古美門「……765プロで、はじめての裁判♪」 (464)

     


新年、あけましておめでとうございます。



12月18日、リーガル・ハイ2が最終回を迎えて、約2週間!

1月25日、劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』の公開まで、約3週間!

本日はだいたいその真ん中くらいということで、ここいらでリーガル・ハイとアイマスのクロスSSなんかを一つ!




~あらすじ~ --------------------------------------------------------------------------------------------
 時期設定は、ちょうどアイマスとリーガルハイの最終回終了時点。
 765プロの高木社長はブラックウェルカンパニーと名乗る会社から新しい事務所を買い取った。
しかし即座に計画倒産。新事務所はおじゃんに。TVでは黒井社長の関与を疑う声が。
騙されて、事務所の金庫もスッカラカンになったけど、それでもがんばる765プロの面々。
だが、そこに再び、黒井社長の魔の手が!
 時、同じくして。黛は古美門事務所に復帰の依頼を申し立てていた。だがまだ正式には入れ
てもらってはいない。古美門事務所に居座ってはいるものの、地味に居づらい気持ちあり。
さて、そんな黛の気持ちを知ってか知らずか、今日も古美門研介はバイオリンを弾く。
その音を巡りいつものように言い争う二人。しかし、そこに割り込むようにして、一本の電話が鳴る――。 
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法も裁判もわからないけど、愛だけを原動力にして、年末年始返上。
構想から執筆まで、きっちり一週間かけて作り上げた85000字くらいの長ったらしいストーリー。




新春特別スペシャル『リーガル・マスター』、はーじまーるよー!




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1388639937


大きなビルのとある部屋//




??「……」カタカタカタ



カチ

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天海春香 @AmamiHaruka                                    XX年XX月XX日
今日は事務所の皆と一緒にお花見に行きました♪ 最近ちょっと忙しかったから良い休暇になったな~(*^_^*)
よーし、明日からは精一杯、頑張ろう!

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??「……フン!」カタカタカタカタ、タン







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シュヴァルツブルンネン @Schwarzbrunnen                XX年XX月XX日
@AmamiHaruka大変そうですね。休養できたのならよかったです。ところで「忙しい」とのことですが、事務所を移転
されるとか? もしかしてそれで忙しいんですか?

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??「……」


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天海春香 @AmamiHaruka                                    XX年XX月XX日
@Schwarz brunnenわわっ、どこからそんな噂を…

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シュヴァルツブルンネン @Schwarzbrunnen                XX年XX月XX日
@AmamiHaruka後、眉唾なのですが、新事務所の建設会社があのブラックウェルカンパニーだと聞いたのですが……。
本当ならば、さぞ忙しいことでしょうが……。

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天海春香 @AmamiHaruka                                    XX年XX月XX日
@Schwarz brunnenファンの方の情報網って凄いなぁ…。ここまでバレてはしかたない。実は、本当なんです(>_<)。
明日からはもっと頑張らないと765プロが大変なので、みなさんも応援してくださいね♪

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??「ククク! かかったな、アホが!」



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はるかファンA @HarukaFanA                       XX年XX月XX日
@AmamiHarukaえええええええええ!? 愛しの765プロが知らぬうちに大変なことになってる!?

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はるかファンB @HarukaFanB                       XX年XX月XX日
@AmamiHarukaブラックウェルカンパニーってこないだ倒産したとこじゃん!?

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はるかファンC @HarukaFanC                       XX年XX月XX日
@AmamiHaruka閣下に踏まれたい

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はるかファンD @HarukaFanD                       XX年XX月XX日
@AmamiHarukaこれはブラックウェルに凸しなければ。閣下親衛隊切り込み隊長の俺が一番槍だ!!!

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??「ククク……」カタカタ

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ネーロポッツオ @Neropozzo                                  XX年XX月XX日
@Ganaha_hibiki今知り合いのファンに聞いたのですが、765プロがブラックウェルに騙されたって本当ですか!?
調べてみたら天海さんがツイートしてました……。

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ひびきファンA @HarukaFanA                       XX年XX月XX日
@Ganaha_hibikiマジだった。響ちゃん大丈夫だった?

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チョールヌイカローディツ @ChyornyhKolodets                XX年XX月XX日
@mikinano天海さんのツイッターで見たんですけど、ブラックウェルカンパニーの被害にあったんですか!?
まさか765プロを陥れる罠!?

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みきファンA  @MikiFanA                        XX年XX月XX日
@mikinanoブラックウェルマジ許すマジ!!!

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アーテルプテウス @Aterputeus                                XX年XX月XX日
@Mamiiiツイッターで拡散されてるらしいけど、なんかブラックウェルに詐欺行為されて大変らしいですね。

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まみファンA  @MamiFanA                        XX年XX月XX日
@Mamiiiえぇ→ 兄(C)チョー心配だョ→→  詐欺とかヤバス

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天海春香 @AmamiHaruka                                    XX年XX月XX日
うわー! 皆さん大丈夫です! 765プロが倒産するとかそういう話じゃないですから! それにわたし、今の事務所
が大好きですから、実はちょっとホッとしてたり(^_^)

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はるかファンA @HarukaFanA                       XX年XX月XX日
@AmamiHarukaよかった、傷ついた春香さんなんていなかったんだね…

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??「……」カタカタ、タン


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ノワールピュイ @Noirpuits                                  XX年XX月XX日
@AmamiHarukaそういえば、ブラックウェルに961プロの黒井社長が関わってるって聞いたんだけど。もしかして今度
の件は961プロの妨害工作では!?

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シュヴァルツブルンネン @Schwarzbrunnen                XX年XX月XX日
@AmamiHarukaそういえば確かに……。一時期961プロが765に妨害工作してたって噂がありましたね。もしかして今回
の事も961プロダクションの陰謀なのでは?

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??「……」カタカタカタカタ






ネーロポッツオ @Neropozzo                                  XX年XX月XX日
@Ganaha_hibikiニュースでやってましたが黒井社長が関係しているそうで。961の陰謀!? そこのところどうなん
です!?


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我那覇 響 @Ganaha_hibiki                       XX年XX月XX日
@Neropozzo今回の事は自分も怒ってるんさー! ぜーったい961プロの仕業に違いないぞ!

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チョールヌイカローディツ @ChyornyhKolodets                XX年XX月XX日
@mikinanoそういえば、ブラックウェル=961プロってどこかで見たんですけど、今回のことは961プロが悪意をもって
765を嵌めようとしているということなのでしょうか!?

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星井 美希  @mikinano                         XX年XX月XX日
@ChyornyhKolodetsむずかしいことはよくわかんないけど、きっとそうだって思うな(^-^)

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アーテルプテウス @Aterputeus                                XX年XX月XX日
@hutami_mamiツイッターで見たけど…、ブラックウェル=961プロ? だったら961プロが765プロに詐欺行為をした
ってことになるわけ? 酷いなー。

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双海 真美  @Mamiii                          XX年XX月XX日
@Aterputeusそ→そ→!!サギだょサギ!!マヂぃみわヵんないYO!!!ヽ(`ε´ )ノ 961わ悪いヤツだョ→→
!!!`(`д´)ノ cho→厶ヵツ勹→→!!

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??「ククククク! 三流プロダクションの底辺アイドルどもめ! まんまと私の罠に引っかかりおって!!」カタカタ



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天海春香 @AmamiHaruka                                    XX年XX月XX日
@Noirpuitsぼ、妨害工作ですかー!? …実はそうなんです!(嘘`Д´嘘)

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天海春香 @AmamiHaruka                                    XX年XX月XX日
@Schwarzbrunnen実は961プロの陰謀なのだー!(゚ロ゚〃)   …なーんちゃって♪

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??「フハハハハハハハハハハ!!! チェックメイトだ765プロ! 今度こそこの私が! 黒井崇男が!貴様らの息の根
   を止めてやるぅ! 待っていろ高木と不愉快なゴミどもよ!!」












黒井「ククククク、フハハハハハハハハ!!! ハーッハッハッハッハッハ!!!!!」








古美門事務所//


ギィイイ、ギャャァアアア、ビイィィィイィン


黛「んん~……」ピピピ [TV]音量:||||||



ギギガカガ゙ガ、ジジジジャギ~


黛「むむむむ!!!」ピピピピピ [TV]音量:|||||||||||||||||


ギャルギャル~ン、ゴゴギャギギギギ



黛「うぬぬぬぬぅ~~!!!」ピピピピピピピ [TV]音量:||||||||||||||||||||||||||







古美門「うるさぁああい!!!! 私の長閑な午後のひと時を邪魔するんじゃなあぁい!!」

黛  「なぁにが『長閑』ですか! そんな公害クラスのバイオリン鳴らして!!」


古美門「ふっ、貧乏底辺のクソ音痴にはこの芸術性がわかるまい。この美しく澄んだ、小鳥たちの歌声
    のような素晴らしい音色が……! まさに天才がうみだした芸術的音色!
    というか早く音量を下げろ!! すこぶるうるさい!」

黛  「はいはい」ピピピピピ  [TV]音量:||||


古美門「全く、今邪魔した瞬間にも音楽史に残る名曲が生み出せたかもしれないのに。
    これは人類の損失だ。君はつくづくろくなことをしないねぇ」

黛  「生み出せるわけないじゃないですか。まともに成長してないくせに」

古美門「これだから素人は。だが天才故に、成長に苦しんでいることだけは認めよう」

黛  「じゃあお止めになったらどうです?」

古美門「まさか。この原因は私が未だ伏龍、眠れる獅子であり続けているからだ。もっと多くの人間に聞いてもらい
    もっと多くの人間の賞賛を受け、私の才能はより研ぎ澄まされていく。今の私に足りないのは、そう、よい
    感性を持った上品で音楽的才能に恵まれた観客たちなのだよ」

黛  「服部さん! どう思います!?」

服部 「私ですかな? えぇ、そうですね。客観的な視線というのは芸術の進歩に欠かせないものだと思いますが」

古美門「ほ~らみろ~」

黛  「納得いかない……!」

古美門「そうだ。どこかの大手芸能プロダクションに所属してやろう! 私の音楽を世間に知らしめるのだ~!」

黛  「芸能界はそんなに甘くありません! 音楽というのはあんな騒音じゃなくて……、! そう!
    彼女たちの歌みたいなことをいうんです!」ビシッ

古美門「なにぃ?」ジロッ


   [TV]<アーユレディ、アイムレイディ!ウターヲウッタッオー!


古美門「おいおい! あんな芸術のいろはも知らないようなガキどもが歌う、量産化された歌のどこがいいというんだ
    まったくもって話しにならないな。こんな音で私の音楽を掻き消そうとしていたなどとは笑止千万だぞ黛ぃ」

黛  「彼女たちいいじゃないですか! 765プロですよ! 今をときめくトップアイドル達ですよ!」

古美門「フン! どうせ業界がゴリ押しした単発消費型のガキどもだろう。これはやはり日本のこれからの為にも、
    この古美門研介が、大衆に本当の音楽というものを啓蒙してやる必要があるようだ」

黛  「先生には彼女たちの良さがわからないんでしょうね!」

古美門「愚問だねぇ。私が認める音楽は後にも先にも、崇高なクラシックと柊しずかだけだ。騒音を音楽と称する貴様らとは違い、
    私には音楽の才能があるから、本物の『音楽』を聞き分けられるんだよ」

黛  「例え100歩譲って、いや、1000歩譲って、いや10000歩譲って、……本当は譲りたくないですけど、    
    もし譲ったとして、先生に音楽の才能があったとしても、先生は彼女たちに遠く及びませんよ!」


黛  「例え100歩譲って、いや、1000歩譲って、いや10000歩譲って、……本当は譲りたくないですけど、    
    もし譲ったとして、先生に音楽の才能があったとしても、先生は彼女たちに遠く及びませんよ!」

古美門「何がだねぇ? この、見た女子全てが即座に失禁してしまうほどのダンディな肉体とフェイス。声優をすれば
    間違いなくエースパイロットとして異星体をバンバン撃破していく主人公になれるようなヴォイス。プロも
    顔負けのキレッキレのダンス。何が劣るというのか」
    
黛  「その自己評価もどうかと思いますけど、それよりも先生はTVに出る者としてのオーラが禍々しすぎます!
    淀みすぎなんですよ。その点見てください、ほら彼女たち! キラキラしてるでしょう? 先生みたいに
    最悪で最低な性格してなさそうでしょう? 綺麗な澄んだ目をしているでしょう!? これですよこれ! 大事なのは!」

古美門「黛君、君はあの子役、安永メイをもう忘れたのか? 彼女は清廉な性格をしていたかぁ~?」 

黛  「うっ」


古美門「いい加減気付け。芸能界に生きる子供など腹黒サンボな輩しかいないのだと。生き馬の目を抜く芸能界。
    頼れるものは自分の体と才能、そして源泉徴収票を計算する力だ。キラキラした良い子なんていないのだよ」

黛  「先生は彼女たちを知らないからそう言えるんです。彼女たち最近よくTVに出ていますが、ほんっと良い子たち
    ですよ! そんなことは絶対にありえません」

古美門「君こそ何を知っている? 間違いなくあの小娘たちだってそうさ。ファンの前でこそキラキラしてるが、
    舞台裏じゃ何やってるかわかったもんじゃないぞー。画鋲にカミソリ。衣装を汚したり、誹謗中傷したり。
    年頃の小娘どもが集まれば派閥の一つもできるだろう。ならばあとはもう戦争だ。
    煌びやかな舞台からでは想像もつかないドロドロとした陰湿な争いだー」

黛  「もう! 先生はどうしてそう人間を悪い方へ悪い方へとしか考えられないんですか!? 見てくださいよ、
    彼女たちの目! ほら! ほら!」

古美門「う~るさい。それ以上喋ったらクビだ! どうせこいつらだって裏じゃあやることやってんだ。
    喫煙、飲酒、枕に麻薬。もしくは訴訟をくらって引退、なーんてことにならなきゃいいがなぁ~」

黛  「最低! 彼女たちはきっといい子です」

古美門「はいクビー! お前クビー! 喋ったからクビー!」

黛  「まだ正式に復帰してないですよーだ!  ……っと」トゥルルルル


ピッ!


黛  「はい、お電話ありがとうございます。私、古美……、あ、いや、まだ、ネクサス法律事務所の黛です。
    あ、いえ気にしないでくださいこっちの話です。……はい。はい、訴訟された、と。相手企業から……。
    はい。失礼ですがお名前は? はぁ、765プロダクションの高木社長……。……」
    

黛  「……って、765プロ!?」

古美門「!」

黛  「えっと……」

古美門「……」ニヤニヤ

黛  「……くっ!」

古美門「どうやら訴訟を食らって引退説が濃厚なようだな。やはり例にもれず糞ガキだったわけだ」

黛  「あぁーもう! どうしてこうなるのー!」ガシガシ




高木『あの、聞こえてるかね? もしもし? もしもーし?』


765プロ//

高木 「……と、言うわけなのだよ」

黛  「なるほど、つまり所属アイドルたちがライバル企業の悪評をツイッターで書き込んでしまい
    それを理由に名誉棄損で訴えてきている、と」

高木 「その監督責任を追及して我が765プロに慰謝料を求めてきているんだ。
    これが訴状だよ。幸いまだ提出はしていないようだが、黒井は留める気はないらしい」

黛  「拝見させていただきます。 ……慰謝料3千万、ですか」

古美門「随分とまぁふっかけてきましたねぇ。無論、ここから段階的に下げていくのでしょうが」

高木 「どうだろうか。おそらく奴は、あぁ、961プロの社長の黒井という男は、慰謝料が欲しいのではなく、
    経済的に765プロを追いつめるために裁判を起こしたのだと思うよ」


黛  「それは一体どういう……?」

高木 「黒井とは昔、同僚でね。だが一度決裂してしまって以降、ライバル同士、というより敵同士になってしまって。
    ここ最近も、わが社はたびたび961プロの妨害やいやがらせを受けてきたんだ」

古美門「いやがらせ目的の訴訟ですかー。随分と恨みを買っているようで、はははは」

黛  「笑い事じゃないです! こんなのは司法の濫用ですよ! しかも社会的責任のある大企業が……。
    こんなことはあってはならないことです!」

古美門「だが実際にあってしまったんだ。仕方ないじゃないかー。どんなに不条理なことでも、起こってしまっては、
    何としてでも守るしかないんだよ。高木社長。お任せください。961プロダクションには寝言ひとつ言わせません。
    完膚なきまでに返り討ちにして差し上げましょう!」

高木 「おぉ! よろしく頼むよ!」


古美門「つきましては報酬の件なのですが、」


黛  「先生! 今回の裁判は司法の正義のための裁判です。高木社長、お値段のの方は非常にリーズナブルに――」

古美門「黙っていろポンコツ蟹股クソ音痴! いいか? 盾はタダじゃないんだ。無傷で済むには金が要るんだ。
    そして最強の盾にはそれ相応の対価が必要なんだ! 社長、961プロは大企業です。それなりの弁護士を
    用意してくることでしょう。並みの弁護士ならば3千万は持っていかれます。ですがこの最強弁護士古美門
    ならば完封できます。お値段は本来奪われるはずだった3千万の、半額! 1500万でいかがでしょう?
    悪い話では、ないのでは?」

黛  「この金の亡者! 先生こそふっかけすぎです」

古美門「アイドル業界はイメージが第一でしょう? それを守れるならば1500万など安いものではありませんかー。
    なぁにこれだけ新進気鋭のトップアイドルを抱えているんです。資産の方も相当抱えていらっしゃるのでは?」

黛  「こんの……!」


高木 「それが……、お恥ずかしいことに、わが事務所の金庫はいまスッカラカンでね」

古美門「はははははご冗談を。ならば仕方ない1000万におまけいたしましょう、わーははははははは」

高木 「いや、本当にないんだ」

古美門「ははははは……、はぁん?」



黛  「失礼ですが、そんなに苦しいんですか?」

高木 「いやね、資産は確かに、彼女たちが頑張ってくれたおかげで、ついこの間まではあったんだが……、
    新事務所に移転する契約を建築会社としたんだ。その会社がブラックウェルカンパニーという会社で……」

黛  「ブラックウェルって……、最近ニュースになっていたあの会社ですか!? 計画倒産で詐欺を行った疑いのある……」

高木 「見事に騙されてしまって……」

黛  「しかもよく考えたらブラックウェルに961プロダクションの社長が関与しているってワイドショーでやってましたよ。
    じゃあなんですか!? 彼は自分が実際にやったくせに、それを名誉棄損だと訴えてきてるわけですか!?   
    妨害工作に詐欺行為、いやがらせの訴訟、最低最悪のクズ人間ですね!」

高木 「まぁ、多分実際に彼が嫌がらせのために行ったのだと思うよ」

黛  「こんなこととは絶対に認められてはいけません! これがまかり通ってしまえば日本の司法制度の崩壊ですよ!
    古美門先生! 絶対に悪徳企業の961プロを倒しましょう! ね! 先生……、先生?」

高木 「彼ならついさっき、席を立ったが……。トイレではないのかね?」




黛  「……、まさか!」


古美門事務所//


バタン!  ドスドスドス

服部「黛先生、おかえりなさいませ」                     

黛 「服部さん、古美門先生は戻っていらっしゃいますか?」

服部「古美門先生ならば先ほど帰ってこられて、お庭でバイオリンの準備をなさっていましたが」

黛 「ありがとうございます、服部さん」



古美門「うーん、いい天気、いい日差しだぁ。やはりあの時向かいのビルの建築予定を叩き潰したのは
    正解だったわけだ。さて、それじゃあ今日はタイスの瞑想曲でも奏でるとしよう」スッ

ギャアアアアン、ゴガギグギャ ギャオオオオオン




黛  「こらああああああああ!!!! 古美門おおおお!!!!」バァン!




古美門「下品な音で机をたたくな、私のバイオリンの邪魔をするな、呼び捨てにするな。
    以上、スリーアウト。バッターチェンジ。君はクビだ。お疲れ様」


黛  「だからまだ正式に復帰は……! じゃなくて、先生!」

古美門「なんだね?」

黛  「なんだねじゃないですよ! なんで話が終わってないのに途中で抜け出してきてるんですか!?」

古美門「抜け出してなどいない。私は話の途中で帰っただけだ」

黛  「一緒ですよ!」

古美門「一緒じゃないさ~。君のは私に話を聞く責任がある前提の言葉だ。私は契約の意思を放棄した、
    ただそれだけのことだ。契約を結びさえしなければ何人たりとも自由なのだよ」

黛  「やっぱり請け負わないつもりですね!」

古美門「当・然・だ! 私は馬鹿とガキと貧乏人が大嫌いなんだ! 金が無いくせに自分の事務所の馬鹿なガキが
    起こした不始末を庇えなどとは強欲甚だしい」

黛  「強欲は先生でしょう!? あのままだと765プロは倒産に追い込まれてしまいます!」

古美門「いいんだよー。勘違いした馬鹿のたまり場が減って良いこと尽くめじゃないか。公共の福祉だよ。
    金もない馬鹿を救おうなどというは、自分が女神かなにかと錯覚したボランティアに任せておけばよろしい」

黛  「ご安心を。話は受けてきましたので」

古美門「なぁんだって!?」

黛  「765プロの件、正式に引き受けましたので!」

古美門「君という奴はつくづく馬鹿だな。一度募金ボランティアと称して大金を持ちヨハネスブルグに行ってくる
    といい。現実を知り、少しはマシになるだろう」

黛  「つきましては先生にも参加していただきますので」

古美門「なんで私がそんなごみのような仕事を受けなければならない。君一人でやりたまえ」

黛  「言うと思っていました。ご安心を。古美門研介を幾度となく法廷で追いつめた私が、この手腕をとくと
    見せてあげますよ」


古美門「その手には乗るか」

黛  「チッ……」



古美門「それに私には別件の仕事があるのだ。そんなゴミ事務所のクソ依頼に構っている暇はないんだよ」

黛  「別件の仕事?」

古美門「金になる仕事だよ」




服部 「古美門先生、例のお仕事のお電話です」


古美門「すぐに行きます。と、いうわけだ、黛君。せいぜいボランティア、頑張りたまえ?」スタスタスタ

黛  「うぬぬ……」



古美門「はいはい、お電話変わりました、最強無敗弁護士こと古美門研介です。……はい。はぁいそれは勿論。
    報酬の方も、……わははは羽振りがいいですねぇ! わはははは!」




 ※補足:[ちなみに黛がまだ古御門事務所に復帰してないっていう設定は、
     ドラマの最終回で古御門先生が了承を明言しなかったこと。
     後、羽生・ジェーンの二人が抜けた後、磯貝が新しい弁護士たちを連れてきた時に
     まだ黛の紹介写真が飾られていたことからとりました]

765プロ//


黛  「と、いうわけで古美門の了解は得られませんでした……。ですが! 私が精一杯頑張ってこの
    765プロを守りますので、みなさんどうかよろしくお願いします!!」


一同 「「おぉおおお!!」」


春香 「よろしくお願いします!」

やよい「うっうー! がんばりますー!」

千早 「誠実そうな人で安心したわ」

亜美 「あんな最低の961プロなんてコテンパンにやっつけちゃってYO→!」

真美 「やっといて訴えるだなんて首の皮があついよね→!」

貴音 「真美? それをいうなら面の皮です」

響  「自分、間違ったこと言ってないぞ!」ハム蔵「チュー!」

真  「正義は僕たちにあり、だね!」

雪歩 「こんな私ができることなんてあんまりないですけど、よろしくお願いしますぅ……」

美希 「こんなことでハニーと離れ離れになるなんて絶対にヤ! 頑張るの!」

あずさ「私もこんなことで皆と別れることになるなんて嫌よ~」

伊織 「この765プロにケンカ売ったこと、絶対に後悔させてやるんだから!」


黛  「頑張りましょう!」


一同 「「おおーっ!」」



律子 「まさかここまでしてくるとは思わなかったけど、やられたからにはやるしかないわね」

P  「すまん。俺がもっと警戒していれば……」

小鳥 「プロデューサーさんのせいじゃありませんよ」

律子 「そうですよ! 明らかに向こうの卑劣な罠じゃないですか、こんなの!」

黛  「全くです。こんな裁判、起こったこと自体がまず憂慮すべきことです。絶対にまけません」

高木 「君には期待しているよ、黛君」

黛  「はい!」

高木 「これは彼がいないから言うのではないんだけどね、実は、君のことを一目見た瞬間から、
    ティン、ときたんだよ。君ならばやってくれる、とね」

黛  「はぁ、ティン、と?」

P  「社長の人を見る目は凄いんですよ! ティンと来たときはいつも凄い人だとか」

高木 「ははは、君のときも、ティンときたんだよ」

小鳥 「プロデューサーさんもウチにはなくてはならない有能な人物ですものね。社長の目は確かです」

P  「弱ったなぁ、そういう意味で言ったんじゃないのに」

律子 「全く、もう少し自信を持ってくださいよ。今後の困難を切り抜けるためにも、頼りになるプロデューサー
    が必要なんですから」

小鳥 「そうです、もっとどっしり構えていてください」

P  「そ、そうかな」


高木 「ま、というわけだ。なので、君にはとても期待しているんだよ。手伝えることがあれば何でも
    言ってくれたまえ。事務所総出でお手伝いするよ」

黛  「はいっ! 絶対にご期待にお応えします」

P  「よしっ! 皆も頑張って、絶対に961なんかに負けないぞ!」

春香 「765プロの絆を見せつけましょう」

亜美 「ほらほら~、マチコお姉ちゃんも一緒に入って!」

黛  「え? 私? いいんですか」

真  「勿論! これから一緒に頑張っていく仲間だからね!」

黛  「はいっ!」



美希 「春香が『765プロ~』、っていうから皆で『ファイト~』っていうの」

黛  「大丈夫です! いつもTVで見てました」

雪歩 「えぇっ! ありがとうございます!」

春香 「それじゃあいくよー! 765プロ~~!」





全員「「ファイ――」」


             バタン!!


