杏子「灘神影流か……」(130)

杏子「……オッサン、魔女を一撃で倒すなんてタダモンじゃねーな」

静虎「あなたがピンチに見えたので、つい手出しをしてしまったんですよ」

杏子「チッ……余計なことすんじゃねーよ。アレはあたしの獲物だったんだぞ」

静虎「そうですか。それはすみません」ニコニコ

杏子「……ヘンなオッサンだな。調子狂うよ、ったく……」

杏子「っていうか、なんでオッサンはこんなところにいるんだよ?」

静虎「なんで、と言われてましても……」

杏子「ここは普通の空間じゃない。散歩気分で入ってこれるようなとこでもねーし」

静虎「それでしたら、裏路地から異様な気が溢れていたので、つい」

杏子「つい、って……」

杏子「それで、魔女に押されてた私を助けてくれたってわけかい」

静虎「そんなところです。あなたも只者ではなさそうですが」

杏子「……まあね。色々あってさ」

静虎「こんな危険なこと、今すぐやめた方が良いですよ」

杏子「うるせーな。あたしの勝手だろ?」

静虎「ご両親も心配するでしょう」

杏子「……親なんていねーよ」

静虎「………………」

――
――――
――――――

静虎「……で、住む家も無いって話やったからな。ウチに住んでもらおうと思った訳や」

熹一「お、おお。そういうことかいな……」

静虎「? なんや、熹一」

熹一「いや、いきなりオトンが女の子連れてくるさかい、よくない趣味に走ったんかと思たわ……」

静虎「アホっ」

杏子「……ウチ、って言っても倉庫じゃねーか。私が寝床にしてた場所と大差ねーぞ」

静虎「スミマセン……」

熹一「なんや、生意気そうなガキやなぁ」

金時「ん? なんや、その子。静虎の隠し子か?」

静虎「お父さん……」ジロッ

金時「じょ、冗談や、冗談!」

熹一「実は、かくかくしかじかでな……」

 ………………

金時「……はぁ、なるほどな。うっかり静虎が変な趣味に走って」

熹一「それはもうええっちゅうねん!」

杏子「……くくっ」

熹一「お? なんや、無愛想なツラしとったけど、ちゃんと笑えるやん」

杏子「!? う、うるせーバカ!」

静虎「…………」ニコニコ

金時「ほな、今日は鍋やな」

静虎「そうですね」

杏子「鍋か……」

熹一「ん? どないした?」

杏子「そんなもん、久しく食べてないと思ってさ」

熹一「ほな、今日はたらふく食ったらええで!」

金時「一緒に住むんやったら、明日も明後日も鍋にしよか?」

杏子「やめてくれよ。そんな気を使われても困るしさ……」

――
――――
――――――

グツグツ...

