菫「体育倉庫に閉じ込められるおまじない……?」(149)

菫「ふぅ。部室の掃除なんて久しぶりにしたな」

菫「にしても誰の本だこれ……おまじないの本、って……」

菫「……」

菫「ま、暇つぶしにはなるだろう」ペラ

菫「……」

菫「『思い浮かべた人と一緒に体育倉庫に閉じ込められるおまじない』……ふっ、まさかな」

菫「……」

菫(えっと、十円玉……)

菫(これを縦に並べて、心の中で呪文を唱える)

菫(そして思い浮かべた人と……)

菫「……」

菫「……はぁ。一体何をやってるんだ私は」

菫「こんなくだらない、神頼みにもならないことに時間を割くなんて」

菫(……本当に、どうかしてる。彼女が私の隣の席になってからは特に……)

照「菫」

菫「ひぁっ!?」

照「どうしたの? 変な声出して」

菫「う、後ろからいきなり話しかけてくるな! いつ部屋に入って来た!?」

照「さっき普通に入った。ぼーっとしてたのは菫だよ?」

菫「そ、そうか……」

照「それ何の本? それに、十円玉なんか机に並べて……」

菫「そ、そんなことより、部室に一体何の用だ? 今日は休みのはずだが」

照「部室に用事はない。菫を探しに来た」

菫「私を?」

照「菫、体育祭の実行委員だったよね」

菫「ああ、そうだが」

照「もうすぐ体育祭のリハーサルだから、グラウンドにテント出しといてって福与先生が言ってた」

菫「先生が?」

照「うん。菫HR終わったあとすぐにクラスから出て行っちゃったから、伝え損ねたって」

菫「そうか……手間をかけさせてすまなかった。今すぐ体育倉庫に行って……」

菫「た、体育倉庫!?」

照「? どうしたの菫?」

菫「いや、なんでもない……」

菫(ま、まさか、な……)

照「そういうことだから、よろしくね」


――――――

菫(……偶然、なのか……?)

菫(もし本当におまじないが効いたとしたら、体育倉庫には……)

菫「……いや、それこそあり得ない。彼女が体育倉庫に用があるなんて……」

恒子「あ、弘世さん!」

菫「っ!? ……ふ、福与先生?」

恒子「いやー、探した探した。あ、もしかして宮永さんから話聞いてたりする?」

菫「テントの件ですか?」

恒子「それそれ。小道具係の松実さんにも手伝うように言ってるから、二人で頑張ってね」

菫「ま、松実!?」

恒子「うん。女の子が一人であんなクソ重いもん出せるわけないし」

菫(ほ、本当におまじないの効果が……)

恒子「ま、ぱぱっとやっちゃってちょうだいな!」

恒子「あと、先に行った松実さん頑張ってると思うから、出来るだけ早く行ってあげて。そんじゃよろしくー」

菫(……こ、こんなことがあり得るのか……?)

――――――

宥「うぅ……重い……」

菫(ほ、本当にいた……)

宥「こんなの一人で動かせないよぉ……」

菫(松実、宥……)

菫「……」

宥「あっ、弘世さん」

菫「っ……お、遅れて申し訳ない。手伝いに来た」

宥「だ、大丈夫です。私もさっき来たばかりだから……」

菫(……ま、まずい。ドキドキしてきた。二人きりってだけなのに、こんな……)

宥「え、えっと、弘世さん……?」

菫「す、すまない。少しぼーっとしていた。早く済ませてしまおう。そっち、持ち上げられそうか?」

宥「うん、っと……ご、ごめんなさい、これが、限界です……」

菫(全然上がってない……)

宥「ほ、本当にごめんなさい! 私全然力なくて、運動も出来なくて……!」

菫「そ、そんなにも卑屈になるな。こんな重いもの、普通の女の子は持ち上げられない」

宥「でも弘世さんは……」

菫「私は、その……部活で鍛えられてるから」

宥「麻雀部と……弓道部、ですか?」

菫「ああ、弓を引くだけでも随分な力がいるから、計らずしも力はつく。だから私のような女の方が珍しいんだ。松実さんは何もおかしくない」

宥「弘世さん……」

菫「持ち上げられないなら、持ち方を変えよう。二人で同じ方向から力をかけて引っ張ればいい。こっちに来てここを持ってくれるか?」

宥「は、はい。え、えっと、こうですか?」

菫「っ……!」

菫(ち、近い……一つの取っ手を二人で持ってるんだから、当たり前なんだろうけど……)

宥「えっと、それじゃあ引っ張りますね」

菫「あ、ああ。呼吸を合わせよう」


宥菫「「いち、にの、さんっ!!」」


――――――

宥「はぁ、はぁ、はぁ……重いです……」

菫「出口付近までには持って来れたが……ここからもっと骨が折れそうだ……」

菫「外に出て休憩しよう。ここは少し暗いし埃っぽい」

宥「はぃ……わかりました……」ハァハァ

菫(一緒に体育の授業を受けてて分かってはいたが、本当に体力が無いんだな……少し重いものを運んだけなのにふらふらだ)

菫「……手を貸そうか?」

宥「だ、大丈夫……私、そこまで貧弱じゃ……きゃっ!?」

菫「っと……暗いから足下には気を付けて」

宥「あ、ありがとうございます……」

菫(……温かい。それに、とても良い匂いが……)

宥「あの……」

菫「……え?」

宥「も、もう大丈夫ですよ?」

菫「っ! す、すまない!」

菫(わ、私は一体なにを考えて……!)

