クッパ「ガッハッハ、珍しいカメだな」宇水「何が可笑しい!!!」(461)

ザッ、ザッ、ザッ……

宇水(……どこだ、ここは?)

宇水(いよいよ国盗りが始まるというから)

宇水(私は琉球から京都に向かっていたはずなのだが……)

宇水(どういうわけか、いつの間にやら)

宇水(周囲から聞こえてくる音という音が、聞き慣れぬものばかりになってしまった)

宇水(私はちゃんと京都に向かえているのか?)

宇水(いや、そもそもここは日本なのか……?)

宇水「…………」ピクッ

宇水(む、足音が聞こえる)

宇水(二足歩行……身長はかなり低い……人間ではない?)

宇水(背中にティンベー、じゃない甲羅を背負っている?)

宇水(亀か? いや亀は二足歩行はしないはずだが……)

ノコノコ「なんだ、お前は」

宇水(しゃべれるのか!?)

宇水(これまでに私が得た情報をまとめると、目の前にいるのは──)

宇水(二足歩行の、人の言葉をしゃべる、亀!?)

宇水(わけが分からん!)

ノコノコ(甲羅を背負ってる、ってことはこいつもカメ族か)

ノコノコ「はっはーん、もしかしてお前、クッパ様の軍団に入れてもらいに来たんだろ」

ノコノコ「いいぜ、俺がクッパ城まで連れてってやるよ」

宇水(心拍数や挙動からは、緊張や敵意は感じられんな)

宇水(これが亀だとして、私のティンベーを見て、仲間だと勘違いしたか?)

宇水(こいつからは全く強さを感じられん、殺そうと思えば簡単に殺れるだろうが)

宇水(自分がどこにいるかも分からん以上、今は情報を集めるべきだろう)

宇水(いざとなれば、クッパとかいう首領格を殺してしまえばいい)

宇水(心眼を会得した私にとって、その程度はたやすいことだ……)

宇水「よかろう、連れていってもらおうか」ニィッ

<クッパ城>

ノコノコ「カメック様」

カメック「どうした?」

ノコノコ「クッパ軍団に入りたいというカメがいるので、連れてきました」

ノコノコ「なんでも名前をウスイ、というそうです」

カメック「ほう?」

カメック(ウスイ? 聞いたことがない名前だな……)

宇水「音の反響具合からして石造りか、なかなか立派な城だな」ズイッ

カメック(な、なんだコイツは!?)ゾクッ

カメック(全身にいっぱい目があるカメなど、初めて見た!)

宇水(お、心拍数が上がっている。急激に発汗も増えた)

宇水(この新手の亀は、私の恐ろしさに気付いたようだな)

宇水「クックック、お前のような三下に用はない」

宇水「我が心眼の前では、隠しごとは不可能」

宇水「私には貴様が“怯えている”ということが、手に取るように分かるのだよ」

カメック「!」ビクッ

カメック(なんで私が怯えていると分かったんだ!? まさか、魔法使いか!?)

カメック(うむむ……私の手には負えんかもしれん)

カメック「ま、待っていろ……今クッパ様をお呼びする!」

宇水(ふん、この分ならクッパとかいうのも大したことはなかろう……)

ズシン…… ズシン……

宇水(な、なんだ!?)

ズシン、ズシン……

宇水(この足音、十本刀“破軍”の不二のような重量感……!)

ズシィン、ズシィン……

宇水(これが──クッパ!? とんでもない怪物ではないか!)

宇水(く……心眼を会得した私が心を乱してどうする!)

クッパ「ほぉう、ワガハイの軍に入りたいというのはオマエか!?」

宇水(この心拍数、完全に私を見下している……!)ピクッ

宇水(まだ両目を失っていない頃、私と対峙した志々雄のように……!)ピクピクッ

クッパ「マリオのようなヒゲを持ち、全身に目がついたカメか」

クッパ「ガッハッハ、珍しいカメだな」

宇水「何が可笑しい!!!」

クッパ「な、なんだ?」

宇水「もういい、気が変わった」ザッ

宇水「帰る手段など、適当に亀を殺しまくって吐かせればいいことだ」

宇水「クッパとかいったな、貴様はこの場でブチ殺してくれよう!」バッ

クッパ「突然怒り出すとは、よく分からんヤツだな」

クッパ「まぁよい、かかってくるがいい! ガッハッハッ!」

宇水「すぐに笑えなくしてやるわ!」シュザッ

宇水「宝剣宝玉百花繚乱!」

ズババババッ!

クッパ「ガハハ、ちょっと痛かったぞ」

宇水(バ、バカな……全ての突きをまともに喰らったはず……!)

クッパ「ではこっちからいくぞ!」

宇水(ふん……おそらくこの巨体を生かした技を繰り出す気だろう)

宇水(どんな技だろうと、ティンベーでさばいて──)サッ

ゴオオアァァァッ!

宇水(口から……高熱……炎!? しかもなんだこの量は!?)

ボワァァァッ!

