DIO「このDIOを……助けさせてやる」阿良々木暦「パンツパンツ……」(86)

暦(春休み。羽川と遭遇、そしてエロ本を買いに書店へ向かったその帰りのことである)

暦(僕は一匹の吸血鬼に出遭った)

DIO「小僧」

暦(僕は一刻も早く家に帰り、購入した雑誌で今日の羽川の記憶をデリートしなければならない)

暦(友達はいらない。人間強度が下がるから)

暦(ましてやクラスメイトの女子一人(の一部分)のことで頭を占めるなどあってはならない)

暦(そう思っていたときに声をかけられた)

DIO「おい……そこの、貴様。貴様だ」

助けさせてやDIO「このDIOを……る」

暦(この辺りで唯一点灯していた街灯の下。その街灯に照らされて『彼』はいた)

DIO「聞えなかったのか……、このDIOを助けさせてやるッと、そう言ったんだぞ」

暦(アスファルトにへたり込んでいる彼は、四肢がそれぞれ綺麗に切断されていた)

暦「お、おい――お前、大丈夫なのか?」

DIO「大丈夫。今、大丈夫なのか? と訊いたか? 貴様は自動車に轢かれそうになりスンでのところで回避したばかりのヤツが大丈夫だと思うか? このDIOは自動車に轢かれたのでもロードローラーでブッ潰されたのでもないがな」

暦「す、すぐに、救急車を……」

DIO「救急車。フンッ! そんなもの必要ない。助かるための『道具』が今目の前にあるんだからなぁ~」

暦「道具って。この辺にAEDはないし……」

DIO「だから、『貴様の血を寄越せ』――このDIOはそう言っているのだ」

DIO「貴様の血を、我が肉として呑み込んでやろう。喜べよ、貴様の血肉が我が未来になるんだからなぁ。だから――貴様の血を寄越せ」

暦「お、おい……、血、血って」

暦(救急車とは言ったものの、見ればその姿が瀕死なのは誰でも分かる。それくらい凄惨だった)

暦「輸血とかじゃあ、駄目なのか?」

DIO「だから、さっきから輸血をさせろと言っているんじゃあないか。同じことを何度も言わせるな。無駄なことを喋らせるな」

暦「ど、どれくらいいるんだよ?」

DIO「とりあえず貴様一人分で立ち上がることくらいは出来るようになる」

暦「そうか、僕一人分……って!」

暦(僕死ぬじゃん!)

DIO「どうした……血を。血を寄越せ。早く……早くしろ……。なにをとろとろしている。このうすのろが」

暦「……」

暦(一歩後ずさった。そして、もう一歩――)

DIO「う、嘘だろう?」

暦「……」

DIO「こ、このDIOを見捨てるというのか」

暦(二歩後ろへ下がる)

DIO「じょ……冗談じゃあないぞ。カワイソーと思ったことはないのか? 野良猫にパンをやろうと思ったことは? それでも人間か?」

暦「……」

DIO「そうか……このDIOが生まれた時代にも殺人鬼だとか強姦魔だとかはいたが、貴様も負けず劣らずの冷血漢だということか。気に入ったぞ……」

暦「……」

DIO「このわたしに血を寄越したならば、貴様に我が『勝利』と『支配』への道を共に歩むことを許そうじゃあないか。どうだ」

暦「……」

DIO「まさか……それじゃあ足りないっていうのか」

暦「……」

DIO「それでは、こうしようッ。このDIOの『世界』に入門を許そう。未来永劫王道覇道の生を過ごせるぞ!」

暦「……」

DIO「……駄目押しも効かぬか。恐れ入った。もはや敬意を表するよ。このわたしが他人に尊敬の念を抱くなんて百年振りだ……なあ、おい。一瞬のことだ。痛みはない。チクリともしない。だから貴様の血をよこ」

暦(僕は走って逃げた)

