インデックス「…?(ヨメヤ…ソラキ…?知らない人なんだよ…)」 (370)

このスレは、「絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた」の続きです。
前スレ
絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた。 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1325603888/)

(注釈)
・禁書のSSです
・オリキャラメインです。勝手に設定した能力者が出ます。
・原作は読んでません。細かい設定はよくわかりません。
・超電磁砲の漫画は8巻まで読みました。
・アニメは全話見ました。超電磁砲Sは視聴中です。
・キャラが崩壊してるかも知れませんがご容赦を。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1366839981

おはようございます。1です。
スレッドを立てさせてもらいましたが、タイトルが決まっただけでネタがまとまっていないので、更新はかなり先になります。
とりあえず、主人公と関わった人たちの状態を軽く解説しておきます。

詠矢空希
このお話の主人公。オリジナルキャラクター。絶対反論(マジレス)という能力を持つ能力者。
自らの平穏な日々と、自分に関わってくれる人たちを守るために、ただ淡々と戦う高校一年生。

上条当麻
言わずと知れた主人公。詠矢と偶然に共闘したことにより知り合う。詠矢にとっては一番の友人。
バイト仲間でもあり、寮の部屋も近い。御坂美琴とお付き合い中で、関係はかなり良好。


御坂美琴
言わずと知れたレベル5の超電磁砲(レールガン)詠矢が学園都市で最初に会った人物。
所見の悪さから詠矢との関係は険悪だったが、紆余曲折あって良好に。
詠矢の取り成しによって上条当麻のとお付き合い中。

白井黒子
詠矢と本格的な戦闘を繰り広げた人物。御坂美琴と同じく詠矢との関係は良くなかったが現在は改善。
一定量の信頼を置いており、ジャッジメントに誘ったことがあるほど。
熱狂的な御坂美琴の信奉者だが、上条当麻との関係は既に容認済み。

佐天涙子
詠矢と何かとかかわりの有る女性。紆余曲折あって現在はレベル1の能力者。
能力は空力使い(エアロハンド)。手のひらの中心から半径15cm程度の範囲の空気を制御することが出来る。
詠矢との関係は極めて良好。ただ、本人曰く「そういうの」ではないらしい。

初春装飾
白井黒子と同じくジャッジメントの女の子。詠矢と直接的な関わりは無いが、関係は悪くは無い。
職務上、いろんな場面に遭遇する事が多く、意外と事情通。

土御門元春
謎多き人物。上条当麻のクラスメイト。特殊な能力を持つ詠矢には一目置いている節がある。

一方通行
レベル5、学園都市第一位の能力者。詠矢の命の恩人であり、詠矢によって支配から解放された身でもある。
関わりはあるが面識は皆無。彼にとって、詠矢は変な飛び降り方をしてきた男に過ぎない。

結標淡希
詠矢確保のため戦った人物。頭蹴られるわ屁理屈でやり込められるわ詠矢への印象は悪い。
戦闘したというだけで今のところ殆ど関わりのない人物。

木山春生
大学教授。詠矢が相談に行った人物。詠矢のことを「変わっているが面白い人物」と評する。

真々田創
オリジナルキャラクター。人形の創造の為、学園都市を勝手に利用しようとして騒動を起こす。
現在は学園都市に住み着き、模型店を経営する。
圧倒的な才能と実力を持つ陰陽師で、傀儡術にも通ずるが、ガチのオタク。
本業はフィギュアの原型師で、魔術側とのかかわりは無い。

リアルタイムで遭遇できるとは
頑張ってくださいm(_ _)m

リアルタイムで遭遇できるとは
頑張ってくださいm(_ _)m
楽しみにしてます

おはようございます。1です。
皆さんレスありがとうございます。
釣りではありません。間違いなく本人ですのでご安心下さい。

現在は敵組織の設定に難航しています。
そろそろ「魔術師」や「研究者」では限界があるかと思いまして。
ですが逆に、敵も味方もオリジナルキャラだらけになってしまうの、でどうしたものかと。
少々悩んでます。

先ずはスレタイ通りインデックス編を

トリ付けないの?

ままださんの設定と見た目を教えてくださいな
詠矢シリーズはVIPの最初のスレから全部楽しんで読んでるよ!
これからも頑張ってくれ

初春装飾 って誰だよ

こんばんわ、1です。
>>13
もちろん、タイトル通りインデックスの出てくる話になります。
ただ、『編』と言えるほど活躍するかどうかは微妙です。
>>14
すいません、あまり気を使っていませんでした。以後出来る付けさせてもらいます。
>>15
ありがとうございます。今後もネタと気力が続く限り書き続けたいと思います。
>>16
すいません。思いっきり間違いですね。『飾利』に訂正させて頂きます。

すいません追記です。
>>15
まさか真々田の設定に需要があるとは思いませんでした。
ぜひ投下させて頂きます。しばらくお待ちください。

ねーちんも出てくるといいなぁ

こんばんわ、1です。真々田の設定を上げさせていただきます。

名前:真々田 創(ママダ ツクル) 性別:男 年齢:32才 身長172cm 体重70kg

職業:フリーの原型師

家族:実家に健在。だが既に勘当状態のため音信不通。

来歴:古い陰陽師の家系に生まれる。その類希なる才能から、幼少の頃から他に並ぶものがいないほどの実力を身につけるが本人は陰陽師として大成することは望まず、アニメや漫画、ゲーム等のいわゆるオタク趣味に傾倒する。その中でも
特に興味が深かったフィギュアの造形にのめりこみ、その流れから独学で傀儡の製作技術を身につけた。
高校卒業を機に、フィギュアの原型師になることを夢見て独立を申し出るが、一族からは猛反対を受け出奔する。
術者の流出を許さない一族から追っ手をかけられるものの、これを全て独力で撃退、現在に至る。
原型師としてて活動する際は『形屋 創一(カタヤ ソウイチ)』(御形屋 創一より改名)と名乗り、その筋ではかなりの高名である。

性格:自らを天才と名乗ってはばからない超然とした性格。社会的な禁忌も薄く、自分の価値観に沿って行動するため考えの読めない人物である。
ただ、人としての感情はそれなりに持ち合わせており、表面上は単なる気さくな男。深く関わらなければそう付き合いにくい人物ではない。

容姿:見た目はそれなりに好人物。いわゆるキモオタにならないように、身だしなみにはそれなりに気をつけているらしい。

技能:身体能力は低く、年齢層の平均を下回るレベル。逆に知識に関しては深く、特に呪術に関してはかなり広い知識を持つ。

能力:陰陽師を基本とした式神及び傀儡を主に操る。圧倒的な才能を持ち、その技術はAIM拡散力場に魔術で干渉する方法を独力で生み出すほど。
自分の価値観を最優先するのは能力においても同じ。興味の向かないことや、自分が必要と思わない場合には積極的に能力は使わない。
学園都市来てから創造した傀儡や式神には、「女性にまつわるメカの名前」を付けており、外見や能力もそれになぞらえてたものとなっている。
現在確認されているのは3体。

・鳳雷鷹…由来はアニメ「忍者戦士飛影」に登場するロボット。近接戦闘用。大型の手裏剣を武器とする。赤いスーツを身にまとった女性。

・クライングウルフ…由来はゲーム「メタルギアソリッド4」に登場する兵器。周囲の物質を合成して狼の形を取る式神。

・エンジェラン…由来はゲーム「バーチャロン・オラトリオタングラム」に登場するロボット。家事その他用。エプロンドレスを着た女性。

※外見のイメージはブラックラグーンのロックこと岡島緑郎です。顔の輪郭にもう少し丸みを持たせれば近いイメージになります。
但し、性格的に常に自身に満ちた表情を浮かべています。

こんばんわ、1です。
書きあがった分を投下します。

とある空港)

詠矢「…」

上条「…」

御坂「…」

詠矢「…んー」

詠矢「よおし、状況を整理しよう」

上条「お、おう」

詠矢「俺たちは今空港にいる。間違いないな?」

上条「間違いない」

御坂「そうね」

詠矢「で、今日はインなんとかさんって人がだな」

上条「インデックスだよ」

詠矢「ああ、そうだっけか。んで、その人がだな」

詠矢「久しぶりに学園都市に来るってんで、迎えに来てるわけなんだよな?」

上条「その通りでございます」

御坂「そうだったわよね」

詠矢「だが、それは本来上条サンの役割のハズだ」

上条「…」

詠矢「まあ、御坂サンがもれなく付いてくるのは納得できる」

御坂「何よ、お菓子のオマケみたいに言わないでよ!」

詠矢「あのなあ、その腕組むというかもはや絡みついた状態ではだな」

詠矢「同梱されてるようなもんでしょうが!」

御坂「いっ…いーじゃない、別に。彼女なんだし」

詠矢「まあね。それ自体は別に悪いとは思わねえ。仲がいいのは非常に結構なこった」

詠矢「問題はだな、なんで俺までここにいるかっちゅう話だよ!」

上条「いやー…どうしてだろうねえー」

詠矢「確か…上条サンのお願い、だったよなあ?」

上条「…ははー」

上条「…ほら…さ、インデックスだぜ?」

上条「魔術に関して、聞きたい事とか知りたいこととかあるんだろ?」

詠矢「そらまあ、そうだが…。わざわざ空港に出迎えに来てまで話すことじゃねえっしょ」

上条「…あのさあ詠矢」

詠矢「なんだよ」

上条「あんまり正論ばっかり言うと友達なくすぞ?」

詠矢「…んなこと今更言われてもな」

御坂「…」

御坂「…まだかしら」

詠矢「なあ、御坂サン」

御坂「なによ」

詠矢「なんか殺気だってませんか?」

御坂「そう?…気のせいでしょ?」

詠矢「…」

詠矢「(いや、絶対違うだろうこの状態は)」

到着出口をじっと睨みつける御坂。その目線には、明らかな敵意が含まれていた。

御坂「(あのインデックスって子、久しぶりに学園都市に来るのよね…)」

御坂「(当麻の一番近くにいた女の子だもの。油断できないわ!)」

御坂「…」

なんとなく上条の顔を見上げる御坂。

上条「どした?」

御坂「なんでもない…」

御坂「(そ、そりゃ当麻のことは信じてるけどさ…)」

御坂「(でも、やっぱりダメ!きっちり私の存在をアピールしとかないと!!)」

御坂の敵意は電気に変化され、軽く放電されていた。

詠矢「…」

詠矢はそんな御坂の状態を横目で見る。

詠矢「(まさに目に見える殺気か。こいつは、相手の出方によっては修羅場だねえ…)」

詠矢「上条サンよう」

上条「おう、なんだ?」

詠矢は手招きして誘導すると、上条に耳打ちする。

詠矢『正直に言え、何で俺をここに呼んだ?』

上条「いっ!!」

上条『…いや、ですね…美琴が一緒に行くと言ったときにですね』

上条『上条さんの中の何かが、詠矢を呼べと全力で叫んだのですよ』

詠矢「…」

詠矢『普段は鉄板の朴念仁なのに、こういうときの生存本能は鋭いんだな』

上条『スマン、こんな状況で頼れるのはお前だけなんだよ!』

上条『お前なら、無難にまとめてくれるんじゃねえかなって…』

詠矢『あのさあ、俺は上条サン専門の地雷処理班じゃねえんだけど…』

御坂「なに話してるのよ…」

上条「なんでもございません」

詠矢「なんでもねえって。男の相談だよ」

御坂「…」

詠矢「ま、いいけどさ上条サン」

詠矢「飯ぐらいおごれよ」

上条「お、おう…」

詠矢「(さてさて、どうしたもんかねえ。相手に対して情報がねえと、対策の立てようもねえなあ)」

詠矢「(ぶっつけ本番でなんとかするしかねえな)」

詠矢「(…お?)」

しぶしぶ覚悟を決めた詠矢の目線に、とある人物が写った。

詠矢「(うお、でっか…。2mは超えてるかな?)」

漆黒の修道服に身を包んだ赤い髪の大柄な男性が、到着ゲートに現れた。

詠矢は思わずその姿を目で追う。

上条「お、ステイル!こっちだ!」

ステイル「やあ、出迎えご苦労様だね」

詠矢「へ?上条サン知り合いなのか?」

上条「前に言わなかったっけ?インデックスと同じ、イギリス清教の魔術師だよ」

詠矢「へー、こりゃまあ…始めましてっす」

詠矢が挨拶を始めるとほぼ同じタイミングで、その体躯に完全に隠れていた人物がひょっこりと顔をのぞかせた。

インデックス「とうま!久しぶりなんだよ!」

白い修道服に身を包んだ少女は、上条に満面の笑みを向ける。

上条「おっ!久しぶりだなあインデックス!元気にしてたか!?」

インデックス「もちろんなんだよ!」

詠矢「おお、君がインデックスサンか。始めまして」

詠矢「俺は詠矢空希ってもんですよろしくなー」

インデックス「…?(ヨメヤ…ソラキ…?知らない人なんだよ…)」

上条「ああ、二人とも紹介するよ。コイツは俺の友達の詠矢だ」

ステイル「ほう、友達ねえ…。君と交友しようなんて、また奇特な人もいたもんだね」

上条「なんだよそれ、久しぶりでいきなりそれかよ!」

詠矢「…まあまあ、俺が奇特なのは自覚あるし、いいんじゃねえの?」

インデックス「とうまの友達?」

詠矢「んだぜ?」

インデックス「…始めましてなんだよ!」

ステイルの影から体を出すと、彼女は元気良く頭を下げた。

詠矢「おうおう、よろしくなー!」

ステイル「挨拶はもう十分かな?それにしても…」

ステイル「出迎えは一人で十分だろう。何でまた三人も…」

インデックス「あれ?そういえば短髪も一緒なんだ…よ?」

不意に二人を見るインデックス。その姿を見れば、語尾が自然に疑問形になる。

御坂「久しぶりね?」

インデックス「え、ど…どうしてとうまと短髪が…そんな」

御坂「私たち、付き合ってるのよねー」

インデックス「え?つきあ…う?」

インデックス「とうま!どういうことなの!?」

上条「いや、まあ…いろいろあってだな。上条さんも年貢の納め時というかですね」

上条「つまりそういうことなんですよ」

インデックス「」

硬直する彼女を他所に、明らかに上機嫌になる人物がいた。

ステイル「ほう、それは実に喜ばしいことだ!まさか君に彼女が出来るとは」

ステイル「なんなら、今すぐ挙式でも上げてみたらどうかね?神父は僕が引き受けよう」

御坂「へ?きょ…きょしき!?(カアッ)」

上条「だあっ!!いくらなんでも気が早いっての!!」

詠矢「…」

遠巻きに状況を確認しながら、詠矢は一人うなづいていた。

詠矢「(うん、なるほど…これでおおよその人間関係は把握できた)」

詠矢「(しかし、皆さんわかりやすいなあ。どんだけテンプレなんだよ)」

ステイル「気が早いか…。つまり、将来的にはそういう展開も視野に入れているわけだろう?」

上条「えっ…いや、そりゃ…まあ」

御坂「そ、そうよね。約束した…もんね…」

紅潮したまま、御坂は掴んだ上条の腕に更に強くしがみついた。

インデックス「…」

上条は、二人の女性を交互に見た後、詠矢に目線を向けた。

詠矢「(いやいや上条サン、今応援を求められてもだな。どうしろと)」

心情を込めて詠矢は首を左右に振るが、上条から送られてくる目線には次第に悲壮感が増していく。

詠矢「(しょうがねえ…ここは強引に流すか)」

詠矢「さあって、自己紹介も終わったところだしだ」

詠矢「移動しますか。ステイルサンはなんか用件があったんだよな?」

ステイル「ああ、そうだった。伝えたいことがあって来たんだが…」

上条「お、そうだったな!じゃあ、とりあえず俺の部屋にしようか!」

ステイル「まあ、せまっ苦しい部屋だが、この人数は何とか入れるだろう」

ステイル「じゃあ、行こうかインデックス」

インデックス「…ぅ」

ステイル「どうしたんだい?」

インデックス「…う…うあぁぁああん!!!」

言い知れぬ感情に突き動かされたインデックスは突如走り出し、人ごみの中に消えて行った。

詠矢「ちょ…おい!」

詠矢は慌てて追いかける。

ステイル「インデックス!!」

保護者であるステイルも当然後を追うが、その体躯のせいか人の流れに押し返される。

上条「どこ行くんだよ!!」

上条も追おうとするが時既に遅し。

御坂「見えなくなっちゃった。大丈夫かしら…」

微妙に責任を感じた御坂は、心配そう辺りを見回しながら言う。

ステイル「大丈夫なわけは無いだろ!彼女は一人では何も出来ない」

ステイル「だからついて来るなと言ったんだ!」

上条「まあ、詠矢が行ったから、多分大丈夫だ」

御坂「そうね、何とかしてくれそうね」

ステイル「…?何だ、あの人物はそんなに信用できるのかい?」

上条「ああ、こういうときは、特に頼りになる」

自分でも理解できないまま逃走するインデックス。

とある人物とすれ違う。

???「(ん…?)」

その長い黒髪の女性は、インデックスを確認すると歩みを止め、その姿を追って振り返える。

女性「(あの人物は…確か)」

女性「(今回の目的とは違うが、これは報告しておかないとな)」

目線以上に対象を追う事は無く、女性は再び歩き始めた。

(とある空港 とある場所)

インデックス「…」

柱の影に背中を向けてうずくまる彼女を、詠矢はようやく見つけることが出来た。

詠矢「お、いたいた…なんとかはぐれずに済んだか」

詠矢「えーっと、インデックスサン…だっけか?」

詠矢「どうしたんだ?いきなり走り出して」

インデックス「…」

詠矢「…」

有る程度の事情は想像が付いたが、詠矢はあえて黙って彼女の回答を待った。

インデックス「…わからないんだよ」

詠矢「ほう、そりゃまたどういうことかな?」

インデックス「とうまと短髪のことを聞いたら」

インデックス「わーって頭が変になって…」

インデックス「気が付いたら走り出してたんだよ!」

詠矢「なるほどねえ…」

詠矢「(要するに、この子も上条サンのフラグ被害者なわけだ)」

詠矢「(ただ、自分の中で感情が確立してなかったタイプか)」

詠矢「(今のお二人さんを見て、現実を受け入れられずに混乱したってとこか)」

詠矢「(はてさて、こういうのはどうしたもんかねえ)」

詠矢は盛大に後頭部を掻き毟る。

詠矢「(まあ、ここは普通に行くか)」

うずくまる彼女に近づくと、詠矢はその背中に声をかけた。

詠矢「なあ、取り合えず合流しねえか?はぐれたままだとマズイっしょ?」

インデックス「…」

詠矢「まあ、混乱してるのはわかるけどなあ」

インデックス「…」

詠矢「返事ぐらいしてもバチは当たらないぜ?」

少し距離を詰め、答えを促すように彼女の肩に手を置こうとする詠矢。

(ぐうぅぅぅぅう)

自己主張の強い腹の虫が思い切り鳴いた。

詠矢「…はい?」

インデックス「おなかすいたんだよ…」

詠矢「…そう来たか」

詠矢「っても、飯時じゃねえだろ?機内食とか出なかったのか?」

インデックス「もちろん出たんだよ!でもあんなのじゃとても足りないんだよ!」

インデックス「飛行機の中でずっと、わたしのおなかは鳴りっぱなしだったんだよ!」

詠矢「はー、そりゃまたご苦労様…」

詠矢「(あー、そういえば上条サンから聞いたな。冗談みたいに食うんだっけか)」

詠矢「んー…」

しばし目を閉じ、詠矢は考える。

詠矢「よし、インデックスサン。お近づきのしるしにご馳走しよう!!」

インデックス「え、ほんとなの!?」

詠矢「おう、好きなだけ食っていいぞ!」

インデックス「ほんとに、ほんとに、ほんとなんだね?」

詠矢「ああ。但し場所はここじゃない。ちょいと移動しないといけないがね」

インデックス「おなか一杯になるなら、それぐらいは我慢するんだよ!」

詠矢「おうおう。んじゃその前にちと連絡な」(ポチポチ)

詠矢はスマートフォンを操作する。

詠矢「…お、上条サンかい?」

上条『詠矢か!今どこにいるんだ!』

詠矢「細かい場所はわかんねえけど、インデックスサンと一緒だよ」

上条『そっか、よかった…。見つけてくれたんだな』

詠矢「ん、まあね。そんでさ」

詠矢「当のシスター様はお食事がご所望だ。一つご馳走して差し上げようかと思ってね」

上条『え?おい、詠矢ダメだって。インデックスにまともに食わせたら路頭に迷う羽目になるぞ!』

詠矢「その辺はちゃんと考えてるさ。んじゃあ、後で合流するから、目的地を教えてくんな」

上条『ほんとに大丈夫なのか?まあ一応、俺の部屋に移動することになってるけどさ』

詠矢「ほいほい、んじゃあ、こっちが済んでから行くわ」

詠矢「そちらの神父さんにもよろしく。はい、んじゃ」(ピ)

詠矢「連絡は完了っと。んじゃ行きますか」

インデックス「うん!」

(とあるファミレス)

インデックス「ここは?」

詠矢「ここは最近出来たバイキングスタイルのファミレスさ」

詠矢「メイン料理を一品頼むと、サラダバーが付いてくる」

インデックス「サラダバーって、お野菜だけなの?」

詠矢「いやいや、ここのはちょっとした惣菜も付くし、パンもライスも食べ放題だ」

詠矢「スープやカレーもあるぜ」

インデックス「それを全部、いくらたべてもいいのかな」

詠矢「そりゃそういう店のシステムなんだから、好きなだけ食いなー」

インデックス「わかったんだよ!」

はやる彼女を抑えつつ、席を確保する詠矢。

注文を決めると、早速食事は開始された。

インデックス「…♪」

鼻歌交じりに山と詰まれた食料を順調に腹に収めていくインデックス。

詠矢「(噂に違わず、食うねえ)」

ストローからジンジャエールをすすりつつ、詠矢はその姿を感心しつつ眺める。

インデックス「…」(モグモグ)

詠矢「…」

インデックス「…」(モグモグ)

インデックス「おいしいんだよ!」

詠矢「そいつはよかった」

インデックス「えと…なんて呼べば、いいのかな」

詠矢「ん?ああ、俺の呼称か。そうさなあ」

詠矢「上条サンが『とうま』だから、同じ法則なら俺は『そらき』になるんかな?」

詠矢「それとも、御坂サンみたいに特長から決まるなら『眼鏡』かもね」

インデックス「じゃあ、『そらき』にするんだよ」

詠矢「おうおう、好きに呼んでくんな」

インデックス「じゃあ、えっと…そらきは食べないのかな」

詠矢「昼はもう食ったからな。飲み物で十分さ」

インデックス「そうなんだ」

詠矢「…」

インデックス「…」(モグ)

