パワプロ君「あおいちゃんを盗撮したいんだ」 (35)

パワプロ「はぁ。今日も練習疲れたなぁ」

矢部「大会が近いでやんすからね。練習もハードになってきたでやんす」

パワプロ「甲子園に行くためだもんね。頑張らないと」

矢部「そうでやんすよ。それで今よりもっともっと強くなるでやんす」

パワプロ「うん。そうだね。でもさ。なんだか時折ふっと、しんどいなあって思うことはない?」

矢部「そりゃたまにはあるでやんすよ」

パワプロ「そういう時、矢部君はどうやって我慢というか、踏ん張ってるの?」

矢部「そうでやんすね。練習を経てチカラをつけていく自分を想像したりとかでやんすかね?」

パワプロ「ふんふん、なるほどね」

矢部「パワプロ君は違うんでやんすか?」

パワプロ「あぁ、オレ? オレはね」

パワプロ「あおいちゃんを見てなごんでるよ」

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矢部「あおいちゃん……でやんすか」

パワプロ「そうさ。うちにいる唯一の女子部員。実に癒されるじゃないか」

矢部「本人に聞かれたら怒られるでやんすよ……」

パワプロ「まぁいいじゃないか。とにかくオレはあおいちゃんを見ているとすごく安心するというか、優しい気持ちになれるんだ」

矢部「なんでやんすか、それ。もしかして、恋しちゃってるんでやんすか?」

パワプロ「うーん、どうだろう。そういうのとも少し違う気がするんだ」

パワプロ「つらい時や苦しい時、傍にいるあおいちゃんを一目見るとなんだかほっとするんだよ」

矢部「ふうん。なんだかよくわからないでやんすけど」

パワプロ「それでね、矢部君。オレは思ったんだよ」

矢部「何をでやんすか?」

パワプロ「オレはもっともっとあおいちゃんを見ていたい。あおいちゃんを知りたいんだ。それこそ、当人よりも」

矢部「はぁ、でやんす」

パワプロ「そこでオレは何を成すべきか。答えはすぐに見つかったよ、オレはね」

パワプロ「あおいちゃんを盗撮したいんだ」

パワプロ「それで君に話しかけたという訳なんだ」

矢部「何を言ってるんでやんすか? そんな犯罪行為、オイラゴメンでやんすよ」

パワプロ「問題が表面化しなければ犯罪行為には至らないさ。それこそ、殺人でもね」

パワプロ「オレはあおいちゃんと出会ってから三年間、盗撮について研究に研究を尽くした」

パワプロ「素人であるあおいちゃんにバレる心配などする必要がないと断言するね」

矢部「じゃあ一人でやればいいでやんすよ。どうしてオイラに声をかけたんでやんすか?」

パワプロ「道具の調達が難しいからさ。君は電気製品に詳しいだろう? そういったグレーゾーンの用具を売買している店舗だって知っているんじゃないのか?」

矢部「そりゃまぁ、知らない訳じゃないでやんすけど」

パワプロ「そうか。それはよかった」

パワプロ「ねえ、矢部君。君に一つ聞きたいことがある」

矢部「何でやんすか?」

パワプロ「君はあおいちゃんを覗き見てみたいとは思わないのか?」

矢部「……」

パワプロ「これはオレが提示できる唯一の武器なんだ。オレと共に彼女を監視する行為そのものを君に差し出すよ」

パワプロ「君は絶対に足がつかないように盗撮に適した道具をオレに用意する」

パワプロ「オレは絶対にバレないように設置し、君と共にその映像を楽しむ」

パワプロ「利害の一致は明らかだ。さあ、どうする?」

矢部「……」

【一週間後】

パワプロ「よーっし。今日はこれくらいにしておこうか」

部員「お疲れ様でしたーっ!」

ぞろぞろ……

パワプロ「さて、さっさと片付けを済まさなきゃ」

あおい「あっ、パワプロ君! まだ残ってたの?」

パワプロ「うん。後片付けとか残ってるからね」

あおい「ボクも手伝うよ。後は何が残ってる?」

