比企谷八幡「密着! 青春ラブコメ24時!」 (55)

放課後、終業のチャイムが鳴った瞬間、教室から少しずつ生徒が出てくる。

我々の待つ人物は、すぐに出てきた。

「おつかれさまでした」

「おつかれさまでーす」

彼の足は、自宅ではなく他の教室へと向かう。これから部活動のようだ。

「強制で入部させられたんです。俺は早く帰りたいんですけどね」

そう嘆く彼だが、表情は生き生きとしている。

言葉から察するに、今から部室へと向かうのだろう。同行の許可を願うと、彼は快く快諾してくれた。


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「うーす」
「こんにちは。 目は見えるかしら?」
「俺の目は腐っているが失明の危機ではない」

先に部室にいた一人の女子生徒とそんなやりとりを交わす。

《彼女とはどういった?》

「部活仲間っす。いつも俺にはこうですから気にしないでください」

我々の言葉から全てを察してくれたらしい。

「奉仕部部長、雪ノ下雪乃です。 比企谷くんの非生産的な日々を世に伝えるというのはこれからの社会を発展させていく重要な仕事だと思いますよ」

部長の評価は厳しい。

期待

おなじく期待

液体期待個体!

死体!

おっぱい!

ちっぱいもいいものではないかしら

>>8
何してんスカ部長

はよ

そう思ってるのは多分ゆきのんだけだよ……

>>11
あら 私もいいと思うけど

この場合は おもうのだけれど か

まるでわt雪野さんが自演しているように見せかけるのは止めてくれないかしら

お寒いからほどほどにな

「はっ、社会の発展に貢献できるなら非生産的でもいいじゃねえか。 なんなら国から給料が支給されてもいいレベル」

と、勝ち誇った顔が一気に消え、

「い、いや今のは暗にギャラを要求したわけじゃないっすよ、ただこいつと話すとどうしても熱くなってしまって」

他人に気を回しすぎるところは彼の長所でもある。

「やっはろー!」

話題がなくなり、沈黙が訪れてすぐけたたましい挨拶が聞こえてきた。

どうやらまた部員が来たらしい。

はじめ戸惑いの表情をみせていた彼女も事情を説明すると、徐々に笑顔になっていった。

「由比ヶ浜結衣です。ヒッキーとは同じクラスなんですよ」

どうやらあだ名もあるらしく周囲の人から親しまれているようだ。

「由比ヶ浜、今日だけはそれやめてくれないか。テレビだぞテレビ」

「だったらなおさら呼んだ方がいいじゃん! あだ名の方が印象強くなるし」

「強くならなくていいんだよ。そいうのはスタッフさんの仕事であって俺らがどうこう
と」

「ヒッキーヒッキーヒッキーヒッキー!」

「連呼すんな!」

「えー」

「みっともないからやめなさい……」

部員はたった3人であるが、奉仕部は賑やかであるようだ。

《部活はいつもあんな感じで?》

「そーっすね。一番うるさいのが由比ヶ浜で一番口悪いのが雪ノ下で」

《今日は依頼が来なかったが?》

「そんだけ平和ってことですかね。 まあ依頼は来ない日の方が多いですよ」

部活動を終え、八幡は自宅へと向かう。両親の帰りは遅いらしく、すこし帰りが遅くなっても問題はないらしい。

「俺は家にいるのが好きなんで」

そう言って、笑った。

「うーす」

「あーお兄ちゃんお帰りー」

彼の妹、小町さんが出迎えてくれた。

すぐに夕食にするそうだ。

「今日は奮発して焼き肉だよー! スタッフさん達もどうぞー」

《いただきます》

おもてなし心あふれる小町さん。彼女には八幡はどう映るのだろうか?

