ミカサ「いってらっしゃい、エレン」(79)

長くなります。
12巻までのネタバレあり、ループ説に基づいた話です。
ifなので、色々矛盾がある点もあるかも。

初めてのシリアスなので、生温かい目で見てやってください。
ジェンミカがメインで、ライクリ、ベルユミ、アルアニあります。
ネタか本気がは貴方次第、エルリヴァも。




ウォールマリアの丘で、エレンは眠った。

遠い未来で目覚め、この世界を完全に巨人のいない世界にするために。

大丈夫、また会える。

エレンの位置が分かるように、アルミンと二人で抱えられる大きさの岩を置いた。

最後の決戦エレンはベルトルトに致命傷を負わせ、彼の体は人に戻っても傷が再生しないままだった。

再生しない体で、何度も彼は人類に対する謝罪の言葉を口にした。

そんなものは無意味だと怒りを抑えることがエレンは出来ずに、とどめそ刺そうとしたとき

ユミルがそれを庇った。

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エレン「なんで…何で庇うんだよ!コイツは人類の敵だぞ!!」

ユミル「エレン…あんたにとって、人類にとってコイツは敵かもしれない」

ユミル「たしかにコイツは被害者面してる…だけど」

ユミル「ただの寂しがり屋の、一人の『ベルトルト』って『人間』なのさ」

ユミル「人を殺したくて殺したわけじゃない…それはあんたも十分承知してるだろ?」

エレン「…!!」

ユミル「ベルトルさん、一人で死ぬのはさみしいだろ?私が最期まで一緒にいてやるよ」

ベルトルト「ユ…ミル…いっしょに、いて…くれるの?」

ユミル「そう誓っただろ…?」ナデナデ

ベルトルト「あ…り…がと…」

ユミル「さぁ、エレン!私たちにトドメをさしてくれ」

ユミル「ははっ…また他人のために死ぬとはな…」

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エレンは一度は躊躇したけれど、心に渦巻く憎悪と迷いを打ち消すかのように

