淡「陽に照らされて星は輝く」(976)

原作設定や原作展開を無視してオリジナル展開や独自解釈があります
あくまでパラレルワールド的に捉えてください
麻雀そのものは弱いので、その辺は結構適当です。積み棒計算はできないので省きます

淡「ツモ。6000,3000」

プロ子「む……」

妹子「うぅ……」

爺「ほほ、これはこれは」

爺「終局じゃな。また淡のトップか。うむうむ、それでこそじゃ」

プロ子「本当に、お孫さんの実力は目を見張るものがありますね。これでまだ中学生とは、
将来が楽しみです」

爺「応とも。この子の両親は牌に触りもせず会社を大きくすることばかり考えておったから、
孫の代には期待しておらなんだが、よもやこれほどの逸材があの二人から産まれるとは。
ワシの遺伝子が受け継がれておる証拠じゃの。見てみい、ワシとて現役プロの君と比べても見劣りせん戦績じゃ」

プロ子「大星さんも、もう四十歳若ければスカウトがきていたでしょうね」

爺「ほっほ。言うようになったのう。――それに比べ、お前はなんじゃ妹子」

妹子「うっ……」ビク

爺「半荘五回打って全てラスとは……情けない。それでもワシの孫か?」

妹子「ご、ごめんなさい……」

爺「まあ、プロになるというワシの夢は淡が遂げてくれるじゃろうし、もうそれでよいわ」

淡「……」

淡「じゃあ、私部屋に戻って少し休むね」ガタ

爺「ああ待ちなさい淡。お前、本当に今年のインターミドルには出んのか?」

淡「……うん」

爺「何故じゃ。史上初のインターミドル個人戦三連覇……お前なら容易かろうに。のう、プロ子さん」

プロ子「確かに、貴女の実力は中学生の内では頭抜けているわ。絶対とは言わないまでも、
おそらく三連覇もできると思うわ」

淡「……だから嫌なのよ」ボソ

爺「む?」

淡「なんでもない。今年受験だしね、勉強しないと」

爺「……まあ、お前がそう決めたのなら強要はせんが。なら淡、お前どこに進学するつもりじゃ?」

淡「まだ決めてない。別にどこでもいいよ」

爺「そりゃいかん。高校は名門麻雀部のあるところに決まっておるじゃろう。高校で名門といえば……千里山なんかどうじゃ? あそこは強いぞ。ちょうど近くに別荘も持っておるしの」

淡「いやだよ、大阪なんて。東京から出る気はないから」

爺「そうか? じゃったら……やはり白糸台かのう。昨年は優勝しておるし、なにより昨年、強力な一年生が入ったらしいしの」

淡「強い一年?」

爺「うむ、確か名前は……宮永照、とかいったか」

淡「知らない。どうでもいいよそんなの。じゃあ私戻るから」ガチャ

爺「おい淡、進学先は白糸台でいいんじゃな?」

淡「まだ決めてないってば」バタン

自室

淡「はあ……」ゴロン

淡(インターミドル……やっぱり出るべきだったかな。もしかしたら今年は……)

淡(ううん、どうせ同じだよ。私より強い人なんているわけない……)

物心ついた頃から祖父の趣味の麻雀に付き合わされていた私は、気がつけば祖父を超えていた。
祖父は私のために家にプロを呼んで指導させてくれた。強い人と打つのは楽しくて、もっと強くなりたいと思った。それは私が一番麻雀を好きだった時期だ。

淡(……でも、二年前)

中学に入った私は一年生で麻雀部のレギュラーを取り、インターミドルに出場した。

――そして、愕然とした。同年代の子たちの、あまりの弱さに。


一年間戸惑い続けた私は再びインターミドルに出場して……結局、期待は落胆に散った。

淡(私と互角に戦える人なんてどこにもいなかった。全国にさえ)

淡(中学の麻雀部の皆は私を怖がって誰も私と打ちたがらなくなって、三年生に上がる前に私は退部した)

その時に私はようやく気付いた。私は他人とは違うのだと。
まるで星のように、見上げてくれる人はいても、隣にいてくれる人はいないのだと。
そうと気づいたら、もう麻雀なんて楽しくもなんともなくなった。麻雀への情熱も、すっかり冷めてしまっていた。

淡「プロ、かぁ」

淡(正直、プロの道にそこまで魅力を感じないんだよね)

 確かにプロには私より強い人も大勢いるだろう。彼女らと打っている間は、きっと楽しく麻雀に没頭できると思う。

 でも、五年後、十年後はどうか?
 断言できる。十年もすれば、私はきっと世界最強の雀士になる。数多のプロを足蹴にもかけない、最強の打ち手に。

淡「……そんなことになったら、私はどうすればいいの?」

 そしてきっとその時こそ、私は真の意味での孤独を味わうことになると思う。

淡「そんなのは……やだ」

淡「そんな思いを味わうくらいなら、もういっそ麻雀なんて……」


 祖父は猛反対するだろうが、別にいい。だいたい、祖父は自分が遂げられなかった『プロになる』という夢を私に押し付けているだけだ。

淡「あれだけ手加減されて、わざと指し込んでもらってるっていうのに、『現役プロに見劣りしない戦績』だなんて、馬鹿みたい」

 そんな人に私の進路をとやかく言われる筋合いなんてない。
 別に白糸台に入らなくたっていい。どこの麻雀部に入ったって同じだ。
 ただ、その年の優勝校が変わるだけ。

 もう麻雀なんて、どうでもいい――。

淡「……イライラするなぁ……」


 翌年
 私は高校生になった。祖父の強い希望で、結局白糸台高校に入学することになった。

友「大星さん、おはよう!」

淡「おはよ」

友「ねえねえ大星さん、もう入る部活決めた?」

淡「うーん……一応、麻雀部に入ろうかなって」

淡(てか、おじいちゃんに絶対入れって言われたしなぁ……)


友「あ、大星さんもなんだ。私もだよ!」

淡「友ちゃんも?」

友「うん。やっぱり白糸台って言ったら麻雀部だよね。インハイ二連覇だよ、二連覇。すごいよね」

淡「あー……うん、そうだね」

淡(ふーん、二連覇してたんだ。興味なかったから知らなかった)

友「それになんと言っても、白糸台には宮永先輩がいるからね!」

淡「宮永? 誰?」

友「ええ!? 宮永照知らないの!? インハイ二冠王者の、高校最強の選手だよ!」

淡「ふーん」

淡(ああ、そういえばおじいちゃんが言ってたっけ)

友「あ、さては大星さん、初心者でしょ? これから麻雀をやろうっていうなら、宮永照は知っといた方がいいよ」

淡「……友ちゃんはどうなの?」

友「えへへ、私はこれでも小学三年生の頃から麻雀をやってるし、去年は個人戦で県ベスト16まで行ったんだよ!」

淡「ふーん」


友「ねえ、体験入部はどうするの?」

淡「体験入部?」

友「正式な入部までに、三回体験入部の機会があるんだよ。そのときに部の人と打ってもらったり
できるんだって。で、四回目に入部試験をするの。
すごいよね、気合い入ってるよね白糸台。さすがって感じ」

淡「それいつやるの?」

友「今日一回目があるよ。あーでも今日は私都合悪いから、二回目から参加するつもり」

淡「ふーん。行ってみようかな」

友「お、やる気だね。でも気をつけてね。間違っても二軍の人と打っちゃだめだからね。
白糸台は二軍でも県代表クラスの実力だって言うし」

淡「うん。分かった」


放課後

淡「麻雀部……ここか」ガラ

淡「すいません、体験入部しにきたんですけど」

A子「はーい。いらっしゃーい。どうぞ入って」

淡「失礼します」

淡(うわ、人多いな)

A子「はじめまして。入部希望の人だよね?」

淡「まあ、一応。――あの、宮永照っていう人がいるって聞いたんですけど」


A子「あら、ふふ。貴女も? みんな宮永さんのことを初めに訊くよね。でもごめんね、
いま一軍のメンバーは練習試合でいないの。次の体験入部の日にはいると思うけど」

淡「そうですか」

淡(まあいっか。二軍でも全国レベルらしいし)

A子「じゃあ、さっそく打とうか。中学で部活の経験は?」

淡「二年の終わりに辞めました」

A子「あら、どうして?」

淡「つまんなかったから」

A子「あー……そっか。うん、仕方ないよね。勝てなくて辞めてく子、実はうちも結構多いんだ」


A子「じゃあちょっと待ってね、今空いてる子探すから。――ねえ誰かー。三軍で手の空いてる子いるー?」

淡「あの」

A子「ん? なあに?」

淡「ここにいる中で一番強い人と打ちたいんですけど」

A子「え、でも……」

淡「誰が二軍で一番強いの?」

A子「えーっと、一軍っていうのがつまりスタメンのことで、五人しかいないんだ。
だから二軍のトップっていうと、白糸台で六番目に強いってことなんだけど……」

淡「それでいいよ。誰ですか?」

A子「一応、私……ってことになるんだけど。一軍のいない間、部を任されてるから」

淡「じゃああなたでいいです」

A子「う、うん……じゃあ、ちょっとまってね。二軍からあと二人連れてくるから」タタタ

淡(白糸台の二軍は県代表クラス。なら、彼女らと打てば、自然とインハイのレベルも見えてくる)

淡(もし二軍でも私と渡り合えるくらいに強いなら、高校生の麻雀のレベルにも期待できる)


A子「お待たせ。連れてきたよ」

B子「その子? 二軍と打ちたいなんて言ってるの」

C子「生意気だよね。自信過剰っていうか」

A子「コラ、そんなこと言わないの。この二人は二軍の八位と九位。ごめんね、この二人、
一軍に入れそうにないから最近気が立ってて」

B子・C子「「うるさい」」

A子「じゃあ打とっか。手加減はしなくていいんだよね」

淡「はい。よろしくお願いします」

淡(――見せてよ。白糸台の実力)ゴッ


一週間後
昼休み

友「はぁ~……」

淡「どうしたの? 今朝からずっと溜息ついて」

友「うん、昨日さ、麻雀部の二回目の体験入部行ってみたんだけどさ」

淡「あ、そっか。昨日二回目あったんだっけ」

友「うん。大星さんは来てなかったけど、私一人で行って、打ってもらったんだ。
でも……予想外すぎたよ」

淡「……うん。ほんとにね」

淡(ほんとに予想外だった。インハイ二連覇を達成した白糸台の実力……見誤ってた)

淡(まさか……あんなに弱いなんて)


淡『ツモ。8000オール』

B子・C子『……』

A子『……トびです』ジャラ

淡『……』

A子『あ、あなた……何者なの?』

淡『……失礼します』ガタ

A子『ちょ、ちょっと待って! ね、ねえ! 次はいつくるの?
一週間後にまた体験入部があるから、そのときなら一軍の人が――!』

淡『来ません』

A子『え……?』

淡『もう……ここには来ません』


友「大星さんさ、麻雀部入るの?」

淡「……分かんない。入らないかも」

友「だよね……。私も昨日体験入部行ってそう思った。あんな人たちと打つなんて嫌だよね」

淡「うん。ちょっと弱すg――」

友「強すぎるよね、白糸台。手も足も出なかったよ」

淡「……………………誰と打ったの?」

友「三軍のD子先輩とE子先輩と、体験入部の子。三軍であれだけ強いなんて予想外すぎるよ」

淡「……そっか」


友「あ、私このあと用事あるんだった。ごめん、先に教室戻るね」

淡「うん」

友「じゃあね。三軍に負けた私が言うのもなんだけど、大星さんみたいな初心者は麻雀部
やめといた方がいいよ。
あそこはほんとに強い人しかいないから、きっとすぐつまんなくなって辞めちゃうよ」

淡「……うん。そうだね」

淡「……」


淡(……もういい。入部なんてやめとこう)

淡(結局私は一人ぼっちなんだ。誰も私の隣を歩いてくれない)

 そうだ。星は二つ並ばない。誰もいない闇の中で、一人孤独に在るしかない。
 もう麻雀なんてやめよう。これ以上孤独感を味わわされるのなんて……耐えられない。

淡「……イライラするのよ。あんたたちが弱いせいで」

淡「弱い奴なんて、皆いなくなっちゃえばいいのに」

 あるいは……。

淡(私が……もっと弱くなればいいのかな。そうすれば、もっと麻雀を楽しめるのかな)

淡(教えて……誰か教えてよ。麻雀、楽しくないよ……)


二週間後
放課後

友「じゃあ大星さん、また明日」

淡「うん。また明日」

淡「ふう……HR長引いちゃったな」

 あれから、私は一度も牌に触っていない。祖父に何度か誘われたが、体調が悪いと断り続けた。
もう弱い祖父の相手をするのはうんざりだった。プロ子は祖父に気を遣って本気で打ってくれないし、
妹子は話にならないくらい弱い。そもそも、私はもう麻雀なんて打ちたくなかった。

淡(何もやる気がおきない。なんか人生がつまんないよ。はぁ……)

ガラッ

菫「失礼します。大星淡さんはいますか?」


淡「? はい、大星は私だけど」

菫「君か。はじめまして。私は三年の弘世菫だ。よろしく」

淡「なにか用?」

菫「ああ、少し話がある。時間いいか?」

淡「いいけど……」

菫「よし、じゃあ歩きながら話そう。ついてきてくれ」

淡「……?」


廊下

淡「あの」

菫「ん、なんだ?」

淡「もしかして、麻雀部の一軍の人?」

菫「へえ、どうして分かった?」

淡「空気で分かるよ、そんなの」

菫「それはすごいな。A子が言ってた通り、かなりの逸材らしいな」

淡「A子?」

菫「一度目の体験入部のときに、A子と打ったんだろ?」

淡「ああ……」

淡(三人と打ったけど、誰がA子なんだろ。まあいっか)


淡「で、今私たちは麻雀部に向かってると?」

菫「そういうことになるな。今日、入部試験があるんだ。それを受けてもらわないと、
いくら強くても入部できないからな」

淡「あの。申し訳ないんですけど、私麻雀部に入る気ないんで」

菫「どうして?」

淡「そんなの……決まってるでしょ」

淡「弱いからだよ。あなたたちが」


菫「……」

淡「もううんざりなの、弱い人と打つの。体験入部の日、ここで六番目に強い人と打ちました。
――雑魚でした。あれで六位なんて、一軍の実力もお察しって感じだね」

菫「……」

淡「ここって全国で一番強い高校なんでしょ? その高校の六位があんなんじゃ、
インハイのレベルも高が知れてるよ。そりゃ私が出れば全国優勝なんて余裕だろうけど、
でも私はごめんです。迷惑なの。あなたたちなんかと打ったって、きっと……」

 きっと、私の中の孤独感が増すだけだ。そして対局の後、対局者は私を怯えた目で見上げるんだ。
 まるで、決して手の届かない、宇宙の果てに輝く星を見つめるような目で。

淡「だから、もう麻雀部になんて行かない。用がそれだけなら、私は帰ります」

菫「……可哀想に」

淡「……は?」


菫「君は常に上を目指すタイプの人間なんだな。負けず嫌いだけど、でも常に自分より
強い人間を求めてる。一緒に歩く仲間を欲しがってる。
でも君は今まで、そういう人間に出会えなかったんだな。本当に、不憫でならない」

淡「……そんなの、いるわけないじゃん。星を目指す人なんているわけないでしょ」

菫「いるさ。たとえ宇宙の果ての星だって。あるいは暗い海の底だって。そこに
挑もうする人間はいるんだ。何度打ちのめされても、必死に食らいついて、目標にして、
〝それを楽しいと思える人間〟は、必ずいるんだ」

淡「……」

菫「だからこそ、私は君に麻雀部に入ってほしい」

淡「……どうして?」


菫「簡単だ。――あそこには、宮永照がいるからだ」


淡「宮永、照」

菫「今日の入部試験は、あいつとの対局の結果で合否を出す。もちろん勝てとは言わない。
実力を見るだけだ」

淡「やめた方がいいよ。その人、ここのエースなんでしょ? そんな人に一年生が
勝っちゃったら、申し訳ないし」

菫「ははは」

淡「……何が可笑しいの?」イラ

菫「いや、すまない。まあ一度打ってみるといい」

淡「体験入部の日、そんな風に私のことを小馬鹿にして笑った人と打ったよ。
もう顔も覚えてないけど」


 どうやらこの菫とか言う人は、私が宮永照に勝てるはずがないと思っているらしい。

淡(いいよ。面白いじゃん)ゴッ

淡(高校生チャンピオン? 一万人の頂点? 笑わせる。私はそんな頂よりももっと高い、
遥か宙の果てにいるんだ)

 それに、ちょうどいい。高校生チャンピオンと打てば、それで全国の高校生のレベルは
つまびらかになる。今日宮永照を下し、彼女より上はいないんだと理解すれば、
私は今度こそ何の未練もなく麻雀なんてやめられる。

淡(――もう終わりにしてやる。何もかも)

菫「さあ、ついたぞ。入ってくれ」ガラ

淡「失礼します」

淡(――あれか。宮永照)


 後ろ姿しか見えないけど、どうやら打っているらしい。
 周りに人垣ができていて、誰も何も話さない。不気味なほどの静寂だった。

照「――ツモ。12000オール」

淡「……っ」ピク

新入生A「……と、トびです」

新入生B「私も……」

新入生C「わ、私もです……」

菫「ちょうど終わったみたいだな」

照「じゃあ結果を発表します」


照「A子さん」

新入生A「は、はい……」

照「三軍」

新入生A「は、はい。ありがとうございます! よかったぁ……」パァ

照「B子さん」

新入生B「はい」

照「二軍」

菫「お」

部員たち「!」ざわ・・・ざわ・・・


新入生B「あ、ありがとうございます! やったあ!」

照「二軍のF子。繰り下がりで三軍」

F子「はい……」

部員「F子ちゃん、ついに落ちちゃったか……」ヒソヒソ

部員「覚悟してたと思うよ。うちって実力主義だし」ヒソヒソ

部員「でも、あんなに頑張ってたのに……」ヒソヒソ

照「C子さん」

新入生C「は、はい……」


照「――申し訳ないけど、あなたの実力じゃうちではやっていけない。不合格」


新入生C「……っ! は……はい……」

菫「あまり気を落とさないでくれ。うちは秋にもまた入部試験をやるから、そのときにまた来てくれればいい」

新入生C「……いえ、私は、その…………もう、いいです。ごめんなさい……!」タタタ

菫「あっ……ふー」

淡(フン)

淡(そうよ。弱いやつは消えればいい。トばされるような雑魚が麻雀なんかするのが悪いのよ)ツカツカ

淡(それになに? 三人トび? アホらしい。どんだけ弱いのよ。ほんとイライラす…………え?)ピタ

淡(と、東二局!? ちょ、まだ東場すら終わってないじゃない……!)

淡(そんな一瞬で三人をトばすなんて……この人、まさか私と同じ高火力麻雀……?)

照「ん?」

 そのとき、背後の私の気配に気づいたのか、宮永照が後ろを振り向いた。

淡「――ッ!!」ゾクッ!

淡(な、なにこのプレッシャー……)

照「入部希望者?」

淡「……違います」

照「?」

菫「彼女は大星淡さん。お前と一局打ちたいそうだ。打ってやってくれ」

照「いいけど。東風でいいの?」

菫「ああ。君も、それでいいな?」

淡「なんでもいいよ」

菫「よし、じゃああと一人……一子。入ってくれ」


一子「え、私?」

菫「ああ。この四人で打つ」

部員「!!」ざわ・・・ざわ・・・

部員「そんな、新入生一人に一軍三人なんて……」ヒソヒソ

部員「ひどい……可哀想だよ」ヒソヒソ

部員「でも待って。あの子、ひょっとしてこの前の……」ヒソヒソ

菫「それじゃあ、始めようか」

四人「よろしくお願いします」

淡(じゃあ、お手並み拝見といこうかな)ゴッ


東一局

淡「リーチ」

菫「早いな。まだ四巡目なのに」

淡「あなたたちが鈍いんだよ」

淡(四巡もあれば十分。私の星の引力が、有効牌を引き寄せる)

淡(どんなに強くても、宙に投げ出されれば所詮、人は無力。より大きな力に翻弄されるしかない)

淡(――さあ、引きずり込んでやる。宇宙の闇へ――!)ゴォォォォォ!


一子「うっ……!?」ゾクッ

菫「これは……」ゾクッ

菫(予想以上だ。まさかこれほどとは……)

淡「――ふふ」カチャ

淡「――ツモ。リーチ一発ツモ三暗刻ドラ3。4000,8000」

三人「……」ジャラ

淡「…………」イラ

淡(なんなの? あれだけ息巻いておいて、このザマ? 結局この人たちも口だけか)

淡(イライラするなぁ……)イラ


照「……」ゴッ‼

淡「……ッ!?」ピク

淡(え、後ろ――)バッ

淡「……?」

一子「……っ」ビク

菫「……来たか」ピク

淡(なに……今、なにかを見られた……?)