パワプロ「いいよ、もう少しだから。ありがとう、あおいちゃん」

あおい「本当に? 気にしないでいいんだよ?」

パワプロ「本当に大丈夫。早く帰って体を休めてくれた方がオレは嬉しいな」

あおい「むー……。じゃ、先に帰らせてもらうね。お疲れ様、パワプロ君」

パワプロ「うん。おつかれ、あおいちゃん」

タッタッタ……。

パワプロ「……ふう。片付けはこんなものでいいかな」

パワプロ「よし、じゃあ行くとするか」

【情報処理室】

パワプロ「やあ。早いね、矢部君」

矢部「パワプロ君が遅いんでやんすよ。それで、どうでやんすか? 首尾の方は」

パワプロ「まずまず上々だよ。こんなこともあろうかとピッキングを練習しておいてよかった。とてもスムーズに設置できたと思う」

矢部「頼もしいことでやんすね。こっちの準備も完了してるでやんす。いつでもモニター出来るでやんすよ」

パワプロ「いいね。君は最高の相棒だ。早速繋いでくれよ」

矢部「ガッテン承知の助でやんす」

プツンッ

矢部「……」

パワプロ「ん、どうしたんだ? 何だか不満そうだけど」

矢部「いや、その。オイラは女の子の部屋っていうのはもっとピンクに染まってて不自然なくらい小奇麗なものかと思っていたでやんす」

パワプロ「オレはこの間お邪魔したから知ってるけど、確かに多少散らかっているね」

パワプロ「カップ麺、ペットボトル、ゴミ箱代わりのビニール袋。色んなものが無造作に散乱してる」

パワプロ「一人暮らしなんだから多少は仕方ないんじゃないかな?」

矢部「そうかもしれないでやんすけど……やっぱりショックでやんす」

パワプロ「そうかな。オレは寧ろこういった人には見せられない状態を見ているということをとても嬉しく思うけどな」

矢部「パワプロ君は達観し過ぎでやんすよ」

パワプロ「そんなことはないと思うけどなあ」

パワプロ「あおいちゃんが帰ってくるまでに少し間があるから、少々彼女のおさらいをしよう」

パワプロ「彼女が現在起居しているのはここ恋恋高校からさほど遠くない場所にある木造三階アパートの二階。八畳一間のワンルームだ」

パワプロ「彼女は家庭の事情から一人暮らしを営んでいるんだが、状況は見ての通り、あまり健康的とは言えないかもしれないね」

パワプロ「オレが設置したカメラは三か所」

パワプロ「部屋全体を真正面から捉える形。ユニットバスの洗面台にある鏡台。最後はベッドを拡大化した形。各所には小型の盗聴器も合わせて設置した」

パワプロ「彼女の生活感が露わになること請け合いだな。……おっと、そんなことを言っている間にあおいちゃんが帰ってきたみたいだね」

矢部「玄関できちっと靴を揃える所は高得点でやんすね」

パワプロ「うん。普段はあまり見られないあおいちゃんの慎ましさが垣間見えた気がする」

パワプロ「部屋に上がったが……真っ直ぐ洗面台に向かったか。矢部君、2カメにチェンジだ」

矢部「アイアイサーでやんす」

パワプロ「……ふむ。入念な手洗いの後、うがいも一生懸命に行ってるな」

矢部「風邪予防のためでやんすかね。見上げた野球人精神でやんす」

パワプロ「ハハハ、オレ達も見習わなくちゃな」

パワプロ「それにしてもさ。女性が口から水を吐くという動作はどうもこう……扇情的に感じるね」

矢部「そうでやんすか?」

パワプロ「うん。下世話な話になるけれど……女性の口内に射精した時の事を思い返させる」

パワプロ「AVとかでもあるじゃないか。口の中に精子を出された場合、女性はどういう行動を取る?」

矢部「飲み込むか、吐き出すかじゃないでやんすか?」

パワプロ「そう。オレは口内に射精された女性と言うものはみんなAV女優の様にたらーっと精子を口の端からたらしてティッシュか何かに出すものだと思ってたんだけど、実際はそうじゃなくてさ」

