ある勇者の旅立ち 少年「さぁ~っいえっさぁ~!」 (152)


ミズザパァッ!

少年「わっわっ、何、何っ!」ズブヌレ

軍曹「気を付けッ!」

少年「はっ、はっいぃぃぃ!」ピョン

軍曹「本日より貴様は、我が隊の一員となった!」

少年「えっえっ、確か城に呼b」

軍曹「勝手にクソをたれるな!これより先、返事とクソをたれる前後に『サーッ』をつけろ、分かったか!」

少年「」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1388408647

軍曹「返事!」

少年「はi、じゃなくて、さぁ~っいえっさぁ~」

軍曹「今から言う事を貴様の帽子の載せ台にしっかりと焼き付けろ。

軍にとって、貴様の様なゴミクズは目障りだ!
いや、はっきり言って邪魔だ。
ゴミクズはそこにあること自体が間違いだからゴミなのだ。それどころか、ゴミクズは周囲に致命的な災いをもたらす。それ故、ゴミクズはすぐに塵に変えて処分するのが通例だ。

だが私は人格者だ。例えボロクズが入隊してきても差別はしない。平等にクズだ!クズならば再利用の可能性が微生物の垢程度にはあるかもしれない。よって私はクズに一人前の兵士になる機会を与える。

だが、あがくこと無く、このままチリクズとして満足であるなら、今直ぐこの場で申し出よ。瞬きする間に存在をこの世界から処分してやる!

私に巡り合った幸運と私の慈悲に感謝しろ!」

少年「」

軍曹「返事!」

少年「さぁ~っ・いえっさぁ~!」

軍曹「まずは体を洗って、軍服に着替えて来い!
兵士A、このクズを装備科に連れて行け。1時間後、中尉殿から説明がある。それまでにこのクソクズを見れるようにしておけ」

兵士A「サーッ・イエッサーッ!」

少年「さぁ~っ・いえっさぁ~!」

―――

少年「うぅぅぅ、何か知らない間に、話が進んでるぅ」

兵士A「泣くな、軍人に志願すればそういうものさ」

少年「違うんですぅ、王都に連れてこられて、目を覚ましたらココ...、あれっ何かあったような...」

―――

神官「...陛下、勇者様を御連れしました」

王「おおっ!待ちかねたぞ。...して、勇者殿は?」

神官「こちらです」

少年「?」チマ

王「この...少年が...勇者?」

少年「??」プチ

王「神官、...その...間違いないのか?」

神官「間違いございません。...私も信じられませんが、御宣託を授かった巫女の様子からも間違いないようにございます」

王「巫女が?如何いたした」

神官「盛大に鼻血を吹きだし、息も絶え絶えに彼の名を告げ、人事不詳に陥りました」

少年「???」ショタ

王(ウチの国教は大丈夫か...)ハァ

王「よく参られた...ショ..いやっ、勇者よ」

少年「...あのぉ勇者とは、僕のことなんでしょうか?」

王「そのとおり」

少年「そんな...、恐れながら、何かの間違いでは無いでしょうか?山奥で細々と暮らしてきた僕には、そのぉ..英雄譚の勇者のような武術も魔法も使えません」

王「うむ、勇者とは元来そう言うもの。選ばれ、旅立ち、成長する。とは言え現状では、其方も、また我らも懐疑的である。神官アレを」

神官「勇者の剣、これに」

王「其方が正真正銘の勇者なれば、触れた際に剣の宝玉が輝く筈。試してみよ」

少年「これが勇者の剣...」ゴクリ...ソォ

パァァァァァッ、ピカァ

王「オオオッ、宝玉が輝いた!間違うことなき勇者!!

その剣は、光と共に在って、人類の守護者たる勇者の証である。
受け取るが良い」

少年「あのぉ...」ンンンンンッ゙!

王「この時代に勇者の剣が如何な...んっ?何をしておる」

少年「そのぉ、剣が重くて持ち上がりません」

王・神官「」

王「しばし待て。神官」カムカム

王「おぬし剣をどうやって運んできた?」ナイショバナシ

神官「宝物庫からこう両手で捧げ持つように」ヒソヒソ

少年「せいのぉぉぉ!」ガタンッ

王「重いのか?」

神官「剣ですから、それなりの重さはありますが...」

少年「うにゃぁ!指が指がぁぁぁ!!」ガラァン

王「神官よ、そち、体を鍛えておるのか?」

神官「いえ役目柄、平均より劣るかと...」

少年「お腹に!潰れるっ潰れるぅっ、餡子が出ちゃうぅぅ!」

王「するとあれは...」

神官「勇者にとっての試練..なんて聞いたことは有りませんし、非力で踊っているのか、剣に遊ばれているのか」

王「」タメイキ

少年「あうっぅぅ、息がぁ...」カオマッカ

王「どうしたものか」

神官「これではものの役に...見目だけは一部の趣味の者にはウケそうですから、象徴として御使いになりますか」

王「安楽椅子の勇者など聞いたことも無いわ。それに軍の士気に影響しかねん。...致し方ない、将軍をこれに」

王「あと、勇者が召される前に剣を宝物庫に戻すように」

少年「...あぁ..ぁ...きれいなお花畑が...」アオザメ

将軍「陛下、御召しにより参上致しました」

王「この忙しい時期に呼び立てて、すまぬ。実は勇者の件で頼みがある」

将軍「何者か判ったのですか!?」

王「それじゃ」

少年「」ムキュウ

将軍「珍しい敷き皮で」

王「その敷き皮が勇者じゃ」

将軍「御冗談...という訳ではなさそうですな」

王「勇者を招いたまでは良かったが、非力が祟ってその有様。そこで相談だが、この者を鍛えてくれぬか?少なくとも剣を持つことが出来るぐらいには」

将軍「剣を持つこt...それ程までの非力...」

王「将軍とて、勇者が、国や軍にとって如何な存在かは承知しておろう。だが、このままでは表に出せぬ」

将軍「確かに...、仰せのままに。
勇者を預かります、それでは」クビネッコ、ムンズ

少年「」ズルズル


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―――

将軍「中尉、急な呼び出しすまなかった」

中尉「いえ、問題ありません!」

将軍「中尉の部隊に出動命令が下る」

中尉「ハッ、準備は出来ております。何時でも御命令を!」

将軍「そう急くな、直ぐにでは無い。
作戦実施日時は未定だ。関連の状況次第でどう転ぶか分からんシロモノだ。だが腹づもりだけはしておけ。

今日呼び出したのは他の件だ。之を中尉に預けたい」ムンズ、ドサッ

中尉「何でしょう、このボロ雑巾は」

少年「」ヨレヨレ

将軍「新兵だ。以前から要請していただろ」

中尉「確かに要請はしましたが、これは」ゼック

将軍「兵は兵だ。一人前に鍛えろ!併せて、貴隊の訓練も行え。訓練場の使用許可書と諸々の書類はここに用意した。以上だ、下がって良し!」

中尉「ハッ、失礼します!」

―――

少年 ?

兵士A「おいおい記憶喪失か?」

少年「よく思い出せなくって...。
それより軍曹のバリエーション豊かにクズって」ナミダメ

兵士A「ハハハハハ、ありゃ新兵の通過儀礼ってやつだ」

少年「えっ、そういうものだったんですか、てっきり本k」パァッ

兵士A「軍曹のは本気だ」

少年「」シクシク

兵士A「両手に顔を埋めて泣くな。軍服のサイズは最小で...」

少年「あのぉ、袖が大分余るんですけどぉ」ブカブカ

兵士A「おいおい、風呂上がりに男物のワイシャツ着てるんじゃないんだぞ。昔から『軍服に体を合わせよ』なんて言うが、致命的に合わねぇな。合うサイズが出来上がってくるまで、袖を捲って縫い付けておけ」

少年「はぁ~い」ゴソゴソ

兵士A「(っ誰だ、こんなチンマイのを入隊させた馬鹿は)」

王・将軍「ヘッークシュン!」

―――

軍曹「全員、傾注!」

中尉「揃ったな。
近々、我々宛にパーティーの招待状が届く。親父殿(将軍)から直接内示があった」

兵士s ザワザワ

中尉「時期など、答えてやりたいが、詳細に関しては一切が伏せられていて、俺にも分らん。今回はパーティー前のエクササイズが目的だ。折角の招待に『ドレスが入りません』では話にならんからな」

兵士s ドッw

中尉「笑っていられるのは今だけだ。今回はワードローブの鍵を預けられているから、訓練だからと気を抜いていると欠席者になるぞ。普段の行いが良くてもカボチャの馬車は来ないからな」

兵士s「サーッ・イエッサーッ!」

中尉「それと。少年、前へ出ろ」

少年「さぁ~っいえっさぁ~!」

中尉「新兵だ。3サイズその他に疑問を持つ者もいるだろうが、このまま受け入れろ。見てのとおりのミニマムだ。だが一人前に仕込まなければならない。教育一切は軍曹に任せる」

軍曹「サーッ・イエッサーッ!」

中尉「この後、軍曹は残ってくれ、以上だ」

兵士s ザッ ケイレイ!