P  「!?」



黒井 「やぁやぁ底辺プロの三流アイドルとゴミプロデューサー諸君。朝からうるさいことだ。近所迷惑ではないかね?」



高木 「黒井……」

黒井 「おおっと、高木ぃ。いたのか。私を恐れて夜逃げしたのではないかとヒヤヒヤしていたよ」

律子 「なっ、社長はそんな人ではありません!」

響  「そうだぞー! 黒井社長とは違うんだぞー!」

黒井 「私が!? 逃げるぅ!? 何を馬鹿な! 王者とは、全力を以って立ちはだかるものをうち倒し、駆逐するものだ。
    そこな弱小社長とはわけが違う!」

貴音 「ところでこちらへは何を? まさかそのような戯言を言いに来たわけではないでしょう」

真美 「そうだYO→! 真美たちは忙しいんだよ→!」

美希 「そうなの! いつもヒマしてる黒井社長とは違うの!」

黒井 「これはこれは、随分と酷い言葉を浴び去られるものだ。これは更に請求額を上げるしかないなぁ」

やよい「うぅ……」

千早 「……下衆ですね」

黒井 「んん!? 今さらに何か聞こえたぞ!? 更にアップだ!」


黛  「お言葉ですが961社長そのようなことで名誉棄損の賠償額は上がりませんが?」



黒井 「……君は誰だね?」

黛  「申し遅れました。私、今回765プロダクションの弁護士を務めさせていただきます黛 真知子と申します」

黒井 「フン! 聞いたこともない名前だな。三流事務所にお似合いの三流弁護士というわけだ」

黛  「どうとでも捉えてくださって結構。黒井社長、あなたのやり方は司法を侮辱しています」

黒井 「なぁにぃ?」

黛  「そもそも名誉棄損罪の成否を変えるのは、受けた言葉などにより客観的社会的に被害を被ったかということが
    重要なのです。今のような会話では当然問題とすることは出来ませんし、あなたもこちらを侮辱する発言をしており、
    不当に名誉を汚されたとは到底言い難いです」

黒井 「フン。三流弁護士が」

黛  「私はあなたのように司法を不当に振りかざし、無実の人々を傷つける人間が大嫌いなんです。真実を法廷で明らかにする
    つもりですので、どうぞご覚悟を」

雪歩 「黛先生……!」


黛  「彼女たちを不当に強迫することは私、黛が許しません。ご用件は私がお伺いしますが?」

黒井 「くっ……!」


真  「黛先生かっこいい!」
やよい「黛先生ー!」
伊織 「にひひっ! よくやったわ! 良いざまね黒井社長?」


  わいわい がやがや


黒井 「……くく、くくくくククククク」





黒井 「ダーッハッハッハッハッハ!!!!」




P  「……どうしたんです?」


黒井 「ククク、『許さなぃ』? 『ご覚悟をぉ』? よくもまぁこんな口だけ達者な馬鹿を呼び寄せたものだなぁ高木ぃ」

高木 「なんだと……?」

黒井 「いやいや、実に、君たち弱者にふさわしい弁護士だよ」


小鳥 「何を――」


黒井 「そしてぇ! 私も王者にふさわしい弁護士を用意したよ。立ちはだかろうとする敵を完膚なきまでに、木端微塵に
    してみせる、王者の剣を用意したぁっ!! 入ってきたまえ!!」




ガチャ





古美門「どぉーーうも、この度961プロの代理人を務めさせていただきます、古ぉ美ぃ門ぉ研介でぇす!!!」




高木 「!?」

黛  「な、ななななな……」


黒井 「これまでの裁判は連戦にして無敗。まさしく無敵の王者にふさわしい弁護士ではないかね? なぁ古美門くぅん!」

律子 「無敗……」

雪歩 「あの人って、安藤貴和の裁判の……」

伊織 「おもいだした! あの悪人弁護士!」

古美門「安藤貴和の裁判に居たのはそこの黛も一緒だ。ただし貢献度は塵に等しかったがねぇ。勝ったのはすーべーてー、私の手腕だ」


黒井 「古美門君、君の力、そこなガキどもに見せつけてやれ」

古美門「ご随意に。――黛弁護士?」

黛  「えぇ? あっ。えっ?」


古美門「あなたは先ほど黒井社長が765プロのアイドルたちによって心無い罵詈雑言を受けていたことに対し見解していたが、
    君は些か法律の勉強を怠っているようだ」

黛  「えっ?」

古美門「彼女らの行為は名誉棄損罪にこそ抵触しないとはいえ、侮辱罪が適用され、十分に不法行為と言えよう。損害賠償を上げる
    には十分な材料ではないかね?」

黛  「なっ、侮辱罪も判例の基本は社会的損失があったか否かであって……」

古美門「個人の感情をもとにする見解もある! それに彼女らが黒井社長の心を言葉で傷つけたことにより黒井社長の名誉感情は
    著しく傷つけられました。よってここに黒井社長の人格権が侵害されたとみるのが相当であり、不法行為の成立を申し
    立てるものであります!」

黛  「めちゃくちゃですよ! そこの黒井社長ヘラヘラしてるじゃないですか!」

古美門「いいえ、表情からは読み取れませんが、心の中ではとても傷ついていらっしゃいます。そうですよね黒井社長」






黒井 「ウィ」


古美門「ほーらー」

黛  「馬鹿にしているんですか!?」

古美門「馬鹿にしてなどいない!」


黛  「こんなことで不法行為に認定されると思わないでくださいよ!」

古美門「そんなことは問題ではない。この事務所では、いつも日常的に不法スレスレの行為が繰り返されていた、というのが
    問題なのだ。よって今回のツイッターによる案件において、彼女らに情状酌量の余地はなく、客観的に見ても、彼女たち
    がいつものようにして意図的かつ不当に黒井社長を乏しめた、と考えるのが妥当ではないでしょうか!」

黛  「減らず口を……!」

黒井 「すばらしい! すばらしいぞ! 古美門君!」

古美門「今回の行為、黒井社長はとても心を痛めていらっしゃいます。が、彼はとても心優しい方です」

美希 「どこがなの」

古美門「本来、弁護を予定していた前の弁護団は賠償額に3000万を予定していました。しかし! 私は黒井社長が本来の被害をひた隠し、
    優しい心故に、今回の件を小さく収めようとしているようにしか見えなかった。ですから! 私が黒井社長の代理人にとって
    かわり、黒井社長に正当な賠償額をもたらそうと思った次第です」

律子 「正当な賠償額?」


古美門「私が被害額を再計算し、社長と協議を重ねてまいりました結果、訴状を改めることになりました。幸い前回の分は提出して
    おりませんでしたので容易でした。今回の分が決定稿です。既に正本は裁判所には提出しました。どうぞ高木社長」ピラッ

高木「何々、……!?」

P 「なっ!?」

黛 「見せてください。……んなっ!」



古美門「原告の名誉棄損に対する慰謝料。および、その件によって引き起こされた961プロダクションの株価下落。
    および、人材流出、本来得られるはずだった業界内での仕事量の低下分エトセトラエトセトラ……これら全てを合わせて、」
















古美門「 1 億 円 を、765プロダクションに請求するものであります!!!」









    テッテレー、 テッテレレーレレー、



黛  「」キッ!


古美門「」ニヤリ




    テッテレー、 テッテレー、レレ!  





古美門「……765プロで、はじめての裁判♪」







        キュィーーーン



  ______________
 ● BGM :【 9nine / Re: 】
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





もいっかい! いいかな もうこーわーがったーりしなーいーよ
まきっかえす! チャンスは、あーるーでーしょー


しぃっぱい! したぶーんは せいかいーにちかづくーって
え ら い!  ひともいーいってたよー


リリリリリー、ジブンリ、ス、ターート


  





           リーガル・ハイ × アイドルマスター



               『リーガル・マスター』






裁判所//




裁判長「起立」





>>>>>>>>>>>> 765vs961裁判 開廷 >>>>>>>>>>>>>>





黛  「――このように、原告は、被告の765プロに計画倒産を行なって多大な損害を与えたブラックウェルカンパニーの
    4割の株式を持つ大株主でした。961プロと765プロの不仲は一部では有名な話となっているほどですので、
    今回の件で結びつけてしまうのも致し方ない状況にありました」

高木 「うむ」

黛  「また、現在TVや雑誌など、より影響力をもつ多くの会社が黒井社長の関与を報道している中で、
    ツイッターに書き込んだ文章に特段の影響力があったとは思えません」



裁判長「では、原告代理人」


古美門「確かにブラックウェルと961プロダクションの関係はあちこちで疑われています、が! その証拠は
    まったく出ていません。証拠もなく黒幕に仕立て上げられたことこそが名誉棄損だと言っているのです」

黒井 「ウィ」

古美門「また、以前より、961プロと765プロの不仲が噂されていたのも事実です。しかしそれ故、そんな噂の土壌があるうえで、
    そこにブラックウェルと961プロの両方に密接なかかわりを持つ765プロの発言は、重要な意味を持つのです」

古美門「事実、一部週刊誌には本件のツイートが掲載され、ツイート自体もまた拡散されています。

    
  
 バサッ


古美門「こちらの提出いたしました資料に書かれている通り、週刊文集、週刊新朝、週刊朝目に週刊古代。
    その他にも有名無名問わず、計13社の雑誌社が今回のツイートを記事にしております、また……」

   バサッ



古美門「


一般人A @IppanA                                     XX年XX月XX日
【拡散希望】
・961=ブラックウェルカンパニー!
  ・765プロが961プロに騙されて大損害を与えられた!
  ・961は詐欺師の悪徳企業!
  ・961プロとスポンサーに電凸求ム!
  ・詳しくは2chの『961プロの電凸する統合本部』まで!

開く                        ←返信 ↑↓リツイート ★お気に入りに登録 …その他



と、このような扇情的なツイートまで拡散する始末。しかも今なおこの文句のツイートは拡散され、2ちゃんねるでは
スレッドが乱立し、ネット雑誌問わず多くの人々が目にしてしまっており、深刻な社会的名誉棄損につながっています。
株価も下落し、一部アイドルや社員が辞め、961プロは危機的な状況にさらされております」




古美門「つまりこれはこの発言が影響力があった証であるのです。以上の事から、ただの勘違いでは済まされない状況にあり、
    このツイートが深刻な負の影響力を持つ名誉棄損行為であると断定できます!」





765プロ//

黛  「チッ、あの横わけ……!」

P  「あ、荒れてますね……」

黛  「え? あ、いえ。すみません」

律子 「やっぱり、厳しいんですか?」

黛  「いえいえ、まだ始まったばかりですので。今日の反論も、まぁ普通でしたね」

律子 「彼の事、気になってネットで調べてみたんですけど。出るわ出るわ、で。
    かなり有名な裁判をいくつもこなして、それでいて生涯無敗だなんて……。後、性格が悪いとか」

黛  「違いますね。人類史上例をみないほど最悪に性格がねじ曲がって悪い、ですね」

P  「なんだか黒井社長と似通ったところがありそうだ……」

黛  「そうそう! びっくりしましたよ。あんな劇がかった口調で嫌味を発せる人、私今まで2人しか知りませんでしたから」

律子 「まだほかにもいるんですね……」

黛  「えぇ、ちなみにその人は私の中で『女・古美門』と呼ばれています」



小鳥 「黛先生、お茶です」コトッ

黛  「ありがとうございます」

小鳥 「ところで何かお伝えしたいことがあるとおっしゃってましたが……?」

黛  「あ! そうですそうです。今日の簡単な報告と今後についてです。社長には裁判後に報告してあります」

P  「今後について、ですか?」

黛  「今日の裁判は、比較的静かなものでした。証拠も弁論も、まぁ普通でした」

律子 「普通、というのは?」


黛  「あの人が今まで無敗で勝ってこられたのは、普通じゃない手段を使うからです。予想もつかない異次元からの攻撃こそが
    古美門先生が無敗でいられた秘訣なんです」

P  「異次元の?」

小鳥 「攻撃?」


律子 「それはつまり、何か搦め手を使ってくる、ということでしょうか?」


黛  「そうです。今回の裁判、早くも証拠が尽きかけています。そしてどれも決定的なものになっていない。
    今後の証人尋問が大きなカギを握ってくるはずです」

黛  「そして証人尋問で、大きな争点となるのが……」







黛  「961プロの妨害があったか否か、です!」

-------------------------------------------------------------------------------------

古美門「765プロの妨害があったか否か、です!」



961プロ//

黒井 「ほほう、765プロの妨害だと?」

古美門「正確に申し上げれば、いかに765プロが961を貶めようとしているか。それがわかればこの裁判我々の勝ちです
    裁判長の悩みの種は、いったいどちらがいじめっ子なのか、ということです」

黒井 「フン、奴らが悪意を持って我々を乏しめている、という筋書きにすれば良いわけだ」



古美門「今回は証拠に裁判の行方を変える決定的なものは出ていません。裁判長も随分と迷っている様子でした。
    ならば左右するのは証言です。奴らが961プロを貶めようとしているとわかればよいのです。

古御門「それは今回の件に限らず、彼女たちが普段から嫌がらせをしてきたり、日常的に悪意をもって責めて来たり。
そういった証言のひとつが、今回の大きな点数となるでしょう」



黒井 「なるほど、分かりやすいじゃないか。正義と悪が、くっきり分かるわけだ」

古美門「その通り。そして幸いなことにツイッターの件からして、基本はこちらが有利。我々は相手の反論を切り崩していくだけで十分。
    しかし念のために、トドメの証言を用意すればいい」

黒井 「ほう、そんな都合のいい証言、心当たりでもあるのかね?」


古美門「愚問ですね。それは勿論――」

765プロ//


小鳥 「作る、ですか?」


黛  「はい、彼は恐らく足りない証言や証拠をを無理やりにでも引っ張り出し、作ってくるでしょう」

P  「作るったって……、どうやって?」

黛  「例えば、事務所に侵入して不利になる証拠をねつ造したり、とかですね」

P  「そんな! 犯罪じゃないか!」

黛  「それをやってのけるのが古美門です」

律子 「参ったわね……。戸締りの徹底、だけじゃ足りないのかしら」

黛  「えぇ。そしてもっと恐るべきは、証人の買収・強迫です」

小鳥 「……彼こそ訴えられるべき人間なんじゃないでしょうか?」

黛  「同感です」


P  「証人、ってことは。今回で言うと……」

律子 「アイドルたち……、ですね」


黛  「とにかく! 961プロから妨害を受けたという証拠をさかのぼって探して集めましょう。後、その証拠の保管の徹底と、
    アイドルたちに注意喚起です。今日から知らない人を見かけたら注意するように、と」

P  「それは強迫してくる奴ってことですか? やくざかな……?」

黛  「やくざではないんですけど……。『蘭丸くん』という若い男性です。古美門研介の諜報員で、彼が裏で暗躍して
    勝った訴訟も数えきれないほどです。今日以降初めてであった男性には注意するよう、皆さんに言っておいてください」

P  「蘭丸、ですね。はい、わかりました注意徹底させます」

律子 「まぁ元々あの子たちはアイドルだから。そういう所は大丈夫だと思うけど」

黛  「そうだといいんですけど……」

小鳥 「じゃあ、とりあえず皆にメールで送っておきますね! ……ところで、黛先生? これから皆で飲みに行く予定なんです
    けど、一緒にいかがです?」


黛  「あ、いえ。すみません。日課のサンドバッグ打ちがあるので、失礼いたします」

P  「(サンドバッグ打ち?)」 

律子「(法曹界の隠語かなにかかしら?)」

小鳥 「? そうですか、それではお疲れ様でしたー」

黛  「えぇ、お疲れ様でした。くれぐれも気を付けてくださいね!」



小鳥 「わかってます、大丈夫ですよー。……。じゃあ、皆さん。たるき亭に行きますか」

P  「これから忙しくなりそうですからねー。景気づけに一杯!」

律子 「全く、なんでこんなことになったのかしら」

P  「大丈夫、俺達ならきっと乗り越えられるよ」

小鳥 「そうですよー」

 
 
 ガラガラ



小鳥 「すいませーん、3名お願いしまーす」




?? 「はーい、こっちの席空いてますよー。っておお! 小鳥さん! お勤めご苦労様です」

小鳥 「あ、淳之介君。いつもよく頑張ってるわねー。大学と夜勤って疲れない?」

淳之介「いえいえ、若いんでラクショーっすよ。小鳥さんほどじゃないですけど」

小鳥 「もう! 口がうまいんだからー!」

P  「その体力を俺も分けてほしいよ」

淳之介「いやいやPさんの体力には勝てないっすよー! Pさんみたいな人になりたいくらいで」

律子 「将来ぜひうちに来てほしいわね。体力も人懐っこさも、プロデューサー向きよ」

小鳥 「というか淳之介君ならアイドルにもなれそうよね」



淳之介「ちょっとちょっと皆褒めすぎっすよー! あ、注文いいすか?」

P  「とりあえず生ビール3つと、枝豆と、から揚げ」

淳之介「あ、今日店長がいいホッケ仕入れたらしいんでマジおすすめです」

P  「じゃあそれもヨロシク」

淳之介「へーい! んじゃ、注文通してきまーす!」



P  「いつもながら、なんていい青年なんだ」

小鳥 「見ているこっちが気持ちよくなるくらいですね」

律子 「あ、そうだメール送っとかないと。えーっと、怪しい男を見つけたら報告、っと。
    名前は……。えーっと」

P  「『蘭丸』だよ。悪徳弁護士の諜報員だから、きっと相当悪い奴に違いない」



淳之介「みなさーん、生ビール3つでーす。つまみは店長が作ってるのでちょっと待っててねー。
    あ、代わりといっちゃあなんだけど、これ、良かったら食べてください。俺が作ったお通しです」

P  「へー。あ、旨いな、これ!」

小鳥 「凄いわ。料理もできるのね。お婿に来てほしいくらい」

律子 「でもこれ見たことない料理だけど、創作料理なの?」




淳之介「そう! 名付けて『加賀スペシャル』っていうんだ!」




                      



765プロ//

黛  「なるほど、じゃあこのザテレビチャンの雑誌の表紙を差し替えるよう黒井プロから圧力があった、と」

P  「はい」

春香 「いい写真だったのにね……」

真  「ねー」

伊織 「あの時はこらえたけど、また腹が立ってきたわ」

黛  「この時の仕事依頼のメール、か何かはあります?」

P  「あ、PCにあります。ちょっと待ってくださいね……、っと、これです」

黛  「成程……、確かに。この日出版のテレビチャンの表紙の依頼ですね」

P  「証拠になるんですか?」

黛  「えぇ、プロデューサーさんの目から見て写真に欠陥はなかったんですよね? だとすれば急に連絡もなく
    変更するのは些か不自然です。後は、証人さえ連れてこられれば、最高に武器になるんですが。
    その方はまだテレビチャンに?」

P  「と、思いますよ? こちらが担当者さんの連絡先です」


黛  「ならぜひその人を味方に引き込みましょう」

律子 「あー、それは難しいかもしれません」

黛  「? と、いいますと?」

律子 「この業界の961プロの影響力は高いですからね」

P  「表紙が変わって、そのことについて電話した時も、怯えるようにして『何も言えない』の一点張りで……」


黛  「いや、逆にこれはチャンスですよ! その人物は961の妨害があったことを良く知っているんですから!
    私、その人に会って、証人になってくれるようお願いしてみます」

P  「なら俺もついていきます! ちょうどあずささんを迎えに行く時間ですし、
    俺がいた方が会いやすいかもしれませんから」

黛  「お願いします。では行きましょう!」


古美門事務所//


黒井 「うむ、よいダージリンだ」

服部 「は、お気に召されたであれば、幸いです」

黒井 「近頃は紅茶と称した砂糖水が出回っているが、馬鹿なことだ。ダージリンでない紅茶など、紅茶とは認めん」

服部 「社長、通ですな」

黒井 「んーふっふっふ。セレブの嗜みだよキミィ」


古美門「黒井社長、主代理人として、ひとつ確認だけさせていただきたいのですが」

黒井 「なんだね? なんでも聞くといい」

古美門「実際にブラックウェルカンパニーと961プロダクションとの関わりはあったのですか?」

黒井 「……聞いてどうする?」

古美門「今後の戦略にも関わりますので……」


黒井 「……フン。まあいい。あれは誤報だ。ブラックウェルと961プロ、そして私個人とのかかわりはない。
    それが、正史であるべきだ。……そう思わんかね?」


古美門「なるほどよくわかりました。ご安心ください。詐欺の痕跡はこの世から全て消し去って見せましょう」


黒井 「勘違いするな。私は実際に高木の事務所に売りつけるよう指示したことはないし、計画倒産も私主導のものではない。
    これだけは本当に事実だ。会社創設にはこちらから手を回したが、実際はもっと良いカードの切り方をするつもりだった」

古美門「とすると、あれは本当に事故だった、と?」

黒井 「私なら、もっと上手く活用する。そこそこの金もかけていたしな。だがブラックウェルの社長に据えた人物が
    想像以上に無能でな。最後はビルを勝手に765プロに売りつけ延命を図った。まぁ、それでもなお経営難で倒産したがね」

古美門「部下が勝手にやったこと、というわけですか」


黒井 「実際に、あれは765に売るつもりだった、がもう少し後で売り、奴らが今の事務所を撤退した後にいくつもの罠を発動させる、
    資金も居場所も、進退窮まった高木の事務所に私がとどめを刺す手はずだったのだ。それを奴は自分が無能ゆえに生じさせた
    赤字を相殺するために765に売りつけよった。焼け石に水だったがな」


古美門「となると黒井社長は本当に名誉棄損を受けているわけですか。まぁ当然でしょう。そこまであからさまにやれば、
    さすがの警察も気づくはずだ。それでなお捕まっていないということは、つまりそういうことなのでしょうから」

黒井 「ククク、まぁ、その詐欺だけは奴らの誤解だが、それ以外の妨害工作に関して言えば、事実も事実だぞ?
    古美門君、一体どうするつもりだね? 我々の悪事がばれれば、まずいのではなかったかね?」

古美門「ご安心を。私自ら、鉄壁の守りを見せてごらんにいれましょう」



黒井 「ククク、期待しているよ。ハーッハッハッハッ!」

古美門「フフン、お任せを。カーッカッカッカッカッカ!」



KAKUKAWA出版//
          パシャ

 パシャ   パシャ 
 
     <ハーイ、休憩入りまーす

                       ウィース>


P  「担当者さん!」

担当者「え? あ、!? 765プロの」

P  「はい。赤羽根です。その節はどうも」

あずさ「お世話になりました~」

担当者「いえ、その……。本当にすいませんでした……、その、えっと」


黛  「961プロダクションの、妨害の手伝いをしてしまったこと、でしょうか?」





担当者「!? ……あ、あなたは?」

黛  「私、765プロの主代理人を務めさせていただいております、弁護士の黛真知子と申します」


担当者「べ、弁護士!? え? じゃあ俺……」

P  「あ、いえ! ご安心ください! 別に担当者さんを訴えようとかそういうのではないので!」

担当者「そ、そうですか! よかった、とすると?」

黛  「はい、あなたに証人をしていただきたいのです。961プロの妨害の真実を暴く証人を」

担当者「……、それは」


黛  「あなたしかいないんです! 不正を、あなたが暴くんですよ!」


担当者「……ごめんなさい」

P  「担当者さん、どうかお願いします。ウチの子たちの命運がかかってるんです!
    お願いします!」

担当者「わ、わたしを恨んでないんですか。こんな無力な私を……」

P  「まさか! 悪いのは961です! 貴方は無関係なんでしょう?
    あずささんも恨んでませんよね」

あずさ「勿論ですよ~。担当者さんも苦しい立場だったんだなぁって思いますし」

担当者「……それは。でも」


あずさ「恨んでなんかいません。でも、やっぱりプロデューサーと、皆と、そして担当者さんと撮った
    あの写真は、すっごくよかったなー、って思うんです」

担当者「!」


あずさ「ですから、表紙にならなかったのは、ちょっともったいないなぁ、とは思いました」

担当者「そ、そんなの! 俺だって! 俺だって思いましたよ! でも! ……でも!」

黛  「だからこそ、次はこうならないように、不正を、暴く必要があるんじゃないですか?」

担当者「あっ……」

黛  「あなたは苦しい立場だと思います。会社に反抗することが難しいことも分かっています。
    ですがあなたしかいないんです。あなたが、会社にメスを入れるんです! あなたが!」

担当者「…………」

P  「お願いします!」

あずさ「おねがいします」

黛  「正義のために、真実のために。どうかおねがします!」


担当者「正義……、真実……」


担当者「……」グッ




担当者「わかりました!! 俺、法廷に立ちます! 会社の悪事を、暴いて見せます!!!」





黛  「! あ、ありがとうございます!」

担当者「よし! 俺だってやってやる。俺にだってできるんだ! やってやる!!」

黛  「詳細は追って連絡させていただきます。本当に、ありがとうございます!」

担当者「いえ! 765さん。961プロとの裁判で大変でしょうが、一緒にがんばりましょう!!」ガッ

P  「えぇ! ぜひ!」ガッ

黛  「よし! これで――」




古美門「おーやおや、朝ドラ至上主義の君が、今度は80年代の熱血ドラマに宗旨替えかぁー!?
    しかしまぁ貧弱なキャストだ! 身銭を切って、山下真司でもよんだほうがいいんじゃないかぁ?」





P  「で、出た!」

黛  「……、古美門弁護士、なにか?」


古美門「つれないねぇ黛君。同じ釜の飯を食う仲じゃないかぁ」

黛  「今は復帰の検討中です。大体、先生がまだ正式に認めていないんじゃないですか!」

古美門「出て行って戻ってきて、はいそうですかでは通らん。何か実績でも残してくれないと
    天下の古美門事務所の名に傷がつく」

黛  「というか先生自身私を送り込んだっていってたじゃないですか!」

古美門「あぁそうだとも? だがクーリングオフは受け付けてないんだ」


黛  「まぁ、いいです。所属が違うからこそ、こうして先生と戦うことができたんですから。今回はコテンパンに
    してさしあげます」

古美門「ふーん! あのWINWIN教の教祖様が残した遺跡に取り残されただけの人間が威張るな! 
    世界を良くしたいとかほざく脳みそお花畑の妖精さん製造所で何ができる? 
    名前はたしかプロダクションフェアリーだったかな?」


黛  「ネ ク サ ス です! 後、そんな事務所じゃないです」

古美門「事務所で浮いてるくせに語るな」

黛  「はぁ!?」



担当者「あ、あの……?」

古美門「担当者さん! 率直に申し上げます。そこな蟹股女の妄言に騙されてはあなたが損をすることになる。
    即座に撤回し、どちらの味方につくのが得策か、よく考えるべきだ」

黛  「強迫しないでください!」

古美門「してないさー。ただ私は社会人として、会社を告発した人間がどういう末路をたどるか、思い出してほしい、と
    言ったまでだよ」

担当者「うっ……」

P  「それこそ強迫じゃないか!」

古美門「馬鹿なことを言うな。これが社会のルールなんだよ」

担当者「社会の、ルール……」


黛  「彼は、私が守ります」

古美門「出来もしないことをいうな、八木沼佳奈が何をして、どういう末路を辿ったか、忘れたわけではあるまい」

黛  「……っ」


古美門「担当者さん。覚悟があるならいいんですがねぇ? 一矢報いても次の瞬間無数の矢にハチの巣にされる覚悟がおありなら」

担当者「俺は……」

古美門「後、関係ありませんが、日ごろのあなたの働きを讃えて上司さんから金一封が届いてますが?
    良い額ですよー。高級クラブでお姉ちゃん侍らせて遊べるくらいには」

担当者「高級、クラブ?」

古美門「いかがです?」

黛  「担当者さん!」

古美門「担当者さん?」


担当者「俺は……」


担当者「俺は……、そんなことでは揺るぎません!!」


黛  「!」

古美門「……ほぅ?」


担当者「汚れた金で高級クラブにいくような奴は悪人です! 俺は違う! 例え誰が何と言おうと、俺は証人になり、
    上司の不正を告発する! 悪には屈しない」

古美門「これはこれは」

担当者「失礼しますっ!」タッタッタッタッタ


黛  「先生? 見ましたか? あれが正しい人間のあり方ですよ。正義は悪に屈しないんですよ!」

古美門「……フン!」

黛  「(……ぃよっし! よしっ!)」グッ グッ

古美門「ガッツポーズするな不快だ!」

黛  「いやです」

古美門「生意気なー!」

P  「お、落ち着いてください!」

古美門「おやおや、アイドルたちの監督もまともにできない765プロのプロデューサーさんではありませんか」

P  「ぐぅ……」

黛  「先生、私にかなわなかったからって八つ当たりはやめて下さい」


古美門「だーれーが!? ねぇ誰が誰に敵わなかったって!? え? そんなんじゃないしー! ちがうしー!
    名誉棄損で訴えてやる!」

黛  「はいはい」

古美門「なんかこいつ超ムカつくんですけどー! ねぇー!」

あずさ「どうどう、落ち着いてください?」

古美門「俺は馬じゃないぞこらぁー!!  ……!?」





あずさ「おちつきました?」


古美門「oh...」



古美門「えぇ。ははははは。みっともない所を見せてしまったね。お名前は?」

黛・P「「!?」」

あずさ「三浦あずさです~」

古美門「三浦あずささんか。素敵なお名前だ。あなたのそのすばらしいm、美貌によく似合う」

あずさ「あら~?」

黛  「先生?」

古美門「知らなかったよ、765プロに君のような美しいム、オーラを纏った人間が居ただなんて」


P  (か、彼は一体どうしたんでしょう?)ボソボソ

黛  (あれは綺麗な女性に目がないんです。俗物ですから)ボソボソ


古美門「どうだい? うちの事務所に来ないか? 永らくパートナーが居なくて困ってたんだよ。
    猫の手も借りたいくらいで」

黛  「だったらなんで私を雇わないんですか」

古美門「あずさ。これは私の連絡先だ。今夜にでも返事をしてくれるかな? どうかその女神のムn、手を貸しておくれ。
    なんならいっそ私の生涯のパートナーになってくれても――」

P  「こらこらぁ! ストップストップ! 何ウチのアイドルに手を出そうとしてるんですか! 行きましょうあずささん!」

あずさ「古美門せんせい~? またこんど~」

古美門「返事まってるよ~!」







古美門「最高だな」

黛  「最低ですね」


古美門「あぁ居たのか色気貧乏」

黛  「 色 気 貧 乏 ! ?」

古美門「あぁすまない。金の方も貧乏だったな」

黛  「先生はなに相手方の関係者口説いてるんですか?」

古美門「不覚だ。痛恨のミスだ。気づかなかったよ。まさかあの小煩いガキ共に紛れて、
    あんな素晴らしいムネの美人がいたなんて……」

黛  「隠そうともしなくなりましたね」


古美門「……」

黛  「……」

古美門「……」チラッ


黛  「……?」

古美門「フッ」

黛  「なんで笑いました?」

古美門「笑っていない。この世の不平等を目に焼き付けただけだ」

黛  「何が不平等か! どこみて不平等だって思ったんですかー!」

古美門「どこ!? 馬鹿を言え! お前はモナリザと便所の落書きを比べて間違い探しができるか?
    共通点などない。強いて言えば三浦あずさは正解で、貴様は存在自体が間違いだ!」

黛  「あぁん!?」


古美門「きゃっ、暴力はーんたーい!」スキップ スキップ ランランラン




黛「こら待て! ちょっ、もう!  古美門ーー! 覚えてろーーー! 法廷でぎゃふんと言わせてやるーーーー!!」




               
      


