穏乃「憧!増水してる川見にいこ!」 憧「濡れるからやだ」(143)



ザーザー

穏乃「憧の奴なんか変わったな。昔は台風がきたらあっちのほうから誘ってきたのに」トボトボ

穏乃「最近は毎回断られてる……」

穏乃「憧、もしかして私のこと嫌いになっちゃったのかな」

穏乃「それにしてもすごい風。でも雨の量はそんなでもない。あまり期待しないでおこ」

穏乃「お、丁度いい大きさの木の枝が」ヒョイ

穏乃「キンキンキン! こどものこーろのゆめーは♪」ブンブン

穏乃「いろあせないーらくがーきで♪」ブンブン

穏乃「おもうーままーかき……」ブン

穏乃「憧……」トボトボ



ドドドドドド

穏乃「うーん、やっぱりそうでもないか」

穏乃「前回は橋の上まで水がのぼってたのになー」

穏乃「なんかおもろくないし帰ろ」

 「―――」ドンブラコ
 「――!――!!」ドンブラコ

穏乃「ん?なんだあれ、人が流されてる!?」

 「ワハハ、これはまずいぞー」
 「うわああ!助けてくれー!」

穏乃「蒲原さんと衣さん!?なんで奈良に」

穏乃「じゃなくて!助けないと!」


穏乃「おーい!二人とも!」

衣「助けt」ゴボボ

蒲原「衣!ちくしょう私につかまれ」

穏乃「蒲原さん、こっち見えますか!?」

蒲原「あ、穏乃!」

穏乃「今から手を出します!思いっきり腕伸ばしてください!」

蒲原(この速さで掴まったら穏乃も巻き添えに……)

蒲原(ああだめだ、衣がもう意識がない!くそっ)

穏乃「こっちです」グイ

蒲原「すまない」グッ

穏乃「あっ」ズル


穏乃「うあああ」ボチャン

蒲原「大丈夫か、穏乃!」ドンブラコ

穏乃「だ、大丈夫です」ドンブラコ

穏乃「私の背中に捕まってください。途中で急なカーブがあるのでそこで岸にあがれるよう全力で泳ぎます」

蒲原「衣もいるぞ?いけるのか?」

穏乃「私、泳ぎ得意なんです」

穏乃「うおおおおお!」ジャバジャバ

穏乃「命を燃やせええ!」ジャバババ


ガシッ

穏乃「はぁー、はぁー、やっと着いた」

穏乃「蒲原さん!先に衣さんと一緒にあがってください」

蒲原「よいっしょ、ありがとう穏乃、ほら掴まって」

穏乃「いえ、二人とも無事で本当に良かったです」グイ

蒲原「九死に一生だぞ。穏乃さまさまだ」ワハハ

穏乃「あれ?ジャージが何か引っかかって上がれ、」グイグイ

蒲原「し、穏乃!後ろ、流木がっ、」

穏乃「――え?」

ゴン





「負傷者の容態は?」
「昏睡状態。耳から流血して、頭蓋裂傷の恐れが」
「それと大量の水を飲んでいて、酸欠で手足の痙攣も」
「ここまで運ばれてくるのに何分かかってる?」
「おおよそ十分です。近くに通報者がいて助かりました」
「すぐにオペ室とICU空けて」
「できてます」
「血液型は?それと過去の手術歴」
「血液はB、今まで健康です」
「私がつくまで抗菌薬投与と肺吸引ノズルつけといて。片肺に送酸素も併設で」
「わかりました」
「……歳は?」
「16です」
「あとは親御さん呼んでおいて」