宥「え、えと、それじゃあ外に出ましょうか」

菫「あ、ああ。そうだな」

菫(……思った以上に重傷なのかもしれない)

宥「それにしても……すごくたくさんの機具がありますよね」

菫「もうすぐ文化祭だから、奥にしまってあった物を出入り口付近に置いてあるんだろう」

菫(こんなにも高く積み上げて……何かの拍子に崩れたら一大事だぞ)

宥「あっ」

菫「どうした?」

宥「マフラー奥の方に置き忘れてる……」

菫(付けてないと思えば外していたのか……)

宥「汚れそうだと思って外したままで……取ってきますね」

菫「ああ。奥は暗いけど、一人で大丈夫か?」

宥「はい、少しだけ待っててください」



菫(……しかし、落ち着かないな……いつもとは違う空間に二人きりというだけで、こんなにも緊張するものなのか)

菫(……いや、考えてみれば、彼女と話すときはいつだって緊張しているのかもしれない)

菫(何がきっかけだったのか。分からないし身に覚えも無い。気付けば目で追っていて、彼女を意識していて―――)

宥「きゃあっ!!」

菫「!」

菫「どうした宥!? 何があった!?」

宥「いたた……ご、ごめんなさい。その、つまずいちゃって……」

菫「……はぁ。足下には気を付けろと言っただろ……」

宥「ご、ごめんなさい……」

菫「怪我はしてないか? どこかひねったとか」

宥「ううん、大丈夫。本当に少しつまずいただけだから……」

菫「そうか。マフラーは……見つかったみたいだな。ここは思った以上に危ない場所なのかもしれない。早く出よう」

宥「うん、そうだね……」

――――-ゴゴゴゴゴゴゴ

菫(……な、なんだこの音? しかもこれ、揺れてないか……?)

菫(ま、まさか……)

宥「ひ、弘世さん……ここ、これって……」

菫「地震だ! しかもだんだん大きくなってる!!」

宥「きゃあ!? ひ、弘世さっ……」

菫「こっちだ! 伏せろ宥!!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――――



菫「……止んだ、みたいだな」

宥「うぅ……怖かったよぉ……」ガクガクブルブル

菫「もう大丈夫……安心して……」ナデナデ

宥「弘世さん……」

菫(しかし大きかったな……震度5~6はあったんじゃないか?)

菫(外の様子も気になる……とにかくここから出よう)

菫「松実さん、立てる? 早くここから出た方がいい」

宥「ごめんなさい……あともう少しだけ、ぐすっ、このまま……」ギュウ

菫「わ、分かった。急かしてすまない。落ち着くまで待つから、リラックスして」

菫(こ、こんなにも強く抱きしめられて……む、胸が……)

宥「あうぅぅぅ……」

菫(こんなときにまで何を考えてるんだ……落ち着くのは私の方じゃないか……」

――――――

宥「……ありがとうございます、弘世さん。ぐずっ、もう、大丈夫です……」

菫「ほ、本当に大丈夫か? 腰が抜けて立てないんだろう? 無理はしない方が」

宥「このままここに居たら、弘世さんまで危険な目に遭います……だから、私のことは置いといて弘世さんだけでも外に……」

菫「何を言ってるんだ!?」

宥「ひっ」

菫「松実さんをここに置いて行くくらいなら死んだ方がマシだ! 二度とそんなことは言わないでくれ!」

宥「ご、ごめんなさい……」

菫「まだ余震の危険もある。ますます一人にするわけにはいかない。立てないなら私が松実さんを背負うから、とにかく二人で外に出よう」

宥「ぐずっ、はい……わかりました……」

菫「手を首に回して? そう、それで体を私の背中に預けて。しっかり掴まっててくれ」

宥(弘世さんの背中……体はすごく細いのにしっかりしてて……)

宥(安心する……あったかい……)

菫「……さっきは、その、怒鳴ったりして悪かった。ただ、弱気なことも自分を蔑ろにすることも言わないで欲しい」

菫「私にとって松実さんは……」

宥「えっ……?」

菫「も、もうすぐ出入り口だ」

宥「あっ……扉が……」

菫(……出入り口付近にうず高く詰まれていた機具が崩れ落ち、扉を塞いでいた)

菫「……あれだけの揺れだ。普通に考えてこうならない方がおかしい」

宥「私たち……閉じ込められて……」

菫(これもあのおまじないの効力だと言うのか……クソっ)

菫(なんて馬鹿なことをしてしまったんだ……私のせいで、松実さんを危険な状況に……)