裁判所 //



>>>>>>>>>>>>>> 765vs961裁判 証人尋問 >>>>>>>>>>>>>>


黛  「提出いたしました証拠2点をご覧ください。まず、昨年の秋に発売された、こちらの『ザ・テレビチャン』
    本来ならばこちらの表紙は被告である765プロのアイドルたちが飾る予定でした。これはもう一つの証拠である、
    765プロのプロデューサーの受信メールからも分かります。では、一体何があって、この表紙は差し替わったのでしょう?
    担当者さん、質問いたします。よろしいですか?」

担当者「はい、大丈夫です。お願いします」

黛  「あなたはこの雑誌の表紙を任されていた、そうですね?」

担当者「はい、全て一任されているもの、と思っております」

黛  「そのあなたが、765プロに仕事を依頼したのですよね? 写真の方に問題でもありましたか?」

担当者「いいえ、よくできた写真だったなぁ、と思います。あんなことがなければ、
    ぜひとも皆さんのお手元にお届けしたかった」

黛  「あんなこと、というのは?」

担当者「それは……」


担当者「……、961プロが、圧力を仕掛けてきたんです!」



ざ わ ざ わ    
ざ わ ざ わ   


裁判長「静粛に。……続けてください」

黛  「はい。その圧力とは、一体どのようなものでしたか?」

担当者「765プロの表紙を、961プロのジュピターのものに差し替えるように、と。
    上司を通して伝えられました」

黛  「そのほかにも何か言われましたか?」

担当者「はい! これからもなるべく765プロは使わずに、961の、ジュピターを使うように言われました。
    これは不当な圧力です!!」

黛  「なるほど。こうした圧力はこれだけでしょうか?」

担当者「いえ、TV雑誌編集者という仕事柄、多くの芸能界情報を聞くことがありますが、これ以外にも
    多くの961プロによる765プロへの悪行を耳にしました」

黛  「日常的に961プロから妨害行為が行われていたと」

担当者「はい。一方765プロから、そうした話は聞いたことがありませんでした。
    彼女たちはいい子たちでしたから」


担当者「そんな彼女たちに、961プロは何度も圧力をかけ、妨害していました。
    腐った業界関係者は口を閉ざしていますが、真面目な現場の多くの人間は、
    961プロの悪行を良く知っています!」

担当者「ですので、これは、私の推測でしかありませんが……」

担当者「今回の事も、恐らく961プロの、妨害だと思います!!」


担当者「765プロは悪くない! ば、……報いを受けるべきは、961プロなんです!」


黛  「(ば?)」

黛  「どうもありがとうございました。以上です」




黛  「(どうだっ!!)」ドーン


古美門「…………」


黛  「(高木社長、見てくださいあの先生の顔、ぐうの音もでない、って顔ですよ)」ボソボソ



古美門「…………」




黛「ねっ?」

高木 「……だといいのだが」




裁判長「それでは原告側、反対尋問はありますか?」



古美門「……あります」


裁判長「では原告代理人」




>>>>>>>>>>>>>> 原告側 反対尋問 >>>>>>>>>>>>>>


古美門「あなたはこの雑誌の編集を一任されてたとおっしゃいましたが?」

担当者「その通りです」


古美門「一任といわれますが、具体的にどのような?」

担当者「この雑誌の表紙といくつかの写真については、現場の私が全て取り仕切っていました」


古美門「なるほど、では自分を通さずに表紙を差し替えられたことは不当だと思いますか?」

担当者「思います。上と961の癒着だと思っています」



古美門「なるほど、ではもう一つだけお聞きします。あなた、金融庁をどう思いますか?」

担当者「は?」


黛  「裁判長、質問の意図がわかりません」

古美門「裁判長、重要なことですので」


裁判長「わかりました。認めます……」




古美門「思ったままで結構です、いかがですか?」

担当者「……。よくは知りませんが、ああいうような、権力を振り回し、弱者をいたぶり、強者と癒着するような
    悪徳機関は、許されないと思います。961も同じです」

古美門「なるほど、ではもう一つだけ」






古美門「裁判長、新たな証人尋問を要求します」



黛  「!  裁判長! 事前申請がないので却下されるべきです」


古美門「もーしわけありません、裁判長、先ほどの被告側の証人に深ーく関わる証人ですので、ぜひ、許可していただければ」

裁判長「認めます」





古美門「フフフ」ニヤリ


黛  「……?」



裁判長「原告側証人、前へ」



???「…………」



担当者「あ……、あわわ」




古美門「彼は先ほどの被告側証人であった担当者さんの、直属の上司にあたる方で、
    KAKUKAWA出版の雑誌編集の管理をしていらっしゃいます。どうぞ来ていただいて、ありがとうございます」

上司 「いえ、私もこの場に立ててよかったですよ。なんせ彼が、随分とまぁ好き勝手なこと言ってましたからなぁ」


担当者「!」


古美門「ほう、好き勝手、というと?」

上司 「そもそもね、彼は勝手なんですよ。何かにつけて誰かと衝突するし、チームワークを乱す人間なんですわ」


古美門「そんな彼に対し、あなたはどう接してきましたか?」

上司 「彼は細かいところで神経質な男で、そのせいか周りと合わせたりできずにいました。これでは仕事場に支障が出ると思い、
    私は彼に表紙を含めたいくつかの仕事を限定的に任せ、職場がスムーズになるようにしたんです」


古美門「その結果どうなりましたか?」

上司 「目に見えてよくなったと思いますよ? 以前の彼の仕事は他の人間に合わせるものでしたが、今はどちらかと言えば、
    彼に周りが合わせる形ですからね。彼も周りも仕事の効率が上がりましたよ」



古美門「なるほど、良い上司、良い指揮官ではありませんか。それぞれの特性に合わせて、職場を最善のものとする。
    まるで現代のナポレオンだ。しかしなぜそんなあなたに彼は恨みを持ったのでしょう?」


上司 「さぁ? 一時期はそれで落ち着いとったんですが、最近またぶり返してきたのか、特に私を含めた上司につっかかる
    人間になりました」


古美門「彼は、そうした不審は961との癒着が原因だと言っていますが?」 

上司 「そもそもですよ! 彼には仕事を任せましたが、雑誌というものは完全分業なんかじゃありません。周りとの兼ね合いで
    作っていくものであり、全て一任なんてことはないんです」

古美門「そうですねぇ。そうでないと上司さん、あなたの仕事の意味がなくなる」


上司 「大体、今回の事も、事前に961プロとの間で、圧力なんて関係なく、普通にこちらから依頼して話が進んでいたんです。
    なのに彼が勝手に765と話を進めて、勝手に撮って、勝手に騒ぎおったんですわ! 勘弁してほしい!」


古美門「落ち着いてください。大丈夫、あなたのお怒りはもっともです。ではそもそもなぜ、961プロと話を進めていたんでしょう?」

上司 「当時まだ売れ始めたばかりの765より、既に大人気だったジュピターを選ぶのは当然です。それにあのメモリアル特大号は
    特別付録が『占い&心理テストBook』でしたから、どちらかと言えば女性をターゲットにしていましたので、ジュピター
    の方が適任だと考えました」


古美門「では最後にお聞きします、その秋のメモリアル特大号、売り上げはどうでしたか?」

上司 「今年最高の売れ行きでした」



古美門「ありがとうございました」



参考までに
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4779898.png



担当者「…………」


黛  「……」


古美門「フッ」



クルッ


古美門「裁判長。被告側証人の担当者さんに、もう一度、尋問を、お願いいたします」




古美門「同僚の方に確認いたしましたところ、あなた765プロのファンのようですね。
    有給をとってライブに行くほど」

担当者「…………」

古美門「担当者さん?」

担当者「…………はい、そうです」

古美門「なるほどー。ではあなたの個人的な理由で趣味でお呼びになったのではないでしょうか?」

担当者「そんなことはしない! 俺はこの仕事に誇りを持ってやっているんだ!」

古美門「えぇ、そうかもしれません。優秀な上司が与えてくださったあなたの活躍の場です。
    しかし、結果として、どうあがいても貴方がやったことは、上司の意向に逆らって、
    勝手に行った独断行為だ。趣味ならまだしも、会社の金でやってしまえば、それは会社
    の私物化となります。下手をすれば、横領に近い」


担当者「横領……、いや、そんな。私は上司の不正を暴くためにここに来たんだ!
    会社は、上司は961プロと裏でつながって、不正を働いているんだ!!
    ああいうブラック企業が日本をダメにするんだ! 正義は私にあるっ!!」


古美門「そうですか。正義はあなたに? なるほどなるほどー」

担当者「何がおかしい!」


古美門「いえいえ、おかしくなんてありません。正義感を持ち、上司の悪事を暴く。良いじゃないですかー。
    同僚の方からも聞きましたよ。最近あなたは、そういうとても正義感にあふれ、上司に立ち向かう
    人間になったそうですね。それも 突 然 に。なにかありましたか?」

担当者「それは……、これまでの自分を改めるため――」


古御門「ところで担当者さん。昨年はいいドラマが多かったそうですねぇ。あなたもドラマにハマっていたそうで
    貴方の中での昨年のナンバーワンはなんだと思いますかー?」

黛  「裁判長、本件とは関係のない質問です」




古美門「わかりました。ではもっとわかりやすく言いましょう。あなたは以前、同僚に嵌っているドラマの話をしていたそうですねぇ。
    TV雑誌ですから、そういう会話も必要でしょう。そこであなたが何に嵌っていたのか、同僚の方にお聞きしました。
    以外ですねぇ、銀 行 の 話 が お 好 き な よ う で」



担当者「!?」

黛  「!?」



古美門「無理もありません。歴代視聴率ランキングに食い込むような名作ドラマだぁ。特にTV雑誌班のあなたが知らないはずがない。
    面白かったですかー? 香川輝之が土下座するシーンは? 片岡藍之助のオカマ口調はー!?」


黛  「い、意義あり!」

裁判長「認めません」


古美門「実際随分と日本中多くの方々が見ていたそうですねぇ。そのせいか、多かったそうですよ。そのドラマの主人公のように
    無闇に上司を敵視したり、自分の会社がブラックだと言ってみたり、実際はないのに不正を暴こうとする輩が!」

担当者「あ、いや、それは……」

古美門「上司の意向に逆らうのは気持ちがいいでしょう。上司をやっつけるドラマが高視聴率を叩きだす昨今ですものねぇ。
    私も好きですよぉ、何故かとても感情移入してしまう。上司というものが悪者に見え、それをあのイケメン主人公のように
    かっこよく、理知的に、正義を以って倒したくなる!」

担当者「ぐぅ……!」


古美門「しかしそれを実際に、この社会でやってしまうことは、会社というチームの和を乱すことに他ならず、
    さらにこの件に関しては会社に多少なりとも損失が出ています。フィクションならいざ知らず、現実で、
    しかも存在しない敵の存在しない不正を暴こうとして会社に不利な発言を不当にしている! 
    貴方はドラマのかっこいい主人公に自分を重ね、自分の境遇や意に反する事柄をあたかも社会の陰謀だと思い込み、
    しまいには正義感に酔って無実の人間を吊し上げようとした! 思春期の中学生でももっと社会が見えてますよぉ!?」
    



黛  「い、意義あり! ……、その、表現が不適切です」


裁判長「認めます」


古美門「申し訳ありません。最後の一文だけ撤回いたしましょう。以上です」


担当者「あぁ……あぁぁぁ」






古美門「」ニヤァッ

黛  「ぐぬぬ……!」


765プロ//


黛  「あんの横わけ最低最悪金の亡者ぁー!!!」ガシガシガシ


P  「黛先生、お、落ち着いて!」

律子 「さすがは無敗弁護士ってことなんでしょうか」

P  「だけど、あの時たしかに961の妨害があった! ……はず、だけど」

小鳥 「自信なくなってきちゃいますね……」


黛  「正直わたしもわかんなくなっちゃいました。そういえば、思い返すとドラマに影響されてそうな
    雰囲気があった気がします」

律子 「でも961プロの妨害は本当にあったんじゃないかしら? 今回はなんだか上手く丸め込まれた、って感じがしますよ」

高木 「たしかによくよく考えれば、後半のドラマの話は特に関係なかったかもしれないね」


黛  「あーゆうのはあの人の大好物なんですよ。雰囲気論破。精神的に優位に立ち圧倒する手法。しかも地味に理路整然と
    してるから裁判長まで聞き入っちゃって崩すの大変なんですよ。初めから先生の言葉を疑ってかかる裁判長とか、
    言葉の一つ一つを吟味して重箱の隅をついて反論する検事とか。そういう人じゃないと、大体もっていかれますね」


P  「もっていかれちゃった、んですか」

黛  「言い訳がましいですが、あそこで反論したところで心証を悪くするだけでした。もとはと言えば、あの上司が出てきた段階で、
    こっちは相当押されてましたから。時間をかけてドラマを論破しても、結局延命にすぎませんし、悪あがきみたいに見られた
    でしょう。今思えば、先生は私たちより先に証人に目を付けていて、その上で裏をかいたのだと思います」


小鳥 「よく手の内をご存じなんですね」

黛  「なんだかんだアレとは長い付き合いですから。びっくりしちゃいますよー、段々古美門先生の戦略とか思考が
    言われる前からわかってくるようになるんですよ」

律子 「でしたら、どうやって倒すかは分からないんですか?」


黛  「先生も、今まで全て圧勝だったわけではありません。実は私も何度か勝ちかけたことがあるんです。最後の最後で先生の
    罠にひっかかってやられちゃいましたけど……。でも、勝算はあります。彼にも弱点があるんです」

高木 「弱点なんてあるのかね?」

黛  「先生は強いけど、神なんかじゃない。だから本物の真実を捻じ曲げても消すことは出来ない。彼に搦め手は通用しない。
    限りなく正攻法、そういう人が、古美門先生を苦しめてきた人たちです」



黛  「こっちには他にも証言をしてくれる人がいる。しかも紛うことなき真実! 問題はありません!
    渾身の右ストレートを2発3発。続けていけば、必ず奴のサンドバッグは破れ、砂を吐き出すでしょう!」


高木 「……そうだな」

P  「はい!」

律子 「絶対に勝ちましょう」

小鳥 「そうです!」



黛  「皆さんもお疲れ様でした! また明日!」


タッタッタッタッタ





高木 「…………」





P 高木 律子 小鳥 「「(サンドバッグ?)」」



     


さて、小休止。
とりあえずいったん投下停止っす。


今の所1/3くらいかな? 出来る限り今日中に最後まで行きたい。

質問感想意見があればお願いしますだ。

後、ややこしいですけど、思うところあって酉変更。
>>1です。すんません。

蘭丸は出番ありますか?

>>108
がっつりと。
というか次のレスで出てきます。

再開

古美門事務所//


    テンテンテテーン テンテンテテーン
 



ムグムグ

ズルルルル

シャクシャク

ハムッ ハフハフ、ハフッ!!


ズズズズズー……





蘭丸 「っだっはああぁーー!! やっぱ服部さんの料理はなんど喰っても美味いっすわ―!
   このトムヤンクンなんか特に最っ高!」

服部 「ははは、料理人としてこれ以上の嬉しい言葉はありません」 

蘭丸 「ごちそうさまでした」



古美門「蘭丸くーん、今回も素晴らしい調査能力だよ。引き続き調査を続けてくれたまえ」


蘭丸 「うぃっす。しかし今回は急でびっくりしたよ先生。電話かかってきたと思ったらいきなり


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


古美門『今日中に765プロダクション近辺に潜伏してくれたまえ。詳細はすぐに送る。
    雑誌記者風情が易々と記事を書ける業界だ。君には容易かろう。なんでもいい。小さなことから大きなことまで全て報告してくれ。
    例えば、所属アイドルが年齢詐称をしていて、自称21歳だけど実は36歳だったとか、そんなゴシップ的記事でも構わない。
    じゃんっじゃん情報を持ってこい!』ガチャ ツー ツー


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

      だもん。急いで準備したから大変だったよ」


古美門「それで潜入できるのだから大したものだよ君は。今回の件はその分考慮してコッチの方も多めだ。受け取りたまえ」

蘭丸 「拝借。……おぉっ、まいどあり! で、今回はなんでこんな急なカンジだったの?」

古美門「今回の敵である黛はこちらの手の内をある程度知っている。奴の脳味噌が本当にカニ味噌でない限り、警戒は怠るまい。
    ならば奴が警戒網を敷く前に、さっさと侵入させてしまえば容易いことだ」

蘭丸 「おかげでもう765プロのほとんどと知り合い同然だよ」

古美門「君が彼女ら行きつけの居酒屋に潜入してくれたおかげだ。しかしさすがの私もここまで敵の本陣に近づくとは思わなかったよ」

蘭丸 「真知子ちゃんも何回かアイドル連れで来たけど、厨房に入ったら全くバレず。最近になって俺の警戒はしてるみたいだけど、
    ADとか警備員とかファンとか、そういうとこばっか警戒してるから、まっ、しばらくは余裕っしょ」

服部 「まさしく、灯台元暗し、というやつですかな?」

蘭丸 「まさしく、それっす」


古美門「で? 君の寸感として、どうだね? 何かでそうか?」


蘭丸 「ゴシップみたいなのは出ないねー。誰が誰いじめてるとか、枕してるとか、まだ身辺漁ってるだけだけど、
    どうにもそのセンはなさそう、って感じ?」

古美門「フン、汚い手は使わなかったわけだ。コネか、金か。それか運か。いずれにせよ、あまり埃は出ないわけだな。
    で、もう一つ言ってた方はどうなってる?」

蘭丸 「あぁ、『961に移籍』を餌に釣れそうな子? んー、意外と皆そういうそぶりはないんだよねぇ。この歌至上主義な
    千早ちゃんっていう子なら『歌』を餌に釣れるかと思ったんだけど、なんだかんだ今の事務所から引っぺがせそうにないし、
    そのほかも事務所愛強い子が多いし、中々難しいかもよ」

古美門「ふうん、だが所詮はガキ共の絆ごっこだ。揺さぶれば簡単に決壊するだろう。蘭丸君、移籍に拒否感を抱いて
    いなさそうな奴はこの中で誰がいる?」


蘭丸 「うーん、待ってよ。そういえばなんか真知子ちゃんと飯食いに来てた子のどっちかがそんなことを……」

古美門「よし、思い出せ」

蘭丸 「えぇーっと……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

たるき亭//

回想、、、


黛  「最初勢いで戻れるかなーって思ったんだけど、なーんか、こう、気まずいのよね。普通に戻れないっていうか」

春香 「なんとなーく分かるかもしれません。もし私が765プロから961プロに移籍して、すぐにまた戻ってきたとしても
    絶対居心地悪くなると思いますもん」

黛  「春香ちゃん! わかってくれる!?」





美希 「えー、二人とも考えすぎだって思うな。ミキならすんなり戻ってこれるの」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


蘭丸 「そうだ! 星井美希、星井美希って子がね、移籍自体に拒否感持ってなかったよ!」


古美門「なるほどこの金髪か。何? これで中学生? この胸で? ほほう。ふむふむ。成程ー。
    ふっ、この年でこの美貌だ。男を手玉に取ってきた性悪女だろう。らしい奴め」

蘭丸 「いや、っていうかー。なにも考えてなさそうで簡単に寝返りそう、的な? 
    下手すりゃおにぎり一個でホイホイ移籍しそうな感じ」

古美門「いや、さすがにそれはないだろう」

蘭丸 「ですよねー。勘違いかな?」



古美門「他にはいないのか?」



蘭丸 「あー、強いて言えば、この二人? 響ちゃんと貴音ちゃんかな? なんか親が近くにいないっぽい。
    だから止める人いないし、攻めやすいかも」

古美門「よし。星井美希、我那覇響、四条貴音。この3人が移籍を餌に釣れそうな輩というわけだ」

蘭丸 「釣れそう、っていうより、なんていうんだろ。961でもやっていけそうな子? 
    拒否感は抱いてないけど、その分釣るのはちょっと難しいかも。美希ちゃんはプロデューサーと
    いつも一緒に居るし、響ちゃんは今度証人で出てくるからガードきっちりだし、貴音ちゃんは……、
    なんていうか沢地さん的な底知れなさがあるし」

古美門「……そうか。ならまだ早いな」


蘭丸 「そーいうこと。あ、でもまだ裏は取れてないけど、……この子。攻めどころかもよ」

古美門「というと?」



蘭丸 「実はね……」


閑静な住宅街//


古御門「……ふむ、」





古美門「この家か」

古美門「聞きしにたがわぬ貧相な家だー。これはやはり当たりの様だな」


古美門「おっじゃまっしま~す!」





   [高槻]   






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



蘭丸 「そーいうこと。あ、でもまだ裏は取れてないけど、……この子。攻めどころかもよ」



古美門「というと?」

蘭丸 「実はね……、この子貧乏みたいなんだよね」

古美門「貧乏?」

蘭丸 「TVでもわかるレベルの情報だったからそういうキャラで売ってんのかと思ったけど、どうやら、マジで貧乏みたい。
    実際の感じは分かんないけど、後をつけて行ったらかなりボロボロの家に住んでた。防犯も脆弱そうな家」

古美門「……、この小娘の売り上げは?」

蘭丸 「ちょっと前に『キラメキラリ』って曲でミリオン売ってるから、印税も相当入ってるはず」

服部 「シングル1枚1000円として、それが100万枚。印税1%としても、おおかた1000万はあるでしょうな」

古美門「ガキには過ぎた額だ。使い切れまい。が、そんな金を持ちながらなお貧乏で、アイドルという身でありながら
    防犯能力の低い家に住むというのは、何かありそうだな」

蘭丸 「この子重点でいく?」



古美門「いや、君はそちらを頼む。こちらは私が行こう。金か強迫か。気の弱そうな小娘だ。どちらかで簡単に屈するだろう


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




古美門「高槻やよい、お前を961プロの証言台に、マリオネットとして立たせてやる!」ドーン


古美門「と、いうわけで……」









  ドンドン!




古美門「すいませーん! 全く、この家はインターホンもないのか。すいましぇーん!」









???「はーい?」 ガラガラ



古美門「どうもこんにちは、君はー、高槻かすみちゃんだね?」

かすみ「え? え、は、はい……。どちらさま、ですか……?」

古美門「君のお姉ちゃんのお知り合いだよー。中に入れてくれるかな?」

かすみ「えっと……」

???「あっ!」

古美門「おや、きみは確か」

???「……」スタスタ

古美門「長男の高槻長介くn――」


   ガララララ、 ピシャ!


古美門「んだったね?」


古美門「…………」







   ドンドンドンドン



古美門「ちょぉーっと、長介君~。いきなり閉めるなんてよくないぞ~? ほら、お兄さん怪我しちゃったじゃないか~。
    開けてくれないと訴えちゃうぞ~?」ドンドンドン



かすみ「ひっ!」

浩太郎「なに!? どうしたの!?」

長介 「横わけ! 横わけ来た! 横わけ!!」

かすみ「じゃあ! あの人が古美門せんせー!?」

長介 「浩太郎は庭んトコの窓閉めろ! 浩司ー!! バット持ってきてくれバット!!」

浩司 「バットー?」

長介 「裏口にある奴!」

浩司 「うん!」

かすみ「わたし、鍵確認してくる!」

長介 「頼む!」




古美門「別に何もしないよー? ちょっとお話聞くだけだよー? おいしいもの食べさせてあげるから!
    いい子だから開けなさい?」ドンドンドンドン!!


長介 「浩司! バットまだか!?」

浩司 「持ってきた」

長介 「良くやった! 危ないから下がってろ!」

浩太郎「兄ちゃん! 鍵閉めてきた、後フライパンとゴキジェット」

長介 「かすみー! 戻ってくるついでにチャッカマン持ってきてくれ!」

かすみ「わかったー!」





古美門「おいお前ら!! 何武器持って集まってんだ!! 特に長男! お前本気で私を殺しに来てるだろ!?
    下手にでてたら調子に乗りやがってガキ共! これだから馬鹿な子供は大嫌いなんだ!」ドンドンドンドンドン!!




長介 「うっせー! お前なんかこわくないぞ! 帰れー!」
浩太郎「そうだそうだ帰れー!」
かすみ「帰ってください!」
浩司 「かえれー!」
浩三 「あぇえー」

高槻家「「かっえーれ! かっえーれ!」」


古美門「かーえらない! かーえらない! くそっ、理知的な話も対応もできやしない!
    あっけーろ! あっけーろ!!」ドンドンドンドン! ドンドンドンドン!!



 タッタッタッタッタ ブンッ!


古美門「あっけー、……ん?  ぐぇあ!」ドゴォ!






黛  「全く、なにやってるんですか古美門先生!!」


長介 「黛先生! ねえちゃんも!」

かすみ「うぇえええん! おねえちゃーん! こわかったよー!」

やよい「大丈夫、大丈夫だからね」



古美門「まーゆーずーみー。この天才の頭を殴りつけるとはどういう了見だ!!」

黛  「天才ならその頭で考えてください。どう考えてもアウトでしたよ。絵的にも倫理的にも法的にも!!」

古美門「これはあいつらのせいだ! あいつらが馬鹿なガキだからなぁ! こっちの話を聞こうともしない。
    大体こういうクソガキどもの相手は私ではなく君……」

黛  「……? 私がどうしたんです?」

古美門「……いや、なんでもない。そぉれより! なぜお前が高槻やよいと一緒にいる!? しかもその両手に抱えたレジ袋!
    なんだ、貴様ついに誰かの家に居候しなければならないほど貧乏になったのか! 家なき子で胸なき子なのか!」


黛  「これはどーせ古美門先生が誰かに強迫を仕掛けてくると予想して、高槻さんの警護をしていたんですー!
    そしたらまんまとひっかかりましたね! みんな先生の事を警戒していたんですよ!」

古美門「しょうもない真似を。だが、かかったのはお前だ黛。わざわざ貴重な時間を使って守るということは、
    自ら、高槻やよいが765プロのウィークポイントだと吹聴しているようなものだ!」

黛  「ふっ……」

古美門「なんだそのムカつく笑いは」

黛  「先生が強硬手段に訴えない、というのでしたら、別にお好きに高槻さんとお話し下さって結構ですよ?
    暴力とかでなければ、先生お得意の買収や強迫なんかもお好きにどうぞ」

古美門「……なぁにを企んでいる?」

黛  「何も?」



古美門「そもそも私は暴力など振るわん。いいだろう。この古美門研介が頭脳的に高槻やよいを懐柔する姿を見せてやる」



高槻家 //



古美門「ときに黛君。性善説と性悪説という言葉を知っているか?」

黛  「当然です。人の基本的な性格は善か、悪かって奴ですよね?
    私は人間は生まれながらにして善であるとおもっています」

古美門「ばーか。お前のような勘違いをする人間のせいで、この考えは誤用されてきたのだ」

黛  「え! 違うんですか!?」


古美門「生まれながらにして、のくだりだけは正解だ。
    だが『性善説』は、生まれながらにして良い人なのだから、善を維持する努力を怠るな。
    『性悪説』ならば、生まれながらにして悪人なのだから、善人に変わる努力をしろ、と、そうつづけているのだ。
    成長するにしたがって悪行も善行も学ぶ。それでもまだ善人であるためには、努力が欠かせない、と。そういっているのだ」

黛  「へぇ……」


古美門「だが個人的にこれは両方違うと思っている」

黛  「というと?」

古美門「この世の行いに善も悪もない。強いて言えば、身を滅ぼす行いか、そうでないかだ。
    人間は自らがよりよく生きていきたいという『欲』に従って生きていく。だが時に身の丈を超えた欲望で身を滅ぼす。
    そうならない為の努力だ。すなわち『制欲説』とでも言おうか」

黛  「先生は欲望を抑える努力をしてこなかったんですね」

古美門「馬鹿を言え、私の欲望など、この身の丈には足りないくらいだ」

黛  「けっ。で? 長々と講釈を垂れて、何が言いたいんです?」


古美門「つまり、人間とは皆が皆、欲望の塊だというわけだ。太古の昔から、哲学などという大げさな枠を使って、
    努力して抑えなければ破滅してしまうほどになぁ」


古美門「そして貧乏ならば、なおそうだ。普段『欲』を満たせなかったせいで、一気に大金を得た時、
    使いたくて仕方なくなる。瞬時に身の丈を超える。宝くじに当たった人間の多くが大金を失うのもそれのせいだ」


古美門「だが、奴は依然として、『欲』を満たせないでいる。これがその証拠だ!」


ガサガサ!


古美門「お前が高槻やよいと買ってきた、この大量のもやし! しかもタイムセール購入で、値段は10円!
    野菜炒めかと思ったら、袋のなか全てもやしもやしもやし……!!」ポイポイポイ

やよい「あのー、もやしで遊ばないでくださいー」

古美門「肉はおろか他の野菜すらない。しかもここには育ちざかりの子供が何人もいる。
    こんな偏った栄養価の食卓を、わざわざ好んでするわけがない!」

古美門「では、何故か!?」


古美門「つまり! 金が! ない!!」


古美門「使いたくても使えないか、そもそも使うだけ渡されてないか」


古美門「事務所のピンハネ。もしくは多額の借金を抱えていたり、家族の誰かの治療費がかかったり、
    そういった金銭的な理由があるに違いない」




古美門「高槻やよい君。君の場合は一体どちらだね?」







ジュージュー!