軍曹「よぉーし準備運動だ、このままランニングに出ろ。私に追いつかれた奴はケツを4つに割ってやる、かかれ!」

兵士s「サーッ・イエッサーッ!」

少年「さぁ~っいえっさぁ~!んっ?えっと??」

兵士A「お前も来るんだよ」ガシッ

少年「はぁぁぁi」ドップラー

中尉「これが許可書と命令書だ。感想が聞きたい」

軍曹「...『キナ臭い』かと。

現在、国内の治安・政治は安定している筈です。それなのに我々に声がかかった。情報を出し渋っているのに、『ワードローブの鍵』?
ちょっと気前が良すぎませんか。

それにこれは...?
後で請求書を見るのが恐ろしいです」

中尉「同意見だ。
親父殿も奥歯にものが挟まったような言い方だった」

軍曹「」

中尉「俺はしばらくココを離れる。その間、隊の一切と代返を任せる」

軍曹「何をされるおつもりですか」

中尉「情報を集めてみる。無知のままでは、皆を死神に晒しかねん」

軍曹「らしくなりましたね」フッ

中尉「からかうな、教官が厳しいからだ。頼むぞ」

軍曹「サーッ・イエッサーッ!」

―――

兵士s「♪ 娘さんよく聞けよ。軍人にゃ惚れるなよぉ。
戦が無ければ出世しないし、普段は鬱陶しい筋肉自慢。
軍人にゃ惚れるなよぉ ♪」ザッザツザツ

少年「...何...です。これ...」ハァハァ

兵士A「景気づけだな」

少年「気が..滅入りそうな...唄...」ヒィヒィ

兵士A「自虐の泥沼を楽しんでいるんだよ。それにしても息遣いが荒い割には、余裕が有りそうだな」

少年「余裕なんて...無いです...。でも施設沿いに走ってますから、もうすぐ...」ゼイゼイ

兵士A「軍曹を待ってるんだよ。合流したら施設を出てクロスカントリーになるぞ」

少年「...倒れても..良い...ですか」フゥフゥ

兵士A「倒れて軍曹にドつかれるのも、このまま心臓破裂も、そんなに変わらんぞ。付き合ってやるからペースを落としてコンディションを整えろ」

少年「はぁ...い...、今のうちに体力を...」

兵士A「あっ、軍曹が出てきて3倍のスピードで追いついてくる」

少年「」

―――

軍曹「本日はこれまで!」

兵士s 「サーッ・イエッサーッ!」ハァァ ヤットオワッタァ~

軍曹「おい、ミニマム・クズはどうした」

兵士A「此処で干からびてます」

少年「」カサカサ

軍曹「ようやく、ついて来れるようになったか。基礎体力に関しては、何とかなりそうだな。明日からメニューを増やすか...」

兵士s エエエッ コレイジョウカヨ オニダ

軍曹「...ほぉ、不満を垂れるか。お前達には基礎体力と錬度維持訓練しかさせなかったからな。さ・ぞ・や、物足りなかっただろう」

兵士s チ.チガイ.. ヤベッ ダレダ

軍曹「このまま体力が有り余ったままでは、夜中に隠れてナニをするだけだろう!余計なことを考えずに済むようにしてやる。施設を周ってこい!駆け足っ!!」

兵士s「サーッ・イエッサーッ!」

少年「さぁ~っいえっさぁぁぁ...」フラフラ

―――

少年「に・荷物が肩に食い込む。足が縮むぅ、地面にめり込むぅぅ」

兵士A「良かったじゃないか。全面投影面積が小さい方が敵弾に当たりにくいぞ」

少年「ひ・ひどい」

兵士A「作戦行動中の装備は、こんなもんだよ。行軍演習で歩くだけだから楽だろう。それに毎日宿舎で睡眠がとれるだけましだよ。負荷限界になったら、野宿でほとんど寝れないぞ」

少年「いま流行りの黒い職業ですか」

兵士A「軍隊をなんだと思ってるんだ?
まぁ、食事をとることが出来るだけ軍の方がマシだな」

少年「何気に黒い職業を批判してます?」

兵士A「下っ端に罪はねぇよ。そいつらの上前撥ねて、それらしい精神論を強要するダニ共が嫌いなだけだ。
その点、ウチは幸運だよ」

少年「あの精神論に問題が無いと...」

兵士A「そのうち分かるようになるさ...おっと、荒れ地に出てきたな。おい、気をつけろよ」

少年「魔物でも出るんですか!?」

兵士A「んなモン出るかっ...そろそろかな」

ドガァッーン!・ドガァッーン!

少年「うわぁぁぁ!な・な・何事ですか!?」

兵士A「こらっ、伏せろ!」グイ

少年「なにがおkiてるnnですか!?」

兵士A「落ち着け、大丈夫だ。単なる爆薬だ」

少年「爆薬ぅ!?」

兵士A「訓練の一環だよ。攻撃された時の対応訓練だ。説明にあったろ『ワードローブ』って。ありゃ多分、弾薬庫諸々の隠語のつもりだよ」

少年「ありましたね。てっきり軍服支給のことかと...」

兵士A「訓練だからフットパスへの安全距離は考えてある。冷静に対処してれば、ちょっと騒がしい環境音程度だ」

少年(黒の上は何色だろう...)

軍曹「あ・い・つ・らぁ」ソウガンキョウ ピキッ!

軍曹「訓練だからと高をくくっているな。気合が足らん!
...いいだろう。『ワードローブ』が実弾薬だけだと思うなよ。先生!出番です。御願いします!!」

?「先生って...あたし等は食い詰め浪人ですか」クショウ

軍曹「気合を入れるために、あいつらのケツにキツイの一発かましてください」

?「はいはい。こちらも久々ですから、当たってもしりませんよっと」

ヒュ―――ン

兵士A「へ?やべっ!?」

ドカッ・ドカッ・ドガァッーン!!

少年「うわぁぁぁ!!!っ」

ドッ・ドッ・ドォーン

兵士s「発砲音が後!?まずい。軍曹が切れた!」

少年「今度は何ですかっ!?大分近かったようですけどっ」

兵士A「砲撃だ!弾着が俺たちの背中側ってことは...追い立てられてるんだ!立て、走れぇぇぇつ!!下手したら当たるぞ!!!」ダット!

少年「ひょえぇぇぇぇっ!」スタコラ

軍曹「うんうん。意外にもミニの動きが素早くなってきたな。周囲を追い越す場面もあるじゃないか」

砲兵(爆風でふっ飛ばされているだけじゃ...)

軍曹「この程度では、先達の諸君にはヌルいかな。
修正射を要求、右200 距離・・・」

砲兵(当てる気か!?気は確かか??)

軍曹「何か?」

砲兵「いえっ。
(凄惨な笑顔で睨まれた。知らないフリ知らないフリ、無関係無関係)ガクブル
修正射撃...射てっ!!」

―――

兵士s & 少年「っ!!!」フットビ

―――

軍曹「装備改変が有り、小銃もそれに含まれる」

兵士s(何が変わったんだ、コレ?)

軍曹「A-30B、型式上は末尾だけだが、実包口径が6.5mmから7.7mmへと変更されている。それに伴い装薬量も・・・」

軍曹「・・・手順は頭に入ったな。分解清掃後に再組立を行え。工廠からの直送品だが浮気相手じゃないぞ。恋人の新たな魅力をちゃんと理解して、今まで以上に大事にしろ!下手な扱いで振られるな。始めっ!!」

兵士s「サーッ・イエッサーッ!」

少年「さぁ~っいえっさぁ~!」

兵士A「...手順で分からない事があったら...手つきが良いな」

少年「まぁ体格からか、細かい作業は楽です」カチャカチャ

兵士A「ついにミクロを自覚したか。自覚しても症状は治らないっと..」パチン

少年「僕の寸法は病気じゃないです...っと、完了!
僕にも得手な分野があるんで...どうしました?」

兵士A「これなぁんだ?」

少年「..引き金..」オヤクソク

―――

軍曹「射撃開始!」

パッ・パッ・パァッン

軍曹「..そこぉ!夜店の射的じゃないんだ!サクサク撃たんか!!」

軍曹「..こらぁ!無駄弾を撃つな、無駄弾を!!弾薬は血の一滴だっ!!」

軍曹「..装填不良はお前の整備ミスだ!下がって分解整備!

...んっ、砂埃で目詰まり?装備科には言っておく。待機時には手ぬぐいでも巻いておけ」

軍曹「・・・おい、あいつは何を撃ってるんだ?」

兵士A「鳥...では無い筈ですが」

軍曹「...的に当たるまで続けさせろ」

兵士A「サーッ・イエッサーッ...って、今日中に終わるのか?」

少年「えいっ!やっ!」ハネアガリ アサッテ

---

少年「ちょっと質問があるんですけど」

兵士A「なんだ寝る前にお伽噺の催促か」

少年「この際ですから言っておきますけど、僕の実年齢は容姿とは関係ありませんからね」プンスカ

兵士A「わかったわかった[コトニシテオク]。ところで質問って何だ」

少年「ここまで訓練を受けておいて何ですが、剣術とかの訓練はしないんですか?なんだか対人ばかりで、対魔族がさっぱりな気がするんですが」

兵士A「近接戦闘のことか..後半何を言った?」

少年「魔族に対する訓練を...」

兵士A「お前、魔族を見たことあるのか?」

少年「いえ、ありません」

兵士A「だよな、魔族なんて最早伝説の存在だぞ。そりゃ、『湖で竜を見た』とか『嵐の中で人魚に助けられた』なんて、たまにゴシップ紙で読むけど、北半球には存在しないってのが...」

少年「きたはんきゅう?」

兵士A「...おい、まさかと思うけど...この世界がどんなだか言ってみろ」

少年「子供じゃないんですから、それぐらい知ってますよ。大地はゾウの背中に乗っていて・・・」

兵士A「思いっきり『お子ちゃま』じゃないか!」

兵士A「この世界は球形、毬のような形をしているんだ」

少年「玉乗りをしているみたいですね。でもそれだと、玉の頂点から離れると、終いには立っていられない事に...はっ! それが世界の果てなんですね」

兵士A「全く違う。それじゃ世界は一点に向かって坂道じゃねぇか」

少年「そうでしょ、変ですよ。やっぱり世界は平らでカメの甲羅の上に...」

兵士A「玉の大きさがお前の想像している大きさと違う点と、引力がだな..、とにかく世界は球形をしてるんだよ。その証拠に、北と南の土地では太陽の高さが違うだろ」

少年「それは太陽までの距離と位置の関係なのでは」

兵士A「お前は頭の中の物差しまで、ちっこいのか」ハァ

軍曹「なにやら面白そうな話をしているな」ノックノック

兵士A&少年「軍曹っ!」 ハネオキ キヲツケ

軍曹「そのままでは二人とも眠れまい、会議室に先にいってろ」

兵士A「サーッ・イエッサーッ」ゲンナリ

少年「さぁ~っいえっさぁ~」ウナダレ

兵士A「お前が変な事を聞くから..一体何をさせられるのか」

少年「すいませぇん」ハンセイ

軍曹「待たせたな」

兵士A「サーッ・ノーサーッ!」
少年「さぁ~っのぉぅさぁ~!」

軍曹「肩の力を抜け。夜半に酒や珈琲という訳にもいかんのでな、これで構わんだろ」カップx3

少年「...これはまさか...」

兵士A「...毒物に対する免疫をつけるために...くっ!」コレマデカ

軍曹「お前らを超人にする手間をかけるぐらいなら、私が単独で敵陣に突っ込んだ方が早い。
安心しろ、ただのココアだ」

兵士A & 少年「ですよねぇ、いただきまぁす」

軍曹「それで。世界の形の話をしていた気がするが」

少年「兵士Aさんは世界が球形だと言うんです」

兵士A「少年は世界が平面だと」

軍曹「うんうん。少年の出身はどこだ」

少年「北方の山岳地帯に住んでいました」

軍曹「それでは日出に、山頂から麓へと日光が山肌を移動する光景は見たことがあるだろう。ちょっと話してみてくれ」

少年「えっと所謂『薄明の刻』ですね。『光は峰の頂を剣へと変え、素早く闇を切り払う。されど白刃は麓に近づくと営みを知り、歩みを緩め温もりを人々に与える』...」

軍曹「アレを知っているなら話は早い。吟じた一文にもあるとおり、山肌を移動する『光と闇の境界線』の移動速度は、高度によって違いが生じる。この速度の違いが、世界が球形であることの証明になる」

少年「?」

軍曹「いきなりすぎたか、順を追って話そう。
太陽が地平線の下に隠れていれば夜だし、逆なら昼だから、光と闇の境界線を作り出すのは地平線だ」

軍曹「これを踏まえて、世界が平面なら地平線は同一。これは良いか?」

少年「はい、大丈夫です」

軍曹「球形だと地平線の位置は、光と闇の境界の高さによって変化することになる。球を単純に円と考えると、境界を通る円への接線となる」

少年「えっと、高いと丸まっている分だけ遠くになる?」

軍曹「そうだ。では理解しやすいように、先程の山肌を移動する光と闇の境界と地平線、それぞれの一点だけを考えると、平面と球形世界で異なる直角三角形が出来上がるだろう」

少年「ま・待ってください。ちょっと考えます」ポクポク...

