子もまどかが魔法少女になったら喜ぶかもしれないよ?」

まどか「杏子ちゃんも喜んでくれる?…………そっか。
よし! わたし決めたよ! わたし、皆を助けるために魔法少女になるよ!」

QB「本当かい? それじゃあさっそく……」

杏子「杏子キイイイーック!!」

QB「ひでぶ!」

杏子「まどか、あたしはあんたに魔法少女になってほしいなんて思ってないぞ!」

まどか「え、でも、わたし」

杏子「なあ、まどか、あたしら魔法少女にとって一番つらいことは何だかわかるか?」

まどか「一番……つらいこと?」

杏子「……一生懸命、戦っても誰も普通の奴らはあたしらのことを知りもしないし、感謝もしてくれないってことさ。
まあ、魔女は普通の奴には見えないから仕方ないけど」

まどか「…………」

杏子「でも、お前が、魔法少女じゃない普通の女の子のお前が、あたしたちの戦いを知っていてくれる。
それが、あたしやマミたちにとっての救いになるんだ」

まどか「救い?」

杏子「そうさ。まどかは、あたしたちが守り、やがて帰るべき平和な日常の象徴みたいなもんさ。
あたしらが船ならまどかが帰るべき港だよ。
だから、お前には普通の女の子として日常を過ごして普通の幸せをつかんでほしいんだ。」

まどか「杏子ちゃん…………」

杏子「わかってくれたか?」

まどか「うん!わたし契約するのはやめるよ。
…………でも約束して。何があっても絶対わたしの所に帰ってくるって。
わたしたちずっと一緒だよ!」

杏子「ああ。まどかを一人になんかしないさ。マミもさやかも同じ気持ちだよ、きっと」

QB(…………何だか今回、僕ひどい目にばっかりあってないか?)

杏子はその後も、マミを助け、さやかを支え、まどかを守り続けました。
そして時折、一人になったときは、ほむらのことを想いました。

ほむらが姿を消してしまったのは、
マミたちと杏子との関係を壊してしまうことを心配してのことなのだから、
自分がマミたちと強い絆を作れれば、
ほむらが思ってくれたような「誰よりも強くて優しい魔法少女」に自分がなればきっと帰ってきてくれる、
共に最強の魔女「ワルプルギスの夜」と戦う約束をしたのだから、その時までにはきっと戻ってくると信じていたのです。

しかし、ほむらは姿を見せないまま、「ワルプルギスの夜」との戦いが迫るのでした。

これから読んでみようと思うんだけど、面白い?

>>146
ゴミだから読まなくていいよ

とうとう、見滝原を「ワルプルギスの夜」が襲来する日がきました。

水平に回転する巨大な歯車の下に異形の貴婦人が逆さまにぶら下がった、不気味なその姿は、普通の人間には見えません。
しかし、その恐ろしい力は、現実世界にも巨大な暴風雨として顕現して、普通の人々の生活を脅かすのでした。

嵐の中、三人の魔法少女は懸命に戦いを挑みました。

さやか「うわあ!」

マミ「美樹さん!大丈夫?」

さやか「はい! どうにか。…………でも、使い魔が倒しても倒しても、わいて出てきて
これじゃきりがないですよ!」

杏子「ああ、まずいな。魔女本体ははるか上空。
向こうは一方的に衝撃波みたいなのを飛ばして、攻撃してきてる。
なのにこっちはさっきから攻撃をあてるどころか、使い魔の相手に手間取って近づくことすらできない。
このままだと、あたしたち、体力も魔力も削り殺されちまう……」

杏子(……だけど、まどかとこの街はあたしがほむらから託されたんだ。あいつが帰ってくるまであたしが守り抜いて見せる!)


