楓「お父さんって活躍してるの?」虎徹「え?」 (93)

楓「お父さんってさ、いっつもバーナビーさんの足を引っ張ってばかりじゃない?」

虎徹「い、いやあそんなことはないぞ!」

楓「この前もやっとテレビに映ったと思ったらバーナビーさんにお姫様抱っこされてたし」

虎徹「う、いやあれはな楓」

楓「わかってるけど……なんかね」

虎徹「……すまんな、パパ恰好悪くて」

楓「バーナビーさんに迷惑かけてるんじゃないかって」

虎徹「あ、そっち? そっちの心配?」

楓「だいたいワイルドタイガーってランキングでもここ数年はずっと下の方だったし」

楓「もしかしてみんなに迷惑かけっぱなしだったんじゃないのかなって」

虎徹「い、いやあ、そんなことは……パパも結構頑張ってだなあ。それにほら! 一次リーグの最後は上位にだな!」

楓「それはバーナビーさんと一緒だったからでしょ。頑張るのと迷惑かけてるのは別だよお父さん」

楓「そもそもお父さん他のヒーローさんとは結構仲良かったの?」

虎徹「おお! そりゃもう!」

楓「ふぅ~ん、また嘘つくんだ」

虎徹「はい!?」

楓「だって仲良かったなら今日お父さんの誕生日なんだしみんなお祝いにきてくれるんじゃない?」

虎徹「い、いや今日は楓が電話くれるっていうからだな、ぜーんぶキャンセルしたんだ」

楓「じゃあ確かめてみてもいい?」

虎徹「え」

楓「私が直接そっちに行ってヒーローさん達に聞いてみるね」

虎徹「ええ? い、いやしかしだな!」

楓「嘘じゃないならいいよね」

虎徹「あ、あいつらもヒーローとして忙しいだろうし」

楓「ヒーローならファンには会ってくれるよ。それにお父さんが本当にみんなに人望があったなら娘の私に一目会うくらい時間を作ってくれるはず」

虎徹「おいおい本気なのか!?」

楓「なんでそんなに心配してるの? やっぱり嘘なの?」

虎徹「い、いやそうじゃなくてだな。来るってお前……結構遠いぞ!」

楓「大丈夫! 一人で行ったことあるの知ってるでしょ!」

虎徹「い、いやでも……せめて迎えに」

楓「大丈夫だったら! じゃあそのうち行くから!」ガチャ

虎徹「あ、おい! 楓!? 楓!? せめていつ来るかだけでも……!」ツーツー


楓「……仕方ないじゃない。こうでもしないと、お父さんと中々会えないんだもん」

楓「さてと、ようやくシュテルンビルトに着いたわ」

楓「パパに連絡を取るのは最後にして一応他のヒーローさん達に話を聞いてみよう」

楓「……」クシャ

つ進路希望票

楓「……私、ヒーローになりたいって言ったら、お父さんなんて言うかな」

楓「ま、まあついでに不精なお父さんの部屋も掃除してあげよっと!」

楓「どうせ本当はそんなに親しい人たちなんていないんだろうし」

楓「そこは嘘つかなくてもいいのに」

楓「お父さんは、それだけで……お父さんなんだから」

楓「えっと、まずは誰に連絡を取ろうかな……やっぱりここはバーナビーさんかな」

楓「バーナビーさんの連絡先だけは教えてもらってるし」

楓「ついでにサインもらおう。ついでに、うん」

バーナビー「やあ楓ちゃん、久しぶりだね」

楓「お久しぶりです」

バーナビー「今日は急にどうしたんだい? 虎徹さんに内緒で、なんて」

楓「え、えっと実はお話を聞きたくて」

バーナビー「なんだい?」

楓「え、えっと、バーナビーさんはお父さんと仲は良いですか?」

バーナビー「え? 急になんで?」

楓「お、お父さんが迷惑かけていないかなって」

バーナビー「ああ、そういうことか」

楓「い、今はお世辞とか抜きで聞きたいんです!」

バーナビー「んー、そうだな。最初は確かになんだこの人って思っていたよ」

楓(やっぱりお父さんの嘘だったのね)

バーナビー「あの人はいつも頼んでもいないお節介を焼いて来るし」

楓「……」

バーナビー「自分勝手に勘で動こうとするし」

楓「……」

バーナビー「人の話は聞かないし」

楓(お父さん、全然だめじゃない)

