照「怜と久ってどっちがモテるの?」(367)

ID:Oaa8/xGb0の代行やで~

代行ありがとうございました
思いつきのまま進行せてもらいます

怜「いや、ウチに聞かれても……」

菫「いきなり何を言ってるんだお前は」

照「二人ともすごくモテるって聞いた」

照「実際、怜も久もよく色々な女の子と一緒にいるし、たくさん告白もされてる」

怜「それは、まあ……」

照「ここで一つの疑問が生まれた。最強の女たらしはどっちなのか」

怜「ちょ」

菫「言いようがいきなり酷くなったな……というより嫌な予感しかしないのだが……」

照「ここは白黒ハッキリ決めるべきだと思わない? いや、私が気になるから決めて欲しい」

怜「なんやねんそれ……どうでもよすぎるわ」

照「じゃあ怜が最強の女たらし? 病弱を武器にたくさんの女の子を弄んでる外道?」

怜「ふざけんな! 風評被害も良いところや!」

照「じゃあ久が最強の女たらし? 数々の甘い言葉で女の子を弄んでる外道?」

久「……本人に聞こえるところでそういうこと言わないでくれるかしら?」

照「あ、ちょうどいいところに」

久「一体なんの話をしてるのあなたたち……」

菫「竹井と園城寺、どっちがモテるのか気になるそうだ」

照「気になる」

久「も、モテるって……」

怜「……久のがモテるんとちゃうのん。この前また違う女と手繋いで帰っとったらしいし」

照「おおー」

久「あ、あれはあの子に無理やり手を引かれただけだから、私は何もしてないわ」

久「そういう園城寺さんだって色々な女の子に膝枕してもらってるって聞いたけど、どうなのかしら」

怜「そ、それはちょっとしんどなった時に、たまたま居合わせた子にやってもらっただけで……」

菫「お前ら二人とも……」

照「さて、アピールタイムはこの辺にして」

怜「おい」

照「これはもう勝負で決めるしかない」


怜久「「……勝負?」」

照「話は簡単。実際に女の子を落としてもらって、落とした数と落とすまでにかかった時間で決めれば良い」

怜「なるほど」

久「確かに分かりやすいわね」

菫「お前らなんで乗り気になってるんだ……」

怜「ウチが女たらしなんて風潮見過ごすわけにはいかんからな」

怜(ちょっとおもろそうや)

久「ま、同じ理由ね」

久(すごく面白そうだわ)

照「やる気になってもらって嬉しい」

怜「で、落とすの定義は具体的になんなん?」

久「それもそうね。告白して付き合うまでなんてやってると一日じゃ終わらないわ」

照「落とすの定義……うーん……」

菫「……相手の同意を得た上でキスをする、はどうだ」

久「あら、良い案ね」

怜「お堅い委員長の口からそんな言葉が出るとは」

菫「うるさい」

菫(この辺りで落としどころをつけておかないと、ターゲットにされる人が不憫だからな……)

照「それじゃあ実はムッツリな菫の名案を採用させてもらう」

菫「おい!」

照「キスをするまでにかかった時間とキス出来た人数ってことで、二人ともいい?」

怜「なんでもええよ」

久「特に異論はないわね」

照「それじゃあ早速スタート。この箱の中に紙が入ってあるから、それに名前が書いてる子がターゲットね」

菫「お前いつこんなもの作ってたんだ」

照「授業中」

菫「はぁ……」

怜「順番はどうする?」

久「うーん、別にどっちでもいいわよ? 短縮期間で時間もあるしね」

怜「んじゃウチから行かせてもらうわ」

照「怜が女の子をはべらしてるとこを間近で見られるなんて感動」

久「ふふ、面白そうで何よりだわ♪」

菫(参考になったり……するのだろうか……)

怜「ホンマぶれへんなアンタら……えっと……>>48?」

タコス

怜「片岡優希? ……誰や」

照「1年生で咲のお友達」

菫「照の妹の……」

久「お料理研究部に所属してる子ね。美穂子から聞いたことあるわ」

怜「初対面の人に当たるとは……」

照「怜の手腕が問われる。すごく楽しみなマッチアップ」

菫(相手の子が不憫でならん……)

久「今の時間帯なら教室か料理研の部室にいるんじゃないかしら?」

怜「そっか。んまあ、とりあえず行ってくるわ」

照「頑張って。見えないところで監視しとくから」

怜「やっぱり後つけられんのか……まあええけども」


―――――――

怜(さて、どうしたものか……)

怜(いくらなんでも初対面の子からキスしてもらうて……無茶やろ)

怜「なあ照ー、これってギブアップとかありなんー?」

照「ギブアップは宣言と同時に負けー」

怜「厳しいなぁ……」

怜(って言うてる間に一年棟か。進級してからはほとんど来ることなんてなかったなぁ……)

怜「……この教室か」

怜(上級生が単身教室に乗り込んでくるなんて、注目の的やろなぁ)

怜「えーっと、そこのお嬢さんちょっと聞いていいかな?」

泉「はい、なんですか?」

怜「片岡優希さんってのはどの子? 今クラスにおる?」

泉「片岡ですか? 片岡ならあそこに……」


優希「うぅー、宿題終わらないじぇー……」

憧「なんで一週間前のヤツを今やってるのよ……」

和「宿題の存在を忘れてたそうです」

穏乃「あはは、優希は相変わらずだなー」

和「穏乃もしてませんでしたよね、その宿題」

穏乃「え」


怜(……優希って呼ばれてたあの子か。ふむ、なるほど……)

怜「おおきに。助かったわ」

泉「は、はい」

泉(三年生が一年の教室に何の用だろう……?)

ザワ……ザワ……ザワ……

怜(……目立つんも趣味やないし、早く教室から出たいんやけど)

怜(はたしてどういう作戦でいくか……)

怜(……まずは二人きりになることからか)

怜「楽しそうにしてるとこ悪いけど、片岡優希さんってのは君かな?」

優希「ん……? お姉さんだれだじぇ?」

穏乃(三年生?)

