京太郎「部キャプは王道」(218)

代行

狭いとこが落ちつくのってなん(

己のカルマと戦う京太郎の前に現れたステルスモモ

彼女から持ちかけられた悪魔の契約に対して、決意を固めたはずの京太郎の心は揺らぐ

彼は自らの生き方を切り開くことができるのか!?



京太郎(師匠……すみません……)

京太郎(俺はやっぱり、自分の身がかわいい臆病者みたいです……)

京太郎「分かった、そちらの要求を飲もう」

桃子「あなたならそう言ってくれると思ってたっす」

桃子「合宿中は無理に行動を起こさなくて良いっす」

桃子「実際に行動に移すのは、清澄に帰ってからということで」

京太郎「分かった。しかし今は情報が足りない」

京太郎「うちの部長とそっちの先輩ってのは、一体どれくらい親密なんだ?」

桃子「……名前」

期待のまなざし

ふむふむ
期待

支援

この前の続きか、今回は書き溜めあるのか?

京太郎「ん?」

桃子「あの女、私の先輩を下の名前で呼びやがったんす!」

桃子「私でさえまだ苗字に先輩って付けただけなのに……」ギリッ

京太郎(こ、これは……)

京太郎(百合場面名鑑収録「下の名前で呼んで」の亜種か!)

京太郎(いやいや、喜んでる場合じゃないだろ)

京太郎(落ち着け、冷静になるんだ)

京太郎(たかが下の名前で呼ぶようになっただけで、そこまで危険な段階に入っていると言えるか?)

京太郎(下の名前で呼び合うくらいまでなら別に……)

京太郎(…………)

京太郎(かじゅ久、いや、久かじゅ……か)

京太郎(アリだな)

京太郎(部長という職務の重責……そこから生じるストレスを抱えながら部活を発展させようとしてきた二人。奇しくもそれぞれが在籍する麻雀部は歴史がゼロと言っても過言ではない状態の新生部。同じような境遇にある者同士がある日交錯したとき、物語は始まる)

京太郎(ん?鶴賀の部長はカマボコみたいな口の人だっけか)

京太郎(まあいいか、立場的には似たようなものみたいだし、やはりそこから生じる共感g)

桃子「不愉快な妄想をしているようなら、あんたにはもう用はないっす」ニコッ

京太郎「!? ち、違うんだ! 待ってくれ!」

桃子「次はないっすよ?」

桃子「とにかく、くり返すっすが方法は問わないので、可及的速やかに処理をしてくださいっす」

桃子「こうしている間にも、あの女の毒牙が先輩に迫ってるんっすから」ギリッ

京太郎(これは……マジだな)ゴクリ

桃子「最終的にあの二人の接触を断つことができれば良いことにするっす」

桃子「だけど、もしも間に合わなかったら、その時は……」ゴゴゴ

京太郎「分かってる! 分かってるからそれだけは……それだけは許してくれ…」

桃子「じゃあ、今日のところはこれくらいにしておくっす」

桃子「期待してるっすよ、須賀京太郎君?」

桃子「あ、それと、万が一先輩の着替えを覗くとか、そういうことをした場合もその場で処刑確定なので注意してくださいっす」

桃子「では」スゥ…

京太郎「ふぅ……」ドサ

京太郎(なんてことだ……まさかこんなことになるなんて……)

京太郎(どうすれば……師匠に助けを)

京太郎(いや、それだけは絶対にできない)

京太郎(俺の尻拭いを師匠にさせるなんてことは、絶対にあってはならない……)

京太郎(しかし、師匠の思いを踏みにじることも避けたい)

京太郎(くそっ……八方塞がりか…)

前のつづづづづきか

京太郎(……いや、待てよ)

京太郎(今のこの状況、一見すると男である俺が百合の園を土足で踏み荒らそうとしているように見える)

京太郎(しかし、今俺がそんな行動に出ようとしているのは、紛れもない百合娘・東横桃子からのアクションがあったからだ)

京太郎(実際のところこれは、百合娘が自らの願望を成就させるための手段だと考えられないだろうか?)

京太郎(ならば今の俺は、百合の舞台の上にある一つの小道具……百合の花を咲かせるためだけに存在する、ひとつの背景に過ぎない)

京太郎(それならば……俺は飽くまで流れの中で求められ、使われているに過ぎない!)

京太郎(そう、主人が執事に……透華さんや衣ちゃんが師匠に命じて、師匠がそれに応えるという関係のように)

京太郎(俺が桃子さんの要求に応じるのは、何の違和感もない行動だと言えるんじゃないか!?)

京太郎「く、くくく」

京太郎(これは、むしろ僥倖かもしれん)

京太郎(行動の理由を自らの外に置きつつも、それでいて自らのためになる行動ができる)

京太郎(しかもそれは、俺自身の規範に逆らうものではない)

京太郎(いいねぇ、望むところだ)

京太郎(やってやろうじゃないか!)

京太郎(俺は舞台の上で、俺の役を演じきってやる!)

京太郎(アトモスフィア京を舐めるなよ!!)

うむ

――久主催部屋――

久「その手を鳴かずに進められるのね…」

ゆみ「これを鳴いて和了れる相手とは思っていない」

久「あら、随分と評価してもらってるみたいね」

ゆみ「当然だ、聞くところによるとインターミドル時代も猛威を振るっていたそうじゃないか」

ゆみ「高校に入ってから麻雀を始めた私から見れば、大先輩だよ」

久「いやねぇ、そんなことまで調べてあるの? ちょっと怖くなっちゃうわ」

ゆみ「敵情視察は戦略の基本だ」フッ

久「怖いわね、滅多なことができなくなっちゃう」

京太郎(ふむ、思った以上に親密になっているようだな)

京太郎(桃子さんの杞憂というわけではなさそうだな)

京太郎(部長が加治木さんを誘った時に下の名前で呼んでるのを見て、大慌てで俺に話を持ちかけてきたわけか)

京太郎(凄まじい行動力……いや、執念と呼ぶべきか)

京太郎(しかし……)

美穂子「うえ……竹井さん」

久「うーん、ねぇ美穂子」

美穂子「す、すみません! 失礼なことを……」

久「いや、別に上埜って呼ばれるのを気にしてるわけじゃないのよ?」

久「ただ、ゆみも私のことを名前で呼んでるし、美穂子も私のことを名前で呼んでくれないかしら」

久「ほら、私も“美穂子”って呼んでるわけだしね」

美穂子「え、でも……」

久「よし、決めた」

美穂子「え?」

久「“久”って呼んでくれないなら、なんにも反応してあげないことにするわ」

美穂子「え、そ……そんな、冗談ですよね?」

久「……」

美穂子「た……竹井、さん?」

猿さんに気をつけろ
だいたい六分間隔投下だと大丈夫

書き溜めあるなら猿よけせずにはいられないな

久「……」

美穂子(うぅ……)

美穂子「ひ、久さん」

久「うーん、“さ”が続くと響きが悪いわねぇ」チラッ

美穂子「そ、そんな……」

久「あーあ、さみしいなぁ」チラッチラッ

美穂子「……」

美穂子「……久」ボソッ

久「……」スッ トトト

美穂子「え?」

久「……」ギュウ

美穂子「えっ!? ひ、ひゃ」

久「なぁに、み・ほ・こ♪」フゥ

美穂子「あ、わあうああうああ」カアァァァ

美穂子(息が、息が耳に……!)

わっふるわっふる

衣「おい久、対戦相手の手牌を盗み見る気か?」

久「あら、ごめんなさい。そんなつもりはちっとも無かったんだけど」

久「あんまりにも美穂子が可愛いもんだから、自分を抑えきれなくなっちゃってね?」

美穂子「うぅぅ……」

ゆみ「まったく」ニガワライ

京太郎(…………)

京太郎(たまらん)

京太郎(なんだなんなんだこの最高の桃色空間は!?)

京太郎(ってか部長! あんた最高だよ!!)

京太郎(女の子を手玉に取るすべを身につけすぎてて、逆に怖い!)

京太郎(これは間違いなく歴戦の百合娘!)

京太郎(今までも相当な数の生娘をその毒牙にかけてきたに違いない!)

京太郎(はっ!?)ピキュイィィン

この京ちゃんは許される

ピキュイィィンでワロタ

京太郎(そ、そういえば、うちの部室ってやたら恵まれた環境にあるよな……)

京太郎(部員数ギリギリ団体戦に出場可能なくらいしかいない弱小中の弱小部なのに)

京太郎(しかも、中古で買っても決して安くない自動卓まである)

京太郎(ここから導き出される結論、それはすなわち……)

京太郎(百合売春!!)

京太郎(いや、実際には売春というより、何かしらの備品をかけての麻雀勝負だったのではないだろうか)

ベッドがあるのも気になるな・・・

京ちゃんはハーレムだったりホモだったり殺されたり百合男子になったり忙しいな

京太郎(「部員がいないからちょっとだけ付き合ってくれない?」と誘われ、軽い気持ちで
部室に足を踏み入れた彼女たちだったが、そこで会話をしていくうちに、次第に久という
存在に惹かれるようになる。そしてある日、部室に置く備品をかけての勝負を持ちかけら
れる。賭けられるものがないように見えることを久に伝えると、彼女は自分の躰を賭ける
と言い出す。はじめは驚いて勝負を拒否するが、あっさりと久は引き下がる。拍子抜けし
た状態で帰宅するも、ベッドの中でそのことを反芻し、勝負を受けなかったことを後悔す
る。そして翌日、放課後になると真っ先に麻雀部の部室に向かい、そこの主に「賭けをし
よう」と持ちかけるのだ。そしてギリギリの勝負の末、見事勝利を掴み取る。高鳴る胸の
鼓動。なんとか平静を保とうとしていると、久がゆっくりと立ち上がり、部屋の隅のカー
テンをそっと開く。そこには真っ白なシーツがかかったベッドが。ベッドの上に腰掛け、
制服を徐々に崩しながら、誘うような目つきで見てくる久。そして耐えられなくなった欲
望がり性を粉々に打ち砕き、久の体躯を、息を荒げながら乱暴に組みしだく……。一度味
を知ってしまったらもう後には戻れない。自らの私物やポケットマネーを賭けてまで戦い
に挑み、徐々に泥沼にはまってゆく。絶妙なバランスで勝敗を調整しながら、久は彼女た
ちの心を弄んでいく……)

コピペ誕生の瞬間である

しえ

京太郎(こう考えれば、不自然なほど揃っている備品の数々、そしてあのベッドの説明がつく)

京太郎(そして和は、かつて部長が甘い声を上げながら、時には上げさせながらシーツを濡らしていたなどということに微塵も気づかず、そのベッドで無防備に睡眠をとっているのだ)

京太郎(…………)

京太郎(い、いかん、これは危険だ)

京太郎(平常心が保てなくなりそうだ……落ち着け俺)フゥ

ゆみ「ん?」

京太郎(っ! まずい!)

