ミカサ「この長い髪を切る頃には」(933)

*現パロです。最初はミカサの黒髪が長いままで登場します。

*舞台は日本ですが、キャラの名前はカタカナのまま進めます。

*原作のキャラ設定は結構、崩壊。パラレル物苦手な方はご注意。

*基本エレミカ(ミカエレ)。他カプは展開次第です。

私は強い。誰よりも強い。

どんな屈強な奴と戦っても、私は負けない。

私より、強い人間なんて、この世界にいるのだろうか?

そんな風に驕っていた少女時代のある日、とある男達に喧嘩をふっかけられた。

たまたま急いで道を一人で歩いていたら、肩と肩がぶつかっただけなのに、相手のグループは私にいちゃもんをつけてきたのだ。

この辺りでは見ない顔だ。恐らく私の顔を知らないのだろう。

知っていればこんな風に難癖をつけてくる事はまずない。

男四人組の下品な風貌のそいつらに捕まって、睨まれた……のだけども。

不良少年1「……おまえ、結構、美人だな。俺、こういう長い黒髪、結構好みなんだけど。このあと、どうよ?」

と、私の髪を勝手に触って顔をしっかり見るなり、急に声のトーンを落として迫ってきた。

全く……私はそこまで暇ではないのだが。

対応するのも面倒臭くて、私は彼らを無視して立ち去ろうとした。

するとその先を阻まれてしまい、逃げられなくなった。

不良少年2「待てよ。そう、無視すんなよ。名前だけでも教えてよ」

不良少年3「いいだろ? なあ、アドレスも教えてよ」

嫌に決まっている。何故、今さっき知り合ったばかりの他人に名前やアドレスを教えなければいけないのか。

こいつらは、邪魔だ。社会の端っこで生きてるだけでも。

ここでこいつらを殺す権利を私が有していれば、間違いなく削ぐのだが。

ここは日本であり、法治国家であるので、そういう訳にもいかない。

私はただ、ため息をついてどうしたもんかと思っていた。

こいつらを叩きのめすのは簡単だが、私は、この後、用事がある。

もし万が一、騒ぎがバレて警察が来たら後々面倒だ。

時間を取られているこの事態に少々苛立ち、しかし面倒を起こすと更に時間を奪われるというジレンマに悩んでいたその時、私の目線の先に見知らぬ人物が現れた。

年は私とそう変わらないだろうか。同じ中学生に見える。

黒い学ランに、赤いTシャツを内側に着たその少年は、私と目が合う。

目が大きいと思った。黒い髪は普通の男の長さだが、全体的な顔立ちは女性っぽくも見える。

体つきは中肉中背。平均的な中学生、といったところだ。

その彼がこっちに近寄ってくるなり不機嫌そうに言い放った。

黒髪の少年「おい、そこのお前ら」

不良少年1「あ? なんだてめーは」

黒髪の少年「迷惑してんだろ。離してやれよ」

不良少年1「は? お前、この子のなんなの?」

黒髪の少年「…………か、家族だ」

咄嗟の嘘にしては上出来だと思った。

不良少年2「はあ? 嘘つけ。顔、全然似てねえだろ」

黒髪の少年「で、でも家族なんだよ! よ、よく見れば似てるところもあるだろ?!」

苦しい言い訳だと本人も思ったのだろう。

少々カミカミだったが、それでも彼は続けて庇ってくれた。

黒髪の少年「つか、いい加減にしろよてめーら。人の時間を奪ってんじゃねえぞ!」

不良少年2「はあ?! 奪ってるのはそっちなんですけど?! 邪魔すんじゃねえよ!」

いや、人の時間を奪っているのは明らかにあなた達なのだが。

全く……こういう奴らには何を言っても話は通じないようね。

私が諦めた気持ちで拳を握り、事態を片付ける最速の展開を選ぼうとしたその時、

黒髪の少年「邪魔してんのはそっちなんだよ! この子はこの後、用事があるんだよ! てめーらに構っている時間なんてねえんだよ! いいから離せっつってんだろ!」

と、叫んで私より先に手を出してしまったのだ。

殴り倒された男の仲間はその直後、カッとなり、黒髪の少年に殴り返す。

私は呆気に取られてワンテンポ遅れを取ってしまい、ハッと我に返った。

私が気がついた時にはもう、黒髪の少年は奴らに危うくボコボコにされかけていた。

しまった。私は慌てて奴らの後ろからハイキックをお見舞いして、後頭部にダメージを入れて気絶させ、奴らを一掃した。

その情景を見て黒髪の少年は目を丸くしていた。

私「………ごめんなさい。手助けが遅れて。まさかあなたが先に手を出すなんて思わなかった」

黒髪の少年「いや……つか、なんつー強さだよ」

私「あなたの方こそ少し無謀過ぎる。お節介は嬉しいけれど時と場合による」

黒髪の少年「ふん……男として間違った事はしてねえよ」

と、言って彼はひょいっと立ち上がり、晴れやかに笑ってみせた。

黒髪の少年「腕時計をずっとチラチラ見てたしな。傍から見て困ってたように思えたから。待ち合わせに遅れそうになってんのかと思ってさ」

私「うん。正解。ありがとう。そこまで気遣ってくれて」

黒髪の少年「いいって。オレもこの後に用事があるし、そういう時、邪魔されるとイライラすんだろ?」

私「え? あなたも用事があるのに助けてくれたの? いい人なのね」

黒髪の少年「あ………ま、まあ……遅刻したら相手に謝るしかねえけどな。じゃあな! オレも急ぐから!」

と言って彼は忙しなくその場を立ち去ってしまったのだった。

本当にいい人だった。この日本もまだまだ捨てたものではない。

そんな風に思いながら、自分の目的を果たすべく、私も先を急いだのだった。





私「ここね………」

私は待ち合わせのお店に到着した。

少々、お値段が張りそうな雰囲気の良い和風のお店の中に入る。

恐らく先に母が待っているだろう。予約している席に案内されると、母が着物を着て待っていた。

ミカサの母「ミカサ、遅いわよ。道に迷ったの?」

ミカサ「うん。少しだけ」

本当の事を言うわけにもいかず、私は適当な受け答えをした。そして母の隣に正座して座る。

今日は私の母の再婚の相手を紹介して貰う席なのだ。

相手の男性の名前はグリシャさんというらしい。

丸い眼鏡をかけた優しそうな男性だった。職業はお医者さんだそうだ。

グリシャ「すみません。うちの方の息子が遅れているようで…」

ミカサ「いえ、私も遅れてしまったので、構いません」

和風の卓には私と母と相手のグリシャさん、そしてもう一人、グリシャさんの息子さんが来る予定だ。

私の母が再婚するので、私には新しい家族が増える。

グリシャさんの息子さんと、仲良くやっていければいいけれど。

息子さんを待っていると、私より少し遅れて、その彼はやってきた。

バッタンバッタンと忙しない音を立てながら滑り込むようにしてその彼はやってきた。

息子「親父! 遅れてごめん! ちょっと道に迷っちまって!」

ミカサ「!」

息子「!」

彼と目が合うなり、私は驚いてしまった。

そう。あの時、私に加勢してくれたあの黒髪の彼が、グリシャさんの息子さんだったのだ。こんな偶然、あるのだろうか。

グリシャ「エレン。いいから座りなさい。早く」

エレン「ああ、すみません……(ペコリ)」

申し訳なさそうにして彼はグリシャさんの隣に正座した。

グリシャ「息子のエレンです。そちらのミカサさんとは学年が同い年になると思います」

ミカサの母「まあ、とても愛らしい息子さんですね」

エレン(むっ……)

エレン、と呼ばれた彼は私の母の感想を聞いてあからさまにむっとしていた。

どうやら「可愛い」と言われるのは好みではないらしい。

感情の起伏が激しいタイプなのだろうか。顔に気持ちが良く出ている。

グリシャ「いやいや、愚息ですよ。こんな席にも遅刻してくるような息子ですし」

エレン「だから、道に迷ったって言ってるだろ?! 大目に見てくれよ」

ミカサ「私も迷ったので、同罪です」

真実は言わないでおこう。と、私達は視線だけで合図をして頷きあった。

ミカサの母「まあまあ、いいじゃないですか。今日はいろいろ、お互いの事を話しましょう。今後の事も含めて……」

グリシャ「ですね。エレン、新しい家族になる二人とちゃんと仲良くするんだぞ」

エレン「………それはそっちの出方次第だけど」

グリシャ「こら、エレン」

エレン「ふん……まあ、女だし、守ってやろうとは思うけど?」

なんとなく、この「エレン」という人がどんな人間なのか分かってきた気がする。

ミカサ「ふふふ………」

私は先ほどの事を思い出して小さく笑ってしまった。

守ってやるも何も、守られたのはエレンの方なのに。

その意図が通じたのか、エレンは顔を真っ赤にしてそっぽを向いて不機嫌そうにした。

グリシャ「全く……そんなんだから、友達も一人しかいなんだぞ、エレン」

エレン「別にいいだろ。一人いれば。アルミンと仲良くやってるし」

グリシャ「そうは言ってもね。今年の春からは高校生になるんだし、中学生の時のままの交友関係じゃいけないよ」

エレン「んー……まあ、そりゃそうだけどさ」

グリシャ「そう言えば、そちらのミカサさんは、春からはどちらに?」

ミカサ「講談高校です」

エレン「なんだ。俺と同じ高校か。じゃあそんなに頭良くねえな」

エレン「頭よかったら、集英の方に行くだろ」

グリシャ「こら、エレン」

ミカサ(…………内申点で落とされたとは言えない)

ミカサ(喧嘩をふっかけてきた相手を全員、病院送りにした過去は言わないでおこう)

点数的には集英高校でも余裕で大丈夫だったのだが、私は過去にいろいろ問題を起こしてしまっているので、内申点で落とされたのだ。

そういう訳で私は中学校ではちょっとお転婆が過ぎる「頭のいい不良少女」と呼ばれていた。

別に学校を無断で欠席したり、タバコを吸ったり、バイクに乗って暴走行為などは一切していないのだが。

ただ、ついつい、手が出るのが早いせいでいつの間にかそう呼ばれるようになってしまったのだ。

そういう裏事情があるので、集英高校は落とされてしまったのだ。

エレン「なんだよ。事実だろ? この辺は頭いい奴、皆、集英に行くしな。アルミンは集英に行く学費がなくて泣く泣く諦めたけど。そういう事情がない限りは集英に行くだろ?」

ミカサ「その、アルミンというお友達も講談?」

エレン「そうだな。アルミンは特待生扱いで講談に入った。多分、首席になるんじゃねえのかな?」

首席の成績で入学すると新入生の代表の挨拶を任される筈だ。

入学式の何日か前には連絡がくる予定とか、入学の案内書に書いてあったように思う。

きっとその挨拶の場で私はアルミンという人を見る事になるだろう。

エレン「アルミンみたいな特別な例を除けば、講談に来る奴は皆、頭悪くて運動神経のいい奴ばっかだよ。講談はスポーツに力入れてる学校だからな。全国制覇も何度かしてるし、そっちの方じゃ有名だ」

ミカサ「という事は、エレンも運動神経は良い方なのね」

エレン「まあまあかな。全国レベルって訳じゃねえけど」

ミカサ「そう。では、部活にも入るの?」

エレン「おう! なんか面白そうなのがあれば入るつもりだ」

ミカサ「一緒に、見て回ってもいいだろうか?」

エレン「いいぞ。じゃあその時、アルミンもついでに紹介するわ」

ミカサ「是非、お願いする」

そんな感じでいろいろ話して、私達は雑談を続けた。

今日のところは夕飯を食べてお開きになり、それぞれの家に帰る事になった。

来週には、私達はエレンの住んでいるおうちに住む事になる。

引越しの準備、まだ全然終わってないけれど。頑張らないといけない。

家に帰ってから雑然とした部屋の中で母が言った。

ミカサの母「ミカサ、仲良くやれそうね」

ミカサ「うん……多分、大丈夫だと思う」

ミカサの母「いろいろ大変だとは思うけど、ごめんね」

ミカサ「謝る必要はない。お母さん。私は、お母さんが幸せならそれでいい」

私の父は私の小さい頃、早くに亡くなった。

暴漢に襲われた私を庇って、父は亡くなってしまったのだ。

母もその時に大怪我を負い、肩にはまだ傷跡が残っている。

手術の末、奇跡的に助かった母は今まで、女手一人で私を育ててくれた。

喧嘩ばかりして騒動を起こす度に母に心労もかけてしまって申し訳なく思っていたのだ。

そんな母が新しい人生を歩むのなら私に反対する理由などない。

ミカサの母「そう……ありがとうね。ミカサ」

ミカサ「うん……」

グリシャさんという新しい父親。

そして、エレンという新しい兄弟との新しい生活がもうすぐ始まる。

この長い髪を切る頃には、きっと今までにない生活が始まるだろう。

不安もあるけれど、幸せな未来を想像しながら、その日の私は眠りについたのだった。

今回はここまで。
原作とは違う形ですが、エレンとミカサが家族となる現パロです。
ミカサが若干、ヤンキー娘っぽい感じですがどうかご容赦を。

そんな訳であっと言う間に引越しの日はやってきた。

母の再婚相手であるグリシャさんは、お医者さんであるだけあって、お金持ちだ。

おうちも一軒家で、とても大きい。

今までアパート住まいだった私にとっては未知の世界だ。

朝早くから引越し業者と共に新しい家にトラックで荷物を運んで貰い、私の新しい部屋にも荷物をどんどん運んで貰った。

私の荷物は非常に少ない。私の部屋は和室だと聞いていたので、ちゃぶ台とタンス、あと教科書等を置く本棚を置いた。

八畳の畳の部屋だ。空間が広くてごろ寝が出来る。

パソコンは持ってないしテレビもない。洋服も必要最低限の量しかないので私の分の荷物はすぐに運び終わった。

日当たりも良好で南向きの窓だ。ベランダまである。これなら雨の日も洗濯物が外で干せる。

これから贅沢な日々を味わえると思うと、不謹慎にもわくわくしてきた。

エレン「おー終わったか? ミカサ」

ミカサ「うん。もうだいたい終わった」

エレン「んじゃ、この後は昼飯だ。そば食うぞ」

引越しをしたらそばを食うのは定番だ。理由などない。

私達は四人で台所でそばを食べながら今後の事を話し合った。

グリシャ「昼食を食べ終えたら、必要な物があれば追加して買いに行こう。車を出すよ」

エレン「ミカサの部屋、俺より殺風景だったぞ。何か置いたらどうだ?」

ミカサ「そうだろうか?」

エレン「女の子の部屋なんだし……そうだ。カーペットとか、どうだ?」

ミカサ「畳なので要らない」

エレン「いや、色合いを女の子の部屋っぽくしていいって話をしてるんだが」

ミカサ「尚更要らない」

グリシャ「ミカサ、遠慮しなくていいんだよ。欲しい物があったら言って欲しい」

エレン「金なら持ってるからな。父さんは」

グリシャ「エレン、一言多いよ。まあ、事実だけど」

ミカサ(中身は似たもの親子のようね)

軽口を叩き合うところが似ていると思った。

しかし私は本当にカーペット等は要らないので困った。

ミカサ「今、欲しい物は特に浮かばない……」

エレン「そうなのか。んーじゃあ、俺が昔使ってた物とかやるよ」

ミカサ「いいの?」

エレン「捨てるのが面倒で押入れに入れっぱなしだった物がいくつかある」

ミカサ「では、それでいい」

エレン「おばさんは、何か新しいものを買わなくていいんですか?」

エレンはまだ、私の母に対しては少し遠慮がちのようだ。

ミカサの母「ええ。今すぐ必要な物はないわ。私の家にあった物を引き続き使えば済むことよ」

グリシャ「では午後からはどうしようか」

エレン「二人で出かけてくれば? オレ達は家にいるよ」

グリシャ「………喧嘩はするなよ?」

エレン「しねえって! 大丈夫だってば」

グリシャ「じゃあ午後からは分かれて行動するか。エレン、留守は頼んだぞ」

という訳で午後、私は早速エレンの部屋にお邪魔する事になった。

エレンの部屋は私の部屋より更に広い十畳の畳の部屋だった。

ちゃぶ台の上には漫画本、教科書、部屋の端っこにはタンス、あとテレビなどが置かれている。

部屋の中はお世辞にも綺麗とは言えなかったが、一番気になったのは敷きっぱなしの布団だった。

ミカサ「エレン、布団は干すか押し入れに入れないと」

エレン「え? 面倒くせえからいいよ」

ミカサ「折角天気がいいのだから、今からでもいい。干そう」

私は窓を開けてエレンの布団をベランダに干す事にした。

エレン「わー! 勝手なことすんなって! 馬鹿、やめろ!」

ミカサ「何を恥ずかしがっているの? 布団を干さない方が恥ずかしいのに」

エレン「そういう問題じゃねえよ。なんていうか、布団なんてたまに干せばいいだろ」

ミカサ「何日に1回のペース?」

エレン「………月一?」

ミカサ「ダニが繁殖しているに決まってる! 病気になったらどうするの」

エレン「死にゃしねえってば! その程度の事で」

ミカサ「信じられない。男の人って皆そうなの?」

エレン「あー…どうだろうな? 父さんは忙しくて家事なんてしてないし、俺もそういう話は他の奴とはしねえから分からん」

ミカサ「エレン、あと部屋の掃除もしよう。ちょっとごちゃごちゃし過ぎている」

エレン「ええ? これが普通なんだけどな……」

ミカサ「普通ではない。絶対、普通ではない。うちの母はまめに掃除をしていた」

エレン「そっかあ……うち、母さん、早くに亡くなったから、その辺はよそと違うのかもな」

ミカサ「え?」

その時、私はついつい、声を大きくしてしまった。

エレン「あれ? 聞いてねえの? 俺の母さん、俺が9歳の時に亡くなってるんだ」

ミカサ「そうなの? 偶然ね。うちは父の方が9歳の時に亡くなっている」

エレン「え? そうなのか。そりゃあ大変だったなあ」

私はベランダから部屋に戻って畳の上に正座してから言った。

ミカサ「エレンも大変だったのね」

エレン「ん? まあ、そりゃはじめは大変だったけどもう慣れた」

エレンもあぐらをかいて私の話を聞いてくれている。

エレン「母さんがいなくなってからは、口うるさく言う人がいない訳だし、ついつい自分のペースで生きてたんだよな。父さんも忙しいし、父さんはそういうのにはうるさいタイプじゃねえし」

ミカサ「ではこれからは、私が代わりに口やかましく言ってあげよう」

私が少しだけにやっとしながら言ってあげると、エレンは急にオロオロし始めた。

エレン「げげ! それは勘弁してくれよ。オレの世話なんかしなくていい!」

ミカサ「ダメ。私が定期的にチェックしようと思う」

エレン「ううう………参ったな。まさかこんな事になろうとは」

ミカサ「ふふ……」

主導権をまずは私の物に出来そうだ。これはいい。

エレンは暫く困ったように頭を掻いていたけれど、渋々諦めたようだ。

エレン「…………分かったよ。今度からは真面目に自分で掃除する。この話はおしまい。次行くぞ」

そう言ってエレンは逃げるように押し入れを開けてゴソゴソし始めた。

エレン「カーペットなら前に買った予備があったはず。緑色だけどいいよな?」

ミカサ「構わない。それを敷いておく」

エレン「他には……ああ、使ってないノートパソコンとかもあるな。XPだけどいいよな?」

ミカサ「XP?」

エレン「え? 知らねえの? パソコン触ったことねえの?」

ミカサ「授業でしか、ない」

エレン「まじか……学校じゃどのバージョンだった?」

ミカサ「2000だったような?」

エレン「古! いや、まあ、使えなくはないけど。お前、どんな中学校にいたんだよ」

ミカサ「街からは遠い、割と田舎の方かも」

エレン「そうか……東京もまだまだ発展してねえ学校もあるのか」

エレンはそんな風に言いながら何故か納得したように頷いた。

エレン「じゃあそういうのも含めて俺がいろいろ教える。あ、携帯のアドレスも交換しておこうぜ」

そう言ってエレンは私の持っている携帯とは違う機種を出した。

緑色がかった、黒っぽい色のガラケーと呼ばれる電話だった。

エレン「オレも早くスマホにしてえけどな。ついついこいつに愛着があって買い替え時期を逃してるんだよな」

私も自分の部屋から自分の携帯電話を持ってきた。

エレン「お、お前もガラケー族か。じゃあ赤外線使えるな。ほい」

ミカサ「赤外線? どれ?」

エレン「ああ、暫く使わないと忘れるよなーって、おい!」

エレンは私の携帯電話を見るなりツッコミを入れた。

エレン「これ、相当古い機種だろ?! え……まさか赤外線、入ってないとか?」

ミカサ「よく分からない。とりあえず、電話とメールは出来るけども」

エレン「いや、赤外線はあるだろさすがに………ええ?! ついてねえ?!」

ミカサ「でもちゃんと電話は出来るので構わない」

エレン「お前、これはまずいって! ガラケーの中でも最古の部類に入るって」

ミカサ「まだ使えるので大丈夫」

エレン「いや、明日にでも壊れる可能性あるぞ」

ミカサ「そ、そうだろうか?」

もしそうなったらちょっと困る。

エレン「生きてる事が奇跡だ。その携帯は。物持ち良すぎるだろ」

そうなのだろうか? でも、壊れない限りは使い続けたいのだ。

エレン「いや、そもそもそれに対応するサービスが生きてたって事の方が驚きだ。オレにとっては」

ミカサ「私はそこまで交友関係も広くないし、これで十分なのだけども」

エレン「いや、でも、これ、親父に見せたらさすがに買い替えろって言われるレベルだぞ」

ミカサ「そう……それは困る」

私も私でこの携帯電話に愛着があるので出来るなら手放したくない。

ミカサ「私はこれでいいので。エレンのアドレスに一度、メールを送る」

エレン「あ、ああ………(原始的な交換だな、おい)」

という訳で私達はお互いのアドレスを交換して登録し合ったのだった。











エレン「よし、父さんいないし、ゲームするぞ!」

ミカサ「ゲーム? 何をするの?」

エレン「テレビゲームだ。いろいろあるぞ。ミカサは何が好きだ?」

ミカサ「テレビゲームはやった事がない……」

エレン「えええ?! 今時いるんか、そういう奴」

ミカサ「ここに一人いる」

私がそう即答するとエレンは「へー」という声を漏らした。

エレン「もしかしてミカサはアレか? スポーツやってたとかか?」

ミカサ「やってない。中学は部活に入ってない」

エレン「じゃあ、家の手伝いで忙しかったとか?」

ミカサ「………まあ、そんなところ」

詳しい事は伏せる事にした。喧嘩三昧だったなんて、言えない。

エレン「そっかそっか。だったらオレのいち推しのゲームをしよう」

そう言っていくつかあるソフトと思われるケースを吟味するエレンだった。

エレン「オレはこの、ICO×ICOっていうゲームが好きなんだ」

ミカサ「イコイコ? どういうゲーム?」

エレン「アクションと謎解きだな。複雑なアクションもあるけどストーリーが泣けるんだ」

ウイイイイイン………

ディスクを読み込んでゲームが始まった。

オープニングが荘厳に始まり、操作出来るようになった。

まずは見本としてエレンが先に操作している。

どうやら小さな少年と少女の物語のようだ。

少年は木の棒のような物を振り回して黒い影のような敵をなぎ倒していく。

しかし油断すると、その黒い影達に少女が攫われてしまうので、少女を庇いながら戦わないといけない。

ミカサ「む、難しそう……」

エレン「慣れるまでが大変だった。やってみるか?」

コントローラーを渡されて私も少年を操作する事になった。

しかしあっと言う間に少女を奪われて焦る。

エレン「馬鹿! 少女を奪われたら、他の黒い影は無視しろ! 急がないと穴の中に吸い込まれるぞ!」

ミカサ「え? そうなの?」

エレン「急げ! 黒い穴に吸い込まれたらゲームオーバーだ!」

これはなんて恐ろしいゲームだろうか。

私は急いで少女の元へ走り、黒い影を殲滅した。

そして引っ張り上げてまた、少女と手を繋いで先を急ぐ。

少女を呼ぶ時に「イコイコ」と少年が声を出す以外はしゃべらないようだ。

ミカサ「ドキドキした……」

エレン「間一髪だったな」

ミカサ「こんなのがずっと続くの? 心臓に悪い」

エレン「それがこのゲームの醍醐味だからな」

ミカサ「そうなのね。分かった。気をつける」

そしてお話が進むと今度は謎解きが始まった。

このままでは先の道を進むことは出来ないようだ。

ミカサ「? 何をすればいいの?」

エレン「ここを渡るには普通の方法じゃダメなんだ。頭を使って、岩とかを運んで道を作る」

ミカサ「なるほど」

エレン「初見じゃ難しいよな。ここはオレがやってやるよ」

そんなこんなで、エレンと私は交互に操作しながらお話を進めた。

物語は単純なものだったが、操作性がかなり難しく、飽きずにずっと遊べた。

ミカサ「あ………エレン、もうこんな時間」

ゲームに夢中になってたせいであっと言う間に夕方になってしまった。

エレン「あ? 本当だ。しょうがねえ。セーブすっか」

今日のところは途中までで区切っておしまいにする事にした。

ミカサ「初めてゲームをやったけれど、面白かった」

エレン「初めてにしちゃ上出来だよ。ミカサ、運動神経いいのか?」

ミカサ「た、多分……」

体育は5段階評価で5しか取った事がない。

先生曰く、本当は7をあげたいくらいです。と、通信簿に書かれた事もあるくらいだ。

エレン「なるほどな。通りでアクションうまい筈だ。慣れるのオレより早かったぞ」

ミカサ「そう?」

エレン「んーだったら、アクション系のゲームがミカサには向いてるかもな。オレがいない時でも、好きなのあったら勝手に遊んでてもいいぞ」

ミカサ「いいの?」

エレン「いいよ。うちにあるのは一通りクリアしてるソフトだしな。全クリしてないソフトはねえし」

ミカサ「エレンはゲームが好きなのね」

エレン「ま、それなりにな。男の子だしな」

エレンといろいろ話していたらチャイムが鳴った。

グリシャさん達が帰ってきたようだ。

エレン「あ、父さん帰ってきたな。下に降りようぜ」

ミカサ「うん」

私とエレンは一階に降りた。すると、グリシャさんが嬉しそうな顔でお土産を渡してきた。

グリシャ「ふふふ………エレン、ミカサ、ちょっといいものをあげよう」

エレン「何? なんかお土産か?」

グリシャ「ああ。ほらこれ、可愛いだろ?」

グリシャさんが私に渡してくれたのは黒っぽい熊のぬいぐるみだった。

眼がまんまるで、ほっぺが赤い。口は半開きでちょっと間抜けな顔だ。

グリシャ「UFOキャッチャーで久々に取れたんだ。ミカサにあげようと思って」

エレン「その年でゲーセン行ってきたんか」

グリシャ「夕飯の買い物のついでだよ。父さん、こう見えてもうまいんだぞ?」

エレン「オレの方がうまいし」

ミカサ「あ、ありがとう……ございます」

やばい。とても可愛い。ぬいぐるみなんて初めて貰った。

エレン「オレはいらね。ミカサ、オレの分はミカサにやるよ」

ミカサ「両方貰ってもいいの?」

エレン「いいよ。部屋にでも飾っておけば?」

ミカサ「あ、ありがとう……」

私はふたつの熊のぬいぐるみを両手に抱えて部屋に戻って部屋の壁際に設置してみた。

ひとつは普通の顔。もうひとつはにっこり笑っている。

何だか仲良さそうな感じでいいと思った。

おかげで私の部屋が少しだけ、賑やかになって嬉しかった。

そんな感じで引越しの初日はとても穏やかに過ごして家族揃って夕飯を食べた。

食後はゆっくり風呂に入った。シャワーもアパートに住んでいた時と比べると性能が段違いだった。

お風呂も大きい。こんな贅沢を味わうのは初めての経験だ。

私は自身の濡れた長い黒髪をタオルに包み、体を拭いて脱衣所に出た。

その直後………

ガラッ!

エレン「ふふーん……」

ミカサ「…………え?」

エレン「…………あ」

エレンが何故か着替えを持って脱衣所で服を脱いでいた。

幸い、脱いでいたのは上だけで、下はズボンのままだったけど。

こちらは勿論、全裸な訳で…。

エレン「…………」

ミカサ「…………」

お互い片親同士で、今の今まで自由に生活していたから、相手を気遣うという発想がなかったのが仇になった。

エレンは私が風呂に入っていた事を知らず、また私もエレンに風呂に先に入るという伝言を残していなかった。

故に起きた、衝突事故のようなものだった。

エレンは私の裸を見るなり、呟いた。

エレン「腹筋すげえ……!」

私は当然、エレンの片頬を思い切り平手打ちした。







グリシャさんが爆笑していた。

いや、この場合は失笑と言ったほうが正しいかもしれないが。

私達の家庭内の風呂での衝突事故に対しての感想が、それであったのだ。

グリシャ「それは申し訳ない事をしたね。エレン、いつもの感覚で風呂に入ろうとしたんだろ」

エレン「ああ……父さんはいつも寝るのも遅いし風呂も遅いからオレが先に入らねえと思って、ミカサが先に入ってるとは思ってなかった」

ミカサ「まあ、私も伝言をしていなかったのが悪いのだけども、裸を見るなり「腹筋すげえ……!」はないと思う」

エレン「わ、悪かったよ。ついつい、板チョコみてえな腹筋だったからつい、見入っちまったんだよ」

胸より先に腹筋を注視されてしまった私は女としてのプライドが傷ついたのだ。

まあ、私の腹筋は確かに六つか八つは分かれてるのだけども。それはそれ、これはこれである。

ミカサ「今度から気をつけて欲しい。ルールを決めよう。私は8時から入るので、エレンは8時30分から入って欲しい」

エレン「ええ? 何で厳密に決めるんだよ。面倒くさいだろ。日によっては風呂の時間なんて変わるだろ」

ミカサ「そうなの? 私は8時と決めたら毎日8時に入るのだけども」

エレン「そんな時計みたいな生活は出来ねえよ。ミカサが先に入って、その後にオレに声かけてくれればそれでいい。その後に入るから」

ミカサ「でも、そうなると後の人がつかえるのでは?」

ミカサの母「いいわよ。その辺は適当で。ミカサが最初に入っちゃいなさい」

グリシャ「女の子だからな。うん、それがいい」

エレン「じゃあ、ミカサ、おばさん、オレ、父さんの順でいいか」

グリシャ「それでいいな。よし、次からそうしよう」

私以外は割とざっくりとした性格のようだ。私が生真面目すぎるのだろうか?

ミカサ「一番風呂で申し訳ないのだけども」

エレン「でもミカサは毎日、風呂入る方なんだろ? オレはゲームやりこんでる時は風呂は入らねえから」

ミカサ「え……?」

グリシャ「私もパソコンでの仕事を抱えている時は入らない事も多いな」

ミカサの母「あらあら。ダメですよ。ずっかけては」

グリシャ「すみません。似た者親子なんですよ」

と、グリシャさんが弁明する。

ふむ。そういうものなのだろうか。やはり女性と男性では感覚が違うようだ。

しかしこれから先は家族としてやっていかなければいけない。

お互いの感覚の違いは徐々に慣れていく事だろう。

エレン「じゃあおばさん、お先にどうぞ」

ミカサの母「あらあら、ごめんなさいね」

そして母は先に風呂に入っていった。

グリシャさんも部屋に戻り、リビングには私とエレンの二人。

ミカサ「…………」

エレン「まだ怒ってるのか? 機嫌直してくれよ」

ミカサ「怒ってはいないけど何だか釈然としない」

エレン「腹筋を見られた事がか? いや、あんだけすげえの見せられたらそら、胸より先に腹筋見るだろ」

ミカサ「………私の胸は腹筋に負けた。けしてペチャパイではないのに」

エレン「いや、全く見てねえ訳じゃねえけど」

ミカサ「…………エレンはムッツリスケベのようね」

エレン「お前、それを言わせるか?!」

エレンはそう言って困惑していた。顔を赤くして不機嫌そうにしている。

エレン「あーもう、今回のは事故だからな! お互いに水に流そうぜ。いいな!」

ミカサ「それは今後のエレンの態度次第」

エレン「………オレのセリフ、微妙にパクるんじゃねえよ」

エレンはそう言ってむすっとしたけれど、それ以上、言い返さなかった。

ミカサ「……嘘。冗談を言ってみた」

エレン「あっそ。じゃあ許してくれるんだな?」

ミカサ「家族になったのだから、許す」

エレン「………まあ、ならいいんだけど」

エレンは頭を掻いて私には顔を見せないようにして背中で語った。

エレン「慣れるまでは本当、気をつけねえといけないな。……お互いに」

全くその通りだと私も思った。

今回はここまで。
まだ互いにぎこちないエレンとミカサの二人ですが、宜しくお願いします。

そしてその日の夜、突然の電話が鳴った。

自分の携帯に電話がかかってくるなんて珍しい。

私は慌てて出た。何故なら相手は講談高校とあったからだ。

ハンジ『あ、夜分すみません。講談高校の者ですがミカサ・アッカーマン本人様でしょうか?』

ミカサ「はい。ミカサは私です」

ハンジ『今年の入学試験で首席成績者に連絡をさせて頂いているんですが、今年は二人、首席合格者が出まして、新入生の代表の挨拶について相談させて頂きてくて電話をしたんですが……』

ミカサ「え? という事は、私が首席合格したんですか?」

ハンジ『はい。ミカサさんとアルミンという生徒が同点でトップの成績でしたので、お二人に挨拶を依頼出来ないかと思いまして』

ミカサ「…あの、私の方は辞退させて貰いたいんですが」

ハンジ『え?』

ミカサ「その、人前に出るのが苦手なので、もう一人、首席がいるのではあれば、その方一人にお願い出来ませんか?」

ハンジ『そうですか…ちょっと確認してみますね。もしもう一人の方も辞退された場合は、お二人で話し合ってどちらかが出る形になると思いますが、それでもよろしいですかね?』

ミカサ「その場合は仕方ないですね」

ハンジ『分かりました。ではまた日を改めて連絡させて貰います。それでは」



プッ…



思わぬ事になった。まさか私も首席合格していたとは。

でも、出来る事なら目立ちたくない。何故なら、過去が過去であるが故に。

アルミンというエレンのお友達さんも首席なら彼に挨拶を任せたい。

自身の過去が多くの人に露見する事を恐れて私はそこで逃げてしまったのだ。

次の日。3月30日。日曜日。

このお休みの午前中に、突然、可愛い女の子がうちにやってきた。

誰だろう? インターフォン越しに見える金髪の美少女に私は見覚えがない。

ミカサ「どちら様でしょうか?」

アルミン「あ、アルミンです。エレン、いますか?」

アルミンと名乗ったその美少女はニコニコと屈託のない笑顔を見せている。

そう言えば以前、エレンにはアルミンという友人が一人だけいると言っていた。

まさか女の子だとは思わなかったけれど、エレンの友人なら家にあげてもいいだろう。

ミカサ「エレンは今、部屋にいます。呼んでくるので待ってて欲しい」

私はエレンにアルミンが来たことを伝えると慌てて降りていった。

もしかしたら本当は友人ではなく彼女なのかもしれない。

まだ、親には隠しているとか、そういう可能性もあると思った。

エレン「よーアルミン! あがれあがれ」

エレンも同じように嬉しそうにニコニコして対応している。

うん、これは友人というより彼女の可能性が高い気がする。

隅に置けないという奴だと思った。

アルミン「知らない声の人がインターフォンに出たからびっくりしたよ。あ、おじゃまします」

ミカサ「ゆっくりしていくといい」

アルミン「…………えっと、もしかして、エレンの彼女?」

エレン「馬鹿! 違うって! ミカサはその……」

ミカサ「彼女はアルミンさんの方でしょう?」

アルミン「え……? (青褪め)」

エレン「はあ? (青褪め)」

ミカサ「隠さなくてもいい。これだけの美少女。自慢していいと思う」

アルミン「エレン……? これってどういう事?」

エレン「いや、オレ、ちゃんと説明したぞ?!」

アルミン「じゃあ何で勘違いしてるの?! 僕は男なのに!!」

…………え?

エレン「知らねえよ! オレはちゃんとアルミンは友人だってミカサに言っておいたし!」

ミカサ「待って待って。アルミン……は、男性なの?」

アルミン「見れば分かるだろ?! 胸もないよ?!」

ミカサ「ただの貧乳だと思ってしまった」

アルミン「酷いよ! 僕は正真正銘、男の子だから! 今日だって、ラフな格好だろ?!」

ミカサ「Tシャツとズボンなら私だって同じ」

ミカサ「あと、声も可愛いと思ってしまったので女性だと思ったの」

アルミンにそう伝えると彼はすっかり落ち込んで床にのの字を書き始めてしまった。

アルミン「もう何回目になるか分からないけど、僕はそんなに女の子に見えるのかな……」

エレン「あ、アルミン、そんなに落ち込むなって……」

アルミン「だってだって……(しくしく)」

これは申し訳ない事をしてしまった。

ミカサ「ごめんなさい。間違えてしまって」

アルミン「うん。いいよ。しょうがないから。僕は小柄だし、筋肉も薄いし、声だって高いし……」

ミカサ「いえ、それ以前に顔が可愛いのが一番、間違われる要素だと思う」

アルミン「………うん。そうだね。分かっているんだけどね」

どうしよう。アルミンが落ち込んでしまってすっかりいじけてしまった。

何か、彼の機嫌を良くする方法はないだろうか。

エレン「ミカサ、冷蔵庫にプリンあっただろ」

ミカサ「あ、ある……」

エレン「後で部屋に持ってきてくれ。それで多分、大丈夫だから」

エレンはアルミンと部屋に戻っていった。

確かにおやつを食べれば不思議と気分も上昇する。

食べ物で機嫌を取るのが一番かもしれない。そう思い、私はお茶とプリンをトレイにのせてエレンの部屋に運んだ。

するとプリンを見るなり少しだけ元気を見せたアルミンだった。

アルミン「んー美味しい! 生き返った!」

エレン「アルミンは甘いもの好きだよな」

アルミン「プリンを嫌いな奴なんて見たことないよ」

エレン「オレも嫌いじゃないけどさ。アルミンは美味そうに食うよな」

ミカサ「確かに」

見ていると私まで食べたくなってきた。

エレン「ん? ミカサの分は持ってきてねえのか?」

ミカサ「うん。冷蔵庫には2個しかなかった」

エレン「あっちゃー……だったらオレのを半分やるよ」

ミカサ「いいの?」

エレン「食べたそうにしてたからな」

どうやら私も顔に感情が出ていたらしい。

ミカサ「では、残りを頂きます」

私がパクパクそれを平らげると、アルミンが不思議そうに言った。

アルミン「ところでエレン、その子は……」

エレン「ああ、前にメールで言っただろ? ミカサだよ。オレの新しい家族だ」

アルミン「ああ! やっぱり! そっか……同い年の女の子って言ってたからもしかしてって思ってたんだ」

エレン「昨日、うちに来たばっかりだ。まだ実感はねえけどな」

ミカサ「それはお互い様」

私はふふっと小さく笑ってエレンと見つめ合った。

まだお互いに慣れないけれど、エレンはいい人なので、大丈夫だと思う。

アルミン「へー……まるでエロゲの主人公みたいだね、エレン」

エレン「ぶ! あ、アルミン……それは言うなよ」

アルミン「だってある日突然、自分に血の繋がりのない家族が出来て同居だなんて、よくある設定じゃないか」

エレン「よくある設定だろうが何だろうが、現実にも起きたんだからしょうがねえだろ」

ミカサ「エロゲ? エロゲって何の事?」

私は疑問に思った事をつい、口に出してしまい、二人同時に「え?」という顔をされた。

アルミン「エロゲを知らないの?」

エレン「昨日、ようやくテレビゲームをしたような奴だから、知らないのも無理ねえか」

アルミン「え? そうなの?」

エレン「どうもミカサはそういうのに疎いらしい。まあ、エロゲっていうのは、エロいゲームの略称だよ。男の子なら一度は挑戦するゲームの事だ」

ミカサ「そう。女の子はしないゲームなのね」

アルミン「普通はやらないね。あ、そうそう。エロゲで思い出した。エレン、誕生日おめでとう」

と言って、アルミンは緑色の紙で綺麗に包装されたプレゼントを渡した。

アルミン「今回も僕のおすすめだよ。存分に楽しんで」

エレン「おう……開けるぞ。(カサカサ)……って、エロゲかよ?!」

ミカサ「どんなの? (覗き見る)」

エレン「馬鹿見るな! 女の子は見ちゃダメ!」

ミカサ「そう言われると見たくなる」

エレン「ちょ、アルミン、ミカサがいる前で渡すなよこれ!」

アルミン「えー? いいじゃない。別に(ニコニコ)」

ミカサ「いいと思う。後で私もやってみる」

エレン「お前はやったらダメだろ?!」

ミカサ「エレンは好きな時にゲームをしていいと言った」

エレン「エロゲは除くに決まってるだろ! そもそもエロゲは本当は18歳未満はやっちゃダメなんだからな!」

ミカサ「……だったらどうやって手に入れたの?」

アルミン「おじいちゃんの名義でこっそり購入した」

エレン「お前、ゲスいなー……(遠い目)」

アルミン「おじいちゃんはゲームソフトなんてよく分かんないし、作品タイトルとパッケージだけじゃそういうのだって分からないから大丈夫だよ」

エレン「まあ、おじいちゃんに感謝だけどさ。うん、ありがとな、アルミン」

お礼をいいつつエレンはやっぱりそれを返すという事はしないようだ。

やっぱりエレンはムッツリスケベなのだろう。それが良く分かった。

ミカサ「今日はエレンの誕生日なのね。知らなかった」

エレン「言ってなかったしな」

ミカサ「では、折角なのでケーキでも作ろう。少し待ってて欲しい」

エレン「え? 別にいいよ。買ってくれば……」

ミカサ「作るほうが美味しい。材料は多分、あると思うから」

そう言って私はエレンの部屋を出て台所に移動した。

そして適当な材料を使って簡単にケーキを焼き上げる。

ホットケーキミックス粉を利用したスポンジケーキに生クリームを塗りつけて簡易ショートケーキの出来上がりである。

それを上に持っていったら想像していた以上に二人に絶賛されてしまった。

エレン「ミカサ、お前、こんな特技があったんだな」

ミカサ「料理は全般出来る」

アルミン「ますますエロゲの主人公みたいだ。爆発しろ(小声)」

エレン「オレも好きでこうなった訳じゃねえんだけど?!」

ミカサ「アルミン、心配しなくていい。もし襲われそうになったら返り討ちにする自信はある」

アルミン「え?」

エレン「あ、そうだぞ。ミカサ、こう見えても滅茶苦茶強いんだ。男三人ハイキックでのした経験があるんだぞ」

アルミン「え? 男三人をのした?」

男三人どころか、もっと多い数を倒してきた経歴を持つがここでは言わない。

ミカサ「護身術の心得はあるので、襲われそうになっても大丈夫」

エレン「それ以前に家族だしな。そういう目じゃ見れねえよ」

アルミン「……ごめんごめん。僕もからかい過ぎたよ」

エレンがそう答えるとアルミンは真面目になって話題を変えてくれた。

アルミン「あ、そう言えば、昨日、僕のところに連絡が来たんだけど、ミカサの方にも来たかな?」

ミカサ「挨拶の話?」

アルミン「そうそう。今年は首席が二人って事だから、二人で挨拶するか、一人でやるか決めないといけないそうだけど、僕が受けてもいいの?」

ミカサ「お願いしたい。私は挨拶が苦手、なので」

アルミン「分かった。じゃあ僕が引き受ける方向で話を進めておくね」

ミカサ「助かる」

エレン「ん? 何の話だよ」

アルミン「ああ、だから、首席入学者の新入生代表の挨拶の話だよ。今年は僕とミカサが首席合格したんだよ」

エレン「へ? アルミンだけじゃなかったのか?」

エレンは大きな目を更に大きくして驚いていた。

エレン「つか、ミカサ。お前そんなに頭良いんならなんで集英受けてねえんだ?」

ミカサ「う……が、学費の問題が」

エレン「それだったら父さんと再婚するの決まった時点で大丈夫だった筈だろ? なんなら今からでも編入すれば……」

ミカサ「それは出来ないと思う。その、いろいろ事情があるの」

詳しい事はここでは言えなかった。

集英は内申点をかなり重視する学校なので、そこで落とされたと分かれば私が問題児だった事がバレてしまう。

エレン「ふーん、変わった奴だな。何か後ろめたい事でもあんのか?」

アルミン「まあまあ。制服目当てで講談に来る女子もいるよ。ね?」

ミカサ「! そ、そう。私は制服目当てで講談に入った」

実は講談高校の制服は結構、可愛い。

緑色をベースにした爽やかな色合いのブレザー服なのだ。

エレン「なんか取ってつけたような言い訳に聞こえるが……まあいいや」

エレンはそれ以上は興味がないのか飽きたように話題を変えた。

エレン「今日は三人揃ってるし、またゲームしようぜ」

と言ってエレンはまたゲーム機の電源を入れたのだった。









アルミン「おじゃましましたー」

エレン「おう! また遊びに来いよ!」

アルミン「うん! また来るよ。ミカサも、宜しくね」

ミカサ「うん。またお菓子でも作って待ってる」

アルミン「出来れば今度はクッキーをお願いしてもいい?」

ミカサ「構わない。リクエストがあればどんどん受け付ける」

アルミン「やった! 楽しみにしてるね」

と、言って大分薄暗くなった夕方にはアルミンは帰っていった。

ミカサ「しかし私は、運が左右するゲームは向いてないようね」

エレン「何回やっても、桃色鉄道どべばっかだったもんな」

ミカサ「スーパーキングボンビーが憎たらしい。何度コントローラーを壊したいと思ったか」

エレン「気持ちは分かるが、壊すなよ」

ミカサ「エレンもだけど、アルミンはああいう頭を使うゲームが得意のようね」

エレン「アクションは苦手だけどな。ぽよぽよとか、パズル系も凄まじく得意だよ」

ミカサ「ゲームもいろいろあるのね。奥が深い」

エレン「RPG系も結構、面白いのあるぞ。今度、ドラクエ5をやらせてやるよ」

ミカサ「うん。やってみる」

そんな感じで私とエレンの春休みはすっかりゲーム三昧になってしまった。









そして時が経ち、春休みも終わり、入学式も明日に迫ったというその日。

アルミンから残念なお知らせがきたのだ。

エレン「え? 時期ハズレのインフルエンザだって?! 入学式出れない?! どうすんだよ!」

エレン「は?! 挨拶文はメールするからミカサに託すだって? あーもう、しょうがねえな」

エレン「お大事にな。無理はすんなよ!」

エレンはアルミンと電話をしていた。そしてエレンの携帯にメールが届いた。

エレン「悪い。ミカサ。アルミン、何故か知らんが今頃、インフルエンザにかかって入学式は来れねえってさ。お前が挨拶するしかないぞこれ」

ミカサ「ううう……この場合は仕方がない」

私はメールを転送してもらい、挨拶文を暗記した。

気が重いけれど、やるしかない。

ミカサ「エレン、私の格好を見て、私だと分かる?」

私は講談高校の制服を着てエレンに姿を見せた。

エレン「そりゃ分かるだろ。一発で」

ミカサ「うう……困った。どうする?」

エレン「中学の時の自分を隠したいのか?」

ミカサ「……平たく言えばそうね」

エレン「だったらこの長い髪でも切ってイメチェンしてみたらどうだ?」

ミカサ「!」

エレン「なんならオレが今から切ってやるよ」

ミカサ「お願いする」

本当はもう少し暖かくなってから切ろうと思っていたが、言ってる場合ではなくなった。

入学式に合わせて私は思い切って髪を切ってしまう事にした。

制服を一度脱いで、私服に着替えてビニールを被り、エレンの前で椅子に座る。

エレンは洗面所に立ち、私と鏡を交互に見つめながらハサミを入れ始めた。

そして一時間後くらいだろうか。アルミンと同じような髪型の自分が完成した。

エレン「うん。これでいいんじゃねえかな」

首元がすーっとした。頭が軽い。動きやすい。

まるで新しい自分になったようで嬉しい。

ミカサ「ありがとう。エレン」

エレン「いいよ。オレ、短いのも結構好きだし」

ミカサ「え?」

エレン「あ……いや、今のは何でもねえよ」

エレンは何故か誤魔化して照れた。ふふ。可愛い。

ミカサ「エレンは髪の短い方が好きなのね」

エレン「いや、長いのも好きだけどな! 似合ってればどっちでもいいんだよ!」

ミカサ「では私はどっちが似合う?」

エレン「………短いほうかな」

ミカサ「なるほど。それは知らなかった」

髪をのばしている事の方が多かったので、短い自分は久々だ。

ミカサ「だったらきっと大丈夫ね」

この姿ならきっと、私の過去がバレる事はないだろうと思った。

そして次の日、いよいよ講談高校の入学式がやってきたのだった。

今回はここまで~。
4月なのにインフルエンザ。たまーに巷できくよね? よね?
入学式ではいよいよ、他の104期生の姿が登場します。お楽しみに!

アルミンから転送して貰った挨拶文を一応、手書きで紙にも書き写し、カンペとしてポケットの中に入れておいた。

これでもし万が一、挨拶の途中で内容を忘れた場合はカンペをチラリと盗み見ればいい。

準備を全て整えて入学式に間に合うようにエレンと私は一緒に家を出た。

電車を乗り継いで最寄駅で降りて学校までは徒歩で移動する。

新しい制服に身を包んだ私と同世代の人間が楽しそうに学校に向かう。

クラス分けはどうなっているのだろうか。

学校の門をくぐると奥に進んだ広場にクラス分けの発表がされていた。


1年1組

エレン・イェーガー


エレンは1組になったようだ。私も自分の名前を探す。

エレン「あ、あった。ミカサも同じ1組みてえだぞ」

本当だ。下の方に名前があった。五十音順に発表になっているようだ。

アルミンも1組だった。幸先のいいスタートだと思った。

エレン「校舎はどこだ? あ、あっちに案内がしてあるな」

エレンと一緒に教室に向かう。講談高校は大きな高校なので敷地も広い。

至る所に案内板が書かれているので迷う事はなかったが、それがなくなったら迷いそうだと思った。

教室に着くと半分位の席が埋まっていた。

エレンは五十音順で言うと前の方なので私の席とは大分遠い。

私は後ろの席の方だった。私の後ろには私とあまり背の変わらない長身の女子がいた。

珍しい。中学の時は私と同じくらいの背丈の女子なんていなかったのに。

やはり高校ともなるといろんなところから人が来る。少しだけ安心した。

話しかけたい気持ちは山々だったが、その時、担任の先生と思われる教師がやってきた。

キース「このクラスを受け持つことになったキースだ。宜しく」

頭の毛がない年配の男性だった。目つきが険しく、強面の先生だ。

体もそこそこ大きい。がっしりとした体格の厳しいその先生は生徒達を見るなり渋い顔をした。

キース「まだ半分くらいしか揃ってないな。まだ時間はあるが……あと15分程で入学式が始まる。少し早いが廊下に並んで待機しよう」

簡潔に挨拶を済ませると、私達は廊下に並んで待機して体育館に移動する事になった。

全員が揃った頃、一人だけ遅れてポニーテールの女子生徒が滑り込んできた。

口には食パンを加えている。実際、そういう事をする人間を見たのは始めてだった。

キース「こら! 貴様! 時間ギリギリだぞ! 食べ物を口に咥えて走るな!」

ポニー女子「はひ! もうひはへあひはへん! (はい! 申し訳ありません!)」

キース「さっさと飲み込め!」

ポニー女子(ごっくん!)

ポニー女子「はい! ギリギリで申し訳ありません!」

キース「まあいい。間に合ったからな。名前は?」

サシャ「は! サシャ・ブラウスであります!」

キース「サシャ・ブラウス、出席と。さっさと並べ! 適当に!」

サシャ「はい!」

サシャと名乗ったその女子は私の前に並んだ。背丈順に小さい子から前に並んでいるので、私の前が妥当だろうと思ったのだろう。

実際、目測で背丈を測ってみると、サシャという子の方がちょっとだけ私より背が低かった。

キース「まだコニーとかいう生徒が来てないが……待っている訳にもいかん。先に進むぞ」

キース先生は一人を放置してさっさと体育館に移動を始めた。

講談高校の1クラスの人数は35人。クラスは10クラス。1学年350人の編成だった。

これが高校の中では多いのか少ないのか私には分からないが、中学の時と比べると倍近くの人間が学校に集まるのだからやはり高校は凄いところだと思った。

体育館も中学の時より大きいし広い。二階席まである体育館の中で入学式が行われようとしている。

今更だけれども、緊張してきた。

しかも、2年、3年も同席している。保護者は二階席で待っている。

ざわざわとひしめく人の熱。その力に既に圧倒されそうだった。

校長先生の挨拶、教頭先生の挨拶、また来賓の挨拶、在校生の言葉、いろんな方の挨拶があっと言う間に終わり、いよいよ私の名前が呼ばれてしまった。

内心、「早い」と思ったが、サクサク進んでいるのは他の生徒にとっては幸いなのだろうと思う。

私も自分の挨拶がなければこの事態を歓迎していたと思う。

しかし挨拶を任された立場になると出来るだけ後にして欲しいと思ってしまう。

校長「では、入学生代表挨拶、ミカサ・アッカーマン、前へ」

ミカサ「は、はい!」

声が多少緊張で裏返ってしまった。恥ずかしい。

人生、初の、挨拶である。

手足の動きがぎこちないのを自覚しつつ、舞台にあがった。


ゴン☆


勢い良く一礼して、頭をマイクにぶつけてしまった。

音が静寂な舞台から広がって失笑が広がる。やってしまった…。

気を取り直してカンペを広げる。

ん……?

ポケットの中にカンペが、ない?

嘘。何故? 何処かに落としたのか?

脂汗が出てきた。一応、暗記もしておいたけれど、いざ、ここに立つと、内容が、出てこない。

その時の為にカンペを用意したのに、肝心の物がないなら、どうしようもない。

私がじっと沈黙しているので一同のざわめきが起きてきた。

まずい。不穏な空気だ。何か、場を繋がないと。

ミカサ「私は…強い。あなた達より強い…すごく強い……ので、私はどんな相手に襲われても蹴散らす事が出来る。例えば…一人でも」

今思うと、この時の私は相当混乱していたのだ。

口から出てきた内容が、場を凍らせているのを感じていたが、それでも無音よりはマシだと思って言葉を繋いだのだ。

ミカサ「あなた達は…腕が立たないばかりか…臆病で腰抜けだ。とても残念だ。ここで私を羨み、指をくわえたりしてればいい。くわえて見てろ」


生徒一同(゚д゚)(゚д゚)(゚д゚)(゚д゚)(゚д゚)


言葉を失い、口を半開きにして私を見つめる生徒の視線が痛くてどうしようもなかったが、私もここまで来た以上、挨拶を止められなかった。

ミカサ「この世界は残酷だ。戦わなければ勝てない。だから私は戦い続ける。この場所で、何としてでも勝つ! 何としてでも生きる!」

そう宣言して私は壇上から降りた。もはや挨拶でも何でもないのは分かっていたけれど。

こうする以外の方法を、その時の私は見つけられなかったのだ。

進行の先生「えーありがとうございました。続きましてはー……」

先生は何事もなかったかのように入学式の進行を続けた。それが余計に私の異質さを際立たせて、居た堪れなくなった。

帰りたい。私の人生の黒歴史が刻まれてしまった…。







入学式が終わると教室に各々戻り、担任の先生から今後の日程の説明があり、その日は解散となった。

午後からは自由時間だ。部活動の勧誘も始まり、教室には先輩達が入り込んでいろんな子を誘っているが、誰一人、私には声をかけてこない。

当然だろう。私は入学式早々、痛い事をやらかしてしまったのだから。

エレン「あんま落ち込むなって。ミカサ……」

教室の自分の席で落ち込む私をエレンだけが慰めてくれた。

だけど今はそれすら、悲しい。

ミカサ「ごめんなさい。エレン。私はアルミンの作った挨拶文のカンペを紛失した上に、アドリブの挨拶も碌に出来なかった」

エレン「テンパってたのは分かる。だからしょうがねえだろ」

ミカサ「そもそもカンペを何処で紛失したのか……」

ポケットの中にちゃんと入れていたのにどうして無くなったのか分からない。

体育館に移動する途中で落としてしまったのだろうか。そう、思い悩んでいると、

背の高い女「……あのさ、ミカサだっけ?」

ミカサ「?」

その時、私より背の高いクラスの女子が話しかけてきた。

背の高い女「あんた、移動の途中で紙切れ落としたよ。これ、さっきの挨拶で使うもんだったのか?」

ミカサ「!」

それは正しくカンペだった。

拾ってくれたのにどうしてすぐに渡してくれたなかったのか。憎らしい。

背の高い女「悪いな。移動の途中だったし、私もすぐ中身を確認すれば良かったんだけどさ。すぐ体育館に移動しちまったし、あんまり不審な動きすると先生に目つけられるだろ? だから教室戻ってから返そうと思ってたんだけど、まさか挨拶のカンペだとは思わなかったんだよ」

ミカサ「そ、そうだったのね……」

背の高い女「カンペ無くしてテンパった結果がアレだったんだろ? ククク……」

エレン「わ、笑うなよ。お前! ミカサは精一杯頑張ったんだぞ!」

背の高い女「いや、分かってる。それは分かってるんだが。面白かったから、ついつい」

その女は笑いのツボを突かれて一通り私の挨拶を笑った。

まあ、笑われるのは別に構わない。いっそ笑い飛ばしてくれた方が気は休まるけども。

背の高い女「下手に真面目な挨拶よりは幾分かマシだね。私はあの挨拶、気に入ったよ」

ミカサ「………」

ユミル「私の名前はユミル。ま、そのまんまユミルって呼んでくれ」

そしてそれが切っ掛けで、私より背の高い女子ことユミルと知り合う事になった。

エレン「ユミル、お前は部活入らねえのか?」

ユミル「ん? 私はクリスタ次第かな」

エレン「クリスタ?」

ユミル「そこで先輩達に囲まれて勧誘されてる金髪の美少女の事だよ」

視線の先には教室の端で3人の女子の先輩に囲まれて困った顔をしている金髪の子がいた。

確かに可愛い女の子だと思った。アルミンに雰囲気が似ているかもしれない。

目元だけならエレンにも似ているけれども。

ユミル「私はクリスタが入ったところに一緒に入るつもりだからどこでもいいんだよ」

エレン「それじゃただの腰巾着じゃねえか」

ユミル「お目付け役、と言って欲しいね。私とクリスタは一心同体なんだよ」

エレン「ふーん。ま、個人の考えには干渉しねえけど。オレはどうすっかなー」

ミカサ「見て回りたいところはないの?」

エレン「まあ、いくつかなくはないけど。ミカサ、一緒に行けそうか?」

ミカサ「うん。もう大丈夫」

私は気を取り直して椅子から立ち上がった。

いつまでも落ち込んでいてはエレンに迷惑をかける。

エレン「そっか。じゃあ、一旦、教室を出ようぜ」

そして私とエレンはユミルに別れを告げて教室から出たのだった。

今回はここまで。次回、部活を見て回ります。

エレンはとりあえず、サッカー、バスケ、野球、等の花形球技を見学しに行ったけれども、どれもイマイチな顔をしていた。

エレン「なんか、練習風景が殺伐としてて楽しそうじゃなかったな」

ミカサ「そうね。素人お断りって雰囲気だった」

エレン「まあ、厳しいのは仕方ねえけどさ。全国目指してるところは何処もそうなんだろうけど」

ミカサ「そうね。全国制覇は並大抵の事では出来ない」

エレン「オレの中では『面白そう』なところに入りたいんだよな。練習は多少、厳しくてもいいけど」

ミカサ「なるほど。面白そうな部活、ね」

エレンの琴線に触れる部活があればいいのだが。

校内をあちこち移動していると、パン! という破裂音のような音が聞こえた。

音のする方を見てみると、袴姿の女子や男子が道場と思われる場所から何名か出てきた。

エレン「お? ここはもしかして弓道部かな?」

ミカサ「弓道部?」

エレン「和風の弓矢を放つ部活だよ。アーチェリーとはまた違う弓矢だな」

ミカサ「ふむふむ」

エレン「ちょっとだけ覗いてみるか」

エレンの興味を引いたらしい。私もついていく事にした。

先輩1「あら、入部希望者?」

エレン「見学しに来ました」

先輩2「だったら、こっちにおいで。ここからの方が練習風景が良く見えるよ」

道場の入口から中の方に案内された。そこは全体の練習を眺めるのには適した場所だった。

パン! といういい音が何度響いて的に刺さる。

エレンは早速「やってみてえな」とうずうずし始めた。

先輩1「矢を射抜いてみる? うちは初心者でも歓迎するよ」

エレン「お願いします!」

エレンは先輩に一通り手ほどきを受けてから矢を構えた。

パン! と矢を放ち、的に向かって飛んでいったが……。

エレン「あれ?」

先輩1「最初はそんなもんよ。的になかなか当たらないし」

エレン「もう一回やってみます」

しかし何度も何度も何度も何度もやってもエレンの矢は的にまともに当たらなかった。

10本射抜いて10本とも外れるという事態にさすがの先輩も渋い顔をしたようだ。

先輩2「うーん。何が悪いんだろ?」

先輩1「教え方が悪かったのかなあ?」

先輩2「そっちの子にもやらせみてもいい?」

教え方が悪いなら他の子も同じように失敗するだろうと思ってか、私に声をかけてきた。

私も一通りノウハウを教えてもらってから矢を構えて放ってみた。


パン!


しかし私の場合は一発で矢が的に刺さり、居た堪れない空気になった。

ミカサ「た、たまたま当たっただけだと思う」

私はエレンの方を見てそう言ったが、エレンは物凄く落ち込んでいた。

エレン「いや、いい。これで証明されたようなもんだろ。オレには矢を放つ才能がねえって事が」

ミカサ「そ、そんな筈はない。今のはたまたま運が良かっただけ」

と、いう訳でもう一本、矢を放ったのだが、


パン!


私の願いも虚しく、的の端に矢が刺さってしまった。

わ、わざと外そうとしたのに何故刺さる?

エレン「いいよ。ミカサ。よけいに虚しくなるから」

エレンは「お邪魔しました…」と言って背中を丸めて道場を出て行ってしまった。

ミカサ「エレン!」

私は弓矢を先輩達に預けてエレンを慌てて追いかけた。

ミカサ「エレン、その…………他の部活をみましょう」

エレン「ミカサは弓道部に入れば?」

ミカサ「わ、私は別に弓道には興味ない」

エレン「ん? じゃあなんでやってみたんだよ」

ミカサ「そ、それはエレンと同じ部活に入ろうと思って……」

ピタッ

その瞬間、エレンは足を綺麗に揃えて立ち止まってしまった。

エレン「あのなあ。いくら家族になったからって、そこまで揃えなくてもいいんだぞ」

ミカサ「え………?」

エレン「一緒に部活動を見て回るのはいいけどさ。入るところは自分で決めていいんだよ。オレに合わそうとするな」

ミカサ「え? な、何故……」

エレン「だって、ミカサがオレに合わせたら、ミカサ自身が本当にやりたい事が出来ねえじゃねえか」

ミカサ「そんな事はないのだけども」

エレン「いや、そうだろ。今の弓道部だって、お前が「ふむふむ」と関心を示したから入ってみたってのに」

ミカサ「そ、そうだったの?」

エレン「そうだったんだよ。弓矢、上手だったんだから入ればいいじゃねえか」

エレンは出来なかった自分に対して拗ねているように見える。

ちょっと子供っぽいけれど、でも、私を気遣ってくれるエレンの態度が少しだけ嬉しかった。

ミカサ「いや、いい。あれは何回もやれば飽きると思うので」

エレン「そうか?」

ミカサ「うん。同じことを永延と繰り返すだけの部活は、ちょっと」

エレン「うーん。そうか。そう言われればそうかもな」

私の主張に納得したのかエレンは頭を掻いた。

エレン「じゃあ別のところにいくか。あ、でも、入りたいのが見つかったらオレに構わず入れよ?」

と、念押しするのは忘れずに。

ミカサ「………分かった」

一応、納得したフリをして私は頷いた。

私は中学時代、友達もいなかったし、中学時代の知り合いもここにはいない。

なので一人で新しい環境に入るのは心細かったのだ。

情けないと思われてもいい。エレンと一緒の部活に入れるならそれに越したことはない。

私がエレンと別の部活動を見て回ろうとした、その時、

先輩1「重い~!」

先輩2「女子の力じゃ持てないよ、これ」

先輩3「あーせめて男子が一人入れば…」

何やら大きな木のセットのようなもの(テレビ番組などで背景に見かけるようなアレ)を運んでいる女子生徒が3人いる。

よいしょよいしょっと危なっかしい足取りだ。

エレンはそれを見かねて手助けに行った。

エレン「大丈夫っすか? 手伝いますよ」

先輩1「わーありがとう! これ、体育館のすぐ傍の倉庫までお願いね」

エレン「遠いですね…」

ミカサ「私も手伝おう」


ヒョイ


先輩2「わーいきなり軽くなった?! なんで?」

先輩3「5人で抱えたからじゃない? やっぱり人数ないときついってこれ」

先輩1「よし、備品管理倉庫までレッツゴー!」

カニのように横移動をしながら私達5人はセットを運び終えた。

先輩1「ふーありがとう! 助かりました」

ミカサ「いえいえ」

エレン「困ってる時はお互い様だろ」

先輩2「なんて心の清い子達なの! ちょっとお礼したいから部室に来ない?」

エレン「え? 部室? 何部ですか?」

先輩3「演劇部だよ。うちらは大道具担当だけどね」

先輩1「男子は少ないから男子部員が欲しいんだよね。ねえ君、うちに入らない?」

エレン「うーん。演劇かー」

エレンは微妙な顔をしている。あまり琴線には触れてないようだ。

エレン「ドラマとかはあんまり見ないし、演技の興味はないんですけど」

ミカサ「私もたまにバラエティを見るくらい」

先輩1「ああ、その辺は別に関係ないよ。演劇部は役者だけでなく、裏方の仕事もあるからね」

エレン「裏方?」

先輩2「うん。演技は出来なくても入れるよ。まあ一回、うちに来てくれれば分かるから」

そう熱心に勧誘されては顔を出さないわけにもいかない。

エレンと私はとりあえず、音楽室のある校舎の4階まで移動した。

するとそこには女子生徒の先輩達が窓を開けて校庭に向かって叫んでいた。

先輩4「あいうえおかきくけこさしすせそたちつてと………」

五十音を一気に息継ぎなしで発声練習をしているようだ。凄い。

エレン「おお……なんか知らんが迫力あるな」

女子なのに大声を出している彼女らの迫力に圧倒されているようだ。

先輩1「大道具はこういう、大道具を腰にぶら下げて、舞台を走り回るのがお仕事だよ」

先輩はその練習風景を背景にして大道具の説明をし始めた。

腰に専用のポーチをぶら下げて道具を説明してくれる。

先輩2「馬鹿! そこは小道具でしょうが」

先輩1「あ、そうだった。ごめんごめん!」

わざとなのか天然なのか、先輩達は漫才のようにボケとツッコミをしている。

エレン「おお? なんか格好いい」

エレンが目を輝かせている。

道具を腰にぶら下げた先輩は動く度にガッチャンガッチャンと忙しない音を立てている。

先輩1「大道具は体力勝負だけど、その分やりがいがあるよ。舞台を裏で支える役割なんだ。どう? 私たちと一緒に裏方やってみない?」

エレン「うーん。どうするかな」

先輩2「大道具だけじゃなく、音響とか照明とかも裏方だから、選択肢はいろいろあるよ」

エレン「ミカサはどう思う?」

ミカサ「表舞台に出ないのであれば、入ってみてもいい」

舞台上で挨拶するだけでアレだけテンパったのだ。

役者なんて絶対したくないが、裏方であれば、やってみてもいいと思った。

先輩1「まあ、一回、この裏方ポーチを実際身につけてみてよ」

先輩は裏方さんが実際に使うピーチを腰につけてくれた。

見た目より結構重い。動くとガッチャンガッチャン音がする。

エレン「おお? なんかこの格好、いいな」

エレンは裏方ポーチが気に入ってしまったようだ。

エレン「分かりました。とりあえず、仮入部って形でやってみます」

先輩1「本当? いいの? やった!」

ミカサ「では私も仮入部で」

エレン「いいのか?」

ミカサ「重いものを運ぶのは得意なので大丈夫」

先輩1「ますます有難いよ! 新入部員、ゲットだぜ!」

という訳で私とエレンはとりあえず、演劇部の裏方という部署に仮入部する事になったのだった。

やっぱりキリが悪いと思ったのでちょっとだけ延長。今度こそここまで。

裏方さんの小道具ポーチは実際、
まるで立体機動装置のようにガッチャンガッチャン音がします。
歩いている様を見てたら、ついつい連想してしまったのだよ。

あ、>>1に書き忘れましたが、要所でたまに安価を使います。
次のお話の一部で使わせて貰います。言い忘れててすみません。

次の日の最初の授業は、委員会や係等の役割を決めるロングホームルームが行われた。

キース「まずは先に学級委員を決めたいと思う。誰か立候補はおらんか」

先生の声に皆、視線を交わす。

誰も自分からはなりたいと思う人はいないようだ。

キース「立候補がいないなら推薦でもいい。誰かこいつにやって欲しいと思うのはおらんか」

馬面の男「はい」

キース「ジャン・キルシュタインか。いいぞ。誰を推薦する?」

ジャン・キルシュタインと呼ばれたその彼は席を立って左隣の方の男子をチラッと見てから発言した。

ジャン「オレはマルコがいいと思います」

マルコ「?! ちょっと、ジャン!」

ジャン「こいつ、真面目だし責任感もあるし、マメだし、級長タイプだと思います」

マルコ「やめてくれよ……そんな柄じゃないって」

長身の男「それなら僕も」

キース「ベルトルト・フーバー。他にいるか?」

今度はベルトルト・フーバーと呼ばれた長身の男子が別の男子を推薦した。

ベルトルト「はい。ライナーがいいと思います」

ライナー「おいおい。俺もそんな柄じゃないんだが?」

ベルトルト「そんな事ないよ。ライナーはリーダー向きだと思う」

金髪の男子、ライナーと呼ばれた彼は困ったように頭を掻いていた。

男子は二人推薦者が出た。後一人くらい推薦者が出れば多数決で決まりそうだと思った。

しかし私は特に推薦したい男子はいない。

エレンもアルミンも級長タイプではないからだ。

すると、今度はマルコが挙手をして、

マルコ「ジャンがいいと思います」

ジャン「おい、推薦された奴がし返すなよ」

マルコ「僕よりジャンの方が向いてると思ったんだよ。ジャンは口は悪いけど面倒見がいいからね」

キース「ふむ。三人も候補があがったなら、この中から男子の級長は決めても良いだろう」

そう言ってキース先生は黒板に三名の名前を書いて多数決を取り始めた。

そして票数がばらけて、結果が決まった。

キース「ふむ。集計結果、>>52に決まったな。では、級長をお願いするぞ」

(*マルコ、ライナー、ジャンのうち、誰か一人を選んで下さい)

ライナー

ライナー「困ったな。俺も柄じゃないんだが」

キース「しかし皆の意見だ。お願いしたいのだが」

ライナー「分かりました。ま、推薦された以上は仕方ないですね」

という訳で、クラスの男子の中では大柄な方の金髪の彼、ライナーが級長に決まった。

キース「女子の方で副級長も決めたい。女子の方には立候補者はいないか? 推薦でも構わない」

おさげの女「はい!」

キース「ミーナ・カロライナか。立候補か?」

ミーナ「いいえ! 推薦です。私はクリスタがいいと思います!」

クリスタ「え?!」

クリスタ、というのはユミルが先日言っていた美少女だ。

小柄で可愛い顔立ちの彼女は推薦されて驚いている。いや、困惑している?