宥「弘世さん、どうしよう……このままじゃ私たち……」

菫「……落ち着いて、松実さん。私たちがここに来たことは照や福与先生が知ってる」

菫「私たちが校内に居ないことに気付けば、すぐにでも助けに来てくれるはず」

菫「だから、それまでは比較的安全な場所で助けを待とう」

宥「うん、そうだよね……みんな、助けに来てくれるよね……」

菫「ああ。だからそれまでは……私が松実さんを絶対に守るから」

宥「……うん。ありがとう……」

宥(私、また誰かに助けられてばっかり……)

菫「とりあえず、さっきの場所まで戻るからしっかり掴まってて」

―――――――

菫「降ろすぞ」

宥「うん……」

菫「とりあえず、ここなら余震が来ても物が降ってくることもないし、安全だろう」

宥(どうしよう、弘世さんから離れたせいで……寒い……)

菫「松実さん?」

宥「あの、私……知ってのとおりすごく寒がりで……」フルフル

菫「さ、寒いのか? この場所が?」

菫(確かに今は秋の中旬で、少し前までに比べれば気温は下がって来てはいるが……)

宥「うぅぅ……」

菫「す、少し待ってて。何か羽織れるようなものを探してくる」

宥「あっ……ま、待って!」



宥「一人に……しないでください……」ウルウル

菫「っ……!?」ドキン

菫「す、すまない……でも、ここを動かないことには何も……」

宥「私、我慢します……弘世さんがいなくなるくらいなら、寒いままでいいです……」ブルブル

菫(あんなにも顔を白くして、体を震わせて……)

菫「……」

宥「弘世さん……?」

菫「その、何も無いよりはマシだと思う。上からこれを着てみてくれ」

宥(弘世さんの……ブレザー……)

宥「で、でもそれじゃあ弘世さんが……!」

菫「バカ言え。冬山に遭難したんじゃないんだぞ……常人は上を脱いでも涼しいくらいだ」

宥「あっ……そ、そうですよね」

菫「それでも寒いようならまた何か考える。とりあえずはそれで我慢してくれ」

宥「ありがとうございます……」

宥(弘世さんのブレザー……)

宥「あったかい……」

菫(……とりあえずは大丈夫、なのか……?)

宥「はぁぁ……」

菫(しかし、彼女の体質は未だに信じられない……今朝も真冬でもしないような防寒具を着ていたし……)

菫(そういえば、始めて彼女と出会ったときも驚かされたな……)

菫「懐かしい……」

宥「えっ?」

菫「あ、いや。その……異様に寒がってる松実を見て、始めて会ったときのことを思い出してな……」

宥「始めて会ったときのこと……?」

菫「今から1年前くらいの入学式の日だったかな……まだ春先なのにセーターにマフラー、手袋を付けているクラスメイトがいて……それは呆然とさせられたものだ」

宥「私、いつもそうなんです。周囲の環境が変わるたびにみんなに注目されて……入学式の日とかは特に……」

菫「担任になった福与先生に質問攻めにあって、あたふたしていたのも印象深いな」

菫(まあ、あの人の性格の濃さも相まってだが……)

宥「あの時は大変でした……緊張して全然喋れなくて……」

菫「あんなマシンガントークを受けててまともに受け答え出来る人もそういないよ」クスクス

宥「ふふ、そうですよね」

宥「……私は、弘世さんに始めて話しかけられた時のことが印象に残ってます」

菫「始めて話しかけられた時のこと?」

宥「教室の中で防寒具を付けるなんてマナー違反だ。今すぐ取れ、って……」

菫「あ、あぁ……あの時のことか……」

宥「すごく厳しい口調で注意されて……ふふ、少し怖かったのを覚えてます」

菫「ご、ゴーグルにマスクまで付けて来られたら黙って見過ごせるわけがないだろ……」

宥「でも私、ああやって注意されたのは始めてでしたから……」

菫(小動物のような挙動で涙目になった彼女を責め立てる私は、端から見れば悪役だったな……)

宥「そのあと、弘世さんは……」

菫「……なかなか指示に従わない松実さんに腹が立って、無理やり防寒具を取ろうとした……」

宥「ふふ、あの時はすごく騒ぎになりましたよね。喧嘩だ事件だって……」

菫「今でもよく覚えてるし、忘れるわけも無い。あの照に羽交い締めにされるまで止まらなかったくらいだから、よっぽど我を失っていたんだろうな……」

菫(思い出すだけで恥ずかしくなる……どうして私はあそこまで……)

宥「でも、そのあとはちゃんと仲直り出来ましたよね」

菫「学校長直々の許可書を持って来られたからな……最初から事情を説明してくれればよかったものを……」

宥「詰め寄られることなんて普段なかったし、ほとんど初対面だったから……上手く話せなくて……」

菫「あの時は随分と恥をかいたよ」

宥「でも私、いけないことをちゃんと注意出来る弘世さんがすごいと思いました」

宥「私が弘世さんの立場なら、絶対に……」

菫「実際はいけないことじゃなかったんだから結局は私の早とちりだ。冷静に事情を聞き出そうとしなかったのも悪い。改めて、あの時はすまなかった」

宥「そ、そんな、とんでもないです……むしろ謝るのは私の方で……」

菫「ふふ、今さら昔のことを掘り返すこともない。今ではこうやって仲良く……」

宥菫「「……」」

宥「わ、私たちって、普段あんまりお話しませんよね」

菫「た、確かに」

菫(いつも目で追うだけで、話しかけようなんて……)