刃を彼に刃を振り抜いた―――――――――

エレンは、人を殺してしまったと呟いた。

自分のの憎むべき大型巨人ではなく、訓練を共にした仲間を殺した、と。

そして、座標の力を使い全ての巨人を人へ戻した。

傍らに居たライナー、地下室で結晶化していたアニは巨人の力を必然的に失った。

あまりに某大な力を使ったために、エレンは力を使い果たしこの丘で力尽き

その体はこの丘と同化した。

死んだのではない。

まだ繰り返すのだ。

本当の意味で巨人がいなくなるまで。

ただの人間になった、ライナーとアニから

この世界は、一番強い意志を持った座標により何度も繰り返されている。

それがエレンだと説明された。

この世界では、エレンがベルトベルとユミルを殺してしまったために

エレンの納得のいかない世界になってしまったらしい。

今度こそ、仲間を失わない世界を目指してエレンは長い長い眠りについたのだ。

その次の世界でも、また会える。



――――エレンはこの世界軸で、英雄になった――――

元知性巨人の二人は数年監獄に入れられたが、もう巨人化もできない、人類に対する敵意もないため

壁の外…

いや、もう壁なんてものはない。

彼らは故郷へ返された。

彼らの故郷と私たちが戦争をする理由がなくなったおかげである。

そうしたのは、出世したジャンとアルミン、そしてクリスタ…いや、ヒストリアだった。

アルミンは足しげくアニのところへ通った。

ヒストリアも、ライナーと逢引しているらしい。

彼らが訓練兵時代から惹かれあっていたのは、私もずっと気が付いていた。


調査兵団の活動は、元壁外の調査に移り

出世したアルミン、ジャンにより元壁外の開拓が迅速に行われ

人類は土地を、人口を徐々に増やして行った。


壁だった人たちや、一度巨人になってしまった人も

人間に戻ったために多々の混乱もあったが、それも治まりつつある。

私が戦うべき
理由も、守るものもなくなってしまった。


調査兵団を辞め、エレンの眠る小さな丘の近くに家を借りた。

母に教えてもらった刺繍を思い出したように始め、それと貯金で生活している。

エレンの眠る丘を荒らされないように見はったり

エレンがさみしくないように、たまに話しかけたりした。


たまにアルミンやジャンが顔をだし、エレンの眠る丘に赴き

新しく見つかった「ビル」と呼ばれる巨大な建造物のある遺跡の話や

壁ができる前の歴史の資料たち、まだ見ぬ海への手がかりが見つかった話をしてくれた。

ジャンはとても私を気にかけてくれた。

ジャンはエレンが居なくなって憔悴した私を何度も根気強く励ましてくれた。

ひどいことを言ったり、無視したり、作ってくれた食べ物を口に入れなかったり…

それでも、仕事が終わると必ず私のところへ足を運んでくれた。

英雄としてのエレンの像が王都に建てられることになったという話をジャンから聞いた。

唯一の家族である私に無許可で建てるわけにはいかないと、気をまわしてくれたらしい。

私以外の人達がエレンを覚えてくれるなら、そんな嬉しいことはない。

それを私に相談してくれたことも大変嬉しく感じ、私は久しぶりにジャンと言葉を交わした。

ジャンの顔が一気に朱に染まっていくのが分かった。

その表情に、冷たかった心が再び溶けだすのを覚えてしまったのだった。

それからの私は単純なもので、ジャンと沢山話をするようになった。

最初はアルミンがいてでもジャンと話をしなかったのに

今は二人きりで思い出を話したり、これからの世界のことを語り合った。

これならもう大丈夫だと判断したのか、私を兵士たちの慰霊碑に

手を合わせにいくことを提案してくれた。

エレンが眠りに着いてから一度も私は、そこにいくことがなかったことに気が付き

悲しいような、申し訳ないような…情けなさを含んだ気持ちになった。

と同時に、それを提案してくれるジャンに深い感謝を覚えた。

その日は雲はなく、だけど優しい光が私たちを温めていた。

アルミンとジャンが私の家まで迎えにきてくれた。

最近では飾るだけで身につけなくなったエレンのマフラーを首にしかと巻いた。

外にでると、優しい光に反射するような美しい金髪の女性がこちらをみていた。

回りにはアルミンとジャンの部下が彼女を守るように取り囲んでいる。

ミカサ「…ヒストリア…!久しぶり!!」

ヒストリア「ずっと会いたかった…!ずっと心配してたの…」

ミカサ「心配をかけてごめんなさい。私ならもう大丈夫」

ヒストリア「よかった…じゃあ、行きましょう」

レイス家は壁の崩壊と共に貴族としての身分を失った。

その代り、彼女は自由を手に入れた。

それも全てエレンのおかげだと…小さくこぼした。

馬を走らせ、何度か休憩をはさみ王都にある大きな墓地にたどり着いた。

モブ「ジャン分隊長、アルミン分隊長、我々はここで」

私たちの後輩にあたる兵士たちが気を使って、私たち4人だけにしてくれた。

ライナーとアニはここに来ることはまだ許されない。

大きな岩で作られた慰霊碑は、参拝者によって飾られた花々で溢れかえっていた。

私たちは同期の名前を探した。

マルコ・ボット、サシャ・ブラウス、コニー・スプリンガー、ミーナ・カロライナ、トーマス・ワグナー、ナ

