船長「宇宙海賊には辛い時代だな……」(19)

船長「地球軍とコロニー軍の戦争が始まって宇宙船貿易が規制されてしまった」

船長「輸送船襲撃で利益を得ていた俺達宇宙海賊にとっちゃこれは死活問題なわけで……」

船長「戦争の行く末にゃ興味はねェが……どうにかしねぇと食いっぱぐれちまうしなあ」

船長「どうすりゃ良いと思う、副官」

副官「ジャンク屋紛いのことをするか、傭兵紛いのことをするか、あるいは両軍の船を襲撃するか、ですね」

船長「どれも厳しそうだな」

副官「ジャンク屋にも傭兵にもそれぞれ相互扶助組織がありますが……」

副官「まずこれに参加せねば仕事が回ってくることはない。が、参加するにはいずれかの紹介か高額の上納金が必要」

副官「我々にはこのどちらもなく、勝手にジャンク屋や傭兵を名乗ればまずギルドから目の仇にされる」

副官「というわけで前者二つの案は不可能ですね」

船長「一番最後に至ってはまず無理だろ……そもそも俺達の船って戦艦じゃねえし」

副官「改造してどうにかビーム砲だけ取り付けた輸送船ですからね」

船長「言ってて悲しくなるな」

副官「そも、このご時世に宇宙海賊という道を選んだのが全ての間違いだったのでは?」

船長「やめてくれえ」

船長「ロマンだったんだよ……宇宙を股に掛ける男の中の男」

船長「誰にも縛られず、星の海を巡る宇宙海賊……ってな!」

副官「宇宙海賊を名乗ってはいますが、実態はいいとこ運び屋ですよね」

船長「やめろよ。現実を突きつけるの」

副官「たまーに個人商船を襲撃したりしましたが成功率は三割方ですしね」

船長「やめてくんない?」

副官「失礼」

船長「……もう宇宙海賊とは到底言い難いってことは認める。運び屋で良い」

船長「けど、運び屋にも厳しいご時世じゃあないか? ええ?」

船長「なんだって戦争なんか始めてくれちゃってんだよ……」

副官「地球に居座る特権階級と宇宙へ追いやられた移民との確執が発端ですね」

船長「はぁ……まったく……」

副官「溜息を吐きたいのはどちらかというと私です」

船長「あぁん? なんでよ」

副官「先々月、先月と給料が未払いなのですが」

船長「……ツケといて」

副官「何度目ですか」

船長「……すいませんほんとすいません……でも仕方ないんです」

副官「……」ハァ

船長「うう……船の維持費もかかるし……燃料代やらなんやらで俺だって手元にほぼ金がねぇんだよぉ……」

副官「はぁ……」

船長「……溜息が心に刺さる……」

船長「よしわかった。進路を中立コロニーに取る」

副官「何をなさるおつもりで?」

船長「コロニーで住み込みバイト出来るところを探す」

副官「え」

船長「宇宙海賊は一旦廃業だ。まずは従業員に給料を払わないと……」

副官「船長、貴方……」

船長「俺だってキャプテンなんだ……それくらいの気概は見せなくちゃな」

船長「あと……もう従業員に逃げられたくない……」

副官「あぁ……」

副官(正直そろそろ逃げようかと思ってたとは言える雰囲気ではないですね)