宇水(ティンベーがあっという間に焼け焦げて──)

宇水「ぐっ、ぐわぁぁぁぁ──……」

宇水(負けた……)

宇水(生涯二度目の敗北……)

宇水(いや……三度目か)

宇水(志々雄に光を奪われ、復讐を誓い心眼を会得したのも束の間──)

宇水(私以上の生き地獄をくぐり抜けていた志々雄に、私は戦わずして敗北した)

宇水(挙げ句、こんなどことも知れぬ場所で、怪物に殺されることになるとは……)

宇水(私の人生とは、いったいなんだったのだ……)

宇水「…………」ハッ

宇水「私は……生きている!?」ガバッ

クッパ「目が覚めたか」

宇水「貴様……クッパ!?」

クッパ「オマエのような根性あるカメは久しぶりだったぞ」

クッパ「合格だ!」

クッパ「キサマの我が軍団への入団を認めよう!」

クッパ「ガッハッハッハッハ……!」

宇水「ク、ククク……よかろう」

宇水「利用されてやろうではないか」

宇水「だが、私は貴様に焼かれた屈辱を忘れてはおらん」

宇水「スキあらば、私は貴様を殺す! それを忘れるなよ!」

クッパ「ガッハッハ! よかろう!」

宇水(く……私はまた同じことを繰り返すのか……)

クッパ「あ、あとオマエの甲羅を焼いてしまったから代わりのを用意しておいたぞ」

宇水(なんだこれは……)

宇水(トゲゾーとかいう亀の甲羅らしいが、本当にトゲが生えておる)

宇水(触れてみるか)チクッ

宇水「痛ッ!」

宇水(丸みはあるが、こんなトゲがあって、うまく敵の攻撃をさばけるだろうか)

宇水(まあ、そもそも敗北したのに贅沢はいってられまい)

宇水(これからはこのトゲのついた甲羅が私のティンベーだ)

宇水(とりあえず……名前は“新ティンベー”とでもしておくか)

クッパ「さてと、晴れて入団となったオマエに、我が軍の目的を伝えておこう!」

宇水「目的……?」

クッパ「ワガハイの目的は色々あるが、やっぱり一番はピーチ姫と結婚することだ!」

宇水「なんだ、ピーチ姫というのは」

クッパ「キノコ王国の姫君でな、ぜひともワガハイのお嫁さんにしたいのだ」

宇水「理解できんな、貴様なら女一人さらうぐらいわけないであろうが」

クッパ「うむ……だがいつもいつもあと少しというところで、ジャマをされるのだ」

クッパ「あの……マリオとルイージに!」

宇水(なんだと!? このクッパよりも強い奴がいるというのか!?)

クッパ「ヤツらさえいなくなれば、ピーチをワガハイのモノにできるのだが……」

宇水「クッパよ」

クッパ「む?」

宇水「そのマリオとかいう奴らの居場所を教えろ」

クッパ「どうするつもりなのだ?」

宇水「決まっている」

宇水「この私が、二人まとめて始末してやろう」

宇水(クッパが手こずる敵を、私の手で殺す)

宇水(てっとり早く自信を回復するには、これしかあるまい!)

<キノコ王国>

宇水(ここがキノコ王国か……)

宇水(至るところに頭の大きなコビトの気配がするが……これがキノコ族というやつか)

宇水(まったくおかしなところに来てしまったものだ)

宇水(しかし今はそんなことを気にしている場合ではない)

宇水(マリオとルイージとやらを血祭りに上げ、クッパに死体でもくれてやる)

宇水(そうすれば、クッパに敗れたことに対する面子も立つ)

宇水(日本に帰る方法を教えてもらうのは、それからだ)

宇水「おい」

キノコ住民「はいはい?」

宇水「マリオとルイージとやらは、どこにいる?」

宇水「答えねば──」ギラッ

キノコ住民「ああ、マリオさんたちならお城にいるはずですよ」

キノコ住民「今日はキノコ王国のキノコ料理パーティーでしてね」

キノコ住民「ピーチ姫が料理をいっぱい作っているんですよ」

キノコ住民「行けばだれでも入れると思いますよ」

宇水(ふん、こうもあっさり見つかるとはな)

宇水(さっさとマリオたちを殺って、日本に戻らねばならん)

<ピーチ城>

ピーチ「マリオ、ルイージ。お料理はたくさん用意したから、いっぱい食べてね!」

マリオ「ありがとう、ピーチ姫」モグモグ

ルイージ「おいしいね、兄さん!」ムシャムシャ

ヨッシー「どれもこれも、みんなおいしいよ!」ペロン

キノピオ「ヨッシーさん、皿ごと食べないで下さい!」

すると──

「マリオとやらはいるか!?」

ザワザワ…… ドヨドヨ……

「うわぁ、目がいっぱいあるぞ……」

「なんだ、あの不気味なカメは!?」

「きっとクッパの手下だ!」

宇水「……ふざけるな、私はクッパの手下などではない」

宇水「目的のため、奴にあえて利用されてやってるだけのこと」

宇水「マリオとルイージとやら、いるのならば名乗り出ろ!」

宇水「さもなくば、この国の住民を皆殺しにしてもかまわんぞ?」ヒュッ

ズシャアッ!

ピーチ「ああっ!」

キノピオ「姫が作った料理が!」

マリオ「やめないか!」ザッ

ルイージ「ぼくたちがマリオとルイージだ!」ザッ

宇水「ほう……お前たちか」

宇水(ふむ……気持ちの昂ぶりはあるが、かなり落ち着いている)

宇水(なるほど、それなりの使い手ではあるようだ)

宇水(だが、骨格も筋肉も平凡、クッパのような威圧感はまるでない)

宇水(まともな戦闘では、私の敵ではなかろう)

宇水(おそらくクッパは実力ではなく、策略で敗北しているのであろう)

宇水(しかし、初めて出会う私に対し、策を持ち合わせてはいないはず)

宇水(つまり……私の勝利は間違いないということだ!)

宇水「マリオとルイージ、相手にとって不足無し」ズゥゥン

宇水「ここで死んでもらう」

マリオ「行くぞ!」ピョイン

ルイージ「うん!」ピョイン

宇水「!?」

宇水(た、高いッ! なんという跳躍力だ!)

宇水(だが──)

ルイージ「よくもパーティーを台無しにしたな、許さないぞ!」

宇水「微温(ぬる)いわ!」サッ

グサッ!

ルイージ「ぐぅっ……!」

ルイージ(踏みつけを、トゲ甲羅でガードされた……!)ドサッ

マリオ「このカメ、トゲゾーの一種だったのか……!」スタッ

マリオ「ルイージ、大丈夫か?」

ルイージ「う、うん……なんとかね」

宇水「クックック、この新ティンベーに敵などないわ!」

マリオ「よぉし、こうなったら……!」

ボッ!

