兄「妹を思いっきり可愛がってみた」(278)


妹「面白いテレビないね」ゴロゴロ

兄「んー」

妹「……なんか眠くなってきちゃった」

兄「……」

妹「……お兄ちゃん?」

兄「ん?」

妹「どしたの? なんかうわの空だけど」

兄「いや……ちょっとな」

妹「なになに? 気になるじゃん」

兄「んー……」

妹「言いづらいこと?」

兄「言いづらいというか……うん。まあ、頼みがあるんだけど」

妹「ん?」

兄「可愛がらせてくれない?」

妹「……はい!?」

兄「いや、もうそのことばっかり頭から離れなくてさ」

妹「ちょ、ちょっと待って!? なに!?」

兄「なにって、妹のこともっと可愛がりたいんだけど」

妹「いっ!?」

兄「なにかおかしいかな?」

妹「お、おかしいよ!! どうしたの!?」

兄「だってさ、俺たち仲良いとは思ってるけど、全然それが表に出ないというか、態度にあらわれないじゃん」

妹「表す必要無いと思うけど……」

兄「俺今までずっと秘密にしてたんだけどさ」

妹「えっ……な、なに?」

兄「重度のシスコンなんだ」

妹「いっ!?」

妹「重大発表すぎるよ!! これからの家族生命に関わってくるよ!!」

兄「そんなにおおごとかな? まあ言いづらいから秘密にしてきたことなんだけど」

妹「シ、シスコンって……具体的にどういう……」

兄「あぁ、もう妹可愛いなぁ!とか」

妹「いっ!? か、可愛くないよ!」

兄「可愛いよ。この前なんか……」

妹「ん?」

───────────

妹「妹参上っ!」ズビシッ

妹「って、わぁ!?」ズルッ

ドシーン

妹「……いたい」ジワッ

───────────

兄「あぁ……妹可愛いなぁ」

妹「いやいやいやいや!! 恥ずかしいだけだから!!
  思い出したくもない過去だよ!!」

兄「とにかく可愛いがりたいだけだから」

妹「か、可愛いがるって……なにするの?
  もしかして……その、変なこととかは嫌なんだけど」

兄「そんなことするわけないだろ! 兄妹だぞ!?」

妹「なんか私の方が非常識みたいになってる……」

兄「なにするって言われてもなぁ……」

妹「ひ、一つくらいあるでしょ?」

兄「じゃあ、さっき眠いって言ってたし、膝枕したい」

妹「えっ……そんなのでいいんだ」

兄「あくまで常識の範囲内だからね。ギリギリまともな人間だから俺」

妹「線の上には立ってるけどね……」

兄「そうと決まればさぁ! こい! 妹よ!」ポンポン

妹「なんか行きづらいなぁ……」

兄「はやく!」ポンポン

妹「じゃあ……失礼します」ゴロン

兄「おぉお……」

妹「ちょっと、変な声出さないでよ」
兄「俺は今猛烈に感動している。まるで2年間懐かなかった飼い猫が唐突にすり寄ってきた時のように」

妹「何その例え。分かりづらっ」

兄「猫飼ったことないしな」

妹「んー……」

兄「なんか寝心地良さそうだな」

妹「んっ、思ったよりは悪くないかも」
兄「んひひっ」

妹「えっキモッ」

兄「キモくない!!!」

妹「何その自信、怖いよ」

兄「まあ一眠りしなさいよ。お兄ちゃん足痺れてもプルプルしながら耐えるから。
  いけるいける」

妹「普通に耐えてください」

兄「はぁ~……」
妹「……」スヤスヤ

兄「……」

妹「……ん~」

兄「……」ナデナデ

妹「んんぅ?」

兄「……」ナデナデ

妹「なんか寝づらいんだけど」

兄「でも撫でたいんだけど」

妹「気になるもん」

兄「気にしないで」

妹「無理だから」

兄「いけるいける」

妹「頑固すぎでしょ」

兄「生き様だから」

妹「初めて聞いたよ!!」


妹「あっ、そういえば今日友達遊びにくるんだった!」

兄「えっ、まじかよ。何もねぇぞ」

妹「ってかもう来る時間だし……」

兄「えぇ~、じゃあこの至福の時間も終わりかあ」

妹「至福のとか言わないでよ」

兄「幸福の?」

妹「変わってないから!」

ピンポン!!!!!!!!!!