やよい「長介ー、皆を呼んできて―。モヤシ祭りだよー」


長介 「おう!」
浩太郎「わーい!」






古美門「聞けーーーーーーー!!!」




古美門「この家はとにかく私の話を聞かないガキ共にあふれているな!」

黛  「先生が一人で長々ペラペラしゃべるからですよ」

やよい「ごめんなさいー。私にはちょっとむずかしいかなーって」

古美門「フン。なら君にもわかりやすく言ってやろう。君は売れっ子アイドルだろう?」

やよい「えぇっ!? 私がですかー? 照れちゃいますー」

古美門「曲がりなりにもミリオンを売り上げた人間のセリフではないな。謙遜を通り越して嫌味だ」

やよい「うっぅー……」

黛  「ちょっと先生! やよいちゃんに酷いこと言わないでください!」

古美門「なんでも言っていいんじゃなかったのか?」

黛  「暴言も禁止です」


古美門「まあいい。……高槻君、売れているということは、即ち金が入る、ということだ。
    なのになぜ今君はこのような貧乏生活を強いられている? 売れたのならば、
    もっと豪華な家も建てられるし、もっと豪勢な食卓にすることもできる。
    だができないのには理由があるはずだ。何があった?」

やよい「それはー……」

古美門「こちらは君にそれ相応の報酬を用意している。また、黒井社長も、証人として法廷に立つならば、
    事務所に迎え入れてもいいと約束してくれている。即ち内部告発して、君は不利を被るどころか、
    多大な利益を得ることになるんだよ」

古美門「私は君を守ろう。だから教えてくれないか、765プロの闇を!」


やよい「えっとー、古美門せんせーは何か勘違いをしてるのかなーって」


古美門「勘違い? なるほど原因は事務所ではないということか。安心したまえ。
    こちらの言うとおりに証言してくれば、君を悩ます問題を解決できるだけの額を出そう」

やよい「そうじゃなくって……」

古美門「ならばヤクザか? それとも悪辣に金をせびる親戚か? それとも金遣いの荒い両親か?
    問題ない。どれも私ならば鼻歌交じりに解決を――」

やよい「どれもちがうんですー!」

古美門「なにぃ? とすると君が男に貢いでいるということか? ならその男から――」

やよい「そうでもなくって! あの! わたし貯金してるんです!」



古美門「……、何を馬鹿な。全額をか?」


やよい「全額ではないですよー。私のお父さんとお母さんのお給料は全部、
    ローンとかでいろいろなくなっちゃうらしいので、生活費は私のお給料です」

古美門「……、いや、わからないな。見たところ君の家は大して金を使うような生活をしていない。
    だったらいくら貯金してるんだ……。そうか! わかったぞ! 土地や資産運用に
    手を出すつもりか! それか豪邸を買い取るつもりで貯蓄しているんだな!」

やよい「うー、そんなことしたらお掃除が大変になっちゃいますよー」

古美門「なら何故だ?」

やよい「えと、みんなの学費とかー、あと服とかいっぱいそろえるものがあってー、あとはー……」

古美門「待て待て!」

やよい「う?」

古美門「君はそれを自分で使おうとは思っていないのか?」

やよい「はい、元々アイドルも家族の助けになるかなーって始めたものなので」


古美門「なるほど、既に親に都合よく操られるマリオネットというわけか。
    哀れな奴だ。私が親権を剥奪してあげようか?」

やよい「え!? い、嫌です嫌です!」

古美門「何を言う。これは親の洗脳だ。普通に育てられてここまで滅私奉公できる人間が育ってたまるか。
    生まれながらにしてすべて満たされた世間知らずの箱入り娘ならいざ知らず……」

やよい「変、ですかね?」

古美門「変だ。もっと自分に正直に生きろ。もっと欲望を解放しろ。さもなくば、親の期待に応えるだけの抜け殻になるぞ。
    自分の意思も喜びも持たない、ただの不幸な人形だ」

やよい「むずかしーですね」




古美門「……、かいつまんで言うとだな」

やよい「でもでも! 自分のやりたいこととか、うれしーことっていうのはいっぱいあります!」

古美門「そうだ。それだ。それをしろ。君には金がある。即ち権利がある」

やよい「それならもう十分満たされてます」

古美門「なに?」

やよい「だって、」



長介 「姉ちゃん、呼んできた!」

浩太郎「モヤシ祭りだー!」

浩司 「たべよ! たべよ!」

かすみ「浩三ー、よーしよし……ちょっと私の分ものこしておいてよ!」

浩三 「アブアブ」


やよい「ちょっとまってね! そうだ、古美門せんせーも食べていきますか?」

古美門「この、大量のもやしをか」

やよい「はい!」


古美門「……産業廃棄物のたぐいかなにか」

黛  「てぃ!」ガシッ

古美門「ぐっ、黙っていたと思ったら、急に暴力とは育ちが知れるな!」

黛  「先生こそ! 失礼にもほどがあります。おいしそうじゃないですか!」

古美門「前菜もない、スープもない。メインディッシュもワインもない。
    こんなものは食卓と呼べん!」

黛  「……、私も、もやしオンリーで食べるのは初めてですけど。そこまで言わなくてもいいじゃないですか!」


やよい「はい、黛せんせー古美門せんせー」コトッ コトッ

黛  「ありがとー、やよいちゃん」

古美門「先に食え貧乏舌」

黛  「もう、普通にモヤシ炒めただけですから警戒しなくてもいいでしょう。
    普通にモヤシ炒めの味が、……!? お、美味しいい!!?」

古美門「嘘言え」

黛  「ほんっと、ゲホ、ホントにおいしいですよ! ちょっとびっくりするくらいに」



古美門「ははは、やはり貴様は貧乏舌だな。こんな貧相な犬のエサがこの私の舌に……美味ぁーーーいぃ!?」




黛  「すごいわやよいちゃん! これもう魔法か何かだよ」

古美門「なんだこれ、どうやったらこんなに美味くなるんだ」


やよい「高槻家の秘伝のタレです!」



黛  「何が入ってるんでしょうか……」

古美門「下手したらこっちの方がアイドルより収入になるだろ……」


やよい「古美門せんせー?」


古美門「なんだ? あ、商標登録なら任せるといい」


やよい「ちがくて、さっきの続きです」




やよい「わたし、今の生活が好きなんです」

やよい「長介がいて、かすみがいて、浩太郎も浩三も、それからお父さんとお母さんも。
    今はいないけど、伊織ちゃんとか響さんとか、あと、プロデューサーがいて……」

やよい「そんな皆といることが、いーっぱいいーっぱい嬉しいことで、
    とっても私がやりたいことなんですー」

やよい「アイドルだって、みんなと一緒にできるから楽しさいっぱいです!」

やよい「だから……。その、えっと……うまく言えないや」

やよい「とにかく! 私はじゅーぶん、幸せかなーって!!」


やよい「えへへ、やっぱり変ですかね? うっうー……」シュン…








古美門・黛 「 「 変 じ ゃ な ぁ ーーーーーー い ! ! ! 」」ドーン



やよい「!」ビクッ


黛  「なんて、なんていい子なの、やよいちゃん!」


古美門「なんだこいつはー! ホントに同じ人間か―!! ちくしょー!! 黛! 寿司だー! 職人を呼べ―!」


黛  「知りませんよ!」


ポパピプペ

古美門「服部さん! 最高級の寿司をお願いしますー! あとモヤシも追加でーー!!」






やよい「……!? ……!?」オロオロ



黛  「なんて、なんていい子なの、やよいちゃん!」


古美門「なんだこいつはー! ホントに同じ人間か―!! ちくしょー!! 黛! 寿司だー! 職人を呼べ―!」


黛  「知りませんよ!」


ポパピプペ

古美門「服部さん! 最高級の寿司をお願いしますー! あとモヤシも追加でーー!!」






やよい「……!? ……!?」オロオロ


おろ、重なっちまった。ミスっす。



10分後、、、



服部 「お待たせいたしました」

黛  「その恰好は?」

服部 「以前銀座で寿司屋を」



古美門「もはや何も言うまい! 服部さん! 彼らと彼女らに美味しいお寿司を握ってあげてください―!!
    黛、貴様は立ってろ」

黛  「なんで!?」


古美門「そして貴様らはもっと贅沢することを覚えろー! そして日本経済を回せー!
    っていうか育ちざかりなんだからもっといいもの食べなさぁいぃ!!」


 わ い わ い 

          が や が や




長介 「こっちもうめー!」

浩太郎「両方うめー!!」

浩三 「うめー! うめー!」

かすみ「あんまり騒がないの! ご近所めーわくでしょ!」

古美門「案ずるな。文句をいってきた輩は破滅させてやる」

かすみ「えぇ~……」

古美門「かすみくん、もやしおかわりだ!」

服部 「こ、これは! なんとも美味!」

やよい「うっうー!? 服部さんのお寿司もすっごくおいしいですー!!」

服部 「よければ、この服部にレシピをご教授いただけませんかな?」

やよい「大丈夫ですよー。私もこのお寿司の握り方とかも知りたいかなーって」

服部 「お安い御用ですとも」

黛  「よーしよし、浩三くーん」

浩三 「アブアブ」


古美門「何!? もやしがなくなった!? ならば追加購入だ! モヤシ祭りはこれからだーー!!」




   わ い わ い


            が や が や




――――――――――――――――

―――――――――

――――






公園 の ブランコ //





キィ   キィ


古美門「……」

古美門「……」

古美門「……」

古美門「……」






古美門「私は何をやっていたのだ」


黛  「あれがアイドルというものですよ」

古美門「いたのか魅惑のモヤシボディ」

黛  「魅惑ってつけてますけど完全に悪口ですよね」

古美門「うるさい炒めるぞ」


古美門「いつもなら、吐いて捨てるクソみたいなさわやか朝ドラ三文芝居だったのに……」


黛  「それが純度100%になると、先生でもコロッと行くんですね」

古美門「行ってない」

黛  「でも『変じゃなーーい』とか言ってたじゃないですか」

古美門「言ってない」

黛  「今までの先生の手法が通じる子じゃないんですよ」


古美門「まるでアニメかゲームの登場人物の様だった……。『純粋』という概念を絵に描いたようなな。
    私が今まで見てきた人間の中に『純粋もどき』はいたが、あれはまぁ見たことのない人間だった」


黛  「とっても応援したくなったでしょう?」


古美門「フン、あれが貴様以上にまじりっけなしの朝ドラヒロインであることは認めよう。だがそれだけだ。
    それではこの私は止められないし、法廷という悪意が跳梁跋扈する世界では、なんの効果もない」


黛  「765プロがつぶれれば、やよいちゃん悲しみますよ」

古美門「関係ないな。私が私情で裁判をすると思ったか」

黛  「そこそこ」

古美門「それに奴の言いぐさならば別に765プロがなかったところで、家族が居れば幸せなのだろう?
    金も貯えてある。ならば今すぐ家族だんらんに専念させてやるためにも、この裁判、私が勝利
    したほうが、ずっと彼女のためになるのではないか、被告代理人?」

黛  「随分と舌が戻ってこられたようで」

古美門「貧乏な味のせいで麻痺していただけだ。帰って、最高級ワインで清める」

黛  「証人獲得に失敗したのに随分と呑気ですね」

古美門「当たり前だぁ。この裁判、私は守りに徹しているだけでも勝てるからな。無論、それではつまらないから、 
    こちらから首を刎ねに行くがね」




ブロロロロ……


服部 「古美門先生。お車の用意ができました。ささっ」



古美門「今いきますよ」


黛  「……負けませんので」

古美門「言ってろ。服部さん、出してください」

服部 「はっ」


ブロロロロロロロロ





黛  「すぅ……」





黛  「負けませんからー!!」





 


裁判所 //




響  「崖に落ちちゃったんだぞ!」






  >>>>>>>>>>>>>> 証人尋問 >>>>>>>>>>>>>>



黛  「なるほど、崖から。それはどうして落ちてしまわれたんですか?」

響  「だって、崖のすぐそばでおいて行かれたから……」

黛  「そのような危険な場所において行かれたのですか?」

響  「だぞ!」

黛  「では、その行為がどうして961プロと繋がりがあると?」

響  「車で運んでくれたADさんが、そういってたぞ!」




古美門「あなたはADがそういった、とおっしゃりましたね。
    具体的にはどのように?」
   
響  「『ごめん』、って謝った後に『俺だってやれって言われたんだ』って言ってたぞ!」

古美門「あなたの証言では『おいて行かれた』とあります。
    現場では、勝手にあなたが車を降りた、と報告されていますが」

響  「自分! そんなことしないぞ! それはねつ造だぞ!」

古美門「ADが嘘をいったと?」

響  「ADさんが黒井社長に脅されて言ったにきまってるぞ!」

古美門「なるほど。それでは車にはどれくらい乗っていましたか?」

響  「うーん、5分か10分か。とにかくひと気がなくなるところくらいまでは連れていかれたから、
    そこそこ乗ってたかな」

古美門「ありがとうございます。最後に、落ちた崖の高さはどれくらいでしょうか?」

響  「えぇ!? そうだな、10m? いや、15mかも……」


古美門「以上です」




P  「当日、響が急にいなくなり、おかしいと思っていました」

黛  「そして、あなたは探して回ったと」

P  「響は番組を抜けだすようなアイドルではありません。
    すぐに何かあったと思い、探して回りました」

黛  「そして、見つからなかったと」

P  「えぇ、しかしその時に番組プロデューサーが不審な動きをしていたのを見つけ、後を追ってみると、
    人目につかない場所で誰かと話していました」

黛  「一体どのようなお話ですか?」

P  「『ADが騙して連れて行って、置き去りにした』と」

黛  「それで、その話していた相手というのは?」

P  「そこにいる、黒井社長です!」ビシッ!



古美門「あなたは探して回ったそうですが、具体的にどれくらいの範囲を探しましたか?」

P  「……辺りは一面探しました」

古美門「しかし見つからなかったと」

P  「後で聞いた話だと、捜索範囲より、さらに遠くに居たそうなので」

古美門「当日の現場スタッフの証言にも、彼がずいぶん現場を離れていたことが確認されており、
    彼が相当探し回っていたことがわかります。そして、それでも見つからなかったというのは、
    遠くに置き去りにされたという先ほどの我那覇氏の証言と合致します」

P  「? は、はい」

古美門「もう一つ質問します。番組プロデューサーと原告の会話を他に聞いていた人はいますか?」

P  「いません。私一人でした」


古美門「以上です」


黛  「本日は証言、ありがとうございます」

黛  「ADさん」



AD 「いいえ、贖罪になればと思います」


黒井 「…………」


黛  「あなたは番組プロデューサーになんと言われましたか?」

AD 「私は、番組プロデューサーに、我那覇響さんを車で運び、遠くに置き去りにしろ、といわれました」

黛  「あなたはそれを実行しましたか?」

AD 「しました……」

黛  「響さんの証言に間違いはありませんか?」

AD 「間違いありません」


黛  「以上です!」ピッ!


  ざ わ ざ わ
          ざ わ ざ わ



黛  「(フフン♪)」



古美門「…………」


古美門「ADさん。あなたと番組プロデューサーの会話を他に聞いたものは?」

AD 「……いません」

古美門「なるほど。番組スタッフの中にあなたが我那覇氏を車で運び、戻ってきたとことも証言されています。
    ですが、我那覇氏を降ろしたところをあなた以外、誰かが見たということはありますか?」

AD 「いえ、それもありません」


黛  「今回のことは内密に行われたことなので、不自然なことではありません」


古美門「ではADさん。最後に。なぜそんな命令を聞いてしまったのでしょうか?」


AD 「そ、それは……」

古美門「どうしたのです?」

AD 「ADなんて、番組制作の中で最下層も最下層なんです。ディレクターやカメラマンよりずっと下。
    出演者よりずっとずっと下。そんな俺が! 番組プロデューサーなんかに逆らえるわけないじゃないか!」

古美門「もし逆らえばどうなったと思います?」

AD 「ADなんて替えのきく部品みたいなもんさ……。上の人の癪に触るようなことをしたら、クビですよ」

古美門「なるほど。貴重なご意見ありがとうございました。
    では最後に一つ。ADさんは、TV業界が好きですか?」

AD 「……好きですよ。ずっとやっていたいほどに」


古美門「……以上です」



  ざ わ ざ わ

           ど よ ど よ





高木 「中々上手くいってるのではないかね?」

黛  「……」

高木 「? どうしたのだね?」

黛  「なんかキレがない、というか。いつもなら完膚なきまでに証人を叩きのめすのに。
    下手をすればこっちのアシストになりそうな質問まで……」

高木 「ふむ……」

黛  「! そうか! わかりました!!」

高木 「なにかね?」

黛  「いえ、昨日やよいちゃんの家に行ったんですよ。そしたら古美門先生とっても気に入っちゃって!」

高木 「高槻君をかね? 彼とは真反対の様だが……」

黛  「先生は意外とそういう純粋さに弱いんですよ! 根がひねくれてるから!」

高木 「そういうものだろうか……」


黛  「もしかして、態度を改めてこっちの味方になったんじゃ!」

裁判長「被告代理人、静粛に」

黛  「……すいません」

裁判長「それではこれにて――」




古美門「裁判長。補足尋問をお願いします」



黛  「え?」


裁判長「どなたにですか?」

古美門「一人目の証人、我那覇響さんにもう一度反対尋問の許可を。3人の証言を踏まえたうえで、
    重要な質問がありまして」

裁判長「わかりました。原告代理人に補足尋問の許可を出します」


黛  「?」



古美門「…………」



響  「なんだよー。全部聞きたいことは聞いたんじゃなかったのか?」

古美門「たびたび失礼します。ご安心を。すぐに終わりますので」

響  「ふーん」

古美門「あなた、崖から落ちたんですよね? それもかなりの高さから」

響  「だからそうだって言ってるぞ」

古美門「現場の写真を確認いたしました。柵もない危険なところですね。
    ですが、道路から少し離れています。まさかこんな崖ギリギリで降ろされたのですか?」

響  「いや、崖の方へは、自分の足で行ったけど……」

古美門「そうでしょう。この辺りは地盤が脆いようだ。車で近づけば自分も落ちてしまう。
    貴方は自分の足で向かい、偶然足場を崩して落ちてしまった、と?」

響  「だから! そうだって言ってるぞ!」



古美門「怪我もなしに!!」


響  「……え?」


古美門「現場スタッフの話では、戻ってきたあなたはすぐにに撮影に復帰した。そうですね?
    骨折や出血はおろか、服が汚れていたくらいで無傷だったそうじゃありませんか。なぜ!?」

響  「なぜって……。う、運が良かったからとしか……」

古美門「先ほどあなたは10~15mの崖と言いましたね。ですがそれは相当な高さだ。
    清水の舞台でも13m。死ぬことはないにしても、無傷はないでしょう」

響  「じゃ、じゃあもっと低かったかも。っていうか高かったのはわかるけど、
    そこまできっちり覚えてるわけないじゃないか!」

古美門「ではどれくらい高かったのですか?」

響  「それは……、とにかく! 自力じゃ登れないくらいの高さだぞ!!
    それに落ちた時は崖に沿って滑って落ちたから、大丈夫だったんだぞ!」

古美門「なるほど。よくわかりました」

響  「ほっ……」


古美門「ではどうやって助かったのですか?」


響  「ハム蔵達に助けてもらったんだぞ」

古美門「ハム蔵さんというと、響さんのペットたちの事ですねぇ?」

響  「じゃなくて、自分の家族だぞ!
    ハムスターのハム蔵と、犬のいぬ美。蛇のへび香、シマリスのシマ男、オウムのオウ助と、
    うさぎのうさ江、ねこのねこ吉、ワニのワニ子、豚のブタ太、モモンガのモモ次郎!!
    皆が力を合わせて助けてくれたんだ」

古美門「それでどうやって上ったんですか?」

響  「ハム蔵が春香と、小鳥さんたちを呼んできてくれたんだ! あんなところから事務所に呼びに行くなんて、
    さっすが自分の自慢の家族だぞ!」


古美門「……ほーう。すごいですねー。現場から事務所まで相当な距離があります。
    車で行かなければならない程に。事実、現場についた天海氏と音無氏は車で来たようですが……。
    君のハムスターはそのくらいの距離を短時間で走りぬいたと」

古美門「しかも走った上で現状を他の動物たちに的確に伝え、その他の動物たちも理解し、
    事務所のアイドルに送ってもらえるよう要請し、到着後は真っ直ぐ君のいるところまで
    皆で足並みそろえてたどり着いた。そういいたいわけだね?」



響  「そうだぞー! へへん! すごいだろー!!」ドーン


古美門「……。いかがですか、裁判長」


裁判長「……」ポカーン








高木 「ん? 何かおかしいことをいってるのかね?」

P(傍聴席)「? どうしたんだ、裁判長は?」

響  「なんだ? 自分変なこと言ったか?」




黛  「いっ、意義あり! 実際にペットたちに助けられたのです。原告代理人は証人の発言に懐疑的すぎます。
    響さんのペットはTVなどでもよく放送されていますが、実に多彩な特技を持ち、彼女に従順です!
    ならば、そのような、一見不可能な絶技でもやってのけたに、違い、あり、ません……」


古美門「……ということにしましょう。ですので裁判長も、そのように納得してくだされば」


裁判長「あぁ……、うん。そうですね」


古美門「ちなみに昔調べたのですがハムスターの時速はだいたい4~6km/h。条件次第ではもう少し早くなるかもしれませんが、
    だいたい人の歩行速度くらいのものです。ちなみに当日は雨でした」


黛  「現にたどり着いたんです!」


古美門「とはいえ証言できるのは全員765プロの関係者だ。それにいくら速度があったところで、ハムスターが
    道を正確に覚えて、真っ直ぐに時折近道を交えながら、階段や扉をすり抜け、現場からはなれた765プロの
    事務所にたどりつけるとは、随分と夢物語がすぎるではありませんか。 ア ニ メ じゃ あ る ま い し !!」

黛  「ぐぅ……!」



裁判長「そうですね。証人は誇張を交えないように証言をお願いします」


響  「なっ!! 誇張なんてしてないぞ!! 全部ぜーんぶ本当なんだぞ!!」


裁判長「証人?」


響  「なんでだー! 自分はほんとに嘘なんかついてないぞぉ……! ホントにホントなんだぞ……」



古美門「裁判長。未来ある彼女をそんなに責めないでください。仕方なかったのです! 
    厳しい芸能界。生き抜くには個性が必要だったんです! 他にもいるではありませんか。
    自分がどっかの惑星から来たお姫様だと称したり、レモンになりたいなどと公言したり!
    それほどまでにキャラづくりとは大変なんです!! 傍から見れば、はっ倒したくなるそれも、
    本人たちはいたって真剣なのです!」


響  「キャラづくりなんかじゃないぞ!」



古美門「これは私の推理に他ならないのですが、響さんは当日現場を離れて町にいたのではないのでしょうか?
    売れてきたアイドルとは、どこも気が大きくなるものだそうで」

P  「ウチのアイドルはそんなことしない!」ガタッ

裁判長「傍聴人は静粛に」

古美門「どこもいうんですよ。ウチの娘にかぎっては、ってね」

P  「ぐっ……!」


古美門「続けます。現場の証言では、当時ADさんは叱責するディレクターに対し、
    『我那覇さんがメインMCなんだから、自分を特別扱いしろと』といわれた、といっていたそうです。
    番組プロデューサーに脅されていたから? いや、違う。本当に逆らえないなら、この場にだって
    出てくるのは難しいはずだ」

古美門「なら何故か。彼はアイドルのわがままに付き合って、要求を呑んでしまった。責任はあるが、
    せめて和らげるためにと、本当のことをDと番組Pに話した」

古美門「そしてその頃、我那覇氏は街中に居たところを同じ事務所の人間に見つかり、ペット共々現場に連れていかれた」


黛  「異議あり! 証拠がありません!」

響  「そんなことはしてない! 全部ウソだ!」

裁判長「せ、静粛に!」


黛  「そんな……」

響  「うぅ……、うぅぅー……」ウルッ



古美門「だがADさんにとって問題が起きた。彼が逆らってはいけない相手は、番組P、D、そして出演者のアイドル。
    しかも相手はメインMCだ。権力は十分にあり、Dとも仲がいい。彼女の行為を密告したADが制裁を受けるのは間違いない。
    だが幸いなことに、どうやら番組Pはその日を境に権力を弱めてしまったようですね」

古美門「そしてこの765vs961裁判。彼にとれる道はただ一つだった。勝手に降ろしたのは番組Pの命令だと、765プロと結託して証言し、
    番組Pを引きずりおろし、MCとDに媚びへつらうこと。TV業界が好きな彼が、唯一生き残れる道が、それだったんだ!!」

黛  「異議あり! 証拠に欠けた、飛躍した妄想です!」

裁判長「……」

黛  「裁判長!」


裁判長「……。意義を、認めます」



古美門「随分と悩まれたようで。いえ、全く、仕方のないことです。
    わたしが裁判長の立場なら同じことを思ったでしょう。片や証拠のない筋の通った話。
    片や証言だけはあるけれど? 明らかにおとぎ話に近い話!」

黛  「発言が不適切です!」


古美門「なら言い換えましょう。全員が全員! 自分以外誰一人他に見た人間のいない話!!
    しかもほとんどが関係者の証言!! 加えて、アニメのように現実離れしたハムスターの活躍!!!」


黛  「うぅっ……!!」



古美門「証拠と言ってはなんですが、妄言ついでに一つ。前回の証人尋問でもお判りでしょうが、当時の人気は
    765よりジュピターの方がありましたし、事務所の力も圧倒的に961>765でした。
    しかも765プロのP氏の発言によるなら、961社長は番組Pと懇意の仲だ。わざわざ危険を冒して潰す必要などなく、
    正式に要請すれば、適法にMCの交代が可能だったのではないでしょうか?」

裁判長「……ふむ」

黛  「……っ」

古美門「これはやはり、我那覇氏の不祥事をPとADが結託して隠ぺいするため、嘘をついたという可能性もあるのではないでしょうか?
    そしてそうなれば、当時長時間にわたって待機し、準備し、直前になって番組出演を取り消されたジュピターと、スケジュールが
    めちゃくちゃになった黒井社長こそ被害者であります」



古美門「即ち、もしこれが真実であれば、この件は961プロの妨害の証拠というよりむしろ、巧妙な765プロの妨害の証拠と言えるのではないでしょうか?」
  

古美門「そして、このようにして日常的に961プロへの嫌がらせが続いていたのであれば、
    この本件の事案も、いつものようにして行った嫌がらせの一種であれば、彼女らに情状酌量の余地はありません!
    やはり客観的に見ても、彼女たちが意図的かつ不当に黒井社長を乏しめている、と考えるのが妥当でです!!」


黛  「裁判長!」

裁判長「…………」

黛  「くっ!」






ピシッ

古美門「以っ上ぉ、でえぇーす!」 ドーン!