京太郎(アトモスフィアモードを……冷静に……)スゥ

ゆみ(…………気のせいか)

京太郎(……危なかった)

京太郎(しかし、さすがと言わざるを得ないな)

京太郎(あの桃子さんの気配を、完全に隠蔽していない状態とは言え察知できるだけ……)

わっふるわっふる

京太郎(しまった、本来の目的を忘れるところだった……!)

京太郎(今は百合妄想に浸っている場合ではない。何とかして現状を打開しないと……)

京太郎(しかし、俺のSPY-Lレーダーの情報が正しければ、キャプテンはもう既に陥落しているが、肝心の部長が問題だ)

京太郎(今回のオーダーは部長を加治木さんから引き離すこと)

京太郎(最終的に部長そのものをどうにかしなければ意味がない……)

京太郎(しかし、ここに来てからの部長の姿を見る限り、彼女を特定の誰かと結びつけることはかなり難しい)

京太郎(おまけに今回は時間が限られている)

京太郎(一度この合宿が終わってしまえば、これだけのメンバーが一堂に会することは殆どなくなるだろう)

京太郎(解散してしまえば部長と加治木さんの接触自体は減るだろうが、もし個人的に合うといった状況になった場合、それを事前に察知するためには部長のプライベートに張り付く必要が出てくる)

京太郎(そして周囲にフレアとして使えそうな人材がいるとも限らない)

京太郎(合宿終了まであと何時間だ?)

京太郎(なにか……何かないのか……)

京太郎(師匠……俺に力を……)

前スレのスレタイプリーズ

京太郎(……ん? 待てよ?)

京太郎(このSPY-Lの反応……)

京太郎(はっ!?)

京太郎(そうか! この手があったか!)

京太郎(…………しかし、これは成功する確率が高いとは言えない……)

京太郎(どうする、別の手を考えるか……?)

京太郎(いや、迷っている時間はない)

京太郎(失敗すればジ・エンドだが、何もせずにいて失敗しても結果は同じだ)

京太郎(ならば、俺は全力を尽くして死ぬ方を選ぶ)

京太郎(それに、これは紛れもない百合娘からの願いでもある)

京太郎(指をくわえて見ているだけなどというのは、百合男子道に背く行い!)

京太郎(よし! 『オペレーションNH』始動だ!!)

>>34
thx!
しえん

支援

――清澄部屋――

和「はぁ、流石に疲れましたね」

咲「朝から晩まで打ちっぱなしだったもんね……」

咲「優希ちゃんなんか爆睡してるよ」

優希「ZZZzzz……」ホボゼンラ

和「ゆーき……なんてはしたない…」

咲「それにしても、今回の合宿は勉強になったなぁ」

和「ですね、みなさんやっぱり決勝まで残っただけありました」

咲「はぁ、京ちゃんも来れてたら強くなれたんじゃないかなぁ」

和「」ムカッ

和「もし来れていたとしても、部長の命で雑用をやって終わりだったと思いますよ」イライラ

咲「うーん、部長ももう少し京ちゃんに優しくしてあげればいいのに……」

和「」イライライライライライライライライライライラ

咲ちゃんは京ちゃんにお熱なのか

咲京いいな

しえ

和「み、宮永さ」コーイーシチャッタンダ タブン キヅイテナーイデショー

咲「あ、これって」

咲「京ちゃんからメールだ!」パァァ

和「」プチッ

和「みやながさ咲「え?」

和「!」ガバッ

和「どうしましたか宮永さん!まさかセクハラまがいのメールを!」

和「前からうすうす怪しいとは思っていたんですが、やっぱりやらかしましたかあの変態!」

和「私たちの方を見てたまにニヤっと笑っていたんですよ! 気持ち悪いなぁとは思っていたんですが部活の平穏を乱したくなくて今まで野放しにしてしまいました! 申し訳ありません!」

和「今すぐヤツからのメールや着信履歴を全て削除してアドレスからも消去、ついでに着信拒否リストに入れて、麻雀部、いや清澄高校、いいえ長野から永久追放してしまいましょう!!」

和「大丈夫です!裁判なら両親に頼めば必ず勝てますし、宮永さんは私が必ず守りきってみせます!」

落ち着いてのどっち

咲「え? いやそんなメール京ちゃんはしてきてないよ?」

咲「ただ、ちょっといきなりっていうか、よく分からないっていうか……」

咲「ほら、これ」スッ

和「…………え?」

和「……何ですか、これ?」

咲「私も全然分からない……」

咲「あ、も、もしかして……」

咲「京ちゃん……あの人のこと……」ジワッ

和「!?」

和(私の咲さんを泣かせるなんて…………)

和(凌遅刑が神からの祝福に思える位の罰を与える必要がありますね……!)ゴゴゴ

和「今すぐ電話して、目的を問いただしましょう!」

咲「う、うん」ピピッ

和(短縮の0番!?)ワナワナ

咲「…………電源が入ってないみたい」

和「宮永さん! こんな訳のわからないお願いなんて聞く必要ありません! もう今日は寝ましょう!!」

咲「…………ううん、行くよ、私」

咲「きっとなにかワケがあるんだよ」

咲「私は京ちゃんを信じる。京ちゃんの力になりたいから……!」グッ

和「」イライラブルブルワナワナバキバキグシャグシャバリバリゴクン

いつもの和さん

このスレは京太郎に偽装したキャップのキャップによるキャップのための高度な情報操作スレに違いない(確信)

和「…………分かりました」

和「では、私もご一緒させていただきます」

和「私も(咲さんの)力になりたいですから」ニッコリ

咲「原村さん……!」

和「行きましょう、あんまり遅くなると、寝てしまうかもしれませんよ」ニコニコニコニコ

咲「うん! 行こう!」

――鶴賀部屋――

桃子「ん?」

桃子(この気配……)

桃子「ちょっと出てくるっす」

ワハハ「んー? あんまり遅くなるんじゃないぞー」ワハハ

桃子「はいっす」

支援

ガチャ バタン

桃子「で、なんの用っすか? 須賀京太郎」

京太郎「今、手を打っているところです。おそらく明日出発するまでには結果が出るでしょう」

桃子「!!」

桃子(本当? ブラフ? いくらなんでも早すぎないっすか?)

桃子「合宿中は無理みたいなことを言ってたと思うんすけど、あれはなんだったんすかねぇ?」

桃子(これは警戒しなくてないけない? いやしかし……)

京太郎「俺の認識不足でした。むしろこの機会を逃すわけにはいかないんです」

京太郎「……そして、この作戦を遂行するにあたって、桃子さんにも協力していただかなくてはなりません」

桃子(きたっ!)

桃子「確かに協力するとは言ったっすけど、内容によるっす」

桃子「当然納得できる理由も話してもらわないと」

京太郎「理由までは……ただ、殆ど手間は取らせません」

京太郎「大丈夫です。俺を信じてください」

京太郎「必ず貴女の望む結果をご覧に入れます」

桃子(……話だけなら、聞いてやるっすか…)


――外――

桃子(一応、要求されたことはやったっすけど、あれは一体何の意味が……)

桃子(あとはここで少し待てばいいって……)

桃子(少しってどれくらいなんすかね?)

桃子(一応アイツの行いの証拠は、分散して保管してあるから、今のうちに処理するのは無理っすけど……)

桃子(10分待って何も起こらなかったら、処刑確定っすね)

一レスの行数制限は30行。一応

モモ怖いよモモ

このモモはやりかねない

ゆみ「……」タッ タッ タッ

桃子「……先輩?」

ゆみ「桃子」

桃子「!?」ビクッ

桃子(こ、これは……)

桃子(先輩……怒ってるっすか……?)

桃子(一体何が……)

ゆみ「桃子」

桃子「は、はいっす!」ビクッ

ゆみ「ひとつ、聞きたいことがある」

桃子「なな、なんっすか?」ビクビク

ゆみ「須賀京太郎をいう男の事を知っているか?」

桃子「!!??」ビックゥ

桃子(ま、まさかアイツ……みんな先輩にバラして……)ブルブル

桃子(こ、殺すっす!!)

桃子「な……んのことだか、さっぱりわからないっすね」プイッ

ゆみ「声が上ずっているぞ」

ゆみ「その反応、やはりヤツの言っていったことは本当だったか……」

桃子(なんで、そんなに怒ってるんすか……)

桃子(なんで、そんなに悲しそうな顔するんすか……)

桃子(私のこと、恋愛ではないにしても、好いていてくれていたんじゃないんすか……)

桃子(じゃあなんで……今まで……勘違いさせるようなこと)ギリッ

桃子(あんまりっすよ……)

ゆみ「桃子……本気なのか?」

桃子(……!)ギリリッ

桃子「そうっすよ! 本気っす!」ジワッ

桃子「でも何が悪いんすか! 先輩が悪いんっすよ!」ポロ

桃子「私は……私は、ただ……」ポロポロ

しえ

ゆみ「……」スッ

桃子「っ! 触らないでくださいっす!!」バシッ

ゆみ「」ギリッ

ゆみ「桃子!」グイッ

桃子「きゃ!?」ドサッ

桃子(え? 何? 押し倒され……)

ゆみ「桃子」

桃子「は、はい……」

ゆみ「お前を見つけたのは、私だ」

桃子「え、あ、はい」

ゆみ「だから、お前は私のモノだ」

ゆみ「誰にも渡しはしない」ギュウ

桃子(…………???)