クリスタ「わ、私はその……皆のまとめ役なんて」

ミーナ「クリスタは面倒な事も嫌がらずにやる真面目な子なので任せてもいいと思います」

クリスタ「ちょっと、買いかぶり過ぎだって」

ユミル「…………」

ユミルの方をチラリと盗み見ると、不機嫌な顔だった。

級長になると忙しい。言い方は悪いが、先生の雑用を押し付けられる役職といっても差支えはない。

だからだろうか。ユミルも挙手をした。

ユミル「はい。私はミーナの方がいいと思います」

ミーナ「?!」

ユミル「勝気で皆をぐいぐい引っ張っていけると思います」

キース「ふむ。クリスタ、ミーナ。あと一人くらい推薦して貰おうかな」

キース先生は黒板に名前を書いている。

最後は誰が推薦されるだろうか。

サシャ「はい!」

キース「サシャ・ブラウス。芋を食いながら挙手するな。授業中だぞ」

サシャ(ごっくん)

サシャ「私はユミルがいいと思います!」

ユミル「?!」

ユミル「サシャ、お前……」

サシャ「ユミルは一歩引いて、皆のフォローをするのがうまいので」

ユミル「そんな訳ねえだろ」

サシャ「いえ、そうですよ? 意外と周りのことよく見てるじゃないですか」

ユミル「私はフォローした覚えはない」

サシャとユミルは知り合いなのだろうか。席が離れているのにも関わらず好き勝手に話し始めている。

キース先生は「おい、いがみ合うな」と二人を窘めて、

キース「では、女子はこの三名の中から決めるとするか」

キース先生は再び多数決を取り、結果、決まった。

キース「では>>54に頼むとしよう。いいだろうか?」

(*クリスタ、ミーナ、ユミルの三名のうち、誰か一人を選んで下さい)

クリスタ

クリスタ「わ、私ですか……」

キース「過半数を超えたからな。お願いしたい」

クリスタ「わ、私でいいんですか?」

ミーナ「いいと思うよ。クリスタは頑張り屋さんだからね」

ユミル「……………」

ユミルの顔つきがまた険しくなったような気がする。

あんまりチラチラ後ろを見るのは良くないのかもしれないが、こうも殺気立たれると気になって仕方がない。

クリスタ「分かりました。私で良ければ引き受けます」

キース「では早速、級長、副級長、前に出て他の委員を決めて行ってくれ」

というわけで早速仕事を任された二人は拍手喝采を受けながら前に出たのだった。

ライナーの方はクリスタをチラチラ見ては顔を赤くしている。

露骨だ。どうやらタイプの女子であるらしい。

ライナーが板書をしてクリスタが台の前に立つ。

普通は逆だと思うが、ライナーの方が気を遣って、黒板に記入している。

クリスタは背が小さいので黒板の文字を書くのに不向きだからだろう。

クリスタ「では続いて、他の委員を決めていきたいと思います」

委員会は全員強制という訳ではない。

そもそもクラス全員が担当する程の数もない。

あるのは生活委員、体育委員、図書委員、保健委員、文化委員、整備委員、緑化委員、広報委員の八つだ。

生活委員というのは所謂風紀委員の事で校則を守らせる見張り役のような委員だ。

整備委員というのは、学校の中の清掃が主な活動でるが、それ以外にも備品の管理などもする。

緑化委員は校内の木々や花々の手入れをする。毎日の水やりやお世話が主な仕事だ。

広報委員は掲示板等の管理だ。印刷物を校内に貼っていったり、印刷の手伝いをしたりする。

他の委員は説明は不要だろう。どこの学校にも同じような委員はあると思うから。

クリスタ「他の委員も立候補、または推薦を募ります。まずは生活委員から……」

と、クリスタの進行で次の委員の話合いが始まった。

生活委員も級長と同じくらい真面目な人が向いている。

校則を取り締まる側になるので、皆、敬遠しがちだ。

所謂憎まれ役を受け持つ事になるので皆、視線を交わしあっている。

クリスタ「うーん、立候補も推薦もないなら他の委員から先に決めてもいいですか?」

ミーナ「いいと思います!」

クリスタ「では図書委員から先に決めたいと思います。立候補者はいますか?」

図書委員になると、チラホラ挙手があがった。主に女子の方が。

図書委員は週に一度、昼休みに図書室の受付当番を受け持つ事になるが、それ以外の仕事はさほどきつい訳ではない。

加えて本が好きな子にとっては新刊がいち早く知れるという利点があるので、本が好きな子にとっては人気の委員だったりする。

女子の方が積極的に挙手しているのは、図書館に入ってくる雑誌目当てなのだろう。

うちの学校にはティーンズ向けの女性向き雑誌も入荷してくると、入学の案内書に小さく書いてあった。

ミーナ「はい! 図書委員やります!」

アニ「待って。図書委員なら私もやりたい」

ユミル「私もだ。やらせろ」

ハンナ「ずるい。私もやりたい」

男子は本を自分から読むタイプの人間がいないようだ。

男子は誰も挙手していないが、その時エレンが流れを遮るように手をあげた。

エレン「あの、今日は欠席してるんですけど、推薦したい奴がいるんですけど」

クリスタ「はい。ええっと、エレン・イェーガー君ですね」

台に名簿表が貼ってあるのでそれを見ながらクリスタが進行する。

エレン「はい。アルミンは小学校の頃から図書委員ばっかりやってたんで、推薦してもいいですか?」

クリスタ「そうね。男子の立候補は他にいないし、経験があるなら彼に任せてもいいかな?」

男子一同は「いいと思いますー」と適当に答えている。

休んでいる人間に押し付けられてラッキーといった風だ。

クリスタ「じゃあ女子の方を………今度は立候補者多数だからくじ引きでいいかな?」

ライナー「いいんじゃないか? 立候補だしな」

クリスタ「じゃあちょっと待っててね。くじを簡単に作るから」

という訳でくじ引きでの抽選になった。各々、神妙な顔でくじを引いている。

アニ「………」

ミーナ「………」

ユミル「………」

ハンナ「………」

(*くじが当たったのは誰だ? >>59さん、四名のうちから誰か一人お答え下さい。安価ずれたら一個↓)

アニ

アニ「よし」

ミーナ「あーハズレたあ」

ユミル「ちっ…」

ハンナ「残念」

クリスタ「当たったのはアニですね。では図書委員はアルミン君とアニさんの二人に決まりました」


パチパチパチ……


クリスタ「続いては保健委員です。こちらも立候補、または推薦で決めます」

マルコ「はい」

クリスタ「はい、えっと、マルコ君」

マルコ「保健委員、やります」

クリスタ「男子は立候補者が出ました。他はいませんか?」


シーン……


クリスタ「女子の立候補者はいますか?」

ミーナ「はい」

クリスタ「ミーナ、やる?」

ミーナ「第二希望だけど、他にいないなら保健委員でいいや」

クリスタ「じゃあ決まりね」


パチパチパチ……

クリスタ「ん? あら? 体育委員、飛ばしちゃってた?」

ライナー「ん? 順番なんてどうでもいいだろ」

クリスタ「でも折角、順番通りに書いてあるのにごめんなさい(ペコリ)」

クリスタがお辞儀をした瞬間、ライナーだけでなくクラスの男子の殆どが頬を赤らめたようだ。

エレンは……あ、ちょっと眠そうにしているけれど。

クリスタ「体育委員、も決めたいと思います。誰か……」

コニー「はいはいはい! オレ、やる!」

クリスタ「げ、元気がいいですね。コニー・スプリンガー君?」

コニー「おう! オレ、小中全部、体育委員だったから!」

クリスタ「経験者がいるなら彼でいいですか?」

一同「賛成でーす」

クリスタ「じゃあ女子は……」

コニー「サシャ、お前やらねえ?」

サシャ「いいですよー。私も体育委員ばっかりやってたんで」

クリスタ「じゃあ二人で決定ですね」



パチパチパチ……

クリスタ「次は文化委員を決めます。立候補者、また推薦はありますか?」

ジャン「文化委員って、文化祭以外は暇な委員だよな?」

クリスタ「そうね。その代わり文化祭のシーズンだけは滅茶苦茶忙しいよ」

ジャン「うーん。どうするかな……迷うぜ」

マルコ「ジャンは楽な委員に入りたいの?」

ジャン「いや、楽な割には内申点もあげられるのがいいな」

マルコ「ちゃっかりしてるね」

内申点。そうか。委員会活動をしていれば、内申点が良くなるのか。

中学時代、そういう活動も一切していなかった私は、ちょっと心が揺れた。

高校三年間で頑張れば大学に進学する時にも推薦されやすくなるのだろうか。

いや、大学に行くかどうかはまだ分からないのだけども。

キース「内申点が目当てなら級長か、生活委員が一番得点が高いぞ」

ジャン「一番きつい役職じゃないっすか……」

キース「ふん。楽して点を取ろうと思うなよ。まあ、委員会は入らないよりは入ったほうがこちらも成績をつけやすいんだがな」

キース先生がニヤニヤしながら言ってくる。

この先生は案外、親しみやすい性格をしているのかもしれない。

クリスタ「誰かいませんか? 文化委員は、文化祭以外はとても暇な委員ですよ?」

落差が激しい点を明け透けに言うクリスタにライナーもぷっと笑っている。

すると、女子が一人挙手した。

ユミル「文化祭以外は暇なら、やってあげてもいいよ」

クリスタ「ユミル、ありがとう!」

ユミル「まあ、他にやりたい奴がいれば譲ってもいいけど。いなさそうだしな」

女子一同はユミルで異論はないようだ。

ライナー「ベルトルト、お前、中学の時も文化委員だっただろ」

ベルトルト「え? ああ、そうだけど」

ライナー「だったらノウハウ分かってるだろ。またやったらどうだ?」

ベルトルト「そう? でも他にやりたい人はいないかい?」

ライナー「いれば先に手あげるだろ。ベルトルトでいいか?」

男子一同「いいでーす」

クリスタ「決まりね。次は…整備委員ね」

ライナー「地味な委員だが、ようは掃除が好きな奴が向いてる委員だな」

クリスタ「そうね。掃除が得意な人にやってもらえるといいと思う」

掃除。これだったら私にも出来そうかも。

どうする? ここで手をあげるべきか。

キース「ちなみに整備委員の担当教師はリヴァイ先生だ。先に言ってくが、生半可な覚悟では入らないほうがいいぞ」

ピタッ……

私以外にも何名か、挙手しかけていた生徒が手をあげるのをやめた。

クリスタ「リヴァイ先生? 他のクラスの先生ですか?」

キース「ああ。体育担当の先生なんだが……まあ、潔癖症の先生でな。掃除に関してはスパルタで有名だ」

生徒1「そういや姉ちゃんがそんな事を言ってたような」

生徒2「ああ。うちも兄貴から話を聞いたことあるぜ」

ヒソヒソと声が聞こえる。どうやら上の学年の人達の間では有名な話らしい。

どうする? その先生と相性が悪かったら、喧嘩になったりしたら…。

や、やめておいた方がいいかもしれない。

クリスタ「(空気が重い)……じゃあ先に緑化委員を決めるしかないようね」

ヒッチ「はいはい。私やる~」

クリスタ「えっと、ヒッチさんね」

ヒッチ「あれでしょ? 花に適当に水やっておけばいいんでしょ? 超楽そうだし」

クリスタ「ええっと、雑草をむしったり、肥料をあげたりもするんだけど…」

ヒッチ「え? でも毎日はしなくてもいいでしょ? 雨降ったら水やらなくて済むし、一番楽な委員じゃないの?」

クリスタ(園芸の地味な大変さを知らないようね。言わないでおこう)

クリスタが微妙な顔をした。内心何を思ったのかは私にも分かる。

畑仕事を一度でもしたことのある人間なら分かると思うが、園芸は地味にきつい。

あと虫と遭遇する可能性も高いのでヒッチとか言ったああいう派手な風貌の女性には向いていない。

やめておいた方がいいと思ったが、それを言う程仲が良い訳でもないし、一度やってみれば自分の選択が間違っていた事に気付くだろう。

ハンナ「あのう……私もやりたいんだけど」

フランツ「僕も……」

おっと、意外な展開だ。希望者が重なったようだ。

ヒッチ「え? まじで? 女子の希望者重なっちゃったじゃん」

ハンナ「ごめんなさい。私、花とか好きなの」

ヒッチ「そう? じゃあ仕方ないね。譲ってあげるわ」

おや? 意外と我を通さない性格をしているようだ。

見た目は派手で我が強そうに見えるが協調性はあるらしい。

クリスタ「ではフランツ君とハンナさんの二人で決定します」



パチパチパチ……



クリスタ「次は広報委員ですね」

ヒッチ「あ、代わりにそっちやるわ。掲示板に紙を貼ればいいんでしょ?」

クリスタ「そうね。印刷物を貼るのが主な仕事だよ」

ヒッチ「こっちは他に希望者いないよね?」

クリスタ「…………いなさそうね」

ヒッチ「じゃあ女子は私で決まりだね。男子は……そこのイケメン君入らない?」

視線の先に入ったのはあのジャンとか言われていた彼だった。

ジャン「はあ? なんでオレだよ」

ヒッチ「楽して点数取りたいところが気に入ったの。同じ匂いがすると思って」

ジャン「あー確かにその通りだが、お前みたいにケバいのと一緒にする気にはなれねえな」

ヒッチ「あー? ケバい? この程度でケバいとかウケるwww今日、地味にしてきてるのにwww」

ジャン「その軽い会話のノリも苦手なんだよ。オレはもっと、凛とした女が好きなんだよ」

ヒッチ「へー……凛とした、ねえ。じゃあ、あそこの黒髪の子とかそれっぽいけど、あんたのタイプなの?」

何故か私の方に視線をよこしてきた。

ジャン「バカ! 人を勝手に例えにするなよ。あくまで「そんな雰囲気」が好きなだけだ!」

ヒッチ「照れてる~ウケる~♪」

凛とした、というからには多分、私の後ろの席のユミルの事だろう。

なるほど。ジャンはユミルのようなスレンダーなタイプがいいのか。

おかっぱの男「おい、ヒッチ。脱線しすぎだ。うるさい」

ヒッチ「あ、マルロ。ごめんごめん。ついつい」

マルロ「全く……」

ヒッチとマルロは知り合いのようだ。

ヒッチ「あんたは委員会入らないの? 生活委員とか、向いてそうじゃない」

マルロ「他にやる奴がいないなら入ってもいいが……部活との両立の問題もある」

ヒッチ「何部に入ったんだっけ?」

マルロ「生徒会だ。生活委員より更に忙しい部署だよ」

ヒッチ「あらら……あんた本当にもの好きねえ」

クリスタ「広報委員の男子の方は立候補者はいませんか?」

ダズ「楽そうな委員ならやってもいいかな」

クリスタ「えっと、ダズ君ですね。他にいないなら彼で決定でいいですか?」

男子一同「いいでーす」

クリスタ「残ったのが生活と整備か……」

ライナー「マルロとか言った奴、生活の方に入る気ないか?」

マルロ「さっきも言ったが、生徒会に既に入っているからな。どうしてもってなら、入ってもいいが」

ライナー「では括弧で書いておこう。生活の方に入れそうな女子はいないか?」

女子生徒1「究極の二択よね」

女子生徒2「でもあと二人、誰か委員会に入らないと次に進まないし」

そうなのだ。ここで悪戯に沈黙しても次に決めるべき事が決まらない。

決めないといけないのは何も委員会だけではないのだ。

その時、エレンが手をあげた。

エレン「生活と整備、どっちでもいいけど、どっちかに入ってもいいぞ」

一同「!」

エレン「このままだと次にいけないだろ? 時間が勿体無い」

エレンが挙手した。だったら、私も。

ミカサ「私も、どちらかに入ります」

エレン「おい、真似すんなよ」

ミカサ「真似じゃない。空気を変えたいだけ」

エレンと同じ委員にはなれないかもしれないが、決まらないと放課後までもつれ込むかもしれない。

それはそれで嫌なので、定時で帰れるようにする為に私は思い切って立ち上がった。

マルロ「だったらミカサ、とか言った女子の方を先に決めてしまえばいい」

クリスタ「そうね。女子は今、ミカサさんしか候補がいないから、先に決めていいと思う」

その時、席に座っていたキース先生が書類をめくりながら言った。

キース「ふむ。ミカサ・アッカーマン。中学時代は無遅刻無欠席の健康優良児で成績も首席だったとあるが……委員会や部活は入ってなかったとあるな。掃除も得意で真面目にやっていたとある。経験はないが、生活でも整備でもどちらでもやっていけそうだな」

ミカサ「そ、そうでしょうか…?」

キース「ああ。どちらを選んだとしても悪くないと思うぞ」

生活委員は皆の憎まれ役である。規則違反をしてないかの取り締まる側の役目だ。

対して整備委員は校内の掃除をする。リヴァイ先生という人物に懸念があるが、掃除自体は得意なので出来ると思う。

さて、私はどちらに入ろうか。迷う。

私が先に決めないと話が進まないので思い切って決めた。

ミカサ「では私は……>>69に入ります」

(*生活、整備、どっちに入る? 二択です)

整備

ミカサ「整備の方に入ります」

クリスタ「では女子の整備委員はミカサさんに決定します」

ライナー「男子の方はエレンでいいか?」

エレン「別にいいけど」

ジャン「ちょっと待ったあああああああ!」

何故かその時、ひときわ大きい声で先程のジャンという男子が挙手した。

ジャン「オレが整備に入る。エレンとかいう奴は生活に入れ」

エレン「はあ? お前、いきなり何なんだよ」

ジャン「マルロとか言う奴は、あくまで他にいなかったら、って言ってただろ。生徒会に既に入ってるし負担が大きくなるだろ?」

マルロ「まあ、そりゃな」

ジャン「だったらここはオレが一肌脱ぐしかないだろ」

ヒッチ「ククク……露骨過ぎwwwwwお腹痛いwwww」

ヒッチという女子は何故か腹を抱えているのに笑っている。

腹痛なら保健室に行ったほうがいいと思うけど。

エレン「そりゃそうだけど、今の今まで沈黙してた奴がいきなり何なんだよ」

ジャン「別にいいだろ! 気が変わったんだよ!」

エレンとジャンは隣同士の席だ。エレンが右側でジャンが左側だ。

言い争いも近くでやるとエスカレートしそうで怖い。

エレン「怪しいな。お前、まさかミカサ狙いとか……(むぐっ)」

ジャン「さっさと書いてくれ。オレでいいだろ?」

ミカサ「待って。エレンは今、一度承諾した。エレンの気持ちをないがしろにしないで」

私はとりあえず待ったをかけた。

勢いで物事を決めるべきではないと判断したからだ。

エレン「そうだな。オレ、一回承諾したしな。ここはくじ引きするべきだよな」

ジャン「うぐっ……譲ってくれねえのか」

エレン「てめえの態度があからさまにおかしいから、嫌だ」

ライナー「じゃあくじ引きするぞ。二択だからすぐ出来る。ちょっと待ってろ」

という訳で再びくじ引きを作って引くことになった。

エレン「せーの」

ジャン「!」

エレン「よっしゃ! オレの勝ち!」

ジャン「くそおおお!」

エレンが整備委員に決まったようだ。

ジャンはすっかり肩を落としてがっくりしている。

エレン「残念だったな。お前が生活委員をやれ」

ジャン「くそ……面倒臭い委員しか残ってない」

キース「そうだな。生徒会と生活委員を両方やるのは大変だ。ジャン、貴様は何か既に部活には入ったのか?」

ジャン「いえ……」

キース「だったら生活委員に入っても損はしないぞ。ここは入ったらどうだ?」

ジャン「…………」

空気を読んだのかジャンはしばし考えて渋々承諾したようだ。

残りは生活委員の女子の方だ。こちらは立候補もあがらず、仕方ないので決まっていない女子の間でくじ引きとなって決まった。

そんな訳で他の各教科の係なども決まっていき、次はいよいよ、研修旅行の班決めになった。

クリスタ「えーっと、次は4月19日、20日の一泊二日の研修旅行の班を決めていきます」

研修旅行というのは、所謂交流会を兼ねた勉強合宿である。

新入生全員が学校から割と近いとある温泉宿で一泊するイベントがあるのだ。

ここでクラスのグループが確立するだろう。皆と問題なく仲良くしなければ。

クリスタ「クラスの人数が35名なので、5名ずつ7班に分かれます。男女は混合でも構いません。班の人数の変更は出来ないので5人ずつきっかり分かれてください。決まった班から報告してください」

ここからは自由時間だ。皆、席を離れて各々、交渉し始めている。

エレンがこっちに来てくれた。さ、誘って貰えるのだろうか?

エレン「よう! ミカサ。とりあえず、アルミンとオレんとこに来いよ」

ミカサ「うん。勿論」

エレン「あと二人、入れば班が出来るから二人組に声をかけようぜ」

エレンがそう言ったので私は思いついた人物を言ってみた。

ミカサ「エレン、ユミルとクリスタはどうだろう?」

エレン「ええ? ユミル? あの性格悪そうな奴入れるのか?」

ミカサ「ユミルは別に性格が悪い訳ではない。ただ、口が悪いだけ」

エレン「そうか? まあ、ミカサがそう言うならいいけど、声かけてみるか」

という訳でユミルを誘ってみたのだが……。

ユミル「悪い。実は私とクリスタとサシャで三人グループ作っててさ、こっちも二人組を探してるんだ」

エレン「そうか。残念だな」

ユミル「まあ、他のグループと見合わせてどうしてもってなら、私とクリスタがそっちに入ってもいいけど。サシャはコニーとも仲いいしな」

サシャ「そうですね。無理そうならコニーと組んでもいいですよ」

ミカサ「ではとりあえず他のグループにも声をかけてみる」

さて。他に二人組はいないだろうか。

と、その時、先程のジャンとかいう男子と目が合った。

すると向こうからこっちに声をかけてきた。

ジャン「よお。こっちはマルコと二人組だけど」

エレン「ああ? お前、またか」

ジャン「またかとか言うなよ。困ってるんだろ?」

エレン「マルコって、そいつ?」

マルコ「初めまして。マルコ・ボットです」

感じのいい人だ。アルミンと似たような優しげな雰囲気だ。

エレン「まあ、二人組出来てるなら入ってもいいけどよ。ミカサが女一人になっちまうぞ?」

ミカサ「そうね。でも、この場合は仕方ないと思う」

女子の中で一人でいるのは慣れているので別に構わない。

男子の中で女子一人という状況も似たようなものだろう。

ジャン「だったら決まりでいいか?」

エレン「お前を入れるのは不本意だけどな」

ミカサ「エレン、折角入ってくれる人にそんな態度は良くない」

エレン「…………」

エレンは無言でこっちを見ている。何か言いたそうにしているけど。

エレン「まあ、しょうがねえか。さっさと決めないとあぶれちまうかもしれんからな」

という訳でさっさと決まった班から順に書き込まれていった。


1班
リーダー:ライナー
メンバー:ベルトルト、ユミル、クリスタ、サシャ

2班
リーダー:サムエル
メンバー:コニー、トーマス、トム、ダズ

3班
リーダー:マルコ
メンバー:エレン、アルミン、ジャン、ミカサ

4班
リーダー:ミーナ
メンバー:ハンナ、フランツ、ミリウス、ナック

5班
リーダー:マルロ
メンバー:ヒッチ、アニ、その他モブ

そんな訳でロングホームルームは無事に終わった。

新学期は決める事が多くて大変だ。でも春が来たという感じはする。

キース「決まったな。では今日のロングホームルームはこれで終了だ」

ライナーとクリスタが清書をしてキース先生に書類を提出した。

キース「もし後で班のメンバーを交代したい場合は、変更は12日までにするように」

と、一応の注意をして1限目の授業が終わった。

これで放課後の延長戦が行われる事はないだろう。良かった。

そして2限目の授業は体力測定と身体測定だ。

男女が分かれて着替える。男子は教室に残り、女子は更衣室で着替える。

体操服に着替えて放送のアナウンスに合わせて行動しないといけない。

エレン「じゃあまたな!」

エレンと分かれて私は一人になり、更衣室に急いだ。

う……。人が多い。

皆、すし詰めように棚に群がって着替えている。

仕方ない。一学年、女子全員が使うのだ。

普段は2クラスずつの使用の筈だから、今回だけは我慢しないと。

狭いと感じる更衣室でさっさと着替えていると、何故か私の隣にヒッチとかいう女子が寄ってきた。

ヒッチ「あんたさあ、いいの?」

ミカサ「え?」

ヒッチ「あの馬面、露骨じゃん。狙われてるの気づいてる?」

何の話だろうか? 意味が良く分からない。

ヒッチ「あんまり期待させるような事しちゃダメだよ~」

一体何の忠告だろうか?

ジャンが狙っている? 誰を?

ジャンは私のような筋肉質な女より、ユミルのような凛とした女性の方がいいのだろうに。

エレンに以前「腹筋すげえ!」と驚かれた事を思い出して萎えていると、彼女は私の肩を叩いてきた。

ヒッチ「ま、モテる女は辛いよね。なんかあったら相談しなよ」

一緒に行こうと、彼女に誘われた。

いきなりの展開にただただ困惑するばかりだが、仕方がない。

話しかけられているのに邪険にする訳にもいかず、彼女と一緒に移動する事になった。

ヒッチ「ねえねえ、ミカサはどんな男子がタイプ?」

移動途中にいきなり男の好みの話をし始めた。

ズカズカ入ってくる感じが少し苦手だったが、仕方なく適当に話を合わせる事にする。

ミカサ「そうね。頼りがいのある人がいいと思う」

ヒッチ「へー……甘えたい方なんだ? ちょっと意外。ミカサは姐さんタイプかと思ってたけど」

ミカサ「そうだろうか? なんとなく思った事をいっただけだけど」

ヒッチ「見た目で言えば年下とかとつきあいそうなイメージだよ。でも、そういうのが好みなら年上の方が合ってるかもね」

年齢なんて気にした事がなかった。

そもそも、男性とつきあった経験などもない。

ヒッチ「先生とか、いいんじゃない? 狙ったの落としちゃいなよ」

ミカサ「あの……そもそも先生と生徒は恋愛してはいけないのでは?」

と、私が切り返すと、ヒッチはきょとんとした顔になり、そのあとまた、腹を抱えて笑いだした。

ヒッチ「あんた、真面目だね! そんだけ美人なのに男捕まえようとかいう発想がないんだwwwウケるwwww」

ミカサ「???」

また、ウケると言いながら笑っている。

彼女はよほどの笑い上戸なのだろうか?

ヒッチ「あーひとつ言っていい? ミカサって変わってるって言われた事、ない?」

ミカサ「ある。それが何か?」

ヒッチ「だとしたら、それは自分を知らなすぎるってところかもね。美人なのに。残念な美人って初めて見た」

残念な美人。

褒められているのか貶されているのか判断に迷うが、恐らく後者だろう。

ミカサ「ごめんなさい。残念で。これが私、なので」

ヒッチ「あ、残念は言い過ぎたかな。ごめんごめん。でも、ミカサって美人だから、よく声はかけられるでしょ?」

ミカサ「ろくでもない奴らには散々、冷やかされたけれども」

そのせいで何度、正当防衛で相手をのしたか覚えてない。

なので私はナンパな男が苦手だ。街中で声をかけられる度にそう思う。

ヒッチ「だったらさ~そいつらを利用して生きていかないと損だよ。貢がせちゃえば?」

ミカサ「そんな事、考えたこともなかった」

ヒッチ「ミカサなら出来るでしょ。出来るのに勿体無いよ~」

と、何故かさっきから悪の道にひっぱりこもうとする彼女にどうしたもんかと考えていたら、

金髪の女「それくらいにしておきなよ。ヒッチ」

と、別の子が声をかけてきた。

ヒッチ「あ、アニ。なんだ。一人?」

アニ「まあね。さっきからあんたが悪の道に引っ張りこもうとしているから、見かねてね」

ヒッチ「酷いなあ。いいじゃない別に」

アニ「誰しもあんたみたいに器用に生きれる女ばかりじゃないんだよ。離してやんな」

ヒッチ「はいはい。じゃあね~」

やっと私を開放してくれた。今度は別の可愛い女子に話しかけている。

何を基準に話しかけているのか良く分からないが、彼女なりの基準があるように見えた。

ミカサ「ありがとう。アニさん」

アニ「アニ、でいい。敬語使う必要はないよ。クラスメイトなんだし」

ミカサ「そう。では、アニ。あのヒッチという彼女はいつもあんな感じなのだろうか?」

アニ「そうだね。美人な子には必ず声をかけて自分の色に染めようとする悪い癖があるよ」

ミカサ「自分の色…?」

意味が分かりにくくて問い返すと、

アニ「まあ、真面目な奴は不真面目にさせようとするのさ。自分と同じ位置に来てくれそうな子を探してはくっついて、ふらふらしているよ」

ミカサ「そうなのね」

アニ「あんまり親身にならない方がいいよ。あの子、男無しじゃ生きられないような依存性のある子だから」

アニの忠告は真摯に受け止めておこう。

ミカサ「ありがとう。ところでアニ、一人なら私と一緒に移動して欲しいのだけども」

あと少しで体育館なのだが、そう言うと、アニは「え?」という顔をした。

ミカサ「まだ私は女子の知り合いが少ないので少しお話がしたい」

と、本音を言うとアニは困ったように眉を寄せた。

アニ「いいけど……あんたも物好きだね」

と、返されてしまったが、移動までの間、一人ぼっちではないので嬉しかった。

ミカサ「先程、ヒッチ言われたのだけども、馬面とは、恐らくジャンの事だろうか?」

アニ「え? ああ……馬面。そうね。ジャンって奴は面長な顔だちだから、馬面と言えなくもないね」

ミカサ「あんまり期待させるような事をしたらいけないとヒッチに言われたのだけども、そもそも、ジャンは凛とした女性がいいとさっき言っていたので、私が気をつけるのは違うような気がするのだけども」

と、私が言うと、アニは呆れ顔で私をじーっと見つめてきた。

ミカサ「?」

アニ「いや、………まあ、いいけど。うん。で?」

ミカサ「ヒッチの忠告は見当違いのような気がするのだけど、アニはどう思う?」

アニ「うん。まあ、そうだね。ジャンは『凛とした女性が好き』って言っただけで、別に特定の誰かを好きだと言ってないし、気にする必要はないと思うけど」

ミカサ「良かった。そう言ってもらえて」

胸の内がすっきりとした。

モヤモヤするような事を言われてしまったので、これですーっとした。

ミカサ「凛とした女性なら、私よりもアニの方がそれだと思う」

アニ「?!」

アニは何故か顔を強ばらせた。何かいけない事を言っただろうか?

ミカサ「?」

アニ「いや、まあ……ありがと」

ミカサ「うん。なので気をつけるとしたらアニの方だと思うので気をつけて欲しい」

アニ「ご忠告、どうも」

アニは頭を掻いていた。そして無言になる。

どうも、女子同士の会話というものに慣れない。

無言なのが嫌だったので話題を一生懸命探すが……。

アニ「あんた自身はどうなんだい?」

ミカサ「え?」

アニ「その……私もそういう会話に慣れてないから、アレだけど。好きなタイプとかあるのかい?」

ミカサ「なんとなくだけど、頼りがいのある人がいいと思うけど」

アニ「それはさっきも聞いた。もっと具体的にはないのかい?」

ミカサ「具体的……」

アニ「月収が50万以上とか」

ミカサ「そ、それは確かに具体的ね」

アニはしっかり者のようだ。なるほど。そういうのも有りなのか。

ミカサ「そうね。安定した収入のある人がいいかも」

アニ「狙うなら医者や弁護士や公務員だよ」

ミカサ「確かに」

私達はそんな風に言い合ってクスクス笑ってしまったのだった。

そしてあっと言う間に体育館についた。

クラス別に女子が並んでいる。男子は先に体力測定からだ。

つまり女子の方が先に身体測定をするのだ。

眼鏡の先生「では身長から始めます。1組から名簿順に並んでください」

あ、あの声は聞き覚えがある。電話してきた女性の先生だ。

名札を見ると「ハンジ」という名前が書かれていた。

ハンジ「はいはい。金髪の君からスタートね。153cm!」

アニは思っていたより小さかった。いいな。

そして次々と身長、体重、座高、胸囲が測られた。

私の番だ。この瞬間がとても嫌だ。毎年。

ハンジ「身長170cm、体重68kg……」

去年に比べて身長は3cmも増え、体重も3kg増えた。

このままずるずる大きくなるのかと思うといつも憂鬱になる。

そして名簿が私の次になるユミルがなんと、

ハンジ「身長172cm、体重63kg………」

おお…私より背が高い上に体重も少ないとは。

なんというモデル体型。パリコレに出ればいいと思う。

案の定、他の女子から「身長くれ!」とせがまれ「体重あげる」と言われて困っているユミルがいる。

きっと毎年の事なんだろう。ちょっと羨ましいと思った。

アニ「ミカサ、あんたの身長も頂戴」

ミカサ「あげられるなら3cmくらいならあげてもいい。体重も3kgあげる」

アニ「いや、体重はいらないけど」

ミカサ「何故? 見た目からしてもう少し太っていいと思うけど」

アニ「体重の比率はあんたとどっこいだよ。全く」

アニの体重は54kgだった筈。どこがどっこいなのか。

ミカサ「そんな事はない。私の方がぽっちゃり」

アニ「いや、見た目はあんたもユミルとさほど差はないよ。どこにそんだけ体重があるのか不思議なくらいだよ」

心当たりはあるけれど。私のお腹にその元凶がいる。

まあ、人には言えないのだけども。腹筋が八つに分かれているなんて。

アニ「まあいいや。私も似たようなものだから。次は室内測定だね」

体育館の中で出来る測定をする。前屈や垂直跳び、反復横跳び等である。

一通り室内測定を終えると、私とアニが先生達の賞賛の声を浴びた。

私は毎年の事だが、アニもそういう雰囲気だった。

ミカサ「アニも運動神経がいいのね」

アニ「私より運動神経がいい奴は初めて見るよ」

と、お互いがお互いに驚くという珍事件が発生した。

順位をつけるなら、私、アニ、ユミル、サシャの四名がトップ4だった。

だけどもその差はそれ程大きいものではなく、確かに私は一歩、いい記録だったけども、他の三名もかなりいい記録を叩き出したのだ。

ハンジ「1組は運動神経のいい子が揃っているようね。ふむふむ」

と、ハンジ先生は何故か眼鏡を輝かせていた。

という訳で午前中で身体測定、室内測定が終わり、一旦休憩を挟んで女子は午後からは外での体力測定になる。

エレンの姿を見つけた。エレンはこっちに来るなり「身長いくつだった?!」と聞いてきた。

ミカサ「170cm……」

エレン「う……オレとあんまり変わらないな。くそう」

どうやらエレンは身長の事を気にしているようだ。

私としてはそろそろ自身の成長が止まって欲しいのだけども。

男の子はどうやらもっと身長が欲しいらしい。あげたい。

エレン「せめて昼飯に牛乳飲んでおこう」

ミカサ「今飲んでも変わらない気がするけど」

エレン「気分だよ。気分!」

エレンとそう言い合いながら私達は教室に弁当を取りに行った。

今日はさすがに教室で食べる気にはなれない。男子の着替え後が机の上でぐちゃぐちゃだからだ。

天気もいいし、外で食べようと思う。

エレンと私は適当な場所がないかと探していたら……

アニ「あの、良かったら……」

アニが私に話しかけてきた。

どうやら一緒に弁当を食べる相手を探していたようだ。

アニ「………あ、連れがいるのか。だったらいい」

ミカサ「待って。エレン、一緒にいいだろうか?」

エレン「え? いいよ。アルミンと一緒の委員になった女子だろ?」

アニ「うん……」

エレン「アルミン、インフルエンザで休んでてさー暫く迷惑かけると思うけどごめんなー」

アニ「別にいい。構わない」

という訳でその日のお昼は三人で一緒に食べる事になった。

エレン「どっかいいところねえかな」

アニ「中庭は人気があるから、もう人で埋まってるかもしれない」

エレン「だな……あ、部室はどうだ? 演劇部の」

ミカサ「空いているだろうか?」

エレン「ダメ元で行ってみようぜ」

という訳で三人で演劇部の部室に行くことにした。

アニ「……演劇部員なの?」

ミカサ「うん。成り行きで大道具をする事になった」

アニ「へえ。なんか意外かも」

エレン「オレも自分でもそう思う。ま、これでも縁ってやつだろ」

とエレンは言いながら音楽室のすぐ傍にある演劇部の部室にお邪魔してみた。

するとそこには先輩達が先に弁当を広げて何やらアニメを鑑賞しながらお昼を食べていた。

先輩1「あ、エレン君、ミカサちゃん。どうぞどうぞ。一緒に見る?」

エレン「何見てるんですか?」

先輩2「アニメだよ。タイヤのAを観てた」

エレン「タイヤのA? 何ですかそれ」

先輩3「タイヤを毎日引っ張って走って体を鍛えてる投手が主人公の野球アニメだよ」

先輩2「これ面白いんだよね~全巻あるから読んでみなよ」

と、何故か部室に漫画本がドンと積まれていた。ボロボロだけど。

恐らく相当、皆で回し読みしたに違いない。

エレン「後で借りていってもいいですか?」

先輩1「いいよいいよ~あれ? そっちの金髪美人は誰?」

ミカサ「クラスメイトです。一緒にお弁当を食べてもいいですか?」

先輩2「いいけど……君、うちの部に入る?」

アニ「いえ、入りませんけど」

先輩2「じゃあダメだよ~」

アニ「え?」

先輩1「いや、いいから。部員しか部室使えないとか、ないから」

先輩2「チッ……ほら、そこは騙して入部させないと」

先輩1「悪評たつからやめてよ。それは」

おっと、油断も隙もない。危なく勧誘されるところだった。

ミカサ「アニ、ごめんなさい」

アニ「いや、いいけど。何だか騒がしい人達だね」

ミカサ「皆、いい先輩達なので、大丈夫」

アニ「うん。それは分かるけど。学校にアニメ持ち込んで観てもいいの?」

エレン「さあ? 校則には関係ないもん持ってきちゃいけないってあるけど、バレなければ別にいいんじゃねえ? 腹減ったから飯食おうぜ」

と、先にエレンが弁当を広げて食べ始めてしまった。

三人分の机をエレンの机とくっつけて、私達はお昼にした。

主人公の声『俺はまだ、クリス先輩に何も返してない……!』

先輩1「やばい。もう、クリス先輩好き過ぎるだろこいつwwww」

先輩2「わんこだよね。主人公わんこ化しすぎるわ」

先輩3「そこが可愛い」

何だかアニメを観ながら絶賛しているようである。

先輩達が楽しそうで何よりだ。

エレン「そう言えばアニはまだ部活入ってねえの?」

その時、エレンがアニメの声は無視してアニに話しかけた。

アニ「うん……まだ入ってないね。入るかどうか決めてない」

エレン「演劇部、見学してみねえか? 結構、練習風景は面白かったぞ」

アニ「でも、役者とかはちょっと……舞台に立つんだろ?」

ミカサ「それは裏方に回れば、舞台に立たなくてもいいそうなので」

アニ「裏方? 大道具以外にもあるの?」

エレン「ああ。いろいろあるってさ。照明、音響、あと衣装か」

ミカサ「私も舞台に立たないならと思って入ったので。目立つのが苦手でも出来ると思う」

アニ「そう……まあ、考えておくよ」

と、アニはちょっと考えたようにしてそう答えた。

アニ「………………あのさ」

エレン「ん?」

アニ「アルミンってどんな奴?」

エレン「え? ああ、アルミンはオレの幼馴染で親友だよ。いい奴だけど」

アニ「そう」

と、言ってアニは黙り込んでしまった。

エレン「ん? 何か心配事でもあるのか?」

アニ「いや、別にそういう訳じゃないけど」

ミカサ「けど?」

何かアルミンに対して不安でもあるのだろうか?

アニ「名簿だって私のすぐ後ろの席だろ? 入学早々、休んでるから気になっただけ」

ミカサ「そう言えば、私のすぐ後ろの席も空いていたような」

私のすぐ後ろの人も休んでいた。そのまた後ろが、ユミルの席だ。

アニ「ああ、ミリウスだっけか。あいつもインフルエンザだって聞いたような」

エレン「ええ? インフルエンザ流行ってんのか? 4月なのに?」

アニ「むしろもう一回、波がきてるらしいよ。気をつけないと」

エレン「まじかよ…アルミン、災難だったな」

インフルエンザが流行っているなら気をつけなければ。

手洗いうがいは勿論だが、食事にも気をつけないと。

ミカサ「………あの、ところで気になっていたけれど」

アニ「ん?」

ミカサ「アニのお弁当箱、可愛い……」

アニ「え? そう?」

ミカサ「うん。丸いし3段重ねだし。あまり見たことがない」

私はついついアニの弁当箱をじっと見つめてしまった。

ピンク色の容器で、3段に分かれている。中身もご飯、おかず、果物に分かれていて色合いもお洒落だった。

アニ「自分で買った。お弁当も自分で作ってるけど」

ミカサ「本当? すごい。綺麗」

エレン「ミカサも自分で作ってるだろ」

ミカサ「でも私のは茶色いので……」

アニ「でも、栄養のバランスはいいんじゃないか? 私は自分の好きなものを入れてるだけだよ」

エレン「一個、なんかくれよ」

アニ「ダメ。あげない」

ミカサ「エレン、そういう時は交換をするのが普通」

アニ「そうそう。タダで貰おうとするのはダメ」

エレン「アルミンはくれるのになー」

エレンは口を尖らせて文句を言う。アルミンはエレンを甘やかしすぎだと思った。

ミカサ「あの、交換をお願いしてもいいだろうか?」

アニ「いいよ。こっちのハンバーグと、そっちのかぼちゃ、交換しよう」

ミカサ「ありがとう……」

いつぶりだろうか。こうやってお弁当のおかずを交換するなんて。

多分、幼稚園の頃以来のように思う。

あまりの久々の女子との交流にちょっとだけ涙が出そうになった。

アニ「そ、そんなに感激しなくても」

ミカサ「ううん、嬉しい」

エレン「ちぇっ……交換ならオレはいいや。ミカサの作った分、全部食うし」

アニ「え? あんたの分の弁当、ミカサが作ってるの? 何で?」

その瞬間、ちょっとまずいと思った。

その理由を説明するとなると、同居している事がバレてしまう。

あまり人に言わない方がいい事であるのは分かっている。

エレンも顔に「しまった」と書いていた。

その気まずい空気を察してか、アニは、

アニ「ああ、あんたら付き合ってるのか」

エレン&ミカサ「「違う!!」」

二人同時に否定してしまい、ますますおかしな事になってしまった。

エレン「その、今日はたまたま、作って貰っただけで普段は違うんだ」

ミカサ「そう。今日はたまたま、私が一個多く持ってきてしまって、エレンにあげただけで」

嘘にしては苦しい言い訳なのは分かっていたが、アニの目がますます鋭くなる。

アニ「ああいいよ。別に否定しなくても。私は言いふらさないし」

ミカサ「いや、だから、その……」

アニ「そりゃにバレたら冷やかされるし面倒だしね。黙っておくからさ」

エレン「いや、違うんだ、その……」

アニ「しつこいね。私がそんなに口の軽そうな女に見えるの?」

ミカサ「いいえ、アニは口が硬そうだけど……その……」

いっそ、そういう事にしておいた方がいいのだろうか。

諦めかけたその時、エレンが先に頷いた。

エレン「ミカサ、言ってもいいか?」

ミカサ「いいと思う。変に誤解されたくないので」

アニ「何が?」

アニに誤解されるよりは真実を話した方がいいと思い、私達は同居している旨を簡単に説明した。

するとアニは「へー」という顔をして、言った。

アニ「なるほど。通りであんた達二人、仲いいと思った。それで弁当もミカサが作ってたって訳ね」

エレン「まあな。悪い。他言無用にしてくれ」

アニ「いいよ。人の家の話だし、言いふらすような事じゃないからね」

アニの理解が早くて助かった。

アニ「親の再婚か。要は連れ子同士って訳だね」

ミカサ「そうなる」

エレン「だな」

アニ「そっか……じゃあどんなに仲良くても恋人同士にはなれないわけだ」

エレン「そりゃそうだよ。何言ってんだ?」

アニ「あ、気を悪くしないで欲しい。ただ、ちょっと思っただけだから」

アニの呟きは意味深に聞こえてちょっと不可解だったけれど、アニはそれ以上その事について追求はしなかった。

アニ「ところで、ミカサ。このかぼちゃの煮付けってどうやって作るの?」

と、話題は料理の方にそれて私達は昼を食べ終えた。

エレンは食後に「牛乳買ってくる」と言って一人で自動販売機に向かった。

午後は体力測定の続きだ。アニと一緒に運動場に戻っている途中で、

アニ「………エレン、ね」

ミカサ「?」

アニ「いや、何でもない」

その時のアニが何を思ってエレンの名前を呟いたのかは分からない。

だけどアニの表情はとても複雑そうに見えた。

人の心の機微を読み取る能力がもっとあれば、その真相が分かったかもしれないが。

その時の私には、推察する事すら出来なかったのだった。

とりあえずここまで。続きはまた今度。
委員会等、決める安価、ありがとうございました。

そして午後の体力測定も無事に終わって部活に行くことになった。

今の時期は次の公演に向けての準備期間で、まだそんなに忙しい時期ではないらしい。

ただ公演前になるとその反動で滅茶苦茶忙しくなるそうなので覚悟しておかないといけないと先輩達に言われた。

今は基礎体力作りに学校の外周を軽くジョギングしたり、柔軟体操や発声練習等の基礎的な事を中心にやってるそうだ。

大道具の本格的な活動は、台本が出来てからになるらしい。

この間、大きな荷物を移動させていたのは、去年の公演で使用した物らしく、近々解体予定なのだそうだ。

エレン「あれだけでかい物を解体するんですか? 勿体ねえ」

先輩1「逆よ。勿体ないから解体して再利用するの。次の公演のセットに使用するからね」

先輩2「材料を眠らせる方がダメなのよ。これはうちの伝統なの」

エレン「へー……そういうもんなんですか」

先輩1「うちには解体の職人がいるからね。今日はまだ来てないけど」

先輩2「うん。3年にすごい人たちがいるよ。まだ紹介してないけど」

エレン「そうなんですか。どんな人だろ……」

茶髪の女子「やっほー! 久しぶり!」

と、噂をすれば影とはこの事だろう。恐らく3年生と思われる人が増えた。

2年の先輩達はすぐに立ち上がって一礼した。

先輩1「ペトラ先輩、お久しぶりです!!」

先輩2「オルオ先輩も! やっとこっち来れるんですか?!」

オルオ「おう。まあな。待たせたな。お前ら」

先輩3「グンタ先輩とエルド先輩は?」

オルオ「後から来る筈だ。今日はリヴァイ先生も来るぞ」

先輩1「まじっすか! やべええええ! 部室掃除しとかないと!」

先輩2「一年! 今から部室と音楽室の大掃除に入るぞ!」

一年一同「「「はっ! (敬礼)」」」

エレン「おお……何か急に忙しくなったな」

ミカサ「そうね。リヴァイ先生って、整備委員の方も担当していると言っていた先生よね」

ペトラ「そうだね。リヴァイ先生は忙しいからそんなにこっちには来れないけど、来たら必ず部室と音楽室のチェックが入るから、掃除出来てないとキレられて蹴り入れられるわよ」

エレン「えええ……体罰じゃないっすか」

ペトラ「愛のムチよ。愛の。これくらい耐えられないと、公演なんてもっとしんどいからね」

エレン「え?」

その時の、3年のペトラ先輩の言葉の意味はすぐには理解出来なかった。

私達一年はまだ、公演という名の地獄をまだ味わっていなかったからだ。

ペトラ「厳しさには慣れてた方がいいわよ。うん。早いに越したことはない。普段は緩いけど、うちはヤル時はやるんだから」

と言いながら既にペトラ先輩は10組の椅子と机を移動し終えている。

は、早い。口を動かしながらでも仕事が出来るタイプと見た。

オルオ「一年は窓拭きから始めろ! 2年は移動させた机を移動させた後の床部分をほうきで先にはけ! オレ達3年が雑巾がけで一気にやる!」

一同「「「「は!」」」」

オルオ「あと15分以内に仕上げろ! 遅くても30分以内にはリヴァイ先生が到着される! それまでに絶対間に合わせるぞ!」

オルオ先輩が何故か陣頭指揮を取って掃除が一気に進んだ。

そのあまりのチームワークの良さに目の裏がぐるぐる回りそうだった。

エレン「すげえ……あっと言う間に片付いていく」

普段の音楽室もそんなに汚いわけではない。

しかしこうやって改めて掃除をしてみると、その違いに驚く。

なんていうか、普段は意外と人はゴミに気づかないで生活しているのだと思い知らされたのだ。

ペトラ「エルド、グンタ! 遅い!」

エルド「悪い悪い。こっちはホームルームが長引いた」

グンタ「担任の話が長いのなんのって」

ペトラ「いいから手貸して!」

そして3年生が増えて更に掃除が綺麗に仕上がった。

演劇部は1年5名、2年5名、3年4名の計14名の人数だが、クラスで普段、掃除の時間でやる掃除とは雲泥の差があった。

こんなに早く掃除って出来るもんなんだ。と、思わされたのだ。

掃除が完了すると空気までが綺麗になったような心地になった。

ミカサ「素晴らしい。皆でやるとこんなに早く綺麗になるのね」

ペトラ「先生が来る時はやっとかないと後が怖いからね」

オルオ「おい、久々に全員で発声練習始めるぞ!」

という訳で掃除が完了した後は皆で発声練習である。

お腹の底から声を出して遠くの方に飛ばすイメージで声を出せと言われた。

私は腹筋の力が強いので声も遠くまで響くと、最初の発声練習では少しだけ褒められて嬉しかったが、アレはお世辞だったのだと、今、思い知らされた。

3年生の声が私の倍以上、大きくて遠くまで届く大音量だったからだ。

エレン「こ、声、でけえ……」

エレンも同じように思っていたらしく、ちょっとびびっていた。

エレン「どうすりゃあんな大声出せるんだ?」

ペトラ「腹筋がまだまだ甘い! 鍛えないとね!」

ミカサ「私はそこそこ腹筋ある方ではあるんですが…」

ペトラ「筋肉はあるだけじゃダメなのよ。宝の持ち腐れにならないように、使い方を意識して」

ペトラ「おへその下にたんでんって呼ばれる体の部位があるんだけど、そこに一番意識を持っていって」

ミカサ「こうですか? (手を添えてみる)」

ペトラ「うん。一回、それで声出してごらん」

ミカサ「あーーーーーーーー」

あ、本当だ。さっきより声が出しやすくなった。

ペトラ「うまいじゃない! 素質あるわよ!」

ミカサ「あ、ありがとうございます…」

ちょっとだけ嬉しかった。

エレン「あーーーーーー」

ペトラ「息が続いてないわね。一気に酸素を吐き出さないで、ゆっくり出して」

エレン「あーーーーーーーー」

ペトラ「そうそう。最初に全力で出し切ると後が続かないわよ。持久力も大事だからね」

エレン「はい!」

エレンもちょっとコツが掴めたようだ。嬉しそうに笑ってる。

ペトラ「あら? 君、笑うと可愛いわね。表情筋がいい感じね! 役者希望?」

エレン「いえ! 裏方です!」

ペトラ「あらそう? 勿体無い。気が変わったらいつでも役者に来てもいいわよ?」

何故かエレンが役者側にスカウトされてしまった。

確かにエレンはよく表情がコロコロ変わるので役者にも向いているかもしれない。

そんな感じでペトラ先輩は他の一年にも声をかけながらいろいろ指導をしていった。

発声練習が一通り終わると柔軟体操を皆でやった。

一年で一番体が柔らかかったのは私だ。股割りも出来るし前屈も得意なので皆に驚かれた。

ペトラ「今年は面白そうな子が入ってきてるわ。いい感じね」

オルオ「ま、最初はそんなもんだろ。これからが課題だな」

ペトラ「…………その、ちょっと斜めに構えた感じやめてくれる? 気持ち悪いんだけど」

オルオ「ふん。オレに命令する権利はまだない筈だが? ペトラ」

エルド「はいはい、次行くよ。折角全員揃ってるから、軽く自己紹介いこうか」

と、パンパンと手を叩いて場を切り替えたエルド先輩は自分から自己紹介を始めた。

エルド「3年2組のエルドです。役者と照明やってます。趣味は日本史・世界史。歴史全般です。夢は考古学関係の何かに携わること。今のところ教師目指してるけど、将来はインディー先生のようになります!」

と、簡潔に自己紹介が終わった。

え? これもしかして、1年にも回ってくる? 回ってくるの?

グンタ「3年2組のグンタです。役者と音響やってます。趣味は作曲。ゲーム音楽とかも割と好きです。得意なのは数学。数字には結構自信あるんで、テストの山はりは手伝えると思う。以上」

は、早い。次はペトラ先輩か?

ペトラ「3年1組のペトラです。副部長やってます。役者と衣装もやってるけど、実質は私が部長です」

オルオ「おい!」

ペトラ「何? なんか文句ある?」

オルオ「部長はオレなんだが? オレ何だが?!」

笑ってはいけないと思うけど、笑いそうになった。

エレンも頬がヤバそうに膨れている。

ペトラ「えー、まあ、部長はオルオだけど、副部長の方が実際は忙しいです。所謂何でも屋だからね。台本を書く時もあるし、本を読むのが割と好きかな。アニメ・ドラマ、両方いけます。好きな芸能人はhideさんです!」

hideって誰だろう? ヒデ……ひで……。

エレン「ライク・アンド・シェルのボーカルだよ。知らねえの?」

ミカサ「ごめん。分からない…」

エレン「背のちっこいおっさんだよ。もういい年だけど、歌はうまい」

エレンがこっそり解説してくれたのだけど、目ざとくペトラ先輩が「ちっこいおっさん言わないで!」と反論してきた。

エレン「すみません。わかりやすく言ったつもりだったんですが」

ペトラ「うぐぐ……確かにちっこいおっさんなのだけども。そこがいいのよ!」

オルオ「自己紹介させてくれよ…」

ペトラ「あ、ごめんなさい。ついつい。次いいわよ」

オルオ「えー3年1組の部長のオルオです。俺も役者と台本書いたりしてる。元々は裏方だったんだが、いつの間にか役者がメインになった。ま、俺の才能をリヴァイ先生が見抜いてくれたおかげ何だが……」

ペトラ「はいはい。自慢自慢。次は2年の自己紹介ね」

オルオ「まだ途中何だが?!」

もう、夫婦漫才にしか見えないのだけども。

仲良さそうで何よりである。

(*ここからはモブキャラにも名前をそれっぽくつけていきます)

先輩1「えー2年1組のマーガレットです。少年漫画が大好きで漫研と兼部してますが、将来はアニメーターか、イラストレーター希望です。手先は器用なので割と何でも作れます。金槌は私の相棒です。Gペンは私の恋人です。以上!」

先輩2「2年2組のスカーレットです。私も手先はそれなりに器用です。趣味は粘土で立体を作ること。フィギュアも作れます。人前に出るのは元々は苦手ですけど、作るのは好きなので、ここにいます。宜しくね!」

先輩3「2年3組のガーネットです。手芸部と兼部してます。普段は大道具メインですが衣装作るのも好きなので、衣装もやってます。特技は見ただけで人のスリーサイズをだいたい測れる事です。以上」

キラーンと、眼鏡を輝かせているところはまるでハンジ先生だと思った。

先輩4「2年4組のアーロンです。役者やってます。元野球部ですが、高校から演劇に目覚めてこっちに来ました。以上」

先輩5「2年4組のエーレンです。同じく役者やってます。俺も演劇は高校からですが、結構楽しくやってます。俺は元サッカー部です。以上」

あら? エレンと似たような名前の男子の先輩がいた。偶然とはいえ、凄い。

ペトラ「次は一年いってみよー」

エレン「はい!」

エレンが先にいった。凄い。

エレン「1年1組のエレンです。部活に入るのは初めてですが、大道具のガチャンガッチャンが格好良くて入りました。まだ演劇のことはさっぱりわかりませんが宜しくお願いします!」

先輩一同「おー!」

パチパチと拍手が起きた。大道具の面子は嬉しそうにしている。

マーガレット「分かる。このガッチャンガッチャンには何かロマンを感じるわよね」

エレン「はい! 装備品に魅力を感じました!」

スカーレット「使いこなせるようになると自分の分身のように感じるからね。うんうん」

つ、次は誰かしら?

エレン「ミカサ、次だろ?」

や、やっぱり?

ミカサ「えっと、その………」

ダメだ。また、緊張する。顔が赤くなるのが分かる。

ミカサ「1年1組のミカサです。その………特技は、肉を削ぐことです。以上」

ペトラ「ええええ?! どういう事?!」

エレン「ミカサ、端的すぎるだろ。もうちょい詳しく」

ミカサ「ええっと、料理全般、出来ます。あと掃除も好きです。あ、歌もそれなりに歌えます。それくらいです」

ペトラ「なんだ。結構特技があるじゃない。そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」

エルド「いや、これは有りだ」

グンタ「ああ。期待の新人だ」

オルオ「こういうのが足りないんだよな。うちの部は。うんうん」

直後、ペトラさんのハリセンが何故か3年男子全員に直撃した。

オルオ「いってー! お前、どこからハリセン持ってきた!」

ペトラ「常備しているのよ。乙女の必需品なのよ」

オルオ「どの辺が乙女だ……悪かった。もう言わない。ハリセンしまえ」

(*一年もモブキャラに名前をそれっぽくつけます。由来は詮索しないで下さい)

一年女子「1年2組のマリーナです。役者希望です。将来の夢は声優です。男の子の声が得意なので、聞いてください」

マリーナ『僕にだって出来るさ! これくらい!』

マリーナ「こんな感じです」

エレン「うわあああすげえええ!」

オルオ「う、うまいな。一瞬で声が変わった」

ペトラ「これはまた期待の新人ね」

一年男子「1年2組のカジカジです。ガジガジではないです。カジカジです。間違えないようにお願いします。変な名前でよくからかわれますが、カジカジです。くれぐれもカジカジで覚えて下さい」

一年男子「1年2組のキーヤンです。俺も歌はそれなりに歌えます。歌って踊れる声優目指してます。以上!」

ペトラ「今年も濃いメンバーが集まったわね」

グンタ「まあ、毎年の事らしいからな」

エルド「ああ」

リヴァイ「演劇部は変人の巣窟を呼ばれている部だからな」

部員一同「?!」

リヴァイ「遅くなった。すまない」

ペトラ「リヴァイ先生?! いつからそこに?!」

リヴァイ先生は何故か音楽室の入口で立ってこちらをこっそり覗いていたのだ。

私は途中で気づいていたが、特に割り込む訳でもなかったので様子を見ていたのだと思う。

イザベル「や! 今日は私達も来ちゃったよ」

ファーラン「相変わらずここは騒がしいぜ」

ペトラ「イザベル先輩?!」

オルオ「ファーラン先輩?!」

リヴァイ「さっきそこの廊下でこいつらと会ってな。話し込んでしまって遅くなった」

どうやらペトラ先輩達より更に上の先輩、つまりOBとOGの方が遊びに来ていたらしい。

見た感じ二人は大学生のようだ。

つまりは、ペトラ先輩達より偉い人という訳で。

3年の先輩達が全員、汗を浮かべているのは仕方ないのだろう。

ファーラン「今年もそれなりに新入部員が入ったようだな。去年より少ないが……」

ペトラ「ま、まだまだ勧誘は続けます! ね?」

オルオ「はい! あと10人は増やしますので!」

ファーラン「言ったなオルオ? 二言はねえな?」

オルオ「はいいいいいい!」

オルオ先輩は自分で自分の首を絞めているようだ。

ここから更に10人も増やすなんて現実的な数字ではない。

リヴァイ「おい、オルオ。無茶するな。ファーラン。お前もだ」

ファーラン「冗談だよ。ククク……」

リヴァイ「掃除もちゃんと終わってるな。新入部員も把握できたし、今日は久々に台本の読み合せでもするか」

リヴァイ先生はそう言って一度音楽室を出て行った。

そして何冊か台本を持ってくるとそれを私達全員に配った。

こっちに近づいた時に分かったのだけども、このリヴァイ先生は相当、小さい。

160cmあるのだろうか。ギリギリか。エレンより小さい。勿論、私よりも。

年はいくつだろう? 若いようにも見えるし年を食ってるようにも見えた。

黒いスーツに何故か首元にスカーフをしている正装の先生だったが、身のこなしは、スマートだった。

見た感じ、顔つきも顔色もあまり良くない。

潔癖症というより、ちょっと暗い印象の先生だったのだけども。

黒髪はサラサラしていて、6対4くらいの分け目だった。

あと、特徴的なのは後ろの刈り上げ。

眉間に皺が寄っていて、そのせいで余計に暗い印象だ。

リヴァイ「さてと。今回は全員、くじ引きで役を決めるぞ。裏方も代役で出る場合もあるんだから一応、練習しとけ」

ミカサ「え?」

私は思わず声を出してしまった。

リヴァイ「ん? どうした?」

ミカサ「えっと、裏方も舞台に出る場合があるんですか?」

リヴァイ「ごく稀にだが、例えば出る予定の役者が怪我して出られなくなったり、そういう緊急事態の場合は裏方が役者を兼任する場合もある。だから、裏方もモブ役くらいは出来ないと困るんだ」

ミカサ「あ、モブ役ですね。メインではなく」

リヴァイ「当然だ。そもそも、裏方は裏で手いっぱいだからな。役者の練習なんてしている暇は殆どない」

エレン「なるほど」

リヴァイ「でも、例えば通行人だけでも必要な場面があったら、その時は衣装チェンジして間に合わせる事もある。まあ、表を知ってれば裏もやりやすいし、裏を知ってれば表もやりやすいんだがな」

と、リヴァイ先生の説明が終わって私達は台本の読み合わせという練習を行う事になった。

そして一通り読み合せの練習が終わると、その日はそこで解散となった。

リヴァイ「あーエレンとか言ったか。お前、ちょっと残れ」

エレン「はい?」

片付けが終わって各々帰宅しようと準備していたのに何故かエレンだけ先生に呼び出された。

私は心配になってこっそりドアに耳をあてて盗み聞きをする。

音楽室に二人だけ残った状態で話し込んでいる。

声は小さいが、一応、内容は聞こえる。

エレン「え? オレが役者ですか?」

リヴァイ「ああ。お前、裏方希望だって言ってたが、役者の方が向いてるかもしれんぞ」

エレン「そ、そうですかね?」

リヴァイ「今日の練習を見る限り、1年で一番、演技の幅があったのはお前だ。他の奴らより声は小さかったが、感情移入して台詞を読んでいただろう?」

エレン「はい。割と途中で泣きそうになりました」

リヴァイ「恐らく、性格的に向いてるんだよ。地は感情の波が激しい方だろう?」

エレン「うっ……バレましたか」

リヴァイ「喜怒哀楽が激しい事と、他者に感情移入をしやすい性格の奴は役者に多い。勿論、足りない部分も多々あるが、ハキハキ受け答えも出来るし、裏よりは表の方がいいと思ったんだが」

エレン「そ、そうなんですか……」

リヴァイ「ただ、お前の言うようにそのガッチャンガッチャンに憧れて大道具やる奴も少なくはない。一応、両方を視野に入れて、少し様子を見たらどうだ?」

エレン「分かりました。少し考えてみます」

リヴァイ「お前の相方のミカサの方は、表は無理そうだな。あいつは裏方メインがいいだろう」

うっ……やっぱり見抜かれてる。悔しいけれどその通りだ。

エレン「そうですか……」

リヴァイ「顔は悪くないんだがな。中身が表向きじゃない。ヒロイン向きの顔だが、あれだけ緊張して台詞を言う奴も珍しいな。なんかトラウマでもあるのか?」

エレン「えっと、多分、新入生代表挨拶のアレが原因です」

リヴァイ「ああ、アレか。ちょっと変な挨拶だと思ったが、そうか。あの時のアレがあいつだったのか」

変に納得されてしまった。ちょっと傷ついてしまう。

リヴァイ「ふむ。まあもう少し様子を見てみたい気持ちもあるが、とりあえずはミカサは裏メインでやらせた方がいいだろう。今年の1年は裏2名表3名で、劇よっては裏1名表4名でもいけそうだな」

エレン「そうですね。オレももうちょっと様子見てみます」

リヴァイ「そうしろ。とりあえず、俺がこっちに来れるのは週一が限界だ。他の部の顧問も兼任しているからな」

エレン「演劇以外も顧問しているんですか?」

リヴァイ「体操部だ。俺は体育教師だからな。演技については自身ではあまり出来ないが、ただ、客観的に見て指導するのは得意な方だからこちらも任されているんだ」

エレン「へー……役者をやってたとかじゃないんですね」

リヴァイ「ああ。経験は裏方だけだな。裏の方がもっと綿密に指導は出来るが、あまり口を出すような事でもないしな。怪我だけには注意してあとは自由にやっておけ」

エレン「はい! ありがとうございました!」

リヴァイ「気をつけて帰れよ」

という訳でエレンはようやく解放された。

そして帰り道。私はエレンと話しながら二人で帰った。

夜道はすっかり暗い。コンビニや信号の灯りが眩しかった。

ミカサ「……………」

エレン「元気ねえな。なんか買い食いしていくか? 腹減っただろ?」

ミカサ「いい。お腹はすいてない」

エレン「え? そりゃまずいな。もう夜の7時なのに腹減ってねえっておかしいだろ」

ミカサ「……………」

今日は身長体重が増えてたり、部活動ではちょっと凹んだり忙しい一日だった。

エレン「疲れたのか? 演劇部、馴染めないのか?」

ミカサ「そういう訳ではないけれど」

エレン「ん?」

ミカサ「なんていうか、自分を再認識して勝手に凹んでいるだけ」

私は昔から言葉遣いが「残念」だとか言われていた。

焦ったり、緊張したり、混乱したりすると言語能力が極端に落ちる癖がある。

普段もあまりお喋りではないのもあるせいか、とにかく表現力がないのだ。

故に、誰かと話すのも得意ではないし、話してもうまく話せない事の方が多い。

なのでこの悪癖を本当は直したいのだが、どうすればいいのか分からない。

エレン「あー……皆の前での挨拶、もうちょっとなんとかしたかったのか」

ミカサ「うん」

エレン「うーん。ミカサって混乱してる時って、頭の中どうなってるんだ?」

ミカサ「真っ白」

エレン「いや、真っ白なのは分かるけど。そうじゃなくて、ええっと、混乱する前! 混乱する直前はどんな感じだ?」

ミカサ「直前…?」

そんな事、考えた事もなかった。

エレン「混乱する前は必ずある筈だろ? だって混乱するんだから。するならその前もある。だから、その「あ、今、混乱し始めてるな」っていう感覚、分かるだろ?」

ミカサ「え? え? え?」

エレン「それ! 今、ちょっと意味分からなくて混乱しそうになっただろ?」

ミカサ「あ………」

本当だ。言われてみればその通りだ。

エレン「そう。そういう頭の変化の境目をさ、自分で意識出来るようになれば「今、緊張してんな」とか「今、頭が限界だな」とか分かるだろ?」

ミカサ「そうかもしれない」

エレン「そうやって自分を『客観的』に見るんだよ。そうすればそういう時はどうするべきか、分かるんだ」

ミカサ「自分を客観的に、見る……」

エレンの言っている意味の全てを理解している訳ではなかったが、それでもなんとなく、エレンが言わんとする部分は分かった気がする。

エレン「混乱したり、頭が限界に来てる時は、オレは目を一回閉じたりしてるけどな」

ミカサ「目を閉じる」

エレン「とにかくその瞬間「今、いつもの自分と違うな」っていう自分を感じるんだよ。感じたら、深呼吸でもなんでもいい。ちょっと違うことをするんだ」

ミカサ「違うこと……」

エレン「まあ、出来ないならオレがやってやるよ。ミカサが冷静じゃない時は、オレが止めてやるから」

そう言ってニカッと笑ったエレンにちょっとだけ、頼もしさを感じた。

エレン「そしたら多分、感覚が分かる筈だ。今度教えてやっから」

と、エレンは言ってくれた。

ミカサ「うん。ありがとう」

エレンはとても優しい人だと思った。

こうやって私に足りない部分を教えてくれる。

手を繋いでいないのに、繋がれているような安心感が、そこにあった。

エレン「お、家についた。腹減ったーめしめしー」

だけど次の瞬間、またいつものエレンも戻った。

飯の事を言う時のエレンは子供だと思うけど。

それが嫌ではない、自分がそこに居たのだった。

それから数日の月日が流れ、アルミンのインフルエンザもようやく完治した。

アルミン「うー……しょっぱなからついてないよ。やっと治ったけど」

エレン「治って良かったな」

アルミン「うん。でも皆、もうクラスの友達のグループ出来ちゃってるし、部活も入ったんだろ?」

エレン「ああ、まあ、オレとミカサは演劇部の裏方の大道具ってやつをやることになったよ」

ミカサ「今は今度、公演予定の背景のセットを作ってる」

アルミン「へー! 意外だな。エレンは球技系に入ると思ってたけど」

エレン「んー一応、球技も見て回ったけどな。何か思ってたより殺伐としてたから馴染めそうにないと思ってやめた」

ミカサ「演劇部は皆、いい人。仲良くやっている」

エレン「だよな。部室にはいつもお菓子とお茶があるし、練習の合間には皆で結構、喋ってるぜ」

アルミン「そうなんだ。いいなあ」

エレン「アルミンも演劇部入らないか?」

アルミン「僕は特待生だからね。部活をやってる時間はないかも。成績落としたら学校通えなくなるし」

エレン「あ、そう言えばそうだったな。悪い」

アルミン「いいよ。その代わりエレンとミカサが出る公演は観客として見に行くから」

エレン「おう! 待ってるぜ!」

話題が途切れた頃、アルミンは何かを思い出したように言った。

アルミン「あ、僕が休んでいる間のノート、写させて貰えるかな?」

エレン「いいぞ。コピー取っておくか?」

アルミン「うん。家のコピー機でコピー取ってから明日返すね」

エレン「了解」

アルミン「他に僕が休んでいる間に何かあった?」

ミカサ「委員会が決まった。エレンは整備委員会。私は体育委員。アルミンは休んでいたけれど、図書委員に推薦しておいた」

アルミン「わあ、ありがとう。図書委員、好きなんだ僕」

エレン「アルミンは小学校の頃からずっと図書委員やってたって言ったら先生も認めてくれたんだよ。だからオレが推薦しておいたんだ」

アルミン「持つべきものは友達だ。ありがとう、エレン!」

エレン「いいって!」

私はジャンの席を借りて(貸して欲しいと頼んだら何故か「喜んで!」と即答された)教室で三人でわいわい言いながらお昼ご飯を食べていたら、そこにアニが加わった。

アニ「アルミン、だっけ? インフルもう治ったなら、今日から当番にいけるよね?」

今日は4月14日の月曜日だ。

アルミンは入学式の4月8日から一週間ほどお休みしてしまった事になる。

>>109
訂正
ミカサ「委員会が決まった。エレンは整備委員会。私も整備委員。アルミンは休んでいたけれど、図書委員に推薦しておいた」

何で体育委員になってるんだ? 自分でびっくりした。

>>109
訂正2
エレン「アルミンは小学校の頃からずっと図書委員やってたって言ったら認めてくれたんだよ。だからオレが推薦しておいたんだ」

先生、は別にいらないなこれ。間違えました。

あ、正確には5日間だけども。

アルミン「うん。もう大丈夫だよ。ごめんね。エレンから聞いてたけど、僕の代わりに会議に出てくれたんでしょ?」

アニ「まあ1回だけね。どの曜日に当番するかを決める会議が一回あっただけだよ。私達は月曜日の昼休みになったから」

アルミン「分かった。今日から早速だね。じゃあもう、移動しないといけないね」

アニ「うん。じゃあ、アルミン、連れてくよ」

エレン「いってこーい」

ミカサ「いってらっしゃい」

という訳でアルミンはお昼ご飯を一旦、片付けて、食べてる途中だったけど、アニと一緒に図書室に移動した。

残りの時間どうしよう。私はもうお昼は食べ終わったけど、他にすることがない。

エレン「オレ、また食後の牛乳買ってくる」

また自販機か。エレンは最近、食後に牛乳を飲むのがマイブームらしい。

そんなに背丈が欲しいのか。あげたい(2回目)。

ジャンの席に一人で座ってぼーっとしていたら、私に話しかけてきたクラスメイトがいた。

*話しかけてくるクラスメイトを一人選んで下さい。安価すぐ↓ずれたら一個↓

ちなみに現在の1年1組の座席表はこんな感じです。
??? のところはモブキャラ扱いです。

             【黒板】

マルコ  ???  ???  サシャ   アニ

マルロ  ???  トーマス サムエル アルミン

ミーナ   ヒッチ   トム    ジャン  エレン

ミカサ   ???  ナック  ???  ???

