アスカ「シンジ。収録時間以外は気安く話しかないで」(136)

シンジ「ご、ごめん。ただジュース当たって2本出てきたから、1本いるかなって」

レイ「いらない」

アスカ「あんたなんかに恵んでもらうほど落ちぶれてないわ」

シンジ「そっか……どうしよ、これ」

アスカ「は~ぁ、なんでこの私が、こんなカスなんかに惚れなきゃいけないのよ」

レイ「そういう役だから仕方ないわ。私だって―――」

カヲル「やあ、何の話だい?」

レイ「あ♥」

アスカ「渚! ううん、なんでもないの♥ ねえこの後どっか行こ?」ギュッ

レイ「私も」ギュッ

シンジ「えっと。渚君、ジュースいらない……?」

カヲル「いや。僕はさっき飲んだばかりだから」

シンジ「あ、そうなんだ」

アスカ「渚ァ、そんなやつ放っときましょ」

カヲル「はは、引っ張らないで。行くって、どこに行くんだい?」

レイ「どこでも……渚くんとならホテルでも」

アスカ「ちょっとーレイ、冗談でもはしたないわよ。でも……ふふ、3人でしちゃおっか?」

シンジ「……」

カヲル「ならホテルはともかく、カラオケでも行こう。食事まで少し間があるからね」

キャッキャッ

シンジ「行っちゃった…………しょうがない、自分で飲もっと」

キス回のあとのこいつらが見たいな

テクテク

シンジ「いた。父さん」

ゲンドウ「なんだシンジ」

シンジ「僕、もう先に帰るから。宿題あるし」

ゲンドウ「分かった」

シンジ「父さんは……今日も帰らないの?」

ゲンドウ「どうだろうな」

シンジ「いっつもそう言って、このところ全然家に寄りつかないじゃないか」

ゲンドウ「……」

シンジ「……早く母さんと仲直りしたほうがいいと思う」

ゲンドウ「……」

シンジ「そ、それじゃね。お疲れさま」

シンジ「ただいまぁ」

シーン

シンジ「……」

テクテク

シンジ「ただいま」

ユイ「ん、おかえりなさい」

シンジ(こっち見もしない)

シンジ「それ新しいビデオ?」

ユイ「そ」

シンジ「そんなに韓流ドラマって面白いの?」

ユイ「面白いわよ。今いいところだからあんまり話しかけないで」

シンジ「……」

シンジ「母さん」

ユイ「もう。話しかけないでって」

シンジ「テーブルの上にパンフレットあるけど……また韓国に行くの?」

ユイ「いいじゃない。海外って言ってもすぐそこですもの」

シンジ「でもさ、今の時期は色々物騒だよ」

ユイ「よほど運が悪くなければ悪口言われる程度で終わるわ」

シンジ「だからってわざわざ」

ユイ「政治問題と文化を楽しむのとは別問題よ。シンジ、ホントに少し黙ってて」

シンジ「……」

バタン

シンジ(さっさと宿題しちゃおう)

シンジ「……」

カリカリ

シンジ(父さんは今頃赤木さんといるのかな。母さんは韓流イケメンに夢中。どっちが先なんだろ)

カリカリ

シンジ(…………どっちでもいいや。どうせ、僕にはどうしようもないんだから)

加持「シンジきゅん!」

シンジ「かっ、加持さ……今日は収録が……?」

加持「ああ。ワンカットだけの出番だけどな。いやぁ、来て良かった!」ギュゥ

シンジ「ひっ」

加持「やはり、今日もシンジきゅんはお肌すべすべだなあ」ジョリジョリ

シンジ(ヒ、ヒゲが、痛)

シンジ「ああああの! せめてきゅんを付けて呼ぶのはやめてもらえませんかー?」

加持「恥ずかしがる気持ちは分かるさ。でも君にこれ以上相応しい呼び方があるかい?」

シンジ「そんな事、キリッとした顔で言われても……」

加持「つれないなシンジきゅん。その唇を塞いでしまおうか」

シンジ「絶対やめてください。本当に絶対」

シンジ「はぁ……疲れた。っていうか、この分だと本気でそのうちキ」

アスカ「キスぅぅぅ!?」

シンジ「!」ビクッ



アスカ「イヤよイヤ、ずぇったいにイヤ!!!」

カントク「まぁまぁ。落ち着いて」

アスカ「落ち着いてられないわよ! なんで私が、よりによってあのキモシンジとキスなんかっっ!」

カントク「なんでって、そりゃ必要なシーンだからね」

アスカ「……せめて、フリでいいじゃない」

カントク「ダメ。そういうフェイクは好きじゃない」

アスカ「そんな」

カントク「『私はアイドルじゃなく女優』だと普段から喧伝してんだから、こっちもそう扱ってるだけだよ」

アスカ「ぐ……っ」

シンジ(僕とアスカでキス……!?)