「もしもがあるかもしれないから」


ピ ピ ピ ピ ピ

穏乃「……」

憧「やっと集中治療室出れたね。全く一週間も会えないから心配だったよ」

穏乃「……」

憧「みんなは明日来るって。ちゃんとみんなも心配してるから気にすんなよ?」

穏乃「……」

憧「最近また宥さんが部活でてきてくれてさー。ハルエが忙しくていなくても四人で打てるんだよ」

穏乃「……」

憧「今日なんてずっと私がトップ!玄がラスばっかで、涙目で可哀想だったな」

穏乃「……」

憧「でも、最後は赤ドラと槓ドラ爆ノリでトップ終わり。すごい喜んでたよ」

穏乃「……」

憧「そんでもって灼がさ、玄の責任払いでとんじゃって、なんてっ、言ったと、お、思う?」

穏乃「……」


憧「これが、あっ、」ポロポロ

望「憧、帰ろう。そろそろ七時だ」

穏乃母「そうね、また明日もこれるんでしょう?」

ガラガラ

望「君達は……」

衣「……」ションボリ

蒲原「蒲原智美です。こっちは天江衣です。穏乃さんに助けt」

バッチン

憧「なんで、なんであんたたちは元気なのにっ、しずは、意識が!」

望「おい憧」ガシ

憧「はなして!おかしいよ!なんでこいつらの変わりにしずがこんな目に合わなくちゃいけないんだよ!!」

蒲原「おっしゃるとおりです。私達にお詫びの言葉もありません」

蒲原「衣」

衣「……うん」


憧「ど、土下座……っ?」プルプル

 バコ

蒲原「ぅうっ」

衣「!っ、智美、」

望「憧ぉっ、もうやめろ!」

憧「こ、こいつら殺して、私も死ぬっ!」

バシ

憧「……」ヒリヒリ

穏乃母「めったなこと言わないで憧ちゃん」

穏乃母「それじゃあただ、悲しむ人を増やすだけだわ」

憧「う、あああっ」

穏乃母「あなたたち、ちょっとついてきて」

蒲原「はい」


蒲原「ごめんなさい」

穏乃母「なぜ謝るの?」

蒲原「私達のせいで穏乃がこんなことに、」

穏乃母「それはおかしいわ」

蒲原「え?」

穏乃母「あの子は自分で助けようと思って行動を起こしたのよ」

穏乃母「結果がどうあれ、あの子は正義のもとに動いた」

穏乃母「むしろ、あなたたちが無事でよかった」

穏乃母「生きていてくれてありがとう。あの子は私の自慢だわ」

蒲原「……」

蒲原「……本当に、本当にすいません」

衣「……ごめんなさい」グズグズ

穏乃母「穏乃は、大丈夫よ。また元気になるから」


一週間後

憧「やっほー。今日はちょっとおそくなったよごめん」

憧「見てこれ、クラスのみんな千羽鶴折ったんだよ」ジャーン

憧「ちゃんと折る紙の色考えてグラデーションになってんの」

憧「ほら、それに添え書きも」

憧「あ、この前、蒲原さんにひどいこと言って殴っちゃったんだけど、ちゃんとあのあと謝ったから!」

憧「しずはやっぱすごいよ。茶色く濁った川に流れた人を助けようとできるなんて」

憧「早く起きてみんなを安心させてほしいな」

憧「私を……安心させて」

 『ごめん』

憧「え?」

穏乃「……」

憧「幻聴……か、でも久しぶりに声聞けた気がするし、またがんばれるよ」

憧「明日もくるから!」

いつぞやのてるてるぱーは幽体離脱でクンカクンカスーハースーハーしてたな


その日の夜

 『憧、憧、おい憧』

憧「ん、しず……?」

 『はは、ごめんねこんな夜中に』

憧「……?」

 『いや、ちょっと最後に言いたいことがさ』

憧「最後?なんで最後?」

 『お別れってやつだよ』

憧「お別れ?どこか行っちゃうの?和みたいに」

 『和よりも遠くかな。また会えるのは確率で言えばすごく低い』

憧「いやだよそんなの」

 『ごめん、時間がないんだ。色々話したかったことがあるけど、一言伝えたかったことある』

憧「やだ、しずどこもいかないで」

 『私は憧のことが好きだったよ。これだけ。じゃあね』

………


憧「うあああああああ!」

憧「ゆ、夢?」ジットリ

憧「もうやだぁ、しずぅ……」ポロポロ


憧「ていう夢を昨日見てさ、ははは……」ゲッソリ

宥(憧ちゃん、体すごく細くなった。ご飯食べれてないんだろうな)