菫(さあ、ここからだぞ大星淡)


東三局
親:照
ドラ:2索

照「……」白

淡「……ッ」ギリ

淡(くそ、鳴けない……私が役牌を鳴けないなんて……)

淡(宮永照……あれからもう三回和了られてる。安手ばかりだったから気にならなかったけど、
こんなにあっさり三連続和了されるなんて、ここ数年なかった)

淡「チッ」カチャ


四五六244赤5⑨⑨⑨北北白  4

淡(六巡目なのに、まだこんな手。かろうじて得意の手になれる形は保ってるけど、
明らかに普段より引力の効果が弱い)

淡(いや、違う……。私の支配が弱まってるんじゃない。それを超える支配が、今この卓に
充溢してるんだ。私の星の引力すら振り払う、圧倒的な支配が)

淡(高校生チャンピオン……多少はやるみたいだけど、あんまり調子に乗らないでよね)ゴッ

照「……」カチャ

淡「……」カチャ

淡(よし。三枚目の北。これで聴牌。三暗刻に高めドラ2がつく。
ちょっと安いけど、まあいいか)カチャ


淡(いや……待てよ。ここで素直に聴牌を取れば切るのはドラの2索か赤5索)

淡(こんな牌を切らなきゃいけないって時点で、私の支配に綻びが出てる証拠だ。
いつもならドラを暗刻にして5索の単騎待ちになってたはず。なら、この場は私ではなく、
宮永照の支配下にあるってこと)

淡(だめだ。この牌は切れない……。だったら……)

淡「……」北

淡(これなら!)

照「ロン」

淡「え……?」

二二三三四四112233北 北

照「12000」


淡「そんな……!」ガタッ

淡(素直に切っていれば、私が宮永照の当たり牌を潰していた。くそ、裏目?
いや、これはそんなんじゃない。もっと別の……)

菫(彼女は自分の麻雀に絶対の自信があるようだな。だが同時に、自分の力を超える支配の
存在を受け入れるだけの賢さも持っている。変にプライドにこだわったりせず、時には
自分の麻雀を曲げることも厭わない。だから小さな違和感にもすぐ気付けるし、
臨機応変に立ちまわれる)

菫(だがその麻雀は既に照に『見抜かれている』。下手に賢しく立ち廻ろうとすると、
照の思う壺だ。さあ、どうする?)

淡(くっ……)

東三局 ドラ:六萬

淡(最初に和了ってから、宮永照以外だれも和了れてない。もう五連続和了された)

淡(しかもこの人、私のこと狙い撃ちしてる。この私をトばすつもり? 図に乗って……!)

123四四五五発発白白白中 六

淡(よし、私の引力もまだ消えてない。三巡目で張った)

淡(でも、まだだ。こんな安い手で上がっても仕方ない。次の私の親――そこに強い流れを持っていきたい。
だからまだ上を狙う。索子を全部落として小三元と混一色まで絡める。やれる。私ならできる……!)

淡「……!」3索

照「……」カチャ


一子「……っ」カチャ

菫「……」カチャ

淡(一子って人は必死に食らいついていってる感じだけど、この菫って人は
勝とうとしてない。ただ私の力を測ってる)

淡(正直……宮永照一人だけに注意していればいいっていうのはありがたい。一気に叩いてやる)

1四四五五六六発発白白白中 中

淡(よし、いつもの私の手だ。そうこなくちゃ。1索を落として聴牌。ツモでも親被りで
宮永照に痛手を負わせられる)

照「……」ゴッ

淡「ッ!」ゾクッ


淡(なに…………風?)

淡(感じる……何か強い力……強い風を)

 でも、有り得ない。だって私の引力が効いてるってことは、今ここは『宙の中』のはず。
宇宙に風なんて吹かない。なら、今ここは宙なんかじゃなく……。

淡(違う……ここはまだ、宮永照の支配下なんだ……!)

照「……」ゴォォォォォ!

淡(まずい、このひと和了る度に打点が高くなってる。次はきっと直撃なら私を
トばせる点でくる)

淡(このままじゃ次巡、私はきっと宮永照の当たり牌を掴まされる。
なら聴牌を崩して別の牌を切るしか……でも、まさかそれも『見抜かれてる』?)

淡(くそ、どうすれば……!)


菫「……」白

淡「――!」

淡(――これだ!)

淡「ポン!」カチャ

淡「……」白

菫(食い替え……? まあうちでは禁止していないが……なるほど、この子ももう照の力
を見破ったか。だが――)

淡(これで私が当たり牌を引くことも打つこともない。それにツモ巡も変わって、
宮永照の予定していた牌と違う牌があっちに流れる。私の聴牌も崩れないし、
次に引力を使って中か発を引けば……!)

菫(――それでも、照は止められないのさ)


照「……」カッ

照「……」ガシッ ギュルルルルル

淡(なっ……!)

淡(まずい。この感じ……やられる! そんな……ツモ巡をズラしたのに!?)

ドゴォ!

照「ツモ。8000オール」

淡「……ぁ……」

菫「トびだ」ジャラ

一子「……私も」ジャラ


淡「……私、は……」

淡(……残ってる……けど、数千点……たったこれだけ? この、私が……)

淡(星の引力をものともしない、圧倒的な場の支配)

淡(まるで牌そのものが宮永照にかしずいてるみたいな、凄い力を感じた)

淡(この人……別格だ)

部員「……」ざわ・・・ざわ・・・

部員「すごい、あの子……宮永先輩と打ってトばなかった!」ヒソヒソ

部員「一軍の二人ですらトんだのに」ヒソヒソ


菫(最後のあの食い替え……あれがなければ彼女が当たり牌を掴んでいた。
直撃は24000点。彼女はトんでいた)

菫(照の和了りこそ防げなかったが、彼女は自分のトびを回避したんだ)

菫(大星淡……私の想像以上だな)

菫「どうだ照、感想は」

照「感想はともかく、入部試験の結果を発表する」

淡「わ、私はまだ入部するとは――」

照「大星淡さん」



照「一軍」


部員「!!!」ざわ・・・!ざわ・・・!

部員「い、一軍!? 一年生が、白糸台の!?」

部員「え、ってことは、じゃあ……!」

照「一子」

一子「……はい」

照「繰り下がりで二軍」

一子「…………はぃ。今までありがとうございました」ペコリ

部員「そんな……一子さん……」

一子「いいの。実力が全てなんだから」

部員「……」


淡「……」

菫「よかったな大星さん。文句なしで合格だそうだ。よく打ったよ」

淡「文句なし……? よく打った……? こんな、首の皮一枚繋がっただけで?
……馬鹿にしないでよ」

菫「まさか。馬鹿になんてしてないさ。むしろ君の力に驚いてるくらいだ」

淡「でも――!」

菫「君だけだ」

淡「え?」

菫「今日照と打った人の中で、トばなかったのは君だけなのさ」


淡「は……」

淡「だ、だって、一人でもトんだらそこで終局でしょ?」

菫「ああ」

淡「じゃあ、じゃあなに? 今までこの人と打った人は全員、3人同時にトばされ
続けたっていうの? 私以外の全員が!?」

菫「そうだ。私と一子も含めて、君以外の全員が、同時にトばされた。照がつけた
記録によるとそうなってるな」

菫「君はそれを自分の力で回避したんだ。首の皮一枚だって十分さ」

淡「そんな……馬鹿な」


照「菫、私は少し外の空気を吸ってくる。後は任せてもいい?」ガタ

菫「ああ、お疲れ様」

照「それじゃあ。――それと、大星さん」

淡「な、なに?」

照「入部するなら、来週までに入部届けを持ってきて。それ以降は
受け付けられないから」ガラ ツカツカツカ

淡「…………ま」

淡「待って!」ガタ


屋上

淡「待って、宮永さん!」

照「何?」

淡「あなた……あなたは」

淡「どうして麻雀を続けてるの?」

照「……」

照「……どういう意味?」


淡「だって、あんなに強いなら、あなたとまともに戦える人なんているわけない!」

淡「現にインハイで二連覇してるんでしょ? だったら、もう周りは格下だらけじゃん!」

淡「そんなの……そんなの、絶対つまんないじゃん!!」

照「……」

淡「なのにどうしてあなたは麻雀を続けるの?」

照「……」

照「分からない」

淡「え?」


照「昔は、ただ強くなりたかった。私にも目標があった。でも今は……もう
なんのために麻雀を打ってるのかすら、思い出せない」

淡「だ、だったら」

照「でも多分……私には、麻雀しかないからだと思う」

淡「麻雀しか、ない?」

照「……そういうあなたはどうなの?」

淡「私?」

照「麻雀は好き?」


淡「……昔は好きだった。今は微妙」

照「私も」

淡「強い相手と戦いたいってずっと思ってた」

照「私も同じ」

淡「……全国には、あなたみたいな人が他にもいるの?」

照「私とやりあえる選手を二人知っている。長野に一人。鹿児島に一人」

淡「……私よりも、強いの?」

照「実際に打ってみればいい。そのためには部に入らないといけないけど」

淡「……ふふ」


淡「私……ずっと孤独感に苛まれてきた。強すぎて、誰とも近づくことはできないんだって」

照「……わかる。私も、たまに闇の中にいるような気分になる。誰もいない、寂しい世界に」

淡「一人じゃないよ」

照「?」

淡「私がいる。私が、あなたの傍にいます。私ならあなたと麻雀が打てる。一緒に歩いていける」

照「……そうだね」フッ


淡(そうだ。私はもう独りなんかじゃない)

 やっと見つけたんだ。私と同じ所にいる人を。私と同じくらい……ううん、
それ以上に強くて、熱くて、大きくて……まるで太陽みたいに輝く人を。
 近づけばその熱に焦がされて、誰も傍に寄ることすらできない。でも、私なら。
太陽の引力に引き寄せられて、どこまでも近づいていける。ずっと一緒に歩いていける。
 星は二つ並ばない。でも、星は太陽の周りを廻り続ける。離れることなく、いつまでも。

淡「――これからよろしくお願いします。テル」

 ようやく出会えた。
 プロの世界にすら感じなかった、圧倒的な力。五年、十年。あるいはもっと先。
私が人生をかけて目指すに値する高み。私の――生涯の目標に。

照「よろしく。淡」

 小さく笑った彼女の笑顔が眩しくて、まるで太陽の光みたいだと感じた。
 その陽の光に照らされて、星はどこまでも輝き続ける――。

ちょっと休憩します。20分後くらいに再開すると思います

プロの世界には畜生アラフォーが…


二ヶ月後

 あれから、私は正式に白糸台高校麻雀部の部員になった。
 入部と同時に一軍入りが確定していた私は、基本的に一軍のメンバーとしか麻雀を打たなかった。
 二軍以下の実力は知っているし、興味もなかった。二軍以下は名前も覚えていない生徒がほとんどだ。
 私の興味はただ一つ、テルだけだった。

照「――ロン。1000点」

淡「あ!」

菫「終局か。いつも通り、と言ってはあれだが、照のトップか」

淡「くっそー……今回はいけると思ったんだけどなー」


照「内容は悪くなかった。特にミスもなかったし、よく打ててたと思う」

淡「それって、単純に素の実力で負けてるって意味じゃん」

照「事実だから」

淡「ふーんだ。でもま、そうこなくっちゃね。私の目標なんだから」

照「でも、淡も強くなってきてる」

淡「あ、やっぱりそう思う? 私も、なんか最近すごい調子いいんだよねー」

菫「……」

菫(強くなってきてる、か)

菫(……確かに、この二カ月で大星は凄まじい成長を見せている。照の影響なのか本人の
やる気が今までと違うのか、とにかく入部当初とは比べ物にならないほど強くなった)


菫(今も半荘一局打って、照と大星の差は20000点。たった20000点しかない。もう東風
どころか半荘一局ですら、大星が照にトばされることはない)

菫(それどころか、照の支配に抗って逆に場を支配し返したり、照の連続和了を個人の支配
のみで止めるようになった)

菫(まるで一昨年の照を見ているようだ。もはや大星も照と同格……全国の怪物の一人だ)

菫(並の打ち手じゃないとは思ってたが、まさかこれほどとはな……)

淡「よーし、じゃあもう一局打とうテル!」

照「ああ。――あ、ごめん。そろそろ行かないと」


淡「え、帰っちゃうの?」

照「ああ。これから取材があるんだ。インハイが近いから、三連覇に向けての意気込みとか
いろいろインタビューしたいらしい」

淡「そんなぁ……」

照「また明日たくさん打てるから」

淡「……わかった。じゃあ私も帰る」

菫「……っ!」

照「いや、それは」

菫「何言ってるんだ大星」


菫「照はちゃんとした理由で早退するんだ。お前のそれはただのサボりだろう」

淡「だってテルがいないとつまんないんだもん。どうせ私がトップだし」

菫「っ……おい」

渋谷・亦野「……」

淡「あ、そうだ! ついでに私もテルと一緒にインタビュー受けるよ!」

照「え?」

淡「白糸台のナンバー2、最強の大型新人現る! みたいな。私って何気にインターミドルも
二連覇してるし、記者も喜ぶと思うんだよね」

菫「だめだ」


淡「む。なんでよ」

菫「何故もなにもないだろ。呼ばれてもいないのに取材を受けるなんて馬鹿な真似は
認めるわけにはいかない」

淡「じゃあ私はどうすればいいのよぉ」

菫「ここで麻雀を打つに決まってるだろ。大会までもう何日もないんだぞ」

淡「だから、テルがいない白糸台なんて意味ないんだって」

尭深・誠子・菫「……」

照「淡」


淡「はい」

照「こんなとこで怠けてるようじゃいつまでもたっても私には勝てないよ。大人しく練習に参加してて」

淡「……まあ、テルがそう言うなら」

照「それでいい。それじゃあ、私は行ってくるから」

淡「行ってらっしゃーい」

菫「……気をつけてな」

菫(……悪いな、照)

照「……」コク

ガララ、ピシャ



菫(大星の加入により、一軍の力は一ランク上昇したと言っていい。間違いなく、歴代の
白糸台メンバーの中で最強のチームだ)

菫(そういう意味では、私の先見は間違ってなかった。彼女ならきっとチームのエースとして
活躍できる日が来る)

菫(だが、一つ大きな誤算があった。それは、大星が照に入れ込みすぎて、
他の部員を全く顧みなくなったことだ)

菫(初めはみんな苦笑い混じりで許してくれていた。だが、もういい加減それも限界にきている)

菫(私もタイミングを見て何度か大星を注意した。だが大星は全く聞く耳を持たなかった)

菫(いや、というよりも、あいつは照以外の部員のことをカボチャか何か程度にしか思っていない)

菫(それは私たち一軍に対しても例外ではない。大星は照以外の部員との溝を、日毎に開け続けている)


菫「……」カチャ

淡「……」カチャ

菫(七巡目。大星は一向聴といったところか。それに安い)

菫(……明らかに遅い。照と打ってるときのこいつはもっと高い手を
四巡とかで作ったりする、高速高火力麻雀だ)

菫(それに……大星の支配が弱い。宇宙に引きずり込まれるようないつもの感覚がない)

菫(……手加減……いや、単純に〝本気じゃない〟のか)

菫「くっ……」カチャ


淡「……」カチャ

菫(張ったか。場を支配しなくても牌が自然とあいつのところへ集まってくる。
照以外でここまで牌に愛された奴を見るのは初めてだ)

尭深「……」カチャ

淡「ロン」

尭深「……ッ」

淡「8000」

尭深「……はい」

菫(強い……もう尭深や誠子じゃ相手にならない)

菫(――いや、私も、もう……)


淡「終わりだね」

菫「……そうだな」

尭深・誠子「……」

菫「半荘三回で全て淡がトップか」

菫(手を抜かれて、ここまで……)

淡「あーあ。つまんな」ボソ

淡「やっぱり私帰りますね」ガタ

菫「お、おい!」

淡「テルはああ言ってたけど、やっぱり意味ないですよ、あなたたちと打っても」


菫「大星!」

淡「何回打ってもどうせ私がトップですってば」

菫「そういう問題じゃ――!」

誠子「……いいじゃないですか。本人が帰りたいって言ってるんですし」

菫「お、おい誠子」

尭深「……私もそう思います」

菫「……」

淡「じゃ、そういうことで。お先にー」バタン


菫「……どういうつもりだお前たち。大会を目前に、チームがこんな状態でどうする」

尭深「チームに不和をもたらしてるの、どう考えても大星さんだと思います」

菫「しかし……」

尭深「大星さんが強いのは認めます。でも、いくらなんでも彼女の態度は酷いです」

誠子「入部してからずっとあんな感じだもんね。私たちだけじゃなくて、他の部員の子も
みんな大星さんと距離を置いてますよ」

菫「……」

誠子「大星さんを引き込んだのって先輩ですよね。できれば先輩になんとかしてほしいです」

菫「……わかった。大星には私から言っておく」

菫「だからお前たちももう少しだけ、大星のことを大目に見てやってくれないか」


菫「あいつは今まで、自分と対等に打てる奴がいなくて、私がここに誘ったときには麻雀を
辞めようとすら思っていたそうだ。そんなときに初めて自分以上の人間を見つけて、
あいつは今照に夢中で周りが見えてないだけなんだ」

尭深・誠子「……」

菫「きっといつか大星とも楽しく打てる日が来ると思う。だから……頼む」ペコ

尭深「や、やめてください先輩。顔上げてください」

誠子「まあ大星さんのことはまだ正直微妙だけど、同じ一軍のメンバーですからね」

菫「……すまない。ありがとう、二人とも」

菫(だが、大星が素直に言うことを聞くとは思えない)

菫(……大星に勝つしかない。そうすれば、きっとあいつも私の言うことを聞いてくれるはずだ)

三日後

淡「ちわーす」ガラ

菫「挨拶はきちんとしろ大星。部のルールは守れ」

淡「はいはい。……あれ、菫だけ? 他の一軍のメンバーは?」

菫「尭深と誠子は今日は休みだ。照は進路の件で担任と話があるから、その後でくる」

菫(二人には今日は休んでもらった。照が進路相談をするこの日に合わせれば、私と大星の
一騎打ちになる。そこで私が勝てば、大星も文句はないはずだ)

菫(……照には何も言っていない。もし言えば、あいつは個人的に大星と話を付けるかもしれない。
だが、それじゃだめだ。照の言うことなら素直に聞くだろうが、それだと根本的な解決にならない)

菫(私個人の力で大星に勝たないと、意味ないんだ)

淡「えー、テルいないの? なーんだ。じゃあテルがくるまで休んでますね」

菫「何が休むだ。まだ何もしてないだろ」

淡「だってメンバーがいないんじゃ打てないじゃん」

菫「何言ってる。メンバーなら沢山いるだろ。二軍から二人呼べばいい」

部員「……!」ビクッ

淡「はあ? ちょっと冗談やめてよ菫。なんで私が二軍なんかと」

菫「大星。最近お前は部というものを無視し過ぎてる。これ以上我を通すつもりなら、
いい加減黙っている訳にもいかないぞ」

淡「ふふん、偉そうに。私を退部でもさせるつもり?」

菫「最悪の場合、そうなる可能性もある」

淡「菫にそんな権限ないでしょ。あるとすれば顧問だけど、顧問は私の実力に期待してる。
学校としても白糸台の三連覇は是非とも達成してほしいところだろうし、私を退部なんてさせるわけない」

菫「だが照が口添えすれば有り得ない話じゃないぞ」

淡「あははっ。テルが私を追い出すって? それこそまさかだよ。テルだってやっと
自分と互角に戦える打ち手に出会えて喜んでるんだよ? むしろ私の退部には反対するに決まってる」

菫「なに?」

淡「だってそうでしょ? テル、あんなに強いのに今まで退屈してなかったわけないじゃん。
弱い人とばっかり打ってきて、うんざりしてたに決まってるよ」

菫「――大星」ギリッ

菫「私たちの雀力について何を言おうが我慢してやる。だがな、私たちと照が共に
過ごしてきた二年間まで侮辱するつもりなら、いくらお前でも許さない!」

淡「ふふ、共に過ごしてきた? テルの強さの後ろをとことこついて行っただけでしょ?
よかったね、テルと一緒に過ごせて。あの人と同じチームにいるだけで、インハイ
三連覇の栄光を我がもの顔で語れるんだから」


菫「なんだと……!」

淡「いいよ。そこまで言うなら、テルと過ごしたっていうその実力見せてよ。
ただし、私が勝ったら今後は私の好きにさせてもらうからね」

菫「……望むところだ。――おい、誰か二軍で手の空いてる者はいないか?」

部員「……」サッ

菫(みんな一斉に目線を逸らした……。皆大星を怖がってるんだ。このままじゃ大星は本当に……)

菫「……一子、A子。卓に入ってくれ」

一子・A子「……!」ビクッ

A子「わ、私、ですか……」

一子「……」

菫「……頼む」

菫(半端な奴を入れたんじゃすぐトばされて終わるだけだ)

菫(だがこの二人でも大星が相手では正直力不足は否めない。いや、大星が言うように、
こいつと互角に戦えるのはもう、うちの部では照しかいない)

菫「……始めるぞ」

菫(ここで大星を倒す。倒してみせる……!)