宥「弘世さんは普段、宮永さんや園城寺さんたちと一緒にいますもんね……」

菫「松実さんも、クラスでは姉帯や岩戸、それに妹さんたちと……」

宥菫「「……」」

宥「……こ、これを機に互いのことをもっと知れるといいですね」

菫「そ、そうだな」


――――――――


菫(……閉じ込められてから1時間は経ったか……?)

菫(未だに助けが来る様子はない。あんなにも大きな地震があったというのに、あまりにも静かすぎやしないか……?)

菫「……松実さん、携帯は持ってたりしないか?」

宥「ごめんなさい。すぐ戻れると思って、教室に置いたままで……」

菫「私も鞄ごと部室だ。期待はしてなかったが、助けを呼ぶのは無理そうだな……」

菫(さて、どうしたものか……)

宥「私たち、いつまでこのままなんでしょう」

宥「結構時間は経ってるのに、まだ誰も来ない……」

菫(……何か理由を付けてポジティブに考えたいものだが、どれだけ推測しても……)

宥「もしかしたら、ずっとこのまま……」

菫「それはあり得ない。明日は体育祭のリハーサルがあるから、この倉庫は絶対に使うことになる」

菫「今日中に出られるかは分からないが……明日までには絶対に出られるよ。それは断言できる」

宥「そ、そうですよね。ごめんなさい、暗いこと考えちゃって……」

菫「この状況じゃ不安になるのも仕方ない。ただ、気持ちを後ろ向きに持っても何も出来ないことには変わらない」

菫「気楽に構えていよう。その方が建設的だよ」ニコ

宥「あっ……」

宥(弘世さんの笑顔……始めて見たかもしれない……)ポー

菫「どうした? 私の顔に何か付いてるか?」

宥「いや……その、弘世さんが笑ってるところ、始めて見たような気がして……」

菫「なっ」

宥「とっても綺麗でした……笑ってる方もすごく弘世さんは素敵ですね」ニコ

菫「っ……」



菫(松実さんの笑顔の方が素敵だ、なんて口が裂けても言えないな……)


――――――

菫(あれからまたしばらく経ったが……話題が尽きると無言が気まずく感じるな……)

菫(松実さんの様子は……)

宥「……」

菫(……あまり良いとは言えないな)

菫(何か気晴らし出来るようなことがあれば……)


―――――ゴゴゴゴゴゴゴ

宥「ひっ!?」

菫(っ……! よ、余震か……!?)

宥「ひ、ひひ、弘世さん……!」

菫「落ち着いて。大丈夫だから」

お前らなんか妄想垂れ流してけよ
今後の展開の足しにでもさせてくれ

菫(さっきに比べれば揺れは小さい、が……)

宥「ひぃぃ……」ガクガクブルブル

菫(彼女には関係ないらしい……)

菫「松実さん、怖がらないで。揺れは小さいし、本当に大丈夫だから」ギュ

宥「弘世さん……」ナミダメ

菫「深呼吸して。不安なら、私にしがみついててもいいから」

宥「はぃ……」ギュウ


菫(……こんなにも近くに、松実さんが……)


菫(この揺れがいつまでも続けばいいなんて思ってる私は……)


―――――――

菫「……ほら、何もなかっただろ? 少し音がうるさかったくらいだ」

宥「はい、そうでした……」ギュゥ

菫「……その、もう大丈夫だと思うから、離れても」

宥「……もう少しだけ、このままでいいですか」

菫「えっ? あ、ああ。わ、私は別に構わないが……」

宥「弘世さん……やっぱりすごくあったかくて、とても安心するんです……」

菫「っ……!」ドキッ

宥「抱きしめるのが気持ち良くて……良い匂いも……」

菫「ま、松実さん……?」

宥「!」

宥「ご、ごめんなさい! わ、私ったら、変なこと言って……」

宥「すぐに離れっ……」

菫「待って!」

宥「っ!?」

菫(咄嗟に腕を掴んでしまった……手首、細い……)

宥「ひ、弘世さん……?」

菫「……えっと、なんだ。その、別に何も気にならないし嫌でもないから、その……」

菫「抱きついてもらっても……構わない」

宥「……」

宥「あ、改めてそう言われると……恥ずかしいです……」

菫「うっ……」

菫(い、一体何を言ってるんだ私は……!! )

菫「す、すまん。さっき言ったことは忘れてもらえると嬉しい」

宥「えっ……わ、忘れないといけないんですか……?」

菫「っ……いや、もう好きにしてくれ……」

宥「は、はい」

菫(……確実に自分自身がおかしくなってる。この閉鎖的な空間の所為なのか、はたまた……)

宥「……?」

菫(……今は出来るだけ何も考えないでおこう)

―――――――

菫(閉じ込められたのは、推測だが午後の17時頃。体感時間では結構経ってるが、今は何時なんだろう……)

菫(この体育倉庫に気付かない方がおかしくないか……? 外も混乱してると考えてもこれは……)

宥「あ、あの弘世さん」

菫「どうした?」

宥「その……また、だんだん寒くなってきて……」

菫(言われてみれば……確かに肌寒い。日が落ちて来た証拠か……?)