灼「で、でも穏乃は別にまだ死んだわけじゃ、あ、」

憧「ううんいいよ。グチっていうか嫌な夢だったから聞いて欲しかっただけだし」

憧「部活前なのにこんな話してごめんね」

玄「穏乃ちゃんは絶対目を覚ますよ!」

憧「なんで、そんなはっきり言えるの?もう二週間だよ!?」

玄「穏乃ちゃんだからです!穏乃ちゃんがそんなことでくたばるわけない!」

玄「私は信じてるよ。あんな元気な子みたことないからね」フンス

憧「……ありかとう、玄」

ガラッ

赤土「お、おい!」

赤土「し、しししずが!」

??「おまたせっ!!」


穏乃「……」ボー

 「これ何本に見える?」

穏乃「三本です」

 「ここがどこかは?」

穏乃「んー、なんだっけ」

 「病院です」

穏乃「ビョウイン?ああ、病院か。なんでここにいるんです?」

 「あなたは川で流木に頭を打たれ、大変危険な状態になりました」

穏乃「……」

 「そして二週間ぶりに目が覚めたわけです」

穏乃「……??」

 「先生、この子まさか」
 「かもしれない。君、自分の名前は?」

穏乃「名前?私の名前……」

穏乃「――わからないです」


バタンッ

憧「しず!」

憧「うわあああ、しず、しず!」ギュー

穏乃「く、苦しい」

憧「ほんと心配したんだからね!全く二週間も目を覚まさないから」

玄「穏乃ちゃん」ウルッ

灼「全て解決だね」

宥「またみんなで麻雀できる~」

穏乃「……」

 「あなた、この子の学校の」

赤土「ええ、この子らの顧問を務めています。赤土です。連絡ありがとうございました」

 「お話があります……本当は御両親へ報告を優先するべきなのですが、状況が状況なので」

赤土「ええっと、いったい……?」

玄「穏乃ちゃん、何か食べたいものある?一週間もご飯食べてなかったもんね」

穏乃「……」

憧「ほらしず、遠慮いらないから。別にラーメンでも、」

穏乃「……ああ、」

穏乃「私の名前、しずのって言うんだ」


◇◆◇◆◇◆


灼「憧、学校来てないって。今日で三日目」

玄「そうだよね、親友に敬語使われて名前聞かれたらきついよ」

灼「初めて会ったって顔してたね……」

玄「まさか、誰のことも覚えてないとは……」タハハ…

灼「長期記憶障害、必要最低限は生活ができるみたい」

玄「でも、お箸の持ちかたも忘れてた。記憶を戻す方法ってないのかな」

灼「ものすごく可能性が低い……らしい」


赤土「お、二人ともいるな。宥は?」

玄「今日は予備校行ってます」

赤土「三麻もつまらんし、しずの見舞い行くよ」

灼「憧も呼ぶ?」

赤土「憧はダメだ。もうちょっと落ち着いてから会わせる。それに会いたがらないと思うし」


病院は山の中腹に建っていて、道行く車はほとんどが病院を利用する人たちでした。
春絵さんの車が坂を登っているとき、ちらちら見える白い壁と日光を弾くガラス窓がやけに不気味で、
あそこにいる穏乃ちゃんが自分達とは少しだけ違う存在に思えました。
現実と隔離され、二度と下界には降りれないような厳重な要塞。
私は口には出さないものの、無意識に感じたことがあります。
以前の高鴨穏乃はもうこの世にいないのだと。
死んだ精神は肉体から剥離し、炭酸の泡のように細かく千切れ浮いていき、最後は消えてしまうのです。
憧ちゃんを励ました言葉がまるっきり逆です。私は嘘をついてしまった。
じゃあ、あの体に入ってるのは誰だろう。
高鴨穏乃に似た全く違うなにかでしょうか。
それとも新しく生まれた高鴨穏乃でしょうか。
この問いに答えられるヒトはいるのでしょうか。
私は、
 