パワプロ「勢いよく精子を吐き出した後にさ。ぺっぺっ、て二三度唾を吐くんだよね」

パワプロ「オレは何だかその時のことを考えてしまっていたよ」

パワプロ「手洗いうがいが終わった後は……」

矢部「着替えるようでやんすね。制服を脱ぐ動作も手慣れたもんでやんす」

パワプロ「ふむ。周りに人がいないと女性はこうもあっさりと服を脱ぐもんなんだね」

パワプロ「少し物足りなさは否めないが……おや?!」

矢部「こ……これは……」

パワプロ「いやはや、まいったな」

矢部「スポーツブラとは思わなかったでやんすね」

パワプロ「うん。まぁ、あおいちゃんは胸が大きい方とは言えないかもしれないけど、これは流石にどうだろう?」

矢部「なんていうか、色気のイの字もないでやんす」

パワプロ「何だかずいぶん前、あおいちゃんに彼氏がいるかどうか悩んでたオレがバカに思えてきたよ」

矢部「で、着替えを……ン!!」

パワプロ「お、おぉ……。これは嬉しい誤算だな」

矢部「その通りでやんすよ。あおいちゃんは家ではジャージだと思ってたでやんす」

パワプロ「オレだってそうさ。しかし、意外だな」

パワプロ「パジャマと来るとはね」

パワプロ「薄い水色のストライプに等間隔に並んだボタン。ゆったりとしたズボンはまさに『パジャマ姿』と形容されるべき出で立ちだ」

パワプロ「しかし、パジャマというと子どもっぽいという印象があるのに、若い女性が着ると堪らなく愛らしく見えるのは何故だろうね?」

矢部「子どもっぽさがあどけなさを醸し出すんじゃないでやんすか?」

パワプロ「なるほど。普段の彼女からは想像もできない心許なさがアンバランスな魅力を演出しているのかもしれないね」

パワプロ「おや、机に向かったぞ」

矢部「鞄に手を入れて……あ、あれは今日の課題でやんすね」

パワプロ「帰宅してすぐに勉強するあおいちゃんというのもまた意外だな」

矢部「うーん。つまらないアングルでやんす」

パワプロ「そうかな?」

矢部「そうでやんすよ。今の所着替え以外はあまり色っぽいシーンがないのが残念でやんすね」

パワプロ「……違う、違うよ。矢部君」

矢部「え?」

パワプロ「矢部君。君は大きな勘違いをしている」

矢部「勘違いでやんすか?」

パワプロ「そうさ。今日オレがあおいちゃんを盗撮しているのは、そんなエロティックな意味ばかりではないんだ」

パワプロ「彼女は普段どんな表情をしているのだろう? どんな行動をしているのだろう? 手は? 足は? 指先は? 彼女が意識せずに行っている仕草の一つ一つをオレは知りたいんだ」