宥「だから、弘世さんが良ければでいいんですが……」


宥「あたためてもらってもいいですか……?」


菫「……」

菫「はぁ!?」

宥「ご、ごめんなさい! やっぱりダメですよね、こんなこと……」

菫「い、いや。え、っと。あ、温めるって、具体的にどうやって……?」

宥「……き、聞いた話なんですが。は、裸で……めあうと……一番あったかいらしくて……その……」

菫「す、すまんがもう一度大きい声で言ってもらえるか? 声が小さくてよく……」

宥「ご、ごめんなさい! やっぱりさっき言ったことは忘れてください!」

宥「わ、私ってば、本当に何を考えて……」

菫(顔が真っ赤だ……は、裸とかって聞こえたが、一体何を言おうと……?)

菫「……よく分からないが、寒いのか?」

宥「は、はい……少し、辛いです……」

菫「……」

宥「弘世さん……?」

菫「……この体育倉庫には暖を取れるものなんて無いと思う」

菫「それで、なんだかんだでやっぱり人肌が一番温かいと……思う」

宥「そ、それって……」

修正
二行目
菫「す、すまんが~」→菫「す、すまないが~」

菫「ま、松実さんが良ければ……私の体を使って欲しい」

宥「!」

菫(わ、私は一体何を……でも、これで彼女が楽になれるなら……)

宥「ひ、弘世さん……ほ、本当に、良いんですか……?」

菫「あ、ああ。言っても私たちは同性だ。抱き合うくらい、それほど気にすることでもないだろう」

菫(私自身は、気になって仕方がないが……)

宥「ありがとうございます……弘世さん、私なんかのために、本当に……」ウルウル

菫「泣くのはやめてくれないか……」

宥「ご、ごめんなさい……ぐずっ、それじゃあ、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

菫「あ、ああ。よろしく」

菫(ってなんなんだこの挨拶は……)

宥「それじゃ、その……見られてると恥ずかしいので、後ろ、向いててもらっていいですか?」

菫「……どういう意味だ?」

宥「い、言わせないでください……」ウルウル

菫(だからなんで泣きそうになるんだ!? しかも顔まで赤くして……)ドキドキ

菫「……分かった。後ろを向いてればいいんだな?」

宥「は、はい。その間に、その……弘世さんも準備しといてもらえれば嬉しいです……」

菫「あ、ああ」

菫(準備? 何の準備だろう。心の準備の時間は確かに欲しいが……そもそもどうして私が後ろを向いて……)


シュルシュル――――


菫(な、なんだ今の音は? まるで衣擦れのような……)


ファサ――――――

菫(……何が起きてる……?)

宥「はぁ……はぁ……」

腹減った
なんか食うから自主保守しとくわ

保守

菫「……ま、松実さん? 一体何をしてるんだ、抱き合うなら早く……」

宥「す、すみません。もう少しだけ待ってください……あとちょっとで脱ぎ終わるので……」

菫(……な、なんだって? 今、脱ぎ終わるとか……)

宥(ど、どうしよう……すごく恥ずかしいし、めちゃくちゃ寒い……)

宥(でも、弘世さんはこんな私のために……一生懸命……)

菫「……すまない松実さん。状況を確認したいから後ろを向いてもいいか?」

宥「えっ!? だ、ダメです! ま、まだ途中で……」

菫「一体何をしているんだ? まったくもって意味が……」

宥「あっ、だ、ダメっ……!」

菫(後ろを振り向くと、そこには上半身裸の―――)

菫「んなぁっ!?」

修正
6行目
菫「~状況を確認したいから後ろを向いてもいいか?」

菫「~状況を確認したいから振り向いてもいいか?」

菫「ななな、何をやってるんだ君は!? どうして服を脱いで……!?」

宥「やぁ……み、見ないでください……」

菫「す、すまない!」サッ

菫(ってどうして私が謝る!?)