バーナビー「でもね」

楓「?」

バーナビー「僕はそんな虎徹さんだから信じようって気になれるようになったんだ」

楓「え?」

バーナビー「虎徹さんはさ、スタイルは確かに古臭いし、今は能力の減退によって活躍の場も減ったよ」

バーナビー「でもあの人の良さは今も変わらない」

楓「良さ……?」

バーナビー「何ていうんだろうね、つい気持ちを開きたくなる心地よさって言うのかな」

バーナビー「いつも軽薄そうなのに、実際すごく責任感のある人だよ」

楓「あの、お世辞は……」

バーナビー「お世辞じゃないよ。どこが良いって聞かれるとすぐに答えられる人はきっといないと思う」

バーナビー「でも僕の知る限りレギュラーヒーローの中で虎徹さんを悪く思う人はきっといないと思うよ」

楓「ええっ? じゃあ他のヒーローと仲が良いってのは本当なの?」

バーナビー「うん、あの人はもしかしたら唯一……どのヒーローとも分け隔てなく接して誰とでも話せる人かもしれない」

バーナビー「僕たちは結局ライバルでもあるからね。どうしてもそれを意識してしまうけど、あの人はいつもそんなことは二の次だった」

バーナビー「最初は僕もそれで衝突してたけど、今は虎徹のやり方をすごく尊敬しているよ」

楓(信じられない……あのバーナビーさんがここまで言うなんて)

楓(やっぱりお世辞なんじゃ……ううん、きっとそうよ。他の人に聞いてみればわかるはず!)

バーナビー「こんなところでいいかな」

楓「えっと、その」

バーナビー「まだ何かあるのかい?」

楓「もう一つ相談が……」

バーナビー「相談?」

楓「……もし、私がヒーローになりたいって言ったらお父さんはどう思うでしょうか」

バーナビー「……ヒーローになりたいのかい?」

楓「え? あ、その……少し」

バーナビー「どうして?」

楓「え? あの……それは」

バーナビー「もしも半端な気持ちならやめておいた方がいい」

バーナビー「きっと虎徹さんも同じことを言うと思うよ」

楓「え?」

バーナビー「ヒーローは……そんなに安い職業じゃないんだ」

楓「……」

バーナビー「特に君は……ヒーローにはなるべきじゃないのかもしれない」

楓「そんな……」

楓「……」

楓「まさかあんなこと言われるなんて思ってなかったな」

楓「てっきり応援してくれると思っていたのに」

楓「うぅ」

楓「でもとりあえず他のヒーローさんの連絡先を教えてもらえた」

楓「次はスカイハイさんにしよう」

楓「ああ!? サインもらうの忘れてた!」

楓「最後そんなこと言いにくい雰囲気だったもんなあ」

楓「しょうがない。これは後でお父さん経由でお願いしよう」

楓「えっとスカイハイさんは、と」

スカイハイ「やあ! 君が連絡をくれた楓ちゃんだね! 久しぶりじゃあないか! こんにちは、そして、こんにちは!」

楓「ご無沙汰しています。その節はお世話になりました!」

スカイハイ「いやいや、こちらこそ助けてもらったからね。それで話というのは?」

楓「はい、実はいくつか聞きたいことがあって……」

スカイハイ「聞きたいこと? 私で良ければなんでもお答えしよう」

楓「お父さんは、ヒーロー達の中ではどんな存在だったんでしょうか」

スカイハイ「タイガー君かい?」

楓「足手まといだったとか」

スカイハイ「いやいやとんでもない。彼はヒーローの中のヒーローだったよ」

楓「え……?」

スカイハイ「私の知る限り、彼以上のヒーローはいない」

楓「だってランキングじゃ……それにいつも失敗ばかりで……」

スカイハイ「それは……彼が僕らの中で唯一ポイントに拘らなかったからだ」

楓「どういう、ことですか?」

スカイハイ「僕らはスポンサーのもと、ヒーローTVに出演して競う形でヒーローをしている」

スカイハイ「その為君も知ってのとおり活躍に応じてポイントが加算され順位をつけられる」

スカイハイ「だが彼のモットーは目立ってポイント稼ぐことではなく飽くまで事件解決、平和への渇望だった」

スカイハイ「無論我々とて市民の安全は第一だ。だが誰もがアピールすることは忘れない」

スカイハイ「しかしタイガーくんは違う。アピールすることを二の次にして助けることを選ぶ」

楓「そういえばお父さんだけ決め台詞とかほとんど聞いたことがない」

スカイハイ「そう、僕らはたいてい一つの事件に一回は言うがね、彼はそんなに使わない」

スカイハイ「口にするものは少なかったが、我々ヒーロー達の中ではそんな彼の生き方を尊敬していたよ」

スカイハイ(スポンサーやTV局には文句を言われてたことは……うむ、秘密にしておこう。そして、秘密にしておこう!)