  ∧,,∧
 ( `・ω・)   n 
⌒`γ´⌒`ヽ( E) ようこそ

( .人 .人 γ / エクストリームID腹筋スレへ!
=(こ/こ/ `^´  
)に/こ(
ここはsageずに書き込み、出たIDの0以外の数字の累乗した数だけ腹筋をするという
超硬派なトレーニングスレです。
例1 ID:2h3G10Ms0 の場合は 2×2×2の10乗なので1073741824回頑張りましょう。
例2 ID:bicycl0 の場合0以外の数字がないので今日は一休み。
さあ、存分に腹筋するがよい。↓

南三局

菫(この感じ……)

淡「……」ゴォォォォ

菫(照と打ってるときの大星と同じだ。本気で勝ちに来てる)

一子「……」カチャ

A子「……」カチャ

菫(二人はもう聴牌すら目指してない。大星に怯えて、安全牌を切ることしか頭にない)

菫「……」カチャ

菫(大星を止められるのは私しかいない。だが、この局が終わればもうオーラス。
大星と私の点差は19000点以上ある。このままじゃ……)

菫「……」カチャ

菫(張った。八巡目で三面待ち。リーチをかければ倍満確定。一気に逆転できる!)

菫「リーチ!」

菫(射抜いてやる……大星の支配は確かに強力だが、絶対に攻略できないようなものじゃない)

淡「――ふふ」

菫「!?」


淡「今頃リーチ? 菫、遅すぎるよ」

菫「なに……?」

淡「私の手の速さ知ってるでしょ? 私はとっくに聴牌してたんだよ。あなたたちがノロマだから
暇つぶしに打点を上げてたの。なのにリーチするなんて、打ち落としてくださいと言ってるようなものじゃん」

菫「なにを――」

淡「ポン」

菫「……!」

菫(ツモ巡が変わった?)

淡「さ、ツモってよ菫。それが当たり牌だから」


菫「……」

菫(そんな、馬鹿な……)カチャ

菫「……」カチャ 赤5

淡「……」ニヤッ

淡「ロン」

2223346北北北  南南南

淡「ダブ南混一色ドラ4。16000」

菫「な――!」ゾワッ

淡「あと二巡で南はツモれてたから三暗刻もつけれたけど、まあこのくらいにしといてあげる」

菫「……」ガクッ

菫(……勝てないのか、私では。この強さ……本当にもう照と遜色がない)

菫(皆……すまない)

淡「……」

淡(まあ、菫はまだ勝とうとしてるし、絶望的に弱いわけじゃないからいいけどさ。
他の二人はなんなの? 聴牌すら目指してない。ただ逃げ回ってるだけ。恥ずかしくないの?)

淡(一緒に打ちたくないのはこっちも同じだっての。まるで鳩撃ちしてる気分だわ)

淡(……イライラするなぁ)

オーラス

菫「……」カチャ

一子「……」カチャ

A子「……」カチャ

淡(つまんない。全然楽しくない。早く終わりたいなぁ)ボー

菫「……おい、お前のツモ番だぞ、大星」

淡「え? ああ、うん」

淡(これ以上続けて何になるの? もう役満直撃じゃないとマクれないんだよ?
あーもう……イライラする)


ガラ

照「ごめん、遅れた」

部員たち「あ。お疲れ様です!」

菫「照――」

淡「テル!」パァ

淡「もう、遅いよテル!」ガタ

菫「お、おい大星! まだ対局中だぞ。席を立つな」

照「ごめん。進路相談が思ったより長引いて――ん? 尭深と誠子はどうしたの?」


菫「あ、ああ。二人は今日は休みで――」

淡「そんなことどうでもいいじゃんテル。さ、早く打とうよ!」

ガシャン、ジャラジャラ

菫「な――!?」

一子・A子「!」

菫「お前、山を崩して……何やってる! まだ対局は終わってないだろ!」

淡「え? ああ、もうこんな対局どうでもいいじゃん。どうせ私の勝ちだよ」

菫「な……」

淡「それより、早く誰か抜けてよ。テルが座れないじゃん」

菫「……大、星……お前……」


菫(どうでも、いい?)

菫(私は……お前を更生させたくて。この一局、私なりに一生懸命、全力で打ったんだ)

菫(なのに……)

A子「あ、あの。私抜けます」

一子「あ、ちょ、ちょっと待って。私が……!」

菫「……」

淡「さ。早く打とうテル。今日は半荘二回で30000点以内に収めてみせるからねー!」

照「ああ。がんばれ」

菫「照……」


菫(どうして何も言わないんだ照。お前は大星のやり方を認めるというのか?)

菫(今はいい。お前がいる内は大星も大人しくするだろう。だが来年はどうする)

菫(私とお前がいなくなったら、大星は完全に孤立するぞ。今度こそ本当に、大星は
一人ぼっちになってしまう。お前はそれでもいいって言うのか、照)

照「……」

淡「今日はとことんまで付き合ってよねテル」

照「ああ……うん。そうだね」

菫(……照!)

照「……」

照「リーチ」

淡「え、いきなり? させないよ!」

淡「ポン」発ポン

菫「……」白

淡「ポン」白ポン

一一二三四中中   白白白 発発発

淡(小三元確定で聴牌。一萬と中のシャボ待ち)

淡(けど、私は役満は和了れない。なら引けるのは一萬だけ)

照「……」カチャ

淡(テルは当然見抜いてるはず。きっとテルの手牌の頭は一萬。私の待ちは握られてる)

一一二三四中中 白白白発発発  三

淡「なら、これでどうだ!」一萬

淡(これで聴牌も崩れないし、手代わりもできる。あとは私とテルの支配力の
どちらが勝るか――!)

照「ロン」


淡「え」

234567③④⑤西西一一

照「1000点」

淡「……!」ゾクッ

淡(まただ……私が待ちを変えたらそこを狙い撃ちにされる。かといって素直に打っても、
そのときに限ってそれが狙われたりする)

淡(読まれてるんだ。私の打ち方そのものを……!)

淡(すごい……この人は本当にすごい。マグレとか運がいいとか、そんな偶然すらも蹴散らす、圧倒的な力。本物だ……)

淡(すごいよ、かっこいいよテル。私の同類……私の目標!)ドクン

淡(楽しい。麻雀が楽しい。さっきまであんなにつまらなかった麻雀が、まるで別の遊びみたいに思える)

淡(テルだけだ……テルと打ってるときだけは、私は心から麻雀が楽しいと思える)

淡(テル、あなたに出会えて本当によかった)


淡「――よっしツモ! 4000,8000!」

菫「お」

照(……和了られた。三連続和了で終わりか)

一子「……うぅ。わ、割れました」

淡「うはっ、テルの親のときに倍満和了っちゃった! ちょっと見てよこの点差。
半荘一局打ってたった12000点差だよ」

照「ああ。上出来だ」

淡「あは。もっと褒めてテル!」

菫「……」

菫(本当に凄い。照と一試合打っても25000点離されない計算だ。去年の全国大会ですら
そんな僅差で照に迫った選手はほとんどいなかった)


淡「さっ、今の感じを忘れない内にもう一局いこう!」

菫「いや、今日はここまでだ。もう練習終了時刻だ」

淡「え? ……うわ、もうこんな時間。あーあ。テルと打ってると時間が過ぎるの早いなぁ」

照「また明日打とう、淡」

一子(やっと終わった……)ホッ

菫「……照。このあと少し残れるか?」

照「? いいけど」

菫「そうか、よかった。大会の件でちょっとな」

照「……」ピク

淡「それなら私も一緒に残るよテル!」

菫「いや、大星は……」


照「淡は今日は帰って」

淡「えー、なんで」

照「淡にちょっとしたサプライズを考えてて、そのことについて話すの。
淡がいたら意味がないから」

淡「サプライズ? それってもしかして、大会では私が大将! とか?」

照「――まあ、そんなところかな」

菫「!」

部員「!?」ざわ・・・ざわ・・・

部員「い、一年生が大将……!?」

淡「ほんと!? 大将って、去年までのテルと同じポジションだよね?」

照「ああ」

淡「やった! 私、テルの後継者だ!」

照「だから白糸台の大将に相応しくなるために、帰ってどうして今日勝てなかったのか考えて」

淡「はーい。じゃあ、お先に失礼しまーす!」ルンルン


菫「……本気か?」

照「顧問にももう話してある。実力的にも、有り得ない話じゃない」

菫「……まあ、お前がそう言うなら私は構わないが」

菫(やはり照は、私たちよりも大星の力を買ってるのか……?)


部員「それじゃあ、お先に失礼します」

菫「ああ、戸締りは任せてくれ」

部員「はい。お疲れ様でした」ガラ

菫「――これで全員帰ったか」


照「それで、何の用?」

菫「大星のことだ」

照「……うん」

菫「正直なところ、大星のことどう思ってる?」

照「強いと思う」

菫「そうじゃない。あいつの日頃の態度のことだ」

照「……あまりよくはないと思う」

菫「なら、なぜ大星に何も言わない。エースのお前が放置してるのは良くないだろ」

照「……」


菫「……まさかとは思うが、慕ってくれてるから甘やかしてる、とかじゃないだろうな?」

照「そういうわけじゃない」

菫「なら何故だ。このままじゃ、大星は完全に部で孤立してしまうぞ。
いや、もう孤立してると言ってもいいぐらいに、部員との仲は険悪だ」

照「……」

菫「……本当は、お前の力を借りずにあいつを更生させたかった。だが、駄目だった。
私の力不足だ。もうあいつはお前の言葉でしか動かない。頼む、照。あいつに一言いってやってくれ」

照「……それだと」

菫「ん?」



照「それだと、淡は弱くなる」


菫「なに……?」

照「淡は孤高だから強いんだ。孤独こそが淡の力の源泉なんだ」

菫「な……」

照「淡のことを考えるなら、淡は部員と仲良くなんてなるべきじゃない」

菫「照……お前、まさか……」

菫「大星を、わざを部員と衝突させるように誘導してるっていうのか……?」

照「……」

菫「どうなんだ!!」

照「淡が部員たちにどういう態度を取るのかは、あくまであの子次第。私には関係ない」

菫「お前――!」


菫「強くなれるなら孤独になってもいいって……大星がそう望んでると本気で思ってるのか!?
照魔鏡でなんでも見抜いたつもりになってるんじゃないだろうな!?」

照「部員と仲良くしたいなら淡はあんな態度はとってない。あれがあの子の答えじゃないの?」

菫「違う!」

菫「大星は友達が欲しかったんだ! 一緒に楽しく麻雀を打てる仲間が!」

菫「初めてあいつを見た時、私は大星にお前と同じ匂いを感じた。だからこそ、私は大星をここに誘ったんだ。
お前が私たちと仲間になれたように、きっと大星も私たちとやっていけるって」

照「無理だよ」


菫「なんだと?」

照「淡は強すぎる。並の打ち手じゃ、あの子の隣に並ぶことすらできない」

菫「……隣に並べなければ仲間じゃないとでも言いたいのか?」

照「少なくとも、それは淡の求めてる仲間じゃない」

菫「……」

照「ただ一緒に麻雀を打って、一緒に帰ったり、一緒に笑い合ったり、それだけの友達
が欲しいなら、
淡にもできるかもね。でも、淡はそんな友達なんて求めてない」

照「私が淡に言い聞かせて、部員と仲良くなるように命令すればあの子はしてくれると思う。
でもそれで淡が楽しめると思う? 誰と打っても簡単に勝てる麻雀を打ち続けて、相手に
気を遣って手加減したりして、……そんなことをしても、きっと淡はこう感じるはず」

照「『ああ、やっぱり私はこの子たちとは違うんだ。分かりあったりできないんだ』って。
打てば打つほどに、淡は今以上の孤独を感じることになる」


菫「……お前も、そうなのか?」

照「?」

菫「お前も、今まで私たちと打ってきて、そう感じていたのか?」

照「私のことじゃない。――でも、そう感じていた子を知ってる」

菫「? 誰のことだ?」

照「…………その子は」

照「あまりにも強すぎて、周りに自分と同じレベルで麻雀を打てる人がいなかった」

照「普通に打てば簡単に勝ってしまう。そうすると一緒に打っていた人たちは不機嫌になって、
その子に八つ当たりしたりしていた。でもわざと負けても、手加減してるとバレて叱られた」

照「だからその子は、勝ちも負けもしないような麻雀しか打たなくなった」


照「誰と打っても、何度打っても、全てプラマイゼロ。自分の勝ちを捨ててその子の
プラマイゼロを防ごうとしても、結局プラマイゼロで終局してしまう」

照「わかる、菫? 強すぎる人間が格下に合わせようとすると、そんな歪な麻雀が
生まれてしまうんだ。淡はあの子と同じ次元の打ち手だ。私はもう二度と……あんな風に
麻雀が歪んでいくところなんて見たくない」

菫「……だから、大星は孤独であるべきだと言うのか」

照「そう。淡は下を見るべきじゃない。どんなに互いが歩み寄ろうとしても、部員達と淡が
分かりあうことはない。どんなに手を伸ばしても星に手が届かないのと同じように」

菫「……」

照「だったら、淡は上を目指し続けるべきだ。そうすれば、ちゃんとした目標がある限り
あの子はどこまでも強くなれる」

菫「……照」


菫「お前の考えは分かった。だがお前には白糸台麻雀部のエースとして、先輩として、
それに見合った態度を取ってほしい」

照「分かった。これからは私からも言っておく。でも、無理に淡と部員を仲良くさせようとは思わない」

菫「……なあ照。大星がお前にとってどういう存在なのかは、私にはわからない。
本当に強い者同士でしか分からないもの、見えないものもあるんだろう。私ではその
領域に踏み込むには力不足なんだろう」

菫「だがな。私にとって、大星は可愛い後輩なんだ。強すぎるせいでお前に縋るしかない
あいつのことを不憫に思うし、大星の孤独を埋めてやれない私自身を恥ずかしく思う」

菫「お前がなんと言おうと、私は大星に部の皆と仲良くなってほしい。一緒に上を目指す
仲間になってほしい。それが麻雀部としてあるべき姿だと信じてる」

照「……」


菫「……話はそれだけだ。付き合わせてすまなかった」

照「構わない。じゃあ、私は帰る」

菫「ああ」

照「……」ガラ

菫「――照」

照「……?」ピタ

菫「最後に一つだけ訊いてもいいか?」

照「なに?」

菫「お前も大星と同じで……私たちと打っても、楽しくないのか?」

照「……」


菫「私たちはお前のことを大切な仲間だと思ってる。確かに、力の差があり過ぎて、たまに
お前が怖くなるときがある。でも、それでも私はお前と打っていて楽しいぞ。
 だがお前は……私と打っても楽しくないのか? 孤独を感じるのか?」

照「……」

菫「応えてくれ、照。頼む」

照「……」

照「楽しくない」

菫「っ……」

照「でもそれは、菫のせいじゃない」

菫「?」

照「私は……」


照「私は、麻雀……好きじゃないんだ」

淡「・・・100%」

照「ッ!?」

淡「初めて“敵”に出会えた・・・いい試合をしよう」


菫「麻雀を、好きじゃない?」

照「ああ」

菫「ならお前は、なんのために麻雀を打ってるんだ」

照「……」

照「……帰る」

菫「お、おい、照!」

ガラ、ピシャ

菫「照……」

菫「……私が間違ってるのか?」

菫「皆で楽しく麻雀を打ちたいって……そう思う私は間違ってるのか?」

菫「教えてくれ、照……大星」

すみません、四時間もあれば終わると思ってたんですが、まだまだ終わりそうにないので
一度落としてまた昼ごろに立てなおした方がいいですかね?こっちももう眠くなってきたので
もし昼ごろに残ってたらまた書きます。落ちてたらまた立てなおすことにします

残ってたら続き書く、これは誰でも言うが落ちたら建て直す、これを言える奴は少ない
支援せざるを得ない

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

保守ありがとうございました。遅れてすみません
再開します


二日後
昼休み

淡「あー、やっとお昼だ」

淡「友ちゃん、一緒にお昼食べよ」

友「あ、う、うん……」

友「あ、あの、ごめん大星さん……私、今日もちょっと……」

淡「……そっか」

友「う、うん。本当にごめんね。そ、それじゃ」タタタ

淡「……」

淡(私が白糸台の一軍に入ってから、あの子とも気まずくなっちゃったな)


淡(私のこと初心者とか言ってたのまだ気にしてるのかな。結局麻雀部にも入らなかったみたいだし)

淡(――ま、いっか。私にはテルがいるんだ。普通の友達なんていらないし)

淡(早く部活に行きたい……テルに会いたい)

ガラ

菫「大星、いるか」

淡「? 菫?」

菫「話がある。麻雀部に関することだ」


淡(あ、大将の話だ!)

淡「はーい、すぐ行きまーす!」ウキウキ


屋上

淡「菫、大将の件どうなったの?」

菫「ああ、さっき顧問とも話してきた。次の大会の大将はお前だ、大星」

淡「やったー! テルと同じポジション!」

菫「……それで、だ。大星」

淡「? まだなにかあるの?」

菫「お前の、日頃の態度についてだ」

淡「……」ハァ

菫「最近のお前の、部員に対する態度はあまりにも目に余るものがある。先輩に対しても「弱すぎる」だの「あなたと打っても仕方ない」だの、
挙句の果てには「雑魚」とまで言ったことがあるらしいな」

淡「だって本当のことじゃないですか」

菫「心の内でどう思おうとそれはお前の勝手だ。だが本人を前にしてわざわざ言う必要のないことだろ」

淡「陰口ならオッケーってこと?」

菫「そういう問題じゃない! 話を逸らすな!」

淡「こういうのって、「陰口を叩くくらいなら本人に直接言え」とか言われるものだと
思ってたけど。直接言うのもだめなんですね」

菫「当たり前だろ」

淡「だって弱いんだもん。菫、私はあなたにも期待してたんだよ?」

菫「なに……?」

淡「テルと打って、白糸台の一軍は別格なんだ、って嬉しかったのに。蓋を開けてみたら強いのはテルだけじゃん」

菫「……」

淡「白糸台で歴代最強とか、チーム虎姫とか言われてるけど、私に言わせれば白糸台なんて
テルのワンマンチームだよ。ま、今は私とテルのチームだけど」


菫「……大星。お前ももう高校生だろ。子供じゃないんだ。自分の発言が他人を不快にさせていることに気付け」

淡「私が勝ったら好きにさせてくれるって約束したくせに。先輩なら約束守ってよね」

菫「……あのな、大星」

菫「お前の気持ちは分かる。お前にとって照は初めて出会えた自分の同類なんだろう。
お前が照に入れ込んでるのもわかる。でもな、だからって他の部員のことを蔑ろに
していい理由にはならない。そうだろ」

淡「うるさいなぁ。文句があるなら私より強くなってから言ってよ」

菫「っ……大星!」

淡「それに、心配しなくても来年には私退部してるし、来年からはまた普通の白糸台に戻れるよ」

菫「――――」

菫「――――ぇ」

菫「な……ん、だと?」


淡「なにって、退部だよ。麻雀部を辞めるの」

菫「ど、どうして」

淡「だって、来年にはテル卒業しちゃうじゃん。なら麻雀部なんている意味ないし」

菫「……」

淡「ああ、でも麻雀は続けるよ。おじいちゃんに頼んで家にプロを呼んでもらって、
本格的に稽古をつけてもらうんだ。
 テルは卒業したら大学にいくのかな? まああれだけ強ければ即プロ入りもあるだろうけど。
とにかく私も卒業したらテルと同じ道に進むの。クラブ活動なんかで遊んでる暇ないし」

菫「――大星」

淡「ああでも、テルと同じ大学に入ってインカレ四連覇ってのもありかなー。――ん?」

パシンッ!