インデックス「…」

詠矢「…」

食材と彼女の口を順調に行き来していたフォークの動きが、一瞬鈍る。

詠矢はそれを見逃さない。

詠矢「えっと、ちょっとは落ち着いたかな」

インデックス「…うん」

インデックス「でも、まだよく…わからないんだよ」

詠矢「そっか…」

詠矢「まあ…さ。俺はインデックスサンのこと良く知らないし」

詠矢「今までの流れも伏線もわかんねえからさ」

詠矢「ここで俺に言えることは何もないんだけどね…」

詠矢「ただ、一つだけ伝えたいことがある」

インデックス「…?」

詠矢「お二人は幸せそうだよ。最高にね」

インデックス「…!」

インデックス「…そう…なんだ」

詠矢「うん。それだけは間違いない」

インデックス「…」

詠矢「…」

インデックス「…」

詠矢「ほれほれ。考えるのはいいけど、手を休めないほうがいい」

インデックス「…え?」

詠矢「ランチタイムは60分限定でね。早くしないとタイムオーバーになるぜぇ」

インデックス「え…それは大変なんだよ!お代わりとってくるんだよ!」

皿を持ち、慌てて料理を取りにいくインデックス。詠矢はその背中を目だけで追う。

詠矢「(ま、所詮俺も部外者だ。ゴチャゴチャ言うこっちゃねえわな)」

詠矢「(こういうのは本人に考えてもらうのが一番だな)」

詠矢「(まるっきり子供ってわけでもねえみてえだし、自分で答えを見つけるだろ)」

ぼんやり考えていた詠矢の思考が、携帯の発信音にかき消される。

詠矢「ん…お、上条サンか…(ポチ)」

詠矢「もしもし、上条サンかい。どした?」

上条『詠矢か?今どこだ?』

詠矢「第7学区のファミレスだ。シスターさんと順調に食事中だよ」

上条『なんか悪いな、インデックスを押し付けちまって』

詠矢「いやなに、そもそも俺がさそったんだからさ。いいってよ」

上条『そっか…。でさ、もう部屋に移動してきたんだけど、お前たちも来れないか?』

詠矢「そりゃまあ、ひと段落したら合流しようとは思ってたけどさ、急ぎかい?」

上条『ああ、ステイルが持ってきた話、お前にも聞いといて欲しいんだ』

詠矢「へえ、俺にねえ…」

詠矢「わかった、出来る限り早く向かうわ。店を出るときまた連絡する」

上条『ああ、よろしく頼む』

詠矢「…(ピ)っと…さあて、この手の展開はロクなことねえけど」

詠矢「はてさて、どうなりますかねえ」

スマートフォンを胸ポケットにしまうと同時に、インデックスが席に戻ってくる。

店からトレイを借り、皿を並べて乗せれる限りの食事を運んできた。

詠矢「おう、おかえり」

インデックス「ただいまなんだよ」

詠矢「また山にしてきたねえ」

インデックス「これだけあれば足りるかも!」

詠矢「おう、そいつはよかった。だがちょっと急がなきゃいけなくなっててな」

詠矢「がっつりラストスパートかけてくんな?」

インデックス「ふぁぃ?(モグモグ)」

口の中一杯に食事をつめながら、インデックスは半疑問を返した。

(とある空港 駐車場)
 
空港におとづれる車を一手に引き受ける巨大な駐車場。その片隅に、黒い乗用車が停車していた。

中には男性が一人。腕時計の時間を確認する。

 唐突に、社内に窓をノックする音が響く。

女性「…」

 助手席側から覗き込む女性の姿。運転席に座っていた男性は、ドアのロックを外して乗車を促す。

女性は助手席に乗り込んだ。

男性「時間通りだな」

女性「ええ、入国に手間取ることはなかったわね」

男性「そうか…」

男性「例の物はどうなっている」

女性「今日中に個別便で送られてくる。予定通りよ」

男性「わかった。では、早速移動するとしよう」

女性「その前に一つ報告が」

男性「何だ」

女性「空港で『目録』と遭遇したわ」

男性「なにっ!」

男性「…イギリス清教が動いていると聞いてはいたが、まさか…」

女性「特徴が資料通りだったわ。人違いである可能性も高いけど」

男性「そうか。今回の目的ではないが、記憶にとどめておこう」

女性「ええ…」

男性「では、行くとしよう」

男性はキーを回す。車は発進すると、そのまま駐車場を後にした。

以上となります。
今回登場した人物はオリジナルキャラクターとなります。ビジュアルイメージを提示しておきます。
女性;ハイスクール・オブ・ザ・デッドの毒島冴子。髪の色は濃紺。胸のサイズを標準に。服装は黒のスーツ。
男性:エヴァンゲリオンの碇ゲンドウの若いころ。髭および眼鏡なし。服装は黒のスーツ。

それではまた。

こんにちわ、1です。
遅くなりましたが続きを投下します。

(模型店 形屋)

日中の店内。店の奥では店主がせわしなく手を動かしていた。

やや人の形に近づいた紙粘土の塊に、彫刻刀を走らせている。

真々田「ふむ、いいかな?」

目の高さに塊を置き、削り込んだラインを確認する。

真々田「いらっしゃい」

ラインの向こうに見えた人影に、真々田は手を止めた。

土御門「原型師、真々田創…さんだな?お初にお目にかかる」

土御門「俺は土御門、ってもんだ」

真々田「ほう…それはまたご大層な名前だね」

何かを察したように、表情を緩め喉の奥で小さく笑うと、真々田は造りかけの素材をテーブルの上に置いた。

土御門「おおよそ察しが付いたようだな。流石は天才陰陽師だ」

真々田「この都市いるのは能力者ばかりだと思っていたのだが」

真々田「僕意外にも術者がいたのかな?」

土御門「いや、俺の場合は『元』だな。今じゃしがない高校生さ」

真々田「なるほど…なにやら事情があるようだね。ま、詮索するつもりは無い」

真々田「で、ご用件は?まさか、本業の方の依頼かな?」

土御門「ま、それは個人的にお願いしたいところだが…、今日は違う」

土御門「あんたに伝えたいことがあってな」

真々田「ほう…」

土御門「ここじゃ何だ、ゆっくり話せるところがいいが…」

真々田「なら、ここでも十分だ。エンジェラン!」

エンジェラン「はい、なんでしょう?」

奥の部屋に控えていた女性が顔をだす。

真々田「しばらく『かんばん』を下げておいてくれるかな?」

エンジェラン「かしこまりました」

丁寧に頭を下げると、女性は店の入り口に向かった。

土御門「かんば…ん?」

真々田「ああ、簡単な人払いさ。強制的に人の意識を遠ざける術でね」

真々田「店頭で発動が調整できるようになっている」

土御門「へえ…準備のいいことだ」

真々田「これぐらいの装備は基本だよ」

エンジェラン「『かんばん』下げ終わりました」

真々田「ありがとう」

店頭から戻ってきた女性は、報告を終えると部屋の奥に戻る。

真々田「さて、これで大丈夫だ。何なりと話したまえ」

土御門「手間かけて済まんな…じゃあ早速」

土御門「あんたが作り上げた『術式』の情報が、学園外に流出した」

その報告を聞いた真々田は少し間を置いて大きく息を吐いた。

真々田「そいつはまた…間抜けな話だ」

真々田「僕を学園に取り込んだ意味が無いじゃないか」

土御門「返す言葉もねえな」

真々田「で、何だね?開発者である僕が真っ先に疑われてるのかな?」

土御門「いや、流出は外部からのハッキングが原因だ。あんたに嫌疑がかかってるわけじゃない」

土御門「俺が今日ここに来たのは」

土御門「あの術式の危険性と、対処方に関して、あんたに意見を聞いておこうと思ってな」

真々田「まったく…泥縄だね」

土御門「批判は甘んじて受ける。だが、同時に対処もしなきゃならん」

真々田「それは同意するよ。では、質問に答えようか」

真々田「あの術式で最も難しいのは『その発想に至るまでの過程』でね」

真々田「術の構成事態はそう難しいものじゃない」

真々田「もちろん、誰にでも出来るというわけじゃないが」

真々田「それなりに心得があるものなら、再現は可能だろう」

土御門「なるほどな…」

真々田「対処法に関しては、そうだね…相手がどう使ってくるかによるね」

真々田「効果が特殊なだけで、術式自体は通常のものとそう変わらない」

土御門「じゃあ、同じく通常の呪術対策は有効なわけだな」

真々田「そういうことだね」

真々田「ただ、一旦術が動き出してしまえば、呪力の源をこの学園自体にすることが出来る」

真々田「制止するのは極めて難しいだろうね」

土御門「やはりそうか…」

土御門「あの時ヨメやんの作戦が無ければ、あんたのソフィアは今も動き続けていたってことだな…」

わずかに反応した真々田は、上目遣いに相手の顔を見る。

真々田「ほう…。あの件に関わっていたのか」

土御門「最後にあれを破壊したのが俺さ」

真々田「…」

土御門「既に力は失い、紙粘土の人形に戻ってたからな」

土御門「壊して燃やすのはそう苦労しなかったぜい」

真々田「…」

土御門「…」

真々田「安い挑発だな」

真々田「僕を怒らせて、本性を引き出そうとでも思ったかな?」

土御門「…こいつは失礼したな」

土御門「もう少し狂信的な人間かと思ってたんだが」

真々田「狂信者という部分は同意するがね」

真々田「彼女には僕のすべてを注いだと言っていい。だから、あの結果は極めて残念だった」

真々田「だが、済んだことに固執しても仕方ない。今回のことは術者としても原型師としても極めていい勉強になった」

真々田「受けた悲しみを糧に、更なる高みを目指すつもりさ」

土御門「…ほう…言うねえ」

真々田「何か問題あるかな?」

土御門「いや、ただ…」

土御門「マトモに話が出来る人だってわかったのは、収穫だったな」

真々田「ま…、君にどう思われようがかまわないがね」

土御門「あの術に対する見解を聞くのと同時に、あんたがどういう人間か確かめておきたかった」

真々田「じゃあ、ついでにもう一仕事していく気はないかね?」

土御門「…なに?」

真々田「今までの話を聞く限り、君は学園内部の人間なんだろう?」

真々田「なら、呪的な攻撃には対処しておく必要があるんじゃないのかい?」

土御門「…どういうことだ」

真々田「先ほどから何度か『鳴子』を鳴らしているものがいてね」

真々田「僕も今の立場から、どう対処したものか考えていたんだが」

真々田「君のような存在が立ち会ってくれると心強い」

土御門「鳴子?」

土御門「…」

土御門「…詳しく話を聞かせてくれるか?」

(とある学生寮 上条当麻の部屋)

詠矢「こんちわーっと」

インデックス「ただいま…なんだよ」

ほぼ同時に部屋に入ってくる二人。中には3人が待ち構えていた。

上条「お…おかえり」

御坂「いらっしゃい…」

ステイル「インデックス…無事でなによりだ」

インデックス「うん、ありがとステイル」

心配してくれた同行者に言葉を返すと、目線を下げたまま歩み寄り、上条と御坂の前に立った。

インデックス「…」

上条「…」

御坂「…」

インデックス「…」

上条「…えっ…と」

上条「なんて言ったらいいか」

御坂「…」

御坂は勢い良く上条を見上げる。その表情はは何かを強く促すものだった。

上条は、インデックスの後ろに控える詠矢を見る。

詠矢「…」

詠矢もまた何も語らず、大きくうなづいた。

上条「…」

御坂と詠矢、二人の表情を見た上条は、決意を込めて奥歯をかみ締める。

上条「あのさ、インデックス、聞いてくれ」

上条「俺にとって美琴は、絶対に、一番に守りたい人なんだ」

上条「それにやっと気づいてさ…」

上条「だからずっと、一緒に…傍にいるって決めちまったんだ」

上条「だから…」

最後の言葉が紡げない上条。それを補うように、インデックスがぽつりとつぶやいた。

インデックス「とうま…」

上条「ん?」

インデックス「とうまはもう…不幸じゃないんだね?」

上条「…!」

上条「…ああ、そうだな」

上条「もう、不幸じゃない」

そう言った上条が、きっと引き締まる。

御坂「…」

その表情を見た御坂は、柔らかな安堵の笑顔を浮かべる。

インデックス「よかったんだよ!」

二人の姿を確認したインデックスは突如叫んだ。

インデックス「おめでとう、とうま!」

上条「ああ、ありがとう、インデックス!」

インデックス「でも、一人じゃだめなんだよ」

上条「ん?」

インデックス「ちゃんと二人で、たんぱつと一緒に幸せにならないとだめなんだよ!」

御坂「大丈夫よ、私が付いてるんだから」

御坂「もう当麻を不幸になんかさせない」

インデックス「…うん」

御坂「それとね、インデックス、私のことはちゃんと『みこと』って呼びなさい」

インデックス「うん!みこと!」

御坂「ふふっ」

その三人を見て、詠矢は満足げにうなづいた。

詠矢「(まあ、上手くいきすぎな気もするが、収まってくれてよかったな)」

ステイル「ごほん、えーっと、だね」

ひと段落着いたのを確認したのか、ステイルがわざとらしい咳払いで流れを変える

ステイル「話が収まったのなら、本題に入らせてもらいたいんだが」

詠矢「ああ、そうか。それで俺が呼び戻されたんだよな」

上条「そうだ。俺も途中まで聞いたんだけど…どうやらお前の話みたいなんだ」

詠矢「俺の?…そりゃまた…」

ステイル「では、最初からいこうか」

ステイル「僕は、今回二つの用件で学園に来た」

ステイル「まず一つは、最近魔術組織で流れている噂の真偽を確かめる為だ」

詠矢「噂…って言いますと?」

ステイル「言葉によって魔術を抑制する者が存在する…そんな話さ」

詠矢「…なるほど」

詠矢「そりゃ間違いなく俺のことですな」

ステイル「やはりそうなのか…」

ステイル「まさか、噂の当人が既に上条当麻の友人とは…」

ステイル「つくづく数奇な人物だな君は」

赤い髪をかき上げながら、ステイルは半ば呆れ顔で上条の顔を見た。

上条「そんなこと言われてもなあ…」

詠矢「まあ、上条サンのことはいいっしょ」

詠矢「どうやら、上条サンの知り合いで敵じゃねみたいだし」

詠矢「先に俺の能力の説明でもしときましょうか」

詠矢は『絶対反論(マジレス)』について詳細を説明する。

ステイル「…ではなにかね、言いがかりをつけて相手を少しでも言い負かすと」

ステイル「魔術の発動を抑制できると…」

詠矢「ちょいと大雑把だけど、魔術の抑制に限った話ならその解釈で大丈夫っす」

ステイル「…にわかには信じがたいな。そんな能力が実在するのか?」

上条「間違いねえ。俺はこの目で見た」

インデックス「そうなんだ…」

インデックス「そらきも特別な人間だったんだね」

詠矢「まあ、珍しい能力ではあるけどさ、そんな特別ってほどでもないと思うけどね」

ステイル「君がどう思おうが、既にわれわれの世界ではその能力は一定の脅威としてとらえられている」

ステイル「上条当麻、君と同じようにね」

詠矢「こりゃまた、上条サンと同じとはまた光栄だね」

上条「暢気なこと言うなよ!お前も魔術側から狙われてるってことだろ?」

御坂「そうよ!この間も襲われたって…」

詠矢「まあ、既にわかってたことだし、いまさらどうしようもねえしな」

詠矢「覚悟決めて、対処するしかねえっしょ」

ステイル「随分と冷静だな。魔術側の勢力は、そんなに甘いものじゃないぞ?」

詠矢「別に舐めてるつもりはありませんが、今の俺は一人じゃないんで」

詠矢「な?」

傍にいた上条の肩を詠矢はぽんぽんと叩く。

上条「ああ、任しとけって!お前を一人で戦わせたりはしねえぜ」

御坂「私も、同じよ?」

詠矢「おうおう、よろしくたのむぜー」

御坂「でもさあ、そういうお願いってもうちょっと遠慮しながら言うものじゃない?」

詠矢「なにいってんの、使えるコネは最大限使わんとねえ」

御坂「…相変わらずっていうか、らしいわね」

詠矢「そいつはどーも」

御坂からの評価を流しつつ、詠矢は再びステイルの方に向き直った。

詠矢「んじゃ、この件は了解しました。改めて伝えてもらって感謝です」

ステイル「僕も、君が敵対する人物でないことがわかって安心したよ」

詠矢「ういっす。んで、もう一つの話ってのは?」

ステイル「ああ、じゃあ話を変えよう」

ステイル「実は、新たな魔術勢力が動き出していてね」

ステイル「それが、この学園都市を目標にしているという情報が入っている」

上条「新たな…勢力…か」

御坂「それって…どこなの?」

インデックス「中国なんだよ」

詠矢「中国?」

ステイル「ああ、あの国は今、呪術的には先進国に大きく遅れを取っているんだ」

ステイル「今はその遅れを取り戻そうと躍起になっている」

上条「え?でもさあ、中国っていえば3000年の歴史で」

上条「呪術とか魔術とか、そういう技術ってすごい深いイメージがあるけどな」

インデックス「歴史的に見ればそう…でも近代は違うんだよ」

ステイル「共産党が宗教を否定した影響だ」

ステイル「そもそも共産主義において、宗教は無知蒙昧な民衆の麻薬ととらえられている」

ステイル「特に中国で行われた弾圧は凄惨を極め、その中で多くの術士や長く伝わった技術は失われてしまった」

詠矢「たしかに、歴史の授業で習ったなあ」

ステイル「そう、それは歴史的事実だ。そして、今まではそれでもよかった」

ステイル「報道や言論を統制し、政府への反発を押さえ込んでなんとかやってこれた」

ステイル「だが、近年の急激な経済発展によって、国際社会に躍り出たことで」

ステイル「国家間での呪的な脅威に、より強くさらされることになった」

ステイル「彼らはそれを恐れている」

御坂「呪的な脅威って…呪いとかそういうことでしょ?」

御坂「今の世界で、そういうの普通にやっていることなの?」

ステイル「もちろんだ。そのために多くの国では対抗するために呪術組織を持っている」

ステイル「中国でも近年、国内に残った呪術者をかき集めて、専門の組織を立ち上げた」

ステイル「その組織が、この学園都市に攻勢をかけるという情報が入ってね」

詠矢「攻勢、か…」

詠矢「しかし、なんだかんだと突っかかってくる国だねえ」

ステイル「彼らにとって日本は最もやりやすい国だろうからね」

ステイル「今のところ、組織の目的は不明だが、脅威であることは確かだ」

ステイル「警告のために、僕がそれを伝えに来た」

上条「そう…か」

詠矢「…」

御坂「…また面倒なことになりそうね」

インデックス「だからとうま、気をつけて欲しいんだよ!」

上条「わかった、俺に何が出来るかわかんねえけど、やれるだけのことはやってみる」

詠矢「んー…」

詠矢「(また魔術師が相手か…、どうしたもんかねえ)」

詠矢「(ま、また土御門サンに相談してみますか)」

(とあるビル 屋上)

土御門「あれが目標か?」

真々田「そうだね、間違いない」

鳴子にかかった痕跡を追い、二人はとあるビルの屋上に移動していいた。

眼下には、路地裏で何やら動き回る男女の姿が映っていた。

男性「…」

男性は札を取り出し、墨で何やら書き上げるとそれを空中に放つ。

男性「…うむ」

いずこからか力を受けた札は、一瞬輝きを放った後に四散する。

男性「なるほど…」

女性「どうなの?」

男性「力の流れはどこもそう変わらないな…」

男性「母体である能力者が数が圧倒的に多いこの都市では」

男性「ほぼ隙間無く力場が形成されているようだ」

女性「そう…、じゃあ、場所に縛られることはないわけね」

男性「そうなるな。こちらのやりやすい場所を選定すればいいだろう」

一方、屋上では男女のやり取りを二人が確認する。

土御門「なにか会話してるな」

真々田「残念ながら聞き取れないね」

真々田「式を飛ばせば聞けるが…どうするかね?」

土御門「いや、相手も術者だ。気づかれるとまずい」

真々田「ふむ…」

真々田「…」

真々田「…ああ」

土御門「どうした?」

真々田「あの男の方、どこかで見たことがると思ってたんだけど」

真々田「今思い出したよ」

土御門「なんだって?知り合いなのか?」

真々田「ああ、名前は蕪木雅彰(カブラギ マサアキ)…」

真々田「僕と同門…、共に陰陽を学んだ人物さ」

以上となります。
それではまた。

こんばんわ1です。
大変遅くなりましたが、書きあがった分を投下します。

(とあるビル 屋上)

土御門「同門…?ヤツは陰陽師なのか?」

真々田「ああ。同世代の中では一番の実力者だったよ」

真々田「もちろん僕を除けば、だけどね」

土御門「なるほどな…」

土御門「しかし、陰陽師がこの学園都市でいったい何を…」

真々田「さあね。彼に最後にあったのはもう十数年前だ」

真々田「今どこで何をしているのは知らないな」

土御門「そうか…。しかし、蕪木か…どっかで聞いた名だな」

真々田「そのあたりの調査は任せるよ。僕は魔術の世界に何のコネもないんでね」

真々田「…おっと、そろそろ時間だ」

真々田「僕はそろそろ失礼するよ」

土御門「なに?…失礼って、この状況でどこに行くんだ」

真々田「これから『虹色☆れぇるがん!』のBD発売記念イベントなんだ」

真々田「どうしても外すわけには行かなくてね」

土御門「…はい?」

土御門「それって…タダのアニメのイベントだろうが」

真々田「そうか、一般人にとってはそうだろうね」

真々田「だが、僕たちは違う。行かないという選択肢は無い」

土御門「いや、あんた…」

真々田「ほら、だってさあ」

真々田「声優も来るんだよ?」

土御門「…」

真々田「君の言いたいことはわかるよ。おかしいのは僕のほうだ」

真々田「僕は、自分がまともだと思うほど狂ってはいないからね」

真々田「それでもね、それでもなお…。僕を止めることは出来ないよ」

土御門「…」

土御門「…そこまで言われると、逆に清清しいぜい」

真々田「ありがとう。最高の賛辞だよ」

真々田「では、またね。引き続き事件への協力は惜しまないよ」

真々田「必要があれば連絡してくれたまえ」

土御門「ああ…」

躊躇せず立ち去る真々田の背中を土御門はそのまま見送った。

土御門「ほんとに行っちまったな」

土御門「仕方ねえな、こっからは俺一人か…」

土御門「ん?」

目線を下ろすと、目標の男女は何かを申し合わせると二手に分かれて移動する。

土御門「おっと、マズイな。こっちも動かないとな」

携帯を取り出すと何処かへ電話をかけた。

土御門「…ああ、俺だ。今動けるか?」

土御門「なら、追跡を頼む。ちょいとヤバそうなヤツがいてな」

土御門「あと一つ、調べて欲しいことがあるんだが…」

(とあるホテル)