ミリウス ???  ???  ???  クリスタ

ユミル  フランツ  ハンナ  ???  コニー

ライナー ベルトルト ???  ダズ  ???

クリスタ「ええっと、ミカサさん、ちょっといいかしら?」

確かクリスタといった金髪の小柄な美少女だ。

今日はユミルは傍にいないのか?

ああ、紙の束を持っているので彼女は級長の仕事中なのだろう。

ミカサ「なんだろうか?」

クリスタ「あのね。一応確認しときたいんだけど、今度の研修旅行、ミカサさんのいる班だけ女子一人なんだけど大丈夫?」

ミカサ「私はエレンやアルミンと一緒の班の方がいいので」

本音を言えばもう一人くらい女子が一緒にいて欲しかったのもあるが、自分の我が儘が全て通るほど世の中は甘くない。

ひとつ希望が叶えられればそれで良しとするべきである。

クリスタ「ごめんね。こっちを一回、誘ってくれてたんでしょ」

ミカサ「済んだ事なので謝る必要はない」

クリスタ「そうだけども、一応ね。研修旅行では食事とか授業の席は班別の行動になるけど、寝る時は女子と男子は分かれて大部屋だから安心してね」

大部屋…。

何だか嫌な予感しかしない。

ミカサ「大部屋というと、和室で布団を並べて寝るのだろうか」

クリスタ「その予定だよ。皆で夜中にいっぱいお喋りしようね!」

ミカサ「う、うん……」

ああ。女子会。ガールズトーク。

出来るんだろうか。小中学校、女子の中で殆どグループに属してなかった私が。

幼稚園の頃までは良かった。平和だったけれど。

小学校の途中から何故か私は女子のグループから仲間外れにされて孤独だった。

原因は、いろいろだ。

女子の中で人気のあった×××君が私の事を好きで、それをフッたらフッたで、反感をかったり。

アイドルグループの名前を間違えて覚えててそれを言ったら嫌われたり。

皆と同じような可愛い文房具が欲しくて真似したら嫌われたり。

女子には嫌われていたがその分、何故か男子には好かれた。

でも彼らは最初は普通にしていても、最終的にはキレて「どうして分かってくれないんだ!」と詰め寄ってくる。

彼らは私と男女の仲になりたかったらしく、私の望んだ関係を維持は出来なかった。

なので愛の告白はされたことは多数あるが、お付き合いはした経験がない。

高校生になり、住居も変わり、グリシャさんとエレンと同居するようになり、そしてこの学校に来てからは、あの頃のような思いはしないで済んでいるけれども。

また、どこかで間違えたら同じ道を辿るかもしれないと思うと不安は拭いきれなかった。

特にこういう交流の場になると、何かやらかしてしまうのではという不安がどうしても出てくる。

私の不安を察知してか、クリスタはジャンの後ろの席に勝手に座って私との話を続けた。

クリスタ「ミカサさんは、どこの中学校?」

ミカサ「うぐっ……」

遂に来てしまった。この質問が。

ミカサ「く、クリスタさんは」

クリスタ「クリスタでいいよ」

ミカサ「では、私もミカサでいい」

クリスタ「そう? じゃあミカサだね。うん、あのね。私とユミルとサシャとコニーとマルコは同じ中学校だよ。結構、山寄りかもね。田舎の方だよ」

ミカサ「私も似たようなもの」

クリスタ「そうなんだ。何中?」

うぐっ……。かわしたい。この質問をかわしたい。

クリスタ「…………もしかして、物凄い遠いところ?」

ミカサ「そ、そう。多分、知らないと思う」

クリスタ「そうなんだ。私はローゼ南区中学校を出てるんだ」

その中学校名は知っている。ここからもそう遠くない地区だ。

ミカサ「その中学校は知ってる」

クリスタ「そう? じゃあ、中学校名分かるかも。教えて」

しまった。自分から言わせる空気にしてどうする。

エレン「そういや、ミカサってどこ中出身なんだ? オレも知らねえや」

ミカサ「え、エレン!」

牛乳を買いに行ったエレンが戻ってきた。

エレン「ほい、ミカサにもお土産。りんごとオレンジどっちがいい?」

ミカサ「オレンジで」

エレン「じゃありんごはクリスタで」

クリスタ「くれるの? ありがとう!」

エレン「ついでだよ。んで、ミカサはどこの中学校出身だ?」

ミカサ「……………………………」

私は沈黙してしまった。言いにくい。

言ったら自分の中学時代の黒歴史がバレてしまうかもしれないと思うと言えない。

と、視線を下に下にしていたら、なんとエレンが、

エレン「ちなみにオレとアルミンはシガンシナ区中な」

ミカサ「え?」

エレン「え?」

ミカサ「エレンも?」

エレン「へ?」

ミカサ「私も、シガンシナ区中……だけど」

驚いた。まさか同じ中学出身だったとは。

エレン「え? でもオレ、ミカサと中学時代に会った覚えがないんだが?」

ミカサ「私は5組だった」

エレン「オレは1組だったけど、いや、それにしたって、すれ違うくらいならありそうじゃないか?」

クリスタ「あーでも、同じ中学でもお互いに気づかないで生活するってことあるかもね」

ミカサ「そ、そういう事なのだろうか」

クリスタ「うん。私とマルコは同じクラスになるのは初めてだしね」

エレン「何だよーその頃から知ってたならなあ」

クリスタ「そういう事もあるって」

この感じだと、エレンは私の中学時代の悪評を知らないのだろうか。

端っこと端っこのクラスでは、噂話が届かない事もあるかもしれないが。

>>37
今更ですが訂正。

私は左壁際の真ん中くらいの席だった。




座席表を見れば分かると思いますが、ミカサの席は真ん中辺りですね。

後ろの方の席と最初書いてましたが、訂正します。すみません。

クリスタ「シガンシナ区中なら私達の中学校よりもっと遠いね。講談高校までの通学も大変だったりする?」

エレン「あーまあな。でも電車はあるし、そこまで不便とは思わないな。乗り継ぎは1回だけだし」

ミカサ「通学は片道35分から45分程度だろうか」

クリスタ「へー意外。思ってたより時間かかってないんだ」

エレン「そうだな。中学の時は20分くらいだったけど、まあ、ちょっと遠くなった程度だよ」

エレンは自分の席で牛乳を飲みながら話を続けた。

エレン「遠いところから来てる奴は1時間超える奴とかもいるんだろ?」

クリスタ「いると思うよ。近い子は10分とかもいるけど」

エレン「高校来るといろんなところから来てるからな。通学遠い奴は大変だよな」

と、話は中学校から通学の話に逸れていった。

良かった。これ以上私自身についての話はしないで済みそうだ。

エレン「クリスタはどんくらいかかってるんだ?」

クリスタ「私は20分くらいかな。電車通学だけど乗り継ぎないから早いよ」

エレン「うちの高校、駅から近いからその点は楽だよな」

クリスタ「うん。あ、駅と言えばね……」

そして話題はまた逸れていった。今度は駅の話だ。

クリスタ「最近、ちょっと怪しい奴がいるんだよね」

エレン「怪しい奴?」

クリスタ「うん。まあ、ぶっちゃけると痴漢っぽい奴?」

エレン「え? 痴漢されたのか? クリスタ」

クリスタ「いや、私じゃないよ。そういう噂が出てるの。ただねーその話がちょっと奇妙で」

ミカサ「奇妙?」

クリスタ「うん」

クリスタはりんごジュースをすすりながら首を傾げていた。

クリスタ「うーんとね。まあ、その……男の子を狙う痴漢らしいの」

エレン「へ?」

クリスタ「しかも、女装男子限定っていう、まあ何ともアレな話なんだけどね」

エレン「ちょちょちょ……え? なんだそれ。そもそも何で女装男子が電車に乗る?」

クリスタ「最近、たまに見るじゃない。女装男子の子」

エレン「いや、オレは見たことないが」

クリスタ「そう? まあ、いるんだよ。で、うちらの学校の最寄駅付近で、そういう話が出てるから、女の子っぽい男子は気をつけた方がいいぞって何故かメールやら掲示板やらツイッターやら拡散情報が回ってるよ?」

思い当たる男子は身近にいるが…。

エレン「アルミン、あいつ気をつけておいた方がいいかもな」

クリスタ「いや、エレン。あなたも十分許容範囲だと思うけど」

エレン「え?! オレ?! 狙われそうなのか?!」

クリスタ「間違われそうな私服は着ないほうがいいよ。赤色とか。暖色系の服は避けておいた方がいいかもね」

エレン「やべえ……オレ、赤色の服結構、持ってるけど?!」

エレンがガクガクブルブルし始めた。無理もない。

ミカサ「大丈夫。その時は私が守ってみせる」

エレン「いやいやいや、そういう話なら暫くオレは電車通学やめて自転車に変えるぞ」

ミカサ「でも雨の日はどうするの?」

エレン「濡れてでも自転車で通ってみせる」

ミカサ「それはダメ。危ない。事故にあったらいけない」

エレン「…………父さんに車で送ってもらうとか」

ミカサ「そっちの方がまだいいと思う。犯人が捕まるまでは、特にアルミンは……」

エレン「アルミンの家はおじいちゃんしかいねえから保護者の送迎は期待出来ねえよ」

ミカサ「え?」

エレン「あ、言ってなかったか。アルミンの家、両親がいないんだ。他界してる」

クリスタ「あら……」

本人がいないところでそんな話をしていいのだろうか。

エレン「あ、って言っても亡くなったのは相当前だから。あんま暗くならないでって本人も言ってるし、好きにバラしていいって許可は貰ってる。辛気臭くされる方がアルミンも面倒なんだってさ」

クリスタ「そうなのね。ごめんなさい。何かよけいな事言ったせいで」

エレン「いいよ別に。むしろその可愛い男を狙う痴漢っていう話、知らなかったから聞けて良かったぜ。アルミンにも気をつけるように言っておくよ」

ミカサ「そうね。これはアルミンが一番気をつけるべき問題」

と、私が言ったところで丁度チャイムが鳴り、昼休みが終わったのだった。

放課後、アルミンに例の件を話すと物凄い渋い顔をされた。

アルミン「ええっと、つまり女の子に間違われそうな格好をしているとやばいって事?」

クリスタ「最初に被害に遭ってしまった子は、女装男子だったけど、それから被害が拡大して、それに近い所謂、中性的な男の子も狙われるようになったらしいんだよね。だからスカートじゃなくても、女の子っぽい色合いの格好でもアウトって話だよ」

クリスタ「ただ、アルミン君の場合は男子の制服を着てても割とその……」

アルミン「いや、それ以上言わなくてもいいよ。うん」

クリスタの言葉を遮ってアルミンは大きなため息をついた。

アルミン「はあ……もう何だか嫌な世の中だよ」

アルミンは頭を抱えて机の上に頭をのせてしまった。

アルミン「そんな話を聞いた後に一人で帰りたくない……」

ミカサ「今日は一緒に帰ろう。アルミン。少し待ってて欲しい」

アルミン「いや、僕は早く家に帰らないとまずいんだ。おじいちゃんを長く一人にはしておけない」

エレン「そうだよな。オレ達の部活の終わる時間までは待っていられないよな」

ミカサ「では今日だけは部活を休ませてもらおうか、エレン」

エレン「その方がいいかもな」

アルミン「いや、それはダメだよ。二人を巻き込んでしまうのは……」

クリスタ「ごめんなさい。私がもっと体が大きくてアルミン君を守れるくらい強ければ…」

アルミン「いや、君づけはいいから。あと女の子に守られたら僕が死にたくなるからやめてくれ」

アルミンは男心と危険性を天秤にかけて悩んでいるようだ。

エレン「気持ちは分からんでもないが………アルミン、お前は可愛いからこの事実は曲げようがない」

アルミン「………エレンだって可愛い顔立ちしてるじゃないか」

エレン「オレは背がある分、まだいいんだよ。アルミンは背丈も……」

アルミン「うわああん! 身長欲しいよおおお!」

ミカサ「エレン、これ以上追い詰めてはダメ」

エレン「悪い。しかしどうしたもんかな」

ああ、こんな時、アルミンと体を入れ替えられたらどんなにいいかと思う。

勿論、性別はそのままで。私が男で、アルミンが女として生まれた方が世の中はもっと平和だったかもしれないのに。

この世界は残酷だ……。

アニ「何をさっきから騒いでるの?」

アニが教室に戻ってきた。でも鞄は持っている。

ミカサ「忘れ物?」

アニ「ノートを忘れた。まだ帰ってないの? アルミン。あんた、部活入ってる訳じゃないんでしょ? さっさと帰ったら?」

クリスタ「実は……」

クリスタは例の噂の件をアニにも伝えた。すると、

アニ「ふーん。可愛い男の子を狙う痴漢の出没の噂、ねえ」

アニは微妙な顔をして笑いを堪えている。

アルミン「笑い事じゃないのに」

アニ「いや、その……そういう事なら騒ぎが収まるくらいまでなら、私も一緒に帰ってやってもいいけど」

アルミン「え?」

アニ「シガンシナ区までは行かないけど。途中までなら電車も一緒だし、いいよ」

アルミン「いや、でも……」

アニ「それもしたってただの噂だろ? 実際、この学校の奴らの誰かが狙われたのならまだしも、噂だけが一人歩きしてるのかもしれないし、必要以上にびくびくしてもしょうがないと思うけど?」

アルミン「………それもそうだね」

クリスタ「じゃあ私も途中までアルミンと一緒に帰る」

アルミン「わあ……両手に華だな、これ」

アニ「あんた自身が痴漢になったら、大事なところを握り潰すからね」

アルミン「それは勘弁下さい。一応、僕は男の子なので……」

そんな訳でアルミンはアニとクリスタと一緒に帰っていった。

そう言えば今日はいつもいる筈のユミルの姿がなかったけれど、どうしたのだろうか。

ちょっと気になったので明日もいなかったらクリスタに聞いてみようと思った。

そして翌日、なんとユミルもインフルエンザにかかっていた事が判明した。

クリスタ「あのね。最初はただの風邪だと思ってたらしいんだけど、次の日の朝にがーっと熱が上がっちゃって病院行ったら、インフルだって」

休み時間、その話を聞いて複雑な顔をしたのはアルミンだった。

アルミン「あっちゃー……こりゃまだ、時期ハズレのインフルの猛威はまだ収まってないね」

エレン「みたいだな。春なのにインフルって、変な感じだけど」

ミカサ「私は今まで一度もインフルエンザにかかった覚えがないのだけども」

エレン「え? そうなのか?」

ミカサ「学校を休んだ事がないので」

コニー「オレもオレも! 風邪ひいたことないぞ」

ジャン「コニーの場合は馬鹿はなんとかって奴だろ」

コニー「それはねえよ! オレは天才だからな。それにそれを言ったらミカサだって馬鹿って話になるだろ?」

ジャン「ミカサは馬鹿じゃねえよ。ミカサにはウイルスも寄り付かないんだよ」

ミカサ「? それはどういう意味だろうか?」

貶されているのか褒められているのかよく分からない。

ジャン「その……よく言うだろ。恐れ多くて、近寄れないとか」

エレン「ウイルスを擬人化すんなよ。気持ち悪いな」

ジャン「詩的と言えよ! この単細胞が!」

エレン「お前、何かとオレにつっかかってくるが、なんか恨みでもあんのか?!」

ジャン「自分の胸に聞け!」

ミカサ「二人共、喧嘩はやめて!」

高校生にもなって教室で暴れないで欲しい。

クリスタ「でも困った。もうすぐ研修旅行なのに。間に合うのかな」

ミカサ「そうね。今日を含めて4日しかない。間に合えばいいけど」

クリスタ「治らなかったらユミル抜きになるのかーやだなー」

サシャ「ですねえ。折角ですから治って欲しいですけど」

エレン「インフルだとお見舞いも無理だしな」

いつの間にか、休み時間の間、こうやってたわいもない平和な会話をするようになっている。

私自身はそう多くは会話に加わる訳ではないけれど、自然と人の輪が出来てるのが嬉しい。

そこに居てもいいという事も。嬉しい。

ジャン「祈るしかねえんじゃねえの? 4日ならギリギリ間に合うだろ。根性があれば」

アルミン「いや……どうだろ。僕の場合は実質7日は完治に時間がかかってるからね」

エレン「ちょっと長かったよな」

アルミン「うん。熱がなかなか下がらなくてね。しんどかったよ」

そうか。熱にうなされる経験はした事がないので分からないが。

偶発的な偏頭痛程度の苦痛しか経験をした事がないので、うまく想像出来なかった。

そんなこんなであっと言う間に研修旅行の前日の夜になった。

明日からいよいよ、皆と一泊二日の研修旅行である。

ここ数日、特に下手な真似はしていないし、クラスメイトとの関係も良好に思える。

喧嘩をふっかけられたり、無理なナンパもないし、私が正当防衛をする機会もない。

実に平和だった。高校生活万歳である。

エレン「ミカサーちょっといいか?」

寝る前になってエレンが私の部屋にやってきた。

ミカサ「どうぞ」

エレン「入るぞ」

私服姿のエレンだ。黒っぽい格好だ。

エレン「赤色は女っぽく見えるってクリスタに前に言われてからちょっと黒とかも私服に加えて見たんだが、どうだ?」

ミカサ「いいと思う。黒は男の子っぽい」

エレン「そっか。寝る時は私服でいいってあったから、一応確認しとこうと思ってな」

ミカサ「似合ってると思う」

エレン「ミカサは私服、どんなの用意してるんだ?」

ミカサ「教えない」

エレン「何でだよΣ(゚д゚lll)」

ミカサ「ふふ……当日までの秘密にしておく」

そう返すと、口を尖らせてしまったようだ。

エレン「ちぇっ……ちょっと見てみたかったのに」

ミカサ「普段、家でも私服姿は見ているのに?」

エレン「それとこれは別なんだよ。なんていうか、ちょっとワクワクするだろ?」

ミカサ「そうね。ドキドキする」

エレン「まあ、やる事は勉強だけどな。でも温泉もあるし、皆と遊ぶ自由時間も少しあるしな」

ミカサ「そう言えばそうだった」

自由時間。そこをどう過ごすかで今後の高校生活が決まると言っても過言ではない。

ミカサ「自由時間は特に頑張る」

エレン「おう。頑張れよ。オレも頑張る」

私達は、そう言ってお互いに笑いあったのだった。

今回はここまで。次は研修旅行編に入ります。
ユミルは欠席するのか、出席するのか。どっちがいいかな?(笑)

ユミル、是非でてほしいです!
そして、続き&エレミカを期待

>>132
了解しました。ユミル出席ルートで書いていきます。
ちょっとだけ延長戦します。





研修旅行の当日。天気も良好。晴れた。

皆でバスで移動する。時間ギリギリでユミルが間に合った。

汗だくでバスに乗り込んできたのだ。

ユミル「悪い。ギリギリだけど来た……」

キース「大丈夫か? インフルエンザはもう完治したのか?」

ユミル「熱は落ち着いてます。咳はまだ少し出るけど……」

キース「やれやれ。一応、マスクはしておいてくれ。無理はするなよ」

これは完治していない様子だ。それでもイベントに参加するあたり根性がある。

ただ、インフルエンザは普通の風邪とは違うので、どの辺で活動再開をしていいのか素人目には分からない。

私は隣の席のエレンに聞いてみた。

ミカサ「エレンはインフルエンザにかかったことある?」

エレン「あるけど、オレの場合は毎年親父に強制的に予防接種させられるから、かかったとしても症状は軽いな」

ミカサ「そうなの?」

エレン「ああ。酷くなるのは予防接種してない奴だ。ま、面倒臭いからやらない奴の方が多いけどな」

ミカサ「熱が下がっていれば動いてもいいの?」

エレン「本当は良くねえよ。けど、来ちまったからしょうがねえだろ」

クリスタが心配そうにユミルを見ている。ユミルはクリスタの隣の席についたようだ。

バスの席順は、適当だ。先に到着した順に好きなように座っている。

なので私は一番後ろの席の真ん中にいる。

アルミンが左の窓側。その隣にエレン、私の順で並んでいる。

三人が隣同士に座れる唯一の席だったからだ。

私の反対側の、右側にはジャンとマルコがいる。

つまりエレンとジャンの間に私がいるわけだ。

エレンとジャンはよく喧嘩をする癖に何故かよく一緒にいるので、私が間に入ったのだ。

ジャン「参ったな……ユミル、インフルのウイルス拡散する気かよ」

マルコ「ジャン、それは言いすぎだよ」

ジャン「だってあの様子じゃ絶対完治してねえよ? 参るぜ全く」

アルミン「うーん。治りかけって感じだね。僕もついこの間まであんな感じだったからな」

エレン「アルミンはちゃんと治るまで休んだもんな」

アルミン「いやでも、研修旅行と重なってたら僕も無理してでも来たかもしれないよ。だって、なかなかこんな機会ないじゃないか」

マルコ「そうだね。温泉に入れるのだし、やっぱり普通は来たいと思ってしまうよ」

ジャン「まあ気持ちは分からなくないが……」

と、それぞれいろいろ思いながらバスは出発した。

目指すは某県の某温泉地。

大型バスは35名と先生と運転手を乗せて走り出したのだった。






バスの中は暇だった。

なのでジャンが「ゲームでもしないか?」と私を誘ってきた。

ミカサ「何をするの?」

ジャン「トランプ持ってきてる。ババ抜きくらいならバスの中でも出来るだろ?」

エレン「揺れるのに無理だろ。何無茶ぶりしてやがる」

ジャン「お前は誘ってねえよ」

ミカサ「え? エレンも誘わないの? 席が近いのに?」

ジャン「オレとマルコとミカサの三人でやろうと思ってな」

ミカサ「それはダメ。やるなら皆でやりましょう」

エレン「おい、やるのかよ」

ジャン「エレンはやりたくなさそうだから三人でいいんじゃないか?」

エレン「別にやらないとは言ってねえが……」

ああもう。何故こうすぐ険悪な空気になるのか。

ミカサ「トランプは確かにバスの中では散らかるので不向きだと思う」

ジャン「そ、そうか……」

ミカサ「違うゲームでもいいのなら……そうだ。しりとりはどうかしら?」

子供の頃にやったゲームだ。

これなら誰でもルールが分かる筈。

ジャン「しりとりか。普通のだと面白くねえな」

アルミン「何か縛り入れる?」

マルコ「そうだね。世界の国名や地名とか?」

エレン「ああ、そういうのならちょっと楽しめそうだな」

ミカサ「では、しりとり、の「り」から始まる国名、または地名、でスタートする」

ジャン「マルコからオレ、の流れが一番いいか」

マルコ「いいよ。じゃあ「リビア」」

ジャン「アメリカ」

ミカサ「カナダ」

エレン「だ? だ………「だ」なんてあったけ?」

アルミン「この場合は「た」に変えてもいい筈だよ」

エレン「あ、そうだっけ?」

アルミン「うん。しりとりの濁点と丸は清音に変えてもいいよ」

マルコ「清音無しにしちゃうと難易度上がりすぎるしね」

エレン「じゃあ…「タンザニア」」

アルミン「また「あ」か……アラスカ」

マルコ「か………韓国!」

ジャン「く………クエートって国あったよな?」

アルミン「クウェートね。あるよ」

ミカサ「トルコ」

エレン「こ? こ……こ……こ?!」

ジャン「ククク……早くも脱落か? おい?」

エレン「いや、ちょっと待て。何かある筈……有る筈……」

エレン「コロンビアって地名あるよな?」

アルミン「あるよー。国の名前だけど」

ジャン「地名とか言ってやがるwwwww」

エレン「うるせ! いいだろクリアしたんだから!」

アルミン「また「あ」か……アメリカとアラスカは言ったから、次はちょっとマニアックなのいい?」

ミカサ「いいと思う」

アルミン「アンタナナリボ」

ジャン「はあ?! なんだその国の名前!」

アルミン「国の名前じゃない。マダガスカルの首都だよ。地名もいいんでしょ?」

マルコ「有りにしないとすぐ終わっちゃうと思ってね」

アルミン「じゃあいいよね。「ぼ」か「ほ」でお願いします」

マルコ「了解。じゃあ「ボツワナ」で」

ジャン「どこだよそれ」

マルコ「南部アフリカの内陸にある国だよ」

ジャン「そうか……マルコ、お前結構マニアックだな」

マルコ「そうかな?」

アルミン「僕よりはマニアックじゃないよ」

ジャン「アンタナナリボを言い出すあたりが確かにマニアックだが……」

ジャン「「な」だよな……ナイジェリア?」

ミカサ「また「あ」ね。あ……愛知」

エレン「日本の地名もありか。じゃあ、千葉!」

アルミン「ば……バングラデシュ」

マルコ「この場合は「ゆ」でいいのかな?」

アルミン「いいよ」

マルコ「ゆ……ゆ……ユーゴスラビアはもう名前変わってるしなあ」

ジャン「そ、そうなのか?」

マルコ「うん。今のセルビアとモンテネグロにあたるんだけど」

ジャン(全然分からん)

マルコ「ちょっとまってね。ゆ……ゆ……「湯浅!」」

ジャン「どこだっけ?」

アルミン「和歌山県にあるよ。醤油の醸造発祥の地と呼ばれてるんだけど。知らない?」

ジャン「知らねえよ。マニアック過ぎるだろ」

マルコ「歴史的な建造物が残ってる貴重な地区なのに……」

ミカサ「名前くらいなら知ってるけど」

エレン「オレは分からん」

マルコ「分かった。じゃあ変える。「夕張」ならいいよね?」

ジャン「あ、それなら分かる。メロンだろ?」

マルコ「うん。夕張メロンは有名だよね」

ジャン「じゃあ「り」か……り………り?」

エレン「お? 詰まったな?」

ジャン「黙れ。り……リビアはもう言ったよな。リベリアってなかったか?」

アルミン「あるね。西アフリカに位置する国だよ」

ミカサ「また「あ」……ジャン、「あ」を回しすぎなのでは?」

ジャン「すまねえ」

ミカサ「まあいいけど……「アテネ」」

エレン「ね?! 意外なところきたな。ね……」

ジャン「お前も詰まってるじゃねえか」

エレン「黙れ! 集中しねえと分からんな。「ね」」

エレン「ネパールしか出てこない」

アルミン「「る」だね。ルクセンブルク」

ジャン「どこだっけ?」

アルミン「さっきから聞いてばかりで大丈夫? ヨーロッパにある国のひとつじゃないか。これは知っておかないと恥ずかしいよ」

ジャン「わ、悪い……(レベルが高すぎてびっくりだ)」

マルコ「「く」だね。クアラルンプール」

ジャン「なんか聞いたことはあるんだが、曖昧で思い出せない」

マルコ「マレーシアの首都だよ」

ジャン「そうか。オレ、地理得意じゃねえからやっぱり難しいな」

ミカサ「では何故この勝負を受けたの?」

ジャン「あ? まあ、なんとなくだよ」

ジャンの行動はたまに意味不明で良く分からない。

ジャン「る……る……ルーマニア?」

ミカサ「ジャン、私に何か恨みでも?」

ジャン「偶然だから! すまん!」

ミカサ「アイルランド」

仕方ない。「あ」はいろいろあるからいいけども。

でも、回す地名によってはエレンが脱落しそうで怖い。

エレン「ドミニカ!」

アルミン「カイロ」

マルコ「ローマ」

ジャン「回すの早いなおい! えっと、あ、そうだ。マダカスカル!」

アルミン「ああ、僕がさっきマダガスカルの首都って言ったから思い出したのか」

ジャン「すまねえな。その通りだ」

ミカサ「ルワンダ」

「だ」または「た」でいけるだろうか。

エレン「ダマスカスってなんかなかったか?」

アルミン「シリアの首都だね。あるよ」

エレン「良かった。ぼんやり覚えてた」

アルミン「じゃあスイス」

マルコ「マニアックなのいってもいい?」

アルミン「あれいくの?」

マルコ「ダメかな?」

アルミン「いいよ。マルコに譲る」

マルコ「じゃあ「スリジャヤワルダナプラコッテ」」

ジャン「?! どこだよそれは!」

ミカサ「スリランカの首都。これは結構、有名」

アルミン「長い名前だから逆に覚えやすいよね」

エレン「舌噛みそうな名前だな」

ジャン「もうすごすぎてツッコミが追いつかねえ」

マルコ「はいはい。「て」だよ。出てこない?」

ジャン「ああ、待ってくれ……ああー」

エレン「ぶぶー! 時間かけすぎだ。脱落だな」

ミカサ「そうね。ジャンは脱落でいいと思う」

エレン「ミカサ、いけるか?」

ミカサ「濁音、清音切り替えありよね? では「デンマーク」で」

ジャン「あああああ! それがあったか!

ミカサ「どのみちそう長くは持たなかったと思うけど」

エレン「「く」か。く……く…」

エレン「クロアチアってなかったけ?」

アルミン「あるよ。ヨーロッパのバルカン半島にある国だね」

アルミン「また「あ」か……アムステルダム」

マルコ「「む」?! む……むってあったかな?」

ジャン「さすがのマルコも出ないか」

マルコ「ちょっと待ってね。探すから。ええっと」

アルミン「僕もさすがに「む」は一個しか出てこない」

マルコ「ということは1個はあるんだね」

アルミン「海外のだったらね。日本名ならたくさんあるけどマニアックすぎたら却下でしょ?」

マルコ「そうだね。でもどのみちどっちもマニアックだよね」

マルコ「よし、あれにする。「ムババーネ」」

ジャン「だからそれは何処だよ?!」

アルミン「スワジランドっていう、アフリカ南部の国の首都だよ」

ミカサ「スワジランドは聞いたことあるけど、さすがに首都は分からなかった」

エレン「もうそれでいいよ。「む」なんてあんまりないだろ」

ミカサ「では「ね」で続ければいいのね」

ミカサ「アメリカの州の名前でもいい?」

アルミン「あ、そっか。その手もあったか。うわー見落としてた」

マルコ「あるんだね」

ミカサ「うん。「ネバダ州」」

エレン「なんか聞いたことはあるぞ」

アルミン「アメリカの西の方の州だね。じゃあ「ネバダ」でいこうか」

エレン「じゃあオレは「だ」か「た」か……」

エレン「うーん。もう無理だ! 出ない! ギブ!」

ミカサ「ガーンΣ(゚д゚lll)」

ミカサ「エレン、ごめんなさい」

エレン「え? 何で謝るんだよ?」

ミカサ「だって、出しやすい地名をパスできなかった」

エレン「別に気遣う必要ないだろ? つか、それって手加減してたってことかよ? やめろよ、そういうのは」

ミカサ「だって……」

エレン「うーん。ミカサは本気出してなかったのか。じゃあこの三人だったらもっと本気出せるよな?」

アルミン「いやいや、僕らもそろそろやばいって」

マルコ「うん。少し前に出た分と重ならないようにするだけで精一杯だよ」

ミカサ「過去に出た分はだいたい分かるけど」

アルミン「え? 最初から言った内容覚えてるの?」

ミカサ「うん。復唱出来るけども」

アルミン「うわー……これはミカサが優勝じゃない?」

ミカサ「でも勝負はまだついてない。もう少し続けよう。アルミンから」

アルミン「分かった。「だ」か「た」だね」

アルミン「ダカール(セネガルの首都)」

マルコ「ルイジアナ州」

ミカサ「ナイロビ(ケニア共和国の首都)」

アルミン「ビクトリア州(オーストラリアの州)」

マルコ「アンカラ(トルコの首都)」

スピードが一気に早くなった。この三人でやるとだんだん地名が難しくなってくる。

でも覚えておかないと、もし被ったら失格になる。

ミカサ「ラオス(東南アジア)」

アルミン「ごめん。スワジランド」

マルコ「さっきのムババーネの国の名前がきたか」

マルコ「…ドイツ」

ミカサ「ツバル(オセアニア)」

アルミン「うわ、そこいくぅ? 渋いよミカサ」

バチカンの次に人口の少ないミニ国家である。

もしまた「つ」が来たらあとは日本名で攻めるしかない。

アルミン「…ルサカ(ザンビア共和国の首都)」

マルコ「カンボジア」

また「あ」だ。本当、あが語尾につくのが多い。

ちなみに今まで出た「あ」のつく地名は、

・アメリカ・アラスカ・アンタナナリボ・愛知・アテネ・アイルランド・アムステルダム・アンカラ

以上の8個である。

もう「あ」はお腹いっぱいなのだけども、出さないと負ける。

もういい。語尾に遠慮している場合ではないのでとにかく思いつくのをだそう。

ミカサ「アラブ首長国連邦」

アルミン「ウルグアイ」

マルコ「イタリア」

もう「あ」の呪いでもかかっているんだろうか。またか。

ミカサ「あ、秋田」

アルミン「あ、飽きたと秋田をかけたね、今」

ミカサ「うん。もう「あ」は勘弁して欲しい」

アルミン「日本名も混ぜていこうか。「種子島」」

マルコ「ま……マケドニア」

ミカサ「もう嫌だ。「あ」は聞き飽きた!」

マルコ「勝負だからね。ミカサ、頑張って」

ミカサ「ううう……青森」

アルミン「り……リマ(ペルーの首都)」

マルコ「マレーシア」

ミカサ「マルコ、あなたって意地悪なのね」

マルコ「僕だって「ま」が結構きてて困るんだけど」

ミカサ「うう……旭川(あさひかわ)」

アルミン「「わ」? わ……えっと、わ……」

アルミン「和歌山(わかやま)」

マルコ「僕は「ま」の呪いが来てるのか……マーシャル諸島(太平洋上に浮かぶ島国)」

ミカサ「やっと「あ」から脱出した! ウクライナ!」

アルミン「那覇(なは)」

マルコ「「は」でいいんだよね? は……ハイチ(中央アメリカの西インド諸島)」

ミカサ「「ち」? ち……中国(ちゅうごく)」

アルミン「釧路(くしろ)」

マルコ「ろ? ろ……ロシア」

ミカサ「そこはロシア連邦にしてほしい」

マルコ「分かった。じゃあロシア連邦で」

ミカサ「宇都宮(うつのみや)」

アルミン「山形(やまがた)」

マルコ「タイ」

ミカサ「インド」

アルミン「ドーハ。ドーハの悲劇で有名なドーハね」

マルコ「ハンガリー」

ミカサ「「い」? い、でいいのよね」

アルミン「うん」

ミカサ「イラク」

アルミン「久留米(くるめ)」

マルコ「め? メキシコ」

ミカサ「こ……コモロ(マダガスカルの近く)」

アルミン「ろ…ロサンゼルス」

マルコ「スロバキア」

ミカサ「あう。また「あ」がきた…」

私がまた「あ」に苦悩していると、その時、

エレン「あ、もう宿に着いたぞ」

ミカサ&アルミン&マルコ「「「え?!」」」

エレン「バス止まったな。お前らずーっとしりとりで白熱してたなあ」

ジャン「………」

ジャン「ちょっと質問していいか? お前らに」

ミカサ「何?」

ジャン「お前ら三人、なんでうちの高校にきたんだよ!?」

アルミン「えーそれは特待生だし」

マルコ「僕も特待生だし」

ミカサ「えっと、私は特待生ではないけど、その……集英には落ちたので」

ジャン「信じられない。特にミカサ。お前が一番おかしい。うちの高校に来るレベルじゃねえ」

ミカサ「うう……」

しまった。不審がられている。どうしよう。

ジャン「最初、入学式の代表挨拶でミカサがスピーチした時は首席とか言われても信じられなかったが……今ので納得した。何でそんなに頭がいいのに言葉の使い方は残念なんだ?」

ミカサ「そ、それは……その……」

マルコ「まあまあ。ジャン。ミカサはあがり症なだけだよ。きっと」

ジャン「そうかもしれんが、不思議でしょうがねえんだよ。悪い。ただの好奇心だけどさ。ちょっと、興味が出てきてしまって……悪気はないんだが」

ジャンはそう言って私をバスから降りるように促した。

全員、バスに降りてからもジャンは続けた。

ジャン「ちょっと見直したんだよ。オレ、ミカサ程、頭がいい訳じゃないし、もし今度、分からないところあったら勉強とか教えてくれないか?」

ミカサ「え?」

突然の申し出に驚いた。

周りに人がいる中で、こんな風に言われるとは思わなかった。

エレンの方を見ると微妙な顔をしている。

エレン「お前の頭じゃミカサから教えて貰っても、どうせ成績上がらんだろ」

ジャン「なんだと?」

エレン「オレとあんまり変わらんだろ? 今のしりとりだって、お前の方が先に脱落したしな」

ジャン「それはオレが先攻だったから不利だっただけだろうが! サシの勝負なら勝てるに決まってるだろうが!」

エレン「よーし、言ったな! じゃあテーマを変えて今度はサシで勝負してやろうじゃねえか!」

ジャン「よし、じゃあ勝ったらオレ、ミカサと一日勉強会してもいいよな?!」

エレン「ああ、いいんじゃねえの? その代わりオレも勝ったら教えて貰うけどな!」




はいいいいいい?!




何でこうなった。もう頭を抱えるしかなかった。

そして何故か私の存在が勝負の賭けの商品となり、二人は勝負することになった。

ただし今度はテーマを私が決めないといけないそうだ。

私が決め次第、二人は対決すると意気揚々としているが、さてどうしたもんか。

アルミン「あー公平になるようなテーマってあるかな?」

マルコ「難しいね。二人共似たような成績だって聞いたけど」

アルミンとマルコが相談にのってくれているが、さて。どうしようか。

お願い。神様。何かいい案を私に下さい。

そう天に願いながら私は両耳を覆ってしまうのだった。

成り行きですが、エレンとジャンが何故か勉強で対決します。
しりとりの時のように、高校生らしい何かで勝負させたいので、
高校生1年生の彼ら二人の勝負にふさわしい何かを安価します。
どんな勝負がいい? まだこの後の展開は白紙です。
決まり次第、続きを書きます。

アイデアありがとうございます!
いろいろまぜこぜにして勝負させますね。
しりとりは疲れたので今度は山手線(古今東西)でいきます。

バスを降りてから宿に荷物を移動して男女が大部屋に分かれて、荷物を確認した後、私は一応、しおりの日程表を再確認する事にした。



日程表

4月19日

11:00 宿到着

12:00 昼食

14:00 知能テスト開始

16:00 知能テスト終了

17:00 夕食

18:00 入浴

22:00 就寝


4月20日

6:00 起床

7:00 朝食

8:00 実力テスト開始(国数英)

11:00 実力テスト終了後、宿チェックアウト

12:00 昼食

13:00 自由時間開始

17:00 自由時間終了(バスで学校へ戻る)


ざっくりとした予定ではこんな感じになっている。

クリスタが言っていた授業というのはまあ、テストの事である。

知能テストは普段行う学力テストではなく、図を見て選択するIQテストに近いらしい。

自由時間までにはテーマを決めておいて欲しいとエレンとジャンに言われたのでそれまでに何とかしないといけない。

にしてもここはとても大きな宿だった。

和室の団体用の大部屋から見える景色は、とても綺麗な山々だ。

ここは私達が住むところより田舎だった。

空気が美味しい。自然の景色が素晴らしい。

サシャ「自由時間が楽しみです~♪ 馬も見れるんですよね?」

クリスタ「らしいよ。馬に乗せてもらえるところがあるって観光案内にあったよ」

女子の心はテストを飛び越えて自由時間に向かっている。

ユミル「…………」

ユミルだけはちょっとだけきつそうにしていたが。

ミカサ「大丈夫? ユミル。何なら布団を出して休んで……」

ユミル「いや、就寝時間でもねえのに布団は出さなくていい。ちょっとゴロ寝はしたいけど」

クリスタ「毛布だけ出そうか?」

ユミル「………ごめん」

ユミルは畳みの上にゴロ寝してその上に毛布を被せてちょっとだけ休憩する事にしたようだ。

まだ、だるいのだろう。治りかけで無理しているのは明らかだった。

そんなユミルに対して、ジャンの時と同じような反応をこそこそしている女子もいる。

彼女らはジャンのように口に出すことはないが、それでも微妙な顔をしていた。

まあ仕方ない。そういう反応は覚悟の上でユミルもここに来たのだろうし。

彼女の症状が悪化しない事を祈るしかない。

キース「荷物は置いたか? 班ごとに人数を確認した後、全員食堂へ移動するように」

さて。次は昼食だ。私はエレン達と合流して食堂に移動した。

そこは物凄い大きなホールだった。体育館と遜色ない面積の食堂なんて初めて見る。

ミカサ「広い……」

エレン「滅茶苦茶でけえ食堂だな」

アルミン「すごいねえ」

ジャン「席どこだよ」

マルコ「こっちだね。1組3班って書いてある」

丸テーブルの中央に1組3班という目印があった。

えっと、1クラス7班でそれが10組あるので、70テーブルある事になる。

さすがにそれだけの大人数の昼食となると迫力があった。

しかも所謂「バイキング形式」の昼食のようで、皆それぞれ、白くて丸い大きな皿に好きな食べ物をのせて食べている。

エレン「おお、好きなもん取って食っていいみたいだな。肉くおうっと」

ミカサ「肉ばかりではいけない……」

エレン「野菜もちゃんと食べるって! 全く、本当、世話焼きだな」

ミカサ「うっ……」

ついつい、口を出してしまうのは私の悪い癖だ。

エレン「あ、いや。別にいいけどさ。んじゃ、取るぞ」

という訳で私達も好きな物を皿に取って昼食を食べるのだった。

エレン「馬刺しがあった! 馬食べちゃうのか。うーん」

ジャン「…………(野菜取ってる)」

エレン「よし、食ったことないけど馬刺し食べようっと」

ジャン「…………(野菜山盛り)」

エレン「ジャン、お前さっきから野菜ばっかだな。馬刺しいかないのか?」

ジャン「馬食うのは可哀想だろ。なんか……」

エレン「そりゃそうだけど、折角あるんだから食べた方がいいだろ?」

エレン「あ、もしかしてお前、馬面だから気が引けるのか?」

ジャン「喧嘩売ってるのかてめえ……(ビキビキ)」

ミカサ「やめなさい。エレン。野菜を先に食べた方が太りにくいからそうしてるんでしょう?」

ジャン「(バレた)ああ、まあな」

ミカサ「ちゃんと健康管理をしている証拠。ジャンを見習ったほうがいい」

エレン「うっ………」

ジャン「ふん……ミカサの言う通りだな。肉ばっか食べたら頭悪くなりそうだしな」

エレン「わーったよ。オレも野菜からいけばいいんだろ! 全く!」

エレンは文句をいいながらキャベツやポテトサラダを山盛りにしていった。

私も同じように先に野菜を取って、その後に肉や魚を取っていった。

丸テーブルに各々席について食べながら、エレンに先程の勝負の件の事を聞かれた。

エレン「で? そろそろテーマは決まったか?」

ミカサ「うっ……まだ」

エレン「地理問題はもうやめてくれよ。他のやつがいい」

ジャン「おい、注文つけるなよ」

エレン「地理問題はさっきやったからだよ。歴史とかいいんじゃねえの?」

ジャン「人物名とかか? それでしりとり勝負するのか?」

アルミン「いや、しりとりはもうやめよう。また「あ」と「ま」の呪いのように、同じのが回ってくると精神的に辛そうだし」

マルコ「うん。僕、マケドニア、マレーシア、マーシャル諸島の連続は本当にきつかったよ」

ミカサ「私も、愛知、アテネ、アイルランド、アラブ首長国連邦、秋田、青森、旭川をよく出せたと自分でも思う」

語尾に「あ」のつく国名と地名が世界には多すぎると思った。

ジャン「いや、その自分で言ったのをまた復唱出来るお前らの記憶力の方がすげえよ」

エレン「本当だな。オレ、もう自分の言ったのなんてあんまり覚えてねえよ」

アルミン「あはは……まあ、だったらさ。この丸テーブルにちなんで「山手線」ルールに変えようよ」

ミカサ「山手線?」

アルミン「所謂「古今東西」だね。テーマを決めて、無作為に条件にあうものを言っていくんだ」

マルコ「ああ、そっちの方がいいかもしれないね」

アルミン「うん。それなら判定もやりやすいし、テーマも1本だけじゃなく、いくつかやれば公平でしょ?」

ミカサ「そうね。3本勝負で2本先取で、とか?」

アルミン「そうそう。引き分けになったら再挑戦で」

ミカサ「分かった。では昼食後、知能テストが終わってからテーマを考えてみる」

マルコ「今度はノートに記録しようよ。ちゃんと公平にジャッジ出来るように」

アルミン「そうだね。もし誤字があったら減点出来るね」

エレン「うっ……誤字か」

ジャン「まあ、証拠になるし、いいんじゃねえの?」

という訳で大まかな方針が決まりほっと一安心した。

そんな訳で知能テストもさくさく終わり、夕食までの自由時間、私はルーズリーフを広げてテーマを列挙してみた。

とりあえず今、思いついたのはこれくらいだ。


・植物の名前(野菜・果物含む)

・歴史上の人物(東洋・西洋問わず)

・理科系の用語(原子記号、道具の名前等)


この3本勝負なら、社会と理科と国語的要素も含んでバランスがいいだろう。

アルミンとマルコにも見せてチェックしてもらい「いいんじゃない?」とお墨付きを貰えたのでこれでいこうと思う。

私はその日の夕食後にこの3本勝負で行く事を告げて、勝負の開始は20日の自由時間を使ってやる事を二人に伝えた。

エレン「ん? ってことはちょっとだけ勉強する時間があるな」

ミカサ「どのみち、20日には実力テストもあるのだし、丁度いいと思うけど」

エレン「それもそうか。よし、勝負までにいろいろ調べて暗記してやるからな!」

エレンとジャンは実力テストよりも何故かお互いの勝負の方に熱が入ったようだ。

夕食後はいよいよ、温泉の時間である。

1組から5組までが先に入り、残りの時間は6組から10組が入浴する。

大浴場を使うのは久々だと思った。いつぶりか覚えてない。

素早く裸になってバスタオルで全身を隠してささっと移動する。

体を見られるのは嫌なのか、皆同じようにして移動している。

思春期だから仕方ない。女子同士でもあまり体を見られたくないのだ。

でも湯船に入る時はどうしても裸にならないといけない。

だから体を洗った後はまたささっと湯船に移動する。

私の先には、クリスタとサシャとアニの三人が入っていた。

クリスタ「あ、ミカサだ! おっぱい揉ませて♪」

ミカサ「?!」

ファッ?! いきなりのセクハラに度肝を抜かれた。

一応、前を腕で隠して防御していたら、アニがこっちを見た。

アニ「やめなよ。あんたさっきから胸、触り過ぎだよ」

クリスタ「ふふふ……おっぱいを吸収してあげるわ」

く、クリスタってこんな子だったのだろうか。イメージと全然違う。

サシャ「でもミカサも結構大きいですね。アニとあまり変わらない?」

アニ「胸なんて、あってもなくてもどうでもいいよ」

クリスタ「それはある人だから言える発言よ。つるぺたに謝って」

アニ「はいはい。でも今はつるぺたでも、いずれ大きくなるかもよ?」

クリスタ「努力はしているわ。1年後までにはCカップを目標にしてるけど」

クリスタは別につるぺたではないと思うけれど。

まあ、所謂普通の胸の大きさである。

アニ「いや……ミカサの場合は胸が大きいというより腰が細いのか。異様に」

ミカサ「え?」

アニ「身長の割には細いよ。なんで?」

今、湯船に入っているから厳密な腹筋は分からないはずだけども。

どうするべき? 見せたらきっと、エレンの時のような反応がくるに違いない。

サシャ「触ってもいいですか?」

ミカサ「NO!」

即座に拒否した。恥ずかしいので。

サシャ「ええ? 胸じゃないんですよ? 腰ですよ?」

ミカサ「尚更ダメ。無理無理無理……」

私は首を左右にガクガク振って拒否した。すると、

クリスタ「ダメと言われると触りたくなるのが人間よね」

サシャ「ですねえ」

ミカサ「うっ……」

サシャ「という訳でちょっとだけ……」

ミカサ「あう!」

今度は防御出来なかった。湯船の中では手の動きも少し鈍くなる。

サシャ「? 別に脂肪がついてないですけど」

アニ「脂肪がない?」

サシャ「はい。むしろ固い?」

アニ「へー」

ミカサ「も、もうやめて貰えるだろうか」

何だか涙目になっている自分がいる。ううう。恥ずかしい。

アニ「もしかして、腹筋ついてる?」

ミカサ「!」

バレてしまった。やっぱり。

ミカサ「ちょっとだけ……」

いや、本当はちょっとだけじゃないけども。

アニ「へー。なるほど。だから腰がきゅっとしてて、引き締まってるのか。私と同じだね」

ミカサ「え?」

アニ「見る? 私も結構、鍛えてるんだ」


ざばあ……


アニが立ち上がって自身の裸体を見せてくれた。

おおお。自分以外の引き締まった人の腹筋を眺めるのは初めてである。

アニ「ま、今は6つしか割れてないけどね。ちょっと最近、トレーニングさぼってたから。でもまた鍛えて8つに戻すよ」

サシャ「なるほど。アニは体を鍛えてるんですね」

アニ「実家が道場やっててね。小さい頃から親父に体を鍛えさせられた結果がこれだよ」

私と似たような体の人がいた。それだけでも嬉しい。

み、見せても大丈夫だろうか。

ミカサ「わ、私も実は……」


ざばあ……


アニ「!」

サシャ「!」

クリスタ「!」

見せてみた。反応が怖いけれど。

アニ「ま、負けた。8つ割れてる」

ミカサ「う、うん。実は私も体を鍛えてるの。自己流だけども」

私は過去に家族全員、暴漢に襲われた事がある。

あの時の恐怖に負けない為に、自身を強くする為に、体を鍛えたのだ。

………鍛えすぎてこうなってしまっているけども。

サシャ「よーし、私も裸体を見せちゃいますよ」


ざばあ…


サシャ「どうですか?!」

アニ「身長の割には細いね。羨ましい」

クリスタ「この流れだと私も?」

アニ「そうだね。ま、嫌ならいいけど」

クリスタ「別に嫌ではないよ。見せちゃうよ」


ざばあ……


アニ「ふん。ま、今後に期待じゃない?」

クリスタ「酷い!」

ミカサ「そう言えばユミルは?」

クリスタ「あ、さすがに入浴はやめとくって。もう咳は落ち着いたし大分楽になったって言ってたけど、皆に気遣わせたくないって言ってたよ」

アニ「ま、それもそうだね。もしぶり返したらやばいし」

ミカサ「治ってきているなら明日の自由時間は大丈夫だろうか」

クリスタ「うん。本人はいけるだろうって言ってた」

ミカサ「そう。それは良かった」

サシャ「あのですね。自由時間で思い出したんですが、紫色のソフトクリームが食べられるところがあるらしいんですよ」

アニ「紫芋のソフトクリームだろ? 知ってるよ」

サシャ「絶対、食べましょう! そこには食べ物のお土産もいっぱい売ってるそうなんですよ!」

クリスタ「そうだね。あ、でも班別の行動だからライナー達にも聞かないと」

アニ「こっちも一応、マルロ達にも聞かないと」

ミカサ「そう言えばヒッチは……見当たらないけど」

アニ「ああ、ヒッチ? 今頃男とイチャイチャしてんじゃないの?」

ええ? もう彼氏を作ったというのか。早い。

アニ「ヒッチは男作るの早いけど別れるのも早いんだよね。一ヶ月単位で男替わってるっぽいし」

ミカサ「一ヶ月…?」

なんて短い交際期間だろうか。

サシャ「それはまたサイクルが早いですね」

クリスタ「一ヶ月で相手の事なんて分かるのかしら?」

アニ「まあ、飽きるのが早いだけかもね。だから今頃多分、男とどっか行ってると思うよ」

ミカサ「そ、そうなのね」

クリスタ「アニは彼氏いないの?」

おっと、女子会っぽくなってきたようだ。

アニ「いないよ。いい男に出会えれば別だけど、いないし」

クリスタ「理想高そうに見えるね。どういうのが好き?」

アニ「とりあえず安定した収入を得られそうな男」

サシャ「そこですか! まあ、気持ち分かりますけど」

クリスタ「そうなんだ。まあ、私も同意するけど」

皆、そこは同意するらしい。女の本音はやはりそこなのだ。

アニ「あと付け加えるなら……あんまり現実離れした夢を持ってる人はちょっと」

クリスタ「ん? どういう事?」

アニ「ミュージシャンとかお笑い芸人とか、俳優はまだいいけど。博打性の高い職業を選んだり、自分の夢を追いかけて家族をないがしろにする男は無理かな」

サシャ「やけに具体的ですね。思う男の人でもいるんですか?」

アニ「………うちの親父がね。ちょっとアホだから」

アニは深いため息と共に愚痴を言い始めた。

アニ「格闘家、だったんだ。でも怪我をして引退して。道場開いたけど、人がなかなか来なくて。借金抱えながら経営して。一時期は相当な貧乏だった。今は何とか飯食べていけるけど、あの時は死ぬかと思ったよ」

と、遠い目をしてアニは自分の事を少しだけ話始めた。

アニ「競馬やギャンブルも好きでね。夢を持つのは男ロマンだとか何とか。貧乏なの分かってても、やめられなくてね。酷い父親だと思うけど。まあ父親だしね。縁は切れないし。でも、そういう目に遭ってきたから、自分のパートナーくらいはそういうのに無縁の男がいいかなって」

サシャ「なるほど~それならわかります!」

クリスタ「そうね。それなら仕方ないと思う」

皆、しんみりアニの話を聞いている。私もついつい聞き入ってしまった。

アニ「私の話はこれくらいでいいだろ。それよりそっちはどうなんだい?」

クリスタ「え?」

サシャ「へ?」

アニ「クリスタ、サシャ、ミカサ。あんたらもそういうの、ないとは言わせないよ」

話題が回ってきたようだ。クリスタが、ちょっと恥ずかしそうにしている。

クリスタ「わ、私は………まだ良く分からないんだよね」

アニ「分からない?」

クリスタ「うん。例えば芸能人で言うと誰? みたいな質問、あるでしょ? そういう時、咄嗟に選べなかったりするし」

ミカサ「分かる。そういうのは凄く選びにくい」

私と同じ感覚の子がいてくれて嬉しい。

クリスタ「うん。だって判断材料って顔とかプロフィールだけよね? それだけで選んでもいいのか……」

アニ「まあ、それが一番っていう人もいるしね」

クリスタ「それは分かるけども。でも、自分の中ではそこで選びたくない思いがあるのね」

サシャ「見た目で判断しない事はいい事だと思いますよ?」

ミカサ「同感」

クリスタ「ありがとう。かと言って他の判断材料があるのかと言われると、うーんってなっちゃうし、多分、まだ理想のようなものもないのかもしれないけど」

サシャ「あれですよ。好きになった人が理想ってやつですよ。きっと」

クリスタ「そうだといいな。サシャはどういう人が好き?」

サシャ「わ、私ですか? そりゃ一緒に居て楽しい人ですよ」

アニ「フィーリング派か」

サシャ「はい。一緒にいて飽きない人とかがいいですね。あと、相手が料理上手なら最高です(じゅるり)」

アニ「作って貰う気満々か」

サシャ「まあ、自分でも作りますけどね。コックさんと結婚出来たら、最高の人生だと思います」

最高の人生、か。大げさかもしれないが、サシャにとってはそうなのだろう。

クリスタ「ミカサは? どんな人がタイプなの?」

今度の質問はヒッチの時のように答えてはいけないと思った。

ちょっと、少し真剣に考えてみる。

ミカサ「うーん。いきなり手を出してくる人は、ちょっと……」

サシャ「ぶっ……それは誰だって嫌ですよ。ミカサ、出された事あるんですか?」

ミカサ「何度も、ある」

アニ「それは災難だったね。そんなふざけた男は金蹴りだよ」

クリスタ「それはそれでやり過ぎなような」

ミカサ「そこまではしないけれど、でも、あまり酷いのは手に負えない時もあって、気絶させるしかない場合もあった」

サシャ「ひえええ……激しいですね」

ミカサ「そのせいでますます強くならざる負えなかった。腹筋はその代償……」

中学時代、そういうのが多発して私は相手に怪我をさせてしまった事もある。

一応、正当防衛として認められたが、それが何度も続くとさすがに問題になり、私の方がまるで悪いような扱いを受ける事もあった。

そのせいで喧嘩になり、ますます私の印象が悪くなり、孤立を深めてしまったのだ。

さすがに中学時代の詳しい部分は伏せたが、とにかく私はそういう諸々の経緯があってあまり恋愛にいい印象がない。

なので出来る事ならのんびりと、まずは友達から関係を築いてくれるような気の長い人がいいと思った。

アニ「なるほどね。納得したよ」

アニが私に頷いてくれた。

アニ「ミカサにはせっかちな男はダメって事だね」

ミカサ「まあ、そうなる」

サシャ「まずは友達からって事ですねーいいと思いますよ」

クリスタ「だったら今、候補は結構いるんじゃない?」

ミカサ「え?」

その時、話題がちょっとカーブして意外な質問をされた。

クリスタ「だってミカサの班、他は男子でしょ? 皆、友達なんでしょ」

ミカサ「友達……」

エレンは家族だが、まあそう言われれば十分、そうなのかもしれない。

私の方は友達と思っているが、向こうはどう思っているだろうか?

クリスタ「エレン、アルミン、ジャン、マルコ。四人の中で誰が一番、理想的かな?」

アニ「気の短い奴は外していけば、見つかるかもね」

ミカサ「え……その中から選ぶの?」

クリスタ「今! あえて言うなら、誰? 誰?」

まさかそんな展開になるとは思わなかった。

ミカサ「えっと……えっと……」

ドキドキする。なんて答えよう。

ミカサ「あ、あえて言うなら……」

(*ミカサの次の台詞を考えて下さい。安価すぐ↓。ずれたら一個↓)

ここは5択でもOK。
エレン、アルミン、ジャン、マルコ、理想はいない。
のうち、どれか選んで答えてもOKです。

>>15
今更訂正その2

エレン「そうか……日本もまだまだ発展してねえ学校もあるのか」


読み直したら物凄い間違いしてたorz
東京じゃなくて、「日本」に変更します。
エレンの住んでいる場所は、まだちょっとぼかして書き進めたいので。

前回書いた現パロが東京を舞台にしてたから、
無意識に書き間違えたのだと思います。orz

今回の舞台のモデルは諫山先生の縁の地の周辺になります。
研修旅行先の描写で大体バレてるとは思いますが、
本当、凡ミスも凡ミスでした。ごめんなさい。

その時、浮かんだ顔に私自身、驚いた。

そして自身で首を傾げてしまった。

ミカサ「あれ?」

アニ「どうしたの?」

ミカサ「気の短い人は嫌な筈なのに、思い浮かんだ顔は気の短い人だった」

クリスタ「え? 何で?」

ミカサ「分からない。すぐ人をぶん殴るような短気な人なのに、何でその人の顔を思い浮かべたんだろう?」

サシャ「へ~ってことは、アルミンとマルコは除外ですね。二人は人を殴るようなタイプじゃないですし」

クリスタ「エレンとジャンの二択だね。どっち? どっち?」

アニ「……………あれ? ミカサ。顔が赤いけど」

ミカサ「え?」

アニ「なんていうか、全身赤くないかい?」

ミカサ「え? え?」

そう言われれば少し頭がぼーっとしてきた。

アニ「ちょっと長湯し過ぎたのかな。私は平気だけど、普段、お風呂ってどれくらい湯船に入る?」

ミカサ「5分くらい?」

クリスタ「ええええ?! だったら、もうそれ以上湯船に入ってるよ。こりゃまずい!」

サシャ「長湯に慣れてない人だったんですね! 立てますか?!」

ミカサ「あれ? あれ?」

そう言われれば急に頭がふわふわしてきた。

うまく体に力が入らないような…。

サシャ「あっちゃーやっぱりのぼせてたようですね。こりゃ一回、冷水かけてあげた方がいいかもですね」

クリスタ「え?! 水かけるの? こういう時は放置して風を送るんじゃないのかな?」

アニ「うーん、とりあえず、脱衣所まで運んで水気取って、それから水分補給じゃない?」

と、三者三様、私を介抱しようとしてくれている。

も、申し訳ない。

サシャ「えっと、そうですね! アニの方法が一番いい気がします! とりあえずミカサを支えて運びましょう!」

という訳で情けないことに三人の力を借りて脱衣所まで運ばれる事になった。

服を着て水を自販機で買ってきて貰い、水分補給をしたらすこし頭がすっきりしてきた。

ミカサ「ごめんなさい。まさかのぼせているとは自覚がなかった」

多分、久々のおしゃべりで私自身もテンションが知らず知らず上がっていたのだろう。

人の話を聞いているうちに自分の感覚を放置していたようだ。

アニ「いいよ。話し込んじゃったせいだし。もう大丈夫そうね」

ミカサ「うん。水を飲んだら落ち着いた」

クリスタ「良かった! で、さっきの話の続きだけど……どっち?」

ミカサ「言わないといけないのだろうか?」

着替え終わった三人に見つめられている。さてどうしよう?

サシャ「二択ですからねーうーん。まあ、でも、ミカサが嫌なら言わなくてもいいですよ」

クリスタ「そうだね。あくまで理想のタイプの話だし。あくまで現時点での話だし」

アニ「そうだね。それに理想が変わる場合もあるかもしれないし」

クリスタ「ふふふ……今後の展開に注目かな」

と、意味深に笑われて、その時は一応、解放されたのだった。

そんな感じで温泉の入浴中に多少のアクシデントはあったものの、他は概ね平和に過ごせた。

クラスの女子はアニとサシャとクリスタとユミルと少しずつ仲良くなれている気がする。

他の女子とはまだそんなに多くは話していないけれど、中学時代のような冷たい空気はそこにはなかった。

大きな和室の部屋では皆、布団を敷いて各々、就寝までは女子会話である。

私は明日の自由時間の為に準備をしていた。

確か、まだ使ってない予備の白紙の単語帳が合った筈。あ、あった。

丁度鞄の中に2個あった。明日はこれを使おう。

私は白紙の単語帳の表紙に「エレン」と「ジャン」の名前を書いておいた。

クリスタ「? ミカサ、何してるの?」

ミカサ「明日の準備をしている」

クリスタ「ええ? まさか明日の実力テストの勉強を今からするの?! 参ったなあ。さすが首席だね!」

ミカサ「ええっと……」

実は違うのだが、説明するといろいろややこしい気もする。

ユミル「へえ。単語帳を持ち歩いてるのか。どんなの? 見せて欲しい」

少し元気になったユミルが覗きに来た。良かった。今朝よりは大分表情が明るい。

ミカサ「こんな感じ。暇があれば単語帳をパラパラ見ている」

ユミル「手作り感満載だな。すごい。世界の国の名前と首都がセットで書いてある」

ミカサ「こっちは歴史上の人物等を書いている。ちょっとした時間に少しずつ書き写して作っている」

ユミル「へーこういう勉強方法もあるのか。面白いな」

ミカサ「実際、手を動かしながら覚える方法が私には合っているみたいなので、コツコツとやっている」

ユミル「私には真似出来そうにないな。こんな地味な亀のような努力は無理だ」

サシャ「私も一夜漬けタイプなので毎日勉強は無理ですね~」

と、何故かサシャまで覗きにきた。

クリスタ「単語帳か…私も手で書いて覚える方だけど、その手が使ったことなかったな」

と、クリスタまでもが興味を示してくれた。嬉しい。

ミーナ「なになに? 今頃勉強してるの?」

と、私の席の前の女子、ミーナまでもこっちにやってきた。

ミカサ「いえ、私の勉強法を皆に教えていただけ」

ミーナ「へー? どんなの? あ、可愛い!」

ハンナ「本当、これ全部手書き?」

ミカサ「うん。持ち歩くのにも便利なので」

ミーナ「いいねこれ! ちょっと問題出してもいい?」

と、ミーナが単語帳を使って皆と一緒に勉強をし始めてしまった。

こういう夜は、勉強ではなくて、いろいろ他の事をお喋りするのが普通だと思うが、私のせいで話の流れが真面目になってしまった。

それがちょっとだけ申し訳なかった。

ミーナ「………すごいねえ! なるほど。これは何か覚えやすい気がする!」

ハンナ「明日のテストに出るといいね」

ミーナ「うん。そうだね。ミカサ、ありがとう!」

ミカサ「いえいえ」

単語帳を返却して貰って、鞄に戻した。

そろそろ就寝時間だ。明日も普通に早いのでもう寝なければ。

キース先生の気配がした。そろそろ見回りに来る気がする。

パタパタパタ……

廊下から聞こえてくる足音。やっぱりそうだ。

案の定、キース先生が女子の部屋に顔を出した。

キース「就寝時間10分前だ。そろそろ準備して寝るように」

女子一同「「「はーい」」」

キース「くれぐれも就寝時間後には外に出歩くなよ。見つけたら説教だからな」

ギロッと険しい顔をますます険しくしてキース先生は帰っていった。

クリスタ「じゃあ電気消しておきます。皆、布団に入ってね」

わいわいとした気配も電気を消すと少し静かになった。

布団の位置は適当に決めた。私は背が高い方なので端っこにさせて貰えた。

何故なら、途中で起きてトイレに行く人の道の邪魔になるからである。

私の隣にはアニがいた。こっちを見ている。目が、合った。

アニ「…………ねえ、ミカサ」

ミカサ「ん?」

アニ「さっき、のぼせたのって、長湯のせいだけじゃないんでしょ」

ミカサ「え?」

アニ「…………思い浮かんだ奴って、もしかして」

ミカサ「……………」

アニ「……………まあいいや。ごめん。寝る」

と、言って反対を向いてしまった。

アニには気づかれたのだろうか。

まあ、アニは察しのいい方だから感づかれたのだろう。

自分でも驚いている。矛盾点を抱えているのに、何故……。

あの時、エレンの顔が思い浮かんだのだろうと。

私自身、首を傾げながら、瞼を閉じたのだった。

(*微グロ注意)



父が、道路に倒れていた。

赤い、赤い、血を零しながら。


『ミカサ! 逃げなさい! 早く!』

『んふぉsdfんfんsd;f?! (うるせえ! さっさとこっちに来い! 抵抗するな!)』


耳慣れない異国の言葉を叫ぶ男達が私の母に切りつけてくる。

血が、また、溢れた。

周りには、助けてくれる人は、誰もいない。


『いやああああ?!』


出血が、灰色の道を汚している。

点々、と汚している。


『さんdんsだfなf?! (しまった! どうする?! 殺しちまったか?!)』

『fなおdんふぁfn! (せめてこいつだけでも本国に持ち帰ろう!)』


そいつらは、私を追いかけてきた。

私は、逃げた。坂道を転がるように。

誰も助けてくれない。

叫び声すらあげられなかった。



『あれに乗れ!』


彼は言った。

奴らが乗っていた、車を指差して。


『なんで? 出来ない』


車に乗ってどうしようと言うのか。


『奴らが戻ってくる前に。早く!』


私は怖かった。彼が何をしようとしているのか、分からない。

恐怖心が、足を竦ませたのだ。


『奴ら、車の窓を開けたままだ。内鍵なら、これ使えば手が届く!」


少年は何やら長い棒のような物を持っていた。

そして窓の内側から鍵を開けて本当に彼は車に乗り込んでしまった。



『助手席に乗れ!』


私は、怖かった。でも。

頷いた。何が起きるのか分からなかったけど。

彼は短い足を精一杯伸ばして、アクセルを踏んだ。

そして、奴らの姿を見つけてそこに向かって車を移動させたのだ。

つまり、どうなったかと言うと…。



キキキキキキ……!



