幸子「約束してくださいね、プロデューサー」 (27)

【モバマスSS】です

短いです

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 正月早々パンツを洗濯していると、玄関ブザーの音がした。

「あけましておめでとうございます」

 は?
 玄関開けると幸子がご挨拶。
 なんだこれ。

 どうしたんだよ、お前。

「新年のご挨拶ですよ。新年早々カワイイボクが見られて幸せですよね」

 とりあえずさっさと入れ。寒いだろ。


「お邪魔しますね」

「きょろきょろすんな、洗濯中だったんだよ」

「色とりどりのパンツですね」

 若い娘が男物のパンツをしげしげと観察してるんじゃない。

「だって、しょうがないじゃないですか」


 確かに、普通は洗濯機で洗濯するパンツを、家の中でタライで洗っているからな、丁寧に。
 珍しいことは自分でもわかっているよ。
 しかしな、俺がパンツを大切にする理由は知ってるだろう。お前は。

「大切にされてるんだなって、嬉しくなりますよ」

 そりゃ、するさ。

「ボクのことは気にしないで、洗濯を続けてくださいよ」


 いいのか?
 あ、お前、もしかして

「まあ、そんなところです」

 幸子はつかつかと押入に近寄るとがらりと襖を開けた。
 押入の衣装ケースが一つ、パンツ専用になっている。そこには百枚以上のパンツが。

「どれくらいのペースで着替えてるんですか?」


 一日に三回ぐらいだ。だから、一枚を月に一回穿くくらいだよ。

「月に一回か……しょうがないですよね。プロデューサーは一人しかいないんだし」

 畳み方が雑ですよ、といいながら幸子はパンツを取り出すと、一枚一枚丁寧に折りたたんでいく。

 わかるのか? と尋ねると、幸子は寂しそうに首を振った。

「わかるのは、多分プロデューサーだけじゃないかな」

 今、幸子が手に持ってるの。
 それが凛だよ。


「……凛さん……言われてみると、ちょっと蒼みがかった色ですね」

 そっちが拓海、仁奈、蘭子、みく……

「ねえ、プロデューサー」

 なんだ?

「ボクがパンツになってしまったら、皆と同じように穿いてくれますか?」

 ならないよ。


「嫌ですよ、ボク、他の人に穿かれるなんて」

 お前はパンツにはならないよ。

「……みんなに、そう言ってたじゃないですか」

「きらりさんも、杏さんも、柑奈さんも、礼さんも、薫ちゃんも……みんなみんな……」

「でも、ここに……この衣装ケースの中にいるんですよね」

 ……そうだな


「知らない人に穿かれたくなんかないです!」

 お前は、パンツにはならない。ならないよ!!

「気休めじゃないですか!!」

 ある日、何処かの女の子が男物のパンツになった。
 そして、全てが始まった。
 
 それでも。
 だとしても。


 俺は、お前達を穿くためにプロデューサーになった訳じゃない。
 お前達をアイドルにしたいんだ。

「止まらないじゃないですか」

 幸子は正しい。
 誰にもパンツ化は止められない。
 それが当たり前の風景になってしまっても、パンツ化は止まらない。


 パンツに生前の顔形をプリントするような男たちが現れ、あまつさえそれが流行っても、何も変わらない。
 女がいずれパンツになる。
 それが当たり前の世界になったというのに、世界は世界の顔のまま動いている。

「約束してくださいね、ブロデューサー」

 幸子が泣いている。

「ボクはカワイイパンツになりますよ、きっと」
「だから、優しく穿いてくださいね」


 馬鹿野郎。そんな……

 ……幸子?

 ……幸子!?

 ……幸子!!

 そこには一枚のパンツが落ちていた。


 お前……わかってたのか?
 わかってて、ウチに来たのか。

 幸子……

 俺はズボンを脱いだ。
 ちょっと順番が狂ったけれど、今回ばかりは譲ってやってください。
 いいですよね、早苗さん。

 早苗さんを脱いで、幸子を手に取る。
 生地の薄い……ああ、そうだな、男物のパンツにしてはカワイイデザインだよ。
 
 幸子……

 俺は真新しいパンツを穿いたまま、しばらく泣き続けた。

以上お粗末様でした


自分でもよくわからないけれど、とりあえず後悔はしていない

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