船長「よし、針路中立コロニー! 抜錨!」

副官「無重力に抜錨も何も」

船長「気分の問題だ! 行くぞ!」

副官「ヨーソロー」

船長「いざ、出発!」

【中立コロニー跡】

船長「……で……」

副官「…………」

船長「……これは、どういうことだ……? 中立コロニーの座標は?」

副官「座標はここであっています。……つまりこれは、残骸、でしょうね」

船長「おいおい、マジかよ……中立コロニーがぶっ壊されるって……どうなってんだよこの戦争」

副官「……ッ、むごい……」

船長「……船を止めろ。周囲の熱源反応はあるか?」

副官「……ゼロです」

船長「……。ここに浮いてるの、全員死んでるってか……?」

副官「……はい」

船長「胸糞悪ィな……」

副官「……ええ」

船長「流石の俺も、こりゃちょっとな……」

副官「……コロニーが崩壊したのは、つい直前のように見受けられます」

船長「そうか……」

副官「……」

船長「……ここに住んでた奴らにゃ悪いが、俺達もある意味では危急存亡の時だ」

副官「ええ」

船長「残骸を調査して頂ける者は頂いていこう。ジャンク屋共に持ってかれる前にな」

副官「アイアイサー」

船長「……で、だ」

副官「はい」

船長「まさかの……まさかの機動兵器なんですがこれは……」

副官「……比較的損傷の少ないコロニー基幹部に残されていた機体ですから……無傷ですね」

船長「これさあ、地球軍の機番が掘られてるよな……」

副官「ええ。しかしデータベースに該当はありません。おそらく新型機かと」

船長「……中立コロニーに、地球軍の新型……コロニー崩壊はコイツが原因で……?」

副官「やもしれませんね」

船長「とんでもねえ拾いもんしちまったな……」

副官「では捨てますか?」

船長「……まさか」

船長「最高の拾いモンだぜこりゃあ!」

副官「ええ、地球軍、コロニー軍、どちらも絶対に高く買ってくれるでしょうね」

船長「売ればとんでもない額になるよなあ!」

副官「もう間違いなく!」

船長「おっしゃ、そうと決まれば近くのコロニーに向かうぞ! 早く売っぱらっちまおう!」

副官「給料ちゃんと払って下さいね!」

船長「わぁーってるって! 船もアップグレードしてえしな! よぉし抜錨!」

副官「ヨーソロー!」

【航行中】

船長「ところでさ」

副官「はい」

船長「ちょっとさっきの新型に乗ってきても良いか?」

副官「はい? なんでです」

船長「や、ほら、男は誰でも人型機動兵器が好きっつーかさ……船だけじゃなくてあーいうのにも憧れがあんのよ」

副官「……なるほど」

船長「まして新型だろ? どんな機能が付いてるやら……」

副官「確かに気になるところではありますね」

船長「つーわけで行ってくる」

副官「あ、ちょっと船長!」

【新型機コクピット】

船長「ウヒョー! 全周囲モニターかよ! 旧型とは違ぇなおい!」

船長「リニアシート完備! 機体がまんま自分の手足ってか、すげぇな!」

副官『私に操舵を任せて随分楽しそうですね』

船長「おっ、通信か……ははは、悪いな」

副官『適当に切り上げて戻ってきて下さいね。……尾けられています』

船長「……誰に?」

副官『わかりませんが……ジャンク屋か、同業者かでしょう』

船長「わかった。いざとなったらコイツで出るぜ」

副官『ハァ!? 売り物に傷つける気ですか? 馬鹿なんですか?』

船長「馬鹿とはなんだお前……」

副官『船の扱いも大したことない船長が機動兵器使って傷付かないで勝てるわけないでしょう』

副官『新型故にそれには大きな価値がありますが、新品ならより高値になるんですよ』

副官『いつものように全力で逃げるか、最悪デブリを使っての闇討ちでどうにかなりますから』

副官『だから商品に傷つける真似は止めましょう』

船長「いやいや、男としてコイツに乗って敵を撃破するっつー夢は捨てられないな」

副官『宇宙海賊かエースパイロットか、せめてどちらかの夢だけにして置いて下さい』

船長「宇宙海賊でエースパイロットだろ、やっぱ!」

副官『4番でエースじゃないんですから……』

船長「まあいいさ、とにかく奴らが強硬手段に出たら俺はコイツで行くぜ」

副官『……本当に勝手な人ですね……』

今日はおしまい
種やらなんやらのパクリという名のオマージュということで

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