淡「あぅ――ッ!」ドサ

菫「白糸台を……いや。全国の雀士を舐めるのも大概にしろ!!」

淡「……」

菫「白糸台の一軍になりたくて、でもなれなくて……三年間毎日毎日何時間も必死に
麻雀を打って、青春を捧げて、それでも一度も大会に出ることなく卒業する部員が、
いったいどれだけいると思ってる」

菫「一子だってそうだ。あいつは今年卒業で、三年になってやっと一軍入りして大会に
出られるって喜んでたんだ。だがお前が入部して、繰り下がりで二軍落ち……団体戦で
大会に出る夢はもう叶わない」

菫「だがそれでもあいつが文句一つ言わなかったのは、お前が……お前なら白糸台を優勝
に導く一人になってくれると信じたからだろ。全国優勝の夢をお前に託したからだろ!」


菫「お前はそういう……他の部員の夢や、期待や、想いを受け継いで、あるいは蹴落として。
白糸台の一軍の座を勝ち取ったんだ。そんなお前が……照がいないから部を辞めるだと?
ふざけるな……ふざけるなよ……馬鹿みたいじゃないか」

菫「お前みたいなやつがいてくれるなら、私や照が卒業しても大丈夫だって……
お前になら白糸台を任せられるって、そう思ってた私が……馬鹿みたいじゃないかぁ!」

淡「知ったことじゃないよ、そんなの」

菫「!?」

淡「あなたたちが勝手に私に期待して、勝手に失望した。それだけじゃん。
私があなたたちに勝手に期待して、勝手に失望したのと同じことだよ」

菫「……私たちの実力では、そんなに不足か。部にいることすら耐えられないほどに」

淡「はい」

健やんに矯正してもらおう


淡「いつもあれだけ言ってあげてるのに、まだ気づいてなかったの?
あなたたち、本当に弱いよ。相手にならない」

菫「……」

淡「そんなあなたたちでも、全国ではそれなりに上位の選手なんでしょ? だから私は、
全国にも期待してない。だから全国優勝にも興味ない。
全国なんて、テルが行くっていうからついていってるようなものだもん」

淡「まあ、テルの強さを三連覇っていう完璧な形で歴史に残したいっていう気持ちはあるけどね。
そういう意味では、全国優勝には意味があるかも。でも、それだけだよ」

淡「だいたい、夢を受け継いだ? 笑わせないでよ。私は別に、一子の想いを
継いだから一軍にいるわけじゃない。――強いから。私は強いから一軍なの。
そして一子は弱いから二軍になった。それだけじゃん」

菫「……」


淡「そこに勝手に感情論を持ちこんで美的解釈しないで。麻雀部も、ただの部活でしょ?
つまんないから辞めるの。――話はそれだけ? なら帰るね」

菫「お前は……一緒に麻雀を楽しめる仲間が欲しくて、麻雀部に入ったんじゃないのか」

淡「違うよ」

淡「今なら、私がなんのために今まで麻雀を打ってきたのかわかる。私は
テルに出会うために、麻雀を続けてきたんだ」

淡「テルも同じだよ。私はずっと、どうしてあんなに強い人がこんなお遊びみたいな麻雀部で
腐らずに続けてこれたのか不思議だった。でも、きっとテルも私に出会うために今まで
部に残ってたんだ」

菫「違う」

淡「違わない。私たちが出会うためだけに、白糸台麻雀部はあったの。そして私たちは出会った。
まるで星と太陽が引力で引かれ合うみたいに。――ふふ、なんだかロマンチック」


菫「……」

淡「まあ、心配しなくても全国優勝はしてあげるから。テルが卒業するまでは部にもいてあげる。
でもその後は私の好きにさせてもらうから」

ガチャ、バタン

菫「……」ギリ

菫(もう、だめだ。大星はもう、何を言っても無駄だ)

菫(もう私では大星を止められない。諌めてやることすらできない。照も大星を放任してる……)

菫(誰かがあいつに勝つしか……全国で誰かが大星に勝てば、きっとあいつの考えも変わる)

菫(だが全国にすら、大星と渡り合える選手なんて何人いるか……)

菫(それに、大将の大星が負けるということは同時に、白糸台の敗北も意味する。それは……だめだ)

菫(大星が改心するためには、誰かが勝っても負けてもだめなんだ)

菫(勝ちもせず、負けもせず、それでも大星に負けを認めさせられるような選手……そんなの、いるわけない)

菫(くそっ……!)


一ヶ月後

菫「県予選突破、まずは御苦労だった。皆全国大会までの間、気を緩めることなく今の状態を
維持してくれ」

渋谷・亦野「はい」

照「……」コク

淡「……」ボー

菫「……大星、聞いてるのか?」

淡「え? ああ、聞いてるよ。それより、全国ではなるべく私に回る前に他家をトばしてくれません?」

菫「お前が予選で打ったのは決勝だけだろ」


淡「あの程度の相手に大将まで回ってくるのがまずおかしいんだよ。四人もいればどっかで
トばせるでしょ。わざわざ私の手を煩わせないでくださいよ」

菫・亦野・渋谷「……」

照「それは悪かった。私がもっと先鋒で点を取っていればよかったな」

淡「そんな! 違うよ。決勝でテルが何万点毟ったと思ってるの!
問題なのは風前の灯だった他家を三人がかりでトばせなかった後の人達だってば!」

菫「……とにかく、立ち上がりとしては悪くない。全国では大星まで回る回数も増えるだろう。
油断だけはするなよ、大星」

淡「……」シーン

菫「……」ハァ


淡「そうだ。他の県の結果も出たんだよね? どうなったんですか?」

菫「ん、ああ。だいたい予想通りといったところだな。千里山、臨海、永水、そして
うちがシード校になるだろう。他もだいたい予想通りだ」

淡(永水……テルの言ってた、テルとやりあえる二人のうちの一人、神代がいる高校か。私は大将だから先鋒にくるだろう神代とは当たらない。ちぇ)

淡(でももう一人……龍門渕の天江衣。彼女は大将、私と当たる。実はちょっとだけ
期待してるんだよね。テルのお墨付きなら、期待はずれにはならないだろうし)

淡「龍門渕は勝ったんですよね?」

菫「龍門渕は――ん? いや、来てない……? 予選で負けたようだ」

淡「は!?」ガタッ


淡「負けた? 龍門渕が? え、大将まで回らなかったの?」

菫「ちょっと待て、いま調べる」ペラペラ

菫「……いや、回ってるな。他校とさほど差はない状態で回ってきたらしい」

淡「はあああああ!? なにそれ、じゃあ単純に実力で負けたってこと!?」

菫「まあ、そういうことなんだろうな。龍門渕がどうかしたのか、大星」

淡「……」ガックリ

淡(なにそれ……いい加減にしてよ……どんだけ私の期待を裏切れば気が済むのよ)

淡「……で、どこに負けたの?」

菫「長野代表は……清澄……?」


淡「清澄? どこそれ」

菫「私も聞いたことがない。無名校だろう」

淡「無名校?」イラッ

淡(テルに認められたくせに、そんなどこの馬の骨とも分からないような高校に負けるなんて、
テルの顔に泥を塗るつもり? イライラするなぁ……)イライラ

淡「清澄の大将って誰?」

菫「えーっと……清澄、清澄……あった、これだ」ペラペラ

菫「大将――え?」

淡「? どうしたの?」

菫「……大将……宮永、咲……?」


照「――ッ!」ピクッ

淡「宮永?」チラッ

誠子・尭深「……」チラッ

菫「……照、お前の……妹さんか?」

照「……違う」

照「私に妹なんていない」

菫「……そうか」

淡(……ふーん?)

練習後

淡「菫」

菫「ん、どうした?」

淡「清澄と龍門渕の県予選決勝の映像とかってある?」

菫「ああ、あるぞ。欲しいのか?」

淡「うん。ちょっと全国に向けて相手チームを研究しとこうかな、って」

菫「! お、大星……!」パァ

菫「どうした、いつになくやる気じゃないか。ああいいぞ、すぐ持って来てやるから、
そこで待っててくれ!」タタタ

菫(大星が相手チームを研究するなんて。よかった……大星もやっと本気になってくれたか)

菫「――ほ、ほら、持ってきたぞ。長野と大阪、鹿児島に……強豪校のはあらかた――」ハァハァ

淡「長野だけでいいよ。じゃ、これ借りるね」ヒョイ

菫「え……?」ポカン

ちょっとご飯行ってきます


自宅

淡「……」ジー

淡「……弱いじゃん、龍門渕。っていうか全部。長野レベル低いなー」

淡「風越の先鋒と清澄の中堅はまあまあだけど、他が弱すぎる。原村和も
期待してたほどじゃないな。インターミドル優勝したらしいけど、ま、所詮は
私のいないインターミドルでだしね」

淡「さってと。退屈な副将までが終わったし、やっと大将戦だよ」ピッ

淡「……」ジー

淡「……」ジー

淡「……ふーん」

淡(天江衣……悪くないじゃん。確かに、この県の中では別格だわ。白糸台でも余裕で
一軍入りできる。というか、テル以外でこの子に勝てる人、うちにいないな)

淡(案外私ともいいとこまでやりあえるかも。テルが認めるだけある)

淡「……あとは……清澄」

咲『――ツモ。嶺上開花』

淡「……」

淡「まあ、悪くはないね。天江に手も足も出ない他の二校と違って、ちゃんとやりあえてるし」

淡「でも、総合力だと天江の方が面白いね。別に清澄の大将には魅力感じないや」

淡「天江衣とやりたかったな……この子個人戦にも出ないらしいし、なんなんだろホント」

解説『――数え役満! 宮永咲選手が本大会二度目の数え役満を和了りました!』

淡「……宮永、か」

淡(実力云々よりも、この名字が気になる。テルの反応から察するに、どうも何かしら
テルと関係ありそうなんだよね)

淡「……オッケー。とりあえず、期待しといてあげる」

淡「失望させないでよね、宮永咲……!」ゴッ

咲さんのベストプレイって最後の数え役満より池田への槍槓差し込みだと思う

麻雀楽しまされるのか…

>>375
あとカンドラも乗せも


抽選日

ざわ・・・ざわ・・・

菫「トーナメント表の抽選日だ。まずはうちがどこと当たるのか、しっかりとチェック
しておくんだぞ」

渋谷・亦野「はい」

菫「……それにしても、意外だな。大星は今日来ないかもしれないと思ってたんだが」

淡「トーナメント表は私も興味あるからね」

菫(大星が最近やる気だ……嬉しいことだ)

猿とふとももレズとデビ子死んじゃうの?


淡「ふぁ~あ」

淡(退屈ぅ……どうでもいいよ、シード校にもなれなかった雑魚のことなんて。それより……)

『続きまして、清澄高校』

淡「お。やーっときた」

菫「なんだ。清澄を注目してるのか?」

淡「まあね」

『清澄高校――』

淡「……同じ側か。清澄と当たるのは準決勝か」

菫「清澄とうちが勝ち抜ければ、決勝でも当たる可能性はあるぞ」


淡「それはないよ」

菫「? なぜだ」

淡「清澄の大将は……」

淡「私が、潰すから」ゴッ

菫「……」ゾクッ

菫(本気だ……本気の大星だ)

菫(負けるわけがない。こんな怪物が……)


※ストーリーの展開上、抽選はこっちの都合にさせてください。
白糸台と臨海が入れ替わったと思ってください。

>>379
あらたそが死んじゃう


数日後

淡「さーて、準決勝か」

 あれから、白糸台は当然のように勝ち進んでいった。私は準決勝まで一度も卓につくことなく、
全て副将まででどこかがトんで終わった。テルが殺し損ねた死に損ないに他の三人が
止めを刺すような形が常だったけど、私としてもまあ文句はない。
 そして準決勝の日が訪れた。この日、白糸台は清澄高校と対決する。

菫「永水が敗退とはな。番狂わせもあったものだ」

淡(神代も期待はずれだった。最後にちょっといい感じの雰囲気になってたけど、アベレージは普通だったし)

照「……」

淡(それより……テルの様子が少しいつもと違う。普段よりももっと静かだ)


照「――じゃあ、行ってくる」

淡「行ってらっしゃい、テル」

菫「頼んだぞ、照」

照「……」コクン

淡「――あ、そうだ。テル!」

照「?」ピタ

淡「できれば今日は軽く流す感じでやってくれない? 私清澄の大将と打ちたいんだ。
テルが本気だしたらどっかトんじゃいそうだし」


照「……」

菫「馬鹿なこと言うな。照、いつも通り打ってこい」

照「分かってる」

淡「ほんと心配性だなぁ皆。私までに100点残してくれればそれで大丈夫だよ」

照「……」

淡「? どうしたの、テル」

照「……淡」



照「――侮ると負けるよ」


淡「――え?」

照「……」バタン

淡「……負ける? 私が……?」

菫「照の言う通りだぞ大星。どんな相手でも油断するなよ」

淡(……テルは私の強さを知ってる。その上で、私が清澄の大将に負けるかもしれないって言うの?)

菫「無論、私たちも手加減するつもりはない。最悪――いや、最悪ではないが、お前に
回さずにトばせるなら、そうするつもりだからな」

淡(テルが認めた二人、神代と天江衣。清澄はそのどちらにも勝ってる。それは偶然なんかじゃなく、実力通りの結果だったってこと?)


菫「お前はその日の気分で手を抜いたり全力でいったりムラがありすぎる。ただでさえ
お前はまだ全国で打ってないんだ。万が一ってことも……」

淡(咲……宮永咲。やっぱりなにかあるんだ、テルと)

菫「……大星、聞いてるのか?」

淡「菫、清澄の大将って宮永だよね? これ、本当にテルと無関係なの?」

菫「……さあ。私にもなんとも言えない。ただ、照に妹がいるという話は聞いた。
普段あいつは否定してるが、昔、ポロっとな」

淡「ふーん」

淡(妹……テルの妹、か)

淡(――面白そうじゃん)ゴッ


数時間後

実況『さあ、Bブロック準決勝も残すところこの副将戦の南場と、大将戦のみとなりました』

実況『先鋒で宮永選手が広げた大量リードを守る白糸台。しかし中堅戦で清澄と姫松に
大量失点を許してしまいました』

実況『続く副将戦、原村和のめざましい活躍により清澄が白糸台に猛追を仕掛けています。
両校の点差は20000点にまで縮まりました。白糸台はこのリードを守りきって
大将に繋ぐことができるのか。そして現在一人沈み状態の有珠山はここから
追い上げることができるのか』

淡「――あんなこと言われてるけど?」イライラ

尭深・菫「……」


淡「尭深……あなた中堅戦で何万点取られたか分かってる?」

渋谷「……」

菫「やめろ大星。個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だろ」

淡「は? で、個人の手柄もチームの手柄ってわけ? 今までそうやってテルの手柄を
自分のものみたいに語ってきたんだ」

菫「……っ」

淡「だいたい菫、あなたもマイナスだったよね。で、誠子もマイナス。……あほらし。
ていうか、なんか菫の試合でなにがあったのかよく覚えてないんだけど」

淡(そういえば、なんか次鋒戦はいつのまにか終わってたな)

菫「姫松と清澄の中堅は強敵だった。尭深には少し荷が重い相手だったんだ」

淡「誠子も苦戦してるっぽいね」

菫「確かに、清澄に追い上げられてるな。だが一位で大星に回すことはできるだろう」

淡「当たり前じゃん。テルが何万点取ったと思ってんの。これで逆転なんかされたら、
もう軽蔑だよ、軽蔑。もう絶対敬語使わないから」

渋谷「……」


照「淡」

淡「ん、なぁに、テル」

照「そろそろ淡の番。準備して」

淡「準備なんていらないよ。ふつーに打てば勝てるってば」

照「淡」

照「――言うことを聞け」

淡「――っ」

菫「……!」

菫(照が大星を嗜めた……?)


淡「……テル。本気で思ってるんだね、私が負けるかもしれないって」

照「ああ」

淡「……ふーん」

菫「……」

菫「大星、誰であれ油断は禁物だ。照が言いたいのはそういう――」

淡「黙ってて」

淡「……いいよ」

淡「じゃあテル、賭けない?」

照「賭け?」

淡「私と清澄、どっちが勝つか」

照「……」

菫「おい、馬鹿な話はよせ。これは全国大会なんだぞ。トトカルチョなんて言語道断だ」

照「構わない。その勝負乗る」

菫「お、おい照!」

淡「決まりだね。安心してよ菫。私はもちろん、私の勝ちに賭ける。私が自分から
負けにいくようなことはしない。むしろ、これで心おきなく全力で清澄を潰せるよ」

淡「で、テルは清澄の勝ちに賭けるんだね?」

照「……」

照「いや、勝つのは白糸台だ」

淡「え?」

菫「……? 照……?」

淡「……」

淡「――――ぷ」

淡「あ、あはははははっ。な、なぁんだテル、やっぱり私が勝つと思ってるんじゃん!」ケタケタ


淡「あーおっかしー……こんなに笑ったの久しぶり。なんだかんだで、テルも勝算のない勝負はできないか。
でもこれじゃあ賭けにならないよ。私もテルも、どっちも私の勝ちに賭けちゃったら、ねえ?」

菫「当たり前だ。だから賭けなんてのはもう――」

淡「はいはい、分かってるよ。この話は終わり。いいよね、テル?」

照「……」

淡「……テル?」

照「――なに言ってる。私がいつ淡の勝ちに賭けたの?」

淡・菫「え?」

照「私は『白糸台が一位通過する』と言ったんだ。『淡が勝つ』とは言っていない」

菫「ど、どういうことだ?」

照「私は――『宮永咲が勝つ』に賭ける」

渋谷・菫「……!?」

淡「……ふーん……? 一位通過するのは白糸台。でも勝つのは清澄の大将。そう言いたいんだね?」

照「そうだ」


菫「得失点差で大星が負ける、ということか?」

淡「ちがうよ菫。見て、あの誠子の無様な対局を。もう清澄と白糸台の点差はほぼ
無いに等しい。白糸台が勝つなら、最低でも私は1万点ビハインドくらいにしかならない。
まあ、別に私が清澄に得失点で100点でもマイナスになったら負け、っていう
条件でもいいけど、テルが言ってるのはそういうことじゃないよね?」

照「ああ」

照「打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく」

淡「最高に面白いよテル。あなたと打ってるときでも、こんなに武者震いはしなかった」

淡「ペナルティは後払いでいい? とびきりすごいの考えとくから、覚悟しといてね」

照「ああ」


実況『副将戦終了――! 清澄、怒涛の追い上げにより、ついに白糸台を射程圏内に
収めた――!』

淡「ちょうど終わったね。じゃあ、行ってきます」ガタ

バタン

菫「……照、どういうことなんだ? 白糸台が勝つのに、淡が負けるって……」

照「……」

照「点数で勝ったからといって、それが必ずしも勝利を意味するわけじゃない」

菫「……」

照『――強すぎる相手が格下にあわせようとすると――』

菫(照が言ってたのは……まさか……)


廊下

淡「……くそ」イライラ

 イライラする。イライラする。イライラする――!

淡「私が負けるって? そんなわけない。私とテルが高校生最強なんだ。そこに
他人が割り込んでくるなんて、ありえない――!」

淡(清澄……潰してやる。もう麻雀が打てなくなるくらいにボコボコにしてやる……! 今日という日を一生のトラウマにしてやる!!)

淡「……ん?」

カツン、カツン

淡「あれは……」

咲「――」カツン、カツン

淡(あの子が――宮永咲)

咲「……あ」

淡「――よろしく、清澄さん」

咲「あなた確か、白糸台の……」

淡「大星淡。あなたは宮永さんだよね?」

咲「はい」

淡「宮永はうちの部にいるから、呼びづらいから咲ちゃんって呼んでいい?」

咲「あ、はい。じゃあ私も淡ちゃんって呼んでもいいですか?」

淡「もちろん。仲良くしてね。あと、同級生なんだから敬語使わないで。なんかムズムズするから」

咲「あ、ごめんなさい」

淡(まあ、今日以降あなたと卓を囲んで会うことはないだろうけどね)ゴォォッ!

咲「あの」

淡「ん、なあに?」

咲「その……お姉ちゃん、元気かな?」


淡「――テルのこと? やっぱり姉妹なの?」

咲「え、あ、うん」

淡「ふーん」

淡(そっか……ますます面白くなってきた)

淡「テルなら元気だよ。咲ちゃんも先鋒戦見たでしょ?」

咲「うん。凄かった。お姉ちゃん、びっくりするくらい強くなってた」

淡「……」ピク

淡(強くなってた? なに、その『昔は私の方が強かったのに』みたいな上から目線。
イライラするんだけど)


淡「咲ちゃん、テルと何かあったの?」

咲「え、どうして?」

淡「だってテル、『私には妹なんていない』とか言ってたから。もしかしたら
咲ちゃんのことなんて眼中にないのかも」

咲「……!」ビク

咲「……や、やっぱりそうなのかな……」

淡「うん。きっとそうだよ」ニッコリ

咲「……」グス


咲「私ね、昔お姉ちゃんにひどいことしちゃったんだ」

淡「ひどいこと?」

咲「……お姉ちゃんは、きっとまだ私のこと許してないんだと思う」

咲「だから私、麻雀でお姉ちゃんに伝えたいことがあるの。そのためにも、この試合、
絶対負けられないよ」

淡「ふふ、そうだね。絶対勝たないとね」

咲「うん。この試合で勝って、決勝に行って、お姉ちゃんに会いに行きたい」

淡(――無理だよ、咲ちゃん)

淡(あなた、ここで終わるんだから)ゴッ


※ここから長い麻雀パートに移ります。あまり麻雀得意ではないので、いろいろ
ミスがあると思いますが生温かく見守ってやってください

準決勝大将戦
東一局
白糸台:125000
清澄:113000
姫松:98000
有珠山:64000
親:咲

実況『さあ、ついに準決勝大将戦のスタートです。決勝戦に上がれるのはこの中の上位
二校のみ! いったいどこが勝ち上がるのか――!』

四人「よろしくお願いします」

淡(ラス親か。咲ちゃんは起家)

末原(清澄……借りは返させてもらうで)


東一局

末原(清澄との差は15000。これをなんとか詰めるしかない。振り込まんのは当然やとして、
親の連荘……それしかあらへん)

末原(1000点でも2000点でも、とにかく少しずつ清澄との差を詰める。親が流れたら
絶対に振り込まず、大きい手を狙う。子で安い手を和了って場を進めるわけにはいかんからな)

咲「……」4萬

末原(鳴ける、けど……鳴いたら三色が消えるし手が安くなる。子でそんな手は和了られへん。清澄の親を楽に流させたりしたらあかんねや)

淡「……」カチャ


咲「――カン」

末原「!」

末原(まずい……!)