  


たるき亭 //


響  「自分、エグッ、う、うぞなんが、ヒック、づいでないぞおぉぉ。うわあぁぁん……!」

春香 「大丈夫、私は本当だってしってるから、ね? もう泣かないで響ちゃん」つティッシュ

響  「あ゛りがど……」チーン

真  「それにしても酷い裁判長だなぁ! 全然響の言うこと聞いてくれなかったんでしょ?」

響  「うん、ハム蔵の話をしたら急に聞いてくれなくなっちゃったんだ」

春香 「響きちゃんは悪くないよ。だって本当のこと言ってるんだもん」

真  「悪いのはあの横わけ弁護士に決まってるよ。絶対にあいつが何かしたんだ」

春香 「もしかして、賄賂、とか?」

真  「脅迫かも知れないよ? 息子をさらって判決を強要するとか、やりそうじゃない!?」


響  「いや、そんなんじゃないぞ……」

春香・真「?」

響  「実は、ちょっと黛先生のこと疑ってたんだよね。一回目の証人なんとかの時に、ホントのこと言ってるのに負けるなんて、そんなのありえないって。
    でも、ちがったぞ。あいつが喋り始めた瞬間に、みーんながあいつの言ってる言葉に圧倒されちゃったんだ。裁判長も、聞いてる人も、自分も。
    だんだん、ホントは自分、嘘をついてたような気がしてきて。ホントの事を言ってるのがあいつみたいに思えてきたんだぞ……」

真  「ホントに?」

響  「ホントだぞ! こう、言いにくいんだけど、なんていうのかな? そう! たとえばフェスとかでさ。
    凄い冷えた客席を、一気に熱狂させるアイドルがたまにいるでしょ? そんな風な、……とにかくなんかすごかったんだぞ!」

春香 「でも、もしそうだと。負けちゃうかも、ってことだよね」



一同 「「…………」」



春香 「だ、大丈夫だよね?」

真  「大丈夫だよ。うん」

響  「……うん」




一同 「「…………」」



春香 「そ、そういえば響ちゃん。今日貴音さんが一緒じゃないよね。めずらしいね……」

真  「そうだね……」

響  「めずらしいな……」


一同 「「…………」」




春香 「……出よっか」

真  「そうだね」

響  「ごちそうさまでしたー」



ガラガラ



?? 「あれ? 遅めの昼飯?」

春香 「あ、加賀さん」

響  「いや、ちょっと話し込んじゃって。皆に慰めてもらってたんだぞー」

加賀 「そうなんだ。そういえば響ちゃん。こないだ災難だったらしいね。ドンマイ。俺は響ちゃんの味方だから

響  「えへへ、ありがとうだぞ!」


加賀 「なんか困ったら言ってよ。力になるからさ。 ……店長ー! 店長ー! 上に注文届けてきましたー!」

店長 「おう、じゃあ空いてきたし、休憩入っていいぞ」

加賀 「なんか作っていいすかー?」

店長 「材料費はもらうぞ」



コツ コツ


春香 「加賀さんって、響ちゃんに優しいよね」

真  「もしかして……」

響  「いや、ちがうちがう! そんなのじゃないぞ!」

春香 「でも響ちゃんかわいいし……」

真  「それにこの間『馬鹿っぽくて、知的で、明るくて、おしとやかな子』がタイプだっていってたし」

響  「馬鹿っぽい、って。真、それ絶対ほめてるのかー!?」

春香 「純粋、って意味だよきっと。それに響ちゃん明るいし、でも知的な読書家で、結構インドア派でおしとやかだよね?」

真  「そーそー。切ない恋を演じる『クリスマスライナー』のCMに出たりさー。そう考えると響って女子力高いなー」

響  「まぁなっ! 自分完璧だから!」

真  「僕なんてこないだ不良の高校生役回されそうになったんだよ! そろそろキャピルンしたヒロインがやりたい!!」

響  「真となら大丈夫さー」ガチャ


響  「ただいまー!」バタン


P  「おかえり響」

小鳥 「皆、まだ時間あるけど、早めにボーカルレッスンの準備しておいてね?」

響  「わかってるぞー。ハム蔵もただいまー! ……ってあれ? ハム蔵?」

響  「ハム蔵ー? どこだー?」

響  「……」




響  「……居ない!?」



一同 「「えぇっ!?」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

古美門事務所 //

回想、、、


古美門「前回の証人尋問で、我那覇響を見事、木端微塵にしてやった。
    現在の奴に対するセキュリティの重要度が下がっていることだろう。
    今がチャンスだ。蘭丸君。見た目ジョニーズな君の色気で奴をオトし、こちらの手駒にしてやれ!」

蘭丸 「でも貴音ちゃんがまだひっついてるよ」

古美門「ならひっぺがすまで。こいつは、成程ラーメンが大好物か。時に服部さん、ラーメンは作れますか?」

服部 「はっ、昔中国で太極拳の師範をしていた頃に……」


古美門「さすがです。蘭丸君、セッティングを頼む」

蘭丸 「あいよ! 屋台やってる知り合いに掛け合ってみる」

古美門「さぁて、攻撃開始だ」


蘭丸 「いけるかなぁ。なんっかあの事務所、いつもより手ごわい感じなんだよなぁ」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



裏通りにある屋台 //



貴音 「……!」



貴音 「なんと芳醇ならぁめんの香り。じいや!」


シュタッ

じいや「貴音様、ここに」

貴音 「今日はあちらのらぁめんにします」

じいや「はっ」

貴音 「店主、失礼いたします」

ペラッ



服部 「ようこそいらっしゃいました」




じいや「……! 貴方は!!」

服部 「! これはこれは。お懐かしいお顔ですな」

じいや「驚いた、まさかこのようなところであなたに出会えるとは……」

貴音 「じいや、知っているのですか?」

じいや「当然です。貴音様。なぜならば彼は我々の――」

服部 「いえいえ、他愛もない出来事でした」


じいや「……承知しました」


服部 「昔話などすれば長くなります。
    さっ、伸びないうちに、どうぞ」コトン


貴音 「えぇ、是非に。いただきます」




服部 「今日はよく晴れ渡っておりますな」

貴音 「えぇ」

服部 「これならば、月の光も隈なく地上を照らすことでしょう」



貴音 「……まことに」


765プロ 前 //

同時刻、、、



チューチュー! ヂュー!



加賀蘭丸「ハム蔵ちゃーん。良い子にしててねー。響ちゃんをオトさないと、古美門先生に怒られちゃうからさ」



ハム蔵「ヂュー! ヂュー!」

蘭丸 「はいはい、ヒマワリの種だよー。高いヤツ」

ハム蔵「! モヒモヒモヒ」

蘭丸 「さて、響ちゃんまだかなー?  ……おっ!」





響  「ハム蔵ー! どこだー!」


蘭丸 「よぉし……」


響  「ハーム蔵ぉー! どこなんだー! 返事してくれぇー!!」

響  「ハム蔵ぉ……。もしかして、自分を見限っちゃったのか!?」

響  「そんな、ハム蔵……ウグッ、ふえぇーん……!」



蘭丸 「ひーびきちゃん!」


響  「えっぐ、か、加賀さん……。大変なんだぞ! ハム蔵が! ハム蔵がー!」

蘭丸 「君の探し相手はこの子かな?」


ハム蔵「! チューー!」ジタバタ




響  「! ハム蔵! ……どこで!?」

蘭丸 「さっきたるき亭に入ってきてね。響ちゃんの下に連れて行こうかと」

響  「そっかー! よかったー! 加賀さんはやっぱりいい人だぞ!」



蘭丸 「どうかな? 本当にいい人だと思う?」

響  「えっ?」


ハム蔵「ヂュゥーー!!」グググ




響  「だ、だって、ハム蔵見つけてくれたし。後、いつも優しくしてくれるさー」

蘭丸 「もし優しいだけの奴だったらさ。もしたまたま見つけたのが君のプロデューサーだったとしても素直に喜べたよ。
    でもそうじゃないんだ。俺は、きっと嫉妬した」

響  「へ?」

蘭丸 「響ちゃんにありがとうって言ってもらったり、その笑顔をみるのが、俺以外の他の誰かだったら、絶対嫉妬したよ」

響  「嫉妬、って。や、やだなー何言ってるんだ? 加賀さ――」

蘭丸 「はぐらかすなよ」スッ

響  「ひぅ!」

蘭丸 「俺の気持ち、響ちゃん? わかってくれてるよね?」

響  「い、いや、だって、その。困るぞ! だって……、ほら、自分アイドルだし!」

蘭丸 「そっか、アイドルだもんね」

響  「そ、そうだぞー!」 



蘭丸 「じゃあさ、もしアイドルじゃなかったら。俺の事受け入れてくれた?」

響  「う、うん! そうだぞ。まぁ加賀さんは優しいし、嫌いじゃないけど、
    でもアイドルだから! アイドルだからね! うん、仕方ないさー!」

蘭丸 「じゃあさ、いっそ壊しちゃおうよ。この事務所」

響  「んなっ!?」

蘭丸 「今、裁判やってるんだよね? 響ちゃんの証言ひとつで、しがらみなんて真っさらだよ」

響  「そういうわけにはいかないよ! だって自分765プロのアイドルだし――」

蘭丸 「ねぇ」ボソッ

響  「ちょ! な、なに!? 近いっ!」

蘭丸 「俺の前ではさ、ただの響ちゃんでいてよ。……ね?」ボソボソ

響  「……加賀さん、今日なんか変だぞぉ……」


蘭丸 「ごめんね。壊すなんてできないよね。困らせちゃったね。やっぱり俺は優しくなんかないよ。
    ただ、嘘を通じて、君と深い関係になりたかったんだ。響ちゃんが好きだから」

響  「うぅっ……」

蘭丸 「君と秘密を共有したいんだよ。例え嘘と嘘でつながった関係だとしても。
    僕は君と一緒に居たい」


蘭丸 「ね? だからちょーっと俺のお願い聞いて――」






ハム蔵「ヂューーーー!!」スポン






トットコトットコ!

蘭丸 「あ、ごめんハム蔵ちゃん返すの忘れてたね。それでさ、俺のお願いを――」




ハム蔵「チューチュー! ヂュヂュヂュ!」

響  「え? なに? どうしたんだハム蔵ー? ふんふん」 


蘭丸 「そういえば響ちゃんって動物としゃべれるんだってね。俺そういう純粋なとこも大好k」



響  「えぇっ!? 加賀さんに連れ去られてただって!?」





蘭丸 「…………へ?」

響  「何々? 事務所に入ってきて、……寝てたところを捕まえられた!? 全部加賀さんの自演だって!?」

蘭丸 「ちょ、え? 響ちゃん、見てたの?」

響  「ハム蔵が全部教えてくれたぞ!」

蘭丸 「え……? 何?  ……動物としゃべれるって、マジなの?」

響  「勿論だぞ。ハム蔵は家族だからな。何、当然のことを言ってるんだー?」

蘭丸 「……えぇー」

響  「それよりハム蔵に聞いたぞ! お前、古美門の味方なんだってな!」

蘭丸 「そこまでばれてんの!? あーあ、こりゃ逃げるしかないな」


響  「すぅー……」



蘭丸 「? 何やって――」












響  「わ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! ! !」





蘭丸 「え゛ぇ!? ちょっ!」





     <ちょ、な、なに今の!      
                     外からか?>
<何? どうしたの!?




蘭丸 「どっからそんな声……!」

響  「自分、毎日ボイトレしてるんだからな! なめないでほしいぞ!」


   ざわざわ
          ざわざわ


蘭丸 「やっべぇ……」





ドタドタ

P  「大丈夫か響!」
春香 「ちょ、今の響ちゃん!? 何どうしたの?」
真  「敵!? 古美門がきたの!?」

  
響  「三人とも聞いてくれ! 実は加賀さんは古美門の仲間だったんだぞー!」


春香 「えぇっ!?」
P  「なんだって!? 淳之介君が!?」

真  「加賀さん。ちょっと、話を聞かせてもらいますよ?」


蘭丸 「わるいけど、こっちも捕まるわけにはいかないんでね。んじゃね! 
    あと響ちゃん! タイプなのはマジだから、じゃっ!」タタッ


真  「待てっ!」ダッ

P  「真! 春香、響。黛先生と皆に連絡しておいてくれ! 待て、真!」ダダッ


春香 「は、はい!」
響  「わかったぞ!」



 道 //



 タッタッタッタッタ!  

真  「まてーーーーーっ!!」

蘭丸 「知ってたけど、早いなあの子! 君ホントに女の子なの!?」

真  「失礼な! ボクはどこからどう見ても女の子じゃないかー!」

蘭丸 「わかってるよー! 君みたいな子は将来綺麗になるよ!」

真  「なっ……!」

P  「わかってるじゃないか淳之介君!」

蘭丸 「当然! 真ちゃんは王子様より清楚なワンピース姿とかのほうが、っと、似合いそうだよね!」

P  「そのとおりだ!」

真  「あれ!? あれ!? なにこれ!? ドッキリ!?」

P  「君にはやはりウチのプロデューサーになって欲しかったよ!」

蘭丸 「ごめんねー! でも将来は役者として所属するかもよー!
    そん時は、俺が主役で真ちゃんがヒロインの舞台をよろしくー! キスシーンありありで!」

P  「応相談だな! その頃にはヒロインとしての真は、引く手数多だろうからな!」

真  「ねぇ! なにこれ!? 二人ともやめて! 嬉しいけど、なんか、それ以上に恥ずかしい!!
    っていうか何このノリ! なんで爽やかなの二人とも!」

蘭丸 「Pさん! 隣のお姫様がペース落ちてるよー!? 今すぐ送ってあげた方がいいんじゃない!?」

P  「どうした!? 真! 大丈夫か!?」



真  「おーまーえーらーのせいだろーーがーーーーーーーー!!!!!」



公園 //



【 ブランコ 】^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


  きぃきぃと 揺れるブランコ
  
  大きく足を振り上げて 大空に飛べる気がして

  小さな 小さな 飛行船
   

  でも2つの鎖につながれて 飛べそうで飛べない飛行船

  鎖 切れて 大空へ  飛べたらどんなにいいだろう

 
 
  わかってる 本当は  飛ぶのが 怖い


  飛べば 地面に 落ちるから


  鎖は私を縛り付けて  鎖は私を守ってくれる



  
  心が言った  「大空の彼方へ 飛んでいたい!」
  
  でも体が言う 「地面に足を つけていたい!」

 
  

  そんなわたしは 宙ぶらりん
  


   
  ふらふらと 揺れる心


  きぃきぃと 揺れるブランコ 
  
 

  きぃきぃと、 いつまでも、 揺れているだけのブランコ。





^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



雪歩 「えへへ……」ホッコリ



雪歩 「やっぱり穴の中でポエムを書くと捗りますぅ」

雪歩 「こんどプロデューサーに頼んで歌にしてもらおうかな……」

雪歩 「えへへへへ」


雪歩 「あ、もうこんな時間。そろそろ出ないと……んしょ、んしょ」



雪歩 「さて、埋めないと! 来た時よりも美しく!」



<マテー!  


雪歩 「? あれって……」



ダダダダダダ


真  「ぜーったいぜーーーったい許さないんだからなーー!!」

P  「お、おちつけ真!」

蘭丸 「からかってなんかないって! ホントに真ちゃんは魅力的な女の子だよ!!」

P  「そうだそうだ! 今度ドラマのヒロイン役のオファーが来てるんだぞ!」

真  「えっ? ホントですか!? やーりぃ!」



雪歩 「真ちゃんにプロデューサー、と、あれは、たるき亭の加賀さん?」



雪歩 「あ、こっちにくる」



真  「あ! 雪歩! 良いところに!」

P  「淳之介君を止めて!」

真  「通せんぼして! 通せんぼ!」


雪歩 「え? え!?」


蘭丸 「ごめん、雪歩ちゃん、そこどいてもらうよ!」ヒョイ

雪歩 「え? あ、まって!」

蘭丸 「事情があってね、待てないんだなこれが!」





雪歩 「そうじゃなくて穴!」



蘭丸 「……へ?  うわあああああっ!!!」ドサッ






雪歩 「だ、だいじょうぶですかぁ?」


蘭丸 「っててて……」


雪歩 「あ、あの! 怪我とかしてるんじゃ……。お手当しますぅ!」


蘭丸 「いや、大丈夫大丈夫! 怪我なんてないから」


真  「いやいやー、念のためですよ念のため」

P  「事務所に救急箱があるから、淳之介君も連れて行ってあげるよ」

真  「それじゃあ一名様、765プロにご案内ー♪」

蘭丸 「だぁぁ。あっちゃー……」



雪歩 「……? ……??」


765プロ 社長室 //


3:10pm


亜美 「……なぁ、全部話して、楽になったらどうだー?」

真美 「田舎のおっかさんが泣いてるぞー?」

蘭丸 「……いや、知らないでしょ二人とも」


真美 「君が悪いんじゃない。コミーが悪いんだ」

亜美 「そうだろう!?」バァン!

蘭丸 「悪いけど、詳しくは話せないよ。亜美ちゃんも真美ちゃんももうやめなよ」



亜美 「コームシッコーボーガイだ!」

真美 「タイホするー!」

蘭丸 「何が!? なんもしてないじゃん!?」

亜美 「え? でもあれってケーサツの人に逆らったらタイホされるやつっしょ→?」

真美 「なんにもしてなくても怒らせたらタイホされるあれだよね→?」

蘭丸 「その認識は危険すぎるよ……」

亜美 「とにかく! 加賀ぴょんはタイホだよタイホ!」

真美 「さぁ、どうやってはつかしめちゃおうかねー?」


亜美・真美「「んっふっふ~」」

亜美 「こちょこちょの刑とか→?」

真美 「いやいや→ それってご褒美っしょ→」

亜美 「そっか→ じゃああれだね、恥ずかしいことさせるとかだね!」

真美 「セーシン的に追い詰めないとね」

蘭丸 「君らには無理じゃないかなー? 俺をビビらせるなんて――」



亜美 「とりあえず一発芸やってみてよ」


蘭丸 「……え?」

真美 「ほらほら→ めーれーだよ→!!」

亜美・真美「「はやくはやく→!!」」

蘭丸 「……。コホン、えー」




蘭丸 「どーもー! 滋賀、佐賀、加賀でーす!」




亜美 「…………」

真美 「…………」

蘭丸 「……なんだよ」





亜美 「『どーもー!』」

真美 「『滋賀、佐賀、加賀でーす!』」


蘭丸 「なんだよ!」




亜美 「なんかね……、うん」

真美 「ないよね……、うん」

蘭丸 「なんで!? 実は持ちネタだったんだけど!」


亜美・真美「「うわぁ……」」

蘭丸 「なんだよ。え? これって人前でやったらそこそこウケてるんだけど?」

亜美 「うわわ。真美→! 今思い浮かんじゃったよ→! 加賀ぴょんが自信満々に
    皆の前で、これを披露しちゃう姿!!」

真美 「真美もだよ→! そんで周りも『あれ? これ、スベリ芸? いや、でもイケメンだし恥かかせらんないし、
    しかも自信満々だし、笑っといたほうがいいよね? だよね? じゃあ笑っとくね? わはははは……』
    みたいな絵面が浮かんじゃったよ→!!」

蘭丸 「おいやめろ」

亜美 「こんなのTVで流したら放送事故だよ→!」

真美 「気の毒すぎて、お茶の間の前の視聴者も気を遣って笑うレベルだよ→!!」


蘭丸 「やめろおお!!!」



律子 「はいはい、あんたたち。おしまいおしまい」


亜美 「えー、加賀ぴょんは765プロをお通しいれようとしたんだよ→!」
真美 「まだまだ繊細が足りないよ→→!」

律子 「『陥れようと』、『制裁』! あとそんな物騒な言葉使うんじゃありません」

律子 「ちょっと二人とも、隣に行ってなさい。後、春香と響と真はボイトレいってらっしゃい。
    そうね、なんだったら亜美も真美も春香たちについていきなさい」

春香 「亜美、真美? 行こう?」

亜美・真美「「BooBoo!!」」



バタン



小鳥 「さて」


黛  「……蘭丸君」


蘭丸 「…………」

小鳥 「…………」

P  「…………」

律子 「…………」

黛  「ねぇ、蘭丸君、こっちについてくれなくてもいいの。ただ今回の調査を諦めてくれるだけでいいから、ね?」

蘭丸 「真知子ちゃんも知ってるでしょ? 古美門先生は大切なクライアントなんだって」

黛  「そうだけど、今回は……」

蘭丸 「俺もさ、765プロの皆は純粋でかわいいし、騙すのは申し訳ないと思うよ。でもそれとこれとは話が別。
    古美門先生がやめろって言ったら、すぐにでもやめたいけどねー」


黛  「うぅ。どうすれば……」


律子 「黛先生、私に任せてもらえませんか?」

黛  「え?」

蘭丸 「何? 律子ちゃん? わるいけどそう簡単に諦めたりは――」



律子 「プロデューサー殿から聞きました。俳優だそうで」

蘭丸 「……、それが何か?」


律子 「実はねぇー、今。ドラマのオファーが来てるんだけど、扱いに困ってるのよねー」

蘭丸 「へぇ。それは大変だね?」

律子 「今度テレビ朝目でドラマをやるけど、高校生役でに使えるイケメンの役者はいないか、って聞かれてるのよ」

蘭丸 「ドラマ。へぇ、ドラマー……」

P  「主演は東山綺之。放送時間は夜の9時から10時。おいしい時間だよ」

小鳥 「小さい役ではあるんですけど、立派なゴールデンタイムよ」

律子 「でも残念ながらうちの事務所のアイドルは全員女性。しかたなく真にやらせよう、ってことになったんだけど。
    ちょっと違うなーって言われてたのよ。もっと男らしさが欲しいって」


蘭丸 「へ、へぇー? それで?」

律子 「小鳥さんも言ってたけど、淳之……、じゃなくて蘭丸君。あなたアイドルになれるくらいのイケメンじゃない?」

小鳥 「そうですピヨ! 後ダンスと歌ができたらジョニーズに入ってもおかしくないくらい!」

律子 「身体もしっかりしてるし、我が事務所から判を押して送り出せるわ」

蘭丸 「……いやいや! ダメダメ! ダメっすよ! これでも蘭丸、草のもの! 裏切るわけにはいかないっす」


律子 「そっ。じゃあ仕方ないわ。古美門先生の所に帰してあげましょう」

蘭丸 「え!?」

黛  「でも……」


律子 「このままいられたって困りますよ。ずっと口を割らないっていうんだったら、素直に帰らせてあげましょう。
    拉致監禁だとか言って、あの横わけ弁護士に難癖付けられちゃいますよ」

P  「……。そうだな! 蘭丸君は悪くないもんな」

小鳥 「えぇ、仕方ないことですよ。今日は帰って貰いましょう」

P  「ところで律子。この朝目さんの返事まだしてなかったんだな。俺がお断りの電話入れておくよ」

蘭丸 「……」

小鳥 「そうですね。いつまでも保留じゃ先方に迷惑ですもんね!」

律子 「えぇ、もったいないチャンスですが。仕方ありません。断りを入れてください。
    だって誰もやらないんですものね?」



蘭丸 「……あの」



P 小鳥 律子「「「はい?」」」




蘭丸 「……。ちなみにだけど、それってなんてタイトルなの?」


小鳥 「裏切るわけにはいかないんじゃなかったの?」

蘭丸 「聞くだけっすよ」


律子 「『お前の漱石が笑っている』、ってタイトルよ。不良物の学園ドラマ」


蘭丸 「……いいな」ボソッ





P 小鳥 律子「「「ん?」」」ニッコリ




蘭丸 「いや……、その」


律子 「蘭丸君。もう一度だけ聞くわね? このドラマ、出たい?」

P  「それともこの依頼、断る?」

小鳥 「先方のご迷惑にもなるから、出来れば早く決めてくださいね?」



P 小鳥 律子「「「ね?」」」ニッコリ







蘭丸 「……っだあぁー……」





     



一端休憩~。キリがいいので。
メシとか風呂行って来る。9時までには再開するはず。


次からややシリアス気味な流れになるっす。




長くてすまんね。見てくれている人はありがとうございます。マジで。

dotupだとすぐ削除されるから
画像はimgurとか他のろだに上げた方が良いかと

9時~。っていうことで再開~。


>>216
助言感謝。imgurにあげました。
始めて使ったわ。


>>94のザ・テレビチャンの画像です。
http://i.imgur.com/9VanJsS.jpg?1



~ここまでのあらすじ~--------------------------------------------------------------------

 攻撃の主力、加賀蘭丸を封じられた古御門。しかしまだまだ余裕の表情。それもそのはず。これまで
765プロの抵抗をことごとく切り替えしてきたからだ。
 一方、黛も765プロの為にも、大手を振って古御門事務所に戻るためにも、きちんと結果を残したい。

 だが裁判を通じて古御門と黛、高木と黒井の対立に注目が集まる中、徐々に765プロに対する世間の目が変わってきて――。

-----------------------------------------------------------------------------------------



続き投下します。


古美門事務所 //


古美門「なんだって?」

黛  『だから、蘭丸君は封じましたので』

古美門「何を馬鹿な……」

蘭丸 『ごめんね古美門先生! どうしても断れなくてさ……。あっ、でも敵に回るとかじゃないから。
    しばし休養ってことで。これにて!』

古美門「待て待て待て! 『これにて』じゃない! 認めないぞ私は!」

黛  『というわけですので。それでは』ブツッ


古美門「それではじゃない! おいこら! 黛! ……ちぃい!!」




黒井 「どうしたのだね?」コツ

古美門「スパイが懐柔されました」コツ

黒井 「それは何とも無様な。で、そいつは攻撃の要なのだろう? 大丈夫なのか?」コツ

古美門「戦略は転換せざるを得ませんが、誤差程度です。私の勝利はゆるぎない」コツ

黒井 「今のところ連戦連勝だからな」コツ

古美門「えぇ、今のところ裁判長の心証は圧倒的にこっちに傾いています。このまま押し通せるでしょう」コツ

黒井 「ククク、頼りにしているよ古美門くぅん」コツ

古美門「次回は原告本人尋問、黒井社長。あなたが法廷の場に立ちます」コツ

黒井 「構わん。王者の姿を見せてやろう」コツ


古美門「話が事実ならば、あなたは本当に詐欺行為に加担していなかった。例え意思があったとしても、
    実際に実行しなければ犯罪ではありませんからねぇ。この世にはテレスクリーンもなければ、
    ビックブラザーもいないんだ」コツ

黒井 「私は罪のない人間だ、ということだな」コツ

古美門「えぇ。奴らはそんなあなたを糾弾した、ということです。事実はどうあれ、法廷では今、
    こちら側に分がある。ここを普通に守り通して、後は、被告本人尋問で止めを刺す」コツ

黒井 「我々の勝利は目前というわけか」コツ

古美門「いえ。既に勝利したも同然です」コツ

黒井 「クーッククク、愚かな765プロめ! 私の力を思い知れ! そして絶望しろ! 私こそが正しかったと屈しろ!
    奴らの心を、高木の持論を、ノワールの色に染め上げてやる!」コツ


黒井 「チェックメイトだ」コツ




http://i.imgur.com/HlJ3D9w.jpg?1





古美門「さすが黒井社長。チェスの腕前も達人級でいらっしゃる」

黒井 「なんのなんの。古美門君、キミも中々の腕前だったよ」

古美門「ではお次は私自慢の水晶のコマでチェスをいたしませんか?」

黒井 「むっ、これは手ごわい」

古美門「お次は社長がアウェーというわけです」

黒井 「フン! 心してかからねばな!」

古美門「次はどんな模様にしましょうか?」

黒井 「そうだな、Xばかりではなんだ。もう少し難しい模様にするか」

古美門「腕が鳴りますな」

黒井 「久々に本気を出す時が来たようだ」

古美門「フフフフフフフ」

黒井 「ククククククク」


服部 「お二方。差し出がましいようですが、チェスのルールはご理解しておいでで?」




古美門「ハーッハッハッハッハッハ!」

黒井 「ダーッハッハッハッハッハ!」



2ちゃんねる掲示板 //


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961と765の裁判wwwwww


365:無名アイドルさん:20XX/X/XX(日) 15:38:16.32 ID:nib4qa9JO
  結局、この裁判ってどっちが悪いの?

367:無名アイドルさん:20XX/X/XX(日) 15:38:25.52 ID:oJ5NpTTH0
  961が悪でFA 
  ソースは俺

368:無名アイドルさん:20XX/X/XX(日) 15:38:56.44 ID:8GJHjFLA0
765でしょ。なんか証言がアレすぎる絶対何か隠してる

369:無名アイドルさん:20XX/X/XX(日) 15:39:12.05 ID:SDSQTcr70
心情的には961
ただ客観的には765   



765プロ好き集まれ~


152:今週のアイドルランキング圏外さん:20XX/X/XX(水) 21:29:53.21 ID:1rRR5Kx/0
裁判やばくね?
 
153:今週のアイドルランキング圏外さん:20XX/X/XX(水) 21:30:58.32 ID:mEp1uxlV0
っていうかこれマジで765なんかやってたんじゃね?

154:今週のアイドルランキング圏外さん:20XX/X/XX(水) 21:31:29.00 ID:Fs4A+nEm0
>>153
荒らし乙

155:今週のアイドルランキング圏外さん:20XX/X/XX(水) 21:32:18.38 ID:mEp1uxlV0
>>154
は?