妹「あっ、噂をすれば……来ちゃったっぽい」

兄「そっかぁ……まあ仕方ないな」

妹「今開けるー!」ドタドタ


妹友「は、はじめまして……」

兄「ん、あぁ。はじめまして」

妹「そういえばいっつもお兄ちゃんとはすれ違いだったね」

妹友「うん……」

兄「俺邪魔か? 自分の部屋行ってもいいけど」

妹友「そ、そんな」

妹「ずっとここに居られるよりかはいいかも」

兄「んー、まあ部屋にいるのが無難だな。リラックスしてくつろいでね」

妹友「は、はいっ!! ありがとうございます!!」

兄「そんなにかしこまらなくても」

妹「あはは、妹友ちゃん人見知りだからね」

妹友「ちょ、ちょっと……!」

兄「じゃ、俺は行くから」

妹「はーい」

  /\___/\
/ ⌒   ⌒ ::: \

| (●), 、(●)、 |    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |  < 飽きた
|   ト‐=‐ァ'   .::::|    \_____
\  `ニニ´  .:::/
/`ー‐--‐‐―´´\

兄「ふぁ~あ・・・友達来ちゃったらしょうがないよなぁー 暇だしおとなしく寝てようかな」

コンコンッ

兄「ん?どーぞ?」

妹友「あ、あの・・」

兄「お、どうしたの妹友ちゃん」

妹友「えっと・・・その・・」

兄「?」

妹友「三人で遊びませんか・・?////」

兄「いいけど・・・邪魔じゃない?」

妹友「そ、そんなことないです!下で一緒に遊びましょう!」

兄「おおーいいよーじゃあゲームでもしよっか」

妹友「ふぇぇ」

やっぱ俺文才ねえな 帰るわ

妹「いっ!?」

兄「よう!さっきぶり!」

妹「妹友、あんたほんとに連れてきたんだ・・」

妹友「へへへ///」

兄「よーし、何のゲームする?」

妹「うーん・・なにしよっかな」

妹友「アフリカ」

兄・妹「えっ?」

妹友「アフリカ」

兄・妹「・・・・」

兄「そ、そっかー・・じゃあアフリカやろっかー・・(妹の友達だし無下に出来ないな・・)」

妹友「ありがとうございますー///」

妹「じゃ、じゃあやろっか(アフリカってたしか一人プレイだったような・・どうするんだろ・・)」

妹友「フンフフーン♪」

ピッ・・・ドゥイーンパァーアフリカキドウー

兄「よっし始まったぞー 妹、お前先にやるか?」

妹「え?いいの?やった!じゃあ先にやるー」

兄「可愛いなお前は」ナデナデ

妹「ちょっ 何してんのよっ」

兄「ごめんごめん笑」

妹友「・・・・・」

妹「もうっ さっさとはじめるからね」

妹友「私が先にやる」

妹「えっ」

妹友「私にやらせろ そして撫でろ」

もうあかん やっぱ帰るわ ごめんな

SS書いたことないけどやってみるか。書き溜めしてからの方がいいのかな

妹友「もう……変なこと言わないでよ、お願いだから」

妹「えー、だって人見知りは人見知りでしょ?」

妹友「それは、その、そうなんだけど……ね? あるでしょう、ほら、いろいろ。わからない?」

妹「や、全然わかんない」

妹友「うん。まあ、わからないでいてくれた方が助かるんだけど……」

妹「なにそれ、そんな言い方されたら気になっちゃうじゃん!」

妹友「いいからいいから。さっ、テスト近いんだし、勉強しよ。ね?」

妹「あ、わかった!」

妹友「えっ」ビクッ

妹「妹友ちゃん、男の人苦手そうだもんねー。だからお兄ちゃんの前であんなに緊張してたんでしょ!」

妹友「……ふふっ。じゃあ、そういうことにしとこっかな?」

妹「??」

妹友「じゃ、まず妹ちゃんの苦手な英語からいこっか」

妹「えー、やだー……」

妹友「英語が嫌なら数学から始める?」

妹「そうじゃなくて、まずこういうのってさ、得意な科目から始めないとモチベーションがもたないと思うんだよね私」

妹友「でも妹ちゃん、お昼食べるときはいつも好きなおかずを最後まで残しておくタイプでしょう?」

妹「うんうん。で、嫌いなおかずは妹友ちゃんに食べてもらってるよね」

妹友「……私だけが英語と数学を勉強しても、妹ちゃんの点が伸びるわけじゃないんだよ?」

妹「それはそうだけど! こういうのは気持ちの問題なの!」バンバン

妹友「もう、しょうがないなあ……。じゃあ、現代文からやろっか」

妹「さすが妹友ちゃん、やっさしー!」

妹友「……ちゃんとあとで英語も数学も勉強するんだからね?」

妹「私、今を生きる女だから」

妹友(ちゃんと進級出来るかなこの子……)

三十分後


妹「もうだめ、疲れた」ダラー

妹友「早いよ! 漢字ドリル2ページ進めただけじゃない!」

妹「……なんていうか、高校生にもなって漢字ドリルとかないわーって考え始めたらもうやる気沈んできてどうにも」

妹友「んー……それじゃあ、古文にする?」

妹「いや、ここは休憩としましょう」

妹友「だから早いよ! せめて1コマ分の一時間は頑張ろうよ」

妹「うっ、だめ……ペンが握れない……脳が糖分を要求している……」

妹友「……もう、しょうがないなあ」

妹「やー、なんだかんだいって私に甘いよねー、妹友ちゃん」

妹友「私は褒めて伸ばすタイプなんです! たぶん」

妹「それじゃ、お茶淹れてくるね!」バタン!

