男「サンタをいつまで信じてたかとかどうでもいいよね」女「たしかに」 (40)

最後まで書き終えているので一気に投稿します。

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    ○

男「だってどうでもいいじゃん、まじで。だからどうしたって感じ」

女「キャラ付けするのにちょうどいいのかも」

男「信じていた時期があるかないかを語らせるだけで、だいぶわかるからなあ。ところでキミはどうなんだ」

女「今の話の流れで普通聞く? いや、信じてたけどさ、小学校四年生まで」

男「へえ驚いた。キミのことだからてっきり最初から信じてなんかないとでも言うかと思ったよ。その年になにがあったんだい?」

女「おばあちゃんが死んだ」


男「おーけい、この話はやめにしよう」

女「なんで。別にいいよ気にしてないし」

男「こっちが気にするっつうの」

女「じゃあ私の話はいいとして、キミのほうはどうなの?」

男「いると思ってるよ。ていうか俺、将来サンタになるし」

女「まじか」

男「そりゃ結婚して子供ができれば男はサンタクロースになれるのさ、期間限定で」


女「結婚ねえ……」

男「まあまだ高校生だし考えるのは早いけど」

女「そもそも就職できんのか」

男「耳が痛いです」

女「私まで落ち込んできたよ」

女「ところで私もサンタになれるのかな」

男「なれるんじゃない?」


女「ふむ」

男「おっさんサンタより美人サンタに来てもらったほうがみんな嬉しいよ」

女「白毛ぼうぼうのおっさんだもんね」

男「今度コスプレしてよ」

女「やだ」

男「つれないなー」

女「サンタのコスってなんか寒そうだもん」


男「それもそうか」

女「それに赤色は好きじゃない。血の色だから」

男「よし次の話題にいこう」

女「なんでさ、聞いてよ」

男「どうせいやなことに結びつけるんだろ」

女「違う。血を見ると右手がうずくんだよ」

男「クリスマスどう過ごそうかなー」


女「くっ、スルーか。まあいい」

男「キミはどうするんだ?」

女「男と一緒にいたいな」

男「……」

女「ああそうか、そんなものは当たり前で、その上でどうしようかという話か」

男「いや違うって。なに、俺と二人がいいの」

女「決まってるよ。これまでの話の流れから、私がキミを好いていることは明白っ!」


男「はじめて知った」

女「というかキミは私とつき合ってないつもりだったのか」

男「俺達つき合ってたのか!」

女「うわあ結婚って言葉を聞いて私とキミとの将来を考えてたのに。私だけだったのか……」

男「ごめんごめん。つうか、え、それまじで言ってんの?」

女「たぶんクラスの三十人に聞いたら二十九人から同じ答えが返ってくるよ。ちなみにわからない一人はキミだ」

男「あとで友に聞いてくる」


女「で、私はキミが好きだと言ったわけだが?」

男「だから?」

女「キミも答えるべきだろ。ほんとに泣くよ」

男「いや嬉しいけどさ、俺も女が好きだったし。そうだつき合う?」

女「……なんかすごい傷ついた」

男「えっなんで!?」

女「キミにムードとかそういうのを求めることが間違いだったね。そもそも真面目に告白されたらたぶん引くと思う」


男「ひどいな」

女「だって私がいきなり改まって『ずっとあなたが好きでした』なんて言ったとこ想像して?」

男「……ちょっとどきどきする」

女「そうすりゃよかった」

男「まあそういうわけで、俺達が二人でクリスマスを過ごすとしてなにする?」

女「なんかこう、恋人になったんだろうけど、特別なことは思い浮かばないね」

男「恋人らしいことって具体的になんだろう」


女「さあ。でもさ、別に今までどおりでも周りからはつき合ってるって見られてたわけだし、今までどおりでいいんじゃないかな」

男「それでいいの? じゃあ二人でゲームしようか」

女「ちょっと待ってそれ本気で言ってるの?」

男「だって今までどおりでいいなんて言うから」

女「……ほんとだ、今までどおりだ」

男「そもそも俺達は今日こうしてお互いの気持ちを確認したけど、もっと前から周りにはつき合ってるって見られてたんでしょ?」

男「今さら『俺らつき合い始めたから』なんて言ったって馬鹿にされるだけ。前からじゃんって。じゃあいつから俺らはつき合ってたことになるんだ?」


女「え、なに急に」

男「気にならないの?」

女「それこそサンタをいつまで信じていたかと同じくらいどうでもいいことじゃない? 私はキミが好きで、キミも私を好きなんだから」

男「……かっこいい」

女「ふふん」

男「それはともかくとして、今までどおりで恋人らしいんだから普通にゲームでもしようよ」

女「いやせっかくのクリスマスなんだしクリスマスらしいことがしたいです」

男「恋人らしいの次はそれか」


女「クリスマスに彼氏の家でぷよぷよとかいやだよ私」