和(上級生がこんなところに……珍しいですね)

怜「えーっと、ウチ福路さんと仲良うさせてもらってる友達で、福路さんに頼まれて君を捜しに来たんや」

優希「部長が? 一体なんの用だじぇ」

怜「なんでも至急部室に来て欲しいとかで、さっき一年棟の近くで通りすがったときに連れ出すよう頼まれたんや」

優希「おお、それは一大事だじぇ! これは今すぐ向かわないと!」

憧「宿題しなくてもよくなると急に元気になったわね……」

和「優希、早く用事を済ませて続きをやるんですよ?」

優希「心配しなくても大丈夫だじょ! 伝言ありがとう見知らぬお姉さん! 早速行ってくる!」

怜「あー、ウチも福路さんに話あるから一緒に行くわ。部室まで連れてって」

優希「お姉さんも部長に用事か?」

怜「うん。クラスのことでちょっとな」

優希「分かったじぇ。それじゃあみんな、ちょいと行ってくるから待っててくれ」

憧「はいはい。帰ってこなかったら承知しないからね」

和「本当に進級できなくなっちゃいますよ?」

優希「二人とも心配しすぎだじぇ」

憧「一人もっとヤバいのがいるから心配してあげてるんでしょ」

穏乃「う、うるさいなー! 今は私は関係ないだろ!」

和「関係あります。優希が席を外してる間に宿題見てあげますから、今すぐやってください」

穏乃「そんなぁ……私学食行きたいのに……」

憧「はぁ、このおバカは本当に……」

怜「さて、仲のええみんなの話聞いてたらキリが無いからそろそろ出るわ」

怜「急に現れてごめんやで。そんじゃ行こか、片岡さん」

優希「おう! 案内は任せるじょ!」

――――――

優希「~♪」

怜(連れ出すのには成功したけど……ここからやなぁ)

怜(いかんせんこの子がどういう子かも知らんし、仲良くなるのも踏まえて色々話てみよかな)

怜「……片岡さん料理研らしいけど、なんで料理研に入ったん?」

優希「タコスの作り方を学ぶためだじぇ!」

怜「た、タコス? なんやそれ、タコ焼きみたいなもんか?」

優希「お姉さんタコスを知らないとは……人生の全てを損してるじぇ」

怜「そんなにか」

優希「ここの学食にもあるから一度食べてみるといいじぇ。次の瞬間にはお姉さんも料理研に入部してるじょ!」

怜「ほー。それは興味深いなぁ。また頼んでみるわ」

優希「ぜひ!」

怜「タコスを作れるようになるために入ったってことは、片岡さんタコス作れるのん?」

優希「……まだ勉強中だから、美味しくはできないじょ……」

怜「はは、料理は苦手か」

優希「うん……部長はとっても料理上手だから、羨ましいじょ……」

怜「でも福路さんも最初から上手やったってわけでもないやろうし、大切なのは情熱と努力やで」

優希「タコスにかける情熱だけは誰にも負けないじぇ!」

怜「そっか。ほんならあとは努力あるのみや。また美味しく作れたら食べさせてや」

優希「もちろんだじぇ! みんなにタコスの美味しさを知ってもらうのも私の役割だ!」

怜(ふふ、おもろい子やなぁ……どんだけタコス好きやねん……)

優希「ところで、お姉さんのお名前を訊いてなかったじょ」

怜「ん、そういえばそうやな……名乗るほどのもんでもないと言えばそれまでやけど……」

優希「教えて欲しいじょ! タコスの良さを知ってもらわないと!」

怜「それじゃ改めて。3-Bの園城寺怜や」

優希「園城寺先輩……」

怜「言いにくいやろ。さっきまでと同じお姉さんでええよ」

優希「了解だじぇ! 私は1ーA片岡優希……って知ってるのか」

怜「ああ、教えてもらってたからな」

怜(久に)

怜「ま、学年もちゃうしそない顔会わせる機会もないやろうけど、よろしゅう頼むわ」

優希「よろしくだじぇ。料理研はいつも家庭科室でやってるから、どんどん遊びに来て欲しいじょ」

怜「ふふ、了解」


――――――

久「あの二人、早速いい感じになってるわね。初対面なのに」

菫「単身1年の教室に乗り込んで連れ出し、数分でここまでするなんて……」

照「菫の3年間はなんだったんだろうね」

菫「……」

照「ご、ごめんなさい」

久「にしても園城寺さんやるわねー。ってここまでくらいは普通かしら?」

菫(普通なわけないだろ……)

照「でもここからが本番。どうやって唇を奪うのか」

久「案外何かの拍子にキスしちゃいそうな気もするわね」


――――――

優希「着いたじぇ!」

怜「やっと家庭科室……1年棟から遠いなぁ。ちょっと疲れてもうたわ」

優希「この学校は無駄に大きいからなー。ってお姉さん体力無さ過ぎだじぇ」

怜「病弱やからなぁ」

優希「病弱? お姉さんどこか体が悪いのか?」

怜「まあちょっとばかしな。1年のときはよう入院もしとったし、今でも保健室にはお世話になってるわ」

優希「そうなのか……しんどくなったら遠慮せずに言うんだじょお姉さん?」

怜「ふふ、ありがとう。嬉しいわ」

怜(このこと話すと大抵の子は心配してくれるんやよなぁ……みんな優しいわ)

優希「にしても家庭科室が静かだじょ……部長来てないのかな?」

怜(まあ口からでまかせやからな……来てる方が驚くわ)

怜「なんか急いでたし、他にも用があったのかもしれんなぁ。ま、ゆっくり待っとこうかや」

優希「うん、そうするじぇ」

怜(さて、ここからどうしたものか……タコスが好きってくらいしか情報もないしなぁ)

怜(……この子ちょっと頭弱そうやし、それを利用できるかもしれん)

怜(ま、のんびりいこうかな)

優希「うぅ。にしてもお腹空いたじょ……」

怜「お昼食べてないん?」

優希「うん、宿題やってたから……」

怜「家庭科室の中に入れたらなんか作ったるんやけどなぁ……」

優希「本当か!? タコス作って欲しいじょ!」

怜「それはレパートリーにないから、お任せしてもらえると嬉しいわ」

怜「そもそも中に入れたらの話やしな」

優希「中に……あ、ドア空いてるじょ」ガラ

怜「えっ?」

怜(なんで?)

――――――――

菫「お前の仕業か?」

照「そんなわけない」

久「私でした。なんか家庭科室使いそうな雰囲気だったから、さっき電話で」

照「さすが生徒会長」

菫(よく考えないでも恐ろしい話だな……)


―――――――

怜「まあ別にどうでもええか」

怜(密室の方が何かと都合もええかもやし)

優希「部員の私が許可するから、冷蔵庫にある食材使ってなんか作ってくれ!」

怜「りょーかい。って普通は料理研の片岡さんがなんか作ってくれるのが普通ちゃうのか?」

優希「確かに……でもタコス以外何も作れないじょ」

怜(大丈夫なんか料理研……)

怜「えっと、普段はタコス以外にはなんか作らんの?」

優希「うん。それにみんなが作った料理食べてる方が美味しいじょ」

怜「なるほどなー」

怜「ほんじゃまあお得意のタコス頼むわ。初タコスやからよろしくな片岡さん」

優希「うっ……責任重大だじぇ」

怜「ま、楽しく行こうや」

――――――――

菫「おい、料理し始めたぞあの二人……」

照「しかもなかなかに距離が近い」

久「雰囲気も良さげだし楽しそうだし、いやー、やるわね園城寺さん」

照「まだ1時間も経ってないのに……これは好記録が予想される」

菫(本当に初対面なのか……?)