宇水「え?」

ボッ! ボッ! ボッ!

宇水(な、なんだ!? 私の耳がたしかなら、手から……火の玉が出ている!?)

宇水(志々雄の秘剣のようなものなのか!?)

ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!

宇水(大きさはクッパの炎ほどではないが、数が多い!)

宇水(いったいどういう原理で!? こいつ妖術使いか!?)

ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!

宇水(──だが! 新ティンベーに火の玉が当たる瞬間!)

宇水(素早くさばけば、火の玉をかき消すことは可能!)バシュッ

宇水(……可能ではあるのだが)

ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!

宇水(火の玉が止まらん!)バシュッ

宇水(こいつは何発火の玉を撃てるんだ!? まさか……無限!?)バシュッ

ヨッシー「えぇ~い!」ビュッ

キノピオ「今だっ!」ブンッ

宇水(しまった! 横から──でかい卵と、野菜!?)

グワッシャッ!

宇水「ま、またしても心眼が……敗れる……とは……」

宇水「悪夢だ……」ドサッ

宇水「うぅ……ここは……」ムクッ

キノピオ「お城のベッドです」

キノピオ「あなたの分もキノコ料理を用意しましたから」スッ

キノピオ「これに懲りたら、二度とこういうことはしないで下さいね」

宇水「…………」

宇水(志々雄と瀬田宗次郎を除けば敵などいない私が、二度も敗北するとは……)

宇水(……悪くない匂いだ)クンクン

宇水(もう、どうにでもなれ)モグモグ

宇水(ほう、なかなかの味だ。体から馬力が湧き出てくるようだ)モグモグ

宇水(しかし、失われた自信が戻ることはなさそうだ……)モグモグ

<クッパ城>

宇水「戻ったぞ」

クッパ「ガッハッハ、どうだった? マリオはやっつけられたか?」

宇水「いや……」

クッパ「だからいっただろう! ワガハイですら奴らには何度もやられているのだ!」

クッパ「これからはワガハイの命令に従ってもらうぞ」

宇水「ああ、分かった……」

宇水(これほどの醜態をさらしておいて、とても志々雄たちの顔など見られん)

宇水(元々私は国盗りなどに興味はないし、しばらくここで過ごすとするか……)

しばらくして──

クッパ「ウスイよ、今度マリオたちと戦うことになった」

クッパ「オマエにも参加してもらう」

宇水「ほう、いよいよ戦闘か」

宇水(ここにいる間も腕は磨いたが、まだクッパやマリオに勝てる気はせん)

宇水(しかしやるとなれば、なんとしてもこいつらに一矢を報いねば……)

クッパ「いや、レースだ」

宇水「!?」

宇水「なんだ、レースというのは」

クッパ「レースとは、カートで誰が一番早くゴールにつくかを競い合うことだ」

宇水(カート? なにをいっているんだ、こいつは)

宇水「なんだ、カートというのは」

クッパ「ウスイ、オマエ……カートも知らんのか!?」

クッパ「ガッハッハッハッハッ!」

宇水「何が可笑しい!!!」

クッパ「ワガハイの古いカートを貸してやるから、練習するのだ」

宇水「う、うむ」

宇水(蒸気も出さず、馬に引かせもせず、車が走るとは信じがたいが……)

宇水(この世界に来てからは信じがたいことしか起こっておらんしな)

宇水「えぇと……右を踏むと進み、左を踏むと止まるんだったな?」

クッパ「そうだ」

宇水「どれ、踏んでみるか」グッ…

ドギュゥゥゥゥンッ!

宇水「!?」

ドガッシャーンッ!

クッパ「おお、いきなりロケットスタートとは! オマエは才能があるぞ、ウスイ!」

宇水「が、がは……っ!」

レース当日──
<マリオサーキット>

ジュゲム「本日はこの1レースのみ、行います!」

ジュゲム「正式なカップ戦ではありませんが、上位入賞者には賞品が出ますので」

ジュゲム「優勝めざして頑張って下さい!」

パチパチパチパチ……

宇水(猛特訓の末、どうにかカートとやらの運転と)

宇水(聴覚だけで、競争に使用する道路の内と外の区別ができるようになった)

宇水(だが……なぜ敵同士でこんなのんきな遊戯をやるのだ?)

宇水(この間会ったマリオやルイージ、ピーチとかいう女の声も聞こえる)

宇水(あと……巨大な猿らしき生物もいるな)

宇水(まったくわけが分からん……)

レース出場者──

マリオ、ルイージ、ピーチ、ヨッシー

クッパ、ドンキーコング、キノピオ、魚沼宇水



ブロロロロ……

宇水(全員が開始地点に着いた途端、気配が変わった!)

宇水(な、なんだこの張りつめた空気は!?)

宇水(あの頃を……幕末を思い出す!)

宇水(そうか、こいつらにとっては遊戯といえど死闘ということか!)

宇水(面白い! ならば、この“盲剣”の宇水も全力をもって挑んでくれるわ!)

ピッ

マリオ「…………」

ピッ

ルイージ「…………」

ポォーン!

ブォォォォンッ!

ジュゲム『各車、一斉に飛び出したぁっ!』

ジュゲム『先頭におどり出たのは……なんとレース初参戦のウスイだぁーっ!』

宇水(ロケットスタート……成功!)

ブオォォォォ……!

宇水(この妙な塊に触れれば、道具を一つ入手できるんだったな)

宇水(これはなんだ!?)ニュルッ

宇水(私の道具は──バナナとかいう果物の皮か!)