楓「あの、ところでもし私がヒーローになりたいって言ったらどう思います?」

スカイハイ「む? 君はヒーローになりたいのかい?」

楓「え、えっとその、か、考え中です」

スカイハイ「ふむ」

楓「ネ、ネクストになったからには……そういうのもありかな、って」

スカイハイ「その心意気やよし!」

楓「! じ、じゃあ……!」

スカイハイ「しかし」

楓「?」

スカイハイ「タイガー君とはよく相談した方がいいだろうな」

楓「あ……」

スカイハイ「全てを決めた上で挑戦し、仲間になるのならその時は歓迎しよう!」

楓「……はい、ありがとうございます」

楓(スカイハイさんまでお父さんを……)

楓(う、嬉しいけど、でも本当にそうなの?)

楓(えっと、次は折り紙サイクロンさんか……)

楓「この人は結局どういう人なのかよくわからないけど……」

楓「話だけでも聞いてみよう!」

イワン「……どうも」

楓(え? 誰)

イワン「あの時は……記憶を戻してくれて、ありがとうございました……」

楓(暗い……)

楓(服装も顔も普通だし……ござるとか言ってない……本物?)

イワン「それで今日は一体……?」

楓「あ、あのお父さんの話を聞きたくて……」

イワン「タイガーさんの?」

楓「お父さんってどんな人だったのかなって」

イワン「そうですね……」

楓(暗いよぉ)

イワン「タイガーさんは……いつもみんなを気遣ってくれる人でした」

イワン「結局、僕も普段の本当の自分はこんなだから、素直に素で話しかけられるのはあの人くらいだったかも」

イワン「それに、僕が悩んでいる時に、助けてもらいました。ヒーローとしての道を、指し示してくれたんです」

イワン「そういった意味では、僕の恩人とも呼べます」

楓「ええ!? お父さんが? だっていつも……」

イワン「確かに普段冴えないところはありますが……」

イワン「結局最後はみんな、精神的に彼に頼ってしまう」

イワン「タイガーさんはそんな人でしたよ、僕も、尊敬しています」

楓「お父さんが……」

イワン「話は……それだけ、ですか?」

楓「あ、あの!」

イワン「?」

楓「もしも私がヒーローになりたいって言ったら、お父さんも応援して……くれますかね?」

イワン「それは……」

イワン「……」

楓「?」

イワン「僕からは、なんとも」

イワン「きちんとタイガーさんと話し合ってみるべきでしょう」

イワン「ただ……」

楓「ただ?」

イワン「ヒーローになるってことは、想像以上に大変だと、よく理解した方が良いと思います」

楓「……」

楓(なんなんだろう)

楓(みんななんですぐに応援してくれないんだろう)

楓(やっぱりお父さんが情けないから娘の私もそう見られてるのかな)

楓(だったらやっぱり私がヒーローになって見返して、お父さんの娘だって堂々とすればきっとお父さんだって……)

楓(お父さんが勘違いされたままなんて、嫌だもん)

楓(私が活躍してお父さんや他のヒーローさんたちを見返して、私のお父さんってことでお父さん自身も見直されるはず)

──尊敬しているよ

──尊敬していたよ

──尊敬しています

楓「……」

楓「」ブンブン

楓「次、いかなきゃ」

ネイサン「あらん? お久しぶりねえ♪」

楓「お久しぶりです」

楓(オネエ言葉……)

ネイサン「お話って何かしら?」

楓「お父さんのことを聞きたくて」

ネイサン「あらん? タイガーのこと? 浮気調査でもしてるのん?」

楓「いえ、そういうわけでは……って浮気?」

ネイサン「あらやだ、口を滑らせちゃった」

楓「え? え? え?」

ネイサン「気にしないで♪ ただタイガーはそれなりに人気だったってことよ、うふっ♪」

楓(お父さんが……そんな、嘘!)