――――――

怜(しかし、普通に料理してるだけじゃキスは出来んよなぁ)

怜(何か距離を縮めるようなことを……って言っても今までは基本向こうから行動起こしてくれたし)

怜(難しいなぁ……)

怜「痛っ」シュッ

優希「どうしたんだじぇ? 大丈夫かお姉さん?」

怜「考え事してたら指切ってもうた。はは」

優希「結構血が出てるじょ……絆創膏取ってくるじぇ」

怜(冗談半分でなんかやってみるか)

怜「うあ~、血を流しすぎて持病の一つの貧血が~」

優希「!?」

怜「ばだんきゅう」ドサ

優希「だ、大丈夫かお姉さん!?」アワワ

怜(この子ほんまに言うとるんか……?)

怜「うぅ、出血が止まらない……このままやと……」

優希「どど、どうしたらいいんだじぇ!?」

怜「まずは、血を止めんと……」

優希「ば、絆創膏っ……」

怜「アカン、そんなもん探してたら出血多量で……」

優希「そ、そんな……! じゃあどうれば……!」


優希「!」


優希「……」モジモジ

怜(……なんかもじもじし始めた……)

優希「お、お姉さん、あの……唾液には消毒効果があるらしくて、その……」モジモジ

怜「ああ……目の前が……暗く……」

優希「し、しのごの言ってられないじぇ!」

優希「あむっ」

怜「あっ」


外野「「!?」」


優希「……」ドキドキ

怜(他人の口の中ってあったかいんやなぁ……)

優希(お姉さんの血の味が、いっぱい……)

怜(これは一つ進展なんちゃうか? ウチがこの指くわえて間接キスとかって無しなんかな。そりゃ無しか)

―――――――

照「まさかの急展開。次の瞬間にはキスしているかもしれない」

菫「そ、そんなわけあるか!」

久「でも案外分からないわよ。あの棒演技に気付かないくらいだから、キスしてくれないと病気がー、とかって」

照「うん、あり得る」

菫(あの1年の将来が心配だ……)


―――――――

優希「んっ……」

怜「ありがとう片岡さん。たぶん血止まったから、もう大丈夫やで」

優希「……そ、それは良かったじぇ」

怜「ごめんな。病弱やとこういうことがようあって」

優希「お姉さん、そんな大変な体で今まで……」ギュッ

怜(うーん、いたいけな子を騙すのは心が痛いな……)

怜「よっと……」

優希「お、お姉さん、一人で立てるか?」

怜「ちょっと辛いわ……体貸してくれるか?」

優希「任せるんだじぇ」

怜「……片岡さんの体、小さいのに頼りになるなぁ」

優希「っ……」

怜「ほんま、安心出来るわ……」

優希「お、お姉さん……」ドキドキ

――――――

照「本領発揮してきた」

久「病弱だからこそ出来るお家芸ね」

菫(あんなにも儚げで弱々しい姿を見せられたら、誰でも引きつけられるだろうな……)

照「これはもう一押しでキスシーンまで発展するかもしれない」

久「でもその一押しが難しいのよねぇ」


―――――――

怜(うーん、どうしたものか……この子初心そうやから、キスしてくれそうにはないし……)

優希「だ、大丈夫かお姉さん? 保健室まで連れて行こうか?」

怜「いや、そこまでしんどくないから……」

優希「お姉さん無理しちゃダメだじぇ。 すごく顔色悪いじょ……」

怜(かなり心配してくれてる……これなら多少無茶な注文でも言いようによっては聞いてくれそうやな)

怜(……さっきと同じ作戦でいこか)

優希「お姉さん横になるか? 準備室のところにベッドがあるじょ」

怜「ベッドかぁ……ごめんやけどお願いするわ。やっぱりちょっとしんどくて……」


―――――――

優希「よっと」

怜「ふぅ。ありがとうな。助かったわ」

優希「どういたしましてだじぇ。何かして欲しいことはあるかお姉さん? 水飲むか?」

怜「今は片岡さんが側にいてくれたらそれでええわ」ニコ

優希「っ……そ、そっか」ドキッ

怜「……なぁ片岡さん、頼みたいことがあるんやけど、聞いてくれるやろうか?」

優希「なんだじぇ?」

怜「実はうちな……キスしてもらったら体調が良くなるねん」

優希「……へ?」

怜(自分で言っといてアレやけども、流石に無理がありすぎるか……)

優希「き、キス……?」

怜「そう、キスや。かるーくで良いから、唇にちゅってしてもらったらたちまちに元気になるんや」

優希「ほ、本当なのかお姉さん? そんなの聞いたことないじぇ……」

怜「世界中でウチしか持ってない持病の一つやからなぁ」

優希「本当にそんな病気があるんだじぇ……? でもお姉さんが嘘つくようには思えないし……」

怜(アカン、心が痛くなってきた)

優希「でも、さすがにキスするのは恥ずかしいじょ……」モジモジ

怜(……かわええなぁ)

怜「まあ、無理にとは言わんから。片岡さんも出会って間もない人間にそんなことするの嫌やろうし」

怜「キスしてくれんでもウチがしんどくなるだけやから……ごほっ、ごほっ……!」

優希「お姉さん……!」

怜「心配せんとって片岡さん……こんなんいつものことで、ごほっ……」

優希(とっても辛そうだじぇ……)

怜「うっ……なんか知らんが頭も痛く……」ハァハァ

優希「っ……!」

優希「お、お姉さん、そのっ……私でよければ……」

怜「!」

怜「そ、そっか……じゃあ、えっと、気が変わらんうちにお願いするわ」

優希「気なんて変わらないじょ……お、お姉さん、目、つむってもらっても……いいか?」

怜「ま、任された」

怜(こんなことってあるんやな……)スッ

優希「……」

優希「……ん」チュッ


――――――――


怜「はぁ。ただいま」

久「おっかえりー」

照「所要時間1時間31分。初対面の相手にこのタイムはすごい」

菫(こ、こんなことが本当にあっていいのか……?)