杏子「マミ! さやか! あたしに作戦がある!一度引くぞ!」

マミ「作戦?」
さやか「了解!」

杏子たちは一度「ワルプルギスの夜」の攻撃範囲から少し離れた、ビルの中に逃げ込みました。

杏子「いいか? 魔女本体の攻撃は今まで見る限り、横方向か、下方向だ。
推測だが、あいつは自分の上方向には攻撃が出せないのかもしれない」

マミ「…………」

杏子「そして、あいつの攻撃は体の歯車の動きと連動している。
あの歯車の回転の軸になっている中心部分が魔力の中枢で間違いないと思う」

さやか「それで?」

杏子「だから、あたしが魔法で足場を作って、魔女本体の所まで昇っていく。
そして魔女の真上から魔力の中枢めがけて最大級の攻撃を仕掛ける。」


杏子「もちろん魔女も使い魔も黙って見ていちゃくれないだろうから
マミはたどり着くまで、あたしの援護をしてくれ。」

マミ「うーん、推測に頼っている部分が少し不安だけど、近づかないと倒せないのは確かだものね。
…………わかったわ!頼んだわよ、佐倉さん!」

さやか「あたしは何をすればいいの?」

杏子「マミがあたしを援護する間、無防備になっちまうからな。
マミを守ってやってくれ。」

さやか「わかった! 使い魔どもの指一本だってマミさんに触れさせないよ!」

杏子「よし! いくぞ!」


マミ「ティロ・フィナーレ!」

マミの大技が使い魔たちの群れを貫きました。

杏子「頼むぜ、マミ! さやか!」

杏子はマミが開いた突破口を走り抜けながら、魔法で足場を作り、空へ昇っていきます。

使い魔たちが杏子に追いすがりますが、すかさずマミの銃撃が使い魔たちを撃ち落していきます。
杏子は息もたえだえになりながら、ついに、「ワルプルギスの夜」の真上までたどり着きました。

杏子「くらいやがれ!」

杏子の渾身の一撃が「ワルプルギスの夜」に炸裂しました。

「ワルプルギスの夜」の歯車とその中心にひびが入り、魔女は苦しそうにもだえます。

杏子「やったか!?…………いやまだか! ならもう一発!」

杏子はもう一度、「ワルプルギスの夜」に攻撃を加えようと大きく槍を振り上げます。
しかしその瞬間、「ワルプルギスの夜」はそれまで地面に対して垂直だった体の軸を
水平に近づけるように傾けました。

一瞬、「ワルプルギスの夜」が杏子を見てニヤリと嘲笑したようにみえました。

杏子「しまっ……」

「ワルプルギスの夜」が強力な衝撃波を発し、激しい痛みが杏子の全身を切り刻みました。

どうせほむらが助けに来るんだろ


杏子の放とうとしていた魔力と相殺されて、致命傷はまぬがれましたが、
額から血が流れ、杏子の視界を奪いました。

杏子「!!」

杏子は何も見えず、魔力も使い果たし、地面へとまっさかさまに落ちていきます。

杏子(……これで、おしまいなのかよ。ちくしょう)

杏子は、友人が戻るまで守ると誓った少女と街が魔女に蹂躙されることを、
それを阻止できない無力な自分を、ただただ悔しく思いました。

地面がぐんぐん近づいてくるのを感じながら、そっと心の中でこの場にいない友人に謝りました。

杏子(「あなたなら誰よりも強くて優しい魔法少女になれる」……か。ごめんなぁ、ほむら。
あたし、あんたが思ってくれたような魔法少女にはなれなかったよ……)


杏子(……?)

その時、杏子は体の落下が止まったことに気が付きました。

誰かが杏子の体を抱きかかえているのです。

また、轟々とうなっていた風の音が聞こえなくなりました。まるで時間が止まったかのようです。

杏子「?……??」

杏子を抱きかかえていた誰かは、そっと杏子を地面へ横たえます。

???「遅くなって本当にごめんなさい、ずいぶん待たせてしまったわね。
でも、あなたは本当によくやってくれたわ」

誰かが優しくそうささやく声が聞こえました。
続いて空の方からものすごい爆音が聞こえてきました。


???「さて。私の大事な友達をよくもいたぶってくれたわね。

……沖縄まで行って拝借してきたF-15よ。ミサイルもおまけでつけてあるからとくと味わいなさい。」

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