男「じゃあクリスマスらしいことってなんだろう。俺の家、クリスマスだからって特別なにもないよ」

女「もっとこう一般論で語ろうよ」

男「そう言われてもなあ」

女「ケーキ、は自分の家でも食べるから無理だとして」

男「俺は別にいいけど」

女「私がいやなの! 太るし」


男「見た目が変わろうが中身が変わらなければいいさ」

女「……」

男「どう、惚れ直した?」

女「ぶん殴りたくなった」

男「ごめん」

女「とにかくケーキは、というか食べるのはだめとして」

男「町を歩き回るのは疲れるし寒いからいやだ」

女「キミの家には弟くんがいるから変なことはできないし」

男「いや変なことってなんだよ。しないよ」


女「……」

男「どうしたの黙り込んで」

女「キミとつき合えるのはきっと私くらいだ」

男「かもね」

女「で、どうする?」

男「ぷよぷよしようか」

女「はあ……ま、いいさ」

男「じゃあそういうことで」


    ○

男「おい、俺彼女ができたよ」

弟「まじでか、兄ちゃんかっけー!」

友「ていうかお前には女がいたんじゃなかったけ」

男「その女とつき合ったの」

弟「なーんだ女さんか」

友「おいおい冗談やめろよ、お前ら前からつき合ってただろ?」

男「……」

男「まじでか」


    ○

女「あのさあ、やっぱクリスマスイブに恋人同士でぷよぷよとかどうなんだろう」

男「……」

女「いや楽しいのはわかるよ? 私だって好きだし、ぷよぷよ。組み上げるの楽しいじゃん」

男「隙だらけ」

女「あ、このっ! キミだって大連鎖組めるのにどうしてそう邪魔ばっかりするの。気持ちよくうたせてよ」

男「このゲームは連鎖を組み上げるゲームでもあるけど、それ以前にぷよを消すゲームなんだ」


女「なんなの急に」

男「ぷよを消せばお邪魔ぷよが発生し、相手のフィールドを埋めることができる。ゲームの目的は相手を窒息させること」

男「どうして邪魔をするかと言えば勝つためさ!」

女「彼女相手なんだからちょっとは手加減してよ」

男「明らかに加減したらそれはそれで機嫌悪くするじゃん」

女「これってクリスマスっぽいことかなあ、恋人っぽいことかなあ」

男「もちろん世間一般的なそういうこともできることはできるんだけど、俺はあんまりしたくないな」


女「どうして?」

男「急に俺が真顔でデート誘ってきたらどうする?」

女「殴るかも」

男「でしょ? もちろん俺はキミから誘われたら即オーケーだけどキミだってそんなキャラじゃない」

女「……今からデートしよ」

男「とにかくそういうことなんだ」

女「えっスルー!?」


男「これだって立派な家デートさ」

女「なんか騙された気分」

男「で話はぷよぷよに戻るんだけど、あんまりうまくない人は、連鎖というのは組むのが難しいんだと思うことだろう」

男「でも実際は違う。本当に難しいのは連鎖を消すことなんだなこれが」

女「タイミングの話?」

男「そう、何事もタイミングは大切。外は寒いし、今キミに連勝中で気分のいい俺はゲームをやめたくない」

女「……」

男「あっ電源消さないで!」

女「もう夜じゃないか! 家に帰らないといけないし、いったい私らなにやってんだよ!」


男「そ、そんな怒らないで」

女「キミは本当に私のことが好きなのか!?」

男「そりゃ好きだけど、今までの関係が崩れるのもいやだなって思って」

女「あれか、最近流行りの草食系男子か」

男「久しぶりに聞いたよその言葉。もう昔の言葉じゃん」

女「そんなことはどうでもいいっ! ええい口を突き出せ」

男「なにす――」

女「ぷはっ。きょ、今日のところはこれで許してやるから、ちゃんと反省してよね」

男「……ひゃい」


    ○

弟「相変わらず兄ちゃんぷよぷよ強いな」

男「……」

弟「これでオンラインじゃ中級者レベルってんだから怖いね、世界は」

男「……なあ弟よ」

弟「ん?」

男「彼女っていいぞ」

弟「まじでか、すっげー!」


    ○

男「なあ友よ、彼女っていいぞ」

友「●すぞ」

男「ふふふ。あ、おーい女ー」

女「……」

男「あ、あれまだ怒ってる? 今日クリスマスだし、今日から冬休みだしさ、ねえってば」

女「……」

友「まあなんだ、どんまいどんまい」


男「今日もゲームしようよ」

女「キミは昨日の今日でそれか!」

男「だってさ、なんか怖いんだ。女を見てるといつも以上にどきどきするっていうか。だって昨日……」

女「それ以上は言わなくていいよ。わかった、今日も行く」

男「お、おう」

友「なにこれ怒っていいの? 殴っていいの? ねえなにこれ」

女「そういうわけで友、男は借りてくぞ」

友「すっげ腹立つ。まじでお前ら覚えてろよ? いやまじで!」


    ○

男「……」

女「すき」

男「っ!」

女「引っかかったな、隙だらけと言ったのさ」

男「ずるいぞ」

女「……」


男「すき」