ック・ティアス、ミリウス・ゼルムスキー…

巨人だった二人はここに名前は刻まれることはなかったけれど、

私たちの心に刻まれている。

ヒストリアは一人ひとりの名前を撫でるような優しい目で見つめては、白い頬に水晶のような涙を流していた。

帰りにエレンの像がある広場に立ち寄ることになった。

赤いレンガが敷き詰められた大きな広場の真ん中に、白いエレンの像は起立していた。

ジャン「おいおい、実物よりイケメンになってんじゃねーか」

アルミン「ははっ、それは僕も否定できないね…」ハハッ

ヒストリア「でも、エレンの強い意志を表していると思う」

ミカサ「…………」

言葉を交わす彼らの横で、私はエレンの像を見上げていた。

誇らしい気持ちと同時に、如何しようもない寂しい気持ちを覚える。

広場の隅にあるベンチに腰掛けると、自然とため息がもれる。

ジャン「疲れたか?」

ミカサ「疲れてはいない…ただ、少し寂しくなっただけ」

ジャン「そうか…」

広場の反対側の店でアルミンと彼の部下がヒストリアと何か話しているのが見える。



ジャン「…なぁミカサ」

ミカサ「何…?」

ジャン「ごめんなさい…もうちょっとだけ、待って欲しい」

ジャンの表情はおもしろい。

私が謝罪の言葉を口にしたときは一気に表情が曇ったのに

待って欲しいと伝えると、口角が一気に上がりニカっと笑う。


それに釣られ、私も微笑んだ。

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冬の終わり。

私がエレンに初めてマフラーをもらったときのことを思い出しながら

私は暖炉の前で売り物の手袋を編んでいた。

これを手にとる人が、あのときの私のように暖かい気持ちになれますように。


アルミンとジャンの功績により、この世界は急激に文明が開化していっている。

街に「デンキ」というものが通るのも時間の問題らしい。

それがあれば、ランプの火を気にすることなく明るい灯りを燈したり

さまざまなことが飛躍的に便利になるとのことだ。

チャイムが一度なり、ノックが3回。

これはアルミンが訪ねてきた合図だ。

まだまだ治安はいいとは言い難いためにアルミンがそうしている。

…現役から外れているとはいえ、強盗に負ける気などまだまだしない。


ミカサ「アルミン、いらっしゃい」

アルミン「ミカサ、ちょっとエレンのとこまでいいかな?」

ミカサ「ちょっとまって、あともう少しで編み上がりそうなの」

アルミン「分かったよ」

ミカサ「ポットにお茶が入っているから」

アルミン「ありがとう、頂戴するよ」

毛糸の先を処理して、私はアルミンに連れられエレンの眠る丘に行った。

日差しは私たちを歓迎しているものの、頬をかすめる風はまだ身を切り裂くように冷たい。

エレンが寒くないように、雪が降る前にたくさんの落ち葉を被せたそこには

もう残雪はなく、シロツメクサが顔をだし春を謳っている。



アルミン「エレン、ミカサ。僕はアニと結婚することになったんだ」

ミカサ「ほんと!?」

アルミン「表向きには彼女の故郷と共存していくためって名目だけど」

アルミン「弱みを握ったような気分になってずっと躊躇っていたんだ」

アルミン「それをアニに見抜かれていたんだろうね」

アルミン「私はあんたを受け入れるよって言われて」

アルミン「結婚しようって…言ったんだ」

ミカサ「おめでとう…本当におめでとう」

アルミン「で、アニはこっちで暮らすことになったんだ」

ミカサ「…幸せになってね」

アルミン「もちろんさ」

アルミン「その代わりとして、元壁内の人間を友好の証として一人送りださなきゃいけないんだけどね…」

アルミン「ライナーさえしっかりすれば、そのあたりは問題ないんだけど」

ミカサ「大きな体、小さな肝」

アルミン「純朴だと言ってあげようよ」クスッ

ミカサ「こないだのヒストリアの様子を見ていたら、きっともう覚悟はできているんだと思う」

アルミン「僕もそう思うよ」

アルミン「そして…ついに見つけたんだ!海を!!」

ミカサ「!!!!!!」

アルミン「エレン!君の見たがっていた塩の湖を!!」

ミカサ「3人で…一緒に見たかった…」

アルミン「この次の世界でこそ…必ず3人一緒に…」

ミカサ「きっと今度は大丈夫…」

エレンの眠る丘は春の植物が喜びを歌うように風に揺られ、歌っていた。

紅白でイェガーしてましたw
良いと思って下さる方がいて嬉しいです、誤字すいませぬorz



風邪をひいたら怒られるのは自分だと少しはにかんだ。

きっと、ジャンから先日のことを報告されているのかもしれない。

二人が仲が良い事は、私にとってもとてもうれしいことである。

私の借家に戻り再び湯を沸かし、乾かしたハーブをポットに入れお湯を注ぐ。

透明な渦がポットを満たし、ハーブの香りが部屋を包み込み優しい気持ちにさせる。

アルミンが薄汚れた大きな地図を広げ、赤い丸がついたポイントを示す。

アルミン「遺跡で発見された『気球』という空を浮遊する技術を再現することに成功できたんだ!」

アルミン「さっそく、この赤い丸のついたポイントまで気球を運び僕たちは空を飛んだ!」

アルミン「立体起動術とは全然違う、戦うためじゃない浮遊!」