156:今週のアイドルランキング圏外さん:20XX/X/XX(水) 15:32:48.72 ID:/08TXszJP 
  これだから765信者はw こらもう765無理だわ



ワイ「765プロって最近TVでよく見るな~。検索したる」カタカタ

1:歌歌えばアイドル:20XX/X/XX(金) 01:16:10.82 ID:r4RM+lmG
  ワイ「なんやこれ……、訴訟されてるンゴ……」
 
2:歌歌えばアイドル:20XX/X/XX(金) 01:17:28.32 ID:X5+8QmO00
  ワイ響ファン
  でもさすがに証人尋問の発言で草不可避www

3:歌歌えばアイドル:20XX/X/XX(金) 01:17:42.75 ID:DgQ9jWMGO
>>2
詳細

4:歌歌えばアイドル:20XX/X/XX(金) 01:18:46.05 ID:X5+8QmO00

  >>3
響 証人尋問、か、765プロ 裁判 まとめ 
  で検索したら幸せになれるで


5:歌歌えばアイドル:20XX/X/XX(金) 01:18:47.28 ID:/W+lp7460
業界最大手 弱小プロ 生き残るため 仕方なかった
  
6:歌歌えばアイドル:20XX/X/XX(金) 01:20:12.59 ID:lc9yKPkd0
???「きっとそう(961が犯人)だって思うな(^-^)」

7:歌歌えばアイドル:20XX/X/XX(金) 01:20:35.69 ID:l1e1B1230
>>6 おはミキ







               
 765が悪いんじゃない? 
            どっちもどっち     
    765に一票


 なんかめんどくせーな    いや、961の陰謀だよ

枕とかは?   芸能界なんてこんなもん

  どうせあいつらもやることやってるよ

うざいうざいうざい
       喧嘩両成敗!
                キラキラ(笑)      
 大体もとから嫌いだったんだよな
           マスゴミとTVの陰謀だ
TV業界のゴリ押し
           あんなの大したことない奴らだし   
   961が悪い
        ウザッ
どっちが悪い?     765が悪い

 関係ないとこで争うな見苦しい

      もうこいつら鬱陶しいわ 

代わりなんていくらでもいるっしょ    
                  消えろよ
  TVから消えろ
   





 
      俺ファンもう辞めるわ  
 



音楽スタジオ //

千早 「どういうことですか!?」

音楽D「ごめんねー、俺も千早ちゃんに歌ってほしかったんだけどさ、
    上から使わないように言われちゃってんのよー」

P  「そんな! ずっと打ち合わせで進めてきたじゃないですか! それをいきなり……」

音楽D「ほんっとごめん」

千早 「謝られても困りますよ!」


音楽D「チッ、あのさぁ、悪いのはそっちでしょ?」

千早 「えっ?」

音楽D「前から言ってたよね? この曲はCMに使われるって。綺麗どころの雰囲気で千早ちゃんにオファーしてたけどさ、
    そっちって最近イロイロ下衆い噂ながれてるじゃんか? ん?」

千早 「あんなものはただの噂です」

音楽D「知ってるよ? でもさ、こっちもイメージ商売なわけ。だから別の奴に歌わせろってさ」

千早 「そんな……」

音楽D「んじゃ、またよろしくね」

P  「……はい、お疲れ様です」

千早 「……くっ」

765プロ //

律子 「いえ、そのようなことは。……それは私の口からは何とも、え? あ、もしもし? もしもーし!」

小鳥 「……また、ですか?」

律子 「……水曜9時からのバラエティ、降板してほしい、と」

小鳥 「…………」

律子 「ハァ……」

ガチャ

P  「ただ今戻りました」

小鳥 「あれ? プロデューサーさん早いですね? 千早ちゃんの収録は――」

P  「……」フルフル

律子 「そっちもですか……」

小鳥 「仕事は目に見えて減る一方。苦情の電話は増える一方」

P  「いつまで続くんでしょうか……」

律子 「というか、このままじゃ……」

一同 「「「……」」」

P  「そういえば、社長は?」



律子 「最近姿を見かけないんですよね。こんな時になにしてるんだか」

部屋 //


--------------------------------

365:無名アイドルさん:20XX/X/XX(土) 18:45:15.09 ID:nakrqa8J1
961が悪い  

367:無名アイドルさん:20XX/X/XX(土) 18:45:15.42 ID:abaY61bH
   765が悪い

368:無名アイドルさん:20XX/X/XX(土) 18:45:15.52 ID:uMwMp7JZ
どっちも悪いよ見苦しい

--------------------------------

絵理「……」カチカチ


絵理「……はぁ」


サイネリア『センパイ、最近元気ないデスね』

絵理 「うん、ちょっとね。765プロのみんな、大丈夫かなって」

サイネリア『あー、アタシも見ました。なんか酷いことになってますよねー』


絵理 「どうなっちゃうんだろうね」

サイネリア『でもこれってネットじゃこうやって激論になってマスけど、正直961プロの仕業だって思うんデスよね。
      ただ向こうについてる弁護士がメチャ強らしくて、それで苦戦してるみたいデス』

絵理 「そうなんだ。サイネリア詳しいね」ピロリロ~ン

絵理 「メールだ。誰からかな?」


   [尾崎]


絵理 「尾崎さん? なんだろ? ……えっ?」

サイネリア『センパーイ? どうしたんデスか?』


絵理 「それが……」


765プロ //

黛  「……え?」


高木 「……君を信頼していないわけではないんだ。だが、念には念を、だ」

P  「そんな……」

律子 「いくらなんでも急すぎますよ! だって――」

高木 「相手方も了承してくれている。随分と無茶を引き受けてくれたものだと思っているよ。
    なに、ほんの少しの出張か何かだと、思ってくれればいい」

小鳥 「最近見ないと思ったら、こんなことをなさってたんですね」

高木 「……私はね、彼女たちを、私の理想のアイドルだと思っている。
    そしてそれを支えてくれる君たちも、私の理想だ。長い年月をかけ、友人と決裂してでも
    守りたいと、そう思えるようなな。だから何があってもいいように手を打ったんだ」

P  「社長!」

高木 「こんなつまらないことで、君たちの経歴に傷を付けたくないのだよ」

律子 「社長」

高木 「君たちならば、きっとできる」

小鳥 「社長……」


高木 「だから――」


黛  「……」




高木 「君たち全員、876プロに移籍してもらう」








   



古美門事務所 //


 『高木社長(765プロ)、裁判全面降伏か?』
  
    『765プロアイドル、876に大量移籍!?』

『社長告白、「私が961プロを陥れました」』

    『命令されていたアイドルたち。ワンマン社長の闇』



古美門「なんだこれは……!?」

服部 「はっ、どうやら今朝、出版社や関係各社に、アイドルたちの移籍と高木社長の謝罪文が送られたようで」

古美門「黛め、何のつもりだ。むざむざ負ける気か」

服部 「どうやら、高木社長はアイドルたちを守るために、一人で腹を切るおつもりなのでは?」

古美門「くだらない真似だ……」

服部 「黒井社長にはどのように?」


古美門「まだ和解はしていません。これからすることになるでしょうが、奴らは金が無い。
    恐らく額を吊り下げてくるでしょう。とんでもない、きっちり1億。びた一文まかり通りません。
    服部さん。黒井社長には、動揺せず、私に任せろ、と伝えてください」

服部 「はっ」


961プロ //



黒井 「…………」


黒井 「馬鹿なことを」


黒井 「高木め」


黒井 「……」




黒井 「……クッ」


876プロ //


石川 「私が876プロダクション社長の石川実よ。急な移籍騒動で心身ともに疲れているとは思うけど、
    そうは言ってられないわ。ビシバシ働いてもらうから、そのつもりで。あなたたちも早く打ち解けるように」


愛  「はいっ!」

絵理 「はい……」

涼  「はい」    



765組 「「…………」」



P  「お前たち。返事は?」


亜美 「だって! こんなのないよ!」

真美 「そ→だよ! 何の相談もなく、こんなの酷いよ!」

雪歩 「それに、社長が犯人、みたいな記事が流れてますし……」

真  「僕たちは、本当に何もしてないじゃないか! こんなのおかしいよ!」

律子 「わかってるわよ。でも今はこらえて……」

真  「でも……」

石川 「でも、じゃないわ。やってもらわなきゃ困るのよ。これはウチにとってもチャンスだと思ったから、
    こっちも爆弾をかかえたの」


まなみ「社長、そんな言い方」

石川 「当然よ。こっちだって守りたいウチのアイドルたちがいるんだもの」




愛  「 あ の っ ! ! !」




一同 「!?」ビクッ

石川 「……っ。愛、もうちょっと音量抑えなさい」


愛  「ご、ごめんなさい!」

まなみ「どうしたの? 愛ちゃん」

愛  「は、はい! えっとですね! その……、」

愛  「私! 難しいことはよくわからないんですけど!」

愛  「一緒にがんばりましょう!!  ……は、エラソー、かな?」



愛  「フツツカモノですが! よ ろ し く お 願 い し ま す っ ! ! !」ドーン




絵理 「愛ちゃん、声おおきい?」

愛  「あっ!」

涼  「えっと、愛ちゃんが言いたかったこと、というか。これは私たちの総意なんですけど……」

涼  「今回の事、詳しくまでは知らないのでこんなことを言うのは大変失礼なんですけど、
    私たちにとってはチャンスなんです」

律子 「……」

涼  「だって、本来ならまだ肩を並べられないような大先輩方と、こうやって一緒の場所に立てる。
    知名度的にも、技術的にも、私たちの飛躍のチャンスだと考えてます」

涼  「だから、短い間かも知れませんが、どうか一緒にやっていければいいな、と思っています」

涼  「どうか、よろしくお願いします」ペコ



愛  「そうです! そういいたかったんです!!」

絵理 「さすが涼さん」

涼  「もー、私だけじゃなくて、二人もちゃんといってよー」

絵理 「えっと、私、口下手だから?」

愛  「私、声大きいですから」

涼  「愛ちゃん、関係ないでしょ、それ」



石川 「私はね、高木社長に頼まれたから、そしてこの子たちの成長につながると思ったから、あなたたちを引き取った。
    ゴシップ的な知名度が欲しかったわけでも、憐みか何かでとったわけでもないわ。ウチの利益のためにとったのよ」


P  「石川社長……」

石川 「あなたたちはこの子らの先輩でしょう? だったら後輩の面倒を見て、手本を見せて、育ててくれるくらいの気概を
    持ってもらわなくちゃ困るわ。誰もが憧れるトップアイドルでしょう!? だったら憧れられる努力くらいしなさい!」




春香 「……よろしく、お願いします!」

愛  「! はいっ! こちらこそっ!」


雪歩 「私も! よろしくおねがいしますぅ!」

美希 「みきもよろしくなの!」




絵理 「私たちも、足を引っ張らないように頑張りますので……」

伊織 「もちろんよ! このスーパーアイドル伊織ちゃんと同じ舞台に立つんだもの。
    足なんか引っ張ったら承知しないわよ!  ……よろしく」

亜美 「おやおや→? いおりんが復活しましたな→ !真美隊員!」

真美 「さっきまで涙目だったのに復活しましたな→!」

伊織 「よ、余計なこと言わなくていいのよ!」

亜美真美「「それはそうと、よろしくね! おねーちゃん!」」

絵理 「う、うん。よろしく?」

伊織 「聞きなさいっ!」



涼  「よろしくね、やよいさん?」

やよい「はいっ! うっうー! 876プロでも、元気いーっぱいで頑張りまーす!」

千早 「私も、よろしくお願いします」

あずさ「一緒にがんばりましょうね~」

真  「呼び方は『涼』でいいかな?」

涼  「はい! よろしくお願いします。どうぞお気軽に、好きなように読んでください」


涼  「(うぅ……。事務所の女性密度が、さらに上がっちゃった……)」





まなみ「事務所が変わって細かいところに違いがあるかもしれないけど、その時は色々と言ってね?
    できるだけなんでもするつもりだから」

響  「ありがとうだぞ! ここは動物たちを連れ込んでも大丈夫か? 自分の家族なんだ!」

貴音 「さしあたって、かっぷめんの備蓄ができる戸棚などがあればおしえてください」

小鳥 「二人とも、なるべくわがままは言わないようにね?」

まなみ「大丈夫ですよ! これくらい! いつもに比べれば軽いものです!」

小鳥 「……岡本さん。苦労されてるんですね。私もしっかりお手伝いします」



石川 「ふふふ、さすがね。切り替えが上手だわ」

P  「876のアイドルの子たちに励まされたんですよ、みんな」

石川 「いい子たちでしょう? 欲しいっていったって、あげやしないわ」

律子 「どれくらいの期間になるかわかりませんが、全力で頑張らせてもらいます」

石川 「頼むわよ」



コンコン ガチャ

尾崎 「社長。資料もってきました」

石川 「ごめんね尾崎さん。使い走っちゃって。さて、皆、注目!!」パンパン

石川 「事前に知っている人もいるかと思うけど、1週間後、ライブを開きます」

石川 「ウチの子たちは全員知ってるわよね?」



春香 「一週間!?」

響  「すぐやるとは聞いてたけど、随分と急だぞ」


石川 「偶然だったけど、来週の今日に、この子たちのライブをする予定だったのよ。
    だけど、急きょ当日のスケジュールを変更して、あなたたちを出演させることにした」

P  「皆も知っての通り、この移籍自体は裁判に関係した結果のものだし、周りもそれを知っている。
    そしてマスコミやネットでは、報道を嫌って逃げた、という見方もある。
    だから俺たちはこのライブで堂々と歌いきり、765プロは未だ健在であり、逃げも隠れもしないところを見せ付けなくちゃならない」

石川 「鉄は熱いうちに打て、じゃないけど、この人気商売のアイドルっていうのは、一度固まったイメージをそう簡単に覆せないものよ。
    できる限り早い段階で新しい印象を植え付けないと、あなたたちは今度こそ失墜するわ」

P  「タイト、なんて生易しいスケジュールじゃない。もっと厳しい。でもやらなくちゃならないんだ!
    皆、やってくれるな!?」


春香 「やろうよみんな!」

伊織 「いわれるまでもないわ。私だって負けたくないし、負けるつもりもない!」

貴音 「だれ一人欠けることなく、再び765プロに戻るために。最高の歌をとどけましょう」



石川 「よし。 ……愛! 絵里! 涼!」


三人 「「「は、はい!」」」


石川 「さっそく今日から765プロの皆さんにレッスンに入ってもらうわ。あなたたちも参加なさい。
    まなみは事務所のこととか、必要なことを簡単に説明しておいて。あと事務員同士連携が取れるように。
    尾崎さんと765のプロデューサーのどっちかは今から私と一緒に現場に行って当日の打ち合わせとやセットの確認」





石川 「1秒たりとも無駄にはしないこと。タイムリミットはすぐそこよ! 解散!」



レッスンスタジオ //


律子 「はい! 半テンポ雪歩遅れてる! 響はちょっと走ってる! 亜美は手を上げすぎ!
    というか全員微妙にあってない! 音楽を良く聞いて、はい! 一から!」

全員 「「はい!」」



絵理 「ひぅ……。凄い気迫……」

愛  「わぁー! すっごくヤル気マンマンですね!」

涼  「凄い……。私たちより何倍も上手いのに、あんなに駄目出しが入るんだ……」

愛  「まけてられません! あー、あー! さあなみーだにーなーろー!」

絵理 「そこ、私のパート」

愛  「し、しまった~~!!」

涼  「私たちも負けてられないね! 頑張ろう!」


愛  「 は い っ ! ! 」ドーン



雪歩 「!?」ビクッ

律子 「雪歩! ちょっとズレた!」



絵理 「愛ちゃんうるさい」

愛  「うむむ……」



会場 //



尾崎 「客席はそこそこ入ります。会場のスタッフも大目に手配しましたので運営に問題はないでしょう」

社長 「貴方たちがきてくれたおかげで余ってた分のチケットが即ソールドアウトしたわ。だから当日は
    この客席いっぱいに人が入るものと思ってちょうだい」

P  「はい、それで、問題点などは?」

尾崎 「差しあたって2点。一つはステージの広さ。元々3人で目一杯に使っても余るくらいのステージを予定していたのですが、
    これが765全員となると、一気に手狭になります」

P  「なるほど、ダンスのフォーメーションは律子と相談してみます」

尾崎 「おねがいします。後は設備の問題ですね。なにぶんまだこちらは駆け出しですので。この会場には人こそ入りますが、
    設備は上等とは言えません。音響にしてもそう。いつもは客席が半分埋まって良しとするくらいの所なので。
    ここまできっちり入りきって大歓声を送ったとして、音がきっちり届き切るかということ。後は、照明の灯体の数に
    限りがあって、765さんがいつもされているような煌びやかなステージは難しいかと」


石川 「大声で言えないけどね、この会場は大きさにこだわった分、サスもピンもバックライトも色々何かと安物よ。
    その分使用料も安いけどね。ただ、この一回きりで最高以上のパフォーマンスをみせつけなきゃならない
    貴方たちにとってはなかなかハードモードじゃない?」

P  「……大丈夫ですよ、あいつらなら。俺達なら」

石川 「……。尾崎さん?」

尾崎 「はい?」

石川 「レッスンスタジオに戻ったら、絵理ちゃん以外も見てあげてくれる? 同じ舞台に立つものとして、見劣りさせちゃ恥よ」

尾崎 「はい」



石川 「さて、と。どうなるかしらね」


古美門事務所 //


 コトン


服部 「どうぞ、皆様ごゆっくり……」







古美門「……」

黛  「……」

高木 「……」

黒井 「……」





黛  「……えー」



黛  「今回の訴訟に関して、事前にお伝えした通り、こちらからは和解を申し立てたいと思います」

古美門「……和解というが、黛弁護士。そちらは何を提示するつもりだ?」

黛  「こちらからは、記者会見を開いたうえでの謝罪。それから、賠償金の支払いを予定しています」

古美門「詳しく言え。一体いくらの賠償金だね?」

黛  「それは……」

高木 「500万だ……。ほうぼう訪ねてみたが、今の私にそこまでの額を貸してくれる人はいなくてね」

古美門「なるほど、高木社長も大変でしょう。事務所のアイドルの移転、その下準備。マスコミの対応に、金策。
    心中お悔やみ申し上げます。顔を見ても分かりますよ。大変疲れていらっしゃるようだ。一度お休みになるといい。
    なんならベッドを貸しますよ?」


高木 「……ダメかね?」

古美門「当然だぁ。一度ぐっすり眠り、顔を洗って出直してくるといい。そんな寝ぼけた額でこちらが納得するはずないでしょう?
    いったはずだ、こちらの正当な請求額は1億。1円たりとも譲る気はありません」


黛  「相手方は先生ではありません。黒井社長にお聞きしているんです」           

高木 「今の私には何もない500万だって渡せば首を括ることになる。どうかこの哀れな老いぼれの頼みだと思って、
    聞いてはくれんかね?」

古美門「そんな言葉が通用するとでも? 情に訴えかけても無駄です。むしろ私はそうした哀れな老いぼれが虫唾が走るほど嫌いなんだ。
    残念、逆効果でしたね社長。首を括ろうが川に飛び込もうが関係ない。こっちの要求は1億だ」


黛  「そもそも1億という額自体が法外な値段なんです!」

古美門「だったらそういって最後まで戦えばいい。現状はこっちが相当有利なんだ。こんな条件で大勝利を譲ってやるつもりはない。
    こちらが完膚なきまで勝利し、完全決着をつける。それがクライアントの望みなのでね。ですよね? 黒井社長?」



黒井 「……」



古美門「それに以前私の手の者、……バレているので言いますが、加賀蘭丸君に調べさせていた結果から見るに、高木社長。
    あなたはまだ資産を持っていますね? とりあえずまだ200万ほど」


高木 「……さすがだよ」

黛  「先生、それは……」


古美門「再び765プロダクションを再興させるための資金になるのだろう? わかっているとも。君たちにとっては少なくとも
    貴重な財産なのだろう。だがそれは私たちにとってもだ。1億の判決が出ても、実際に取れなかったら話にならないからな」

黛  「黒井社長。おねがいします、どうか聞き入れていただけないでしょうか?」

古美門「聞く必要はありません。奴らはこの期に及んでまで保身に走った。誠意が欠けています。……正直に言いましょう。
    1億円は相当ふっかけました。実際に確定しても、支払えない額も出てくるでしょう。それは仕方ない。
    だが、500万なんて額じゃない! そちらがどうなろうと知ったことか。貰うものは貰う、それだけだよ」

古美門「それに黒井社長の目的は、そちらとの因縁の決着だ。みごと決着をつけて見せようじゃありませんか」


高木 「黒井……。この通りだ」






黒井 「……。フン。ククク、クククク」



黒井 「ハーッハッハ、ハーッハッハッハッハ!!!」




黒井 「無様だなぁ! 高木よ! 三流の城しか持てなかった、バカげた理想を持った、愚かな男め!」

黒井 「この結末は、この有り様は! 誰のせいで起こったものだと思っているんだ、高木ぃ!?」


黛  「そんな! 高木社長は悪くはありませんよ!」

黒井 「いいや違う! こいつは組織のトップだった! だからこそ、全ての責任はこいつにある!!
    原因が妨害でも、不条理でもだ! 組織を維持できなかったのは高木! 貴様がバカげた理想で
    哀れなアイドルどもを使役したからだ! すべては貴様の持論が、間違っていたからだ!!!」


黛  「そんなのは詭弁です!」

古美門「言ったはずだ、黛。どんなに不条理なことでも、起こってしまっては、何としてでも守るしかないんだとな。
    彼はその為の最善策を取り違えた。それだけのことだ」


黛  「でも――!」

高木 「黛君。いいんだ」


黒井 「貴様の! 貴様の理想が! 敗北したから! 間違っていたから! 今そうして貴様はそこに哀れにも這いつくばっているのだ!!」




高木 「…………」


黒井 「認めろ、認めろ高木ぃ!! 私の道こそが正しかったと!! 貴様は間違っていたと!! 認めてしまえ高木順二朗っ!!!」



高木 「……今回、事務所を、アイドルたちを。皆を守れなかったのは、私のせいだ」


黒井 「そうだ……、そうだ!」


高木 「私の理想を守るため、君と対立したり、勝手に移籍させたり、彼女たちには悪いことをしたと思っている」

黒井 「そうだ! なら言え! 正しいのは、どちらだった!?」



高木 「それでも、私は今でも自分の理想こそが正しいと信じている」




黒井 「なにぃ……?」


高木 「頭は下げよう。謝罪もしよう。罵倒もうけるし、慰謝料だって払おう」


高木 「だがそれだけは、たがえない」



高木 「私の理想を否定することは、それは彼女たちを否定することにもなるからだ」

高木 「今までこの私の理想を信じて一緒にやってきてくれた、プロデューサーたちを見捨てることになるからだ!」



黒井 「戯言を! 貴様の理想など、とっくに朽ち果てたんだよ!!」



高木 「黒井。……今度、移籍先の876プロでライブをするそうだ。良ければ見てやってくれ」



黒井 「……、フン、この逆境だ。例え一流のアイドルでも、大した結果にはなるまい」

高木 「だからこそだ。ぜひ、見てほしい。こんな状況でも、こんな有り様までも。やってくれるはずだ。
    彼女たちは、私が追い求めたアイドルの完成形なんだから」


黒井 「…………」

高木 「――――」


黒井 「……チッ。やはり、その目が気に食わん」ボソッ

高木 「何……?」



黒井 「興ざめだ。私は帰る」

黛  「あ、あの! 和解は……!?」

黒井 「そこの弁護士に任せてある。好きにしろ」


バタン



古美門「と、いうわけですので、和解は受け取れません。どうか、お引き取り下さい」




高木 「帰ろう、黛君」

黛  「……いいんですか?」

高木 「いいんだ、これで」

黛  「……失礼しました」


古美門「高木社長、黒井社長は本気ですよ? あなたも気を引き締めた方がいい。保身に走っているときっとやられますから」

高木 「アイツはいつだって本気だよ。本気だから、こうなったんだ。それに一つだけ訂正しておく。
    私だって、こうみえて本気なんだ。それから、彼女たちもな」ピラッ

古美門「これは?」


高木 「さっき言ってただろう? 今度、ウチのアイドルたちがライブをやるんだ。これはそのライブの関係者席の特別チケットだ。
    私に送られてきたのだが、今私が行ってはちょっとした騒ぎになる。代わりに君が行ってはくれないか?」

古美門「ご冗談を。今までアイドルなどという輩が歌う歌に、悪感情以外を抱いたことがありませんので」

高木 「結構だ。そんな君だから見ておいてほしい。彼女たちの歌を、踊りを、ステージを」

古美門「…………」

高木 「受け取ってくれ」

古美門「時間が許せば」


高木 「助かるよ。では、失礼するよ。あぁ、コーヒーありがとう。おいしかったよ」

服部 「これはこれは、ありがとうございます」

高木 「では」


バタン



古美門「……」


古美門「まったく」




古美門「人の事務所で熱血ドラマを繰り広げるんじゃない」



古美門「…………」チラッ


  [ 876プロライブイベントチケット  19時開演 ]


古美門「…………」


古美門「……フン」






古美門「服部さん、明後日の夕食は外で食べてきます」






765プロ //
   

黛  「……原告は、古美門は、和解を拒否しました。こちらの出せる限りの分を搾り取るつもりです」

高木 「……仕方ない、彼に腹芸は効かないだろう。今度こそ、全額一杯、700万を出そう」

黛  「ですが、それは再び765プロとしてやっていくための資金です」

高木 「なぁに、また貯めればいいさ。別にすぐに復活する必要なんてないんだ。じっくりやっていくさ」

黛  「ですが、私は納得いきません。弁護士として、彼女たちの一ファンとして。真実を明かにする者として。
    社長一人が犠牲となって、765プロがなくなるのは……、避けたいです」

高木 「では、どうするというのかね?」



黛  「ブラックウェルカンパニーを訴えます」


高木 「勝てるのかね?」


黛  「そもそもブラックウェル相手に裁判をおこせば、だれでもほぼ100%勝てます」

高木 「しかし、前に他の弁護士事務所の人間に聞いたら、絶対に勝てない裁判だと言われたが……」

黛  「勝つのは簡単です。ですが、今のままでは実際にお金を回収できないんです」

高木 「ふむ、倒産しているからか」

黛  「はい。彼らは相当な負債を抱えて倒産しました。抵当もビッシリとられています。
    契約した分のお金を返してもらうにしても、損害賠償を求めるにしても、現実に、支払い能力がない以上、
    戦って勝ったところで、何も解決できません」


高木 「では、君は何のために、ブラックウェルを訴えようというのかね?」

黛  「共同不法行為を狙います」

高木 「というと?」

黛  「簡単に言えば、共犯者の人間。つまりこの場合は黒井社長。彼に損害賠償などを請求しようとおもいます。
    ブラックウェル倒産後、黒井社長は会見で関与を否定していました。ですが、私も高木社長のおっしゃる通り、
    黒井社長はこの件に関与していると思っています。そしてもしもその証拠が見つかれば、私たちは今回の和解金
    とブラックウェルに騙された分に色を付けて取り返すことができるかもしれません!」

高木 「なるほど。行けるかもしれないな。しかし、どうやって証拠を?」

黛  「元々この共同不法行為自体は、裁判の当初から狙っていました。しかしできなかったのは、その証拠を手に入れるすべが
    なかったからです。しかし、今、それを可能にするジョーカーがこちらに居ます」



ガチャ

蘭丸 「ちっす! 高木社長。俳優の、加賀蘭丸です。どうぞよろしく!」

高木 「彼は確か、……古美門君のスパイだったか」

蘭丸 「チッチッチ。今だけは765プロの草の者っすよ」

黛  「古美門直属スパイだった彼は、今ならこっちで使えます。なので彼に黒井社長が詐欺行為に関与していた事実を
    突き止めてもらおうと思っています」

蘭丸 「せっかく律子ちゃんからドラマの仕事貰ったのに、肝心の765プロがつぶれてたら話になんないじゃん!?
    ってことで、この加賀蘭丸。最高の助太刀をしてみせるよ!」





黛  「765プロを、潰させてたまるもんですか!」






                そして、3日後








             876&765プロライブ、当日




会場 //


 ガ ヤ ガ ヤ 

          ザ ワ ザ ワ


_________________
舞台裏//

絵理 「ひ、人ぉ……」ガクブル

愛  「絵理さん! 涼さん! カメラが来てるそうですよカメラ!!!」

尾崎 「ネット放送が2台。TV放送が1台。計3台よ」

涼  「テ、TV!? ひえぇ、緊張するなぁ……」

愛  「絵理さん! カメラは大丈夫なんですか?」

絵理 「カメラは余裕」





スタッフ「開演します!」


尾崎 「いってらっしゃい!!」




絵理 「う、うん!」


涼  「いってきます!」



愛  「み ん な ー ! き て く れ て あ り が と お お お ! ! 」 





ワアアアアアアアアアアアアア!!!



涼  「(うわっ、凄い歓声……!?)」

絵理 「(カメラ、目の前にあるのはカメラだけ。カメラだけ……。ひぅ、やっぱり人多いぃ~)」

愛  「(すごい! すごいっ! 楽しいっ!!)」


愛  「絵理さん! 涼さん! ファンの皆さん!! いっきますよーーー!!!!」



オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!