上条「はあー…」

ロビーから大きく広がる吹き抜けを見上げながら、上条は感嘆の声を上げた。

詠矢「これはこれは…」

詠矢は上条にほぼ同調する。

上条「いいホテル泊まってんなあ…」

詠矢「俺ら庶民はロビーに入るだけでもなんかビビるねえ…」

ステイル「そこまでいい宿ではないんだがね」

御坂「…」

イギリスから来た二人が宿泊しているホテルは、いわゆるシティホテルというランクで、ステイルが言ったとおり最高級

というわけでもない。

御坂はそれに心の中で同意したが、決して口に出すことは無かった。

インデックス「でもね、ベットも大きくてフカフカなんだよ!」

詠矢「そいつはいいねえ」

上条「まあ、俺には今の部屋で十分だけどさ、いっぺんはこういうとこも泊まってみたいよなあ」

インデックス「じゃあじゃあ、一緒にお部屋見に行こうよ!」

インデックス「みことも、そらきもね?」

御坂「え?いいの?」

インデックス「うん、いいよ!」

ステイル「まあ、せっかくここまで送ってくれたんだ」

ステイル「部屋に上がるぐらいは構わないさ」

上条「そっかそっか、じゃあお言葉に甘えさせてもらって」

御坂「私も、ちょっと興味あるかな…」

詠矢「さあて、俺はどうするかな…。断る理由はねえ…」

詠矢「ん?」

詠矢の視界の隅、エントランスの方向に人影が写った。

詠矢「…」

詠矢「いや…遠慮しとくわ」

詠矢「俺はこのソファの座り心地でも堪能しとく」

ロビーにあるソファに、詠矢はおもむろに腰を下ろした。

上条「なんだよ、変なヤツだな」

詠矢「まあ、いってらっさい」

詠矢「ちと疲れたみたいだから休憩だよ」

御坂「…そうなの?」

上条「まあ、そう言うなら…しょうがねえか」

詠矢「うい、スマンね」

詠矢「じゃあ、インデックスサン、またな」

インデックス「うん、そらき、今日はありがとうなんだよ!」

詠矢「ういうい」

チェックインを済ませたステイルと合流し、4人はエレベータの中へ消えていった。

詠矢「…さて、と」

目線を先ほどの位置に戻す。先ほどの人影、土御門の姿は既にロビーの中にあった。

詠矢「土御門サン、ばんわー」

土御門「おっ?ヨメやん…、奇遇だにゃあ」

詠矢「奇遇だねえ」

詠矢は意味も無くニヤリと笑った。

土御門「まさかこんなとこで会うとはな」

詠矢「まったくだな。んでまあ、こういうタイミングで会うってのは」

詠矢「あんまりいい流れじゃねえんだよな」

詠矢「お仕事中かな?」

土御門「へえ…どうしてそう思う?」

詠矢「そりゃあ、土御門サン、お仕事中は雰囲気変わるからねえ」

土御門「なるほど…無駄に鋭いにゃあ」

詠矢「まあ、その辺が俺の売りだからねえ」

詠矢「なんか協力できそうなことかな?」

土御門「さて…どうするかな」

土御門「まあ、いいか。話だけは聞いといてもらおうかね」

詠矢「ほいほい、喜んで聞きましょう。巻き込まれるのもいい加減慣れたしね」

土御門「じゃあ、早速」

土御門は詠矢の向かいのソファに腰を下ろした。

土御門「どうやら、また魔術側の侵攻らしい」

詠矢「へえ、懲りない奴らだな」

土御門「ただ、今回はローマ正教が絡んでいない」

土御門「相手の目的もまだ掴めていないんだが、少なくともうち一人は日本人だ」

詠矢「日本人?何でまた…」

土御門「そいつの素性は何とか調べた。で、ホテルの予約履歴を調べて」

土御門「先回りしてきたんだぜい」

詠矢「なるほどねえ、じゃあ張り込み中か」

土御門「そういうこと…っと」

エントランスから男性が一人入ってくる。その姿を目で追う土御門。詠矢はその目線に気づいた。

詠矢「あの人…かい?」

土御門「ああ」

男はまっすぐにフロントに向かい、従業員に声をかけた。

蕪木「チェックインを頼む」

男はそのまま、渡された用紙に必要事項を記入する。

詠矢「じゃあ、職質でもかますのかな?」

土御門「そうだな、話を聞いてみないことには、始まらないな」

詠矢「うい、じゃあ細かい話は後で聞こう」

詠矢「とっとと動いたほうがよさそうだね」

詠矢はソファから立ち上がった。

(とあるホテル 別階)

蕪木「…」

男はエレベーターの中にいた。既に鍵を入手し、部屋に向かう途中である。

蕪木「…」

何の問題も無く目標の階に到着したエレベーターを降りると、男は淡々と部屋に向かった。

蕪木「ん?」

目標としていた部屋の前に、男が一人立っていた。

詠矢「やーどうも」

蕪木「何だね、君は」

詠矢「いやー、名乗るほどのもじゃないんですけど」

蕪木「ふざけているようなら、人を呼ばせてもらうが」

詠矢「いや、意外と真面目な話なんですがね」

詠矢「詳しいことは、後ろのお方に…」

蕪木「なに?」

思わず振り返る蕪木。そこにはもう一人の人物が立っていた。

土御門「失礼するぜい。ちょいと話を聞きたくてな」

土御門「元『公安呪術師』蕪木雅彰さん…」

詠矢「…?(公安…って、何だ?)」

蕪木「何者だね、君は」

明らかに表情を変えた蕪木は、土御門のほうに向き直った。

土御門「俺のことなんてどうでもいいでしょう?」

土御門「高名な陰陽師さんが、この学園都市に何のご用かと思いましてね」

蕪木「私の素性を知っているということは、君も素人ではなさそうだな」

蕪木「まあいい、いずれにせよそんな質問に答える必要は無いな」

土御門「あんたは極めて微妙な立場の人間だ。特にこの学園都市ではな」

土御門「なにを思ってここに来たのか、確かめておきたくてね」

蕪木「はっ、観光だよ、何か問題でもあるかね?」

蕪木「それとも、この都市は陰陽師は立ち入り禁止なのかね?」

土御門「…なるほど。ただの観光なら、それでいいんですがね」

蕪木「まったく、不愉快だな、君たちは」

詠矢「(なんか話が見えねえな…。まあいいか、後でまとめて聞こう)」

探り合いの会話に、扉を開く音が割って入った、

三人の視線はそこに集中する。

上条「じゃあ、下校時間も過ぎちまうし、今日は帰るぜ」

インデックス「うん、じゃあ、またなんだよ!」

上条「ステイル、まだ何日かいるのか?」

ステイル「しばらく都市の動向を確認したいのでね。数日は滞在する予定さ」

御坂「じゃあさ、時間あるならどこか遊びに行かない?」

インデックス「わあ…、楽しそうなんだよ!行きたいんだ…?」

同じ廊下にいる別の集団に気づいたインデックスは、言葉を流して顔を向ける。

上条「ん?」

それに促された上条たちも、彼女の目線を追って振り返った。

御坂「あれ…詠矢さん?」

上条「土御門も…どうしたんだ?」

土御門「カミやんこそどうしてここに…」

詠矢「(ありゃ、まさか部屋が近くだったとは)」

蕪木「…(目録?…まさかここに…)」

蕪木「…」

一瞬、インデックスに目線を向けるが、蕪木は詠矢の体を押しのけると、そのまま部屋の扉を開いた。

詠矢「あっ!」

蕪木「失礼する」

蕪木はそのまま部屋に消えた。

詠矢「あっちゃー」

土御門「仕方ない、今の段階ではこの程度が限界だにゃあ」

土御門「仕切りなおすとするぜい」

詠矢「まあしょうなねえな」

上条「どした、何かあったのか?」

御坂「また面倒な話?」

インデックス「…?」

ステイル「どうかしたのかい?」

詠矢「いや、ちょっとお話してただけさ」

詠矢「ま、都合よく合流できたことだし、帰るとしますか」

土御門「みんな一緒に行くとしますか」

上条「あ…ああ」

御坂「そう…ね」

釈然としない二人を連れ、詠矢はエレベーターに向かった。

インデックス「じゃあ、そらきもまたなんだよ!」

詠矢「うい、またなー」

4人は、そのままエレベータに乗り込んだ。

(とあるホテル 喫茶室)

ロビー奥にある喫茶室の一番奥の席。4人は集合していた。

土御門「とりあえず、説明が必要だにゃあ」

詠矢「出来れば詳しく頼むぜ」

上条「またヤバそうな話かよ。聞かせてもらうぜ」

御坂「うん、私も」

土御門「わかったぜい。まずあの人物から説明しようか」

土御門「あの男は、元公安呪術師の蕪木ってヤツでな」

上条「公安…?」

御坂「呪術師?」

土御門「ああ、天皇家や時の権力者を呪殺から守るのが主な職務でな」

土御門「今は宮内庁の管轄になっている。当然、表向きには存在しないことになってるが」

詠矢「へえ、やっぱりそういうのは日本にもあるんだねえ」

詠矢「んで、なんであの人は『元』なんだい?」

土御門「前政権で、組織は大幅なリストラを受けた」

土御門「呪術を根拠の無い完全なオカルトと捕らえたらしい」

詠矢「うわ、なんかいかにもやりそうだな。それ」

土御門「ああ、予算も大幅に削減され、活動も制限された」

土御門「組織はほぼ解体状態となって、多くの呪術者が職を失ったんだ」

上条「それで、あの人もクビになっちまったのか」

土御門「ああ。何百年も日本を呪術から守ってきた組織を、一部の人間の不理解が崩壊させちまった」

詠矢「ひでえ話だな」

御坂「それに、そういう話だと…、恨んでるでしょうね」

土御門「ヤツ自身がどう考えてるかはわからないが、可能性は高いだろうな」

土御門「その対象が、削減を実行した担当者か、時の政府か、あるいは…この国自体か…」

詠矢「まあ、どっちにしろ、要注意人物だってことか」

土御門「ああ。ヤツがここにいる理由が明確でない以上、特に警戒する必要がある」

土御門「それに、同行者の存在も気になる」

上条「え?他にも誰かいるのか?」

土御門「ああ、さっきまで女と一緒に行動してた。ここに来る前に分かれたが」

詠矢「なるほど、そいつは気になるな…」

土御門「そっちは、別の人間に追わせてるんだが、上手く素性が掴めてればいいが…」

(とある集配場)

結標「…(ガチャ)」

店員A「いらっしゃいませー」

目標を追い、とある運送会社の集配場にたどり着いた結標は、いつもの格好でその事務所の扉をくぐった。

早速挨拶が飛んでくるがそれには答えず、その目線はカウンターの別の位置に注がれていた。

結標「…(いた)」

その女性は、別の店員とやり取りをしている。

店員B「えーっと、こちらのお荷物ですね」

店員B「お名前は、劉(リュウ)さん…ご本人で間違いございませんか?」

劉「はい、間違いありません」

店員B「では、こちらにサインをお願いします」

店員は、提示されたパスポートの名前を確認すると、受け取り伝票の記入位置を指示した。

結標「…(劉?中国人…なの?)」

結標は横目でその伝票を覗き込み、対象の苗字を確認する。

店員A「あの…、お客様ご用件は?」

結標「え、えっと…。送り状、何枚かいただけます?」

店員の問いかけに適当な理由を使って答えてる間に、劉と呼ばれた女性は荷物のアタッシュケースを手に、足早に事務所

を後にする。

結標「(あ、やば…)じゃ、ありがと!」

差し出された送り状を引っつかむと、結標は女性の背中を追った。

(とある路地)

劉「…」

既に日が落ち、闇の迫る学園都市の路地を、女性は何処かへと向かって歩いていた。

結標「…」

静かにそれを追う結標。

劉「…」

女は突然立ち止まる。

振り返らず、顔の側面だけを見せて後方を確認する。

結標「…!」

結標は慌てて物陰に隠れる。

結標「…!(気づかれた!?)」

劉「…」

正面に向き直り、女性は再び歩き出す。

結標「…(まさか…ね)」

だが直後、歩き出そうとした結標の足元に小石が飛んでくる。

結標「なっ!」

劉「下手な尾行ね。基本がなってないわ」

背を向けたまま正確に小石を投擲した劉は、そのまま振り返る。

結標「言ってくれるわね…」

結標「ま、確かにこういう仕事は得意じゃないけど」

劉「何かご用かしら?」

結標「ちょっと、あなたとその荷物に興味があるのよねえ」

結標「お話聞かせていただけるかしら?」

劉「答える義務は無いわ」

結標「へえ…これでも?」

突然、劉の手からアタッシュケースが消失する。

結標「集配場に直接取りにいくなんて、よほど大事なものなのかしら?」

既に手の中にある相手の荷物を、結標は無造作に空けようとした。

劉「貴様っ!!」

一気に距離を詰めると、劉は躊躇無く結標の顔に蹴りを放つ。

結標「っ!」

結標は状態を反らしてそれを避ける。パンプスが鼻先を掠めた。

結標「(鋭い!…シロウトじゃないわね…)」

一旦下がり、相手との距離を取ると、結標はアタッシュケースが開く。

結標「…え?…なにこれ!?」

その中には、緩衝材の間にうずめられた、刃渡り30cmほどの刀剣が横たわっていた。

劉「…転移能力者…。やっかいね」

劉「でも丁度いいわ、被検体なってもらいましょうか」

劉は懐から札を取り出すと、結標の足元に投げつけた。

札からは、稲光のような青い光が発せられる。

結標「なっ…え?…きゃあぁぁあああ!!」

光と共に、結標の頭に衝撃が走る。頭の中が圧倒的な不快感で満たされる。思わず膝を着く。

結標「ちょっ…な、いぎぎっ!!んっ…」

結標はすぐに転移で札を除去しようと考えた。だが、それもままならない。

結標「えっ…何よ…なんなのよ!…(演算が…でき…)」

劉「効果はあるようね…」

そのまま傍まで近づくと、劉はアタッシュケースを取り返し、結標に冷たい視線を向けた。

劉「話して頂くのは、あなたの方になりそうね」

以上となります。それではまた。

こんばんわ1です。
書きあがった分を投下します。

とあるホテル 喫茶室)

詠矢「ういす。状況はわかったわ」

詠矢「土御門サンもいろいろ大変だねえ」

土御門「そう言ってくれるのはヨメやんだけだぜい」

上条「じゃあ、とにかく今は情報待ちなわけだな」

土御門「ああ、何か進展があれば連絡するぜい」

土御門「それまでは、各自気をつけて行動して欲しいにゃあ」

上条「わかった」

御坂「そうね、気をつけたほうがよさそうね」

詠矢「うい。じゃあ。お互いこまめに連絡つけるようにしとくか」

土御門「了解。では今日のところは解散だな」

詠矢「とっとと寮まで戻りますか」

上条「あ、俺は美琴を送っていくからさ」

上条「二人で先に戻っててくれよ」

詠矢「…なるほど。まあ読めた展開だね」

土御門「ま、せいぜい送り狼にならんようにな」

御坂「な…何よそれ(カアッ)」

詠矢「さて、男二人で寂しく帰りますか」

土御門「そうだな。退散するとするにゃあ」

上条「おう…またなー」

御坂「…」

上条「帰る…か?」

御坂「…(コク)」

うつむいたまま、御坂は小さくうなづいた。

(とある街角)

真々田「…♪」

両手に紙袋を下げ、上機嫌で真々田は帰路についていた。

真々田「やはり、イベントは生に限る。何よりこの限定グッズの数々がたまらないねえ」

彼の体力には少々余る荷物だが、その充実ぶりを思い出せば自然と足も軽くなる。

真々田「それにしてもすっかり遅くなってしまったな」

真々田「やはり同好の士が集まると、話も弾んでしまうねえ」

自宅である店へと向かう真々田。暮らし始めて浅い町だが、それなりに地の利も得てきた。

真々田「確か、こっちのほうが近道だな」

おぼろげな記憶のままに路地に足を踏み入れる真々田。

真々田「…おや?」

路地の奥から、彼だからこそわかる気配が漂う。

真々田「うむ…これは…どうしたものかな」

少し考えると、真々田は荷物を電柱の影に置いた。

真々田「(まずは冷静に。最優先事項はこの戦利品の確保だ)」

軽く呼吸を整えると、真々田は慎重に気配の方向へ歩み寄る。

真々田「(ほう…これはまた、唐突なイベントだな)」

視界に写ったのは対峙する二人の女性。

正確に言えば、対峙するというより一人が一方的に害を受けている。

地面に伏し、頭を抱えて苦しがる人物と、それを見下ろすもう一人の人物がいる。

結標「いゃあぁぁあぁっ!!あ…ったま…が…!!」

劉「演算が出来なくても、質問には答えられるはずよ」

劉「あなたは学園側の人間かしら?どこまで掴んでいるの?」

その言葉に耳を傾けながら、真々田は冷静に状況を分析していた。

真々田「(ふむ…術による攻撃か。何かしらの害を受けているようだね)」

真々田「(問題は、どちらに加勢すべきか。もしくは関わらないか…だな)」

真々田「(被害側に道理があるとは限らないしね。なにか判断材料があれば…)」

真々田「(ん?)」

真々田は立っている女性の顔を凝視する。

真々田「(あの顔は…さっき…)」

その姿を見てからそう時間は経っていない。それは、先ほどビルの屋上から見た女性の姿だった。

真々田「(判断材料が出来たな…では)」

懐から数枚の札を取り出すと、真々田はそれに念を込めた。

真々田「ガゼット…、頼むよ」

札は自動的に折りあがり、ヘリコプターの形を取る。

軽い音を立ててローターが回りだすと、ヘリ形の式神は対象に向けて飛び立つ。

劉「…なにっ!」

目の前をよぎる何かに劉は思わずのけぞる。

劉「何だ…あれは」

式神そのまま宙返りし、その頂点で人型へと変形すと、揚力を自ら放棄してある目標へ向かって自然落下した。

結標「…えっ!」

人型になった式神は、落下した勢いのまま、両手を突いて結標を拘束する札の上に衝突した。

結標「あ…いっ!!(バシュ)」

衝撃と共に、式神は札を道連れに消滅する。

同時に、結標はその余波を受け意識を手放した。

劉「なっ!…何が…」

真々田「なに、単なる破呪の札だよ」

真々田「偵察用に式神に仕込んで運ばせた。極めて単純な対処法さ」

呼ばれる前に、真々田は自ら姿を現した。

劉「貴様は…何者だ!」

真々田「さあてね…ただ、不審者なのは明らかにそちらじゃないかな?」

真々田「君はさっきまで、蕪木君と一緒に居た女性だよね?」

劉「…っ!」

女性の表情が明らかに変わった。

真々田「君たちの関係に特別興味はないんだが、見過ごすことも出来ない立場でね」

劉「…」

じっと相手を睨むと、劉はすばやく札を取り出し、空中に放つ。

劉「はっ!!」

続けざまに、宙を舞う札に対して柄の無い短刀を投げつける。

切っ先が札を貫き、札を引きつれながら投擲物は真々田の眉間へと飛来する。

真々田「…(あれは)」

真々田の反応は早かった、札が舞った瞬間、自らも懐から一枚の札を取り出す。

真々田「よっ…と!」

札は空中に盾を形成し、飛来物は狙い済ましたようにそこに命中した。

衝突と共に上がる爆炎。だが、衝撃も炎も真々田までは届いてはいない。

劉「…やるわね」

真々田「収束した爆発の術を、投擲と組み合わせて対象まで直接送り込むのか」

真々田「実に実用的な戦闘呪術だね」

劉「…もう一度聞くけど、何者なの?」

真々田「僕は真々田だ。蕪木君にそう言えばわかるさ」

劉「…」

長引けば不利と考えたのか、アタッシュケースを抱えたまま、相手は闇に覆われた路地に消えていった。

真々田「さて…と」

横たわる結標の傍まで歩み寄ると、腰を下ろし対象の状態を確認する。

真々田「うむ、大丈夫のようだね」

真々田「とはいえ、僕には少々余る荷物だな…」

真々田「誰かに手伝ってもらおうか」

真々田は携帯電話を取り出し、その上で指を滑らせた。

(模型店 形屋)

結標「…んっ」

真々田「気がついたかね?」

ソファの上で目覚めた結標は、まだはっきりとしない意識で周囲を確認する。

結標「ここ…は…」

真々田「僕の店だよ」

向かいのソファに腰掛け、山と詰まれたグッズの整理をしながら、真々田は淡々と答えた。

結標「み…せ?…って!!」

すぐ傍に見知らぬ人物がいることに気づき、結標は飛び起きる。

結標「あんた!誰よ!」

真々田「僕は真々田。魔術師と交戦している君を偶然に見つけ、救助してここにつれて来た」

結標「…偶然、助けてくれたの?」

真々田「運良く相手側に敵対する要因が見つかってね。君のほうに加勢させてもらった」

真々田「更に、相手の呪術に対抗する方法を僕は有していた」

真々田「偶然としては出来すぎているぐらいだね」

決して相手の目を見ず、淡々と整理を続けながら真々田は説明する。

結標「呪術…?」

結標「まさか…あなたが、学園都市にいる魔術師…」
そういえば土御門に聞いたことがある。学園都市に取り込んだ魔術師がいると。
真々田「なるほど、僕のことを知っているわけだね」
真々田「ま、それも当然か…」
結標「え?」
真々田「土御門君、彼女が目覚めたよ」
少し声を上げて真々田が呼ぶ。
土御門「お、大丈夫かにゃあ?」
呼ばれた土御門は台所から顔を出した。
結標「土御門!なんでここに!?」
土御門「いや、真々田さんに呼び出されたんだぜい」
土御門「魔術師と交戦して倒れた奴がいるんで、助けるのを手伝ってくれってな」
その会話を聞きつけたのか、今度は店側から別の人物が現れた。
詠矢「お、気がついたか。大丈夫かい?」
結標「…ちょっと」
結標「土御門はいいとして、なんでコイツまでここにいるのよ!!」
詠矢「そりゃ、二人で寮に帰ってる途中に連絡があってだな」
詠矢「流れでまあ、来ちゃったわけですよ」
結標「なによそれ…、土御門!そんな簡単に部外者を関わらせていいの!?」
土御門「まあそう言うな結標」

土御門「ヨメやんには、お前をここまで運ぶのを手伝ってもらったんだぜい?」

結標「…」

詠矢「まあまあ、とにかく無事でよかった」

詠矢「んで、状況を聞きたいところなんだけどねえ」

土御門「ああ、それは俺から聞こう」

土御門「結標、何があった?」

二人に詰め寄られるような形となった結標は、少しバツが悪そうに話し出した。

結標「指示を受けた通り、対象の女を追跡したわ」

結標「相手は途中で運送会社の集配場に寄って、荷物を受け取った」

結標「その時に、名前を確認したわ。『劉』っていったわね」

詠矢「劉…」

土御門「中国人か…」

結標「多分ね」

結標「で、その後もつけてたんだけど、気づかれて…ね」

土御門「なるほど…それで戦闘になったわけか?」

結標「ええ。とにかく何か情報を得ようと思って。相手の荷物を確認したんだけど」

結標「その後に、妙な術にかかって…能力が使えなくなったわ」

結標「何ていうのかしら…頭が不快感で一杯になって、演算どころじゃなくなるっていうか…」

土御門「それって…まさか」

土御門は思わず詠矢の方を見る。

詠矢「絶対反論(マジレス)と、何か関係が…」

真々田「いや、恐らくあれは呪禁(じゅごん)だね。詠矢君の能力とは異質なものだ」

グッズの整理が終わった真々田が、唐突に口を開いた。

詠矢「そっか。真々田サンは戦ってるところを目撃してるんですよね」

詠矢「何か心足りでもありますか?」

真々田「まあ、推測でしかないが…あれは道教の術だな」

真々田「日本で呪禁と呼ばれる技術で、一般には邪気を払って呪的な害を打ち払う効果がある」

真々田「だが、使い方によっては、相手の気を制して術の発動を抑制する事もできる」

土御門「ちょっと待ってくれ、じゃあ何でその術で能力者である結標が…」

真々田「疑問に思う必要は無い。さっき君からもたらされた報告を加味すれば」

真々田「答えはおのずと出るはずだ」

土御門「…なるほど」

なにやら納得する二人の顔を、詠矢は交互に見る。

詠矢「スマン、ちょっと説明してくれるかい?」

結標「私にも、教えて欲しいものね」

土御門「二人には説明してなかったな。特にヨメやんには言っといたほうがいいだろう」

土御門「例の事件で、真々田さんが作った術式が、学園外に流出しちまった」

詠矢「術式…っていうと、AIM拡散力場へ干渉出来るっていう…あの」

土御門は小さくうなづく。

詠矢「おいおい、シャレになってねえぞ。だったら…」

真々田「既存の術に、僕が生み出した技術を組み合わせればそう難しくも無い」

真々田「AIM拡散力場を経由して、能力者を術の影響下に置いたのだろう」

真々田「彼女の証言からすれば恐らく、能力者の演算を阻害するように調整された術だろうね」

淡々と説明する真々田の言葉の後、室内は静まり返った。

土御門「…」

詠矢「…」

結標「…」

結標「…あの、さ」

結標「よくわかんないんだけど、要するに」

結標「魔術で能力を押さえ込むことが出来るって、そういうこと?」

詠矢「ズバリそういうこったな」

土御門「まさか、こんなに早く対応してくるとは…」

真々田「向こうには優秀な陰陽師がついているからね」

詠矢「まさか、アレですか」

詠矢「国に見限られた蕪木って人が、力を欲する中国と手を組んだと…」

真々田「リストラされた技術者が、海外の企業に引き抜かれたのと同じだね」

真々田「最近よく聞く話じゃないか」

土御門「想像以上にマズイ事態だ」

土御門「とにかく奴らの目的だけでも掴まねえと」

詠矢「どう動く?土御門サン」

土御門「とりあえず、蕪木の身柄を押さえる」

土御門「ヤツなら間違いなく何か知ってるだろう」

詠矢「そっか。そりゃまずそうだわな。何か手伝えることあるかい?」

土御門「いや、こっから先は専門の部隊に動いてもらうしかない」
土御門「ヨメやんはこれ以上はいい」
詠矢「わかった。じゃあ今日のところは大人しく帰るわ」
土御門「俺もこれから段取りがある。またな」
結標「ちょっと待って!後一つだけ」
土御門「どうした?」
結標「あの劉っていう女が受け取った荷物、何とか確認出来たんだけど」
結標「剣、だったわ。まっすぐで、両刃の…日本のじゃないみたい」
結標「長さは…30cmぐらいだったかな」
土御門「剣…?」
詠矢「剣、ねえ…なんだろうねえ」
土御門「わかった、ご苦労様だな結標。お前も引き上げていいぜい」
結標「そうさせてもらうわ…」
土御門「じゃあな!」
挨拶もそこそこに、土御門は店を飛び出していった。
詠矢「さあて…と、俺も帰るかね」
詠矢「あ、そうだ結標サン」
結標「…何よ」