女「私もキミが大好き」

男「なっ! あーしまった……」

女「ふふん、どうやらキミは調子が悪いようだね。昨日あんなに勝ち越してたのに」

男「ちくしょう……」

女「この手のやり取りでキミが私に勝てるとは思えないね!」

男「……」


女「あっ電源消すな!」

男「楽しい?」

女「そりゃキミをぼこぼこにできて楽しいよ」

男「そうじゃなくてさあ、なんていうかその、ちゃんと彼氏らしくできてるのかなって」

女「驚いた、そんなこと心配する人だったのか。ていうか気にしてるんならちゃんとしなよ」

男「んなこと言ったって、うちは別にクリスマスだからって特別なことするわけじゃない」

男「朝起きたら枕元にプレゼント! なんてなかったの。父さんも母さんも優しい人だけどさ」


男「だからクリスマスらしいことなんてわかんないし、恋人らしいことも。それでキミは楽しいのかなって」

女「でゲームをしようなんてキミらしくていいと思うけどね」

女「私はなによりもそういうキミらしいところが好きでつき合ってるよ。だから無理に変わる必要はなし」

女「むしろちゃらい誘い方なんてしてきたらぶっ飛ばしてやるから」

男「……かっこいいな、ほんと」

女「まあそういうわけだから、クリスマスだといってプレゼントを用意する必要もないわけだ」

男「あっそれが目的か。いいさ、キミといる時間が俺にとって――」


女「はいはい、いいからそういうの」

男「ひどい」

女「このほうが私達らしいさ」

女「クリスマスらしいも、恋人らしいもわからないけれど、こうして私達らしくあればきっとこれからもうまくいく」

男「なんか語りだした」

女「サンタクロースを信じていなかった私は、男と出会って再び信じることができるようになった」

女「なにせ彼は将来、私達の子供のサンタになるのだからね」


男「女!」

女「ふふ、そんな抱きつかなくたっていいよ」

男「キミのこと絶対幸せにしてやるから!」

女「わかってる」




男「いやでも、高二のうちから結婚を前提としたつき合いって、なんか重くね?」

女「……」

男「いたっ痛いって! 殴らないで、蹴らないで!」


    ○

男「……よし」

子「おっちゃんだれ?」

男「しまっ! や、やあよい子のキミ。俺……わたしはサンタクロース!」

子「うそつけ。ひげないし、さては偽サンタだな!」

男「違う違う、ほらここにプレゼントあるでしょ」

子「まさか配られたプレゼントを奪いに来たのか! お父さんお母さーん!」


男「しーっ。まだお母さん寝てるから、起こしちゃうよ」

子「泥棒だーっ!」

男(どうしよう、さすがに父親がサンタクロースとは言えないよな……そうだ!)

男「ふふ、ふっふっふっふふふふ」

子「な、なんだ」

男「よくぞ見破ったな少年。わたしの姿を見よ!」

子「お、お父さん!?」


男「わたしがサンタクロースというのは本当だ。だが一人で世界中の子供にプレゼントを贈ることは不可能だと考えたことはないか?」

子「たしかに」

男「そこでこのように子供達の親を遠隔操作してプレゼントを置いているのだよ!」

子「すげーかっけー! もっとお話しようよ!」

男「む……すまない、そろそろ次の子供のところへ行かなくては」

子「また来年会えるかな?」

男「会えるさ……キミがいい子にしていれば」


子「ぼく、絶対いい子にしてるから! また会おうねー!!」

男「今日のことはみんなには内緒だ。さらば……」

子「あっお父さんが倒れた! 大丈夫、お父さん?」

男「ん……あれ、どうしたの。なんで俺こんなとこにいるんだっけ」

子「ふふん、お父さんには内緒だもん」

男「そっか。それじゃ俺も寝るから、お休み」

子「お休みー!」


男(女、子供の夢は守ったぞ……!)



女(……みたいな。彼のことだ、将来こんなことになるだろうね)

女「ふふっ」

姉「なにあんた、急に笑い出して気持ち悪いぞ」

女「彼氏のいないお姉ちゃんにはわからないことさ」

姉「なにぶっ飛ばされたいの?」


女「さあて男と電話しよ」

姉「くっそ、あたしにも男くんをわけろ!」

女「ふふふ」

姉「いいなあいいなあ」

女「……あれ、出ないぞ」

姉「え?」

女「いやまさか、たしかにこの時間帯はいつも寝てるらしいけどさすがにクリスマスにそれは……」


姉「妹……」

女「だって冬休みに入ったばっかだよ!? なにそれ、今日も別れるときちゅーしたんだよ私から!」

姉「落ち着いて」

女「いつもどおりでいいって言ってもそりゃないよ! うわーん!」

姉「明日があるさ」

女「慰めてくれよぅ」

姉「しょうがないなあほんと」

女「お姉ちゃん!」

姉「……強く生きろ我が妹よ」

以上で終了です。
クリスマスということでむしゃくしゃしてやりました。

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