 『玄さん。ばいばい』

玄「え?今誰か呼んだ?」

赤土「いや?」

灼「私も何も言ってないよ」

玄「?」

実は賢いけど口が付いてこないせいで支離滅裂になってる玄チャー可愛い


コンコン

 「!」

赤土「しず、入るよ」

 「どうぞ」

赤土「調子はどう?頭いたいの治った?」

穏乃「食欲もでてきましたし、これといった不自由はないです」

穏乃「ただ、トイレの水の流し方とか髪の毛の洗い方とか覚えていなくて、そのへんちょっと手間取りますね」

赤土「記憶は……全然?」

穏乃「すいません」

玄「穏乃ちゃん。みんなの名前、言える?」

赤土「おい、玄」

穏乃「赤土春絵さん、松実玄さん、鷺森灼さん」

穏乃「マフラーを巻いていたのが玄さんのお姉さんの宥さん」

穏乃「それで、あのツインの子が新子、」

玄「新子憧」

穏乃「……すいません」

玄「……ちょっと、おトイレ行ってきます」


ジャー バシャバシャ

玄「これからどうなっちゃうんだろ」

玄「あ、」

穏乃「玄さん」

玄「どうしたの?トイレ?」

穏乃「玄さんが三人の中で一番長い付き合いだって聞いたので、」

玄「?」

穏乃「以前の私ってどんなやつでした?」

穏乃「玄さんのこと『玄さん』って呼んでました?」

穏乃「好きな食べ物は何でした?口癖はありましたか?」

穏乃「私、こんなに涙もろかった、ですか?」

玄「穏乃ちゃん」

穏乃「怖いんです。みんなの視線が、誰だこいつって感じで、私だって誰なのかわからないのに」

穏乃「誰が知り合いで誰が親で誰が親友かなんて、ぜ、全然覚えてないっ」

玄「落ち着いて」

穏乃「私、誰?」

無意識で抱きしめました。
穏乃ちゃんは苦しげによじれた声を漏らし、私の胸に額を押し付けました。
私は何か慰めにもならないような、から回った言葉を二、三回口走ったと思います。
それでも次第に大きくなる泣き声に無力感を覚えました。
私が何を言おうが何をしようがどうにもならないような気さえして、ただただ綺麗に手入れされた穏乃ちゃんの髪を撫でました。
穏乃ちゃんがそうしてほしいからではなく、不甲斐ない自分を誤魔化すためです。
結局は自分が可愛くて、病的に他人を思うことができない。
私は、憧ちゃんにはなれないのです。


赤土「おかえり」

玄「遅くなりました」

穏乃「……」グスッ

灼「しず」

穏乃「なんで、しょう」

灼「これあげる」

穏乃「小学生マージャン入門?」

赤土「ルールも全然覚えてないんだろ?」

灼「マージャン、私達同じ部だから、学校来れるようになったらすぐ打ちたいし」

穏乃「……」

穏乃「これをやって記憶もどりますか」

赤土「可能性はある」

穏乃「!!」

赤土「お前が記憶を失う前に一番のめり込んでいた趣味だ。過去の行動の反復は治療が進みやすいらしい」

灼「麻雀牌も一応もってきたよ。置いておく?」

穏乃「はい!」

赤土「気長に頑張ろう。よくなりゃ憧も元に戻る」

穏乃「新子さんですか……」

赤土「お前の意識が戻るまで毎日ここを通ってたんだ」

穏乃「でも、新子さんあの日からずっときてないです」

赤土「憧はお前の親友だ」

穏乃「だから私が名前を聞いたとき、あんな顔して……」

赤土「最初は悪い冗談だと思ったみたいだが、――いや、やめようこんな話」

穏乃「赤土さん!私頑張ります!」

赤土「おう」

穏乃「あ、あと頼みたいことが」


◇◆◇◆◇◆

望「おーい、憧!そんなとこ登るなー!」

憧「……」

憧母「憧ちゃんどうしちゃったんだろ」

望「うちの御神木に登ったのは、小学生のとき遊びに来たしず以来だよ」

憧母「しずちゃん以来、か」

望「あーこー」

憧「もうちょっといさせて」

望「落ちるなよー」

憧「……」

憧「ここ、遠くまで良く見える」

憧(しずは一体ここで何を見ていたんだろう)