詠矢「なんだったら、送ってこうか?」

結標「はっ、何の冗談よそれは!」

詠矢「あ、やっぱりそうですか」

詠矢「(しかし、想像以上に嫌われてるなあ)」

詠矢「ま、いっか。んじゃ」

土御門とは対照的に、詠矢は背中を丸めとぼとぼ店を後にする。

結標「…」

再び訪れた静寂。結標はすぐ隣にいる真々田に、なんとなく目が合う。

真々田「君は魔術の強い影響を受けてるからね。念のため経過観察をしておいたほうがいい」

真々田「ゆっくりしていきたまえ」

結標「え?いいの?」

真々田「別に構わないさ。お茶でも持ってこさせよう」

真々田「あ、ちなみに貞操の心配をする必要は無いよ」

真々田「僕はリアルの女性には興味ないのでね」

結標「…誰も聞いてないわよそんなこと」

(とあるホテル)

蕪木「…」

ソファに深く腰掛け、蕪木は据え付けてある時計で時間を確認する。

蕪木「(遅いな…何かあったのか?)」

蕪木「うむ」

予定の時間を少し過ぎている。確認のため、携帯電話を取ろうとするが。

蕪木「おっと」

先に着信音が鳴る。蕪木はすぐに応答した。

蕪木「はい…劉君か…」

劉『目標は無事回収した。ただ、問題が発生したわ』

蕪木「ほう…」

劉『交戦になったわ。相手は恐らく、学園内部の人間ね』

蕪木「それは問題だな」

蕪木「計画を前倒しにしたほうがいいだろう」

劉『そうね、一応準備は済んでるし、今からでいいでしょう』

蕪木「場所に関しては再考するとして、とりあえず合流しよう」

劉『どこに向かえばいいかしら?』

蕪木「その必要はない」

蕪木「『門』の札を渡しておいただろう。周囲に人気がいないことを確認して、そちらで展開してくれ」

劉『了解した』

蕪木は電話を切らずにそのまま待つ。耳元にはなにやら得体の知れない音が流れ込んでくる。

劉『終わったわよ』

蕪木「よし、ではそちらに向かう」

蕪木は電話を切って立ち上がると、まず装備を確認する。

その後、ペットボトルから水をコップに注ぎ、指を濡らす。

蕪木「…」

数分ののち、床のカーペットには水で描いた5角形の魔方陣が出来上がっていた。

蕪木「さて、行くか」

目を閉じ、蕪木が念を込めると、床が淡く光る。

光る面から、床は底なし沼のように蕪木の体を飲み込み始める。

ゆっくりと、一定のペースで沈み込んでいく。

やがて、蕪木の体は完全に消失する。

床に書いた魔方陣の文様は、早くも乾き始めていた。

(とあるマンション)

一方「…」

ある朝、一方通行はいつもの場所で目覚めた。

一方「…ンあ?」

寝ぼけ眼で辺りを見回す。

打止「…(ス-)」

雑魚寝状態の打ち止め(ラストオーダー)は静かに寝息を立てていた。

彼にとっては、代わらぬ日常のはずだった。

一方「…」

一方「ンだ?…だりィな…」

さわやかな目覚め、などという言葉には縁遠い彼だが、今日は特別に気分が悪い。

一方「…ま、いいか」

一方「よ…」

目覚ましにコーヒーでも飲もうと立ち上がる。

彼と、この学園に及ぼされた異変に、流石の彼もまだ気づいてはいなかった。

以上となります。
今回は不備が多いです。申し訳ありませんでした。
それではまた。

こんにちは、1です。
皆さんレスありがとうございます。
かなり時間がかかりました、続きを投下させていただきます。

(常盤台中学 学生寮前)

上条「…」

週末の朝、上条は一人待っていた。

今日のデートの予定は変更して、インデックスたちと遊びに行く予定である。

上条「…(しっかし、大丈夫かな)」

昨日土御門から聞いた話が頭をよぎる。学園内に不穏な影がちらつく中、のんきに遊んでいていいものかと少し考える。

上条「…お、来たな」

待ち人の登場により、そんな思考も中断された。

御坂「おはよ…」

上条「おう、おはよ」

御坂「んー…」

鈍感で通ってる上条にも、恋人の異変にはすぐに気づいた。

上条「どした、元気ねえな。大丈夫か?」

御坂「え?うん、大したこと、ないんだけどさ…」

御坂「なんかちょっと、だるくて…ね」

上条「え?大丈夫か?風邪かなんかか?」

御坂「ううん、熱はないし、食欲も普通にあるし、違うみたいなんだけど」

御坂「なんかこう、頭が冴えないっていうか、ぼーっとして…」

上条「おいおい。無理しねえでいいんだぞ?」

御坂「大丈夫よ、ほんとに大したことないから」

御坂「インデックスも楽しみにしてたし、今日を逃すと次はいつになるかわからないでしょ?」

上条「そっか、ならいいけどさ」

御坂「うん。ありがと」

御坂「…でも、そういえば」

上条「どうしたんだ?」

御坂「寮で会ったこたちも、みんな調子悪いって言ってたわね」

上条「そりゃ、さすがに妙だな」

御坂「うん。そうなのよ」

御坂「偶然にしては、ちょっとおかしいわよね…」

(学生寮 詠矢の自室)

詠矢「よっ…と」

朝食と洗濯を済ませると、詠矢は日課である筋トレに励んでいた。

詠矢「ん…ぎぎ…」

腹筋、腕立て伏せ、スクワット、スタンダードなメニューを淡々とこなしていく。

詠矢「ふう、こんなもんか」

自らに課したノルマをこなすと、少し疲れた表情で床に寝転んだ。

天井を見つめ、寝たまま出来るストレッチを始めながら、詠矢は考えていた。

詠矢「…(しかし、静かな朝だな)」

詠矢「(相手に特定の目的があるなら)」

詠矢「(結標サンや真々田サンと接触したことで焦って動きを早めるはずだ)」

詠矢「(まあ、翌朝からいきなり急展開ってのも無いのかもしれねえが)」

詠矢「(なんか、気になるねえ…この流れは)」

詠矢「お?」

床に転がして置いたスマートフォンが鳴る。電話は土御門からだった。

詠矢「よ…(ピ)はい、詠矢だよ」

土御門『おはよう、ヨメやん』

詠矢「ういす、おはよう」

詠矢「なんだい?朝から」

土御門『ヨメやんに伝えときたいことがあってな』

詠矢「俺にか?まあ、おおよそ見当は付くが、昨日の続きかな?」

土御門『ああ。あれからまたわかったこともあってな』

土御門『ヨメやんにも聞いといて欲しいにゃあ』

詠矢「そっか、わかった。んじゃどうすりゃいい?」

土御門『部屋まで来てくれると助かるぜい』

詠矢「うい、んじゃ、15分ほどしたら行くわ」

土御門『待ってるぜい』

詠矢「よっと(ピ)」

詠矢「さってと、軽く体流していくか」

近くにあったタオルを掴むと、詠矢は風呂場に向かった。

(学生寮 土御門の部屋)

詠矢「んで、どうだい状況は」

すでに部屋に上がりこみ、舞夏が入れてくれたお茶をすすりながら詠矢は行った。

土御門「良くないにゃあ」

土御門「昨日あれからすぐ蕪木の確保に向かったんだが」

土御門「ホテルの部屋はすでにもぬけの殻だった」

詠矢「なるほど、相手のほうが動きが早かったわけか」

詠矢「例の劉って人と合流したのかね」

土御門「さあな。それは相手の目的によるだろうな」

土御門「それと、例の女の素性も割れたぜい」

詠矢「へえ、意外と早かったな」

土御門「名前が知れたし、二人も目撃者がいたんでな。調べるにはそう時間がかからなかったぜい」

土御門「相手は劉月愁(りゅう げっしゅう)、中国の呪警局(じゅけいきょく)って組織の工作員だ」

詠矢「そこって、やっぱり魔術を扱ってたりするのかね?」

土御門「ああ、本来は外からの呪的な攻撃に対処する為の組織なんだが」

土御門「今回は攻勢に出てるようだな」

詠矢「まあ、流れからいって順当な素性だねえ」

詠矢「問題は、今もって相手の目的が見えないってことだな」

土御門「そうだ。そこが一番の問題だな」

詠矢「んー、もうちっと情報があればなあ…」

詠矢「(ブブ)お、電話?…上条サンか」

詠矢「(ピ)もしもし、詠矢ですけど。上条サンかい?」

上条『ああ、俺だ。今インデックスたちと一緒にいるんだ』

上条『良かったらお前も来ないか?』

詠矢「へえ、一緒にねえ。そういやあ、遊びに行くとかなんとか言ってたねえ」

上条『そうなんだ。昨日部屋で約束してたんだけど』

上条『詠矢を誘い忘れてたなあ』

詠矢「おお、俺を思い出してくれたとはうれしいねえ」

詠矢「しかし、大丈夫なんかね。敵ががうろついてるかもしれんのに」

上条『それは俺も考えたんだけど』

上条『相手の目的が、インデックスたちかもしれないだろ?』

上条『それなら、最初から一緒に居たほうがいいんじゃねえかって思ってな』

詠矢「なるほど、それも一理あるな」

上条『だろ?まあ、お前がヒマだったらでいいんだけどさ。どうだ?』

詠矢「んーそうさなあ…」

詠矢「…」

詠矢「うし、じゃあ、行かせてもらおうかな」

上条『わかった。じゃあ、いつものゲーセンで合流にしようぜ』

詠矢「ういす。じゃあ近くまで行ったらまた連絡するわ」

上条『おう。また後でな』

詠矢「ほいほい、んじゃ(ピ)」

土御門「カミやんからかい?」

詠矢「ああ、今から合流してくる」

詠矢「ここで唸ってても状況は変わらねえし」

詠矢「ちょっと町の様子でも見てくるわ」

土御門「そうか。じゃあ、こっちは出来る限りの調べをすすめとくぜい」

詠矢「わかった。そっちの方はよろしくだ。何かあったらまた連絡する」

詠矢「舞夏サーン、お茶ご馳走様!!」

詠矢「失礼するぜー!」

舞夏「お粗末様だぞー」

少し張り上げた詠矢の声に、舞夏は台所の奥で答えた。

(とある繁華街 街角)

上条「…」

ステイル「…」

詠矢「…」

迷わずに合流を果たした詠矢は、ベンチに佇む二人の前に立っていた。

詠矢「あれま、どうしたね男二人納まって」

上条「いや、まあ…な」

ステイル「出番が、なくて…ね」

詠矢「あれ?そうなんだ」

上条「ほれ」

上条がどこかを指差すと、その先にはクレーンゲームに張り付くの女性二人がいた。

詠矢「おお、なるほど」

ステイル「朝からずっとあの調子でね」

ステイル「二人で完結してしまっていてね。入り込む余地が無いんだよ」

詠矢「まあいいっしょ、それは。仲がいいのは結構なこった」

上条「そりゃそうなんだけどさ」

上条「それはそれで、上条さんの立場が無いとは思いませんか?」

詠矢「かわいい彼女がいるだけで十分だろうが。贅沢抜かすなっての」

ステイル「ま、僕はインデックスが楽しんでるのなら、それでいいけどね」

詠矢「お、大人ですねえ魔術師サン」

ステイル「悪いが、君よりは年下だよ」

詠矢「…」

詠矢「うっそお。マジっすか?」

ステイル「君が一般的な高校生なら、確実に僕のほうが若いよ」

詠矢「…へー、世の中いろんな人が居るもんだなあ」

ステイル「それはどういう意味だい?」

詠矢「そんな深い意味はねえよ」

詠矢「んじゃ、女性陣に挨拶でもしてきますかねえ」

ステイルの質問を軽く流し、詠矢はゲーセンの店頭まで移動した。

詠矢「よう、お二人さん」

御坂「…」

インデックス「あ、そらき、来たんだ!」

詠矢「おうおう、呼ばれて来たぜ」

御坂「…」

詠矢「お取り込み中かな?御坂サン」

御坂「…話しかけないで」

クレーンの位置を凝視している御坂は、詠矢の言葉を遮った。

詠矢「(おお、ずいぶんと入れ込んでらっしゃる)」

詠矢「(でもあの位置じゃ取れないぜー)」

思ったが口には出さず、詠矢はそのまま状況を見守る。

御坂「…」

クレーンは静かに移動し、目標のストラップを目指して降下する。

が、力な無くつめの先端は空を切る。

御坂「あー!!もう、これでどうやって取れっていうのよ!!」

いんでっくす「みこと、おちついて…」

詠矢「取れない台には金を入れんことさ」

御坂「っても、ここにしかアレが入ってないのよ!」

御坂「もう…って…ぁれ?」

突然、御坂は膝をつく。そしてそのまま体重を支えきれなくなり、地に伏した。

上条「美琴!!」

真っ先に反応したのは上条だった。すぐさま倒れた御坂の傍に駆け寄る。

詠矢「御坂サン!!どした!」

御坂「…」

上条「美琴!大丈夫か!」

詠矢「やべえ、意識がねえ」

詠矢「こっからだと、病院がすぐ近くだ。上条サン!」

上条「わかった!」

上条は御坂を背負うと、駆け出していく。

インデックス「みこと!どうしちゃったの!?」

詠矢「わからん。とにかく、俺たちも一緒に行こう」

インデックス「わかったんだよ!」

(とある病院 病室)

御坂「ゴメン…心配かけて。もう大丈夫だと思う」

ベットの上で上半身だけ起こした御坂は、心配する上条に向け精一杯笑って見せた。

上条「大丈夫じゃねえだろ。顔色悪いぞ?」

上条「朝から調子悪いって言ってたろ。無理したんじゃないのか?」

御坂「ううん。ほんとに大したことなくて、遊んでたら忘れちゃってたぐらいなんだけど」

御坂「さっき急に意識が途切れて…」

詠矢「そいつはまた変な話だな」

インデックス「みこと、ほんとに大丈夫なの?」

御坂「うん、今は平気。ただ、朝よりは辛い…かな」

詠矢「…どんな感じなんだい?」

御坂「んー、なんていうか、全身がだるくて、少し眠くて。それがずっと続く感じ」

御坂「まるで、どこかに力を吸い取られてるような…そんな…」

詠矢「力を…か…」

突然、ドアをノックする音が響く。

冥土帰し「失礼するよ」

全員がドアを注視する中、その人物は現れた。

冥土帰し「検査結果を伝えようと思ってね」

上条「どうなんですか?美琴の容態は」

冥土帰し「体力の低下が見られるが、それ以外は何の異常も無いね」

冥土帰し「症状として現れた倦怠感については、今のところ原因は不明だ」

詠矢「医者サンがわからないってのは、厄介ですな」

冥土帰し「出来る限りのことはやってみたんだが…残念だよ」

冥土帰し「それに、不思議なことにね」

冥土帰し「同じような症状を訴える者が、続出してるんだよ」

上条「美琴と同じような?」

冥土帰し「ああ、個人によって症状の強さはまちまちだが」

冥土帰し「みな一様に倦怠感を覚えている」

冥土帰し「御坂君と同じく、原因は不明だ」

詠矢「続出って、そんなにいるんですか?」

冥土帰し「そうだ、そろそろこの病院も満床になるよ」

上条「そんなに出てるんですか…。あ、そういえば美琴」

上条「常盤台の寮でも、同じような人がいたって言ってなかったか?」

御坂「そう、出かける前にあった子は、みんな調子悪いって言ってたわ」

詠矢「つまり…症状が出てるのはかなりの人数になるわけだ」

詠矢「…」

目を閉じ、詠矢は考える。

詠矢「医者サン」

冥土帰し「なにかね?」

詠矢「もしかしてですけど、症状が出てる人って、能力者だったりしますか?」

冥土帰し「ああ、確かにそうだね。レベル差はあっても、みな能力者だ」

冥土帰しはカルテをめくりながら確認した。

詠矢「そうですか…」

上条「どうした詠矢?なんかまた…」

詠矢「なあ上条サン」

上条「…なんだ?」

詠矢「俺たちは、平気だよな?」

上条「ああ、確かに、なんとも無い」

詠矢「インデックスサンはどうだい?」

インデックス「平気なんだよ」

詠矢「ふうむ…」

詠矢「確か常盤台中学の生徒は全員レベレ3以上…」

上条「ってことは…おい」

詠矢「俺と上条サンは、能力は持っちゃいるがレベル0だ」

詠矢「インデックスサンは魔術側の人…」

詠矢「つまり、症状が出てるのはちゃんとレベルを持った能力者だけ…」

詠矢「こいつは、意図的なものを感じるな…」

上条「誰かが何かの目的でこの状況を作り出してるってのか?」

詠矢「多分な」

詠矢「インデックスサン、一つ意見を聞きたい」

詠矢「魔術ってのは、こうやって広域に影響を及ぼすことは可能かい?」

インデックス「使われた魔術によるから、一概には言えないけど」

インデックス「ちゃんと術式を組み上げれば、都市のような広範囲を巻き込む魔術も可能なんだよ」

詠矢「なるほど」

詠矢「しかし、なんだかねえ…」

上条「何かあるのか?詠矢」

上条「状況から見て、例の魔術師の攻撃に間違いないだろ」

詠矢「いや…攻撃というにはちょっと違和感があるな」

詠矢「んー…」

上条「攻撃じゃなきゃ、何だって…」

上条「まさか、真々田さんみたいな確信犯なのか?」

詠矢「…真々田…サン?」

詠矢「うん、そうだ…上条サン、いい指摘だ」

上条「…?」

詠矢「あの時と同じように、敵が力を一点に集めようとしていたら?」

上条「力を…集める…か」

上条「そういやあ、さっき美琴が…」

御坂「ええ、確かに、どこかに力を持っていかれてる感じはする」

詠矢「…どこかに…」

詠矢「…」

再び目を閉じ、詠矢は思考に入る。

詠矢「…」

インデックス「…?」

インデックス「そらき?」

動かない詠矢に声をかけようとするインデックス。上条は肩に手を置いてそれを制し、耳元にささやいた。

上条「(いいんだインデックス。詠矢がこうなったときは待ったほうがいい)」

上条「(必ず答えを出してくれる)」

インデックス「(そ、そうなんだ)」

詠矢「…うし」

一言発すると、目を開きすぐさま携帯を操作する。

詠矢「…あ、もしもし、土御門サンかい?」

詠矢「詳しい話は後だ。ちょいとお願いがあるんだが…」

詠矢「第一位サンに会いたいんだ、出来る限り早く」

詠矢「それと、理事長サンに話を通しておいてほしい」

詠矢「多分、絶対反論(マジレス)の『増幅』を使うことになる」

(学園都市 とある場所)

それは夢だった。

今見ている光景は、はっきりとそうであると理解できる。

幼き自分。中国全土より術者としての才能を見出され、集められた子供たち。

その中に自分もいた。

辛い日々だった。来る日も来る日も訓練に明け暮れ、遅れるものは容赦なく切り捨てられた。

全ては国のため。国の憂いを濯ぐため。それだけを叩き込まれる日々。

だが、彼女には支えがあった。共に学ぶ友の姿。

彼は明るく、どんなに苦しい状況でも笑顔を絶やさない強い人物だった。

共に笑い、共に練磨し訓練を乗り越えていった。

やがて、自分のなかにある思いが生まれているのに気づく。

まだ幼い自分には、芽生え始めた彼への思いが何であるのか、理解できないでいた。

そして、辛くても掛け替えの無い時間は終わりを告げる。

彼には自分程の才能がなかったのだ。

与えられる課題をクリアできず、徐々に自分との差が離れていく。

彼の背後に闇が広がる。そこから現れる無数の手。

自分がどれだけ手を伸ばしても、それは決して届くことはない。

無数の手が、一斉に彼に取り付き、闇へ引きずり込もうとする。

手を伸ばし、その名を叫んでも届く気配も無い。

足が、体が、最後には彼の顔が、闇に飲み込まれていく。

声にならない絶叫が響く…

劉「…!!」

蕪木「…目が覚めたか」

劉「私は…眠っ…て…」

蕪木「少し休んでいたらどうだ?」

劉「休んでいないのはあなたも同じよ」

蕪木「私には術の維持という仕事がある」

少し開けた空間に蕪木は立っていた。

地面に無数に張り巡らされた魔方陣。その中心に突き立てられた一本の剣。

蕪木「…」

剣をじっと見守りながら、蕪木は時折指を動かし術式を調整する。

劉「私一人休んでいるわけにはいかないわ」

劉はそう言い放つと、腰掛けていた古ぼけた椅子から立ち上がる。

蕪木「君には別の役割があるだろう。休んでおくのも一つの仕事だ」

劉「…」

促されると、再び椅子に腰を下ろす。

蕪木「国のため…か?」

蕪木「あまり入れ込みすぎないことだ。国は、裏切るぞ」

劉「国を捨てたあなたに言われたくはないわね」

蕪木「先に見限られたのは私の方だ」

劉「それで、こんな形で復讐なの?」

蕪木「単純な恨みではない。これはプライドの問題なのだよ」

蕪木「どうしても、私の力を見せ付けてやる必要がある」

劉「そう…」

同意も反論もせず、劉は術式の中心にある剣を見つめる。

蕪木「先ほど術の強度を上げた。目標の数値までそうかからないだろう」

劉「そんなに焦る必要があるの?」

蕪木「君が遭遇した真々田という男は侮れない」

蕪木「何の目的でこの都市にいるのかはわからないが」

蕪木「出来る限り計画を早める必要がある」

劉「何か遺恨でもあるのかしら?」

蕪木「…詮索するような関係でもないだろう。お互いにな」

劉「…そうね」

薄暗い空間の中、何かが深く静かに進行していた。

(学園都市 とある公園)