宥「うぅ……弘世さんひどいです……後ろ向いといてって言ったのに……」

菫「そ、そんなことよりどうして服を脱いでるんだ? 寒いんじゃないのか?」

宥「すごく寒いです……だから、早くあたためて欲しいのに……弘世さん、服脱いでない……」

菫「あ、当たり前だろう!? 何故服を脱ぐ必要がある!?」

宥「ひっ……」

菫「っ……お、大きな声を出してすまない。ただ、その、私と松実さんの間に大きな意思の齟齬があるように思えるのだが……」

宥「えっ……? 弘世さん、その、あたためてくれるんですよね……?」

菫「あ、ああ。でも、だからと言ってどうして服を脱ぐ必要があるんだ……?」

宥「は、裸で抱き合うのが一番あったかいらしいって、私……」

菫(……あの時か。まさかそんなことを言っていたなんて……)

宥「もしかして、伝わっていたと勘違いして……」

菫「……すまない。どうやらそうらしい」

宥「……!!」

宥「ごご、ごめんなさいっ!! わわ、私ったら、一人で勝手に思い違いして……!」

宥「じょ、常識的に考えてそうですよね、裸で抱き合うなんて、そんなの、普通、あり得ないのに……」ジワァ

菫「な、泣かないでくれ! ちゃんと確認しなかった私も悪いし、そのっ……」

宥「ひぐっ……ひ、弘世さんは、何も悪くなんかっ……」

菫「勘違いは誰にでもある! 恥ずかしいのは分かるし泣きたくなる気持ちも理解出来る! と、とにかくっ……」

菫「まずは服を着てくれないか……?」



宥「……はい」

菫(それは今にも消え入りそうな声だった)


―――――――


宥「着直しました……」

菫「あ、ああ……」

菫(後ろを向いている最中にすすり泣く声が聞こえていた……今も顔は赤くて、涙目で……)

宥「お騒がせして、すみませんでした……」

菫「……謝る必要はない。何も悪いことはしていないんだ」

宥「……」

菫(……落ち込んでいる姿が、こんなにも愛おしく思えるなんて……)

菫(儚げで、触れれば壊れてしまいそうな危うさがあって……)

宥「……弘世さん……?」

菫(あぁ……すごく……抱きしめたい)



菫「……松実さん。改めて、約束を守らせてもらうよ」スッ

宥「えっ?」

宥「あっ……」ギュ

菫「……ほら、服こんなにも温かいんだ。服を脱ぐ必要なんてない」

宥「弘世さん……」

菫(……本当に温かい)

宥(やっぱり、すごく安心する……この気持ちも……あったかい……)


菫(……幸せな夢の中で浮いているような、そんな気分だった)


―――――――


菫「ん、んぅ……」

菫(……いつの間にか寝てしまっていたらしい)

菫「松実さん……も、寝ていたか」

宥「すぅ……すぅ……」

修正
一行目
菫「……ほら、服こんなにも温かいんだ~」

菫「……ほら、こんなにも温かいんだ」

菫(気疲れすることばかりだったからな……おかげで少しは気分が冴えた)

菫(しかし、いよいよ時間の感覚が無くなってきた……気温からして夜であるのは間違い無さそうだが……)

宥「ん、んぅ……ひろせさん……」

菫(……彼女のおかげで温かい。こんなにも近くで触れ合えて、あろうことか抱き合ってるなんて……少しはあのまじないに感謝してもいいのかもしれない)

菫(……松実、宥)

宥「すぅ……すぅ……」

菫「……どうやらこの気持ちは本物らしい」ナデナデ

菫「いつの日か、きっと……」

宥「ひろせ、さん?」

菫「……おはよう、松実さん。どうやら二人とも、いつの間にか眠ってしまっていたらしい」

宥「そうですか……」

菫「今日中には、いや、日付が変わってる可能性もあるが……助けは来そうにもないな」

宥「そうですね……」

宥(もうしばらくは、このままでも……)

菫「特にすることも無ければ話すことも無い。……もう一眠りするか?」

宥「いえ、大丈夫です。それより……このまま弘世さんとお話していたいです」ギュウ

菫「ま、松実さんがそう言うなら、私は構わないが……」

宥「……弘世さん。もしよろしければ……私のこと、下の名前で呼んで欲しいです」

菫「っ……」ドキ

菫「ど、どうして急にそんなこと……」

宥「弘世さん、自分では気付いてないかもしれませんが……たまに私のこと下の名前で読んでるんですよ?」

菫「なっ」

宥「今日だって、私が悲鳴を上げたときに、宥、って……」

菫(ま、まったく自覚がない……)