彼らは車に跳ねられて即死したのだ。

その瞬間を、今もはっきり思い出せる。

赤い。赤い。赤い。あの赤さを超える赤色を私は知らない。

悲鳴をあげられなかった。あげる力など残ってなかった。

彼はドアをあけて車から降りた。


『やったか…?』


彼は確認していた。しかしよく見ると、死体は2体。

一人足りない。

道影からもう一人、出てきた。

彼もまた異国の言葉を発しながら、少年に掴みかかった。



『のあdhそあhふぉあ!? (まさかてめえがやったのか?! このクソガキ!)』


少年は首を絞められていた。

雪の降る、寒い冬の事だ。

外には人気がない。誰もここにいない。

あるのは、白い世界を包む静寂と、エンジン音だけ。


『……!』

『なふぉんふぉあ?! (ひき殺したのか?! てめえが!!)』


その光景を見つめている自分がいる。

助けなきゃと思うのに体が動かない。


『戦え!』

『?!』

『おまえが、代わりに、こいつを……殺せ! オレごと、でも、いい!』

(出来ない……)

『今、それがある。だから…』


それ、というのは、私が今乗っている車の事だ。

手足はギリギリだ。伸ばせば届く程度だけども。


『戦わなければ、死ぬだけ……』


少年の目がこちらを見ていた。

奴がこっちに気づくまでにやらないと、今度は私が殺される。




嫌だ。

死にたくない。

父も、母も、殺されて、私も殺されるなんて。


『戦わなければ……かて、ない……!』


その瞬間、私の中の頭の中に、先程の彼が車を動かしたイメージが蘇った。

その瞬間、私は出来るようになったのだ。

見たものをもう一度、頭の中で完全に記憶を再現する、という事を。

それが出来るようになった瞬間、何でも出来ると思った。



キキキキキ………!



彼ごと、ひき殺すかもしれないと思った。

それでも、私はやった。アクセルを踏んだのだ。

目の前に広がる光景は、幸いにも、あの男だけの死体だった。

奴は車が襲ってくる瞬間、少年を手放してしまったのだろう。

少年は軽く体を打ったようだけども、気絶はしていなかった。

私は車から降りて彼に駆け寄った。


『………まだ、間に合うかもしれない』

『え?』

『戻ろう。近くにいるんだろ』



彼は私の手を引いて私の父と母親の死体の場所へ向かってくれた。

彼は体を触って何かを確認すると自身のマフラーを脱いで母の体に止血を始めた。


『今すぐ治療すれば、お母さんの方は助かるかもしれない』

『え……?』

『親父に連絡する。あと救急車も。緊急手術だ。運が良ければ助かるかもしれない』

『ほ、本当に?』

『分かんねえけど。一応、マフラーで出来る限りの止血はしといた』


今頃になって人の気配がし始めた。

悲鳴が波のように広がっていく。

雪はまだ、降り続いている。寒い。こんなに寒い日にどうしてこんな事が。


『手、震えてるぞ』

『え?』

『手袋、貸しといてやる』


彼から貰った。手袋。


『じゃあな。誰に何を聞かれても「何が起きたのかわかりません」って言って貫けよ』


そして彼は私の目の前から消えた。

名前も知らず、教えても貰えないまま、彼とは分かれた。

その数分後、ようやく警察の人が来た。

大人にいろいろ事情を聞かれたけれど、その後の記憶は曖昧だ。



覚えているのは、あの白い雪の中の、赤色。

あんなに残酷で美しい赤色を、私は知らない………。







久々に夢を見た。あの時の夢だ。

最近はあまり見る事もなくなていたのに、どうしてだろう?

起きてみると目元に涙の跡があった。これも毎度の事だ。

あの時の少年がいなければ、私はこうして今、生きてはいない。

あの時の少年の顔はもう思い出せないけれど、あの時のマフラーと手袋は今も大事に保管して家に置いてある。

マフラーの方は血に染まってしまって、まともに使えないけれど、それでも出来るだけ血抜きをして保管してある。

せめて名前だけでも聞いておけば良かったと、今でも後悔している。

体を起こして時間を確認すると朝の5時過ぎだった。私が一番最初に起きたのだろうか。

人の気配はまだ、すやすやと穏やかな物だったが、隣のアニの姿だけ見当たらない。

アニ「あ、おはよう。ミカサは二番目だね」

ミカサ「おはよう。最初に起きたの?」

アニ「朝の5時起き。習慣なんだ。道場の朝も早いからね」

なるほど。そういう事なら体内時計も狂わない筈だ。

ミカサ「顔を洗ってくる…」

アニ「ん」

アニと入れ替わりに洗面所に向かう。

顔をゆっくり洗って、深呼吸をする。

あの時の夢を見た朝は、あまり体の調子が良くない。

心臓はドクドクして胸は苦しくなるし、何より赤色を見るのが辛くなる。

例えば生理と被った日等は最悪だ。もう吐き気すらしてくる。

こんな日は何もしないのが一番いいのだけども。

こんな日に限ってテストがある。この世界は残酷だ。

まあそれでも、今回のテストは実力テストであって、定期テストよりは重要度は低い。

多少点数が落ちたところで問題はないだろう。

身支度を整えて着替えて、柔軟体操をしたりして、時間を潰したら、朝ご飯だ。

朝食の30分前くらいにエレン達と合流して食堂に向かう途中で、エレンにじーっと見られた。

ミカサ「何?」

エレン「いや、今日なんか調子悪いのかなって思って」

ミカサ「え?」

エレン「目、ちょっと赤い」

ミカサ「……洗顔の時に泡が目に入ったのかしら?」

まあ、嘘である。心当たりはあるけれど。

それをエレンにいうのも面倒だったので誤魔化したのだ。

ジャン「ああ、そう言う事もあるよな。たまには」

ジャンがそう言ってくれた。するとエレンは「お前には聞いてねえし」と口を尖らせた。

どうしてエレンとジャンはこう、すぐぶつかり合うのだろうか。

ミカサ「エレン、そうつんけんしないで」

私が諌めてもエレンの機嫌は直らなかった。

エレン「勝手に会話に加わろうとするからだ」

ジャン「何でてめえの許可がいるんだよ、こら」

エレン「オレがミカサに話しかけているからだよ」

ジャン「答えになってねえだろ、それ!」

やれやれ。また不毛な会話が始まった。

ミカサ「エレン、ジャンは別に悪気はない。ただ、私に同意しただけ」

エレン「…………………」

エレンはじーっともう一回、私を見てきた。

な、なんだろう。急に真剣な目で見られるとちょっとドキドキする。

エレン「オレも見くびられたもんだな」

ミカサ「え?」

エレン「何でもねえ。あとそのピンク色のTシャツ、あんま似合ってねえぞ」

ミカサ「?!」

急に何なのだろう。意味が分からない。

ジャン「エレン! 女の子に向かって失礼な事言ってんじゃねえぞ!」

エレン「オレは思った事を言っただけだ。赤色とかのがマシだ」

ミカサ「うっ………」

その時、私はちょっと夢の事を思い出して気分が悪くなってしまった。

今日だけは「赤色」という言葉すら聞きたくなかったのに。

さっきエレンが「目が赤い」と言った時ですら、ちょっと反応した自分がいる。

重症なのは分かっているが、あの日の夢を見た時だけは、どうしてもこうなってしまう。

普段は、普通で居られるのだけども。忘れてさえいれば。

ジャン「おいおい、大丈夫か?」

ミカサ「大丈夫。多分、昨日、食べ過ぎただけ」

アルミン「胃薬なら持ってるよ。僕ので良ければ……」

ミカサ「……後で貰えるなら頂きたい」

こういう時は仕方がない。甘えることにしよう。

エレン「……………」

エレンは何も言わなかった。

これ以上追求されずに済んだから良かったけれども、その後のテストもあまり調子は良くなかった。

まあそれでも一応、解答欄は全部埋めたし、何とか及第点は取れるだろう。

そして宿を出る前に制服に着替え直してチェックアウトとなった。

さあ、いよいよエレンとジャンの勝負である。

審判は私だ。準備していた白紙の単語帳をバスの中で二人に渡す。

ジャン「お? これに回答を書けばいいんだな?」

ミカサ「うん。回答を書いてお互いに交互に表示していって、出せなくなったら負けで」

アルミン「これなら被ってないかどうかもチェックしやすいし、いいね」

エレン「なるほどな。考えたな」

ミカサ「お昼ご飯を食べ終えたら、自由時間なので、何処かで休んで早速やりましょう」

バスは昼食用の和風のレストランに到着して、今度は皆で焼肉だった。

エレン「おお……こんな感じの和風のお店で焼肉か。珍しいな」

アルミン「焼肉屋のチェーン店なら経験あるけど、和風レストランと焼肉って変な感じだね」

ここは和風の畳みの座敷で焼肉だったのだ。

まあ、そういう形のお店も中にはあるだろうけど、洋風から一転して和風のお店でご飯を食べる事になるとは思わなかった。

ジャン「そこの肉、まだ焼けてねえぞ。食うな! エレン!」

エレン「オレはレア気味の方が好きなんだよ!」

ジャン「つかその肉、オレが置いた奴! 人の勝手に食うなよ!」

エレン「そんなのいちいち覚えてられるか! 食えそうなのから行くだろ普通!」

焼肉奉行との喧嘩である。ああ、エレンの自由な気質がここでも出てる。

アルミンは「はい、エレン」と肉をエレンに渡している。

アルミン、それはまるで女房役の仕事…。

エレン「サンキュー」

エレンもエレンで気にしてないし。ああ、甘やかされているようね。

その光景にジャンは少しげんなりしているようだ。

ジャン「お前らそれ、なに? ちょっと気持ち悪いんだが」

エレン「は?」

ジャン「アルミンもアルミンだ。エレンを甘やかしすぎだろ」

アルミン「へ?」

二人はきょとんとしている。ツッコミを入れられて初めて気づいたようだ。

ミカサ「アルミンのしている事はまるで女房役のようって言いたいのだと思う」

マルコ「ああ、まさにそれだね。アルミン、昔からそんな感じなのかい?」

アルミン「え? か、考えた事もなかった。エレンに食物あげるの、昔からだし」

エレン「アルミンは小食だからさ。給食もいつも半分しか食べられなくて、残りは全部オレが食ってた」

アルミン「うん。だからエレンに食べ物あげる癖がついちゃってたのかも」

なるほど。アニとエレンと三人でご飯を食べた時のエレンの行動の謎はそれだったのか。

ジャン「うわあ……お前らホモ臭くて気持ち悪いぞ。自覚ないんだったら尚更悪い」

エレン「はあ? 何言ってるんだ。オレ、ホモじゃねえよ」

アルミン「僕もホモじゃないよ。失礼な」

ジャン「いや、見てて気持ち悪いんでやめてくれ。女子が男子の分の肉を焼いてるのは見てても別に何とも思わんが」

ミカサ「それは私に肉を焼けと言ってるのかしら?」

ジャン「い、いや……あくまで例えばの話だってば」

ジャンはちょっと困っている。まあ、私も冗談のつもりで言ったのだけども。

エレンはそう受け取らなかったようで、

エレン「じゃあミカサに焼いてもらえばいいか。頼む」

ミカサ「え?」

エレン「さーっとでいいから。さーっと焼いてくれ」

ジャン「アホか! オレはあくまで例え話をしただけだってのに!」

エレン「え? じゃあどうすればいいんだ?」

ジャン「自分で自分の分を焼けって言ってるんだよ!」

エレン「はー? それじゃ焼く面積を等分して焼くのか? 効率悪いだろ?!」

ああ、意見が真っ二つに割れた。

エレン「だいたい、面積が丸いのにどうやって等分するんだよ! そんなやり方より、ざーっと焼いてぱぱっと食べたほうがいいだろ?」

ジャン「いや、だから焼き加減の好みがバラバラ何だから仕方ねえだろ。オレはちゃんと中まで焼けてる方が好きなんだ! ちょっと焼きすぎなくらいでもいい!」

エレン「肉が硬くなる寸前で食うって、お前の舌は馬鹿舌か? 肉の一番うめえ食い方で一回食ってみろよ」

ジャン「オレはレアが嫌いでウェルダン派になったつーの! てめえの食い方は邪道だよ!」

エレン「肉業界の人に謝れ! お前は今、肉を愛する全ての奴らを敵にまわした!!」

ジャン「上等だ! やんのかこら!」

ミカサ「ええっと、二人が喧嘩している間に肉を全て焼いてしまいましょう。ミディアムくらいで」

アルミン「賛成」

マルコ「異議なし」

ジャン「……………」

エレン「……………」

二人が黙り込んだので、私の焼き方が基準になったようだ。

そんな訳で昼食も無事(?)に食べ終えて各班でしばし自由時間となった。

私達は他の班のようにすぐに移動はせず、近くの公園の椅子に座ってエレンとジャンの対決を見守る事にした。

ミカサ「じゃあ、先攻後攻を決めましょう。じゃんけんでいい?」

エレン「おう」

ジャン「さいしょはぐー」

エレン「じゃんけんポン! (グー)」

ジャン(チョキ)

エレン「オレが勝ったから、後攻でいくぜ」

ジャン「分かった。オレが先攻だな」

ミカサ「ではジャンが先攻で。山手線ゲームスタート! 最初のお題は…植物の名前(野菜・果物含む)です! あ、ただし漢字で書いて下さい」

ジャン「はあ?! 漢字?!」

ミカサ「ごめんなさい。先に言うのを忘れてた」

アルミン「ククク……」

実はこれ、アルミンに言われてわざと二人にそう言わなかったのだ。

これくらい難易度をあげないと面白くないよって、言われたのでそう思い直したのだ。

ジャン「くそー……漢字で書くのか。自信ねえけどやるしかねえか」

ジャン「(カキカキ)……楓(かえで)」

一枚目は割と簡単な植物からきた。さて、次はエレンだ。

エレン「(カキカキ)……苺(いちご)」

ジャン「(カキカキ)……南瓜(かぼちゃ)」

エレン「(カキカキ)……西瓜(すいか)」

ジャン「(カキカキ)……梨(なし)」

エレン「(カキカキ)……人参(にんじん)」

ジャン「(カキカキ)……桃(もも)」

エレン「(カキカキ)……蜜柑(みかん)」

エレンがちょっとだけ難しい漢字を書いた。

ジャン「くそ……まあ、みかんは食べるから見たことはあるよな」

ジャン「(カキカキ)……里芋(さといも)」

エレン「(カキカキ)……唐芋(からいも)」

ジャン「(カキカキ)……柚(ゆず)」

エレン「(カキカキ)……白菜(はくさい)」

アルミン「食べ物多いね」

マルコ「まあ、まだ序盤だから」

出せる物は先に出しておくのだろう。後半が辛いと思うが。

ジャン「(カキカキ)……大根(だいこん)」

エレン「(カキカキ)……茄子(なす)」

ジャン「(カキカキ)……小松菜(こまつな)」

エレン「(カキカキ)……桜(さくら)」

ジャン「(カキカキ)……梅(うめ)」

エレン「(カキカキ)……甘夏(あまなつ)」

ジャン「(カキカキ)……栗(くり)」

エレン「(カキカキ)……玉葱(たまねぎ)」



アルミン「おっと、エレン二回目のちょっと難しい漢字きたね」

マルコ「意外と漢字に強いのかな?」

エレン「親父が再婚するまでは、オレがスーパーで買い物したりしてたから、見たことある奴ならちょっと自信ある」

ジャン「うぐ……」

ジャン「(カキカキ)……小葱(こねぎ)」

エレン「おい、それはちょっとずるくねえか?」

ジャン「別にずるくねえだろ? そういう食べ物あるだろ」

マルコ「ジャンはなかなか賢いなあ」

アルミン「だね。ここはまあ、エレンのミスかな」

エレン「ちぇっ……仕方ねえな」

エレン「(カキカキ)……貝割れ大根(かいわれだいこん)」

ジャン「オレの大根からの派生かよ」

エレン「人の玉葱取った奴に言われたくねえよ」

ジャン「ちっ…(カキカキ)……米(こめ)」

エレン「あ、そっか。それ忘れてたわ」

エレン「じゃあ…(カキカキ)……小麦(こむぎ)」

ジャン「(カキカキ)……玄米(げんまい)」

エレン「(カキカキ)……小豆(あずき)」

ジャン「(カキカキ)……大豆(だいず)」

エレン「(カキカキ)……胡瓜(きゅうり)」


アルミン「おおすごい。胡瓜はなかなか出てこないよ」

マルコ「ちょっと迷ったけど書いたね」

エレン「うろ覚えだよ。そろそろやばい」

ジャン「オレもちょっとやばくなってきた」

ミカサ「食べ物限定ではないのだけども」

ジャン「あ、そうだな。よし、ちょっと方向転換するぞ」

ジャン「(カキカキ)……紅葉(もみじ)」

エレン「(カキカキ)……銀杏(いちょう)」

ジャン「(カキカキ)……椿(つばき)」

エレン「(カキカキ)……松(まつ)」

ジャン「(カキカキ)……朝顔(あさがお)」

エレン「(カキカキ)……葵(あおい)」

ジャン「(カキカキ)……梓(あずさ)」

エレン「(カキカキ)……百合(ゆり)」

ジャン「(カキカキ)……蘭(らん)」

エレン「(カキカキ)……杏(あんず)」

ジャン「(カキカキ)……榎(えのき)」

エレン「(カキカキ)……菊(きく)」

ジャン「(カキカキ)……明日葉(あしたば)」


アルミン「あ、明日葉茶ってあるよね。飲んだ事あるの?」

ジャン「前にCMかなんかで通販のやつを見たことがあるだけだ」

アルミン「すごいね。そこから記憶を引っ張り出したか」

ジャン「そろそろやばい。エレン、もうギブアップしろよ」

エレン「嫌だね。もうちょいいける」

エレン「(カキカキ)……胡麻(ごま)」



アルミン「おっと、エレンまたもや結構難しいのきたね」

マルコ「よく覚えてたね」

エレン「胡瓜を思い出したら一緒に出てきた」

アルミン「なるほど。連想で思い出す場合もあるんだね」



ジャン「(カキカキ)……山葵(わさび)」



アルミン「ジャンも負けじといいの書いたね!」

ジャン「うろ覚えだ。確かさっき葵の字書いただろ。それで思い出した」

アルミン「エレン、敵を支援しちゃってるねー頑張れ」

エレン「くそー!」

エレン「(カキカキ)……柿(かき)」

ジャン「(カキカキ)……落花生(らっかせい)」

エレン「(カキカキ)……牡丹(ぼたん)」

ジャン「(カキカキ)……柊(ひいらぎ)」

エレン「(カキカキ)……三葉(みつば)」

ジャン「(カキカキ)……………………」


アルミン「おっと、ジャンの手が止まっている?」

マルコ「あんまり時間かかると失格だよ」

ジャン「分かってるよ。ちょっと間違えただけだ。書き直す」


ジャン「(カキカキ)……春菊(しゅんぎく)」

エレン「(カキカキ)……生姜(しょうが)」

ジャン「(カキカキ)……枝豆(えだまめ)」

エレン「(カキカキ)……山芋(やまいも)」

ジャン「…………」


アルミン「おっと、ジャンの手が完全に止まったー?」

マルコ「あと30秒以内だよ。持ち時間は1ターン1分以内だからね」

ジャン「……………ダメだ。もう出ない」

アルミン「ギブアップかい?」

ジャン「くそー! もうさすがにネタ切れだよ!」


ミカサ「一本目、エレンの勝利!」

エレン「やったー!!!」

皆さんはいくつ書けそうですか?
今回はここまでです。続きはまた今度です。おやすみなさい。

ジャン「くそう。エレン、意外と漢字に強かったんだな」

エレン「いや、お前もなかなかだったぜ」

ジャン「オレは漫画のキャラで知った奴とかしかまともに出してねえよ」

エレン「ああ、柊とか蘭とかか」

ジャン「あと、柚もだ。柚木っていうヒロイン、いるだろ」

エレン「ああ、マガジンにいるな。髪の長いヒロインな。なるほど」

アルミン「覚え方でその人となりが分かるね」

マルコ「だね…」

ミカサ「では次の勝負にいってもいいだろうか?」

エレン「いいぜ」

ミカサ「次は先攻後攻を逆にしましょう。どうも後攻の方が有利に思える」

アルミン「そうだね。じゃあ次はエレンが先攻で」

エレン「おし、了解」

続いてのお題は『歴史上の人物(東洋・西洋問わず)』だ。

ミカサ「当然、こちらも漢字で書く場合は漢字で書いて貰う」

エレン「うぐ…どっかのクイズ番組のように平仮名記入は無しか」

ミカサ「どのみち、テストでは平仮名だと△(三角)扱いになるので漢字で覚えたほうがいいと思う」

エレン「分かったよ。じゃあいくぞ」

エレン「(カキカキ)……徳川家康」

ジャン「(カキカキ)……徳川家光」

エレン「(カキカキ)……徳川綱吉」

ジャン「(カキカキ)……徳川吉宗」

アルミン「徳川シリーズからきたね」

マルコ「全員、いくかな?」

エレン「(カキカキ)……徳川秀忠」

ジャン「(カキカキ)……徳川慶喜」

エレン「(カキカキ)……豊臣秀吉」


アルミン「あれ? もう徳川シリーズ終わり?」

マルコ「全員出てないのに…」

エレン「全員覚えてる訳ねえだろ」

アルミン「そこは全員、覚えようよ」

マルコ「まあマイナーな将軍もいるけどね」


ジャン「(カキカキ)……千利休」

エレン「(カキカキ)……織田信長」

ジャン「(カキカキ)……明智光秀」

エレン「(カキカキ)……石田三成」

ジャン「(カキカキ)……足利義満」

エレン「(カキカキ)……足利尊氏」

ジャン「別に日本人だけじゃなくてもいいよな?」

ミカサ「東洋、西洋問わずなので」

ジャン「じゃあちょっと変化球入れる。(カキカキ)……ザビエル」

アルミン「そこは『フランシスコ・ザビエル』って書いてあげて!」

ジャン「分かったよ! (カキカキ)……フランシスコ・ザビエル」

エレン「外人か……外人じゃねえけど(カキカキ)……天草四郎」

ジャン「キリスト教か。じゃあ(カキカキ)……イエス・キリスト」

アルミン「順番がおかしい」

マルコ「普通、キリスト、ザビエル、天草四郎だよね」

ジャン「うるせえな! 散らかっててもいいだろ別に!」

エレン「こんなの思いついた順に書くしかねえだろ」

エレン「(カキカキ)……ナポレオン」

アルミン「苗字は?」

エレン「え?」

ミカサ「フルネームで書かないと認められない」

エレン「嘘?! えっと、ナポレオンのフルネームってなんだっけ?」

ジャン「オレに聞くなよ」

マルコ「あと30秒……」

エレン「うわーここで負けたくねえ! なんだっけ? なんだっけ?」

エレン「あ、ボナパルト! 確かボナパルトだった筈!」

エレン「『ボナパルト・ナポレオン』」

ミカサ「逆…」

エレン「あ、書き間違えた!『ナポレオン・ボナパルト』」

ジャン「今のはセーフなのか?」

アルミン「限りなくグレーだけど、まあおまけでいいんじゃない?」

マルコ「二度目はないよー」

ジャン「くそう。外人名はフルネームきついかもな」

ジャン「だったら……」

ジャン「(カキカキ)……伊藤博史」

マルコ「簡単なのに戻ったね」

ジャン「基本的なのを先に書かないとダメだろ」

アルミン「一理ある」

エレン「(カキカキ)……西郷隆盛」

アルミン「お、近代史かな。明治いくの?」

ジャン「(カキカキ)……大久保利通」

マルコ「受けてたったね。しばらくは明治が続くかな?」

エレン「(カキカキ)……樋口一葉」

ジャン「(カキカキ)……野口英世」

エレン「(カキカキ)……夏目漱石」

ジャン「(カキカキ)……福沢諭吉」

アルミン「あれ? もしかしてお金の偉人シリーズだった?」

マルコ「ああ、なんかそれっぽいね」

エレン「(カキカキ)……紫式部」

ジャン「(カキカキ)……清少納言」

エレン「(カキカキ)……小野小町」

ジャン「(カキカキ)……楊貴妃」

エレン「(カキカキ)……クレオパトラ」

ミカサ「七世のことでいいのね?」

エレン「へ?」

ミカサ「古代エジプトプトレマイオス朝最後のファラオ。普通、クレオパトラと言えば7世のことを指すのだけども、母親は5世。古代や中世には同じ名前の人物は多いので」

エレン「(そんなん知らんかった)ああ、それで」

ジャン「なんか卑怯臭いぞ。エレン……」

エレン「ミカサがジャッジしてんだからいいんだよ!」

ジャン「(カキカキ)……ブルータス」

アルミン「(ニヤリ)フルネームは?」

ジャン「え?! あ、しまった!」

アルミン「ま、普通はブルータスで正解だけどね。一応、フルネームでお願いしたいなあ(ちなみに『マルクス・ユニウス・ブルトゥス』が正解)」

ジャン「あああ……悪い! 変更していいか?」

ミカサ「時間内なら構わない」

ジャン「ええっと、じゃあ……」

ジャン「(カキカキ)……ジュリアス・シーザー」

エレン「誰だっけ? それ」

ジャン「なんか、クレオパトラのあたりで習ったような名前。多分、その辺りの歴史の人物だ」

マルコ「大雑把だけど、まあ間違ってはいないよ」

エレン「うーん。中世はそんなに得意でもないけど……」

エレン「(カキカキ)……ジャンヌ・ダルク」

ジャン「時代が飛んだな。まあいいが」

ジャン「(カキカキ)……マリー・アントワネット」

アルミン「(ニヤニヤ)フルネームは?」

ジャン「え?! これがフルネームじゃねえの?」

マルコ「違うよ。ま、でも普通はそれで覚えるよね」

ミカサ「マリー・アントワネットのフルネームは長いのでここは省略でもいいけれど」

アルミン「良かったね。ジャン。ミカサのジャッジが甘くて」

ジャン「すまん……」

ミカサ「ちなみに『マリー・アントワネット・ジョゼファ・ジャンヌ・ロレーヌ・ドートリシュ』がフルネームになる」

ジャン「長すぎるだろ!? どうなってんだよ?!」

ミカサ「王族の名前は長いのもあるので、長過ぎる場合は省略でいい。テストではマリー・アントワネットで正解なので」

エレン「いかん。カタカナはいろいろ危険だな。漢字に戻る」

エレン「(カキカキ)……劉備玄徳」

アルミン「三国志きたね!」

マルコ「三国志の人物だったら相当な数が出せるよ!」

エレン「いや、オレもメジャーどころしか覚えてないけどな。ゲームに出てくるのしか知らん」

ジャン「でも漢字で書けるってのが凄いな。エレン、やっぱり漢字強いな」

ジャン「(カキカキ)……諸葛亮孔明」

アルミン「ちゃんと『亮』の字も入れたね。通だね」

ジャン「三国志ならゲームでちょっとだけやった事あるからな」

エレン「(カキカキ)……張飛翼徳」

ジャン「(カキカキ)……関羽雲長」

エレン「(カキカキ)……曹操孟徳」

ジャン「(カキカキ)……趙雲子龍」

エレン「(カキカキ)……馬謖(ばしょく)」

ミカサ「『泣いて馬謖を斬る』の馬謖ね。なるほど」

エレン「え? そんなのあるのか?」

ミカサ「知らない? そういう故事成語もある。意味は『どんな優秀な者であっても、法や規律を違反した者の責任を不問にしてはならない』という意味だったはず」

エレン「そっちの故事成語は知らなかったなあ」

アルミン「いや、でも馬謖をすらすら書けるってエレン、やっぱり漢字強いね」

エレン「そっかな? 三国志やってればとりあえず一通り覚えるぞ。ちなみにオレは蜀派だ」

ジャン「オレはそこまでやりこんでねえよ。くそ……」

ジャン「(カキカキ)……夏侯惇(かこうとん)」

エレン「(カキカキ)……呂布奉先(りょふほうせん)」

ジャン「ダメだ。三国志はもう出てこない。先に降りる」

エレン「えーなんだよ。もっと出せよ」

ジャン「三国志限定じゃねえだろうが。違う時代にする」

ジャン「(カキカキ)……三蔵法師」

アルミン「ふふふ……ジャン、それは人物名じゃないよ」

ジャン「え?! 人物じゃねえ?」

アルミン「えっとね。所謂、一般名詞であって、固有名詞じゃないんだ」

ジャン「え? じゃあ役職みてえなもんなのか?」

アルミン「そうそう。でも多分、思い浮かんでいる三蔵法師の名前は聞いたことあると思うよ」

マルコ「漫画でも出てるよ」

ジャン「漫画……あ! そっか、こっちか!」

ジャン「(カキカキ)……玄奘三蔵」

エレン「え? なんだそれ。そんな漫画あったけ?」

ジャン「ちょっと古いが、あるだろ。タイトルちょっともじったやつ」

ジャン「あれ、うちにもあるんだ。読んでて良かったわー」

エレン「うーん。ジャンの知識は漫画からが多いのか」

エレン「まあ、オレも似たようなもんだけどな」

エレン「(カキカキ)……空海」

アルミン「宗教関係できたか」

エレン「まあな。日本にもいるだろ」

マルコ「キリストきたら仏教もいかないとね」

ジャン「(カキカキ)……シャカ」

ミカサ「漢字は?」

ジャン「え? 漢字あったけ?」

アルミン「あるよ。カタカナだと、漫画の方のシャカになるよ」

ジャン「くそー……漢字出てくるかな?」

ジャン「釈………迦? こんなんだったか?」

ミカサ「正解。うろ覚えでよく書けた」

ジャン「ふーギリギリセーフだな」

エレン「(カキカキ)……法然」

エレン「なんかこんな感じのやついただろ?」

アルミン「エレン、一応、周辺の知識もセットで覚えようね」

マルコ「南無阿弥陀仏を唱えた人ね」

ジャン「(カキカキ)……日蓮」

アルミン「対抗してきたね」

エレン「いたっけ? そんなやつ」

マルコ「南無妙法蓮華経を唱える方の宗教を作った人だよ」

アルミン「ほら、チーンと叩く方と、ポクポク叩く方の違いだよ」

エレン「ああ! そういう違いか! 仏教も宗派が分かれてるのか」

アルミン「この二つは今でも生活に根付いてるから知ってた方がいいよ」

エレン「なるほどな」

エレン「(カキカキ)……一休」

ミカサ「フルネーム……」

エレン「え?! こいつにもフルネームあんの?!」

ミカサ「ある。まあ、あまり有名ではないけれど」

エレン「えっと、その……変更してもいいか?!」

アルミン「残り30秒でいける?」

エレン「えっと、えっと……えっと…あー?!」

ジャン「ぶっぶー! 時間切れだよな!」

エレン「ちくしょー! 一休のフルネームなんてあんのかよ」

ミカサ「『一休宗純(いっきゅうそうじゅん)』アニメでは知恵者として知られる彼は、実際は自由奔放で奇行が多かったと言われている。詳しくはウィキペディア等で調べてみよう」

アルミン「まあ、お坊さんらしくはないよね。逸話を知ると」

マルコ「うん。破天荒な人だったみたいだしね」

ジャン「よっしゃああ! オレの勝ちだな」

エレン「一勝一敗か。次で決まるな」

ジャン「次は理科系用語だったな。今度も勝つ!」

ミカサ「待って。思ったのだけども、やはりこの勝負、先攻の方が不利な気がする」

アルミン「そうだね。しかも、前の人が答えた内容をヒントに次の言葉を探せるしね」

ミカサ「ここは最終問題は山手線ルールではなく、お互いに一気に、制限時間内に用語を出していくのはどうだろう?」

マルコ「被ってもいいの? 個数を競うってこと?」

ミカサ「うん。その方が平等な気がする……ので」

アルミン「いいかもね。そうしよう。じゃあ、最終問題はお互いに15分以内に書けるだけ理科系の用語を書く方で。多く書けた方が勝ちでいくよ」

エレン「分かった」

ジャン「ああ。構わないぜそれで」

ミカサ「では、用意」

エレン(原子記号……あと用具とかだな)

ジャン(宇宙関係や気象の用語でもいいよな)

ミカサ「スタート!」

(*エレンとジャン、どっちが勝つ?)

(*>>222さんの回答の秒数が偶数ならエレン、奇数ならジャン勝利ルートで続けます)

どっちでしょう

18秒なのでエレン勝利ルートですねー。

アルミン「さーて、確認してみようか」

マルコ「エレンの書いた個数を数えるよ」


【エレンの解答】

H(水素)

N(窒素)

C(炭素)

Mg(マグネシウム)

Ca(カルシウム)

K(カリウム)

プレパラート

顕微鏡

シャーレ

メスシリンダー

アルコールランプ

スポイト

フラスコ

三角フラスコ

試験管

ピンセット

U字磁石



アルミン「全部で17個かな?」

ジャン「おい、三角フラスコとフラスコを別でカウントするのって有りかよ」

アルミン「うーん。似てるけど別物だしね。丸いフラスコと三角のふたつあるし」

マルコ「これは別で考えてもいいと思うよ」

ジャン「ちくしょう。その手があったか」

アルミン「続いてはジャンを数えるよ」

【ジャンの解答】

恒星

惑星

小惑星

ビックバン

星座

星団

自転

公転

軌道

銀河系

隕石

黒点

コロナ

フレア

赤外線

紫外線



アルミン「あーおしい! 16個だ!」

マルコ「同じ理科系でも好みが違うね。全然かぶってないってすごいな」

アルミン「だね。よほどエレンとジャンはタイプが違うらしい」

エレン「ってことは、オレの勝ちでいいんだな?」

ミカサ「そうね。エレンの勝利」

エレン「よっしゃああああ!」

ジャン「くそおおおおおお! (がっくり)」

エレン「これでジャンはミカサとの勉強会は無しだな」

ジャン「くそう……(ギリギリ)」

ミカサ「待ってエレン。これって普通、負けた方に教えてあげた方がいいのでは?」

エレン「え?」

ジャン「ん?」

ミカサ「だってそうでしょう? 負けた方が学力が劣っているという証明になるのだから、勉強を教えてあげるべきなのは、負けた方なのでは」

実は最初に勝負を決めた時からずっと疑問に思っていたのだ。

負けた方が学力が下の筈なのに、何故勝った方に教えないといけないのか。

だから私はそう、思わず言ってしまったのだが、エレンは「えっと、それは…」と微妙な顔をしている。

すると、先程まで落ち込んでいたジャンが急に嬉しそうになって、

ジャン「そ、そうだよな! 負けた方が学力が劣ってるっていう事になるよな! だったら、負けたオレはミカサに教えてもらえるよな?!」

と言ってきた。私は勿論頷いた。

ミカサ「その必要があるのであれば……」

ジャン「よしゃああああ! 勝負には負けたが結果的には勝った!」

エレン(ギリギリギリ)

エレンが何故か歯ぎしりをしている。

何か間違った事を言っただろうか…。

釈迦って一族の名前じゃないかい?今更だが…

マルコ「良かったね。ジャン。ミカサとの勉強会が出来て」

ジャン「ああ! あの、ミカサ……今度、是非うちで」

と、ジャンが私の手を取って顔を近づけてきた。

しかしその間に入ってエレンが「やるんだったら図書館行け!」と妨害してきた。

ジャン「ああ?! どこでやろうが勝手だろうが! 邪魔すんなよ!」

ミカサ「いえ、やるんだったら図書館の方がいい。調べ物をするのに適しているので」

ジャン「うっ……でも、家にパソコンとかあるし」

ミカサ「ネットの情報は間違っている場合もたまにあるそうなので、やはり書物で調べる癖をつけた方がいいと思う」

アルミン「うん。ソースとしてはネットの内容は信憑性を疑う場合もあるよ。まあ、歴史の人物名等はさておき、例えば経済の内容とか、時事問題に関して言えば、たまに変な主張してる人の記事にあたっちゃう場合もあるからね」

マルコ「そうだね。それに図書館の方が静かだし、集中も出来るよ」

ジャン「………まあ、そこまで言うならそれでもいいけど」

ミカサ「では決まりで。いつがいいだろうか?」

ジャン「来週の日曜日とかどうだ?」

ミカサ「27日ね。特に予定もないし、大丈夫だと思う」

ジャンがその瞬間、何故か小さくガッツポーズをした。

よほど勉強がしたいのだと思う。いい事だ。

しかしその様子をエレンはまだ微妙な顔で見つめている。何か言いたげに。

ミカサ「? エレン? どうしたの?」

エレン「その勉強会、やっぱりオレも混ぜてくれ」

ジャン「はあ?! 勝手についてくるなよ!」

エレン「いや、だって、勝敗は紙一重だったし。勝ったけど、さっきの最終問題だって、1個差だったし」

ミカサ「でもそうなると、勝負をした意味がなくなるような」

ジャン「そうだぞ! 何の為に勝負したと思ってんだ」

ミカサ「一人で二人の面倒を見るのはさすがに私も難しい。ので、ここはアルミンとマルコにも協力して貰いたい」

と、私が妥協案を出すとアルミンとマルコは同時にニヤッとした。

アルミン「ああ、なるほど。僕とマルコがエレンを、ミカサはジャンを担当して一緒に図書館で勉強すればいいのか」

ミカサ「お願い出来るだろうか」

マルコ「全然いいよ。皆でやった方が楽しいだろうしね」

ジャン「マルコ! アルミン?!」

すると何故かジャンがまた、すごく落ち込んだ顔をして、二人に詰め寄っていた。

小声で何か抗議をしているようだが詳しくは聞こえない。

>>228
物凄い遠い記憶なのですが、釈迦の漢字を書き間違えて、
世界史で減点を食らった記憶があるので、
世界史のテストに出た筈…と思って出しました。

一応、調べたところ、存在自体が怪しいと思われていた釈迦ですが、
その生前を記録するものが見つかったとウィキにはありました。
ただ没時に関する正確な記述は諸説あるそうで、
正確な死んだ時期は今も分かってないそうです。

まあ、日本で言う聖徳太子さんみたいに遠い存在なので、
もし間違ってたらすみません…。

まあアルミンに
「ゴータマ・シッダッタ(シッダールタ?)の方が正解」と言わせても良かったんですが、
確か、「釈迦」でも正解にする場合があるので、ちょっと判断に迷ったんですよね。

今の現役の高校生さん、どっちで習ってるんだろう。
もし、今の教科書と違ってたらすみません。

そして暫くの間、三人は言い争って、ジャンはがっくり肩を落として戻ってきた。

ジャン「ああもう、それでいいよ。それで決定でいい!」

ミカサ「では、来週の予定は決まりね。定期考査に向けて少しずつ頑張りましょう」

講談高校は集英程ではないにしろ、定期的にテストはある。

中間テストの予定は確か、5月12日から14日までだった気がする。

エレン「あー中間テストの後は体育祭だったよな。5月25日だったけ?」

アルミン「そうだね。まだ先だけど」

エレン「テストの後に体育祭か。まあ、体育祭あるからテストも頑張るか」

ミカサ「エレン、テストの方が重要なのでは?」

エレン「いや、それは分かってはいるが、気持ち的には体育祭の方が楽しみなんだよ」

と、エレンはちょっと苦笑いをしている。するとジャンも、

ジャン「ああ、その気持ちは分からんでもない」

エレン「だろ? 女子と一緒に体育が出来る機会って、体育祭だけだもんな」

ジャン「そうだな。女子の走るところとか、玉入れとか、見たいよな」

中学の時から男女は分かれて体育の授業を行っているので当然ではあるが、確かに言われてみれば年に1度だけ、である。

エレン「ああ。ジャンプしている女子を見れるのは楽しみだ」

ジャン「くそ……エレンに同意したくないのに同意してしまう自分がいる」

エレン「素直になれよ、ジャン」

アルミン「エレン、ミカサの前でそれ以上下世話な話はやめようね」

エレン「あ、悪い悪い」

ミカサ「?」

今の会話の何処に下世話な話が入っていたのだろうか? 分からない。

ミカサ「でも体育祭の前に球技大会もあるのでは」

私がそう言うとアルミンも頷いた。

アルミン「ああ、26日にあるね。でも球技大会は会場が男女別だよ」

マルコ「女子が体育館で、男子が外だからね」

エレン「女子はバレーで、男子がサッカーだったけ?」

ジャン「雨降ったら男子も体育館だけどな。バスケだろ」

エレン「オレ、サッカーよりバスケの方が好きだけどな」

ジャン「オレはサッカーの方が好きだな。ボール来ない時はさぼれるし」

エレン「それじゃつまらんだろ。参加してる雰囲気を味わえる方がいいだろ?」

ジャン「オレはそこまで真面目じゃないんでね。適度に休めるスポーツの方が好きだな」

アルミン「じゃあ野球とか? 攻撃側は打席に入らない時は休めるし」

アルミンが言うと、ジャンはちょっとだけ微妙な顔で答えた。

ジャン「ああ。好きだな。割と」

好きだという割には顔が浮かない。はて? するとマルコが、

マルコ「……というか、僕達二人、中学までは地域の野球チームに入ってたから」

あら、意外な事実が判明した。

ジャン「馬鹿! マルコ、言うなって!」

ジャンが照れ臭そうにしている。何故だろう?

マルコ「高校入ってお互いに野球やめちゃたけど、ジャンは野球うまいよ。バッテリー組んでたんだ」

エレン「ああ、通りで仲がいいと思ったぜ」

ジャン「あんまり恥ずかしい事、言うなって…」

と、何故かジャンが頭を掻いている。

ミカサ「何故恥ずかしいと思うの? 野球はいいと思うけど」

マルコ「それがね……」

ジャン「マルコ、それ以上言ったら友達やめるぞ」

マルコ「ああ、ごめん。ごめん。じゃあ言わないでおくよ」

アルミン「ええ? そこまで言って黙秘? 気になるー!」

私も気になってきた。

ミカサ「気になる……」

ジャン「うぐっ…」

マルコ「ミカサが気になるんじゃ、言った方がいいんじゃない?」

ジャン「くそ……その、あれだよ。髪! 髪で分かるだろ?」

エレン「髪?」

ジャン「髪、のばしたかったんだ。高校野球はコニーみたいに全員、丸刈りが必須だろ? それだと、彼女作れないって思ってさ」

エレン「……………関係なくねえか?」

エレンの鋭いツッコミに私も頷いた。

ミカサ「私もそう思う。髪型は、別に関係ないと思う」

中学時代の記憶を探ってみる。

ミカサ「モテる人はどんな髪型でもモテる。現に坊主頭でも彼女のいる男なんて、中学時代にざらにいた」

エレン「だよな」

マルコ「僕もそれは言ったんだけどジャンが頑なに拒否してね。高校に入ったら絶対、彼女を優先にするから野球はやめるって……」

ジャン「そもそも野球部入ったら自由な時間が殆どねえだろうが! マネージャーと付き合うならまだしも!」

ミカサ「ん? つまりジャンは彼女を作って、彼女優先の高校生活を送るつもりなのね」

ジャン「お、おう。そうだよ」

と、ジャンは肯定した。するとエレンはげんなりした顔で、

エレン「そこまでガツガツするのはちょっと引かねえか?」

とツッコミを入れた。

ジャン「うっ……」

アルミン「だよねえ。僕もそう思う」

マルコ「でも気持ちは分からないでもないよ。彼女、欲しいと思う気持ちは僕も共感出来る」

ジャン「マルコ……お前は親友だ」

ジャンが何故かマルコの肩を叩いた。味方がいて嬉しいようだ。

ジャン「お前らは、格好つけ過ぎ。体育祭だけで満足すんのか?」

エレン「うっ……それを言われると辛いが」

アルミン「で、でも、それが普通じゃないのかな?」

ジャン「本性を隠すんじゃねえよ! 本当は彼女欲しいんだろ?! 曝け出せよ!」

マルコ「いや、ジャン。曝け出しすぎるのも良くないと思うよ?」

ジャン「何だよ。さっきは味方した癖に、優等生ぶる気か?」

マルコ「僕はあくまで共感すると言っただけで、実際に彼女を作りたいかどうかは別だよ」

何だか込み入った話になってきた。うぬぬ。

男の子同士の会話はちょっと分かりづらい部分もある。

ジャン「どう違うんだよ」

マルコ「彼女は欲しい。でも、誰だっていいわけじゃない。ちゃんと恋愛して、この人とならいいなって思える子を探して、それから友達になって、っていう手順をちゃんと踏んだ上で、最終的に彼女になって欲しいって告白したいんだ」

ジャン「いや、それだったらオレと同じじゃねえか。どこが違うんだ?」

マルコ「ジャンの場合は、アンテナを張り過ぎ。そんなに焦らなくてもいいんじゃないかって言いたいんだけど」

ジャン「でも高校生活なんてたったの三年間だぞ! 気合入れないとあっと言う間に過ぎるだろうが」

マルコ「そうだけどさ。彼女の事も大切だけど、自分の時間だって大切だよ?」

エレン「あーそれは分かる。自分を犠牲にしてまで女に時間を割くのはちょっとなあ」

ジャン「でも、デートの約束と自分の用事が被った時、彼女を出来るだけ優先するのは普通じゃないのか?」

マルコ「それは内容によると思うけどね。自分の用事を犠牲に出来るなら、僕も彼女を優先するけどさ」

アルミン「ジャンの場合はそれを全部、犠牲にしそうで怖いんだよね」

ジャン「それのどこが悪いんだよ。彼女を大事にするんだぞ?」

エレン「重いと思うぞ? それをされる側は」

ジャン「そ、そうなのか…? み、ミカサはどう思う?」

ミカサ「え?」

いきなりこっちに話題の矛先がきてびっくりした。

な、何故、私の意見を求めるのだろうか?

アルミン「女の子の側の意見も聞いてみたいよね。ミカサ、どう思う?」

なるほど。女子代表の意見を聞きたくて私に話がきたのか。

ミカサ「えっと、その…」

私は一生懸命考えてみた。

ジャンは、彼女を作ったら、自分の時間を犠牲にしてでも相手に尽くしたいと思うタイプ。

エレンは、彼女を作ったとしても、自分の時間を大切にしたいと思うタイプ。

これで間違ってない筈。

ミカサ「つまり、ジャンのようなタイプと、エレンのようなタイプ、どちらがいいかジャッジすればいいの?」

マルコ「そうだね。女の子はどっちが好きかな?」

一般論を求められていると考えていいのだろう。

よし、ここは女子代表として、答えなければ。

私の意見は……。

(*ジャンとエレン、どっちのタイプがいいと答えるか)

(*多い方で進めます。皆の素直な意見を↓にどうぞ)

(*続きは明日書くので締切は明日の夜21:00まで)

集計結果

ジャン1票
エレン3票

とりあえず、ここまでで締切ます。安価サンクス!

ミカサ「エレンのようなタイプの方がいいと思う」

ジャン「うがっ……!」

私が率直な意見を伝えると途端、ジャンが凄く悲しそうな顔になった。

なので、私はもう少し詳しく説明する事にした。

ミカサ「ジャン、勘違いしないで欲しい。ジャンのようなタイプが悪いと言っている訳ではない」

ジャン「………?」

ジャンは少しだけ気持ちが浮上したようだ。よしよし。

ここは丁寧に説明しないと誤解を生むかもしれない。慎重に行こう。

ミカサ「ジャンのように一途に愛されれば相手の彼女もとても幸せだと思う」

ジャン「そ、そうか?」

ミカサ「うん。自分の方に合わせてくれるのはとても嬉しいと思う」

アルミン「ん? じゃあなんでミカサはエレンタイプを選んだの?」

ミカサ「女の子は、自分に合わせて欲しいと思う半面、男の子に格好良くいて欲しいという願望もある」

マルコ「格好良く…」

ミカサ「そう。例えば、部活等で活躍している姿を見るのとか、自分以外の事であっても、それに夢中になってがむしゃらに頑張っている姿は格好いいと思う」

ジャン「そ、そういうもんか?」

ミカサ「うん。ジャンは野球が得意であるのであれば、その姿を見てみたいと思う。彼女という立場になればそれが普通だと思う。なのに、自分のせいで活躍する姿を見れない、となると、罪悪感に似た感情を覚えると思うの」

ジャン「うううううう~~~~ん」

私が丁寧に説明すると、ジャンが頭を抱えて唸りだした。

ジャン「それは盲点だった。くそう……そういう場合もあるのか」

ミカサ「あくまでも例えではあるのだけども。中学時代、部活で活躍している男子がモテるのはそのせいだったと思う。私も、頑張っている人を見るのは割と好き。例えそれが出来ていても出来なくても」

エレン「下手くそでもいいっていうのか?」

ミカサ「結果がすぐに結びつくわけでもない。努力する事が大事だと思う」

ジャン「そうか……オレ、頑張っている姿を学校で見せてなかったからモテなかったのか」

マルコ「いや、それだけが原因だとは思えないけど、まあ野球は学校の外でやってからね」

それは勿体無いと思った。

ミカサ「それは一因にあるのかもしれない。ジャン、モテたいと思うのなら尚更、何処か部活に所属した方がいいと思う。野球部は丸刈りが義務で嫌であるのならば、別の部活でもいいと思う。あなたのその才能を枯らしてしまうのは非常に勿体無い」

ジャン「そ、そうか……そういう考え方も有りだな」

目的は不純ではあるが、それでも何かに打ち込むというのはいい事だと思う。

ジャン「ありがとう。ミカサ。何だかすっきりしたぜ」

ミカサ「お役に立てて何より」

エレン「…………」

エレンが何故か口を尖らせている。拗ねているようだ。何故?

ミカサ「どうしたの? エレン」

エレン「別に。何でもねえよ」

ミカサ「では何故、不機嫌な表情をしている?」

エレン「別に不機嫌じゃねえし」

ミカサ「嘘。エレンはすぐ顔に出る。何か気に障るような事を言っただろうか?」

あり得るとすれば私とジャンの会話の中の何かだろうか。

しかし、私はあくまで一般論を言っただけのなので、特別、エレンを傷つけるような事を言った覚えはないのだが。

エレン「………お前、ブーメランって言葉知ってるか?」

ミカサ「知っている。こう、投げると自分に返ってくる武器の事よね?」

エレン「いや、武器の説明じゃなくてさ……まあいいや」

何か言いたげなエレンだったが途中で放置したようだ。

アルミン「………つまりミカサは、自分の時間を大事にしている男の方が格好いいと思うんだね」

ミカサ「生活の中心を彼女にしてしまうのは、される側は嬉しい半面、申し訳ない気持ちも出てくると思う。だから適度に自分の時間を楽しんでいる人の方が余裕があっていいと思う」

あんまり他の事に夢中になって放置されると、それはそれで嫌だけども。

エレン「………………」

エレンは一際大きなため息をついている。どうしたんだろう?

エレン「いや、何でもねえから。続けろ」

ミカサ「そう? まあ、つまりはそういう事なので、面倒臭いとは思うけれど、束縛し過ぎず、放置し過ぎず、が理想的だと思う」

マルコ「それが一番難しそうだね」

アルミン「まあ、彼女のいない僕らの言う事じゃないけど」

ジャン「これから作るんだよ! お前らも受身ばっかじゃダメだろ。気になる子とかいないのか?」

その瞬間、アルミンとマルコがほぼ同時に肩を揺らした。

ジャン「ははーん、その反応だといるな? 吐け! 二人共!」

アルミン「なんのことかな? あはははは……(ダッシュ)」

マルコ「僕はまだまだ、そんな……(ダッシュ)」

ジャン「あ、逃げやがった! オレに勝てると思ってんのかこの野郎!」

と、何故か三人で公園内で追いかけっこが始まってしまった。

実に長閑な光景である。

エレン「…………」

エレンは何故か参加していないが。はて?

ミカサ「エレンは追いかけないの?」

エレン「人の事はどうでもいい。いいたきゃ自分から言うだろ」

ミカサ「エレンとジャンは本当に正反対の性格をしているようね。喧嘩さえしなければ、いいのに」

エレン「反対だからこそぶつかるんだろ、多分な」

エレンは首筋を触りながら言った。

エレン「結構、時間潰しちまったな。これからどこか行くか?」

ミカサ「そういえば特に決めていなかった」

エレン「まあ、オレはお土産さえ後で買えたらそれでいいけどな。ミカサ、どっか行ってみたいところとかねえの?」

ミカサ「うーん。そう言えばサシャが紫芋のソフトクリームを食べるとか何とか言ってたような」

エレン「じゃ、他の奴らが反対しなけりゃ、そこ行くか」

と、ようやく私達も移動する事になったのだった。

バスや列車を乗り継ぎ、途中でタクシーを使ってその場所に移動してみると、沢山の人がいた。

家族連れもいるし、お年寄りの人もいる。訪れたその物産館では、多くの新鮮な野菜やお弁当が売られてた。

手作りのクッキーもある。美味しそうだ。買っていこうかな。自分用に。

ミカサ「エレン、決まった?」

エレン「おう。オレはいきなり団子とあと父さんに酒のつまみ系の何か買ってく」

エレンと私はさっさと会計を済ませると、アルミン達より先に外に出た。

すると偶然、ソフトクリームを外で食べているサシャとクリスタと出会った。

サシャ「あ、ミカサ! こっちにきたんですね!」

クリスタ「やっほー! もう紫芋ソフトクリーム食べた?」

ミカサ「いいえ、さっき来たばかりなので。今から買おうと思ってる」

サシャ「早くしないとなくなりますよ! 一日限定個数販売ですから!」

ミカサ「そ、そうなの? それは知らなかった」

どうやら紫芋ソフトクリームは人気の商品のようだ。

子供達や女性が多く並んでいる。私も後ろの列に並んでみた。

しかし私の番になると残り一個と言われてしまった。

ああ、エレンの分が買えない。

ミカサ「エレン、食べたい?」

エレン「まあ、そりゃあ……でも残り一個なら、半分こするしかねえよ」

ミカサ「そうね。では半分こしましょう」

エレンに紫芋のソフトクリームを手に持ってもらい、先に譲った。

ミカサ「お味はどう?」

エレン「あんめ! あ、でもほのかに芋の味もするぞ」

ミカサ「で、では私も……」

私がエレンの残りを食べようとすると、その時、

ジャン「ちょっと待ったああああああ!」

と、何故かジャンが私に大声で待ったをかけた。

ミカサ「?」

ジャン「さじ! さじで食え! 買ってくるから!」

ミカサ「面倒なのでいい」

ジャン「いや、ダメだって。つか、気づいてねえのか?!」

ミカサ「何が?」

ジャン「何がって、そういう食べ方、間接キスっていうだろ?!」

………………………ああ!

指摘されてようやく気づいた。そう言われればその通りだ。

ミカサ「ごめんなさい。気づいていなかった。エレン、そういうの苦手?」

エレン「んにゃ別に。ほら、早くしないと溶けるぞ」

ミカサ「おっとっと」

少したれてきたそれを慌ててすくって舐めた。

うん。甘い。そして美味しい。これはヒット商品なのも頷ける。

私はジャンに反対されたけれども、溶けるのが勿体ないので残りを急いで全部平らげた。

ジャン「………………」

ミカサ「ジャンも、もしかして食べたかったの?」

エレン「運が悪かったなー。残り一個だったんだよ。悪いな」

ミカサ「ひ、一口あげれば良かったのかしら。ごめんなさい」

ジャン「いや、そういう話じゃないんだ。うううう……」

ジャンがすっかりいじけてしまった。やはり分ければ良かっただろうか。

いやしかし、溶け始めてたし、急いで食べないと落ちるし。

エレンの言うように、仕方ないと思った。

ミカサ「ジャン、そんなに落ち込まないで。いつかまた紫芋のソフトクリームを食べる機会はきっとある」

ジャン「いや、ソフトクリームはどうでもいいんだが……はあ。もういいよ」

ジャンがとぼとぼ何処かに去っていってしまった。

何だか申し訳ない事をしてしまった気がする。

エレン「あんま気にするなって。ジャンはいろいろ気にし過ぎだ」

ミカサ「そうね。ちょっと神経質な部分があるのね。きっと」

アルミン「いや、君らの方が大雑把な気がするけれど」

と、何故かアルミンがげんなりした顔で私達にツッコミを入れた。

ミカサ「そう? でも、せっかくのソフトクリームが」

アルミン「いや、それは分かるけども。ここ、周りに人がいっぱいいるし、どう見てもその感じ、ただのカップルにしか見えないよ」

ミカサ「え?」

エレン「はあ?」

アルミンの言い分に私達は同時に驚いてしまった。

ミカサ「そ、そんなつもりはなかった……」

エレン「オレもだよ。なんだそれ。何でソフトクリーム一緒に食うだけでそんな風に見られる?」

アルミン「その距離感、だね。いや、君らが仲いいのは認めるけども。ちょっと外では自重して欲しいかな」

ショックだった。まさかそんな。

ああ、つまりジャンは私達のそれを見て勘違いしてしまったと、そういう事なのか。

ミカサ「誤解なので、ジャンに説明してくる……」

アルミン「やめといたほうがいいよ」

ミカサ「ど、どうして?」

マルコ「今、下手にジャンを突っつくと、藪蛇だと思うよ」

ミカサ「そうなの? では私はどうしたら……」

アルミン「何もしなくてもいいけど、今後はちょっと気をつけよう。お互いにそういうつもりがないのだとしても、周りはそうは見ない場合もあるんだからね」

ミカサ「分かった」

私はエレンに深々と謝った。

ミカサ「エレン、ごめんなさい。私のせいで、面倒なことになって」

エレン「いや、オレの方こそ悪かった。でも、あんま気にするなよ。オレ達は普通にしてりゃいいんだ」

ミカサ「うん………」

エレンは本当に普通だった。私も普通にしなければ。

マルコ「ジャンは僕が回収してくるね」

マルコがフォローしてくれるようだ。助かる。

ミカサ「マルコ、その……きっぱり否定しておいて欲しい!」

マルコ「分かってる。大丈夫だから」

マルコがジャンを追いかけてくれた。これで大丈夫だと思うが。

ん? ちょっと待って。

ミカサ「アルミン、ひとつ聞いてもいいだろうか?」

アルミン「何?」

ミカサ「ジャンは何故、逃げてしまったのだろうか?」

アルミン「え?」

ミカサ「その………自意識過剰だと言われてしまうかもしれないけれど、ジャンは、もしかして」

アルミン「………………その質問を答える権利を僕は持ってないからノーコメントで」

ミカサ「エレン」

エレン「知らねえよ。自分で聞けば?」

ミカサ「……………」

ど、どうしたらいいんだろう。

折角、いい感じで友人が増えて嬉しくて、舞い上がってたけれど。

ジャンはまさか、私に好意を寄せてくれているのだろうか?

だから、私がエレンと仲良さげにしているのを見てショックだった、とか。

もし本当にそうだったとしたらどうしよう。

ミカサ「やっぱり、確認してくる」

アルミン「ミカサ?」

ミカサ「曖昧なままではダメ。ちゃんと、向き合わないと」

私はエレンとアルミンをそこに放置してマルコを追いかけた。

すると、その先に落ち込んでいるジャンとマルコが話し合っている声が聞こえた。

喧騒の中の端っこで二人は木陰で休んでいる。

マルコ「だから誤解だって言ってたよ。感覚って人それぞれじゃないかな?」

ジャン「そうだとしても、やっぱりあの二人は何か怪しい。何かあるんじゃねえのかな」

マルコ「単に気の合う異性の友人の一人なんじゃない?」

ジャン「そうかな。そうだと思いたいが……」

私は堪らず、その場に乱入した。

ミカサ「ジャン!」

マルコ「ミカサ……」

ジャン「!」

ミカサ「その、誤解なので。エレンとはそういう関係ではないので。勘違いしないで欲しい」

ジャン「そ、そうか……」

ミカサ「その……自意識過剰だと思われるかもしれないけど、聞きたいことがある」

ジャン「何?」

ミカサ「ジャンは、私の事を、異性として好きなのだろうか?」

ジャン「!!!!!!」

マルコの顔が強ばった。ジャンよりも。

ジャンの顔は、青い。あれ? 何か予想していた反応と違う。

もし本当にそうであれば、ここは普通、赤面する筈……。

ジャン「ば、馬鹿! そ、そういうんじゃねえよ! ただ、オレは、自分より先にカップルが出来ちまったら、先を越されたみてえで悔しいなって思っただけだよ!!!」

ミカサ「!」

なるほど。ああ、そういう事だったのか。

ミカサ「ああ……そうね。それもそうね」

ああ、恥ずかしい。今まで散々、男に言い寄られてたからと言って早ガッテンが過ぎた。

ミカサ「私の勘違いね。良かった。ごめんなさい。ドジで」

ジャン「全く、本当だよ。ミカサはドジだな。あはははは……」

ミカサ「では、ジャンは私の事は友人として好きだろうか?」

ジャン「お、おう! それは当然だろ。いい友達だと思ってるぞ」

ああ、良かった。これで彼との友情を続けられる。

ミカサ「私も、ジャンとはいい友達でいられそうな気がする」

と、手を差し出して、握手を求めた。

すると、ジャンも嬉しそうに握り返してくれた。

ジャン「これからもよろしくな。ミカサ」

ミカサ「うん。宜しくお願いする」

という訳で、ジャンの誤解も解けたし、友情を再確認できたし、雨降って地固まるとはこのことだと思った。

そして三人でエレンとアルミンのところに戻ると、今度は何故かエレンが不機嫌そうにしていた。

エレン「…………遅かったな」

ミカサ「少し話し込んでしまった。ごめんなさい。遅くなって」

ジャン「携帯のアドレスとか交換してたんだよ。ミカサとはまだ交換してなかったからな」

エレン「へー」

エレンの目つきが半分になった。何か、様子が変だ。

ミカサ「エレン?」

エレン「いや、別に。いいんじゃねえの? 友達が増えるのは」

ミカサ「エレンもジャンと交換しておけば……」

エレン「オレはいらねえ。オレはまだ、ジャンと友達だとは思ってねえもん」

ジャン「気が合うな。オレもだ」

マルコ「ああもう、二人共。その遠まわしな愛情表現はやめなって」

マルコは苦笑いをしている。全くその通りである。

エレン「その代わりマルコのアドレスは知りたいかな。マルコは友達だと思ってる」

マルコ「ええ?」

アルミン「あ、それは僕も欲しい。交換しよ」

マルコ「いいの? ジャンの分は……まあ、僕から教えておくよ」

ジャン「余計な事すんなって!」

ミカサ「ジャン、ここはマルコに任せるべき」

ジャン「……はい」

よし。素直で宜しい。

という訳で少々遅くはなったが、私達の班はお互いに連絡先を交換し合った。

そして残りの自由時間をどうするか話し合った。

アルミン「もうそこまで遠いところにはいけないと思うよ。戻る時間を考えると」

マルコ「そうだね。近くだったら……カドリードミニオンくらいかな?」

カドリードミニオンというのは、動物と触れ合える動物園のような場所である。

ジャン「それか馬に乗るくらいか? やれることと言ったら」

ミカサ「私は時間の余裕を見てもう戻り始めても構わないのだけども」

集合に遅れると周りに迷惑をかける。

もし時間が押して帰りが遅くなったら怖い。

エレン「でも折角だしさ。最後、馬に乗ってみねえか?」

アルミン「そうだね。なかなか馬に乗れる機会は少ないし……そっちに行こうか」

ミカサ「時間は大丈夫だろうか」

マルコ「ゆっくりしなければ大丈夫だよ」

という訳で私達は馬に乗れるその場所へ移動する事になった。

するとその先でもサシャとクリスタと会った。

クリスタはユミルと二人乗りしている。

ユミル「おーお前らもこっちにきたのか。結局、コースかぶってるな」

ライナー「なかなか楽しいぞ。馬に乗るのは初めてだが」

クリスタ「私は慣れてるけどね。親戚の家が牧場だから」

サシャ「楽しいですね~おっとっと。揺れるのに慣れるのが大変ですが」

と、サシャ達の班はもうすっかり馬に慣れている。

インストラクターの方に説明を受けて、早速馬に乗れる事になった。

ミカサ「眺めが全然違う…」

初めて体験する目線の高さに驚いた。

ちょっと不安定だけれども、でもとっても楽しい。

エレン「おー……こりゃいいなあ」

エレンがこっちに近寄ってきた。馬同士が仲良さげだ。

ジャン「あ、てめえらまた……」

エレン「オレ達じゃねえよ。馬同士が仲いいんだよ」

ミカサ「馬が勝手に仲良くやっているので」

ジャン「馬にも相性があるんかな」

エレン「あるんじゃねえの? 人間にもあるんだしな」

と、たわいもない話をしながらポクポクと昼間の草原を歩かせて貰った。

風が、とても気持ちいい。

雄大な自然の山々の中を、馬と共に歩いていく。

まるで異世界にきたような気分なのに、どこか懐かしい気持ちにもなる。

きっと、ご先祖様は馬に乗って生活していただろうから、その血が覚えているのかもしれない。

アルミン「おっとと……あっという間だけどもう時間だよ」

エレン「えーもうかよ」

アルミン「仕方ないよ。また今度、ゆっくりここに来よう」

エレン「そうだな。また馬に乗りに来たいぜ」

短い時間だったけれど私達の研修旅行はこうして終わった。

いろんな事があったけれど、無事に終わってほっとした。

自宅に帰り、夜になると、ジャンやマルコ、アルミンからメールが着ていた。

それを確認してたどたどしく返信すると、その日の夜は布団に入った。

思っていたよりも疲れていたのか、布団に入るとすぐに眠くなってきた。

うとうとしていると、何故かエレンが私の部屋にやってきた。

エレン「ミカサ? まだ起きてるか?」

ミカサ「もう寝るところ。何…?」

むにゃむにゃと返すと、エレンは「あ、眠いんならいいや」と気になる事を言って帰ろうとする。

ミカサ「待って。中途半端に起こさないで。用があるなら言って」

エレン「いや、大した用じゃなかったんだが」

ミカサ「だから、何?」

エレン「……………ジャンの事だけど」

ジャン? ジャンがどうかしたのだろうか。

エレン「あいつを演劇部に誘うのだけはやめてくれよ」

ミカサ「え?」

エレン「あいつが入ってきたら仲良くやれる自信はねえ」

ミカサ「それはジャンが決めることなので。私が口出す話ではないけれども」

エレン「いや、まあ、それならいいけどさ。なんかあいつ、入ってきそうで怖いんだよな」

ミカサ「もしそうなったとしても、それを止める権利は誰にもない」

エレン「…………まあ、それもそうか。悪い。らしくねえな。おやすみ」

と、言ってエレンは部屋を出て行った。

私も眠気が取れなかったのでそのまますやすやと眠ったのだった。





数日後、遅れてジャンが演劇部に入ってきたので、部の先輩達は新入部員が増えた! と、とても喜んでいたようだった。

ジャン、ヘタレジャン! の回でした。部員増えました。
エレンとミカサは無自覚にイチャコラしているようですが、
本人達は自覚がないようなので許してあげてください。ではまた。

口内炎が出来てて食べ物が美味しくない…。
でもあんまり更新の間を開け過ぎたくないので、展開に安価使わせてくれ。

4月26日。土曜日。球技大会の日がやってきた。

この日は晴天となり、男子はサッカーが行われる事になったようだ。

女子はバレーなので体育館だ。1年と2年、組別対抗の試合でトーナメント戦である。

3年生は大学受験の準備があるので球技大会には出ないそうだ。

私達1組は抽選の結果、3試合目からの出場となったが、あっと言う間に一試合目を勝ち抜いた。

何故なら私とユミル、そしてサシャとアニの四名のコンビネーションがうまく噛み合ったからである。

ユミルはブロック。サシャとアニはレシーブがうまいようで、相手に点数を殆ど与える隙もなく勝つことが出来た(ちなみに私はサーブとアタックが得意である)。

そのおかげであっと言う間に決勝まで勝ち上がり、なんと2年生のチームも接戦の末、負かした。

通常の球技大会は2年生が優勝する事が多いそうなのだが、今年は番狂わせだったらしい。結果、女子は私達1組が優勝を果たした。

ユミル「すげえな、ミカサ。お前のサーブ、滅茶苦茶はやかった」

クリスタ「うん! サーブだけで半分位点数取ってたよね」

そう。私のサーブの番になると殆どの女子がレシーブ出来ずに零していたのだ。

ミカサ「ふふふ……サーブとアタックは得意なので」

サシャ「凄かったですねえ。敵に回したくないですよ~」

アニ「同感。味方でいてくれて良かったと本当に思った」

ユミル「だな」

ミーナ「あんな高速サーブ、レシーブしたくないよね」

と、参加した皆が口々に言っている。

クリスタ「あ、でも予定より早く試合終わったおかげで男子の方も見学出来るんじゃない?」

ユミル「ん? ああ……なるほど。そうか。それでか」

ミーナ「それでって?」

ユミル「男子の方も見たいから試合、急いだんだろ? ミカサ」

どうやらバレてしまったようだ。

ミカサ「うん。男子の様子を見学したかった……ので」

アニ「男子はまだやってるみたいだよ。サッカーだし。時間かかりそうだね」

ミーナ「コートを片付けてから見に行こうか!」

と、言う訳で体育館の後片付けが終わった後、私達女子一同の殆どが男子のサッカーを見学しに行ったのだった。




さてさて。試合はどうなっているだろうか。

サッカーコートの外には先に試合が終わった女子達が歓声をあげて応援していた。

その女子の間に入り、コートを覗いてみる。

1組男子はベルトルトがゴールキーパーをしているようだ。

190センチを超えた長身のゴールキーパーなのでリーチも長い。

1組はDF(ディフェンダー)は3人、MF(ミッドフィルダー)は5人、FW(フォワード)は2人のシステムで試合をしているようだ。

それ以外の詳しいポジションはちょっと良く分からないが、エレンは前衛左のFW、右にはライナーが入っているようだ。

真ん中あたりにはジャンとマルコとコニー、その後ろにミリウスとナックがいる。後ろの方にはアルミン、トーマス、サムエルがいる。

あ、アルミンがフランツと交代したようだ。息を切らせてコートから出ている。

スコアを見てみると2試合目の後半戦に入っていた。2-1で現在負けているようだ。

ユミル「どうした男子ー! 女子は優勝してきたぞー!」

と、ユミルが発破をかけると男子は「まじで?!」という顔をした。

クリスタ「うん。優勝決めてきたよ。男子もガンバ!」

その瞬間、ライナーの動きが俄然、良くなった。うおおおおと、叫び声をあげながらヘディングでゴールに押し込んだ。

2-2。同点である。気合で追いついたようだ。

アニ「残り時間は5分くらいか」

ミカサ「同点に追いついたのだからきっと大丈夫」

本来のサッカーの試合は前半・後半45分ずつで1試合90分だが、この球技大会は試合数が多い為、短縮で前半・後半15分ずつの計30分のミニゲーム形式の試合になっていた。

なので本来のサッカーの試合の戦略より短期決戦となる為、戦い方が変わってくる。

トーナメント形式なので、4試合、または5試合勝てば優勝だ。

優勝するチームは30分×4、または5試合分動く事になる。

つまり勝ち抜くには体力の配分も重要になってくるのだ。

コートは2面ずつ使っているようだ。上に勝ち上がれば勝ち上がる程、休憩無しで次の試合に挑む事になるだろう。

サシャ「時間ないですよー! 急いでー!」

引き分けにもつれ込んだら当然、PK合戦である。

PKになれば運の要素も絡んでくる。果たしてどうなることか…。



ピー!