怜「今回は片岡さんの優しさと少し残念な頭に救われたわ……」

久「あのあとも終始良い感じの雰囲気だったわね。結局料理も最後までしてたし」

怜「タコス美味かったわ。また遊びにいきたいなぁ」

照「さて。怜が初対面相手に驚異的なタイムをたたき出した今、久は対抗できるのか」

久「うーん……正直相手の子にもよるわね」タハハ

久「私も片岡さんみたいな子だと扱いやすいんだけど……」

怜「ある意味くじ運良かったんか……?」

菫「……この勝負は不純すぎる。今すぐやめるべきだ」

怜「お? なんか委員長が委員長っぽいこと言っとる」

照「条件を提示したのは菫なのにね」

菫「うるさい!! 乙女の純情を弄ぶようなこんな行為は許されては……」

久「私の相手はっと」

菫「おいこら!」

久「いいじゃない。相手の子もそんなに悪い気はしてないって」

久「えーっと……>>160さん?」

かじゅ

久「加治木さん……ゆみか」ニヤァ

怜「うわぁ……」

照「久、すごく悪い顔してる……」

久「同じ生徒会の役員だし普段仲も良いし、園城寺さんに比べれば楽そうね」

菫(なんだこの余裕……? あの真面目な加治木が唇を許すっていうのか……? そ、それに楽そうって…… )

久「この時間なら生徒会室にいそうね。んじゃま、行ってくるわー」

怜「なんかすぐ帰ってきそうな気するんやけど」

照「さて、仲の良い友人相手にどんなタイムを叩き出すのか。興味深い」

菫「お前なぁ……」

リフレッシュがてらちょっと飯食って風呂いってきます
1時30分までには絶対再開します
落ちても立て直すから心配しないでください

保守ありがとうございました。再開します


―――――

久(ゆみかー。幼馴染みだっていうあの後輩ちゃんがちょっと怖いけど)

久(軽いキスくらいなら大丈夫でしょう。スキンシップスキンシップ♪)

久(……やっぱり来てるわね。生徒会が無い日も欠かさず……真面目だわ)

久「はろー」ガチャ

ゆみ「ん、久か。どうした? 今日は生徒会はないはずだが」

久「生徒会がある日じゃないと私は来ちゃいけない?」

ゆみ「まさか」

ゆみ「ただ、普段お忙しい生徒会長様が何も無い日にここに来るのも珍しいと思ってな」

久「ゆみの顔が無性に見たくなっちゃってね」

ゆみ「ふっ、相変わらずだなお前は」

久「他の子は……まあいないか」

ゆみ「みんないつも通りだろ。料理研にソフトボール部。久も本来なら演劇部のはずだが」

久「んー、今日はちょっと面白いことに巻き込まれててね。部活はお休みしてるわ」

ゆみ「面白いこと、か……たまには真面目に部員の面倒見てやれよ」

久「あの子たちなら大丈夫よ。むしろ私がふらふらしてるおかげでたくましく育ってるとも言えるわ」

ゆみ「ふっ、あながち間違いじゃ無さそうだ。今年の文化祭も楽しみにしてるよ」

久「個人的にはあなたにもぜひ我が演劇部に入部して、文化祭を盛り上げて欲しいんだけどね」

久「あなたほど男役の似合う子もいないし、入ってくれたら宝塚みたいなことも出来て面白いんだけど」

ゆみ「その話はいつも断ってるだろ。私には生徒会だけで手一杯だ」

久「会計業務がそんなに大変かしら?」クス

ゆみ「この前の地震で備品が壊れた部が多発してな。今は予算を捻出するのに頭を悩まされてるよ」

久「あー、あの時のことね。ウチも小道具が何個かやられたわ」

ゆみ「吹奏楽部なんかはやられた楽器もあるらしくてな……頭が痛くなるよ」

久「本当にお疲れ様ね……肩でも揉んであげましょうか?」

ゆみ「ふふ、なんだそりゃ。随分とらしくないことを言うんだな」

久「私は部員や役員のことは人一倍気遣ってるつもりだけどー?」

ゆみ「気遣ってるなら部活動に参加してやれ」

久「今はあなたの方が優先よ」ギュッ

ゆみ「ふっ……生徒会長様直々の好意は痛み入るな」

久「私マッサージ上手なのよ? 先生とかにも専門家みたいってよく褒められるし」モミモミ

ゆみ「高1の時からの付き合いだが、そんなこと初耳だぞ」

久「能ある鷹は爪を隠すってね」トントン

ゆみ「用法がおかしいぞ」タハハ

ゆみ(しかし……本当に上手いな。緩急を付けて、的確にツボを押してくる……)

久「凝ってるわねー。日頃の苦労が垣間見えるわ」ギュッギュッ

ゆみ「お前がもっと生徒会業務をこなしてくれたら楽が出来るんだがな……」

久「ゆみが働きたがってるから仕事を回してるだけよ。暇よりかはいいでしょ?」

ゆみ「まあそうだが……」

久「働きぶりで考えると、実質の生徒会長はゆみみたいなもんだしね」モミモミ

ゆみ「それはどうだろうな。久はある意味一番生徒会長らしいことをしている。それは私には出来ないことだ」

久「生徒会長らしいこと、ねぇ……」

ゆみ「分かりやすい例を挙げると、生徒たちから好評なイベントやら校則やらは全て久の発案だしな」

久「私は発案して声高らかに宣伝してるだけじゃない。実行や準備、根回しは他のみんなのおかげだし、私一人じゃ何もできやしないわ」

ゆみ「それはそうだが、組織の中で一番大切な部分を担ってるのはお前だということに変わりはない」

久「……そんなにも褒められると照れくさいんだけど」

ゆみ「事実を述べてるだけだ。久には求心力も人徳もある。お前以上に生徒会長の役職を努められる人間はこの学校にいないよ」

久「手放しで褒められると裏を疑ってしまうわね。何か目的でもあったり?」

ゆみ「そうだな……このままマッサージを続けてもらうと嬉しいかな」

久「ふふ、言われなくてもさせて頂くわよ。会計様」


―――――――

照「なんか……」

怜「めちゃくちゃ良い雰囲気やなあの二人」

菫「こうやって覗いているのが野暮に思えるほどだ……」

怜「もうこれ今すぐチューしても問題ないんとちゃうん?」

照「いや、完璧な信頼関係が構築されてるからこそ、躊躇される行為もある」

照「ここからどう踏み込むかが勝負」

菫(竹井に対してその心配は杞憂に思えるが……)

―――――――

久(さて、良い感じの雰囲気にしたところだし、そろそろ何かアクションを起こすべきかしら)

久(でも相手はゆみなのよねぇ……考えてみれば、さらっと受け流される可能性も……)

ゆみ(……いかん、心地良くて眠ってしまいそうだ)

ゆみ(まだ仕事も残ってるし、このあとはモモとの約束もあるから……)

ゆみ「ありがとう久、もう大丈夫だ」

久「えっ?」

ゆみ「おかげで随分と楽になった。仕事に戻るよ」

久「そ、そう。それは良かったわ」

ゆみ「私はもうしばらくここにいるが、お前も暇があるなら演劇部に顔を出すか何かしろよ」

久(か、完璧に動くタイミング外したわね……)

久(後ろから抱きしめるなりいっとけば、今頃……)

久「……ま、後悔しても意味ないか」

ゆみ「?」


―――――――

久(……うーん、あれから動くきっかけが無い)

ゆみ「……」ウーン

久(ゆみも黙々と書類業務こなしてるし、構って貰えないのは悲しいわねー……)

ゆみ「……」カタカタ

久(にしてもめちゃくちゃ集中してる……なんかイタズラしたくなっちゃうわよね、こういうの見てると)

久「……」スッ

ゆみ「……」

久(席を外すかのように立ち上がり、ゆっくり後ろから近づいて……)