妹友「ほんと、こういうときは行動早いんだから……」

妹「あれ、お兄ちゃんまだテレビ見てたの?」

兄「あー、部屋戻っても特にやることなかったしな……」

妹「せっかくの休日なのにゴロゴロしちゃって。勉強しなくて平気なのかな~?」

兄「俺はお前と違って普段コツコツやってるから平気で~す」

妹「うっ、そういえばそうだった……」

兄「お前は人のよりまず自分の心配しろよ」

妹「こっ、今回のテストは余裕だし! さっきまで妹友ちゃんとしっかり真面目に勉強してたし!」

兄「……それにしては休憩が早すぎるだろ。お茶会始める気満々じゃねーか」

妹「ううっ……ひどい。さっきまでの優しいお兄ちゃんはどこにいっちゃったの?」

兄「それとこれとは別だからな? 今回も赤点取るとかほんとにシャレになんねーぞ」

妹「じゃ、お兄ちゃんも一緒に勉強しようよ!」

兄「どうしてそうなる……」

妹「いいから、ほらっ、これ持って!」

兄「いつの間に三人分淹れたんだよ……ってそうじゃなくて。俺がいきなり押しかけたら妹友さんに迷惑だろ」

妹「為せば成る、為さねば成らぬ!」

妹友「あ、おかえり~…………っ、あっ、あ兄、さん!?」

兄「あ、どうも」

妹「なんか暇してたから連れてきちゃいました~」

妹友「……っ!」パクパク

兄「……おい、大丈夫かこの子。出目金みたいなことになってるぞ」

妹「こらっ、女の子に向かって酷いこと言うな!」ビシビシ

兄「や、やめろって、零したらどうすんだよ!」

妹「お兄ちゃんが拭きます」

兄「ふざけんな!」

妹「舌で」

兄「下で!?」

妹「えっ」

兄「えっ」

妹友「あ、持ってきてたお菓子開けちゃいますね」

いいぞ

妹「お煎餅おいしー」バリバリ

兄「なんかごめんね。お邪魔なようだったらすぐ出ていくから」

妹友「いいいえっ、そっ、そんな。どうぞ! お構いなく!」

兄「……ほんとに大丈夫?」

妹友「はい! ひ、人見知りなだけなので、私! 重度の!」

兄「そ、そっかあ」

妹友「はい!」

妹「ポッキーおいしー」カリカリ

兄「そうだ、妹友さん、紅茶に砂糖入れなくて平気? なんだったら取ってくるけど」

妹友「は、はい! どうぞお構いなく!」

妹「あ、それ紅茶じゃなくて蕎麦茶だよ」

兄「紛らわしいわ! なんでわざわざティーカップに注ぐんだよ!」

妹「生き様だから」

兄「初めて聞いたよ!」

兄「それでは改めまして、妹の兄です。どうも初めまして」

妹友「わっ、私は妹さんの友……ご学友を務めさせて頂いております! 妹友と申します!」

兄「や、ほんとそんなにかしこまらなくていいから」

妹友「す、すみません。さすがにそろそろ落ち着きます……!」

妹「やー、こんな妹友ちゃんも新鮮でかわいいなー」

兄「お前も煽ってないでフォローしてやれよ……」

妹「えー、だっていつも私が弄られる側だし?」

兄「そうなのか? てっきり逆かと思ってたけど」

妹「うんうん。大人しそうに見えるけど、これ変身前のランチさんみたいなもんですよ。変身したらそれはもう……」

妹友「ちょっと妹ちゃん!」バシバシ

妹「いだだだだだだだ!……ほ、ほらね?」

兄「今のはお前が悪いけどな」


勉強再開
───────────

妹「やっぱりねー、日本人はねー、日本語話せればそれでいいと思うんですよねー」

兄「んなことぁない」

妹「だって社会に出ても絶対英語なんて使わないもん! 少なくとも私は!」

兄「そうは言うけど、うちの高校にだって一人居るだろ、留学生。ああいった方々との交流も含めてだな……」

妹「あの留学生、中国から来た人じゃん」

兄「……じゃ、お前だけ漢文やってろ」

妹「なにそれひっど!」

妹友「……ふふっ」

妹「ふふふっ!」

兄「!?」

妹友「二人とも、仲がいいんですね」

妹「ん、まあ悪くはない……よね?」

兄「かな?」

妹友「私、一人っ子なので……なんだか、羨ましいです」

兄「まー、なんつーか、仲悪かったらやってけないしね。実質二人暮らしみたいなもんだし」

妹「たしか妹友ちゃんには言ってたよね。うちの親共働きで、帰ってくるのすごく遅いからさ。色んなこと二人で頑張らないとっていうか……」

兄「しかもお前は家事ぜんっぜん出来ないからな」

妹「洗濯はしてるじゃん!」

兄「ほんとそれだけな」

妹「だって、女の子だもん」

兄「流石の俺でも妹の下着にどうこうしたりとかないから安心しろよ」

妹「へえ? さっき自分からシスコン宣言したくせに?」

兄「ちょ」

妹友「シスコン、ですか……?」

兄「おま、人前でそういう……じゃなくって! 妹友さん? 誤解のないように言っておくけど俺は……」

妹「膝枕だってしてもらったのになあ」

妹友「膝枕、ですか……」

兄「あの、」

妹「膝枕しながら、いっぱい撫でてくれたのになあ」

兄「」

妹「女友ちゃんが来るって教えたら、至福の時間が終わる~なんて言って残念がってたのになあ」

兄「」

妹友「……そうなんだ」スッ

妹「あ、あれ? 女友ちゃん?」

妹友「なんだろう。なんていうのかな。……今日のところは帰らせてもらいます。ごめんなさい」バタン

妹「…………あれ?」

いやこれはいいぞ

数分後
───────────

兄「そりゃさ、引くよ。普通引くって」

妹「普通引くって思うことを平然と口にしちゃう兄が目の前に居るんですが」

兄「それは……お前ならいいっていうか、言っても大丈夫かなっていう……とにかくそういう距離感、なんとなく分かるだろ」

妹「まあ長い付き合いだし」

兄「だろ? だったら頼むぞ、マジで」

妹「?」

兄「ちゃんと誤解を解いておいてくれってこと! もしあれを妹友さんが誰かに言いふらしたら、俺不登校コースまっしぐらだぞ!?」

妹「……え、でも、そもそも誤解じゃないでしょ?」

兄「そこをどうにか言い繕うのがお前の仕事だ、頼む!」

妹「……お兄ちゃんはシスコンなんだよね」

兄「はい、そうですけど」

妹「わかった。それなら、どうにか言い繕ってあげる」

翌日
───────────

妹「い、妹友ちゃん、おはよう!」

妹友「おはよう」

妹「早速なんだけど、昨日のあれはさ、間違いだったんだよね、うん」

妹友「間違い?」

妹「うん、間違いー……っていうか、冗談。ほら、いくら私でもさ、シスコ……そ、そういう人と暮らすなんてぞっとしないしさ」

妹友「そうなんだ」

妹「うんうん。ごめんね、ドン引きさせちゃったよねー」

妹友「私、べつに引いてなんかいないよ」

妹「そ、そう?」

妹友「ちょっと頭を冷やして、一人で考える時間を作りたかっただけ」

妹「考える、って……」

妹友「結論、出たから。放課後にまた話しましょう?」

妹(妹友ちゃんは、なにを考えていたんだろう)

妹(どんな形で、自分と決着をつけたんだろう)

妹(嫌な予感がする)

妹(授業の内容が頭に入らない。ぜんぶ、通りすぎてゆく)

妹(放課後を迎えるのが怖い)

妹(これじゃ、また赤点かな……)