熹一「いただきます!」

静虎「いただきます」

杏子「………………」

静虎「…………」チラッ

杏子「い、いただき、ます……」

静虎「…………」ニコニコ

静虎「ところで君は、どうしてあんな化物と戦っていたんです?」

杏子「……別に、そんな丁寧な言葉使わなくていい」

静虎「…………そうか」

杏子「あたしが戦ってたのは、魔女。あたしは、それを退治する魔法少女さ」

静虎「……?」

熹一「魔法少女?」

金時「なんやそれ?」

杏子「説明すると長くなるから、かいつまんで話すけど――」

杏子「――ってわけさ」

熹一「なんやそれ。願いを叶える代わりに一生戦わなアカンのかい」

金時「そもそも魔女とか魔法少女とかっていうのが、眉唾モンの話やなぁ……」

静虎「ですがお父さん。私は実際に、その魔女も、魔法少女の姿をした杏子も、この目で見ましたよ」

金時「ホンマかいな……」

杏子「でも、オッサン……えっと、セイコだっけ?」

静虎「ああ」

杏子「セイコが一撃で魔女を倒した時は、正直驚いたね……あたしや巴マミ以外に、魔女と戦えるヤツがいたなんて」

静虎「巴マミ?」

杏子「魔法少女の一人だよ。見滝原町に住んでて、アイツも魔女と戦ってる」

熹一「ふーん……ってか杏子、お前さっきから肉取り過ぎやろ!」

杏子「いいじゃん。野菜も取ってるし」

熹一「そういうことやあらへん!」

静虎「食べ過ぎなんは熹一や。この後の稽古で吐いても知らんで」

熹一「ゲッ……」

杏子「……稽古?」

金時「そや。ホンマは部外者には見せへんねんけど、杏子ちゃんには特別に見せたってもええかな」

杏子「………………」


杏子(……まあ、何が魔女と戦う時のヒントになるか分からねーしな……)

1時間後――


静虎「熹一、準備ええな」

熹一「おお!」

静虎「よし。ほな、まずは思い切り打ってこい。最初は破心掌からや」

熹一「破心掌? なんでいきなり……」

静虎「ええから早よせえ」チラッ

杏子「……ん?」

熹一「分かったて。ほないくでぇ! 灘神影流『破心掌』!!」


ドギャァァァア!!


静虎「むうっ!」

杏子「!? こ、この技、もしかして……」

静虎「……これを会得すれば、もし手元に武器が無くても、魔女を倒すことができるだろう」

杏子「ま、マジかよ……槍無しでも戦えるってのか?」

静虎「ああ、その通りだ」

熹一「せやけど灘神影流の技は、次期当主候補でもない杏子には教えられへんやん?」

静虎「そうだ。つまり、目で見て盗むしかない。だが幸い破心掌は、灘神影流の中では会得が容易な方だ」

杏子「……簡単に言ってくれるね」

その頃、見滝原町では――


シャルロッテ「――――」アーン

マミ「……え」

まどか「あっ……!」

さやか「マミさんっ!」


ゴシャァァァ!!


マミ「……っ!?」


鬼龍「なんだ……このデカブツ、ただの見かけ倒しか。足を運んで損したぜ」

シャルロッテ「――――」アーン

鬼龍「ほう、まだ生きてるのか。灘神影流『霞突き』」ドシュッ!

シャルロッテ「――!?」

鬼龍「灘神影流『塊貫拳』」


ドグンッ


シャルロッテ「――――――」


鬼龍「終わったぜ」

マミ「……あ……あなたは、一体」

鬼龍「さあな……」

ほむら「巴マミ!」タタタッ

マミ「あ……暁美さん?」

ほむら「あなた、無事なの?」

マミ「え、ええ。危なかったけれど、あの人が助けてくれて」

鬼龍「助けたわけじゃない。俺はただ獲物を食っただけだ」

ほむら「…………!?」


ほむら(だ……誰!?)

ほむら(今まで何度もループを重ねてきたけれど、こんな男、知らない……!)

翌日、宮沢家――


ガラッ

鬼龍「よう」

熹一「オッ、鬼龍やないか。ここに顔出すなんて珍しいやん」

鬼龍「昨日、変な化物と妙なガキ共に会ったんでな。当主の耳には一応入れておこうと思ったのさ」

熹一「妙なガキ?」

鬼龍「なのはやプリキュアみたいな格好して、魔法少女がなんたらとかほざいてたが」

熹一「……あれ。なんやその話、昨日も聞いたような気がするんやけど」

鬼龍「ああ?」

杏子「破心掌!」

ベチィン!

静虎「うん。アドバイスはできないが、いい感じではあるな」

鬼龍「……おい静虎。俺が来てるんだから挨拶くらいしたらどうだ」

静虎「すまんな。だが見ての通り、今は稽古中だ」

鬼龍「…………なんだそのガキは。こいつもおかしな格好してやがるな」

杏子「なんだよオッサン、邪魔すんじゃねーよ」

鬼龍「ああ?」

杏子「あ?」

熹一「お前ら、ケンカすんなや……」

杏子「セイコ、続けようぜ」

静虎「……ああ。熹一、鬼龍に茶でも淹れてやってくれ」

熹一「しゃーないなぁ」

鬼龍「………………」


杏子「破心掌!」

バチィン!