絵理 「……(頑張らないと!)」コクン

涼  「ふー、……よしっ!」


愛  「じゃあっ! いくよーー!! 一曲目は~……、いっせーのっ!」





愛 絵理 涼「「「 " H E L L O ! ! " 」」」



関係者席 //


黛  「!」


スタスタ

黛  「来てたんですね、先生」


古美門「…………」



黛  「来ない、みたいなこと言ってませんでしたっけ?」

古美門「暇だっただけだ。別に他意はない」

黛  「黒井社長は来てないんですか?」

古美門「見るとしてもTVで見てるくらいじゃないか?」

黛  「今度、話し合いの機会を儲けませんか?」

古美門「断る」

黛  「こちらには値段を上げる用意があります」

古美門「ライブ中だ。黙って見ていろ」

黛  「こちらから961プロに出向いてもよろしいですか?」


古美門「だまってろウルサイな! 今腹が減ってイライラしてるんだこの馬鹿ーっ!!!」


黛  「なにか口に入れてこなかったんですか!? その辺にいろいろあったでしょう」

古美門「上流階級の私がそんなもの食えるか!」

黛  「上流階級って……、というか、だったらもう少し送れて来ればよかったじゃないですか」

古美門「知らなかったんだよ、あいつらが出るのがもっと後だっただなんて。
    アイドルのライブなんてもっとすぐに終わるものだと思ってたのにー……!!」

黛  「あぁ、下調べしてこなかったんですね」

古美門「だからこれから先少しでも私の気を害することを言ったなら、その場でお前をここから
    ステージに放り投げてやる」

黛  「はいはい、黙ってますよ」



古美門「今舞台に立ってるやつらもだ。もし少しでもしょうもないパフォーマンスをしたら
    もうその場で帰ってやるからな、全く。いや、いっそ訴えてやろうか……」ブツブツ


舞台 //


『わ・た・し  き・み・とっ  シャーイニスマーイル♪』



 ワ ア ア ア ア ア ア ア ア !!



絵理 「ハァ、ハァ、っ。どうも、ありがとー!」

涼  「ここまで10曲、つきあってくれてありがとー!」

愛  「ありがとうございましたー!!」


 ウ オ オ オ オ オ オ オ オ ! !




涼  「……、さてっ!」

絵理 「さて」

愛  「さて! さて! さてっ!」

涼  「なんと! このライブ会場に! スペシャルゲストが来ています!」

愛  「だれなんでしょーねー!」

絵理 「というか、知ってる人の方が多い?」

涼  「絵理ちゃん、それは言わないお約束だから……」


  ワ ハ ハ ハ ハ ハ ハ




愛  「それじゃー! 皆さんも、よぉーくご存じのスペシャルゲストに登場してもらいまっしょー!!」


絵理 「しばしのお待ちを!」


涼  「ありがとうございました!」


  

  ワアアアアアアアアアアアア!!!



舞台そで //


P  「さぁ、いってこい。お前たち」

律子 「言うことはないわ。全力で、やってきなさい!」



伊織 「とーぜんよ! 目にもの見せてやるんだから!」

千早 「この歌が、みんなに届けばとおもいます」

貴音 「こうしていただいた機会。かならず生かします」

響  「燃えてきたぞー! 絶対さいっこうのステージにしてみせるぞ!」

真  「ボクだって! 今日は絶好調だよ!」

あずさ「みんなでがんばりましょうね~」

亜美 「モチロンだよあずさお姉ちゃん!」

真美 「じゃないとあの地獄の特訓がむくわれないよ→!」

美希 「ミキも、今日はすっごくキラキラしたいっておもうな!」

やよい「じゃあいつもの、やりましょー!」

雪歩 「春香ちゃん、お願いね」


春香 「うん! じゃあ、みんな」



春香 「えっとね……」


春香 「私も、実をいうと難しいことは分からないし、裁判もよくわからないの。今回のことも元はと言えば、私たちのせいなのにね。
    なのにずっとプロデューサーや黛先生たち大人の人たちにまかせっきりだった」

春香 「だって、私たちにはよくわからないし。私たちにできることなんて、横でアイドル活動をするしかなかった」

春香 「でもね、これが私たちがするべきことなんだって思う」

春香 「裁判がどうなっても、私たちは、変わらず、いつものように歌って踊ればいいんだって思う。
    ううん、むしろそうしなくちゃならないって思う」

春香 「皆が守ろうとしてくれたこの舞台で、私たちは、私たちにできる最高のパフォーマンスをしなくちゃならないんだって思う」

春香 「だって私たちはアイドルで、ここはステージなんだから!」


春香 「今だけは、この舞台に集中しよう!」

春香 「守ってくれた社長の為に!」

春香 「守ってくれているプロデューサーさんたちのために!」

春香 「ここにいる876の皆と、私たちのために!」

春香 「こんなことがあっても、それでもまだ私たちを見に来てくれたファンのために!」


春香 「いくよー!」



春香 「765プロ!!」





一同 「「 フ ァ イ ト ~ ! ! ! 」」







         __________________________
         ● BGM :【 765PRO ALLSTARS / READY!! 】
          ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




訂正させて、ごめん


         ___________________
         ● BGM :【 765PRO ALLSTARS / READY!! 】
          ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

舞台そで //


絵理 「き、緊張した~」

涼  「こんな大人数の観客を前に歌うなんてはじめてだからね……」

愛  「でも、やっぱり、765プロの皆さんの歓声は一段と凄いですね」

絵理 「私たちもすごいと思ったんだけど……」





  ワ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! ! !




涼  「やっぱり、凄い」


絵理 「あれが、トップアイドル……」


愛  「私たちが目指す場所!」





  『 スタート 始まるー きょーうの ステージー 』
 



涼  「……遠いね」 

愛  「近いですよ! 目の前にいらっしゃるじゃないですか!」

絵理 「そういうことじゃなくて……。いや、でもそうかも」

愛  「全力で走っていけば、追いつきます!」

涼  「……だったら、2倍全力で走ろう。追いついて、追い越せるように」

絵理 「涼さん、スポ魂?」


涼  「ちょっとね。熱くなっちゃったや。もっといっぱい走りたくなってきちゃった」

愛  「絵理さん! 全力疾走が辛かったら手を握ってくださいね! 
    走るの得意なんで引っ張っていきますよー!」

絵理 「大丈夫。私も、頑張る」


  『夢はー、叶うモノー

           私ー、信じてるー』


涼  「トップアイドルに、なろうね!」

愛・絵理「「はいっ!」」




『アーユレディー、アイムレイディ うたーをうったをー!』




961プロ //

TV 『わたしナンバワーン!』



黒井 「……」

黒井 「どいつもこいつも……」

黒井 「どいつも、こいつもっ!!!」


黒井 「何故だ! 何故っ!」


黒井 「この期に及んで! その有り様で! なぜそんな目をしていられる!?」



黒井 「気に食わん……っ!! 三流アイドルの分際で!!」



TV 『みんなーありがとーーーー!!!! ワアアアアアア』




黒井 「私はこんな結果を求めていたのではないっ!」


黒井 「私は王者だ! 立ち向かってくるものを完膚なきまでに叩きのめす責務があるんだ」


黒井 「私は! 勝たねばならないのだ! ただ勝つだけではない! 高木に、そして奴が手塩にかけたその
    アイドルたちに、私が正しかったとわからせなければならないのだ!




黒井 「なのに、高木も! 奴のアイドルも! どうしていつもそんな目をしているんだ!? 気に食わんっ!!
    敗北し、地に落ち、それでも何故いつも高木のもとに居るアイドルはそんな、さも幸福そうな
    希望に満ち溢れた目をしているっ!?」



黒井 「私は、その目の輝きを消すためにここまでやってきたのだ! 屈服し、私を認め、勝利こそ全てと
    わからせるためにここまでやってきたのだ」




黒井 「なのに、……なんだ、それはぁっ!!!」


黒井 「こんなものは、こんなものでは、……なぁんの意味もないっ!!」ガシャン!







黒井 「クソッ、クソッ! クソオオオオオオオオオオッ!!!」








 


古美門事務所 //


古美門「訴えを取り下げる!?」


黒井 「そうだ、奴の弁護士が先ほど提示した700万で手を打つと言っているのだ」

古美門「どうされたんです、黒井社長。まだまだ搾り取れます。きっちり1億。搾り取ってやりましょう」

黒井 「もう終わりだと言っているんだ、古美門。これで決着とする」

古美門「そんな! 私の報酬はどうなるんです!? いったい何を吹き込まれたn」

黒井 「黙れハイエナっ!! 金なら持って行け。約束通り賠償金の全額をくれてやる。だが契約はここで終わりだ」

古美門「……」

黒井 「後の履行はこちらの弁護士にまかせる。もう終わったのだ。向こう方にも伝えてある」

古美門「……わかりました」


黒井 「では、そういうことだ」スッ


ガチャ


古美門「黒井社長」

黒井 「なんだ」

古美門「私の輝かしい弁護士歴の中で、このように途中で外されたのは2度目ですよ」

黒井 「……そうか、なら、その時と同じように諦めろ」




古美門「えぇ……」






バタン



古美門「えぇ、ご存じないでしょう。初めて外されたのは安藤貴和。そしてその時は、この私を軽んじた代償として、
    あの女にはそれ相応の罰を負ってもらった」
    

古美門「えぇーーーーい!!! あのブラック似非セレブ似非フランス野郎め!!」



古美門「この私をその辺の雑魚と同じように軽く扱い、捨て駒にしようとはいい度胸だ」


ポパピプペ プルルルル




古美門「この屈辱。700万ぽっちで抑えられるものか!!」




876プロ //


P  「そうですか、……終わりましたか」

黛  「はい……。お力及ばず、申し訳ございません」

律子 「でも! 次の裁判で挽回できるんですよね?」

黛  「……はい」

律子 「ここで勝てればチャラ。全て元通り、なんですよね?」

黛  「全力を尽くします」

P  「どうかお願いします」


黛  「勝って、765プロを取り戻しましょう」

律子・P「「はい」」


黛  「では、引き続き作業を再開させてもらいますので」ペコッ


P  「お願いします。……そういえば律子、あずささんは?」

律子 「ええ、さっき電話したら近くには来てたみたいですけど、迷っちゃったかもしれませんね」

P  「わかった、じゃあ俺が迎えn」

   
     バァン!



一同 「「!?」」ビクッ




あずさ「すみませ~ん、道に迷ってしまって~」



律子 「あ、あずささんでしたか。びっくりしましたよ。そんなに勢いよくドアを開けるから、
    あの横わけを思い出しちゃいましたよ……」

古美門「全くですね」


一同 「「わはははは」」




一同 「「!?」」



律子 「な、ななな!?」


古美門「どうも皆さん、地上最高の頭脳と、凡人には分からないイカした横わけのナイスガイ!
    スーパー弁護士、古美門研介です!」
   
古美門「この度三浦あずさに雇用され、765プロの代理人顧問を務めることになりましたので、
    お顔合わせをと思いまして」

律子 「雇用!? 顧問!? え? あ、あずささん? どういうことですか!?」

あずさ「さっき、古美門先生から『私を雇わないか』って電話がありまして~」

P  「どうやって電話番号を……」

古美門「以前渡したメルアドにその日に返信してくれたんだよ。まったく、律儀な女性だ。今はなき大和撫子だよ君は。
    でもそれ以来一回も僕のラブメールに返信してくれないじゃないか~。つれないな~」

あずさ「あらあら~」



律子 「もしかしてあのメールあなただったんですか!?」

古美門「何、見たのか!?」

あずさ「どう返信したらいいかわからなかったので、相談しちゃいました~」

古美門「え~、恥ずかしいじゃないか~、あずさ~」

P  「律子、どんな内容だったんだ?」

律子 「ええっと、待ってくださいね、プリントアウトしてとってありますから」

古美門「なんでとってるんだ!」

律子 「ストーカーか何かだと思ったんですよ!! ……ほら、これです」


-------------------------------------


あずさ

どうしてそんなにもボクの心を惑わすの?

昨夜また君の夢を見ちゃったよ


君と、「ねこねこにゃんにゃんねこにゃんにゃん」している夢。




正夢になると良いな^^



-------------------------------------


P  「……!」ゾクッ

古美門「おい! やめてください!」

律子 「こんな内容なら返さないのも当然です! というか私が返さないように言ったんです!」

P  「お前かパイナップル! お前のせいでメールが来なかったのか!」

律子 「こんな気持ち悪いメール送ってくるからですよ!」

古美門「全く……。あずさ、今夜も送るからね?」


黛  「それにしても先生、流石にこの短期間で乗り換えれば顧客の情報保護と弁護士倫理に反するのではないですか?」

古美門「だから顧問なのだよ。弁護士会どもの目につかないように、知的にアドバイスし、サポートする参謀役だ。
    つまり今の私は765プロを裏で操る黒田官兵衛であり、諸葛孔明というわけだ」

黛  「それグレーもグレーですよ。というか黒ですよ」

古美門「ばれなきゃいいんだよ」

黛  「仮にも弁護士の言葉じゃありませんね」

古美門「弁護士だからだよ。というわけで、今後、この裁判の監督をしますので、よろしく」

律子 「あーちょっと。よくは分からないけど、とりあえず、皆に事情説明しておかないと。
    プロデューサー、皆をあつめてください」

P  「わかった」

古美門「ふふふ、英雄の歓待か。悪くない」

一時間後 、、、


律子 「と、いうわけで、何がどうしてか味方になった古美門研介さんです……」

古美門「どうも幾千の法廷を超えて無敗。日本が生んだ世界最強弁護士、古美門研介です。
    なお、お値段は成功報酬、慰謝料5000万の内1000万のみと、ひっじょーーーにリーズナブルな価格設定になっております」



一同 「「ええーーーーーーっ!!?」」


やよい「リーズ、ナブル?」ゴクリ

真  「だってこいつはボク達の事務所をつぶした張本人じゃないか!」

古美門「依頼をだしたのは黒井だ」

伊織 「反対よ! 信用できないわ。まだ裏でつながってるかもしれないじゃない!」

古美門「誓って私はスパイではない。得もない」

千早 「そもそも今まで敵だったのに、そう簡単に味方してくれる理由がわかりません」


古美門「それはだな――」

亜美 「そうだよ! コミーは敵の酢の物なのかもしれないよ!」

貴音 「……手の者、でしょうか?」

亜美 「そうそれ」

真美 「お姫ちん、よくわかったね……。真美でもわからなかったよ」

響  「大体、こいつは悪い弁護士なんだぞ!! 信頼できるわけないさー!!」

伊織 「そうよそうよ!!」


  ガ ヤ ガ ヤ !    
   
          ガ ヤ ガ ヤ !



古美門「ええぃ、らちが明かん」

黛  「ちょっと、古美門先生。こっちに」グイ



古美門「いたた、やめろ。折れる折れる!! お前は無駄に怪力なんだから気を付けろ!」

黛  「こんな程度じゃ折れません」

古美門「いや、お前はかなりの怪力だ。自覚しろ」

黛  「はいはい。……でも、本当に先生どうしたんですか? なんで急にそんな真似を」コソコソ

古美門「君には関係ない」ボソボソ

黛  「大体、先生が自分から売り込みなんて……、どうしちゃったんですか? 鮎川光以来じゃないですか」コソコソ

古美門「私を外したあのにっくきセンス悪オヤジに対する個人的な復讐だ」ボソボソ

黛  「……後、765プロの皆を助けたくなったからでしょう?」コソコソ

古美門「は?」ボソボソ

黛  「だって先生こないだのライブも、ぶつくさ文句を言いながら最後までずっと見てたじゃないですか」コソコソ

古美門「あれは単に苦労してきたから見ていただけだ」ボソボソ


黛  「というかそもそも先生は苦労する前に帰る人ですから、来た時点で765プロ大好きってことですもんね」コソコソ

古美門「馬鹿か君は、そんな理論もへったくれもない発言をするから裁判で勝てないんだ」ボソボソ

黛  「あ、ほら! 露骨に話そらした!」コソコソ

古美門「そらしてない」ボソボソ

黛  「好きなんだ?」コソコソ

古美門「はぁ?」ボソボソ

黛  「好きなんだ? 765プロの皆が」コソコソ

古美門「だから――」ボソボソ





黛  「みんなーー! 先生は、765プロの皆が大好きだから裁判に協力してくれるそうでーーーす!!」



一同 「「えええぇーーーーーーっ!?」」


古美門「おま――」



黛  「先生は前回のライブを観に来てくれていてー、それで皆に一目ぼれしちゃったそうですよー!!」



古美門「え? 何? 馬鹿ー。ちがうんですけどーー?」

やよい「え? 違うんですか?」

古美門「当たり前だ!」

やよい「やっぱり、私、上手くいってませんでしたか……?」ジワッ


古美門「い、いや待て! そういうわけでもない」

黛  「このこの~、素直によかったって言えばいいんですよ~。見入ってたくせに~」

やよい「え!? 本当ですか!? うっう~! ありがとうございますー!」

古美門「……もういい」


亜美 「おやおや~、ということはもしかしてコミーはロリコンってことですかな→?」

真美 「しかもツンデレだよ→! やよいっち大好きロリコンでツンデレで横わけだよ→! キャラ濃いよ→!!」

古美門「そこの双子! 腐った日本語を使うんじゃない!」

美希 「でもそれだとデコちゃんとキャラが被っちゃうの」

伊織 「かぶってないわよ!!!」

美希 「でもそうやって怒りっぽい所も横わけの人にそっくりなの」


古美門「そこの金髪。私のこのセンスのいい横わけと、そこのデコ娘をいっしょくたにしないでもらえるかな?」

伊織 「はぁ? なんでそっちが上みたいになってんのよ!?」

古美門「当然だろう?」

伊織 「そっちこそ、この世界一キュートなスーパーアイドル水瀬伊織ちゃんの真似をしないでくれる!?」

古美門「そっちこそ、このスーパーセレブイケメンダンディ天才弁護士古美門研介と並べると思うなよ!?」

真  「お金持ちなのも一緒なのか……」

美希 「もうなんかキャラ被りまくりなの……」

雪歩 「もしかして、古美門さんって伊織ちゃんの生き別れたお兄さんか何かなんじゃないかな?」

伊織・古美門「「はぁ? 小さいころから厳しい親の元で育って、そこから自分一人の力で人生を切り開いている私は
        こんな高慢ちきなだけの甘えた馬鹿とは違うわ!」」


伊織・古美門「「はあぁ!?」」



真美 「うあうあ~、亜美亜美~! 真美たちのキャラともかぶってきてるよ~」

亜美 「ふーむ、コミーはなかなかキャラ立ちに貪欲ですな→ ね、はるるん?」

春香 「亜美? 今なんで私にふったの?」

古美門「仕方ない、私が上ということで、妥協してやろう」

伊織 「なんにも妥協してないじゃない!」

美希 「もー、コミちゃん、怒らないでほしいの」

伊織 「混ぜるんじゃない! 私はデコちゃんよ!  ……デコちゃんでもないわよ!!」



古美門「とにかく、お前たちじゃあ話にならん。黛、静かに話せる部屋に連れていけ。――黛?」



黛  「でね? 普段子供とか嫌いだっていってるくせにやよいちゃんにはすっごいデレデレしてたのよ~」

千早 「高槻さんなら当然です」

響  「やよいは天使だからな」

貴音 「まことに。あの面妖な髪型の男子も改心するほどとは」

黛  「そうなのよねー!」







古美門「馴染むなぁーーーっ!!!!!」




876プロ 応接室 //


古美門「で?」


黛  「開口一番になんですか……?」

古美門「今の状況だ。まさか未だに961プロとの裁判だけしか進めていないとは言わさないぞ。
    ブラックウェルカンパニーに対して訴訟の準備の一つもしているんだろうな?」

黛  「はい、一応」

古美門「なるほど上出来だ、資料はあるか?」

黛  「これです」

古美門「ふむ……」

黛  「既に社長には通してあります。黒井社長の共同不法行為を立証し、支払い能力のないブラックウェルカンパニー
    に代わり、慰謝料等を支払ってもらうつもりです」

古美門「なるほど」


黛  「……どうでしょうか?」

古美門「立証というが、証拠はどうやってつかむ?」

黛  「蘭丸君の手を借りています。黒井社長が詐欺行為に関わった証拠を探してもらっています」

古美門「随分順調じゃないか」

黛  「そうでしょうか?」

古美門「上出来だ。使えるものは使う。結構なことだ。君は以前より汚い手も使えるようになった。
    すこしはまともな論理立てもできるようになった。褒めてやろう」

黛  「じゃあ! これで勝てますかね!?」


古美門「0点だ」

黛  「うっ……」


古美門「理由は君が一番よく知っているはずだ」

黛  「……はい。蘭丸君に頼んで、ブラックウェルの関係者を当たってもらったのはいいんですけど。
    一向に証拠が出てこないというか……、詐欺の証拠は出てきても肝心の黒井社長の名前がないというか……」

古美門「当然だ。黒井は詐欺はしていないそうだからな」

黛  「えっ!?」

古美門「本人がそう証言した。私の方でも確認は済んでいる。あいつは本当に詐欺には加担していない。部下が勝手に
    保身のために暴走してやったことであり、黒井自身は何も手を付けていない。だから当然、詐欺の証拠などさがしても、
    なに一つ出てきやしないんだよ」

黛  「そんな……」


古美門「君は黒井を悪と認識するあまり、奴が黒幕だと信じて疑わなくなってしまった。そのせいで、無駄な時間を食ってしまったわけだ。
    大体資料は隠ぺいされているとはいえ、警察が探っても全く出てこなかったんだ。本当にしていたなら、痕跡の一つも見つかるはずだ。
    それでも見つからなかったのは、そういうことだからだ」

黛  「…………」

古美門「もしこの路線で裁判に突っ切れば、君は自分の手だけを見て突き進み、敵に返り討ちにされていたことだろうよ。
    策士策に溺れるだ。生兵法は怪我の元だぞ。だから、0点なのだ」



黛  「じゃあ、黒井社長は本当に無関係だった、ってことですか? 本当に無罪だと?」

古美門「そうだ。奴は無罪だ。本当にな。ただし無関係ではない。黒井は実際自分主導で765プロに売りつける予定だったそうだ。
    今回こそ関与していないとはいえ、それまでのブラックウェルに奴の意思が関わっていたのは間違いない。
    たまたま今回の詐欺に加担しなかっただけで、黒井は765を陥れる気マンマンだったんだ」

黛  「でも、それじゃ、やっぱり無罪ですよ」

古美門「そうだな」

黛  「じゃあ、私たちは、勝てないんでしょうか?」



古美門「……お前はさっき、私がここに来たのは765プロの為だといったな?」


黛  「? ……はい」

古美門「まぁそれもある。1%くらいは。だが9%は本当に奴への復讐のためだ。
    とはいえ私は基本的に裁判に私情は挟まない主義。だからこれらは合わせてせいぜい1割あるかないか、というところだな」

黛  「じゃあ、もう9割は、なんですか?」


古御門「愚問だねぇ。それは勿論――」




古美門「勝てるから、ここに来たんだよ」



ドサッ


黛  「これは?」

古美門「判例を纏めてプリントアウトしたものだ。『判例に頼るな、判例を作れ!』が私のポリシーだが、
    それ以上に使えるものは使う主義でね。ちまちまと六法全書を暗記した君ならば、いわんとしていることくらいは理解できよう」

黛  「東京地判、大阪地判、京都地判、名古屋地判……」ペラッペラッ



古美門「君はまだ肝心なところが治っていない。裁判で大事なのは、正義か悪を決めることではない。どちらが損をするか、得をするか、だ。
    黒井は悪でも正義でもない。ならばそこから我々が得をして、勝利する方法は、たった一つだ」






黛  「! そうか! ……でも、先生。これだって証拠が」


古美門「黛君、蘭丸君に連絡を取れ。そしてターゲットを765と取引した主任者とその周囲ではなく、当時の役員や取締役に変えろ。
    さっきも言ったが、隠ぺいされた資料でも、痕跡くらいは見つかるものだ。なんならまだ隠し持っているかもしれん」



黛  「わかりました!」

プルルルル プルルルル





古美門「……黒井社長。あなたは隠ぺいも、妨害も、実にうまくやってのけた。権力と財力という武器をふるって、
    厳しい芸能界に君臨してきた。いわば、あなたは芸能界のエキスパートだ」


古美門「だが舐めないでもらいたい。同様に、こちらも、裁判のエキスパートなんだよ」



古美門「この分野で、この私にケンカを売った。勝てると思うなよ?」







古美門「やられたらやり返す! 1億万倍返しだ!!」

黛  「小学生かっ!」





 


876プロ //


絵理 「それじゃあ、収録行ってきます?」

尾崎 「夜には戻ります」

まなみ「お気を付けて」


バタン



伊織 「…………」

古美門「ぷーくすくす」

伊織 「……なによ?」

古美門「君にこのクロスワードパズルを与えてやろう」

伊織 「なんでよ」


古美門「いやぁ、後輩たちがせっせと働く中、君だけ一日中何にもしないで暇じゃないかと思ってね」

伊織 「誰のせいよ誰の! 誰のせいで仕事がなくなったと思ってるの!?」

古美門「知らないさー。向こうが急にキャンセルしてきたんだろう? 強いて言うならば、私が強すぎたせいだろうか? ん?
    それに今でも仕事のあるアイドルはいくらでもいるじゃないか。皆君たちの扱いに困っているが、それでも
    慕われていればちゃんと仕事は来るものだ、君も……あれ?」



伊織 「……!」プルプル

古美門「あ~れれ~? 君のボードは真っ白だねー? 長期休暇かな? ん? ん~?」フリフリ



伊織 「あずさ! なにか振り回せる長いもの持ってきて!!」

あずさ「どうどう」

伊織 「私は馬じゃないわよ!」

古美門「ヒヒーンブルルル。あずささん。僕はお馬さんでーす! 試してみますか? あっちも馬並みd」

伊織 「こらあああああああ」

あずさ「あらあら~」

古美門「邪魔をするなデコ娘」



伊織 「あんたこそ暇なの? 帰ったら? え?」

古美門「私も仕事で不本意ながら来てやってるだけだ。君こそみじめに帰ったらどうだね?
    帰ってパパに泣きつくといい。親子ともども、古美門大先生にやられちゃいまちた~、とな」

伊織 「や、やっぱりあんた、うちのパパに何かしたのね?」

あずさ「何かあったの?」


伊織 「今回の事、水瀬の力を使って何とかしようとも思ったわ。でもそしたらパパが、
    『古美門研介だけには関わるな。私は金輪際、あの男とは関わらないと決めたのだ!』って。
    あんた、なんか変な根回ししたんじゃないでしょうね!?」


古美門「違うね。君の父親との因縁はもっと昔だよ。私がまだ法律事務所に所属していた頃だ。
    『ねこねこ金子エンジニアリング』という中小企業の代理人をしてな、敵方だった水瀬製作所の
    君の父親を容赦なくコテンパンにしてやったんだよ。三木と私と、名前を言ってはいけないあの女と
    一緒に裏工作から何から何までやって、滅茶苦茶にしたな」


伊織 「想像以上に酷かったわ……。所で、何、その名前を言ってはいけない女の人って」

古美門「やめろ、思い出させるな。腹を下す」


伊織 「?」

古美門「……思い出したら腹が痛くなってきた。くそ。ほら、黙ってクロスワードパズルやってろ」

あずさ「トイレなら、出て左ですよ~」

古美門「素敵な助言をありがとうございます」

伊織 「……クロスワードねぇ」



伊織 「って、これ全部埋まってるじゃない!」


古美門「私の叡智の軌跡と筆跡を堪能しろ」



十分後、、、


古美門「ふう、久々だからキタな……ん? あのデコ娘はどうした?」

春香 「伊織なら、さっきプロデューサーから電話があって。出演者が急きょキャンセルになった番組に出るそうですよ」

古美門「ははは、馬車馬のごとく働け。ねぇあずささん?」

千早 「あずささんはレコーディングに行きました」

古美門「なんだと!? 何々、『新曲(ラブリ)のレコーディング』。本当だ、書いてある……。
    あずさ、私より新曲の方が大事なのかい?」

千早 「当然ですよ」

古美門「おかげで口説き損ねた」

千早 「口説くよりCDを買ってください。その方がずっとあずささんは喜びますよ」

古美門「ばか、それではあの胸を堪能できないじゃないか!」


千早 「最低ですね」

古美門「最高じゃないか」


春香 「も、もしかしてそんな理由であずささんをクライアントに?」

古美門「当然だ」

千早 「くっ、胸以外に生きる原動力を知らないんですか?」

古美門「金かな?」

千早 「俗物ですね」

春香 「ほ、ほら765プロにはもっといっぱい魅力がありますよ!」

古美門「例えば?」

千早 「歌とか」

古美門「よし、そこのリボン。歌ってみろ」

春香 「私!? 千早ちゃんが歌ってよー……」


古美門「こいつの歌声はこのあいだ見に行ったから知っている。
    私ほどではないが、音楽センスを持ち合わせているらしい」

千早 「……引っかかる部分はありますが、ありがとうございます」

古美門「そこそこ有能で、孤高。自分を高めることに幸せを感じる求道者、ストイックなマゾヒスト。
    君のような人間は961プロが似合うと思っていたよ。事実、君から落とそうと思っていたしな」


春香 「千早ちゃんは765プロの大切な仲間ですよ!」


古美門「どうやらそうだったらしい。事前に蘭丸君に接触させようと思っていたが、どうも君には
    持ち合わせた音楽の才能を高めるのと同じくらいに、今の事務所に強い想いを持っているらしいな」