わっふるわっふる

支援

かじゅもも支援

濡れ場で誤爆とは良い度胸だ

ゆみ「私が悪かった」

ゆみ「お前は、なんだかんだでちゃんと分かってくれていると思っていた」

ゆみ「全く、笑い話にもならないよ」

ゆみ「だから」

ゆみ「しっかりと、躾てやらないといけないな」

桃子「はぇ?」

ゆみ「だれがお前の持ち主なのか」

ゆみ「心にも、躰にも」

ゆみ「刻みつけてやる……!!」グイッ

桃子「な、にを んんうぅ!?」チュウゥゥ

桃子(これは一体何がどうなってこうなったんすかぁぁぁ!?)

ゆみ「ふぅ」

桃子「はぁ、はぁ……せ、んぱ」ハァハァ

ゆみ「……」グイッ

桃子「や、ちょ、そこは!?」ググッ

ゆみ「初めてか?」

桃子「……はぁ…? そりゃ、そうっすけど……?」

ゆみ「そうか、そうじゃなかったらモモを殺して私も死んでいたよ」

桃子「ぇ?」

ゆみ「それに、痛くなければ躾にならないだろう?」

ゆみ「一生忘れられないくらい、痛くしてやるからな」

桃子「ちょ、ま、せんぱ」



~少し前~

――廊下――

ゆみ「やれやれ、さすがに疲れたな」コキコキ

ゆみ(しかし……楽しかったな)フッ

ゆみ「…………ん?」

ゆみ(これは、なんだ?)

ゆみ(押し隠したような気配……モモに近いが、違う)

これは病んカップル

いやあかじゅ先輩は強引っすね

ゆみ(それにこの感じ……久たちと打っている時にも一瞬感じた)

ゆみ「そこかっ!」バッ

京太郎「流石ですね」スゥ

ゆみ「! 君は……確か清澄の男子部員」

京太郎「! これは……覚えていただけているとは、意外でした」

ゆみ「なぜここにいるんだ? 久は君を置いてきたと言っていたはずだが」

京太郎「ええ、まあちょっとした理由がありましてね」

京太郎「加治木さんに接触したのも、その理由と関係していまして」

京太郎「少しお時間をいただけないでしょうか」ニコッ

ゆみ(……どういうつもりだ?)

ゆみ(この男、確かに気配を感じることはできたが、まるであえて私に察知させたような、そんな不自然さがあった)

ゆみ(つまり、今の今まで私にも気づかれないような状態で”何か”をしていた可能性が高い)

ゆみ(それでも、犯罪行為をしようとしていたなら、気配を消した状態でいくらでも出来たはず)

ゆみ(私に直接危害を加えるようなことは、今の時点でするつもりはないということか)

ゆみ(……ここで誘いに乗らなかった場合、この男は再び姿を消すだろう)

ゆみ(目的が全くわからないままロストするのは避けたい……)

ゆみ「わかった、話だけなら聞こう」

京太郎「そうおっしゃっていただけると思っていました」

京太郎「ここでは人目につきます。場所を移しましょう」

――外――

ゆみ「で、こんな所でしか話せないということは、なかなかに後暗い話題をしたいと見えるが」

京太郎「後暗い、というほどではありませんが……」

京太郎「大手を振って話せるものでもありませんね」

京太郎「……同じ無名校として、決勝での鶴賀の活躍には驚きましたし、素直に敬意を覚えました」

ゆみ(……? なんだ、わざわざ胡麻をすりに来たわけでもないだろうに)

京太郎「とくに、うちの原村を抑えて、副将戦で収支1位を飾った東横桃子さん」

ゆみ「……」ピクッ

携帯から保守

これはさるさんされたか

アイヤー

>>1は柴犬の散歩にいったか?

わんわんお

00分になると猿さんのためのカウントは完全リセットされる

さるさんじゃなくてワンちゃんか、珍しいな

わんわんお ほ

おいついた
愛する人にレイプされるなんて最高のシチュだなモモ!!
泣いて喜べ!!

こんな京ちゃんを待っていた

うむ

ほしゅ

京太郎「加治木さんも素晴らしい立ち回りをされましたが、やはり彼女の働きには非常に強い印象を覚えました」

ゆみ「……何が言いたい」

京太郎「そのままです。東横さんが優秀だというお話ですよ」

京太郎「原村和は去年の全中チャンピオン」

京太郎「そして龍門渕透華さんも、去年のインハイでは大いに活躍したそうじゃないですか」

京太郎「そんな二人を押しのけて、鶴賀を優勝まで後一歩のところまで押上げた彼女のような才能が」





京太郎「これを最後に終わってしまうのかと思うと、あまりにももったいなくて」

ゆみ「!?」

うむ!(おかえりなさい)

ゆみ「それは、どういうことだ?」

ゆみ「モモはまだ1年だ。来年も再来年も、鶴賀のエースとして活躍する」

ゆみ「ここで終わるわけがないだろう!」

京太郎「冷静に考えてみてください」

京太郎「確かに鶴賀は県予選で決勝まで上り詰め、大いに活躍しました」

京太郎「しかし、それだけで来年からも部員が入ってくれるでしょうか?」

京太郎「本当に麻雀がやりたい人なら、長野だと普通は風越に入ります」

京太郎「それに、風越は確かに名門ですが、ここ最近の2連敗は間違いなく看板の価値を落としているでしょう」

京太郎「ではほかの学校はどうか?」

京太郎「今回の決勝の4校で考えてみましょうか」

京太郎「龍門渕のメンバーは全員が2年生で、来年もレギュラーメンバーは変わらないでしょう」

京太郎「メンバーに空き枠がなく、横のつながりだけで強さを保っているところに、新入生が入るとは考えにくい」

京太郎「そもそもあのチームは学校の麻雀部というより、龍門渕さんの私設クラブとしての色合いが強いですから」

うむ!(引き続き支援)

しえん

京太郎「そうなると鶴賀と清澄はですが、ここは両方共ほぼ無名です」

京太郎「目立った戦果は、今年の物のみ」

京太郎「そして、両方が無名ならば」





京太郎「『全国優勝校』という泊のついた清澄の方を、普通ならば選ぶでしょうね」

ゆみ「!!??」

ゆみ「ちょっと待て!」

ゆみ「自分の仲間に対して自信があるのは結構だが、随分と大きな風呂敷を広げるじゃないか」

ゆみ「そんな根拠の乏しい推測をもとに、うちの麻雀部を不当に低く評価するとは、君は随分恥知らずな人間のようだな」

京太郎「本当に根拠に乏しいと言えますか?」

ふんふむ

京太郎「先鋒の片岡は、個人戦で歴代ハイスコアを出すほどの腕前」

京太郎「副将の原村は言わずもがな」

京太郎「大将の宮永は、去年のMVPである天江衣を制し、個人戦でも全国出場が決定しています」

京太郎「そして、常に収支を±0にするという驚異的な実力」

京太郎「これは個人戦でも本人の気が変わるまでやってのけていましたから、全国でも通用すると思われます」

京太郎「どんなに異常なことか、加治木さんならよくお分かりでしょう?」

京太郎「残りの二人も、ほかの3人ほどの派手なモノはありませんが」

京太郎「どちらも安定してハイレベルな試合ができるというのは、加治木さんも骨身にしみて理解しているはずです」

京太郎「ここまでの実力者が揃いながら、清澄が優勝を狙うには力不足だと思えるのなら」

京太郎「それは少しばかり観察眼というか、まあ“何か”が足りないんじゃないでしょうか」ニコッ

ゆみ「君は……随分と人をからかうのが好きなようだなっ……」ギリリッ

ゆみ「仮に、だ」

ゆみ「仮に来年鶴賀の麻雀部が団体戦に出られないとしても」

ゆみ「モモには個人戦があるだろう」

ゆみ「そうなれば、少なくとも彼女の才能が埋もれるということはない!」

すげぇ文章量…
支援

ゆみ「彼女は、あの特殊な能力が先行してはいるが、麻雀の実力も文句のないレベルだと思っている」

ゆみ「問題は全くない」

京太郎「……東横さんは、どうして麻雀部に入ったんでしょうか?」

ゆみ「!」

京太郎「どうやら彼女は初めから麻雀部に入ろうとは思っていなかったようですよね?」

京太郎「誰かが強引に麻雀部に連れ込んだと聞いていますが」

ゆみ(この男……いったい…)

京太郎「もしもですよ」

京太郎「もしもその人がいなくなってしまったら」

京太郎「東横さんが麻雀部にいる理由、その物自体が消えてしまうということになるのではないでしょうか?」

ゆみ「!?」

ゆみ(そんな……モモが……)

ゆみ(いや、そ、そんなことはないはずだ)

ゆみ(…………ホントにそう言えるのか……?)

ゆみ(いや、まて、相手のペースに飲まれるな!)

ゆみ「どうも人の周りを嗅ぎ回るのが好きな、趣味の悪い人間がいるようだが」

ゆみ「いったい、どこからそんな噂話を仕入れてきたのかな」

京太郎「加治木さん、あなたほど聡明な方だ」

ゆみ(無視、か)

京太郎「人の気持ちに鈍いというわけでもない」

京太郎「なら、もう気づいているんでしょう?」

京太郎「東横さんがあなたに向けている感情に、ね」

ゆみ(…………っく!?)