アルミン「そして空から…海を見つけたのさ」キュキュッ

アルミンは身長も大きくなり、筋肉もついてすっかり大人の男の人になったけど

元壁外の話をするときの表情は、幼いころの無邪気さをそのままに残していた。

大人になったエレンはどんな姿だったんだろう…ふと、そのようなことを考える。

今度は青い丸が大きく描かれる。

アルミン「今度、僕の隊とジャンで海までの航路を作る」

アルミン「その際に気球からぜひ海を見ておいで」ニッコリ

そしてその日が来た。

私は調査兵団のOBとして参加することになった。

再び私は、エレンのマフラーを巻く。

いたるところがほどけているため、何度か補修をせざるを得なかった。

これを巻いていると、やっぱりエレンと一緒にいる気がして心強い。


元壁外で馬を走らせ、私とジャン、10数人の兵は赤丸のついたポイントに

本拠地を作るために残り、アルミンの隊は海を目指して行った。

巨人のいなくなった癖外はたまに野生動物が襲いかかってくる以外は

天気などの心配があったが、この日は私たちを祝福するような晴天だった。

ジャン「ミカサ、乗れるか?」

ミカサ「大丈夫」

ミカサ「…ジャン、顔のそれは?」

ジャン「これって…あぁ、これか。気球のは熱膨張を利用しているんだ」

ジャン「で、火を使って操作するから…ちょっと失敗してさ」

ミカサ「痛くない?」

ジャン「もう大丈夫だ」ニコッ


ジャンがこんなに柔らかい笑い方をするなんて、あの頃は考えもしなかった。

そして、私とジャンを乗せた気球が地から浮き上がる。

ジャン「怖くないか?」

ミカサ「少し…」

立体起動装置で飛んだ宙を軽々と通り越して気球は空を登っていく。

ジャン「風も安定してるし…ほら、見てみな」

ミカサ「……っ」

遠くに湖なんかよりずっと大きくて、青く光るものを視覚に捉えた。

ミカサ「アルミンが航路を作ってくれたら…あそこに行けるのね」

ジャン「あぁ…エレンにもこの景色を見せたかった」

ジャンはなるべく私の前ではエレンの名前を口にしないようにしていた。

私が不安定なときにその名前を出すとひどく狼狽したせいだろう。

けど今は、素直に私の家族に想いを馳せていた。

ジャン「もちろんエレンだけじゃねぇ、マルコ、サシャ、コニー、ベルトベル、ユミル…言い尽くせねぇな」

ミカサ「今度の世界では…みんなで見に行ける、きっと」

ジャン「そうだな…」

私は、ジャンの火傷の跡越しに海を見つめた。

そして、再び鈍く光るその跡を見つめた。

ジャン「ど、どうした?///」

そっと指で、彼の熱傷跡に触れる。

ミカサ「本当に痛くない?」

ジャン「お、おぅ///…あ、あのさ…ミカサ!」

彼は思い出したように、決意を固めるようにポケットから小さな箱と、

彼に隠れるようにしておいてあったものを私に手渡した。

ジャン「操縦片手に悪いと思う…だけど、今日で決めるつもりできたんだ」

ミカサ「うん」

ジャン「俺と…結婚してくれないか。絶対に幸せにする」

ミカサ「…はい、喜んで」ニッコリ

ジャン「はぁ~よかった…んで、すげぇ嬉しい」ニッコリ

ミカサ「私の方こそ…ずっと待たせてすまなかった」

ジャン「…待つって言ったのは俺だ。全然気にしていない」

ミカサ「ありがとう…」

ジャン「マルコォ!聞いてたか!?ミカサが!!俺の嫁になるんだ!!!」

青く澄み渡る私たちの心のような空をもっと青くさせるかのように

彼は大きな声で、喜びを叫んだ。

ジャンから手渡された小箱には、銀に光る指輪が。
そして、彼の影にいたのは…小さな苗木だった。

ジャン「ミカサの家族になるってことは、死に急ぎ野郎の家族にもなるってことだろ?」

ジャン「あいつが眠っているところ…殺風景だし、あんな石なんて風化しちまうかもしれない」

ジャン「だからさ…木を植えて、あいつが目覚めても分かりやすいように」

ミカサ「ありがとう…」スッ…

ジャン「…!!」

私たちは初めて口づけを交わした。

ジャン「それ高かったんだぜー給料3カ月分なんてよく言ったもんだ」

ミカサ「クスクス…そういうところ、変わらない」

ジャン「エルヴィン総統にもだいぶ丸くなったって言われたんだがな…」

ミカサ「でも、そこがあなたらしい」

私たちの意思を改めるように、気球は再びこの大地に足を付けた。

アルミンの隊と合流した際の彼は、外の世界の本を私に紹介してきたとき以上だった。

海の水は本当にしょっぱかった、海と大地の境界線は砂であったこと、

二本のハサミをもった生物がいた、星の形をした不思議な生き物の話…



私たちが夢にまで見た世界

アルミン「今度の世界では、絶対エレンも連れてこよう」

ミカサ「もちろん」

何度でも、私たちは誓う。

ミカサ「アルミン、一度しか言わないからよく聞いて」

アルミン「なんだい?」

私は薬指に光る約束をアルミンに見せた。

ミカサ「ジャンにプロポーズされた」ボソ

アルミン「ほんと!?なんて返したの??」

ミカサ「はい…って」カアアァァ

アルミン「そうだよね、だから指輪付けてるんだよね…本当によかった…もう良かったって言葉しかでてこないや…」グスッ

ミカサ「ありがとう…本当にうれしい…」

アルミン「結婚式はどうするの?」