しかし無情にも笛がなった。同点だ。PKにもつれ込んだ。

PK戦は確か、5本中先に3本先取した方が勝ちだ。つまり最短で3-0で勝つ場合もある。

先攻後攻を決めて後攻になったようだ。相手チームのシュートは……よし!

ベルトルトが死守した。さて、1組は誰が蹴るのだろうか?

ライナー「俺からいこう」

ライナーが最初に蹴るようだ。果たして、成功するか…。

(*次の方のレスの秒数が偶数なら成功。奇数なら失敗です)

ピー!

ライナーが合図と共に左に蹴った。

相手のGKは反対側に山を張っていたようで反応が遅れてボールがゴール端に決まる!

クリスタ「やったあああ! まずは先取点!」

ユミル「よし! いいぞライナー!」

ライナーがこっちに向かってVサインをしている。嬉しそうだ。

次は相手の攻撃だ。うっ……ベルトルトも意表をつかれて反対側にゴールを決められてしまった。

ミカサ「1対1ね」

ユミル「ベルトルさん、長身の利を生かせてないぞ」

運動神経は良いようだが、どうやら心理戦に弱いようだ。

彼は逆をつかれると動揺が顔に出てしまうタイプのようだ。

2回目の後攻。次はジャンが蹴るようだ。

ジャンがこっちを一度見た。手を振ってあげると、物凄く嬉しそうに笑った。

ユミル「ん? なんだ。ジャンに手を振ってやったのか」

ミカサ「ジャンが決めれば有利になるので」

先に点をリード出来る方がいいに決まってる。

さて、ジャンが右側にボールを蹴った。結果は果たして…。

(*次の方のレスの秒数が偶数なら成功。奇数なら失敗です)

ジャンのシュートも決まった! よし!

これで2対1である。次、ベルトルトがセーブすれば俄然有利になるが…。

ユミル「あっちゃー…ベルトルさん何やってんだよ!」

そう思った途端、追いつかれてしまった。2対2だ。

そして次のマルコのシュートが……外れた。

これで現在の戦況はこんな感じだ。

2組 × ○ ○

1組 ○ ○ ×

この場合は先攻が取ったとしても、後攻で取り返せば続けられるが、もし後攻でダメだった場合は負ける。

ユミル「あ、GK交代するみたいだぞ。ライナーに変わった」

アニ「ベルトルトは性格的にGKに向いてないのかもね」

サシャ「体格はGK向きなんですけどねえ」

ミカサ「仕方がない。誰にでも向き不向きはある」

ベルトルトはプレッシャーに弱いタイプのようだ。体は大きいけれどGK向きではないようだ。

その点、ライナーはベルトルトに次いで体が大きい上に気も強い。いい選択かもしれない。

相手チームのシュートが……よし! 防いだ!

ミカサ「ここで決めれば1組の勝ちね」

クリスタ「誰が行くんだろ……」

アニ「あ、エレンがいくみたいだよ」

じゃんけんで決まったようだ。エレン、頑張って…。

エレン「いくぞ!」

笛の合図と共にエレンが走り出した。結果は……!

(*次の方のレスの秒数が偶数なら成功。奇数なら失敗です)

ミカサ「やった!」

エレンの放ったシュートはゴール端に突き刺さった!

これで1組の勝利である。3回戦に駒を進められる!

エレンがこっちを見た。Vサインをしてみせるので、私も同じくVサインを返してあげた。

エレンはクラスメイトに頭を叩かれて「よくやった!」と褒められていた。

ライナー「本番に強い奴だな!」

エレン「たまたまだって!」

アルミン「でもよく決めたね! エレン、すごいや」

エレン「へへへ……ま、格好悪いところは見せられんだろ」

周りをよく見ると2年女子もエレンに声援を送っている。

2年女子1「あの子可愛いね! 名前なんていうんだろ!」

2年女子2「エレンとか言ってたよ。結構イケてるよね」

2年女子3「私は最初にゴールを決めた子も結構好きかも」

と、1年生男子を値踏みしているようだ。

おお、ゴールを決めるとモテるようだ。なるほど。

エレンもやはり男の子である。女子の前では格好つけたいのだろう。

アルミン「あのね、1試合目と2試合目の試合内容を見て思ったんだけど……」

アルミンが1組男子を集めて何やら作戦会議を始めたようだ。

その様子をこっそり覗き見る私とユミルだった。

地面に何やらポジション変更の図を書いているようだ。

アルミン「今のライナーの動きを見て思ったんだけど、ライナーはGKに向いてると思う」

ベルトルト「うん。それは僕も思ったよ。出来るなら3試合目もお願いしたい」

ライナー「いいのか? 俺で」

アルミン「うん。ベルトルトは反応はいいけれど押し込まれると弱いみたいだ。多分、性格的にはDFの方が向いてると思う」

ベルトルト「僕自身、そう思うよ」

マルコ「でもそうなると右のFWは誰が代わりに入るんだい?」

アルミン「僕は右のFWにはコニーが一番向いてると思うんだ」

コニー「オレか?」

アルミン「うん。コニーはMFなのに前線よりに勝手に動いてたし、あんまり複雑な動きを要求されると頭混乱するんでしょ?」

コニー「バレたか」

アルミン「だから、来たボールをゴールに押し込む単純なポジションの方がいいと思う」

ジャン「だったらコニーの場所は誰が入る?」

アルミン「それも踏まえて、僕が考える新システムはこうだ」


FW エレン コニー

MF ミリウス ジャン ナック

DF サムエル ベルトルト マルコ トーマス フランツ

GK ライナー


マルコ「DFの方が人数多いね」

ジャン「これじゃ攻めきれないだろ。せめてMFは4人必要じゃないのか?」

アルミン「いや、僕が言いたいのはMFの司令塔をジャン、DFの司令塔をマルコに任せたいと言う事なんだ」

マルコ「司令塔を二つ立てるっていうのかい?」

アルミン「それに近い感じだね。だからマルコにはMFとDFの橋渡し的なポジションに入って欲しいんだ」

ジャン「ああ、それを考えるとオレが受け取るのが妥当か」

アルミン「二人の呼吸は傍で見ててもぴったりなのが分かるからね」

マルコ「責任重大だなあ」

ジャン「ま、でもやるしかねえだろ」

エレン「アルミンは出ないのか?」

アルミン「僕はちょっと、ずっと試合に出続けるのは無理かな……」

ライナー「まあ、アルミンは監督ポジションで皆を客観的に見てくれる位置でも構わんさ」

フランツ「そうだね。3試合目はこの新しいシステムでやってみようか」

男子一同「おー!」

何やら新しい作戦が決まったようである。コートが空き次第、次の3試合目に入る。

私は3試合目が始まる前にアルミンに何故このシステムに変更したのかを聞いてみた。

アルミン「ええっとね。この布陣は皆の性格を踏まえた上で考えたんだ」

ミカサ「性格?」

アルミン「ベルトルトってさ。身体能力は高いのにプレッシャーに弱い部分がある。でも、周りに味方が大勢いるって思えば普段よりリラックスしてプレイ出来ると思ったんだ」

そして3試合目が始まった。次は5組と対戦するようだ。

ユミル「……ああ、本当だ。さっきと動きが全然違うな」

確かに。GKの時は緊張していたのが傍から見ても丸分かりだったのに、DFに入った途端、ベルトルトの動きが俄然良くなっていた。

アルミン「でしょ? 周りに味方が大勢いるってだけで精神的に安定してプレイが伸び伸びし始めた。ほら、これでカウンターを決められるよ」

ベルトルトの蹴りはGKの時より凄まじく伸びた。

……ので、あっと言う間にコニーのいる付近までボールが届いたのである。

相手チームは突然のカウンター攻撃に慌てている。

しかも、そこに滑り込んだコニーがゴールを決めた。開始3分でなんと先取点である。

ユミル「よしゃあああ! いいぞベルトルト!!!」

1組女子はベルトルトに声援をあげた。本人はちょっと照れくさそうにしている。

ミカサ「なるほど。身体の大きさだけではポジションは決まらないのね」

アルミン「むしろ身体的なものより性格の方を重視した方が噛み合うと思うんだ。サッカーはチームプレイのスポーツだからね」

敵の反撃をジャンとマルコが防いでいる。中央のフィールドは彼ら二人の領域ようだ。

アルミン「よしよし。攻撃と防御のリズムが噛み合ってきた」

アルミンはすっかり監督のポジションで小さくガッツポーズをしている。

アルミン「ベルトルトは後ろにライナーがいるっていう安心感があるから、プレッシャーを感じる度合いが少なくなったと思うよ」

ユミル「そうか。基本的にあいつ、ライナーの腰巾着なところあるからな。なるほど」

アルミン「でもベルトルトの身体能力は高いから、カウンターが出来る。敵から見たらこれほど厄介な布陣はないと思うよ」

ふむふむ。なるほど。アルミンの考えたこの布陣はベルトルトの良さを引き立てる為の物だったのか。

アルミン「しかも、カウンターを決めた後はエレンとコニーの両翼がいる。あの二人の思い切りの良さは皆も知ってるよね」

今度はエレンの方がシュートを放った。おお、あっと言う間に2点目だ。

ミカサ「これは思っていた以上にうまくいってるのでは?」

2試合目の時と様子が違った。ポジションが変わるだけでこうも試合内容が変わるのだろうか。

私の感想はそのまま男子も思ったようで、ジャンやマルコも嬉しそうにしている。

ジャン「この新システム、案外いいな!」

マルコ「ああ。ベルトルトのカウンターがこうもうまく機能するなんて思わなかった」

敵はベルトルトを恐れ始めている。GKの時より驚異に感じているようだ。

その分、ライナーがちょっと暇そうにしている。

ライナー「GKの時にそれをやってくれよ、ベルトルト」

ベルトルト「うっ……面目ない」

ライナー「まあ、最後の砦って言う意味でのポジションで責任重大なのは分かるがな」

しかしそれを見抜いて采配したアルミンもまた凄いと私は思った。

ユミル「だがそうなると、敵はベルトルさんとの勝負を避けてくるんじゃねえか?」

アルミン「だろうね。トーマスとフランツの右翼側にボールが集中し始めたね」

ミカサ「あ、でもマルコがすかさず、フォローに入った」

アルミン「3対1だとさすがに相手も引くよね。でも、そこに……」

そう、ジャンが加勢してボールを取り戻したのである。

ミカサ「これは、攻めても攻めても攻めきれない…」

アルミン「そう。守備の人数を増やせたのもベルトルトのカウンターのおかげ。そうなるとこっちには余裕が生まれる」

3回目のシュートだ。今度はコニーが蹴ったが、惜しくもGKに防がれてしまった。

アルミン「ベルトルトを突破するか、トーマス、フランツ側を突破するか。相手も迷ってるうちに、今度はマルコが奪いに来る。いいリズムが出来てきたよ」

クリスタ「すごいね。アルミン! 皆、すごく動きが良くなってるよ!」

アルミン「噛み合ってきた、というべきかな。うん。最初の布陣を修正して正解だった」

そんなこんなで3点目が入った。3-0で前半戦を終えると、男子全員、アルミンにハイタッチをしてきた。

エレン「アルミン作戦、すげえうまくいってるぞ! やったな!」

ベルトルト「アルミン、ありがとう。おかげですごくやりやすくなったよ」

アルミン「へへへ……そう言ってもらえて嬉しいよ」

フランツ「…………あの」

その時、フランツが何やら深刻な顔で挙手した。

フランツ「ごめん。さっきの接触の時に足を捻ったかも…」

アルミン「え?!」

トーマス「ああ。敵も右翼側をこじ開けようと必死だったからな」

ベルトルト「うっ……それって僕との勝負を避けたからかな」

エレン「馬鹿! それは仕方ねえだろ! ベルトルトのせいじゃねえよ!」

ライナー「どれ、足を見せてみろ」

捻挫だろうか。歩けないほどではないようだが、これ以上のプレイは念の為にやめた方が良さそうだった。

エレン「仕方ねえな。フランツのポジションに別の奴入れるしかねえな」

ジャン「アルミン、出れるか?」

アルミン「ぼ、僕でいいの?」

マルコ「この新しい布陣を考えたのはアルミンだからね。アルミンも出た方がいいよ」

アルミン「でも………」

エレン「アルミンがいいに決まってるだろ! 体力きついなら、途中で交代してもいいからさ!」

ライナー「そうだな。途中交代を挟みながらでもアルミンには出てもらいたいな」

アルミン「皆……」

ミカサ「アルミンも出るべきだと思う。皆もそれを望んでいる」

アルミンは迷っていたようだが、フランツのポジションに出ることを決意したようだった。

そして後半戦が始まった。敵はやはりアルミンの位置を狙ってきた。

アルミンも善戦はしているが、やはり体格では及ばない。あっと言う間に抜かれてボールをゴール付近に押し込まれそうになる。

アルミン「くそっ!」

歯がゆそうだ。しかしそこには、トーマスとマルコが下がってフォローに入る。

敵からボールを奪い返して一度体勢を整えるようだ。

アルミン「ごめん、マルコ、トーマス」

マルコ「謝るのは無しだよ。まずは落ち着こうか」

マルコは慣れたように周りを見渡してベルトルトにボールを渡す。

ベルトルトの蹴りの飛距離は軽く前線に届くので、あっと言う間に反撃出来る。

しかし今度は敵も読んでいたのか、エレンの前に3人程集まっていた。

アルミン「あっ……」

その時、アルミンは何かに気づいたのか、ベルトルトに耳打ちしていた。

ベルトルト「え? 本当に?」

アルミン「間違いないと思う。読まれてるよ」

ベルトルト「ど、どうしたらいいかな?」

アルミン「いっそ、エレンとコニーの間に落としてもいいと思う。はっきりしたパスをしてはダメだ」

どうやら敵はベルトルトの癖を分析して、エレンとコニー、どちらにパスを回すかを先読みし始めたようだ。

だったらはっきりしたパスを出すのはまずい。

でも真ん中に落としたらそこに滑り込む選手はいないのでは…。

ボールが奪われてまた、敵が攻め込んできた。しかしそこをやはりベルトルトが防ぐ。

ユミル「ベルトルさん、GKの時よりよほど守護神してるじゃねえか」

全くである。DFなのに守護神という、奇妙な状態だが。

しかしベルトルトは自分のポジションを得てから本当に動きがいい。

アルミンの言うように、人には性格に合ったポジションという物があるようだ。

ベルトルトの蹴りは前線中央あたりに飛んだ。そこには誰もいないと思われたが…。

クリスタ「あ、あれは……!」

滑り込んだのは、ジャンだった。

MFである筈の彼がFWのエリアまで移動してシュートを放ったのである。

敵も意外な顔をしている。まさかジャンが攻撃側に回るとは思わなかったのだろう。

不意打ちのシュートが見事、決まった。この時点で4-0だ。

もはや勝負は決したと言えるだろう。

1組は追撃の手を許さぬまま3回戦も突破。次はいよいよ決勝戦である。

ユミル「ベルトルさん、すげえな。もはや守護神じゃねえか」

エレン「ははは! だよな! GKじゃないのにベルトルトが守護神だったな!」

皆にからかわれてベルトルトも照れくさそうにしている。

ライナー「全くだ。GKが一番暇だったんだが」

マルコ「まあまあ。暇なのはいい事だよ」

アルミン「にしてもまさか、敵がベルトルトの癖を見抜いてくるなんて思わなかったな」

ベルトルト「そんなにわかるもんかな? 蹴る方向って」

アルミン「どうだろうね。でも、敵の動きは明らかにベルトルトの蹴る方向を読んだ上でエレンの傍に集まった。やはり何処かで読まれてたとしか思えないよ」

ジャン「もしそうだとしたら、ちょっと厄介だな。オレもそう何度も前線に上がれないぞ」

マルコ「そうだね。となると、ベルトルトのカウンター頼みの作戦も危ないって事になるね」

と、何やらまたいろいろ作戦会議が始まったようである。

アルミン「うん。ベルトルトのカウンターを軸にもう一本、攻撃のパターンを作る必要性が出てきたね」

エレン「つーと、普通のパスルートも同時に考えておくのか?」

アルミン「うん。ベルトルトからエレン、コニー以外のルートも考えよう」

ライナー「それだったら、一度、俺にボールを戻してくれないか?」

と、その時ライナーの方から提案をした。

ライナー「蹴る飛距離で言えば俺もベルトルト程ではないが、そこそこ飛ばせる。ジャンのいる辺りまでなら一気に蹴れると思うが」

アルミン「なるほど。ベルトルトルートからライナールートの二択だね。いいと思うよ」

マルコ「つまり攻撃の軸を両翼だけじゃなくて3本柱にするって事だね」

ジャン「オレの仕事が増えるじゃねえか……」

サムエル「いい事じゃないか。女子に見られてるんだぞ?」

コニー「そうだぞ。モテるかもしれないぞ」

ジャン「そ、そうかな……?」

皆、おだてるのがうまいなあと思った。

マルコ「何よりあの子の見てる前で、サボるなんて真似出来ないだろ」

ジャン「マルコ、それ以上は言うなよ」

マルコの耳打ちの内容は詳しくは聞こえなかったが、何を囁いたのだろうか?

ジャン「まあいい。しょうがねえ。やるしかねえか」

決勝戦を前に皆で円陣を組んでいるようだ。

アルミン「いよいよ、決勝戦だ。このまま女子と一緒に優勝しよう!」

男子一同「おー!」

GKって心臓強くないと務まらないよね。と思い直し、
ベルトルト→ライナーにバトンタッチさせた。ごめんね。
ほら、ベルトルさんってライナーっていう存在がいてこそだからさ。
きっとDFの方が生き生きプレイ出来そうだと思ったんだ…。

あと、読み直したら安価、コニーはDF指定だったね。
見間違えて最初、MFに入れてた。わざとではない。許して…。

今回はここまで。続きはまた今度。

気合を入れ直していよいよ決勝戦である。

ギャラリーは女子だけではなく、敗退した男子も大勢いる。

決勝戦は2年1組と1年1組の偶然にも、1組同士の対決となった。

2年1組女子1「サッカー部の意地を見せなさいよ!」

2年1組女子2「そうだぞー! 1年に負けるな!」

2年1組男子1「おう! 1年には負けられん!」

どうやら決勝の相手の組には現役のサッカー部員がいるようだ。

こちらは運動神経のいいメンバーは揃ってはいるが、サッカー部員はいなかった筈。

その点が不利ではあると思ったが、アルミン立案の新システムがうまく機能している今、勝てない相手ではないと思う。

そしてホイッスルが鳴り、試合が始まった。

敵のチームは素早く中に切り込んで、アルミンのいる側を狙っている。

敵はやはりアルミン狙いのようだ。

アルミン「くそっ…!」

アルミンは運動が苦手だと言っていた。だからだろうか、動きが固い。

まるでGKをしていた時のベルトルトのようだと思った。

アルミンのいる右翼側が突破されたが、そこはライナーが防いでカウンターを放つ。

ジャンのいる付近までボールが戻って試合展開は拮抗を保っている。

こんなことを言うのも何だけども、アルミンはDFに向いてないのだろうか?

ミカサ「ユミル、アルミンの動きが硬いように思えるのだけども」

ユミル「ああ、まあそうだな。でも元々アルミンって確か、運動神経は良くないって自分で言ってなかったか?」

ミカサ「そうだとしても、ちょっと硬すぎるような気がする。これはベルトルトの時と同じく、ポジションが噛み合っていないのでは?」

ユミル「んー……もしそうだとしても私達が口出す事じゃねえしなあ」

と、ユミルがあくまで観戦者の立場を崩さない。

クリスタ「アルミンがDFに向いてないとしたら、他の何処がいいのかな?」

ユミル「うーん。やっぱり司令塔のポジションじゃねえの? ジャンかマルコのいる辺りか?」

サシャ「でも、あの辺は最も運動量が激しいポジションですよ? 体力ないと出来ないと思いますよ」

ユミル「だよな。まあ、アルミンのいる場所はどうしても敵に狙われちまいそうだな」

ユミルの言う通り、やはり敵はアルミンのいる辺りにボールを集めてくる。

アルミンの場所を突破されると、すぐライナーの所までいってしまう。

今のところ全部、ライナーがセーブしているからいいものの、このままでは先取点を奪われかねない。

ベルトルトがアルミンのいる方に寄っている。心配なのだろう。

しかしその時、アルミンが叫んだ。

アルミン「ダメだベルトルト!」

ベルトルト「え?」


ドン!


その時、敵はパスを切り替えてベルトルトの領域を突破した。

ベルトルト「しまった!」

なるほど。敵の真の狙いはこっちか。

アルミンを狙い続け、味方のフォローの動きに合わせてベルトルトの横を抜く。

さすが現役のサッカー部のいるチームだ。作戦がうまい。

ライナーの守るゴールは危うく奪われそうになったが、そこをジャンピングパンチでセーブした。

ベルトルト「あ、危なかった……」

ライナー「ベルトルト、アルミンが心配なのは分かるが持ち場を必要以上に離れるな」

ベルトルト「う、うん……」

ライナー「敵はサッカー部員のいるチームだ。今まで以上に厄介な相手だぞ」

ベルトルトは自分のミスを肝に銘じてそれ以後は持ち場を離れる事はなかった。

だがこのままではアルミンが弱点として狙われ続けてしまう。

ライナーとベルトルトのカウンターも3試合目の時程はうまく機能せず、前半戦は0-0で折り返してしまった。

アルミン「ふー……相手もさすがに研究してきたね」

アルミンは水を補給しながら何やら考えているようだ。

エレン「何か、3試合目の時ほどうまくリズムに乗れないよな。何でだろ?」

コニー「だよなあ。オレ達二人の攻撃、読まれてるのかな?」

ジャン「まあ、攻撃パターンが分かればカウンターもそこまで怖くはねえよ」

マルコ「うん。3試合目のカウンターは、ベルトルトの蹴りの飛距離を甘く見てた敵の油断があったからこそ、だもんね」

アルミン「まあそうなるね。1、2試合目の時のベルトルトの動きと、全然違ったから、敵も動揺したんだと思うよ」

ベルトルト「じゃあ、今はもう、僕の存在を恐れてないって事か」

アルミン「加えて敵もDFの数を大目にしてる。カウンターに対抗して持久戦で挑むつもりなんだよ」

ライナー「つまり同じような布陣で戦い合ってるから、ジリ貧になってるのか」

アルミン「そうだね。ここはまた、ちょっとポジションを変更する必要が出てきたかも」

アルミンは木の枝で地面に文字を書きながら作戦を練り直しているようだ。

アルミン「あのね、ちょっと奇策に近い布陣なんだけどさ」

エレン「ん? 奇策? ってことはあんまり見ない陣形って事か?」

アルミン「うん。ちょっと変な陣形になるけど、こういうのはどうだろう?」



FW エレン ジャン コニー

MF ミリウス ナック マルコ トーマス サムエル

DF ベルトルト ライナー

GK アルミン


エレン「ええええ?! DFが二人だけ?! ちょっと無謀じゃないか?!」

マルコ「さっきとは打って変わって攻撃的な布陣だね」

ジャン「つか、アルミン、GK出来るのか?」

アルミン「あんまり自信はないけど、まあ所謂『背水の陣』戦法かな」

マルコ「これって僕のポジションを抜かれたらやばいよね」

アルミン「責任重大だよ。マルコの場所が実質、守備の扇の要になるからね」

ジャン「なるほど。これだけ前線よりに人がいれば、突破するのもいけるんじゃないか?」

マルコ「いや、でももしカウンター食らったらベルトルトとライナーだけになっちゃうよ」

ベルトルト「……………でも、これならこっちのカウンターを打つルートがかなり増やせるよ」

アルミン「ベルトルトの言う通りだ。これなら、ベルトルトがカウンターを蹴るルートが全部で7つになるんだよ」

ライナー「ん? 8つじゃないのか?」

アルミン「マルコはMFと言っても、実質DF寄りに守って貰うから。マルコだけはMF&DFみたいな位置になるよ」

ジャン「あーなんだっけ。そういうポジションって別に言い方があったような」

アルミン「うん。CB(センターバック)またはCH(センターハーフ)だったかな?」

マルコ「なるほど。だったら、DFは2.5人って考えればいいのかな」

アルミン「そんな感じだね。後あれだよ。僕がGKをする事によって、皆に危機感が生まれるでしょ?」

エレン「うっ……まさか、そういうプレッシャーのかけ方するのか?」

アルミン「吉と出るか凶と出るか分かんないけどね。でも、これで一度やってみない?」

ライナー「わかった。アルミン作戦2ってところだな。いくぞ、皆!」

男子一同「おー!」

そしてアルミン作戦2による後半戦が始まった。

敵は案の定、カウンターを決めて中に切り込んできた。

マルコのいる場所が抜かれた。焦る表情が分かる。

やはりDFの層が薄過ぎる。と、皆が焦ったように思えた、その時、

ライナー「うおおおおおおお!」

ライナーが突進するようにボールを奪い返した。

そしてベルトルトにパスしてカウンターが決まる!

ライナーの動きがいい。何故だろう?

ライナー「いやーGKで休ませて貰った分、働かないとな」

そうか。GKはボールが来ない間は休憩できるという利点がある。

瞬発力と心臓の強さが必要なポジションではあるが、GKには試合中に休めるのだ。

ミカサ「あ、なるほど。だからアルミンがGKになったのね」

ユミル「ん? どういう意味だ?」

ミカサ「アルミンは体力がない。持久力がないからずっと走りっぱなしは出来ない。となると、走らなくてもいいポジションなら、アルミンにも出来る」

ユミル「でもボールが来たらあの手足のリーチじゃ防ぐのきついんじゃないか?」

ミカサ「そこは休憩していたライナーがフォロー出来る。現にDFとしてのライナーは二人分くらい走っている」

アルミン作戦2は、アルミン作戦の進化バージョンだが、案外うまく機能しているようだ。

何故なら、ベルトルト、ライナーの両翼のDFを敵チームはまだ突破出来ていないからだ。

ベルトルト「ライナーが横にいると思うと心強いよ」

ライナー「お前は本当に小心者だな」

ベルトルト「うん。自分でもそう思う。けど、アルミンがこの布陣に切り替えたのはきっと、僕ら二人のコンビネーションを見越してだと思うよ」

ライナー「ああ、だろうな!」

そして二人の蹴りの飛距離は、どちらも長い。

つまり敵は攻めてはまた戻らされ、攻めてはまた戻らされて徐々に体力を奪われていくのだ。

2年1組男子1「くそ! DFの数が減ったのに何で攻めにくいんだ?!」

2年1組男子2「あの長身二人組の息が合ってるからだろ! 名采配だな!」

しかも攻撃側には多くの人数がいる。敵のDFの数も多いが、そこはジャンがうまくパスを回してミリウス、ナック、と戻してはまたエレンに渡してじっくりかき回す。

そしてエレンがジャンに戻して、ジャンがゴールを狙う!

2年1組GK「させるか!」

ジャンピングパンチでボールが零れた。

しかしその隙を、エレンは見逃さなかった。

ヘディングシュートが決まって、後半戦、遂に先取点を取ったのである!

女子が、一気に湧き上がった。エレンが大注目されている。

外野女子「格好いいー! キャー!」

ジャン「くそ、おいしいところを持って行かれた!」

エレン「こぼしたお前が悪いんだろ! 一発で決めろよ!」

ジャン「ああ?! ここまでこれたのは、オレの戦略があってこそだろうが!」

何故かジャンとエレンがゴールを決めたのに喧嘩を始めてしまった…。

サムエル「おいおい、試合中だぞ! 喧嘩すんなって!」

ミリウス「喧嘩は後でしろ!」

エレン「ちっ……」

ジャン「くそ……FWはいいよな! ゴールを決めて目立ててよ!」

エレン「ああ?! 今はお前もFWだろうが! 自分で決めればいいじゃねえか!」

サムエル「蒸し返すなエレン! 全く……この二人を並べるのはまずいんじゃないか?」

ミリウス「一回、タイム取らせて貰おうぜ」

そんな訳で急遽、タイムが取られてしまった。

エレンとジャンはお互いに顔を背けている。これでは二人でFWをするのは難しそうだ。

アルミン「弱ったね。FW同士で喧嘩になっちゃうとは…」

エレン「オレは別に悪くねえだろ。自分の仕事をしたまでだ」

ジャン「こいつは、つなげたパスに対する感謝の念が足りねえよ!」

エレン「オレは別に感謝してねえとは言ってねえよ! 皆のパスがあってこそのFWだと思ってるよ!」

コニー「まあ、ジャンはヘタレだからFW向いてねえのかもな~」

ジャン「ああ?! なんつったコニー!」

アルミン「コニーまで余計な事言わないで…」

アルミンが頭を抱えているようだ。無理もない。

アルミン「仕方ない。ポジション、修正しようか」

渋々、現在のアルミン作戦2を、3に変更するようだ。


FW エレン コニー

MF ミリウス ナック ジャン トーマス

DF ベルトルト マルコ ライナー

GK アルミン


アルミン「攻撃力は下がるけど、ジャンはMFに戻そう。これから攻守のバランスも取れていいと思う」

マルコ「そうだね。1点先制したし、今度は無理に点を取りに行かなくてもいいからこれで十分だね」

アルミン「1点を守りきろう。敵は全力で残り時間、攻めてくるよ」

アルミンの予想通り、この後の敵の布陣は変わった。

残り時間で同点に追いつくべく、攻撃側に人数を割いてきたのだ。

しかしそこはDFにマルコが加わった布陣は強かった。

DFに余裕が生まれているおかげで、更に守備力が強化されて、敵も中に攻め込めない。

アルミンはGKであるが殆ど活躍の場はなかった。

ミカサ「もうこのまま決まるかしら」

ユミル「いや、油断は禁物だぜ。サッカーは残り5分からでも逆転がある」

ユミルは真剣に観戦しているようだ。案外、スポーツ観戦が好きなのだろうか?

クリスタ「このまま逃げ切って……!」

クリスタも祈っている。女子一同も固唾を飲んで見守っている。

しかし残り5分を切ったその時、ユミルの言った通り、ゲームが動いた。

ベルトルトの動きが急に悪くなったのだ。横を抜かれて、遂にアルミンが1対1の対決になる。

敵のシュートがアルミンの頭上を飛び越えて行きそうになる。

ミカサ「!」

しかしその刹那、アルミンはジャンプしてヘディングでセーブをしてボールが前面に零れた。

ミカサ「まずい!」

敵のフォローが早い。体勢の崩れたアルミンでは間に合わない!

蹴りと共にボールが放たれた。かなりの至近距離だが……


ドゴオオオオ!


アルミンが顔面でセーブした。ボールは跳ね返り、ライナーの方へ転がる。

笛が鳴った。審判がタイムをかけたのだ。

審判「大丈夫ですか? 怪我は?」

アルミンは鼻血を出していた。当然だ。至近距離のシュートを顔面でセーブしたのだから。

ボタボタと血が落ちていく様に女子もざわついている。

アルミン「大丈夫です。大した事ありません」

審判「それを判断するのは君じゃない。立てるかい?」

アルミン「はい……(フラッ)」

審判「ダメだね。担架を用意。保健室で治療を受けてきて」

アルミン「………分かりました」

アルミンは青褪めた表情で担架に運ばれる事になった。

エレン「ひでえラフプレーだなおい」

心配でゴール付近まで戻ってきたエレンが毒ついていた。

2年男子1「わざとじゃねえよ。つか、顔で受け止めるとか。素人か」

エレン「ああ?! 素人に決まってるだろ。何言ってやがる!」

エレンが2年の男子の胸ぐらを掴んでしまった。彼の方はバツの悪そうに視線を逸している。

2年男子1「普通はああいう時は避けるだろ! 何で自分から当たりに行ってんだよ!」

エレン「それはGKだからだろ! アルミンはそういう奴なんだよ!」

ああ、エレンの頭に血がのぼってる。まずい。

審判「やめなさい! 警告出しますよ!」

エレン「ちっ……」

エレンは舌打ちしてようやく離れた。怒りを溜め込んでいるようだ。

体を張ってセーブしたアルミンに尊敬の念と、心配の念が入り混じっているように見えた。

男子の何名かは一度、コートの外に出てアルミンの代わりを誰にするか話し合っていた。

ライナー「アルミンが抜けた以上、また布陣を変えないといけないな」

ベルトルト「………………ライナー」

ライナー「ん?」

ベルトルト「僕、GKに戻ってもいいかな?」

その時、何かを決意したようにベルトルトが自分からそう言い出した。

アルミンの体を張ったセーブに何か思うところが出てきたのだろうか。

ベルトルト「僕のせいだ。僕が最後、抜かれたからアルミンは無理をしたんだ」

ライナー「そんな事は考えなくていい。体力が消耗してきてたんだろ。お前は身体能力は高いが、持久力はそこまである方じゃないからな」

ベルトルト「うん……少しだけ疲れが出てきたんだ。でもまさか、抜かれるとは思ってなかった」

ライナー「敵もサッカー部員がいるだけあるってことだ。体力配分は向こうの方が上なんだろ」

マルコ「まあ、後半のこの時間が一番、辛い時間帯だよね」

ジャン「野球で言うところの9回裏スリーボールツーストライクツーアウトってところだな」

コニー「どういう意味だ?」

エレン「正念場って事だろ」

コニー「なら最初からそう言えよ!」

ジャン「いや、分かれよ。コニー野球部入ってんだろ」

コニー「はあ? その時間は一番、楽しい時間だろ! 辛いとか意味分かんねえよ」

ジャン「お前ポジションどこだ」

コニー「サード! 今は7番打者だけど将来は4番になるぜ!」

ジャン「悪かった。オレが今言ったのは、投手の立場だよ」

マルコ「つまり向こうにとっては、打者で、僕らは投手って事だね」

ジャン「ああ。オレはそう言いたかったんだよ」

コニー「ああ、そっか。オレ、打者のつもりで言っちまった」

コニーはちょっと勘違いをしていたようである。

エレン「まあいい。ここを逃げ切れれば勝ちなんだ。ベルトルトがGKに入るなら布陣をまた変更するぞ」

ライナー「ではこんな風に変えるのはどうだろうか?」


FW エレン

MF ミリウス ナック サムエル トーマス 

DF ライナー マルコ ジャン ダズ コニー 

GK ベルトルト


ライナー「ここはもう、逃げ切る事を前提にFWは一人でいいと思うんだ」

ジャン「コニーをDFまで下げるのか」

ライナー「ああ。コニーは複雑な指示をされると混乱するから、MFには向かないしな」

コニー「今度は守る方だな。いいぜ!」

エレン「オレがFWに残るのか」

マルコ「エレンはFWとして一番、活躍しているからね。ここは残って欲しい」

エレン「了解した」

ライナー「残り時間、逃げ切るぞ。もし同点に追いつかれたとしても、陣形は変えない」

エレン「ああ。もし追いつかれたらベルトルトのカウンターでオレがゴールを決めてやる」

ライナー「よし、じゃあ、いくぞ!」

男子一同「おおお!」

さあさあ。正念場だ。後半戦。残り5分を切ったところから再開である。

ホイッスルの合図と共にボールが動き出した。

ライナーの蹴りがマルコ、ジャン、サムエル、トーマス、と右翼側に繋がる。

敵は残り時間、全力で攻めてくるが、こっちもそれ相応に防御している。

特にコニーがうまい具合に敵のボールを奪い返している。

マルコ「コニーは単純な作業をやらせたらピカイチだね」

コニー「まあな!」

要は攻めるか、守るか。どちらかしか出来ないのだろう。

MFの場合は攻めるか守るか、その判断を瞬時にケースバイケースで判断しないといけない為、頭を使うポジションだ。

なので最初にMFをコニーにやらせてしまったのはミス采配だったと言えるだろう。

2年男子1「くそ……しぶといなこいつら」

2年男子は1年の動きが鈍っていない事に驚いているようだ。

ジャン「ははは! 元野球少年を舐めんなよ! 走り込みなら散々やらされてるんだよ!」

ジャンは後半になってもまだ動けるようだ。スタミナが違う。

ボールを奪い返してまたパスを繋いでいる。あと3分程度か。残り時間が刻々と過ぎていく。

だが、1組にはアルミンの代わりに入ったダズという穴があった。

ダズにパスが渡った瞬間を狙われてパスカットされる。

ジャン「げっ……!」

しかもゴール付近だった。これはまずい。

一気に空気が変わって敵がシュート体勢に入った。

ここで決められたらきっとPK戦にもつれ込む。

残り1分。時計が刻む途中で、そのシュートは放たれた。

ベルトルトが飛ぶ。果たして、結果は……。

(*次の方のレスの秒数が偶数ならベルトルトのセーブ成功。奇数なら失敗です)

その時、運命の女神は悪戯をしたようだ。

ベルトルトの指先は確かにボールを弾いた。そしてゴールを守ったのだ。

しかしその直後、ボールは無情にもゴールの枠の部分に当たり、つまりビリヤードの球当ての要領に近い動きで、ゴールの中にボールが吸い込まれてしまった。

運のない。まさに運のないとはこの事だ。

ベルトルトのセーブ失敗に、空気が変わる。

敵チームは俄然、勢いに乗って全員の顔色が変わったのだ。

追いつかれる側というのは、プレッシャーだ。

残り時間は、1分を切っている。

ライナーがベルトルトに耳打ちをしていた。

恐らくここで蹴るベルトルトのカウンターが勝負の行方を決する事になるだろう。

ベルトルトは辛そうな表情ではあったが、奥歯を噛み締めて大きく蹴った。

一人だけ前線に残っていたエレンがそのボールに追いつき、今回最大のカウンターが始まった。

エレン「うおおおおおおおお!」

3対1だ。エレンは一人、抜き、また一人抜き、また一人抜いた。

終盤に見せる神がかった集中力に外野も息を飲んで試合を見守る。

エレンのシュートが、放たれた。

恐らくここが最後の攻撃だろう。残り時間は、10秒もない。

果たして結果は……。

(*次の方のレスの秒数が偶数ならエレンのシュートが成功。奇数なら失敗です)

ボールは、ゴールの左端の枠に当たってしまった。

ただしこちらはベルトルトの時とは逆に大きく弾かれ、シュートが失敗してしまう。

その直後、ホイッスルが鳴った。後半戦が終了したのだ。

PK合戦にもつれ込んだ。1組は今度は先攻になったようだ。

ライナー「誰から行く?」

責任重大なこの場面、誰から行くのだろうか…。

ライナー「…………おい、皆、顔が暗いぞ。気持ちを切り替えろよ」

エレン「…………」

ライナー「特にエレン、ベルトルト。お前ら二人、暗過ぎる。女子の前でそんな顔してどうするんだ」

ライナーの発破に二人はようやく顔をあげた。

私は遠くからエレンに「頑張れ」と声をかけるしかない。

エレンはまだ顔色が優れなかったが、頷いてくれた。

ライナー「よし、ここは俺からいくぞ。まずは先取点を取ってくる」

ピー!

ホイッスルが鳴った。ライナーが、位置について走り込む。

ボールは右端に飛んだ。結果は果たして…。

(*次の方のレスの秒数が偶数ならライナーのシュートが成功。奇数なら失敗です)

ミカサ「よし!」

ユミル「よしゃあああ!」

クリスタ「決まったああああ!」

アニ「まずは先取点だね」

ライナーのキックはうまい具合にゴールに突き刺さった。

これで空気が変わったかもしれない。次はベルトルトのセーブだが…。

ベルトルト「ライナー、やはり僕はGKに向いてないかもしれない」

ライナー「おいおい」

ベルトルト「この大事な場面、防げる自信がない。キーパーを替わって貰えないだろうか」

ライナー「それは構わないが、お前、本当にそれでいいのか?」

そう言って、ライナーは私達女子の方を見ている。

ふと、ライナーの視線の先を追うと、誰かを見ているような気がした。

その正確な位置は分からないが、ライナーはベルトルトを説得しているようだ。

ライナー「格好いいところ、見せたくないのか? あいつに」

ベルトルト「うぐっ………」

ライナー「まあ、譲ってくれるっていうなら、俺もクリスタにいいところを見せられるからいいけどな」

ベルトルト「……………」

ベルトルトは何やら迷っている様子だ。と、そこに治療を終えたアルミンが帰ってきた。

アルミン「ベルトルト! 頑張れ!」

アルミンは鼻の部分に一応、包帯とガーゼをしていた。

ミカサ「アルミン、まさか骨折?」

アルミン「いやいや、そこまではないよ。ただ、鼻血が止まるまでは止血してるだけ」

と、アルミンが言ったので一応ほっとした。

アルミン「ベルトルトは体格で言えば一番、GKに向いているんだ! 自信を持って!」

ユミル「そうだ! アルミンの言う通りだ! リーチの長いお前がゴールを守れ!」

ベルトルトは外野の声援に驚いた表情を見せている。

ライナー「俺はどっちでもいいぞ。だが、今回だけは自分で決めろ」

ベルトルト「ライナー………」

ライナー「こんなに盛り上がってる場面で、GKをやれる機会なんてそうはないと思うがな」

周りを見ると恐らく2年1年、殆どの女子と、試合に敗れた男子が見学している。

こんなに大勢の人間がグラウンドに集まる機会はそう多くはないだろう。

ベルトルトは、暫く悩んでいたようだが、気持ちを固めたようだ。

ベルトルト「わかった。やる。やらせてくれ」

ライナー「ああ、ベストを尽くそう」

コニー「そうだな! ベストを尽くそうぜ!」

ジャン「頼んだぞ」

マルコ「大丈夫だよ! ベルトルト!」

サムエル「気持ちを楽にな!」

トーマス「手足の長さを活かせば大丈夫!」

ダズ「が、頑張ってくれ……」

ナック「自分に負けるなよ」

ミリウス「お前なら出来る!」

エレン「ベルトルト、頼む」

皆の声援に見守られてベルトルトが再びGKのグローブを身につけた。

さあ、敵の攻撃をセーブ出来るか否か。

勝利の女神はどちらに微笑みかけるのか。

ピー!

シュートが、放たれた。ベルトルトのセーブは果たして…。

(*次の方のレスの秒数が偶数ならベルトルトのセーブが成功。奇数なら失敗です)

ミカサ「おおお!」

ユミル「よしゃああああ!」

クリスタ「防いだあああ!」

ベルトルトが見事にボールを弾いた。迷いなくボールを防いだのだ。

これには敵チームも少し気落ちしたようだ。よしよしよし。このまま勝って欲しい。

ライナー「次は誰が行く?」

コニー「オレ、やりたい!」

ライナー「よし、じゃあコニーに打たせよう。決めろよ!」

コニー「おう!」

1組の女子は「コニーガンバレー!」と声援を送る。

ピー!

コニーのシュートが放たれた。ボールは……。

(*次の方のレスの秒数が偶数ならコニーのシュートが成功。奇数なら失敗です)

ミカサ「おお?!」

ユミル「左端いった!」

クリスタ「キーパーの手が届かない!」

ごおおおおおおる! コニーのシュートはギリギリ入った!

コニー「よしゃああああああ!」

勢いがついてきた。このままいけば勝てる! きっと勝てる!

次はまたベルトルトのセーブだ。今のベルトルトならきっとセーブ出来る。

アニ「頑張れ」

アニが小さく呟いた。多分、ベルトルトの耳には届かない声だけれども。

敵チームがシュートを放った! その結果は…。

(*次の方のレスの秒数が偶数ならベルトルトのセーブが成功。奇数なら失敗です)

はっ

キーパーやってるライナーはオリバー・カーンで再生された。

>>305
実は内心、私もそう思って書いてました。似てる…。
41秒なので失敗ルートで続き書きますね。残念!

ミカサ「ああ……」

ユミル「おう……」

アニ「セーブ失敗か…」

ため息が外野から溢れてしまった。いや、ここはため息をついてはいけない。

口にチャックをして見守る。ベルトルトは非常に悔しそうだった。

ベルトルト「……ここでセーブ出来れば、有利なまま進められたのに」

ライナー「まだ大丈夫だ。逆転された訳じゃない」

ベルトルト「ごめん……」

ライナー「大分、疲れが見え始めているな。集中力が切れかかってるなら、GKを交代してもいいぞ」

ベルトルト「でも………」

ライナー「格好いいところは見せられただろ? 最後の美味しいところは俺に譲ってくれないのか?」

ベルトルト「………ありがとう。ライナー」

どうやら次のGKはライナーに替わりそうだ。

現在の勝負の行方はこんな感じだ。

1年1組 ○ ○ 

2年1組 × ○

ジャン「次はオレがいってもいいか?」

ライナー「ああ、いいぞ。決めてきてくれ」

ピー!

笛が鳴った。ジャンが走り込んで、蹴る。

右端にボールが飛んだ。その行方は…。

(*次の方のレスの秒数が偶数ならジャンのシュートが成功。奇数なら失敗です)

ミカサ「おお!」

ジャンのシュートが一瞬弾かれてダメかと思いきや、ゴールの枠に当たって中に入った。

ラッキーゴール再びである。今度はこっち側が幸運に恵まれた!

ジャン「よしゃああああああ!」

女子は大盛況である。これで次、セーブを決めたら私達1年1組の優勝になる!

ライナー「じゃあ、いってくる」

美味しいところでライナーの登場だ。ここでセーブを決めたら明日から彼はヒーローだろう。

敵チームも緊張の面持ちだが、ここで登場したのはサッカー部員の彼だ。

アルミンにうっかり顔面シュートを放ってしまった彼は外野のアルミンを一度見ると軽く頭を下げた。

あれはやはり事故だったのだろう。決してわざとではなかったようだ。

ピー!

シュートが、放たれた。運命が決まる一瞬だ。

勝利の女神は、どちらに微笑みを浮かべるのか…。

(*次の方のレスの秒数が偶数ならライナーのセーブが成功。奇数なら失敗です)

ライナー「ふん!!!」

正面に飛んできたボールをライナーは気合と共に防いだ。

それと同時に優勝が決まり、その瞬間、なんと1年1組は男女でダブル優勝を果たすという快挙を遂げたのだった。

男子は全員、ライナーの元に走って駆け寄り、大いに勝利を喜んだ。

ジャン「やったなライナー! さすがだぜ!」

マルコ「凄いよライナー! よく止めた!」

グラウンドは拍手喝采だった。女子の中には泣いている者もいる。

クリスタ「凄かったあ。ライナー格好良かったよ~」

ユミル「いや、ベルトルさんも頑張った。皆、よくやったよ」

アニ「おめでとう」

ミカサ「しかしよく止めた。左右にボールが飛ぶのが多かったから、釣られるかと思ったのに」

敵味方合わせて殆どのキッカーが左右に振り分けて蹴っていたので、キーパーはどちらかを先読みして飛んでセーブする事が多い。

ボールが飛んでから反応しても間に合わないからだ。

しかしライナーは左右に飛ばずに来たボールを素直にそのまま受け止めた。

その度胸の良さは、賞賛に値する。

ライナー「ああ、まあ……そろそろ正面にも来るかなと、何となく思ったんだよ」

ライナーは照れくさそうに笑っていた。いや、そう思ってもなかなかそれに賭けるのは難しいことだと思う。

ベルトルトは感動で泣きべそをかいている。そんな彼をライナーは「泣くな泣くな」と宥めていた。

エwwwレwwwンwww
あんまし活躍してないwwww

2年1組の対戦相手達は全員、悔しそうにしていた。

サッカー部員の彼はそれでも、ライナーに握手を求めた。

読み合いで負けた事に対して思うところもあるだろうが、それでも勝ったのはこちらだ。

負けた側は悔しさを飲み込んで勝った方に祝福を述べたようだ。

そしてサッカーコートの整備が終わった後、体育館に全員、再び集まって表彰式が行われ、この日の球技大会は幕を下ろしたのだった。

球技大会が終わった後の放課後は、それはもう、賑やかなものだった。

何故なら今回活躍したライナー、ベルトルト、ジャン、コニー、そしてエレンは女子の注目を浴びて早速、声をかけられていたからだ。

おまけにライナーとベルトルトはサッカー部からも勧誘されているようだ。

私の方も何故か今頃になってバレー部からお声がかかってしまったが、既に演劇部に加入している旨を伝えると物凄い勢いでがっかりされてしまった。

バレー部員「あああ何で入学式のすぐ後に声かけなかったんだろ!」

と、すっかり落ち込んでいる。まあ、私のスピーチがアレだったせいで声をかけずらかったのだろう。

私の代わりにユミルとサシャ、あとアニもバレー部から勧誘されていたが、ユミルは「クリスタ次第」の一点張りだし、サシャは「お腹がすくので無理です」とよく分からない拒否をしているし、アニは「実家が道場経営してるんで」と家の事情を理由にして断っていた。

これだけの逸材が揃っているのに、現在、まともな運動部に所属しているのはどうやらコニーだけらしい。

運動部の先輩達が「才能の無駄遣いのクラスだ!」とすっかり嘆いていた。

ミカサ「ライナーは運動部には入らないの?」

ライナー「うーん。まだ迷ってるんだよな。ラグビーとバスケとバレーとサッカーと野球部から声がかかっているんで、返事を保留にして貰っている」

ミカサ「そ、それはなかなか選択肢が多いようね」

ライナー「ははは……まあ、体がでかいのと、運動神経がいいのが取り柄だからな」

ベルトルト「いや、それに加えて勝負強さもだよ」

その時、ベルトルトが会話に自ら加わってきた。

ライナー「お前も確かバレー部から誘いが来てただろう?」

ベルトルト「うん…でも今回のサッカーでも思ったよ。僕はライナーとコンビが組める部に入りたい」

ライナー「おいおい。お前も相変わらずだな。まあ、だったらもう少し時間をくれ。じっくり考えて決めたいんだ」

と、ライナーとベルトルトは教室の席に座って話し合っている。

二人はいずれ、どこかの運動部に所属するつもりなのだろう。だとすれば才能の無駄遣いにならずに済みそうだ。

ユミル「いやだから、私はまだ運動部に入るとは言ってないですって!」

その時、少し離れた席ではまだバレー部の先輩が居残ってユミルを勧誘していた。

バレー部員「いや! せめて一人くらいは勧誘しておかないと! こっちも困るのよ!」

ユミル「そんな無茶な……助けてくれ、クリスタ」

クリスタ「そんなに熱心に勧誘してくれるなら、バレー部でもいいけど」

ユミル「バレー部に入ったら突き指とかする事もあるんだぞ? クリスタの手先を怪我させたくない」

クリスタ「うーん。そうか。突き指はちょっと嫌かな」

ユミル「そうそう。もっと安全で楽しめるスポーツにしよう。後、変な男に注目されないやつがいい」

ユミルの条件は非常に難しいように思われた。

スポーツには怪我はつきものだ。怪我をしにくいのと言えば水泳くらいしか思いつかない。

しかし水泳は水着になるし、男子に見られたら、注目されるに決まっている。

その二つの条件を満たすスポーツなんてあるのだろうか?

水泳部員「安全性で言ったら水泳部が一番だよ! 怪我しにくいし!」

ユミル「でも溺れたら危ないじゃないですか」

水泳部員「うっ……そ、それはそうだけども、でも、他のスポーツよりは安全だからさ!」

バレー部員「いや、バレーだってちゃんと練習すれば大丈夫だから! 何より楽しいし!」

バスケ部員「それを言ったらバスケも楽しいよ!」

テニス部員「いや、テニスだって楽しいし!」

ああ、もう、第二次勧誘合戦が始まってしまった。

演劇部に所属していて良かったと思う瞬間である。

私の場合は既に演劇部に所属していると伝えたら、渋々諦めてくれたのだ。

勿論、掛け持ちでもいいとは言われたが、いきなり掛け持ちで部活を両立させられる程、私は器用でもないので断ったのだ。

ユミル「ううーん」

クリスタ「ユミル、ここは何処かに入らないと帰して貰えそうにない空気だよ?」

ユミル「クリスタは何処に入りたいんだ?」

クリスタ「私はユミルがいれば何処でもいいよ」

ユミル「それは私も同じなんだが」

クリスタ「じゃあ、私が個人的に、ユミルにやって欲しい部活でもいいの?」

ユミル「ああ、まあ……それでもいいけど」

クリスタ「じゃあねーユミルには>>318に入ってほしいな!」

(*ユミルに似合いそうな部活をあげてください)

(*ちなみにここでユミルが入る部にクリスタも入ります)

(*するとクリスタに釣られて、ライナー、ベルトルトも一緒に入ります(笑))

弓道

ユミル「弓道部? また意外なところをついたな」

クリスタ「そう? あのしゅぱーんと矢を放つところ格好いいじゃない!」

バレー部員「えええええ?! 弓道部?! あの何とも言えない部活がいいの?」

クリスタ「むっ…何とも言えない部とは失礼ですよ」

バレー部員「あ、ごめんごめん。でも、ユミルはその、長身を生かした部に入るほうがいいと思うなー」

テニス部員「そうそう。体格を生かした部の方が活躍出来ると思うなー」

ユミル「いや、今回の球技大会で思ったが、体格とスポーツは必ずしも一致しないってわかったからな。ベルトルさんがいい例だろ」

クリスタ「そうだったね。ベルトルトはライナーが傍にいないと力を発揮出来なかったもんね」

ユミル「そうそう。私の場合は団体競技はそこまで好きって訳じゃないし……マイペースにやれる部の方がいいかもしれん」

クリスタ「じゃあ弓道部に見学しに行ってみる?」

ユミル「おう、いいぞ。一緒に行くか」

クリスタ「将来的にはね、流鏑馬(やぶさめ)が出来るようになって欲しいんだ」

ユミル「あの馬に乗りながら矢を放つあれか?(てくてく)」

クリスタ「そうそう…! 絶対格好いいよ! (てくてく)」

教室をフェードアウトしていく二人に、先輩達は嘆き悲しむ。

先輩達「「「「ああああああ……(がくり)」」」」

勧誘失敗のようである。残念である。

ライナー(ガタッ)

ベルトルト「ライナー?」

ライナー「俺も弓道部を見学してくるぞ」

ベルトルト「ええええ? まさか……ライナー」

ライナー「ベルトルト、すまない! 俺はこう見えても健全な高校生なんだ…!」

ベルトルト「うん……分かったよ。ライナーに任せるよ」

ん? 何故かライナーがクリスタとユミルを追いかけて行った。ついでにベルトルトも。

どうやらあの四人は弓道部に入るようだ。球技系の先輩達は全員、可哀想な顔をしている。

バレー部員「ミカサ! こうなったら掛け持ちでいいから是非うちに!」

テニス部員「お願いします!」

バスケ部員「お願いします!」

水泳部員「お願いします!」

陸上部員「お願いします!」

運動部の人って何でこう強引なんだろう? この押しの強さが返って逆効果なのに。

ミカサ「何度も言いますが、掛け持ちは無理です」

バレー部員「試合の時だけの助っ人でもダメ?」

ミカサ「それでは他の部員に対して心証が悪くなるでしょう?」

バスケ部員「おお、他の部員の事もちゃんと気遣えるとは、なんていい子なの! 是非とも欲しい!」

ミカサ「今頃言われても遅いです」

そろそろお昼ご飯を食べたい時間だ。あまり時間を取られると午後の部活動に差し障る。

ミカサ「では、先輩達、さようなら」

私は強引に先輩達から離れてエレンのところに向かった。

エレンはエレンで運動部から声をかけられたり、女子に囲まれたりしているようだ。

でもその顔色はあまり良くない。元気がない様子だ。

疲れているのだろう。あれだけ動き回った後なのだ。早くご飯を食べたい筈。

ミカサ「エレン、お昼を食べよう」

アルミンは午後の授業がない時は先に帰る。なので土曜日は私とエレンは二人でお昼を食べる。

エレン「お、おう。もうそんな時間か」

エレンも先輩達の輪から抜け出して教室を出た。

エレン「どこで食べる? 今日は中庭も空いてるんじゃねえか?」

部活に入っていない子達は先に帰宅している為、確かに校内の生徒の数は少し減っている。

ミカサ「天気もいいし中庭で食べよう」

という訳で中庭の東屋を確保してエレンとお昼をとる事にした。

エレン「はあああああ」

弁当を広げるなり大きなため息をついたエレンだった。

ミカサ「どうしたの?」

エレン「いや……今日の球技大会、活躍出来なかったなあって」

ミカサ「そんなことない。エレンは頑張った」

エレン「でもよー1番、決めたい時にすかしたんだぞ。あの場面は、シュート決めたかった…」

恐らく後半戦の最後のシュートの事を言ってるのだろう。

エレン「PK戦にもつれ込む前にあそこで逆転してりゃあな…くそ、オレもジャンの事言えたもんじゃねえな」

そう言えばシュートを決めなかったジャンに対して文句を言ってたような。

ミカサ「エレン、それは結果論。エレンは十分頑張った」

エレン「そうだけど……やっぱりあそこで決めた方が格好良かっただろ?」

ミカサ「ううん。エレンはずっと格好良かった。今日の試合、皆、格好良かったと思う」

私は素直な感想を述べた。出場している男子全員、汗を流して格好良かった。

ミカサ「前にも言ったと思うけど、結果が伴わない事もある。それよりも、それに向かって頑張っている姿が好き」

エレン「そうだろうけど、やっぱり男は結果を出したい生き物なんだよ!」

と、エレンはブチブチ言っている。男の子はいろいろ面倒臭い生き物だ。

エレン「はー……特に前線に出る奴は結果を出してこそだしな。皆のパスを最後に決められないとFWの意味はねえし」

ミカサ「それは分かるけども」

エレン「だろ? 皆に支えて貰ってる立場なんだから、結果は出してえよ」

エレンは本当に優しい人だと思う。こういうところは本当に尊敬出来る。

ミカサ「エレンはやはり、表側の人間なのね」

エレン「ん?」

ミカサ「皆の光。その前向きな明るさは、皆を明るく照らしていると思う」

私がそう、素直な思いを告げるとちょっとだけ悲しそうな顔になった。

エレン「いや……それを言ったら、多分、ライナーの方がそういう奴だよ。本当はオレもPKに出るべきだったんだろうけど、すぐに気持ち切り替えられなくて、言い出せなかった。情けねえけど」

ああ、だからエレンはすぐに立候補しなかったのか。

エレン「だからコニーやジャンが決めてくれて助かったと思ったよ。もし、後半までもつれ込んでオレの番まで回ってきてたら、決められてたかどうかは分からねえ」

ミカサ「そう……」

エレン「ライナーにはかなわねえな。やっぱりあいつはすげえ奴だよ」

エレンはライナーの兄貴っぷりに尊敬しているようだ。

確かにあの場面、エレンがシュートを外してベルトルトが気弱になっている場面で、空気を変えたのはライナーだった。

皆の頼れる兄貴分なのは間違いない。級長に選ばれたのも妥当だと思った。

エレン「ライナーはまだ部活入ってないとか言ってたが、勿体無いよな。バスケとかバレーとか似合いそうだがサッカーもいけそうだし」

ミカサ「ライナーは恐らく弓道部に入ると思う」

エレン「はあ?! 何でそこで弓道?」

ミカサ「クリスタが弓道部に興味を示しているので、後ろを追っていったのを先程見た」

エレン「えええ……まさか、クリスタの後を追うつもりかよライナー…」

先程までの尊敬の念が少し消えてしまったようだ。可哀想に。

エレン「女の尻追いかけてる場合かよ……ライナーなら運動系なら何でもいけるだろ」

ミカサ「弓道も一応、スポーツに入るけれども」

エレン「いや、それは分かってるんだが、もっと合うところあるだろって話だよ」

ミカサ「好きな人を追いかけて同じ部に入るのはそんなに悪い事だろうか?」

エレン「…………いや、まあ、個人の考えはそれぞれだからオレは反対はしねえけどさあ」

と、エレンはまたブツブツ言いながらお弁当のおかずを啄いている。

エレン「ライナーはそっか。クリスタが好きっぽいなとは思ってたが、本気なんだな」

ミカサ「あの態度を見ればほぼ確定だと思う」

エレン「まあ報われるといいけどな。クリスタは競争率高そうだけど」

ミカサ「エレンも先程、2年女子に囲まれてたけれど……」

私がそう突っつくと、エレンはごっくんと、喉を詰まらせかけた。

エレン(ゲホゲホ)

ミカサ「?」

エレン「あーいや、その………まあ、なんかいろいろ声はかけられたよ。うん」

ミカサ「告白されたの?」

エレン「いや、それはねえけど、何か勝手にアドレス渡された。メル友からお願いとか何とか」

ミカサ「それは良かった。エレンはモテている」

エレン「別に嬉しくはねえよ。相手のこと殆ど知らんのだし」

ミカサ「嘘。本当は嬉しいくせに」

エレン「お前な……オレがモテても何とも思わないのか?」

ミカサ「? モテるのはいい事では?」

私が素直に賞賛するとエレンは何故かがっくり肩を落とした。

エレン「そこは嘘でもいいからヤキモチ焼く素振りを見せろよー」

ミカサ「え? 何故?」

エレン「その方が女の子らしいだろ?」

ミカサ「そうかしら? 女らしくなくてごめんなさい」

エレン「いや、素直に謝る必要はないんだが……」

と、エレンは私の方をじーっと見つめてきた。

ミカサ「何?」

エレン「いや、ミカサって美人だよな。オレよりも、モテるんじゃねえの?」

ギックー!

忌まわしき過去の記憶が蘇り、ついつい青褪めた表情になってしまった。

ミカサ「大丈夫。私はモテない。中身が残念なので」

エレン「いや、そんな事はないと思うが……あいつはミカサ狙いっぽいし」

ミカサ「え?」

エレン「いや、何でもねえよ。ま、もし将来彼氏が出来たらちゃんと紹介しろよ。見定めてやるから」

ミカサ「そう? エレンの審査を通さないといけないの?」

エレン「だって義理の義理の兄弟になるかもしれんのだし……って、気が早いのかもしれんが」

とエレンはちょっとだけ照れたように言った。

エレン「……悪い。ちょっとお節介が過ぎたか。やっぱり無しで。ちゃんと好きになった奴なら認めてやるよ」

ミカサ「そう……」

そんな風にたわいもない話をしていたら、そこに、

ジャン「お前らここに居たのか」

と、何故か途中でジャンが合流してきたのだった。

そして私の隣に入って「ここいいか?」と一言。

エレン「ダメだ。お前はこっちの席だ」

と、何故か自分の横を指定するエレンだった。

なんだ。エレンはちゃんとジャンのこと、好きなのね。素直ではないようだ。

ジャン「ちっ……小舅か。てめーは」

ジャンの言うことはあながち間違いではない。

ジャン「いやーにしても参った参った。サッカー部の先輩達にさっきまで熱心に誘われててよ」

エレン「ああ、だろうな。オレもさっきまでそうだった」

ジャン「でもオレは演劇部に入ってるって言ったらすげー残念そうにされてさー」

エレン「オレもそうだよ」

ジャン「掛け持ちでもいいからさー入ってくれないかって言われてどうするか迷ってたら遅くなったんだよな」

エレン「オレは迷わなかったけどな」

ジャン「お前はいちいち突っかかるなよ。オレはミカサに話してるんだよ」

エレン「ミカサも同じような目に遭ってるんだからだいたい想像はついてんだよ」

ジャン「そりゃそうだが、報告するのはオレの勝手だろ」

ミカサ「二人共、飯時に喧嘩しない」

ああもう。何でこの二人は近づくといつもこうなるのか。

ミカサ「ご飯は楽しく食べたいので、喧嘩はしないで欲しい」

ジャン「すまん……」

ジャンの方は反省してくれたようだが、エレンはツンとしている。

エレン「はあ。全く……どいつもこいつも青春しやがって」

ミカサ「?」

エレン「何でもねえ。ちょっと愚痴を言っただけだ」

言ってる意味がさっぱり分からなかった。しかしジャンには意味が通じたようで、

ジャン「は! エレンはまだまだお子様なんだろ」

エレン「ああ?」

ジャン「初恋もまだとかいうタイプなんじゃねえの? そうなんだろ?」

エレン「んなわけあるか。初恋くらいなら既にしてるに決まってるだろ」

ミカサ「え? そうなの?」

それは初耳だった。

ジャン「ほーあれか? 幼稚園の先生とかか?」

ミカサ「そうなの? エレン」

エレン「いや、違うけど」

ジャン「じゃあいつだよ。小学校か? 中学か?」

エレン「………………………小学生だ」

これは意外。エレンは既に初恋を済ませていたのだ。

ジャン「ふーん。ま、オレと似たようなもんか」

ミカサ「いいな。私はまだ、初恋もない」

ジャン「え……」

エレン「え……」

ミカサ「恋をしたことがないので、恋愛感情が分からない。とても羨ましい」

と、私が言うと二人はちょっとだけ無言になった。

ミカサ「? 何か変な事を言っただろうか?」

エレン「いや……そっか。まあでも、これからだろ、きっと」

ジャン「ああ、きっとそうだ。運命の相手がきっと現れる」

ミカサ「そうだといいのだけれども」

ジャン「身近にいるかもしれない。周りの男をよく見ればいると思うぜ」

ジャンがそう、言ってくる。もしそうなら嬉しいけれども。

ミカサ「では今後は注意して見てみよう。部の先輩やクラスメイトも含めて」

ジャン「おう! きっといる! 頑張れよミカサ!」

ミカサ「うん」

ジャンは何故か応援してくれる。いい人だと思った。

エレン「飯、食い終わったならぼちぼち部活行くぞ」

ジャン「あ、ちょっと待ってくれ。あともうちょい」

エレン「早くしろよ。1年が遅れたらまずいだろ」

ジャン(もぐもぐ…ごっくん)

ジャン「悪い。待たせた」

エレン「じゃ、ぼちぼち移動するか」

ミカサ「そうね」

そして私達三人は昼食を食べ終わって部室に移動する事になった。

音楽室にはこの間、部員紹介の時にはいなかった女子がいる。

先輩女子「あーーーーーーー」

発声練習をしているようだ。あ、でも、この人は前にも見覚えがある。

確か、エレンと一緒に初めて音楽室に訪れた時にいた女子生徒達だ。

あれ? そう言えばあの時の女子は、部員紹介の時にはいなかったような。

でも何故、ここで発声練習をしているのだろうか?