宇水(……私の真後ろに、巨大猿の車がついておるな)

宇水(喰らえッ!)ポイッ

ドンキー「ウホッ!?」ズルッ

ドンキー「ウホォォォ!」ギュルルルッ

ジュゲム『ウスイ、後ろを見ることもせず、背後のドンキーをバナナの皮で滑らせた!』

宇水「フハハハハ! 我が心眼の前に敵はない!」

ブオォォォォ……!

ルイージ(あのウスイってカメ、すごいや!)

ルイージ(ドリフトといいアイテムの使い方といい、とても初レースとは思えないぞ!)

ルイージ(ただの悪者ガメというわけじゃなかったのか!)

ルイージ(でも、ぼくの緑甲羅は避けられまい!)

ルイージ「いけっ!」ビュッ

宇水「無駄だ!」ヒョイッ

ルイージ「そんな、ミラーの死角から投げたのに!?」

宇水「バカめ、こんな鏡など最初から見ておらんわ!」

宇水「心眼でお前の筋肉の動きを読み取っただけのこと! 我が心眼に死角なし!」

ブオォォォォ……!

クッパ「ウスイよ、なかなかやるではないか」

宇水「む」

クッパ「だが、初レースで優勝させてやるほど、ワガハイも甘くないぞ」グンッ

ガシッ! ガシッ!

宇水「おのれぇっ!」

ジュゲム『クッパのタックルで、ウスイはコースアウト寸前だ!』

ジュゲム『これでは重量で劣るウスイが、不利か!』

宇水「……ふん、クッパよ」

宇水「私に体当たりをしかけるなど、愚策にも程がある!」

クッパ「なんだと!?」

宇水「私のもう一つの武器を忘れたか!?」

宇水「ティンベーと対をなすこの手槍、ローチンで突く!」ブスッ

クッパ「ぬわぁ~っ!?」ギュルルルッ

ジュゲム『ウスイ、ローチンでクッパのタイヤをパンクさせたぁっ!』

レースは終盤へ──

ジュゲム『ラスト一周!』

ジュゲム『トップはウスイ! ほとんど独走状態です!』

ジュゲム『2位にマリオ、3位はルイージ!』

ジュゲム『4位はピーチ、さらにキノピオ、ヨッシーと続きます!』

ジュゲム『ウスイにやられたクッパとドンキーはかなり遅れているっ!』

マリオ(なんてドライビングテクニックだ!)

マリオ(彼はおそらく目ではなく、他の感覚で風や他のカートの動きを読んでいる!)

マリオ(だから速い!)

マリオ(これほど差がついては意味はないが、温存していたアイテムを使うか……)

マリオ「サンダー!」

バリバリバリバリッ!

宇水(な、なんだっ!?)

宇水(突然の轟音で、どこを走ってるのか分からなくなってしまった!)

ドカァンッ!

宇水「ぐわぁっ!」

ジュゲム『ウスイ、土管に激突してしまったぁっ!』

ジュゲム『急に運転がおかしくなりましたが、いったいどうしたんだ!?』

ジュゲム『あ~っとウスイ、どんどん後続に抜かれていく!』

宇水(くそっ、あらかじめ心の準備をしておけば、あの音にも耐えられたものを……)

宇水(バナナの皮や甲羅だけでなく、あんな道具があったとは……!)

レース結果──

1位 マリオ

2位 ルイージ

3位 ピーチ

4位 ヨッシー

5位 魚沼宇水

6位 キノピオ

7位 ドンキーコング

8位 クッパ



宇水(全速力で追い上げたが、入賞は逃してしまった……)

宇水(クッパに実力を見込まれ参加しておきながら、情けない……!)

しかし──

マリオ「いいレースだったよ! 君はすばらしいレーサーだ!」

宇水「え?」

マリオ「まさかあそこから5位まで追い上げるなんて……」

ルイージ「いやぁ、すごかった……調子を崩さなきゃ絶対優勝してたよ」

ピーチ「また一緒にレースをしましょうね!」

キノピオ「なかなかやりますね、次は負けませんよ!」

ヨッシー「楽しかったよ、ウスイ!」

ドンキー「ウッホォ~!」

宇水「…………」

クッパ「ガッハッハッハッハ!」

クッパ「さすがだウスイ、ワガハイが見込んだだけのことはある!」

宇水「ふん、こんな遊戯などなんの意味もないわ」

<クッパ城>

ブロロロロ……

宇水「もっと曲がる時の技術に磨きをかけねばな……」ギャルルッ

宇水「道具の性質も覚えて、効果的に使用せねば勝利は掴めん……」

クッパ「ガッハッハ! ウスイよ、なんだかんだいってカートにハマったようだな」

宇水「何が可笑しい!!!」

その後──

クッパ「今度はテニスなのだ、ウスイ!」

宇水「ボレーとスマッシュの基本的戦法を味わわせてくれる!」



ルイージ「君のコインはいただきだ!」

宇水「なんだと!? 私の小判が根こそぎ奪われてしまった……!」



宇水「フハハハハ! ローチンを扱うより容易いわ!」パシュッ

マリオ「まさか、このコースでバーディーを取るとは……」

そしてついに──

クッパ「おい、ウスイ!」

宇水「どうした、クッパ?」

クッパ「オマエのスマッシュブラザーズへの参戦が決定した!」

宇水「なんだと!? この私が!?」

クッパ「オマエのティンベーとローチンを、他の世界の奴らに見せつけてやるのだ!」

宇水「面白い」ニヤッ

リンク「やりにくい相手だ……斬撃を全てさばかれてしまう」

マルス「盾を防御だけでなく、受け流すことに使うなんて……」

ガノンドロフ「おのれぇぇ……!」ビキビキッ

宇水「いくらでもかかってこい!」

宇水「この新ティンベーで、相手の武器をさばき、視界を封じ!」

宇水「さらに対となる手槍、ローチンで突く!」

宇水「これが我が故郷、琉球に伝わる王家秘伝武術のひとつ」

宇水「ティンベーとローチンの基本的戦法!」

………

……

宇水(私がこのわけの分からん世界に迷い込んでから、どのくらい経っただろうか)