少年「平面では「境界,地平,境界と地面が垂直になる点」を持つ直角三角形で、球形では「境界,地平,球の中心」ですね」チーン

軍曹「そうだ。光と闇の境界線の移動速度は、世界が平面では太陽の角度を変数とした1次関数になるし、球形では2次関数になる訳だ。この違いが速度変化となって表れている訳だ。
故に、世界は球形である」

兵士A「一気に関数へと飛びましたね」

軍曹「言うな。それに、これ以上説明すると人体発火を目撃しそうだ」

少年「角度...変数...かんすう...」プスプス

軍曹「他になんか問題にしてたな」

少年「...魔族です」

軍曹「難しいな。千数百年以上前を最後に、人類と魔族の接触は無い...と言うのが公式なものになるか」

少年「でも、教会では繰り返し魔族の脅威について語っています」

軍曹「歴史が歴史だからな。それに、古に勇者が『世界より魔族を追い払った』とも聞いているはずだ」

少年「歴史として学びました」

軍曹「世界とは何だ?」

少年「人々が住むこの大地...」

軍曹「お前は、この世界が平面だと言っていたな。だが違うことは先程説明した通りだ。この大地が、球形世界をどのくらい覆っているか知っているか?
計算から導き出された結果は3割とも4割とも言われている」

少年「まさか...」

軍曹「そのまさかだ。我々の住む大地、大陸と呼ぶが、大陸は北半球に位置し、北半球は、くまなく調査されている。もし魔族が存在していても南半球側であり、北半球には存在しない」

少年「『もし』?
どういうことです。調査が北半球だけって」

軍曹「それに答える前に、これを見せてやろう」コトッ

少年「綺麗な金属球ですね。装飾もかなり細かい」

兵士A「コレ『地球儀』ってやつですか」

軍曹「分かったか」

兵士A「話の流れから。
手のひらサイズから見て、禁制品時代の物ですか」

少年「そんなに珍しいのですか」

軍曹「骨董的価値に関しては分からんが、時代が時代なら異端審問にかけられる代物だ。近年になって科学が発展し、咎められることも無くなったが。

食うために軍に居るような我々下々には、見る機会はそうそう無いな」

少年「これが世界...、あっ、この上の装飾が大陸ですか」

軍曹「そうだ。大陸の下、南側には何がある?」

少年「海ですね、更に下半分には何もありません」

軍曹「先程の質問の答えがこれだ。大陸の南側は全て海だ。ところが、この海が曲者で、『大潮流』と呼ばれる激しい流れが有って、航海することが出来ない。その為、南半球は人類未踏となっている」

少年「それで地球儀の下半分がツルツルなんですね」

軍曹「『もし』が真実であるなら、南洋は正しく世界の城壁だ。語り継がれる魔族の脅威を拒み、人々を守る。海は生命の母と言われているが、神の冥護とも言えるわけだ」

窓 コンコン

兵士A「なんだ?外か?...中尉じゃないですか!?」

中尉「○○○○○」パクパク

兵士A「えっ?何です?どうしました?」

中尉「○○○。~!」ヒッシ

兵士A「困ったなぁ。何が言いたいんでしょう」

軍曹「うん。長期間、姿を見せなかった腹いせは分かるが、何やら事情が有るようだから、開けて差し上げろ」

中尉「危なかったぁ~、勘弁してくれよ。おっ?喉が渇いているんだ、コレもらうよ」

兵士A「どうぞ。毒物訓練で使ったものですが」

中尉「!っ~」フキダシ

軍曹「その辺で許して差し上げろ[クショウ]
ところで中尉。先程『危なかった』と仰いましたけど、
今度は、な・に・を・しでかしたんですか?」# ピキッ

兵士A&少年(こわっ)ブル

中尉「待て、待ってくれ。話せば分かる」

軍曹「説明して頂ければ」

中尉「情報を集めると言っておいたじゃないか。王都や各地を周っていたんだよ。それも表立って行動できないから、こっそりと。それはもう聞くも涙、語るも涙の物語で...」

軍曹「簡潔に」## ピキピキ

中尉&兵士A&少年 ガクブル

中尉「...あ~えっと、『開戦』だ」

――― 魔王城

?「魔王様」

魔王「戻っていたのか、海王・クラーケン」

海王[人型]「ハッ、魔王様に措かれましてはご機嫌麗しゅう...」

魔王「挨拶はいいよ。で?今日はどうしたんだい。
『陸は心身ともに渇く』と言って、ちっとも戻ってこない君が珍しい」

海王「報告がございまして、急遽、帰城いたしました。
例の。王国艦が出港いたしました」

魔王「...目的地は」

海王「当初、進路が北寄りだった為、いつもの試験もしくは訓練と考えておりましたが、遠洋上で複数の艦船と合流し、進路を南にとった由にございます」

魔王「複数の艦船だと?」

海王「どうやら北方で密かに建造していたようで、同一艦を確認しております」

魔王「出し抜かれたか」

海王「恐れながら今回は...」

魔王「数は確認できているか」

海王「戦艦4、巡洋艦4、それと輸送艦が2隻」

魔王「なっ!全部で10隻だと!?
...大潮流を越え、遂に奴らが来るか...」

海王「はい...」

魔王「...海王・クラーケン、勅命である。王国艦隊を邀撃せよ。魔国への侵入を許してはならん」

海王「はっ!承知しました、必ず!

魔王様、個の武を誇る時代はこれで最後に成りそうですな」フッ

魔王「...海..クラーケンっ、あ」

海王「魔王様、未練に御座いますぞ...
なぁに奴らに一泡吹かせて、御覧に入れます。
之にて御前より失礼いたします」ザッ クル

扉 バタン

魔王「くそっ![ガンッ]...頼む...」

――― 王国艦隊

参謀「さすがに王国を守護する海なだけあって荒れます。自分は海上に慣れていると考えていましたが、新兵に戻った気分です」

将軍「陸亀の私など、畏れ多いことながら、神から賜ったこの海を罵ってしまいそうだ」

参謀「最新鋭艦の本艦でさえこれですから、巡洋艦の第二戦隊はこれ以上です。それでも訓練に比べれば極楽だと、定時連絡で笑っていました」

将軍「そうか。兵も、船も大したものだ」

参謀「今までこの海域をまともに航行できる艦はありませんでした。如何に高凌波性を持たせる為に乾舷を高く設計したとはいえ、技術の進歩には目を見張るものがあります」

将軍「例の新型装甲かね」

参謀「資料によると『KC装甲鋼板』と呼ばれているそうです。防御能力だけを見ても従来の3割増し。軽量を実現しながら堅牢性を保つことが出来るとは、夢のようです」

将軍「うむ、全くだ」
(快適性を軍艦に臨むのは間違いか...それにしても)ザアァァァァン ザアァァァァン

――― 魔族海兵部隊

セイレーン・副官「海王様、本作戦は配下だけで?」

海王「現状で十分..とは言えないが、可能だろう」

副官「海王様自らが前衛に出られるのは...」

海王「数百年ぶりに魔姿になるつもりだが、それでも私の力量は不安かな?」

副官「違います!疑うなどっ!私が心配しているのは御身の事です。万が一に...」

海王「わはははっ、戯言だ、許せ許せ」

副官(もう)スネッ

海王「作戦内容を説明する。
敵艦隊の邀撃だが、奴らの南下を断念させればそれで良い。
そこで指揮官、すなわち旗艦を狙う。

旗艦の識別は出来ているか」

副官「接敵を続けている部隊からの報告では、敵艦隊は輸送艦を中心とした絨陣列で航行中。先頭艦に将旗が上がっているのを確認しておりまし、それが例の新型戦艦であることも識別済みであります」

海王「うむ。海竜を中心に本隊を編成。本隊の指揮は副官に任せる。

海竜、自由に闘らせてやりたいのだが、細かい手順と、何よりタイミングを必要とする。これも時代だと思って、副官を助けてやって欲しい」

海竜「御心配ありますな。副官の能力を疑ってはおりません。海王様の顔を見ながらより、美人を見ながらの方が余程、兵の士気も上がりましょう」

副官「海竜様っ! ///」

一同 ドッw

海王「長年の情報収集で、敵艦の最大射程が13,000m前後であることは確かなようだが、有効射程は恐らく10,000を切るだろう。本隊は12,000まで近づき転舵、同航戦にて敵の注意を引き付け、距離を保ち続けよ」

海王「私は搦手として単身逆方向から旗艦に水中より近づく。本体からの識別弾を確認後、直ちに浮上...、
見慣れない姿だからと言って、間違って当てないでくれよ」

一同 ドッw

海王「浮上後、艦橋を第一目標に攻撃、指揮能力を奪ったことを確認後に離脱する。
本隊もタイミングを見計らって離脱せよ」

海王「重ねて命じておくが、10,000m以内への接敵を禁ずる。記憶の中の人間達とは比べものにならない破壊力を有していることを忘れるな!

以上だ、質問は?

魔国の興廃はこの一戦にある。総員一層奮闘努力せよ。
これより作戦を開始する。総員戦闘配置!」

一同 ハッ!!