放課後
───────────

妹友「誰も来ない場所の方がいいよね、お互い」

妹「……」

妹友「校舎裏は……上に居る人に聞こえるかもしれないし、屋上でいいかな?」

妹「うん」

妹友「そう。それじゃあ、行こっか」

妹友「私、一年生の頃はバドミントン部に入ってたんだ」

妹「え? 前に帰宅部だったって言ってなかったっけ?」

妹友「ごめんなさい。部活を辞めた理由がちょっと恥ずかしくて、嘘ついちゃった」

妹「そ、そうだったんだ」

妹友「兄さんはバスケ部だったでしょう。もう三年で、大会も終わったから引退しちゃったけど」

妹「うん。そう、だけど……」

妹友「素人目に見ても、あの人はバスケットが下手だった。レギュラーの人たちがシュート練習をする傍ら、一年生に混じってボール拾いをさせられているなんてしょっちゅう」

妹「……」

妹友「それでもあの人は楽しそうだった。後輩に八つ当たりなんて、一度もしてなかった」

妹「……」

妹友「一度、あの人にボールを投げ返してあげたことがあったんだ。あの人は笑って、私に『ありがとう』って言ってくれた」

妹「……なに。なんなの。なにが言いたいの?」

妹友「私は兄さんが好き」

妹「は?」

妹友「でもたぶん、あの人は今でも私がその時のバド部員だって気付いてないんだと思う」

妹「や、ちょっと……」

妹友「妹ちゃん、私が一年生の頃どんなふうだったか知らないよね?」

妹「え? だって、私たちが会ったのって二年に上がった時が初めてじゃ……」

妹友「芸術科目の合同授業で、書道を取っていたでしょう。私も同じだったんだよ?」

妹「えっ」

妹友「分からないのも無理はないけど。その時の私は眼鏡で、三つ編みで、スカート丈も規定通りっていう地味な女の子だったし」

妹「あー…………ええっ、うそっ!?」

妹友「眼鏡もコンタクトに変えた。ファッション誌もチェックするようにして、髪型から私服まで全部変えた」

妹「……それって、やっぱりお兄ちゃんのため?」

妹友「うん。だから、あの人がシスコンでも、たとえ妹ちゃんと相思相愛でも、関係ないから」

妹「…………」

妹「それじゃあ、私に話しかけてくれたのも、遊んでくれたのも、勉強を教えてくれたのも、ぜんぶ、お兄ちゃんと近づくため……?」

妹友「……ッ、それは違う!」

妹「本当に?」

妹友「たしかに最初は、そういう気持ちがなかったとは言い切れない。でも……」

妹「よく、わかんなくなってきたな。私、バカだから」

妹友「待って」

妹「ごめんね。私も、今日は一人で考えたいんだ。テスト前だっていうのに、ほんと、大丈夫かな」

妹友「私は」

妹「……」

妹友「今でも妹ちゃんのこと、友だちだと思ってる。それだけは分かってほしい」

妹「うん。分かった」

妹友「……引き留めてごめんなさい。それじゃあ、また明日」

妹「うん。ばいばい」

───────────

妹「ただいま」

兄「ん、おかえり。今日の晩飯、モスでいい?」

妹「なんでもいい」

兄「そっか」

妹「うん」

兄「今日は、ちょっと遅かったな」

妹「うん」

兄「なんかあったのか」

妹「……うん」

兄「来いよ、膝枕してやる」ポンポン

妹「なに、それ。頼んでないし」

兄「俺がしたいの!」ポンポンポンポンポン!

妹「……もー、しょうがないなー」

妹「ごめん、お兄ちゃん」ゴローン

兄「んー?」

妹「私、また赤点取るかも」

兄「その時はその時だ」

妹「……怒らないの?」

兄「どうせ父さんも母さんも滅茶苦茶怒るんだからな。俺ぐらいは優しくしてやる」

妹「シスコンだから?」

兄「その前に、たった一人の血を分けた妹だ。大切にするに決まってるだろ」

妹「……ッ」

兄「え? なんで? なんで泣くの?」オロオロ

妹「ッうう……優しくするから!」

兄「?」

妹「つらい時に優しくされると、女の子は泣いちゃうの!」

兄「ふうん。やっぱ女ってわかんねーなあ」ナデナデ

妹「私だってッ、分かんないよ……」

兄「ところで、さ」

妹「なに……?」グスグス

兄「涙……」

妹「?」

兄「涙、舐めていい?」

妹「いっ!?」

兄「あ、いいの? それでは早速……」

妹「待って待って待って! なんで!? なんでこの場面でそういう発想に至るの!?」ジタバタ

兄「こらこら。危ないから暴れないで、目を閉じてなさい」

妹「やだ、離してええ! どこがギリギリまともな人間なの! 思いっきり変態だよお兄ちゃん!?」ゲシゲシッ

兄「大丈夫だ、超えちゃいけないラインはわきまえてる」

妹「全然わきまえてな……って、やっ! ちょっと、ダメッ、およしになって……!」

兄「そんなこと言って……ほら、もうこんなに濡れてるぞ?」

妹「やめれー!」

コンビニ一滴まんこ

兄「……」ペロペロ

妹「んんっ……やっ」

兄「……!」ペロペロペロペロ!!

