照「私の妹がこんなに可愛い訳がない」 (38)

咲「私にお姉ちゃんなんていないから」

照「咲……」

照「まだお年玉を巻き上げたこと怒ってるの?」

咲「!!」

咲「お姉ちゃんなんて大嫌い!!」

照「……やれやれ、嫌われたもんだな」

咲「そこ、どいて!」

照「……」

サッ……

咲「ふんっ」

バタン!

照「……どこに行くんだか」

照「ん? これは咲が落としたのか? なんだこれ……」

照「……」

照「麻雀牌?」

………………

…………

……

咲「………………」ゴソゴソ

咲「ここらへんだと思うんだけど…………」

咲「どうしよう…………」

照「…………咲、何やってるんだ?」

咲「おね…………ふんっ、関係ないでしょ!」

照「もしかして、これを探してるのか?」

咲「あ! それっ、返して!!」バッ

タッタッタ……

照「………………咲のやつ、お礼も言えないの?」

照「ふぅ…………それにしても久しぶりに咲と話したな」

照「なんだか疲れた…………」

………………

…………

……

照「ふあぁ~~~~……」

照「…………もう9時か…………そろそろ寝ようかな」

ガチャッ

咲「……」

ドカドカ

照「な、なんだいきなり」

バタン

咲「…………」

照(いきなり入ってきたかと思えば、じーっと睨みつけてる……」

咲「ねえ……ちょっと…………」

照「な、なに?」

照(何か言いたげにモジモジしているが…………)

咲「あの…………ね…………?」

照(…………このままじゃ、話が進まないか)

照「言いたいことがあるなら、言って」

咲「これ」

照「……それは、今日の麻雀牌?」

咲「うん…………」

照「その麻雀牌が、どうかしたの?」

咲「だから…………その…………」

照「一体なんなの? 早く言って」

咲「だからっ!!」

照(なんで怒り出すのか……)

咲「人生相談があるのっ!!」

照「じんせい……そうだん?」

咲「そうっ! 人生相談っ!」

照「はぁ……それで、相談って、何?」

咲「…………私、麻雀が好きなんだけど……」

照「麻雀牌を見て知ってる。それで?」

咲「でも周りに麻雀出来る人がいないでしょ」

照(咲の人間関係なんか知らないし)

咲「で、どうすればいいのかなって」

照「中学には麻雀部は無いの?」

咲「うん」

照「じゃあ、雀荘にでも行けばいいじゃない」

咲「じゃ、雀荘って…………行ったこと無いし…………」

照「麻雀、やりたくないの?」

咲「やりたいよっ! けど…………雀荘って、何か怖いイメージーあるし……」

照「…………」

照「はぁ………………日曜日」

咲「えっ?」

照「次の日曜日、空いてる? 一緒に行ってあげるから」

咲「本当!? 大丈夫、空いてる! 絶対だよ!」

照「わかったら、もう寝かせて」

咲「うん、おやすみなさい、お姉ちゃん!」

バタン

照「…………お姉ちゃん、か……」

照(久しぶりに聞いたような気がする…………)

照(でもなかったか…………)

・日曜日

バサッ!!

照「まぶしっ」

咲「さあ、朝だよ! 起きて!!」

照「今日は休み」

咲「日曜日に雀荘に連れて行くって話だったじゃない!!」

照「そうだった」

咲「早く準備してよねっ!」

照「む~~」

照(まさかこんなに早くおこされるなんて……。咲も朝は苦手なはずだったんだが……)

照(それだけ楽しみにしていたってことか…………)

照「仕方ない、起きるか……」

咲「それで、雀荘ってどこにあるの?」

照「この通りに看板が出てたから、歩いて行けばあると思う」

咲「本当? 方向音痴だからなぁ……」

照「咲に言われたくない」

咲「ふ~~んだっ! お姉ちゃんよりはマシだよっ」

照(やれやれ、すぐに張り合おうとする……)

咲「んっ? あれかな?」

照「あれはレストラン。雀荘って普通はもっと薄暗い感じ」

咲「でも、通りの看板と同じ名前だよ」

照「…………本当だ」

咲「じゃ、入って」

照「押さないで」

咲「なら、先に入って」

照「わかった、だから押さないで」

「いらっしゃい。2名様かの?」

咲「……」クイクイ

照(…………ハァ……)