久「フッ」

ゆみ「ひゃ!?」ゾクゾク

久「ふふ、息吹きかけただけなのにそんな声出して。顔も赤いし……やっぱりゆみは可愛いわね」ニコ

ゆみ「か、かわっ……!?」

久「うん可愛い♪」

ゆみ「……はぁ」

ゆみ「一体なんのつもりだ。邪魔をするなら帰れ」ジト

久「そんな顔しても照れ隠しで怒ってるようにしか見えないわよ? まだ顔赤いし」

ゆみ「う、うるさい。顔なんて赤くしてない」

久「赤いわよ。鏡見る?」

ゆみ「見ない。ってなんなんだお前は!? そんなに私に構って欲しいのか?」

久「うん♪」

ゆみ「あのなぁ……」

久「だってせっかく二人きりになれたのに、ずっと書類と睨めっこだもん」

ゆみ「しょうがないだろ、仕事なんだから……ってそもそも二人きりってどういう意味だ。一体何を企んでる?」

久「別に何も? ただゆみと一緒にお話したいだけ」ギュッ

ゆみ「っ……離れろ。気持ち悪い」

久「ひどい。昔はよくこうしてたじゃない。ゆみだってあんなにも強く抱きしめてくれて……」

ゆみ「そんなことはしていない。勝手に記憶を捏造するな。離れろ」グググ

久「なんでそんなにも蔑ろにするのよー。私だって女の子なんだから泣いちゃうわよ?」

ゆみ「お前が涙を流すときは嘘泣きするだけだろ……ええいくっつくな!」

ゆみ「そもそもお前に泣かされた女はいてもお前を泣かせる女なんてこの世に存在するはずがない」

久「ず、随分と酷いこと言うのね……」

ゆみ「事実を述べて何が悪い」

脱字修正8行目
ゆみ「お前が涙を流すときは嘘泣きするだけだろ」

ゆみ「お前が涙を流すときは嘘泣きするときだけだろ」

ゆみ「久、友人として忠告するが、自分を好いてくれている子をあまり弄んでやるなよ?」

久「あら、それはどういう意味? まるで私が普段遊んでるみたいじゃない」

ゆみ「事実遊んでいるだろ。この前も街で下級生と腕を組んで歩いているところを目撃されているぞ」

久「わ、私だって後輩とショッピングくらいするわ。それにあれはあの子から腕を組んで来たからで……」

ゆみ「お前は相手の誘いを断るという行為をしなさ過ぎるんだ」

ゆみ「そこから無意識の行動で相手をさらに勘違いさせるんだから、余計タチが悪い」

ゆみ「そんなことばかりしてると、本当に大切な誰かが出来たとき、その誰かを悲しませることになるぞ?」

久「本当に大切な誰か……」

久「ゆみのことね♪」ギュッ

ゆみ「おいっ」

久「大切な誰かが出来た時はその誰か一筋になるわよ」

久「そもそも今は独り身なんだから、何をしようと後ろ暗いことなんてないわ」

ゆみ「お前なぁ……」

久「そんなことを言うゆみには、誰か大切な人がいるのかしら?」

ゆみ「……あぁ。いるよ」

久「あの影の薄い後輩ちゃん?」

ゆみ「そこまで分かってるならもういいだろ」

久「……私はあなたにとって、大切な人じゃないのかしら?」

ゆみ「……久?」

ゆみ(抱きしめられる力が、強く……)