妹「っく、くすぐったいって……!」

兄「……!!」ペロンッ

妹「っ……はぁっ……」

兄「もう」

妹「……?」

兄「涙、止まったな」

妹「……そだね」

兄「ごめんな、気持ち悪かっただろ。顔洗いに行ってこいよ」

妹「んー、なんか、思ってたよりヤじゃなかったかも」

兄「まじかよ」

兄「冷静に考えてさ」

妹「うん」

兄「俺のやってることって、最低だよな」

妹「それはちょっと否定出来ないかも」

兄「実の妹に、こんなことしてさ……」

妹「…………」

兄「ごめんな」

妹「……そういうの、賢者タイムってやつ?」

兄「かもしれない」

妹「あはは」ギュッ

兄「ん、どうした?」

妹「お兄ちゃんも、つらいんだよね」

兄「かもなあ」

妹「最後に、キスでもしよっか」

兄「まじかー」

兄「俺、妹にファーストキス奪われちゃうのかー」

妹「ファーストキスなんだ」

兄「お前だってそうだろ」

妹「私は違うもんねー」

兄「ふん、そんな見え透いた嘘でこの俺を動揺させられると思うたか」

妹「小学二年生の頃、2組の青山くんとキスしちゃったもんねー」

兄「誰だ青山! 殺す!!」

妹「うそだよー」

兄「なんだうそかー」

妹「あははっ」

兄「で、最後ってどういうこと?」

妹「やっぱり、だめだよ。兄妹でこういうことするの」

兄「こういうことって?」

妹「いちゃいちゃ、とか……」

兄「べつに兄妹でイチャイチャしたっていいだろ」

妹「おかしい」

兄「どこが」

妹「好き合ってもいない相手といちゃいちゃするなんて、おかしいでしょ」

兄「お前、俺のこと嫌いだったのか」

妹「嫌いじゃないよ。お兄ちゃんがどんなに変態でも、ゴミ虫でも、カマドウマでも。嫌いになんて、なれないよ」

兄「俺だってお前を嫌いになんてなれない。死んでも無理だ」

妹「じゃあ、お兄ちゃんは私のこと好きなの?」

兄「好きだぞ」

妹「その好きって、どういう種類の好き、なのかな」

兄「好きは好きだろ?」

妹「違う」

妹「違う。違う。ぜんぜん違う」

兄「なんだよ。お前の言う好きってのは、ライクか、ラブかの二択だけか」

妹「うん」

兄「こ」

妹「ふざけないで!」

兄「ふざけてんのはどっちだよ……好きになったもんは仕方ないだろ? それをどうやって引っ込めろっていうんだよ」

妹「嫌いになればいいよ」

兄「それはさっき無理だって言った」

妹「お互い、嫌いになるための努力をしよう?」

兄「ハッ、バカじゃねーの」

妹「兄妹同士の恋なんて、どれだけ足掻いたって報われないんだよ」

兄「そんなの、誰が決めたんだ」

妹「少なくとも、誰も祝福なんてしてくれない」

兄「……はー! 馬鹿馬鹿しいわ。そろそろモス行こうぜ!」

妹「ちゃんと聞いて!」

妹「じゃあ、こうしよ?」

兄「うん」

妹「私が、青山くんと付き合う」

兄「うん?」

妹「で、お兄ちゃんは妹友ちゃんと付き合う」

兄「ちょっと待て」

妹「これでみんな幸せ! ハッピーエンド!」

兄「なんで俺と妹友ちゃんが付き合うの?」

妹「べつにお兄ちゃん×青山くんでもいいけど?」

兄「青山はもういいから!」

妹「そもそもだよ? お兄ちゃん、彼女いない歴イコール年齢の人でしょ?」

兄「うん」

妹「私も彼氏居ない歴年齢の人でしょ?」

兄「うん」

妹「これですよ」キッ

兄「え? なにがこれ?」

妹「私たちは今日まで健全な恋愛というものを経験したことがなかった。だから一番近い距離に居る異性……つまり兄妹を好きになったのだと錯覚してしまった」

兄「はー! 馬鹿馬鹿しいわ。そろそろモス行こうぜ!」

妹「ちゃんと聞いて!」

兄「うるさいな、耳元で叫ぶなよ……」

妹「お兄ちゃんがすぐ茶化すからでしょ!」

兄「だってほんとに馬鹿馬鹿しいもん。ていうか、なんで妹友さんなんだよ」