パワプロ「それならばこの勉強をしている後姿だって、オレにとっては非常に興味深い絵面さ」

パワプロ「あおいちゃんはオレ達に見られているなんて夢にも思っていないんだ。そう考えると何かこう、腹の底から湧き上がる感情はないか?」

矢部「……やっぱりオイラはパワプロ君のようにはなれないでやんす」

パワプロ「エロで頭がいっぱいだからな」

矢部「放っておいて欲しいでやんすよ」

矢部「おっと、教科書を閉じたでやんすね」

パワプロ「五十分か。まぁ、あおいちゃんにしては頑張った方じゃないかな」

矢部「何だかひどい言われようでやんすねえ。あ、でもまた鞄をあさっているでやんすよ」

パワプロ「また新しい課題に臨むのかな」

矢部「……どうやら違うようでやんすね」

パワプロ「コンビニ弁当、か。栄養に偏りのある食生活を送っているみたいだなぁ」

矢部「ふう。そういえばもう九時を回っているでやんす。オイラたちも夕食にしようでやんす」

パワプロ「あぁ、そうだね。ちょっとそこのコンビニまでひとっ走りしてくるよ」

矢部「心配ご無用でやんす。ちゃんと買ってきてるでやんすよ」

パワプロ「お、気が利くじゃないか。ありがとう」

パワプロ「……で、コンビニ弁当か。奇妙なシンクロニシティだね」

矢部「もしくは偶然でやんすね」

矢部「……」

パワプロ「……」

矢部「……」

パワプロ「この感覚は何なのだろうね」

矢部「驚いたでやんす。パワプロ君も同じことを考えてたでやんすね」

パワプロ「うん。モニターに映るあおいちゃんを見ながらご飯を食べていると、何処か彼女と共に食事をしているように思える」

矢部「普段ファミレスとかで実際に一緒に食事をする時よりとは全く別の、それでいて強固な連帯感があるでやんすね」

パワプロ「うん。『覗いている者』と『覗かれている者』として絶対的な境界線が引かれていて、まるで彼女の全てを掌握しているかのようにも思える」

パワプロ「……いけないな。少し興奮しすぎのようだ。少し頭を冷やさないと」

矢部「気持ちはとってもわかるでやんすよ、パワプロ君」

パワプロ「さて、食事も終わって……ベッドに向かったな」

矢部「寝転がってリモコンでテレビをつけて……。食後の休憩といった風情でやんすね」

パワプロ「ふむ。しかしただ女性がテレビを見ている、というだけでも絵になるのは不思議だな」

矢部「そうでやんすね。枕をギュッと握った動作も何だか可愛らしく見えるでやんす」

パワプロ「うん。そういった仕草にこそ、盗撮の醍醐味が存在するんだろう」

矢部「どういうことでやんすか?」

パワプロ「さっきも言ったけど、あおいちゃんはオレ達に見られているなんて想像だにしないはずだ。だからこそ彼女は極めて自然体な姿でいられる」

パワプロ「仮にオレ達が一生傍にいたとしても見られない仕草を平然と見せてくれているのさ」

パワプロ「この至福は、盗撮せずには感ぜられないことだろうね」

パワプロ「さて、テレビを消したようだけど……」

矢部「ユニットバスの方に向かってるでやんすね」

パワプロ「あおいちゃんの部屋はユニット式だったから……トイレかな。それとも風呂かな」

矢部「ん、バスタオルを取り出し始めたから、お風呂のようでやんすね。カメラチェンジするでやんすか?」

パワプロ「ああ。2カメに変更して音量のボリュームを上げてくれ」

矢部「音量でやんすか? オッケーでやんす」

シャアアァァァァ……。

矢部「パワプロ君。2カメは鏡台の設置だからバスルームは覗けないでやんすよ」

パワプロ「そりゃそうさ。オレはバスルームにカメラは設置していないのだからね」

矢部「えぇっ!? な、ななな、なんででやんすか!!」

パワプロ「オレは今回の盗撮を性欲と乖離して考えているんだ」

パワプロ「だから敢えて性的な興奮を伴いそうなバスルームには設置しなかった」

パワプロ「オレが覗きたかったのは只々彼女の日常風景。それだけなんだよ」

矢部「……わからないでやんす。さっぱりわからないでやんす」

パワプロ「そうかな……。悪いね、矢部君。君にとってはつまらない盗撮になってしまった」

矢部「……いや、そんなことはないでやんす」

矢部「さっきは思わず感情的になってしまったでやんすが」

矢部「オイラも今になって、パワプロ君の言うことが少しだけわかった気がするでやんす」

矢部「誰にも見られていないと思っている女性を覗き見ることの背徳感。きっとそれがいいんでやんすよ」

パワプロ「……ありがとう。わかってくれて嬉しいよ」

シャアアァァァァ……
~♪♪

パワプロ「シャワーの水音と微かな鼻歌が聴こえてくる」

パワプロ「何とも想像力を掻き立てられる効果音じゃないか」

矢部「そうでやんすね。このシャワーカーテンを隔てた向かいには、あおいちゃんが裸で立っているんでやんすよ」

ユメヲツーカミートーレーボークーラーノー♪

パワプロ「彼女は何処から体を洗うんだろうね。髪から? それとも肩? 腕? そんな風に想像しているだけでオレは幸福を感じられるよ」