先輩女子「あ、そっちの馬面の子は初対面だっけ?」

ジャン「は、はい」

先輩女子「どーも! パクです! 元部員の2年です。時々発声練習させて貰ってるんだ」

エレン「あれ? 確か俺達が初めてここに来た時にいましたよね? てっきり部員かと思ってました」

パク「うん。元部員なんだ。実は私、劇団に在籍しててね。メインはそっちで、こっちはたまに助っ人でやってるんだ」

ミカサ「劇団所属……」

ジャン「え?! って事はまさか、プロって事ですか?」

パク「そうだよ~スカウトされたから、今は劇団の公演中じゃないんで、こっちにも顔出してるんだ。ユウとユイも劇団所属だよ」

ユウ「どうも! 初めまして!」

ユイ「初めまして。ユイです」

おおお。なるほど。そういう繋がりもここにはあるのか。

パク「将来本気で役者か声優目指す子は演劇部に所属している間にスカウトされて、プロの劇団に移籍する例も珍しくないんだ。ペトラ先輩達もスカウトされた経験あるけど、進路が違うから断ったみたいだけど」

ユウ「公演の出来によってはスカウトの声がかかる事もあるよ」

ユイ「私達三人は去年、声がかかって2年から移籍したんだ」

おおおお。すごい。何だかドキドキしてきた。

パク「今日は暇だったからこっちにも遊びに来たんだ。私達以外にも、劇団所属の元部員はいるから追々紹介してあげるね」

エレン「はい! ありがとうございます!」

これだけ女性との縁があればきっと、ジャンのお眼鏡に叶う女性もきっと現れるのではないだろうか?

ミカサ「ジャン、良かった」

ジャン「え?」

ミカサ「綺麗なお姉さん達がいっぱい……きっといい人がいる」

ジャン「……………」

あれ? ジャンが何故か無言だ。

ジャンは彼女が欲しくて演劇部に入った筈だが…。

と、その時、オルオ先輩達三年生の四人組が部室にやってきた。

オルオ「お? 今日はパク達も来てるのか」

パク「あ、どーも! お邪魔してます!」

ペトラ「ちょっと聞いてよパクー! オルオと脚本煮詰めてたんだけどさー」

と、先輩達は何やら込み入った話を始めたようだ。

ペトラ「絶対、新選組系の時代劇やるっていって聞かないんだよー予算考えてよって言ってるのに、融通きかないし!」

パク「新選組ですか? 去年も冬公演でやりましたよね? またやるんですか?」

オルオ「今度はスポットを別のキャラに当てるんだよ。題して『侍・悲恋歌』だ」

ペトラ「私は純愛路線やりたいのに! ちょっと私の書いたの読んで!」

と、ペトラ先輩は別の路線を押しているようだ。

パク「ふむふむ。ちょっと速読しますね。…………オリジナルファンタジー系ですね」

ペトラ「そう! 恋愛メインの女性ウケしそうなやつなんだけど」

パク「タイトルは『仮面の王女』ですか。ふむ……絶世の美女と噂される王女が敵国に政略結婚をされそうになるが、それを破談にする為に、自らの顔に火傷の細工をして偽り、仮面をかぶる。見合いの席で破談にさせようとするものの、予定した相手とは違う王子と結婚させられる、といったお話ですか」

ペトラ「そんな感じ! どう?!」

パク「ちょっと尺が長くなりそうな劇ですよね。どちらも。もっと短くて普遍的な物語の方がいいと思いますが」

ペトラ「えーそう? やっぱり既存の物語のアレンジの方がいいかな?」

パク「まあオリジナル劇の方がやりがいはありますけどね」

エレン「あの、一度脚本を読ませて貰ってもいいですか?」

と、エレンもうずうずして挙手した。

ペトラ「いいよ! はい、どうぞ!」

と言う訳でオルオ先輩とペトラ先輩の脚本を両方読む事になった。

侍・悲恋歌の方は新選組のメンバーがメインではなく、そのメンバーの元に嫁いだ女性が主人公で、所謂女スパイのお話だった。

暗殺するつもりで嫁いだその女性は、一緒に過ごしていくうちに夫を殺せなくなり、自分の命と世界の命運との狭間で揺れ動く物語だ。

対して仮面の王女の方も女性が主人公だ。こちらは嫁がされた先の相手との純愛がメインの物語だったが、その途中で本当は自分の顔の火傷の偽りがバレてしまい、本来の夫となる筈の男に激昂されてしまい、略奪されてしまうという展開があるものの、現在の夫の方が妻を助けに行くというお話だった。

どちらも純愛といえば純愛に見えるのだが…。

エレン「どちらも面白いと思いますが、個人的にはチャンバラシーンのある方がいいです」

ジャン「オレも殺陣のシーンは好きだな」

男の子は時代劇が好きみたいだ。

ペトラ「ミカサはどっち!? どっちでいきたい?!」

ミカサ「ええっと……」

なんて答えようか?

1.オルオ先輩の時代劇

2.ペトラ先輩のファンタジー純愛劇

3.それ以外の既存の物語劇

4.私も脚本書きたい

(*4択です。番号でお答え下さい)

あ、3番の場合は、赤毛のアンとか若草物語とか、指定があれば善処します。
(全く知らない物語だとちょっと書くのが厳しいですけど)

4番の場合はミカサが脚本を書いてやる劇になります。
ミカサが脚本を悪戦苦闘して頑張って書くので、安価使う予定です。

んー安価取りづらいのかな?
よし、変更しよう。次のスレの秒数が、

 0~14秒だったら1番
15~29秒だったら2番
30~44秒だったら3番
45~59秒だったら4番

でいきます。適当にレスして下さい。

15秒なのでペトラ脚本ルートいきまーす。

ミカサ「私はペトラ先輩の脚本の方が好きです」

ペトラ「おっしゃあああ!」

オルオ「うぐっ……」

エレン「えー? でもこっちはベタベタな恋愛劇だぞ?」

ミカサ「それは時代劇の方も同じ。ただ、暗殺という要素はちょっと重すぎるような気がしたの」

ペトラ「あーなるほど。言われてみればそうかもね。ちょっとそういうのを受け付けない人もいるかも」

オルオ「そうか……そういう視点もあるのか」

ジャン「男から見たら別にそこまで思わないよな」

エレン「ああ。時代劇だったら必殺シリーズとかもろに暗殺だからな」

パク「今回の脚本は総文祭用のものですか? だったら確かにあまりグロい描写は入れられないと思いますよ」

ユウ「そうだね~所謂、一般向けの物か、コメディか、恋愛物が多いよね」

ユイ「時代劇やりたいなら、学校の文化祭とかの方が向いてるかもね」

ああ、何だ。この脚本は学校で発表するものではなかったのか。

ミカサ「総文祭、とは」

ペトラ「全国高等学校総合文化祭の略。夏に予選があって、8月頃に全国大会があるんだ。所謂、文化部のインターハイみたいなものだよ」

オルオ「俺達3年はこの舞台で最後になるからな。気合入れて今から脚本を書いているんだ」

ミカサ「なるほど…」

8月に向けて今から準備を進めているのか。これは大変だ。

ペトラ「うーん、でも確かに男子の言うようにチャンバラシーンも捨てがたいのよね」

ミカサ「だったら和風ではなく、西洋風で戦うシーンを入れたらどうだろう?」

ペトラ「そうね。フェンシングの動きに近いものを入れられないか調整入れてみるわ」

オルオ「頼んだぞ」

ペトラ「オルオの脚本は秋の文化祭用に一応、残しておいたら? 同時進行で今から準備勧めていれば楽だし」

オルオ「それもそうだな。分かった。俺は俺で書き進めておくよ」

と、二人は何やら詳しい話を煮詰めるようだ。

エレン「何か徐々に動き出してる感じだな」

ミカサ「そうね。ちょっとだけわくわくする」

ジャン「でも『仮面の王女』の方をするっていうなら、ヒロイン役は誰がやるんだ?」

と、その時ジャンが最もな質問を言った。

パク「それはちゃんとオーディションで決めるよ。ペトラのイメージに一番近い子を選ぶよ。男子だろうが、ね」

エレン「え? まじっすか?」

パク「うん。女性役を男子がやるのも珍しくないよ。其の辺は平等に審査するから」

おおお…そうなのか。何だかドキドキする。

ミカサ「エレン、やる?」

エレン「いやいやいや、ヒロイン役は無理だぞ」

ジャン「ミカサはやらないのか?」

ミカサ「私は裏方なので、役者はやらない」

ジャン「え? そうだったんか?」

ジャンが驚いている。あれ? 言ってなかったのだろうか。

私の記憶違いで申し訳なかった。

ミカサ「うん。私は裏方希望でここにいる」

エレン「オレはケースバイケースってところだな。役者の数が足りない時は表もやるけど、基本は裏方だな」

ジャン「まじかよ……じゃあオレ、お前らとは活動場所が違うじゃねえか」

エレン「役者希望だったっけ? でも、一緒にやるのは同じだから別にいいだろ」

ジャン「そうだけどさー……くそ、今更オレも裏方希望しても無理そうだよな」

ミカサ「裏方やりたいの? だったらそれを伝えたほうがいいと思うけど」

エレン「でも、適正で言ったらジャンは役者っぽい感じもするけどな」

ジャン「其の辺はオレにも良く分からんが……まあいい。状況を見て判断するよ」

と、ジャンは今は曖昧に判断したようだ。

確かに劇の内容によっては役者の数が足りなかったり、逆に裏方が足りない場合もあるだろう。

ジャンはどちらでも動けるように考えているようだった。





そんな訳でその日の活動は基本的な体力作りと発声練習、柔軟、あと既存の台本での演技練習や、演劇に必要な基礎知識の講習(裏方には独特な用語があるそうだ)などを受けてその日の部活は終了した。

特に裏方さんには奇妙な用語が沢山あるのでそれを予め覚えないといけないらしい。

なので家に帰宅してからも私はその用語集に目を通していた。

ミカサ「バミる……役者の立ち位置を決めるテープを舞台上に貼っておく事。なるほど」

用語集をプリントアウトしたものを少しずつ覚える事になった。

こういうのは割と嫌いじゃない。新しい事を覚えるのは得意分野だ。

ミカサ「あ、そう言えば……」

裏方の先輩達から大道具は黒装束が必須だと言われた。

なので私服で黒い衣装を自前で揃えておくようにと言われたのだった。

ミカサ「参った。私は黒っぽい服をあまり持っていない」

私の好みはピンクや白、水色など、薄い色の私服が多いので、黒は殆ど持っていなかった。

ミカサ「これは明日の休日に買いに行くべきか」

えっと、ああ。でもダメだ。明日はジャン達とお勉強会の予定が入っている。

さて、どうする? まあ、買い物は別の日でもいいのだが。

ミカサ「………黒い服を買うだけだからそんなに時間はかからない筈」

と、思い、私はジャンに午前中は買い物に行くので勉強会は午後にして貰えないかという内容をメールした。

すると即座に『OK』の返事が貰えたのでほっとする。

そしてその事を自室にいるエレンにも伝えると「一人で行くのか?」と言ってきた。

ミカサ「そのつもりだけど」

エレン「オレも一緒に行ってもいいか?」

ミカサ「え? でもエレンは黒い私服は持ってる筈……」

エレン「いや、何か話によると途中で何度も汗かくから着替えは何枚か用意してた方がいいって言ってたからさ。オレも追加して買いたいんだよ」

ミカサ「なるほど。では、一緒に午前中に買い物をすませましょう」

と言う訳で明日の予定は買い物と勉強会に決まったのだった。

午前中はエレンと服のお買い物です。
洋服以外になんか寄って欲しいところある?
何もなければそのまま進めていきます。

ではお昼は二人で外食かな? そんな感じで続けます。




次の日。私とエレンは早速、洋服を買いに行く為にとある洋服屋に出かけた。

そこは大手のチェーン店である。デザインはシンプルな物を多く取り揃えている。

無地で色違い物等も沢山ある。私はすぐに男性用のコーナーに向かった。

エレン「ん? 女性用のコーナーに行かないのか? 先に買ってきていいんだぞ」

ミカサ「男性用の方が種類があるので」

背の高い女性なら「あるある」と共感して貰えるだろうが、170cmともなると、女性用のコーナーで探すより、男性用の方が早かったりする。特にTシャツ等は。

ズボンやシャツだとそうはいかないが、先輩達は「黒Tシャツが一番」と言っていたのでこれで十分である。

ミカサ「あった。2Lサイズ。これを何枚か買っていく」

エレン「え? Lサイズでよくねえか? 男性用なんだぞ?」

ミカサ「エレン、私の背丈はまだ伸びている」

エレン「あ、そっか! なるほど。先を見越して買うのか」

ミカサ「エレンも2Lサイズを買うといい」

エレン「いや、実はオレ、男性用だとLでも少し大きいくらいなんだよな」

ミカサ「MとLの間くらいなの?」

エレン「そうそう。胸板薄いからな。悲しいことに」

ミカサ「でも後から背が伸びたら困る。洗濯で若干縮む場合もあるし」

エレン「うーん。それも確かにそうだが、ぶかぶかだと格好悪くないか?」

ミカサ「可愛いと思うけど」

エレン「それが嫌なんだよ!」

ああ、なるほど。そういう事ならちゃんとサイズを合わせた方がいいだろう。

ミカサ「なら仕方がない。Lサイズにするといい」

エレン「………いや、でも、背丈は伸ばそうとしている訳だし」

エレンの中にある葛藤の様子がよく見える。可愛い。

ミカサ「ふふふ……まあ、エレンが迷っている間に私はズボンの方も見てくる」

エレン「おう。ゆっくり見てこい」

という訳でそこで一旦、エレンとは別行動を取る事にした。

ズボンは男性用を買うわけにもいかない。しかし女性用の方もなかなかサイズを探すのが大変だ。

値段もサイズもよさげな黒いズボンを試着したが…。

ミカサ「うぬぬ……」

なんていうか、私の場合、基準のサイズのお尻に合わせるとウエストが余り、ウエストに合わせるとお尻がだいたいパツパツなのだ。

私は腰のくびれとお尻の大きさのバランスが極端なのだろうか。

仕方がない。お尻の方に合わせてウエストは妥協しよう。腰が余る分はベルトで調整するしかない。

そんな訳で黒いズボンも2着買い、エレンの元に戻ると、エレンは結局2Lサイズを何枚か選んでいた。

エレン「将来、背が伸びることを期待して買った。これで後戻りは出来ん」

ミカサ「ふふふ……」

暫くはちょっと可愛いエレンが見れそうで何より。

エレン「ズボンはもう買ってきたのか?」

ミカサ「うん。ウエストが少し余ったけれど、お尻が大きいので仕方がない」

エレン「え? ああ、そうなのか? まあ、確かにくびれてる方ではあるけれど」

エレンにじろじろ見られてしまった。店内ではちょっとやめて欲しいのだが。

ミカサ「エレンはズボンは買わないの?」

エレン「ああ、黒のズボンは持ってる。今回は黒Tシャツだけだな」

ミカサ「そう。では家に一旦帰りましょう。荷物を置きたいので」

エレン「え? ロッカーに預けておけばいいんじゃないか? 駅にあるだろ」

ミカサ「!」

なるほど。そういう手段もあるのか。思いつかなかった。

エレン「図書館から帰る時に駅に寄って荷物持って帰ればいいだろ?」

ミカサ「凄い。その発想はなかった」

エレン「え? お前今までどんな生活してたんだよ」

エレンに困惑されてしまった。うぬぬ。どんな、と言われても。

エレン「友達と街に遊びに行ったり買い物したりする時は、ロッカーを利用したりしないのか?」

ミカサ「した事ない……」

エレン「そうか。まあオレもアルミンに言われて始めた事だけどな」

と、エレンは苦笑する。

エレン「まあいいや。ついでに昼飯も駅の何処かで食べようぜ。なんかあるだろ」

と言う訳で、私とエレンは洋服を買い終わると電車を乗り継ぎ、街の中心部の駅の中にあるロッカーに荷物を預けて、駅の中の飲食店を見て回った。

お昼には少しだけ早い時間帯だ。駅の構内にはたい焼き屋や、たこ焼き屋、あとクレープ屋さんもあった。

エレン「お、どれもうまそー」

ミカサ「エレン、それはデザートで良いのでは?」

エレン「そうだな。先に飯食うか」

という訳で、適当なお店を探す。さて、お昼は何を食べようか。

エレン「んー……あ、ドッキリドンキーがある。ここにしようぜ」

そこはハンバーグのチェーン店だった。木の丸い皿にハンバーグとご飯とサラダをまとめてのせてくれる。

ミカサ「ふむ。まあ手頃なお店なのでここにしよう」

エレンに異論はなかった。歩き疲れたので少々、高カロリーな物でも構わないと思ったからだ。

店の中は少し早い時間だからか、人が少なかった。すぐに席に案内されて適当にメニューを選ぶ。

エレンは普通のハンバーグにトッピングにチーズをのせていた。私もエレンと同じものを頼んだ。

エレン「意外と早く買い物済んだな」

ミカサ「そうだろうか? 元々買うものは決まっていたので」

エレン「いや、ほら、ついでに他の物に目移りして一緒に買うのかと思ったんだよ」

ミカサ「私は必要な物以外は買わないので」

エレン「うちの母さんとは正反対だな。母さん、買い物すると長かったからなあ」

エレンは今は亡き自分の母親の事を思い出しているようだ。

エレン「うちの親父とオレはいつも待たされて、本屋で時間を潰すのが日課だったな」

ミカサ「なるほど。エレンのお母さんは買い物が好きだったのね」

エレン「ああ。買い物が趣味みたいなところがあったな。あ、でも別に無駄な買い物をする訳じゃねえぞ? 選ぶのに物凄く時間がかかってただけだ」

ミカサ「私から見ればエレンも十分、選ぶのに時間がかかってる」

エレン「うっ……オレ、母さんに似てるのかな?」

エレンはちょっとだけ呻いている。恐らくそうなのではなかろうか?

ミカサ「私は母親に顔は似ているけども、性格は似ていないと言われる」

エレン「おばさんはおっとりしてるもんな。ミカサはどちからといえばキリッとしてる」

ミカサ「父もおっとりしていたので、誰の性格に似たのか良く分からない」

もしかしたら祖父や祖母似なのかもしれないが、私が生まれた頃には祖父母との交流はなかったので何か訳ありだったのだろうと思う。

エレン「まあでも、ご先祖様の誰かのが遺伝してるのは間違いないだろ」

ミカサ「そうね。きっとそう」

エレン「オレは親父の頭の良さをもうちょっとだけ欲しかったけどなー」

と、エレンが愚痴ったその時、注文の品が届いた。早い。さすがはドッキリドンキー。

ミカサ「エレンは決して馬鹿ではない。普通」

エレン「ははは………まあ、十人並みだとは思うけどな」

エレンは苦笑を浮かべてチーズハンバーグを頬張った。

エレン「(もぐもぐ)でもさ、アルミンとかミカサを見てたら……やっぱりもうちょっと頭良かったらなあとは思うぜ」

すげえ・・・300まで行くなんて・・・ 支援です

まあ確かに成績はいいことに越したことはないが。

ミカサ「(もぐもぐ)でも足りない部分は努力で補えると思う。その為の勉強会なのでは?」

エレン「(もぐもぐ)まあな。午後は頼むぜ」

ミカサ「(もぐもぐ)大丈夫。皆でやれば怖くない」

もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ……。

味はまあ普通の味だがボリュームがあって満足出来た。

二人共残さず完食すると、エレンが先に会計を済ませて店を出た。あれ?

ミカサ「エレン、会計、割り勘…」

エレン「ああ、いいよ。面倒だからオレが出しといた」

ミカサ「そんな……お小遣いを切り詰めさせるのは忍びない」

エレン「いや、うちは結構ざっくりしてるからそんなに気遣わなくていいからさ」

ミカサ「エレン、それでは将来困るのでは?」

いくら医者の息子だからといって、何でもかんでも奢っていてはよくない。

エレン「え? 何で? 昨日、親父に「ミカサと外食するかも」って前もって言っておいたから多めに金貰ってたんだけど」

ミカサ「お小遣いとは別に貰ってたの?」

エレン「ああ。うちは毎回そんな感じだ。必要な時に必要な分だけ、貰う感じ」

ミカサ「月にいくら、とかではないの?」

エレン「え? 何それ。月に一回しか金貰えないって何?」

金の使い方の感覚がここまで違うとは…。エレンの将来が心配になった瞬間だった。

>>346
このペースで高校三年間書いちゃったら確実に1000超えるwwww
毎回ゴールは考えて書かないので、どこまで続くかはエレンとミカサ次第です。

ミカサ「エレン、それでは人と感覚がズレてくると思う」

エレン「え? そんなに変か?」

ミカサ「普通はお金は月に一度、貰う程度だと思う。それをやりくりするのでは?」

エレン「何でそんな面倒臭いことするんだよ」

ミカサ「収入と支出の割合を大まかに見る為だと思うけど」

エレン「ん? 収入は親父のしか分からんだろ。何でオレが収入の分を計算しないといけないんだ?」

ミカサ「ええっと、確かに家の全体の収入は把握できないけれども、そういう意味ではなくて……」

いけない。ここは慎重に説明しないと。エレンが混乱する。

私は頑張って頭の中を整理しながらエレンに説明した。

ミカサ「エレン、日本人は殆どの人が会社や何かに属して収入を得ている」

エレン「ああ。そうだな」

ミカサ「人によっては年単位の収入の人もいるけれど、普通は月一くらいで収入を得る」

エレン「ああ、そうらしいな。うちは良く知らないけど」

ミカサ「だから、月の収支を把握する癖はつけた方がいい。将来的にも必要だと思う」

エレン「サラリーマンになるかもしれないから、家計簿つけろっていうのか?」

ミカサ「そう! つまりそう言う事」

これで伝わっただろうか? 不安だけれども。

エレンは頭を捻っている。ううう………大丈夫なのか。

エレン「家計簿だったらうちもつけてるぞ。ただうちの場合は年単位で計算してるが」

ミカサ「え? 年単位?」

エレン「そうそう。うちはこういう必要経費は全部、領収書を取っててさ。全部パソコンで記録して年単位でファイル作ってるって親父が言ってた」

ミカサ「何故、年単位…?」

エレン「さあ? 昔から1年単位でざっくり計算するのが親父のやり方だからなあ。その方が都合がいいんじゃねえの?」

ミカサ「そ、そうなの?」

エレン「ああ。だからミカサも親父に言えば、その都度金はくれると思う。ただし、その買い物の内容は前もって言わないと出してくれないけどな」

育ちの違いという奴なのだろうか。エレンの家庭はちょっと普通とは違うような気がした。

ミカサ「その都度、申告しないといけないの?」

エレン「え? 普通そういうもんじゃねえの?」

ミカサ「私はお小遣いの範囲内で自由に買って良かった。…ので、その内容を親に報告した事はない」

と、私が伝えるとエレンの方が今度は驚く番だった。

エレン「うちと全然違う。え? もしかしてそっちの方が普通なのか?」

ミカサ「わ、分からない。けど、うちはそうだったので」

エレン「うわー…これはちょっと親父に聞いてみる必要があるな」

と、今更ながらエレンはブツブツ言いだしたのだった。

エレン「もしそうならオレ、親父に騙されてた事になるな。くそ! 頭いいな親父!」

ミカサ「あ、アルミンのご家庭はどうなの?」

アルミンの家も違うのだろうか? 気になって質問してみると、

エレン「アルミンもうちと同じだよ。その都度貰うって言ってた」

ミカサ「そ、そうなの? でもそれだと無駄遣いをしてしまうのでは…」

エレン「え? 何でだよ。必要な物を買う時だけしか貰わないんだぞ? 余計な物を買う余裕はねえよ」

案外、そのやり方の方が金を無駄に使わないで済むのだろうか?

ミカサ「驚いた。私の方が少数派だったのね」

エレン「いや、そうとは限らねえよ。ジャンとマルコにも後で聞いてみよう。気になる!」

エレンはそう言いながら、デザートにクレープ屋でチョコバナナに目をつけていた。

エレン「頭使ったらなんか甘いもの欲しくなった。ちょっと買ってくる。ミカサも食うか?」

ミカサ「そうね。ちょっと食べたい」

エレン「じゃあ買ってくる。2本な」

エレンはチョコバナナを買ってきてくれた。それをペロペロ舐めながら、私達は駅の中の適当な椅子に座った。

バナナを口に咥えながらエレンは神妙な顔をしていた。いろいろと思うところが出てきたらしい。

エレン「オレ、もしかして親父に甘やかされて育てられてるのか…?」

うぐっ……。エレン、私の視点から見れば若干、そう見えるけども。

エレン「オレ、このままだとまずくないか? この感覚ってやばいのか…?」

ミカサ「え、エレン……その……」

エレンは裕福な家庭で育っているからきっとお金に関してはアバウトなのだろう。

だがそれを言ってしまうのも失礼な気がしたし、どうしたもんかと悩む。

エレン「…………ミカサの目から見たらやはりそうなんだな」

返事が出来なかった。無言を肯定と受け取られたようだ。

エレン「そっか。そうだな。いや、それが分かっただけでも収穫だ。ありがとな、ミカサ」

ミカサ「うう……」

エレンは微妙な顔をしているが、それでもお礼を言ってくれた。

私は別に何もしていないのだが……。

エレン「今度、親父の暇な時に話し合ってみる。どういうつもりでそういうやり方でオレに金くれてたのか、真意を確かめたいしな」

ミカサ「そうね。そうした方がいいかもしれない」

話の途中でチョコレートが溶けてきたのでそれを零さないように吸い付くように舐めた。

おっとっと。勿体無い。

その様子をじっと見られた。ん? エレンのも溶け始めている。

ミカサ「エレン、端っこ、溶けてる」

エレン「あ、ああ……悪い」

エレンはよそを向いて一気にチョコバナナを食べきった。

私も一気に食べてしまう。残すのも勿体ない。

お腹いっぱいになったので、この後はどうするか。

ミカサ「そうだ。皆にお菓子のお土産を買っていこう」

エレン「え? 別に要らねえよ」

ミカサ「でも、勉強の途中で甘いものはだいたい欲しくなる」

エレン「図書館の中って飲食しても良かったっけ?」

ミカサ「確かラウンジのある図書館もある。休憩スペースと分けて設置されている筈」

エレン「へーそうなのか。普段行かねえから知らなかったぜ」

と、エレンは感心している。

ミカサ「もしかしてエレン、欲しい本もいつも買って貰ってた?」

エレン「ああ。オレは図鑑とか見るのが好きだったし、親父自身も本好きで、親父の書斎には4つ本棚あるしな。小さい頃に買って貰った本は今も書斎にあるかもしれん」

エレンはやはりおじさんに相当、自由に育てられているようだ。

ミカサ「私はなかなか買って貰えなかった。だから図書館で借りて読んだり学校の図書館で読むことが殆どだった」

エレン「そ、そういうもんか。オレの家は本はすぐ買うもんだったからな」

エレンと歩いて駅の中を移動する。人がちょっとだけ増えてきた。お昼を過ぎたからだろう。

エレン「……オレ、よく考えてみたら親父に「買っちゃダメ」って言われた記憶がねえ」

おお…。なんと羨ましい。

エレン「ただ、買う時は「どうしてそれを買いたいんだい?」と理由を聞かれてた気がする」

ミカサ「理由も聞かれたの?」

エレン「ああ。そうだ。親父は必ず「理由」を聞いてくる。だからオレは毎回説明してた。ただ何となく欲しいって言った場合は「理由がない筈がない」と言って理由を言うまで買ってはくれなかったけど、言えば必ず買ってくれたんだよ」

理解があるというべきかもしれないが、普通はなかなかそこまではしてくれない。

おじさんはやはりエレンのとても良き理解者であると思う。

エレン「だからずっとそれが普通だと思ってた。でもそうか……家によっては違う場合もあるんだな」

ミカサ「そうね。それはひとつ勉強になった。私も自分の感覚が絶対のモノとは思わないようにする」

他人同士が触れ合うことで新しい発見もあるのだと、この時、私は初めて知った。

こんな風に深く触れ合う機会は今までなかったせいもあるが、エレンを通じて新しい世界が開けたようなそんな感覚があった。

エレン「そうだな。オレも今後は気をつける。じゃあお菓子は安いその辺のコンビニのスナック菓子で…」

ミカサ「え? 皆で食べるのにスナック菓子はちょっと」

エレン「…………え?」

エレンは目を丸くしている。何か変な事を言っただろうか?

エレン「贅沢はしない方がいいんだよな?」

ミカサ「そうは言っていない。使うべき時は使う。特に皆で食べる時はお金をかけるべき」

エレン「…………やっぱりその辺の感覚がオレとは違うんだな」

エレンは首を傾げている。うん。確かに違うと思った。

ミカサ「あそこに和菓子屋さんがある。買ってきてもいいだろうか?」

エレン「ああ、お菓子の蒼海だな。いいぞ。ここは昔ながらの名店だもんな」

老舗の店ではあるが、昔からある有名なお菓子のチェーン店である。

店内に入ると感じの良い女性達が「いらっしゃいませー」と一斉に声をかけてくれた。


おもしろいっす!
期待!

ああ、どれも美味しそうだ。ええっと、一人1個ずつでいいだろうか。

図書館のラウンジで食べるなら、あまり手を汚さない系のお菓子がいいだろう。

となると、やはりお饅頭系のお菓子がいいだろう。このひよこの形の饅頭にしよう。

エレン「え、そっちにするのか?! なんか食うの可哀想じゃないか?」

ミカサ「そういうデザインなので……」

エレン「オレはこっちの変な顔のせんべいがいいな」

ミカサ「せんべいは食べかすが出るので、外で食べるのには向かない」

エレン「あ、そっか……じゃあこっちのちっこいバームクーヘンみたいなのは?」

ミカサ「こっちの方がいいの? 美味しいの?」

エレン「いや、知らないけど」

ミカサ「食べたことないのに買うの? 味が分からないのに」

エレン「別にいいだろ。まずかったらまずかったで話のネタになる」

店員さんはむっとした表情だ。エレン、店の前でその発言は頂けない。

店員「どちらも味は保証しますよ。30年近く続く銘菓ですし」

伝統の味を誇らしげに伝えてくる。あーもう、断りづらくなった。

ミカサ「分かりました。両方で」

エレン「え? 両方買うのか?」

ミカサ「私はこのひよこの饅頭が昔から好きなので」

たまにしか食べないが、味は確かに美味しいのだ。

エレン「ふーん。そうなのか。じゃあ両方買えばいいか」

ミカサ「すみません。それぞれ5個ずつ包んで下さい」

という訳でお土産も買ったし、用事はこれで全て済んだ。後は合流する図書館に向かうだけだ。

そして約束の図書館の入口に合流すると、そこにはアルミンとマルコ、ジャンの三人が既に待っていてくれた。

時間には遅れてはいない筈だが、それでも前もって待っててくれたようだ。

皆、それぞれの性格が出ている私服姿だ。

アルミンは黒と白のシンプルな色合いだ。下が黒で上が白。ジーンズ生地の男の子らしい黒いジャケットを上から着ている。

恐らくこの間、女の子に間違われた事をよほど気にしているのだろう。申し訳ない。

マルコはTシャツに春物の淡い色のカーディガン。全体的に優しい色合いのファッションだった。

そしてジャンは……。えっと。何故スーツ姿でわざわざ来たのだろうか?

これでは学校の制服と大して差がないような…(男子も制服は緑色のブレザー服だ)。

ただ今日のジャンは紺色のスーツ姿だった。ネクタイもちゃんとしている。

この中だとエレンのパーカーにジーンズ姿が一番高校生らしいのかもしれない。

ちなみに今日の私のファッションは、無地の薄い水色の緩めのワンピースだ。

ズボンを買う時にズボンをはいていくと、試着の繰り返しが面倒臭いのでワンピースで出かけたのだ。

ジャン「よ、よう! 早かったな」

ミカサ「そちらの方が早かった。ごめんなさい。遅れて」

ジャン「いや、待ち合わせ時間には遅れてねえよ。その、こっちはたまたま早く着いだだけだ」

マルコ「じゃあ中に入ろうか。今日はビシバシ鍛えるからね」

と、マルコは教師役としてやる気に満ちているようだ。いい事だ。

そして私達五人は全員が座れるテーブルを確保してそれぞれ席に座った。

エレンとジャンが隣同士で座り、その向こう側にマルコとアルミンと私が座った。

さて。まず何から始めるか。とりあえず、授業の復習からいくか。

エレン「この間の実力テストの復習からいっていいか?」

ミカサ「ああ、そう言えばテストの返却はされていた。忘れていた」

エレン「忘れてたって事は点数良かったんだな」

ミカサ「いえ、いつもよりはさすがに点数は下がっていた。今回は首席は取れないと思う」

アルミン「仕方ないよ。あの時、ミカサは体調を崩し気味だったから」

と、アルミンはあの時の事を覚えていてくれたようだ。胃薬を貰ったので申し訳ない事をした。

ミカサ「アルミンのおかげで持ち直した。感謝している」

アルミン「うん。まあそういう時もあるよね。じゃあまずはテストの復習からいこうか」

と言う訳で、エレンとジャンの回答を見ながら問題を解説していく私達だった。

エレンは国語と英語はまあ良かったが、数学がてんでダメで、ジャンは逆に数学が良くて国語と英語は平均点だった。

文系と理系の分かり易い分かれ方だと思った。

アルミン「あーあ。エレンは数学苦手だねえ。相変わらず」

エレン「小難しい数式を覚えるのが面倒なんだよ。将来役にたつのかこれ」

ジャン「んな事言いだしたら勉強は全部、役にたつか分かんねえだろうが」

エレン「いや、にしても数学を実生活で利用する場面なんてあんまりねえだろ。算数は別にして」

ジャン「数学は頭の体操だと思えよ。パズルみてえなもんだろ」

アルミン「ジャンの言うことは一理あるかな。感覚的には僕もそれに近い」

エレン「暗記科目の方がまだいい。国語と英語は漢字と英単語覚えれば割と点数取れるからな」

ミカサ「でもエレンは古典が苦手みたいね。現国の部分との差が激しい」

エレン「うぐっ……古典もその、実生活の何処に役に立つのか分からんから」

と、また同じような言い訳をする。

マルコ「そんな事言いだしたら、勉強の全てが無駄に思えちゃうよ」

エレン「いや、オレは全部が無駄とは思わねえよ。現国と英語は生活するのにも使うし、社会だって歴史も地理も公民も、それぞれ使う部分はあるし。ただ数学と古典に関してだけ言えば、何で勉強するのかいまいち分かってないだけだ」

ジャン「理由なんて何でもいいだろ。とりあえず、流されて覚えればいいんだよ。深いこと考えるとそれこそ頭のエネルギーの無駄使いだ」

エレン「オレは嫌だね。流されて生きていくのはごめんだ。ちゃんと理由があれば真面目にやるさ」

ミカサ「二人共、今はそういう話は後にして」

ここは図書館である。どうしてこの二人はすぐお互いの価値観やら意見をぶつけ合うのか。

本当は仲がいいんだとは思うけれど。毎回バチバチさせるのはやめて欲しい。

アルミン「うーん。エレンの言うことも一理あるけど、ジャンの言うことも間違ってないよね」

マルコ「分かる。両方の感覚、あるよね」

と、今度はアルミンとマルコがお喋りを始めてしまった。

アルミン「でもさ、将来、何が役にたって何が役に立たないかって、現時点じゃ誰にも分からないんじゃない?」

エレン「そうか?」

アルミン「うん。それぞれの進路によると思うよ。例えば教師になりたい人なんかは、こういう知識を今度は次世代に教えるっていう意味で役に立つし、科学者だったら、国語は使わないけど科学分野の知識は豊富に必要になるし、歴史学者になったら、古典の知識が大いに必要になるし」

エレン「ああ、そうか。なるほどな」

エレンはアルミンの説明になんとなく理解を示したようだ。

エレン「そうか。オレ、自分のことしか考えてなかったな」

アルミン「まあ、普通はそうだけども。所謂僕らは、作物の「種」みたいなもんで、どこの大地で埋まって育って広がって行くかはこれからだからね」

マルコ「詩人だねえ、アルミン」

アルミン「いや、あくまで例えだからね?」

アルミンはちょっと照れくさそうにしている。うん。でも、悪くない例えだと思った。

ミカサ「その理論で言うと、学校の勉強は作物でいう土の「栄養」の部分ね。どの栄養成分を吸収するかは、種の種類によるから、必要のないものは無理に取り込まなくてもいいけれど、栄養は多いに越したことはない」

アルミン「そうそう。だからエレンも、将来を見据えた上で頑張らないとね」

エレン「ううーん。将来か。まだ漠然としているのが一番の問題な気がするが……」

と、エレンは頭を違う意味で悩ませている。

エレン「皆は高校卒業したらどうするか決めてるのか?」

アルミン「え? 入学したばかりでもう卒業後の話?」

エレン「3年間なんてあっという間だろ。どうするか決めてるのか?」

アルミン「とりあえず、僕は今の成績を維持して卒業する事しか考えてないな」

マルコ「僕もまだ、今はそれだけだね」

エレン「ミカサは? 何か将来やりたいことあるのか?」

ミカサ「特にない」

ジャン「オレは一応、あるけど」

おお? 意外な回答がジャンの方からあがった。

エレン「………どうするつもりなんだよ」

ジャン「公務員。片っ端から受ける。警察、消防、自衛隊、地方公務員、国家公務員。何でもいいけど、民間には属するつもりはねえな」

アルミン「安定志向だねー。大学行かないの?」

ジャン「成績次第だな。ただ、高卒で取ってくれるところがあれば受ける。コネがある訳じゃねえけど、夢なんだ」

ミカサ「公務員が夢なの?」

これはアニとは相性がいいのではないかと思った。アニの理想にかなり近いように思える。

ジャン「いや、公務員が夢っていうより、安定した収入と、その……嫁さんを早くもらって家庭を作りたいのが夢」

マルコ「おおお、大人な発言だね。結婚願望あるんだ」

ジャン「当たり前だろ。だから彼女を高校時代に作っておきたいんだよ。卒業したらすぐにでも結婚出来るように」

ジャンは私よりも大分ませているように見えた。すごく大人に見える。

マルコ「ああ、焦っているように見えたのはそのせいだったのか」

ジャン「まあな。思い通りにはいかねえかもしれんが、一応、それが今のオレの願望だ」

ミカサ「具体的に夢があるのはいい事だと思う」

私は素直に賞賛した。というより少し羨ましくもあった。

何か目標がある、というのは素晴らしい事だ。

エレン「そうか。この中で具体的なのがあるのはジャンだけか」

エレンも私と同じような心境なのだろう。表情が、そう語っていた。

アルミン「羨ましい限りだね」

マルコ「全くだよ。だったら尚更、早く彼女を見つけないとね」

ジャン「お、おう……」

ジャンは少し照れくさそうにこちらをチラッと見た。

私もジャンを応援したいと思う。出来る限り。

ミカサ「頑張って。ジャン。あなたならきっと出来る」

ジャン「そ、そう思うか?」

ミカサ「うん。きっといい人が見つかる」

ジャン「…………」

あれ? また、ジャンが少しだけ悲しそうな顔になった。

前にもこの表情を見たことがある気がする。はて?

エレン「オレの場合は勉強よりも目標を先に見つけた方がかえってはかどる気がするな」

と、その時エレンが話題を変えた。

アルミン「ダメだよエレン。そんな風に言って現実逃避しちゃ」

エレン「うっ………バレたか」

アルミン「付き合い何年だと思ってるの。エレン、数学分かんないなら僕がマンツーマンするよ?」

エレン「頼む。数学はアルミンの説明の方が先生のより分かり易い」

と、エレンも勉強に身を入れ始めたようだ。

ジャンは国語の方でいくつか分からない部分があるようだ。

ジャン「解説を頼む」

と、ジャンが言い出したので私も出来る限り頑張って答えた。

皆で勉強をしたので思った以上にはかどった。

そして時間はあっと言う間に過ぎておやつの時間になった。

ミカサ「そろそろ一回、休憩を入れましょう。おやつは買ってきている」

ジャン「え? わざわざ買って持ってきてたのか?」

ミカサ「一人2個ずつ。食べよう」

ジャン「あ、ありがとう……」

ジャンが何故か物凄く喜んでくれた。良かった。どうやら好みのお菓子だったようだ。

キリ悪いけど今回はここまで。

お勉強会が終わったら次は体育祭まで一気に時間を進める予定。
体育祭のネタ、やって欲しい事あったら書いてていいです↓
んじゃ寝る。おやすみなさい。

乙!
久しぶりに来たらすげえ進んでてビックリしたw
体育祭でやる事といったら創作物的にベタなところで
二人三脚とかフォークダンスあたりかな…?

>>312
エレン「だよな……」
ミカサ「そんな事ない」

遅レスすまん。読み返して今気づいた。
後半戦ラストで活躍できなかった事はエレンが一番、悔やんでますね。

>>356
あざーす! 物凄い長くなりそうな予感…。

>>365
二人三脚とフォークダンスですね。了解です。

マルコ「ラウンジの方に一度、移動しようか。お茶も飲みたいし」

アルミン「そうだね。一度、移動しようか」

と、言う訳で私達は席を離れて少し離れたラウンジまで移動した。

幸い人も混んでおらず、席を確保するのは容易かった。

ジャン「……………」

マルコ「ジャン? 食べないの?」

ジャンはお菓子を握ったままぼーっとしている。どうしたのか。

ジャン「は! 悪い。食べる。食べるよ」

ワンテンポ遅れて何故かジャンは包装を剥ぎ取った。そして一口で食べる。

ジャン「!」

ミカサ「そんなに急いで食べなくても」

喉を詰まらせかけたジャンの背中をさすってあげる。全く。子供のようだ。

ジャン「(ごくん)悪い。慌てた」

ミカサ「ゆっくり食べればいい。そんなに慌てる必要はない」

アルミン「(もぐもぐ)うん、和菓子は特に味わって食べないとね」

アルミンは小さくちょっとずつ食べている。

エレンは無言で食べている。何故か、ちょっと不機嫌な顔だ。

ミカサ「美味しくないの?」

エレン「んにゃ、うまいけど」

ミカサ「にしては浮かない顔ね」

エレン「いや、さっきミカサと話してた事をふと思い出しててさ」

ミカサ「ああ、お金の使い方の話?」

エレン「そうそう。マルコとジャンはどうなんかな、と」

マルコ「何の話?」

マルコが食いついたので、私はエレンと話したお小遣いについての話を聞かせた。

するとマルコもジャンも意外な表情になって「そりゃミカサのが普通だって」と言ってくれた。

エレン「やっぱりそうなのか。オレん家とアルミンところは珍しい例なのか」

アルミン「だろうね。うちの場合はおじいちゃんしかいないからっていうのもあるけど」

ジャン「ああ。いちいち親に全部、買うもの報告してたら、その……バレたくない物も買えないだろ」

バレたくないもの? はて? 何の事だろうか。

マルコ「ああ、まあ……いろいろあるよね。中学生くらいになったら欲しくなるよね。そういうのは、どうしてたの?」

エレン「んー……」

エレンは少し言いにくそうに答えた。

エレン「そういうのは、買ったことねえよ」

ジャン「は? 買ったことない? 嘘つけ」

エレン「本当だって。つか、そういうのって別に買わなくてもネットとかでも探せるだろ」

ジャン「ああ、じゃあ画面越しに見るだけで満足してたんか」

エレン「まあ、なあ……あとはアルミンから貰ったり、とかな」

アルミン「僕のところはおじいちゃん、騙すのは簡単だからね」

マルコ「酷いなあ。アルミン」

酷いといいつつも笑っているマルコである。

ジャン「いや、でも今後もし彼女が出来た時はどうするんだよ。まさか避妊具が欲しいから金くれって言って金貰うつもりなのか?」

エレン「………それは無理だな」

ジャン「だろ? 悪いことは言わん。ミカサの家のやり方に変えて貰った方がいいぞ」

エレン「だよな……オレもその方がいい気がしてきた」

ミカサ「でも……エレンのおうちはおじさんが大黒柱。そのうち私もそのやり方になぞった方がいいかもしれない」

と、私が本音をぽつりと漏らすと、アルミンが「あ、やばい」という顔をした。

マルコ「え? 何でミカサがエレンの家のやり方に染まるの?」

ジャン「今、おじさんって言った?」

ギックー! しまった。またやってしまった。

ジャンとマルコにはまだエレンとの同居の件は伝えていない。

エレンは「あーあ」という顔をしているが、面倒臭そうに説明した。

エレン「あ、まだ言ってなかったな。実はオレの親父と、ミカサの母親、再婚したんだ。だから今年の春からオレ達四人、一緒に住んでる」

ジャン「は……?」

その瞬間のジャンの表情は何とも言えない複雑な顔だった。

エレン「義理の兄妹、いや姉弟か。になっちまったんだ」

ジャン「は、初耳だぞそれ!」

エレン「言ってなかったからな。あ、言っとくがあんまり言いふらすなよ。クラスの他の奴に。面倒臭いから」

マルコ「ああ、人の家の事情だし、それはしないけど……へえ、だから、か」

マルコは何だか妙に納得した様子だった。

マルコ「二人がやけに仲良さそうだったのは、一緒に住んでるからだったんだね」

ミカサ「うん……ごめんなさい。黙っていて」

マルコ「いや、いいよ。言いづらいことだろうし。こっちこそごめんね。言わせちゃって」

エレン「いいさ。いずれはバレるだろうと思ってたし」

エレンはもう2回目だからか、慣れたように言った。

エレン「そういう訳で、親父を説得しないことにはオレん家は今のままの制度なんだよな」

アルミン「難しい問題だね」

エレン「ああ……金の事だしな。今はいいけど、いずれは自由に使える金がないと困る場面もあるかもしれんし」

ジャン「………」

ジャンが物凄く複雑な顔を続けている。悔しそうで、悲しそうで、でも嬉しそうで。

表情が定まらないとはこの事だと思った。

エレン「まずは親父にどうしてそのやり方できたのか聞いてみる。それを踏まえた上で、よその家じゃうちみたいな例が少ない事も言ってみる。んで、出来たらミカサの家のやり方に変更して貰えるようにやってみるよ」

ミカサ「そうね。高校生になったのだし、自由がないと大変かもしれない」

マルコ「うん。話し合うべき時期なのかもしれないね」

アルミン「だね」

ジャンはまだ、黙り込んでいる。一人だけ違うことを考えているようにも見える。

ミカサ「ジャン?」

ジャン「ん? ああ……悪い悪い」

ジャンが急にニヤニヤし始めた。ちょっとだけ気持ち悪い。

ミカサ「どうしたの?」

ジャン「何でもねえよ。何でもねえ。ああ、何でもない」

3回も言われたら何でもなくないように聞こえるが。

マルコ「…………そろそろ、勉強再開しようか」

アルミン「そうだね」

二人がそう言い出したので、私達はラウンジを出て図書館の方に戻った。

そして閉館の夕方5時近くまで居座って、今日のお勉強は終了。

皆それぞれ自宅に帰る事になった。

私とエレンは当然、駅に寄ってロッカーの荷物を回収したのちに帰宅する。

すると夕方に差し掛かっているせいか、電車の中は人ごみが多少増えてきたようだった。

エレン「ミカサ、こっちに寄れ」

ミカサ「うん」

エレンと一緒に端っこに寄る。手荷物があるせいでちょっと窮屈だった。

電車はスムーズに進んでいる。ガタンガタン……ガタンガタン……と、いつものリズムだ。

しかしその時、


キキキキ………


急ブレーキが起きた。その衝撃に、電車の中が大きく揺れる。

何だ何だ? 人身事故だろうか?

アナウンスを待つ。どうやら、次の駅の方でトラブルが起きたようだ。

ざわざわざわざわ……

皆、落ち着かない。電車の中は不安な空気が流れていた。

ミカサ「大丈夫かしら?」

エレン「…………」

ミカサ「エレン?」

エレンの方を見ると何故か赤い顔をしていた。視線が合うとすぐに逸らされたけれど。

エレン「いや、別に。いいけど」

ミカサ「え?」

エレン「その……太ももでオレの足、挟んでる」

ミカサ「!」

今の電車の衝撃のせいでどうやら、エレンに寄りかかり過ぎてしまったようだ。

ミカサ「ご、ごめんなさい(パッ)」

慌てて少し距離を取った。申し訳ない事をした。

ミカサ「わ、わざとではないので」

エレン「いや、分かってる。大丈夫だ」

エレンは一応頷いているけれど、ちょっと困っているようだ。

電車はまだ動かない。早く復帰して欲しいけれども。

エレン「………………」

エレンは電車の外を見てこっちを見ていない。私もエレンの方をあまり直視出来なかった。

困った。変な空気になってしまった。アクシデントが憎い。

そして数分が経ってようやく電車の動きが再開した。ほっとした。

無事に家に帰り、私は部屋に戻ると今日買った洋服のタグをその日のうちに外してタンスに入れた。

買った物はすぐにタグを外さないと外し忘れるからだ。

夕食はオムライスだった。母の作るオムライスはとても美味しい。

母とエレンと私の三人で夕食を先に食べる。おじさんは少し遅い時間に帰宅した。

夜の10時頃に帰宅したおじさんと、エレンが早速話し合っているようだ。

おじさんは夕食を取りながらテーブルの席でエレンと何やら話している。

その様子を、皿を洗いながら聞き耳を立てて聞いている私なのであった。

エレンの家は東側に冷蔵庫やレンジを置いて、ガスやまな板やシンクは西向きに作られている。

つまりテーブルを見渡せる対面式キッチンなのだ。

テーブルは北側の腰高の窓に一面をつけていて、四人座れる長方形の物。

こちらから見れば、エレンの顔はよく見えるがおじさんは背中しか見えない。

おじさんはちびちびお酒を飲みながらエレンとゆっくり話していたが…。

グリシャ「つまりエレンはミカサの家の今までのやり方でお金が欲しいと言うんだね」

エレン「ああ。そっちの方が普通だって聞いたし」

グリシャ「何か、やましい物でも欲しくなったのかな?」

エレン「いや、そういうんじゃねえけど」

グリシャ「エレン、嘘はいけない。親に言いたくないような物が欲しくなったんだろ?」

エレン「………いずれは必要かもしれねえんだよ」

と、エレンはとうとう白状したようだ。

グリシャ「ふむ。いずれ、ね。だったら必要になった時に切り替えればいいんじゃないかな?」

エレン「え、じゃあ……その時になったら切り替えてくれるのか?」

グリシャ「いや、切り替えないけど」

エレン「ええ……期待させるなよ、父さん」

グリシャ「ふふふ……エレン。一応、我が家の金は私が稼いでいるんだよ。その使い方を決める権利は私にある」

エレン「…………」

エレンがすっかりいじけてしまった。

エレン「どうしてもダメなのか?」

グリシャ「エレンの動機が弱いからね。いつも言ってるだろ? 「理由」をちゃんと言いなさいって」

エレン「…………バイトしようかな」

エレンがぽつりと、そんな事を言い出した。

エレン「うちの高校、別にバイト禁止してねえし。そう言う事ならオレ、自分の交遊費くらいなら自分で……」

グリシャ「もしそのせいで学業が疎かになったら私は学費をビタ一文も支払ってあげないよ、エレン」

エレン「うぐっ……!」

おっと、手厳しい答えが返ってきた。

グリシャ「そういうのを本末転倒と言うんだよ。エレン。アルバイトはまだ早い」

エレン「そ、そっか……じゃあ父さんはミカサに対しても同じようにするつもりなのか?」

グリシャ「それはミカサ次第だよ。私はミカサとは血の繋がりがない。扶養家族ではあるけれど、それ以前にミカサのお母さんの娘さんなんだ」

エレン「そ、そうなのか」

グリシャ「うん。エレンとミカサを同じようには考えてはいないよ。ミカサには選択する権利はあるが、エレンにはない」

エレン「まあ、それは分かるけども」

エレンはますます落ち込んでしまっている。

エレン「オレ、ショックだったんだよな。普通は親に買った物を報告したりしないっていうの。管理されている事が当たり前だと思ってたのに、それが違ってたなんて……それを知らない自分が恥ずかしかったんだ」

グリシャ「エレン、私が交友関係を広げなさいと言っていた意味が分かったかい?」

エレンは一拍置いて、すぐに頷いた。

エレン「ああ。父さんの言ってた意味、ようやく分かった。オレ、ミカサとの関係がなかったら、それを知るのがもっと遅かったと思う。アルミンとかしかまともに話してなかったから、それ以外の世界を知らなかった」

グリシャ「それが分かったのなら、もう少し詳しく説明してあげよう」

と言っておじさんはエレンに詳しい説明を始めたようだ。

グリシャ「お金というものは、大事な物なんだ。生きていく上では必ず必要な物だ」

エレン「それは分かる……」

グリシャ「でも同時に、その使い方を誤れば、身を滅ぼす物でもあるんだよ」

エレン「身を滅ぼす…? どういう意味だ?」

私にもその意味はいまいち分からなかった。するとおじさんは、

グリシャ「お金があれば欲しいと思った物を手に入れられる。それはとても怖い事なんだ」

と、まるで怪談話でも始めるような声色で話を続けた。

エレン「怖い…? 何で?」

グリシャ「例えば、ここに仮に100万円あったとしようか」

と、おじさんはティッシュの箱を100万円の代わりにして話を進めた。

グリシャ「この100万円を全部自由に使っていいとするよ。エレン、なら何に使う?」

エレン「え? 全部使っていいなら、そりゃあ……まずは食物を買うかな。後は生活に必要な衛生用品とか。それから新しい洋服、んで余ったら、漫画でも買うかな」

グリシャ「ふふふ……いい順番だ。だけどね、エレン。そういう使い方が出来ない人間も世の中には大勢いるんだ」

エレン「ど、どういう事?」

グリシャ「つまり、酒、タバコ、女遊び、ギャンブル。この四つにつぎ込む人間もいるって事だ」

エレン「え……そうなのか? オレはそんなのには使おうとは思わねえけど」

グリシャ「そういう思考を育てる為に、私は今まで小遣い制にしなかったんだよ」

と、おじさんはその真意を説明し始めたようだ。

グリシャ「お金を使う時に『何故それが必要なのか』という思考を何度も繰り返す事によって、本当に必要な物を優先するような子に育って欲しかったんだ。現に今、エレンは臨時収入が入っても、まず一番最初に「食物」と答えた。これは私の育て方が間違っていなかった事を証明しているよ」

エレン「そ、そうなのか。父さんはちゃんと目的があって、オレの買い物を管理していたのか」

グリシャ「うん。加えて言うならこういう思考の訓練は社会に出てからも確かに役に立つ。もし将来、エレンが会社を起こすような事があれば、会社の物を全て管理する必要が出てくる。そういう時に、予算を組んだりする場合に理由付けが出来ないと、やっていけないしね」

エレン「? んーんと、父さんはオレに会社を起こして欲しいのか?」

グリシャ「あくまで例えだよ。それ以外にも、エレンはちゃんと考えて行動するだろ? 私はそういう子に育って欲しかった」

エレン「そうだったのか……」

エレンが感動しているようだ。こういう話を聞くのは初めてなのかもしれない。

グリシャ「………というのは建前で、本当は未成年に酒タバコをやらせない為なんだけどね」

エレン(ズコー)

エレンは直後、顔を前のめりに伏せた。

エレン「と、父さん……」

グリシャ「高校生ともなれば誘惑も多いと思うけど絶対ダメだからな、エレン」

エレン「別に酒タバコに興味なんてねえよ……」

グリシャ「今はなくとも、いずれは、だろ?」

エレン「うっ……」

エレンは自分の言ったことがブーメランのように返ってきたようだ。

グリシャ「余計な金は持たないに限る。自分の自由になる金が欲しいのなら、まずは学業を優先させて少しでもいい大学に入りなさい。社会に出る前に勉強しないといけない事は山ほどある」

エレン「やっぱり父さんはオレに大学に行って欲しいのか」

グリシャ「出す準備はしているよ。必要なら大学院まで出してもいいと思ってる」

エレン「オレ、そんなに頭がいいほうじゃねえんだけど」

グリシャ「それはエレンがまだ、将来が漠然としているからだよ。目標が見えたらきっと、成績は伸びる。エレンはちゃんと努力出来る子だからね」

エレンがすっかり意気消沈しているようだ。これはどうてみても、ノックアウトである。

エレン「分かったよ。父さんがそこまで言うならお金は今まで通りでいい。ただ……」

エレンはそこで少し言いにくそうに呟いた。

エレン「もし万が一、本当に万が一、高校生の間に彼女が出来たら、その時だけは、その……」

グリシャ「ああ、その時は全部「デート代」でくくってあげるから。詳しい内容は聞かないよ」

エレン「…………助かる」

エレンの懸念は消えたようだ。まだ顔が赤いようだけども。

そんな訳でエレンは話が終わると自分の部屋に帰っていった。

グリシャ「まだ皿を洗ってるのかい? ミカサ」

ギクリ。

本当はとっくの昔に洗い物は終わっていたけれども。ついつい。

グリシャ「話は聞いていたんだろ? ミカサ。これからお金の使い方はどうしていきたい?」

ミカサ「私は……」

選択肢を突きつけられてしばし悩んだ。

選んだのは……


1.今までどおり、月々のお小遣い制を続けたい。

2.エレンと同じようにその都度貰う形に切り替える。

(*次のレスの秒数が偶数だと1番。奇数なら2番ルートで続けます)

13秒なので、エレンと同じようにその都度貰う形に切り替えるルート行きですね。
自由はないけれど、割と金額は使えるルートです。
グリシャさんが「いいよ」と言ってくれればだいたい買ってくれますので。

続きはまた今度で。もう寝ます。おやすみなさい。

ミカサ「私もエレンと同じやり方にしたい」

グリシャ「どうしてだい?」

ミカサ「この家の大黒柱はおじさんだから。私はもう、この家の子だから」

グリシャ「そうか。そう言ってくれると嬉しいね」

と、おじさんは少しはにかんで見せた。

グリシャ「でもそうなると、秘密のお買い物が出来なくなるよ。いいんだね?」

ミカサ「秘密にする程の物を欲しいと思った事はない」

グリシャ「今はないだろうけど、いずれ必要になると思うよ。ミカサもいつかは誰かのお嫁さんになるのだから」

そう言われてついうっかり、ぽっとなってしまった。

お嫁さん。確かにそうなれればいいなとは思うけれども。

まだ遠い先の未来に思える。だって私はまだ10代なのだから。

ミカサ「うん。大丈夫。秘密にはしない」

グリシャ「そうか。ではこれからは二人共、私のやり方でお小遣いをあげていくようにするね」

私は頷いた。そして台所を片付けて自室に戻る事にした。

おじさんはまだ一人で新聞を読みながらお酒を飲んでいる。

母は今、風呂に入っている。少しずつだけども、この家のリズムのような物を感じるようになった。

こんな風に何気ない日常が積み重なって徐々に新しい家族になっていくのだろう。

私が2階に上がると、エレンが階段のところで待っていた。

エレン「ミカサはどっちにしたんだ?」

それが知りたくて待っていてくれたのだろう。

ミカサ「エレンと同じやり方に変えて貰った」

エレン「いいのか?」

ミカサ「うん。私もこの家の子だから。おじさんの意向になぞるべきだと思う」

エレン「親父はミカサは選んでもいいって言ってたのに」

ミカサ「でも案外、おじさんのやり方の方が節約もうまくいくのかもしれない。以前の家計簿と比較してみるもの面白いかもしれないと思って」

エレン「……そうか。そう思うのならまあいいか」

そしてその時、丁度母が風呂からあがってきてエレンに声をかけた。

エレンが下に再び降りていく。母には「どうしたの?」と不思議がられた。

ミカサ「うん。お小遣いについておじさんと話してた」

ミカサの母「あらあら。そう言えば、ミカサの分のお小遣い、今月はまだ渡していなかったわね。うっかりしていてごめんなさい」

ミカサ「ううん。いいの。おじさんと話し合って、私もエレンと同じようなやり方にして貰う事になった」

ミカサの母「まあ、そうなの。あの人は本当に、甘やかすのが好きなのね」

ちょっとだけ困ったようにそう言う母だったがその心の底は嬉しそうだった。

ミカサ「でもちゃんと必要な物だけを買うので大丈夫」

ミカサの母「うん。ミカサは無駄遣いしない子だから信頼しているわ」

と、母は言ってくれた。そう言われたのが嬉しかった。

そんなこんなで、お金の問題は無事に解決して、明日の用意をしようと部屋に戻った。

そう言えばまだ時間割を紹介していなかったように思うので、ついでなので紹介しておく。


  月  火   水  木   金  土

1 現国 世界史 数学 世界史 物理 現国

2 数学 日本史 公民 日本史 化学 体育

3 英語 英語  地学 現国  地理 数学

4 地理 数学  生物 古典  英語 家庭

5 体育 古典  英語 公民  数学

6 体育 音楽  美術 体育  現国
           (保健)   


6限目までみっしりある上に土曜日は4限目まであるので最初はちょっとびっくりしたものだ。

中学時代より授業の量が多くなったし、何より種類が一気に増えた。

社会は世界史、日本史、地理、公民になったし、理科も地学、化学、物理、生物のよっつにバージョンアップした。

美術、音楽、家庭が週に1回ずつしかないのがちょっと寂しい。

木曜日の体育は、雨が降ったりしたら保健の授業をやることもある。

ちなみに一日の開始は8:30からショートホームルーム。

1限目は8:45分からの開始。50分ずつの授業だ。

もっと凄い進学校になると60分や70分も珍しくないそうなので、うちは普通の高校レベルだろう。

授業はだいたい、夕方の4時頃には終わる。それから7時、または8時頃までが部活だ。最大延長は確か9時迄だそうだ。

課外授業は3年生になったら希望者は受けられるそうだが、義務ではない。

学校によっては朝課外や夕方課外もあるところもある。

集英高校は全員強制で1年の頃から朝課外があるとパンフレットには書かれていたように思う。

>>383
時間割ズレまくりんご…orz
ちょっと見づらいのでtake2

月 現国 数学 英語 地理 体育 体育

火 世界史 日本史 英語 数学 古典 音楽

水 数学 公民 地学 生物 英語 美術

木 世界史 日本史 現国 古典 公民 体育(保健)

金 物理 化学 地理 英語 数学 現国

土 現国 体育 数学 家庭

こっちの方が見やすいかな? ごめんね。

明日は現国からか。現国のイアン先生はスマートで格好いい男性だ。女子の間でも人気がある。

数学はネス先生。エレンはアルミンの方が教え方がうまいと言ってたけれど、決してこの先生の説明が分かりにくい訳ではない。

私の経験上で言えば、ネス先生の教え方は分かり易い部類に入ると思う。ただエレンは数学に苦手意識があるせいでそう感じるのだろう。

英語はうちの担任のキース先生。あの強面で意外な科目を担当していると思ったが発音は完璧だった。人は見かけによらない。

体育は男子はリヴァイ先生で、女子はリコ先生。眼鏡をかけた小柄な女性の先生だ。

世界史はエルヴィン先生。大柄の金髪の男性の先生だ。日本史のナイル先生と良く一緒にいるところを見かける。

古典はキッツ先生。皆からは何故か「小鹿先生」と裏では言われている。

地学はモブリット先生。生物のハンジ先生と良く一緒にいるところを見かける。

噂ではモブリット先生の片想い説が浮上しているが…。真相は分からない。

化学はミケ先生。物理のトーマ先生や公民のゲルガー先生、地理のナナバ先生とも話している姿をよく見かける。

音楽はダリス先生。昔の音楽家のような髪型と顔立ちをしている。

美術はピクシス先生。この間、女子に「男子の裸体画を描かせたい」とセクハラ発言をしていたちょっとエッチな先生だ。

家庭科はイルゼ先生。そばかすのある若い女性の先生だった。

以上が、現在お世話になっている先生達だ。

………あ、用務員に警察を早期退職したハンネスさんという方がいたのを忘れていた。
 
ハンネスさんはエレンとの古い知人らしく、学校で会った時にエレンが凄く驚いていたのを覚えている。

あ、そう言えば肝心の校長先生と教頭先生を忘れていた。

校長先生は大変忙しい先生らしく、入学式の時にしか顔を見ていない。

確かまだ校長先生にしては若い男性だったように思う。体が凄く細い人だった。

名前は確か「ハジメ先生」だった。ちょっと珍しい名前だと思ったのを覚えている。

教頭先生は「バック先生」と言っていた。ハジメ先生よりも教頭先生の方が学校にいる率は高いんじゃないかと思う。

そんな感じで私の高校生活もあっと言う間に4月の後半だ。

新しい家族、新しい友達。そして先生達や先輩達。

毎日が慌ただしく過ぎていて充実していると思う。中学時代に比べるとはるかにいい。

明日の準備を夜のうちに終えて、早めに寝る事にする。もう11時に近い。

ミカサ「おやすみなさい」

壁際に並ぶ黒い熊のぬいぐるみ2体に寝る前の挨拶をして、私は布団の中に入ったのだった。






そして少し月日が流れて、4月30日。水曜日。

この日の6限目の美術の時間に、ちょっとした揉め事が起きた。

ピクシス先生が「やっぱりモデルは女子の方がいいかもしれんの」と言い出したのだ。

先週は静物画の鉛筆デッサンだったのに。この気分屋なところはまさに芸術家だ。

ピクシス「誰かモデルになってくれる女子はおらんか? モデルになってくれれば点数をボーナスしてやるぞい」

女子一同(ざわざわ…)

女子は顔を見合わせている。楽に点数を貰えるならと、ちょっとだけ心が揺れているようだ。

と、その時、ライナーが挙手した。

ライナー「ピクシス先生、あの、希望を言っても良いですか?」

ピクシス「なんじゃ?」

ライナー「モデルになる女子を男子の間で多数決で決めたいのですが」

女子一同「「「「えええー?!」」」」

ライナー「ダメだろうか?」

女子1「だってそれじゃまるで総選挙みたいじゃない」

女子2「アイドルのアレじゃあるまいし…」

ライナー「うっ……まあ、そう言われてしまえばそうなんだが」

ジャン「多数決だとまあそうなるよな」

実質、これでクラスのマドンナ決定戦になるので、女子は現実を見るのが辛くて渋い顔だ。

アニ「値踏みされているようで気分が悪いんだけど」

ユミル「そうだな。それはちょっと不公平じゃないか?」

ベルトルト「不公平?」

ユミル「ああ。そんな事言うんだったら、女子は女子で男子を選びたいよな?」

ミーナ「そうだね。女子も女子で投票したいよね」

ミカサ「だったらモデルを男子一人女子一人で行えばいいのでは?」

どのみち、イーゼルを組んで周りを囲んで絵を描くのだ。

グループを男女で分けても別に問題はない気がする。

ジャン「ミカサの言う通りだな。男子は女子をモデルに、女子は男子をモデルにして描けばんじゃねえの?」

ピクシス「なるほど。一理あるのう。では、今からモデル総選挙を行うぞ」

ピクシス先生はやけにノリノリである。こういうのが好きなのだろう。

という訳で、授業の最初にモデルを決める総選挙が行われた。

男子が選ぶ女子は>>389>>390の同点決勝となり、二回目の投票が行われる事になった。

(*同じ人物は選ばないで下さい。誰と誰を対決させたい?)

クリスタ

ミカサ

ジャン「だ、誰だミカサに入れた奴は……」

ジャンが何故か周りを見渡している。そんな犯人を探すような目をしなくともいいのに。

ミカサ「有難い事だけども、クリスタの方が多いかと思ってた」

クリスタ「ええ? 私はミカサかなと思ってたよ」

と、お互いに顔を見合わせる。

ピクシス「セクシーなのとキュートなの、どっちがタイプかという事じゃな。では最終決戦にいくぞ」

と言う訳で二回目は私かクリスタのどちらかだ。

さてさて、開票の結果…。

(*次のレスの秒数が偶数ならミカサ、奇数ならクリスタがモデルになります)

ミカサ「?!」

私が11票、クリスタが9票で2票差でなんと私が勝ってしまった。

ジャン「ってことは、モデルはミカサで決定だな」

ライナー「くそお……」

ライナーが悔しそうにしている。クリスタをモデルに描きたかったのだろう。

何だか申し訳ない気持ちでいっぱいだけども、11人もの人が私を推してくれたのだから頑張らねば。

ピクシス「よし、ではこちらのチャイナドレスか、ナース服か、婦人警官の格好になって貰うぞ」

ミカサ「?!」

どこからそんな衣装を用意したのか3着が出てきた。

ライナー「な、なななな……そんな衣装まで用意していたんですか?!」

ジャン「用意が良すぎる……」

ライナーとジャンは顔を赤らめつつも反対はしないようだ。

ピクシス「ほんの遊び心じゃよ。ちょっとサイズがきついかもしれんが、それはそれで良かろうて」

サイズを見てみるとMサイズだった。これは、上はよくても下半身がやばい気がする。

ミカサ「あの……洋服のサイズがMだとかなりきついんですけど」

クリスタ「Mサイズしかないなら、私がやった方が良かったかもね。私、Sサイズだからちょっとぶかぶかかもしれないけど、ピチピチよりかはいいもの」

ライナー「うおおおおおお!」

ぶかぶかの衣装を着たクリスタを想像してしまったのか、ライナーは血の涙のようなものを流している(あくまで比喩だが)。

ピクシス「大丈夫じゃ。多少伸びるように生地はストレッチ素材だしの」

びよーん。あ、本当だ。割と伸びる素材で出来ている。

さて、どの衣装を着ようか。チャイナかナースか婦人警官。

ミカサ「チャイナが一番無難かもしれない」

スリットがあるけれども、これが一番スカート丈が長いので足が隠れる。

ミカサ「チャイナにします。いいですか?」

ピクシス「構わんよ」

という訳で私はチャイナ服を着てモデルをやる事になってしまった。

ピクシス「続いては女子による男子の総選挙じゃな」

女子は15名の奇数なので、ここは恐らく一気に決まるだろう。

ピクシス「では開票していく。あ、男子は別に衣装を用意しておらんから、パンツ一枚でよかろ」

男子一同「「「?!」」」

ジャン「まじかよ。ヌードじゃないだけマシだけど」

アルミン「寒そうだね…」

と、男子はざわざわし始めた。可哀想に。

ピクシス「一番多かったのは……>>394じゃな」

(*1組の男子の名前をお答え下さい)

(ちなみに候補はアルミン、エレン、コニー、サムエル、ジャン、ダズ、トーマス、トム、ナック、フランツ、ベルトルト、マルコ、マルロ、ミリウス、ライナー(五十音順)になります)

ベルトルト

ベルトルト「えええ? まさかの僕?!」

ユミル「私はベルトルさんにいれたぞ」

アニ「私も」

クリスタ「私も!」

ミーナ「うん、この間の球技大会、格好良かったもん」

女子はベルトルトを囃し立てている。確かに勇気を振り絞ってGKに戻ってきたベルトルトは格好良かった。

見ているところは皆、見ているのだ。

ライナー「良かったじゃないかベルトルト。人気者だぞ」

ベルトルト「で、でもパンツ一枚って……」

ユミル「あ、ポーズは出来れば体育座りで頼むぞ。お前の一番楽なポーズだろ?」

ミーナ「分かる。ベルトルトの体育座りって何故か和むよね」

ベルトルト「皆、酷い……」

という訳で男子は私のチャイナ。女子はベルトルトのパンツ一枚、体育座りのポーズを描く事になった。

そう言えば私の方はどんなポーズをすればいいのだろうか?