妹「妹友ちゃん、可愛いでしょ?」

兄「まあ、美人ではあったけどさ……」

妹「性格もいいし」

兄「ぶっちゃけテンパッてる印象しか残ってないわ」

妹「そしてなにより………………可愛い!」

兄「お前ボキャ貧にも程があるぞ」

妹「そういうことで、まずはお友達から初めてみてね?」

兄「勝手にまとめんな」

妹「たぶんねー」

兄「うん」

妹「このまま話し続けても、ずっと平行線のままなんだよね」

兄「それは俺も薄々感じてた」

妹「だから、どっちかが妥協しなきゃだめなんだよね」

兄「つまり、俺に折れろと?」

妹「うん」

兄「……はぁ、分かったよ。分かりました!」

妹「やったっ」

兄「要はアレだろ。俺が妹友ちゃんと友だちになって、ゆくゆくは男女の関係まで結べたらってことだろ」

妹「な、なんか表現が生々しいけど……うん、だいたいそんな感じ」

兄「で、こっちが折れることには折れるけど、一つだけ条件がある」

妹「?」

兄「定期的に可愛がられてくれ」

妹「いっ!?」

妹「どっ、どうしてそうなっちゃうかなぁ」バッ

兄「なぜ顔を隠す」

妹「そりゃ……赤くなってるとこ見られるの恥ずかしいし?」

兄「そうやって素直に言っちゃうところがまた可愛いんだな」ナデナデナデ

妹「うあー、やめれー……」

兄「で、返事は?」ナデナデ

妹「……まあ、膝枕とか、頭撫でるぐらいなら……許可してあげないことも……ない、かも」

兄「よしよし。じゃ、ちょっと名残惜しい気もするけど……いい加減行くか。モスが俺たちを待ってる……!」

妹「せや」

兄「せやせや」

モス行ってきます

四日後
───────────

兄「妹、マリカーやろうぜ」

妹「…………」

兄「あれ、ゴルフの方が良かったか?」

妹「…………」

兄「? おーい、聞いてる?」

妹「お兄ちゃんクズ!」

兄「!?」

妹「もう金曜日だよ、わかってるの!」

兄「え? ……あー、来週からテストだしな。妹は勉強しなきゃまずいか」

妹「ちがうでしょー! 妹友ちゃんでしょー!」

兄「あー」

兄「つってもさー、やっぱ後輩の女の子誘うのは難しいって」

妹「なにも難しいことないって! ヘーイ彼女、放課後お茶しない?……って声掛ければ一発だって!」

兄「何年前のセンスだよ……。いや、それにほら、そもそもテスト前だしさぁ」

妹「それこそ一緒に勉強しないか、って誘えばいいでしょ?」

兄「学年も違うのに?」

妹「……もー、言い訳ばっかりしないの!」

兄「だいたい、そういう妹こそどうなんだよ。青山とは上手くいってるのか?」

妹「あー、青山くんは非実在青少年だから……」

兄「そ、そっか……」

妹「うん」

妹「もう、しょうがないなー」ガサゴソ

兄「え、なに、お小遣いくれるの?」

妹「や、あげないから。むしろお兄ちゃんが私にあげる側だから……ってそうじゃなくて、はい、これ!」

兄「ん……なんだ、映画の割引券か」

妹「なんだじゃないでしょー。ありがとうでしょ?」

兄「おう、ありがとう。じゃ、テスト明けたら二人で観に行こうな」

妹「うん!……ってちがうでしょー! 妹友ちゃんでしょー!」

兄「ははは。妹はからかい甲斐のある妹だなー」ナデナデ

妹「」ムカッ

翌日の放課後
───────────

妹「妹友ちゃん、ちょっといい?」

妹友「ん、どうしたの?」

妹「お兄ちゃんが妹友ちゃんに話したいことがあるみたいで……その、校門前に居るみたいだから、もしよかったら聞いてあげてほしいんだ」

妹友「……そっか。わかった」

妹「それじゃ、私は図書館寄って勉強してくから。またね」

妹友「妹ちゃんはそれでいいんだね?」

妹「……」ビクッ

妹友「万が一私があの人と結ばれても、恨んだりしないよね? ちゃんと、私と友だちのままでいられる?」

妹「……うん。そんなの、当たり前だよ」

