俺「ワハハ」モモ「加治木先輩、蒲原先輩から電話っすよ」 (38)

trrrr trrrr

モモ「先輩、電話っすよ?」

ゆみ「ん、代わりに出てくれるか?少し手が離せない」

モモ「わかったっす!」

ピッ

モモ「もしもし。加治木ゆみのケータイっす!」

俺「ワハハ」

モモ「あ、蒲原先輩っすか?」

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ゆみ「なんだ、蒲原か?」

モモ「そうみたいっすね」

俺「ワハハ」

モモ「はいっす!先輩に代わりますね」

ゆみ「私だ。どうした蒲原?」

俺「ワハハ」

ゆみ「なっ、何だって!?」ガタッ

モモ「きゃっ!?」ビクッ

モモ「ど、どうしたっすか先輩?」

ゆみ「か、蒲原、もう一度言ってくれ・・・」

俺「ワハハ」

ゆみ「そんな・・・」がくっ


ゆみ「車で、人を跳ねたって・・・?」

モモ「ええっ!?どういうことっすか!?」

俺「ワハハ」

ゆみ「ああ、ああ・・・」

モモ「せ、先輩・・・?」

俺「ワハハ」

ゆみ「そう、か・・・」

俺「ワハハ」

ゆみ「わかった。ああ、すぐに」

モモ「先輩っ!蒲原先輩に何があったっすか?」

ゆみ「・・・それが、蒲原の奴が運転中に妊婦さんを轢いてしまったらしい」

モモ「そんな・・・!」 くらっ

ゆみ「おっと!」ぎゅっ

モモ「あっ///」どきっ

ゆみ「平気かモモ?」

モモ「す、すみませんっす。ちょっとショックでくらっときちゃっただけっすから///」ドキドキ

ゆみ「無理もない。・・・私だって、一人でこの電話を受けていたらパニックだったろうさ」

モモ「そんな事ないっす!先輩はいつも冷静で、頼りになって・・・」

モモ「だから、蒲原先輩も先輩に電話したっすよ」

ゆみ「・・・そうだな。なら、私たちで蒲原を助けてやらないといけないな」

モモ「はいっす!」

ゆみ「蒲原は今警察にいて、保釈一時金というのを払わないと帰ってくる事もできないと言っていた」

モモ「お、お金っすか?」

ゆみ「ああ。手持ちでは足りないそうだ・・・」

モモ「それで先輩を頼って電話を・・・」

ゆみ「うむ。とりあえず、50万あれば保釈してもらえて、こっちに戻って来られるんだそうだ」

モモ「50万円っすか!?」

ゆみ「ああ。保釈一時期というのは、あとで返しては貰える物なんだが・・・」

モモ「どうやって都合したらいいっすかね・・・」

ゆみ「それが問題だな」

モモ「ううっ、蒲原先輩、みんなで乗ったあの車で、妊婦さんを・・・」ぐすっ

ゆみ「ああ、モモ・・・」ぎゅぅ

モモ「先輩、私っ、うぁーん!」ポロポロ

ゆみ「ああ、ああ、大丈夫だ。きっと大丈夫だよ」なでなで

モモ「蒲原先輩がっ、蒲原先輩が逮捕されちゃったっすよ~!うわぁーん!」ポロポロポロポロ

ゆみ「できる事をしてあげよう。蒲原のために、今できる事を・・・」うるっ

ゆみ「しかし、相手方の怪我はどれほどなんだろうか・・・」

モモ「蒲原先輩は電話で何も言ってなかったっすか?」ぐすっ

ゆみ「ああ。ただ『妊婦さんを車で跳ねた』とだけ」

モモ「大きな怪我でなければいいっすけど・・・」ブルッ

ゆみ「そうだな」

モモ「蒲原先輩、大丈夫っすかね?」

ゆみ「・・・さすがの蒲原も、かなり落ち込んだ声に聞こえたよ」

モモ「お金、どうしたらいいっすかね?」

ゆみ「部員のみんなに、それとなく聞いてみるのはどうだろうか?」

モモ「聞いてみる、というと?」

ゆみ「『緊急でお金が必要になったから、誰か都合出来ないか?』と」

モモ「先輩がヤンキーのカツアゲみたいになっちゃうじゃないっすか!」

ゆみ「この際仕方ないさ。後日蒲原に説明させればいい」

ピポパ

trrrr trrrr

睦月「はい、もしもし?」

ゆみ「睦月か?」

睦月「はい。加治木先輩から電話なんて珍しいですね」

ゆみ「ああ、ちょっと睦月にお願いがあってな」

睦月「私に出来る事なら、何なりと」