宇水(カートにテニス、ゴルフにパーティーに野球……色んなものを知った)

宇水(さらにはスマッシュブラザーズという、戦闘を楽しむこともできた)

宇水(飯はほとんどキノコだが、味は悪くない……それどころか上等といってよかろう)

宇水(私としたことが、すっかり居心地がよくなってしまった)

宇水(だが……本当にこのままでいいのだろうか)

宇水(私が……)

宇水(私が本当にやりたかったのは──)

クッパ「ウスイよ、何か悩んでいるようだが、どうしたのだ?」

宇水「クッパ」

宇水「お前はあのマリオ兄弟に負け続けているな」

クッパ「ま、負け続けているわけではないぞ! いつか必ず──」

宇水「なぜ、立ち向かえるのだ?」

クッパ「え?」

宇水「自分を負かした相手に、再び立ち向かう」

宇水「簡単なようで……なんと難しいことよ」

宇水「なのになぜ貴様は、立ち向かうことができるのだ?」

クッパ「ウ~ム、なんでだろうな」

クッパ「マリオをギャフンといわせたいから……」

クッパ「ピーチ姫をワガハイのものにしたいから……理由は色々あるが」

クッパ「なぜ立ち向かえるのかと聞かれたら──」

クッパ「ワガハイには大勢の部下や仲間、がいるからだろうな!」

宇水「!」

クッパ「なんとしてもみんなに、マリオに勝利するワガハイの姿を見せたい……」

クッパ「だから、ワガハイは何度でもマリオに立ち向かうことができるのだ!」

宇水「クッパよ」

宇水「私の知り合いに、こんな男がいた」

宇水「その男はある敵に惨敗し、必ず強くなって復讐してやると誓った」

宇水「だが……再び出会った時、敵との差はさらに開いていた」

宇水「怖気づいた男は戦いを挑むことすらせず、敵の軍門に下った」

宇水「する気もない復讐をいつか必ず行う、と虚勢をはりながら……」

宇水「そんな小さな男であったが、生まれて初めて仲間というものを持った」

宇水「男は……少し勇気をもらえたような気がした」

宇水「さて質問だ」

宇水「この男は……再び敵に立ち向かえると思うか?」

クッパ「なんだか急に難しいハナシになったが──」

クッパ「もちろんだ!」

クッパ「その男はずいぶん回り道をしたようだが」

クッパ「今からでも遅くはない!」

クッパ「立ち向かえるはずだ!」

宇水「フ……回り道、たしかにな……」

宇水「ありがとうよ、クッパ」

宇水「これで決意が固まった」

宇水「私は……元の世界に戻ろうと思う」

クッパ「どういうことだ、ウスイ!?」

クッパ「だってオマエはカメだろう!? この世界の住人だろうが!」

宇水「いや、私は亀ではない」

宇水「貴様に焼かれたあの甲羅は、私の自前などではないのだ」

宇水「私は……人間だ」

宇水「それもこことはまったく違う世界のな」

クッパ「!」

クッパ「そ、そうだったのか……」

宇水「黙っていてすまなかったな」

クッパ「いやかまわんぞ! ちょっとビックリしただけなのだ!」

クッパ「だが、それならなぜ、この世界にやってきたのだ?」

宇水「うむ、話せば長くなるのだが──」

クッパ「──なるほど」

クッパ「多分、オマエは土管に入ってしまったのだろう」

宇水「土管?」

クッパ「この世界の土管には、生き物のように伸びたり動くものがあってな」

クッパ「ごくまれに、この世界とどこか別の世界を繋ぐ土管が生まれたりもするのだ」

クッパ「いわゆるワープ土管というやつだ」

宇水「ふむ……そういうことだったか」

宇水(たしかに京都に向かう途中、雨宿りのため大きな土管に入ったような気がする)

宇水(あれがおそらく……ワープ土管、とやらだったのだな)

クッパ「土管のことならば、やっぱり配管工であるマリオが詳しい」

クッパ「今からマリオのところに行き」

クッパ「オマエの世界に繋がる土管のありかを教えてもらうことにしよう」

宇水「ありがとう」

クッパ「……しかし、オマエがいなくなるとさびしくなるな」

宇水「フ……よせ。私は初対面で、お前を殺しにかかった男だぞ」

<マリオの家>

マリオ「──お安い御用だ、ウスイ」

ルイージ「ぼくたちは国中の土管を熟知しているからね」

ルイージ「ちょっと調べれば、君をこの世界へと導いた土管も分かるはずだよ」

マリオ「さっそくだけど、君が元いた世界は、いつのどこだ?」

宇水「明治時代の日本だ」

マリオ「明治時代の日本……」パラパラ…

マリオ「おぉ! それならクッパ城の近くにあるはずだ!」

マリオ「……しかし、こんな急に帰るのかい?」

マリオ「もう一晩くらいゆっくりしていっても──」

宇水「いや、決意を鈍らせたくないのでな」

マリオ「……そうか、なら仕方ない。今すぐワープ土管に向かおう!」

<ワープ土管>

宇水「……これが、明治時代の日本に繋がる土管か」

宇水「マリオ、ルイージ、感謝する」

マリオ「こちらこそ」

ルイージ「楽しかったよ、ウスイ」

宇水「クッパ、世話になったな」

クッパ「ガッハッハッハッハッ! またいつでも来い!」

クッパ「城のオマエの部屋は、空けておくからな!」

すると──

ワアァァァァァッ!