鬼龍「腰の回転が足りんな」


杏子「…………破心掌!」

バチィン!

鬼龍「右脚はあと10センチ後ろがいい」

杏子「なんなんだよテメェ!」

静虎「鬼龍。杏子は……」

鬼龍「魔法少女なんだろ。だが後継者じゃねえから助言はするなってわけだ」

静虎「分かっているなら」

鬼龍「そんな閉鎖的だから、灘神影流は古い技しか残ってないんだ」

静虎「…………」

鬼龍「それにハイパーバトルで全世界に公開されたのに、今更だろう。もっと若い風を取り入れていけ」

静虎「それは、そうかもしれないが」

鬼龍「魔法少女、大いに結構じゃねえか。なあ、昨日の黒いガキ」チラッ

静虎「なにっ」



ほむら「……気付いていたのね」ガサッ

鬼龍「当然だ。昨日別れた後からずっと付け回してただろうが」

杏子「ん? お前は……」

ほむら「佐倉杏子。まさか、あなたとこの男が関係していたなんて」

杏子「いや、知らねーって! こんな胡散臭いオッサン!」

鬼龍「…………」

杏子「そ……それよりお前、なんであたしのこと……」

ほむら「……お互い、話す必要があるようね。魔法少女のこと、この人達のこと」

ほむら「――ということよ」

熹一「この小っこい装飾品が砕けただけで死んでまうなんて、信じられへんな……」

杏子「どういうことだ、おい……聞いてねーぞ!」

ほむら「インキュベーターからすれば、話すのは不都合でしょうね」

静虎「馬鹿な……人の命をそんな風に弄んでいいハズがない」

鬼龍「確かに、後ろでコソコソやってるヤツは気に食わねぇなぁ」

ほむら「ただ……私が何度も繰り返してきたループの中で、あなた達は今までは存在しなかった」

静虎「…………」

ほむら「それに……今は、巴マミが生きていて、佐倉杏子も新たな力を身につけようとしている」

杏子「…………」

ほむら「まどかも魔法少女になっていない。だから、もしかしたら今回は絶好のチャンスかもしれない」

鬼龍「お前の話だと、最後にワルプルギスの夜とかいうヤツが来るんだろ」

ほむら「ええ。まどかが魔法少女にならずに4人だけで奴を倒すことができれば、全員が幸せになれるわ」

杏子「……その美樹さやかって奴も、魔法少女にならせたくねーな。まだ普通の人間なんだろ?」

鬼龍「じゃあ、そのガキに言っておけ。ナントカの夜は俺が殺すから問題無いってな」

ほむら「無理よ」

鬼龍「あん?」

ほむら「ただの人間が何をやったって、勝てる相手じゃないわ」

熹一「……鬼龍やったらいけるんちゃう? どんな相手か知らんけど」

静虎「怪物を超えた怪物、だからな」

ほむら「……それについては、話すだけ時間の無駄のようね」

熹一「せやな」

ほむら「あと……美樹さやかについても、今のままでは魔法少女になるのは避けられないと思う」

静虎「なぜだ?」

ほむら「……美樹さやかが想っている、上条恭介という少年。彼は、一生腕が治らないという苦しみを抱えている」

ほむら「お互いが想い合っているにもかかわらず、そのコンプレックスが原因で、二人は仲違いをする」

熹一「好きって言うたらええんちゃうん? ただのヘタレやん」

鬼龍「まったくだな」

ほむら「……美樹さやかが魔法少女となることで上条恭介の腕は治るけれど、彼の交際相手は別の人物になる」

ほむら「そこに追い打ちで魔法少女の運命を聞かされ、美樹さやかは魔女化する」

杏子「ひ、悲惨じゃねーか……」

静虎「そのさやかという少女に、想いを伝えさせれば……」

ほむら「無理よ、ヘタレだもの。それに交際したとしても、腕を治すために魔法少女にはなると思う」

金時「なんや、最近の若者は難儀やなあ……」

熹一「……なんとかして腕を治すしかあらへんな」