ピクシス「出来れば足は組んで椅子に座って欲しいのー」

ミカサ「こうですか?」

ジャン「!」

エレン「?!」

ピクシス「そうそう。いいぞいいぞー。そのポーズで30分じゃ。誰か写メもとっておけ。来週も同じポーズを続けて描くからの!」

ベルトルト「ええええ……今日だけじゃないのか」

ベルトルトはがっくりしている。1時間だけでは確かにじっくり描けないのでそれが妥当だろう。

そんな訳で美術の時間は椅子に座って足を組んだポーズでじっとしているという何とも暇な時間になってしまった。

体を動かさないというのも、逆に辛い。あと皆に一斉に見られているというのも、変な気分だ。

まあ、無言でいればいいだけなので、それはそれで楽だけども。

ふと、エレンの方を見ると何故か視線を逸らされた。

首を傾げると「動くなよ」と小声で言われてしまった。ああ、そうだった。

そんな訳でたまにあくびをしながら、美術の時間はのんびり終わった。

来週もまた同じような事をするけれど、仕方がない。これも授業だ。

皆の途中経過はどうだろうか。授業が終わった後、皆のスケッチブックを見せて貰った。

ミカサ「!」

ユミルの絵が凄くうまかった。なんというか、似てる。

ベルトルトの可哀想な雰囲気というか、その特徴がよく出ていて、見ていて和む絵だった。

クリスタはまだ顔は描いていないが、全体の体のバランスがよく取れていた。

サシャは……まさかに画伯のような絵だったとだけ言っておこう。

アニ「皆、結構うまいね」

ミカサ「アニはどこまで描けたのだろうか?」

アニ「まだ全然。絵を描くのは難しい」

アニは美術に少し苦手意識があるようだ。でもよく描けていると思う。

アニ「ベルトルトの体のバランスが、描いてみると意外と難しかった」

クリスタ「190cm超えているだけあるよね。手足長いなあって思った」

ユミル「そうだな。でも描いてて結構楽しかったぞ」

サシャ「ですね! 来週もまた楽しみです」

ユミル「男子の方の絵も見せて貰おうぜ」

ユミルがライナーやエレンの絵を覗き込んでいた。

ライナーは私の体を全体的に捉えてバランスよく描いてくれていた。

ユミル「なんか普通の絵だなあ。もうちょっとバランスずらしてもいいんじゃねえか?」

ライナー「そうか? どっちにずらしたらいい?」

ユミル「そうだなー…私だったらミカサの体の位置をもうちょい右にずらすな。こう、トリミングして…」

と、ユミルは両手を使って四角を作って端を切り落とすような動作をした。

ライナー「おお、なるほど。そっちの方が確かにいいな」

ユミル「まあ好みによるんだろうけどな」

ライナー「いやいや、助かった」

クリスタ「エレンはどんな風に描いたの?」

エレン「…………あんまりうまくはねえよ」

と、エレンは言いながらも途中の絵を見せてくれた。

エレンの描いた絵は……上半身より上の私の姿だった。

ユミル「何で下半身描いてねえの? 椅子に座ってるポーズなのに手抜きだろこれじゃ」

エレン「手抜きじゃねえよ。顔の方を描きたかったんだよ」

ユミル「いや、ポーズとその意図を汲み取れよ。多分これだと減点されるぞ」

エレン「え……まじか。でももうここまで描いちまったし描き直すのは嫌だな」

ユミル「だったら相当気合入れて顔の表情を描けよ。そっちで魅せるしかねえな」

エレン「分かった。頑張ってみる」

ユミルが何故か男子にアドバイスをしている。

確かにこの中だったらユミルが一番、絵心があるように思えた。

ユミル「ん…? ぶっ……コニーの絵、すげえ!」

サシャ「ぶっ……これは斬新な構図ですねえ」

コニーのスケッチブックを覗き込んだ二人は爆笑していた。どんな絵なのだろう?

私も気になったので見せてもらったら……。

ミカサ「お、おっぱいの部分が一番、大きい。というか顔が入りきれてない」

コニー「悪い。胸から先に描いたら顔が入らなくなった」

ミカサ「酷い。これでは私である必要がない」

コニー「わざとじゃねえって! 計算通りにいかない事もあるだろ?!」

アニ「いや、普通は計算して描くもんだからね」

と、アニがツッコミを入れている。全くだと思った。

コニー「他のやつらはちゃんと顔まで入れてるのか?」

と、コニーは他の男子の絵も見に行った。

コニー「ジャン、お前のどうなん? 見せてくれよ」

ジャン「ああ? まだ全然途中だよ。ほれ」

ユミル「!」

クリスタ「!」

サシャ「おおお……これは」

ミカサ「凄い。まるで写真みたい……」

ユミルの絵が似顔絵師が描く絵(所謂漫画の絵に近い感じ)だとすれば、ジャンのそれは写真のような絵の描き方だった。

しかも私の足のラインがとてもうまく描けていて、まるで額縁に入れて飾って置ける絵だと思った。

ユミル「負けた……一人だけレベルが違いすぎるだろ」

ジャン「そうか? まだこれでも5割ってところだが」

サシャ「これで半分って事ですか?! 完成品は絵から浮き出てきそうですね!」

ジャン「ああ、浮き出るような立体感がまだ足りてねえからな。陰影足りてねえし」

ミカサ「もう十分完成しているようにも見えるけども」

これ以上まだ描き進めるというのか。凄い。

ジャン「あ、ああ……オレの絵はまだまだだよ。本物に比べたら」

と、何故かジャンが私を見てふいっと視線を逸した。

コニー「瓜二つに描くつもりなのか。すげえな。なんかコツとかあんの?」

ジャン「コツっていうか……鉛筆の先をヤスリで削ってから描いたりするけど」

コニー「すげえ! 準備がいいな! へー!」

ジャン「ヤスリがねえなら普通にカッターで鉛筆削って先の方を少し細めにしておけば、それだけでも大分描きやすさが違う」

コニー「そりゃいい事聞いたぜ! サンキュ!」

と、コニーは早速カッターで先を削る事にしたようだ。

ごめん。キリ悪いけどここまでで。眠い。

体育祭まで一気に時間飛ばすつもりだったけど、
美術の授業を挟むつもりだったの忘れてた。間違えてすまん。
この先生の授業風景が見たいとか、
希望があれば出来るだけ合間合間に出していきます。

ではまたノシ

乙です!いつも楽しみにしてます!ベルトルさんの体育座りが想像できておかしいvv


授業じゃないがエレン達がハンネスさんと関わるところが見たいな

ミカサのチャイナ…!
足がさぞかし綺麗だろう

>>401
ベルトルトさん、パンツ一枚で体育座りというシュールなモデル。
超描きたいと思いました。個人的に。

>>402
了解です。ハンネスさんの出番出す。

>>403
ジャンは気合入れて描いてますwww
エレンはちなみに照れくさくて足を描けてないです。


体育祭の前にもうちょい書きたいことが増えたので寄り道する。

ジャン「もうちょい続けて描きたい気分だが、続きは来週だな」

と言いながらジャンも後片付けを始めた。

ジャン「………そう言えばミカサ、GWは何か予定とか入っているか?」

ミカサ「いいえ。特に何も」

演劇部の方でも特に何も言われていないし、恐らく家にいる事になると思う。

その事をジャンに伝えると、ジャンの方から「だったらミカサの家に遊びに行ってもいいか?」と誘われた。

ミカサ「え? 私の家?」

ジャン「ああ。その……マルコも一緒に」

しかし私の家はエレンの家でもあるので、エレンの許可無しに人を招待するのは良くないだろう。なのでここはエレンにも念の為に聞いてみる。

ミカサ「エレン、いいのだろうか?」

エレン「はあ?! 何でうちに来るんだよ」

後片付けをしながらエレンが不機嫌そうに答える。

エレン「マルコは別にいいけど、ジャンはダメだ」

マルコ「まあまあエレン、そう意地悪しないであげてよ」

ジャンが少しだけ涙目だ。確かに意地が悪いと思った。

ミカサ「何でそうジャンに意地悪するの?」

エレン「それは……別にいいだろ。オレとジャンはそんなに仲良くねえし」

アルミン「まあ、でも喧嘩するほど仲がいいとも言うよね」

エレン「アルミン、どっちの味方だよ」

アルミン「え? 僕? 僕はどっちの味方もしないよ」

と、意味深に笑っているアルミン。

アルミン「GWは僕も予定は今のところ何もないかな。遊びに行ってもいい?」

エレン「おう、勿論いいぞ。うち来い」

マルコ「だったら皆で遊べばいいじゃない。ね? エレン」

エレン「………分かったよ。仕方ねえな」

ジャンがその直後、何故かガッツポーズをして喜んだ。

やっぱり仲間外れにされるのは誰だって悲しい筈だ。うん。

ミカサ「では、私もそのつもりで準備しておく」

と言う訳で、また先の予定が埋まりそうだ。

皆で集まるなら何かお菓子でも焼いて用意しておこう。

そんな風に思いながら、その日は終わったのだった。





次の日。5月1日。この日は放課後、委員会活動が行われた。

月の初めの日、月に一度のペースで委員会の会議が行われるようだ。

私達は演劇部の方でもリヴァイ先生とは会っていたが、委員会の方で会うのは初めてだった。

リヴァイ先生の担当クラスは3年1組なので3年生のクラスに初めてお邪魔する事になった。

実は1年生は3階、2年は2階、3年生は1階という教室の割り振りになっている。

音楽や美術や家庭などの特別教室は4階。文化系の部室も4階にほぼ集合している。

別館の3階には生物、地学、化学、物理の理科系の教室。

別館の2階には校長、教頭先生の部屋。別館の1階には職員室がある。

まだ校舎内の全ての部屋を見て回った訳ではないが、だいたいこんな感じだ。

リヴァイ「今日は新しい委員の紹介と、あと委員長と副委員を決めたいと思うが……」

リヴァイ先生は集まった生徒を見渡して、

リヴァイ「多数決で決めるのも時間の無駄だから指名して決める。3年1組のオルオ、ペトラ。お前らやれ」

実はオルオ先輩とペトラ先輩はここでも縁があり、一緒の教室にいた。

まさか委員会でも顔を合わせるとは思わなかったが、いやはや。

オルオ「じ、自分でいいんですか?」

リヴァイ「不服か?」

オルオ「いいえ! とんでもないです。ご指名とあれば、是非ともやらせて頂きます!」

と、言う訳で整備委員長はオルオ、整備副委員はペトラ先輩に決まったようだ。

リヴァイ「整備委員の活動は月に一度、校内の全体の点検を行うのが主な仕事だ。まず各クラスの掃除用具の点検。不備のある用具が見つかったらチェックして報告しろ。新品と交換する。その後は、校舎の外に出て落ち葉の清掃や危険物(割れたガラス等)がないかのチェックだ。それが終わったら……」

と、細々としたいくつかの仕事があるようだ。月に一度とはいえ、地味に大変な気がする。

リヴァイ「……以上だ。手早くやればそう時間はかからん。全員で一気に終わらせるぞ」

一同「「「はい!」」」

という訳で、普段の掃除の時間とはまた違った校内清掃が始まったのだった。





リヴァイ「ふむ。終わったようだな」

リヴァイ先生のチェックも全員分済んで無事に終わったようだ。

前評判では恐れられていたリヴァイ先生だが、こうやって見てみるとさほど怖い先生には見えなかった。

心配が杞憂に終わりそうでほっとしていたら、直後、リヴァイ先生の顔色が変わった。

リヴァイ「……おい、お前」

3年男子1「は、はい…!」

報告していた男子がびくっと肩を震わせた。

逃げようとした彼の頭をひっつかみ、何かを確認している。

リヴァイ「………髪の毛にタバコの匂いが微かに残っている。どこで吸った」

3年男子1「いえ、吸ってません! 吸ってるのは父親で、移り香です!」

リヴァイ「分かった。では保護者に確認しよう。少し待ってろ」

3年男子1「!」

途端、男子の顔色が変わった。ああ、どうやら嘘をついていたようだ。

携帯で何やら男子生徒の担任の教師に連絡を取っているようだ。

3年男子1「す、すみません! 嘘をつきました! その……昼休みに校内の便所で少しだけ、吸いました」

と、その男子が白状した瞬間、リヴァイ先生は携帯を切っていきなりその男子の頭を掴んで一発、腹バンを決めた。

エレン「!」

明らかに行き過ぎた指導だった。これは暴力教師として訴えられてもおかしくない。

タバコを吸った男子生徒は確かに悪いが、皆が見ている前で腹バンは酷い。

エレンはちょっとだけ汗を掻いて驚いている。

リヴァイ「………未成年の喫煙は校則ではなく、法律で禁止されているのは知っているよな?」

3年男子1「は、はい……(うげえ…)」

リヴァイ「知っていて、その上で校内で吸ったという事は、そのせいで他の奴らにまで迷惑がかかる事も知っているよな?」

3年男子1「は、はい……」

リヴァイ「それでも誘惑に負けて吸ったと言うことは、貴様自身が悪いって自覚はあるんだな?」

3年男子1「は、はい! もう二度と吸いません! 絶対に!」

リヴァイ「……………二度目はないぞ」

と、リヴァイ先生はそれ以上は言わず、今回だけは見逃すことに決めたようだ。

エレン「き、厳しい先生だな……」

皆が解散した後、エレンがポツリと言うとオルオ先輩は「そうか?」と首を傾げた。

オルオ「あれでも丸くなった方だぞ。オレ達が1年の頃は、もっと厳しかった」

ペトラ「そもそもリヴァイ先生に会うって分かってる日にタバコ吸ってくるってのが舐めてる証拠よね」

と、二人共男子生徒を全く擁護しない。

だが1年生は初めて目の当たりした体罰に目を丸くしているようだ。

それもその筈だ。私達の世代は体罰に関してはかなり厳しく問われて育っているからだ。

解散の言葉があったのにも関わらず、まだ何名かの生徒は今の指導に対して動揺を示している。

ミカサ「でももし、今のを訴えられたらリヴァイ先生が不利なのでは……」

私が本音をポツリと言うと、ペトラ先輩は「それはないと思うよ」と言った。

ペトラ「そもそもあの男子がタバコ吸ったのが悪いんだし。もし訴えたらその事実が保護者に露見しちゃうでしょ」

ミカサ「でも、そういう自分の子供の非を棚に上げて訴えてくる親も多いので……」

私は過去にそういう場面を見たことがある。小学生の頃は特にその傾向が酷かった。

オルオ「まあ、でもそん時は見ていたオレ達が証人になるしかねえよ」

ペトラ「そうね。というか、この程度の事でウダウダ言う方も言う方よ」

と、さすが3年生なのか二人は全く動じていない。私自身は、少しだけ複雑な心境だったが。

ペトラ「さてと、委員会の方は終わったし、遅くなったけど部活に合流しましょ」

と、ペトラ先輩はのんきに言っていた。その後ろ姿を私達も追う。

エレン「………」

エレンは何やら思案げな表情だった。

ミカサ「エレン?」

エレン「いや、オレの親父とは違った意味で、大人だなって思っただけだ」

と、どうやらエレンは自分の父親とリヴァイ先生を比べていたようだ。

エレン「今のってさ、どう見てもリヴァイ先生の方が立場、不利になるよな。それなのに、指導したって事は、それだけ相手に情がねえと出来ねえよ」

なるほど。そういう見方もあるかもしれない。

エレン「なんか、リヴァイ先生ってタバコに対して恨みでもあるのかな。憎んでいるようにすら見えたけど」

ミカサ「そうね。ちょっと傍で見ていて神経質過ぎるような気もしたけれど」

リヴァイ先生にとってタバコには何か因縁があるのかもしれない。

だがその時点はその真相は分からず、ふとした偶然のおかげで、その真相を知る事になる。

部活が終わった後、下駄箱に向かう途中で、ハンネスさんとリヴァイ先生が話し込んでいる姿を偶然目撃したからだ。

エレン「あ、ハンネスさんだ。こんばんはー」

時間は既に7時を過ぎているのでそう挨拶するとハンネスさんも「よう!」と返した。

ハンネス「今、帰りか?」

エレン「ああ。部活終わったから帰る」

リヴァイ「では今日の分の点検結果の補充の発注を頼む」

ハンネス「了解了解♪」

と言ってリヴァイ先生は先に職員室に帰っていった。

エレン「それ何?」

ハンネス「ああ、今日委員会があっただろ? 整備委員のお仕事の引き継ぎだ。補充する分の掃除用具の発注は俺の仕事なんだよ」

エレン「へーそうなんだ。事務員さんじゃなくて用務員の仕事なのか」

ハンネス「事務員さんは書類の作成の仕事の方がメインだな。俺は校内の雑用係だよ」

エレン「そっかー…ハンネスさんが用務員になったと知った時はびっくりしたけど、板についてきたみたいだな」

ハンネス「ははは……まあな。俺もまさかこの学校でエレンと再会するとは思わなかったよ」

ハンネスさんはエレンの小さい頃からの知人で、近所に住んでいるそうだ。

怪我が原因で警察をやめて第二の人生を歩いていると言っていた。

ハンネスさんとは部活終わりにこうやって時々会う。丁度、校内の見回り時間とかち合うのだ。

ハンネス「再会で思い出したが、まさかあのリヴァイが学校の先生とはねえ…」

エレン「え? ハンネスさん、リヴァイ先生の事知ってるの?」

ハンネス「ああ。知ってるも何も、俺が若い頃、警官の頃に何度も補導したよ。あいつを」

エレン「ええええ? リヴァイ先生を補導したって……」

ハンネス「中学、高校生の頃かな。有名な不良だったんだよ。毎日タバコ吸っててさ。彼は所謂不良チームの頭だったんだよ」

おお、まるで何処かで聞いたようなドラマの先生の経歴だ。

ハンネス「今はタバコを吸ってないようだが……アレかな。思春期の頃に吸いすぎたせいで身長が伸びなかった事を気にしているのかもしれん」

エレン「え……じゃあ、まさか……」

ミカサ「恐らく、そうなのかもしれない」

ハンネス「ん? どうした?」

私は今日のリヴァイ先生の指導の件をハンネスさんにちょっとだけ説明した。

するとハンネスさんはぶっと吹き出して笑いを堪えきれずしゃがんでしまった。

ハンネス「あーははっはあ! こりゃあたまげたぜ。それは確実にタバコを吸ってた事を後悔しているな」

エレン「身長伸びなくなるっていうのは本当か? ハンネスさん」

ハンネス「まあ、統計学的に見ればそうだな。成長期に酒やタバコをやりすぎるとそうなるっていう説はある。遺伝的要素もあるが、成長は外的要因もかなり影響するからな。その辺の事は、イェーガー先生の方が詳しいんじゃないか?」

エレン「なるほど……オレ、絶対酒とタバコはしないでおくよ」

エレンは身長を気にしているので余計にそう思うのだろう。

ハンネス「まあやらないに越したことはないがな。イェーガー先生もその辺の事は厳しいだろうし」

お医者さんという職業上の立場もあるだろうが、確かにおじさんも厳しいと思った。

ハンネス「ただあんまり真面目に生きるのもそれはそれで問題だぞ、エレン」

エレン「え? 何でだよ」

ハンネス「自分の体の酒の限界がどの辺にあるのか早めに知っておけば、社会に出た時に役に立つ。知りたいなら、今度俺の奢りでこっそり飲ませてやるよ」

エレン「元警察官が未成年に飲酒を勧めてくるなよな!」

エレンがふーっと怒ってる。この場合はエレンの方が正しい。

ハンネス「ははは! 冗談だよ。ま、二人共気をつけて帰れ。最近、変な奴も多いからな」

エレン「おう! じゃあまたな! ハンネスさん!」

と言う訳でハンネスさんとはそこで分かれて私達は家に帰る事になった。

エレン「にしてもリヴァイ先生が元不良だったなんてなあ、想像つかねえや」

ミカサ「…………」

エレン「ってことは喧嘩とかも強いんだろな。きっと。ちょっと見てみたい気もするけど」

ミカサ「…………」

エレン「ん? どうしたミカサ?」

しまった。ついつい黙り込んでしまった。

ミカサ「何でもない。リヴァイ先生の過去がちょっと意外だと思ってただけ」

本当は少しだけ違うのだが、誤魔化した。

エレン「そうだなー。見た目は真面目そうに見えてたから余計にそう思うぜ」

と、エレンは私の内心の葛藤に気づかずにいるようだ。

実はこの時、私はハンネスさんの言葉を思い出していたのだ。

そう、酒やタバコは成長を阻害する効果もあるという説について。

私の場合は身長を「止めたい」と思っているので、もしかした効果があるのか? とうっかり考えてしまったのだ。

いやいや、でもダメ。私はエレンと同じお金の使い方をすると決めたので。そんな誘惑に負けてはいけない。

私は未成年なのだから、酒やタバコはしてはいけない。おじさんに怒られる。

エレン「人は見かけによらねえって事だな」

とエレンは言いながら、私達は今日も無事に家に帰り着いたのだった。








そしてまた月日が流れて、GWに突入した。

部活の方はGW中は一日だけ活動があるようだったが、全員強制ではないようだった。

予定が先に入っている子は無理に出てこなくてもいいと部長のオルオ先輩に言われたので、今回だけは自分の予定を優先させて貰う事にした。

5月3日。その日の午前中に多めにクッキーを焼いておき、遊びに来るジャンとマルコとアルミンの三名を待っていた。

12時頃に三名はうちにやってきた。玄関で出迎えるとジャンは「でけえ家だなおい」とびっくりしていたようだった。

その気持ちは良く分かる。私も引っ越してきた当初はその大きさに驚いたものだった。

まずイェーガー家には駐車スペースが2台分ある。

南西に位置する駐車場から右にあがって玄関。家全体の位置からすると南向きの中央玄関だ。

入ってすぐ左側、西側には南北に長いおじさんの書斎がある。

玄関から入って左側にはリビング、そして和室の六畳程の仏間があり、お縁もある。

リビングと仏間の北側が食堂と対面式の台所だ。

風呂やトイレや洗面は食堂の西側にある。家の全体で見ると、中央北寄りだ。

そして階段は家の中央あたりにある。玄関を入ってすぐ左側の廊下を進んで右手に螺旋階段があり、そこを登って、左手に曲がると私の部屋。階段を登って右手に南に進むと、エレンの部屋だ。

おじさんの寝室は西側だ。エレンの部屋は真ん中になる。私が東側だ。

そして私の部屋とエレンの部屋は大きなベランダを通じで行き来も出来るようにもなっている。

以上がイェーガー家の大体の間取りである。あ、ついでに言うならお庭も少しあるので、ガーデニングも出来る。

この間取りを見て「広い家だな」と思わない人はよほどのお金持ちの家に育った方だけだろう。

エレン「まあ、親父が建てた時に広めに作ったおかげだけどな」

ジャン「広めどころじゃねえよ。いいな……いい家に住みやがって。羨ましい」

と、ジャンは遠慮無しに感想を言っている。

エレン「広いと掃除が結構大変だけどな。三人とも、昼飯は食ってきたのか?」

マルコ「うん。食べてきた」

アルミン「僕は食べてないや」

ジャン「パンしか食ってねえな」

エレン「バラバラだな。まあいいや。じゃあ腹減ってる奴はミカサが朝に作った肉じゃがの残りでいいよな?」

ジャン「料理はミカサが作ってるのか?」

ミカサ「毎日ではないけれど。今日は朝から母とおじさんが出かけているので」

新婚さんなのだ。その辺は気を遣っているのである。

エレン「親父の休みもそんなにある訳じゃねえしな。休みの日はおばさん優先だよ。食べたい奴は手あげろ」

マルコは食べてきたというのに結局もう一回食べる事にしたようだ。

そして三人が昼食をとった後、エレンの部屋に皆集まる事になった。

ジャン「くそ……オレの部屋の倍近くある」

エレンの部屋に入るなりまた嫉妬するジャンにエレンもうんざりしているようだ。

エレン「いちいち嫉妬するなよ。面倒臭い奴だな」

ジャン「いや、するなって言うほうが無理だろ。なあ、アルミン」

アルミン「え? 僕はもう慣れたよ。小さい頃から遊びに来てるし」

と言いながら勝手知ってるエレンの部屋のゲーム機にスイッチを入れているアルミンだった。

ジャン「ゲーム機いろいろあるな。うあ……お前、まだSFC(スーパーファミコン)持ってるんか?!」

エレン「まだ現役だが何か?」

ジャン「いや、SFCには名作多いから分かるが、今はもうWiiやPS3の時代だぞ」

エレン「そっちもそっちで持ってるけどな。でもソフト数で言ったらSFCとPSとPS2の方が多いかもな」

アルミン「あ、プレステ2のスイッチ入れちゃったけど、SFCの方やるの?」

エレン「ジャンは何がやりたいんだ?」

ジャン「この中だったらこれやってもいいか?」

ジャンが手に取ったソフトは………。

(*ゲーム名を記入下さい。>>1が知らない場合はウィキ等で調べてくるので続きに時間がかかるかも)

(*タイトルは若干、本物を適当にもじるのでご了承下さい)

皆で鑑賞モードで行きますね。64でいい?
細部は省略挟んでそれっぽく書いていきます。

エレン「セルタの伝説~時のオカリナ~か~でもそれRPGだから皆でやるのには向かないぞ」

アルミン「しかもそれ、64の方だよね。最近、64は全然やってないけど」

エレン「ちょっと待て。押し入れに片付けてる筈……ああ、あったあった」

と言ってエレンは押入れからまた別のゲーム機を取り出した。エレンはゲームコレクターのようである。

エレン「まあオレもやるの久々だし、細部は忘れてると思うからいいけどな」

ジャン「そうか。いやオレ、昔これ欲しかったんだけど、結局買えなくてやれずにいたゲームなんだよ。不朽の名作ってやつだろ?」

エレン「ん~まあ好みは分かれると思うけどな。オレは割と好きだぞ」

と言う訳でPS2は一旦、消してセルタの伝説をやる事になった。

ウイイイン………

ゲームソフトを読み込んで早速スタートである。

主人公の名前は変更も出来るようだが、ここはリンクのまま進めるようだ。

光る妖精がふわふわ飛んでいる。金髪の緑色の三角帽子をかぶった少年がベッドで寝ている。

妖精『リンク! ねえ、おきてよリンク!』

リンク『ZZZZZ』

妖精『デクの樹サマがお呼びなのよ、リンク、おきなさい!』

少年が妖精に無理やり起こされるところから始まるようだ。

妖精『んもう! こんなねぼすけがハイラルの運命をにぎってるなんて、ホントかしら…?』

ミカサ「ハイラルとは何だろう?」

エレン「まあ、追々分かる」

あ、やっと主人公の男の子が目覚めたようだ。

妖精『やっと目がさめたのね? ワタシ、妖精のナビィ!』

ナビィ『デクの樹サマのご命令でこれからワタシがアナタの相棒よ、ヨロシクね』

いきなり相棒が出来た。展開が早いと思った。

ナビィ『デクの樹サマがお呼びよ! さあ、いっしょに行きましょ!』

主人公を操作出来るようになったようだ。リンクの部屋はまるで、木の中に部屋を作ったような不思議なお部屋だった。

そこを出て行くと、そこには、



コキリの森


部屋から出ると、少女が駆け寄ってくる姿が見えた。

全身の髪と洋服が全体的に緑色に染まっている。

その少女の傍にもナビィと同じような妖精らしきものが浮遊している。

少女『やっほーリンク!』

主人公を動かして少女の元に駆け寄ると、

少女『わぁ~っ、妖精ね! やっと、リンクのとこにも妖精がやってきたんだ! よかったネ!』

うふふと笑っている。

少女『何だかサリアまでうれしくなっちゃう!』

この緑色の少女はサリアと言うらしい。

サリア『これでリンクもりっぱなコキリ族の仲間よネ!』

サリア『え? デクの樹サマのご用なの?』

サリア『スゴイじゃない! デクの樹サマとお話しできるなんて!』

サリア『アタシ、ここで待ってるからデクの樹サマのところへはやく行ってあげて!』

ジャン「あれ? なんか動かしにくいな……」

エレン「64だからな。慣れるまで頑張れ」

ジャンは苦戦しながらコントローラーを操作しているようだ。

途中で何故か、横走りを始めて奇妙な動きを繰り返したので、ちょっと面白くて笑ってしまった。

ミカサ「ジャン、その動きは一体……」

ジャン「わざとじゃねえ! わざとではないんだ!」

エレン「まあ、頑張れ」

エレンはニヤニヤ意地悪そうに笑っている。コツを教えてあげればいいのに。教える気はなさそうだ。

>>413
訂正。

玄関から入って右側にはリビング、そして和室の六畳程の仏間があり、お縁もある。

ごめん。左側が書斎なのに、二回左側って書いてた。
正しくは入ってすぐ右側がリビング、和室です。

先に進むと何故か男の子に通せんぼをされた。

男の子『なんだ、「妖精なし」!』

酷いあだ名をつけられているようである。

男の子『デクの樹サマになんの用ダ! 妖精もいない半人前のくせに…アレ?』

よく見てみよう。目の前にいる。

男の子『なに~っ!? デクの樹サマに呼ばれたって? なんだよっ!』

男の子『なんでこのミドさまじゃなくてオマエなんだよっ!』

どうやらこの男の子はミドという名前らしい。

ミド『お、おもしろくね~っ!!』

ミド『オイラはみとめねぇゾ! オマエなんてまともな「そうび」もしてないジャンか!』

ミド『剣(ケン)と盾(タテ)ぐらい持ってなくちゃデクの樹サマのお手伝いなんてできないゼ!』

ミド『ま、オイラも持ってないけどナ…』

持ってないのか。ならミドもお手伝いは出来ない。

ミド『ここを通りたきゃ剣と盾ぐらい「そうび」してきナ!』

ジャン「所謂、ここはチュートリアルだな」

ミカサ「?」

エレン「ゲームの中で必要な操作方法をキャラクターが丁寧に教えてくれる場面の事だ」

ミカサ「なるほど。剣と盾を探して来ないといけないのね」

ジャンは画面の中をいろいろ動かして剣を見つけたようだ。


コキリの剣(けん)を入手した!

そうび画面に切りかえて、カーソルで選んでAでそうび。


なんて丁寧なゲームなのだろう。初心者には非常に有難いゲームだと思った。



コキリの仲間の宝物。

しばらくの間借りておこう! 表に出たら「れんしゅう」だ!


剣を回収して次は盾だ。

ジャンが主人公を動かした瞬間……

リンク『あいた! (ビシッ!)』

大きな岩が転がってきてダメージを食らったようだ。可哀想に。

ジャン「ちょ、いきなりくるなよ!?」

エレン「ククク……まあ、初見じゃこうなるよな」

アルミン「ああ、遠い記憶が蘇るよ」

どうやらエレンとアルミンも経験者のようだ。

ジャン「ああもう、盾は買ってくる」

地味にお金が溜まっていたようなのでジャンは盾を買うことにしたようだ。

盾を購入して装備したリンクは先程のミドのところに戻る。

ミド『デクの樹サマのとこ行きたきゃ剣と盾くらいは「そうび」してこい…っアレ?』

ミド『なんだ、デクの盾つけてるじゃん』

ミド『あ!?』

ミド『そ…それ、「コキリの剣」? ちくしょーっ!!』

ミド『でもヨ、そんなモン持ってたってヨワいやつはヨワいんだかんナ! フン!!』

ミド『このミドさまはオマエなんてぜ~ったいみとめねぇかんナ!』

ミド『ちくしょー…なんでデクの樹サマも、サリアもオマエなんかを…ブツブツ』

ジャン「なんかこのミドって奴、憎めねえな」

マルコ「ちょっとジャンに似てない?」

アルミン「雰囲気というか、嫉妬深いところが似てるかもね」

ジャン「うっ……感情移入しちまったのはそのせいか」

顔は全然似ていないが、そう言われればそうなのかもしれない。

あ、ミドが渋々通してくれた。いよいよデクの樹サマとやらに会えそうだ。

うお? 途中でいきなりニョキッと植物が生えてきた。青いバラのような物が急成長する。

それをザクザクを伐採して先に進むと、いよいよデクの樹サマに会えそうだ。

ナビィ『デクの樹サマ…ただ今戻りました!』

大きな樹が出迎えてくれた。樹にはまるでおじいちゃんのような顔(?)のようなものがある。

デクの樹『おぉ…ナビィ…戻ったか…』

デクの樹『そしてリンク…よく来てくれた…』

デクの樹『森の精霊である…このワシ、デクの樹の話を聞いておくれ…』

デクの樹『お前は最近、毎日のように恐ろしい夢を見ているはずじゃ』

デクの樹『その夢は、今この世界に忍び寄る邪悪な気配そのもの…お前は、それを感じたのじゃ』

デクの樹『リンクよ…今、ここでお前の勇気をためさせてほしい』

デクの樹『ワシはのろいをかけられておる。お前の知恵と勇気でそれを解いてほしいのじゃ』

デクの樹『その覚悟があるかな…?』

選択肢が現れた。

→はい

 いいえ

ここは「はい」を選ばないと進まないのでは…。

ジャン「いいえを一度は選びたくなるよな…」

アルミン「時間が勿体ないから「はい」でいってね」

ジャン「了解」

すると口が大きく開いてデクの樹サマの体の中に入ることになったようだ。

デクの樹『では、リンクよ。ナビィと共にワシの体内へ入るがよい…』

ゴゴゴ……

デクの樹『妖精ナビィ…リンクの力となれ…』

デクの樹『よいかリンク…ナビィが語りかける時、▲を使い耳をかたむけよ…』


デクの樹サマの中


植物をザクザクと伐採してアイテムを手に入れた。


デクの実を手に入れた!

Cアイテム画面で← ↓ → にセットしよう。

Cを押して、投げてみよう!

ピカッと光って目くらまし!

敵の動きが止まります。



ナビィ『ヘイ! リッスン!』

お、ナビィが喋りだした。

ナビィ『見て見てリンク! このクモの巣の下! ▲でのぞけるよ!』

おお、なるほど。こうやってナビィがいろいろ解説してくれるのか。

ジャン「後回し」

エレン「え? ▲押さねえの?」

ジャン「他のところも見てからだ」

ナビィ『リッスン!』

ナビィ『このカベ…ツタがからみついててリンクなら登れそう』

ジャン「じゃあ登ってみるか」

エレン「そっち先にいくんか」

壁を登るとその先に宝箱があった。ダンジョンマップを手に入れたようだ。

ジャン「お、これはいいもん手に入れたな」


青い部屋は行った場所。

点滅するのは現在地。上下でフロアを選ぶ。


わざわざその都度解説してくれる親切設計ゲームだと思う。


ジャン「ん? 壁の方に何かいるな」

そちらに注目するとナビィが解説してくれた。

ナビィ『スタンウォール 触らないように気をつけて!』

ジャン「触らないようにして壁を登っていくのか…』

ザッザッザッ……

バシ!

ジャン「あああああ……」

うっかり当たって地面に落ちた。その様子をエレンとアルミンは笑いを堪えて見ている。

ジャン「わ、笑うなよ!」

エレン「いや、ベタな凡ミスだったからつい…」

ジャン「ああもう、ここは飛び道具でもないと無理だろ!」

という訳でジャンはパチンコを手に入れて切り替えたようだ。


デクのタネを手に入れた!

カタくてちっちゃな花のタネ。

パチンコのタマに使えるゾ!


ジャン「よし、いいのも手に入った」

こんな感じであちこちダンジョンの中を冒険しては伐採しつつ先に進む。

詳しい部分はちょっと省略する。ここからはただの探索なので。

途中で口を尖らせた変な顔の敵(?)が命乞いを始めた。

敵『ゆるしてッピ! もーしないッピ! みのがしてくれたらいーこと教えるピー』

敵『この先にいる三つ子デクナッツは、決まった順にやっつけないと復活しちゃうッピ』

敵『その順番は…2 3 1「ニイさんイチバン」だッピ!』

敵『オイラって…ヒドイやつ?』

と言い捨てて何処かに逃げてしまった。

先に進むとナビィがまた『リッスン!』と言ってきた。

ナビィ『水に入ってからAを押したままにすれば、深くもぐれるよ』

このゲームは前にエレンとやったICO×ICOをもう少し簡単にしたアクションRPGゲームかもしれない。

水に潜るアクションの先には敵がいっぱいいた。囲まれてちょっとやばいような…。

ジャン「あ、やっべ! これは……」


ダラララーン……


あー…ゲームオーバーになったようだ。

エレン「あーあ、終わっちまったな」

ジャン「いきなり敵の数増えすぎだろ…」

エレン「まあこんなもんだろ、初見だし」

アルミン「ミカサの方がアクションうまいかもね」

ジャン「何? そうなのか?」

エレン「こいつ、ICO×ICOが初ゲームプレイだったのにも関わらず、ゲームオーバーは殆どせずにラスボスとのところまで行ったからな」

ミカサ「でもさすがにラスボスのところでは何回か死んだ……強かった」

エレン「いやでも初見であれだけやれたら上出来だって。ジャンの代わりに続きやってみるか?」

という訳で続きは私が引き継ぐことになった。

時のオカリナは実際はやった事ないですが、まあ雰囲気で。
エレン達がゲームをやって楽んでいる風景をお楽しみ下さい。
今日はここまで。またねノシ

緑色の目玉の変な敵をジャンの代わりにサクサク倒して後を引き継ぐ。

奥に進むとまた違う敵も出てきたが、そいつらも難なく倒して先に進んだ。

ジャン「本当だ……ノーミスじゃねえか。64したことあるのか?」

ミカサ「いいえ。今日が初めて」

ジャン「すげえ。アクション得意っていうのは本当だな」

ミカサ「むしろ謎解きの方が苦手。迷子になる」

私は主人公をウロウロ動かして頭を悩ませた。

火をつけて先に進むのは何となく察する事は出来るが、それ以外の要素も絡むとちょっと時間がかかってしまう。

前回エレンとやったアクションゲームは謎解きの部分はエレンにほぼ任せて先を進めたので、自分で謎を解くのは難しかった。

アルミン「ヒントあげないの? エレン」

エレン「んー……オレもはっきりとはもう覚えてないんだよな。全クリしたの相当昔だし。アルミン、覚えてるか?」

アルミン「まあ、見れば大体は何となく思い出すけど」

エレン「ミカサが詰まったらアルミンに交代だな」

と言ってくれたのでとりあえず安心である。

先に進むと先程と同じような口の尖った敵が3体現れた。

2、3、1、だったはず。これでいいのだろうか?

敵を倒すと、敵が喋りだした。

敵『どーしてオイラたちのヒミツ知ってるピー!? くやしーッピ!』

敵『あんまりくやしーからゴーマさまのヒミツもバラしちゃうッピ!』

ゴーマ、というのが次の敵の名前らしい。

敵『ゴーマさまにトドメをさすにはひるんだスキに剣で攻撃だッピ』

敵『ゴーマさま…ゴーマんなさい』

敵『なんちて』

どうやら次がボス戦のようだ。くぐった先に、奴がいる。

ミカサ「? どこにいるの?」

あれ? 見当たらない。すぐボスがいると思ったのに。音はするけど。怪しげな。

エレン「あー思い出した。ここは……ククク……」

アルミン「ネタバレしちゃダメだよ」

カメラの視点を切り替えてみる。上からくるとか?

と、パチンコを構えて上を見ると、その変な目玉の敵が現れた。

目の中に『÷』という字が浮かんでいる。ちょっと気持ち悪い。

ドシン、とやっと降りてきた。

甲殻寄生獣 ゴーマ

というのがボスの名前のようだ。

とりあえず離れる。音楽が変わった。

周りに雑魚敵もちょこちょこいるのでそいつらもついでに倒してしまう。

ミカサ「目の色が変わるようね」

こういう場合はどちらかの色の時に叩けば大体いい筈。

一応、ナビィの言葉を確認すると赤い時に叩けばよさそうだ。

ジャン「おお……ボス戦なのに全然怯んでないな」

ミカサ「ICO×ICOのラスボスの方が難しかったので大丈夫」

あのゲームは本当に心臓に悪かった。あれに比べればなんて事はない。

コントローラーの動かし方はジャンのそれを見ていたので大体分かる。特に躓くところもなく、ボスは倒せた。

ボスを倒すと光に包まれて外に出たようだ。

デクの樹サマ『よくやってくれた、ありがとうリンク…』

デクの樹サマ『お前の勇気…たしかに見せてもらった…』

デクの樹サマ『お前はワシの願いをたくしにふさわしい少年であった…』

デクの樹サマ『では、あらためてお前にワシの願いを伝えたい…』

デクの樹サマ『聞いてくれるかな…?』

→ はい

  いいえ

ミカサ「また選択肢ね。ここもはいでいいのよね」

アルミン「確かいいえを選んでも強制的に引き受けてたような」

ミカサ「……ではあえていいえを選んでみる」

ジャン「ぶっ…」

先程ジャンが「いいえ」を選びたそうにしていたのでどちらでもいけるならいいえにしてみる。

デクの樹サマ『いや、リンクよ…聞きたくないではすまされぬ。ワシにはもう時間がない…』

ミカサ「なるほど。選択肢の意味がなかったようね」

エレン「だよな」

エレンはおかしいのかニヤニヤしている。

デクの樹サマ『では…心して聞いてくれ…ワシにのろいをかけた者は黒き砂漠の民じゃ…』

炎の中を駆ける馬と鎧の騎士が見えた。

デクの樹サマ『あの者は邪悪な魔力を操り、ハイラルのどこかにあるという聖地を探し求めておった…』

ミカサ「ハイラルという言葉がまた出た。国の名前と思えばいいのかしら」

エレン「まあ、それは話を見てればだんだん分かってくる」

デクの樹サマ『なぜなら…聖地には、神の力を秘めた伝説の聖三角、トライフォースがあるからじゃ…』

デクの樹サマ『世に理なく、命未だ形なさず。混沌の地ハイラルに黄金の三大神、降臨す。すなわち、力の女神ディン…知恵の女神ネール…勇気の女神フロルなり』

デクの樹サマ『ディン…そのたくましき炎の腕をもって、地を耕し、赤き大地を創る』

デクの樹サマ『ネール…その叡知を大地に注ぎて、世界に法を与える』

デクの樹サマ『フロル…その豊かなる心により、法を守りし全ての命を創造せり』

デクの樹サマ『三大神、その使命を終え、彼の国へ去り行きたもう』

デクの樹サマ『神々の去りし地に、黄金の聖三角残し置く』

デクの樹サマ『この後、その聖三角を世の理の礎とするものなり』

デクの樹サマ『また、この地を聖地とするものなり』

暫くの間、長い回想シーンのようなものがあり、それが終わるとデクの樹サマの顔のアップに戻った。

デクの樹サマ『あの黒き砂漠の民をトライフォースに触れさせてはならぬ! 悪しき心を持つあの者を聖地へ行かせてはならぬ!』

デクの樹サマ『あの者はワシの力をうばい死ののろいをかけた…やがてのろいはワシの命をもむしばんでいった…』

デクの樹サマ『お前は見事にのろいを解いてくれたが、ワシの命まではもとには戻らぬようじゃ…』

ミカサ「え? ではまさか、ここで死んでしまうの?」

エレン「………」

アルミン「………」

二人は無言で画面を見ている。おっと、静かに進めよう。

デクの樹サマ『ワシはまもなく死をむかえるじゃろう…』

デクの樹サマ『だが…悲しむことはない…』

デクの樹サマ『なぜなら今こうして…お前にこの事を伝えられたこと…』

デクの樹サマ『それがハイラルに残された最後の希望だからじゃ…』

ハイラルというのは、国の名前ではなく世界の名前そのものなのかしら?

と、ようやく何となくこのゲームの世界観を掴めたような気がしてそう思ったが、口には出さなかった。

デクの樹サマ『リンクよ…ハイラルの城に行くがよい…』

デクの樹サマ『その城には、神に選ばれし姫がおいでになるはずじゃ…』

デクの樹サマ『この石を持ってゆけ…あの男がワシにのろいをかけてまで欲したこの石を…』



コキリのヒスイを手に入れた!

デクの樹サマからたくされた、森の精霊石(せいれいせき)だ。



デクの樹サマ『たのむぞ、リンク…お前の勇気を信じておる…』

デクの樹サマ『妖精ナビィよ…リンクをたすけ、ワシの志をついでくれ…』

デクの樹サマ『よいな…ナビィ…さらば…じゃ…』


その直後、デクの樹サマの全身が灰色に変わってしまった…。


ナビィ『行きましょ、リンク! ハイラル城へ!!』

ジャン「切り替え早!! もうちょっとなんかないのかよ!!」

マルコ「だね……ここは『デクの樹サマー!』とか叫ぶシーンがあってもよさそうだけど」

ナビィ『さよなら…デクの樹サマ…』

エレン「馬鹿、そこはもう、薄々死期を感じてたんだよ、ナビィも」

アルミン「でも最初見た時はこのシーン、純粋に悲しかったなあ」

エレン「一気に色が灰色に変わるんだもんな……」

ミカサ「枯れたのが良く分かる表現ね」

というわけで、デクの樹サマの犠牲を無駄にしない為にも先に進まないといけない。

村の外に出ようとすると、画面が変わった。

サリア『行っちゃうのね……』

サリア『サリア、わかってた…リンクいつか森を出て行っちゃうって…』

サリア『だってリンク…サリアたちとどこかちがうもん』

サリア『でもそんなのどうでもいい! アタシたちず~っと友だち! そうでしょ?』

サリア『このオカリナ…あげる! ずっとたいせつにしてネ』


妖精のオカリナをもらった!

サリアとの思い出の品だ。Cにセットし、吹いてみよう。

Cアイテム画面で、←↓→にセットしてセットしたボタンで使おう。

CでオカリナをかまえAと4つのCで演奏できる。やめたい時はB。


サリア『オカリナふいて、思いだしたらかえってきてネ』


ハイラル平原


ミカサ「画面が一気に変わったようね」

エレン「さーここからが本番だぞ」

ミカサ「本番、とは?」

アルミン「ええっとね。敵がいろいろ一気に増えるよ」

エレン「懐かしいなーここ、夜になると面白いんだよ」

ミカサ「では楽しみにしておく」

というわけで散策開始である。

ふくろう『ホホーゥ!』

走っている途中でふくろうが急に話しかけて来た。

ふくろう『リンクよ…こちらをごらん』

ふくろう『やっとお前の旅立ちの時がきたようだの』

ふくろう『お前は、この先多くの苦難に会う。それがお前の運命…それをうらんではならん』

ふくろう『この道をまっすぐ行くとハイラル城が見えてくる』

ふくろう『おまえはそこでひとりの姫に出会うであろう…』

ふくろう『もし、進むべき道に迷うたならマップを見るがよい』

ふくろう『お前の進んだ道はマップに残る。スタートでアイテムモードにしてマップ画面で確認することだ』

ふくろう『もし、マップにある点が光っておればそこがお前の進むべき場所じゃ』

ふくろう『わかったかい?』

→いいえ

 はい

また、選択肢だ。ここまで丁寧に説明されて分からないなんて言ったら失礼な気もする。

ふくろう『それではワシはひと足先も行くとしよう。待っておるぞ。ホホ~ッ!!』

ミカサ「結局、名前も名乗らずに飛んで行ってしまった。説明するだけで終わった」

エレン「まあ、そこはつっこんでやるな」

アルミン「ゲームだからね」

ハイラル平原を駆けていく。たまにわざとでんぐり返しをしてみたり。

ジャン「ぶっ……意味不明な動きだな」

ミカサ「敵が出てこないので暇だから」

すると徐々に画面が薄暗くなっていき、夕方になった。

そろそろ夜になりそうだ。夜になったら多分、敵も出てきそうな予感。


ヴォンヴォンヴォン…


ミカサ「?!」

奇妙な音と共に骸骨が出て来た。いきなり来た! しかも二体!

ミカサ「ふっ! この!」

腕が鳴る。一気にザシュザシュ切りつけてやる。

ジャン「おーうまいな」

エレン「なんだ、意外とびびらなかったな」

ミカサ「エレンが前もって言ってくれたおかげ」

エレン「ちっ…だったら黙っておけばよかったかな?」

何の前情報もなかったら確かにここはちょっとビビる場面かもしれない。

ミカサ「?!」

しかし切りつけても切りつけても後からどんどん湧いてくる。

ミカサ「!」

これはまずい。数で押し切られそうだ。一端撤退しよう。

とりあえず逃げて走り回っているといつの間にか朝になった。

ミカサ「なるほど。これは夜は注意しないといけないのね」

エレン「ああ。あ、すぐそこがハイラル城だぞ」

ミカサ「門が開いている。そうか。夜の間は閉まっているのね」

というわけで城の中に入る事にした。

門番『ここはハイラル城下。平和で豊かな町だ』

とりあえず散策をしてみる。すると……

ミカサ「?!」

壺が沢山置いてある建物の中に入った。ここは荒稼ぎ出来そうな予感。

奥に人がいる。声をかけてみよう。

兵士『たいくつだ…もっと世の中にモメごとがあるほうが楽しいぜ、きっと…おっと、コレはナイショだぜ』

兵士『ツボでも割ってストレス解消! ツボのそばでAで持ち上げる。も一度Aで放り投げるんだ』

なんて駄目な兵士なのだろうか。

まあでも割っていいというのなら割るしかないだろう。

パリンパリンパリンパリンパリン…!

なるほど。これはなかなか楽しい。中から沢山お金が出て来た。

ミカサ「あれ?」

操作ミスをしてしまって剣で壺を切ってしまった。なんだ。切れるのか。だったらこっちの方が早い。

エレン「壺、切るのかよ!」

ミカサ「こっちのが早いので」

エレン「まあ、別にいいけどさ」

というわけで全部の壺を割ってお金をガッポリ稼いで城下町に戻った。

赤い服の男『ハ~ッハッハッハッ!! バッカで~コイツ!!』

町の人に話しかけてみる。何やら楽しそうである。

赤い服の男『セルタ姫に会いたいからって城に忍び込むなんてよ!』

赤い服の男『このバカのせいでお城の警備がキビしくなったんだぜ! ハッハッハッハッハ!』

迷惑千万な事である。青い服の男にも話しかけてみる。

青い服の男『セルタ姫に会ってみたいよ~!』

青い服の男『兵士の目をかいくぐり…』

青い服の男『お堀に身を沈め…』

青い服の男『もうちょっと…ってとこでつかまっちまったんだよ~っ!』

青い服の男『城の右奥に忍び込めそうな小さな水路を見つけたんだけど抜けらんなくなちゃったんだ~!』

ミカサ「これは何かのヒントなのかしら?」

エレン「まあヒントだな」

ミカサ「肝に銘じておく」

他のキャラクターにも話しかけてみよう。

少女『このコッコ、つかまえられないの~!』

ミカサ「コッコ? ああ、にわとりの事ね」

画面を走り回る鶏がいる。こいつを捕まえればいいのだろうか?

にわとりを追いかけていたら、別のキャラクターにぶつかってしまった。

女性『おどってんじゃないのよ、ぼうや。せなかがかゆいのよ…イヤン』

ミカサ「それは可哀想に。掻いてあげられないけれど」

隣の男にも話しかけてみる。

男性『やあ、いなかっぽい少年。これがハイラルの町だ。ゆっくり楽しんでいきなよ』

特に有力な情報ではないようだ。と、思っていたら、

男性『ハイラル城の見学は正面の大通り、町の裏なら左の路地へ行きな』

ミカサ「なるほど。ちゃんと道案内をしてくれるキャラだったのね」

こういう事もあるので、やはりちゃんとキャラクターの話は聞いておかないといけない。

今度は別のキャラクターにも話しかけてみる。

少女『キミ、かわったカッコしてるネ。町のコじゃないでしょ? どこからきたの?』

少女『………………………』

少女『へーっ、森の妖精のコなんダ…アタシ、牧場のコ。マロン』

少女『マロンはネ、とーさんまってるの。とーさん、お城に牛乳とどけにはいったままでてこないんダ…』

ミカサ「何だかこの『とーさん』と関わり合いになりそうな予感がする」

エレン「まあ、助けてやらんと大体話は進まないからな」

一応、頭に入れておいて今度は別のキャラクターに話しかける。

二人でグルグル回っている男女がいた。踊っているようだ。

女性『ウフ…アナタって…ハイラル王みたいに…ス・テ・キ…』

女性『ウフ…』

ジャン「ちっ……リア充爆発しろ」

マルコ「ジャン、ゲームだから……」

アルミン「気持ちは分かるけど、イライラしない」

画面の奥の方にも注目してみる。男の人がいる。

男性『ウォッホン! エッホン!』

男性『このヒゲが私のジマンです。カッコよかろ~!』

男性『ん、なに? ロンロン牧場のオヤジ?』

男性『お、そ~いえば…』

男性『カッコわる~いヒゲのオヤジがお城の中へ荷物を運んでるのを見たぞ』

ミカサ「牧場? そう言えば先程のマロンとかいう少女も牧場のコと言ってたような」

エレン「お、ちゃんと覚えてたな。まあつまりそういう事だ」

ミカサ「後でそのカッコわる~いヒゲのオヤジと遭遇しそうね」

建物の中に入ると、『なンでもや』という店に入った。

ミカサ「?!」

店長の胸毛が凄かった。これはなんというか、接客向きとは思えないのだが。

話しかけて正面から見るとますます胸毛が目立った。ちょっとキモイ。

胸毛の店長『いらっしゃい!』


左右で品物見てよ!

→店主とはなす

 買い物をやめる


ミカサ「い、一応、話しかけてもいいだろうか?」

エレン「好きにしろ。そんなにビクビクせんでも、取って食われたりはしねえよ」

ミカサ「そうね。人を見かけで判断してはいけない…」

強面の胸毛の店長に思い切って話しかけてみる。

胸毛の店長『今、ハイリアの盾がオススメだ。ボーヤにゃ、ちょっと重いがナ』


ハイリアの盾(たて)80ルピー

ハイリアの騎士が持つ大きな盾。炎攻撃を防ぐ。


他のアイテムも一応、見てみよう。


バクダン(5コ)35ルピー

Cで取り出しもう一度Cで投げる。ボム袋がないと買えません。

矢(10本)20ルピー

弓を使ってうてます。弓がない人には売れません。

矢(30本)60ルピー

弓を使ってうてます。弓がない人には売れません。

矢(50本)90ルピー

弓を使ってうてます。弓がない人には売れません。

デクの棒(1本)10ルピー

デクの樹から採取した長い枝。武器にもなるが、折れます。


ミカサ「そろそろ弓が手に入るのかしら?」

エレン「のちのちな」

ミカサ「買う時は50本ずつ買った方が少し単価が安くなるようね」

店の中に居る昔のアイドルのような格好をした緑色の服の男に話しかけてみる。

緑の服の男『この世にはハイリアの盾を食べちゃう怪物はいるっていうウワサがあるんだよ』

緑の服の男『見たことある?』

ミカサ「これはのちのちのフラグなのだろうか?」

エレン「まあ、ノーコメントで」

ミカサ「今はお金が足りないのでハイリアの盾が買えない。また後でここに来よう」

という訳で一旦、店の外に出る事にした。

今度は別の店に入ってみる。『クスリ屋』という店らしい。

店の中におじいさんがいる。話しかけてみよう。

おじいさん『この世には究極のクスリをつくることのできるクスリ屋がいるっていうウワサだけど…』

ミカサ「うわさだけ、のようね」

とりあえず、話はそこで終わったので店長に話しかける。

イケメン(?)店長『いらっしゃい!!』

ミカサ「…………なんかどこかで見たようなキャラね」

アルミン「僕は最初、昔のキムタクみたいな髪型だと思ったよ」

ミカサ「ああ! それっぽい。確かに」

私はアイドルにそこまで詳しい訳ではないが、キムタクは国民的アイドルなのでさすがに分かる。

このキャラは昔のキムタクの髪型に似ているのだ。だから見覚えがあったのだ。

こちらもアイテムを見て行こうと思う。


緑のクスリ 30ルピー

飲むと魔法の力が回復する。1回分。

赤いクスリ 30ルピー

飲むと体力が回復する。1回分。

妖精の魂 50ルピー

あきビンがないと買えません。戦いのおともにどうぞ。

青い炎 300ルピー

あきビンがないと買えません。使うとさわやかなすずしさ!

ビンづめのムシ 50ルピー

あきビンがないと買えません。見たところただのムシです。

サカナ 200ルピー

とれとれピチピチ! ビンに入れて保存できる。

ポウ 30ルピー

ビンにつめこんだオバケの魂。ものずきな人に売りつけよう。

デクの実(5コ) 15ルピー

投げると目つぶしになる。持てるだけしか買えません。


キムタク店長に話しかけてみる。

キムタク店長『ぼうや、クスリがほしいなら、入れ物がいるよ』

とりあえず今はあきビンがないのでここで買い物は出来ない。また来よう。

店の外に出るとすぐ傍に男性が居た。ついでに話しかけてみよう。

男性『ぼーや、ロンロン牧場に行ってみたかい?』

男性『あすこの牛乳は絶品だよねえ。娘さんはカワイイしねえ』

男性『ロンロン牧場へ行くなら、町を出て、平原をまっすぐ南。一度は見に行かなきゃねえ』

ミカサ「いずれはロンロン牧場に行かないといけないようね」

エレン「まあ、後でいい」

とりあえず、左の方へ移動してみる。お墓のような物が4つ並んでいる。

ミカサ「これ、デクの樹サマのところにも同じようなのがあったような」

試しに叩いてみる。すると、

ボヨヨヨ~ン!! ただいま09時14分です!

ほらやっぱり。同じような反応がきた。これは何の意味があるのだろうか?

良く分からないのでスルーしよう。奥の建物の中に入ってみると……


時の神殿


音楽が変わった。荘厳なメロディーだ。神様でも降りてきそうな曲だ。

奥に進むと何やら祭壇(?)のような物が設置されていた。触ってみると、

『三つのくぼみがあり、文字が刻まれている…』

『三つの精霊石を持つ者、ここに立ち、時のオカリナをもって時の歌を奏でよ』

と、刻まれている。そうだ。

ミカサ「オカリナは前に貰ったような」

アルミン「いや、それは時のオカリナじゃないから」

ミカサ「そうなの? 吹いてはだめなの?」

エレン「まあ、吹いても別に構わんけど。何も起きないけどな」

ミカサ「そう……なら先を進めましょう」

どうやらここはのちに必要になりそうな場所のようだ。とりあえず建物から出て別の場所に移動してみる。

別の店の中に入った。『おめん屋』という奇妙なお店があった。店の中には髭を蓄えた紫のズボンを着た男性が佇んでいる。

ミカサ「見た目がまるでおねぇのダンサーのようね」

エレン「ぶっ…!」

アルミン「それは言わないであげて、ミカサ…」

ジャン「なんかポーズもそれっぽいな」

マルコ「駄目だ、もうそれしか見えなくなった」

皆、笑いを堪えている。私のせいだけども。

紫ズボンの男性『この店、いつオープンするのかな? そこのカンバン、読んだけど、やっぱりへんな店だな…』

看板を読んでみる。すると確かに奇妙な事が書かれていた。


しあわせのお面屋 ご利用前にぜひお読みください

当店のシステム説明

当店は、商品であるお面をお売りするのではありません。あくまで『お貸しする』のです。

貸し出したお面はお客様ご自身に売ってきていただくシステムです。

売っていただいた『代金』を当店に納めていただけば、さらにニューモデルをお貸しします。

見事お売りいただいたお面はその後もお貸しいたしますが、売ることはできなくなります。ぜひご利用下さい。



ミカサ「? これは何だか怪しげなお店ね……どうしたらいいの?」

エレン「んー……言っちゃたら面白くねえだろ?」

アルミン「まあねー。とりあえず、ミカサの好きにすればいいよ」

ジャン「オレだったらこんな怪しげなのには関わり合いたくねえけど、これゲームだから、やっぱり利用しないと先に進めないんじゃねえのか?」

ミカサ「………今すぐに必要とは思えないのでもう少し散策を続けてみる」

現実でも怪しげなものにはすぐに飛びつかないのが一番である。

>>1です。
ようやく執筆再開のめどが立ちそうな気配です。
長らくお待たせしていて本当に申し訳ない。
近々、ぼちぼち再開していくので宜しくお願いします。

店の外に出てみると、にわとりが丁度通りかかった。あ、そう言えば捕獲するのを忘れていた。

追いかけてみるが、あれ? なかなか捕まえられない。えいえいえい。

ミカサ「むー……これは捕まえられないのかしら?」

エレン「………」

ミカサ「まあいい。にわとりは後回しにしよう」

良く分からないので放置する。すると傍におばあさんがいた。

おばあさん『もーかった…もーかった…』

おばあさん『またなにか売れそうなモノを探しに行こうかねぇ』

おばあさん『ハイリア湖に行ってみようかねぇ。あそこにはいろんなモノが流れつくからねぇ。ヒヒヒ…』

ミカサ「ハイリア湖ね、覚えておく」

そして別のキャラクターにも話しかけてみる。

おじいさん『ぼうや、闇の民族の話を聞いたことがあるかな?』

おじいさん『我々ハイリア人の「影」…シーカー族という者たちじゃ』

おじいさん『代々ハイラル王家に忠誠を誓い王族の身辺を守っていたそうな…』

おじいさん『しかし、平和な時代になってシーカー族を見た者はおらん…じゃが、うわさでは…』

おじいさん『お城に一人だけシーカー族の女がいるらしいんじゃ…』

今度は耳の長い別の女性に声をかけてみる。

耳の長い女性『町の北東にある時の神殿って知ってる?』

耳の長い女性『時の神殿は聖地への入口だ、という言い伝えがあるのよ。知ってた?』

ミカサ「ん? もしかして先ほど行った時の神殿が、それなの?」

エレン「まあな」

ミカサ「なるほど」

後ほど重要な場所になりそうな予感がする。

そして今度は違う店の中に入ってみる。


ボムチュウボウリング


ミカサ「? ボウリングをするの?」

画面に「ボムチュウボウリング」という文字が出た。受付のお姉さんは居眠りをしている。

話しかけても起きないようだ。スースー寝ている。

……あ、やっと起きた。どうやらまだ準備中らしい。

ミカサ「………六角形の的がある。ちょっと気持ち悪いデザインね」

エレン「かもな」

ミカサ「もしかして、房中術(ぼうちゅうじゅつ)とかけているのかしら?」

アルミン「み、ミカサ………(ドキッ)」

エレン「ぼうちゅうじゅつ? なんだそれ?」

アルミン「エレン、解説は後でしてあげるから、今はゲームを進めて、ミカサ」

ミカサ「分かった」

連想してしまったのは、どうやら私だけではなかったようだ。

この内側に吸い込まれるような六角形を見て、ちょっとだけそういう発想をしてしまったのは、イケナイ事かもしれないが。

アルミンには意味が通じたようなので、多分、アルミンも私と同じ事を過去に思ったのだろう。

房中術を知らない方の為に解説するが、房中術は中国で昔行われたという言い伝えがある、医療技術の事である。

男女の交わりを介して気を操作して、相手の体を回復させるという技術なのだが、実際にそれが行われていたのは大昔の話で、現在ではどうだかは分からない。

ゲームの製作者側が何を意図してこの画面を作ったのかは分からないが……。

まあ、本筋とはあまり関係のない遊びの部分かもしれないので、気にしない事にする。次に行こう。

店の外に出て2階に上がると男の人がいた。

男性『我々ハイリア人の耳は、神の声を聞くために大きいんだってよ』

男性『オレにゃ聞こえないけどサ』

ミカサ「……………」

ツッコミを入れるのも可哀想なのでスルーする。

別の店の前に立ってみる。


 たからばこクジ

準備中 夜だけ営業


ミカサ「町の中でも夜の概念があるのね」

町の外では夜になったりしたが、町の中ではないパターンではないようだ。

そして路地裏に入ってみる。おじいさんが一人、道の端っこにいた。

おじいさん『ぼうや、いいことをおしえてやろう』

おじいさん『お城の近くにはふしぎな泉があるらしいぞぃ…』

ふむ。お城に行った時に気をつけておこう。

路地裏の更に奥に入ると今度は若い男性が一人いた。

若い男性『なぜか夜になると町に犬がふえるんだ。ふしぎだよな、ぼうず』

ミカサ「………夜のイベントには気をつけておいた方がいいみたいね」

一応、気に留めておこう。

路地裏を抜けて別の店の中に入る。画面には「的あて屋」という文字が出た。

受付の男性『ゲーム……20ルピーでやる?』

→やる

 やめとく

所持金が78ルピー。今、やれなくもないけれど。

一応、内容を確認してみる。10コの的に15発以内でぜんぶヒットしよう! と看板には書いてある。


10発命中…パーフェクト賞

8発以上…再チャレンジ

7発以下はざんねんでした


なるほど。10発以上当てればいいのか。さて、どうしょう。

アルミン「やってみれば? ミカサならきっとできるよ」

ジャン「ミカサなら出来そうだな」

マルコ「是非とも見てみたいね」

エレン「おう、やってみろよ」

ミカサ「では、期待に応えて」

ゲームなので楽しまないと損である。ダメ元でやってみよう。

受付の男性『オッケーイ!! ここはオトナのプレイスポット! ハイラル名物、的当て屋! そこの台から狙って、狙って! 10コの的を全部うてるかな? ショットチャンスは15回!』

受付の男性『BでかまえてじゅんびはOK? パーフェクトめざしてがんばりナ!』

今回はここまで。続きはまた。

英文でレスされている方、すみません。
自分、英語苦手なので、文章の意味を半分も分かっていません…。
なので何か要望・苦情等があれば出来れば日本語でお願いします。
(意味が理解出来ないので対処のしょうがないです)

という訳で、Bで構えて……

バシュ! パリン!

ジャン「おお、命中した」

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

バシュ! パリン!

ジャン「おおおお!」

アルミン「すごい! 初見でパーフェクトだ!」

ミカサ「? 意外と簡単だった」

構えていたのが馬鹿らしいくらい簡単だった。このミニゲーム、難易度が低すぎる。

エレン「くそ……オレが初めてやった時は3発くらいしか当てられなかったのに」

アルミン「僕もだよ。すごいねえミカサ。やっぱり才能があるんだね」

ミカサ「そうなのだろうか?」

うーん。自分ではそうは思わないのだけども。

ミカサ「これでだいたいのところは見て回ったからしら? お城に行ってもいい?」

エレン「そうだな。そろそろ移動してもいいぜ」

という訳でいよいよハイラル城まで移動してみることにする。

道の途中で例のあのふくろうが話しかけてきた。

ふくろう『おい、リンク! こっちじゃよ』

ふくろう『お姫様はこの先のお城の中…見張り兵に見つからぬようにな。ホッホ~』

ふくろう『この地上では時はいつでも流れておる』

ふくろう『だが、町の中では時の流れは止まったままじゃ』

え? でもさっき、夜のイベントが有りそうな台詞があったような。

いったいどういう事だろうか?

ふくろう『時間を進めたければ、一度町から出てみるがよい』

ミカサ「ああ、なるほど」

面倒なシステムである。

ふくろう『時がたてば、変化する物もあるじゃろうからのぉ』

ふくろう『さて、城にたどりつくまでにどんな出会いがお前を待っておるか、楽しみじゃ』

そしてまたふくろうは颯爽と飛び立っていった。

門の前には兵士がいた。話しかけると、

兵士『セルタ姫にお会いしたいだと?』

兵士『お前も町の評判をきいてやってきたな?』

兵士『かえれ! かえれ! 姫がお前のような者にお会いになるわけがないわ!』

ミカサ「あら……門前払いになってしまった」

ミカサ「ふむ。別のルートを探すしかないようね」

とりあえず、外のルートからいけないか考えてみる。

町の外にでて水路の周辺を探し回ってみる。

エレン「……………」

ミカサ「何もないようね」

だんだん日が暮れてきた。あ、敵が出てきたのでついでに倒しておく。

???『おい、リンク! ちょっとおまち!』

ミカサ「?」

???『この先はカカリコ村。ハイラルの姫には会ったかの? まだならお城へ行きなさい』

ミカサ「あれ?」

城に行くルートを探す筈が、外れて脱線していたようである。

ジャン「おお、新設設計だな」

エレン「まさかここで外に出ちまうとは……」

ミカサ「エレン、間違ってるなら言ってくれてもよかったのに」

エレン「いや、間違うのもゲームの醍醐味だと思ってな」

全くもう。意地悪い。軌道修正して町の方に戻る。

ミカサ「………あ」

思い出した。そういえば、青い服の男が何かヒントを言ってたような。

ミカサ「ちょっと再確認してみる」

二度目、話しかけるとやはりヒントを言っていた。

ミカサ「城の右奥の小さな水路ね」

エレン「お、気づいたか」

ミカサ「外がダメなら、もうここしかない気がする」

という訳で移動してみる。

城に戻ると、あ、先ほどのマロンとか言った少女がつたの壁の前に立っていた。

彼女曰く、とーさんを探してきてほしいとのこと。

そしてアイテムを手に入れた。『ふしぎなタマゴ』というアイテムだ。

なんかゴドゴト動いている様子。……ヒヨコが生まれるのだろうか?

まあ後のお楽しみにしておこう。

つたのある壁をよじ登り、先に進む。はしごがあった。とりあえず下に降りようと意識を向けたその時…

ピー!