参謀「将軍、本当にこの辺りで魔族は仕掛けてくるのでしょうか」

将軍「昨夜あたり闇に紛れて来ると思っていたが、違ったのでな。それに潮流の影響も少なくなってきた」

参謀「畏れながら、敵にとって、陸に近いところまで我々を引き込んで戦端を開いた方が有利なのでは?」

将軍「参謀の言う事は正しい・が、
万が一にも先遣隊を上陸させてしまっては、如何に地の利が有るとはいえ、後々の作戦行動に支障をきたすかもしれん。

それに如何な生物であっても全てが武人である訳もない。ならば民の安全を最優先に考えるのではないか。

よって我々が、陸より離れている今のうちに叩こうと考える筈だ」

参謀「選択肢で追い詰めたと」

将軍「であれば良いが。
魔族の行動原理がいかなるものなのか、教会の伝承でしか知らんのだ。人間と同じだと、言い切れんのが泣き所だな」

兵「左30度!水平線上に多数の影!!」

参謀「確認しました。こちらに一直線に向かってくるようです」

将軍「艦隊に訓示を行いたい」

参謀「こちらでどうぞ」

将軍「ザー...諸君、

過去において、人類は魔族に対し、脆弱な肉体で数を頼りに闘わなければならなかった。圧倒的な力を前に脅えながらも仲間の屍を踏み台にし、ひたすらに耐え忍んだ。

だが、我々は違う!
如何なる猛威をも退ける装甲と、如何なる障害をも薙ぎ払う火力が有る。対等・いやっ、それ以上に渡り合える新たな肉体を獲得するに至った。

また、傍らには僚友が居る。辛苦を共にし、心を一つに歩んできた僚友だ。一人一人、それぞれへの信頼が結びつき、強固な精神へと育っているのを感じている筈だ。

練磨を続け今、新たな肉体と強固な精神を有した我々だからこそ、神は、新たな時代の幕開けと恩寵を授ける者として、我々を選んだのだ。
もはや恐れるものは何もない!

これより人類は、魔族に対し反攻を開始する!
総員合戦準備!!」

海兵m「敵部隊、コースそのまま、艦隊に近づきつつあり!」

将軍「参謀、主砲の射程は?」

参謀「戦艦が装備している主砲は30.5cm、二連装2基4門、射程は最大で13,500mです」

将軍「予定通り、艦隊を梯陣列に。
輸送戦隊を第一戦隊の右舷後方7000に。第二戦隊を対角上に布陣させよ。両戦隊には、本戦隊と敵部隊との間に入らぬよう操艦に注意させよ。

第一戦隊はコースこのまま、距離8000で左舷回頭、砲撃を開始する」

参謀「左舷?それでは回頭に時間がかかります。コースこのままで合戦に持ち込んだ方が、艦隊運動の手間が省けますが」

将軍「進行方向を押さえたいのは奴らも同じだ。先にも述べたように我々に抜かれたくないだろうからな。
恐らく足は敵の方が速かろう。下手をすれば頭を押さえられてしまう。

そこで直前で左舷回頭を行い、反航戦を匂わせてやれば、連中もこちらに合わせてくるだろう。部隊運動で速力を奪ってやれば、理想的な砲撃位置をしめるのは我々と言う事になる。

艦長、敵を引っ掛けるために、速力のさじ加減が重要になる。艦隊先頭艦である本艦の責務は重い。頼むぞ」

艦長「ハッ!舵・速度このまま!!」

海兵m「..ん..、敵部隊方向変換、とり舵・回頭運動中!」

参謀「方向変換だと、距離・速力は!?」

海兵m「距離12,000から縮まります...減速を確認」

将軍「この距離で...連中、同航戦を仕掛けようというのか?
良かろう、先の指示を取り消す。コースこのまま、同航戦用意!」

艦長「良う候、コースこのまま。左舷合戦準備!」

参謀「敵部隊、回頭を終了、速力そのまま、単縦陣。
...っ!敵部隊上に変化あり、魔法陣の構築を確認」

将軍「やはり魔法を使うか...」

参謀「魔法陣の識別、術式・青、氷術です!
...発動を確認、氷弾来ます!」

艦長「甲板員、退避イっ!総員衝撃に備えぇっ!」

将軍「騒ぐな!この距離で初弾命中など、そうそう有りはせん!」

ザァァァァッン!ザパァァァン!ザパァァァン!

参謀「遠弾!」

艦長「本艦に損害無し!」

将軍「砲戦能力は互角かな。
砲術長、こちらも始めてくれ」

砲術長「この距離なら、緩射で一斉射ち方も可能です」

将軍「いや、一時的であっても砲動力に支障を来すのは不安が残る。単発射ち方でよかろう」

砲術長「ハッ!第一・第二主砲、単発射ち方用意!
...徐に打てっ!」

砲台長「単発射ち方・右から、始め!」
ドォォォン!ドォォォン!

新しいな

いいねこの世界観。期待。

ガァァァァン!ザァァァァッン!ザパァァァン!

参謀「少ないながら双方に命中弾がでてきました。ですが、さすがは新鋭艦、目だった損害は未だ有りません...将軍?」

将軍「...砲術長、独立射ち方に変更。
それと.....。下で指揮を執ってくれ」

砲術長「ハッ、砲術長、下で指揮を執ります!」

―――

海王(魔型)「...皆、良くやっているようだな...
識別弾はそろそろだが...来た!」

[浮上開始]

海王「人間よ、如何に科学を発達させ、我らを上回る力を得たとしても、魔国への侵入は絶対にゆるさぬ...」

[浮上]ザパッァァァァァン!

海王「魔族四天王が一人、海王・クラーケン推参!
旗艦、もらったぁぁぁぁっ!!」


海兵m「っ!右舷・至近距離に敵浮上っ!!!」

将軍「見えているよ、海王・クラーケン」

砲術長「右舷副砲、斉射っ!」

ド・ドドッ・ド・ド・ドドォォォンッ!

海王「ガァァァアアアアアアッ!

くそぉぉぉっ!まだまだぁぁぁぁっ!!!」バァァッァーン!

艦橋一同 ウワァァァアッ!

参謀「...あ・・・命中弾多数っ!敵、海中に没します!」

艦橋一同 オオオオオオッ ヤッタァッ!

将軍「騒ぐな、周囲警戒を怠るでない!至近の敵が一体だけとは限らん!!
損害報告、艦長!」

艦長「ハッ、見張り、警戒を厳とせよ!
...将軍、第二主砲塔に損害、使用不可能、砲術科員に負傷者多数。
航行には支障有りません」

参謀「...肝を冷やしました...。将軍、それにしても...」

将軍「気付いたのは、つい先程だよ。
なぜ魔族は、日が高く明るい時間帯に現れたのか。
なぜ、速力・運動能力で勝るであろう敵が同航戦をしかけるのか...。どうも気になってな」

参謀「成程、仰る通りです...それで砲術長に?」

将軍「うむ。艦橋からの号令では一拍の間があるからな。訳を話して下に降りてもらった」

―――

本隊指令官・セイレーン「あ・あ・あ...クラーケン様...」

海竜「!っ、司令官殿、狼狽えてはならん。兵が動揺する」

司令「...んッ・・失礼しました。
コースこのまま!攻撃の手を緩めるな!!」

海竜「それで良い。兵に仕事をさせていれば集団は崩れぬもの、手綱を緩めな。其方の仕事は次策を練ること。
それに海王様ならあれしき...」

司令「はい...

(落ち着け、私。考えろ...
...海王様が海中に倒れる前、確かに敵旗艦の後部に一撃を加えた、如何に新鋭艦とは言え無傷ではあるまい...ならば)

海竜殿、本隊を御願い致します。
攻撃を敵二番艦に集中して艦隊の船足を奪い、旗艦を切り離して下さい」

海王「ぬかった...グッ...本隊は...どうした...やはり離脱せぬか[ハァハァ]...あれでは突撃しかねんな..

フフッ..我が策を見抜かれる..か....余程の将が居るようだ...よかろう...」


海竜「何をされるおつもりか」

司令「私は一隊を率いて、機に乗じて孤立する旗艦に近接戦闘を仕掛けます」

海竜「無茶だ!海王様が単身前衛を買って出られた理由は分かっている筈だ」

司令「敵旗艦は、海王様の一撃で後部に損害を生じ、死角が..」

海魔m「司令、敵四番艦に海王様です!」

司令&海竜「!」

―――

参謀「将軍!4番艦が先程の魔族に襲われました」

将軍「何だと!あれだけの砲でも仕留めきれなんだか。
4番艦の損害は!?」

参謀「中央排煙施設と後部主砲塔に損害、なにより深刻なのは喫水下に亀裂が生じたと。修復は困難なようです」

将軍「敵はどうした!?」

参謀「完全に不意を突かれたようで、追撃は出来ませんでした。敵は再び海中へ、所在は不明です」

将軍「迎撃成功で油断し、敵部隊に意識を奪われたか。

艦隊各艦に通達。
海中からの出現前には、気泡などの前兆が必ずある。見落とさなければ、舷側砲で十分に対処できる。
重ねて、全周の警戒を厳とさせよ!」

参謀「ハッ!直ちに」

将軍(敵一体とはいえ、神出鬼没ではかなわんな...単身で前衛攻撃を行っているのは...やはり艦への近接戦闘に耐えられる者が奴だけだからか?

...4番艦が攻撃されたのは...海中で一時、気でも失って...いやっ、4番艦にあれだけの損害を与えられるなら...後部に死角が出来た本艦を襲っても良かった筈..と言う事は!)

将軍「通信士、4番艦には艦隊離脱と退艦も認めると伝えよ!後から拾うと。
それと!艦長自ら私の元に出頭させろ、いいか厳命だ!!

参謀、艦隊を横陣列に組むぞ。
艦長、面舵を。増速して陣形を整えてくれ」

参謀「このタイミングで?
敵部隊に後背を見せることになり危険では?
それにここまで急な艦隊運動は..」

将軍「距離は敵部隊が勝手にとっている、放っておけ!
それに何のための猛訓練か!第二戦隊なら旗艦の動きに気付く!心配無い!
各艦への打電・急げ!」

参謀&艦長「ハッ!」

―――

海竜「海王様、御無事だったか!」

司令(あんなに負傷されて...それでも...敵艦に攻撃を)

海竜「御一同、人間共のおもちゃなど海王様には、通じはせん。このままでは海王様一人で海戦を終わらせてしまいそうだ!
我らも負けておられんぞっ!」

一同 オオオオッ!

海魔m「海王様、再び海中に潜航しました!
...敵四番艦、艦隊からの脱落を確認!」

一同 カイオウサマ バンザァイ!

司令(ここで離脱しても良い筈...敵第一群の損害は3割を超えている...それでも...再攻撃を...まさか!?)