ピーチ「急に帰るなんてつれないじゃない、お土産にキノコを持っていって!」

キノピオ「また一緒にレースをしましょう!」

ヨッシー「今度来る時は、そっちの料理も持ってきてね~!」

ドンキー「ウホッ、ウホッ、ウホッ!」

ノコノコ「あばよ、新入り!」

カメック「君は怖かったけど、いなくなると寂しくなるなぁ」

ワリオ「俺だよ、ワリオだよ!」

ワアァァァァァッ!



マリオ「クッパ、君が呼んだのか?」

クッパ「まさか! マリオ、オマエが呼んだんだろう?」

ルイージ「きっとどこかからウスイが帰るって情報がもれて、こんなに……」

宇水「…………」

宇水「さらばだ!」ザッ



──

───

宇水(……間違いない)

宇水(ここは……日本だ)

宇水(私はようやく戻ってきたのだな……)

宇水(クッパのいうとおり、ずいぶん長い間回り道をしてしまった)

宇水(だが決して悪くはない“回り道”だった)

宇水(すっかり遅くなってしまったが……京都に向かうとするか)

<志々雄のアジト>

宇水「久しいな」

方治「宇水! 貴様、いったいどこでなにをやっていた!」

方治「貴様のせいで、一週間も予定をずらすことになったんだぞ!」

宇水「!」

宇水(たった一週間の遅れで済んでいるのか)

宇水(向こうとは時間の流れがちがうのか、あるいは土管のせいなのか……)

方治「いくら腕が立つといっても、こんな勝手は──」

志々雄「いいじゃねぇか、方治。遅れはしたが、こうして到着したわけだしな」

方治「志々雄様……!」

宇水「そういうことだ」

方治「ぐっ……!」ギリッ

志々雄「だがよ、宇水」

志々雄「どこでなにをやってたか、ってのは教えてもらいてぇな」

志々雄「甲羅の盾……ティンベーだったか。形状がえらく変わっている」

宗次郎「あ、ホントだ! 鋭いトゲがついてますね!」

志々雄「問題は盾だけじゃなく、お前自身のまとう空気もずいぶん変わったってコトだ」

志々雄「一週間の到着遅れとも、おそらく無関係じゃねえだろう」

志々雄「宇水……どこでなにをやっていた?」

宇水「…………」

宇水「……少しの間、妙な世界に行ってきたのだ」

志々雄「ほう、なんのために?」

宇水「キノコ採集のためだ」

方治「は?」

宇水「これがその妙な世界でもらったキノコだ」ドサッ

宇水「よかったら食ってみるか?」

宗次郎「あ、じゃあボクいただきます」

由美「ちょっとやめなさいよ、ボウヤ! 相手はあの宇水なのよ!?」

由美「あんな派手な色のキノコ、毒に決まってるでしょ、毒に!」

宇水(派手な色なのか、このキノコ……)

宇水「──ま、冗談はこれくらいにしておくか」

志々雄「もう一度問うぜ。宇水、なんのために妙な世界とやらに行っていた?」

宇水「無論」

宇水「志々雄、貴様を倒すためだ」

宇水「貴様の仲間になったふり──」

宇水「否、貴様の命をつけ狙うふりは、もう終わりだ」

宇水「志々雄、今すぐ貴様と立ち合いたい」

宗次郎「おお~」

由美(違う! 今までの宇水とはまるで違うわ!)ゾクッ

方治「──ふっ、ふざけるな、宇水!」

方治「ただでさえ計画が遅延しているのだ、これ以上余計なことに時間を──!」

志々雄「ハハハハハハハハハハッ!!!」

方治「!?」

志々雄「礼をいうぜ、宇水」

志々雄「抜刀斎、国盗りの前に、面白い余興がさらにひとつ増えた」

志々雄「嬉しい誤算というやつだ」

トゲ甲羅だし投げたら最強じゃね?

方治「しかし、志々雄様!」

宇水「ここで私に殺られてしまうようでは、国盗りなど夢のまた夢……」

宇水「そうだろう?」

志々雄「そのとおりだ」

志々雄「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き、弱ければ死ぬ」

志々雄「ここで俺がコイツに殺られたなら、それまでの男だったというだけのハナシだ」

方治「ですが……!」

志々雄「どうせやるなら、観客は多い方がいいだろ」

志々雄「宗次郎、アジトにいる十本刀、全員呼んでこい」

宗次郎「はい」

しかし宗次郎には勝てる気がしない

>>249
この宇水さんソニックと渡り合ってるかもしれんぞ

<決闘場>

方治「くぅ、この大事な時に……宇水の奴め……!」ギリッ

安慈「…………」

鎌足「志々雄様……大丈夫かしら」

蝙也「ふむ……」

夷腕坊「ぐふっ、ぐふふふふっ!」

才槌「ひょひょひょ、これは興味深い対決じゃわい」

由美「ねぇボウヤ! 志々雄様が勝つわよね!?」

宗次郎「う~ん、今までの宇水さんが相手なら、志々雄さんが勝つでしょうけど」

宗次郎「宇水さんもなんか雰囲気変わりましたし、危ないかもしれないですね」ニコッ

由美「危ないかもしれないですね、じゃないわよ!」



宇水「来い、志々雄」

志々雄「立場をわきまえろよ。挑戦者は──お前だろ?」

宇水「フ……そうだな」

宇水「いくぞ!」ダッ

志々雄「ッシャアアアッ!」シュバッ

ギュルッ!

安慈(志々雄殿の鋭い斬撃を盾でさばいた!)

宇水「はぁっ!」

ズギャアッ!

由美「ああっ!」

方治「盾での殴打だと……!」

志々雄「腕を上げたな……」ニッ

宇水「新ティンベーで攻撃をさばき、そのまま新ティンベーのトゲで殴る!」

宇水「これぞティンベーの新戦法!」ザンッ

琉球王家秘伝の新しい時代を築いたな

方治「バ、バカな……! 志々雄様が手傷を負うなどと!」

志々雄「わめくな、方治」

志々雄「元々このナリなんだ、今さら傷がひとつふたつ増えようと大して変わらねぇよ」

宇水(ふむ、いささかの動揺も感じ取れん)

宇水(さすがは──志々雄真実!)