京太郎「自らの存在を非常に認識されにくいという、あまりにも特異な体質を持って生まれてしまった、一人の女の子」

京太郎「存在を気づいてもらえないがために、誰からも必要とされることなく生きてきた」

京太郎「だがある日、そんなつまらない日常から自分のことを引き上げてくれる人が現れた」

京太郎「彼女がどれほどの喜びを感じたかは、想像に難くありません」

京太郎「そして、求められるということに喜びを感じた彼女は、恩人とも呼べるその人に着いていくことを決める」

京太郎「ですが……」

京太郎「自分を見つけてくれたその人は、自分自身が麻雀の大会に出るための頭数が欲しかっただけで」

京太郎「高校生活最後の試合が終わると、目の前から姿を消してしまう」

ゆみ「!!……ち、違う!!」

ゆみ「私はそんな……そんな道具のような扱い方をモモにしてきたことは断じてない!!」

ゆみ「モモは私の大事な……大事な仲間だ!」

京太郎「仲間……そうですよね」

京太郎「あなたから見れば、彼女は確かに大切な仲間です」

京太郎「ですが、お分かりのはずです」

京太郎「彼女が貴女との間に求めている関係は、もっと特別なものだと」

ゆみ「そ……れは」ビクッ

ゆみ(たしかに、モモが求めているものはわかっている、が……)

京太郎「そして、貴女がどんなに彼女のことを大切に思っていたとしても、鶴賀を去ってしまうのは、曲げることのできない事実」

京太郎「彼女が麻雀部にいる理由を失ってしまうのも、従って事実です」

京太郎「ですから“このままでは”彼女の才能は埋もれてしまうんですよ」

ゆみ(…!)

策士や

ゆみ(まさか、コイツの狙いは)

京太郎「本題に入りましょうか」

京太郎「東横桃子さんが後腐れなく清澄の麻雀部に入れるように、彼女との縁を完全に断って頂きたい」

ゆみ「ば……馬鹿かお前は!」

ゆみ「私がそんなことをすると思っているのか!」

京太郎「他のメンバーの方のことでしたら、どうぞご心配なく」

京太郎「彼女たちも、まとめて受け入れる準備は出来ていますから」

ゆみ「準備が出来ている……だと?」

ゆみ「まさかこの話、久も噛んでいるのか……?」

京太郎「おっと、この話は完全に俺のワンマン企画ですよ」

京太郎「うちの部長はああ見えて、曲がったことが大嫌いでしてね」

京太郎「おまけに頭がキレて、感も鋭い」

京太郎「部長にばれずに準備をするのは大変でしたよ」

京太郎「本当はもっと面倒な手順を踏んで東横さんに接近するつもりだったのですが」

京太郎「今回の合宿企画が持ち上がったのは本当に幸運だったというより他ありません」

京△

京ちゃんの百合にかける情熱すげぇな

京太郎「この機会を逃すと面倒なので、加治木さんには早くご決断をして頂きたいのですが……」

ゆみ「……君が清澄の戦力の増加のために、モモをうちから盗ろうとしているのは分かった」

ゆみ「しかし、君は男子部員で、女子部員の成果は直接利益になるとは思えない」

ゆみ「なのにどうしてそこまでモモに固執するんだ?」

京太郎「……正直言って、今の清澄は部長の強力なリーダーシップによってまとめられている状態です」

京太郎「飄々としていながら、彼女ほど抜け目のない人間もなかなかいない」

京太郎「うちのメンバーは、一人ひとりが優れた雀士ではありますが、部長の跡を継いで組織を引っ張っていける人間がいない」

京太郎「宮永はそもそも内向的な性格ですし、片岡は自分勝手すぎる」

京太郎「原村は信念が強すぎるあまり、狭窄な考えに陥りがち」

京太郎「染谷先輩は一番まともではありますが、いい人どまりでリーダーとしては力不足な感が否めません」

京太郎「そうなったとき、いったい誰が部の舵取りをしていくのか」

京太郎「そうなった時に、俺がその責務を引き受けようと思っているわけです」

ゆみ「随分自己評価が高いと見えるな」

ゆみ「私にはただの自惚れにしか感じられないが」

京太郎「消去法ですよ、手配の中に安牌がこれしかなかったんです」

京太郎「ともかく、俺がそうやって部をチームとしてまとめ上げていくとなれば、当然勝ち進むために何ができるのか、と考えるわけです」

京太郎「そして、まずは強力な人間の頭数を増やそうと思ったわけです」

京太郎「部内に強者が大勢いれば、内輪の練習だけでも十分技量の進歩は望めますから」

ゆみ「この陰険な謀は、全て部のためにやっていることだと言いたいのか」

京太郎「もちろん、それだけではありません」

京太郎「先程も申しましたように、清澄麻雀部は高い確率で優勝杯を持って帰るでしょう」

京太郎「そして、来年、再来年とそれを続ければ」

京太郎「史上初の3連覇を成し遂げる、ということになります」

京太郎「……今や、麻雀はこの世界で最大のゲームとなっています」

京太郎「そして麻雀強豪国である日本のインターハイで殿堂入りになるということは」

京太郎「世界レベルで実力が認められることになるでしょう」

京太郎「そうなったとき、そのチームを間接的に勝利に導いた人間も、十分すぎるおこぼれを貰えるのでは」

京太郎「そう考えたんですよ」ニコッ

しえんた

訳:百合チュッチュみたいっす

要約すると百合ちゅっちゅになるのは仕方ない

ゆみ(やはり私腹を肥やすことを考えていたようだな)

ゆみ(しかも仲間を利用して……どこまでも下衆な男だ)

ゆみ「久に……この話が知れたらどうするつもりだ?」

ゆみ「たったさっき自分で言ったばかりじゃないか」

ゆみ「久は曲がったことが嫌い、そう自分で言っただろう。短い付き合いだが、それは私もよく知っている」

京太郎「確かに多少面倒なことになりますが、問題ありませんよ」

京太郎「そもそも、この話は加治木さんに伏せたまま進めても、何の問題も無かったんですよ?」

京太郎「大切なのは“桃子”さんの意思ですから」

ゆみ(桃子……だと!?)

ゆみ「キサマが彼女をその名で呼ぶな!!」

京太郎「落ち着いてくださいよ、加治木さん」

京太郎「俺があなたにこの話をしたのは、桃子さんができるだけ憂いを残さずに清澄に来れるようにしたかったから」

京太郎「俺は心の底から彼女のことを案じているんですよ?」

ゆみ「減らず口をっ……!」

京太郎「よく考えてみてください」

百合ちゅっちゅはよ

京太郎「一度求められることを、暖かさを知ってしまった彼女は、もはや以前のような孤独には耐えられなくなっているでしょう」

京太郎「いつ瓦解するかもわからない、風前の灯のような部活で、孤独に耐えながら暮らすのと」

京太郎「全国制覇の錦を飾る場所で、みんなから必要とされながら送る高校生活」

京太郎「どちらが桃子さんにとって幸せだと思いますか?」

ゆみ(…………)

京太郎「ねぇ、加治木さん」

京太郎「いい夢、見れたでしょう?」

ゆみ「な……っ!?」

京太郎「皆で全国を目指して走り続け」

京太郎「途中で敗退はしたけれど」

京太郎「それでも夢のように楽しかったんじゃないですか?」

京太郎「高校生活最後の、素敵な思い出は“もう出来ている”んですよ」

京太郎「ですが、桃子さんにはまだまだ未来があります」

京太郎「あなたが自分の思い出のため“だけ”に作った部活に、無理に残す必要はないでしょう?」

男としての評価を最低以下に下げてまで百合を求める
そこに痺れる憧れるぅ!

京太郎「彼女を夢の抜け殻に縛り付けておくなんて残酷な真似が」

京太郎「あなたにできるんですか?」

ゆみ「そ、んな……しばる、なんて……そんな…つもりは」

京太郎「加治木さん、あなたと桃子さんの関係、どうして俺が知っていたと思います?」

ゆみ「…………あ、え……?」





京太郎「直接聞いたんですよ。“モモ”から」

ゆみ「何を……」

ゆみ(何を……言っているんだ……この男は)

京太郎「話の流れで気づきませんでしたか」

京太郎「モモは、もうこの話を了解済みなんですよ」

京太郎「だから、あなたとのことも全て知っているんです」

京太郎「“モモから皆聞かせてもらいましたから”」

京太郎「正直にいいましょう。私は嘘つきなのです」

前作読み終わって追いついた支援

ゆみ(…………なんだ、なんなんだこれは)

ゆみ(このおとこはいったいなにをしゃべっているんだ)

京太郎「ですから…………ぁ……」ボソッ

ゆみ(え?)

京太郎「いいえ、なんでもありません。話を続けましょう」

ゆみ(なんだ、この男、一瞬むこうを見)

ゆみ(!)

ゆみ(モモ、と、清澄の……原村と、宮永……?)

京太郎「……こでは……ろと……あれだけ……」ブツブツ

ゆみ「な、んの、ことだ」

京太郎「…………いえ、モモにはその、清澄に入ってからもスムーズに行くように」

京太郎「人間関係もある程度構築しておくように言っていたんですが……」

京太郎「できるだけ内密にしろと言ったはずなんですが……」ハァ

ゆみ( )

ゆみ(  )

ゆみ(   )

京太郎「ああ…………加治木さん」

京太郎「彼女はこっちに来ることを決めてからも、あなたのことでずいぶん悩んでいました」

京太郎「最後までモモの心を縛っていたのは、部活でも麻雀でもなく」

京太郎「貴女だったんですよ、加治木ゆみさん」

京太郎「だから、俺は最後の憂いを立つために、あなたにこのお話をしたんです」

京太郎「分かって頂けますよね」

ゆみ「」ガクッ

ゆみ「」ドサッ

ゆみ「モモ……私は…………お前……モモ」

京太郎「色よい返事を……いえ、返事は結構ですので、行動で示してください」

京太郎「失礼します」スゥ…

京太郎「百合はよ」

しかし麻雀最弱で童貞である

百合ちゅっちゅはよ

~翌朝~

――車の前――

久「それにしても、なんだかつやつやしてない?」

ゆみ「まさか、今にも倒れて眠りたい気分だよ」

久「確かに、あなたの後輩の……東横さんはそんな感じだけど……」

ゆみ「ああ、二人でちょっと遅くまで話をしていてな」

ゆみ「うちの麻雀部は来年も人集めが大変だし、そのことについて、な」

久「ふぅん……」

ワハハ「おーい、そろそろ出発するぞ。名残惜しいのはわかるけど、早く車に乗ってくれ!」ワハハ

ゆみ「だそうだ。悪いがもう行かせてもらうよ」

久「ええ…………ねぇ、ゆみ」

ゆみ「ん?」

久「あんまり無理させちゃダメよ?」

支援

部長は別の人の女にも気遣いができるぐう聖

京太郎さんまじパネェっす

ゆみ「………………善処しよう」

久(微塵も反省してないみたいね)

久(東横さんも大変ねぇ……)



桃子(痛いっす……あらゆる箇所が痛いっす……)

桃子(須賀京太郎……まさかこんな搦手を使ってくるとは……)

桃子(でも)

桃子(やっぱり、誰かに求められるっていうのは、あったかいっすね)フフ

佳織「桃子さん……? どうかしました?」

桃子「いや、楽しかったなぁって」

桃子「新しい知り合いも出来たし」

桃子「今までの私の人生じゃ、考えられないくらい楽しかったっす」

佳織「人生って……」

桃子(ん? あれは)

京太郎「」サムズアップ

京太郎の癖にかっこいい

はあ…モモちゃんかわええ…

あれ?肝心の濡れ場は?