兵士『オイ、止まれ! そこの小僧!』

ミカサ「?!」

ハイラル城の門の前まで強制移動させられた。

エレン「きたきたきたー!」

アルミン「厄介なのがきたね」

ミカサ「え? これってもしかして」

エレン「そういう事だ。兵士に見つかったらアウトだぞ」

ミカサ「むむむ………」

まるで泥棒のような扱いである。不審者である事にはかわりないけれども。

ミカサ「分かった。次は気を付ける」

そしてここからが、今までとは違った意味でのアクション満載のターンだったのである。

ピー!

兵士『オイ、止まれ! そこの小僧!』

ミカサ「うぐうう……!」

また見つかってしまった。

どうもこういう繊細な動きを要求されるアクションは、どうやら私には向いてないらしい。

ジャン「意外だな…さっきみたいな射的は得意なのに」

ミカサ「何かに当てたり攻撃したりするのは得意だけども……」

エレン「ここは交代するか?」

ミカサ「お願い……」

エレン「マルコやってみるか?」

マルコ「いいのかい?」

エレン「いいぜ。マルコギアソリッドを見せてくれ」

ジャン「ぶふっ!」

ミカサ「?」

という訳でここからはマルコの捜査に交替してもらって先を進める事にした。

マルコ「うーん、あ、なんかここいけそうだね」

壁を伝ってマルコが先に進む。おかげで大分、城に近づけた。

水路の中を移動してお金ゲットしながらあちこち探索している。

マルコ「あっ…これ、もしかして」

???『ムニャムニャ…』

???『いらっしゃ~い…ムニャ…ウチの牧場は…楽しいだ~よ……ZZZ…』

マルコ「これはどうみても、マロンのとーさんっぽいね」

ジャン「だな」

マルコ「どうやって起こす?」

ミカサ「剣でつつくとか…?」

アルミン「怖いよミカサ…」

ジャン「あ、さっきもらったタマゴは使えるか?」

マルコ「そういえばそんなのがあったね。使ってみようか」

あ、タマゴから鶏がいきなり生まれた。鳴き声のおかげでとーさんの目が覚めたようだ。

とーさん『なんだーよ? せっかくキモチよく寝てたのに…』

とーさん『オマエだれだーよ?』

とーさん『そうだーよ、オラがロンロン牧場の牧場主タロンだ』

タロン『お城に牛乳とどけにきただが、ねむくなってついウトウトと…』

タロン『え? マロンがオラを探してた?』

タロン『し、しまっただ~よ!! マロンをほっといたままだ~よ!』

タロン『また怒られるだぁ~っ!!』

ミカサ「い、行ってしまった…」

マルコ「すごい走り方だったね…」

確かに。でもこれで先に進めるような気がする。

マルコ「この木箱、あからさまに怪しいよね」

アルミン「確かに」

マルコ「引っ張って動かせたりする? あ、できた」

ジャン「なるほど。木箱を橋みたいにすんのかな」

マルコ「多分ね。こういうのなら、得意だよ」

おお、さくさく進んでいく。頭脳プレイはマルコの得意とするところのようだ。

ぴろりろぴろりん♪

マルコ「おっし」

ジャン「これでクリアみたいだな」

先に進めるようだ。そして次に出てきたのは…



城の中庭


エレン「きたー」

アルミン「きたねー」

マルコ「な、なに? 二人して」

エレン「マルコギアソリッド、お手並み拝見だぜ」

ミカサ「そのマルコギアソリッドとは?」

ジャン「あー……某ゲームで、ミッションをこなしていくゲームがあるんだが、所謂隠密行動をしていくんだよ」

アルミン「転じて、隠密行動をする事を~ギアソリッドと言ったりするね」

ミカサ「では私がする場合はミカサギアソリッドになるの?」

アルミン「そうそう。今回はマルコ、頑張ってね」

マルコ「うん。頑張ってみるよ」

という訳で、マルコギアソリッド(?)のスタートである。

兵士が、庭の中を歩いている。一応、身を隠す場所はあるが、これは……

エレン「兵士が後ろ向いた瞬間がチャンスだぞ」

マルコ「うん。分かってる……」

タイミングが命綱だ。気づかれないように、そーっとそっと…

ジャン「よし、一個目の関門突破!」

マルコ「ふー…」

息を殺す緊張の一瞬だった。次は噴水のある中庭のステージだ。

兵士が二人に増えた。これは難しそうだ…。

と、思ったら一気に駆け抜けてクリアした。なんて大胆。

ジャン「おおおすげええぞ、マルコ!」

マルコ「今の瞬間しかないと思ってね」

アルミン「うまいうまい。マルコ、うまいよ」

今度は白い階段のある中庭だ。あ、中央にお金がある。兵士もいるが。

ジャン「ああああ…金に釣られたら見つかるパターンじゃねえのかコレ」

マルコ「それっぽいねえ」

階段を上っていくのが安全な道のようだが、さて。マルコはどちらを行くのか。

マルコ「………兵士の後ろを尾行すれば金とれるかも」

ジャン「おおお? あえて難しい方にいくのか」

マルコ「やってみていい?」

アルミン「いいよいいよ」

そろり。そろり。あえて難しい方法でやるマルコ。半周、お金が取れた。

もう半周。大丈夫だろうか…。

ジャン「うおおおお?! マルコ、うめえな!」

エレン「さすがマルコだな。仕事が丁寧だ」

アルミン「あともうちょい、頑張れ!」

残り半周、一気に逃げて……

ジャン「よっしゃああ! 抜けたぜ!」

アルミン「すごいマルコ! よく挑戦したね!」

マルコ「ふー……緊張したあ」

ミカサ「これはすごい。マルコを見直した」

ジャン「うっ……」

ジャンが何故か唸っている。はて?

ジャン「最後のところだけ、オレもやってみていいか?」

マルコ「ん? ジャンもスニーキングミッション、やりたくなった?」

ジャン「ああ。まあそんなところだ」

ジャンがマルコと交替する。しかし………。

ピー!

ミカサ「あーあ」

ジャンに交替した直後に兵士に見つかってしまった。

エレン「おま、ひでえな」

アルミン「せっかくマルコが奇跡のクリアを果たしたのにもったいない」

ジャン「うぐっ……!」

マルコ「まあまあ」

という訳でやはりこのミッションはマルコが向いていると判断し、最初からやり直しになった。

城の中庭の音楽が変わった。祭壇の中央には少女が立っている。

エレン「ついに姫のお出ましだな」

アルミン「長かったねー」

セルタ姫『!』

セルタ姫『だ、だれ?』

セルタ姫『あ、あなただれなの…?』

セルタ姫『どうやってこんなところまで…』

エレン「やってることは不審者と変わりないけどな」

アルミン「それを言ったらゲームが崩壊するからつっこまない」

ゲームあるある、のようである。

セルタ姫『あら…?』

セルタ姫『それは…』

セルタ姫『妖精!?』

セルタ姫『それじゃ、あなた…森から来た人なの?』

セルタ姫『それなら…森の精霊石を持っていませんか? みどり色のキラキラした石…』

セルタ姫『持っているのでしょう?』

→はい

 いいえ

ここでも選択肢だ。当然、はい。である。

セルタ姫『やっぱり!』

セルタ姫『わたし、夢を見たのです』

セルタ姫『このハイラルがまっ黒な雲におおわれてどんどん暗くなっていくのです…』

セルタ姫『そのとき、ひとすじの光が森からあらわれました…』

セルタ姫『そしてその光は、雲を切り裂き、大地をてらすと…』

セルタ姫『妖精をつれて、みどりに光る石をかかげた人の姿に変わったのです』

セルタ姫『それが夢のお告げ』

セルタ姫『そう…あなたがその夢にあらわれた森からの使者だ…と』

セルタ姫『あ…! ごめんなさい!』

セルタ姫『わたし、夢中になってしまって…まだ、なまえもお教えしていませんでしたね』

セルタ姫『わたしはセルタ。このハイラルの王女…』

セルタ姫『あなたのなまえは…?』

セルタ姫『………』

セルタ姫『リンク…ふしぎ…なんだかなつかしいひびき…』

セルタ姫『じゃあ、リンク…』

セルタ姫『いまからこのハイラル王家だけに伝わる聖地のひみつをあなたにお話しします』

セルタ姫『だれにも言ってはいけませんよ!』

→はい

 いいえ

当然、ここははい。である。

セルタ姫『それはこう伝えられているのです…』

ここからのお話は少々長くなるのでかいつまんでいこう。

セルタ姫曰く、三人の女神様は神の力を持つトライフォースを隠された。

トライフォースを手にした者の願いを叶える力があるそれを、悪しき者の手に渡らないようにする為、古の賢者達は『時の神殿』を作ったそうだ。

つまり時の神殿は地上から聖地へ入るための入り口でもあるわけだった。

その入り口は『時の扉』と呼ばれる石の壁で閉ざされているそうだ。

その扉を開くには『三つの精霊石』を集め、神殿に納めよ、と伝えられいる。

そしてもうひとつ必要なもの、王家が守っている物が『時のオカリナ』だ。

ミカサ「なるほど。ここでようやくゲームのタイトルと関わってくるのね」

エレン「おう。時のオカリナがこのゲームの肝だからな」

セルタ姫『わたしは…いま、この窓からみはっていたのです』

セルタ姫『夢のお告げのもうひとつの暗示…黒い雲…それがあの男…』

赤い髪の、緑色の肌をした鼻の長い奇妙な男がいた。

恐らくこの男がこのゲームの中の敵、なのだろう。

セルタ姫『あれが西の果ての砂漠から来たゲルド族の首領、ガノンドロフ…』

セルタ姫『今はお父様に忠誠を誓っているけれどきっとウソに決まっています…』

セルタ姫『夢に見た、ハイラルをおおう黒い雲…あの男にちがいありません!』

ミカサ「?!」

こっち見た。チラリと。にやりと笑いながら。

ミカサ「あからさまに悪そうな男ね」

エレン「だよな」

セルタ姫『どうしたのです? 気づかれたのですか?』

セルタ姫『かまうことはありません!』

セルタ姫は相当、あの「ガノンドロフ」とかいう男を毛嫌いしているようだ。

ガノンドロフに人格を父親に信じてもらえず、ないがしろにされているようだ。

セルタ姫『でもわたしにはわかるのです! あの男の悪しき心が…』

ガノンドロフの評価を下げまくる発言をした後、セルタ姫はリンクに詰め寄った。

セルタ姫『リンク…今ハイラルを守れるのはわたしたちだけなのです!』

セルタ姫『わたしは…怖いのです。あの男がハイラルをほろぼす…そんな気がするのです』

セルタ姫『あなたはのこるふたつの精霊石を見つけてください』

セルタ姫『ガノンドロフよりも先にトライフォースを手に入れてあの男をたおしましょう!』

ミカサ「旅の目的がより明確になったようね」

エレン「こっからが本格的なスタートだからな」

ミカサ「ここまでくるのに長かった」

マルコ「そういえば、今何時?」

時間を確認すると…………え? もう夕方の6時?!

ミカサ「嘘……ぶっ続けてそんなに長い時間プレイしてたの?」

エレン「あーゲームやってればあるある」

アルミン「でもちょうどキリもいいし、いったん休憩にしない?」

マルコ「そうだね。ちょっと肩も凝ったし」

ミカサ「そうね。このお姫様のイベントが終わり次第、セーブしましょう」

という訳で、長い道のりだったが、まだゲームは序盤だ。

今はとりあえずセーブをして、いったん休憩してからまた再開しよう。

という訳で、ここでいったん区切ります。続きはまた。
ゲームやってると、6時間くらいならあっという間に過ぎるよね。
若い頃って、やるよね?

セーブをし終えてからエレンが言った。

エレン「三人とも、今日は泊まっていくつもりなんだよな?」

ジャン「お、おう……着替えは持ってきてるぞ」

エレン「全員、オレの部屋で寝てもらうからな。くれぐれも、ミカサの部屋に入るなよ」

ジャン「ななな……そんなのは当たり前じゃねえか。何言ってるんだ、エレン」

エレン(じと目)

ジャン「レディの部屋に入るなんて、そんな恐れ多いだろ…!」

ミカサ「別に入るくらいなら構わないけれども」

エレン「そういう事はいうんじゃねえよ、ミカサ」

ミカサ「そう? 別に見られて困るような物は置いてないけれども」

アルミン「そういう問題じゃないよ、ミカサ……(呆れ顔)」

アルミンが一際げんなりしているようだ。むむむ。アルミンがそう言うならきっとダメなのだろう。

ミカサ「分かった。では私の部屋は立ち入り禁止で」

ジャン「お、おう……」

ミカサ「夕食を用意するので少し待ってて欲しい。準備する」

ジャン「いや、オレ達も手伝う。今日は何を作るつもりなんだ?」

ミカサ「>>497を作るつもりだったけれども。それでよいだろうか?」

(*皆で夕食を食べます。メニューを決めて下さい)

定番だけどカレーと野菜サラダ

ジャン「イエス! (小さなガッツポーズ)」

ミカサ「?」

ジャン「いや、何でもない。十分だ。カレー食べようぜ」

エレン「…………」

アルミン「………………」

マルコ「まあまあ、皆で作ろうよ」

マルコが何故か宥めている。一体どうしたというのだろうか?

ミカサ「エレン? アルミン?」

エレン「いや、何でもねえよ。下に行こうぜ」

という訳で皆でキッチンに向かい、一緒に夕食を作ることになった。

カレールーは辛口、中辛、甘口、一応、三種類とも用意している。

ミカサ「辛さはどうしたらいい? 甘口と辛口、二種類作った方がいいなら作るけども」

エレン「うちはいつも中辛だけど、お前らは?」

ジャン「中辛で構わん」

マルコ「うん、大丈夫だよ」

アルミン「うっ……この中で甘口派は僕だけか…」

ミカサ「だったら中辛と甘口で分ける。私は甘口派なのでちょうどいい」

ジャン「だったらオレも甘口でいいよ」

ミカサ「? 中辛派ではないの?」

ジャン「あ、いや……どっちも食うよ。その方が鍋も減っていいだろ?」

なるほど。それも一理ある。

という訳で、二種類の辛さのカレーと野菜サラダを作ることになった。

調理の最中、ジャンがやたら張り切って野菜を切ってくれたけれども、正直、手慣れてない感じがあって危なっかしいと思った。

でも、折角手伝ってくれているのでその好意は有難い。苦笑する場面もあったけれども、何とか全ての工程を無事に終えることが出来た。

後は暫く煮詰めるだけだ。ご飯も丁度いいタイミングで炊けたようだ。

皿にご飯をよそいで、カレーをかけてカレーライスの出来上がり。

野菜サラダも添えてついでに漬物も出しておく。

ミカサ「うちで漬けてる漬物だけども、良かったら一緒にどうぞ」

ジャン「おおお……自家製か。すごいな」

ミカサ「口に合うといいけれども」

ジャン「ああ、有難く頂く」

という訳で皆で手を合わせて一緒にカレーを食べることになった。

ジャン「美味い……ミカサは料理上手だな」

エレン「ああ。ミカサの料理はいつも美味いぞ」

ジャン「お前には言ってねえよ! ミカサ、その……もし良ければ漬物を少し分けて貰えないか?」

ミカサ「持って帰る? 待って。タッパーを用意する」

エレン「後にしろ! 後に! ミカサもいちいち構うなよ」

ミカサ「………そんな言い方しなくても」

マルコ「いや、ミカサもゆっくり食べ終えてからでいいと思うよ」

ジャン「ああ、悪い。もちろん、後ででいいんだ。すまん…」

ジャンが眉を下げている。何だか申し訳ない。

ごめん、どーでも良いことなんだけどミカサの語尾や会話中、「けれども」「けども」が多いのが気になる
方言みたいで雰囲気がつかみづらいからちょっと気にしてみて欲しい
内容はすごく面白いので楽しみにしてます

>>500
あれ? そんなに多いのか。自覚なかったです。
無自覚だった。申し訳ない。次から気を付けます。

ミカサ「ジャンが謝る事ではない。私は嬉しかった」

ジャン「!」

ミカサ「ついでに余ったらカレーも持って帰っていい。タッパーならいっぱいあるので」

エレン「おいおい、そこまでしなくてもいいだろ……」

アルミン「あ、それなら僕だって欲しいよ。余った分、おじいちゃんと食べたいな」

ミカサ「勿論、構わない」

ミカサ「マルコも持って帰る?」

マルコ「え、ええ……なんか悪いなあ」

エレン「………はあ、全くもう」

エレンは呆れているけれど、食べて貰えるのは有難いのだ。

余らせるよりきっちり食べて貰った方が作った方としては嬉しいのだから。

ジャン(ニヤニヤニヤ)

エレン「おい、ジャン」

ジャン「なんだよ」

エレン「その馬鹿面やめろ。気持ち悪い」

ジャン「は? 何言ってんだ。嫉妬は見苦しいぞ、エレン」

エレン「嫉妬じゃねえよ。つか、オレはいつでもミカサの飯食えるし」

ジャン「は! そりゃ家族ならそうだろうな。オレが言ってるのはそこじゃねえよ。お前も本当は気づいてんだろ」

エレン「…………だったら何だってんだよ」

まずい。また、険悪な気配になってきた。

無意識にエレンがミカサ意識してる感じが可愛い
ミカサ無防備やな…かわいい

ミカサ「二人とも、喧嘩はやめて。ご飯がまずくなる」

エレン「ぐっ………」

ジャン「悪い悪い。オレのせいだな。飯は楽しく食べようぜ♪」

エレン「…………」

ジャンの機嫌はいいけれど、対照的にエレンがふてくされている。

どうしてエレンはこう、ジャンといつも衝突してしまうのだろうか?

首を傾げる場面が多々ある。どうしたらこの問題は解決できるのだろうか…。

マルコ「まあまあ、ご飯の時くらいは喧嘩はひっこめよう、エレン」

アルミン「そうそう。折角のカレーだしね」

エレン「…………」

エレンは無言でご飯をかきこんで、先に食べ終えてしまった。

……と、思ったら、え? おかわり?

ミカサ「え? 2杯目いくの? 珍しい…」

エレン「悪いかよ。残さなければ、おすそ分けする必要ねえだろ」

ジャン「!」

アルミン「なるほど、そうきたか」

ジャン「てめえ、何意地はってるんだよ!」

エレン「うるせえな! 腹減ってんだからおかわりしていいだろ?!」

ミカサ「え、ええ……いいけど」

今度はジャンの顔色が悪くなってしまった。

それはそうだ。だってルーが余らないと、タッパーでカレーは持ち帰れない。

ジャン「てめえええ……くそ、そっちがその気なら!」

ガツガツガツ……

ジャン「おかわりお願いします!」

ミカサ「ええええ……」

今度はジャンがおかわりしてしまった。

エレン「てめええ……」

ジャン「お前に全部食われてたまるか!」

ミカサ「あの、二人とも、アルミンと、マルコの分も残して……」

エレン「は! 食いだめしていく気か? そうはさせるか!」

ジャン「あ! てめえ、ぬけがけすんなよ!」

ミカサ「…………」

ダメだ。もう、二人は聞く気がない。

アルミン「あーあ」

マルコ「あはは……」

ミカサ「ご、ごめんなさい。二人とも」

アルミン「いいよいいよ。また今度、で」

マルコ「うん。漬物だけでも、十分だしね」

二人は苦笑して許してくれたけども、なんだかちょっとだけ申し訳ない気持ちになってしまった。

そんなこんなで、結局カレーは余らず、2鍋分、5人で食べてしまう事になった。

カレーが余らないって、なかなか珍しい事態ではあるが、まあ、食べきったからよしとするべきなのか……?

意地を張り合って大食い対決(?)になってしまったエレンとジャンは、リビングでぐったりしている。

ミカサ「…………先に風呂に入ってきてもいいだろうか?」

エレン「お、おう……いってこい」

エレンとジャンは食休みでリビングで休憩中なので、その間に風呂に入ることにした。

私は風呂に入りながら、どうしてあの二人はこう、張り合ってしまうのか改めて考えてみた。

研修旅行の時もそうだったが、良く理解出来ない事をきっかけに何故か勝負ごとに発展してしまうのだ。

今回のカレーの件もそうだ。どうしてこうなった。と、思わずにはいられない。

ミカサ「はあ……」

振り返って考えてみる。あの時と、今回の件。共通点は…。

ミカサ「ん?」

そういえば、私がジャンに何かをしようとすると、エレンは決まって不機嫌になっているような気がする。

勉強の時もそうだ。私がジャンに勉強を教えると言ったら、何故か、割って入って…。

今回も、ジャンにカレーをおすそ分けするといったら、邪魔をした。

まるでやきもちを焼いているようにも見える。しかし…

エレン『嫉妬じゃねえよ』

と、エレンはきっぱり否定しているし、それに対しても、ジャンは特に否定するような事はなかったので、ジャンも嫉妬ではないと認めている事になる。

ジャン『オレが言ってるのはそこじゃねえよ。お前も本当は気づいてんだろ』

ジャンは一体「どこ」を「そこ」と言っているのか。

ミカサ「まるで穴埋めの文字を読んでいるようで難解過ぎる…」

ドコとかソコとか伏せないではっきり言えばいいのに。あーもやもやする。

あんまり考え込むとまた温泉の時のように長湯してのぼせかねないので適当な時間で風呂からあがる。

ミカサ「エレン、風呂が空いた……ので」

エレン「あ、ああ……」

ジャン「!」

ミカサ「ジャン、まだ苦しいの?」

ジャン「もう治ったぞ! ああ、大丈夫だ!」

ジャンがくるっと起き上った。良かった。

ミカサ「今日の風呂の順番は……」

エレン「………オレとアルミンが先だ。ジャンとマルコは後にしろ」

ジャン「あ、ああ……」

ミカサ「四人で一緒に入らないの?」

エレン「男四人じゃさすがにきつい。二人ずつでいいだろ」

ジャン「ああ、ああ……」

ん? ジャンがまだぼーっとしているようだ。

ミカサ「では私はその間、片づけをしておくので」

エレン「おう、任せた」

ジャン「て、てつだ……」

ミカサ「いい。皿洗いは私の担当なので」

エレン「下手な奴がやると皿を割りかねないからな。手伝うなよ」

ジャンは少ししょげてしまったけれど、こればかりはさせられないので仕方がない。

ジャンが家事に慣れているなら話は別だが先ほどの料理の時に分かった。

彼は普段、家でそう多く、家事仕事をしている訳ではなさそうだ。

恐らく、母親が全部やってくれているご家庭なのではなかろうか。

勿論、手伝いを申し出てくれるのは嬉しい。

だけどそれに甘えては自分の役割を果たせなくなるのでここは任せて欲しいのだ。

いつものように皿洗いを済ませて手早くキッチンを片付けると、丁度エレンとアルミンが風呂からあがった。

そしてジャンとマルコも風呂を済ませて、先ほどのゲームの続きをする事になった。

ゲームの電源を入れなおして、いざ再開。

エレン「えーっと、姫のところのイベントは全部終わったから、次はロンロン牧場いくか」

アルミン「あーエポナのところだね」

ミカサ「エポナ?」

ヒロインがまた出てくるのだろうか?

エレン「まあ、行けば分かる」

ジャンが再び操作する。ロンロン牧場に着いた。

小屋の中には牛がいる。あら可愛い。

ジャン「ん? ここで何するんだ?」

エレン「まあ、いいから探索しとけ」

ジャン「ちっ…」

ジャンは舌打ちしながらあちこちウロウロしている。

部屋の中に入ると……

ジャン「?!」

鶏が大量に現れた。何羽いるのだろうか? ちょっと数えきれない。

あ、タロンさんが鶏の中に埋もれている。また寝ているのだろうか?

タロン『ムニャ…ムニャ…はい、おきてますだーよ!』

ジャン「嘘つけ、寝てただろ、こいつ」

アルミン「だよねー」

タロン『ん? おおっ、だれかと思ったらこないだの妖精ぼうや! あの時はたすかっただーよ』

タロン『あの後マロンのきげんをなおさせるのに苦労しただ』

タロン『今日はなんの用だーよ? もし時間があるならちょこっとアソんでいくだ』

タロン『オラの持ってる3羽のコッコは特別製のスーパーコッコだーよ』

タロン『今からこのコッコたちを普通のコッコの中に投げ込むだ』

タロン『ぜんぶ見つけたらぼうやの勝ち! イイものやるだーよ。見つけられなきゃオラの勝ち』

タロン『10ルピーもらうけど、やる?』

→はい

 いいえ

ジャン「どうすっかなー」

ジャンは迷っているようだ。

ミカサ「とりあえずやってみればいいと思う」

ジャン「じゃあやるか」

タロン『持ち時間は30秒だ。そんじゃ、いくだーよ。スーパーコッコはいりま~す!』

その直後、

ジャン「?!」

む? ち、違いが分からない。

ジャンの眉間にも皺が寄る。これはどう本物と見分けたら…。

タロン『時間切れだ~よ。残念でした~っ』

ジャン「ああああ……」

こ、これは難しい…。

ジャン「くそ、30秒って短すぎるだろ?!」

エレン「ククッ……まあ、そうだろうな」

アルミン「ここ、地味に難しいんだよね」

マルコ「これは確かに難しいね」

ミカサ「コツはないのかしら?」

エレン「あー……アルミン、任せた」

アルミン「ええ? 僕も久々だからなあ」

と言いながらもアルミンに交替である。

タロン『1回5ルピーでやる?』

→やる

 やめる

あら? 2回目は何故かお安くなっている。これはいい。

アルミンがスタートした。アルミンは片っ端からコッコ(鶏)を持ち上げて捨てている。

アルミン「とにかくここ、持ち上げまくるしか手がないんだよね」

エレン「運ゲーだからな」

ジャン「そうなのか?」

アルミン「見た目の違いはないよ。ただ、一度持ち上げたら緑のマークがつくから、とにかく全部持ち上げれば数打ち当たる…だったかな?」

という訳でアルミンは持ち上げまくった。しかし間に合わず、時間オーバー。

アルミン「ああ…ダメだったか」

エレン「ミカサもやるか?」

ミカサ「いいの?」

エレン「まあやってみろ」

という訳で交替である。よし、今度こそ。

タロン『おっ! そいつは本物だーよ! その調子その調子! あと2羽~っ!』

良かった。まずは1羽確保!

タロン『あわわっ! そいつも本物だ! だどもこれからが勝負だーよ。さあ! あと1羽~っ!』

よし! これで2羽確保!

さあさあ、どいつが本物なのかしら?

さくさく持ち上げて捨てるのを繰り返すと……

たったら~♪

タロン『うお~っ! やられただ~よ! スゴイだ~よ!!』

タロン『それでぜんぶだーよ! こっちへおいで』

ジャン「おおお、すごいなミカサ」

ミカサ「良かった。全部捕まえられた」

タロン『おまえ、最高のカウボーイになれる「さいのう」ってのがあるだ!』

ゲームの中の話でも、褒められると嬉しいものである。

タロン『マロンのムコさんにならね~だか?』

→はい

 いいえ

ミカサ「!?」

え? いきなり結婚? なんていう急展開。

ミカサ「ええっと、これは……」

ジャン「やめとこうぜ。どうみてもメインヒロインはセルタ姫だろ」

エレン「まあ、そこはミカサの好きにしろ」

ミカサ「ジャンの言う通り、メインヒロインを優先で…」

と、思ったのにボタンを押し間違えて「はい」を選んでしまった。

タロン『いや~じょーだん、じょーだん! まだちっちゃすぎるだが? わはははっ!』

何だ。ただの冗談だったのか。ほっとした。

タロン『そーだ、約束どおりオラのじまんのロンロン牛乳やるだーよ! のんだとたんに元気になるだ』

タロン『のみおわっても、このビン持ってくれば、いつでも買えるだーよ』

ロンロン牛乳をビンにつめた!

滋養強壮! 栄養補給!

Cで使えばハートが回復!

回復するのはハート5コ。

1回飲むとビン半分。2回飲んだらカラになる。

ミカサ「おおお……これは必須アイテムね」

エレン「序盤では絶対いるからな。これないときつい」

ミカサ「なるほど、だからロンロン牧場に来たのね」

エレン「それだけじゃねえけどな」

そして一度外に出て、牧場の奥の方へ行くと……

たらら~たらら~♪

何だか懐かしさを感じるノスタルジックなメロディが流れている。

ミカサ「あら……」

馬がいた。可愛い。

マロンの横にはもう一回り小さい馬(?)がいる。

マロン『アラ、こないだの妖精クン!』

マロンちゃんはこの間のお礼を言った後、

マロン『あ、そうだ! 妖精クンにしょうかいするわ、わたしのともだち…』

マロン『このウマなの。エポナってゆーのよ。カワイイでしょ!』

同意。確かに。可愛い。乗りたい。乗れるのだろうか?

触ろうとしたが、ああああ……逃げられてしまった。

ミカサ「ガーン……」

ジャン「逃げるのかよ」

マロン『エポナ、妖精クンのこと怖がってるみたい…』

何故……?

もう一回話しかけると、

マロン『この歌、おかーさんがつくったの。いい歌でしょ? マロンといっしょに歌いましょ!』

ミカサ「???」

ど、どういう意味だろうか?

ミカサ「私は何をすればいいの?」

エレン「んー…」

アルミン「ここは教えてあげた方が」

エレン「まあそうだな。オカリナを見せてみろ」

ミカサ「オカリナ?」

エレン「今流れてるメロディを教えてもらうんだ」

ミカサ「なるほど」

という訳で、マロンにたらら~♪を教えてもらった。

エレン「これで後でエポナをゲット出来る」

ミカサ「本当? 良かった」

エレン「エポナの歌でエポナと仲良くなっておかないと大人時代にエポナ取れないんだよな」

ミカサ「そうなのね。良かった」

ジャン「ミカサは馬が好きなのか?」

ミカサ「動物は割と好き。馬も例外ではない」

ジャン「……………」

ミカサ「?」

ジャン「いや、何でもない。続けてくれ」

ジャンの質問の意味が分からなかったが、そのままゲームを続ける事にした。








ミカサ「……………………………は!」

しまった。途中で寝落ちていた。あれ? あれ? あれ?

エレン「よお、ミカサ、起きたか」

ミカサ「エレン……今、何時?」

エレン「朝の4時半くらいかな」

ミカサ「?!」

ミカサ「げ、ゲームは……」

エレン「ああ、途中でセーブして一旦、止めたけど」

ミカサ「み、皆は…? あ、寝てる」

エレン「ああ。さっきまでジャンが起きて続きをやってたけど、さすがに限界だったみたいだな。寝ちまったよ」

畳の上の布団を敷いた上にジャンもマルコもアルミンもそのまま寝ている。

ミカサ「エレン、まだ寝てないの?」

エレン「オレ、夜更かし得意だからさ。ミカサが起きるまで起きとこうかと思ってな」

ミカサ「な、なんで?」

エレン「いや、オレの部屋、広いけど、5人寝るのにはさすがに狭いしな」

ミカサ「ご、ごめんなさい…」

エレン「謝る事じゃねえよ。んじゃ、そろっと起きて部屋に戻れ」

ミカサ「う、うん……」

続きは自分の部屋で寝ることにしよう。

ミカサ「エレン、先ほどのゲームはどこまで進んだのだろうか?」

エレン「ん? リンクが大人になって………」

お、おう。もうそんな先の方まで進んでいたのか。見れなくて残念だ。

ミカサ「大人リンクがイケメンになったのは覚えてるけど……そこから先もだいぶん、進んだのね」

エレン「まあな。ジャンが意外と後半、操作に慣れてきてな。思ってたよりはサクサク進んだよ」

ミカサ「そう……」

エレン「ゲームなんだからまた、見たければもう一回プレイすればいいだろ」

ミカサ「そうね。うん、いつかまた」

エレン「…………」

ミカサ「?」

エレン「いや、なんか、その………」

どうしたのだろうか。私の部屋の入り口で、エレンが、物凄く、困った顔をしている。

エレン「何でもねえ。やっぱりいいや」

ミカサ「気になる言い方しないでほしい」

その、出して引っ込める。という言い方はやめて欲しい。

ミカサ「前にも似たような事があったような」

エレン「あ、そうだったか?」

ミカサ「(こくり)エレンはたまに気になる言い方をするので困る」

エレン「…………」

ミカサ「言いたいことははっきり伝えて欲しい。もやもやさせないで」

エレン「分かった。じゃあ言うけどさ……」

ミカサ「うん」

エレン「あ、朝飯は、おすそ分け出来るようなもん、作るなよ」

ミカサ「え?」

エレン「じゃあな。おやすみ。オレも、もう寝る」

ミカサ「……………」

エレンはそれだけ言って、自分の部屋に戻っていった。

い、今のはいったい……?

ミカサ「何故、おすそ分けをしてはいけないのだろうか?」

エレンの真意が分からず、首を傾げるしかなかった。

ようやくゲームで男子会(?)編終了です。
一度、ゲームでまったり遊んでいるエレン達を書いてみたかったのだ。
思ってた以上に長くなってしまってすみません。
次からは(おそらく)普通の学校生活に戻ります。
今回はここまで。続きはまた。

作者の真意はわからないけど無意識嫉妬なのか!くそかわいいじゃないか

読みなおしたら、本当にこのシリーズのミカサ「けれども」多いなwwwww
ガチャポンシリーズの方のミカサはそうでもないのになんでだろう?
このシリーズ特有の変な癖が無意識についてたようだ。指摘サンクスです。

>>503
無自覚ラブで進みます。進展のろいですけどね。

>>519
このシリーズは今まで書いたエレミカの中では一番、展開が遅いと思います。
その分、じっくりゆっくり書いていく予定ですので暫くはじれったいのが続くと思われます。







エレンの真意が良く分からなかったが、朝は一応要望に沿う献立にした。

味噌汁と納豆、そして焼き魚を1匹ずつ。簡単な朝食を作ってふるまった。

ジャンがやたら「うまい!」を連呼してくれて、こそばゆかった。

作った側としてはそんなに喜んで貰えると自然と頬が緩んでしまう。

勿論、アルミンもマルコも「美味しいよ」と言ってくれた。

エレンは「いつも通りうまい」と、淡白な感想だった。

ジャン「エレン、もっと感謝の気持ちを出せよ。贅沢な奴だな」

エレン「あ? ああ……うまいうまい」

ミカサ「表情と感想が一致してないような…」

エレン「ん? んな事ねえよ」

ミカサ「嘘、ついてない?」

エレン「……………強いて言うなら、いつもよりちょっとだけ味噌汁が濃いかなってくらいか?」

ミカサ「そう? んー……あ、本当だ。ごめんなさい。お湯を足して」

ジャン「そうか? オレは丁度いいけどな」

マルコ「うん……いいと思うよ」

アルミン「ははは……エレン、細かいねー」

エレン「いや、昨日はミカサ、いつもと違うリズムで寝たからさ。調子悪いかなと思って、別にこれでもいいかと思ったんだよ」

ジャン「………………」

ジャンが何故かエレンを睨んでいる。何故……?

ミカサ「ジャン?」

ジャン「あ、いや、何でもねえよ」

エレンはすまし顔で食べ続けている。今日はジャンにつっかかる気配はない……。

エレン「飯食ったら、とりあえずいったん帰れよ。そろそろ親父達も帰ってくるだろうし」

アルミン「あ、うん。そうだね」

ジャン「ゲームの続きはまた来た時にさせてもらってもいいか?」

エレン「えー……もう、面倒くせえから、本体ごと借りて行けよ」

ジャン「は? え? いいのか?」

エレン「通われるのは面倒くさい。…………別にどうしても通いたい理由なんてないだろ?」

ジャン「うぐっ………分かった。じゃあ借りていくよ」

太っ腹なエレンである。ちょっと意外だった。

そんな訳でジャンは本体ごとエレンからゲームを借りて、私は三人に漬物のお土産だけ渡して、皆を送って行った。

家に帰ってからエレンと二人きり。話すこともなく帰り道を歩いていたら……

エレン「しっかしミカサ、お前って本当、すげえな」

ミカサ「え? 何が」

エレン「いろいろ。初見で大体の事、こなしやがって。オレが初めてセルタをやった時はあんなにサクサクプレイはやれなかったぞ」

ミカサ「そう? でも、兵士にはすぐ見つかった」

エレン「あれはそれが普通だよ。マルコはマルコで異常だな。ま、でもなんか懐かしかったな」

ミカサ「そうなの?」

エレン「ああ。うちにゲームがいっぱいあるのはさ、親父が元々ゲームが好きっていうのもあるけど、母さんが亡くなってから、親父がオレに寂しがらせないようにいろいろ買ってくれたんだと思うんだよな」

そうか。なるほど。だから、あんなに一杯あるのか。

エレン「親父は毎日忙しいしさ。あんまり構う暇、なかったし、オレもそれで仕方ないと思ってたし、でも、やっぱり一人でするゲームより、誰かとやるゲームの方が断然、面白れえよ」

ニカッと、嬉しそうに笑うエレンに私も釣られてしまった。

ミカサ「そうね。また、機会があれば皆で違うゲームをやってもいいかもしれない」

エレン「おう。今度は桃色鉄道でもいいかもな」

ミカサ「うぐっ……桃鉄はちょっと」

何だか嫌な予感しかしない。エレンとジャンが戦争を起こしそうだ。

エレン「そうか? まあパワプロとかも好きだけどな。Wiiでやってもいいか」

ミカサ「パワプロ?」

エレン「野球ゲームだ。実際に体を動かしてやれるゲームだからミカサに向いてる」

ミカサ「では、次はぜひそれをやろう」

と、談笑しながら、私達は家に帰宅したのだった。





楽しい連休を終えた後は、中間テストがやってくる。

その後は慌ただしく体育祭だ。5月25日。この日は晴天に恵まれて無事に開催される事になった。

私はクラスの推薦でいろんな種目に出ることになった。

50m走、100m走、400m走、騎馬戦、そして団対抗代表リレー。

一人最低、2種目は出ないといけない規則だけど、上限はなかったので時間配分の可能な限り出場する事になったのだ。

団の組み分けは縦割りだった。つまり3年1組、2年1組、1年1組が同じ団になる。

色は毎年抽選で決まるらしい。団長のオルオ先輩が緑色を引き当てたので私達は緑色の鉢巻をして参加する事になった。

観客は中学の頃に比べると、父兄よりも同級生やOB、OGの数の方が多い気がする。

そうか。中学時代の同級生や先輩等が体育祭に遊びに来たりもするのだろう。

ま、まさかとは思うけれど、私の知ってる顔は遊びに来ていないといいが…。

思わず顔を隠すように下を向いていると、隣の席のエレンが不思議そうに顔を覗き込んできた。

エレン「? ミカサ、気分でも悪いのか?」

ミカサ「い、いえ……別に」

エレン「喉乾いたなら、ポカリあるぞ。飲んでおけよ」

ミカサ「あ、ありがとう…」

エレン「ほら、アルミンの出番だぞ。技巧走が始まるから応援しようぜ」

技巧走というのは、所謂障害物競争の事である。途中でいくつかの罠をかいくぐり、ゴールまで目指す競技なので、体力のない選手の大半はこれに出ているそうだ。

エレン「アルミン、がんばれー!」

アルミンはスタートは遅かったけれど、あれよあれよと挽回してトップに出て1位でゴールした。

途中の罠をかいくぐるスピードがダントツだった。他の選手はまだまごついている。

エレン「いいぞアルミーン!」

エレンも嬉しそうだ。アルミンもこっちに気づいて手を振っている。

そうだ。今は体育祭に集中しなければ。気にしてもしょうがない事に気を取られている場合ではない。

放送『続きましては……女子騎馬戦に出る選手は東門に集まって下さい』

エレン「お? ミカサの出番だな。行って来い」

ミカサ「うん」

そろそろ準備だ。私は一人で席を立ち、東門の方に移動しようとしたのだが……

金髪の男「おい、おまえ、ミカサか?」

ミカサ「?」

その途中で見知らぬ男性に声をかけられた。誰だろうか?

金髪の男「髪、切ってたから一瞬分からなかったが……やっぱりミカサだよな」

ミカサ「!」

思い出した。この人は、中学時代、私に迫ってきた先輩の一人だ。

名前はもう忘れてしまったが、彼には肋骨を何本か折る怪我をさせてしまった。

思わず警戒して一歩引く。すると彼は、

金髪の男「おいおい、そう露骨に引くなよ。傷つくだろ」

ミカサ「あの、私はもうすぐ競技に出るので」

金髪の男「ああ? ああ……そうか。ここの生徒だもんな。そっか」

ミカサ「失礼します」

金髪の男「ちょっと待ってくれ。少しだけ、時間くれよ」

ミカサ「急いでいるので……」

金髪の男「ちょっとくらいいいだろ。話したい事があるんだよ」

ミカサ「やめて下さい。その……」

腕を掴まれてしまった。嫌だ。触られたくない。

でも、ここで無理に振り切るのもまずい。どうしたら……

ジャン「おい、そこのアンタ」

その時、私の背後から覚えのある声がした。

今回はここまで。体育祭編に突入です。
最近、急にキーボード叩き過ぎて手首痛いので、
暫く休憩します。ちょっと頑張りすぎた。すまんね。

ミカサに迫るモブになりたい。そしてボコボコにされたい

金髪の男「あ? なんだよ」

ジャン「アンタ、ミカサの何なんだ。もうすぐミカサは出番なんだよ。邪魔するなよ」

その時、丁度偶然、ジャンが通りかかってくれた。私を隠すように前に出てくれる。

金髪の男「…………なんだよ。もう、新しい男作ってんのか、ミカサは」

ミカサ「は…?」

金髪の男「おいお前、ミカサとはもうヤッたのか?」

ジャン「は? 何言ってるんだ?」

ジャンが苛立って言い返す。当然だ。

私も少々、苛ついてきた。

金髪の男「まあ、無理かもな。こいつ、人に散々、期待させといて貢がせといてヤらせない、ずるい女だもんな」

その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。

ビリビリと、体の中に電気が走るような感覚を覚えた。

イケナイ。ダメ。

自分の中の理性が、そう訴えるのに、体は言う事を聞かなくて。

でも、私が拳を握るよりも先に、なんとジャンが、

自身の拳を振り下ろしていたのだ。

それを目に入れた瞬間、私は我に返った。

ダメ…!

ジャン! その手を汚しては……

止めに入ろうとした時に、私よりも先にジャンの拳を止めた人がいた。

ジャン「!」

エレンだ。ジャンの拳を振り下ろされる前に後ろから、ジャンの背中を蹴ったのだ。

ジャン「てめえ! 何しやがる!」

エレン「それはこっちの台詞だ。こんな人の往来の激しいところで何しようとしてんだ」

ジャン「でも、こいつは……!」

エレン「ミカサ、次、女子の騎馬戦だろ。アナウンス、名指しで呼び出されてんのに気づいてなかったのか?」

耳を傾けると私の名前が何度も響いていた。まずい。遅刻だ。

エレン「早く行け。待たせたら全体の進行が遅れるだろうが」

ミカサ「…………」

私は怒りを押し殺して、唇を噛みしめて気を落ち着かせた。

そして一度大きく頷いてその場を後にする。駆けだして東門に急ぐ。

だけど、頭の中は先程の言葉が響いてこびりついて離れない。



『人に散々、期待させといて貢がせといてヤらせない、ずるい女だもんな』


私は彼に期待させたつもりは一切無いし、貢がせた覚えもない。

勝手に好意を寄せてきたのは向こうなのだ。なのに、なのに。

私はその後の騎馬戦で、そのストレスを全てぶつけた。

何かにエネルギーをぶつけないと、涙が零れそうだったからだ。

サシャ「み、ミカサ……今日のミカサは何だかすごいですね」

クリスタ「うん、そうだね。気合入ってるね」

ユミル「ミカサがいると楽勝だな」

と、周りに私の異変は気づかれなかったのは幸いだった。

今はこのイライラを全て騎馬戦にぶつける。

そのおかげで私達緑団は騎馬戦で圧倒的リードを獲得した。

騎馬戦が終わってから緑団の席に戻ると案の定、ジャンとエレンが口論を続けていた。

ジャン「なんで止めた! あんな野郎、殴って当然だろうが!」

エレン「気持ちは分かるがミカサの前でトラブル起こすなっつってんだよ! 下手したらお前が停学くらってただろうが!」

ジャン「そうだけどよ! くそ……あの野郎、今度あったら絶対、陰でぶん殴ってやる!」

ミカサ「やめて、ジャン。貴方が手を汚してはいけない」

ジャン「ミカサ!」

ジャンは私の顔を見て心配そうに駆け寄ってくれた。

ジャン「ミカサ……あいつは一体誰なんだ?」

ミカサ「……………」

言おうかどうか迷う。彼の事を話せば私の過去も同時に話さないといけなくなる。

そうなった時にジャンは私の事をどう思うのか。

エレン「…………ジャン、そんなのはどうでもいいだろ」

ジャン「どうでも良くねえよ! ミカサに暴言吐く奴なんて許せないだろうが!」

エレン「そうだとしても、それはミカサのプライベートな部分だろうが。今、ここで話すような事じゃねえよ」

エレンは私とジャンの間に入ってくれた。それが少しだけ有難かった。

ジャン「うっ……そ、それはそうだが」

ジャンも少し頭が冷えたようだ。

ジャン「分かった。今は聞かないでおくけどよ……もし、何か困った事態が起きたら絶対、オレに話してくれよ、ミカサ!」

ミカサ「う、うん……」

ジャンは次の玉入れ競技に出る予定の筈だ。

なので彼は西門の方へ移動して、席には私とエレンだけが座った。

エレンは何も聞かず話さず無言でいる。本当に聞く気はないようだ。

そういえば以前、エレンはジャンがアルミンとマルコをからかっている時もそれに便乗したりしなかった。

エレンのそういう部分は有難い反面、後ろめたさのような物も感じた。

私から話さなければ、きっとエレンは聞く気がないのだろう。

どうするべきだろうか? 私はエレンに自身の過去を話すべきなのだろうか。

…………ダメ。やっぱり話せない。

こんな事、話すべきではない。エレンになんて思われるか。

ミーナ「あいたたた……」

と、考え込んでいたその時、足を引きずって緑団のテントにミーナがやってきた。

ハンナ「大丈夫? ミーナ」

ミーナ「さっきの騎馬戦で足ひねっちゃったあ」

ハンナ「困ったね。玉入れの後の、二人三脚出る予定だったでしょ。マルコと」

ミーナ「そうなのよねーどうしよう」

マルコ「無理しない方がいいよ。誰か代わりにやってくれる人を探そう」

ミカサ「!」

今は、他の事をしていたい。丁度良かった。

ミカサ「だったら私が代わりにでよう」

マルコ「いいの? ミカサ」

ハンナ「え、でもミカサ、確か他にもたくさん種目出てなかったけ? きつくない?」

ミカサ「体力なら余っている。問題ない」

マルコ「ミカサがいいならいいけど……」

マルコはチラリと何故かエレンの方を見た。

エレン「何だよ」

マルコ「いや、いいかな? エレン」

エレン「本人がいいって言ってんだ。いいよ」

マルコ「じゃあ、ミカサを借りてくね」

という訳で、急遽私はマルコと二人三脚に出る事になった。





マルコとの二人三脚は無事に1位でゴールした。

マルコ「ミカサ、足早いよ……男子と変わらないね」

ミカサ「ごめんなさい。早すぎただろうか」

マルコ「いや、僕は女子の速度に合わせるつもりだったから、ガチで走るとは思わなくてね。ちょっとびっくりしちゃったよ」

ミカサ「走りにくかったならごめんなさい」

マルコ「まさか! むしろ走りやすかったよ。申し訳ないのはこっちの方だよ」

マルコと一緒にテントに帰ると、ジャンが迎えてくれた。

ジャン「マルコ、これはどういう事だ?」

マルコ「かくかくしかじか…」

マルコがミーナの捻挫の件を伝えるとジャンは露骨にがっかりして見せた。

ジャン「なんだよそれ! くそう……」

マルコ「まあまあ、突発的にそうなったんだから仕方ないだろ」

ジャン「まあ、それなら仕方ねえけど」

ジャンが落ち込んでいる。顔を少し合わせづらい。

ジャンは目だけで先程の事を気にしている素振りを見せている。

そんな目で見ないで欲しい。分かっている。分かっているのだが。

エレン「おい、次、男子の綱引きの準備だぞ、移動だ」

マルコ「ふー忙しいね。今度は東門だっけ? 西門だっけ?」

エレン「西門だ。ほら、移動するぞ」

午前中のプログラムが全て終わるまではそんな感じで、移動やら何やらですれ違い、先程の件はあやふやになった。

お昼の休憩の時もエレンは何も言わず、アルミンと今日の事を話したりしていた。

今日はグリシャさんは仕事なので当然来れず、私の母も応援には来ていない。

高校生ともなると、保護者が応援に来ているのは全体の半分くらいになる。

なのでお昼はエレン、私、アルミンの三人で食べていた。アルミンは騒動の件を知らない筈だが、

アルミン「………ミカサ」

ミカサ「何?」

アルミン「元気ないね? 疲れちゃったのかな?」

と、察しの良いアルミンは私の異変に気づいてしまったようだ。

エレン「こいつ、二人三脚も急遽、助っ人で出たからな。人の2倍は働いてるんだよ」

アルミン「そりゃ大変だったね。殆ど休み無しだったんじゃない?」

ミカサ「いえ、それは大丈夫なので心配しなくていい」

アルミン「でも、無理したらいけないよ。ミカサ。ちゃんと休める時に休んでね」

ミカサ「うん。心配してくれてありがとう」

エレンのおかげで深くは突っ込まれなかった。

エレンは本当に普通にしている。ジャンとは全く違う。

…………ん?

ミカサ「エレン? どこを見てるの?」

エレンの視線が不自然だ。私ではなく、私の後ろの方を見ている。

エレン「ん? いや、何でもねえよ」

ミカサ「嘘、誰かを探しているような目を…」

思わず、私は周りを見渡してしまった。私達がいる場所は、学校の端っこだ。

中庭は人気があるのでこういう時は場所を取りづらい。

なので人気の少ない日陰になる倉庫の隣辺りでシートを敷いてそこで昼食をとっていたのだが…

ミカサ「!」

今、一瞬、気のせいか。

いや、気のせいじゃない。さっきの金髪の男の姿が見えて、そして奥に引っ込んでいった。

ぞっとした。まさか、まだ私にコンタクトを取ろうとしているのだろうか。

エレン「馬鹿、ミカサ。目合わせるんじゃねえよ」

エレンの言う通りにした。向き直って相手を無視する。

私の様子にアルミンも察したのか、

アルミン「さっきからのチラチラうっとしい視線、ミカサ狙いだよね」

エレン「ああ」

アルミン「…………ミカサ、今日は一人になっちゃダメだと思うよ」

と言ってくれた。

ミカサ「う、うん……」

まだ、彼は私に話す事があるのだろうか。こちらには何もないのに。

アルミン「こういう外部の人が校内に入れるイベントの時は気をつけないとね」

エレン「ああ。不審者も混じれるからな。用心しとかねえとな」

私は頷いた。その通りだと思った。

そしてさっさと昼食を済ませて午後のプログラムに入った。

午後は午前より種目は少ない。メインはやはり得点競技ラストの団対抗リレーだ。

これが終わると3年生のフォークダンスがあって、結果発表があり、全日程が終了する。

リレーまではもう少し時間がある。先にトイレ休憩しておきたい。

でも一人で移動するのは怖いので誰か女子に…。

皆、わいわいテント内で雑談している。だ、誰に頼もうか。

一人静かにしているのは………アニだ。

ミカサ「あ、アニ……」

アニ「ん? どうしたの?」

ミカサ「一緒にトイレに行って貰えないだろうか」

アニ「え? 何で? 一人でいかないの?」

ミカサ「詳しい事は後で話すので、お願いしたい」

アニ「………分かった」

アニは察してくれたようだ。良かった。






女子トイレの洗面所で私はアニに事情をかいつまんで話した。

アニ「ふーん、中学の時の先輩が来てるんだ。んで、一人の時に会いたくないから頼んだ訳ね」

ミカサ「面倒をかけてごめんなさい」

アニ「別にいいけど……その先輩って元彼とかなの?」

ミカサ「違う。ただ、昔、何度か告白されただけ。ちゃんと断ったのに、向こうは私に話したい事があるみたい」

アニ「何度か…って事は結構、強引に迫ってくるタイプか」

ミカサ「……かもしれない。それ以前はそれなりに仲が良かったけど」

告白される前は親切にしてくれた先輩の一人だったのに。

彼との騒動が起きたせいで、私は周りからの目線がガラリと変わってしまった。

ミカサ「今はもうあまり会いたいとは思わない。なので困っている」

アニ「以前、いきなり手を出してくる人は、ちょっと…って言ってたのはその先輩の事だったんだね」

私は頷いた。アニは納得してくれたようだ。

アニ「なるほどね。分かった。そういう事なら今日は出来るだけ一緒に居てあげる。後、もしそれが続くようなら早めに警察なり相談した方がいいよ。こじれてストーカー事件に発展するケースもあるからね」

ミカサ「そ、そうだろうか」

アニ「ストーカーや防犯対策に格闘技を習いにうちにくる女性も少なくないんだよ」

ミカサ「!」

アニ「だからその手の話はよく耳に入ってくるんだ。ミカサ自身は護身術の心得はあるかもしれないけど、精神的な面から攻められたら、どんなに肉体が強くても、壊れちまうよ。だから自身を過信しちゃダメだ」

ミカサ「わ、分かった……」

アニの話は非常に為になった。肝に銘じておこう。

今はまだ様子を見るしかない。

でも、もし向こうが法的な部分を超える行為を行おうとしたら、その時はこちらもそれなりの覚悟で対処するしかない。




そしていよいよ、団対抗の代表リレーを迎えた。私は1番目に走る。

1年女子、1年男子、2年女子、2年男子、3年女子、3年男子。

100mずつ走り、アンカーのみが200mを走るリレーである。

うちのクラスは女子は私、男子はライナーが走る。アンカーはオルオ先輩だ。

ざわざわ……。

間もなく最後の点数競技が始まる。ここで一発逆転も十分あり得るので気は抜けない。

エレンとアルミン、ジャン、マルコ、コニー、サシャ、ユミル、クリスタ、ベルトルト、ミーナ、ハンナ、他の皆も応援してくれている。

さあ、アキレス腱をしっかりストレッチして準備完了。


パーン!


ピストルの合図と共に一斉に走り出した。

女子の間では当然、私がトップに躍り出たのだが。

トラックを走る途中で私は、見てしまった。

先輩が、私を外野から見つめているのを。

それはほんの刹那の瞬間だった。

だけど絡みついたその視線にまるで足を奪われるかのように、油断してしまい……

エレン「あっ……!」

バトンを落とすという、凡ミスをしてしまったのだ。



しまった。その瞬間、他のクラスに抜かれてしまった。

最下位までは落ち込まなかったものの、順位は大きく下回り、ライナーには当然、中盤の順位でバトンを渡す羽目になってしまった。

悔しい。この程度の事で動揺している自分が、嫌だ。

何だかだんだん腹が立ってきた。

どうして私がこんな思いをしなければならないのか。

腹の底から湧き上がるエネルギーが私自身を突き動かした。

傍から見たらそれは無謀な行為に見えたと思う。

だけど、この時の私は一言、文句を言ってやりたくて堪らなかった。

外野の群集をかき分けて先輩を探す。すると、帰ろうとしていたのか学校の外へ出ようとしていた。

ミカサ「先輩!」

金髪の男「……ミカサ」

ミカサ「待って下さい。話したい事があるので」

金髪の男「ああ。こっちも話したかったんだ」

ミカサ「ちょっと外れましょう」

私は先輩を誘って少し木陰に移動した。喧噪は聞こえるが、群衆からは見えにくい位置で立って話す事にした。

ミカサ「………」

息を整えて深呼吸する。彼とは絶対、決着をつけなければと思った。

ミカサ「もう、こういう事はやめて下さい。前にも言いましたが、私は貴方の気持ちには応えられない」

金髪の男「………知ってるよ、そんな事は」

ミカサ「では何故、リレー観戦なんてしてたんですか! うっとおしい!」

金髪の男「そんなのはこっちの勝手だろ。見ちゃ悪いのか」

ミカサ「気が散るに決まってるでしょう! バトンを落としたのもそのせい……」

金髪の男「へえ……動揺したんだ。嬉しいな、それは」

寒気が、した。

一体、何を言ってるのだろうか。この人は。

ミカサ「嬉しい…? 何故……」

金髪の男「だって自分の存在が少しでもミカサの中に引っかかってた証拠だろ」

金髪の男「忘れ去られるよりよほどいい」

ミカサ「いい加減にして下さい。私は貴方の事を忘れたいのに……」

金髪の男「なかった事にしたいって? 本当、ひどい女だな、ミカサは。でも…」

金髪の男「それでも、こっちは消えないんだよ。それだけ、ミカサの存在が大きいんだ」

ミカサ「…………」

金髪の男「話したかったのは、あの時の事だ。謝ろうと思ってた。ずっと」

金髪の男「あと、さっきは言いすぎた。悪かった。なんか、仲良さげな男が傍にいたから、つい……」

金髪の男「ミカサはモテるからな。いろんな男に言い寄られるだろ」

金髪の男「美人だし、優しいし、料理上手だし、気遣いも出来るし、たまにドジだけど……」

金髪の男「そこもカワイイと思ってる。多分、ミカサのそれは欠点じゃないんだ」

金髪の男「あー何言ってるんだ、オレ」

金髪の男「とにかく、そういう事なんだよ」

金髪の男「…………やっぱりオレじゃダメなのか?」

ミカサ「ごめんなさい……」

それ以外の返事は出来なかった。答えは初めから決まっているのだ。

金髪の男「……他に好きな奴でも出来たか?」

ミカサ「そ、それは………」

金髪の男「彼氏がいるなら、きっぱり諦めもつくんだけどな。いねえの?」

ミカサ「…………(こくり)」

生憎、彼氏はいない。頷くしかない。

金髪の男「いや、でも……もうすぐ出来るのかもな」

ミカサ「え?」

金髪の男「そんなに睨まなくても、何もしねえよ」

先輩の視線は私の後ろの方にあった。

後ろには、エレンとジャンの姿があった。

ミカサ「えっ……どうして」

エレン「あんな顔でグラウンド抜けたら誰だって気になるだろうが」

ジャン「何もされてないか、ミカサ」

ミカサ「う、うん……」

金髪の男「人をストーカーみたいに言うなよ。何もしてねえよ」

ジャン「は! どうだかな!」

エレン「ミカサ、帰るぞ」

ミカサ「うん……」

話は終わった。もう先輩とは顔を合わせる事はないだろう。……多分。

………でも、このままで本当にいいのだろうか。

私は足を止めて振り返った。

そして学校の外へ出ていく先輩の後姿を見つめて、叫ぶ。

伝えなければ。そう思って、自然と声が出た。

ミカサ「先輩!」

エレン「!」

ジャン「!」

ミカサ「肋骨を、折っちゃってごめんなさい!」

エレン「え?」

ジャン「え?」

すると、先輩は苦笑して、手を振ってくれた。

金髪の男「もうとっくの昔に治ってるから大丈夫だ!」

と、別れ際に叫びながら、私達は、今度こそ本当に別れたのだった。






エレン「肋骨、折った……?」

ジャン「何の話だ?」

二人は首を傾げている。でも、私は二人に話す事にした。

ミカサ「あの人は、私を初めて押し倒そうとしてきた人」

エレン「はあ?!」

ジャン「なななな!」

ミカサ「その時に私は抵抗して、彼の肋骨折ってしまった。ボキッと」

エレン「はー?!」

ジャン「え? 本当に折っちまったのか?」

ミカサ「本当に折った。肘鉄で反撃して、病院送りにした。彼以外にも、何名か、やった」

エレン「え……何名か、って、えええええええ?!」

エレンもジャンも目を白黒している。

ドン引きするならしてもいい。もう、隠すのはやめる事にした。

ミカサ「だって全員、こちらの同意も無しに事を進めようとした。……ので、当然の報い」

二人が口をポカーンとしている。まあ、予想通りの反応だ。

ミカサ「でもそのせいで、私の評判は地に堕ちた。それまでは普通の生徒だったのに。集英高校もそのせいで内申が悪くなって落ちた。点数的には問題なかったけど、暴力沙汰を起こしたような生徒は要らないと跳ね除けられたの」

ジャン「そ、そうだったのか……」

ミカサ「なので講談高校の方に拾ってもらった。こっちの高校は私の言い分を正当性があるとして認めてくれて、内申で落とされる事はなかった。本当、拾われて良かった…」

もしこの高校に受からなかったら恐らく今頃、県外の高校に進学するしかなかっただろう。

ミカサ「ごめんなさい。なかなか話すふんぎりがつかなくて。今まで話せなかった」

ジャン「いや、それは仕方ないだろ。そういう事なら仕方ねえよ」

エレン「ああ……同感だ。でも、なんか納得したぞ」

と、二人とも頷いている。

エレン「ミカサと初めて会った時、すげえ強い女だなって思ったけど、ソレが原因だったんなら、講談に来たのも頷ける」

ジャン「でもオレにとってはかえって良かった。ミカサとこうして会えたんだしな」

ミカサ「そうかしら?」

ジャン「集英の方にいってたら、こうして一緒に話してないだろ」

ミカサ「そうね。すれ違ってもいないと思う」

ジャン「だったら、この偶然に感謝しねえとな」

ミカサ「………私の事、怖くないだろうか?」

エレン「えっと、全く怖くないと言えば嘘になるが……」

エレンはちょっとだけよそを向いている。

エレン「元々悪いのは、その無理やり言い寄ってきた奴らだろ。ミカサは悪くねえんだし、別にいいよ」

ジャン「そうだな。っていうか、それくらい貞操観念がしっかりしている女の方がオレは…………」

ミカサ「え?」

ジャン「……な、何でもねえ!」

ジャンは何か言いかけて打ち切ったようだ。はて?

ついに言った

ジャンうぜぇwww

エレン「…………(半眼)」

エレンもジャンを見つめている。ジャンは口笛を吹き始めてしまった。

あら、意外とうまい。

エレン「しかし、反撃されるの分かってて迫ってくる奴らがいたって……どれだけドМな奴らだ」

ジャン「むしろそれが目当てだったんじゃねえか?」

エレン「あり得るな。十分あり得るぜ」

ミカサ「え? どういう事?」

エレン「いや、ミカサにぶん殴られたい願望の奴らがその事件を切っ掛けに群がってきたのかと思って」

ミカサ「は? ぶん殴られたい……? 意味が分からない」

エレンの解説に私は目が点になってしまった。

するとエレンは天を仰ぎながら続けてくれた。

エレン「あー……なんていうかな。子供の頃、親父にわざと、ブーンとかやられなかったか?」

ジャン「こう、乱暴に扱われるというか……ジャイアントスイングみたいな奴だろ?」

エレン「そうそう。高い高いだったり、ちょっとそういう、ドキドキ? みたいなもんを好むというべきか……そういうのが異常に好きな変態も世の中にはいるんだよな」

ミカサ「え、えええええ………」

そんなのは初耳だ。そんなのは困る。

ミカサ「では私が反撃していたのは逆効果だったのだろうか…?」

エレン「いや、反撃は勿論していいんだが、そっちが目当てで近寄ってた奴も中には少なからず居たのかもしれん。でねえと、そう何人も病院送りにする事態にはならねえと思うんだが」

ジャン「ミカサ、病院送りにしちまった奴らから陰湿な報復を受けたりした事あったか?」

ミカサ「いえ……というより、同じ人から何度も迫られてしまったり、同じ事の繰り返しで辟易していた」

ジャン「だったら決まりだな」

エレン「ああ……確定だ。ミカサに惚れてた奴らは、ドМだ」

ミカサ「え、えええええ………」

なんて事だ。では私はSMプレイの女王様のような役目を知らずにやってしまっていたのか。

ミカサ「ではその彼らがドМだったせいで、私の悪評が立ってしまった訳なのね」

エレン「ん? 悪評? そんなもん、あったのか?」

ミカサ「周りからは『頭の良い不良少女』とか呼ばれてた。まるでスケ番のような扱いを受けていた……ので」

エレン「あー……その、不良集団の頭の男に『オレの女になれ』みたいな事言われたとかか?」

ミカサ「どうして分かるの?!」

ジャン「いや、まあ……ありそうな話だな、それは」

ジャンまで頷いている。察しがいい二人に驚かされた。

ミカサ「そうなの。撃退しても撃退しても、次々と、アプローチがきてしまって……」

そのせいで要らぬ誤解を生じる事も多々あった。特に先生たちには良く誤解された。

ミカサ「しまいにはそれらしい不良っぽい同級生に『あたいの男を取るな!』と言いがかりをつけられたり、決闘をさせられたり……もう散々な中学時代だったの」

ああ、思い出したくない。忌まわしい黒歴史。

ミカサ「孤独だったの。あの頃は。喧嘩を吹っ掛けられる事も多くて……こっちから仕掛けたことは一度もないのに、周りが私を放っておかなかった」

エレン「大変だったな……」

ミカサ「(こくり)今は、もうそういう事はないので助かっている。たまに変なナンパはあるけど」

ジャン「何っ……くっ……(拳握る)」

ミカサ「先輩には悪いとは思っている。けど………こちらの気持ちを無視して事を進めようとする男の人に魅力は感じない。強引なのはダメ」

ジャン「そ、そんなのは当たり前の話だろ」

エレン「まあな」

ミカサ「同意してくれてありがとう。つまり、そういう訳なのでお騒がせして申し訳なかった」

エレン「いいさ。こっちも事情を知れてほっとしたよ」

ジャン「そうだな。今度もし、またミカサに無理やり言い寄るような奴がいたら、駆けつけて加勢してやるよ」

エレン「…………………(冷たい目)」

ミカサ「ありがとう。でももう、大丈夫だと思う。気持ちだけでも嬉しい」

私はジャンにお礼を言った。彼にも迷惑をかけてしまったから。

放送『3年生によるフォークダンスを始めます。3年生は東門の方へ集まって下さい。繰り返します…』

アナウンスがグラウンドに響いた。もうすぐ体育祭も終わる。

結果はどうなるか。現在点数の集計中の筈だ。

お馴染みの音楽が流れて3年生が踊りだした。オルオ先輩と、ペトラ先輩が一緒に手を繋いでいる。

ペトラ先輩の方はちょっとだけ嫌そうな顔をしているのが可笑しかった。

でも、頬は少しだけ赤くなっていた。多分、素直でないだけなのだろう。

私達1年はそれを眺めながら、雑談をしながら、まったりと時間を過ごした。

そして爆竹が鳴り響き、全日程が終わった。

結果発表だ。今年は……ああ、残念。優勝は逃してしまった。

緑団は2位だった。やはりラストでバトンを落としてしまったのが痛かった。

エレン「また、来年もあるさ」

エレンがそう言ってちょっとだけ慰めてくれたのが幸いだった。

ミカサ「うん」

私はエレンに頷いて、微笑み返したのだった。




体育祭の後片付けも無事に終わり、放課後、アニにも事情を説明した。

するとアニも安心したように、

アニ「そっか……じゃあとりあえずは解決したんだね。大事にならなくて良かったね」

ミカサ「心配かけて申し訳なかった」

アニ「いいよ。それくらい。でも…まさかアンタが私と似たような経歴を持ってるとはね」

ミカサ「え?」

アニ「あ、いや……こっちの話。何でもない」

ごにょごにょ言われてしまった。どうしたのだろうか?

ミカサ「?」

アニ「ねえ、もしかして、シガンシナの春麗(チュンリー)って、アンタの事だったのかな」

ミカサ「え? な、なにそのあだ名……知らない」

アニ「うちの中学では噂になってた。やたら強い女子がシガンシナにいるって。黒い長い髪をなびかせて、2メートルを超える跳び蹴りを必殺技にした女子がいるって……」

ミカサ(滝汗)

大体合ってる。

アニ「そいつならきっと、竜巻旋風脚が出来るんじゃないかとか、ゲームの技なのに、リアルにやれそうとか勝手な噂が回ってたよ」

ミカサ「竜巻旋風脚?」

アニ「ゲームの技だよ。リアルでやれる訳ない。私はストヘスのキャミィとかふざけたあだ名つけられてたけどね」

ミカサ「キャミィ? それもゲームのキャラ名なのだろうか」

アニ「そうだね。詳しい事は自分で調べて」

ミカサ「分かった。後でエレンに聞いてみよう」

エレンならきっと知ってる筈。ゲームならエレンだ。

アニ「じゃあ私は先に帰るね。電車の時間だ」

ミカサ「うん。ではまた……」

アニと分かれてエレンの方に向かう。エレンはライナー達と雑談していた。

ライナー「馬鹿野郎! 逆転シリーズの真のヒロインはあやめだろうが!」

アルミン「異議なし!」

エレン「はあ?! メインヒロインはまよいちゃんだろ? 何言ってんだ」

ライナー「メインはまよいだ。しかし、なるほどうの初恋の相手という、不動の位置に存在している」

エレン「いやいや、それは分かるが、真のヒロインは言いすぎだろ」

ライナー「あやめの良さが分からんとは、つまらん奴め」

アルミン「僕は分かるよ、ライナー」

ライナー「同志よ!(ガシィ!)」

ミカサ「………何の話?」

さっぱり分からない話をしているようだ。

エレン「逆転弁護士っていうゲームの話。先月、シリーズの総集編版のソフトが出たからさ。やったことあるかって話してたらいつの間にかヒロイン論争に発展しちまった」

ミカサ「そうなの…」

ベルトルト「僕はめいが好きだけど……」

ライナー「鞭を振るう暴力女だぞ? あんなののどこがいいんだ?」

ベルトルト「うっ……でも、実は優しいところもあるじゃないか」

マルコ「あー分かる。テンプレ的なツンデレキャラだよね」

コニー「オレはちひろさん好きだなーあのおっぱいがいい」

ジャン「おめーはおっぱいがあれば誰でもいいんだろ…」

コニー「いや! 大きければいいんじゃなくて、形も大事だぞ」

ジャン「はいはい」

マルコ「ジャンは誰が好き?」

ジャン「あー