ほむら「だから、それは無理だと言ってるでしょう。最新の医療技術でも治らないのだから」

静虎「………………」

鬼龍「………………」

ほむら「…………なに?」

病院――


さやか「ちょ、ちょっとおじさん!」

恭介「な、何をするつもりだ!?」

静虎「灘神影流には、いくつか秘伝のツボがある」

恭介「ちょっ、やめ――」

静虎「ふんっ」

グリッ

恭介「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

さやか「恭介ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

病院の庭――


鬼龍「よう」

尊鷹「………………」

鬼龍「お前が近くにいると分かるんだ。俺たちは繋がってるからな」

尊鷹「……これは」


ゴゴゴゴゴゴ......


鬼龍「その空間には魔女ってヤツがいる。やってみたが、大した相手でも無かったぜ」

尊鷹「……それは私が判断する」ザッザッ

鬼龍「ちっ」

ドゥゥン...


鬼龍「えっ」

尊鷹「……体が影絵のように」

鬼龍「面白い余興だな」


使い魔「ウフフフフフ...」

使い魔「ケケケケケケケケ」


鬼龍「細かいのが出てきたぜ」

尊鷹「………………」

尊鷹「灘神影流『鷹鎌脚』」


ブワッ...

使い魔「ケケ……――」


尊鷹「…………」

鬼龍「俺の出番が無いだろうが」

尊鷹「知らん」

エルザマリア「ウフフフフフフ......」

マミ「くっ、強い……!」

QB「………………」

マミ「でも、私がやらないと。これくらいでへこたれてちゃ、鹿目さんや美樹さんに笑われちゃうわ!」

エルザマリア「ウキャァァァァァ!」


ドドドドドッ!


マミ「きゃあああっ! か……影で触手を作り出すなんて……」



鬼龍「先客がいるみたいだぜ」

尊鷹「………………」

エルザマリア「キャキャキャ......!?」

ザッ...

尊鷹「………………」

マミ「えっ……」

鬼龍「また会ったな、乳のでかいプリキュア」

マミ「あ……あなたは、あの時の……!」

QB「なんだい、君たちは。魔法少女には見えないけれど」

鬼龍「魔法オッサンだ」

QB「……ええ? わけがわからないよ……」

鬼龍「お前は何だ?」

QB「……僕の名前はキュウべぇ。魔法少女のサポーターみたいなものさ」

鬼龍「……お前が元凶ってわけだ」

QB「何がだい?」


鬼龍「灘神影流『塊蒐拳』」


ドギュルッ...


QB「なに――うっ」

鬼龍「気分はどうだ?」

QB「……君は僕に何をしたんだい。体の自由がきかない」

鬼龍「塊蒐拳は、鍛えた人間が受けても体に強烈な異常をきたし、数年後には絶命するって技だ」

鬼龍「つまり、お前のサイズなら身体機能が停止してもおかしくないんだよ」

QB「………………」

鬼龍「お前は今のところ生きてはいるが、体はロクに動かないだろう」

QB「………………」

鬼龍「……フン。もう口もきけないか」

鬼龍「お前が死んだら次の同族が来るそうだが、生きたまま思考能力が失われている場合は、どうなるんだろうな」

QB「………………」

エルザマリア「キエァァァァァァァァ!」

ドドドドッ!


尊鷹「灘神影流『弾丸すべり』」


ドドド......

尊鷹「…………」

マミ「す、すごい。触手が体をすり抜けていくわ!」


尊鷹「灘神影流『塊蒐拳』」


ドギュルッ...

エルザマリア「アアアアアァァァァァァァ!!」

ドシュウゥゥゥゥゥゥ...

鬼龍「体が耐え切れずに自壊したようだな」

尊鷹「……なるほど。確かに大した相手ではない」

鬼龍「だから言っただろう」

マミ(あ、あれが大した相手じゃない……?)