桃子(……今回は感謝してやるっす)

桃子「須賀京太郎」ボソッ

ゆみ「」ピクッ

桃子(あ、やば)

ゆみ「モモ」

桃子「は、はいっす……」

ゆみ「今日はそういえば、午後から私の家で勉強を見てやる予定だったよな」ニコニコ

桃子「いやぁ、その、今日は疲れたから家でゆっくり休みたいかなぁって……」

ゆみ「なら、私の家に来て、我慢できなくなったらそのまま寝ればいい」

ゆみ「泊まっていってもいいしな」

桃子「き、今日は帰って撮っておいたドラマを」

ゆみ「 モ モ 」ニ゙ゴッ

ワハハ「……!?」ゾク

睦月(なに!?)ゾクゥ

佳織(ひぃ)ゾクゾク

>>121
わかめ「」サムズアップ

桃子「……はいっす」

桃子(前言撤回)

桃子(ちょっと……いや、かなりやりすぎっすよ…)

――清澄部屋――

ブオォォォン ブロロロロロロ

和「んんぅ……」

和(車……そうか、もう朝なんですね)

和(鶴賀の人たちが帰るんでしょうか)

和「ふあぁ」ムクリ

和(それにしても……)

和(結局昨日の須賀くんのメールはなんだったんでしょう)

和(指定した時間に指定した場所で、東横さんと親しげに話して欲しいって……)

和(何を考えていたんでしょうか)

支援

愛の伝道師か

和「?」

和(この香りは……)スンスン

和(同類――百合の香り!?)バッ

和(あっち……鶴賀の車の方から……)

和(これは……)スンスン

和(加治木さんと、東横さん……でしょうか…)

和(おかしいですね……)

和(昨日の時点では何も……)

和(あのあと、何かあったということでしょうか?)

和「…………」

――何処かの木の上――

ハギヨシ「京太郎君……」

ハギヨシ(まさか、あそこまでのことをやってのけるとは)

ハギヨシ(彼のやったことは、話術で相手を乱すだけではない)

ハギヨシ(衣様が月の力を得て、卓上を支配するように)

ハギヨシ(彼はこの周囲一帯の空間を、自らの気……いや、自らそのもので染め上げた……)

ハギヨシ(まさか、使えるものが今の世に生まれようとは……)

ハギヨシ(一体貴方はどこへ行こうというのです……)

ハギヨシ(もしかしたら私は、とんでもない怪物を目覚めさせてしまったのでは……)

ハギヨシ(………………)

ハギヨシ(師としては失格かもしれません)

ハギヨシ(しかし、私は……)

やはり天才か…

ハギヨシ「見たい」

ハギヨシ「京太郎君、あなたがどんな覇道を征くのか」

ハギヨシ(あんなものを再び“魅せ”られては、どうしようもないですね)

ハギヨシ(そういえば、あの方は今一体何をしているのでしょうか……)


~帰宅後~

――木間書店――

京太郎(今回はさすがに疲れた……)

京太郎(まさにカミソリの上を滑るような、危険な賭けだった)

京太郎(アトモスフィアでの情報収集の成果がなければ、あそこまでうまくいかなかっただろう)

京太郎(まさに日頃からの地道な作業が実を結んだと言える)

京太郎(なぜか失敗のビジョンは少しも浮かばなかったが)

京太郎(もしかしたら、咲とか衣ちゃんの感覚って、あんな感じなのかもなー)

読む前ほ

京太郎(しかし、丸く収めるためとは言え加治木さんには随分ひどいこと言っちまったな……)

京太郎(今度会うことがあったら、ジャンピング土下座で謝る必要があるか)

京太郎(得られるものも多かったけど、やっぱりこんなことは二度とやりたくないな……)

京太郎(まぁ二人の様子はしっかりと記録させてもらいましたがね!)

京太郎(それにしても、ボロボロになったことに変わりはないか……)

京太郎「さっさと帰って」

『ひらり』

京太郎「これを読んで、癒されたい……」

京太郎(昨今、百合雑誌が増えてきている)

京太郎(まだまだマイナーなジャンルであることは否めないが、それでもこの流れは喜ばしい限り)

京太郎(中でも百合姫の他に出版されている百合雑誌『つぼみ』と『ひらり』の存在は大きい!)

京太郎(今回買う『ひらり』は、平尾先生の短編や、最近画力が向上してきた袴田先生の作品など目を離せない要素がたくさんあるが)

京太郎(なかでも俺が注目しているのはTONO先生の「ピンクラッシュ」!)

京太郎(ガチ百合娘のアタックを受けているうち、徐々に彼女のことを受け入れていくマールの姿が堪らない!)

京太郎(ただ、初期に掲載されていた小説がなくなってしまったのは残念ではあるが……)

しえーんしえーん

京太郎(まぁそれより今は、さっさと家に帰ってこいつを堪能する方が重要だ!)







?「あれは……」ジー


カン!


はよりんしゃんはいを書けよ

重要なところがキンクリ

おつ!

最後誰だww


遠野先生?(幻覚)

初夏の風が感じられる土曜日の夕方、池田は一人繁華街を歩いていた。

部活の後輩である文堂と、同期の深堀、吉留を連れて買い物に出た帰りだった。

普通の部活なら、レギュラーメンバーである一軍の人間が買い出しに出るなど有り得ない。

それも名門の誉れ高い風越の麻雀部なら尚更のことであるし、事実これまではそうであった。

しかし、部内随一の実力を持ちながらも、積極的に雑用をこなす福路がキャプテンについてから、空気ががらりと変わった。

手の空いたも のは自ら進んで雑用をするようになり、特に福路が個人戦で全国へ出場することが決まってからは、
彼女が雑用をしないように、雑用の奪い合いともいえる状態 になった。

この日の買い出しは、そういった雑用の処理という面もあったが、大将を勤めた池田を励ますという目的も兼ねていた。

県予選の決勝において、二年連続で天江衣に大敗する結果となってしまった池田。

全力で戦い抜いた結果だということは、周囲も本人も痛いほどわかっていた。

しかし、ふとした瞬間に、池田らしくない、悔恨の表情が浮かぶことがあった。

この日は、そんな池田をどうにか元気づけようと、他のレギュラーメンバーが買い出しの名目で街へと連れ出したのだった。

途中で彼女たちの意図に気がついた池田は、感謝の気持ちで涙がこぼれそうになった。

どうにか泣くのをこらえてきたが、夕日が街を染め上げる頃になると、ついに我慢ができなくなり、涙を見られる前に「妹たちが待っているから」と言ってその場から走り去った。

長い距離をとり、これ以上行ったら皆が見えなくなるといったところで、池田は急に振り向き、大声で叫んだ。

「来年は絶対に皆で全国に行くからな! 覚悟しておけよー!」

そう捨て台詞を残してから、池田は再び走り出した。

そうして、池田は一人夕暮れの繁華街を歩くことになった。

今日は両親が家にいるから、実際のところは別に帰る必要がない。

そもそもが放任的な親なので、外泊に対しても寛容な判断をしてくれる。そ

れに、今のこの心地よい気分を、もう少しじっくりと味わっていたかった。

そうしてしばらく歩いていると、辺りはだんだん暗がりに沈んでゆき、夜の雰囲気が漂ってきた。ネオンの光が目立つようになってきて、そろそろ帰ったほうがいいかな、と思う。

とにかく泣きそうな気持ちを解消しようと、無我夢中で歩いてきたため、足は棒になりかけ、心なしか体全体がだるい。

この京ちゃんゼロが乗り移っとる

支援

そんな時、100mほど離れた店から、一緒にいる人に肩を支えられながら出てきた人が目に入った。

こんな時間から酔っ払ってるとか、大人失格だし、と思いながら歩いていると、その人が発する声にどうも聞き覚えがあるような気がした。

「もう私はダメです~」
「2年連続予選敗退とか~コーチ解任ですよ~」
「OG連に顔向けができません~」

「だから! 衣はそもそも化物だし、清澄のリンシャンもやばかったんだから仕方ないんだって!」
「お前のとこのネコはむしろ良くやったよ!」

この声は…。最後に聴いたのは、風越の校舎前で解散をした時だったか。微塵も躊躇せず鉄拳制裁を行う、風越女子麻雀部コーチ……

「ううぅ……池田ァァ……」

「うわぁ……」

普段ではまず見られない久保の情けない姿に、思わず声が出る。自分の名前が呼ばれたというのもポイントが高い。マイナス方向に、だが。

「ん? お前……」

 しまった、見つかった。ここは他人のふりをしてやり過ごすしかない!