ミカサ「私たちは、挙げる気はない。アルミンとアニが挙げないのなら、私もそうする」

アルミン「僕たちのことは気にしないでいいんだよ?」

ミカサ「もうジャンと決めたから」

アルミン「そっか…」

しばらくは本拠地に残り、アルミンやジャンの手伝いをしたり

一番安全で一番近いルートのことを話しあったりした。

もう何度か海までの遠征を繰り返し、一般の人も行ける航路を作るとのことだった。

元壁内に戻った私とジャンはすぐにエレンの元へ向かい、石の日陰側にならないようにに木を植えた。

ジャン「死に急ぎ野郎…いや、エレン」

ジャン「ミカサは俺がもらった!」

ジャン「悔しかったら、次の世界ではもっと俺に気を付けることだな!」

ジャン「絶対に…絶対に幸せにしてやるから」

ジャン「覚悟しとけよ!!」

ジャンは泣いていた。

男の人が、こんなに泣く姿を見るのは初めてだった。

最後の戦いのときですら我慢した涙を、今ここで流している。

私も彼に双発されうように、頬に暖かい雫をこぼした。

ジャン「なんだか、あいつにおめでとうって言われてる気がしないか?」グスッ

ミカサ「うん、私も。だけどきっと悪態をついている」

ジャン「きっとそうだな」ハハッ

それからも私は毎日、エレンの丘に行き木の様子見たり

草を刈ったり、エレンに日々のことを報告した。

アルミンやジャンが訪れたときには必ずいっしょにエレンのところに向かった。

そんな日々を過ごしながら私は新居に送る荷物などを送るために部屋の整理をしていた。

1枚だけ残っていた、104期のメンバーたちの集合写真の入った写真立て。

あのころはカメラはとても高級で庶民の私たちには手の届かないものだった。

今ではほんの少しずつではあるけど普及しつつある。

そのため写真は訓練兵を卒業するときの一枚のみ。

それを丁寧に包み、箱に入れる。



チャイムと、3回のノック。

ミカサ「どうぞ、鍵はあいている」

もちろん、扉をあけたのはアルミンであった。

仕事が忙しくて髪を切る暇がなかったのか、先はもうすぐ肩につこうとしている。

アルミン「さっそくなんだけどさ!もうすぐ夏になるし、海にいこう!!」

アルミン「本に書いてあったんだけど、海では夏になると川に入るように海に入っていたらしい!」

壁がなくなってから、アルミンの興奮が治まる日は少ない。

目はキラキラと輝いて、こなにも澄んだ眼をした大人は彼くらいであろう。

ミカサ「ところで、いつごろになるの?」

アルミン「7月の終わりごろかなぁ…僕、ジャン、それにリヴァイ総統」

アルミン「リヴァイ元兵長と、ハンジ元分隊長も参加予定だ」

アルミン「あと、ヒストリ…それに、ライナーもアニも今回は特別に」

ミカサ「ほんと!?」

アルミン「本当さ!万が一、巨人になったとしても…このメンバーだと…ねぇ?」

ミカサ「そうね」クスクス

アルミン「…ほんとに君はよく笑うようになった」クスッ

ミカサ「自分でもそう思う」

アルミン「…ふふふ」

ミカサ「うふふ…うふふふふ~うっふーん」

アルミン「ちょっとそれは気持ち悪いかな…」クスクス

ジャンはエレンの丘とさほど遠くないところに家を買ってくれた。

いつでも私がそこに行けるように気をまわしてくれたらしい。

私はジャンに世話になってばかりだ。

兵士だったころは、エレンを守る気持ちが先走るばかりで

誰かに守られようなんてことは考え付くことすらなかった。

これからはジャンに守られ、そして支えていくのだ。

きっと他愛のないことで喧嘩をするだろう。

きっと他愛のないことで笑い合うだろう。

きっと他愛のないことで幸せを感じるのだろう。

季節や気候についてはまんま日本にしてまする。



蒸し熱くなってきた頃、いつものようにエレンの丘に私はやってきた。

兵士だったころは気にしなかった日差しを気にして、つばの大きな帽子を頭に携えていた。


丘には先客がいた。

アルミンではない、長くて黒いウェーブのかかった髪

??「やぁ、久しぶりだね!」

ミカサ「ハンジ元分隊長…!!」

ハンジ「いやーもうハンジさんでいいからさーフランクにフランクに!!」

ミカサ「は、はい。ハンジさんはどうしてここに?」

ハンジ「今度の海への調査で同行するでしょ?その挨拶と思ってね!!」

ハンジ「挨拶といえば、結婚おめでと!ジャンとはうまくいってる?」

ミカサ「ありがとうございます。もちろん…です///」

ハンジ「よかったよかったーエレンが眠りについたときはこの世に絶望したって顔してたからねー」

ハンジ「ジャンは口こそ悪いけど、ほんとにいい子だから…それは私のお墨付き!」

ハンジ「あのあとはしばらく、私の下で働いてもらったんだから間違いないね」ニカッ

ミカサ「はい!ほんとにありがとうございます!!」

ミカサ「本当はあいさつにいきたかったんですけど…ハンジさんの所在がわからなくて」

ハンジ「エルヴィンとリヴァイにしか言ってなかったからねーあいつらは口が堅いし」

ハンジ「私はモブリットと一緒に今でも巨人の研究を続けている」

ハンジ「アルミンにこないだ見つかっちゃってねー」

ハンジ「なんのせ、表向きは花屋だからさー奥さん…アニと喧嘩して花を買いに来たんだ」

ミカサ(この人一体どんな花を咲かせているのだろう…)