アスカ「あ」

シンジ「う。お……おはよう ///」

アスカ「立ち聞き? サイテーね」

シンジ「違うよ! たまたま通りかかっただけで」

アスカ「役で私とキスできそうだからって、ヘンな期待して喜んでんじゃないでしょうね?」

シンジ「何も考えてないって!」

アスカ「全然喜ばないってのもムカつくんだけど」

シンジ「そんなムチャクチャな」

アスカ「赤くなっちゃってさ。気持ち悪いったら」

シンジ「…………ごめん」

ガヤガヤ

レイ「渚君、紅茶なら何が好き?」

カヲル「僕は―――」

アスカ「……渚。ちょっと一緒に来て」



カヲル「ふぅん。碇君とキスシーンをね」

アスカ「私、ファーストキスだってまだなのに」

カヲル「……」

アスカ「ねえ……渚。お願い」ギュゥ

カヲル「なんのお願いだい?」

アスカ「分かってるくせに。あんたが、ミサトやマやとヤりまくってるの知ってるんだから」

カヲル「!」

アスカ「別にそれを責めようってわけじゃないの」

カヲル「惣流さん……」

アスカ「そもそも、女を芸の肥やしくらいにしか見てないでしょ? ちゃんと気づいてるわよ」

カヲル「……」

アスカ「それでも……いいから。キスだけじゃなくて、その先だって……」

ギュッ

アスカ「ぁん♥」

カヲル「今夜、収録が終わってから、うちに来たかったらおいで」

アスカ「!」



シンジ(そーいえば、キスなんてどういう流れでするんだろ。脚本まだかな)