ネイサン「それでタイガーだけど……そうねぇ……まあ一言で言って馬鹿ね」

楓「馬鹿?」

ネイサン「あらん、怒らないでね」

楓「あ、別に怒ったわけでは」

楓(むしろ予想していたこだし、やっぱり普通はこういう反応なんだよね)

楓(他の人がちょっとお世辞含み過ぎてくれただけで)

ネイサン「でも嫌いになれない馬鹿」

楓「へ?」

ネイサン「良くも悪くも実直でねえ普通あんなに真っ直ぐには生きられないわ」

楓「お父さんが?」

ネイサン「そしてどういうわけか、それがみんなのハートを掴んじゃうのよね」

楓「ハート……それって!」

ネイサン「あらやだ♪ 忘れて♪」

楓(お父さん……実はこっちで女の人と……? まさか!)

ネイサン(なーんか変な誤解してそうだけど、面白そうだからいっか)

ネイサン「話は終わり?」

楓「あ、あの、それと」

ネイサン「?」

楓「もし、私がヒーローになりたいって言ったら、お父さんは応援してくれるでしょうか」

ネイサン「貴方、ヒーローになりたいの?」

楓「え、えと少し」

ネイサン「少し?」

楓「……はい」

ネイサン「やめときなさいな」

楓「え? でも」

ネイサン「少し、なんて気持ちならおすすめしないわ」

楓「だけど、だって」

ネイサン「お嬢ちゃん」

楓「はい」

ネイサン「ヒーロー……ナメてンじゃねぇぞ……!」ギロ

楓「ッッッ!」

ネイサン「……ごめんなさいね、つい。でもこれもあなたのためよ」

楓「……」

楓「どうしてあんなに、みんな私がヒーローになること、良く思ってくれないの?」

楓「そりゃ絶対なれるとは思ってないけど、でも、そんなに頭から否定しなくたって……」

楓「次は……ブルーローズさんか」

楓「この人ならわかってくれるかな」

楓「あ、でもお父さんがさつだから接点は全然ないかも」

楓「お父さんの話はまあ、ちょっとでいいか……」

楓(わあ、可愛い人……)

カリーナ「え、えっと楓ちゃん? 私に話ってなにかな」

楓「え、えっとお、お父さんの話をちょっと聞きたかったんですけど」

カリーナ「へ、へっ!? わ、私まだなにもしてないけど!?なんで!?」

楓「はい?」

楓(なんで顔赤くなったのこの人?)

カリーナ(わわわ!?どうしよう!? こんなときは)

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カリーナ(えーとえーと)

楓「何読んでるんですか?」

カリーナ「えっ!? あ、な、なななんでもないのよ!」

カリーナ「それでアイツ、タイガーのことね」

楓「はい、って言ってもブルーローズさんみたいに可愛い人とはあんまり接点なかったかもしれないですけど」

カリーナ「そんなことない!」

楓「え?」

カリーナ「そんなことない! 一緒にロケやCMもやったし、ア、アイツが困ってるらしいから急きょ私が仕事でステージイベントかけつけたことだってあるし!」

楓「は、はあ、そうなんですか?」

カリーナ「そ、そもそもあいつがみんなで集まろうって言った時はかかさず出席してたし!」

楓「え、えっと、あの?」

カリーナ「そりゃ、私は年下だけど、でも、タイガーは私の事……」

楓「もしもーし?」

カリーナ「ハッ!?」

楓「大丈夫ですか?」

カリーナ「え、えと、どこまで話したっけ?」

楓「ええとタオルもらったとか」

カリーナ「そ、そう。大切にしてるの。鏑木酒店とか入ってるけど」

楓「あ、それウチのお店のだ」

カリーナ「え?」

楓「おじさん……お父さんのお兄さんが今経営してる酒屋さんです」

カリーナ「じゃ、じゃああれタイガーの実家の……」

楓「はい、すみませんへんなのあげて」

カリーナ「い、いいのよ。え、えへへ///」

楓「?」

カリーナ「な、なんでもないの!」

楓(この人何を喜んでいるんだろう?)