ハンジ「ミカサの想像するようなヘンテコは花は取り扱っていないよ」ニコニコ

ミカサ「すいません…」

ハンジ「考えが顔にでてくるところが、ジャンに似たね」ニコニコ

ハンジ「謝ることじゃないさ!兵士だった頃の君は無表情か怒ってるしかなかったからね」

ハンジ「大変喜ばしいことさ」ニコッ

ミカサ「私もハンジさんの花屋にいっていいですか?」

ハンジ「もう見つかっちゃったからね~いつでもおいで!」

ハンジ「巨人がいなくなってから、明るい雰囲気になったでしょ?」

ハンジ「そうすると花が売れて売れて、追いつかないくらいさ」

ハンジ「多分、ミカサとジャンの家からはそう遠くないはずだ」

ハンジ「ミカサさえよければ、うちで働かないかい?」

ミカサ「私で…いいんですか?」

ハンジ「もっちろん!売れて売れて仕方ないからね!!」

ハンジ「そうすれば、私ももうちょっと研究に集中できるしね!」

今まで終始笑っていたハンジさんの顔が唐突に真面目そうな顔になる。

エレンの木を一瞥し、再び私の方を向く。

ハンジ「しかし…改めてこの世がずっとループしてるだなんて信じられない」

ミカサ「私もです」

ハンジ「ライナーたちは、それを知っていてそれを止めるためにエレンを利用しようとした」

ミカサ「……」

ハンジ「そんなの一回説明しただけじゃ、そりゃ誰も納得できないのもわかる」

ハンジ「それぞれの時間軸で一番強い意志を持った座標により繰り返されてきた世界…」

ハンジ「私はね、ベルベルトとユミルには大変申し訳ないと思っているんだ」

ハンジ「もちろん、ライナーとアニにもね」

ハンジ「そして彼らも私たちに対して、大変な罪の意識を抱いて日々を過ごしている」

ハンジ「この輪廻を止めるために戦っていたというのに…」

ハンジ「次こそ、彼ら、知性巨人たちも救われるべきだと思うんだ」

ミカサ「そうですね…私もベルベルトとユミルがエレンに殺される瞬間を見ていた」

ミカサ「私の中にもエレンと同じように巨人に対する憎悪があった」

ミカサ「だけど…謝罪の言葉を口にし、寂しかったと口にしたベルベルトを見て…」

ミカサ「何が悪だったのか、わからなくなった」

ミカサ「私の中の、巨人を、人を殺したい程に憎む気持ちは…悪ではなかったのかと」

ハンジ「戦争とはそういうものさ」

ハンジ「誰かの正義は誰かの悪であり、誰かの悪は誰かの正義である」

ハンジ「それが世の常さ」

ミカサ「不毛…」

ハンジ「今度の世界ではさ、力じゃなくて知識や話し合いで決着がつけれたらいいね…」

ミカサ「そうですね…」

ハンジ「あー長居しちゃった!ごめんね!!」

ミカサ「とんでもありません」

ハンジ「あ、これ名刺。ここにお店あるから。ぜひぜひ!!」

普通に間違えちゃったwすいませーぬ!
これ書きこんだら、ガキ使みてきます!!