咲「――ツモ。嶺上開花。1300オール」

実況『早速宮永選手の嶺上開花が決まった――!』

末原(また嶺上開花……あかん、また差が広がってもうた)

末原(清澄の嶺上開花を止めるには、カン材になりそうなものをなるべく捨てないこと、
順子場を作ること、捨て牌とかから清澄が持ってそうな暗刻を予想して、それから……)

淡「……」


淡(一局打っただけでわかる。場を支配する力。限定的だけど、かなり強い)

淡(嶺上開花が得意技なのかな? これを止めるには、まず咲ちゃんの支配を上回る
力で場を支配し直すしかない)

淡(まずは咲ちゃんの支配が王牌だけなのか、それともツモ牌、あるいは卓全体にまで
及んでいるのか、それを確認しないと。嶺上開花そのものの対策はその後でいい)

次局

咲「ツモ、嶺上開花」

実況『宮永選手、二回連続で嶺上開花だ――!』

末原「くっ……」


次局

淡「……」カチャ

六六六八八八北北北1234 4

淡(ツモった。――けど、今はこんな手を和了ることよりも……)4索

実況『!? お、大星選手、和了りを見逃してツモ切り――!? これはいったい
どういうことでしょうか――!』

咲「――カン」

末原「ちょ――」

咲「ツモ。嶺上開花」

実況『宮永選手、三連続和了、そして三回連続の嶺上開花だ――!』

実況『大星選手、高めを狙ったか。しかしあそこで和了っておくべきだった――!』

実況『これでついに清澄が白糸台を抜いてトップに躍り出た――!』

末原(ちょ、ちょっと……前の試合より明らかにペース早いやん……。もう三回連続やで)

末原(清澄の連続和了だけはなんとしても防がな……もう安手でも和了るべきか?)


淡「……」

淡(支配域は卓全体か。王牌は特に強力。カン材が自然と咲ちゃんのところへ流れていく
のを感じる。かなり私に近い打ち筋。――でも、防げないほどじゃない)

淡(嶺上開花は、それ自体が咲ちゃんの能力ってわけじゃない、か。あくまでも
王牌の支配から発生した結果に過ぎない。なら嶺上開花だけを防ごうとするのは無意味)

淡(まずはその結果の出所……根本的な支配を断ち切ることが重要だ)

淡(――それだけ分かれば十分。あとは私の支配と咲ちゃんの支配……どちらが上をいくか)

淡(……じゃあ、始めようか)クス



淡(――引きずりこんでやる。宇宙の闇へ)ゴォォォォォッ!!


咲「――うっ!?」ゾクッ

末原「――!?」ビクッ

有珠山「……?」

末原(な、なんやこの感じ……? さ、寒い……?)カタカタ

咲(こ、これ……お姉ちゃんや、衣ちゃんと同じ……!)

淡「ふふ」ゴォォォォ

淡「怯えることないよ。私が和了ることができるのは、どれも〝成り損ない〟の安い手ばかりだから」

咲「成り損ない?」


淡「そう。私の麻雀はまだ未完成なの。だから、完成した完璧な役は作れない」

末原「ど、どういう意味ですか」

淡「――今から教えてあげる」ゴッ

東一局

末原「……」カチャ

末原(張った。四巡目で跳満の手。早くに手作りできたんはラッキーや。ここで
一気に差を詰める)

末原「リーチ」白

淡「遅いよ」


末原「え?」

淡「ロン」

123二二二発発発中中白白 白

淡「小三元、発、白。8000」

末原「しょ、小三元……?」

末原(な、なんでわざわざそこで止めるんや。白を鳴いて二萬を捨てれば、フリテンとはいえ
大三元聴牌やないか。流局間近とかやったらまだしも、まだ四巡目。手代わりも十分
ありえる。
逆転されてんねんし、ここで大きく取りたいと思わんのか?)

淡「ふふ」

末原「!?」


※有珠山に活躍の場はありません。有珠山が上がってくるのかも分からない段階で書き始めたので、
今回は数合わせ程度に思っておいてもらえると助かります


淡「言ったでしょ? 〝成り損ない〟しか和了れないって」

末原「な、成り損ない……?」

末原(つ、つまり大三元の成り損ない……ってこと?)

東二局

末原(と、とにかく……それやったら、役牌を捨てへんかったらええだけや)

末原「……」五萬

淡「――ふふ」

淡「ロン」


三三三五五①①①②②西西西

淡「三暗刻トイトイ。8000」

末原「な――!」

末原(さ、三暗刻トイトイって……四暗刻聴牌やないか!)

末原(二回連続でこんな大物手――――いや、大物手やない。たった8000点や。
どういうことや。二回とも、もう少し粘れば役満っていう手やった。やのにそれを
わざわざ崩して満貫……)

末原「――!」

末原(ま、まさか、『成り損ない』って……)


淡(そう。『役満一歩手前の役を和了る』。それが私の力)

淡(今の手、ロン和了りかツモ和了りか……たったそれだけで、13飜が4飜にまで
下がる、未完成の力)

淡(だから、完成した強さを持つテルにはまだ及ばない。
――でも、あなたたちを倒すにはそれで十分)

淡(――見せてやる。宇宙の闇を)ゴッ

末原「……」ゾクッ

咲「……」

白糸台:137200
清澄:124400
姫松:88200
有珠山:60200


東三局:一巡目

咲「……」

咲(感じる……何かとても大きな力がこの卓に働いてる。迂闊には動けない……)

咲「……」⑨筒

末原(と、とにかく白糸台に連荘はさせたらあかんねん。ここは安手で流すしかあらへん)

末原(ちょうど配牌もいい。喰いタンで和了ってしまお)一萬

淡「――ふふ」

末原「!」ビクゥ

末原(そ、その笑い方やめて! ロンされたかと思って驚いてまうやん!)


淡「間抜けた顔。まだ一巡目だから、誰かが和了るには早い……そう高を括って
安心しきってるね」

末原「…………え?」

淡「気づかないの? もうここはあなたたちがいつも呑気に麻雀を打ってる卓とは全く
別次元の場所――『宙の中』なんだよ?」

パラララララララ……

末原「……………………ぇ?」

二三四五六七八九3455赤5

淡「――人和。おまけで一通平和ドラ1。16000」

末原「――――」


実況『れ、人和炸裂――! これは珍しい役が飛び出しました。人和は本大会では4飜として
採用しています。が、こんな役はここ数年一度も出ていません!』

実況『末原選手、これで3回連続大星選手に満貫以上を振り込んでいます』

末原(人和……? なんやそれ……地和の『成り損ない』とでも言うんか……。
こんなん、ルールさえ違えば役満やんか……!)カタカタ

淡「――ふふ。震えてるね」

末原「……!」ビク

淡「でも、まだだよ。血の気が凍るには……まだ早い」

淡「――さあ、私の親番だね」ゴッ

末原「ひっ……!」カタカタ


東四局

末原(だ、大丈夫や。今は白糸台が親番。私が一巡目で振り込んでも人和はない……!)

末原(地和の成り損ないやって言うんなら、あんな速攻の手は子のときにしか……!)

淡「――ふふ」

末原「……!?」ゾクッ


淡「ダブルリーチ」2筒


末原「――!」

末原(ぁ――て、てんほ……)

末原(こ、こんなん無理や……捨て牌もないのに、危険牌なんかわかるわけない……)

末原(いやや、振り込みたくない――!)


咲「――カン」


末原・淡「!?」


咲「――ツモ。嶺上開花」

1133456777 1  2222

咲「3000,6000です」

淡「……はい」ジャラ

末原「……」ジャラ

末原(な、なんやこれ……なんやこれ……)

末原(私まだ一回もツモってないのに……こんな……まるきり蚊帳の外やないか)

末原(いや、まだや……まだまだいける。こんなことでメゲたらあかん!)


淡(配牌でその手……確実に槓材を揃えて和了る力……)

淡(私の支配は消えてない。じゃあこれは純粋に、咲ちゃんの支配力が上回ったってこと?)

淡「……」ギリ

淡(やってくれるじゃん。いいよ、面白いよ)

淡(思い知らせてやる……)

咲「……」

白糸台:148400
清澄:135200
姫松:59200
有珠山:57200


※牌の表記は索子「1」萬子「一」筒子「①」でいきます
わかりづらくてごめんなさい


南一局

有珠山「……」カチャ

末原「……」カチャ

末原(今度は六巡目までこれた。でもまだ白糸台がどんな手を張ってるかわからん。
高めは狙うけど、無茶はできん。常に警戒しとかなあかん)

末原(白糸台の捨て牌……字牌もなしに索子と筒子ばかり切ってる。萬子の染め手か
……まさか、国士ちゃうやろな)

淡「……」カチャ

咲「……」カチャ


一一二二三三七八九九九①③

淡(河だけ見れば萬子で染めてるように見えるはず。でも実際は②筒待ち)

淡(成り損ないも絡まないダサい手だけど、今はこれでいい)

有簾山「……」②筒

末原「……」②筒

淡「……」カチャ

実況『大星選手、有珠山と姫松からの和了り牌を見逃した! これはあくまでも
清澄を狙い撃ちするということか――!?』

淡(雑魚から毟ったって私の気は収まらない。咲ちゃんから直撃もらわないとね)


淡(分かってるんだよ咲ちゃん。②筒、溢れてるんでしょ? 早く切りなよ)

咲「……」カチャ

二二四五②22245678 六

実況『宮永選手、六萬をツモった! しかしこれで②筒が溢れてしまった。これは
振り込んでしまうか――!?』

咲「……」4索

淡「……!」ピク

実況『おっと、宮永選手、聴牌と三面待ちを崩して4索切り――!? 結果的に
大星選手への振り込みは回避できたものの、これはどういうことでしょうか』

淡(……聴牌に取らない……? 私の当たり牌を読まれてる? でも、これじゃあ
咲ちゃんも和了れない。それともチンタラ回し打ちするつもり?)

淡(そんなことしてる間に私がツモるとかは考えないの? ②筒は山にあと一枚。
私なら十分引ける。それもそう遠くない、数巡後に)

淡(溢れた牌を残して回し打ちなんてしてたら、私の速度に敵うわけない。
――それでも、咲ちゃんが勝てると確信してるんなら……私には『絶対に引けない』と
思ってるってことだ。②筒は私のツモれる位置にない。……つまり)

咲「……」カチャ

二二四五六②2225678 二

咲(――四枚目の②筒は、嶺上牌にある。淡ちゃんがツモることはない)

咲(私は次に2索をツモるから、それでカン……②筒を引いて嶺上開花……!)

淡「……」

淡(……そういうこと。あくまで嶺上開花に拘るんだ)

淡「……ふふ」

末原「……!」ビク

淡(それなら――)


淡「……」タン 七萬

有珠山「……」九萬

淡「――カン」カチャ

一一二二三三八八九九九①③ 九

咲「!?」

咲(あ、そ、その②筒は、私の――!)

ゴォッ!
一一二二三三八八①③ ②  九九九九

淡「ツモ。嶺上開花。400,700」


咲「うぅ……」

淡「ふふ」

咲(私が淡ちゃんの当たり牌で和了ろうとしてたことが読まれた……?
まさか嶺上開花を横取りされるなんて……)

淡(馬鹿にしないでよね咲ちゃん。私の和了り牌を握り潰した上で、その牌で
ツモ和了ろうなんて、ちょっと調子に乗り過ぎだね)

淡(……とはいえ、私も満貫手を1飜手にまで下げられちゃったか)

淡(――そういえば、こんな安い手で和了るのなんて何年ぶりだろう。
テルにかっこ悪いとこ見せちゃったな)


淡(テル……私は咲ちゃんに勝てないって言ってた。今のところ得失点差では1000点
くらい勝ってるけど、これじゃ互角だって言われても仕方ない)

淡(テルならきっと、もう二位に五万点差つけててもおかしくない。なのに私は
たったプラス1000点……?)

淡(私は――私は世界でただ一人、テルの隣を歩ける存在じゃなきゃだめなんだ。
こんなところで咲ちゃんなんかと『いい勝負』してる場合じゃない)

――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――

淡「……」ギリ

淡(いいよテル。見せてあげる……!)ゴッ‼


南二局

実況『さあ前半戦も南二局に突入しました。清澄と白糸台の両校が凄まじい活躍を見せる中、
有珠山は焼き鳥状態、そして姫松の末原選手は既に39000点の失点となっています』

実況『そしてその姫松の親番。末原選手、この親はなんとしてもものにしたいところでしょう』

末原「……」

末原(こんなこと言ったら主将には叱られるやろうけど、私は白糸台を抜いて一位抜け
なんて狙ってへん。もちろん決勝戦では白糸台も倒すつもりや。でも今この場は、とにかく
二位抜けでもいいから決勝を目指すことが優先)

末原(――そう思ってたのに、二位の清澄との差はもう取り返しのつかんところまで来てる。
……なんとしてもこの親で連荘して差を詰めなあかん)


末原「……」カチャ

一二二三三四四六七八九九発 中

末原(親番でめっちゃええ配牌や……と言いたいところやねんけど、役牌が二つ……)

末原(今まで打ってきてここまで役牌を切りたくないと思う対局は初めてや。それも、
相手は平気で人和なんか和了りよるし……。有り得るで、人和小三元なんてふざけた手が、
この白糸台の大将に限っては)

末原(でも、じゃあこれ持っとくんか? 仮にどっちかを頭にできても、もう片方は
切らなあかん。どっちも抱えるつもりならチートイツしかあらへん。せっかくの親番……
それもこんなええ配牌でそんなことやっとったら、勝てるもんも勝てへん。攻めるんや!)

末原「……」中


淡「ポン」

末原「!」ビクッ

末原(も、もっとった……やっぱり配牌から中の対子……)ブルッ

咲「……」カチャ

有珠山「……」カチャ

末原「……」カチャ

一一二二三三四六七八九九発 赤五

末原(じゃあ、やっぱり持っとるんか? 発の対子……まさかこれで和了るなんてことは……)


末原(切りたくないけど……でも切らな……まだ二巡やで? 二巡で11飜以上の手が
入って聴牌しとるんや。勝負するしか……ない!)発

淡「ポン」

末原「うっ!」ビクッ

末原(ぽ、ポンか……よかった……い、いやよくない。小三元濃厚やないか)

末原(でも、もし白糸台が聴牌やったとしても、うちもこれで張った。ダマでも十分やけど、
あと1飜増えるだけで24000点が36000点にまで跳ね上がる)

末原(ツモれれば最高やけど、もしロンなら……せっかくの三倍満を倍満どまりに
してまう。リーチをかければ三倍満確定なんや)

末原(――あかん……リーチなんてもってのほかや。狙い撃ちされてお終いや。そんな
甘い相手ちゃうで)


※ドラは基本表記しませんが、役宣言でドラがあったら「ああ、これがドラなのかな」くらいに補完してください

末原(でも、もし……もし和了れるなら、リーチかけるべきちゃうんか? こんなええ流れ
もう来えへんかもしれん。今が勝負のときちゃうんか? うちは今二回振り込みの危険を
犯して役牌を切ったんちゃうんか。そこまでやったのに結局保身に走るんか? くそ、
どうすればええんや……)

淡「……チッ」

淡「あのさ」

末原「っ、な、なんですか?」

淡「ざ……っ、ふー……えっと、早く打ってもらえます?」

淡(なに悩んだって同じだよ)


末原「あ、す、申し訳ありません」アセアセ

末原(……行くしかない! 勝負や!)

末原「リーチ!」

淡「……」

淡(リーチ、か……)

淡(――ここで潰すか? いや、焦らなくてもこんなのいつでも始末できる)

淡(それより、私のこの手……テルにいいとこ見せようと思ったのに、こんな無様
な手が揃うなんて……最悪だ。まだ本調子じゃないのかな)

淡(こんな手で和了りたくないな……もういっそ姫松に和了らせようかな。とりあえず、
この巡は放置してみるか)


咲「……」カチャ

末原「……」カチャ

末原(こい……! 頼むわ、来て……!)

末原「……」

末原「……」チラッ





末原「…………ぁ」


末原(う……嘘やろ。こんな……な、なんでうちにばっかりこんな牌が……クソ……!)

末原「くぅ……」

淡「……」フー

淡(白をツモったのかな。まったく、事ここにきてそんな牌をツモるなんて、よっぽど
場を支配する力に乏しいんだね。そのくせ他者の支配に抗う力もないなんてね)ヤレヤレ

末原「……」

末原(行くしかない……行くしかないんや!)

末原「……」タン 白

有珠山「……!」

有珠山(白? これは、白糸台の当たり牌じゃ……)

淡「……」

咲「……」


末原「……?」

有珠山「……え、っと……」

有珠山「ツモってもいいですか?」

淡「当たり前でしょ。誰も鳴き宣言してないんだから」

有珠山「あ、はい。じゃあ……」カチャ

末原「……」

末原(は、白が通った? 杞憂やったんかな……いやでも、中と発を鳴いて、こっから
どんな役満の成り損ないになるって言うんや……?
 小三元もない。三暗刻もない。……まさか三槓子? 有り得なくはないけど……)


末原(――いや、そうか。白糸台は小三元を和了るつもりやったけど、まだ聴牌できて
なかったって可能性もある。なら白糸台はまだ一向聴以下。私の方が早い――!)

末原(和了るで、親の三倍満!)

咲「……」カチャ

咲(まずいよ……間に合わない)

有珠山「……」カチャ

淡「……」カチャ


淡「っ……」ピタ

淡「……………………チッ」

末原「……?」

末原(なんや、今度は自分が長考? 私の親リーに対して危険な牌を掴んだんか?)

末原(ええで……振り込め……振り込め……!)

淡「……………………ま、いっか」

末原(――振り込め!)


淡「ツモ」


末原「え?」

西西西南南南① ①  中中中 発発発

淡「混老頭トイトイ混一色西南中発ドラ2、6000,12000」

末原「」

末原「……」クラッ

末原(ふ、ふざけなや……)

末原(なんやその手!)


末原(白糸台の最後の手だしは北。つまり字一色聴牌やった。それをわざわざ落として
の①筒待ち……? 有り得ん。そんなん有り得んやろ)

末原(混老頭も清老頭の成り損ないってこと? 役牌のポンからてっきり小三元やと
ばかり思とったけど、そんなんもあるんか……どういうことなん)

淡「……」

淡(でもこんなの、清老頭の成り損ないとは言えない。私の混老頭ってのは、1,9牌
の刻子を四組揃えて、頭だけ字牌とか、そういうのであるべき。これじゃ字一色の
成り損ないじゃない)

淡(星の引力で場を支配したはずなのに、どうしてこんな恰好悪い手が入っちゃったんだろう)

咲「……」

咲(①筒待ち……か)


白糸台選手待合室

誠子・尭深「……」

菫「……清澄。なるほど、お前が買うだけのことはあるな、照」

照「……」

咲の手牌
一一九九①⑨⑨1199白白

菫「今の局、確かに大星の支配は効いていた。だが同時に、清澄の支配も行き渡っていた。
大星は小三元の素は手に入れたが、同時に清澄も白を所持。そして清老頭に必要な
1,9牌の半分を清澄が独占する形になってしまった。
 結果、大星はあんな歪な形での混老頭しか和了れなくなった、ということか」


菫(大星、そいつは今までの奴とは訳が違うぞ。お前は清澄を出し抜いて和了ったつもり
かもしれないが、実際には清澄も①筒待ち。あと一手ツモ巡が違っていれば、混老頭を
和了っていたのは清澄なんだ。侮ると、お前でも本当に……)

菫「大星ほどではないにせよ、場を支配し、相手の手配を見透かす力。
それに、槓からのブースト。そして嶺上開花。確かに強敵だな」

照「……違う」

菫「ん?」

照「あの子の本当の強さは、そこじゃない」

菫「どういうことだ照。……お前、やっぱり清澄の大将のこと知ってるのか?」

照「……」


南三局

白糸台:173700
清澄:129700
姫松:45800
有珠山:50800

末原「……」カチャ

末原(あ、あかん。まだ前半戦やのに、マイナス5万点って、こんなんあっていいはずない。
しかもまたラス転落……。前の試合で清澄警戒しとったけど、白糸台……こっちがやばすぎる)

末原(せめてもっとこの人の牌譜があれば対策もできたのに、この大星淡、今大会では
予選の決勝以外打ってない。それ以外は全部大将に回ってくる前に終わってたから)

末原(せめて和了りの特徴だけでも知っておきたかった……けど、そんなん言っても
なんも始まらへんし、まずは一回和了ることや。ここまで和了れてるのが清澄と白糸台
だけとか、こんなこと許しとったらあかん)


末原(もう安手でもなんでもいい。一回和了りたい。安手で場を進めるのはホンマは愚行やねんけど、もうこの際仕方ない)

一一二三三七七八八九東東白 三

末原(よし、安手どころか、倍満手。今回は五巡目まで来てるし、
白糸台にも速攻の気配はない。大きく負けてる身としては勝負したいところやけど
……この白。これどないしよか)

淡「……」カチャ

末原(白糸台はツモ切り。いま河には役牌が一つも出てない……まさかまた小三元? 
あかん、この白は切られへん。なら……安くなるの覚悟でチートイツや)三萬

淡「……」

淡(姫松は回し打ちか。白は出ない……?)