カリーナ「私も丁度あなたに聞きたいことがあったの」

楓「私に、ですか?」

カリーナ「え、えっとね?」

楓「はい」

カリーナ「その……もし、もしもなんだけど」

楓「?」

カリーナ「年の近いお母さんが出来たら、どうする?」

楓「…………はい?」

カリーナ「た、例えば! 例えばなんだけどね?」

楓「私に新しいお母さん、ってことですか?」

カリーナ「そうなる、かな?」

楓「っ! お父さんに、そんな相手がいるんですか!?」

カリーナ「えっ!? い、いやそういうわけじゃないのよ?」

楓「そう言えばファイアーエンブレムさんも似たようなこと言ってたような」

カリーナ「え」

カリーナ(どういうこと? もしかして、タイガーって結構競争率高いの!? どうしよう……早く行動に移した方がいいのかな)

カリーナ(でも私まだ学生だし。そもそもヒーローだし。結婚したらヒーロー続けられるかな)

カリーナ(あ、でも結婚したらヒーロー引退して歌手に専念すれば……)

カリーナ「///」

楓(お父さん……)

楓(私、やっぱりヒーローになるべきかな)

楓(ヒーローになればお父さんとも一緒にいられるし)

楓「あの」

カリーナ「でもでもぉ///……はっ!? え、えっと、なに?」

楓「もし私がヒーローになりたいって言ったら、どうします?」

カリーナ「えっ?」

カリーナ(この子がヒーロー……? そんなの)

カリーナ(タイガーが許すわけない)

楓「お父さんは、許してくれるでしょうか」

カリーナ(でもここでポイントを稼いでおけばこの先有利に……!)

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カリーナ(……でも、もし本当にこの子と家族になったとして、家族がヒーロー……)

カリーナ(……)

カリーナ「私は、おすすめしない。多分タイガーも同じことを言うと思う」

楓「っ! どうしてですか!」

カリーナ「?」

楓「なんで、そんあ、みんな……!」

カリーナ「ヒーローっていうのは……憧れる人が多い分、苦労も一杯あるの」

カリーナ「それを知っている人は、周りに気楽には勧められないわ」

楓「……」

カリーナ(ましてや娘になんて)

楓(ブルーローズさん……ううん、カリーナさんか。本名まで教えてくれていい人だな)

楓(凄くよくしてくれて)

楓(でも、ヒーローのことだけは賛成してくれなかった)

楓(それになんかやたらとお父さんの話をしてくれて……)

楓(羨ましいな、お父さんのことあんなに知っていて)

楓(ちょっと嫉妬しちゃうよ)

楓(困ったら連絡して、か。なんであんなによくしてくれるんだろう? まあいいや)

楓(次は……ドラゴンキッドさんだね)

ドラゴンキッド「やあ!」

楓「お久しぶりです」

ドラゴンキッド「ボク、年頃の近い同年代ってブルーローズくらいしかいないから、こうやって年の近い知り合いに会えるのは嬉しいよ」

楓「本当ですか? ありがとうございます」

ドラゴンキッド「それで話って?」

楓「お父さんのことなんですけど」

ドラゴンキッド「タイガーさん?」

楓「はい。お父さんって」

ドラゴンキッド「?」

楓「こっちに付き合ってる女の人とかいるんでしょうか!?」

ドラゴンキッド「ええ!?」

ドラゴンキッド「そんな話は聞いたことないけど……」

楓「! で、ですよね……!」

ドラゴンキッド「ボクが子供だからかもしれないし……」

楓「あ……」

ドラゴンキッド「で、でもさ! タイガーさんていい人だよね!」

楓「え?」

ドラゴンキッド「本当にすごくお父さんって感じがしてさ」

ドラゴンキッド「ボク好きだな、タイガーさん」

ドラゴンキッド「流石に一人じゃボクだって不安だったけど、よくタイガーさんは話しかけてくれてさ」

ドラゴンキッド「自分にも娘がいるからってさ」

ドラゴンキッド「ボク、親からもらった髪飾りとか恥ずかしくて付けてなかったんだけど、タイガーさんに諌められてさ」

ドラゴンキッド「花言葉とか教えてもらったんだ。送られてくる物の込められた意味」

楓(そういえば私も送られてきた……おばあちゃんにあげちゃったけど)

ドラゴンキッド「親はさ、子供のためを思っていろいろやってくれてるってボクはタイガーさんから教わった気がする」

楓(お父さん……)