目を覚ますと耳に蝉のむせび泣く声が耳に入り、聴覚に夏を訴える。

ジャンとの生活にも慣れてきた。

ベットの傍らには104期の集合写真の入った写真立てが飾ってある。

昨日も遅くまで仕事をしていたジャンを起こさないように

そっとベッドを出て朝の支度をする。

少し外は曇っていはいるが、洗濯物を干す分には問題はなさそうだ。

額や背中に汗が軽くにじみ、体で夏であることを感じとる。

昨日買ってきたグレープフルーツを絞り、ハチミツと砂糖を混ぜ

以前ほどではないがまだ貴重な塩を振りいれジュースを作る。

熱中症予防にはもってこいだ。

先日アルミンが再度海に行き、遺跡から見つけ出した資料に

海水からの塩を取りだす方法が乗っており、その試作を少々頂いたのだ。

ダイニングのイスに腰掛け、私が作った朝食をありがたそうな顔で食べてくれる。

ミカサ「比較的安く手に入った」

ジャン「以前はベーコンですらなかなか手に入らなかったのになぁ」

ミカサ「あとこの水筒を持って行って。熱中症予防になる」

ジャン「ああ、ありがとう。ミカサも今日はハンジさんのとこか?」

ミカサ「えぇ、今日は昼から夕方まで」

ジャン「俺もできるだけ早く帰ってきたいんだが…今度の海への遠征の件もあってな…」

ミカサ「あまり無理はしないで?」

ジャン「おぅ、ありがとな」

ジャン「ごちそうさま。朝食うまかった」

ミカサ「ん、ありがとう」

このようなことを毎日口にしてくれる旦那は世間的には珍しいらしい。

我ながら、いい旦那をもらったと思う。

あ、あけましておめでとうございます。


ジャンを仕事に送りだし、洗濯物を干す。

薄く切ったパンに朝のベーコン、トマト、レタスを挟んだサンドイッチと

ジャンに渡したものと同じグレープフルーツジュースを水筒に入れ右手に持つ。

左手には空のじょうろを持ち、エレンの丘に向かう。

元ウォールマリア内だったここは、一度崩壊したにも関わらず

その面影をほとんど残さないほどに普及していた。

子供たちが小川で水遊びをしたり、大人たちも活気にあふれている。

ハンジさんのお店に向かう途中には小さな広場があり、そこは水の公園になっている。

ここでも大人たちに優しく見守られながら子供たちが噴水の回りで遊んでいる。

その通りをもう少し進んだところにハンジさんの花屋がある。

働き始め、一通りの業務をだいたい覚え始めた頃であった。

ミカサ「こんにちは」

ハンジ「おー今日は早いねー!」

ミカサ「これ、お昼ご飯に差し入れなんですけど…」

ハンジ「サンドイッチ!わぁ、いいねいいねー」

ミカサ「先に召し上がってください」

ハンジ「いやいや、ミカサが先に食べなよ。まだモブリットが店先にいてくれてるから」

あ…>>51>>52の間の流れを書き込み忘れたのでこちらで補足おねがいしまんもす



肉は壁がなくなる前よりは手に入りやすくなったものの

生肉はまだまだ高価であり、加工されたベーコンなどが庶民には普及し始めている。

我が家でもベーコンは貴重な肉として重宝している。

ベーコンと豆を炒めたものと、トマトやキュウリなどの夏野菜を使った冷たいスープ。

そして以前とは比べ物にならないほど柔らかいパンを用意する。

ジャン「ふあぁ…おはよう、ミカサ」

ミカサ「おはよう、ジャン」

ジャン「あ~ベーコンのいい匂いだ…」

暑さのため、衣服を下着のみを残して寝ていたジャンが起床してきた。

ミカサ「でも…」

ハンジ「いいからいいからー!私もこの作業終わらせちゃいたいしね…」

ミカサ「これは?」

ハンジ「これはね、花嫁さんの髪飾り。生花で作るのさ」

ミカサ「綺麗…」

ハンジ「でしょー!!」ムッフー

ハンジ「ミカサはジャンと結婚式はしたのかい?」

ミカサ「いいえ、でもいいんです」

ハンジ「でももったいないよー?一生に一度のことなんだからさー」

ミカサ「今こうやって平和に暮らせているだけで…幸せなので…」

ハンジ「そっかそっか。ミカサがそれでいいなら、ねっ!」

ハンジ「店の奥は今開いてるから、そこでランチしてきなよ!」

ミカサ「はい!」

ハンジ「終わったらモブリットに声かけてあげてねー」

ミカサ「はいっ!」

このように私は巨人のいない平和な日を楽しんでいる。

もちろんこの生活にエレンを含め、命を落としてしまった同期のメンバーが

居てくれたらもっともっと楽しい日々をすごせたのだろう…と考えてしまうこともある。

昼食を終えた私は、モブリットさんに声をかけて店先に立つ。

もう何かに怯えた顔をしている人はいない。

みんなそれぞれ、希望や不安を抱えて日々を生きている。

7月末、とうとうその日が来た。

日が昇らないうちにジャンを起こす。

ジャン「あと3分…いや、1分でもいいから…」ムニャムニャ

ミカサ「駄目。みんなもう用意している」

エルヴィン「心臓をささげよ!」

ジャン「!」バッ

エルヴィン「はは、しっかり体に染みついているようだね」

ハンジ「やほー」

リヴァイ「その見苦しい姿をやめろ」

ジャン「すいません…」トボトボ