DIO「おいッッ!!!」

暦「うわああああああああああああ!」

暦(大声をあげて逃げた。正直に、シンプルに怖かった)

暦(四肢は切断、全身血だらけの金髪の男が血を寄越せという)

暦(否――あの声だ)

暦(言葉だけ切り取るとものすごく間抜けな命乞いに聞えるが、あの怪しくも妖しい、甘くて淡い声の語りを聞くと、言うこと聞いてあげようかなって気分になっていた)

暦(僕はそのことが怖かったのだ)

暦(危うく身を投げ出しそうだった)

暦(あれ? なんで僕は買ったばかりのエロ本を公共のゴミ箱に捨てているんだ? これから帰ってお楽しみじゃあなかったのか?)

暦(なんで涙が出ているんだ)

暦(なんで両親や妹達のことを考えているんだ。まるで走馬灯みたいだ)

暦(ああ、火憐と月火。思えば最近は喧嘩ばかりしていたけれど愛していたぜ、マイシスターズ)

暦(僕はさっきの男のところへ戻っていた)

暦(男は、泣いていた)

DIO「クソッ! きたならしいアホどもめッ! どいつもこいつも……、思えば生まれたときから」

暦(なんだかカワイソーに思ってしまった)

DIO「くそ...万事急すか...!」

助けさせてやDIO「ちょっと待ちな」

DIO「...?このDIOが...もう一人?」

助けさせてやDIO「助けてやろう」

DIO「くそ……万事休すか……」

暦「ちょっと待て」

DIO「……? さっきの、人間か?」

暦「助けてやろう」

DIO「ほう。『助けてやろう』とは、ずいぶんナメた口をきくではないか」

暦「僕が戻ってこなかったらお前はどうなってる? そんな態度で僕の気が変わってやっぱり帰ろうって気持ちになっちゃったらどうする?」

DIO「……フン。このDIOが死ぬ様を見届けに来たのか」

暦「あとは――全部お前がやるんだろうが」

DIO「なにィ?」

暦「次の人生じゃ絶対うまくやる。要領のいい、他人を騙しても平気、孤独でものこのことそれでも生きていけるような人間になってやる。だから、僕がお前を助けてやる――僕の血を吸え」

DIO「……」

暦「全部やる。一滴残らず――絞り尽くせ」

DIO「……どうやら貴様も学んだようだな。人は予期せぬ事態には『恐怖』する――その『恐怖』を乗り越えるには人間を越えねばな。次の『人生』など待たずともッ! 貴様の得た教訓は明日から活かされ生きることになるだろうッ!!」

暦(羽川の××とか、ちょっと思い出して、阿良々木暦の十七年と少しの人生は終わった)

暦「ああ! 夢だったのか!」

暦(あれ。でも火憐と月火が起こしに来ないぞ。凶兆か?)

暦(何だ、ここ……廃墟か?)

暦「痛っ」

暦(あれ? 僕の八重歯ってこんなに長かったっけ?)

暦(八重歯か……僕は漫画のキャラで八重歯っ娘に目がないのだが、もちろん隣でそういうキャラが寝ていたりしない)

暦(ていうか、僕一人だった)

暦(とりあえず、辺りを調べるか)

暦(身の回りから確認。制服、財布、携帯はあった。日付からすると二日(!?)経っている)

暦(財布の中を見ても書店のレシートがちゃんとあった。僕は確かJOJOmenonを買ったはずだが『カイラクテンビースト』って印字されてるのはなぜだろう? あそこのレジ、壊れてたんじゃあないか?)

暦「うーむ」

暦「外に出てみるか。夕方なのか。それとも早朝なのかわからないけれど」

暦(廃墟の階段を降り、玄関を通り、外に出た)

暦(ん? なんかあつ)

暦「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

暦(身体が燃える。燃える。燃える燃える)

暦(日の光が僕を焼き尽くさんとする)

暦(もしかして数億年くらい時間が経過していて、太陽が地球に最接近しているのだろうか」

暦「がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

暦(地獄の業火だった。これじゃ死んでしまう!)