楓「あの」

ドラゴンキッド「ん?」

楓「もしも、私がヒーローになったとしたら、お父さん喜んでくれるかな」

ドラゴンキッド「どうだろう? ボクの両親は誇らしいと喜んでくれたけど」

楓「! じゃあ!」

ドラゴンキッド「とても寂しそうだった」

楓「……」

ドラゴンキッド「時々ボクも迷うんだ」

ドラゴンキッド「でも今こうしてやっていけるのは親とちゃんと話して決めたからだ」

ドラゴンキッド「君も話してごらんよ」

楓「……はい」

楓「次はロックバイソンさんか」

楓「良い話が聞けるといいな……」

楓「……」

楓「でも、結局私次第なのかな」

楓「……」

ロックバイソン「おお楓ちゃん」

楓「お久しぶりです」

ロックバイソン「俺に話ってなんだい?」

楓「実はお父さんの話を聞きたくて」

ロックバイソン「虎徹の?」

楓「虎徹?」

ロックバイソン「あ、ああいや、実は俺と奴は古い馴染みでな」

ロックバイソン「昔からの付き合いなんだ」

楓「そう、なんですか」

ロックバイソン「虎徹か、うーん」

楓「?」

ロックバイソン「あいつは昔から一途で真っ直ぐだよ」

楓「……」

ロックバイソン「お前さんと友恵さんをとても大切にしていた」

楓「……じゃあなんで」

ロックバイソン「?」

楓「めったに帰ってきてくれないの?」

楓「お母さんが死んだとき、傍にいてくれなかったの?」

ロックバイソン「それは……」

楓「わかってます」

楓「それがヒーローなんだって」

楓「でも!」

ロックバイソン「あいつは絶対自分からこういう話はしないだろから教えてあげよう」

楓「?」

ロックバイソン「なんで今もあいつがこうしてヒーロー続けているか知っているか?」

楓「それは、私が恰好悪いって言ったから」

ロックバイソン「それもあるだろうさ、けどな。きっともっと大きな理由がある」

楓「?」

ロックバイソン「友恵さんの遺言だよ」

楓「!」

ロックバイソン「彼女は最後に言ったそうだ」

ロックバイソン「そうやって、ずっとヒーローでいて、ってな」

ロックバイソン「だからアイツは周りが引退していく中自分は可能な限りヒーローにしがみついてる」

ロックバイソン「ヒーローであることが、彼女の望みだろうからな」

楓「お父さんが……」

ロックバイソン「ちなみにいつも楓ちゃんの自慢もしてる」

楓「それは恥ずかしいのでやめてほしいです」

ロックバイソン「……」

楓「あの」

ロックバイソン「?」

楓「私がヒーローになるって言ったら、お父さんは反対するでしょうか」

ロックバイソン「!」

ロックバイソン「そいつはまたどうして」

楓「いろんなヒーローさんたちに聞きましたけど、みんな……」

ロックバイソン「そうか、そうだよな」

ロックバイソン「ハッキリ言えば、猛反対を受けるだろうな」

楓「どうして!? 私がヒーローになって活躍すればお父さんの名誉だって!」

ロックバイソン「あいつが望んでいるのは名誉じゃねえからさ」

楓「!」

rrrrr

虎徹「楓か!?」

楓「お父さん」

虎徹「今どこだ? もうこっちにきてるのか!?」

楓「……うん」

虎徹「待ってろ、今迎えに……!」ガチャ 楓「……」

虎徹「楓!」

楓「お父さん」

虎徹「大変だっただろう!? ほら、中に入って休め! な?」

楓「なのね、お父さん。私の話を聞いてほしいの」

虎徹「なんだ? パパなーんでも聞いちゃうぞ」

楓「学校でね、進路調査票を渡されたの」

虎徹「へえ、最近は早いんだなあ」

楓「それでね、私……ヒーローって書こうか悩んでいたの」

虎徹「!」

楓「お父さんは私がヒーローになるの、イヤ?」

虎徹「それは……」

楓「お父さん!」

虎徹「……楓はなんでヒーローになりたいんだ?」

楓「なんでって……」

楓「私がヒーローになって活躍すれば、お父さんの株も上がって……」

虎徹「パパのためか?」

──あいつが望んでいるのは名誉じゃねえからさ

楓「ネ、ネクストに目覚めちゃったからにはヒーロー目指すのもいいかなって……」

虎徹「……ネクスト覚醒者全員がヒーローになるわけじゃない」

──ヒーローっていうのは……憧れる人が多い分、苦労も一杯あるの

楓「だって、パパもヒーロー、だし……」

虎徹「パパがそうだから自分も、か?」

──ボクの両親は誇らしいと喜んでくれたけど

楓「嬉しくないの?」

虎徹「そりゃな、パパと同じ仕事につきたい! って気持ちは嬉しいぞ」

楓「だったら!」

虎徹「でもな、それだけでヒーローって仕事を応援できるほど、ヒーローってのは簡単じゃないんだ」

楓「ッッッ!」

楓「だって、それじゃ、お父さんみんなに勘違いされたままで……! そんなの!」

虎徹「パパはなあ、楓が知ってくれていればそれだけでもう十分なんだよ」

楓「でも、それじゃ、それじゃ私が嫌だよ!」ダッ!