シンジ「お疲れ様でしたー」

ザワザワザワ

日向「シンジ君、この後は?」

シンジ「普通に帰るだけです」

青葉「たまには一緒にどうだい? 今日は飲みに行くから連れていけないけど、また今度」

シンジ「そうですね……機会があったらお願いします」

ゲンドウ「ならば、今日は久しぶりに私と食事に行くか。シンジ」

日向&青葉「お疲れ様です」

シンジ「父さん……!」

シンジ「助手席って、なんだか落ち着かないや」

ゲンドウ「そうか?」

シンジ「父さんから声かけてくれるなんて珍しいね」

ゲンドウ「そうか?」

シンジ「ねえ……なにかあったの。父さん」

ゲンドウ「……母さんは、食事を用意してくれているのか?」

シンジ「近頃は……ほとんど僕が作ってる」

ゲンドウ「……」

シンジ「……」

ゲンドウ「もうすぐ着くぞ」

ゲンドウ「―――再婚するつもりでいる。無論、その前に母さんとは別れることになる」

シンジ「そう」

ゲンドウ「随分あっさりしているな」

シンジ「何度も想像してたし、予想もしてたから。赤木さんはなんて言ってるの?」

ゲンドウ「彼女も、そうしたいならそうすればいいと」

シンジ「なんだか……随分他人事みたいだね」

ゲンドウ「他人事だからな。仕方あるまい」

シンジ「え?」

ゲンドウ「相手は、冬月さんだ」

シンジ「いや、待って。待って待ってよ父さん」

ゲンドウ「そう焦るな。なにも同性婚の可能な国に移住するわけではない」

シンジ「待ってってば」

ゲンドウ「よって、法的な意味で夫婦になれるわけではないが……どっちが夫でどっちが婦だろうな」

シンジ「待ってって!! 冬月さん!? 赤木さんじゃなかったの!??」

ゲンドウ「赤木君は良い相談相手になってくれた」

シンジ「じゃあ……ずっと……?」

ゲンドウ「正直に言えば、お前が生まれる以前からの関係だ」

シンジ「あああああああ」

>>11
マッハ歯磨き

シンジ「あんまりだよ! 母さんが可哀想だとか思わないのかよ!」

ゲンドウ「……結果的に、ユイから冬月さんを奪ってしまう形になったのは申し訳なく思っている」

シンジ「……うば?」

ゲンドウ「大学時代、私とユイはそれぞれが冬月さんの恋人だったのだ。それが」

シンジ「ぅ……」

ゲンドウ「シンジ? どうしたシンジっ」

シンジ「ぅぅ、ぅぐ」

ゲロゲロ

ゲンドウ「ショックが強かったか? 潔癖症は生きるのが辛いぞ、シンジ」

シンジ「……ただいま」

シンジ(真っ暗だ。母さんどこ出てるんだろ)

パチッ

シンジ(メモが……)


『ママ友と女子会☆旅行に行ってきます ユイ』


シンジ「……」

>>81
シンジ「……うば……?」じゃなくて
シンジ「……うば?」だから、
シンジが狂ったのかと思った

ザワザワザワ
ザワザワザワ
ドタタタッ

アスカ「なによ。随分と騒がしいわね」

カントク「済まないが本日の撮影は中止だ」

カヲル「何かあったんですか?」

カントク「碇シンジ君が自殺した」

カヲル「!?」

アスカ「はぁ?」

カントク「通夜からスタッフ一同で参列するから、君等も来てくれ」

アスカ「なによそれ……人がせっかく最高の夜過ごして、最高の気持ちで来たのに台無し」

カヲル「この服装じゃ行けないな。一度戻って出直すしかないか」

アスカ「言いたくないけど、死んでも迷惑かけまくるわけね、あいつ。とことんスマートじゃないわ」

カヲル「……」

レイ「お早う」

アスカ「おはよ、レイ」

レイ「……渚君」

カヲル「なんだい?」

レイ「もし、これで撮影が中止になってしまったとして。その後も会ってもらえる?」

アスカ「あんた大げさねー。今更後戻りきかないし、脚本いじってどうとでもするわよ」

レイ「でも……」

カヲル「うん、分かった。約束するよ」

レイ「ありがとう! それで……わ、私も……アスカみたいに……」

アスカ「!」

レイ「アスカだけなんて、ズルい」

カヲル「……」

加持「シンジきゅんんんんんnああああああああああ」

カヲル「碇君が亡くなったんだ。そういう話はまた今度に」

レイ「どうでもいい」

アスカ「そうそ。そりゃ、お義理と建前で式には出るけど」

カヲル「……」

カヲル「どうでも良くなんてないさ。この世界は、碇君……シンジ君が生み出したんだからね」

アスカ「へ?」

レイ「……渚君?」

カヲル「彼はとても傷ついて、後悔に耽溺し、自分を責めたんだ。だから自らを壊す世界を作った」

カヲル「彼にとって大切なリリン達が、皆そっぽを向いてしまっているこの世界をね」

レイ「さっきから、何を言ってるの?」

カヲル「―――おとぎ話だよ」

カヲル「もっとも、無理に歪めた余波で、おかしな方向にズレてしまった者もいるけど」

加持「シーンージーきゅーん!!!!」

カヲル「僕のことが好きかい?」

レイ「愛してるわ」

アスカ「あんたになら、殺されたって構わない」

カヲル「君達のその想いは、本来シンジ君への気持ちなんだ」

カヲル「シンジ君を想うほど、そのベクトルが僕に向かうようにここはできている」

アスカ「渚……あんたが何を言ってるかワカラナイわ」

カヲル「……そうだろうね。誰の意識にも、世界の秘密は届かない」

カヲル「綾波レイ。さっきの話の続きをしよう」

レイ「ずっと、一緒に」

カヲル「ああ。惣流アスカラングレーだけじゃなく、君のこともずっと手放したりしないよ」

レイ「嬉しい……!」

カヲル「君等の幸せも、譲ることのできないシンジ君の望みなんだ」

カントク「おーい、そこ、いつまで話込んでんだ!」

アスカ「あ。ちょっと、そろそろ動かないと遅れるっぽいわよ」

カヲル「じゃあ行こうか。せめてシンジ君が今度こそ安らかに在るよう、祈りに」

終わり

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