マミ「……あら? キュウべぇは?」

鬼龍「あのペットなら、先に戻るって言ってたぜ」

マミ「そ、そう……珍しいわね。今までそんなこと無かったのに」

鬼龍「………………」

病院――


ガラッ

マミ「…………」

さやか「あっ、マミさん! 聞いてっ、聞いてください!」

マミ「な、なに?」

さやか「恭介の腕、治ったんです! ほら!」


恭介「ど、どうも……」フリフリ


マミ「……そう。良かったわね、美樹さん」

さやか「はい……! ううっ、ホントに良かった。良かったよぉ、ぐすっ……」

恭介「さ、さやかぁ……また泣くんだから、もう」

マミ「ふふっ」

鬼龍「流石は静虎だな」

静虎「鬼龍。それに……」

尊鷹「………………」

静虎「……そっちはどうだった」

鬼龍「尊鷹が魔女とかいうのを倒した。俺はペットと遊んでたがな」

静虎「…………そうか。では、後はワルプルギスの夜という者を倒すだけか」

宮沢家――


熹一「ここでこの錠剤を入れるんや」

杏子「やめろ! 食い物を粗末にするんじゃねぇ!」

熹一「食べるんやから粗末にしてへんやろ」

杏子「取合せとかあるだろ! 白米に錠剤なんて聞いたことないぞ!」

熹一「宮沢家特製スペシャルライスやのになぁ」

杏子「ったく、キイチはセイコとは大違いだな……」

熹一「それは、オトンが凄過ぎるんや」

ほむら「二人とも、遊んでる暇があったら手伝って」

杏子「遊んでねーよ!」

ほむら「まったく……どうして私が料理を作らされているのかしら。しかも7人分も」

熹一「悪いなァ、ほむらちゃん。ウチ、マトモにメシ作れるのオトンしかおらんねん」

ほむら「……宮沢熹一はともかく、佐倉杏子はもう少し頑張った方がいいわ。お嫁に行けなくなるわよ」

杏子「余計なお世話だ!」


ガラッ


静虎「ただいま」

杏子「あっ……おかえり、セイコ!」

鬼龍「静虎だけかよ」

尊鷹「………………」

熹一「うまい!」

静虎「うん、おいしい」

金時「ほむらちゃんはええお嫁さんになるやろなぁ」

ほむら「そ、そんなこと、ないです……///」

杏子(ちぇっ……なんだよ、ほむらばっかりいい格好してさ)

鬼龍「…………」ガツガツ

尊鷹「…………」ガツガツ

金時「お前らも何か言わんかい」

鬼龍「おかわり」サッ

尊鷹「同じく」サッ

静虎「わ、私もおかわりを……///」

数日後――


杏子「破心掌!」

ほむら「菩薩拳!」


ドギャァァァァァ!!


ほむら「きゃああっ!」

杏子「うわ……び、びっくりした……」

熹一「灘神影流は、技の練度が上がると威力も爆発的に増すんや。二人で打ちあったらそうなるやろな」

静虎「それだけ二人が本物の技を身につけつつあるという証拠だ」

ほむら「まどかも美樹さやかも魔法少女にならなかった。しかも、巴マミは生きている」

杏子「あたしらも灘神影流の技を使えるようになったし、これで負ける気がしねーな」

熹一「まあいざとなったらこの宮沢熹一様がなんとかしたる!」

杏子「え? キイチって強いのか?」

ほむら「そうは見えないけれど」

熹一「おい……ワシ、オトンや尊鷹に勝っとるんやぞ……」

そして、決戦の日――


ほむら「ついに、この日が来た……今度こそ、未来を手に入れてみせるわ」

マミ「暁美さん……」

杏子「あんまり気合入れすぎんなよー」

熹一「……なんや、えらい天気になっとんなぁ」

鬼龍「スーパーセルだな」

静虎「あれもワルプルギスの夜の影響か」

尊鷹「………………」

ドゴォォォォォン!!


ワルプルギス「キャハハハハハハ!」


ほむら「来た!」

静虎「これは……」

熹一「なんやこれ、殺気か!? ピリピリ感じるわ!」

尊鷹「いや、殺気と言うには無邪気すぎる……」

鬼龍「強いて言えば、邪気ってとこか」

杏子「おいおい……あんなのに勝てんのかよ?」

マミ「勝つしかないのよ、私たちは」

ドゴゴゴゴゴゴ...