支援

「ひ、人違いだし! かなち……私はただの通りすがりだし!」

「まだ何も言ってないんだが……」

 墓穴を掘った。しかし、墓穴を掘り続けて裏側まで抜ければ勝ちというし……

「池田……? 池田ァァァ!!」

「にゃああぁぁぁぁ!?」

無理だった。明らかに積んだ。3手積みというところか。

急に抱きついてきた久保をなんとか支えながら、池田は自らの結末を悟った。

「やっぱりあの猫娘か」


この人は確か……そう、藤田プロだ。文堂が山ほどこの人のカードを持っていた気がする。


「な! 猫娘とは失敬な!」
「ちゃんと華菜ちゃんっていう立派な名前があるし!」


もう勝てる見込みはない。せめて名乗りを上げて散り際の花を咲かせよう。咲くという言葉になぜか背筋が凍った。

支援

「いや、ちょうど良かった。今からちょっと東京の方へ行かないといけないんだが、それがな……」


ちらりとこちらを見る。奈良漬の塊を抱いてるような錯覚に陥るほど、この人からは酒の匂いがする。

これはだいぶ飲んでるな、知らんけど。


「住所も教えるし、タクシー代もお前の家まで行ける分払うから、こいつを家まで送っていってくれないか?」


勘弁して欲しい。部活の時でさえ会いたくないのに、こんなところでまでこの人と一緒とか。

どこからどう見ても罰ゲームだ。

しかし、こんな性格が獄卒の鬼婆でも、女性の一種には違いない。

スタイルも出るところは出ているし、世間一般では普通に若いと見なされる年齢だろう。

こんなネオン街に放置してしまったら、寝覚めが悪い自体に陥ること請け合いだ。

支援

「うーん……」

「お、まずい」
「マジで時間がないから、頼むわ」


そう言って藤田プロは池田のポケットに諭吉を5人ほど詰め込んで、ダッシュでタクシーへと向かった。

タクシーが走り去る直前、窓から顔を出した藤田が叫ぶ。


「そいつの財布漁れば、免許が出てくるからな~!」


そう言い残して彼女は去っていった。


「うう、池田ァァ……」

(どんすんだし、これ)


しばし放心したあと、とりあえずタクシーまでこの呑んだくれを連れて行くことにした。

支援

***********************


「この部屋だし、多分」


着いたのは普通のマンション。特に高級そうとかいうこともない、なんの変哲もないところだった。

エレベーターがあって良かった、と思いながら、なんとか部屋の前までたどり着くことができた。


「鍵がいるし……コーチ、失礼します」


ゴソゴソとコーチの体をまさぐる。カバンの中はタクシーの中で検めたから放っておく。

その時、久保の手が動きを見せた。

久保は先程から、何かを求めるように周囲を手で探る動作をする。

タクシーの中ではそれに巻き込まれて、運転手の目があるにもかかわらず抱きつかれてしまった。

背中に走る悪寒と、なぜか熱くなる頬という名状し難い状態に陥ってしまい、慌てて久保を引き剥がした。

同じ鐵は踏まないし、と咄嗟に回避する。

しばらく空を切ったあと、久保の腕は再び床に横たえられた。

支援

再び動き出す気配がないことを確認して、再び池田は鍵の捜索に取り掛かる。

いつものスーツと違い、今日の服装はラフだったためポケットの数は少ない。

鍵を見つけ、すぐに部屋の扉を開ける。こんな格好のコーチを近隣住民の衆目に晒すわけには行かない。

中途半端に開いたドアの隙間から中に入り、コーチを引きずり込む。

意外というかなんというか、いつもピシッっと決まったスーツ姿ばかり見ているからだろうか。

パッと見ただけでも10足以上の靴が置いてあるシューズラックを見て、少し衝撃を受ける。

そういえば今日の私服もなかなか洒落ている。服装にはこだわっているのだろうか。

玄関から中へ進み、角を曲がったところで広めのキッチンに出た。

が、ここでも少し驚くことになった。コンビニ弁当やカップ麺のカラなど、出来合い・インスタント食品の残骸が詰め込まれたゴミ袋が、ど真ん中に鎮座していたからだ。

しかも壁際にも似たような袋が2つほど置いてある。

もしかしたら積んであったものが崩れたのかもしれない。

池田のネコミミほお擦りしたい

そして流しには特になにもなく、最近使われた形跡が見られない。

マグカップや薬缶すら見当たらないとは……と思いながら、ゴミ袋を部屋の隅に除ける。

どうやら2Kの部屋のようで、トイレ、バスルームへと続くと思わしき扉の他に、もう2つ扉がある。

とりあえず近いほうを、と思い、玄関側の扉を開ける。

どうやら寝室のようで、シングルサイズのベッドとクローゼット、そして鏡台が置かれていた。


「ブッ」


思わず吹き出してしまう。ベッドの上にコーチのイメージとは全く結びつかないアイテムが“寝転がって”いたのだ。

猫の抱き枕。

異常なほど胴体の長い猫の抱き枕が、頭を枕に載せた状態でゴロン、と転がっていた。

しかもご丁寧に、その長い胴体の半分以上は掛け布団の下に収まっている。



「こ、これは、意外どころの話じゃないし……」


一体何に使っているんだろう……

まさかこの鬼コーチが、こんなかわいいモノに抱きついて寝ているはずはない。

あれかもしれない。某幼稚園児が主人公の漫画に出てくる人のように、イライラした時にサンドバック代わりにしているのかも……


「はっ、まさか……」


嫌な想像が頭をよぎる。

コーチがこの抱き枕の首根っこを掴んで持ち上げ「池田ァァ!!」と言いながら平手打ちをかましているという、悪夢のような光景が。

ブルルッと体を震わせ、さっさとこんなところからはオサラバしようと、先ほどよりも幾分気合の入った状態で、寝こけている酔っぱらいを寝室に引き込む。

しかし、ベッドのそばまで持ってきたはいいが、その上に引き上げることができない。

コーチと池田ではかなりの体格差がある。

おまけに池田は文化部。力もあるとは言えない。

しばしの逡巡の後、床に転がるコーチに掛け布団を掛けるだけにしておこうと決めた。

ベッドの上の布団を抱きつくような形で持ち上げる。

その瞬間、布団に顔を埋めるような形になり、ふわりと柔らかい芳香が感じられる。


(これ、もしかして、コーチの……)


一瞬フリーズしてしまった池田であったが、咄嗟に顔を離し、布団をコーチの上に放り投げる。

羽毛であったのが幸いし、布団はボフンと風を巻き起こしながらも、ふんわりとコーチの上に着地した。

しかし、池田の脳内はそれどころではなかった。

今腕の中から消えた布団からは、まるでキャプテンの福路に膝枕をされた時のような、優しい香りが感じられて“しまった”のだ。

なぜ鬼コーチの布団から、天女のようなキャプテンと同じ香りがするのか?

池田にとってこれは大きな問題である。

久保と福路にあってはならない共通点を見つけてしまうなど。

困惑した思考は、なぜか怒りのようなものへ変化し、その矛先は目の前の布団の主に向けられた。


(こんな手で華菜ちゃんを惑わそうなんて……許せんし!)


久保を悪役にして、どうにか今の状況を説明しようとする。

しえーん

しえ

敬愛する福路に対する裏切りをしてしまったような罪悪感から逃れるために。

それでも困惑から抜け出せないままつっ立っていると、先程は隠れて全体が見えなかった抱き枕が目に入った。


(これだし!)


池田はひらめいた。これで報復してやろう、と。

少し布団をめくって、久保の上半身の片側を出す。

そこに胴長猫をそっと横たえてやる。


(これで写メを撮って、みんなに一斉送信してやれば……)


後のことを全く考えずに、無謀な計画が頭に浮かぶ。

それが一体どういう事態を招くかについて考えが至らない。

なにか取り返しのつかないことをしているんじゃないか、という感じが心のどこかにある。
しかし、もう引き返すつもりはない。

起こさないように、起こさないように……

慎重に、コーチが猫に抱きついているように見えるポジションを……

関係ないけど咲日和の久保コーチは割りと気さくな印象がある。



その時だった。




「池田ぁ……」


コーチが、動いた。

ビクッと、一瞬で手を引っ込め、コーチから距離を取る。

起きたのだろうか、いや違う、ただの寝言だ。

自分に言い聞かせるようにして、それでも真偽を確かめようと、少しずつコーチへ近づいてゆく。

(…………)

どうやら、ただの寝言だったようだ。

それだけなら良かった。
しかし、事態は少し意外な方向へ動いた。


(絡みついてるし……)

猫の胴体に腕を回し、抱きしめているところまではまだ良い。

問題は、まくれあがったスカートから、惜しげもなくさらけ出した足までも猫の胴体に絡めて、きっちりホールドしていることだ。

些か扇情的に過ぎるその姿、そしてそれがあのコーチであるという二重の衝撃で、池田はそこから目が離せなくなってしまった。


「池田ぁ…」


そう言いながら、久保は猫に顔を埋める。


(池田池田言いすぎだし……)


一体なぜ自分の名前をここまで呼ぶのだろう?

そんなに自分のことを憎んでいるのだろうか。

そういえば、街で会ったとき二年連続予選敗退について、何かグチを言っていた気がする。

そんなこと思いながらも、頭の中で見て見ぬ振りをしていた、ある可能性が大きくなっていく。

そしてそれは、遂に明確な形を持って思考に侵入してきた。

うふふ…




この猫に「池田」という名前を付けているのでは?

気になっていたあの仕草は、この猫を求めてのものだったのでは?