憧「そろそろ学校、行かなきゃ」


二週間後

赤土「退院おめでとう」

玄「おめでとー」

灼「おめでとうしず」

穏乃「ありがとうございます」

赤土「明日から学校来れるんだって?」

穏乃「午前か午後、どちらかにしろって先生に言われてるんで、どっちにしようかなーって」

穏乃「まだリハビリが残ってるし」

玄「じゃ、じゃあ午後! ほら、部活にこれるよ」

灼「先生がよければそっちがいい」

穏乃「そうですね、あとで相談してみます」

穏乃「あ、赤土さん。例の物を」

赤土「ああ、大会のDVDか。ちゃんと持ってきたぞ。ごめんな遅くなって」


玄「どういうこと?」

穏乃「以前の私ってどういうやつなのか、自分で自分を勉強しようと思って」

穏乃「先週から母が持ってきてくれた昔のホームビデオ見てるんですよ」

穏乃「そしたら、いつも、いっつもですよ? 新子さんが映ってるんです」

穏乃「すごい仲良さそうで……。自分に嫉妬しました」

穏乃「あんな友達忘れるなんて、私ってすごいアホですよね」アハハ

穏乃「だから新子さんも、」

赤土「憧だよ。画面の中のお前も『憧』って呼んでいたでしょ?」

赤土「呼び捨てで呼んでやって。それがあいつに対しての謝罪になるはず」

赤土「ついでに私のことはハルエさんって呼んでね」

穏乃「はい、あか――ハルエさん!」

赤土「ごーかく」ニコ


◇◆◇◆◇◆

憧(こんなに学校に来るのつらいなんて思わなかったな)

憧(早く、しず、)

ワイワイ

憧(あれ?隣の教室騒がしいな)