熹一「撃ってきよったで!」

ほむら「みんな、ヘリに乗って! 予定通り、接近戦を仕掛けるわ!」

杏子「さすがにこの距離じゃ、マミの銃撃でも届かねぇもんな」

マミ「そういうあなたは、飛ぶ斬撃とか無いのかしら?」

杏子「ないない」

熹一「オトン、遠当てよりもっと飛ぶパンチとか無いんか?」

静虎「無い」

熹一「つまらんなぁ」

バラララララ...

ほむら「今よ、飛び降りて!」


バッ バッ バッ


熹一「うひょおおおおおお!!」ヒュウウウウ

マミ「すっ、スカートが……///」バタバタ...

鬼龍「中学生が黒か……」

杏子「テメー見てんじゃねー! 殺すぞコラ!」ジャキン

静虎「……緊張感の欠片も無いな」

尊鷹「静虎、私は先に行く。空中の姿勢制御など、慣れたものだ」

尊鷹「『鳳腿』」

ゴッ!!

ワルプルギス「キャハハハハハハ!」


静虎「『虎腿』」

ドゴォォ!!

ワルプルギス「キャハハ……?」


鬼龍「『龍腿』」

ゴギャァァァ!!

ワルプルギス「………………」

熹一「トドメの『玄腿』や!」

ドグシャァッ!!

ワルプルギス「…………キ」


ワルプルギス「キエアアァァァァァァァ!!」

ぐるんっ


ほむら「う、嘘……ワルプルギスの夜がひっくり返るのは、追い込まれた時だけのはず」

ほむら「ま……まさか、宮沢一族4人の蹴りを食らうだけで、既に……?」

熹一「灘神影流『斧旋脚』」ゴギャッ

静虎「灘神影流『錐揉み貫手』」ズボッ

鬼龍「灘神影流『霞突き』」ドスッ

尊鷹「灘神影流『兜浸掌』」ドギュルッ


ワルプルギス「――――ッッ!!」


杏子「まだ終わってねーよ!」バッ

ワルプルギス「キャハハハハ!」ギロッ

ほむら「!? 佐倉杏子、危ない!」

ワルプルギス「ウケケケケケケケ!」


ドドドドドドドッ!!


ほむら「狙い撃ちされてる!」

杏子「~~~~~ッ!!」


杏子「な……」

杏子「灘神影流『弾丸すべり』っ!」


スッ スルッ...


ほむら「えっ……た、弾が体を」

マミ「あの時の……」

【まどか☆マギカ】巴マミ×キュゥべえスレ4 【キュゥマミ】
幾多のキュゥマミSSを見たがいまだにこのネタを使ったキュゥマミSSはない
マミ「今日も紅茶が美味しいわ」
パターン1
マミ「あなた誰なの?違う! 私のキュウべえはあの子だけよ!」
QB「確かに “この僕” は、三時間ほど前まで君のそばにいたのとは別の個体だよそちらは暁美ほむらに撃ち殺された」
黒い魔法少女。暁美ほむら。あの女だけは、絶対に許さない。
まどか「わたしの願いでマミさんのそばにいた子を蘇生すれば、ほむらちゃんのこと許してあげられませんか?」
パターン2
QB「うううっ……マミ、どうして、死んじゃったんだよ、マミを蘇らせて欲しい」
まどか「私の願い事はマミさんの蘇生。叶えてよQB!」
パターン3
マミ「あなた誰なの?」 QB「前の個体は処分した」
QB「『前の僕』、は精神疾患を『患い』かけていたからね。『僕達』にとっては、『煩わしい』存在でもあったしね」
マミ「違う! 私のキュウべえはあの子だけよ!」
こんな感じの旧QB蘇生キュゥマミ魔法少女全員生存ワルプルギス撃破誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって

杏子「おりゃああああああぁぁぁぁ!!」

ズガンッ!