111222白白中中中発発 9

実況『大星選手、またしても非常に高い手を張っています! 三暗刻トイトイ小三元ホンイツ役牌二つにドラの1索が三枚……
数え役満に到達します。いえ、ツモ和了りすればそもそも四暗刻――! とてつもない大物手です!』

淡(……違う……私の麻雀はまだ完成していない。だからまだ役満は和了れない)

淡(私は今までの麻雀人生の中で、役満を和了ったことは一度もない。何度も狙ったけど、一度も和了れなかった。どんなに格下が相手でも)


淡(テルに出会って、私の力はまだ未完成なんだってことに気づいた。いつかテルを超えた
とき、私の麻雀は、最高の形で完成するはず。でも、今はまだその時じゃない)

淡(……だからきっと、この手じゃ和了れない。和了るなら、飜数を下げないと……今
14飜だから、最低でも二つは下げないとね。どうやって下げるか……)

咲「……」カチャ

咲「……」2索

淡「――っ!」

淡「カン」カチャ

111白白中中中発発 2222

実況『おっと? 大星選手、宮永選手の捨てた2索をカン。この鳴きは……どういう
ことでしょうか。無意味に飜数を下げただけに思えますが』

淡(喰い下がりでホンイツが1飜下がって、三暗刻も消えて合計11飜の手になった。この手なら和了れるはず)

淡(でも……なんか、違和感。咄嗟に鳴いちゃったけど、今の2索……あのタイミングで咲ちゃんがあれを捨てたのは偶然? それとも……)

咲「……」カチャ


咲「カン」

淡・末原「!」

456④⑤⑥二四五白 発  ⑦⑦⑦⑦

咲「……」二萬

淡(……? 嶺上開花じゃない? なら、今のカンは……)

咲(淡ちゃんが嶺上牌からも有効牌を取れるんなら、王牌に発を置いておくのは危険
だよね。私も和了りづらくなっちゃうけど、大きい手を淡ちゃんに和了られるよりはいい)

淡(……まさか私にわざとカンさせて、次の嶺上牌を狙ったの? ……あじな真似してくれるじゃん)

神無月の巫女思い出すスレタイ


淡(でも、どうするの? 姫松が白を一枚もってる以上、その白はもう頭にもなれない
完全な不要牌。仮に姫松が白を切っても、頭ハネの権利は私にある。咲ちゃん、もうこの
局で和了れないんだよ?)

淡(それに、私の感じだとまだ発は出切ってない。あと一枚は山にあるはず。私がそれを引いたら……
――いや、それだと三暗刻がつく。13飜になるから和了れない……!?)

淡(まさか……私が役満以上を和了れないのを見越して……?)

咲(淡ちゃん、『成り損ない』しか和了れないって言ってた。なら、役満は和了れないってことだ。この局ではそれを確かめたい。複合役ありで数え役満なら出せるのか、それも
できないのか。それがわかれば、その情報は後半戦できっと活きてくる)

咲(私の予想では……多分和了れない。じゃないと、今の2索鳴きは説明できないもん)

淡「っ……」


淡(……なんにせよ、咲ちゃんはこの局では和了れない。もう咲ちゃんを警戒する必要もない。
なら肝心なのは有珠山と姫松だけど、有珠山はまだ聴牌にも遠い。問題は姫松……)

淡(そこそこの手を張ってきてる。でもこっちも咲ちゃんと同じで余った白を持て余してるせいで
和了れない。なら、結局この局で和了るのは私ってことになる)

淡(手を上げるならともかく、手を下げるのなんて簡単――と言いたいところだけど、
生憎、そうもいかない。いま私が一瞬でも聴牌を崩せば咲ちゃんがすぐさま白を切ってくる。
当然姫松もそれに続いて白を捨ててくるだろうから、白が全滅……
私は山のどこかにある発を引くまで和了れない)

淡「……」

淡(最悪、この局は流したっていっか。あるいは唯一和了れる有珠山が和了ってもいいし、
もし有珠山が発なんか捨ててきたら、それで和了ればいい)

末原「……」カチャ

一一二二三三七七八八九東白 九

末原(きた! チートイツにするつもりやったけど、思いもがけずリャンペーコー
チャンタ混一色の倍満手になった。
白の単騎待ちなんがネックやけど、とにかく聴牌や。くそ、白さえ切れれば清一も絡めれる手やのに……)

淡(張ったか。でもその白は切れないし、もうツモることもできない。大きい手が出来て
喜んでるみたいだけど、その手、和了れないんだよ)

淡(有珠山もまだ一向聴ってとこか。これは流局かなぁ)

咲「……」カチャ

咲「……!」

咲(――発! ……四枚目の発がきた。淡ちゃんを避けるみたいに、一手遅れて私のところへ。
……やっぱり淡ちゃん、役満手は和了れないんだ。――よし、それだけ分かれば……)

咲「……」タン 白

淡・末原・有珠山「!?」

淡(え、白? ここで? なんで?)

淡「……ロン。小三g」

末原「――ま、待ってください!」ガタッ

末原「ろ、ロンです! 16000点、頭ハネです!」

咲「はい」ジャラ

淡「……」

淡(差し込み……? なんでわざわざ。流せばいいじゃん、こんな局)

咲「……」

南四局

末原(なんとかラスからは這い上がれた。清澄から直撃取れたんも大きい。後半戦に
入る前に、もう一回くらい和了りたい。でも、今は白糸台の親番……無茶はできへん)

淡(さて、と。私の親か……)

淡(――行くよ!)ゴォッ!

咲・末原「……!」ビク

咲「……」

咲(……させないよ)ゴッ

発発中中

淡(まずは役牌二つずつ)

発発中中白白東東

淡(効いてる。私の星の引力が、有効牌を引き寄せてるのを感じる)

淡(ダブルリーチで決めてやる……!)

発発中中白白東東西西13

発発中中白白東東西西13赤5八

淡(…………は?)

淡(ダブルリーチじゃない……!? 私の親番で? どうして……)

咲「……」カチャカチャ

淡(……咲ちゃん……あくまでも私に歯向かう気なんだね)

淡(でも、いくら足掻いたところで私に大きな手が来てることに違いはない。一気に
ツモって終わらせてやる)

淡「……」八萬

後半戦もガッツリやるんか?何時までも付き合うで

※やばい全然終わらない・・・ssがこんなに時間かかるものだったとは
ちょっとペース上げます。途切れたらさるったと思ってください。ごめんなさい

咲「……」白

淡「ポン」

咲「……」発

淡「……? それもポン」

末原(……ちょっとどういうつもりや清澄。白糸台の親のときに役牌を二つも連続で
捨てるなんて。よっぽど大きい手が来てるんか?)

淡「……」カチャ

中中東東135 6  発発発 白白白

淡(一向聴か。次巡に東を引いて、その次に2索を引いて和了りだ)

咲「……」カチャ

咲「カン」

淡・末原・有珠山「!」

淡(まさか、もう?)

末原(は、早すぎるやろ)


>>593ありがとうございます。思ったより麻雀パートを書くのが楽しくてノリノリで書いてたら
長くなっちゃいました。結構がっつりやります


咲「……」②筒

淡「ん?」

末原(嶺上開花やないんか)ホッ

淡(嶺上開花じゃないなら、今の槓は多分、私のツモる牌をずらすのが目的。
東をツモるつもりだったけど、邪魔されちゃったか)

淡(東をツモったのは有珠山……こっちはもうオり気味だから生牌の東なんて切ってこないな)

淡(まあいいか。なら東を落として中を頭にすれば――)

淡「……」カチャ

淡「……」東

咲「……!」カチャ

いらないとは思うけど一応
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内





末原「……」カチャ

有珠山「……」カチャ

淡「……」カチャ

淡(――――ん?)ピク

淡「――ッ!」

淡(なっ……こ、これ……!)

中中東1135 中  発発発 白白白

実況『おーっと、大星選手、ここでついに中をツモった――! これで大三元確定!
他校に止めを刺す一撃となるか――!?』

淡「…………」

淡(違う――『掴まされた』!)

淡(さっきの局で、咲ちゃんは私が役満手以上を和了れないことを見抜いたんだ。
この中をツモったことで大三元は確定――つまり、『もうこの手じゃ和了れない』!)

淡(今の槓は東をツモる順をズラす以外に、私に中をツモらせる意図もあったんだ)


淡「……」ギリ

淡(ならこの中を捨てればいい――ってわけにもいかない。私の麻雀を見抜いたんなら、
この中を捨てるのは承知の上のはず。なら、咲ちゃんの当たり牌はこの中で間違いない。
じゃないとこれを掴ませる意味がない。逆に私がこれを持ち続ける限り、咲ちゃんも和了れない)

淡(……またこの流れ? 私も和了れない。でも咲ちゃんも和了れない。このまま他家が
和了るか流局? 一体なにが目的――いや……なるほど。そういうことか)

淡(……いいよ、咲ちゃん。認めてあげる。確かに、あなたなかなか強いよ。
あなたが白糸台にいれば私も少しは退屈せずに過ごせたかも)

淡(確かに咲ちゃんは私の能力の弱点を見抜いて、その隙を突いてきたかもしれない。
面白い力も持ってるし、白糸台でもナンバー3には入れただろうけど、でも、所詮は
そこまでってことだね)


淡(咲ちゃんは全力を出しても、私に和了らせないようにするのがやっとなんだ。自分の
和了るチャンスを棒に振ってでもしないと、私を止められない。最悪、いざとなれば
さっきみたいに他家に差し込んででも私の和了りを防ぐしかない)

淡(その結果が、この点差だよ。前半戦だけで得失点48000点差。チーム毎に見れば
60000点差。それが私たちの実力の差だよ、咲ちゃん)

淡「……」東

咲「ロン」

淡「…………は?」

四五六4赤56④⑤⑥東 東  8888

咲「三色ドラ2。3900です」

淡「」

実況『宮永選手、大星選手の大三元を阻止――! 独走状態の白糸台に一矢を報いた――!』

淡「……」ジャラ

実況『前半戦終了――! 前半戦は清澄と白糸台の競い合いでしたが、終わってみれば
白糸台の完全一人浮き状態――! このまま白糸台が三連覇に繋がる勝利を掴むのか――!』

咲は明槓?暗槓だったらツモ巡変わらないと思うが。

>>610改行が多すぎて投下できなかったので、咲のツモ描写を削るつもりが有珠山の打牌を消しちゃいました
ごめんなさい。正しくは有珠山の捨て牌でカンです

白糸台:169800
清澄:117600
姫松:61800
有珠山:50800

末原「……お疲れさまでした」

有珠山「お、お疲れさまでしたぁ……」ガックリ

淡「……おつかれさまでした」

咲「お疲れさまでした」ペッコリン

廊下

淡「……」カツカツ

淡(最後の一局……待ちは中じゃなかった)

淡(……私の考えを読まれた。私が中を切らずに東の対子落としをすると見て、そこで
狙い撃ちしたんだ。――くそっ)

淡「……でも、私の勝ちだから」

そうだ。清澄は前半戦でたったプラス4600。私はプラス44800。
誰が見たって私の勝ちだ。照との賭けは、私の勝ちで文句なんてないはずだ。
 咲ちゃんは私に一矢を報いたに過ぎないんだ。


ガチャ

淡「ただいま」

菫・尭深。誠子「……」

淡「……? なに? 三人とも変な顔して」

菫「いや、なんというか……」

淡「ねえテル、見てたでしょ? 私の勝ちだよ。前半戦だけで45000点のプラス。
賭けは私の勝ちってことでいい?」

照「まだ後半戦が残ってるから」

淡「ふふ。照も往生際が悪いなぁ。安心してよ。別に変な罰ゲームなんてさせないよ。
そーだなー。私の家に三日くらい泊まりこんでずーっと麻雀打とうよ。他にプロを二人くらい呼んでさ」

照「いいよ。私が負けたらね」


淡「もう、どう見たって私の勝ちじゃん。菫もそう思うでしょ?」

菫「……」

淡「……菫?」

菫「照の言った通りになった」

淡「…………は? なにが?」

菫「照がな、言ったんだ。清澄の大将は、前半戦をプラマイゼロで終わるって」

淡「プラマイゼロ?」

菫「清澄は前半戦でプラス4600。25000点持ち30000点返しで考えたら、
プラマイゼロだ」

淡「――」

淡「……偶然でしょ、ただの」


菫「いや、気になって調べてみたら、清澄は一つ前の試合でも同じことをやってる。
それに県予選の個人戦でも何度か。照が言うには、彼女はこれを意図的にやってるらしい」

淡「……狙って……プラマイゼロ……?」

菫「……」

淡「……それで? 仮にそうだとしたらなんなの? 点数調整と勝つ技術は別でしょ?
実際には私と咲ちゃんの間には得失点が40000点差もあるんだから、私の勝ちじゃん」

照「淡は毎試合プラマイゼロにできる?」

淡「そんな訳わかんないことしようとも思ったことないから分からないよ。でも出来るんじゃない?」

照「でも菫とか白糸台の一軍メンバーには出来ないんじゃないか?」

淡「まあ……毎回確実に、ってことだったらかなり格下じゃないと厳しいかもだけど」

照「そういうことだよ」

淡「なにが?」

照「つまりあの清澄の大将は、〝淡のことを相当格下だと思ってる〟ってことだよ」

淡「……」


照「確かに今のままなら白糸台は一位通過するだろう。でも、それで清澄に勝ったと言える?」

淡「……」

淡「手加減されてるっていうの? この私が?」

照「どう捉えるかは淡の自由」

淡「……」ギリッ

淡「……いいよ。わかった」

淡「後半戦、私は死んでも咲ちゃんにプラマイゼロなんてさせない。白糸台も一位で通す。
麻雀の内容でも勝つ」

淡「それができたら、文句なしで私の勝ちってことでいいよね?」

照「ああ。そこまで出来れば、私の完敗だ」


淡「じゃあそれでいいよ。一応、テルも罰ゲーム考えといてよ。まあ無駄だろうけど」

ガチャ、バタン

菫「……本当なのか、清澄が狙ってプラマイゼロをやったなんて」

照「まず間違いない」

菫「……信じられん。あの大星を相手に……。お前はどう思うんだ? 本当に大星相手に
二連続プラマイゼロが出来ると思うか?」

照「私はそう賭けた」

菫「……そうだったな」

照「でも、かなり難しいと思う」


菫「ならどうしてこんな賭けをしたんだ。いくらなんでも分が悪すぎるぞ」

照「勝ち負けはどうでもいい。私はただ、知りたいだけ」

菫「知る? 何をだ」

照「淡ならあの子の……咲のプラマイゼロを止められるのかどうか」

菫「照……」

照「もし淡に咲が止められるなら……」


照「きっと、私にも止められる」

廊下
咲「……ふう」

咲(淡ちゃん……すごく強かった。お姉ちゃんと互角くらいの力は持ってる
……お姉ちゃん……見てくれたかな。私の麻雀。私の伝えたい事……お姉ちゃんに伝わったかな)

淡「咲ちゃん」

咲「あ。淡ちゃん」ぺっこりん

淡「……」

咲「……? どうかしたの?」

淡「さっきのプラマイゼロ、狙ってやったの?」

咲「……!」ピク

淡「どうなの?」

咲「……ごめんなさい」

淡「なんで謝るの?」

咲「だって……」

淡「……」


淡「……次の後半戦で、もう一回プラマイゼロにしてみなよ」

咲「え?」

淡「それができたら、咲ちゃんのこと認めてあげる。私よりも強い雀士だってね」

咲「あ……うん。どうも」

淡「私に認められるかどうかなんて興味ないって感じだね」

咲「え、いや、そんなことないよ」アタフタ

淡「……言っとくけど」

淡「私に勝てないようじゃテルには一生勝てないよ」

咲「――ッ!」


淡「やってみなよ、プラマイゼロ。私は全力で阻止する。絶対にプラマイゼロになんてさせない。
プラマイゼロできなきゃ、咲ちゃんって別に凄くもなんともないよね。正直、天江衣にも劣ってるよ。
当然、私にもね。前半戦どおりの実力って感じ」

咲「……」

淡「でも、私が全力を出しても……それでもプラマイゼロにできるんなら、認めてあげる。
高校生で一番テルに近い打ち手だって」

咲「……お姉ちゃんに……」

淡「それだけ。じゃあ、後半戦よろしくね」

ツカツカツカ

咲「……」


咲「よろしくね、淡ちゃん」ゴッ!


実況『さあ、ついに準決勝も後半戦に差し掛かりました。独走状態の白糸台を止める
ことはできるのか――!」

四人「よろしくお願いします」

東:有珠山
南:清澄
西:姫松
北:白糸台

咲「……」

淡「……」

淡(咲ちゃん、やる気だね、プラマイゼロ)

淡(させるもんか。私を相手にそんなふざけた真似、絶対許さないから)


東一局。親:有珠山

有珠山:50800
清澄:117600
姫松:61800
白糸台:169800

淡(この一試合、もう単純な点の取り合いじゃない。私と咲ちゃんのプライドをかけた勝負だ)

 私の勝利条件は三つ。
 一つ。白糸台が一位通過すること。
 二つ。咲ちゃんにプラマイゼロをさせないこと。
 三つ。麻雀の内容で咲ちゃんに負けないこと。

淡(私のリードは5万点以上ある。そうそうひっくり返されることはない。白糸台の
1位通過っていう条件はほぼクリアされてると言っていい)

淡(そして咲ちゃんのプラマイゼロを阻止すれば、連動して内容でも勝ったって言えるはず。
とにかく咲ちゃんをプラマイゼロにしないこと。それができれば私の勝ちだ)


咲ちゃんのプラマイゼロを潰す方法は大きく分けて三つある。
まず、咲ちゃんに和了らせない。プラマイゼロなんていう微調整は咲ちゃん自らが動かないとできるはずがない。
必ずどこかで和了って点数を調整してくる。私はそれを叩けばいい。
次に、プラマイゼロから大きく引き離す。プラマイゼロになるのはプラス4500から5400まで。その点数から
大きく咲ちゃんを引き離すだけで、プラマイゼロはぐっと難しくなる。
マイナスならベストだけど、最悪プラスに引き離してもいい。そうなると咲ちゃんは自分から
他家に振り込んで点数を調整するしかない。そこで私が咲ちゃんよりも先にどこかに差し込むか、なんなら私が先に和了ればいい。
 最後は、オーラスで刺す。オーラスまでに私がトップ、かつ咲ちゃんがプラマイゼロの状態でなければ、
 最後に私が和了るだけで咲ちゃんのプラマイゼロは不可能になる。和了る際に咲ちゃんが
プラマイゼロにならないように調整するだけでいい。


淡(この後半戦、私は和了りまくればいいってわけじゃない)

淡(私が和了りまくって20万点とったとしても、咲ちゃんがプラマイゼロにすることは不可能じゃない。試合では勝っても、勝負に勝ったことにはならない)

淡(私自身も適度に点数を調整していかないと。時には和了りを見逃したり、他家に
振り込んだりすることも必要だね)

淡(……ふふ。こういう趣向の麻雀は今まで打ったことないよ。なかなか面白いね。
――でも、最後に勝つのは私だよ、咲ちゃん)

淡(じゃ、まずは軽く挨拶代わりに……)

淡「ツモ」

発発22234666888 5

淡「混一色三暗刻。2000,4000」

末原「なっ……!」

末原(あ、あの手……5索じゃなく2索なら、緑一色……! しかももう少し粘れば
四暗刻まで見える手……白糸台、しょっぱなから全開かいな)

末原(赤5索じゃなかったのだけが救いか……ドラが乗ればハネ満まで伸びとった)

淡(……そういえば菫が前に言ってたな。この手を和了るなら赤5索は狙わないのか、って)

淡(分かってないよね皆。それだと5索が全部赤くなるじゃん。五本の内一本だけ赤いからこそ
『完璧な成り損ない』なんじゃない。赤5索なんてダサイ手、ツモってもイラついて崩しちゃうよ)

実況『大星選手、肩慣らしとばかりに満貫をツモ和了り――! やはり白糸台を
止めることはできないのか――!?』

末原(あかん……どっかで流れを掴まな。ただでさえ清澄とも大差なんや。このままじゃ
二位で決勝進出も厳しい)

有珠山「うぅ……」

淡(姫松と有珠山はどうやって二位になろうか考えてるのかな? ふふ、まあせいぜい
低い次元で足掻いてればいいよ)

淡(さあ、咲ちゃん……そろそろ本気出してよ)

咲「……」

東二局

姫松(……配牌は悪くない。一巡目はまず北を切って、それから……)

咲(淡ちゃん……すごいプレッシャーだ。今まで何度かプラマイゼロを防ごうとしてきた人は
いたけど、その中でも一番手ごわい相手だ……)

咲(でも……淡ちゃんに勝てれば、お姉ちゃんに一番近い打ち手だって認めてもらえる。
私は……お姉ちゃんにもう一度会うために来たんだ。こんなところで負けられない……!)

