勇者(ボク)「おっ こっちの道が正解だったみたいだな」 (41)

戦士「よかった。ようやくこの不気味な森を抜けられるよ」

魔術師「早く宿に行って休みたい」

盗賊「さっきの道を左に行ってたらさらに迷うところだったな。危なかったぜ」

勇者「よし、じゃあ……」

勇者「引き返してもう片方の道を行ってみよう」

戦士・魔術師・盗賊「「「はぁ?」」」

~街~

戦士「結局迷いに迷って到着したのは夜か……」

盗賊「早いとこ宿屋に行こうぜ……」

勇者「何言ってるんだ。まずは教会に行くぞ」

魔術師「は?なんで教会?祈りなんかささげたくないよ」

勇者「いいからいいから。それとお前らさっきの森の中で見つけた金貨全部魔術師に渡せ」

戦士「何がしたいんだ?」

勇者「早く休みたいだろ?口答えせずにさっさとすればそれだけ早く済むぞ」

神父「今日はどんな御用ですか?」

勇者「お金を寄付したいんです」

戦士「はぁ!?」

勇者「ほら、魔術師。さっき手に入れた金全部神父に渡せ」

魔術師「な、なんでそんなことするんだよ!意味がわからないよ!」

盗賊「そのとおりだぜ!せっかくみんなで見つけたお宝なのに!」

勇者「魔術師は新入りだから経験値足りてないから寄付して稼がないといけないだろうが!!」

戦士「何言ってるんだこいつ……」

勇者「いいからさっさと寄付しろよ!魔術師の手で寄付しないと意味ないんだよ!オラァ!」

魔術師「ひ、ヒィィィ……」

魔術師「結局全財産寄付してしまった……もう一銭もないよ……」

盗賊「何も全財産渡すことはないじゃないか!」

戦士「おかげで今夜泊まる宿代もなくなっちまったぞ!」

勇者「しょうがないだろ。寄付するときは全財産以外受け付けてもらえないんだから」

戦士「宿はどうするんだよ」

勇者「馬小屋でいいだろうが!」

盗賊「ふざけんな!トラップに引っかかって俺は全身擦り傷だらけなんだぞ!病気になっちまう!」

勇者「それもそうだな……よし。じゃあ金を作ろう。冒険者の酒場に行くぞ」

戦士「酒場……?いったい何をするつもりだ……?」

マスター「今日は何のようだい?」

勇者「仲間を探してる。そうだな……僧侶でいいよ」

戦士「お、おい!今仲間なんて増やしてどうするんだよ!」

勇者「フフ……まあ見てなって」

僧侶「そ、僧侶です!見習いですがきっとお力になれると思います」

勇者「ああ、よろしく。それじゃあ君に最初の命令を与えよう」

勇者「持ち物全部置いてさっさと消えろ。3秒以内にな」

僧侶「え?……えぇぇ……」

勇者「僧侶の装備を売りさばいて金ができたぜ。これで宿に止まれるな」

戦士「すがすがしいほどのクズだな……」

盗賊「いったいどんな育ちだとこんなクソ野郎になるんだ?」

魔術師「でも少なくともこれで宿屋に止まることができるな。もう疲れたよ。早く宿屋にいこう」

勇者「ああ、お前らさきに行ってきてくれ。俺はちょっと冒険者ギルドでやることがあるんだ」

戦士「? ギルドに何の用があるんだ?」

勇者「忘れないうちにさっきの僧侶のギルド登録を抹消しておくんだ。じゃあ後で」

魔術師「あいつには血も涙もないのか?」

~翌日~

戦士「ふぅ……よく寝たぜ……やっぱりベッドで寝ると疲労の回復が違うな」

戦士「おっと、いけねぇ。日課の朝の鍛錬の時間じゃないか。早く行こう」

~宿の庭~

勇者「セイ!セイ!」シュバッ ボッ シュワワワ~ シュバッ ボッ シュワワワ~

戦士「おお、勇者。お前も朝の鍛錬か。結局お前は馬小屋に泊まったのか?」

勇者「ああ、俺はケガしてないし魔力だけ回復すればいいのさ」シュバッ ボッ シュワワワ~ シュバッ ボッ シュワワワ~

戦士「ふぅん。それにしてもお前今何の鍛錬してるんだ?」

勇者「飛び跳ねてジャンプ力を鍛えながら自らの体を魔法で焼いて破壊魔法と防御力を鍛えつつ」

勇者「炎で受けたダメージを即座に魔法で治療して回復魔法を鍛えてるんだよ」シュバッ ボッ シュワワワ~

戦士「ふぅん」

戦士(こいつやっぱりキチガイだったか)