暦(何か、何か見落してないか。えーと、廃墟、八重歯、制服、財布携帯快楽天快楽天……)

暦(駄目だ、分からない!)

暦「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

DIO「チッ。世話の焼ける。いや、焼けているのは身体の方か」

暦「!?」

暦(何かに身体を引っ張られた。ずるずると、まるで子供がそうするようにゆっくりと廃墟の方へ引きずられた)

DIO「おい、二度と日の下に出るんじゃあないぞ。なまじ再生と破壊の繰り返しになり、生き地獄になるからな。まあ、不老不死だから死に地獄という方が正しいか」

暦(見れば、小学生くらいの外人の男の子がいる。あれ、僕の身体も元に戻ってる? 制服は全焼したけど)

暦(制服、八重歯、太陽、制服、羽川、制服、制服、もしかして)

暦「もしかして、お前」

DIO「そう。いわゆる吸血鬼というヤツだな」

暦「え? あ、ああ、うん」

DIO「何だ、その煮え切らない返し方は」

暦(いや、今の流れは吸血鬼とかそういう流れじゃなかった気がするが。そんなふうに思うのは僕だけだろうか……)

暦「えーと、お前が言うにはその三人のヴァンパイアハンターにやられて著しく消耗しているから、代わりに連中にブッた切られた身体を取り返してこいと」

DIO「要約するとそういうことだ。夜の世界、否、『世界』で存分に働くがよい」

暦「お前がずたずたになってた理由はわかったけれど……僕は元に戻れるのか?」

DIO「元とは、人間に戻れるかということか」

暦「当たり前だ。勢いで命捧げちゃって吸血鬼になってしまったらしいけれど、こういう事態になるとは思っていなかったからな」

DIO「なるほど。従僕よ、貴様は今、恐怖しているのだな?」

暦「……恐怖だし、不安だらけだよ」

DIO「安心するがいい。もはや貴様に出来ぬことはないし、難しいのはせいぜい死ぬことくらいのもの。貴様の悩みなど微々たるものよ」

暦「そうか……」

暦(自信ありげだし。今は希望を持つことにしよう)

DIO「夜になったらその辺を歩いていろ。そうすればヤツらの方から明かりに集まる蛾のようにフワフワと寄ってくるだろう」


暦「どうして僕は素直に言うことを聞いているんだろう?」

暦(従僕って僕を呼んでいたけれど、僕はあいつの奴隷か何かになったんだろうか)

暦(三人のヴァンパイアハンターを倒してこい。それが僕に与えられた課題だった)

暦(どうせなら三人くらいの女子に告白されるとかそういうイベントとか起こらないだろうか)

暦(いや、少女と幼女と童女の三点ハッピーセットでもいい。それこそ桃源郷だ)

暦(ハッピーセットといえばマックはどうしてメニューを取り下げたんだろう?)

暦(と。考えていると僕は三叉路に来ていた)

暦(そして、道の行く手にはそれぞれ人が……いや、何かが立っている)

暦(左には)

真宵「うわ。なんですか、あなたは。あ、いいですいいです。話しかけないでください。あなたのことが嫌いです」

暦(小学校五年生くらいと見た。ツインテイルにリュックを背負った少女が立っていた)

暦(真ん中の道には)

忍「身体も盗られちゃったし、立場も盗られちゃったし、儂、どうしたらいいんじゃろ? はは、死にたい」

暦(八歳くらいだろうか。春とはいえ涼しい夜にワンピース姿の幼女がいる)

暦(そして最後、右手には)

余接「僕の表紙が目印。ラブコメ展開もあるよ。新刊絶賛好評発売中――僕はキメ顔でそう言った)

暦(人形みたいに無表情、しかしやたらとファンシーな童女が佇んでいた)