一方「…」

ベンチに横たわり、一方通行は木陰から空を眺めていた。

一方「…あー、ったく…」

朝から感じている倦怠感は悪化してるようだ。

一方「…」

目線を水平に送ると、そこにはだらしなく遊具にもたれかかる打ち止め(ラストオーダー)の姿があった。

一方「テメエ…外で遊びてえとか抜かしやがるから連れ出してみれば」

一方「何だそのザマは!!」

打止「だってだって、なんか急に疲れたんだもんとミサカはミサカは反論してみたりー」

一方「なンだそりゃ…ったく…最悪だぜ…」

再び戻した彼の視界に、ある人物が移った。

土御門「よう」

一方「まったく、最悪な日に最悪のツラだな」

一方「またなんか仕事か?」

土御門「いや、どうかな。仕事といえば仕事だが」

土御門「お前に会いたいって人がいてな」

一方「俺…に?ダレだその奇特なヤツは

一方通行が上体を起こすと、更に数人の人物が視界に移る。

詠矢「その節はどうも。お久しぶりですな第一位サン」

その先頭にいる人物が真っ先に口を開いた。

一方「テメエは…いつかの飛び降り野郎じゃねえか」

詠矢「そうかそか、俺に対してはまだそういう認識なんだねえ」

詠矢「ところでさ、第一位サン。朝から体調悪くないかな?」

一方「ンだぁ?いきなりなんだ…」

詠矢「否定は出来ないはずだぜ?」

一方「…」

一方「だったら、どうしたっつーンだよ…」

詠矢「ちょいと、お願いしたいことがあってね」

詠矢「俺が考える限り、第一位サンにしかお願い出来ないことだ」

詠矢「まあ、知らない仲じゃないし、ちょいと頑張ってもらえませんかねえ」

人差し指で眼鏡を上げ、詠矢はどこか得意げに語った。

以上となります。
それではまた。

こんばんわ、1です。
遅くなってしまってもうしわけありません。
短いですが書きあがった分を投下します。

(学園都市 とある公園)

一方「てめエ、何様のつもりだ?」

一方通行はだるそうに周囲を見回す。

その視界には、先ほど会話を交わした二人以外にも見知った人物が写った。

彼が三下と呼ぶ上条当麻、そしてその被保護者だった少女、その傍には見覚えの無い長身の男が付き添っている。

なにやら物々しい雰囲気を感じ取ったか、一方通行は舌を打つ。

一方「なんでテメエの言う事を聞いてやる必要があンだ?」

詠矢「その前に、現在の状況を説明しよう」

詠矢「そいつを聞いてから判断してもらっていい」

一方「…」

詠矢「んじゃあ、要点をまとめて説明するぜ?」

相手の沈黙を肯定と捕らえて、詠矢はこれまでの経緯を話す。

一方「ンじゃあナニか?今現在進行形で、魔術師とやらが俺たちに攻撃を仕掛けてるってのか?」

詠矢「攻撃、という言葉が適当かはわからないけど。敵意があることは間違いないな」

一方「どういう意味だ」

詠矢「単純に攻撃なら、この状況はぬる過ぎる。完全に能力者を無力化出来るわけでもないし」

詠矢「効果が永続的に続いているから、何らかの人為的行為であることはすぐにバレる」

詠矢「だからと言って、このスキを付いて別の行動が起きる気配も無い」

詠矢「つまり、単純な攻撃では無く、別の目的があると考えられるわけだね」

一方「…テメエ、回りくどいのは相変わらずだな」

詠矢「いや、まだ状況の説明説明がですね…」

インデックス「敵は、力を集めようとしてるんだよ」

自分の担当と理解したのか、インデックスが突然口を開いた。

一方「テメエは、いつかのガキ…」

インデックス「効果範囲の広い魔術を使う目的はいくつかあるんだけど」

インデックス「いまの状況から考えて、たくさんの対象から力を奪い、一点に集めていると考えられるんだよ」

インデックス「その場所を突き止めない限り、この魔術をとめることは出来ないんだよ!」

一方「…」

詠矢「あっと、インデックスサンありがとう」

詠矢「でだね、敵の真の目的はわからんけど、このまま放置するわけにもいかない」

詠矢「第一位サンとしても、魔術師に一方的にやられたい放題っても、マズいっしょ?」

一方「…」

一方「ケッまあいい。気に食わねえ話だから協力してやってもいいか…」

一方「ンで、どーしろっつうんだ?」

一方「お願いっつーんなら、とっとと用件を言えや」

詠矢「わかった、そうさせてもらいましょう」

詠矢「敵の居場所が知りたい。その探索をお願いしたいんだ」

一方「ハア?テメエ俺が探偵かなんかに見えンのか?」

詠矢「…」

詠矢は集中し、一呼吸置く。

詠矢「なあ、第一位サン。あんたの能力は『ベクトル変換』だよな?」

一方「今更ナンだよ」

詠矢「ベクトルを変換できるってことは、そのベクトルがどこからどう来たかを解析できるってことだよな?」

一方「…ぁん?」

詠矢「今、学園中の能力者が発しているAIM拡散力場は、一点に向かって集められている」

詠矢「当然、第一位サンから発せられている力場も、そこに向かって流れているってことだ」

一方「テメエ…まさか」

詠矢「そう、お察しの通り」

詠矢「第一位サンがあらゆるベクトルを解析できるなら、自分から発せられているAIM拡散力場も例外じゃない」

詠矢「自分から見てどの方向に、どれぐらいの距離に、力が流れているのか」

詠矢「それを解析して欲しい」

一方「…AIM拡散力場の解析だと…?」

一方「そんなもン、出来るって保障がどこにある?」

詠矢「出来るさ」

詠矢「だって、今まで俺の話を素直に聞いてくれてただろ?」

詠矢「だから、出来るさ」

一方「…」

一方「テメエ…想像以上にトンでもねえ野郎だな」

詠矢「そいつは褒めてもらってるのかな?」

詠矢「確かに、俺がお願いしてることは第一位サンの能力を超える行為かもしれない」

詠矢「だが、『増幅』の絶対反論(マジレス)が、一方通行(アクセラレータ)に通じることはすでに立証済みだ」

詠矢「あとは、第一位サンにやる気になってもらうだけさ」

一方「…」

上条「俺からも頼む。一方通行」

上条「お前と同じように、美琴も影響を受けてる」

上条「今はまだ大丈夫だだけど…この先はわからねえ」

上条「俺は美琴を守らなきゃいけないんだ」

上条「それに、美琴だけじゃない。この学園のすべての能力者が、危険な状態に置かれている」

上条「なんとかしねえと…」

上条「だから、頼む、一方通行」

一方「…」

一方「…ケッ」

一方「別に、どこのどいつがどうなろうが、俺の知ったこっちゃねがな」

一方「このままナメられっぱなしってのも、シャクなのは確かだ」

一方「…しゃあねえな」

一方「ンで?どうすりゃいい、飛び降り野郎」

一方通行は、だるそうな目線をじろりと詠矢に向けた。

詠矢「…」

飛び降り野郎というのは、どうやら自分の呼称らしい。

返したい言葉を飲み込んで、詠矢は口を開いた。

詠矢「ありがとう、第一位サン」

詠矢「まずは集中だ。目を閉じ、自分に関わっているベクトルを感じてくれ」

詠矢「人体から発生しているものの中で、ベクトルと呼べそうなものは脳波か体内電流の電磁波ぐらいだろう」

詠矢「それ以外の流れが、能力者が特別に有するAIM拡散力場…」

詠矢「選択肢は多くない。見極めるのは、そう難しくないはずだ」

一方「…」

一方通行は素直に目を閉じる。

一方「…」

そのまま集中する。まぶたの裏の闇の世界で、不思議と詠矢の言葉が頭にしみ込んでくる。

一方「…」

じわり、じわりと自分の周囲の『波』が感じ取れる。

滲み出てくるような感覚が伝わってくる。

一方「…」

詠矢「…(どうだ)」

一見変化の無い一方通行に、詠矢は焦りを含んだ視線を向ける。

一方「…」

一方「…ン」

目を閉じたまま、一方通行静かに右手を上げる。

その指先が一点を差した。

一方「こっちだ…な。この指の方向に真っ直ぐ…」

一方「距離にして、まア…800mってとこか」

詠矢「…確かかい?」

一方「俺をダレだと思ってやがる」

詠矢「これは失礼…」

詠矢「んじゃあ、早速行くとしますか」

土御門「地図情報の検索はこっちでやるぜい」

土御門「すぐに位置を特定できるはずだ」

詠矢「よろしくたのむぜ」

一方「ンじゃあ終わりか?」

疑問形で聞いたわりには答えを聞かず、一方通行はベンチに寝そべる。

詠矢「ああ、ご苦労様です。後は俺たちに任せてくれ」

上条「なんだよ、一方通行。手伝ってくれないのか?」

一方「さっき調子悪いっていいませンでしたっけぇ?」

一方「俺が引き受けたのは調べモンだけだろ。後はテメエらでなんとかしろや」

上条「そりゃ、そうだけどさ…」

上条「よし、じゃあしょうがねえ。場所がわかり次第俺たちで行くか」

インデックス「とうま、私も一緒に行くんだよ!」

上条「いや、インデックス、これは学園都市の問題だ」

上条「俺たちで何とかする」

インデックス「でも…」

詠矢「そうさな。上条サンの言うとおりだね」

詠矢「残念ながらまだ状況が不安定だ。下手に関わると逆に危険だね」

ステイル「そうさせてもらおう。インデックス」

ステイル「僕たちがここに来た目的は、彼らに情報を伝えることだけだ」

ステイル「これ以上深入りすることは出来ないよ」

インデックス「…」

インデックス「わかったんだよ…でも…」

インデックス「みんな、気をつけて…」

上条「ああ、わかってるって」

上条「でも詠矢、本当に俺たちだけで大丈夫なのか?相手は魔術師なんだろ?」

詠矢「いやいや、インデックスサンたちに手伝ってもらわなくてもさ」

詠矢「助っ人のアテはありますんで…」

(とある場所)

真々田「で、また僕が借り出されるわけだ」

真々田「全く人使いが荒いね、君たちは」

店に急に押しかけられ、呼び出された真々田は、居並ぶ三人の顔を順番に見ながらため息混じりに言った。

詠矢「まあまあ、そう言わずにですね。もう少しご協力下さい」

土御門「よろしくたのむぜい」

真々田「まあ、別に構わないけどね」

上条「えっと…真々田さんこちらの女性は…」

上条は、真々田に寄り添う女性に目線を送りながら聞いた。

真々田「ああ、彼女はクシャトリアといってね」

クシャトリア「皆さん始めまして。クシャトリアです」

緑の長い髪が特徴的なその少女は、髪の色と同じドレスの裾を持ち上げ軽く頭を下げた。

真々田「大規模な呪術戦闘になることが予想されるので、彼女に来てもらった」

土御門「ってことは、やっぱり」

真々田「僕の作品の一人だよ」

詠矢「なるほど…」

上条「敵は、あそこってわけだな」

上条が見上げた先には、全体的に古さの出た空きビルがあった。

真々田「ふむ、なるほど」

真々田「しかし、君たちも無謀だね」

真々田「この人数で乗り込むとは」

真々田「アンチスキルやジャッジメントに協力を頼まないのかい?」

土御門「いや、今の組織では呪術に対向する手段が無い」

土御門「数を揃えただけじゃあ、逆に被害が増えるだけだ」

上条「そういうことだな」

上条「なあに、このメンバーなら大丈夫だ。今までだってそうしてきた」

上条「なんとかしてみせる!」

上条は手のひらに拳を打ちつけ、気合を入れた。

詠矢「それに、このメンバーだけってわけでもないんで」

真々田「そうなのかね?」

土御門「伏線は引いとかないとにゃあ」

詠矢「ま、あと足りない分は真々田サンに頑張ってもらうってことで」

真々田「…おしゃべりはそこまでだ」

真々田「お出迎えのようだよ」

真々田が言い終わらないうちに、地面に仕掛けられていた呪符が次々と発動する。

何も無い空間に、突如として巨大な蜘蛛があらわれる。それは数を増し、ビルの周囲にある空き地を一瞬にして埋め尽くした。

詠矢「うわ、キモイな…」

土御門「コイツは、土蜘蛛…」

真々田「そうだね。もし陰陽に教科書があるなら、最初の一ページに乗っているような式神だよ」

上条「でも、すげえ数だ。完全に囲まれてるぜ」

詠矢「やっぱり二万体ぐらいいるんですかね」

上条「なんだよそれ」

詠矢「いや、ゴメン。流してくれ」

真々田「ふむ…」

取り囲む土蜘蛛をぐるりとみて、真々田はなぜか不敵に笑う。

真々田「いいねえ、このシュチュエーション」

真々田「言ってみていいかね?」

詠矢「え?…ええ…」

真々田「では…『ここは僕に任せて先に行きたまえ』」

上条「真々田さん…」

真々田「一度言ってみたかったんだよね、こういう台詞」

詠矢「この数、一人で大丈夫なんですか?」

真々田「そのための彼女さ」

真々田「クシャトリア、準備を」

クシャトリア「はい!マスター!」

少女は真々田に背を向け、髪をかきあげると、その下の素肌があらわになる。

真々田「…!」

現れた少女の背中に指を立て、真々田は一気に式を組み上げる。

真々田「まずは突破口を開く。正面に集中を」

クシャトリア「はい!」

少女が頭を振るうと、広がった髪の先端が自然に束ねられ、硬化し分離していく。

クシャトリア「ファンネル!!」

叫びと共に分離した先端が飛越し、正面を塞いでいた土蜘蛛の群れに襲い掛かる。

轟音と共に、群れは次々に札に戻っていく。

詠矢「これは…」

真々田「彼女には、最初に設定した術を増幅・拡散して打ち出す能力がある」

真々田「式の活動を停止させる術を増幅して打ち出したのさ。もうあの土蜘蛛は機能しないよ」

上条「魔術には魔術で迎え撃つってわけか」

土御門「よし、ここは任せよう。俺たちはあのビルに!」

上条「おう!」

詠矢「がんばりますかねぇ!」

三人は開いた道に向かって駆け出すと、一気に建物内に突入した。

真々田「さて、こっちは続きかな」

真々田は、送り出した背中を見届けると、先ほどより数を増したかに見える土蜘蛛の前に対峙した。

クシャトリア「マスター、敵の数が!」

真々田「わかっているよ」

真々田「まあ、引き受けたからには、ちょっと本気出してみようかな?」

真々田が大きく両腕を広げると、その手には大量の呪符が握られていた。

真々田「知ってるかい、ガゼットには量産型もあるんだよ…」

符は自然と宙に浮かび、それぞれがヘリコプターの形を取る。

真々田を中心に、空中で陣をとったその編隊は、合図と共に一斉に敵に向かって襲い掛かった。

真々田「ま、蜘蛛に言っても無駄かな」

轟音と舞い散る札を背景に、真々田は一人呟いた。

以上となります。それではまた。

こんばんわ、1です。
大変遅くなりました、続きを投下します。

(とあるビル)

上条、土御門、詠矢の三人は薄暗い階段を駆け上がっていた。

詠矢「んじゃあ、段取り通り頼むぜ」

土御門「わかってるぜい」

上条「ああ、まかせとけって!」

程なくして、踊り場の先に扉が見える。

上条「あれか!」

土御門「このビルの構造からして、あそこで間違いないな」

詠矢「よし…」

立ち止まった詠矢は、土御門に目線を送ると、上条を伴って壁際に隠れる。。

土御門「…」

小さくうなづいた土御門は扉を背に立つ。

ドアのノブに手を慎重に手をかけると、土御門はおもむろにそれを引いた。

劉「はっ!」

わずかに開いた隙間を狙って、劉は術を投擲する。

小刀に貫かれた札は、階段の踊り場まで到達すると、壁に激突して炸裂した。

劉「ちっ…避けたか!」

土御門「突っ込むぜい!」

先陣を切る土御門を追って、詠矢と上条も部屋へなだれ込む。

中に人物が二人、正面に女性、奥に男性、更にその周辺には敷き詰められた魔方陣。

そして、その魔方陣の中心には、突き立てられた剣があった。

詠矢「(よし、状況はほぼ予想通り。敵は2名。ここが魔術の発動場所であることは間違いない)」

詠矢「(そして、その中心にある剣。恐らくは最重要アイテムだ。あれを抑えれば…!)」

詠矢「上条サン!」

上条「おう!」

正面に居る劉を突破し、奥へ向う上条。

劉「させるか!」

当然のごとく、立ちはだかる劉。

詠矢「どおっせい!」

割り込んだ詠矢の拳が劉の顔面に飛ぶ。劉はそれをそのまま掌で受け止める。

劉「ぐっ…!」

思いもよらない強い拳に、劉の口から思わず声が漏れた。

土御門「ふっ!」

続けざまに、土御門が劉の脇腹を狙って蹴りを放つ。

劉はそれを冷静に捌くと、掴んでいた詠矢の拳を放し、飛びのいて二人から距離をとる。

詠矢「(よし、なんとかいけそうだ)」

詠矢「(術が主体で、体術に長けていない陰陽師は、上条サン一人で対処できるはず)」

詠矢「(それに、力を集めている術を解除し、剣を奪取する役割としてあの右手の力は最適だ)」

詠矢「(あとは、俺たち二人でコイツを抑える!)」

劉「…」

劉は体勢を整えると、あらためて対峙する二人の姿を見る。

劉「若いわね。学園側の人間であることはわかるけど、何者なの?」

詠矢「通りすがりの高校生だよ」

土御門「右に同じだぜい」

劉「ふざけないでもらいたいわね。ただの高校生に、私たちが止められてると思うの?」

土御門「これがまあ、ただのって訳でもねえんだな」

詠矢「そうさね。それなりに勝算があってここにいる」

詠矢「それにさ、呪術組織の工作員と対決する、訳アリ高校生三人組」

詠矢「悪くないシュチュエーションだと思いませんか?」

劉「戯言を!」

叫ぶと同時に、劉は式札を投げそこに剣を投擲する。

詠矢「うおっ!」

目の前に迫る刃を詠矢は体を反らしてどうにか避ける。

だが、その到達地点には土御門がいる。

土御門「ぐっ!!」

すでに式札を準備していた土御門、それを眼前にかざす。

投擲物はそこに衝突し、爆炎を上げた。

土御門「があっ!!」

防御の術が不十分だった。土御門の体は衝撃と熱に晒される。

詠矢「土御門サン!!」

土御門「大丈夫だ!!」

土御門「(反動の方が、キツイぐらいだがな…)」

術の使用による過負荷で、体の内部もダメージが発生する。

唇から伝ってくる血を、土御門は静かにぬぐった。

劉「人の心配をしている場合か?」

目線の逸れた詠矢の顔面に、劉の回し蹴りが飛んでくる。

詠矢「っと!」

慌てて頭を下げ、詠矢はこれを回避する。

劉「ふっ!」

すぐさま体勢を立て直し、劉は詠矢の胴体に向かって掌底を打ち上げる。

詠矢「なんのっ!」

腕を体の前で交差し、詠矢はその攻撃を防御する。

土御門「ヨメやん!受けるな!」

その忠告には反応できなかった。攻撃を受けた詠矢の体は、じわりと浮き上がる。

衝撃が、詠矢の腕と腹筋を貫通して内蔵に到達した。

詠矢「…なっ!がっ…はぁ!!」

胃を捻り上げられるような痛みに、詠矢はしばらく地面を転げまわった。

詠矢「くっ…そ…何だよ今のは!」

土御門「発頸ってやつだ。体の内部にダメージを送り込んでくる」

駆け寄った土御門が、詠矢の体を起こしながら説明した。

詠矢「なるほどねえ。なかなかそれっぽいじゃねえの。さすがは中国人」

土御門「感心してる場合じゃ、なさそうだぜ!」

劉は既に次の準備を終えていた。再び札が飛来し、炸裂した。

ほぼ、同時に飛びのき、二人をこれを回避する。

詠矢「(よし、これでいい。こちらに集中してくれれば助かる)」

詠矢「(さあて、後はタイミングを計らないとな…)」

(とあるビル 部屋の奥)