魔術師「フワ~……よく寝た」

盗賊 「二人ともいないと思ったら朝の鍛錬か。精が出るねぇ」

勇者「おはよう魔術師、盗賊」

勇者「……」ジィ~

魔術師「なんだよ?僕の顔に何かついてるか?」

勇者「お前、ちょっと上級火炎魔法撃ってみ?」

魔術師「上級魔法?僕はまだ見習いレベルだから上級魔法はまだ……ソイッ!」ボッ

魔術師「あれ!?撃てたぞ!なんでだ?」

勇者「やはり……昨日の寄付で結構強くなったんだな」

魔術師「そんな劇的な効果が……?」

勇者「よし、魔術師が強くなったのならやることはひとつだ」ガシッ

魔術師「え?何するんだ?」

勇者「いいからお前はそこに立ってろ」

魔術師「よく目的がわからないんだが……」

勇者「デュクシッ!」バキィッ

魔術師「ぐはぁっ!な、なにしやがる!」

勇者「デュクシッ!デュクシッ!」

戦士「おい勇者!気でも狂ったか!?」

盗賊「落ち着け勇者!魔術師が気に入らないのか?」

勇者「あぁ?何言ってるんだ?いいからお前らも魔術師を殴れよ」

戦士「は……な、何を言って……」

勇者「めんどうくさいな……幻惑の術!」ピカァ~

戦士「グオオオオ!ブッコロシテヤル!」

盗賊「コ、コロシタイ!」

魔術師「ヒィィィ!何がしたいんだ勇者!」

勇者「動きよ止まれ」ピカァ~

魔術師「か、体が動かない!?」

戦士「ウグォオオ!」ボコッ

盗賊「ウリャアア!」ベキッ

魔術師「ぐ、グハアア!?」

魔術師「い、いだいぃ!もうやめでぐれ!」

ボコッ バキッ

魔術師「し、死ぬ……!死んでしまう!」

勇者「癒しの魔法」ピカァ~

魔術師「き、キズが……治っていく」

勇者「こうやってやられる度にキズを直していけば死ぬ心配もないだろ」ニッコリ

~一時間後~

戦士「はっ!」

盗賊「俺たちは何を……?」

勇者「ふむ……このくらいやれば十分かな」

魔術師「……」

勇者「魔術師?もう起きてもいいぞ」

勇者「……」

勇者「……し、」

勇者「死んでる……」

戦士「な、なんだと!」

盗賊「いったい誰が魔術師を殺したんだ!」

勇者「まてお前ら慌てるんじゃない。まだ助からないと決まったわけじゃない」ピカァ~

戦士「そ、そうか!魔法で僧侶を蘇生するんだな」

勇者「いやその前に少々魂を縛る魔法の訓練を……」シュバッ シュバッ シュバッ

盗賊「ふざけてる場合じゃないぞ!はやく魔術師を蘇生してくれ!」

勇者「チッ……うるせぇな……ちょっと全裸になるから待ってろ」

盗賊「な、なぜ全裸になるんだ……?」

戦士「そうか……お前は見るのは始めてか……」

盗賊「どういうことだ?」

戦士「勇者は本気で魔法を撃つときには全裸になるんだ。全裸になると魔法の効きが違うとかなんとか」

盗賊「なんだやっぱりキチガイじゃないか」

勇者「コォォォォ……セイッ!」ピカァ~

魔術師「う、うーん…………はっ!」

戦士「うぉおお!生き返った!」

盗賊「良かったぁ!」

魔術師「ひ、ヒィィィ!来るな来るなぁ!」

戦士「ど、どうしたんだ魔術師!俺たちの顔を見るなりおびえて……」

魔術師「うるせぇ!俺のこと殺そうとしやがって!もう我慢の限界だ!」

魔術師「勇者の旅に同行できるなんて光栄だと思ってた俺が馬鹿だった!お前らただのキチガイだ!」

魔術師「俺はもうこの旅を降りる!」

戦士・盗賊「な、なんだってぇ!」

勇者「まぁまぁ落ち着けよ」ピカァ~

魔術師「俺の心は変わらないぞ!もうお前らとは付き合ってられない!」

勇者「む……洗脳が効かない……そうかレベルが上がったからか……」

戦士「どうするんだよ……魔術師がいなくなったら大きな戦力を失うことになるぞ……」

盗賊「どうにか説得できないのかよ!」

勇者「俺に任せておけ……これを使うのは久しぶりだな……」ズイッ

戦士「勇者!何をするつもりだ!」

盗賊「勇者の奴突然オシャレな服を着始めたぞ!何をするつもりだ!」

勇者「……」ズイッ

魔術師「な、なんだよ!何のつもりだ!?」

勇者「ふとんがふっとんだ」(冗談)

魔術師「!?」

勇者「俺の筋肉、すごいだろう?」(自慢)

魔術師「な、な、な……」

勇者「仲間をやめるなんて許さないぞ」(恐喝)

魔術師「あ、あ、あ……」

勇者「お前って結構イケメンだよな」(褒める)

戦士「あ、あれは!久しぶりに見た!」

盗賊「いったいあれはなんなんだ!?」

戦士「あれこそ勇者流説得術だ!褒めたり脅したり冗談を言ったり……怒涛の勢いで話題を変えていき気づいたら勇者が好きになっている!」

盗賊「そんなことが可能なのか!?」

魔術師「う、うわぁぁ……はっ!ダメだダメだ!俺は絶対にここで抜けるんだからな!」

勇者「そうか……ちょっと手を出せ」

魔術師「?」

チャリンチャリーン

勇者「100Gある。これで仲間に戻ってくれないか?」

魔術師「……」

魔術師「しょ、しょうがねぇなぁ……」

戦士「トドメの賄賂だ……!」

盗賊「す、すげぇ……あんなに頑なだった魔術師をあんなあっさり……」

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