虎徹「あ、おい! 楓!」

楓「うぅ」グスッ

楓「お父さんのわからずやぁ……」

ピーポーピーポー

楓「?」

キャーユウカイヨ!

犯罪者A「うるせえ! どけどけ!」

犯罪者B「早く逃げるぞ!」

楓「……誘拐!」

楓(な、なんとかしなくちゃ……!)

犯罪者A「あ、なんだこのガキ!」

楓「くっ!」ピカッ

楓「でええええいっ!」ドガァ!

犯罪者B「こいつネクストか!」

楓(さっきお父さんに触ったから……でも今はこれなら!)

犯罪者A「この野郎!」

楓「え? きゃああああああっ!?」

ビリリリリリリリ!

楓(スタンガン!?)

楓(痛っ、怖い、助けて、お父さん……!)

犯罪者B「おい、こいつも連れて行くか?」

楓「おとうさ……」

             / :::::ミヽ ::::::::::::';:::::::::::::::::ヽ  :::::: ::::::::::\
             < ::三三ミヽ ::::::::::::';:::: ::l、::::::::ヽ ::::.:::::::::::::::ヽ
.              /.::::三ニ  ヽ::::::::::::';::: :lヽ::::::::::ヽ :::::::::::::::::l\ヽ
            / :::彡l_    ヽ::::::::::',:::.l  \:::::::ヽ::::::::::::::::',  \
.             ∠;;::::彡:/ /ミ、__ ヽ:::::::::ト、! _,. =ヘ::::::ヽ::::::::::::::',
              V:::〈   ォ-そテ≧ゝ:::::',≦ィそテミ\::ト、::::::::::::',
            /:::/ヽl   `` ̄´ ノ ト、l ヽ` ̄ ´   ハ ヽ::::::::::',
.            /::::ハ l ハ         l:. ヽ       ハ l/::::::::::::::',
           /::::::,∧ヽヘ        l::.       /ノ/:::::::',ヽ:::::',
.           /:::,イ::,ィ:::ヽ、!        ^ ^′      /_ノ:\::::::', \::',
          ////::::::::::ト、    , -=== 、    /::::::::::::ヽヽ::',  \
       /  /:::::::,ィ:::::::::lヽ   `ー――‐′  /::::::::ト、::::ヽ \
          /:::::://:::::::::::l ヽ /{__,.イ ト、__}ヽ/|::::::::::ト、\::ヽ
          /;.  ´  /:::, イィヘ、ヽ\_|_|__/ _|\:::::! \\ヽ
      /´    //  /::::::::`ー- 、__, -'´::::\ ヽl    \
                 /::::::::::::::::::::/;:;:\::::::::::::::::::::ヽ_
           _  -‐ ´\::::::::::::::::::/;:;:;:;:;:;:;:;ヽ::::::::::::::::::/_ `ー- 、_
     _ -‐ ´_  -‐ ´ ̄|\::O:::∧;:;:;:0;:;:;:∧:::O::::/:| `ー- 、_ `ー- 、_
_  -‐ ´_ -‐ ´       l::::::\ノ:::::〉;:;:;:;:;:;〈:::::ヽ:/:::::::l       `ー- 、_ `ー- 、_


待てよ、このクソ野郎共……!