上条「あんたが蕪木か」

蕪木「…」

剣を背にたつ蕪木。上条はそれと対峙していた。問いかけに答える気配は無い。

上条「てめえらが何をしようとしてるのかは知るらねえ」

上条「だが、そいつは打ち砕かせてもらう。今、ここでな!」

右手を突き出し、上条は強い意志を込めて蕪木を睨み付けた。

蕪木「…」

それでも蕪木は答えない。

上条「黙ってるんだったら、こっちから行かせてもらうぜ!」

上条が踏み出した瞬間、蕪木は動いた。

何処からとも無く札が舞うと、数体の土蜘蛛に変化する。

上条「コイツは、さっきの…」

その姿を認識しても上条の足が止まることはない。

上条「俺には、通じねえ!」

確信を持った拳が、現れた魔物に突き刺さる。その一撃は、巨大な蜘蛛を一瞬で札に戻した。

蕪木「…」

次々と放たれる式神。だがそれらはことごとく上条の右手によって打ち払われていく。

舞い落ちる札の間を走りぬけ、剣へと走る上条。

当然のごとく、蕪木が立ちはだかる。

上条「どっけえぇぇえ!!」

慣性の乗った上条の拳が、蕪木の顔面に躊躇無く炸裂する。

勢い良く吹っ飛ばされた蕪木の体は、壁に叩き付けられ崩れ落ちた。

倒した相手には一瞥もくれず、上条は剣に手をのばす。

上条「…!!(キュイーン)」

上条は剣の柄に手をかけ、一気に引き抜く。

直後、部屋の空気が変わった。

知識の無いものでも、ここで行われていた『何か』停止したことは肌で感じられた。

上条「これで…いい、のか?」

空気を確認した一瞬の隙を突かれた。数体の土蜘蛛が吐いた糸が、上条の体を縛り上げる。

上条「がっ、しまっ…た!!」

剣を掴んだままの右手では、上手く糸を消すことが出来ない。左手の自由が利かず、持ち替えることも出来ない。

上条「くそっ…この!!」

もがく上条。だが抜け出せる気配も無い。

少し離れた距離から、詠矢はその様子を見ていた。

詠矢「(よし、今だ!)」

詠矢「土御門サン、ここは頼む」

土御門「ああ、行ってくれ!」

走る詠矢。当然のごとく、劉が立ちふさがろうとするが。

劉「させるか…なっ!!」

腰にしがみついた土御門が、劉の体を引きずり戻した。

劉「は、離せっ!」

劉は、腰の位置にある土御門の頭に何度も肘を落とす。

だが、土御門も簡単には離れない。

詠矢「(土御門サン、しばらく頼むぜ…)」

その姿を横目で見ながら、詠矢は走る。

程なくして、上条の姿が近づいてくる。

詠矢「上条サン、こっちだ!!」

詠矢は走りながら手を伸ばす。

上条「詠矢、頼む!」

上条は、剣を詠矢に向って投げる。

詠矢「よいしょっと!、とと…」

詠矢は投げられた剣の柄を掴むと、取り落としそうになりながらもそのまま走り抜ける。

やがて、窓際に到達した。

劉「離せと…言っている!!」

劉は札を一枚取り出すと、今だしがみついている土御門の顔面で炸裂させた。

土御門「ぐあぁぁあっ!!…っく…」

さしもの土御門も、そこで崩れ落ちた。

詠矢「土御門サン!!」

詠矢「(くそっ…なんとかしねえと…)」

詠矢は、開け放たれた窓から顔を出し、階下を覗き込む。今居るのは3階、かなりの高さはある。

詠矢「(…よし)」

窓の外を確認した詠矢は、何かを確信していた。

そこに劉の姿が迫る。

劉「逃がしはしない!」

詠矢「いや、逃げるね!」

詠矢は、開け放たれた窓をけり、その体を中に躍らせた。

劉「なっ!」

無事で済む高さではない、躊躇無く飛び降りた詠矢の姿に、劉は自分の目を疑った。

だが、さらにそれを上回る光景が劉の目に飛び込んでくる。

詠矢の姿が、剣とともに空中で掻き消えたのだ。

劉「…なんだと?」

窓から身を乗り出して外を確認する劉。

結標「まったく、朝から調子悪いってのに無茶させるわね」

詠矢「いやいや、流石レベル4。タイミングばっちりだったぜ」

階下、つまりはビルの裏手の道路に、詠矢と結標が立っていた。

劉「あれは…あの時の転移能力者!」

仕掛けとしては単純だ。ビルの構造を調べ、窓側に結標を待機させておき、三人のうち誰かの姿が見えたら転移で地上に
降ろす。それだけだ。

詠矢「んじゃ結標サン、こいつを頼むぜ」

詠矢は奪取してきた剣を結標に手渡す。

結標「これを持って逃げればいいのよ…ね?」

詠矢「あっと、自己転移は苦手だっけか。悪いけど頑張ってくれよ」

結標「しょうがないわね、まったく」

結標「…(シュン)」

しばし集中した後、結標の姿は掻き消えた。

劉「…」

その様子を冷たい目で見つめる劉。一呼吸置いて、再び室内に目線を移す。

上条「土御門!大丈夫か!」

土御門「う…ぎっ…」

術の攻撃を受けた土御門のダメージは大きい。彼の能力を持ってしても回復には時間がかかるだろう。

何とか糸を振りほどき、傍に駆けつけた上条は必死に話しかけていた。

劉「…」

劉はその様子を、表情を映さない目で見つめる。

その目線に気付いた上条は、土御門を抱き起こしながら劉に強い視線を向けた。

上条「詠矢は上手くやったみたいだな。俺たちの勝ちだ。もしかして、まだ何かするつもりなのか?」

その言葉を受けても、劉の表情は変わらない。しばし上条の目線を受けた後、ぼそりと呟いた。

劉「優秀ね、あなたたちは。思ってたよりずっと」

劉「こうも見事にやられるとはね…」

上条「負けを認めるなら、とっとと自分の国に帰れよ!」

劉「それは出来ないわ」

劉「まだ、ここでやるべきことが残っているもの」

上条「…なんだって?」

直後、物音に気づいて上条は振り返る。

壁に叩きつけられた蕪木の体がずるりと起き上がる。

上条「まだ動けるのか…って…なっ!?」

立ち上がった蕪木の顔を見て、上条は驚愕した。

顔が崩れかかっている。拳が当たった所から、皮膚が札に変わり次々と剥がれ落ちている。

やがて人の姿は完全に崩れ、紙の束が山となって積みあがった。

上条「コイツは…偽者!?」

劉「あの剣は大事に持っておきなさい」

劉「後で必ず必要になるわ…」

劉はそう言い放つと、札を足元に展開し『門』を開く。

その体が徐々に地面に飲み込まれていく。

上条「あっ、待てっ!」

追おうとするよりも早く、劉の姿は完全に消失した。

上条「逃げたって、どこへ…」

しばし考える上条。相手が最後に放った言葉が気にかかる。

上条「(必要になる…。相手ならともかく、俺たちに必要…?)」

上条「(…まさか)」

詠矢「っと…状況は落ち着いたかね?」

落下した位置から詠矢が戻ってくる。部屋に敵がいないことを確認し、上条に声をかけた。

上条「…」

詠矢「どしたね、上条サン。どっか怪我したか?」

上条「…インデックス」

詠矢「はい?」

上条「インデックスが危ない!」

(とあるビル 空き地)

真々田「これで最後…だね」

クシャトリヤと背中合わせで立つ真々田は、目の前の土蜘蛛に術を直接打ち込み、その姿を消し飛ばした。

クシャトリヤ「そのようですね」

少女は、札が散乱した周囲を確認したあと、あくまで冷静に言葉を返す。

真々田「まあ、順当なところかな」

真々田「彼らのほうが上手くいってくれてると、いいんだがね」

真々田がビルを見上げようとした瞬間、彼の感覚に何かが飛び込んできた。

真々田「ん?」

クシャトリヤ「どうしました、マスター」

真々田「いや、気配が…ね」

クシャトリヤ「…」

真々田「なるほど。存在ごと、偽装したのか」

真々田「ははっ…なるほど」

真々田「僕を出し抜くとは、やるじゃないか、蕪木君!」

突如笑い出す真々田。

クシャトリヤ「あの…マスター、何を…」

真々田「戻ろうかクシャトリヤ」

真々田「準備が必要なようだ。いろいろとね」

クシャトリヤ「わかりました」

何が行われるかは理解できなかったが、忠実な傀儡は素直に答えた。

(とあるファミレス)

店員「ありがとうございましたー」

ステイル「はい、ご馳走様」

インデックス「おいしかったんだよ!」

会計を済ませた二人は、店を後にし、ホテルに向かって歩みを進めていた。

インデックス「…」

歩きながらも押し黙るインデックス。その姿に、ステイルは思わず声をかけた。

ステイル「どうしたんだい、まだ考えているのかい?」

インデックス「うーん…」

ステイル「気になるのはわかるけどね。今回の件に関しては、僕たちがこれ以上考えても仕方ないだろう」

インデックス「そうなんだけと…やっぱりおかしいんだよ」

ステイル「何がだい?」

インデックス「力を集める器となっているのは、剣だと思うんだよ」

インデックス「金属には、高い魔翌力を吸着できるものがあんだよ。たとえば…」

ステイル「それって、まさかあれのことかい?」

インデックス「たぶんそうなんだよ。考えたくないことだけど…」

インデックス「でもそうだとしたら、どうして剣であるのかがわからないんだよ」

ステイル「なるほど。金属の特性を利用するなら、わざわざ扱いにくい剣の形にする必要はないわけだ」

インデックス「そうなんだよ。単純に魔翌力を集めて持ち帰りたいだけだなら、金属の塊でいいはずなんだよ」

インデックス「剣の形であることに、何か別の意味があるような気がするんだよ」

ステイル「別の、意味…か」

インデックス「!」

ステイル「!」

突然、肌がざわつくような気配を感じる二人。

直後、二人の視界に見覚えの無い人物が写った。

ステイル「君は…誰だね」

蕪木「今更名乗る必要も無いと思うが、まあいいだろう」

蕪木「私は陰陽師の蕪木というものだ」

蕪木「ホテルで君たちの姿をを確認してから、動向は追跡させてもらっていた」

ステイル「どういうつもりだ。僕たちが誰だかわかっているのか?」

インデックスを背中にかばいながら、ステイルは蕪木に対峙する。

蕪木「ああ、もちろんわかっている」

蕪木「魔術界の重要人物であり、この街との関わりも深い」

蕪木「交渉材料としては、最適な人物だよ」

すでに臨戦態勢の蕪木の視線は、インデックスにのみ向けられていた。

以上となります。
それではまた。

こんばんわ、1です。
大変お待たせしました。続きが書きあがりましたので投下します。

(とあるビル)

詠矢「おいおい、何でここでインデックスサンの名前が出てくるんだ?」

突如上条の口から発せられた言葉に、詠矢は当然の疑問を返した。

上条「詠矢、あれを見てくれ」

上条は先ほど出来たばかりの紙の山を指す。

促されるまま詠矢はその近くまで寄り、紙の一部を手にとって確認する。

詠矢「コイツは…呪符?」

上条「さっきまでここに居た蕪木は、その呪符で作ったニセモノだった」

上条「俺たちが入ってきたときにはもう既に、ここには居なかったことになる」

詠矢「なるほど。ということは…」

詠矢が思考に入ろうとした瞬間、それを遮るように、何処かで爆音が響いた。

詠矢「なっ!」

上条「えっ!」

音に反応して窓の外を確認する上条と詠矢。そこには、黒い煙がもうもうと立ち上っていた。

詠矢「こりゃあ、考える必要は無くなったな」

上条「すぐにい…あ…!!」

立ち上がろうとした上条は、自分が土御門を抱え上げていることを思い出した。

上条「ああ、先に手当てしねえと」

詠矢「…」

詠矢は、土御門の傷を確認しながらしばし考える。

詠矢「いや、土御門サン、悪いけどここで休んでてくれるか?」

上条「詠矢、どういうことだそれは!」

土御門「い…や、流石ヨメやんだ。言うとおりだぜい…」

激痛に軋む体どうにか動かし、土御門は答えた。

土御門「大丈夫…だ。俺の傷は…そのうち…治る…。助けも呼べる…。それより…」

土御門「今奴らを追えるのは…お前たちだけ…だ…」

土御門「だから…い…け…がっ!」

そこまで話すのが限界だった。気は失っていないものの、土御門の体からは力が抜ける。

上条「土御門!」

詠矢「行こう、上条サン。土御門サンの言葉に答えねえと」

上条「…」

上条は抱えていた土御門の体を静かに地面に下ろした。

上条「…わかった。行こう」

詠矢「うし、じゃあ急ぐぜ」

上条「ああ…」

二人はもう一度土御門を見ると、別れの言葉も無く立ち去っる。

その背中を見送った土御門は、満足げに笑いながら意識を手放した。

(とあるファミレス 周辺の歩道)

ステイル「ぐっ…!」

大柄な魔術師はすでに地に伏したまま目の前の男を睨みつけた。

蕪木「そこまでだな」

倒れているステイルを見下ろす蕪木。その表情にはまだ余裕があった。

散乱したガラスに吹き飛ばされた街路樹。巻き込まれた通行人があちこちに倒れている。

そこはすでに争いの後。魔術がぶつかり合った惨状が展開されていた。

ステイル「きっ…貴様…!」

蕪木「機能特化することは悪いことではないがね。対策も取られやすい」

蕪木「それに、術式の妨害や抑制に関しては、こちらが一日の長だったようだな」

ステイル「くそっ…なぜ…この僕が…!」

上体を起こしながら、ステイルは床に落ちているルーンのカードを手に取る。

ステイル「灰は灰に…」

ステイル「塵は塵に…」

ステイル「吸血鬼殺しの…!」

散乱したガラス片の隙間を縫うように、炎の剣が生成される。

が、詠唱が終了する前に、形を成さずしてそれは消滅した。

ステイル「何故だ!どうして術式が…」

蕪木「学習能力が無いようだから説明しおいてやろう」

蕪木「すでにこの一帯には炎と熱を抑制する呪禁を施してある」

蕪木「お前の術は一割も効果を発揮しない」

ステイル「なんだ…と…がっはあっ!!」

起き上がりかけていたステイルの背中を、パンプスが踏みつけた。

劉「そろそろ諦めてもらえないかしら。命まではとらないわ」

既に合流していた劉が、ステイルに執拗な攻撃を加える。

その腕には既に、気を失ったインデックスが抱えられていた。

ステイル「インデックス!!インデックス!!」

インデックス「…」

ステイルの叫びにインデックスは答えない。

劉の腕に抱えられたまま、力なくうなだれるだけだ。

ステイル「彼女をどうするつもりだ!」

劉「この子には交換条件となってもらうわ」

劉「あの剣は、私たちにはどうしても必要なものなの」

ステイル「一体…何の話だ…」

劉「知りたければ、この子のお友達に聞いてみるといいわ」

そう告げると、劉は蕪木の傍まで移動する。

蕪木「では、失礼するよ。君とはまた会うことになるだろう」

蕪木「彼女の件は、ご友人たちによろしく伝えてくれたまえ」

話しながら、蕪木は『門』と呼ばれる転移用の札を展開する。

術が効果を発揮し始めたとき、二つの足音が急ぎ近づいてきた。

上条「ステイル!大丈夫か!」

詠矢「こりゃまた、ひでえな、手加減無しかよ」

走りこんだ勢いのまま、ステイルの傍に駆け寄る上条。

近づきながら周囲の状況を確認する詠矢。

詠矢「インデックスサン!」

先に気づいたのは詠矢だった。術により沈み始めている二人と、その腕に抱えられた少女。

上条「…!お前ら、インデックスに何を!」

敵の姿を確認すると、上条は弾かれたように走る。

詠矢「上条サン!奴ら逃げるつもりだ!地面で発動してる術を消してくれ!」

上条「わかった!」

上条は足を止めないまま、詠矢の指示通り地面に右手を伸ばす。それが術の外周に触れようとした、瞬間。

女の足が上条の胸元を蹴り飛ばした。

上条「がっ!!」

沈みかけた足を引き抜き、体勢の整わない不完全な攻撃だったが、上条を退け、時間を稼ぐには十分だった。

劉「そうあせらなくても、また後で会えるわ…じゃあね」

その言葉を最後に、二人とインデックスは地面へ、術の向こうに消えていった。

上条「く…っそ。間に合わなかったか…」

詠矢「残念ながら、そうみたいだな」

詠矢「土御門サンを置いてまで来たってのに…」

ステイル「う…ぐっ…」

身をよじり、どうにか上体を起こしたステイルが声を上げた。

上条「ステイル!」

ステイル「僕が…付いていながら、何たることだ。インデックスを連れ去られるとは…」

詠矢「いや、これは俺の…俺たちの読みが甘かった」

詠矢「まさか奴らがインデックスサンたちを目標にしていたとは考えもしなかった」

詠矢「上条サンにその可能性を提示されていたのにも関わらず、だ」

詠矢「くそっ!」

珍しく感情をあらわにした詠矢は、近くにある柱に拳を打ち付ける。

上条「詠矢、済んだことを悔やんでも仕方ねえ」

上条「今俺たちに出来ることを考えねえと」

詠矢「…」

詠矢「…そうだな」

詠矢「まずは…ステイルサンの手当てだ。予定通り集合場所に移動するか」

上条「ああ、わかった」

(模型店 形屋)

上条「よっ…と」

上条が肩を貸し、大柄なステイルの体を支えながら三人は店に入ってくる。

ステイル「ここは…?」

詠矢「協力してくれてる人の店だよ」

詠矢「多分、今一番安全な場所だ」

ステイル「そうなの…か?」

エンジェラン「いらっしゃいませ」

上条「えっと…真々田さんはどこに…」

エンジェラン「あいにく主は不在です」

詠矢「不在って、この状況でどこ行ったんですか?」

エンジェラン「申し訳ありません。詳細に関してはわたくしにも分かりません」

エンジェラン「ただ、皆様のお手伝いは十分にするようにと聞いております」

エンジェラン「何なりと申しつけ下さい」

上条「そっか、じゃあまずはこの人の手当を頼むよ」

エンジェラン「かしこまりました」

エンジェラン「では、こちらに」

女性は三人を連れて、奥の部屋へ向かう。その直後。

ステイル「なんだ…これは…」

何かに気づき、ステイルは立ち止まる。

思わず向けた目線の先には、とある部屋の一角に鎮座する一振りの剣があった。

詠矢「ああ、コイツは敵が持ってた剣さ」

詠矢「さっき事情を説明したときに話したっけかな?」

詠矢「学園に干渉してる術を止めるために、奴らから奪ってきた」

詠矢「んで、回収担当の人にここに届けてもらったのさ」

ステイル「なるほど、これがそうか」

じっと剣を見つめるステイル。その表情に徐々に厳しさが増す。

そしてその手が自然に柄に伸びた。

ステイル「なんという魔翌力…」

ステイル「やはり、インデックスが考えたとおりだ」

ステイル「この剣は、『サクリファイス・ソリッド』君たちの言葉で言うと『仁鉄(ジンテツ)』だ」

上条「仁鉄って、なんだよそれ」

ステイル「『仁』の字は、『人』置き換えに過ぎない」

ステイル「つまり人から、人間の血液と内臓を精製して作られた鉄のことだよ」

詠矢「…おいおい、ちょっと待ってくれよ」

詠矢「人体に含まれてる鉄分なんて、多くて5グラムぐらいだろう?」

ステイル「ああ。精製される過程で、実際に採取できる量はもっと少なくなる」

上条「ってことは…じゃあ」

上条「この剣の重さが、そのまま人の命の数ってことかよ!」

ステイル「そう考えて間違いは無いだろう」

詠矢「…とんでもなく胸糞悪い代物だな」

ステイル「僕も現物を見るのは初めてだ」

ステイル「だがこれで彼らの目的がわかったよ」

ステイル「この金属には極めて高い魔翌力の吸収能力がある」

ステイル「既にこの中には膨大な力が蓄積されている」

ステイル「これを使って彼らは、自らの呪術的な不利を一気に覆すつもりだ」

詠矢「コイツさえあれば、どんな魔術も思いのままって訳か」

上条「でもこれは、学園の能力者から集めた力だろう」

上条「そんなもん、単なる泥棒じゃねえか!」

詠矢「中国が泥棒なのは今に始まったことじゃねえさ」

ステイル「ああ、それは僕も同意するよ」

ステイル「本来なら、彼らには絶対に渡してはいけないものだ」

上条「だが、奴らはそれを取り返すためにインデックスをさらった」

詠矢「間違いなく人質交換を要求してくるだろうな」

詠矢「残念ながら、相手の居場所が分からない以上、こっちから動きようがねえ」

上条「待つしかねえってことか…」

詠矢「ああ…」

眼鏡を外した詠矢は、目頭を押さえつつ壁にもたれかかった。

詠矢「(完全に後手に回っちまったな)」

詠矢「(この状況、どう切り返すか…)」

上条「詠矢…どした?」

詠矢「ん、いや…ちょっと考える…わ」

詠矢「答えは出せないにしても、今出来ることは準備しとかねえとな」

上条「すまねえ、詠矢。なんか、そういうのいつも押し付けちまってる」

詠矢「ん?いや、いいさ。俺はそういう役回りだしね」

詠矢「お二人さんはしばらく休んどいてくれ」

詠矢「特にステイルサンは、手当てを」

ステイル「わかった」

エンジェランに促され、ステイルは奥の部屋に移動する。

しばし目を閉じ、詠矢はじっと考える。

上条「…」

上条はその姿を見ながら、静かに待つ。

詠矢「…よし」

体を壁から離すと、詠矢は眼鏡をかけなおし、上条へと向き直る。

上条「どうだ?」

詠矢「対策とはとても呼べねえが、今やっとくべきことは考えた」

詠矢「上条サン、連絡を頼めるかい?」

(とあるビル)

学園都市の片隅にある廃ビル。周囲に漂う雰囲気は、最新鋭の都市が持つそれとは大きく乖離していた。

既に暗い室内には人物が3人。

術の調整を行う蕪木。その少し離れた場所に劉。

そして劉のすぐ傍に、縛り上げられたインデックスがいる。

インデックス「…」

劉「…」

座したまま、睨みつけるように劉を見上げるインデックス。

その視線を向けられても、劉の表情が変わることがなかった。

インデックス「何が…何が目的なんだよ!」

劉「こたえる義務は無いわね」

インデックス「わかってるんだよ」

インデックス「器に力を集めて、何につかうつもりなの!」

劉「さすが十万三千冊の知識ね。そこまでもう考えが及んでいるとは…驚きだわ」

インデックス「そんな言葉はいらないんだよ!」

インデックス「何をするつもりか、答えて欲しいんだよ!」

劉「何度聞かれても答えは同じよ」

インデックス「…」

インデックス「ダメなんだよ」

劉「…?」

インデックス「きっと、みんなが助けに来てくれる」

インデックス「とうまも、ステイルも、みことも」

インデックス「それに今はそらきもいる」

インデックス「あなたたちの思う通りには、絶対ならないんだよ!!」

何か彼女の琴線に触れたのだろうか、語気を荒げるインデックスに、劉の表情が少し動いた。

劉「…仲間なのね」

インデックス「みんな大切な友達なんだよ!」

劉「そう…」

劉は呟くと、腰を落として目線をインデックスと合わせる。

劉「仲間は自分を見捨てない、そう信じてるのね?」

インデックス「そうなんだよ、絶対信じてるんだよ!!」

劉「なるほどね…でも」

劉「見捨てられないから、仲間って言うのは、辛いのよ?」

インデックス「え…?」

劉「そうね、その意気に敬意を表して、一つだけヒントをあげましょうか」

劉「道教の最終目的って、何かわかる?」

インデックス「え…道教?あっ!」

インデックス「それで器を剣の形に!」

蕪木「劉君、準備が終わったぞ」

劉「了解したわ」

劉「じゃあ、ここまでね。もう一度眠ってもらうわ」

劉は小型のアンプルを取り出すと、それをインデックスの首筋にあてがった。

インデックス「まって、あっ!」

薬品が投与されると、インデックスは即座に意識を失った。

蕪木「目録と何を話していた?」

劉「いえ、何も。たわいも無いことよ」

蕪木「そうか、ならいいが」

蕪木「では、行こう。既に彼らは既に使いを出している」

蕪木「先回りして舞台を整えておかないとな」

劉「ええ、わかっているわ」

劉はインデックスの体を抱えあげると、蕪木と共にビルを後にした。

以上となります。それではまた。

こんばんわ、1です。
申し訳ありません。昨日は投下できませんでした。
今から書きあがった分を投下させて頂きます。

(とあるビル 空き地)