一度思い至ってしまったら、もう引き返すことは出来ない。

その考えが思考を支配してゆき、ほかの可能性を考えることができなくなる。

背筋を寒いものが、じわりじわりと上ってくるのが分かる。


(そんなバカな。ありえないし。だってコーチはあのコーチで)


ぐるぐると着地点の見えない考えが頭を巡る。

これ以上はマズい。今すぐ帰ろう。

危険なモノから逃げるように、池田はその場から立ち去った。

しえん

支援

しえ

***********************


マンションが見えなくなるまで走ってから、ようやくタクシーを呼ぶつもりだったことを思い出した。

ここからバスや電車で帰るとなると、かなりの時間がかかってしまう。

う完全に日は落ちていて、人影もちらほらと見えるだけ。

せっかく貰ったタクシー代だし、遠慮せず使ってしまおう。

そこで気づいた。


(カバンないし)


頭が真っ白になるも、なんとかどこに置いたのか思い出そうとする。

いや、考えるまでもない。

今の状況で忘れてくることが考えられる場所など、一カ所しかないではないか。

信じられない。信じたくない。

それでも、玄関に入ったときにカバンを置いたことを、確かに覚えてしまっている。

こうしている間にも夜の帳が落ちていくことに変わりはない。

今すぐ戻らなくてはいけない。

なんとか決断し、今走ってきた道を戻っていく。足取りが重いのは、歩きすぎて疲れたから……だけではない。

本能のようなものが、得体の知れない感情が、「あそこは危険だ」と告げているのだ。

重い足を引きずりながらなんとか久保の部屋の前までたどり着く。

久保が起きていることを考えてインターホンをならそうかとも思ったが、その音で起こしてしまいかねないので、とりあえずドアノブに手をかけてみることにした。

ガチャリと開くドアに、そういえば鍵をかけないまま出て行ってしまったのは不味かった、という思いがよぎる。

どうしても此処に来なければいけなかった理由をもう一つ見つけ、逃げ出したい思いが少し抑えられたような気がする。

できるだけ音を立てないように、慎重に歩みを進める。

部屋の中の様子は先ほどと変わらない。どうやらコーチはまだ起きていないようだ、と安堵する。さっさと鞄を持ってオサラバしよう。

幸い玄関に入ってすぐのところに置いたため、鞄に関しては問題がなかった。

しかし、この部屋のドアを開けた鍵は、久保が見つけやすいようにと、キッチンの小さなテーブルの上に置いていた。

あのときの自分はなんてバカだったんだろう。

そこは、鍵を閉めてポストに入れておきました、という書き置きを残すところであって、鍵そのものを置いてしまっては意味がないだろう。

そう自分を責めながら、鍵を閉めないで帰ってしまおうかと考える。

先ほどの久保の姿が目に浮かぶ。あれがもし本当に自分のことを「想って」の行為だったら……

背筋が寒くなる。しかし恐怖だけではない、ほかの感情があることも、かすかにだが感じられる。

ホラーの夏

しずもんはさるじゃないもん!しえしえ

それを直視してしまったら、引き返せなくなる気がして、ひたすらに無視を決め込んではいるが……

しかし、こうやっていつまでも悶々と悩んでいるわけにも行かないし、部屋の鍵はやはり閉めなくてはいけない。

時間がたてばたつほど久保が起きてくる可能性は高まる。

ならば電光石火のごとく目的を遂行して、速やかに撤退するのが最善だ。そうと決まれば、行動は早い。

音を立てないようにしながらも、素早く扉を閉め、靴を脱いで部屋へ上がる。

角を曲がり、キッチンのテーブルが見えた、そのときである。

すぐ左の前方にある、寝室のドアが開きっぱなしになっていることに気づいた。
いや、それだけではない。

なにか、なにか音が聞こえてくる。

これは、いったい、なんのおと


「いけだぁ・・・・・・」


自分の名前を呼んでいるのはいい。
これはさっきと変わらない。

支援

しかし

これは

この微かに聞こえる、水っぽい音は……

そのとき、まるで図ったかのようなタイミングでポケットの中の携帯が鳴り出した。

一瞬凍り付いた後、慌てて携帯をとりだし着信を切る。

吉留からの電話だった。


(次にあったら、二度と麻雀ができない体にしてやるし)


しかし、そんなことよりも今はこの状況を何とかすることの方が問題だ。

なぜなら

先ほどの音が何も聞こえなくなっているだけではなく

目の前に、ゆっくりと、コーチの横顔が現れたからだ。

マズい。

これはマズい。

しえ

しえ

支援

しかし、この段階では、まだコーチの目は自分に向けられていない。

(こ、このまま壁に張り付いていれば、見つからずにすむ可能性が微粒子レベルで)

(あ)

目が、合った。

その瞬間、池田も久保も、表情のない能面のような顔で見つめ合った。

(そういえば、そろそろ夕ご飯の時間だし。おなか減ったし)

池田はあまりのショックに思考をトリップさせていたが、久保の行動によって再び現実に連れ戻された。

久保は池田の手を取り、強引に部屋の中に引きずり込み、池田を掛け布団のないベッドの上に突き飛ばした。

突然のことに、反応することができない池田。なにか非常に危険な事態に陥っているのはわかるが、体が全く反応しない。

こちらを見下ろしている久保の表情は、キッチン側からの光が逆光となっているため窺うことはできない。

しかし、その服装の乱れが、先ほど自分が耳にした音の正体を確信させた。



(「いけだ」って、あれここベッド、コーチがこっち来るし)


なぜだろう、これから何をされるのか予想はつくはずなのに、抵抗する気が起こらないのは。

覆いかぶさってくる久保からは、あれほど鼻についた酒の匂いは、なぜか全く感じられなかった。

***********************


「お先に失礼します、キャプテン」

「さよなら。気をつけて帰ってね」


そう言って後輩が部室をあとにする。

福路以外の生徒は、もう部屋に残っていない。

夏が近づくに連れ日が長くなり、この時間になっても夕日が窓から差し込んでいる。

荷物をまとめて部屋から出る。

鍵を取り出して、一瞬施錠をするかどうか迷うが、そんなことを考えてしまう自分が嫌になる。

どうせあの人は鍵を持っているんだから、閉めても問題はない。

そもそも自分がそんなことに気を配る……いや、知っていること自体可笑しいのだから。

いつもどおりに鍵をかけて、階段の方へ向かう。

しかし、福路は階段を下りるのではなく上っていった。

部室がある階のひとつ上の階。

コの字型の校舎の、部室のちょうど対面に当たる教室に近づいていく。

扉の窓から、中に誰もいないのを確認してから、音を立てないようにそっと体をすべり込
ませる。

教室の端を歩いて窓際まで行き、反対側にある部室の方を、身を隠しながら確認する。


(まだ、来ていないみたい)


なぜ、自分はこんなことをしているのだろう。

確かに、彼女たちがやっていることは問題だが、それを直接咎めるのではなく、さりとて
無視もせず、覗き見ている自分はいったい……

――――事の始まりは、1週間ほど前だった。


その日、福路はいつも通り最後まで部室に残り、施錠をしてから帰路についた。

夕日が照らす校庭はとても美しいはずなのに、なぜか心が満たされることはない。

いつのまにか、一人で歩く帰り道に寂しさを感じるようになってしまっていたようだ。

1年生の頃であれば、いつも1人で帰るのは普通で、別にさみしいと感じたことはなかった。

長いあいだ仲のいい友達ができず、一人で過ごすことが多かったためだ。

しかし、2年生になってからは状況が大きく変化した。

新しく麻雀部に入ってきた少女、池田華菜。

彼女は、その溢れんばかりの快活さで、福路の生活を明るく照らしてくれた。

福路にとてもよくなついて、部活中のみならず、下校時にもついてまわるようになり、最
終的には朝の登校時にも、福路のことを通学路の途中で待ち構えるようになった。

通常なら鬱陶しがられるような行為だが、福路にとってそれは楽しみであり、救いでもあった。

池田がいるおかげで、誰かと仲良くするということの楽しさを、再び味わうことができた。

福路にとって、池田は可愛い後輩であり、恩人でもあるのだ。

支援

しかし、最近になって池田の様子に変化が現れ始めた。

県予選が終わって3週間ほど経った頃だろうか。

今までは部活が終わって部室を施錠するまで残り、福路といっしょに帰宅していた池田が、急に福路よりも早く帰るようになったのだ。

朝の登校時や部活中は今までどおりであったが、放課後だけ「妹たちの世話があるから」と、部活が終わると同時に帰ってしまう日が続いた。

しかも、そのころから池田の笑顔に少しずつ陰りが差していくようになった。

県予選が終わってからは確かに元気がない日が続いていた。

しかし、それとは全く雰囲気の異なる、落ち込んでいると言うより思いつめた表情をするようになったのだ。

もちろん本人はそれを否定する。否定した上で、その陰を塗りつぶそうと必要以上に明るく振舞う。

そんな痛々しい姿を見ていられなかったため、しばらく余計な詮索はせずに、様子を見ることにした。

その日も福路は一人校門を出て家へと向かっていた。

基本的に寄り道はしないため、真っ直ぐ帰宅するルートを選択して。

校門から5分ほど歩いたところだった。

丘沿いの道を歩いていると、下の方の道を、よく知っている人間が歩いていくのが見えた。

一瞬、彼女の表情を見て心臓が凍りついた。


(なんで……どうしてそんな顔をしているの……?)


部活の時には、時折陰を覗かせていたとは言え、以前の明るさを完全になくした様子は見せなかった。

しかし、今の彼女の表情はどうだ。

暗い表情ならまだ良かった。

今の彼女の顔からは、なんの感情も読み取れなかったのだ。

まるで蝋人形の顔のようで、池田華菜という存在とはどうしても結び付けられないような表情。

考える前に、体が動いていた。

池田が向かっている方向は、明らかに自宅と反対の方向。

妹の世話がある、というのが、真実を隠すための方便であるというのははじめから気づいていたが、こうまで露骨に嘘だったと思い知らされるのは堪える。

しかし、いまはそんなつまらないことを考えている場合ではない。

池田にあんな顔をさせている原因を、突き止めなくてはいけない。

これから池田が向かう場所に、それがあるはずだ。



池田が辿り着いたのは、やはり風越の校舎だった。

バレないようにかなりの距離をおいて後をつけてきたが、校舎の中に入られるとなると、距離を詰めなくてはいけない。

池田が玄関に入ったことを確認して、一気に接近する。

音を立てないように、慎重に廊下を歩く。

何処へ行くつもりなんだろうか。

池田と関係のある場所といえば、麻雀部関係の部屋か教室しか思い浮かばない。

やがて目的の部屋の前に到着し、その部屋の扉を開け、中に入った。

予想通りと言えるのかどうか、池田が中へ消えた部屋は、麻雀部の部室だった。

ここでひとつ、おかしいことに気がつく。

池田は鍵を開ける動作を行うことなく扉を開けた。

しかし、部室の扉には間違いなく鍵がかかっているはずだ。

それもそのはず、鍵をかけたのは紛れもなく福路自身だったのだから。

この部室の鍵を持っている人間は、福路を含めて2人しかいない。

福路が開けていない以上、部室を開錠した人間は必然的に決定するのだが……

嫌な予感がして、部室の扉越しに聞き耳を立て、中の様子を伺う。

やはり……

聞き覚えのある、2つの声が中で会話している。

抑えた声で話しているため、会話の内容を完全に聞き取ることはできない。

しかし、次の一言だけは明確に聞き取ることができた。



「脱げ」



思考がフリーズした。

しえん

今のは間違いなく、風越麻雀部のコーチである久保貴子の声だ。

つまり、命令された人間は池田ということになる。

そこまで考えて、それが何を意味するのか、全く分からなくなってしまった。

しかし、そうしている間にも部室の中で状況は進んでいく。

ほんのわずかに聞こえる布擦れの音。

それは池田が実際に衣服を脱いでいるということにほかならない。

なぜ、久保の命令に抵抗することなく従っているのか?