久「私にとってゆみは……今でも大切な人よ」ギュウ

ゆみ「……久は大切な友人だ。そういう意味では、大切な人の一人であってると思う」

久「でも特別にはなれない。そうでしょ?」

ゆみ「……さっきから一体何を言ってるんだ。らしくないぞ」

久「ゆみは何も分かっていないわ。三年も一緒にいたのに……本当の私を分かってない。いや、見ようとしていない」

ゆみ「……どういう意味だ?」

久「あなたは自分自身が見ていたい私だけを見続けていたのよ。求心力があって人徳のある、あくまで生徒会長としての私を」

ゆみ「……」

久「あなたがいつもらしくないと言う私が、本当の私だった」

久「そしてそんな私にとって、あなたはどこまでも特別だった」

久「……私の初恋の相手、教えてあげようか」

ゆみ「やめろ」

久「ふふ、そう言うと思ったわ」パッ

ゆみ「……すまない」

久「……ねえ、こんな雰囲気だし一つ訊いていいかしら」

ゆみ「……答えられることは、出来るだけ答えよう」

久「1年の時でも2年の時でもいい。気付いてた?」

ゆみ「……ああ。1年の秋に確信した」

久「そっか。やっぱ、気付かれてたか……それも結構早い時期に……バレてない自信あったんだけどなぁ」

ゆみ「……久、私からも訊いていいか」

久「なに?」

ゆみ「どうして……自分の気持ちを打ち明けなかった?」

久「……」

ゆみ「当時の私は……ただそのことだけが怖かった。いつ話を切り出されるか、いつ私たちの関係が壊れてしまうのか……ただそれだけが」

久「臆病だったのね。ゆみらしくもないわ」クス

ゆみ「今でも私は臆病だよ。この話をいつまで経っても訊こうとしなかったくらいにはな」

久「告白しなかった理由、か……私ね、麻雀でもよく悪待ちするし、分の悪い賭けほどよく好むんだけど……」

久「勝てる見込みが100%無い勝負は絶対にしないの」

ゆみ「……」

久「それが理由かな。分かりやすいでしょ?」

ゆみ「……ああ」

久「結局私もゆみと同じ。この関係が壊れるのが怖かったのよ」

久「そして最後まで馬鹿にはなれなかった。当たって砕ける勇気がなかった」

久「それが全てよ」

ゆみ「……そうか」

久「ま、遠い昔の話だけどねー」

ゆみ「……もしあの時、」

久「やめて」


久「もしもの話なんて、しないで。それだけは絶対に聞きたく無い」


ゆみ「……すまない」

久「……こっちこそ、変なこと言い出したり、昔のこと掘り返すような雰囲気にしてごめんね」

ゆみ「……」

久「ねえ、ゆみ」

久「最後に一つだけお願いしていい?」

ゆみ「……なんだ」

久「私の初恋を終わらせて欲しいの」

ゆみ「……」

久「この気持ちを完全に終わらせられるのは……あなただけだから」

ゆみ「……どうすればいい?」

久「キス、して欲しい。……一瞬でいいから」

ゆみ「……」

ゆみ「目をつむれ」

久「……ありがとう」スッ

久「ゆみのそういうところ……大好きだったわ」ポロポロ

ゆみ「……すまなかった」


「「ん……」」


―――――――


久「……」

ゆみ「お、おい。久……」

久「くふふ、毎度ありー♪」ニコッ

ゆみ「……は?」

修正、5行目
ゆみ「お、おい。久……」

ゆみ「お、おい久。だいじょう……」

久「結構時間かかっちゃったかなー……宮永さーん、タイムどんくらいー?」

ゆみ「ひ、久? 一体何を……」


「えっ、これ出て行っても大丈夫なの?」

「わ、分からんわ。でも久のあの様子やと……」


久「もう出て来ても大丈夫だから。ネタバらしちゃいましょう」

照「ほ。本当にいいの……?」ガラ

ゆみ「!?」

怜「本気で言うとんのか久……」

ゆみ「!?!?」

菫「信じられん……まさか、今の全部……」

久「演劇部の部長舐めないで欲しいわ」

ゆみ「ひ、久っ!? お、おおお前これどういう……!?」

久「言ったでしょ。面白いことやってるって」

照「タイム、1時間5分。……園城寺さんより30分ほど早い」

久「んー、やっぱそんなもんか……もう少し早く出来たかなぁ……」

怜「十分早いわ……」

照「さすが久。素晴らしい技術。ここにいる全員騙された」


菫「すまない加治木……本当にすまない……」

ゆみ「……どういうことか説明してもらおうか。久」ゴゴゴゴゴ

久「あ、あはは。ゆみ、ちょっとそのオーラは笑えないわ」


――――――――

久「いたい……」ナミダメ

菫「自業自得だ馬鹿者」

照「むしろよくげんこつ一つで済んだよね」

怜「ウチら全員三枚に下ろされても文句言えん状況やったな」

久「それにしたって本気で殴らなくても……あれから結構時間経ってるのにまだ痛いわよ……」ジンジン

菫「加治木が怒るのは当たり前だ。ネタバレなんてどういう精神で出来るんだ……」アキレ

久「別にいいのよ。それに相手がゆみじゃなかったらあんなこと絶対にしなかったし」

照「どういうこと?」

久「清々した、ってことかしら」ニコ

照「?」

怜「ホンマ、ええ性格しとるわ……」

菫「なあ、もうこんなことはやめよう。これはお前ら二人の凶悪さを証明するだけのえげつない行為だ。一体これで誰が幸せになる?」

照「私は二人のすごさを間近に見れて幸せ」

怜「ウチも片岡さんと仲ようなれて幸せっちゃ幸せやな」

久「私も殴られたけどあんなにも愉快なゆみの顔見れたし、幸せっちゃ幸せね♪」

菫「お前ら……!」

怜「さーて、次はウチの二回目か」

菫「ダメだ! もうこれ以上の被害者を出すわけにはいかない!」

久「なーにお堅いこと言ってるのよ」

怜「ホンマ委員長は委員長やなぁ。そんな頭でっかちやと松実さんに嫌われるで?」

菫「うるさい!」

照「菫は私が取り押さえとくから、くじ引いて」ガシッ

菫「て、照っ、おまっ」

照「懐かしいね、この感じ」


怜「えっと、次は……」ガサゴソ

怜「>>275さん?」

宥ちゃん
って書きたいから早く3レスして

怜「……松実宥さん」

菫「」

久「あらまー」

怜「なんかこの文字めっちゃデコレーションされとるな」

照「大当たりだからね」

菫「照……!!」ゴゴゴゴゴ

照「お、落ち着いて菫。後ろから阿修羅が出てる」

久「だ、大丈夫だって弘世さん。そんな悲しい未来にはならないはずだから」

怜(これウチが一番危ないんとちゃうの?)

菫「ぜっっっっったいに許さん!! お前ら淫獣の毒牙を宥にかけるのだけは何があってもこの私が許さない!!」ギュウウウ

照「お、落ち着いて菫。締まってる、締まってるから」パンパン

怜「淫獣て……」

久「酷い言われようね」アハハ

怜「で、どうするんや照? このままじゃ妨害どころかウチらの身にまで危険が及ぶんやけども」

久「実際宮永さんは今まさに生命の危機に立たされてるしね」

照「ふたりとも、たすけ……」

菫「お前ら、手を出したらどうなるか分かってるだろうな……!」

怜(うん、ほんまに怖い)

久(でも最高に面白そうなのよねー)ワクワク

照「あ、松実さん!」

菫「えっ」

照「二人とも今! 菫を取り押さえて!」

久「任せなさい!」

怜「病弱なりに丈夫なロープを見つけてきたから、これ使って」

菫「ちょ、おまっ」


―――――――

照「縛ってみた」

怜「病弱なりに口にガムテープも貼ってみた」

菫「んー!! んー!!」モガモガ

久「いやー、弘世さん縛られてる姿が最高に様になるわ。写メ撮って良い?」パシャパシャ

菫「んむーっ!!」

照「菫にはこの台車に乗って同行してもらう。仲間外れにはしないから安心して」ニコ

怜(ある意味一番残酷やと思うんやけど……)

久「そろそろ行って来たら園城寺さん?」

怜「それもそやな。放課後って松実さんどこにおるの? 帰ってたりせえへん?」

照「松実さんは確か手芸部。第二家庭科室が部室だから、そこにいるはず」

怜「そっか。ほなぼちぼち行ってくるわ」

照「今回はクラスメイトだから大幅なタイムの更新が期待される。すごく楽しみ」

久「私は弘世さんの反応を見るのが楽しみだわー」

菫「んんっーー!!」ジタバタ

――――――――

怜(しかし第二家庭科室も遠い……2年棟の一番端やからなぁ……)

怜(今回はどういう作戦でいこうか……部活動中やから、やっぱり二人きりになるところからか)

怜(となると……保健室やな)

やめるのですボクたち!

怜(さて、到着や)

怜(何か良い感じのでまかせを考えて……もう面倒やから思いつきのままいこか)

怜「失礼しまーす」ガラ

「「ザワ……ザワザワ……」」

怜(まあ、部外者が入ってきたらこうなるわな)

怜「あ。姉帯さんや」

豊音「? あっ、園城寺さん! 珍しいね! 放課後に手芸部に来るなんてどうしたのー?」

怜「実は松実さんに用事があってな」

豊音「松実さん? 松実さんなら横の部屋でマフラー編んでるよー?」

怜「おおきに。ちょっとお邪魔するな」

豊音「喜んで! お客さんあんまり来ないからちょー嬉しいよー。ゆっくりしてってね」ニコ

怜(姉帯さんも可愛いなぁ。大きいけど)ニコ

怜(さて、委員長のお姫様はっと……)

宥「……」

怜(相変わらずの重装備やなぁ。見てるだけで暑なるわ……)