志々雄「壱の秘剣、焔霊!」

ボワァッ!

宇水(ついに出たか! だが、炎に惑わされてはならん)

宇水(クッパから授かった新ティンベーを信じろ!)

ギュルッ!

志々雄(焔霊さえもさばくとは!)

宇水「ローチンと新ティンベーを組み合わせた新技、見せてくれる!」

宇水(手槍であるローチンと、トゲ甲羅である新ティンベーで──)

宇水(左右同時に宝剣宝玉百花繚乱を繰り出す!)

宇水「宝剣宝玉二百花繚乱!」

ズガガガガガッ!

ドザァッ!

志々雄「ちっ……」バッ

宇水「はああああっ!」ダッ

キィンッ! ギュルッ! ザクッ! ギュルッ!

鎌足「志々雄様っ!」

由美(これほどまで苦戦する志々雄様なんて、初めて見たわ!)

方治(いかん!)

方治(宇水のあの新しい盾、前のものとはちがい非常に頑丈だ)

方治(だから志々雄様の速い斬撃に多少反応が遅れても、破壊されることなく──)

方治(攻撃をさばくことができる!)

方治(このままでは──)

宗次郎「大丈夫ですよ、方治さん」

方治「な!?」

方治「お前には分からぬのか、あの宇水の強さの秘密が──」

宗次郎「たしかに宇水さんはすごいです」

宗次郎「だけど、志々雄さんもあんなものじゃありませんから」

ギュルッ! ザシュッ! ギュルッ! ドズッ!

宇水(これほど攻撃を加えても、志々雄の動きは全く衰えを見せん!)

宇水(むしろ勢いを増している!)

志々雄「シャアアアアッ!」シュバッ

宇水(無駄だ! 斬撃は通用せん!)サッ

ガシッ!

宇水(新ティンベーのトゲを……左手で掴んだ!?)

志々雄「やっと捕えたぜ」

志々雄「この新ティンベー、たしかに頑丈ではあるが」

志々雄「焔霊の炎をあれだけ浴びたんだ、ずいぶん脆くなっているはず」

志々雄「つまり今のコイツなら──弐の秘剣で破壊できる」

ボッ

志々雄「弐の秘剣、紅蓮腕!」

ドグァァンッ!

宇水(し、しまった……! 新ティンベーを爆破された……!)

志々雄「新ティンベーはお前の攻撃と防御の要──」

志々雄「つまり新ティンベーを失ったお前の戦力低下は、半減どころじゃねえはずだ」

宇水「ぐっ……!」

宇水「まだ終わってはおらん!」

志々雄「終わってんだよッ!」

ザシュッ! ズシャアッ!

宇水「が……は……っ!」

安慈(志々雄殿の……勝ちだ)

宇水「ま、まだだ……!」ヨロッ

志々雄「こんなに楽しめたのは、明治に入ってからは初めてかもしれねぇ」

志々雄「褒美をやろう」

志々雄「終の秘剣……わずかだが冥土の土産にくれてやる」

ギャリッ……!

ブオアアアァァッ!

志々雄「終の秘剣、火産霊神(カグヅチ)」

志々雄「俺の無限刃の発火能力を……半分ほど開放させた」

宇水(半分でこれほど巨大な炎なのか……!)

宇水(これが志々雄真実……!)

志々雄「地獄への送り火にしちゃあ、少々派手かもしれねぇが」

志々雄「華々しく散りな」

宇水「……やれ」

グオオアアアアッ!

宇水(燃える……)



宇水(私の体が燃え尽きてゆく……)



宇水(志々雄……)



宇水(奥の手を一端でも見せてくれたこと、心から感謝するぞ)



宇水(クッパ……再会は……できそうも、ない……な……)



宇水(さら、ば……)



宇水(…………)

志々雄「…………」キンッ

方治「こ、これが……志々雄様の終の秘剣……!」ゴクッ

安慈(まるで地獄の炎を現世に召喚したかのようだ……)

鎌足「志々雄様……すごい……」

蝙也「なんという強さ……まさに弱肉強食の体現者……!」

夷腕坊「ぐふっ、ぐふふふふっ!」

才槌「こりゃたまげたわい……」

由美「よ、よかった……さすがは志々雄様ね!」

由美「宇水は……残念だったけどね……」

宗次郎「う~ん、おかしいなぁ……」

由美「ん、どうしたのボウヤ?」

宗次郎「いえ、宇水さんは今間違いなく死んじゃったはずなんですけど」

宗次郎「なぜか、あそこに宇水さんがいるんですよ」

由美「え!?」

残機増えてたwwww

宇水(む……? たしかに私は志々雄の秘剣を受けて、死んだはず……!)



方治「な、な、なんで宇水が生きているんだ!? しかも無傷で!?」

安慈(輪廻転生……? いや、いくらなんでも早すぎる)

鎌足「ちょっとアンタ、どうなってんのよこれ!?」グイッ

蝙也「俺に聞かれても分かるか!」

夷腕坊「し、死人が蘇るなどありえん! ──あ、ぐふふふふっ!」

才槌「うむむ、いくら論理的考察を重ねても、納得のゆく答えが出てこんわい……!」

宗次郎「生き返るなんて、宇水さんすごいなぁ。ちょっとずるい気もしますけど」

由美「なに呑気なこといってんの! どーなってんのよコレ!?」



志々雄「殺し損ねたか、生き返ったかは知らねぇが……たしかなことは」

志々雄「まだ勝負はついてねぇってことだな!」ニヤッ

宇水「どうやら、そのようだな」ニイッ

志々雄「シャアアアアッ!」

ザシュッ!

宇水「はぁっ!」

ギュルッ!