咲(お姉ちゃん……あの日のこと、許してもらおうとは思わない。ただもう一度だけ……
お姉ちゃんと話がしたい)

咲「……」カチャ  北

淡「ロン」

咲「え――」

234456三四五①①①北 北

淡「人和。8000」

淡(とりあえずこれで咲ちゃんはマイナス1万点。マイナスの方に傾いてる。咲ちゃんはこれから軽い和了りで点数を調整しようとしてくるはず)

淡(私はもう十分リードを取ってる。多少振り込んででも、咲ちゃんの和了りを防げばいい)

淡(咲ちゃんが和了りそうになったら姫松か有珠山にでも差し込んで咲ちゃんの点数を変動させない。理論上はこれで勝てる)

咲「……」カチャ

淡(咲ちゃんが張った。待ちは索子が臭い。……流すか)

淡「……」カチャ

末原「ポン!」

淡「……」カチャ

末原「……!?」

末原「ろ、ロンです! 5800」

淡「はい」チャラ

咲「……っ」

>>673ミスです。この前にこれが入ります


実況『――ま、またしても人和炸裂――! 大星選手が止まらない――!』

淡「聴牌気配すら読めなかった? 不注意すぎるよ咲ちゃん」

咲「……」

淡「あのさ。私に宣戦布告しといて対局中に他のこと考えてる余裕なんてあるの?」

咲「……!」ビク

淡「あんまりイライラさせないでね」

咲「……うん」

末原「……」

末原(あ、危なかった……清澄が北を切らんかったら、私が切ってた……白糸台……ほんまにバケモノやないか)


淡(ふふ。悔しそうにしてる。前半戦で私に点を取られ過ぎたね。いくらでも差し込んであなたの
和了りを阻止してあげるよ)

咲「……」

咲(そう来るのか……困ったなぁ)

末原(白糸台が振り込むなんて珍しいな。これは、流れが来てる……? 今がチャンスや)

末原(親番が続行できるし、ここは軽くでも連荘目指すべきやろか)

東三局

咲(……まずは軽く和了らないと。これ以上振り込んでマイナスに傾くのはよくない)

淡(――って、思ってるんだろうけど。そうそう簡単にはいかないってこと教えてあげる)

淡「カン」 白

末原(? 白を暗槓……? なんでわざわざ)

淡「もいっこ、カン」 中


咲・末原・有珠山「!?」ビク

末原(しょ、小三元……!?)

咲(しかも槓ドラが……淡ちゃんの鳴いた中!)

淡(ふふ、どう? 和了れば倍満以上確定の手だよ。これをツモ和了りすれば咲ちゃんはマイナス6000)

淡(更にマイナスに傾く上に、有珠山がもう三万点弱しか残らない。私なら一瞬で消しトばせる。
そうすればプラマイゼロどころの話じゃないよね?)

咲「ん……」

淡(ほら、そういう事態を防ぐにはどうすればいいの、咲ちゃん?)

咲「……」カチャ

有珠山「! ろ、ロン。3900です」

咲「……はい」チャラ

末原「……」ホッ

淡「ふふ」


淡(そう。私の和了りを防ぐには自分から他家に差し込むしかないよね。私が大きいのを和了って
有珠山がトぶよりはずっと確実。それが正解だよ、咲ちゃん)

淡(でもこれから私が大きな和了りをしそうになる度に咲ちゃんはそれを繰り返さないといけない。じゃないと他家が
トんじゃうしね。その度に咲ちゃんはマイナスに傾いて、プラマイゼロから遠ざかっていく)

咲「……」

淡(まあ、そんな『他家が弱かったからプラマイゼロを防げた』みたいな勝ち方はしないけどね。
あくまで正面から咲ちゃんを叩き潰す。でも、咲ちゃんはその可能性も考慮しないといけない)

淡(相当動きが制限されるはず。さあ、これでもまだプラマイゼロ出来るって言うならやってみせてよ)

南四局

淡「……」カチャ

淡(私の親番か。さーて、どうしてあげようかな)

淡「……」ゴォォォォォ!

まだまだ続くようなら、心苦しいけど支援のペース落としたほうがいいかもな

>>690あと40レスくらいで終わると思います。さるが怖いので支援してくれるとほんとに助かります

咲「……!」

咲(あ、しまった……!)

淡(ふふ。もう私の星の引力を止める気力もないのかな? 遅いよ、咲ちゃん)

淡「ダブルリーチ!」

咲・末原・有珠山「!」ビクッ

実況『出ました、大星選手のダブルリーチ――! 天和の『成り損ない』。しかしその威力は
絶大です――! さあ、他の三校はこれを防ぐことができるのか――!?』

淡(できるよね、咲ちゃん。別にむずかしいことじゃないよ)

淡(ほら、姫松が配牌で一向聴だよ。一巡待ってあげるから、差し込んであげなよ)

咲「……」

咲「……」カチャ


咲「……」カチャ

末原「あ、ロン! 7700!」

咲「……」チャラ

淡「ふふ」ニヤ

淡(どう? 身動きが出来ずに少しずつ窒息していくような感覚。まるで宇宙に
放りだされたみたいでしょ? もっと引きずり込んであげるよ……宇宙の闇へ)ゴォォ

淡(これで咲ちゃんは後半戦マイナス21600点。今の段階では倍満を和了ってもプラマイゼロには届かない)

淡(意識すればプラマイゼロなんて簡単に止められるもんだね)

咲「……」

 もう咲ちゃんは戦意喪失したような面持ちだった。
 今まで格下相手に得意げにプラマイゼロをやってきたんだろうけど、今回ばかりは相手が悪かった
ということだろう。続く南一局、親の有珠山が2600オールを和了った。それはまたしても
咲ちゃんがプラマイゼロから遠ざかることを意味していたが、咲ちゃんは何もできなかった。
 続く南一局二本場――


淡「……」カチャ

東東南南西西北北白白発発⑦ ⑦

淡「……ツモ。4000,8000」

咲・末原・有珠山「!」ビク

淡(何の苦もなく字一色の鳴り損ない和了っちゃったよ。これで咲ちゃんはマイナス28200。
悪あがきもここまでかな?)

淡「あーあ。なんかがっかりだな。咲ちゃん、もっと楽しませてくれると思ってたのに」

咲「……っ」

淡「まるで張り合いないよ。この程度でテルに挑もうなんて、身の程知らずにも程があるよね」

咲「……」


淡「だいたい咲ちゃん、テルの強さ分かってるの? この私ですらテル相手に一度も
トップとったことないんだよ? 麻雀でテルに何を伝えたいのか知らないけどさ、
こんなんじゃテルも「弱いなぁ」としか思わないんじゃない?」

咲「……淡ちゃん」

淡「んー?」

咲「ちょっと……うるさい、かな」

淡「そう? 負けてるときは何でも耳障りに聞こえるものじゃないかな」ニコリ

咲「まだ勝負は終わってないよ。まだ私の親番が残ってる」

淡「そう、最後の親番だね。これを逃せば、残り二局でプラマイゼロにしないとだね。
――できると思ってるの?」

咲「お姉ちゃんに挑むなら……」

咲「それくらいじゃないと、駄目なんだよね」ゴォォッ!

淡「やってみなよ」ゴォ!


南二局

淡(咲ちゃんの親……喰いタンでも和了ってやろうかな。ふふ、咲ちゃん悔しがるだろうなぁ)ニヤニヤ

咲「――カン」

淡「お?」

咲「ツモ。嶺上開花。2000オール」

淡(案外あっさり和了られちゃったか。さっきの挑発でさすがに火が点いたかな?
まあそれくらいじゃないと面白くないけどね)

南二局

咲「……」カチャ

淡(……咲ちゃんが張った。でも安い。連荘狙いできたか。いいよ、受けて立ってあげる)

末原(清澄……張ったか? せやけど、ここはうちもオりれん。私の親は次の南三局。うちと清澄の
点差はまだ三万点以上ある。ここで逃げたら、次の親でケチついてまう気がする)


淡「……」カチャ

淡(四巡目で一向聴……珍しく私の手が重い。このままなら咲ちゃんに和了られちゃうか……)

淡(咲ちゃんの待ちは多分③⑥筒。私が振り込むことはないけど……他の二校が読めてるかどうか……)

淡「……」タン 赤5筒

有珠山「――っ、チー」 ④赤⑤⑥

淡(――よし。今のはただのドラ回収じゃない。この局数と点差でそんなケチな点棒拾っても仕方ないからね。
有珠山は⑥筒が危険だと察知してる。なら筋の③筒も切らないよね。よし、こっちは大丈夫)

淡(あとは……)チラッ

末原「……」カチャ

末原(張った! 溢れたのは③筒か……切りにくいけど……)

末原(――いくしかない!)カチャ

淡「……チッ」


咲「ロン。3400」

末原「っ……はい」チャラ

淡「……」

淡(いくら私でも姫松が振り込むのを止めるのはちょっと厳しいな。小三元ちらつかせて
オりさせることもできるけど、それならもう私が和了っちゃった方が早いか)

南二局

淡「カン」発

末原(っ……小三元か……いや、さっきの緑一色……?)

末原(いや、暗槓なら発を鳴いて役満一歩手前に出来る役なんかいくらでもある。
字一色。混老頭、四槓子、四暗刻……全部を警戒するなんか無理や。くっ……わざわざ
暗槓したのは他家の動きを牽制するためか)

淡(これなら姫松も有珠山も勝手にオりてくれるでしょ。さぁてと――)

咲「――カン」 4索

淡・末原・有珠山「!?」


咲「――ツモ。2600オール」

淡「――」ヘー

淡(4索……緑一色の大本命じゃん。お構いなしか……やっと全開ってわけ?)

淡(もうこうなると下手なハッタリは逆効果だね。さっさと和了っちゃう方が確実か)

実況『清澄高校の宮永選手、ここにきて親の三連続和了です。一位の白糸台とも、三位の姫松とも
大きく差が開いての二位。この連続和了は二位抜けでの決勝進出を盤石なものとするのか、
それとも一位の白糸台にすら食らいつく決意の表れか――!』

淡(私も咲ちゃんももう点数も順位も考えてない。あるのはただ、プラマイゼロへの調整のみ。
咲ちゃんは今マイナス11000点。オーラスで最後の調整をするつもりなら、ここは
満貫12000くらいを狙ってくるはず。そうすればプラス1000点。オーラスで3900を
和了ればプラマイゼロだ)

淡(させないよ……!)ゴッ


淡「……」カチャ

一一一二二三四六七八九九⑨ 九

淡(――よし。張った)

実況『大星選手、この局面で九連宝橙聴牌だ――! 五萬なら役満となります――!』

淡(ってことは、五萬は和了れないってことだ。九連を張ったらいつも清一になるから、ツモるのは
五萬子以外。多分次か、その次くらいに来る)

有珠山「……」カチャ

淡(有珠山……この点差でもまだ戦意喪失してないな。親番もないし、役満を狙うしかない状況)

淡(姫松以上にオりれないから、危険牌でもガンガン切るしかない。――ここから取る?
これ以上咲ちゃんに点数調整させるのもよくないし)

有珠山「……」カチャ 東

咲「――カン」


淡(っ、馬鹿……! いくら突っ張るしかないったって、よくそんな牌切るね。信じられない)

咲「もいっこ、カン」カチャ

淡(くそ……これ和了られるな。あーあ、だから弱い人と打つのは嫌なのよ。
まあ、次で親を流せばまだプラマイゼロは十分防げるはず)


咲「――もいっこ、カン!」


淡・末原・有珠山「!?」

淡(三連続……!? まって、しかもこの牌……これ、安手なんかじゃない!)

咲「――ツモ」

99南南 南  ①①①① ⑨⑨⑨⑨ 東東東東

咲「三暗刻三槓子トイトイ混老頭東南嶺上開花ツモ。――36000点です」

有珠山「ひっ――!」ビクッ!

末原「」


実況『…………さ』

実況『――三倍満!! 親の三倍満が飛び出しました――!! 有珠山の捨てた牌から
三連続カンにより一気に手を進め、三倍満にまで上りつめました――!』

実況『これは姫松、有珠山にとっては致命傷の一撃となるか――!? 二位の清澄と三位の
姫松の点差は七万点以上にまで広がってしまいました!! 有珠山高校は親番がないため絶体絶命。
親を残す姫松も、もはや敗退は時間の問題か――!』

末原「……」プルプル

末原(き……清澄ぃ……!)ギリリ 

有珠山「……」ボーゼン

淡「…………」


淡(これは……どういうこと?)


淡(確かに驚いたよ。ここで三倍満かましてくるなんてね。――でも、それって駄目でしょ。
今ので咲ちゃんはプラス25000点。これ、どうするの? どこかに20000点振り込まないと
プラマイゼロにできないんだよ? てっきりオーラスで指定の点数を和了ってプラマイゼロにしてくる
と思ったのに、これじゃあ『オーラスで指定の点数に振り込んで』点数調整するしかないじゃない。
そんなこと……本気でできると思ってるの?)

淡(……思ってるんだろうなぁ……自分で自由に役を作って点数調整するならまだしも、
誰かにその役を作ってもらってそこにちょうど振り込むなんて、そこまでできれば確かに
神技だよ。はっきり言って、多分私もできない)

淡(……調子に乗り過ぎだよ、咲ちゃん)

淡(分かってるの? もう有珠山が10000点ないんだよ。今私が有珠山を
トばせばそこで終わり。あなたは馬鹿丸出しで負けるんだよ)

咲「……」

咲(……そんなことさせないよ、淡ちゃん)


南二局

淡「……」カチャ

四四四七七七南南南⑨⑨⑧① ⑧

淡(はい、三暗刻、南、ドラ3でハネ満。これで有珠山トばしてあげる)

咲「……」カチャ ③筒

有珠山「っ……」ピク

有珠山「…………」

有珠山「ろ、ロン……です。3900」

咲「はい」ホッ

淡(ふん、差し込んだか。点数調整も兼ねてるんだろうけど、必死だね咲ちゃん)

咲(……危ないところだった。もし有珠山の人が和了ってくれなかったら……多分、負けてた)

末原(くそっ……なんて迷惑な和了りや。もう戦意喪失したならじっとしといて欲しいもんやけど……まあ振り込んでトばれるよりはマシか)

末原(私は諦めへんで清澄。この親番……絶対ものにしてみせる!)

南三局

淡(さて、あとたった二局。咲ちゃんは今プラス21100点。ここから二局でマイナス16000点
しないといけないわけだけど、二局に分けて考えれば決して不可能じゃない。満貫に二回振り込めばいいわけだしね)

淡(でももしオーラスでこの点数だったら? オーラスだけでマイナス16000なんて
できるわけがない。だってそんな点数で和了っても姫松も有珠山も二位になれないんだから。だからこの局、
咲ちゃんは必ず姫松に振り込もうとするはず。姫松は連荘を狙って8000点でも喜んで和了るだろうし、
それを二回繰り返したあと、誰にも振り込まず、誰にもツモ和了りさせなければようやくプラマイゼロ、か)

淡(――ふふ。相当きつそうだね咲ちゃん。焦ってるのがこっちまで伝わってくるよ)

咲「……」

咲(分かってる。ここからプラマイゼロはかなり厳しいよ……)

咲(――でも、きっと淡ちゃんは私のやろうとしてることは読めてないはず。だって淡ちゃん
には思いつくはずのない方法だもん)

咲(そこで決める――!)ゴッ!


23567中中中発発発白白

淡「――ふふ。リーチ」カチャ

咲・末原・有珠山「!」

実況『大星選手、ここでリーチ! 点差と役を考えればダマでも十分な手ですが、
これは他家を牽制するためのリーチでしょうか――!?』

淡(これでまず有珠山はオりる。あとは姫松。ここはオりない。オりれない。私のリーチに
対して責め続けるしかない。振り込めばそこで終わりだ)

末原「くっ……」

789①①①②③一二二三1 北

末原(いい手が入ってる……これは和了りたいけど……1索は白糸台に危険や。いや、もうここまで
めちゃくちゃな打ち手やと待ちなんか読まれへんけど、ここで振り込むことだけはあかん)

末原(まずは現物の北や。この1索は順子に伸ばして使うしかない)


淡(――無駄だよ。あなたは次に4索をツモる。それを切ってお終いだよ。あなたも、咲ちゃんもね)

咲「……」

咲「……」カチャ 1索

淡・末原「!」

淡(これは――私の当たり牌……!)

淡「……く」

淡(だめだ、和了れない。これを和了ったら咲ちゃんの思うつぼだ。咲ちゃんのプラマイゼロの
調整を手伝うだけで終わっちゃう)

淡「……」

末原(……ロン宣言しない。この1索は通る! 現物がなかったから、もうここはこれに与るしかない。
三色は消えるけど、振り込むよりはずっとええ)


末原「……」カチャ

789①①①②③一二二三1 4

末原「……」カチャ 1索

淡「……」ギリ

実況『あーっと。大星選手、清澄高校の当たり牌を見逃したため、これは同巡フリテン縛りで
和了ることができません――! いったいなぜ清澄から和了らなかったのか』

淡(……別にいいよ。次で今ツモった4索切ったら同じことだし)

咲「……」カチャ

咲「……」タン 4索

淡「ぐっ……!」ピク

淡(また私の当たり牌!? このっ……私が和了れないのをいいことにやりたい放題……!)


末原(この4索も通る。よし、いい感じや)

789①①①②③一二二三4 一

末原(よし、いける!)

末原「……」タン 4索

実況『――ああー! これも同巡フリテンで和了れない――! 大星選手、清澄からの出和了りを
二度見逃したせいで、もう二度もチャンスを手放しています』

淡「……」ギリィ

淡(まだだ。この巡で有珠山がもう一度4索を引く。それは山越しだから、有珠山がそれを捨ててくれば和了れる。
有珠山はオりてるだろうけど、この流れなら4索は安全と思って切ってもおかしくない)

淡「……」カチャ

咲「カン!」

淡「!? なっ――!」

淡(私の捨て牌を――!)


末原(ちょ、ちょっとまって清澄……まさか……嶺上開花!?)

淡(違う。和了ってどうするの。これは嶺上開花じゃなく、有珠山が4索を引かないように
ズラしたんだ。……でも、それだと結局4索を引くのは姫松だ。こんどはフリテンにならないから和了れる!)

咲「……」カチャ クルッ

槓ドラ 西

咲「……」カチャ 西

淡(今開けた新ドラの西を躊躇いなく切ってきた。これは……――! あ、しまった!)

有珠山「ぽ、ポン!」カチャ

淡「くっ……!」

淡(西は有珠山の風牌……!)

淡(カンで西をドラにして有珠山に鳴かせたんだ。まずい、この鳴きでまたツモ巡がズレて、
4索をツモるのは咲ちゃんになった。もう4索は出ない……!)

同巡フリテンどころか見逃しだからツモ和了しかできないんじゃ…


>>787しまった・・・リーチ見逃しだった・・・まあどの道和了れなかったので許してください

咲「カン!」

淡(ちょ……今度は暗槓!?)

咲「……」カチャ クルッ

末原(槓ドラ……――!!)

末原(槓ドラが私の①筒! これでドラ3……倍満手や!)

末原「……」カチャ

末原(こい! ――――!)カッ

末原「ツモ! イーペーコー純チャンドラ3、8000オール!」ッターン!

淡「なっ――」ガタッ

実況『末原選手、ここで親倍――! これで試合はまだ分からなくなりました――!』

淡「……」

淡(私が咲ちゃんから和了れないことを利用して、二度も姫松の危険牌処理を手助けして、しかもあの槓ドラ……)

淡(有珠山に当たり牌が渡ることの阻止。槓ドラで姫松の手を上げてきっちり8000点マイナス。
そしてツモ巡そのものをズラして姫松に当たり牌をツモらせる。……槓ドラを利用してここまで思惑通りに進めてくるなんて)


淡(……やってくれるね、咲ちゃん)

咲「……」

淡(次で仕留めてやる……絶対に)ゴッ

南三局

淡「ポン」北

末原(くそ……まずい牌鳴かせてもうたか?)

末原(でもこの配牌……これは……)

淡(咲ちゃんは今プラス13100点。オーラスでマイナス8000点になればプラマイゼロだ)

淡(今の点差のままオーラスになれば咲ちゃんの負けは確実。その考えは間違ってないはず。
さっきは少し余裕出してリーチなんてしちゃったから後の状況変化に対応できなかったけど、
今度は鳴いて速攻で仕留める)


咲「……」カチャ 東

淡「ポン」カチャ

咲「……」カチャ 西

淡「ポン」カチャ

中中中九  北北北 東東東 西西西

淡(星の引力を使えば十分勝算はある。これで和了っても咲ちゃんはプラマイゼロにならない)

末原「……」カチャ

末原(……こい!)

末原(こい!)カチャ

末原(こい!!)カチャ


末原「……」カチャ

末原「……! っ、き――!」ビクッ

一九①⑨19東南西北白発八 中

末原(きた!! 国士13面待ちや!!)ドックンドックン

淡「――ッ!?」ビクッ

淡(この感じ……! まさか姫松、役満張ったの? この土壇場で!?)

末原(いける……! これを和了れば、清澄と並ぶ!)ドックンドックン

淡「……」

淡(この捨て牌……国士か。しかもこの気配……尭深がオーラスで和了るときと同じ。
まさか13面待ち……?)ギリ

淡(ツモなら16000オール。咲ちゃんは逆にマイナス2900点になって、今度は
二局で8000点前後を和了ればプラマイゼロになる。……それくらいなら、十分有り得る)


淡(有珠山も聴牌には遠いから差し込めない。咲ちゃんは当然和了らないだろうし、まずいな……
私が和了るしかない。この手で和了れば6000,12000。ここで和了れば姫松はオーラスでどんな手を和了っても二位にはなれないんだから、
咲ちゃんから2000点和了ったりしないはず。それよりもここで姫松に役満和了られて
二位争いに参加されるほうがずっと面倒だ)

淡(仕方ない、次で引くしかないね)ゴォォォッ!