上条「まさかさっきと同じ場所とはな」

そこは先ほど戦闘が繰り広げられた場所、札の残骸が大量に残るビルの前の空き地だった。

蕪木「説明の必要も無いだろう。合理性を重視したまでだ」

ビルを背にした蕪木は、淡々とした口調で答えた。

劉「…」

蕪木の傍に静かに立つ劉。その腕には、人質となった人物が抱えられていた。

ステイル「インデックス!」

上条の少し後ろに立つステイルが叫んだ。

だが、当の人物はその声に反応することは無い。

ステイル「貴様ら、インデックスに何をした!」

蕪木「元気なお嬢さんでね。取引の邪魔になりそうなので、少し眠ってもらった」

ステイル「くっ!」

インデックスの事は心配だが、下手に手を出すわけにも行かない。ステイルは奥歯を噛む。

詠矢「しかし、よく俺たちの居場所がわかったな」

蕪木たちと対峙する形で、広場のほぼ中央に位置する三人。

ステイルと同じく、上条の少し後ろに立つ詠矢がおもむろに口を開いた。

蕪木「お前たちが真々田とつながりがあることはわかっていた」

蕪木「奴の店に使いを出せば、何らかの形で伝わるだろうと思ってな」

詠矢「なるほど。まあ、妥当かつ合理的な対処かですかねえ」

詠矢たち三人は、突如店に来た式神にここに呼び出されていた。

敵が待ち伏せる場所にわざわざ出向くことなど、当然避けるべきことだが、今の彼らに選択肢は無かった。

劉「約束のものは?」

上条「ここに、あるぜ」

問われると、上条は包んでいた布を剥ぎ取り、剣を取り出す。

上条はそれを右で手掴んで掲げる。

蕪木「…本物のようだな」

上条「ニセモノなんて用意するひみ、あるわけねえだろ」

劉「そうね。その剣がはらむ力は、見れば自然とわかるもの」

劉「そもそも、複製品を作ることが不可能だわ」

上条「とんでもねえもん作りやがって…」

あくまで冷静に語る二人を、上条は睨み付けた。

蕪木「その剣の正体に気づいたか」

蕪木「何事も、本当に極める場合は、禁忌に触れる必要があるものだ」

蕪木「失われていた技術を、今の中国の体制が復活させたのだ」

蕪木「ある意味奇跡と言っていいだろう」

上条「てめえ…人の命を何だと思ってやがる!」

詠矢「まあまあ、上条サン、こういう人たちに何を言っても無駄さ」

激昂する上条を詠矢が制する。

詠矢「俺たちは取引しに来たんだ。お互いクールにやりましょうや」

蕪木「そうだな。目的ははっきりしているわけだ。手早く済ませよう」

詠矢「んじゃあ、段取りを決めさせてもらうぜ」

詠矢「双方の代表者が一名、お互いの中間点まで歩いて取引を行う」

詠矢「剣とインデックスサンを、同時に交換する」

詠矢「そんな感じでどうだ?」

蕪木「…いいだろう」

詠矢「んじゃ、上条サン頼むぜ?」

上条「わかった」

剣を持った上条の肩を、詠矢は軽く叩く。

蕪木「では劉君、よろしく頼む」

劉「ええ」

真正面に向き合う上条と劉。

上条「じゃあ、行くぜ」

劉「いつでもどうぞ」

まず上条が一歩を踏み出す。そしてそれに呼応するように劉も進む。

お互いの距離は、まるで一本の線をなぞっているかのようにぶれず、確実に縮まっていく。

やがて、その距離はほぼ無くなり、両者は目の前に対峙する。

上条「…インデックスを放せ」

劉「そちらの剣と同時よ。地面に置いて」

上条はゆっくりと腰を下ろし、剣を地面に置く。

タイミングを合わせ、劉もインデックスを下ろす。

劉「では、交換ね」

上条「…ああ」

お互いの位置を少し入れ替え、劉は剣に、上条はインデックスに手を伸ばした、直後。

蕪木が動いた。指先で小さく印を組む。

離れて立つ詠矢とステイル。その背後の地面がじわりと動く。

散乱していた札が、突如として集まりだした。

詠矢「なっ!」

ステイル「なにっ!!」

背後からの咆哮に振り返る。そこには、竜の姿をした二体の式神が現れていた。

見上げるほどの大きさのそれは、再び咆哮し二人を威嚇する。

上条「えっ!?」

反射的に上条も振り返る。

劉は、その瞬間を逃さなかった。

右手で素早く剣を回収すると、左腕で地面に置いたばかりのインデックスを抱えあげる。

上条「しまっ…た!」

劉「彼女は我々にとっても有用な人物…。みすみす返す手はないわ」

劉はそう言うと後ろに飛びのき、ほぼ蕪木と並んだ位置に立った。

上条「…」

詠矢「…」

ステイル「…」

二人と二体の式神にはさまれた格好の三人は、共に押し黙る。

蕪木「どうやら、最後の笑うのは我々のようだな」

蕪木「そいつらは土蜘蛛と違って少々手ごわいぞ」

その言葉に続いて、竜の式神は長い体をもたげる。

広く裂けた口を開き、今にも襲い掛からんばかりに鋭い牙を光らせた。

蕪木「先に言っておくが、この一体にも炎を封じる呪禁を設置してある」

蕪木「その魔術師は役に立たんぞ」

蕪木「どう考えてもお前らに勝ち目は無い」

劉「このまま立ち去るか、それとも負ける戦いを挑むか」

劉「どちらか選びなさい」

上条「…」

詠矢「…」

ステイル「…」

三人は黙ったまま、何かを確認するように目線を動かす。

蕪木「なんだ…?」

蕪木「何を見ている?」

詠矢「…はっ」

詠矢「やっぱ、雑だねえ」

蕪木「何だと?」

蕪木が言い終わる前に、大量の雷が空中から飛来する。

自然現象としてはありえない、細くしなる雷は細かく拡散し周囲の地面をなめ尽くしていく。

劉「なに!?」

蕪木「何だこれは!!」

劉と蕪木が状況を把握する前に、事態は次の段階へ進む。

劉「んっ…!!」

劉が右手に持っていた剣が、突然引っ張りあげられる。

その力はすさまじく、劉の足は地面から離れ、空中に吊り上げられた。

劉「ぐっ…あ…」

御坂「やっぱりあたしがいなきゃダメね!」

突如背後から聞こえた少女の声に、劉は振り返った。

そこには、磁力によってビルの壁に張り付いた御坂美琴がいた。

御坂「インデックスを…離しなさい!」

御坂は、自らの力で引き上げている剣に向け雷撃を放った。

劉「がっ!!」

通電により全身が硬直する劉。保持しきれなくなったインデックスの体はそのまま落下する。

上条「あ、っぶねえ!」

上条は素早く落下地点に移動し、インデックスを受け止めた。

詠矢「よしよし、段取りどおりだね」

蕪木「きっさまぁあああ!!」

蕪木は即座に術を組み、式札を御坂へと飛ばす。

御坂「はっ!」

壁を蹴り、その攻撃を回避した御坂は、詠矢の傍に着地する。

ほぼ同じタイミングで、インデックスを背負った上条が合流した。

ステイル「あとは、こいつらの処理だね」

ステイルは、今だ威嚇を解かない竜に向き直った。

おもむろに、懐からルーンのカードを取り出す。

ステイル「灰は灰に…」

ステイル「塵は塵に…」

蕪木「はっ!無駄なこと…」

詠唱と共にステイルの足元から鋭い炎が立ち上がる。

蕪木「なにっ!!」

ステイル「僕が魔術を特化させているのは、その力を最大限に高めるためだ」

ステイル「つまり、単純な威力の面では、君たちの様な器用貧乏を圧倒することが出来る」

ステイル「今それを証明してあげよう」

ステイル「…吸血殺しの、紅十字!!」

立ち上がった炎が剣と化し、式神を真正面から両断する。

それはステイルの言葉通りあっけなく引き裂かれ、燃え上がり、灰となって消えた。

蕪木「…!」

蕪木「な、なぜだ…なぜ術が使える!」

詠矢「んじゃ解説しときましょうか?」

蕪木「…解説だと?」

詠矢「まあ、さっきの雷ですよ」

蕪木「…」

詠矢「ステイルサンを押さえるため、炎を制御する罠を張ってくる事は読めてた」

詠矢「だから、伏兵である御坂サンに目ぼしい場所に雷を落としてもらって」

詠矢「配置してあるはずの札を焼き払ったのさ」

蕪木「…」

ステイル「一度受けた術だ。その構成はおおよそ見当がついたからね」

御坂「まあそういうことね」

そう言った御坂に向かって、残った式神が咆哮と共に襲い掛かる。

御坂「…っさいわねこの紙束!!」

御坂は抜き打ちでレールガンを放つ。その閃光は竜の体を真っ直ぐに貫き、一瞬で消滅させた。

上条「なんだ、手ごわいんじゃなかったのか?」

インデックスをステイルに預け、上条は敵二人に向き直りながら言った。

蕪木「…」

上条「形勢逆転だな」

詠矢「伏兵っていう、同じ方法に二度も引っかかったあんたらの負けさ」

詠矢「高位の魔術師一名、レベル5の能力者一名。んで、厄介な無能力者2名」

詠矢「流石にこのメンバーには勝てないっしょ?」

蕪木「…ぐっ」

完全に状況をひっくり返された蕪木は、唸るしかなかった。

劉「…蕪木さん」

空中から落下し、倒れていた劉が剣を杖に立ち上がる。

蕪木「劉君…どうした?」

劉「あれを…やりましょう」

蕪木「…まさか、あれを今ここでか!?」

劉「ええ。それ以外に、この状況を脱する方法はないでしょう」

蕪木「確かに、そうだが…」

詠矢「(何だ?何の話をしている?)」

詠矢「(まさかまだ奥の手があるのか?)」

劉「迷ってる暇は無いわ。早く!」

劉は、蕪木に向かって剣を突き出す。

蕪木「わかった!仕方あるまい!」

蕪木は、差し出された剣の刀身に一気に術を書き込んだ。

詠矢「ヤバイ、何かするつもりだ!上条サン!」

上条「ああ!」

二人は敵に向かって駆け出す。だがその直後。

剣から形容しがたい、異様な力があふれ出す。

劉「…!!」

劉は、剣を逆手に振り上げると、ためらい無くその切っ先を自分の鳩尾に突き立てた。

ずぶずぶとその刀身が体に埋没していく。

上条「なっ!」

詠矢「何してんだ…」

しばらくうなだれる劉。だがその体はすぐに跳ね上がる。

劉「あ…あぁぁぁあああああ!!!」

悲鳴とも怒号とも突かない絶叫と共に、劉の体から力が放たれる。

それは、巨大な衝撃波を生み出し、接近してくる詠矢と上条を弾き飛ばし、周囲を一気に蹂躙する。

一帯が、天を貫くような轟音に包まれた。

ステイル「うっ…」

瓦礫の隙間から、ステイルが体を起こす。

咄嗟に障壁を張り、インデックスと近くにいた御坂を庇うことには成功した。

が、まだ何が起こったかは把握できていない。

ステイル「これは、何だ…」

まるで爆撃でも受けたかのように周囲は完全に破壊されていた。

地面はめくれ上がり、ビルは外壁を破壊され倒壊寸前の状態でかろうじて立っている。

強大な力が放たれたことは間違いなかった。

御坂「ちょっと…なによこれ」

御坂「当麻は!?詠矢さんは!?どうなったのよ!?」

御坂が周囲を確認してもその姿はない。

変わりにその目に映ったのは一人の女性の姿。

胴体に剣を突き立てたまま立ち尽くす劉。

その全身からは、絶え間なく強い力が放たれていた。

御坂「何よ…あれ」

ステイル「いったい、何が…」

インデックス「仙人…なんだよ」

ステイル「インデックス、気がついたのか!」

御坂「大丈夫なの?」

インデックス「あの人が言ってたんだよ…」

インデックス「道教の最終目的、それは、仙人になること」

御坂「え?」

ステイル「それは…まさか」

インデックス「仁鉄は、元は人の体から生まれた金属」

インデックス「術によって組織を分解し、人の体に戻すことも可能なんだよ…」

御坂「どういうこと?」

インデックス「あの剣を、そこに蓄えられた力ごと取り込むことによって」

インデックス「人に強大な魔翌力を与えることが出来る」

インデックス「その力は、まさに仙人…」

インデックス「私たちの言葉で言えば、聖人…なんだよ」

ステイル「なんだって、それじゃあ彼らの真の目的は」

ステイル「聖人の創造…!」

蕪木「ぐ…ぬ…」

蕪木もまた、別の場所で瓦礫をかき分け立ち上がる。

突如発生した衝撃波を避けることは出来なかったが、物理結界を展開し、どうにかダメージは免れていた。

蕪木「おお…!」

劉の姿を見つけた蕪木は、歓喜の声を上げた。

蕪木「まだ剣を取り込みきれていないか…」

蕪木「だが、この圧倒的な力、仙人と呼ぶにふさわしい」

蕪木「成功のようだな」

蕪木は満足そうににやりと笑う。

劉「…」

劉はゆらりと蕪木に目線を向ける。

蕪木「どうした、劉君」

劉「蕪木さん、ありがとうございます」

蕪木「ん?あ、ああ」

劉「私一人の力では、ここまでたどり着く事は出来ませんでした」

劉「ですが…」

劉「もう、用済みです」

劉の掌が蕪木に向けられる。そこから、一切の予備動作無しに衝撃波が放たれた。

それは蕪木を直撃する。

蕪木「なっ!があっ!」

予想外の攻撃に防御が間に合わない。蕪木の体は吹き飛ばされ地面を転がる。

劉「ここからは、私の時間」

劉「誰にも邪魔はさせない」

何かを呟くと、劉の周囲に五芒星の陣が大量に展開される。

それは、お互いに呼応するように光ると、薄笑みを浮かべる劉の顔を照らし出した。

以上となります。
それではまた。

こんばんわ、1です。
大変遅くなりましたが、続きが書きあがりました。
投下します。

(とある廃墟)

上条「よっ…と!」

廃墟と化したその空間に、また姿を現すものたちがいた。

詠矢「やれやれ、とんでもねえことになったな」

瓦礫から立ち上がる上条と、その背に隠れた詠矢。

詠矢「上条サンの右手で、なんとか直撃は免れたな」

詠矢「流石っちゅうかなんちゅうか」

詠矢「上条サンがいなかった何度死んでたことか」

上条「そいつはお互い様だぜ、詠矢」

瓦礫から完全に抜け出すと、二人は周囲を見回した。

上条「美琴!インデックス!ステイル!どこだ!」

詠矢「…お、あれか?」

詠矢はこちらに近づいてくる人影を見つけた。

御坂「当麻!」

真っ先に駆け寄ってきた御坂が上条の胸に飛び込んだ。

御坂「よかった、無事で…」

上条「ああ、なんとかな」

上条は御坂の肩を抱き返す。

詠矢「皆さんも無事でなにより」

御坂のすぐ後に合流してきたインデックスとステイルを確認すると、詠矢の表情も少し緩む。

詠矢「しっかし、一体何が起こったんだ?」

インデックス「仙人の力なんだよ」

詠矢「仙人?」

インデックスは、自分の想定を詠矢と上条に説明する。

上条「聖人を作るって、そんなこと可能なのか?」

インデックス「人の力では神の加護は得られないんだよ」

インデックス「だから、本当の意味の聖人じゃない。でも…」

インデックス「今のあの人は、それに匹敵するる力を身につけつつあるんだよ」

詠矢「なるほど、ねえ」

詠矢「要するに、奪った力を注入して、超強い人間を作ろうって事か」

詠矢「ん?でも、身につけつつってことは…?」

インデックス「あれなんだよ…」

インデックスは劉に向かって指を差す。それは、彼女の腹部に突き立つ剣を示していた。

インデックス「まだ、剣を取り込みきれていないんだよ」

インデックス「たぶん、仁鉄を吸収するには時間がかかると思うんだよ」

ステイル「あの剣が彼女の体に消えたとき」

ステイル「人造聖人の完成というわけか」

上条「じゃあ逆に言えば」

上条「止めるなら今しかねえってことか…」

とても声が届く距離ではない。だが、上条の言葉に反応したように、劉が向き直る。

劉「甘いわね…」

劉がわずかに念を込めると、見えない何かが高速で上条に到達する。

上条「なっ!がはっ!」

衝撃波が上条の腹に突き刺さる。その体は跳ね上がって地面を転がる。

詠矢「上条サ…がっ!!」

わずかに遅れたタイミングで、詠矢の体も弾き飛ばされ、瓦礫に叩きつけられた。

御坂「当麻!詠矢さん!」

御坂「あっ!」

二人の心配をする余裕も無く、御坂の足元の地面が抉られる。

御坂は慌てて距離をとる。

上条「ぐ…あっ…」

何とか立ち上がる上条、近く飛ばされていた詠矢も同じく立ち上がる。

詠矢「が…はっ、なんか、食らった覚えのある、痛み…だねえ」

詠矢「こいつは、あのときの『発頸』だな」

詠矢「あの防御無視の攻撃を、予備動作無く遠距離に放てるわけか」

詠矢「厄介だが…上条サン!」

上条「どうした詠矢!」

詠矢「多分この攻撃は、体術を魔翌力で増幅したもの…」

詠矢「上条サンの右手が効くはずだ!」

上条「そうか、わかった!」

劉に向かい右手を突き出す上条。詠矢はその後ろに素早く身を隠した。

詠矢「よし、よろしく頼むぜ上条サン」

上条「ああ、まかせとけって!」

詠矢「(さて、とりあえず考える時間は稼げたな)」

詠矢「(相手の力は圧倒的だ。これで完全に力を取り込んだらどうなるか…)」

詠矢「(だが、そう絶望的な状況でもねえ)」

詠矢「(なんせこちらには、まだ十分な戦力がある)」

御坂「当麻に、なにすんのよ!!」

御坂は右手を構え、レールガンを発射する。

ステイル「聖人の創造なんて、見過ごすわけにはいかないな」

ステイル「しかもその力を、あの危険な国が持つことなんて、容認できるわけが無い」

ステイル「君たちの野望は、ここで断ち切らせてもらう!」

ステイルが瞬時に詠唱を行うと、地面から炎の剣が立ち上がる。

ほぼ同時に発せられた二つの攻撃は、劉に向かって放たれた。

劉「…」

だが、それはどちらも届くことは無かった。劉の周囲に配置された無数の陣が、いくつか消滅しその攻撃を吸収した。

御坂「えっ!?」

ステイル「これは…」

ステイル「物理防御結界…しかもこんな大量に!」

劉「残念だけど、あなたたちの攻撃が私に届くことは無いわ」

余裕を見せる劉を、御坂はあらためて睨みつける。

御坂「言ってくれるわね」

御坂「でも、その結界ってのも、いくつか消えちゃったみたいだけど?」

御坂「全く効果が無いって訳でも、なさそうね」

劉「…」

御坂「なら、やれる限りやるだけよ!」

御坂は、周囲の瓦礫から次々と鉄筋を引きずり出し、空中に配置する。

御坂「はっ!」

掛け声と共に、それらを全てレールガンの弾として射出した。

劉に向かって正確に放たれた鉄筋は、結界と衝突し次々と消し飛ばしていく。

ステイル「なるほど、力押しか」

ステイル「大味だか、嫌いじゃないね」

ステイルも続けざまに炎剣を発動させ、結界へと叩きつける。

劉「…」

攻撃を受けた結界は消滅し、ほぼ同じ速度で再生していく。

だが、徐々にそのペースが落ちる。

消滅が、再生の速度を上回りつつある。

御坂「まだまだぁ!こんなもんじゃないわよ!」

ステイル「聖人とは言っても所詮は擬似か。このまま、押し切る!」

二人は攻撃の手を緩めない。

明らかに、防御結界はその数を減らしていく。

劉の頬がわずかに動いた。

劉「…」

劉「少し、面倒ね」

劉「なら、計画を早めるとしましょう…」

目を閉じ、喉の奥で何かを呟く劉。

ステイル「呪文…だと?」

そのの呟きは詠唱だった。それにステイルはいち早く気づいた。

劉「…!」

劉が力を込めると、彼女を中心に目には見えない『何か』広がっていく。

その範囲はあっという間に拡大し、この場にいるすべての人物をその圏内に捕らえた。

直後。

御坂「えっ!?」

突如として御坂の体から電気が消失した。

ステイル「なにっ!!」

突如として発動していた炎が全て消失した。

ステイル「まさか…これは!」

何かに気づいたステイル。だが直後、衝撃波が彼を襲う。

ステイル「…!!」

声一つ上げる暇無く、その体は宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられた。

御坂「…!」

数秒後、御坂も大きく跳ね飛ばされる。地面を何度かバウンドした後、その体は崩れ残っていた建造物の壁に激突した。

上条「美琴!」

インデックス「ステイル!」

二人はほぼ同時に、名を呼んだ相手の傍に駆け寄っる。

ステイル「ぐ…あっ!」

御坂「い…あっ…」

お互いの相手に支えられつつ、ステイルと御坂はどうにか上体を起こす。。

詠矢「二人とも大丈夫か!」

御坂「なんとか…ね…」

上条「無理するな美琴!そのまま寝てろって!」

立ち上がろうとする御坂を上条は抑える。強がって入るものの、その体のダメージは明らかだった。

ステイル「これ…は…だ」

詠矢「…?なんていったステイルサン」

ステイル「これは…呪禁だ!」

詠矢「呪禁って、あの呪術の発動を抑制するっていう」

ステイル「ああ、それもとびきり高度で強力なものだ」

ステイル「僕の術が一瞬で完全に消失した!」

上条「いや、多分それだけじゃねえ」

上条「美琴の能力も消えてる。どういうことだよ!」

詠矢「つまり、魔術と能力を同時に…」

インデックス「呪禁は、本来魔術の発動を制御するもの」

インデックス「それと、能力に干渉する術を同時に発動しているんだよ!」

詠矢「…」

詠矢「わかんねえなあ!!」

一瞬考えた後、詠矢は叫びながら向き直る。

詠矢「アンタの目的は既に達せられている筈だ」

詠矢「仙人になれるのも時間の問題なんだろ?」

詠矢「なら、とっとと逃げて国に帰ればいいだろうが!」

詠矢「なんでわざわざ、こんな嫌がらせみたいなことするんだよ!」

劉を指差しつつ、詠矢は怒りのままにまくし立てた。

劉「…」

劉「仙人の創造は、あくまで本国から与えられた命令」

劉「私の目的は別にあるわ」

詠矢「へえ、そりゃまた。良かったら聞かせてもらえませんかね?」

劉「…」

このとき、劉の表情がわずかに緩んだ。笑ったようにも見えた。

劉「この世から、力による絶望を無くすため…」

詠矢「…はい?」

インデックス「力による…」

上条「絶望…?」

劉「この世界には、持つものと持たざるものがいる」

劉「呪術も、能力も、扱えるのはほんの限られた、一握りの人たち」

劉「その両者にある隔たりは、時として大きな絶望を生むのよ」

劉「だから私は、すべての異能を消し去り」

劉「その絶望をこの世から抹[ピーーー]るの」

劉の緩んだ顔が、既に愉悦の笑みに変わっていた。

詠矢「…はい?なんだそりゃ…」

詠矢「この世から異能が無くなれば、持たないものが絶望しなくなるって」

詠矢「そんだけの話なのか?」

劉「そうよ」

劉「今、この周囲にだけ展開している呪禁の空間は」

劉「私が完全な仙人なった時、全世界規模にまで広げることが出来るわ」

劉「そして、この世界から全ての『力』が消え…、私の目的は達成される…」

上条「ふざけんじゃねえ!!」

真っ先に反応したのは上条だった。

上条「何が絶望だ…そんなこと勝手に決め付けるんじゃねえよ!」

上条「そりゃ、努力しても結果が出なかったり、頑張っても報われないことはあるさ」

上条「そのせいで落ち込んだりへこんだりする奴はいるだろうけど…」

上条「でも、能力者でも無能力者でも、みんな自分なりの希望を持って生きてるんだ」

上条「それを勝手に、一方的に否定していいわけねえだろ!!」

インデックス「とうまの言うとおりなんだよ!」

インデックス「それに、おかしいんだよ!力を使って力を奪い去るなんて…」

インデックス「本当に力を憎んでいる人なら、そんなことは考えないはずなんだよ!」

インデックス「どうして、どうしてこんなことするんだよ!!」

二人の言葉を黙って聴く劉。その目は愉悦からわずかに愁いを帯びる。

劉「いいわね…仲間…」

インデックス「?」

劉「そう、私にも大切な人がいた」

劉「何物に代えても守りたい人がね…」

劉「でもその人は、私との力の差に絶望し」

劉「自ら命を絶ち、この剣の一部となった」

上条「…」

インデックス「…」

詠矢「…」

劉「絶望は、人の命を奪う」

劉「その周囲にいる人の心も、同時に奪ってしまう」

劉「だから、私は…そんな絶望を…」

劉「根絶するのよ」

上条「…って…んめぇえ!!」

詠矢「ダメだね、こりゃ」

再び怒りを爆発させようとする上条を、詠矢が制する。

上条「詠矢!!」

詠矢「ダメだ上条サン。こういうタイプに説教は無駄だ」

詠矢「あの人は、自分が受けた悲しみを何かにぶつけて昇華させようとしてるだけだ」

詠矢「理屈も何もあったもんじゃねえ」

詠矢「力ずくで止めるしかねえな」

詠矢の言葉を受け、劉はあらためて4人に向き直る。

劉「そうね…それが一番単純な答えだわ」

劉「この私を、止められるものなら…ね」

劉は両手を正面にかざす。すると、無数の見えない力が放たれる。

詠矢「ヤベえ!上条サン頼む!」

上条「ああ!」

詠矢の指示を受けると、上条は他の三人の前に立ちふさがって右手をかざす。

上条「ぐっ…!!(キュイーン)」

衝撃波が次々と襲い掛かる。だが、上条の右手はその攻撃をかき消していく。。

詠矢「(くそっ、何とか凌げてるがこのままじゃジリ貧だ)」

詠矢「(なんとか体勢を立て直さねえと…)」

劉「便利な右手だこと…」

劉「でも、所詮は限られた範囲の力」

劉「切り崩す方法は、あるわ」

あえて狙いを外した衝撃波が地面をえぐる。瓦礫が無数の破片となり、4人の両側面から襲い掛かった。

上条「がっ!!」

詠矢「ぐあっ!!」

立っている二人の全身に破片が突き刺さる。

詠矢「ダメだ上条サン!逃げるぜ!」

上条「逃げるってどこにだよ!」

詠矢「とりあえずあそこだ!」

身を隠せそうなビルの残骸を詠矢は示す。

絶え間なく襲い掛かる破片をかいくぐりながら、上条は御坂をかかえ、詠矢はステイルに肩を貸しながら廃ビルを目指した。

(とある廃墟 ビル内)