ドカバキグシャーゲシゲシゲシ


犯罪者AB「」チーン



虎徹「大丈夫か楓!?」

楓「……うん」

バーナビー「一人で勝手に突っ込まないでください、僕の出番無かったじゃないですか」

虎徹「わりーわりー」

バーナビー「それにこれ、一次リーグ向きですよ、お小言は僕も言われるんですからね」

虎徹「悪かったって」

バーナビー「でもまあ、娘さんを護るお父さんの気持ちに免じて、これ以上は言わないでおいてあげますよ」

虎徹「サンキュ」

楓「私、動けなかった……」

虎徹「楓?」

楓「偉そうなこと言って、私何もできなかった……!」

虎徹「いいんだ楓」

楓「でも……!」

虎徹「それでいいんだ……それが当たり前なんだ」

楓「……お父さん」

虎徹「怖い思いをしてわかっただろ?」

虎徹「ヒーローってのはいろんなことがある」

虎徹「だから簡単な気持ちでなっちゃいけないんだ」

楓「……うん」

虎徹「もしこれから、またどうしてもヒーローになりたいとでも思ったら、相談に来い」

虎徹「その覚悟が本物なら……すこーしだけ考えてやるさ」

楓「……なにそれ、ふふ」

虎徹「ははははは! 俺をまずは俺を超えないとな」

楓「ええ? お父さんなんてすぐだよ、そんなの目標にしたらだめ。目標にするならバーナビーさんじゃないと」

虎徹「ぐ」

バーナビー「一本取られましたね」

虎徹「うるせー」

楓「でもわかった、私もう少し考えてみる」

虎徹「ああそうしろ。学校のはアレだ、お父さんおお嫁さん、とかでも書いとけ」

楓「それはイヤ」

虎徹「……」

虎徹「さー帰ってきたぞー楓」

楓「も、もう大丈夫だから下ろしてってば!」

虎徹「はいはい」

楓「それにお部屋汚い! 私が掃除するからね!」

虎徹「あーいいっていいって! 今俺がやるから」

楓「良いのお父さんは座ってて!」

虎徹「でもなあ」

バーナビー「じゃあ僕はキッチンお借りしますよ」

虎徹「へ? ってかなんでお前まだいるの?」

ピンポーン

虎徹「?」

虎徹「はーい……ってブルーローズ?」

カリーナ「っっっ! べ、別に来たくて来たわけじゃないけど!」

虎徹「はい?」

カリーナ「じ、時間よりだいぶ早いけど上がらせてもらうわよ! そ、掃除でもしてあげる」

虎徹「ちょ、待て待て待て! 何なんだお前ら!?」

カリーナ「お前ら?」

バーナビー「あれ? 随分早いですね。予定時間よりまだ一時間はあると思いますが」

カリーナ「! あんたこそ」

虎徹「なんの話をしてるんだお前ら」

ピンポーン

ロックバイソン「おーう、きてやったぞー」

ネイサン「はあい」

スカイハイ「お待たせ! そして、お待たせ!」

ドラゴンキッド「お邪魔しまーす」

イワン「お邪魔します」

虎徹「なんなんだお前ら!? 人の家に急に集まってきて!」

バーナビー「おや? 自分は人に誕生日のサプライズをしておいてされるとは思っていなかったんですか?」

虎徹「え?」

カリーナ「当日は楓ちゃんから連絡あるから家に引きこもるんだ~なんていうから日にちをずらしたのよ」

虎徹「お前ら……!」

楓(お父さん、本当にみんなとは仲が良かったんだね)

楓「お父さん、誕生日おめでとう」

虎徹「う、ありがとなみんな。ありがとな楓」

楓「じゃあ誕生日プレゼントに私しばらくここに棲むね」

虎徹「そうか……はあ!?」

カリーナ「ええ!?」

ロックバイソン「いやなんでそこでお前が驚くんだよ」

楓「しばらくお父さんの近く考えるの」

虎徹「だ、だけどなあ……!」

楓「大丈夫、もう私、お父さんの正体知ってるんだから」

虎徹「そうかあ? まあ楓がそう言うなら」

カリーナ(ど、どうしよう!? こういうときはどうすれば……導き出される結論は……)

ロックバイソン「しかしお前、ブルーローズよお、結構な大荷物じゃね? まるで何日も泊まるかのような荷物だな」

バーナビー「そろそろチャーハンできまーす」

ドラゴンキッド「ボクらもいろいろ食べ物持ってきたよー」

イワン「……どうぞ」

スカイハイ「私からは花束だ、受け取ってくれ、そして、うけとってくれ!」

ネイサン「今日は特別に添い寝してあげましょうか」

バーナビー「いつか食べてもらおうと練習していたんですからね」

虎徹「お前ら……サンキューな!」

楓(お父さんは冴えないし、普段は恰好悪いけど)

楓(いざという時は頼りになって恰好いい)

楓(それに思ったよりも人望もあるみたい)

楓(良かった)

楓(私、焦らなくてもいいんだよね?)

楓(お父さん、私、ゆっくり考えるから)





楓(差し当たって女の影、探さなきゃ)

カリーナ「!?」ビクッ


おしまい

おまけ


ルナティック「………………」








ルナティック(ユーリ)「……犯罪者は………………何処だ?」

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