海魔m「敵艦隊・方向変換!回頭中!北へ進路をとる模様!」

海竜「やった、退けたか!?」

司令「っ!だれか海王様を止めて!!離脱を!!だれかぁぁぁっ!!!」

海竜「どうした!?落ち着け!
敵は背を見せているのだぞ、何事だ?」

司令「違う!違いますっ!あの動きは....」

海魔m「海王様、再び敵艦隊中央部に浮上っ!」

司令「ああああああああっぁぁぁ!」

見てる

―――

海王「..先遣隊...上陸隊を...奪えば...敵の作戦目的は根底から崩れる。
とは言え...敵とはいえ...海上で動けず戦闘に参加出来ぬ...陸兵を叩くのは...

[浮上]ザパァァァァン!

これも戦、許せ!」ゴォォォッォン!

将軍「...そうだ。我々の戦略を覆すにはそれしかない。だがね、海王・クラーケン

『我々は君に会いに来たんだ』

全艦っ、砲撃開始!」

砲術長「全砲門、目標・浮上した魔族、
独立射ち方、急ぎ射てっ!!」

ドォォォン!ドォォォン!ドォォン!ドォォン!ドォォン!...

海王「ガアアアアァァァッアアアアアアッ!
ズ・ザパァァァァァァァッン!!!!

(な・輸送艦は...空船だと...図られた...
.....皆離脱してくれ.....セイレーン..すまん...)ゴポ・ゴポ・ゴポ。。。。。

―――

司令(..かいおう・さま......あれほど...おんみを...)フラッ

海竜「司令官、先程言っていたのはこれだったのか!?
あれは一体!?...」

司令「敵は...最初から上陸させる兵など連れてはいなかった...目的は、制海権を握る上で...最大の障害であろう...海王様だった...

だから...これ見よがしに旗艦を見せつけた...輸送艦をさも大事に中央に配置した...あれは...おびき寄せるための...」

海竜「司令官、気を確かに持つのだ、今は」ウッ

司令(かいおうさま、いまおそばに...)

海竜(なんて表情を...)

司令「海竜様、本隊を御願い致します。本隊はこのまま離脱、魔王様へ事の次第を報告して、支持を仰いでくだ」

海竜「瞑・眠」

司令「な...に....を......」パタ

海竜「老将殿っ!」

老将・魔亀「海竜...そなた...」

海竜「我ら海竜一族だけで敵艦隊に攻撃を仕掛けます。
今なら敵は後背を見せています。追撃の好機!

老将殿には、本隊の指揮を...」

老将「離脱し報告せよと。聞いておったよ。
のぉ海竜よ。その役、わしに譲らぬか?」

海竜「失礼ながら、足は我が一族の方が早いので...それに、

今、この娘を失う訳には参りません。
この娘の才能を私は見誤っていました。艦隊の一挙一動だけで、敵の狙いを看破しました...今回は間に合いませんでしたが...

いずれ魔国にとって、必要不可欠な存在となりましょう。老将殿には、この娘の導きも含めて御願いしたいのです。

それに美人の泣き顔は苦手で」クショウ

老将「...わかった、引き受けよう...」

海竜「老将殿には御苦労をお掛けいたします。
それでは之にて、おさらばに御座います。

海竜一族よ聞け!私はこれより敵艦隊を追撃する。志願者がいれば同行を許可する。残る者には今後の魔国防衛の任を与える。どちらを選んでも優劣の差など無い、決して卑下・中傷などするでないぞ。

我らが魔族の前途に光あらんことを!参る!!」

あついな

中尉「...てな事があったそうだ」

軍曹「開戦!?魔族と!!?」

中尉「あれ以来、親父殿(将軍)の姿が見えないと思っていたら、海の上だった。艦隊は先日戻ってきたそうだ」

軍曹「...急な装備改変なんておかしいと思っていました。それにしても魔族とは。
中尉、それで『危なかった』ですか」

兵士A「どういことです?」

軍曹「国民の知らない、いやっ、軍属の私たちでさえ知らされなかった程の機密だぞ。いくら中尉殿が抜け出して探っていたとはいえ、おいそれと分かることではあるまい。

足がつくようなことは、中尉」

中尉「その辺は抜かりな...かった筈だったんだが、ここへ続く道に人影が」ナゼ?

兵士A「まさか憲兵隊ですか?こうなったら...」

軍曹「今のうちに...準備を...」

中尉「...お前達、目が怖いぞ...」

兵士M「軍曹!こちらにいらしたのですか、探しましたよ。
...何をしているんですか?」

兵士A「皆で幸福になるための準備を」

少年「世間一般では簀巻きって言いますよね」

軍曹「なんだ?用事が有ったのではないか」

兵士M「王都より使いの方が見えています。中尉殿にお会いしたいと」

軍曹「使い?中尉殿の部屋にお通ししろ。
兵士A、どうやら憲兵隊では無いようだ。中尉殿を解放して良し」

中尉「NNNNN!」ホドイテェ!

―――

中尉「御待たせして申し訳ない」

使い「いえ、連日の軍務でお疲れのところを、このような深夜に押しかけまして、申し訳ありません。
途中で道に迷いまして、いやはや難儀を...」

中尉「御用件を伺いましょう」ツカレテイルノハ アイツラノセイ

使い「ははっ、やはり軍の方は効率的で素早い。
失礼しました。私の用件は二点。

一つは将軍から中尉殿に、王都への出頭命令が出ています。『説明するから出て来い』と直々に言付かってまいりました」

中尉 バレテル...

使い「もう一つは、こちらに所属している少年を王都に御連れすることです。馬車を用意してありますので、中尉殿も御一緒にどうぞ」

中尉「少年を?何のために」

使い「詳細までは。私は宮仕えの末端にすぎません。
外でお待ちしておりますので、出立の用意が御済みになりましたら、声をお掛けください」

中尉「今からですか?」

使い「ええ、直ぐにです」ニコッ

――― 王都・軍務省

将軍「逃げずにちゃんと出てきたな」

中尉「御命令とあれば!」アセ

将軍「私の留守中、ずいぶんと軍務に精励していたようだな。関係各所から『お褒め』の言葉を頂戴している」

中尉(完全にばれてる)アセアセ

将軍「どこまで知っている?」

中尉「な・ナンノコトデショウカ?」アセアセアセ

将軍「どこまで知っている?」#

中尉「え~と...」アハハハハ アセアセアセアセアセ

将軍「...海戦に関してほとんど知っているじゃないか」ハァ

中尉「申し訳ありません。どうにも気になりまして...」

将軍「まぁ良い。いずれは知る事になったろうからな。
『その後』に関しては知らんようだから、聞かせてやろう」

中尉「それを聞くと、どうにかなりそうなんですが...」

将軍「もう遅い。これだけ知ったのだから腹をくくれ。

海王を討った後、魔族の強襲を受けたが殲滅に成功。
魔族の主要海上兵力はあれが最後だろう。
だがこちらも強襲時に巡洋艦2隻を失い、無傷の艦は皆無の状態だ。

現在、艦隊各艦はそれぞれの母港でドック入り。修復には当面かかりそうだ。よって侵攻作戦は延期される。

これだけの事態だ、隠そうとしてもいずれ漏れる。
お前だけとは限らんからな」

中尉 アハハハハ アセ

将軍「そこで国王陛下とも相談し、事実を公表することになった。公表するのは、
1.『魔族に対し開戦』
2.『海王を討ち制海権を掌握』
3.『近日、侵攻作戦の実施』

そして、『勇者の存在』だ」


中尉「」アゼン

将軍「なんだ、その顔は?」

中尉「...失礼しました。勇者って、あの勇者ですか?」

将軍「他にあるのか?」

中尉「千年以上も前の、英雄譚でしか聞かされない存在ですよ」

将軍「どうやら、未だ分かっていないようだな。
我々は戦争中毒で魔族に対し開戦した訳ではないぞ。神からの御宣託に従っての行動だ」

中尉「御宣託?
...教会の暴走の可能性は無いのですか?」

将軍「滅多なことを言うな、と言いたいところだが。
疑いたくなる気持ちは分かる。だが今回に関しては暴走は無い。
そうで無ければ、勇者などおるまいよ」

中尉「勇者にお会いになったのですか?」

将軍「貴様も既に会っている」

中尉「あの使いが?
何が宮仕えの末端だ。正真正銘のど真ん中じゃないか」

将軍「全く違う。あの使いの正体は近衛騎士だ」

中尉「近衛騎士!?王直属のあの?
ちょっと待ってください。なんで近衛が伝令を...
まさか、冗談でしょ!」

将軍「そのまさかだ。
もし教会が暴走しているのなら、冗談みたいな勇者など存在せんだろう」

―――

王「久方ぶりの再会だな、勇者よ」

少年「さー..じゃなくて...
国王陛下、発言をお許しください!」

王「なんだ?何なりと申せ」

少年「勇者とは自分の事でありましょうか?
また、自分は陛下に初めて御意を得ます!」

王「ん?其方とは数か月前に会っているぞ」

少年「失礼を致しました!気付きませんでした!」

王「少々緊張しておるようだな。
肩の力を抜いて、楽に話して良い」

少年「ありがとうございます!失礼いたします!」ザッ ヤスメ!

王「将軍、鍛えろと言ったが之はやり過ぎでは...」

将軍「」

王「顔を背けるな」

いいスレを見つけました

面白い。期待。

王「神官、勇者の剣を」

神官「これに」

王「勇者、その剣に触れよ」

少年「ハッ!失礼致します」

パァァァァァッ、ピカァ

王「うむ、人違いでなくて良かった。勇者よ、剣を持て」

少年「...あっ!..王様?この剣は...」ヒョイ

王「おおっ、帯刀すると、より勇者としての信頼が増すな」

少年「僕は今まで...何を?」

王&将軍&神官「へっ?」

少年「...段々と思い出してきました」アハハ

王「あまり驚かせるではない。最初からやり直しかと焦ったわ。

さて勇者よ、神からの御宣託により、数か月後に人類は魔国への侵攻作戦を行う。
だが魔王を倒せるのは其方一人。万難を排するため、露払いは将軍率いる軍に任せる。更に其方の近辺護衛には近衛騎士を付けよう」

近衛騎士 スッ ペコッ

将軍「これで軍は侵攻作戦まで、お役御免ですな。
ショ.いやっ、勇者殿、前線でお会いしましょう」

勇者・少年「国王陛下、一つ願いが御座います...」

―――

魔王「良く戻った。魔亀、セイレーン」

魔亀「ハッ、先日の海戦の御報告に戻りました。
詳細に関しては、本隊司令官を務めましたセイレーンより」

セイレーン「御報告いたします。
先日、大陸北方の海上にて王国艦隊と戦闘が行われ、撃退に成功いたしました。戦果は、戦艦1隻、巡洋艦2隻、輸送艦2隻の撃沈に成功、撤退した他の艦艇にも少なからず損傷を与えました。