「そうですねー、普段はダラダラして、もーホントごみいちゃんって感じなんですけど、変に律儀なとこもあってー」

「あ、あと小町にもすっごい優しいんですよー 今のポイント高い」

「それは言わんでもいい」

「でへへ」

そう言って笑う小町さん。八幡はこの笑顔をみるのがひそかな楽しみだという。

晩御飯を食べた後、八幡はリビングでくつろぐ。

「両親は帰りは遅いんです」

二人で夕食を取るのは毎日のことだそうだ。

ニャー ニャー ニャー

途中、飼い猫が我々にじゃれつく。

「テレビがきてるんではしゃいでるんですかねー」

「カーくんダメだよー」

《カーくん?》

「カマクラっていうんですよ」

《少し太っているように見えるが?》

「もうこいつもオッサンですからね。体力もなくなって運動不足なんじゃないですか」

猫といってもいろんなタイプがいるようだ。

《夕食はいつも小町さんが?》

「はいー! 嫁度ナンバーワンはダテじゃありませんよっ」

《嫁度?》

「こいつはいつも妙な造語をつかうんですよ。気にしないで下さい」

《これからの過ごし方は?》

「テキトーにテレビみてテキトーに本読んで、飽きたら勉強って感じですかね」

猫同様、自由気ままな性格をしているらしい。

「有意義な時間の使い方をしているつもりですよ。ギャーギャーと騒ぐのが楽しいなんてそんなのウソですよウソ」

時間術にも独自のポリシーがあるようだ。

《おはようございます》

「あっ、おはよっす」

翌朝、八幡とともに学校へと同行する。教室に入るまでならと、撮影を許可してくれた。

《今日は徒歩で?》

「はい。まあ途中でバスを使うんですけど」

まだ眠気が残っているのか、口数は少ない。

《おはようございます》

「あっ、おはよっす」

翌朝、八幡とともに学校へと同行する。教室に入るまでならと、撮影を許可してくれた。

《今日は徒歩で?》

「はい。まあ途中でバスを使うんですけど」

まだ眠気が残っているのか、口数は少ない。

「じゃあまた後で」

《はーい》

バスに乗り込むことはできないので別々のルートで学校へ向かうことにした。

「うーっす」

再び合流。

八幡は靴箱で上履きに履き替える。

《やはり朝はしんどい?》

「もちろんですよ。 これが月曜日だとほんとにもうね」

確かに昨日の放課後に比べると今朝は静かだ。朝が弱いのは学生も同じであるようだ。

「一限目が体育とかだともう嫌になります」

幸い今日の一限目は体育ではなかったようだ。あっという間に彼の属する2-Fに到着する。

「じゃ、いったんここで」

《いってらっしゃーい》

昼休みとなり、静寂が破られる。2-Fからも次々に生徒が飛び出してくる。

八幡もその中にいた。

《おつかれさまです》

「あっ、おつかれっす」

《これから売店?》

「そーっすね、売店で買って庭で食う」

ベストプレイスってやつっすね、と彼は笑った。食事にも独自のポリシーがあるようだ。

「おーヒッキー」「どーです? 上手いでしょ」

我々も売店を利用し、食事を一緒にさせてもらった。


「おー」

部活仲間の由比ヶ浜さんだ。

《由比ヶ浜さんもここで?》

「あーあたしはいつも教室で食べてますよー

「とかいってなんで隣に座ってんのお前」

「べっ、別にいいじゃん! なんか問題あるわけ?」

「テレビで流れたらはハズいだろ」

「は?はあ? 何勘違いしてんの! バカバカー!」

「おまえテレビきてキャラ変わったな……」

ここカットしてください、と彼は言った。しっかり放送させてもらいます。

またあしたーーーーーー




乙!