怜「こんばんは、松実さん」

宥「ふぇっ?」ビク

宥「お、園城寺さん……?」

怜「驚かせてごめんやで」

宥「えっと、どうしたんですかこんなところまで? 何か用事でも……」

怜「そうそう用事。ちょっと松実さんに用があってなぁ」

宥「私に……?」

怜「えーっと、その用事ってのが……」

怜「そう、 委員長が松実さんを呼んでてな」

宥「えっ? 菫ちゃんが?」

怜「うん。でもその当の本人は今かんぴょう巻き……じゃなくて、ちょっと手が離せんくて」

怜「そんな忙しい委員長の代わりにウチが松実さんを呼びに来たんや」

宥「そうなんだ……えっと、菫ちゃんは何の用事か言ってた?」

怜「うーん、そこまでは聞いてないなぁ。……ただ、なんかそわそわしてたから、大切な用事やと思うなぁ」

宥「た、大切な用事……?」ドキッ

宥(大切な用事で呼び出しって……なんだろう……)ドキドキドキ

怜(これはアカンぞー。さっきとは比べ物にならんくらい胸が痛くなってきた)

怜「そんでまあ、すぐに保健室まで来て欲しいとかで」

宥「保健室?」

宥(なんで保健室なんだろう……)ウーン

怜(ヤバい。流石に疑問に思っとる。そら片岡さんほど分かりやすくはないわな、普通……)

怜「 だ、大丈夫そう松実さん? 今ちょっと忙しそうやけども……」

宥「う、うん。大丈夫だよ。えっと、今から保健室に行けばいいんだよね?」

怜「委員長はそう言っとったで」

宥「分かった。それじゃあ行ってくるね。……ありがとうございます園城寺さん。わざわざ伝えてもらって」

怜「いや、全然大丈夫やで? ウチもちょうど保健室に用があったから」

宥「そうなんだ……それじゃあ一緒に行こっか」

怜「それもそやな。よろしゅう頼むわ」

怜(ん……? 紺色のマフラー……)

怜「……松実さん、このマフラーは自分で着けるの?」

宥「えっ? どど、どうしてそんなこと……」

怜「いや、松実さんが着けるにはちょっと似合わんから、誰かへのプレゼントかな、と思って」

宥「えっと、これは、その……」アワワ

怜(紺色……なるほどな。そういうことか。しかもかなり長いなこれ……)

怜「可愛い刺繍も入っとるし、よう出来とるわ。きっと貰う人は大喜びやろなぁ」

宥「えっ……ほ、本当に?」

怜「うん、ウチが欲しいくらいやし」

宥「ご、ごめんなさい。これはもう、あげる人が……」

怜「はは、本気で貰おうとは思ってないから大丈夫やで」

怜(あげる言われても受け取れんやろなぁ……)

怜「っと無駄話してごめんな。そろそろ行こか」

宥「は、はい」

―――――――――

怜(特にこれと言った会話もないまま保健室に着いてもうた)

怜(松実さんは委員長のことで頭いっぱいなんやろなぁ)

怜(二人きりになるためとは言え、ちょっとリスク高い嘘ついてもうたかな……)

宥「……菫ちゃん、もう来てるかな」

怜「ま、中に入れば分かるやろ」ガラ

「「…………」」

宥「……誰も、いない」

怜(委員長は当たり前やけど、まさか先生までおらんとはな)

怜(まあ久の仕業やろうけども)

怜「とりあえず、委員長来るまで待っとこか。ウチらのが早かったみたいや」

宥「うん、そうだね……」

宥「そういえば、園城寺さんはどういう用事で保健室に……?」

怜「え」

怜「えーっと、ウチは保健室の先生に用があってな。それでや」

宥「そうなんだ……先生がいないって珍しいよね。不在なのに鍵も空いてるし……」

怜(松実さんは流石に頭ええから、不審な点に気付いてきよるなぁ)

怜(さっきみたいな無茶なことは出来んな。どういった作戦で行くべきか……)


―――――――――

照「怜が攻めあぐねてる」

久「そりゃ、相手が相手だしね。前みたいにはいかないでしょ」

照「ここからどう足がかりを付けるか。手腕の見せ所」

菫「んんー!! んんーーっ!!」ジタバタ

久「しかし暴れるわね弘世さん……」

照「自分をダシに使われてた時はもっと激しく暴れてた」

照「ガムテープ上から張り直したくらい」

久「マフラーの話になった途端大人しくなるあたり、分かりやすくて可愛いわ」タハハ

菫「……」ギロ

照「……こ、怖いよ菫……」

久「解放した時のことは考えたくないわね……」


―――――――――

怜(案が浮かばん。ここは王道に、いつもの作戦でいくしかないか……)

怜「うっ……」フラッ

宥「お、園城寺さん!?」

怜「ありがとう松実さん……結構な距離歩いたせいか、いつもの貧血が……」

宥「大丈夫……? もしかして、病気のことで先生に……」

怜「……さすが松実さん。察しがええなぁ」

怜(頭ええせいか、勝手に深読みしてくれのはありがたいな)

宥「私、先生探しに……!」

怜「待って松実さん」ハシッ

宥「お、園城寺さん……?」

怜「一人にされるのは、ちょっと辛いわ……」

怜「先生来るまででええから、側にいてくれへん……?」

宥「うん……私なんかでよければ……」

怜「ありがとうな、松実さん……」ギュッ

――――――――

菫「んんーーっ!? んんーーっ!!」

照「菫うるさいっ」

久「キスなんてした日にはロープ引き千切りそうな勢いね……」

照「怖い」

久「……もう一本使って縛っておきましょう」

――――――――

宥「園城寺さん、ベッド使う?」

怜「そやな……横になった方が楽そうやわ」

宥「ちょっとしんどいかもしれないけど、頑張って歩いてね」

怜「うん……」

怜(ここまで行くのは簡単に予想できるけど、問題はここからやねんなぁ)

宥「うん、しょっと……」

怜「ふぅ……ありがとうな松実さん。おおきに」

宥「ううん。困った時はお互い様だから」ニコ

怜(うーん、神々しい。笑顔に後光が)

宥「何かあったら遠慮なく言ってね園城寺さん」

怜「よろしゅう頼むわ……」

宥(……園城寺さんも心配だけど。菫ちゃん、まだ来ないのかな……)

怜(あんまり無駄な間を作りすぎると、松実さんが色々考えてまう可能性が高いな……)

怜(委員長を捜しにいくなんて言い出す可能性もゼロやない。ここは関心の比重がウチに寄ってる間に勝負仕掛けんと)

怜「……松実さん。早速やけども、我がまま訊いてくれる……?」

宥「な、なに?」

怜「ちょっと枕の高さが合わんくて。それに材質も固めやから寝にくいんや……」

宥「ど、どうしよう。代わりの枕探して来る?」

怜「いや、探す必要は無くて。松実さんがええなら、なんやけども……」

怜「膝枕して欲しいな、って……」

宥「ふぇ……?」

ドンガラガッシャーン!!