ガラッ

穏乃「!」

穏乃「あ、憧!」

憧「!!っ あんた学校来て大丈夫なの?」

穏乃「うん、無理いって一日行っていいかお願いしてね。先生から許可だしてもらったんだ」

憧「……」

憧「き、記憶は?」

穏乃「……ごめん、まだ全然なんだよね」


憧「そうだよね。そんな都合よくないよね。ごめんね変に期待しちゃった」

穏乃「憧」

憧「大丈夫穏乃のせいじゃないから」

憧「私、教室戻るね」

穏乃「え、でも」

憧「ごめん。話しかけてこないで」

穏乃「……」

 「なにあれひどくない?」
 「友達がやっと学校これたのにね」

穏乃「私は大丈夫だから、ね。だから憧のことは悪く言わないで。おねがい」

 「気にしすぎだよー」

穏乃「……憧」


放課後


赤土「今日からまたしずが復活だ。あ、ルール覚えた?」

穏乃「点棒計算とかはまだですけど、とりあえずは役とルールは」

赤土「ならばよし!」

赤土「今日は憧もきてるし、私以外の四人で打ちな」

穏乃「よろしくお願いします」

玄「よろしくー」

灼「よろしく」

憧「……」



穏乃「ええっと、これで和了りかな?」パタ

玄「うんうん! リーツモピンフで1300オールだね」

穏乃「やったー! これでビリじゃなくなった」

玄「ふふふ、まだまだ南二局。勝負はこれからです」←ビリ

憧「おめでと」

穏乃「うん!ありがとう」

憧「……っ、」

穏乃「細かい点棒がないな、あ、あたら――憧、こっちの千点を」

憧「新子さんでいいよ」ニコ

灼「」ゾクッ

穏乃「え、あ、ごめん。でも、これからはさ、下の名前で」

憧「無理しなくていいよ」


憧「高鴨さんは、私にそんなに気を使わなくていいよ」

憧「無理すると体に悪いだろうし、変に気を使われるとこっちも困る」

憧「だから、下の名前で呼ばないで」

穏乃「……けるなよ」プルプル

穏乃「ふっざけんなよ!」

穏乃「あんたは私の親友じゃなかったのかよ!」

穏乃「記憶なくなって、私があんたのこと何一つ覚えてなかったら、そっからただの赤の他人か!」

穏乃「私がどんだけ苦しんでこの三週間過ごしてきたか……っ」

穏乃「何もかもわからない、何が正解で自分は誰なのか」

穏乃「てめえ、見覚えのない人に母親だって名乗られて耐えられんのかよっ」グイ

穏乃「なんとか言え!」

憧「……」

                       ヘ(^o^)ヘ いいぜ
                         |∧  
                     /  /

                 (^o^)/ てめえが何でも
                /(  )    思い通りに出来るってなら
       (^o^) 三  / / >

 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三 
 ( /

 / く  まずはそのふざけた
       幻想をぶち殺す


穏乃「帰る」

赤土「ちょっと待ってくれしず。こいつは今」

穏乃「もうここにはきません。短い間でしたがありがとうございました」

穏乃「さようなら、新子憧」

バタンッ

憧「ハルエ」

憧「私を死ぬほどボコボコにして」

赤土「そうしたいけどな。そうするとしずが悲しむ」

憧「しずは、もういない」

赤土「あいつはしずだ」

憧「……」

赤土「今日はもう帰りな」


◇◆◇◆◇◆

憧「ただいま」

望「憧、しずが!また、」

憧「え?」



 「たいした外傷はありません。川が深かったので助かりました」

 「今は少し眠っているだけです。じきに目を覚ましますよ」

 「それにしても、事故とは考えにくいですし……」

 「病院でメンタルチェックをしてみます。え、ええ、精神が不安定な時期でしたので」



憧「私のせいだ私のせいだ私のせいだ私のせいだ私のせいだ私のせいだ」




 
 『おい、起きろ、高鴨穏乃』

穏乃「ん?え、おわ!!」

 『びびってんのかよー』

穏乃「わ、私!?」

 『やっちゃたなー、自殺しようだなんて。当分病院出れないぞ』

穏乃「もしかして、前の私?」

 『そうだよ。今はもうお前に体を預けちゃったけどな』

穏乃「……、別に自殺じゃない。あれはまた事故を起こせばそのショックで」

 『それな、無理だよ。あきらめたほうがいい』

穏乃「なんで?」

 『昔の思い出は全部私のものだ。誰にもあげないよ』

穏乃「じゃあこれから憧とどう接したらいいの」

 『憧も頭固いからなー。これから友達になるって言っても、長い間難しいだろうね』


穏乃「方法、ないじゃん」

 『んーそうだな。……明日の午後、ちょっとだけ体借りるよ』

穏乃「それができるんだったら、これからずっと入っていてよ」

 『それは無理だよ。私はいつか消滅しちゃうんだ。長くいることはできない』

 『限界が明日の日没ってところかな』

穏乃「そっか」

 『今日はよかった。穏乃と話すことができて』

穏乃「君も穏乃じゃん。何か変」フフ

 『そうだよ、私もお前も穏乃。時間がたてばお前も私と遜色のない穏乃になっていく』

穏乃「なんか楽観的だね」

 『お前もそのうちそうなってくるよ。基本的にアホだからな』

穏乃「自分にバカにされると反論できないよ」

