女「や、風が強いね」(29)

男「そうですね」

女「やれやれ、せっかくのクリスマスイヴだってのに」

男「部屋に戻りますか?」

女「いいや、君にくっつくね」

男「はあ」

女「ふふ」

男「じゃあ、行きましょうか」

女「うん」

男「と、いってもどこへ行くか知らないんですけれど」

女「ま、ついてのお楽しみというやつだ」

男「わあ楽しみです」

女「棒読みだなあ、おい」

男「ふふっ」

女「……」

男「……」

女「……」

男「ん、それ、持ちますよ」

女「お、わるいね」

男「なんです? これ」

女「酒」

男「…外でのむんですか?」

女「ふふ」

男「……」

女「……」

男「それにしても人が多い」

女「まあねえ」

男「みんな寒そうですね」

女「おいおい、もう少しロマンチックなことを言えよ」

男「はあ」

女「たのむぜ」

男「心がけましょう」

女「いや、しかし寒い」

男「はあ…」

女「……」

男「……」

女「クリスマスに出歩くのは久し振りだね」

男「あれ、でも」

女「うん、去年ぶりだ」

男「はあ」

女「うーん、思い出すなあ」

男「早いもんですね」

女「それは言うなよ」

男「ふふ」

女「……」

女「……」

男「……」

女「お、こっちへ行こう」

男「イルミネーションですか」

女「うん」

男「きれいですねえ」

女「そうだねえ」

男「……」

女「キラキラしていいもんだ」

男「星みたいですね」

女「本物はどうも見えないがね」

男「ああ、今日は曇りでしたか」

女「ああね」

男「しかし星だとすると…」

女「ん?」

男「いえ、僕たちは星の中を歩いているわけですね」

女「お、ロマンチックだ」

男「頑張りました」

女「じゃああれはさしづめ天の川かな」

男「おお、そうですね、イルミネーションが映って」

女「うん」

男「……」

女「お、そうだ」

男「なんですか」

女「君、向こう岸に行ってみないか?」

男「いいですけど……なんでです?」

女「ほら七夕ごっこができるよ」

男「ああ」

女「……行かないのかい?」

男「一年に一度しかあえないのは嫌です」

女「それもそうだ」

男「しかしクリスマスに七夕ですか」

女「正確には織姫と彦星ごっこだね」

男「時期はずれじゃないですか?」

女「なに、会えるのが七夕ってだけで一年中いることにはいるさ」

男「それもそうです」

女「一年に一度ばっかりじゃなく、クリスマスにも思い出してやろうぜ」

男「見えませんけどね、いま」

女「まあねえ」

男「……」

女「…ところで、アルタイルとベガごっこっていうと格好よくない?」

男「ノーコメントで」

女「ちぇっ」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……」

男「なにしてるんですか?」

女「こうやって、ゴジラーって」

男「ああ」

女「うん、こうやって息はいてるとアルコール検査みたいだ」

男「…大人になりましたね」

女「うん…」

男「……」

女「……っと、こっちだよ」

男「ん、まっすぐじゃないんですか?」

女「うん」

男「てっきり公園に行くものかと」

女「それじゃあ君、サプライズがないだろう」

男「必要ですか?」

女「不可欠だよ」

男「はあ」

女「ま、帰りに寄っていってもいいかもね」

男「ええ、なんかコンサートやってるみたいですし」

女「お、調べてきたね」

男「ええ」

女「じゃあ、帰りに聴いてゆこうか」

男「はい」

女「♪~」

男「……」

女「……お」

男「ん?」

女「着きました」

男「ここですか」

女「サプライズだろう?」

男「まあ、途中からそうじゃないかとは思ってましたけれど」

女「わたしもそうじゃないかと思ってたよ」

男「神社…ですか」

女「さ、お参りしようぜ」

男「はあ」

女「……」

男「……人、ぜんぜん居ませんね」

女「うん、いいね」

男「はあ」

女「広々してる」

男「そうですね」

女「ふふっ」

男「…ご機嫌ですね」

女「まあねえ」

男「と、本殿に?」

女「うん」

男「じゃ、こっちですね」

女「ん」

男「なんで今日お参りなんですか?」

女「いやね、初詣でがあるなら末詣でがあってもいいだろう?」

男「はあ」

女「ほら、今年一年ありがとうございました、とね」

男「ま、それもそうですね」

女「それに、こっちのお社は正月には混むからねえ」

男「そういや今年の初詣は近場のでしたね」

女「うん、だから今日ね」

男「なるほど……?」

女「ふふっ」

男「なんですか、もう」

女「じゃあ、お神酒をお供えして」

男「あ、お神酒だったんですね、これ」

女「まあねえ」

男「はい」

女「ほら、お賽銭」

男「どうも」

女「じゃ」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……ん、静かだね」

男「ええ」

女「おまたせ」

男「いえ」

女「じゃ、帰ろうか」

男「はい」

女「はあ、本日のメーンイベントが終わってしまったね」

男「そうですねえ」

女「…本気かい?」

男「クリスマスのプランは任せろーっていったのはあなたですよ」

女「ま、そうなんだけど」

男「終わりなんですか?」

女「や、実はぽいっこともする」

男「ぽいっことですか」

女「うん、とりあえず公園いこうか」

男「はい」

女「……」

男「……」

女「…いやね、異教のお祭を素直に祝うのもシャクだったからさ」

男「はあ」

女「……怒ったかい?」

男「いえ、あなたっぽいなあと」

女「ふうん?」

男「うん。良かったですよ、末詣で」

女「そりゃよかった」

男「ふふ」

女「ん…」

男「……」

女「……」

男「人がいっぱいですね」

女「イルミネーションが眩しい」

男「賑やかです」

女「さっきとは大違いだね」

男「ええ、まったく」

女「うん、クリスマスだね。イヴだね」

男「はい」

女「光がやがやの中をカップルで練り歩く。いいね」

男「……」

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