ミカサ「ジャン、普段から下着で寝るのはいけないと言っている」

懐かしい面々が今、私の回りを囲っている。

ハンジ「仕方ないさ、きっと楽しみすぎて寝れなかったってとこだね」

ミカサ「本当に申し訳ありません」

エルヴィン「そんなに堅くならなくていいさ。総統といえど、壁がなくなる前ほどの権力はないのだから」

ミカサ「でも…」

リヴァイ「そいつがそう言ってるんだが、俺にももっとフランクに接してもらっていい」

ミカサ「は、はい!」

ハンジ「そういえば、エルヴィンにもリヴァイにも浮いた話が一切ないから」

ハンジ「エルヴィンの秘書であるリヴァイとできてるんじゃないかーって噂たってるんだよねーww」

リヴァイ「おい、そいつら消してこい」

エルヴィン「ははは、そんな噂が立つくらい平和になったってことさ」

ジャン「すいません、着替えてきました」バタバタ

ミカサ「ジャン、ボタンを掛けちがえてる」

ハンジ「すっかり夫婦だねー!!」

ジャン「あ、ありがとうございます///」

ミカサ「…」テレテレ

エルヴィン「じゃあアルミンたちと合流するために出発しよう」


エルヴィン総統の失われた右腕を補うように、リヴァイ元兵長は

彼の側近になり、今でも一緒に活動をしているらしい。

確かにこの二人がもし、ハンジさんが言ったよう関係にあったとしても…

正直なところ私は驚かないであろう。

とりあえずエルヴィン双頭にアゴヒゲは似合うが、リヴァイ秘書のチョビヒゲは似合わない。

けれどもリヴァイ秘書のあの鋭い刃のような目も今は氷が解けたように穏やかである。


ジャン「遅れてすまねぇ!」

アルミン「大丈夫さ、この程度の誤差なら調節できる」

「ジャン!ミカサ!!久しぶりだね!!!」

そう笑顔で迎えたのは現在はアルミンの妻であるアニだった。

結婚したときに挨拶にはいったけど、最近は手紙のやり取りだけであった。

金髪のボブヘアがよく似合っている。

ミカサ「アニ、久しぶり。すごい荷物」

アニ「うちの亭主が海の調査のために色々もっていくんだーって聞かなくてね」

彼女の荷馬車には沢山の荷物が積まれていた。

どれも布で隠れて中をうかがうことはできない。

アルミン「う、うん!いっぱい持ちかえってきたいものもあるしね!」

エルヴィン「なんだか懐かしいね、このメンバーは」

リヴァイ「あぁ」

アルミン「では、調査に向かいましょう」

ハンジ「うひょー!超みなぎってきたー!!海ーうみぃー!!」

リヴァイ「おい、まだここに奇行種がいるぞ」

ハンジ「うそぉ!?どこどこ!!??」

リヴァイ「はぁ…お前は変わらねぇなぁ」

ハンジ「???」

ミカサ「フフ…」

ジャン「どうした?」

ミカサ「こんなワクワクした気持ちで壁外…もう壁外ではないけど」

ミカサ「調査ができるなんて、本当に夢のよう」

ジャン「そうだな。俺はミカサと夫婦になって調査に行けることが何よりうれしい」

ジャン「…なんてな」ボッ

ミカサ「うれしい…」カアァ

アルミン「二人とも、話聞いてた?」

ミカサ「…ごめんなさい」

アルミン「えっと…この地点でライナーとヒストリアを迎えに行くよ!」

エルヴィン「出発だ!!」

エルヴィン総統の合図と共に海へと出発した。

馬を走らせ、海に向かう。

太陽が昇り始め、空はセルリアンブルーに色を変えていく。

アルミンは調査で、遺跡から見つけた「デンシャ」の話をしてくれた。

街に線路を引いて、そこに「デンキ」で動く鉄の車を走らせる。

それを「デンシャ」と読んでいたらしい。

その鉄の車は沢山の人をのせることができ、もし復元に成功すれば気軽海に行けるようになる。

夢物語のように思えた話も、壁ができる前の人類にとっては現実だった。

そして、私たちがその技術を使うのも時間の問題…

そしたらどのように世界は変わるのだろうか。

私たちは、途中でライナーとヒストリアを拾った。

ライナーは故郷で酪農を営んでおり、大きな牧場にするのが夢だと語ってくれた。

そして、動物に好かれるヒストリアにとっても持ってこいだったという。

ライナー「みなさん、お久しぶりです!まさか自分が…みなさんと海にいける日が来るなんて…」グスッ…

ヒストリア「ライナー、泣くのはまだ早いよ」っハンカチ

ライナー(結婚しよ)

ミカサ「まだヒストリアにはプロポーズしていないの?」

ライナー「覚悟が決まらなくてな…一度は人類を滅ぼそうとした身だ」

アニ「私が覚悟したんだ、道連れだよ」

ライナー「よ、よし!じゃあ俺は海に付いたらヒストリアにプロポーズする!!」

アニ「フフ、楽しみにしてるよ」

アニはこんな風に笑うんだ…訓練兵のときは想像すらしなかった。

もう戦士ではない、一人の人間としての彼女がここに存在するのだ。

とりあえず寝ます、おやすみなさい。
明日は親せき回りがあるので、その合間をぬって更新できたらいいな。

ここまで荒れると、更新していいものか悩むw

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