志々雄「ッシャアアアアアッ!」

ボワァッ!

宇水「ぬんっ!」

ザシュッ!

………

……

まだローチンとクッパに教えられた諦めない心が残ってますよ

ドザァッ……!

志々雄「う……ぐっ」

志々雄(ち、戦っているうちに少しずつ傷をもらい、十五分もとうに過ぎた……)

志々雄(体が……ピクリとも動きやしねぇ)

志々雄「幕末から……明治にかけて、数えきれねぇほど人を斬ったが──」

志々雄「斬っても斬っても死なない……いや生き返る奴と戦ったのは初めてだ」

志々雄「宇水……お前の体はいったいどうなってんだ?」

志々雄「なんか変なもんでも食ったのか……?」

宇水「ハァ、ハァ、ハァ……」

宇水(そんなことはこちらが知りたい)

宇水(向こうの世界では、毎日キノコを食べていたが──)

宇水(多分関係あるまい)

志々雄「殺せ、宇水」

志々雄「所詮この世は……弱肉強食……」

志々雄「俺はてめぇに敗れた……それが自然の摂理だ」

宇水「…………」

由美「ダメです、志々雄様っ!」

鎌足「志々雄様っ!」

宇水「…………」

宇水「断る」

志々雄「!」

宇水「狂おしいほど欲した、貴様への復讐、貴様からの勝利……」

宇水「今こうしてその好機を手中に収めたというのに、全く実感がないのだ」

宇水「私はかつて、貴様に両目を切り裂かれ、生き地獄を味わった」

宇水「ならば私も報復として、貴様にも生き地獄を味わわせてやりたくなった」

宇水「虚栄まみれだった男に地に伏せられ、見逃される、という生き地獄をな」

宇水「そして私は一派から抜けさせてもらう」

宇水「私はいずれまた、貴様のもとに現れるだろう」

宇水「次こそは一度も死せることなく、貴様を殺す実力を身につけて、な」

志々雄「ちっ……」

志々雄「次に会う時は、俺はこの国の覇権を握っていることだろうぜ」

宇水「ククク、その方が殺しがいがあるわ」

志々雄「フフフ……ハッハッハ……」

宇水「クックック……ハッハッハ……」

志々雄&宇水「ハーッハッハッハッハッハッハ!!!」

宇水「何が可笑しい!!!」

志々雄「なんでてめぇがキレるんだよ」

宇水「では、私はそろそろ去らせてもらう」ザッ

方治「ま、待て、宇水!」

方治「貴様のような危険人物を、むざむざ野に放てるものか!」

宇水「ほう、では力ずくで止めてみるか?」ニィッ

方治「う、ぐっ……!」

宗次郎「やめときましょうよ、方治さん」

宗次郎「なんたって殺しても生き返るんですし、多分ボクでも止められませんよ」

宇水「そういうことだ、ボウズ」

宇水「次に会う時は志々雄の下で、高級官僚くらいにはなっていろよ」

方治「と、当然だ!」

方治「西洋列強にも劣らぬ強力な軍隊を作り上げ──」

方治「貴様如きでは、志々雄様に指一本触れられぬようにしてくれる!」

宇水「フッ……期待しているぞ」

<アジトの外>

宇水(どれ、一つキノコを食うとするか)モグ… ピロリロリン♪

安慈「宇水殿」

宇水「……安慈か」

安慈「変わられたな、宇水殿」

宇水「変わったというなら、お前とてずいぶん変わったのだろう」

宇水「廃仏毀釈で寺を焼かれた怒りから、“明王”になったと聞いているぞ」

安慈「……どこに行かれる」

宇水「さあな。なにも考えてはおらん──が」

宇水「ひとまずはこの見えぬ目で、世界中を見て回ろうと思っている」

安慈「そうか」

安慈「達者でな」

宇水「フフ……お前にいわれるまでもない」

こうして魚沼宇水は、志々雄一派から離脱した。



この後、日本はおろか世界各地で目玉模様の服を着て、



眼帯をつけた男が目撃されるようになるが──



これが宇水本人かどうかは定かではない。



そして──

<クッパ城>

宇水「クッパよ、久しぶりだな」ザッ

クッパ「おお、ウスイではないか! 向こうの世界での用事は済んだのか!?」

宇水「まぁな」

宇水「今は修業を兼ねて、世界各地を旅して回っているところだ」

クッパ「そうか、ならばせっかくだからレースに参加するといい!」

クッパ「ちょうど今日は、スペシャルカップの開催日なのだ!」

クッパ「オマエならば、飛び入り参加も認められるだろう!」

クッパ「なんとしても、ワガハイたちでワンツーフィニッシュを飾るのだ!」

宇水「クックック……よかろう」

宇水「ロケットスタートとドリフトの基本的走法を見せてくれるわ!」





                                   ~おわり~

   /.   ノ、i.|i     、、         ヽ
  i    | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ        |
  |   i 、ヽ_ヽ、_i  , / `__,;―'彡-i     |
  i  ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' /    .|

   iイ | |' ;'((   ,;/ '~ ゛   ̄`;)" c ミ     i.
   .i i.| ' ,||  i| ._ _-i    ||:i   | r-、  ヽ、   /    /   /  | _|_ ― // ̄7l l _|_
   丿 `| ((  _゛_i__`'    (( ;   ノ// i |ヽi. _/|  _/|    /   |  |  ― / \/    |  ―――
  /    i ||  i` - -、` i    ノノ  'i /ヽ | ヽ     |    |  /    |   丿 _/  /     丿
  'ノ  .. i ))  '--、_`7   ((   , 'i ノノ  ヽ
 ノ     Y  `--  "    ))  ノ ""i    ヽ
      ノヽ、       ノノ  _/   i     \
     /ヽ ヽヽ、___,;//--'";;"  ,/ヽ、    ヾヽ

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