当方の被害は甚大。主要海上兵力の殆どを失いました。
海竜一族、そして海王様、戦死。

当面は王国の侵攻は無いものと考えられますが、再度同規模の侵攻が行われた場合、海兵部隊に之を迎え撃つ戦力は有りません」

魔王「そうか...困難な任務御苦労であった」ギュ

セイレーン「ひとつお聞きして宜しいでしょうか」

魔王「続けよ..」

セイレーン「魔王様は、海王様が身をもって敵の侵攻を防がれる御積もりだったことを御存じだったのではないでしょうか?」

魔王「..知っていた..」

セイレーン「なぜです!なぜ止めて下さらなかったのですか!?国の為と海王様を生贄に差し出したのですか!!?」

魔亀「セイレーン!」

セイレーン「その玉座に座って高みの見物を決め込んでいたのですか!!」スラッ ダッ

魔亀「血迷うたか!剣を離せ!落ち着け!!」ガシッ

セイレーン「離して下さい!離して!!」

魔王「..離してやれ」

魔亀「魔王様..」スッ

魔王「お前が海王の話していた秘蔵の副官か..
海王が今回の海戦に死を持って臨んだことを他に話す訳もないからな。

セイレーン、死にたいのか?」

セイレーン「っ!」ジワ カラーン

魔王「一魔族が魔王に向かってきても無益なのは、分かっていよう」

セイレーン「...殺してください。
何度も海王様の後を追おうとしました。でも自死はできなかった。魔族としての生命力が、本能が...それを拒むのです。

おねがいです...魔王様なら...私を殺せる筈です。
かいおうさまのおそばに...」ゴウキュウ

魔亀「」

魔王「...海王の後を追うのは暫し待ってくれないか?」

魔亀「魔王様?」

魔王「魔亀、これをお前達に託す」

魔亀「これは?何です。この膨大な予算・計画書は...全て名称が異なっている?」

魔王「海王の発案で始め、私が裏で進めていたものだ」

セイレーン 「?」ビクッ

魔王「使い物になるのに未だ数か月かかるだろう。
だが魔国最後の砦となることは間違いない。

そして、セイレーン。
海王はこれをお前に任せるつもりだった」

セイレーン「...かいおうさまが...」

ここまでだと
魔族を応援したくなるわさ

今のところね

―――

貴族娘a「昼間の国王様の演説、お聞きになりました?
魔族と開戦ですって」

貴族娘b「清浄な世界が遂に訪れるのね」

貴族娘c「神から遣わされた勇者様が居るのですから」

貴族娘a「どう貴族娘c、勇者様の伴侶となれば」クスクス

貴族娘c「確かに勇者様は独身でしょうけど」クスクス

貴族娘b「眼下の旦那様ではちょっとね。折角の宴席ですから、他の殿方を当たりましょうか」クスクス

勇者「ハァ、パーティーとは挨拶のことですか?」ツカレタ

近衛「仕方ありません。貴方は神から遣わされた存在なのですから」

勇者「この数か月、色々な方とお会いしましたが、何で後から後から湧いて出て来るんですか、まるでG..」

近衛「その辺りで」プッ

近衛「勇者様、次の方々で最後です」

?「勇者様、今回は直接の御指名とお聞きいたしました。
名誉ある任をお与え下さり光栄に存じます」

??「子々孫々に誇る名誉に御座います」

勇者「兵士Aさんじゃないですか!?それじゃぁ」パァッ

近衛「はい。陛下が勇者様の願いをお聞入れ下さりました。
所属していた部隊は勇者様直属となります。部隊の指揮は従来どおり中尉殿がとることになりますが、最大限、勇者様の意を酌んでくれる筈です。
今後の護衛は御二方が務める事になります」

兵士A・??「勇者様、先日までの数々の無礼の段、お許し願いますように」

勇者「何を改まっているんですか。以前どおりで良いですよぉ」ニコニコ

?「そうは参りません。神から遣わされ、王国の要たる貴方を蔑ろにはできません。

兵士Aも折角の御言葉ではあるが弁える様に。

お気持ちだけ、ありがたく頂いておきます」

勇者「え~と、こちらの男装の麗人はどちら様でしょうか?」

兵士A「」イッポ サガリ

勇者「部隊はもちろん、訓練施設の方々も全て男性ばかりでしたし」ウーン

兵士A「」ニホ サガリ

勇者「教官たるブラックな鬼軍曹を筆頭に、正に匂いたつが如く...」ニコニコ

近衛&兵士A「」カクレ

?「暫く見ないうちに王都で随分と丸くなられたようで...」##### ピキッピキッピキッピキッピキッ

勇者「?」

軍曹・?「私は軍曹だ!訓練中、お前は私を何だと思っていた!!!再教育してやる!!!!」ドカァーン

勇者「」ボロ

兵士A「おい、大丈夫か、おぉぉ~い」

近衛(軍曹が居れば、勇者要らないんじゃ)

軍曹「ふん。
失礼しました近衛殿、以後の護衛を引き継ぎます」

近衛「確かに、後を御願い致します」
(この人とは仲良くしておこう)アハハハ

兵士A「お前、本当に気付かなかったのかよ」ヒソヒソ

勇者「まさか女性だったとは」ヒソヒソ

兵士A「部屋や生活の諸々で一緒になった事なかったろう」

勇者「だって、そんな素振りなんか..」

兵士A「そりゃ軍曹だからな。体型から分からなかったか?」

勇者「全く」

兵士A「かもしれないなぁ」

軍曹「何か」クル ギロッ

勇者&兵士A 「なんでもありません!」ガクブル アオザメ

貴族娘a「ちょっと、あれ見て」

貴族娘bc『なになに?』

貴族娘a「勇者様の隣」

貴族娘b「さっきまでの近衛様と違うじゃない」

貴族娘c「もう一人は目の穢れにしかならないけど」

貴族娘a「鋭い目付きであって、その奥の深い瞳」ハァー

貴族娘b「スラリとした体形でいて、逞しく」キュゥン

貴族娘c「周りの花々も霞む、優雅さを備えた佇まい」ウットリ

貴族娘abc『素敵な殿方ァ~』ハァト

軍曹「ちょっと行ってくる」#

勇者「待ってください。落ち着いて。軍曹殿っ!
兵士Aさん、止めるの手伝ってください!」

兵士A「目の穢れ...穢れ...」アハハハハハh

勇者「パーティー、園遊会、etc、この人達なにをこんなに挨拶する事があるんでしょうね」

兵士A「お偉方には、下々たる俺達には分からない事情が有るんだろう。
いまや勇者になったから下々じゃないか」

勇者「やめて下さい。僕は何も変わってませんよ」

兵士A「確かに寸法は一切変わってないか」

勇者「うっ。
..このパーティー、魔国侵攻作戦に関する催しでしょ?軍上層部の激励なら分かりますけど、あの人達、そっちのけで飲み食い・談笑、挙句に会場でクルクル回ってますよ」

軍曹「勇者様は踊られないのですか?」

勇者「様はやめて下さい、さまは」ナミダメ

軍曹「そういう訳にも...まぁ良いか内輪だけなら。
それよりさっきの話だが勇者は踊らないのか?」

勇者「あのクルクルって、踊っているんですか」

軍曹「ダンスを知らないのか。この先、知らないでは済まない場面も出て来るぞ。

私が教えてやろう。基本だけでも出来るようになっておけ、ほらっ」

勇者「わっわっ・のわっ...」

軍曹「添えた手から、相手の動きを読み取ればいい、ゆっくり...」

勇者「はい...あれっ...軍曹って///」ポォ

貴族娘a「ちょっと勇者様一行みて」

貴族娘b「踊ってる。素敵~」

貴族娘c「ねぇ、もしかして本当の勇者様って、あの御付きの方なんじゃないの?」

貴族娘a「まさかぁ、昼間の国王様が大々的に紹介していたわよ、あの小動物を」

貴族娘c「御付きの方のステップよく見てよ」

貴族娘b「本当だ。じゃぁ小動物の方は何よ」

貴族娘c「う~ん...色小姓?」

貴族娘abc『ノーブルな御趣味ぃ!』キャキャキャ


軍曹(がまんがまん)###

勇者 /// ドキドキ

兵士A(軍曹殿が男性のステップを踏んでいるのが原因です)

―――

参謀「出港準備完了しました」

将軍「御苦労。予定はどうなっている?」

参謀「現在の所、遅延はありません。

本艦は出港後、近海上で先に出港した巡洋艦3隻と第1戦隊を編成します。
他港で修理・補給を行っていた戦艦2、巡洋艦2で編成される第2戦隊とは大潮流手前で合流します。

陸上部隊を収めた輸送艦、補給艦、護衛の巡洋艦1で編成される第3戦隊は、艦隊に数日遅れて後を追うことになります」

将軍「第3戦隊が手薄になってしまったな」

参謀「先の海戦で戦闘艦を3隻沈められましたから、やむなく護衛の巡洋艦を引き抜かざるを得なくなりました。
しかし敵に、前回以上の作戦展開可能な海上兵力は存在しないでしょうから、問題は無いと考えます」

将軍「敵を侮るつもりは無いが、私も同意見だ。

勇者を本艦に乗せているからか、つい神経質になってしまってな。
それでは、艦長、出かけようか」

艦長「ハッ、タラップ収納!..舫いとけ!..碇上げ!
旗艦発進する、微速前進!!」

―――

海魔m「魔亀様、王国近海を偵察している部隊から連絡、王国艦隊出撃とのことです」

魔亀「来たか。
セイレーン、こちら側の状況はどうなっておる?」

セイレーン「進捗状況は約八割。稼働に問題はありません」

魔亀「試験を行いたかったが、ぶっつけ本番でやるしかないのぉ。セイレーン、作戦はどうする」

セイレーン「お任せ下さるのですか」

魔亀「大まかな指揮は儂が執るが、特に戦術面などは其方の方が適任じゃろう」

セイレーン「有難うございます。では僭越ながら、

王国艦隊は今度こそ上陸部隊を引き連れて南下して来るはずです。前衛は戦闘艦、後方に輸送艦の単純な陣列に成るはずです。

現在の我々は戦闘艦隊に対する打撃力が乏しく、これを防ぐことは不可能です。
そこで少数の部隊で構いませんので、敵艦隊の射程距離外から後方の輸送艦、上陸部隊を狙う動きをとって下さい。実際の戦闘は行いません。