宥「ふぇっ……!?」

怜(委員長か……)

宥「な、なに? 今の音……外で何が……」

怜「でかい猫が暴れてるだけや。気にせんでも大丈夫やで」

宥「猫……?」

怜「うっ、頭が……」

宥「だ、大丈夫園城寺さん!?」

怜「やっぱ枕が合わんと血流も悪うなってな……松実さん、膝枕、頼めんやろか……?」

宥「……ちょっと恥ずかしい、けど……大丈夫」

怜「そっか。ありがとうな……」

宥「えっと、どういう風にしたら……?」

怜「とりあえず、このベッドに腰掛けてくれるか?」

宥「わかった」

??「お姉ちゃん…何やってるの?」
??「怜はうちのもんや~」

怜「もうちょっと深めに腰掛けて……そうそう、そんな感じや」

怜「そんじゃ、寝かせてもらうな……」

宥「う、うん……」

怜「……」トサッ

怜(これは……)

宥「ど、どう? 大丈夫園城寺さん?」

怜(めちゃくちゃ寝心地ええ……)

怜「うん、大丈夫……めっちゃ気持ちええわ……」

怜(この太ももの柔らかさ、体温の温かさ。膝の高さ、匂い、全てにおいて完璧や……)

怜(あかん……本気で寝てまうかもしれん……)


――――――――

照「怜、すごく気持ち良さそう……」

久「目的忘れてそうね。あの様子だと寝ちゃってもおかしくないわね」タハハ

菫「……」

照「菫がさっきの爆発以降死んだように大人しくなってる」

久「力尽きちゃったんじゃない? 取り押さえる苦労もなくなるから好都合だわ」

照「ほんの少しだけ瞳から涙が……菫、可哀想に……」

久(元凶はあなたよ、宮永さん……)

――――――――

怜「……はっ!?」

怜(あかん、一瞬寝とった。これはある意味まずい状況なのかもしれん……)

宥(菫ちゃん何してるんだろう……)

怜(これ以上時間をかけたら疑問を生む可能性が高い……)

怜(そろそろ仕掛けにいかんと。でも、膝枕してもらってるだけで全然進展ないし……)

怜(……もうちょい攻めるか)

怜「うん……」

宥「ゃっ……!」

宥(ね、寝返り……!?)

怜「ごめんな松実さん。同じ体勢はちょっと辛くて……」

宥「お、園城寺さん……あ、あの、さすがにこれは……!」

怜「すぅ……はぁ……松実さん、やっぱりええ匂いやわ……」ギュウ

宥「っ~~~!!」

怜「うぅん……」モゾモゾ

宥「ひゃっ……」

宥「園城寺さんっ、く、くすぐったいよ……あっ……」

怜「ごめんな……でもこれ、気持ち良くて……」クンクン

怜(自分からしといてクセになりそうや……)

怜(将来松実さんを独り占めする委員長が素直に羨ましくなってきた……)モゾモゾ

宥「あっ……だ、だめぇっ……」フルフル

怜(委員長と松実さんの幸せな未来を邪魔したらあかん)

怜(分かってるはずやのに……邪な気持ちが……)

宥「んっ……」

怜「……」グイッ

宥「……ふぇっ?」トサッ

怜(……お、押し倒してもうた……)

宥「お、園城寺、さん……?」ナミダメ

怜「……松実、さん」



怜「……キス、してええ……?」

宥「!?」

ドガッシャーン!!


――――――――

菫「~~~~~~~~!!!」ジタンバタン!!

照「お、落ちついて菫!」

久「そうよ弘世さん! 冷静になって!」

菫「ッッーーーーーー!!」

照「ろ、ロープ! ロープほどける!」アワワワ

久「さっきから着々とボルテージを上げてって今が最高潮ね! 宮永さん私逃げていい!?」グググ

照「ダメ!」グググ

久「さすがにまだ死ぬのは嫌なんだけど!?」ググググ

照「松実さんがなんとかしてくれるしか生きる希望はないと思う!」

――――――――

怜「ウチ、もう我慢できそうにないねん……」

怜「松実さん見てたら、委員長のこととかもうどうでもよくなってきて……」ハァハァ

宥「そ、そんなっ……だ、ダメだよ園城寺さん。だって、だって……!」

怜「……ごめん、松実さん……」スッ

宥「ひっ……!?」

宥「だっ……」


宥「だめえええええ!!」


怜「うぐぅっ!?」

怜(しょ、掌底……)

怜「……ばたんきゅう」

宥「あっ……」サーッ

宥「わ、私ったら咄嗟に……! ごご、ごめんなさい園城寺さん! 大丈夫ですか!? 園城寺さん!?」

怜「だ、だいじょう、ぶ……目、覚めた……わ」チーン

宥「お、園城寺さん! 園城寺さん!」

宥「せ、先生呼ばなきゃっ……!」ガラッ

照「あ」

久「あ」

宥「へっ……? 宮永さんにたけ……す、菫ちゃん!? どど、どうしてそんなっ……!?」

照(こ、これは……)

――――――――

照「」チーン

久「」チーン

菫「はぁ……はぁ……はぁ……!!」

宥「すす、菫ちゃん……もも、もうそれくらいに……」ガクガクブルブル

菫「こいつらだけはっ……絶対に……!」

宥「だだ、ダメだってば!?」ギュウ

菫「離せ宥! この淫獣どもは君の気持ちを弄ぼうと……!」

宥「わ、私は大丈夫だし何もされてないから!」

菫「嘘をつくな! そうだ、園城寺はどこだ! こいつらも許せないがアイツが一番羨ま死……」

宥「園城寺さんにこんなことしたら死んじゃうよ!?」

羨ま死刑だな


――――――――

照(菫は松実さんに引き取られました)

照(おかげで私たちは生きています)

怜「いやぁ、酷い目に遭ったなぁ」

久「園城寺さんは一番マシでしょ……私たち本気で殺されるかと思ったわよ……」

怜「病弱にあの掌底は辛かったで……おかげで気も失って今も顎に違和感ありまくりやからな」

照「……菫の逆鱗に触れるとヤバい。これを学べただけでも進歩」

久「しかし、松実さんがいなかったら三人とも確実に死んでたわね」

怜「松実さんがいたからこそこんなにもボロボロにされたとおも考えられるけどな」ハァ

照「結果は失敗だね。怜にも落とせない相手がいると判明した」

怜「そもそも松実さんにどうこうすんのは良心が痛むわ」

久「半分襲いかけてたくせによく言うわ」

怜「うっさいわ」

照「今日はここまでだね。時間的な問題でも、私たちの体力的な問題でも」

久「ねえこれ明日も続けるつもりなの? あんな目に遭うのはもうごめんなんだけど」

照「個人的にはあと久に二回、怜に一回トライしてもらいたい」

照「その結果で最強を決める」

怜「今は心の底からどうでもええと思えるわ……」

照「では二人ともまた明日。しっかりとコンディションを整えて」

久怜「「もう勘弁して……」」

支援ありがとうございました
とりあえず終わりです

今日帰ってこれるのが確実に19時を回る上、続きもこのスレで書けるかどうか、自分自身書くかどうかも分からないので、落としてもらって構わないです

お疲れ様でした

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