妹友「それを聞いてホッとしたよ。ありがとう。またね、妹ちゃん」

妹友「も、申し訳ありません! おおお待たせしてしまいましたか!?」ゼーゼー

兄「いや、全然待ってないから。とりあえず落ち着こうね?」

妹友「は、はひ。ごフっ、ご、ごめんなさい。少しだけッお時間を……」

───────────
三分後
───────────

兄「もう大丈夫そうかな? ごめんね。お茶にしようと思ったんだけど、なんか売り切れててさ」

妹友「い、いえ、どうぞお構いなく! スポーツドリンク、大好きですから!」

兄「そ、そうなんだ。じゃ、ちょっと歩きながら話そうか」

妹友「はい! ……あっ、ごめんなさい。お金、払いますね」

兄「いいって。これでもけっこう小金持ちだからさ。まあ、親のお金だから自慢出来たものじゃないけど」

妹友「あっ……ありがとうございます!」

兄(さっきから周囲の視線が痛いなあ……)

お前らまだやってたのか

兄「なんかねー、アレなんだよね」トコトコ

妹友「アレ……ですか?」

兄「いや、ほら、なんかね、妹のやつがね、どうにも妹友さんのことを気にかけててさ」

妹友「……」テクテク

兄「男の人が苦手だっていうからさ。せっかく知り合ったんだし、力になってやってくれないか的なことをね」

妹友「そう、だったんですか。妹ちゃんが……」

兄「まあ、俺としてもね、妹友さんみたいな綺麗な人とお近づきになれたらそれはそれで、って感じだし」

妹友「きっ、綺麗!?」

兄「あ、ごめんね。まだ親しくもないのにこういうこと言うのは失礼だよね、うん」

妹友「ススッス、スポーツドリンク、浴びていいですか!?」

兄「!?」

妹友「……あ、ごめんなさい。なんでもないです。ちょっと、顔から火が出そうで、つい……」

兄「火が」

妹友「リアルに……」

兄「リアルに」

兄「……そ、それでもし妹友さんさえよければ、の話なんだけどね」

妹友「あ、はい」

兄「その……俺と友だちになってほしいなって思うんだけど、どうかな」

妹友「と……、とっ……!」

兄「と?」

妹友「と、友だちから、ですか!?」

兄「から……?」

妹友「も、もちろん、オッケーです! マルッ!」

兄「マル」

妹友「二重マル?」

兄「……妹友さんって、面白い人なんだね」

妹友「そ、そうですか? なんだか、少し恥ずかしいです。はっ、初めて言われましたから、そんなこと……」

兄(嘘つくなよ……)

兄「なにはともあれ、これからもよろしくね、妹友さん」

妹友「はい! こちらこそ、至らぬ点も多々あるかとは思いますが……」

兄「あの」

妹友「はい」

兄「もう少し、砕けた口調で話してもいいんじゃないかな、と」

妹友「砕けた」

兄「うん」

妹友「……?」

兄「いや、ほら、妹と話してる時ぐらいのさ」

妹友「で、でも、兄さんは先輩ですし……」

兄「まあ、敬語は必要最小限としても……いや、それよりまずはリラックスすることかなあ」

妹友「リラックスですか」

兄「うん。さっきからペットボトル持つ手が震えてて、ものすごく心配になるんだよね。アル中かよっ! ……みたいなね。ははは」

妹友「ふふっ」

兄「そうそう、そういえば」ガサゴソ

妹友「?」

兄「クラスのやつから映画の割引券貰ってさ。二枚。『コマンドゥー』だって。観たことある?」

妹友「……」フルフル

兄「それで、もしよかったらテスト明けにでも一緒に観に行かない?」

妹友「いっ!?」

兄「!」

妹友「いいんですかっ!?」

兄「う、うん。ていうか、良くなかったら誘わないって……」

妹友「行きましょう!」

兄「うん、行こう行こう。じゃ、連絡先分からないと不便だしアドレスと電話番号も交換しておこっか」

妹友「いっ!?」

兄「!」

妹友「いいんですかっ!?」

兄(そういえば妹の口癖ってなんで「い」なんだろう)