矢部「直截的ではない分、余計にリビドーが高まるでやんすね」

パワプロ「その通りだね……おっと。シャワーが途切れたな。矢部君。1カメにチェンジ。音量は普通量に」

矢部「了解でやんす」

パワプロ「このままではあおいちゃんの全裸を見てしまうからね。それはとても……オレには出来ないよ」

矢部「パワプロ君は純情でやんす」

パワプロ「そう照れることを言うなよ」

矢部「あ、あおいちゃんが出てきたでやんすね。でもこれは……」

パワプロ「おやおや。せっかくカメラチェンジしたのに、意味がなくなったな」

矢部「バスタオルは頭に巻いて、身体はすっぽんぽんでやんすね」

パワプロ「誰も見ていないからこそ出来る行動だな……だがしかし、あおいちゃんやっぱり胸ないな」

矢部「本人に聞かれたら怒られるでやんすよ」

パワプロ「聞かれないから言ってるんだよ」

矢部「そのままパジャマを着こんで、鞄に教科書を詰め込んでるでやんす」

パワプロ「明日の準備をしているみたいだね。……でも女性が風呂上がりに長い間タオルを頭に巻くのは何故なんだろうね?」

矢部「保湿のためじゃないでやんすか? あとは水滴が垂れるのを防ぐためとか……」

パワプロ「長い髪は苦労することも多いんだろうね。オレは一生わかりそうもないけれど」

矢部「野球少年は仕方ないでやんすよ。……あれ、今引き出しから何か取り出したでやんす」

パワプロ「え、マジで。ちょっと見損ねてたな。これズームとか出来るの?」

矢部「出来るでやんすよ。ちょっと拡大して……あぁ、どうやら何かの写真のようでやんすね。随分大事そうに持っているでやんすが……」

パワプロ「写真?」

矢部「どうやら映っているのは一人だけのようでやんすが……ンッ?!」

パワプロ「何だよ……っと!」

矢部「……」

パワプロ「……どんな反応したらいいのかな。いや、かなり動揺しているんだけど」

矢部「気持ちはわかるでやんす。普段のあおいちゃんからは想像も出来ないでやんすからね」

パワプロ「……うん。でも、嬉しい、が近いのかな。あと、流石に照れる」

矢部「フフフ。勝手に覗いておいて勝手な言い分でやんすよ」

パワプロ「間違いないね。でも、収穫だな」

パワプロ「あのあおいちゃんが、キスする所が見られたんだから」

矢部「髪を乾かし始めたでやんすね」

パワプロ「うん。長い髪の女性が髪を乾かす、という単純な動作の中にも幾つも目を惹く魅力的な仕草が見える」

パワプロ「普段あまり見ることのない機会だからかな。とても新鮮な気分だ」

矢部「髪を絡ませた指先が妙に色っぽいでやんすね。……あぁ、乾かし終わったようでやんす」

パワプロ「さて、次は洗面台に向かったか。2カメにチェンジ」

矢部「あいでやんす」

パワプロ「歯磨きか。これまた日常感溢れる仕草だが……」

矢部「口内の棒状の物を突っ込んでいる場面をアップで見ると……やっぱり少し変な気分になるでやんすね」

パワプロ「うん。女性の歯磨きは何処か口淫を思わせる……いけないな。少し情欲的になってしまう」

矢部「口の端に光る泡も堪らなくエロチシズムを煽るでやんすからね」

パワプロ「このままじゃ悶々としてしまいそうだ。3カメにチェンジしようか」

矢部「かしこまりーでやんす」

パワプロ「やっぱりベッドに向かったな。む、電気を消されてしまったな。何も見えん」

矢部「もう就寝でやんすかね。時間もいつの間にか十一時でやんす」

パワプロ「ふむ。矢部君。このカメラはナイトスコープを内臓してるのかな」

矢部「大丈夫でやんすよ。……はい、切り替えたでやんす」

パワプロ「おお……。あおいちゃんは眠るとき仰向けなんだ」

矢部「可愛らしい寝顔がはっきりと見えるでやんすね」

パワプロ「困ったな。これじゃ帰れそうにない」

矢部「好きでやんすね、パワプロ君も。これ以上いても面白いことは起きそうにないし、オイラはそろそろ帰るでやんす」

パワプロ「あぁ、お疲れ、矢部君。カメラの類はオレが責任をもって回収しておくから、気にしないでくれ」

矢部「そんなこと危ぶんでやしないでやんすよ。じゃあ、パワプロ君も程ほどに」

パワプロ「うん。お疲れ、矢部君」

矢部「お疲れでやんす」

バタン。

パワプロ「……」

パワプロ「……」

パワプロ「オレはどうしたものなのかな」

パワプロ「こうしてあおいちゃんの寝顔を見ていると、何時間でも何日でも過ごせそうな気がする」

パワプロ「いっそこのままカメラを設置したままにしておこうか?」

パワプロ「……いや、それはいけない。長期にわたる設置は想定外だ」

パワプロ「いつかもしも何かの弾みでバレてしまった場合、オレは破滅だ」

パワプロ「やはりカメラは外すことにしよう。しかし……」

パワプロ「オレは明日も、そしてそれからもずっと、君を見続けるんだろうな」

パワプロ「……おやすみ。あおいちゃん」


スゥ……スゥ……


パワプロ「……」


プツンッ……。




おわり

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