おつー

おつー

放課後。いつもどおり部活へと向かう。

「今日も依頼くるかどうかわかりませんよ」

《あの風景でも十分です》

「そっすか」


部室の扉を開けたとたん、先に来ていた雪ノ下部長が口を開いた。

「あら、ヒキガヤ菌じゃない」

昨日のリプレイを見ているかのようだった。

「小学生の頃の渾名を言うのはやめろ」

彼の言葉に満足したのか、雪ノ下部長は一瞬だけ小さく笑う。

《彼に対してはいつもこんな感じで?》

「ええ。これが普通です。彼はマゾヒストなので」

「勝手にきめんじゃねえ。しかもテレビでいうな。あ、これカットで」

《どーしよかなー?》

「放送したら俺社会的にマズいです・・・・・・」

「頼もう!」

突然、古風な挨拶が聞こえた。誰か入ってきたようだ。

「はぁ・・・」

雪ノ下部長がため息をつく。

「なんか用か材木座」

「ぬおおお! 聞け八幡! ついに!ついに設定ができあがったぞ」

「設定かよ! 原稿を持ってこい原稿」

「ぬぬぬ? でおぬしは何者だ? さては我の敵情視察にやってきたか?」

話聞けよ、と八幡がつぶやく。

《違います》

「テレビだよテレビ」

「何?テレビとな? ぬーこれはまずい。我の存在がテレビに知られてはやつらに正体が」

「おまえは放送しないから安心しろ。ですよね?」

《いやーこの人なんかおもしろいし》

「だめですって。もし放送されたらこいつ数年後自殺しかねませんよ」

《なんで?》

「なんでって・・・・・・」

少し早いけどまたあしたーーーーーーーー

おつー

おつおつ

「テレビの前の愚民ども!刮目せよ! 我の名は剣豪将軍材木座ァァァァァ! 義輝だああ!」

「・・・・・・」

《テンション高いですねー》

「そういうことじゃないんですけど」

感心する我々とは裏腹に、雪ノ下部長と八幡は頭を抱えている。

「そりゃテレビ的には面白くていいかもしれませんけどね、本人からしたら数年後黒歴史になるんですよ」

「はっきり説明した方が早いんじゃないかしら。そんなこともわからないの低脳くん」

「せめて原型とどめろよ・・・・・・」

雪ノ下部長と八幡がだんだんと夫婦に見えてきた。この罵り合いも痴話喧嘩なんだろうか。

我々がそんなことを言うと雪ノ下部長は顔を紅潮させて

「なっ! 何を言ってるんですか。この男と同じ空間にいるという事実だけでも嫌なんですよっ!」

必死になって否定するところが可愛らしい。

「ちょ・・・我は・・・我の取材は・・・」

素に戻ってしまったので無視を決め込もう。

「やっはろー」

由比ヶ浜さん登場。もはやお約束となっているこの挨拶。

《八幡と雪ノ下さんがカップルみたいだって盛り上がってたところなんですよー》

「えっ・・・・・・あははは・・・そ、そうなんですか・・・」

「ヒッキー、どういうこと!」すぐに八幡をにらみつける。

「はあ? 知らねーよ。スタッフさんに聞け」

「知らないってなに! ヒッキーのことなんだから知らにゃいっておかしいでしょ!」

「にゃいってなんだよ。猫かよおまえ」

「猫はにゃいとは鳴かないわ。正しくは、ニャー、ね」

雪ノ下部長はどこに食いついているのか。 それと猫の鳴き真似うまいですねー

我々は八幡のラブコメ風景を撮影するため、黙って見守ることにした。

材木座くんはいつのまにかいなくなっていた。

またあしたーーーー




おっつーー

このあと滅茶苦茶セックスした

帰り道、疲れ果てたのか八幡は一言も喋らない。我々は話題を提供してみることにした。

《明日は土曜ですが予定は?》

「なにも。 いつも通り家でダラダラ。これ最強」

《家にずっといても飽きないんですか?》

「テレビ、ネット、ゲーム、本、スマホ、今の時代は暇つぶしツールが山ほどありますからね。この時代に生まれてよかったっすよ」

話が飛躍している気がするが続きを促してみる。

「昔のぼっ・・・・・・他人と群れない主義の人ってどうやって過ごしてたんですかね」

《昔というと?》

「暇つぶしツールがない時代、平安時代とか。戦もない平和な時代」

《その時代はエッチなことばっかり考えていたらしいですよ。古典の授業でやる物語って恋の話でしょ》

「源氏物語は今でいうエロ本って誰かがいってました・・・・・・」

先ほどまでの沈黙が嘘のように会話が弾む。

テレビ関係で得たムダ知識が役に立った瞬間であった。

「うーっす」

「お兄ちゃんお帰りー」

いつものように小町さんが出迎えてくれる。

「で、なんでおたまもってんの?」

「新妻スタイルでーす。テレビ的にもポイント高いよー」

さすが小町さん。よくわかっていらっしゃる。

「あ、スタッフさんもおかえりなさーい」

《ただいまー》

我々は家族ではないのだが。

「さっさ、すぐご飯にしますねー」

「おー今日も焼き肉?」

「そんな毎度毎度できるわけないじゃん・・・・・・今日の晩ご飯はなんとっ!」

「カレーライスですっ!」

なんと、がつくほど変わったメニューではない。

「おい、スタッフさん反応に困ってるだろ」

「カレー嫌い?」

《いえいえ》

結局スタッフ全員おかわりを何度も繰り返したため、カレーは一日でなくなった。

小町さんと八幡にはどん引きされてしまった。

支援

またあしたーーーーーーー



おつ

乙ん

おつ

夕食後、自室でくつろぐ八幡。スマートフォンをいじっている。

《友達とメール?》

「そんな相手いませんよ」

メールでうだうだ言うより直接言うのが正しいことだと彼は話す。

ピリリリリリr

メールだ。

「げっ!」

《どうしました?》

「い、いや、別に」

言葉を濁すので我々は彼からスマホを奪い取った。

「ちょ、こら」



from 戸塚

こんばんは。彩加だよ。

よかったら明日一緒に遊びにいかないかな?




女の子からの遊びの誘いのメールのようだ。なぜそこまで驚く必要があるのか。

「だって戸塚だし」

《好きなの?》

「好き? うーんどうですかねー」

珍しく要領を得ない八幡。

二人きりになりたい、とごねる八幡に無理を言って、我々は同行させてもらうことにした。

またあしたーーーーーーーーーー



おつー

明日っていつだっけ…

>>54
なんでこんなので笑ったんだろ…

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