自宅
───────────

兄「ただいま……」

妹「おかえり、お兄ちゃん」

兄「あれ、お前図書館で勉強するとか言ってなかった?」

妹「あはは、お昼も食べないで勉強なんか出来るわけないって。普通に別の道から帰ってきたよ」

兄「……もしかしてなんか作ってる系?」

妹「もう作っちゃった系だけど?」

兄「まじか。妹友さんと別れたあとモス買ってきちゃったよ」

妹「おっ、ちゃんと映画誘えた?」

兄「いや、誘えたけどさ……正直な話、あの子と話してると疲れるんだわ」

妹「? なんで?」

兄「ていうかあの変なノリで気付いたけど、だいぶ前から知ってたわ、妹友さんのこと」

妹「えっ……」

兄「部活中よく俺のこと見てたバド部の眼鏡ちゃんだ。いやーあれはしんどかった……って妹に言っても分からないよな。よし、モス食おうぜ! モス!」

妹「…………」

兄「しかしアレだな、女の子ってたった一年ですげー変わるものなんだな」モシャモシャ

妹「あのさ、お兄ちゃん」

兄「ん?」

妹「……焼きそば、二人分作っちゃったんだけど……」

兄「ん……どっちも食べるよ?」

妹「私、食欲ないから、モスだけ食べるね……」

兄「はぁ!? ふっざけんなよ、お前! ……いや、べつにいいけど」

妹「……」パクパク

兄「……」モシャモシャ

妹「お兄ちゃん」

兄「ん?」

妹「さっきの、どういう意味?」

兄「なに、さっきのって」

妹「『しんどかった』ってやつ」

兄「あー……」

妹「妹友ちゃんのこと、嫌いになった?」

兄「いや、そこまではいかないけど……まあ、あんまりいい印象は持てないかな、さすがに」

妹「それって、容姿の問題?」

兄「え?」

妹「相手が地味っぽい子だったから、しんどくなっちゃったの? 綺麗な人ならいいの?」

兄「あー、二人ってその頃から知り合いだったの? ま、べつにいいけど……とりあえず、見た目の問題ではないよ。うん」

妹「じゃあ、なんの問題?」

兄「そりゃ、言いたいことがあるなら黙って見てないで直接言ってくれ、ぐらいのことは思うしなあ……」

妹「お兄ちゃんだって、重度のシスコンだってこと今まで秘密にしてたくせに」

兄「……実の妹が大好きだって堂々と公言出来る奴の方が、よっぽどどうかしてる」

妹「そんなの、先か後かってだけ。隠し切れてない時点で同じことじゃない?」

兄「お前、なんでそんな怒ってるの?」

妹「怒ってない」

兄「……そうかよ」

兄「んおおおおおおおおおああああああああああああああ!!!!!!」

妹「!?」

兄「……あの頃の俺はさ」

妹「……」

兄「贔屓目に見ても、格好良くはなかったと思う。三年に上がるギリギリのところで準レギュにはなれたけど、それまではほとんど試合にも出させてもらえなかったしね」

兄「格好悪い自分を見られてたのが嫌で、恥ずかしくて……だからしんどいって感じてたのかもしれない。でもまあ、バスケ自体が楽しかったから。たとえ雑用でもさ。そこまで気に病んだりはしなかったけど」

妹「妹友ちゃんは」

兄「うん」

妹「お兄ちゃんのことを格好悪いなんて、一度も思ったことないよ。きっと」

兄「そうだと嬉しいなあ」

妹「デート、ちゃんと行ってあげてね」

兄「映画見るだけでデートになるのかねー……」

妹「一緒に街を歩いたり、ご飯食べたりするまでが映画です!」

兄「わっけわからん」

妹「や、映画館の前で待ち合わせして、映画観終わったらハイサヨナラ、なんて寂しすぎるでしょ? 常識的に考えて」

兄「俺、友と映画観に行った時とかそんな感じだったけど」

妹「男同士のアレとかコレは含みません!」

兄「なんだよ、アレとかコレって……」ズズズ

妹「焼きそば、もう冷めちゃってるでしょ」

兄「冷めた焼きそばは、また温めればいい。それだけだ」

妹「はいはい……」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月29日 (金) 00:13:31   ID: ypbgP-ag

続き書いてよ...

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