照「はい、そうです」

「こんな朝早くってことは、朝食かの?」

照「いえ、麻雀を打とうと思いまして」

「そうじゃったか…………それにはちぃと早く来すぎたみたいじゃのぉ……ほれ」

照「…………誰もいませんね」

「まだ開店したばっかりじゃけ、おんしらが今日はじめての客なんじゃ」

照「そうでしたか……。何時頃から対戦出来るだけの客が来るのでしょうか?」

「そうじゃのう…………一番賑わうのは宵の口からじゃが、あと1時間したら、2人は麻雀をしたいという客も来るじゃろう」

照「だってさ、咲」

咲「それまでどうするの?」コソコソ

照「待つしかないじゃない」

「おや、朝早くからお客さまなんて、すばらです」

「煌、起きてきたんか」

煌「ええ、ぐっすり眠らせていただきましたよ。それよりマコ、ひょっとしてそこのお二方、麻雀を打ちに来たのではないですか?」

マコ「ああ、そうなんじゃが、こう朝はよう来られても、他に客がおらんけぇ……」

照「あの、そちらの方は従業員ではないですか?」

マコ「ああ、こいつは学校の友だちなんじゃ。昨夜は徹麻じゃったけぇ、泊まっていったんじゃ」

煌「ええ、ですので、客でもないのです。期待させたらすみません」

照「そうでしたか」

咲「ねぇ、出来ないなら帰ろうよ」コソコソ

照「ちょっと待って…………う――ん、丁度4人いますよね」

マコ「そうきたか…………うん、わしはOKじゃ」

煌「ええ、すばらな考えです!」

咲「えっ? えっ?」

照「なにぶん、麻雀を打つのは初めてですので、ルールを確認しつつやらせてください」

マコ「ウチは初心者大歓迎じゃ」

煌「楽しくなりそうですね!」

咲「え? 何するの?」

照「何って、麻雀をしに来たんでしょ?」

咲「ええっ? 誰と?」

照「誰って、他にいないじゃない」

マコ「よろしくのう。ええっと……」

照「ほら」

咲「あ……、宮永……さき……です」ペコリ

照「姉の照です」

マコ「よろしくのう。わしは染谷まこ、こっちは」

煌「花田煌です。よろしくお願いします」

マコ「うちは全卓が自動卓じゃけ、配牌は早いんじゃ」

煌「ええ、ええ、大変楽をさせてもらいました」

照「ええっと、親だから、一つ捨てて……と」

咲「もう、昔に家族麻雀をやったでしょ?」

照「あの時はチョンボも見逃してもらってたけど、本格的なのになるとそうもいかないでしょ」

煌「まあまあ、楽しくやれればそれで良いと思います」

マコ「そうじゃ、3つづつを作りつつ、ルールを覚えてって貰えばええ……」

照「ええと、これが体で、これが頭で……これを捨てて……」

咲「あ、カンっ」

マコ「槓か。初心者は4つ目を見つけたらどうしても揃えたくなってしまうからのう」

煌「そうですよ、咲さん。槓、それも加槓なんてしても、そうそういいことは……

咲「嶺上開花!」

煌「すばらっ!?」

マコ「おお、初めて見た上がりじゃ!!」

照「それ、どこかで見た役だ……」

咲「……もう、覚えてないの?」

照「何が?」

咲「じゃあいい」プイッ

照「?」

マコ「何やら気難しそうなお嬢さんじゃのう……」ボソボソ

煌「ええ、ですが妹さんのためにわざわざ雀荘まで連れてくるなんて、仲は良さそうですばらですよ」ボソボソ

マコ「フフ……そうじゃのう……」ボソボソ

照「ん? 何か言った?」

煌「なんでもありませんよ」

マコ「それより次は照さんのばんじゃ」

照「そう、えっと、これを取って、と」


………………

…………

……

………………

…………

……


煌「危うく飛ぶところでした……」

マコ「おんし、本当に初心者じゃったんか?」

照「ほぼですが、本当です。よく上がれたのは教え方がよかったからでしょうね」

煌「そう言って貰えると救われますね……」

咲「……」ムス

マコ「しかし、今日は妹さんのために来たのだろうに、姉が上がりすぎじゃなかったんかの?」

照「勝負事には手を抜いてはいけない」

咲「……」ムス――

煌「このまま終わるのも、後味が悪いのでは?」ボソボソ

マコ「そうは言っても、どうしたら良いんじゃ……」ボソボソ

煌「う――ん…………! そういえば、咲さんは中学生なんですよね?」

咲「? は、はい……」

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