どうして、服を脱がせられているのか?

頭の中が疑問で埋め尽くされるが、体は全く動かない。

突然、硬いもの同士がぶつかったような音がした。

おそらく、部室に置いてある机と椅子がぶつかったのだろう。

それと同時に、池田のくぐもった声も聞こえる。

その苦しそうな声に、ハッと思考が復活した。

そして、恐る恐るドアを開けて、室内の様子を窺う。

黒百合が咲いてる………

そこには

身長の高い久保に抱き寄せられるようにして、深いキスをされている池田の姿があった。

池田をまるで貪るように、深く口づけをする久保。

目から涙を流しながら、その息苦しさに耐えているような表情の池田。

池田の服装はほぼ全裸といえるもので、身につけているのは靴下と靴、そして下半身を隠す下着だけだった。

福路が呆然と見つめているあいだにも、久保の行動は止むことがない。

池田から口を離すことなく、右手で体を抱き寄せたまま、左手をはだけた胸元へと移動させる。

その手が胸に触れた瞬間、池田が微かに体を震わせる。

そんなことはお構いなしに、久保の手は池田の右胸を艶かしい手つきで愛撫している。

そして抱きかかえていた右手が、池田の秘部へ触れるのを見たとき

福路はその場から逃げ出した。

池田ァ…

************************

自宅につき、部屋に入った福路は、着替えることもなくベッドの中に潜り込んだ。

先ほど学校で見た光景が、まだ信じられなかった。


(なんで、コーチは華菜にあんなことを……)


学校へ引き返す時の様子を見れば、池田が久保との行為を望んでいないことは明らかだ。

望んでいるわけではないのに、どうして池田は久保に躰をまかせているのか。

どうして二人はあんな関係になったのか。

おそらく、池田の様子がおかしくなったころからの関係だと思う。

久保が池田のことを憎からず思っていたことは気づいていた。

久保が池田に対して、ほかの部員に対するよりも厳しいことは、それだけ池田に対して特別な感情を抱いているからだろう。

それはあくまで、指導者の立場から教え子に対して抱く慈愛の念であると思っていた。

しかし、今日の一件でそれが自分の見誤りだったことを思い知らされた。


(わたしは……どうすれば……)


久保を問い詰めて、あんなことを止めさせる?

気が強い久保のことだ、自分が何を言っても、あそこまで至ってしまった関係を崩すことはしないだろう。

このことを学校にばらすと言って脅すのも手段のひとつかもしれないが、池田のことを考えると、軽々しくそのような手段を取ることはできない。

池田に連絡をしてみようか?

だが、今彼女にかけるべき言葉など見当たらない。

そもそも、なぜ自分がそのことを知っているのか聞かれた時に、事の経緯を話したとしよう。

どうして見ていたのに助けてくれなかったのか、と罵倒されるかもしれない。

それがどうしようもなく怖い。


(…………怖い?)

(…………そう、私は怖い)

(なんで、私はあの時すぐに出て行って、コーチを止めなかったの?)

(なんで、華菜を助けてあげなかったの?)


(なんで…………)



(なんで、なんでこんなに……濡れているの?)



**********************

次の日、福路は池田の顔をまともに見ることができなかった。

幸い、他の用事があって、部活には最後の方に顔を出す程度だったため、池田と会話しなくてはいけない状況にはならなかった。

いつものように早く帰る池田を見送り、部室を施錠してから、福路は校門が見える木の影で池田を待ち構えた。


(華菜を、止めよう)

(コーチのところに行く前に華菜を引き止めて、昨日のことを全て話してしまおう)

(罵倒されてもいい、軽蔑されてもいい、嫌われてもいい)

(華菜を……私の大事な後輩を助けてあげなくちゃ……)


そう心に誓って、じっと校門の方を見据える。

池田が部室を出ていった時間を考えると、そろそろ来るはずだ。


(……来た!)


昨日と同じように、表情のない顔で校門から入ってくる池田。

しかし、その足は校舎の方へは向かわずに、福路がいる方とは反対の、駐車場の方へ進んでいった。

一瞬、池田が自らの覚悟で久保から逃げ出してくれたのかと思ったが、すぐにそれが甘い考えであったことに気づく。

池田が向かう先には、見覚えのあるワインレッドの車が待ち構えていたからだ。

池田が助手席に乗り込むと、車はすぐに発進した。

慌てて後を追うように走り出すが、当然追いつけるわけがない。

久保の車がフェードアウトした方向を、福路はいつまでも見つめていた。

****************************

それから今日まで池田の後を追い続け、しかし一度も止めに入ることなく、ただ二人を観察し続けた。

どうやら、池田が一度部室をあとにしてから、その日の行動の指示がメールで送られてくるらしい。

帰っていく途中で携帯を確認してから、池田が行動を変えるところを目撃したからだ。

はじめに見たように学校で行為をすることもあれば、車でどこかへ向かうこともあった。

ひどい時は、人気のない駐車場に車を止めて池田がそこまで来るのを待ち、あろうことか車の中で情事を行っていたこともあった。

そして、今日はどうやら学校で行われる日のようだ。

部活の最中、池田と久保の会話の最後に「今日はココでな」と、久保が微かな声で言ったのが聞こえたからだ。

そして今、部室の様子が“よく見える”ひとつ上の階の対面。

あの二人が教室に入ってくるのを、待ち構えている。

初めの頃こそ池田を助けるために、あのふたりの様子を窺っていたが、今は純粋に二人の情事を盗み見ることが目的となってしまった。

なぜ、こうなってしまったのだろう?

しえん

確かに、今でも池田がされている仕打ちを考えると胸が痛む。

しかし、ここのところ毎晩、池田のことを思って自慰に耽ってしまっていることも確かだ。

自分は一体、何をしているのだろうか。

毎日感じる、自責の念と自分に対する絶望。

自分はこんなにも穢れた人間だったのだろうか。

大切な後輩が犯されているのを見て興奮し、自分の欲望を慰めている。

間違いなく、最低な人間である。

そのことは理解している、理解はしているが


(止められないのは……どうして……?)


そんなことを考えていると、部室に二人が入ってくるところが見えた。

机にカバンを置いて、池田が服を脱ぎ始めると、久保が池田に何かを言った。

池田は脱ごうとしていた制服を再び着て、しかし前だけははだけた状態にしておく。

どうやら今日は、服を着たまましようという考えらしい。

久保の、ある種変態的な嗜好に、福路は久保に対する嫌悪感を強める。

しかし、こうして見ている自分が久保のことを責める権利がないこともわかっている。

久保は池田の身につけているブラを上にずらして、少しかがんでそこに顔を密着させる。

くすぐったそうに身じろぎして、池田は顔を赤らめる。

久保はしばらくその状態を維持したあと、池田の右胸の先端を口に含んだ。

軽く吸い付いて、甘噛みをしているようだ。

福路は耐えられなくなり、自らの制服の胸元のボタンを外した。

フロントのホックを外して、胸を解放する。

今日は二人を見ながら自慰ができるように、このブラをつけてきた。

自分はつくづく救いようがない、と思いながらも、乳首を弄ぶ手を止めることができない。

池田の乳首が久保の口の中でどんなふうに愛撫されているのか。

それを考えると、胸からの快楽を貪る手が、より一層大胆な動きをし始める。

ただ触れるだけであったのが、次第に片方は摘んで擦り、片方は爪を立てて軽く引っ掻く。

腰が何かを求めるように、淫らに揺れ動いてしまう。

口から熱い吐息が漏れる。

二人の行為を見ながら、ここまで本格的な自慰をするのは今日が初めてだった。

池田ァ・・・

それゆえに、いつもとは比べ物にならない興奮と快楽が、脳を蕩けさせてゆく。

池田の乳房を堪能した久保は、今度は声がもれないように口元を抑えている池田の手をどかし、腰を抱きかかえるようにして池田を後ろの机に倒した。

少し驚いた様子を見せる池田をよそに、久保は両手で池田の太ももをホールドして、その間に顔を埋めた。

池田は先ほどのように両手で口元を抑え、眉をひそめる。

福路は間を置かずに自らの股間に右手を差し入れ、池田が味わっているであろう快楽を求める。

はしたない水音が教室に響く。

池田は限界が近いようで、時折その躰を震わせている。

そしてついに、躰を強ばらせたあと、一気に脱力する。

絶頂を迎えてしまったのだろう。

福路は池田の姿を見ながら、彼女のことが羨ましくなる。

福路は毎日のように自慰をしてはいるが、まだ一度も絶頂に至ることができないでいる。

とろ火で炙られるような状態のまま、気がついたら眠って、朝になっているのだ。

今日も、確かに今までで一番感じてはいるが、絶頂に到れるような兆しは見られない。

自らの躰を持て余し、欲求から解放されることができないことが、非常にもどかしい。

池田は肩で息をしながら、全身から力を抜いている。

眠れない…

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