簡単に言えば、嫌がらせを続けると言う事です。
敵には時間稼ぎに見えれば上々です。
本当の目的は艦隊を引きずり回して、私達との会敵地に引き寄せることです」

魔亀「ふうむ、良さそうじゃな。手配しよう。
それにしても敵ながら気の毒な」

―――

勇者「ここ数日は特に揺れているというか、向きも細かく変わっているような気がしますが」ウンドウ

軍曹「魔族の部隊が何度か姿を現している・らしい」キントレ

兵士A 「」

勇者「戦闘は起きていないようですが?」

軍曹「後方の上陸部隊に近づかないように、その度に追い払っている・らしい」

兵士A チーン

勇者「大丈夫ですか兵士Aさん」

軍曹「折角、司令官用の居室をあてがってもらっているのにもったいない」

兵士A「...どうして二人とも平気なんですか...」

勇者「さぁ?」

軍曹「気合の問題?」

兵士A(勇者<-小さいから転がりやすい人生、軍曹<-規格外)ウップ

参謀「左15度、敵部隊を視認!」

将軍「またか、これで何度目だ?」

参謀「今回も射程外を移動中です。追っても逃げられるだけです。無視しますか?」

将軍「そうもいくまい。万が一にも上陸部隊に被害が出れば作戦が根底から覆る」

艦長「将軍、このままでは燃料の残量が心配です。後方から補給艦も来ていますが、数日遅れです」

将軍「仕方ない。艦長、戦隊の進路を変更して、対応の構えだけ見せておいてくれ。今回もそれだけで去っていくだろう。
参謀、ここから、もっとも近い南大陸の上陸地点はどこになるか」

参謀「この古地図どおりならココ、大陸突端部になるかと」

将軍「各戦隊に上陸地点を打電、第2戦隊にはこちらに集結するよう連絡してくれ」

参謀「ハッ、直ちに」

将軍(時間稼ぎのつもりか?
海王亡き後、将が変わっていることは確かだが、いやらしい策を使ってくる。逆にこちらの神経がすり減らされるとは)

参謀「第2戦隊が集合してからは、敵の姿が見えなくなりました」

将軍「やはり時間稼ぎだったか」

海兵m「前方水平線上に影が見えます!」

参謀「あれは山でしょうか...。
近代になってから初めて視認する南大陸になります」

将軍「遂にここまで来たか」

海兵m「報告、水平線上の影が動いています!」

参謀「見間違いではないのか?あの大きさのものが...動いている...」

将軍「落ち着いて観測を続けよ!直に全容が知れる」

参謀「塔のようです。船体の上に塔を載せているようです」

将軍「大きさは分かるか」

参謀「全長はこちらに正対しているようなのでわかりませんが、塔の高さは50m近くありそうです。

将軍「他に艦影は見えるか?」

海兵m「他の艦影は見えません!前方のあれ一つだけです」

将軍「敵の考えがいずれにせよ、魔族も戦闘艦を用意したようだ。だが数を揃えることは出来なかったようだな。

艦隊各艦に打電、合戦準備。
第2戦隊を右翼に!平陣列を組み敵艦を挟み込むぞ」

艦長「ハッ、右舷合戦準備!機関戦闘速度へ!」

―――

魔亀・艦長「ものの見事、王国艦隊の正面に出たの」

戦術長・セイレーン「そのように誘導しましたから。加えて手持ちの燃料も心許なかったのでは」クスクス

魔亀(怖い怖い、美人は怒らすものでないな。つくづく家のカミさんが美人でなくて良かったと思うわ)

戦術長「王国艦隊もこちらに気付いたようです。艦隊を二分して挟撃してくるようです」

魔亀「うむ、如何いたす?」

戦術長「こちらは1隻だけです。採り得る策は多くありません。敵の主戦力たる戦艦を一隻づつ沈めていきましょう」

魔亀「距離20,000mで良いのか」

戦術長「試験も十分ではありませんし、戦略的な意味も含めて、その距離が最善と考えます」

魔亀「分かった。戦術長、射撃指揮所にて砲戦指揮を執ってくれ」

戦術長「承知しました」

魔亀「艦長より全艦に達す、対艦戦闘。
射撃指揮所・指示の目標」

戦術長「測距始め。

本艦左舷の戦隊を第一群、先頭の戦艦から目標1、目標2。
右舷の戦隊を第二群とし、戦艦を目標3と標識。
他の艦を群別に目標11、目標21、以降順別に標識」

魔族m「測距および標識を開始します!」


海魔m「艦長、敵との距離が22,000を切りました」

魔亀「操舵手、面舵!」

海魔m「面舵、良う候!」

―――

海兵「勇者様、戦闘が始まります。万が一に備え司令塔へ移動願います。自分が案内いたします」

軍曹「勇者、移動を。兵士Aも行くぞ!」

勇者「さぁ~っいえっさぁ~!」
兵士A「サーッ・イエッサーッ!」


将軍「随分と巨大な艦だな」

参謀「本艦の2倍は有りそうです。ですが砲数ではこちらが圧倒的に上回っています。御懸念には及びますまい」

将軍「うむ。海上の移動城とは恐れ入る。
連中の最後の砦であることは間違いない。優位を占めているとはいえ、侮らぬようにな」

参謀「ハッ」

海兵m「敵艦、方向変換!面舵です!」

将軍「この距離で?奴ら本戦隊の頭を押さえ..

魔族m「敵艦隊第一群までの距離、まもなく20,000」

戦術長「全主砲、弾種・九一式徹甲、装填!」

魔族m「装填開始...装填完了!」

戦術長「目標1に照準っ」

魔族m「...全主砲、射撃準備良し」

戦術長「全主砲・斉射、打ちぃ方始め!」

ドゴォォォォォォォォォン!!

海兵m「敵艦発砲!」

将軍「どちらだ!?」

海兵m「第二戦隊が狙われました!」

参謀「第二戦隊?距離にして未だ20,000近くあるはず」

ズバァァアッァアッァァァァン!!

海兵m「着弾!!1番艦付近です」

参謀「何だっ!?あの水柱は!!」

将軍「1番艦の安否を確認!」

海兵m「水煙で視認できません!

...見えてきま..、そんな...あ・あ...」

参謀「しっかりしろ!報告!」

海兵m「い・1番艦、撃沈されました!!」

参謀「馬鹿な、初弾だぞ!!見間違えではないのか!?」

海兵m「間違いありません!2つに折れて沈んでいきますっ!!」

将軍(この距離で..初弾を命中させた、だと..)

参謀「将軍、巡洋艦の主砲なら最大射程が18,000あります。距離さえつめれば..」

将軍「遺憾ながら作戦を中止する!

全艦、煙幕を張りつつ、一斉回頭!
回頭後に戦隊を解散、各個の判断で戦域を離脱せよ!」

参謀「っ!将軍!、未だ損失は1隻で..」

将軍「通信士!各艦への打電急げ!!

参謀、気付かんのか!?
奴らは、我々の射程外から、『戦艦』を一撃で撃沈してのけたのだぞ!

砲の性能は元より、艦の防御能力の基準が何によって決まっているのか、落ち着いてよく思い出せ!」

参謀「あっ」

艦長「取り舵・いっぱぁい!全速回頭!!」

戦術長「 ...?」カシゲ

魔族m「どうかされましたか」

戦術長「初弾で当たるとは..」

魔族m「照準しましたから」

戦術長「まぁ、そうなんだけど。
斉射すると着弾修正ができないな。

目標2に照準っ!
第1主砲から順次に斉射、打ちぃ方・始め!」

艦長22・第二戦隊2番艦「1番艦沈没地点を反時計回りに迂回、後に取り舵!
残る煙霧を利用して敵艦との距離を詰める!」

海兵m「将軍からは、回頭・離脱命令が出ていますが!?」

艦長22「あの化け物が易々と本艦を逃すものか。
次弾は本艦に来る!全速で距離を詰めれば照準も狂う!」

海兵m「敵艦発砲!」

艦長22「総員衝撃に備えっ!」


ザァァァン!ザァァァン!ザァァァン!

海兵m「近弾!本艦に損害有りません」

艦長「よし!やはり先の命中弾はまぐれか。
機関最大!煙霧に飛び込む、急げ!!」

戦術長「主砲、打ち方やめ。照準修正を行え!」

魔族m「敵艦隊、煙幕を張りつつ一斉回頭!離脱するようです」

戦術長「打つ手が早い。いやな将ね」

魔族m「目標2が沈没地点の煙霧に紛れます。動きがやや遅いのは、機関に損害を与えたのでしょうか」

戦術長「いえ、沈没地点を回り込んで、肉薄するつもりでしょう。照準修正はどうか」

魔族m「修正作業、終了しました」

戦術長「全主砲、照準・目標2、沈没地点の煙霧から出て来るところを狙え。予想出現地点やや手前、至近弾を送り込む!」

魔族m「手前ですか?」

戦術長「そう。ちょっと試したいことがあって...。

そろそろ目標2が顔を出す頃か。
全主砲・斉射、打ちぃ方・始め!」

海兵m「煙霧から抜けます!」

艦長「取りかぁj」

ザッァァァン!

海兵「.着弾至近!」グッ

艦長「本艦の意図を見抜いたか。だが、この速度では当たr.」

魔族m「目標2、爆沈!」

戦術長「狙い通..り?」カシゲ

魔族m「直撃ではなかったはずですが」

戦術長「徹甲弾の弾頭本体が平頭になっているのは、着水後に水中を推進する特性を持たせる為。

今のは、艦そのものではなく、手前に弾着させて水中弾効果を狙ったもの。直撃させるより、面単位で敵を狙えるから効果的だと思ったんだけど..」

魔族m「?狙い通りではなかったと」

戦術長「思ったより走らなかった気がする。第1射の時にも感じたんだけど、遅動信管にでも問題があるかな。
戻ったら再試験にかけないと。

さて、これで残る戦艦は1隻だけ」

勇者「あ..あっ...」

兵士A「戦艦が次々に..」

勇者「人が...海の中に...沈んで...」

軍曹「落ち着け!この艦は回頭を終了している。大丈夫だ!逃げ切れる!」

勇者「このままでは、みんな...みんな?
軍曹も兵士Aさんも...!」ダッ

軍曹「どこへ行く!?勇者、戻れっ!」

参謀「艦隊の..いえっ、王国の戦艦は本艦1隻だけとなりました」

将軍「敵の狙いは戦艦だけか。新将の顔を見てみたいものだ」ニヤ

参謀「将軍、このままでは..」

将軍「艦のことは艦長に任せておけば大丈夫だ。司令部が青ざめていては、示しがつかんぞ」

海兵m「敵艦の主砲がこちらを向きました!」

艦長「発砲したら知らせよ!
操舵手、合図とともに面舵をきれ!」

海兵m「敵艦発砲!」

艦長「面舵いっぱぁい、右停止!左最大!回避運動!!」

勇者(このままでは、みんなが。
僕は勇者のはず。何か出来るはずだ。この剣を帯びたときに光ったのだから。御願い、剣よ、力を!)