宥「弘世さんは、咄嗟に私を呼ぶ時はいつもそうなんです」

宥「私が体育でこけそうになったり、何かに当たりそうになったときとか、いつも……」

菫「……」

宥「普段あまり話したりしないけど、何かあったときには真っ先に気付いてくれて、それでいて助けてくれて……」

宥「私、そのことがすごく嬉しくて……いつかちゃんとお礼を言いたいと思っていて……」

宥「その、弘世さん。これからはもっと私と仲良くして頂けると……嬉しいです。だから……」

宥「下の名前で呼んでくれませんか……?」

菫「……断る理由なんかない。喜んでそうさせてもらうよ」

菫「……宥」

宥「!」

宥「……ありがとうございます。弘世さん」

菫「ところで、その……なんだ。私だけ下の名前で呼ぶってのも、不公平だと思わないか?」

宥「えっ?」

菫「弘世さんなんて呼ばれるのは顔見知り程度の人間か教師だけでいい。……菫にしてくれないか」

宥「い、いいんですか? 私なんかが……」

菫「その言葉の意味が分からない。宥にだから呼んで欲しいんだ」

宥「ありがとう、すごく嬉しいです……菫ちゃん」

菫「す、菫ちゃん!?」

宥「えっ……な、何かおかしいですか……?」

菫「い、いや。ちゃん付けで呼ばれたのなんて小学生以来だからな……」

宥「さん付けはよそよそしいと思って……」

菫「……よそよそしいと思うならまずは敬語をやめるべきだと思うんだが」

宥「ご、ごめんなさい……最初に話したときの印象がずっと強くて……」

菫「敬語で話されるのも後輩だけで十分だ。これからは普通に、他のみんなと接するように頼むよ」

宥「うん、わかった。……私たち、これからもっと仲良くなれそうだね。菫ちゃん」

菫「っ……出来ればそれはやめて欲しいな……普通に菫じゃダメなのか?」

宥「呼び捨てってあんまり馴れなくて……菫ちゃんじゃダメ?」

菫「……はぁ。好きにすればいい」

宥「ふふ、ありがとう」

訊きたいんだけど、このおまじないって元ネタとかに解除の呪文とかあったりする?

ちょ、落ちる
保守

上半身裸になり「呪いなんてへのへのかっぱ」×3と唱える

>>101
なるほど
サンクス


――――――――

菫(しかし……どうしたものか……)

菫(本当に助けは来ないのか……これもあのまじないの効力だとしたら、明日になっても……)

菫(……そういえば、あの本のまじないが書いてあった同じページに解呪方法が書いてあったような気が……)

菫「……」

宥「どうしたの菫ちゃん? なんだか険しい顔してるけど……」

菫「い、いや……ここから出られる方法に少し心あたりがあってな……」

宥「そ、それって本当に?」

菫「ああ、限りなく信憑性は高いと思う……」

菫(まじないが本物なら、あれもきっと……し、しかし……!)

宥「菫ちゃん……」

菫(……ためらってる場合なんかじゃない。次の瞬間にも大きな地震が来る可能性もある)

菫(これ以上宥を危険な目に遭わせるのも、怖がらせるのも絶対に……!)

菫「……はぁ。すまない、宥。少しの間だけ後ろを向いていてくれるか?」

宥「えっ? で、でも……」

菫「私から離れると寒いかもしれないが、すぐにでもここから出られるようになる。だから……」

宥「……分かった。私、菫ちゃんを信じる……」スッ

宥(うぅ……寒い……)

菫(元はと言えば全て私が引き起こしたことだ。私自身の手で、責任を持って終わらせる)



菫「……く、くそぉっ……」ヌギヌギ

宥(な、何してるの菫ちゃん……?)

菫(……下着も、だろうな)

菫(すぐ目の前に宥がいる中で、こんなっ……)シュル

菫「ゆ、宥……頼むから後ろは向かないでくれ……」

宥「う、うん。分かったよ……」

菫(ここまでしたんだ。もうなるようになれ……!)

菫「呪いなんてへのへのかっぱ!!」

宥「へっ……!?」

菫「呪いなんてへのへのかっぱ!! 呪いなんてへのへのかっぱ!!」

宥「す、菫ちゃん? いきなり何を……」

―――――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

宥菫「「!!」」

菫(また地震!? そ、それに……かなり大きい!!)

菫「危ない! 伏せろ宥!!」

宥「きゃあっ……! す、すみれちゃ……ふぇえ!? は、はだっ……!?」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ――――――――



宥菫「「……」」

菫(……止んだ、か……?)

菫「大丈夫か宥? かなり大きかったが、どこか打ったとか……」

宥「すごく怖かったけど、大丈夫……」

菫「……そうか。それはよかった」

宥「す、菫ちゃん……ど、どうして……上、裸なの……?」

菫「!?」

菫(し、しまっ……)

菫「こ、これは、その……!」

恒子「そりゃ!!」バァン

玄「お姉ちゃん!!」

照「二人ともだいじょう……ぶ……」


「「…………」」


恒子「えーっと……もしかしてお楽しみだったりした?」

玄「うそ……こんなの……」

照「……」

菫「ち、違う。これには訳があって……」

宥「よかったぁ……助けにきてくれたんだ……」ギュウゥ

恒子「うん、まあ。どんまい! 若いんだし、こういうこともあるよ!」

照「菫……」ドンビキ

玄「」

菫(どうしてこうなった……)

宥「あ、あの。菫ちゃん、とりあえず、服、着た方が……」

恒子「ま、私たち3人以外はみんな外にいるから問題ないよ!」

照「どこが問題ないんですか先生……」

玄「」

宥「えっと、とりあえず、みんな外で待っててくれるかな……?」

宥「見られてると、菫ちゃん私から離れられないと思うから……」

恒子「それもそうだ。よし、無事も確認したし先に出てるよ! 二人とも!」

恒子「ほら、妹ちゃんも放心してないでテキパキ歩く!」

菫「……」

宥「えっと……だ、大丈夫? 菫ちゃん」

菫「……大丈夫じゃない。今後のことを考えると気を失いそうだ……」

宥「さ、三人ともいい人だから心配しなくて良いと思うけど……私も気にしないし……」

菫(どうして気にしないんだ……)