咲「……」カチャ

咲「――カン」

淡(また暗槓? 大丈夫、暗槓ならツモ巡は狂わない。次巡で当たり牌をツモれるはず。
悪あがきだよ、咲ちゃん)

咲「……」カチャ クルッ

淡(新ドラは……――え)ピク

淡(新ドラ、西……? 私の鳴いた牌だ。ってことは、ドラ3がプラスされて……)

淡「――ッ!!!」

淡(まずい、この手――!)

中中中九  北北北 東東東 西西西

淡(九萬がドラだから……混老頭トイトイ中混一色ドラ5、14飜で数え役満――!
まずい、この手じゃ和了れない!!)

淡「……くっ!」カチャ

淡「――――!!??」

淡(なっ……九萬じゃない……!?)

中中中九 一  北北北 東東東 西西西

淡「ぐっ……そ、そんな!」

淡(確かに一巡前までは九萬を引けるはずだったのに……数え役満になったから、牌が私を避けて……!
しかも、手牌に字牌しかない……これじゃあどれを切っても……!)

実況『こ、これは――!!! 大星選手、手牌が全て末原選手の当たり牌になってしまった――!!
こ、これはもう、振り込むしか道はない――! 親の役満直撃は48000点です!!』


淡「…………」プルプル

咲(淡ちゃんの弱点は13飜以上の手を和了れないこと。だからカンを操ってドラを乗せることが
できる私なら、淡ちゃんの手を封じることができる。今までそんな止められ方をしたことは少ないはず)

淡(……この一瞬を狙ってたっていうの……? 私に役満を振り込ませることを……!)

咲「……」

淡「く……そぉ……!!」タン!

末原「!! ろ、ロン!! 国士無双、48000点です!!」

淡「……」ギリッ!

白糸台:132800
清澄:130700
姫松:130700
有珠山:5800

実況『な、なんということでしょう!! まさかここで白糸台が三位の姫松に役満を放銃!!
 これにより有珠山以外の三校の点差はほぼ横並び状態です! これは姫松の二位進出……
いえ、まさかの白糸台の三位転落すらも十分考えられる点差となりました――!』

淡(こ、この私がこんな雑魚相手に役満を振り込むなんて……テルの見てる前でよくもこんな……!)ギリィ!

有珠山「……」カチャ

咲「ロン。1600」

淡(あっ……! しまった、動揺してる間に和了られた)

実況『清澄高校が有珠山から安手を和了り、姫松高校の親が流れます。ついに準決勝大将戦の
オーラスに突入です!!』

白糸台:132800
清澄:132300
姫松:130700
有珠山:4200

末原(オーラスや。清澄との差はたった1600点や。ここで2飜以上和了れば二位抜けや!)

淡(今の和了りで咲ちゃんはプラス14700。この点差なら誰かが和了った時点で即終局。
正真正銘、最後の一局だ)

淡(ここから咲ちゃんがプラマイゼロにするには9000点以上の振り込みが必要……
でも振り込んだら三位に転落。だから私が8000オールを和了って、その前に咲ちゃんが
リーチしてリー棒を1000点だせば、600点差で姫松に勝ちつつプラマイゼロ。
……無理だ。できるわけない。もうプラマイゼロは絶対に不可能だ)

淡(プラマイゼロは諦めたか。役満を振り込ませて一矢報いたってことかな。確かに、プラマイゼロに
されるのと同じくらいの屈辱だよ、咲ちゃん)

淡(こうなった以上、もうプラマイゼロの心配はない。ここで私たちの戦いの勝敗を
決める要素があるとすれば、それは私か咲ちゃんがどこかに振り込んで三位に転落っていう赤っ恥を晒すこと以外にない)


淡(最後の最後でこんな殴り合いみたいな麻雀にもつれ込むなんてね。でも、ここを押さえれば私の勝ちだ)

淡「ポン!」カチャ

999⑤⑤⑧⑧北北北  111

淡(トイトイ。ツモれば三暗刻だ。4800だからプラマイゼロにもならないし、即終局。
これでとどめを刺す……!)ゴッ!

末原「……」カチャ

二二二234赤56②②③③④ ④

末原(来た! タンヤオイーペーコー平和ドラ1で三面待ち! これを和了れば文句なしで1位通過や!)

淡(……姫松も張った。まずい。オーラスは私が親……高い手をツモられれば親被りで
三位転落も有り得る。そんなことになるくらいなら自殺したほうがマシだ)

淡(⑤筒も⑧筒もまだ二枚ずつある。絶対に先に和了ってみせる!)


有珠山「……」カチャ ⑨筒

咲「チー」カチャ ⑦⑧⑨筒

淡「……っ」

淡(私の⑧筒……くそ、でもまだ一枚ある)

咲「……」カチャ

咲「……」タン  赤⑤筒

淡「――あ」ピク

淡(⑤筒――私の当たり牌だ!)

実況『――ああーっと。ここで宮永選手、赤⑤筒を捨てた――! これは大星選手の当たり牌!
これで勝負は決着だ――!』

淡「ろ――」

淡「――」ピタ


淡「……」

淡(赤⑤筒……ドラ……これを和了ったら、私の手はトイトイドラ1で9600点になる)

淡(咲ちゃんは今プラス14700。私に9600点を振り込んだら、プラス5100点)

淡(つまり……プラマイ、ゼロ――!?)ゾクッ

咲「……」ジー

淡「……っ」ゾ

淡(これは事故じゃない。差し込んだんだ。これが私の当たり牌だって分かった上で切ってるんだ)

淡(この子、正気!? ここで私が和了ったら、清澄は三位に転落。決勝に進めないんだよ!?
咲ちゃん、そうまでしてプラマイゼロに拘るっていうの!?)

咲「……」ジー

淡「くっ……」


淡(咲ちゃんは私を試してるんだ。私が咲ちゃんとの勝負に決着をつけるのか、
それとも手近な勝利に飛びつくのか。私の器を測ってる……)

照『――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――


淡(――ッ! ……そうだ、ここでロン宣言するっていうことはつまり、姫松とのめくりあいに
勝つ自信がないって認めるようなものだ。そんな屈辱……受けられるわけない!)

淡「……」

実況『え……? えっと……? 大星選手、ロン宣言を……え、しない……? な、なぜ?』

末原「……」カチャ

実況『あ、ああーっと! 末原選手が牌をツモりました。もう大星選手はロン宣言できません!
こ、これはどういうことでしょうか!? 今ロンすれば勝利は確定していたというのに、なぜ
見逃したのか――!?』

咲「……」

咲(淡ちゃん、すごいプライドだ。確かに、この人に勝たないとお姉ちゃんに挑む資格なんてない)


淡(まだだ……まだ二枚ある。それを引ければ)


咲「……」タン 赤⑤筒


淡「――!!」ビクッ

淡「ぐっ……!」

淡(に、二巡連続……!? こ、こいつ……!)ギリギリ

実況『お、大星選手、なんと二巡連続で当たり牌を見逃した――! も、もう私には訳がわかりません!』

淡「……」プルプル

淡(……こ、ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ……血管ブチ切れそう
……)プルプル


淡(これであとは⑧筒一枚……姫松は多分三面待ち。当たり牌の数では私が圧倒的に不利だ)

淡(それでも先に引けるかどうか。それが雀力の差なんだ。私なら引ける、引いてやる!)

末原「……」カチャ

末原(こい……!)ドックンドックン

淡(くそ、来るな……!)ドックンドックン

末原「……く」カチャ

淡「……」ホッ

淡「……」カチャ

淡(こい……!)ドックンドックン

末原(来るな……!)ドックンドックン


淡(くそ、不要牌……)カチャ

咲「……」カチャ

末原「……」カチャ

淡「……」カチャ

淡(っ……くそ!)タンッ


白糸台控室

照「……淡。押されてる」

菫「あの大星が……」

誠子「大星さん、何度も和了りを見逃してましたよね。これで逆転負けして敗退なんてことになったら……」

尭深「どうするんですか?」


菫「――どうもしないさ。言っただろ、個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だ。
まあ、部長としてしっかりと叱っておくがな」

尭深「……わかりました」

菫「それに、私は大星が勝つって信じてる。あいつはきっと負けない」

誠子「……弘世先輩、なんか嬉しそうですね」

菫「え?」

誠子「いえ、なんかそんな気がして」

菫「……嬉しい……」

菫「そうか、そうなのかもしれないな」

照「どうしたの?」

菫「私は、大星が追い詰められて嬉しいのかもしれない」


誠子「日頃の恨みつらみがあるからですか?」

菫「おいおい、そういう話はやめろ。そうじゃない。
見てみろ、大星の顔を。あんなに必死になってる大星を見たことあるか?」

照「私と打ってるときでも、あんなに必死になってるところは見たことない」

菫「でも、私たちは多分、いつもあんな感じで麻雀を打ってるんだと思う。聴牌になったときは
当たり牌が出ないか目をギラギラさせて、他家がツモるときは、和了るな和了るな、って念じながらさ」

菫「私はそれこそが麻雀の醍醐味だって思ってる。麻雀を打つやつは皆そのときのドキドキとか、
和了れたときの喜びとかが大好きで、だから麻雀を打つんだと思う。
でも大星は今までそんな感覚を味わえたことがないんだ。唯一照だけがそれに近いものを与えてくれるから、
あいつは照と打ちたがるんだと思う」

尭深・誠子「……」


菫「でも今、あいつはその感覚に肉薄してる。姫松がツモれば逆転負け。自分がツモれば完全勝利。
その両極端な境地で、自分の運に全てを託す感覚。……もしかしたら大星は今、生まれて
初めて麻雀を打っているのかもしれない」

照「……それが嬉しいの?」

菫「ああ、嬉しい。あいつもやっぱり私たちと同じ、麻雀を楽しめる女子高生なんだなって思うと、
なんだろうな、なんて言えばいいのか分からないが……多分、私はそれが嬉しいんだと思う」

照「……そう」

尭深「――――あ」ピク

誠子「あ!」

菫・照「――ッ!」

菫「こ、これは……!」ガタッ


菫「清澄!!」


淡「……」カチャ

淡(くそ、また引けない……どうして)

末原「……」カチャ

末原(く、なんで引かれへんのや)

咲「……」

淡(テル……)

 どこまでも暗く、どこまでも孤独な宙の中で、私が初めて見つけた光。温かな輝き。
 彼女に近づきたくて私は麻雀を打ってきた。テルと一緒に歩けることを誇りに思っていた。
 私に負けるようじゃテルに挑む資格はないと咲ちゃんに言ったけど、それは私にも言えることだ。
 こんなところで負けるようじゃ、私にテルの隣に並ぶ資格なんてない。

淡(いやだ……)ドックン   ドックン

 テルから遠ざかりたくない。もう二度と孤独になりたくない。もっとあの太陽の光に照らされていたい。
 負けたくない……負けたくない!


淡(私は――)ドックン   ドックン

 こんなに負けたくないと思ったのは生まれて初めてだった。
こんなに心臓が脈動するのは初めてだった。こんなに手の平に汗が滲むのは初めてだった。
 でも、不思議とこの感覚は嫌いじゃなかった。
 緊張に霞む視界は眩しくて。汗ばむ身体は暖かくて。

 もしかしたら……。
 私の胸を震わすこの鼓動こそが。この火照る身体の熱こそが。
 私がずっと欲しかった、星すらも照らす陽の光だったのかもしれない――。

淡(私は――咲ちゃんに勝ちたい!)


タン

――ツモ。


実況『――き』

実況『決まったァァァ!! ついに準決勝大将戦決着――! 勝者は――!!』


淡「……はあ……はあ……」

 何も聞こえなかった。
 まるで鼓膜が切れたかのように静かだった。姫松と有珠山が立ちあがり何かを言っていた気がするが、何も聞こえてこなかった。
 ただ、心臓の音だけが聞こえた。ドックンドックンと脈打つその鼓動の音だけが、ずっと響いていた。

淡「……はあ……はあ……」

 ぴちゃん、と頬を滑った汗が卓に落ちて、私の意識はようやく目覚めた。

 開かれた私の手牌。掴みとった最後の⑧筒。トイトイ三暗刻の4000オール。
 私の勝ちだった。

白糸台:144800
清澄:128300
姫松:126700
有珠山:200


淡「……私の……勝ちだね、咲ちゃん」

咲「うん」

 卓には私と咲ちゃんだけが残っていた。決勝進出を果たした二人だけが。

淡「ねえ、どうして赤⑤筒切ったの? 私が和了ったらどうするつもりだったの?」

咲「淡ちゃんは和了らないと思ったから」

淡「……ふふ」

淡「まあ、あれだね。私をここまで追い詰めたことは認めてあげる。でも、やっぱりまだ
テルには及ばないよ」

咲「そう、なのかな……」

淡「でも、確かに高校生の内では段違いの強さだと思う。ま、私ほどじゃないけど」

咲「あはは……」


咲「じゃあ私帰るね」

淡「うん、じゃあ、また決勝でね」

咲「うん」ガタ

ツカツカツカ

淡「……」

淡「ねえ、咲ちゃん」

咲「ん?」



淡「――どうして、オーラスで和了りを見逃したの?」


咲「――――」

咲「……気づいてたの?」

淡「まあね。私が⑧筒をツモる前、咲ちゃん聴牌になってたよね。カンして嶺上開花すれば
和了れてたんじゃないの?」

咲「……うん」

淡「和了ればよかったのに。私が赤⑤筒和了らなかった時点でプラマイゼロは諦めたんでしょ?」

咲「うん。まあ、和了られても困ったんだけどね。もうあの時点で私はドン詰まりになってたんだ」

淡「ならせめて最後に気持ち良く和了って終わればいいのに」

咲「……」

咲「私の手は5飜で、2000,4000の手だった。それなら和了ってたと思う」

咲「でもそのためにはカンをしないといけなかったから」

淡「……槓ドラか」


咲「うん。あそこでカンしてたら、ドラが乗ってハネ満手になってたと思う。そしたら3000,6000……
淡ちゃんが親被りで三位になってた」

淡「……決勝でテルに会いたいんだったっけ?」

咲「うん。だから白糸台に敗退してほしくなくて」

淡「放銃さえしなければ誰が和了っても二位抜け確実だったもんね。なるほどね……」

淡(勝たせてもらった……って形になるのかな、これ)

淡「あーあ。なんかすっきり出来ないなぁもー。手加減されて勝ったみたいじゃん」

咲「ううん、私のプラマイゼロに付き合わなかったら私だって普通に負けてたかも」

淡「ほんとだよ! 私が何回和了りを見逃してあげたと思ってるの! ほんとストレスマッハだったんだから!」

淡「だいたい、ほんとにそのカンで嶺上開花できてたかどうかも分かんないじゃん」

咲「むっ、それは出来てたもん」


淡「いーや出来てなかったね。仮にできてても、それでドラが一つ乗ったかどうかもわかんないし」

咲「乗ってたもん」

淡「乗らなかったもんねー。ベー」

咲「乗ってたの! ああもう、山崩さなきゃよかった!」

淡「ふふー。結局私の完全勝利ってことだよね。やっぱ私サイキョーだわー」

咲「ふん、私の誘導で役満振り込んだくせに」

淡「は、はあ? あんなのわざとだし。ああすれば咲ちゃんが大きくプラスになるから、
プラマイゼロさせにくくなるなーって思って、わざと振り込んだんだし」

咲「うっそだー。『くっそー!』とか言いながら切ってたじゃん」ププ

淡「言ってないっ!」


咲「言ってたよ。涙目で」

淡「涙目だったの咲ちゃんじゃん!」

咲「私はずっと平静だったよ」

淡「どこが。『人和振り込んじゃった、あわあわ~』ってしてたじゃん」

咲「し、してないよっ」

淡「言っとくけど、決勝ではもうプラマイゼロ勝負なんてしないからね。っていうか、咲ちゃんも
出来ないでしょ。二位じゃ意味ないんだし」

咲「うん、そうだね」

淡「普通に点の取り合いしたら私が勝つに決まってるんだから。決勝ではこんなに競るとは思わないでよね。ベー」

咲「大丈夫、決勝では私も点を取りにいくから。逆に淡ちゃんトばないように気をつけてね」ニッコリ


淡「ふん、決勝戦でほえ面かかせてあげるから」

咲「こっちこそ」

淡・咲「ふんっ!」

淡・咲「……」

淡・咲「――ぷ。あはははっ」

淡「……まあ、あれだね」

咲「ん?」

淡「私の方が強いのは確かなんだけど、まあ……そこそこ強いってのは認めてあげる」

淡「だから特別に! ほんとにとっくべつに! 今日から私のライバルを名乗ることを
許してあげる。感謝してよね」

咲「えー? 別にいらないや」

淡「うっさい! ありがたく受け取れバーカ! 私のライバルなんて今のとこテルくらいしかいないんだからね!」


咲「……お姉ちゃん」

淡「……」

淡「昔テルと何があったのか知らないけどさ、あの人は理由もなく人を嫌ったりする人じゃないと
思うよ。妹なら尚更」

咲「……うん。全部、私のせいなんだ」

咲「だから私……お姉ちゃんに会って、伝えなきゃ」

淡「……ふふ」

淡「伝わるといいね。咲ちゃんの伝えたいこと、私にもなんとなく分かるよ。私も――さっき
同じものを感じてたと思うから」

咲「……うん」


咲「ありがとう、淡ちゃん」ニコ


ガチャ、バタン

淡「ただいまー。あー疲れた」

菫「御苦労さま、大星。危ないところだったな」

淡「別に危なくないよ。余裕余裕。決勝では普通に打つから勝てるよ」

菫「油断するなよ大星。お前は気づいてないだろうが、オーラスで清澄は」

淡「嶺上開花を見逃したんでしょ? そんなの分かってるってば」

菫「え、あ、ああ、気づいてたのか。なら――」

淡「分かってる。次はちゃんと打つって。――それよりテル。どう? 咲ちゃん、
プラマイゼロにできなかったよ」

照「ああ、そうだね」

淡「これって私の勝ちってことでいいんだよね?」

照「……」


照「でも淡、清澄の大将に完全に勝ったって言える?」

淡「む……か、勝ったもん。一位通過したし、プラマイゼロも防いだし、合計収支でも勝ったじゃん」

照「でも最後に清澄が見逃さなかったら淡は負けてた」

淡「嶺上開花できてたかどうかもわからないし、ドラが乗ったかも分からないじゃん」

照「もしドラが乗らなくても淡は抜かれてたよ」

淡「……」

照「……」

菫「――引き分けでいいだろ、別に」

淡「私引き分けって大嫌いなの。白黒はっきりつけたいから」

照「……じゃあどっちも勝ちってことにしない?」


淡「どっちも勝ち?」

照「勝ったら相手のいうことを一つ聞くって約束だったけど、お互いに一つずつ相手に命令できるの」

淡「うーん……まあそれでいっか」

菫「私からも一つ頼みごとがあるんだが、もう二度と麻雀で賭け事なんてしないでもらえるか」

淡・照「私に勝ったら聞いてあげる」

菫「……」


淡「じゃあ何にしよっかなー。やっぱ私の家に泊まり込んで麻雀打ちまくるとかかなー」

照「……ねえ」

淡「ん?」

照「命令できる権利、いま使いたいんだけど、いい?」

淡「え、早速? まあいいけど……なに?」

照「……」

菫「……? どうした、照」

照「……次の決勝戦――」



照「私に、大将を代わって」


つづく!


ごめんなさい、一旦ここで終わります。前後編で考えてて、ここで前編終わりです。
淡編が終了したので、次の照編で姉妹の関係や三人の今後は全部終わらせます。
後編もやろうかと思ったんですが、正直、まさか15時間以上かかるなんて夢にも
思ってなかったので、次は日にちを跨いでもいいように
週末くらいに立てることにします。このスレで淡関係が全部終わると思って辛抱強く読んでくださった方々、
本当に申し訳ないです
なんかそろそろ本編で淡が出てきて能力解禁されそうなんで、それまでになんとか投下したかったんです
こんなに夜遅くまで沢山の支援や感想、本当に嬉しかったです。ありがとうございました
照編ではもっと麻雀パート短くします。ほんとにごめんなさい。つい書きすぎちゃいました

一応、>>1で言ってる原作無視のオリジナル展開は抽選の変更と決勝でのオーダー変更が主です
どうしてもこの順番にしないと終わらなかったので、なんとか許して下さい

ssを投下するのは二回目なのですが、皆さんの何気ない感想や支援が本当に嬉しかったです
とちゅう三回さるさんくらったので、多分皆さんの支援なしじゃここまで書けませんでした
本当にありがとうございました!


野暮だけど咲はカンドラ乗らないのとインターハイは順番変えられないんだぜwww

>>949
みたいですね。プロット練ってる段階で知って焦りましたwwww
なので最後は咲は和了らず、最後のドラは乗ったの?乗らなかったの?と濁らせる
感じで終わらせました
オーダー変更は、このパラレルワールドでは認められている、ということでお願いします
どうしても照と決勝で戦ってほしくて

さて、寝ます。こんな遅くまで付き合ってくださってありがとうございました
また今週か来週の金曜日くらいに投下できたら、そのときはよろしくお願いします

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年10月12日 (土) 13:27:58   ID: zkz6HSI0

圧倒的かませ咲

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