 『ははは、そうはできない体験だね。……今日はもう寝よう』

穏乃「ん、おやすみ」


◇◆◇◆◇◆

次の日の夕方

 「先生!穏乃ちゃんが病室から――、キャアアアア!」
 「」ダラーン

穏乃「すまぬ、顎狙ったらあんな簡単に落ちるとは……」


――新子家――

穏乃「うらー」ピンポンピンポンピンポンピンポン

望「ちょ、うるさ……、しず!体は大丈夫なの?」

穏乃「もちろんおっけーっすよ!」グッ

望「憧なら、今日は一歩も家からでてなくて、」

穏乃「んじゃお邪魔しまーす」

望「あ、ちょっと」

ドタドタ

穏乃「おらっ!憧いるんだろでてこいや!」ガチャ

憧「ひっ、しず……?」


穏乃「へへ、昨日はよくも好き勝手言ってくれたなー」

穏乃「横で聞いてた私までプルっちまったよ……」

憧「??」

穏乃「とりあえず、ついてきて」ガシッ

憧「や、放して!」ブンブン

穏乃「やだよ」

憧「わああああ」ズルズル

アアアア…

望「いったいどうなってんだ?」ポカーン


憧「御神木?なんで」

穏乃「とりあえず登ろう。話がある」

憧「……」

穏乃「はは、登るのうまくなったね。昔は高いところびびってたくせに」

憧「――あんた、記憶っ」

穏乃「それも含めてだよ。話ってのは」

穏乃「よっこいしょ」

憧「……」

穏乃「もうすぐ昔の高鴨穏乃は完全に消える」

穏乃「今が最後なんだ。少しの間、私の話を聞いて欲しい」

憧「……うん」


穏乃「最初に会ったときのこと覚えてる?」

憧「んん、ごめん、覚えてないや」

穏乃「だよね。私もだよ」

憧「ええー」ガク

穏乃「だけどいつの間にか仲良くなってたよな。中学あがるまでいっつも遊んでた」

憧「うん」

穏乃「憧んちにはじめて来た時、なんでこの木登ったか知ってる?」

憧「確か……、御利益があるって私が言ったから?」

穏乃「そう、当時は神社にあるもん全てが私にとって神様でさ、まぁそれはおかしくはないんだけど」

穏乃「特にこいつはすさまじい霊気つうのかな、とにかくピーンときたわけだ」

穏乃「でね、こいつに登ってお願いすれば、絶対にその願いは叶う、ってね。私の直感がささやくわけ」

憧「そっか、あのときしずは……、」


穏乃「そう、私がお願いしたのは、」

穏乃「新子憧っていう女の子と一生、いや、死んで生まれ変わっても友達でいてください」

穏乃「そのほかにもお小遣い増やせだとか、麻雀うまくなれとかいっぱいしたけど、」

穏乃「私は憧とずっと友達でいたかったんだ。だから一番強く願った」

穏乃「だから憧、私の願いをかなえてくれないかな」

憧「私に、そんな資格ないよ」

憧「昨日もしずにひどいこと言って、それでしずは川に」

穏乃「心配してくれてありがとう」

穏乃「今の穏乃は本気で嫌われたと思ってずっと泣いてたんだぞ」

穏乃「寝言でも、『憧、憧』って、痛っ」

憧「!っ 大丈夫?」

穏乃「いや、私の中で穏乃が暴れたんだ。結構恥ずかしがりやだからね」

憧「ふふっ」

穏乃「なんだよー本当だぞ」


穏乃「まぁ、何が言いたいかって言うと身体はいろいろ記憶してるんだ」

穏乃「記憶はめちゃくちゃになっちゃったけど、身体は憧のこと覚えてる」

穏乃「いや、その、へんな意味とかじゃないよ」

憧「いやいや、わかるよ」

穏乃「だからね、あんまり毛嫌いしないでほしい。今の穏乃のことを」

憧「あれは、その……」

穏乃「わかるよ。たぶん気持ち悪かったんだと思う。ちょっと前までの親友に敬語で話しかけられたら、誰でもそうなるよ」

穏乃「だけど、あいつはあいつなりに一生懸命なんだ。まぁ、原因は私にもあるけどね」

憧「?」

穏乃「許して欲しい。私が私でなくなったことに」

穏乃「だから、そのついでに新しい穏乃も受け入れてくれないかな?」

憧「しずのお願いなら断れないよ」


憧「あ、その光」

穏乃「ああ、そろそろみたいだ」ポツポツ

憧「もういっちゃうの?」

穏乃「うん。ごめんね。――今まで楽しかったぞ!」

憧「わ、私もっ!」

穏乃「新しい穏乃によろしく。友達でいてくれ」

憧「絶対友達でいる!」

穏乃「ありがとう。やっぱり私は憧のことが――!」

憧「しず!」

穏乃「……」

穏乃「、憧」

憧「ごめん」


穏乃「泣くなよ」

憧「ご、ごめんっ」

穏乃「もうさ、誰も悪くないよ」

憧「っ、」

穏乃「できるだけ私を取り戻す。だけど、」

穏乃「昔みたいな私ではなくなるかもしれない」

穏乃「それでも、友達でいてくれる?」

憧「うん!」

穏乃「死んで生まれ変わって木や花になっても?」

憧「犬でも鳥でも亀でもなんでも!」

穏乃「そっか、じゃあ憧は私の――初めての友達だ」



槓!

ふざけたSSしか書いたことなかったから疲れた
これもふざけてるっちゃあふざけてるけど

えっ、まだ終わりじゃないよね? >>1さん。

ふざけたssて?

>>132
勘弁してください

>>134
久「この前の貸し返してほしいんだけど」 美穂子「……」
てのと
宥「穏乃ちゃんの内臓あったか~い」 穏乃「」ピクピク


長い間保守と読んでくれてありがとうございます
寝ます

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