詠矢「よっと」

移動が終ると同時に、敵の攻撃が止んだ。

上条「何だ、静かになったな」

詠矢「奴の目的はあくまで異能の消去だ。俺たちの命じゃない」

詠矢「抵抗が排除出来ればそれでいいんだろう」

上条「だけど、このままじゃあ…」

詠矢「ああ、この学園の、この世界の全ての異能が奪われてちまう」

上条「なんとかしねえと」

上条は、抱えた御坂の顔をじっと見る。

御坂「当麻…」

力ないその声。上条は御坂の手を取ってやさしく握る。

上条「美琴…」

思いを確かめ合う二人を横目に、詠矢は静かに目を閉じた。

詠矢「…」

上条「…」

インデックス「…」

上条「詠矢!!」

詠矢「ん?何だい上条サン」

上条「何か考えがあるんだろ?早く言ってくれ」

詠矢「なんでそう思うんだ?」

上条「お前、そんなに焦ってねえだろ?」

上条「だから、何か考えがあるに決まってる」

詠矢「…流石だね上条サン。今考えがまとまったところさ」

詠矢「ただ…」

上条「なんだよ。また難しい準備でも必要なのか?」

詠矢「いや…そうじゃないんだが」

詠矢「…上条サン」

上条「どうした?」

詠矢「俺を、信じられるか?」

上条「…」

上条「おいおい、どんな面倒なこと言われるのかと思ったら」

上条「そんな簡単なことでいいならお安い御用だ」

上条「何でも言ってくれ!」

詠矢「…そっか、ありがとう。上条サン」

詠矢はニヤリと笑うと立ち上がる。

詠矢「行くか上条サン」

詠矢「相手の術は恐らく能力者の演算を妨害するもの」

詠矢「俺たちの能力には関係ねえ」

詠矢「逆に言えば、今まともに戦えるのは俺たちだけってことになる」

上条「ああ、やっぱやるしかねえな」

御坂を静かに地面に下ろすと、上条も立ち上がる。

インデックス「そらき、どうするの?」

インデックス「仙人の力を、どうやって…」

詠矢「ま、見ててくれよ」

詠矢「俺たちの戦いぶりをな」

上条「ああ、お前は美琴とステイルを頼む」

絶望的な状況の中、今だ力を失わない二人の姿を見て、インデックスは上条の言葉を素直に受けた。

インデックス「…わかったんだよ」

インデックス「二人とも、無茶しないで」

御坂「当麻、詠矢さん、お願い…」

ステイル「ふがいない。こんなときに何も出来ないとは」

ステイル「今は君たちに託すしかない。頼む!」

詠矢「…よっしゃ」

上条「…行くぜ!」

三人の言葉を背に受け、二人は再び敵の下へ向った。

(とある廃墟)

詠矢「んじゃあ、おっぱじめますか!」

上条「ああ、あまり時間ないようだしな」

再び劉と対峙する二人。今のところ敵に特別な動きはない

ただ、突き立った剣は明らかに短くなっている。

仙人の完成まで、そう時間が無いことを示していた。

詠矢「…」

詠矢は大きく深呼吸する。そして、少し間をおいた後、おもむろに口を開いた。

詠矢「なあ、上条サン」

上条「ああ」

詠矢「ソフィアサンの事件のとき、段取りはいらないけどヤバイ方法があるって言ったよな?」

上条「確かそんなこと言ってたな」

詠矢「その、ヤバイ方お今からやろうと思う」

上条「どうするんだ?」

詠矢「…」

詠矢「なあ上条サン、その右手の幻想殺し(イマジンブレイカー)だがな」

詠矢「消せるのは接触した異能だけ、って話だよな?」

上条「ああ、そうだ…ぜ?」

詠矢「でもさあ、それってほんとに接触なのか?」

上条「…?」

詠矢「例えばほら、思い出してみろよ」

詠矢「炎の魔術師の攻撃を受けたとき」

詠矢「あの膨大な炎を受け止めたのは、その右手だったよな」

詠矢「あの時、本当に右手の効果範囲が接触だけだったら」

詠矢「上条サンは右腕だけ残して消し炭になっていたはずだ」

詠矢「あの時、その右手は炎を押しのけていた。接触だけっていうんなら、そんなことは出来ないはずだ」

上条「…そんなもん、俺にだってわかんねえよ」

詠矢「確かに、本人にはわからにかもなあ。でも俺は、こう考えるんだよ」

詠矢「炎を押しのけたのは、上条サンの意思だってな」

詠矢「退けなければならないという強い思いがあれば、右手はそれを実現する」

詠矢「上条サンの意思があれば、範囲なんて関係ねえんだ」

上条「お前…何を」

詠矢「今、敵の周囲には防御の術が無数に展開されてる」

詠矢「あの御坂サンやステイルサンでも、突破できなかった強力なものだ」

詠矢「でも、上条サンの右手を『範囲』に拡大できれば」

詠矢「それらを全て、もしかすると呪禁も含めて全部」

詠矢「消し去ることが出来るはずだ」

上条「…」

詠矢「俺は、無防備になった相手の懐に飛び込んで」

詠矢「剣を引き抜いて仙人になることを防ぐ」

詠矢「どうだい、シンプルな作戦だろ?」

上条「…でもそれって、お前のほうが危ないんじゃないのか?」

詠矢「俺は剣を奪ったら全力で走り抜ける。多分大丈夫だ」

上条「…そっか。…わかった」

詠矢「ご理解頂ければ結構」

詠矢「さあ、集中してくれ上条サン」

詠矢「敵までの距離はそう遠くない」

詠矢「握りつぶすでも、包み込むでもいい」

詠矢「敵とその周囲を、全てその右手の中に納める」

詠矢「そういうイメージを広げてくれ」

上条「…」

上条は目を閉じ、掌を顔の前にかざす。

詠矢「難しいかもしれないが、大丈夫さ」

詠矢「今まで、たくさんの人やこの都市を守ってきた上条サンの右手は」

詠矢「そんなに小さくは無いはずだぜ?」

上条「…!」

その言葉に喚起され、上条はイメージを広げる。閉じた目の前にある右手がはっきりと感じ取れる。

掴む、包む、握る。思いつく限りの言葉を浮かべるごとに、少しずつ掌は大きくなっていく。

もちろんそれはそう感じられるだけで、物理的に変化があるわけではない。

だが、確実に、それは大きさを増す。上条自身にも認識できないほど、そのイメージの範囲は広がっていく。

上条は、集中したまま静かに口を開く。その言葉は、劉に向けられたものだった。

上条「てめえの悲しみが、どれだけだけ深かったか、そんなことは俺にはわからない」

上条「だがその力で、守れたもの、救えたものは、本当に何も無かったのか?」

上条「力から得られた希望は、必ずどこかにあったはずだ!」

上条「それを忘れ、力が絶望しか生まないなんて…そう思うなら」

上条「そんなふざけた幻想…」

上条「この右手で…」

上条「ぶち殺す!!」

上条は、かっと目を開くと、突き出した右手を力強く握り込む。


もはや聞きなれた金属音が、ひときわ大きく鳴り響いた。



劉「!!」

劉は驚愕していた。

二人の青年がこちらを伺っていたことはわかっていた。

だが、今の自分に対抗する術もないだろうと、剣の取り込みと呪禁の制御に集中していた。

その余裕が、一瞬にして覆された。

自分の周囲の術が、例外なく消滅している。数百と配置した防御結界も、学園都市を飲み込もうとしていた呪禁も、跡形

も無く消え去っていた。

劉「…何…が!?」

状況を把握できていない劉に、何かが近づいてくる。

体勢を低く、走りこんで来る人物の姿が。

詠矢「(よし!いける!)」

術の消滅を待たずに、詠矢は既に動いていた。

上条を信じ、防御結界が残る敵に、向け一心不乱に走った。

その判断が功を奏し、絶好のタイミングで敵の懐に飛び込むことが出来た。

劉「貴様は!!」

相手はまだ自分のことを認識し切れていない。

チャンスは今しかない。詠矢はそう確信していた。

詠矢「(届けっ!!)」

詠矢は手を伸ばす。開いた掌の向こうに、目指す剣の柄がある。

確実にその距離が近づく、掌が、触れる。

詠矢「勝った!」

詠矢は、力の限り剣を引き抜いた。


(ぶちゅっ)


異様な音が、腕を伝って耳に届く。

詠矢「!?」

そのあまりの不快さに、走り抜けるはずだった詠矢は足を止めてしまう。

詠矢「…え?」

自分の右手の中にあるもの、それは間違いなく目的の剣だった。

以前よりもずっと細くなった剣。そして、その先端には、赤く染まった肉片がこびりついていた。

詠矢「…へ?…え?」

恐る恐る詠矢が振り返ると、そこには、

体の中央にぽっかりと穴の開いた、劉が立ち尽くしていた。

明らかに内蔵まで達しているその穴からは、絶え間なく鮮血が流れ出している。。

劉「…ふふっ」

うつむいた劉の頬から笑みが漏れる。

劉「そうよね…やっぱりそうなるわよね」

劉「絶望が、希望に勝てるわけ、ないもの…ね」

詠矢「…」

状況を受け入れられない詠矢には、彼女の言葉は届いていない。

だが、劉は続ける。

劉「あなたはは強いわ、とても…」

劉「だから、その力で、あなたの大切な人の、希望を…守って…ちょうだい…」

劉は、受身を取ることもなく前のめりに倒れた。

その体を中心に、濃い血溜まりが広がっていく。

もはや、生死の確認をする必要も無い。

詠矢「…!!」

錯乱が詠矢を支配する。剣を放り投げると、その手は自然と口を覆う。

詠矢「…っぐ!!!!」

詠矢は、腹の底から立ち上ってくる熱い感情を、抑えることができなかった。

(とある廃墟 ビル内)

ステイル「力が…戻っている」

指先に火を灯し、ステイルは魔術の発動を確認していた。

ステイル「どうやら、彼らが勝ったようだね」

安堵するステイルの耳に、インデックスのすすり泣く声が飛び込んできた。

ステイル「インデックス!?どこだ!」

周囲を確認すると、ビルの外、敵と交戦する二人の姿を確認出来る位置に、インデックスはいた。

ステイルは慌ててそこに向かう。

インデックス「ごめんよ…そらき…」

その頬には大粒の涙が流れ落ちている。

ステイル「インデックス、どうしたんだ!」

インデックス「そらきが、仁鉄の剣を引き抜いたんだよ」

ステイル「ああ、だから彼らの勝利ではないのかい?」

インデックス「そう、とうまとそらきが勝ったんだよ」

インデックス「でも、剣は既にあの人体に取り込まれかけていた」

インデックス「それを無理やり引き抜いてしまったんだよ」

ステイル「そうか、剣と体組織は既に癒着していた」

ステイル「それを引き抜けば、内蔵を一つ抉り出されるようなもの」

ステイルの言葉に、インデックスは小さくうなずく。

インデックス「まだ仙人になりきれていないあの人は」

インデックス「とても生きていられないんだよ…」

インデックス「わたしが…もっと早くそらきの考えに気づいていれば」

インデックス「こんなことには…」

ステイル「…」

嗚咽の混じった詠矢の絶叫が、遠くで響いていた。

以上となります。
あと2回で終了予定です。
それではまた。

こんばんわ、1です。
次回投下分が今書きあがりました。大幅な変更が無ければ明日投下します。
もうしばらくお待ちください。

こんばんわ1です。
予定通り投下させて頂きます。

(模型店 形屋)

真々田「…」

真々田は一人、店の奥でプラモデルを組み上げている。

慣れた手つきで部品をランナーから外し、丁寧に組みつけていく。

土御門「よう」

真々田「いらっしゃい」

突然現れた土御門を見て、真々田は手を止めた。

土御門「へえ、フィギュア以外も作るんだな」

真々田「ちょっとした『たしなみ』だよ。店のディスプレイ用にと思ってね」

組みかけたパーツを箱に収めると、真々田はあらためて相手に向き直った。

真々田「さて、何の用かな」

真々田「君が来たということは、それなりの用件なんだろう?」

土御門「ああ、その通りだ」

土御門「あんたにちょっと伝えたいことがあってな」

真々田「なるほど、とりあえず聞かせてもらおうか」

土御門「…蕪木雅彰の死体が発見された」

土御門「状況からして、自殺のようだ」

土御門「どういうわけか、自分の首筋を掻き毟って」

土御門「失血死していた」

真々田「ほう…」

土御門「今から3日前、例の事件が解決を見た直後の話だな」

真々田「なるほど…ねえ」

土御門「…驚かないんだな」

真々田「まあ、ね。ある程度予測できた結果かな」

土御門「ということは、やっぱり何か知ってるんだな」

真々田「それは質問と解釈していいかい?」

土御門「ああ、そうなる」

土御門「奴は学園側としては捕らえるべき人物だった」

土御門「そいつに死なれちまったんだ。その理由を確認しておく必要がある」

真々田「意外と真面目なんだね」

土御門「まあ、これも仕事だからな」

真々田「ふむ…」

納得したのか、小さく頷くと真々田は右手を上げて合図する。

真々田「エンジェラン」

エンジェラン「はい、なんでしょう」

真々田「少々込み入った話になる。『かんばん』を下げてきてくれ」

エンジェラン「かしこまりました」

笑顔で指示を受けると、人形は店先へ向かった。

真々田「さて、君にごまかしは効かないだろうからね」

真々田「一部始終、報告させてもらうよ」

(とある路地裏 回想)

蕪木「ハアッ…ハアッ」

男は息を切らせながら路地裏を走っていた。

蕪木「くそっ!どうしてこんなことに…」

劉の裏切りに遭い、吹き飛ばされた蕪木は、瓦礫に隠れて事の顛末を確認していた。

彼女の真意、そして敗北を知り、立場の危うさを感じた蕪木は、逃走の真っ最中だった。

蕪木「(まさが劉君にあんな真意があったとは…)」

蕪木「(今中国に戻ったとしても、裏切りの共犯と見られるに違いない)」

蕪木「(だが、もはや日本にも私の居場所は無い)」

蕪木「(どうする…どうするんだこの状況は!!)」

蕪木は、走りながら心の中で叫んだ。そして、自身の身の振り方について考えをめぐらせる。

蕪木「(…なあに、私の力があれば、取り入ることの出来る組織はいくらでもある)」

蕪木「(一旦地下に潜り、体勢を立て直してだな…)」

真々田「やあ、久しぶりだね。蕪木君」

蕪木が走る路地の向こうに、いつの間にかその人物が立っていた。

蕪木「真々田!!」

真々田の姿を確認すると、蕪木は足を止める。

だがその姿は、憔悴し、血の気の無い、まるで病人のような姿だった。

蕪木「貴様…なんだその姿は」

当然の質問を蕪木はぶつける。

真々田「ちょっと準備があってね。まあ、理由はすぐにわかるよ」

蕪木「ふん、お前の都合などうどうでもいい」

蕪木「そこをどけ。何故わざわざ私の前に立ちはだかる!」

その言葉など耳には届いていないかのように、真々田は何かを確認するように周囲を見回す。

真々田「…なるほど」

真々田「さっきまで大規模な呪禁が展開されていたようだが」

真々田「もう術の活動は感じないねえ」

真々田「どうやら、彼らが勝利したようだね」

蕪木「…」

真々田「そうなると、君は絶賛敗走中というわけだ」

真々田「お忙しいのも無理は無い」

蕪木「うるさい!それがお前に何の関係があるというのだ!」

真々田「ま、それはそうだね。確かに関係ない」

真々田「逃げるなら勝手にすればいい。だが、その前に…」

真々田「君に受け取ってももらいたいものがあってね」

蕪木「私に…?」

蕪木「何だというのだ、今更お前から恵んでもらうものなど何も無い!」

真々田「…へえ」

真々田「でも、僕の作った術は勝手に使ったよねえ…」

蕪木「…なんだと?」

真々田「あの劉という女性が使っていた能力に干渉する術は」

真々田「僕の術を応用したものだ」

真々田「実際にこの学園都市から盗み出したのは誰だか知らないが」

真々田「術を調整したのは君で間違いないだろう」

蕪木「…」

蕪木「やはり…あの術式は貴様が…」

真々田「どうだい、見事な術式だったろう?」

真々田「能力者から発せられる力場を直接魔翌力に変換するという大胆な発想」

真々田「まさに天才の所業と言うべきだろう」

蕪木「わざわざそんな自慢をしに来たのか?」

真々田「いや、ただ…」

真々田「君には絶対作れない術じゃないかと、思って…ね」

蕪木「…」

蕪木「貴様は…何も変わってはいないな…」

蕪木「常に上から目線で、他人を見下すことをなんとも思わない」

蕪木「自分の才能を誇示するのが、そんなに楽しいのか!!」

怒りをあらわにする蕪木を見ると、真々田はうつむいたまま顔の左半分だけで笑う。

真々田「だってしょうがないじゃないか」

真々田「君のほうが確実に『下』なんだから…」

蕪木「…!!」

蕪木「きっ…さまあぁぁぁああ!!」

蕪木は早足で近づくと、硬く握った拳を真々田の顔面に振るった。

蕪木「なら、貴様は何故逃げた!」

蕪木「その才能を最も生かす場から、何故逃走したのだ!」

蕪木「本来なら、お前が公職に就き、国を守るべきだったんだ!」

蕪木「力に対する責任を果たさない貴様に、他人を貶める資格などない!」

蕪木は、罵倒と拳を交互に真々田に向かう。

抵抗する様子も無く、ただそれを受け続ける真々田。

最後に蕪木は、真々田の胸倉を掴んで引き寄せた。

蕪木「貴様に、貴様に何がわかる!!」

真々田「…」

真々田「…ははっ」

蕪木「何が可笑しい!」

真々田「典型的な小物だね」

真々田「安い挑発に、すぐ乗る」

蕪木「何っ!」

真々田は、服の下で矢立に指を突っ込む。

蕪木「…!?」

首筋に違和感を覚えた蕪木は、真々田の体を離し、後ずさる。

蕪木「貴様…何をした!」

真々田「確認してみるといいよ」

真々田は、すぐ傍の割れ残った窓ガラスを指差した。

蕪木は示された方向に向き直る。

蕪木「なんだ…これは」

ガラスに写った自分の首筋には、術式が書き込まれていた。

真々田「呪禁だよ。君の術を未来永劫使用不能にする、強力無比な仕様さ」

蕪木「…なに?」

真々田「第三者はもとより、僕自身にも解除することは不可能だ」

蕪木「…」

蕪木「まさか…貴様…」

真々田「まあ、そういうことさ」

真々田「材料を得るために少々無茶をしたけどね」

真々田「君に渡したかったものは、その術だよ」

真々田「僕の住む場所を荒らした罰として、受け取ってもらいたい」

蕪木「なっ…」

蕪木「なぜだ…何故ここまで…」

蕪木「何故ここまでするんだ…術を失えば…私は…!」

真々田「そうだね、理由があるとすれば一つ」

真々田「君は天才のプライドを刺激した、それだけさ」

蕪木「…おい」

蕪木「冗談だろ?血の滲む思いで手にした力を…」

蕪木「失うというのか?ちょ…ちょっと待ってくれ!」

真々田「せいぜい安穏と生きてくれたまえ」

真々田「では、用件は終わりだ。失礼させてもらうよ」

蕪木「待てっ!真々田!力を…返せ!」

蕪木は再び真々田に詰め寄ろうとする。が、真々田の体はふわりと浮き上がる。

蕪木「なっ!!」

いつの間にか、赤いスーツの女性が真々田の体を背中から抱え上げていた。

真々田「やあ、鳳雷鷹、ご苦労様。いいタイミングだったよ」

小さく頷いた女性は、背中の羽を振るい上空へと舞い上がる。

蕪木「待て、待ってくれ真々田、力を…私の力を!!」

真々田「じゃあね、蕪木君。お達者で」

蕪木「ま、まっ…ままだあぁぁぁあああ!!!」

遠ざかっていく絶叫を、真々田は満足げに聞いていた。

(模型店 形屋)

土御門「そんなことが…」

真々田「自分でも少し大人気なかったとは思うんだけどねえ」

土御門「じゃあ、その結果起こることも」

土御門「想定できていたわけか」

真々田「まあ、最悪の想定だけどね」

真々田「彼にとっては最大のアイデンティティを失ったわけだから」

真々田「必死に抗おうとしたのだろうね」

土御門「じゃあ奴は、呪禁を解除しようと首筋を自分で…」

真々田「恐らくそうだね」

真々田「よほど錯乱してたのだろう」

真々田「あの術には僕の血液から作った特性の墨を使ってあった」

真々田「皮下の組織に浸透し、血管や神経と複雑に癒着しているはずだ」

真々田「無理に引きガ剥がそうとすれば、死に至る傷を負うことになる」

真々田「そんなことは彼にもわかっていたはずなのにね」

土御門「既にもう、正気じゃなかったんだろうな」

土御門「…」

土御門「しかし、そいつはまるで仁鉄だな」

真々田「ほう、そこでその言葉が出てくるとは」

真々田「例の剣とやらもも、同じ素材だったのかな?」

土御門「ああ、そう報告を受けている」

真々田「なるほど。じゃあこの件に関してだけ言えば」

真々田「僕の方が真似をしたってことになるのかねえ…」

土御門「…」

土御門「あんたって言う人に対する評価を」

土御門「ちょっと変えないといかんかもな」

真々田「どんな風にだい?」

土御門「もっと、他人には興味を持たない奴かと思ってたぜい」

真々田「まあ、基本はそうだけどね」

真々田「今回はちょっと例外かな」

土御門「そうか…」

真々田「どうかな、僕は何か処分の対象になるのかな?」

土御門「そうだな」

土御門「実際にはどうかわからんが、今の話を表に出せば」

土御門「あんたは何らかの罰を受け、この都市にいられなくなるかもしれん」

土御門「今はそれのほうが痛い」

土御門「この話は俺の中でとどめておこう」

真々田「なるほど」

真々田「では、素直に礼を言っておこう」

真々田「ありがとう」

土御門「ま、今後とも強力を頼むぜい」

真々田「了解したよ」

話のタイミングを見て、エンジェランが紅茶を運んでくる。

二つ用意されたマグカップを、それぞれ受け取った。

真々田「ああ、そういえば。詠矢君はどうしている?」

真々田「事件が解決してからしばらく経つだろう」

真々田「律儀な彼のことなら、報告に来そうなものなんだが」

真々田「まだ会っていなくてね」

土御門「ヨメヤンか…」

土御門「ヨメヤンは、まだ入院してるぜい」

真々田「へえ、どこか怪我でもしたのかい?」

土御門「いや、体は大丈夫なんだが」

土御門「心が…ちょっとな」

真々田「心、かい?」

カップの中身を軽く喉に通しながら、土御門は目を伏せた。

以上となります。
次回で完結予定です。それではまた。

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