ヒュウゥゥゥゥゥ!

勇者(砲弾が....御願いだ!今だけでも、御願い!!!)

軍曹「危ない、勇者っ!!」ダキッ

―――

少女「起きろぉぉぉ!」

ミズザパァッ!

勇者「わっわっ、何、何っ!」ズブヌレ

少女「目が覚めた?」

勇者「目が..覚めた..?何だ、夢だったのかぁ..」ホゥ

ミズザパァッ!

少女「寝ぼけるなぁ!寝言は寝てから言えぇ!」

勇者「君は僕が寝ていると思っているんだろ。だったら寝言を言っても良いじゃないか!」ズブヌレ

ミズザパァッ!

少女「だ・か・らぁ# 起きろと言ってるの!」

勇者「水を何回もかけないでよ。このままでは起きる前に溺死しちゃう!だいたい...君は・誰?」ポタポタ

少女「よし起きた」

勇者「ここは一体どこ?僕は一体...」

少女「まだか」セエノ

勇者「起きました!起きてます!水は止めて!」

少女「ようやく話ができそうね」

勇者「たしか僕は軍艦に乗っていて、そこで」

少女「それ!まず文句から言う!そこに正座!!」

勇者「はい」チョコン

少女「あんたね、お伽噺の中の登場人物にでもなったつもり!?
剣に御願いしたら、未知の力が溢れて、みんなを助けてくれるとでも思ったの?」

勇者「思ってしまいました」

少女「馬鹿じゃないの!?
鉱物がちょっと付いた金属の塊が、1.5トンもの砲弾を防ぐか!!
少しは科学的に物事を考えろぉ!!」

勇者「それだと色々と問題が」アセアセ

少女「それに剣が光ったから勇者?
ふざけるなぁぁぁ!剣だって偶には光りたくなるわぁ!!」

勇者「科学はどこへ」アセアセ

少女「楽しくなってきたから、このまま小一時間、問い詰めたいところだけど、話が進まないので、この辺りで切り上げて進ぜよう」フンス

勇者「ありがたき幸せぇ」フセ

少女「勇者」

勇者「やっぱり僕が勇者なんだ」

少女「あんたが自分で勇者だと言ってたじゃない。このまま押し通す!
あらためて勇者、今回の事どう思う?」

勇者「戦争が始まったこと?」

少女「あんた自身の事。山奥から出てきて、海の上に連れ出されたこと」

勇者「う~ん。最初は戸惑ったり、しんどかったり、と忙しく過ごしたけど、色々なことを知ることが出来て良かったかな。特に多くの人と出会えたのは楽しかった。山奥では、人の数が限定的だしね」

少女「世界がひろがった?」

勇者「うん。教会や学校で聞く話とは違う事ばかり。
..でも魔族の怖さだけは真実だった」

少女「魔族が怖い?」

勇者「人を越える力や能力を持っている存在が襲ってくるんだよ。怖いよ」

少女「でも今度の戦争は、人が手を出さなかったら、魔族は襲ってこなかったんじゃない?」

勇者「...そうなのかな...分からない。

神様はどうして、人と魔族を同じにしてくれなかったんだろう?そうすれば..」

少女「世界に争いは無かった?」

勇者「...それも分からない...分からない事、知らない事だらけだ、僕...」

少女「それじゃぁ、どうする?
知識を探す?あきらめて逃げ出す?」

勇者「探したい。もう山奥で無知なままの昔には戻れない」

少女「よかった[ニコッ]

あんたが、さっき言っていた『魔族が人を超越しているのは?』、これ宿題にするから考えておいてね」

勇者「えっ?」

少女「あんたが馬鹿をしでかさなければ、予定通りだったのよ」

勇者「ごめんなさい...予定通り?」

少女「今回だけは、主義を曲げて干渉したから、時間が限られてるの。
これからは、よく考えて行動してよね。

それじゃぁ・ね」ミギストレート!

勇者 X キュゥ

少女「宿題、忘れないようにね

アンテン

おつおつ

―――

魔族m「目標手前の空中で爆発!」

戦術長「何!?砲弾の信管不良か?!」

魔族m「目標手前に光が、光の壁が広がっています!」

戦術長「あれはなんだ...?」

魔亀「艦長より射撃指揮所。戦術長、攻撃やめ」

戦術長「艦長?なぜです。王国艦隊を殲滅するチャンスです!」

魔亀「分かっている。だがこれ以上追い詰め、窮鼠たらしめて、全艦が一斉にかかってきたら、本艦も無事には済むまい。副砲設置予定箇所はハリボテ、他も未完成では不安だ」

戦術長「..そうでした。侵攻を断念させただけで良しとするべきでした。

艦長、理由はそれだけではありませんね。あの光が、何か御存じなのですか」

魔亀「あれは、勇者だけが使う『光』の術式だ」

兵士A「艦内を隈なく捜索しましたが、勇者様と軍曹は発見できませんでした」

将軍「そうか、御苦労だった。下がって宜しい」

兵士A「ハッ」

将軍「...待て、気落ちせんようにな。責任は作戦を失敗させてしまった私にある」

参謀「..将軍」

兵士A「サーッ・ノーサーッ!
ですが、お言葉ありがたく頂きます。失礼します」

参謀「我々は勇者様に救われました。もし勇者様がいなかったら本艦は、いえっ、艦隊は全滅していたかもしれません」

将軍「うむ。..我々の驕りが、勇者様の命を奪ったのかもしれん」

参謀「まさか魔族が、あれ程の艦を用意していたとは」

将軍「今思えば、海王がなぜあのような戦術をとったのか、分かる気がする。あれは、あの艦の完成の時間を稼ぐためだったのではないかと、な」

参謀「はい。いずれにせよ対策を急がなければなりません」

将軍「その対策も、いったい何年かかることか。頭が痛いな」タメイキ

―――

?「..ユウシャ...ユウしゃ...

勇者(僕を呼ぶのは...だれ...)

?「..ゆうしゃ...ゆう者...

勇者(..この声は..)

軍曹「勇者!」

勇者「!」パチ

軍曹「しっかりしろ!勇者!」シキン

勇者「わっ・わっ、軍曹!ちかっ」ザザッ アトズサリ

軍曹「ふ~。大丈夫なようだな。
息をしていなかったから焦ったぞ」

勇者「大丈夫です、ご心配を...
息をしていなかった?」

軍曹「そうだ。息をしていなかった。だから...」

勇者「軍曹が...手当を(人工呼吸:キス)」

軍曹「..ん、ああっ。手当か(無呼吸連打:ビンタ)。したぞ、緊急だったんだ。気にするな」

勇者(えーえーっ!軍曹と!..いや、手当だったんだ..意識がなかったんだ..だけど、...頬が熱い...)ジンジン

軍曹(とっさの事とはいえ、力が入り過ぎただろうか。そう言えば、少々顔の輪郭が変わっているように見える・かな。いやいや、手当だ手当!)ドキドキ

勇者&軍曹「!」メガアッタ

勇者 /// メヲ アワセラレナイ

軍曹 orz ハンセイ

軍曹「ところで、これからどうする?」

勇者「そう言えば此処は?それより皆は!?」

軍曹「皆の消息は分からない。気が付いたら、この海岸に倒れていた。
此処は、おそらく南大陸のどこか・だろう」

勇者「南大陸..それじゃぁ」

軍曹「魔族の本拠地だ。どうする?
私の任務は、お前の護衛だ。どこでも付き合うぞ」

勇者(軍曹らしい。...僕の任務は魔王を..

!、『これ宿題にするから』。

そうだ。今までの知識だけでは何も分からないままだ。僕が何者で、何を成すべきなのか。

まずは知らなくちゃ!)

軍曹「ところで、これからどうする?」

勇者「そう言えば此処は?それより皆は!?」

軍曹「皆の消息は分からない。気が付いたら、この海岸に倒れていた。
此処は、おそらく南大陸のどこか・だろう」

勇者「南大陸..それじゃぁ」

軍曹「魔族の本拠地だ。どうする?
私の任務は、お前の護衛だ。どこでも付き合うぞ」

勇者(軍曹らしい。...僕の任務は魔王を..

!、『これ宿題にするから』。

そうだ。今までの知識だけでは何も分からないままだ。僕が何者で、何を成すべきなのか。

まずは知らなくちゃ!)

勇者「南大陸を旅したいと思います。

敵..じゃなくて魔族について知らなくちゃ、いけないと思うんです。海上で出会った魔族は、語られてきた姿とは、全く違って。あれだけの船を作り上げる知識を持っていたんです。

人類は..いえっ、僕は何も知らないんです。だから..」

軍曹(!..ほぉ、何があったのやら...まさかとは思うが、手当で致命傷を与えたか?[マズイ]

..まぁ良いか。こいつが、急に男の顔をするようになるとはね)クス

勇者「だから、旅で色々と学びたいんです!」

軍曹「分かった。
ところで、旅をする為に必要なことは知ってるのか?」

勇者「...知りません...」シュン

軍曹「そんなことだろうと思った。
水・食糧、旅装などの装備が必要だ。不幸中の幸いにも、
沈んだ艦からか、装備が浜辺に流れ着いている。

まずは、使えるものを拾い集める事から始めるぞ!」

勇者「サーッ・イエッサーッ!」



おわり

>>139 二重書き込み orz

途中でレスをくれた方々に感謝!
最初の数日、何の反応も無く、新年早々に枕を涙で濡らしていました。

本スレタイはこれで終わりですが、続きを今書いている最中です。
HTML依頼は、続編スレを書き込んだ後に行う予定です。

読んで頂き、ありがとうございました。



あえて侵攻の発端とか書かなかったのは
こうゆうことね
納得

おつおつ、ROMが多いのは仕方ない
面白かった。続き期待してる


ROMってるけど毎日更新確認してるから安心しろ

見てるよー。
面白かった。続編立ったら教えてください。

一応保守

感想、保守、書き込み
本当にありがとうございます。

ノートPCが重力に魅かれてしまい、
時間がかかってしまいましたが、
日曜迄には、何とかしたいと
もがいている最中です。

楽しみにしてるけど、焦らんでもいいで

続編を立てました。
宜しければ、御覧下さい。

ある勇者の決断 中佐「勇者? ...昇進..ですか?」
ある勇者の決断 中佐「勇者? ...昇進..ですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1392558371/)


現在、サーバーが混雑しているようなので 3以降は月曜日に書き込む予定です


復活したので、続編の投下を再開しました

続編が終了したら、本スレのHTML化を依頼します

HTML化を依頼しました。

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