宥「と、とにかく。私後ろ向いてるから服着て?」

菫「……ああ。そうだな」

菫(これが悪ふざけの報いか……自業自得だな……)



菫(こうして一連の事件は幕を閉じた――――)


―――――――

菫(学校に行きたく無いと思ったのも、教室に入りたく無いと思ったのも初めてだな……)

菫(奇異な目で見られないことを祈りたいが……)ガラ

「「……」」ザワ…ザワ…ザワ…

菫(まあしばらくは無理そうな話だな……)

照「おはよう、菫。昨日はお楽しみだったね」

怜「おはよーさん委員長。昨日は災難やったな。いや、むしろラッキーか」

菫「……はぁ」

怜「学校中の噂になっとるで? 松実さんと委員長が体育倉庫であはーんうふーんって」

菫「くっ……福与先生の仕業か……! 断言するが宥とは何もなかったからな」

照「松実さんじゃないんだ」

菫「うっ」

怜「下の名前で呼ぶようになっとるなんて、何があったんやろうなぁ」ニヤニヤ

照「松実さんも登校した時からずっとあの状態」


宥「あわわわわ……」ワイワイガヤガヤ


菫「……」アゼン

怜「松実さんゆっとったんやでー。菫ちゃんにあたためてもらったって」

菫「なっ」

照「……それもそうだけど、菫が菫ちゃんなんて呼ばれてることが一番おかしい。何かあった以外に考えられない」

怜「なあ、それもそやけど、どないしてあたためたん? やっぱりやらしーことして」

菫「もう黙れお前!!」

菫「ゆ、宥! ちょっとこい!!」

宥「へっ? あ、菫ちゃん……」

宥「ご、ごめんねみんな……また後で話すから……」

菫「話すんじゃない!! ええい道を空けろ! 退け!」




怜「はは、連れてってもうた」

照「あんなにも荒れてる菫は初めて見る」

怜「確かに。委員長のキャラやないわ」ケラケラ

怜「にしてもよかったやん。永遠の片思いに進展があって」

照「それは、まあ」

怜「照もあの後輩二人に振り回されてばっかやと婚期逃すで?」

照「うるさい」


―――――――

宥「はぁ、はぁ……ま、待って菫ちゃん、引っ張らないで……」

菫「あっ……す、すまない」

宥「歩くの早いよぉ……」

菫「しょうがないだろ……あんなにもじろじろ見られるんだから……」

菫「そ、それより! 宥、どこまで話した?」

宥「昨日の話? えっと、菫ちゃんと仲良くなって、あっためてもらって、それがすごく気持ち良かったってくらいしか……」

菫「ほ、本当にそう言ったのか!? あの人数に!?」

宥「う、うん……」

菫(どうしてそんなにも誤解を招くような言い方を……!!)

宥「だ、ダメ、だったかな……?」

菫「……はぁ。もういい。そもそも福与先生の口止めを徹底しなかった時点で手遅れだったんだ……」

宥「で、でも、私嘘は付いてないよ? つ、付き合ってるの、って訊かれても違いますって言ってるし、キスしたの、って訊かれてもしてないって答えて……」

菫(たぶん、宥の口ぶりだとそれも本当に聞こえるんだろうな……)

菫「……もう何も言う必要がないな。急に連れ出したりして悪かった。教室に戻ろう」ギュ

宥「う、うん……」

宥(手……)



菫(……私は宥のことが好きなんだ。それなら、周りには私たち二人が両思いだと思わせて、ライバルを減らすのも一興かもしれない)

菫(利用するだけ利用してやろうじゃないか)

宥「あの……菫ちゃん」

菫「……なんだ?」

修正
四行目
菫(たぶん、宥の口ぶりだとそれも本当に~)

菫(たぶん、宥の口ぶりだとただの照れ隠しに聞こえるんだろうな……)

宥「私たち……友達、だよね?」

菫「……当たり前だろ。今さら何を言ってるんだ」

宥「ありがとう。すごく嬉しい……」

宥(友達に、なれたんだ……菫ちゃんと、私……)

菫「宥?」

宥「ふふ、なんでもない。早く教室に戻ろう」

菫「あ、ああ」

菫(なんなんだ一体……)

菫(しかし、友達、か……)



菫(……やはり、あのまじないには感謝しないといけないな)

終わり

照怜とか
部長、愛宕ネキ、キャップの生徒会とか
福与先生を初めとする麻雀プロ、アナウンサーの教師陣とか
クロチャー嫉妬爆発で菫さんライバル視とか
咲、淡、和、シズの一年生組とか

ぱっと思い浮かぶだけでこんだけ書いてみたいのはある
気分が乗ったらいつか書きたいな。もちろん書いてくれてもいいし

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