春香 「千早ちゃん……。そうなの?」

千早 「……そうよ」

春香 「そうなんだ! 千早ちゃーん!」ガバッ

千早 「ちょ、春香! な、何?」

春香 「えへへ……」ギュゥ

千早 「まぁ、なんでも、いいけれど……」


古美門「才能を持ち合わせた君に忠告しておこう。子供のころに作った『絆』など脆く、将来下らんしがらみになり
    足を引っ張るものになる。『人』という字は、支えあってできたものではなく、一人の人間が大地に大きく足を
    開いて立っている象形文字なのだ」


春香 「私はそんなことしません!」

古美門「ではもし如月千早が今から歌の修行のためにロスへ行くと決めても、君は笑って見送れるか?」

春香 「えぇっと……。うぅ」

古美門「そういうことだよ」

春香 「でも! 千早ちゃんが本気で決めたことなら、私、ちゃんと見送りますよ!
    いっぱい泣いちゃうかもだけど……」

千早 「安心してください。いつかはそういうこともあるかもしれませんけれど、それは今じゃありませんよ。
    だって今は、きっと、ロスより皆と一緒に歌う方が、良い歌を歌える気がしますから」



春香 「千早ちゃん……! もう! 千早ちゃんったらーー!!」ギュウウ

千早 「は、春香、ちょっと苦しい!」

春香 「ごめんごめん」


古美門「愚かだな」

千早 「なんとでもどうぞ」


古美門「フン、ならいいだろう。もう一つだけ忠告しておいてやる。私はいままで『絆』などと称する馬鹿どもを何人も見てきた。
    馴れ合いとの区別もつかず戦いを忘れた老人ども、メモ一枚でつながりイジメを繰り返したクソガキ中学生ども。
    一致団結などと言いグループのトップ以外の意向をしたものを責める建設反対グループ、その他にも、何人も、何人もだ。
    足を引っ張り、個性を壊し、烏合の衆になることを強要する。そんな『絆』と称した歪な鎖を、幾度となく見てきた」

春香 「765プロの絆はそんなんじゃありません!」

古美門「らしいな。私は今までエセ絆で固められた烏合の衆しか切り崩してこなかったからな。蘭丸君も今回は随分と手間取っていたよ。
    私だってそうだ。金でなびくに違いないと決めつけていた。謝罪するよ。君たちを甘く見ていた。おかげでかなり手こずったよ」




古美門「認めよう。君たちの『絆』とやらは、そこいらの老人や中学生共よりかは、ずっと確かなものだ」



千早 「それが、忠告ですか?」


古美門「この古美門研介を手こずらせた『絆』だ。ちょっとした歌唱センスよりずっと貴重だ。大事にするといい」



春香 「…………」

古美門「なんだ、リボン」

春香 「……もしかして、古美門先生っていい人?」

古美門「なんだいい人とは? そんな都合のいい甘ちゃんではない。素晴らしい人と言え」

千早 「違うわよ、春香。亜美と真美が言ってたじゃない」

春香 「あっ、なるほど! ツンデレだ!」



古美門「だからそんな腐った日本語を使うな!!」


ガチャ



古美門「! 来たか」

蘭丸 「ちっす、ツンデレ先生」

古美門「君まで馬鹿なことを言うな!」


蘭丸 「ゴメンゴメン。……これ、頼まれてたやつ」

古美門「現在のクライアントは黛だ。食事と報酬は奴に頼め。グレードは下がるだろうが、どうあれ私を裏切った罰だ」

蘭丸 「ごめんね、古美門先生。でも名誉挽回、加賀蘭丸。見事、草の者の使命を果たしたでござーる」

古美門「まったく、この前の裁判もこれくらい活躍してほしかったものだ」

蘭丸 「ほんと、765プロの皆は調べ甲斐がなかったよ。あ、これほめてるからね?」

春香 「はぁ……」



古美門「今回は、本領発揮、という所だったみたいだな」

蘭丸 「純粋な子だますのはやっぱちょっと気が引けるしね。これくらいはっきりして方が俺も寝覚めがいいよ」

古美門「……ふふふ。流石だ蘭丸君。任務ご苦労だった」


蘭丸 「じゃ、これにて。……あーそうそう、春香ちゃん、千早ちゃん。
    響ちゃんと真ちゃんに『ほんとにごめん』って蘭丸君が言ってた、って伝えといて! おねがい!  じゃね!」タッタッタ



古美門「さて、これでそろったな」


春香 「じゃあ、これで勝てるんですか?」

古美門「さすがだよ。やはり彼の諜報能力は一級品だ」パラパラ

千早 「これは、何なんです?」


古美門「ブラックウェルと黒井を打ち抜く、一撃必殺の弾丸だ」









古美門「さぁ~、似非セレブ狩りじゃ!」







               数 日 後




裁判所前 //



古美門「最後にもう一度だけ確認しておく」


黛  「はい」



古美門「極めて不本意かつ屈辱的の極みだが、この短期間に私が法廷に出て黒井を引きずり出し、糾弾すれば、
    さすがに利益相反で弁護士会に攻撃されるだろう。私ならば懲戒を逃れてみせるが、すぐに引きずりおろされては意味がない」


黛  「わかっています」






古美門「だから、100歩妥協して、いや、1000歩妥協して、いや10000歩妥協して、……本当は妥協したくはないが、妥協して、
    法廷に君が立ち、君があの男の息の根を止めることを認めてやろう」


黛  「はい!」



古美門「よし、なら……」






古美門「撃ち抜いてこい、黛」



黛  「もちろんです!」







    



ちなみに次が最終章。そろそろ終わるよ。
youtubeかなんかでリーガルハイのテーマをセットしておくと吉。

裁判所 //


in傍聴席


古美門「……」

黒井 「……」


古美門「やぁやぁどうも、黒井社長。お久しぶりですね」

黒井 「君こそな」

古美門「どうしたのですか? お忙しいあなたが無関係な裁判を見に来るなんて」

黒井 「フン、白々しい。まぁ、ブラックウェルの弁護士がたまたまウチの顧問弁護士と同じだったのでな。
    少し様子を見に来ただけだ。今日だけだとも」

古美門「白々しい」


黒井 「どうやら、私に外された後、765プロに取り入ったらしいな。私の情報でも流したか?」

古美門「いいえ、喋ったことなど当初から原告本人尋問で予定していた内容とほとんどかわりませんよ」

黒井 「ククク、ならどうやって戦うつもりだ、君とあの三流の弁護士は。彼はわが社の法律部門のエキスパートだ。
    幾度となくこういった裁判を勝ち抜いた、最強弁護士なのだよ」

古美門「……まぁ、見ているといいでしょう」





黛  「…………」





裁判長「起立」






>>>>>>>>>>>> ブラックウェル裁判 開廷 >>>>>>>>>>>>>>







弁護士「あー、被告、ブラックウェルカンパニー社長は、本件において、全く詐欺の意思はありませんでした」

社長 「全く、その通りだ」

弁護人「しかも。被告は765プロをだまし、金銭を奪い逃げたのではなく、その後も一生懸命、コストを切り詰め、社員に頭を下げ、
    オフィスの着工をコツコツと進めてきました」

弁護士「結果として、会社は資金難により倒産してしまい、765プロとの契約を果たすことはかないませんでした。
    ですが、本件において、ブラックウェル側には一切の詐欺の意思はありません」


弁護士「資金不足によって起こってしまった、不幸な事故なのです」



弁護士「以上」




黛  「…………」




弁護士「(くくく、知っているよ。詐欺でなかったとしても、実際に金を返さなければならないし、
     損害が出たなら慰謝料もいるんだろう)」

弁護士「(当然だなぁ。借りた者は返す。出来なければ返す。当然のことだ)」


弁護士「(だーが、残念。無い袖は振れないのさ)」


弁護士「(だから、黒井社長を責めてくるんだろう?)」



弁護士「(返り討ちにしてやるよ)」




裁判長「では、原告代理人」


黛  「…………」



黛  「――はい!」





in傍聴席


P  「お隣、すいません」コソコソ

古美門「おや、見学ですか?」

P  「前回は何もできなかったので、少しでもと思いまして」

古美門「ほう、大変ですね。アイドルまで連れて」

美希 「だってハニーと一緒にいたかったんだもん」

P  「こら美希。静かにしろ。あと人前でハニーって言っちゃダメだって言ってるだろう?」

美希 「ブー」

P  「すいません。ついていくって聞かないもので」

古美門「いやいや、お暇なようでなにより」

P  「あはは……」

美希 「あれ? 端っこの席に黒井社長がいるよ?」

P  「え? ! ほ、ほんとだ……」

古美門「奴にとっても重要な裁判になるから気になったんだろう」


美希 「で、今どっちが勝ってるの?」




黛  「――このように、黒井社長の株式保有は4割を超え、相当以上の発言権を持っていました。
    961プロとブラックウェルが共同で765プロに詐欺行為を働いたと考えるのが妥当です」




弁護士「(馬鹿め)」



弁護士「私は、たまたま黒井社長と親密な関わりがあり、彼がブラックウェルの経営に関与していないことを知っています」


弁護士「証拠として、こちらの資料をご覧ください。ブラックウェルの取締、監査、会計など……、全ての役員において黒井社長の名前はなく、
    また、選任決議を経た事実も、登記をしたという痕跡もない!」


弁護士「憶測だけで語り、961プロの共同不法行為を唱える原告側の発言は不当なものである!」





弁護士「大体、これだけ世間で騒がれても、黒井社長がブラックウェルの社長と共謀して詐欺に陥れた形跡は見つからず、
    もはや警察も手を引いている」

弁護士「そんな状況で尚、961プロとブラックウェルを結びつけて考えようなどとは、陰謀論も甚だしい!」


弁護士「糾弾したければ証拠をだせ!」





弁護士「黒井社長はただ出資しただけだ」

弁護士「ならば有限責任の原則により、その会社がどんな悪事をしたところで黒井社長に責任は一切ない!」

弁護士「むしろ、収支が無駄になったんだ。黒井社長も被害者なんだ」





弁護士「天地神明に誓って、ここに宣言します!」







弁護士「961プロダクションとブラックウェルカンパニーは」




弁護士「なんのつながりもない!!!」








黛  「…………」





in傍聴席


P  「どちらかというと、押されてるんですかね?」

古美門「ふふふ」

P  「?」


美希 「ねーねー横わけの人」

古美門「古美門だ」

美希 「真知子、大丈夫なの?」

古美門「何がだ?」

美希 「なんか初めて来たときいってたよね? 真知子は『あんどうきわ』の裁判でも全然活躍できなかったんだ、って」


古美門「……ふん、金髪。なにか勘違いしているようだから教えてやる」

美希 「?」



古美門「あの裁判で……、」





黛  「裁判長、追加証拠の提出をお願いします」



社長 「!?」

弁護士「……なに?」



裁判長「どのような証拠ですか?」


黛  「ただ今の被告代理人の発言を糾弾するものです」



裁判長「なるほど、認めます」




黛  「それでは、こちらの資料をご覧ください」



高級住宅街 //


???「先輩、こっちの荷物もう運んじゃっていいっすか?」

先輩 「おう、もう運んじまえ。家具とかはもうあらかた出したし、全部リビングにもってけ」

???「ういっす。じゃあ社長夫人、これもってっちゃいますね?」

社長夫人「いやだわー田口君。社長夫人だなんて、もう倒産した会社よー? おほほほほ」

田口 「いえいえ、まだまだ社長っすよ。今日も裁判でしたっけ? 社長の務め果たしてるじゃないっすか」

社長夫人「ずっと行ってりゃあ良いのにねー。夫元気で留守がいいって言うじゃない? 面倒なのは懲り懲りよあたし」

田口 「いやいや、こんな高級住宅街に引っ越せるなんて、甲斐性のある旦那さんですよ」

社長夫人「前のところは倒産のゴタゴタで済みにくくなったからねぇー」

田口 「じゃ、このダンボール類全部運んじゃいますね」

社長夫人「えぇ。……あら? マークしたダンボール箱がないわ? どこいったのかしら?」

田口 「あぁ、それなら引っ越しの日に、社長が同僚の人に渡してましたよ。邪魔になるからって」

社長夫人「あらそうなの? 嬉しいわー。あんなのかさばるし、心臓に悪いし大変なだけよ。
     なくなって良かったわよ、前の会社の重要資料なんて」

田口 「そうっすね」

先輩 「おい、蘭丸ー! 喋ってないでもってこーい!」


田口 「ういーっす、今いきますねー」





      __________________
      ● BGM :【 リーガル・ハイ メインテーマ 】
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


裁判所 //




社長 「こ、これは……!!」

弁護士「そんな、まさか!?」

裁判長「…………」



黛  「これら全て、ブラックウェルの取締役会の議事録です。そして、これがその会議で決まった事項をまとめた紙。
    そして、その紙の右下に押してあるのが――」







黛  「961プロダクション代表取締役、黒井崇男氏のサインと印鑑です!!」






    ざ わ ざ わ !

               ど よ ど よ !


社長 「な、ななななな」

社長 「な、何故、ちゃんと隠してあったのに!!」


弁護士「喋るな!」


弁護士「――し、しかし! これは765プロの詐欺を行った証明にはならない!」 


黛  「はい、現在調べましたところでは、まだ明らかにはなっていません。
    今のところ、黒井社長が詐欺に関わった証拠となる書類は発見できていません」





弁護士「ほ、ほら!」


黛  「しかしながら! これらの書類から、黒井氏がブラックウェルの取締役の意思決定に継続して参加していたこと、
    いや、むしろその決定を最終確認するという立場からして、事実上、黒井社長こそがブラックウェルの取締役として
    トップに君臨していたと考えるのが妥当でしょう」




弁護士「っ、異議あり! 推測にすぎない!」

裁判長「認めません!」


弁護士「ぐっ……!」




古美門「あの裁判で……、安藤貴和の裁判で勝てたのは全て私の手腕によるものであり、奴の貢献度貢献度など塵に等しかった。
    しかし、まぁ。それは比較対象が私という怪物であったからだ。この天才弁護士と比較してもなお、ちり程度の貢献はしたんだ。
    この程度の裁判、奴にとっては屁でもない」


古美門「奴はどうしようもなく愚かで甘ちゃんで正義とやらに拘りすぎる、蟹股でゼツボー的に色気がないのに無駄に博才と筋力だけがある
    朝ドラヒロインポンコツおたまじゃくし酒乱で音痴でアッパラパーな赤毛のアンの蟹頭村の変態の女神様だ」


美希 「褒めてるの? それ?」





弁護士「(まずい! まずいっ!! 黒井社長が事実上のトップであることがばれたら……!)」



黛  「そして黒井社長が事実上の取締役と認められるならば、黒井社長は
    トップでありながら経営難にまでなっていたブラックウェルに対し妥当な対策を取らなかった任務懈怠責任、
    および、詐欺が行われていたことを見過ごした監督責任、そして契約の相手方である765プロに損害を与えた責任。
    これら全ての責任から逃れられないものと推測します」




黛  「以上の事により、会社法第429条第1項が適用され、765プロダクションは黒井社長に対し、」
    


弁護士「(あの765プロ共が――、)」







黛  「損害賠償の請求権を持つことになります!」








  ざ わ ざ わ !

              ど よ ど よ !





弁護士「(おのれっ! おのれっ!! 小娘が!!!)」






古美門「だが、それでも、まぁ。あんな奴でも、常勝無敗の古美門事務所に所属する弁護士だ」
    

古美門「私という真の天才の手法を間近に見て、私という真の怪物に何度もぶつかってきた弁護士だ」





古美門「たかだか自称最強弁護士ごときに……」








黛  「これで、被告代理人の言う『黒井社長は無関係である』という宣言は否定されました」





黛  「まだ調査中の資料ですが、提出してしまい申し訳ありません」


黛  「次回改めて、正式なもの提出します」



黛  「どうぞ、ニセモノではないこともきっちりとお確かめください」



黛  「それでは――、」






古美門「負けるはずがないだろう?」




------------------------------------------------------------------------------








黛  「……以上ですっ!」ピシッ










テッテレーテーレーテレン!



裁判所 前 //



古美門「どうもー♪ くっろい社長♪」

黒井 「……フン」

古美門「いやいや、随分と見違えましたねぇー。まるで負け犬の表情だ」

黒井 「馬鹿を言え。金を払うことなど造作もないわ」

古美門「さすが、成金は言うことが違いますなぁ」

黒井 「貴様が言うな。そちらも随分と安堵しているようではないか。心の底から安心しきった顔をしているぞ。
    なんだ、随分とあの三流弁護士を心配していたようだなぁ、ククク」

古美門「黒井社長。たしかに奴は三流ですが、別にそちらの四流弁護士に負けるとは一言も言っていませんが?」

黒井 「その言葉、あの弁護士に言っておこう。まぁ、二度と会うこともないだろうがな。
    ところで、傍聴席で貴様とコソコソ話していたあの765プロのゴミどもはどうした?」

古美門「彼らなら帰りましたよ。忙しいんじゃないですか? 765プロのアイドルたちは」

黒井 「ククク、ならいい。貴様、伝えておけ。お前たちのそのイラつく目の輝きが消えるまで、私は何度でも
    お前たちの前に立ちはだかるとな」



古美門「自分で伝えたらどうです? あなたも随分と765プロを心配していたようですので」

黒井 「馬鹿を言え。私の策略が中途半端な結末になるのが許せなかっただけだ。次の一手も怯えていろ、と伝えておけ」

古美門「それは恐ろしい、あなたの戦略の腕前はチェスで散々思い知りましたから」

黒井 「フッ、何を。貴様こそ、チェスの腕だけは認めてやろう、好敵手よ」


古美門「ですが、次やるときはどちらか白にしないと見づらいですよ? 盤面の全てが黒だと
    どっちがどっちの駒か分かりにくいじゃありませんか」


黒井 「敵も味方もない。ただ、キングのみが唯一にして至高の存在だ。それ以外は全て、敵なのだ。
    そしてキングには、その全てに狙われる義務があり、その全てを打倒せねばならない義務があるのだ」


黒井 「アディオス、次はそのセンスのない髪型を直しておくといい。ハーハッハッハッハッ!」スタスタ









古美門「お前の服装ほどじゃあない」



黛  「どっちも大概ですよ」

古美門「いたのか」

黛  「えぇ、先ほどから」

古美門「まぁいい」




黛  「先生、ありがとうございました」ペコッ




黛  「先生が助言をしてくださったおかげで勝てそうです」


黛  「今回は、お礼をします」



古美門「『は』、とはなんだ『は』とは」

黛  「当然です。今でこそこうやってますが、私はいずれ、古美門研介を倒す弁護士になるんですから。
    そのときは、先生に頭を下げさせますので、そのつもりで」

古美門「言うようになったなぁ~! 果たしてそれまでに人類が存続しているかどうか……」



黛  「すぐですよ。いずれ、すぐ」


古美門「期待せずに、待っているよ」





黛  「あ、それと、やっぱり考えたんですけど、復帰。先生に認めてもらえない以上、
    やっぱり私まだネクサスに――」

古美門「――さて、」



古美門「帰るぞ黛。服部さんが食事を用意してくれているそうだ」

黛  「え……?」


古美門「何をしている」

黛  「……先生」

古美門「……君はまだ私に対する3000万の借金が残っているだろうが。明日からも馬車馬のごとくこき使ってやる」

黛  「……、はいっ!」

古美門「全く、返事だけは一流だな。いくぞ」




黛  「はいっ!」







タラッ タラッ タラッ タッタラッタン!




 _____________
 ● BGM :【RIP SLYME / SLY】
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


765プロ //


高木 「うむ、やはりこの事務所が一番だな」

P  「でもよかったですよ、なんとか元通りになれて」

高木 「黒井から賠償金を勝ち取ってくれた黛君のおかげだ」

黛  「いえいえ、真実が明らかになっただけです!」

律子 「この裁判の結果のおかげで、世間の私たちに対する疑いも晴れたみたいですしね」

小鳥 「むしろ注目された分、前より仕事が増えましたよ」

高木 「私もアイドルを身を犠牲にして守ろうとした社長として業界受けが良くなってねぇ、はははは」

P  「社長……」

高木 「やだねぇ、怖い顔をしないでくれたまえよ。役得だよ役得」


一同 「「ははははは」」


黛  「……それでは私はこれで、本当に、お世話になりました!」


律子 「それをいうならこっちですよ。本当にありがとうございました」

小鳥 「またいつでも遊びに来てくださいね?」


黛  「ありがとうございます! では、失礼します!」




バタン



P  「……社長、どこまでわかっていらしたんですか?」

社長 「と、いうと?」

P  「まさか考えもなく876プロに全員送ったわけではないでしょう? 
    こうやって裁判に勝利するまで織り込み済みだったんですか?」

社長 「ははははは」

P  「石川社長に見せてもらったウチと876プロとの契約期間はとても短いものでした。
    結果的にちょうどでしたけど、社長、まさかこうなることまで予想してたんですか?」

社長 「それは買いかぶりすぎだよ君ぃ。単にそんなに長期間匿ってもらえなかっただけだよ」

P  「……そうですか」



社長 「それに言っていただろう? 私は黛君を信頼していると。彼女なら、きっと何かをやってくれると思っていただけだ」

小鳥 「さすが、社長の人を見る目は一流ですね!」

社長 「ハッハッハ! 照れるねぇ。もっと言ってくれたまえ」


律子 「残念ですがそんな暇はありませんよ。なんせ仕事が前より増えましたから」

P  「そうだ、俺も春香を送っていかないと。失礼します!」

律子 「私も番組の打ち合わせがあるので、これで」

小鳥 「私も仕事が残ってるんでした……」

高木 「皆、頑張ってくれたまえ」


バタン



高木 「…………」






<――! ―――!!



高木 「……おや?」チラッ



窓の外 //


黛  「よーし、この勢いで次の仕事を取ろう!」タッタッタッタタ




黛  「待ってろー! 古美門ーー! 必ず勝ってやるからなーーーー!!!」タッタッタッタッタ



----------------------------------------------------------------------------------




高木 「……ほう、」






高木 「何といい面構えだ」



961プロ //


黒井 「なに? マスコミが記者会見をしろと言ってきている?」

黒井 「下らん。そいつらの名前と出版社をリストアップしておけ」


黒井 「権力、暴力、財力。どれを使っても構わん」


黒井 「徹底的に黙らせろ」



黒井 「フ、ククククク」


黒井 「こんなことで私が黙るとでも思ったか。……まだまだ」


黒井 「次はどうしてやろうか? 新しいグループを作る? いや、いっそテレビ局を牛耳ってやろうか」


黒井 「見ていろ765プロ、見ていろ高木ぃ!」


黒井 「そして思い知るがいい。正しかったのは私だとな!!」




黒井 「ハーッハッハッハッハッハッハ!!!!!」




古美門事務所//



ガチャ


黛  「仕事とってきました!」

服部 「お疲れ様です黛先生。どうぞ、お飲物です」

黛  「あっ! ありがとうございます服部さん。あれ、古美門先生は?」

服部 「は、先生ならばお庭の方で音楽を聴かれていますが」

黛  「最近、先生、バイオリン弾かれなくなりましたね」

服部 「えぇ、お暇があれば、ああしてお庭で音楽を聴かれることが多くなりましたな」


古美門「」withヘッドフォン


黛  「クラシックでも聞いてるんじゃないですか? 良いことですよ。
    まぁ。あのうるさいバイオリンが二度と聞けないとなると、逆に感慨深くはなりますが」


服部 「おや、黛先生。知らず知らずのうちに、先生のバイオリンに嵌っておられたのですかな?」

黛  「な、え!? ちょ、ちょっとやめてくださいよ服部さん! わたしがあんな男の公害バイオリン
    にハマるわけないじゃないですか。あれだけ嫌がっていたのに」

服部 「私の経験則なのですがな、深く愛す物事の素養として、『最初は好きではなかった』ということが挙げられると思うのですよ。
    ほら、よく言うではありませんか。失って初めてその大切さに気付いた、などと」

黛  「いやいや。いやいやいや! そんなこと絶対、ぜーったいにありえませんから! 人間の感性なんてそうそう変わるもの
    じゃないんです。先生だって、通を気取って、一生クラシックと柊しずかだけを崇拝して生きていきますよ!」

服部 「いえ、どうでしょう。人間の心とは、ひょんなことから大きく変わってしまうものですよ。
    古美門先生だって」


黛  「え?」




古美門「~♪」withヘッドフォン



黛  「…………」





ドスドスドス、スポッ





古美門「? おい、何をやっている朝ドラぁ! 勝手にヘッドフォンを引き抜くんじゃない」

黛  「…………」

古美門「おい、きーいているのか、黛ぃ!」

黛  「…………」











<あずさ『ねぇねぇねぇ 好きになぁって いーいですかぁー? ねぇねぇねぇ……』






古美門「おーい、何をしている、さっさと接続しなおせ!」


黛  「え? これずっと聞いてらしたんですか?」

古美門「? 何か問題でも? 最高じゃないか。三浦あずさのラブリ。
    隣に…、も捨てがたいが、このギャップも素晴らしいじゃないか」

黛  「え? え? 先生いつの間にそんな中毒状態に」



古美門「いや? 朝から50回リピートしてるけどまだ中毒じゃない」


黛  「充分ですよ! クラシックは!? 柊しずかはどうしたんですか!?」

古美門「熟した女の色気をただよわすオーラと美貌、そして胸。非の打ちどころのない大和撫子な性格。
    そして実年齢からくるぴっちぴちの若さ。そして91のサイズを誇る胸!」

黛  「前はあれだけ批判してたのに! ていうかよく見たら棚に入ってるCD全部765プロ関連じゃないですか!?
    あれっだけ批判してたのになんですかその手のひら返しはっ!!」

古美門「黛くぅん。人は変わるのだよ。人は常に日進月歩。成長していくものなのだよ。
    あぁ……。すまない。ゼツボー的に色気も性格も欠如している君には関係のない話だったな。
    君はいつまでたっても成長しないもんな。特に胸っ!」

黛  「な、ななななな! 先生! セクハラで訴えますよ!」


古美門「うるさいペッタンコー♪」

黛  「こんの……!」




古美門「それより早く戻せ。早く戻さんとクビにするぞ蟹股色気ナシ幼稚園児」



黛  「この……、このっ……! 最低成金横わけ小僧ー!」ポイッ!




古美門「お前! このヘッドフォン高いんだぞ! やっぱり貴様なんてクビだクビだクビだぁーーっ!!」

黛  「不当解雇には断固として立ち向かいます!」


古美門「図に乗るなぁ? 貴様ごとき三流弁護士がこの稀代の天才に勝てると思ってるのかぁ!?」



黛  「なぁんですってー!?」







古美門「君などいっそ弁護士を辞め、その無駄な怪力を活かせる職業に転職するといい。きっとその方が君は成功できるはずだ!
    ポンコツ弁護士「黛真知子」改め、怪力アームレスラー「まっちちょん」というリングネームで人生をREST@RTするといい!
   


    す こ し は マ シ に な る だ ろ う !」











テッテレ、テーレッテレン! リーガルハイ!






                                                      END



力作乙
書き溜めてたにしても1日で完結までもってくとは…ww

乙乙
これこのまま放送されてても違和感ないなww

Speed1094.4か。我ながらアホの所業だわww

>>376
やっぱりリーガルハイはあの1話完結で一気に終わるところが魅力だから、やっぱり一気に行くべきかと思って。
あと、明日ちょっと忙しいから、できる限り今日中に終わらせたかったのさ。

そのかわり、昨日書き終えてほぼ直で登校したから、ミスもありそうやけん。気になったところがあったら言ってください。



見てくれた人、ほんとにありがとう。盛大なる感謝を。

面白かった
気が向けば次回作も書いて欲しい

乙したー
全キャスト脳内再生余裕でしたおwwww

黒井とか社長とか食えない奴ら相手に小御門はホント輝いて見えるなあ

ついでにやよいのぐう天使には最早何者も逆らえないと実感した

>>378
果たして放送時間は深夜なのか10時なのか……。

後、これ放送したら響ファン怒らせるわ。響と蘭丸のシーンは書いてて胃が破裂しそうだった。


出来る限りアイマスもリーガルハイもWINWINにしたつもりだけど、
どっちかを傷つけてしまっていたら申し訳ない。そんな意図はなかったんや。
天地神明に誓って、アイマスファンだし、リーガルハイファンやで。アンチじゃないよ。

>>381
書こうにも法律がハードルなんよな。
全国の法学部及び法曹界の人間はリーガル・ハイを書くべき。



>>382
ありがとう、「SSなんぞで何を言う」というかも知らんが、キャラがぐりんぐりん動いてくれたわ。
あとやよいは天使。異論は異教徒。



前もリーガルハイで何か書いたりしてた?

>>388
いんや、今回が初めて。
藤原達也の人ともおじゃる丸の人とも別人よ。因みにこの2作をまとめで見て、
俺もリーガルハイ書きたいなー、ってなって、勢いで書ききった。

>新春特別スペシャル『リーガル・マスター』、はーじまーるよー!
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