ワルプルギス「!?」

ほむら「奴に槍を突き刺して、何を……」

杏子「正直なとこ、魔法少女が直接攻撃したところで、あいつに決定的なダメージなんて与えられそうにない」

ほむら「…………」

杏子「でも、刺さった槍を後ろから押しこめば、体をブチ抜くくらいはできるんじゃないか?」

ほむら「……なるほど。その賭け、乗ったわ」


杏子「灘神影流『破心掌』!!」 パァン!

ほむら「灘神影流『菩薩拳』!!」 ドスッ!

ワルプルギス「ギャアアアアアアアアア!!」

杏子「くそっ、まだ生きてやがる!」

ほむら「もう少しで、外殻が完全に破壊できるのに……!」


熹一「『幻突』」


ゴッシャァァァァァァ!!


杏子「キイチ!?」

熹一「これでええんやろ? もう中まで丸見えや」

ほむら「巴さん!」


マミ「ええ! ティロ……フィナーレ!!」

ワルプルギス「オオオォォォォォォ......」


ほむら「……お……終わっ、た…………?」

マミ「ええ。暁美さん」

杏子「もうあんなのとは、二度とやりたくねーよ」

ほむら「…………うっ……ひぐっ、うっく……やっと、やっと……!」ポロポロ

マミ「長い間、お疲れ様」ギュッ

ほむら「うっ、わぁぁぁぁぁ……!!」


鬼龍「だから言っただろ。俺が殺すから問題ないってな」

熹一「お前だけの力ちゃうやろ」

静虎「思えば、4人で何かをするというのは初めてだった」

尊鷹「フ……それも、最初で最後だろうな」

マミ「最後の瞬間に『巴さん』って呼んでくれたわね。ありがとう」

ほむら「う、あっ……あれは、その……///」

杏子「羨ましいね。あたしも杏子って呼んでくれよ」

鬼龍「おい杏子」

杏子「お前じゃねーよ!」

熹一「感動のシーンに水差すなや、魔法オッサン」

尊鷹「熹一。私はもう行く」

鬼龍「俺もだ。世界の危機とやらは去ったんだろ」

熹一「あれ? この後祝勝会やると思うねんけど、二人とも来えへんの?」

尊鷹「群れるのは性に合わない」

マミ「えっ……い、行っちゃうの……?」

尊鷹「………………」

杏子「キリュウのオッサンも、こんな時くらい付き合えばいいじゃん」

鬼龍「ぬう……」

静虎「さあ行こう、鬼龍、尊鷹」

熹一「そや! 折角やし、まどかちゃんとさやかちゃんも呼ぼうや」

静虎「ああ、それがいい」

マミ「美樹さんには、上条くんとの交際内容を根掘り葉掘り聞かないとね」

ほむら「くす……それは、楽しみね」

杏子「……セイコ」

静虎「ん?」

杏子「ありがと。あたしがあんたに会わなかったら、今頃……」

静虎「……皆が幸せな未来を迎えられて、良かった」

杏子「うんっ」

熹一「あ、そういえばオトン」

静虎「ん?」

熹一「身寄りの無い杏子をウチの家族にするっちゅう話、どうなったん?」

杏子「え……!?」

静虎「ああ。私の養子として迎えるか、お前が杏子と結婚するか、どちらかだな」

熹一「ふーん……って、はぁぁ!?」

杏子「けっこん、って……///」

静虎「二人ともすっかり仲良うなっとるし、ええと思うで」

熹一「べっ、別に仲良うあらへんし! ちゅーか杏子もイヤやろ!?」

杏子「そ、そう、かな……///」

熹一「アレ……」

ほむら「杏子。だから前に言ったでしょう、料理を頑張らないとお嫁に行けないって」

杏子「い、今から練習するし……」

マミ「大丈夫よ。お料理ならちゃんと教えてあげるから」

静虎「どちらにせよ、杏子は『宮沢杏子』として新しい家族の一員になるんや」

熹一「そ、そか……まぁ、全然構へんけどな!」

杏子「……へへっ。家族か……あたし、また家族と一緒にいられるんだな……!」



終わり。

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