暦「こ、こいつらが……」

暦(ヴァンパイアハンター。こんなに可愛い少女幼女童女が? 僕はてっきりロックマンX2に出てくるカウンターハンターみたいな三人がだとばかり思っていた)

暦(いや、見た目は愛らしくともものすごく残忍な本性が隠されているのかもしれない)

暦(しかし、彼女達に暴力を振るうのはためらわれる(僕は元々暴力反対だ)。なんとか交渉してあいつの身体を返してくれないだろうか)

暦(会話……交渉は出来るだろうか。よし、試してみよう)

暦「やあ、お嬢ちゃん達、こんな夜遅くにお外に出ていたら危ないよ~?」

真宵「ロリコン! ロリコンですっ! 迅速に自殺してくださいっ!」

忍「うほっ、世界一とは言わんがいい男!」

余接「惚れた。好きです。結婚してください。一緒にお墓に行こう――僕はキメ顔でそう言った」

暦(うーむ、リアクションが三者三様だ。しかしいきなりロリコン呼ばわりとはひどい。スカートでもめくってやろうか)

忍「む? なんじゃうぬら。低級な幽霊と低級な怪異のようじゃが」

余接「あなたは誰だい? 格下っぽいから格さんって呼んでもいい?――僕はキメ顔でそう言った」

真宵「ううぅ……」

暦(おや? 向こうは険悪なムードだぞ。もしかして仲が悪いのだろうか? だとしたらそこに交渉の余地があるかもしれない。それにしてもツインテイルの子がかわいい)

リヒター「グランドクロス!!」

ユリウス「シキソシキソシキシキ…」

マクシーム「ムッムッ ホァイ!!」

暦「お嬢ちゃん達、君達はヴァンパイアハンターで、あの吸血鬼を退治しにやってきたんだろう?」

忍「……」

暦「君達が持っているあいつの身体――返してもらえないかなあ?」

真宵「吸血鬼? 何言ってるんですか? いい歳して怪奇趣味ですか。やっぱり変態さんなんですね」

余接「何でも返してあげるからちょっと二の腕を見せてくれる?――僕はキメ顔でそう言った」

忍「儂は……少なくとも儂はヴァンパイアハンターなんかじゃあないぞ」

暦「え?」

忍「むしろ儂が狩られる側、吸血鬼じゃからのう」

暦(なんだって。おいおい、話が違うじゃないか。あいつの言い分だと蛾のようにハンターが寄ってくるらしいが。結果愛らしい女性陣が集結しているではないか)

忍「逆に訊くが、うぬが奴らを探す理由はなんじゃ? あいつの身体とは、一体誰の身体のことじゃ? この町にもう一匹、吸血鬼がいるのか?」

暦(この金髪の子……喋り方はえらく古めかしいが、話が出来そうだな。僕はツインテイルの子の頭を撫でた)

真宵「ひいぃっ!? やめっ、やめてください! 汚れちゃいます!」

暦「なるほど……お前もヴァンパイアハンターにやられてそんな愛らしい姿に」

忍「鼻の下を伸ばすな。殺すぞ。あのな」

暦(僕を睨む幼女。視線で殺されそうだった)

忍「元の姿に戻れば、儂はもっと愛らしい」

暦「……」

余接「どや顔うぜえ――僕はキメ顔でそう言った」

忍「キメ顔うぜえ」

余接「なんだとこのやろう、殺されてえのか――僕はキメ顔でそう言った」

忍「やれるもんならやってみろこのやろう。殺してみろこのやろう」

暦「で。そっちのお嬢ちゃん。君はこんな時間に何しているの?」

真宵「あなたには関係ありません」

暦(はっきりと拒絶された。思ってた以上に傷ついた)

余接「ちなみに僕はこの町の吸血鬼を調査しに来たんだよ、鬼のお兄ちゃん――僕はキメ顔でそう言った」

暦「調査?」

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