ゆみ「ありがとう。ちょっと私の後輩である睦月にパー券を買って欲しくて電話したんだ」

モモ「ちょっ、先輩!?」

睦月「えっ?あ、あの・・・」

ゆみ「いや、今のはほんのジョークだよ」

睦月「突然でびっくりしましたよ・・・」

モモ「まったくっす!」

ゆみ「だが、睦月に頼みたい事と言うのも、実は同じ事なんだ」

睦月「どういう意味でしょうか?」

ゆみ「緊急でお金が必要になってな」

睦月「・・・先輩が私にまで頼む程の事態なんですね?」

ゆみ「ああ。とても大事な用事で、お金がいるんだ」

睦月「なら、私はとやかく聞きません。どれくらい集められるかわかりませんが、ちょっとお金を集めてみます」

ゆみ「ありがとう。私たちは良い後輩を持ったよ」

睦月「では、また後で連絡しますね」

ピッ

ゆみ「ふぅ、睦月は協力してくれるそうだ」

モモ「急にパー券とかびっくりしたっすよ、もうっ!」ぷんぷん

ゆみ「そう怒るなモモ。ヤンキーみたいだと言ったのはモモだろう?」フフッ

モモ「先輩が誤解されたら、私が嫌なんっすよ」ぷいっ

ゆみ「そう言うな。慣れない軽口でも交えないと、借金の申し込みなんて出来やしないんだ」

ピポパ
trrr

佳織「はーい」

ゆみ「もしもし、佳織か?」




睦月「あの加治木先輩が金策に奔走してるだなんて・・・」

睦月「いったい何があったのだろう?」

睦月「そうだ。ここは蒲原先輩にも相談してみないと」

ピポパ

睦月「多分、私より先に連絡が行っているはずだし」

trrr

ピッ

蒲原「ワハハ」

睦月「あ、蒲原先輩。加治木先輩から連絡来てますか?」

蒲原「ワハハ」

睦月「あれ?おかしいなぁ。それじゃあ、私から説明しますね」

蒲原「ワハハ」

睦月「何でも、加治木先輩が緊急でお金が必要らしいんですよ」

蒲原「ワハハ」

睦月「はい、はい。それで、みんなで都合出来ないかな、って思いまして」

蒲原「ワハハ」

睦月「えっ?任せろって、そんな急にお金なんて・・・」

蒲原「ワハハ」

睦月「そ、そうか!その手がありましたね!」

蒲原「ワハハ」

睦月「はい!すぐに手配しますね!」

蒲原「ワハハ」




trrr
ピッ

俺「ワハハ」

ゆみ「蒲原か!?大丈夫なのか?」

俺「ワハハ」

ゆみ「ああ。お金なら今全力でかき集めているよ」

ゆみ「ところで蒲原、相手の妊婦さんというのは・・・」

俺「ワハハ」

ゆみ「そ、そうか。大した怪我ではなかったんだな?」

モモ(ほっ、良かったっす)

俺「ワハハ」

trrr

モモ「あれ?私の携帯にも電話っす」

ピッ

モモ「もしもし?」

蒲原「ワハハ」

モモ「えっ?」

蒲原「ワハハ」

モモ「か、蒲原先輩!?」

ゆみ「ん?」

俺「ワハ・・・」

モモ「なっ!?何で私の携帯に蒲原先輩から電話が!?」

ゆみ「何っ!?蒲原からだと!?」

俺「ワハハ」

蒲原「ワハハ」

モモ「はい、はい。ええ、だって、加治木先輩は、たった今蒲原先輩と電話を・・・!」

ゆみ「か、貸すんだモモ!」バッ

モモ「はいっす!」サッ

ゆみ「蒲原、私だっ!」

蒲原「ワハハ」

俺「ワハハ」

ゆみ「・・・なんという事だ!」

俺「ワハハ」
蒲原「ワハハ」


ゆみ「蒲原が、二人だとっ!?」

モモ「どっちが本当の蒲原先輩か、まったくわからないっすよ!?」


蒲原「ワハハ」

俺「ワハハ」

俺「ワハハ」

ゆみ「あ、ああ・・・車で人を轢いてしまって、50万必要なんだな?」

蒲原「ワハハ」

ゆみ「うむ。人なんて轢いていない、と」

モモ「はわわっ」

ゆみ「クッ!これではどちらの言うことを信用していいのか・・・っ!」

モモ「まったくわからないっす!!」

俺「ワハハ」
蒲原「ワハハ」

俺「ワハハ」

ゆみ「そ、そうだな。とりあえず振り込みさえしてしまえば、蒲原は助かるんだったな・・・」

蒲原「ワハハ」

ゆみ「必要ないだって?だが、これで万一本当に蒲原が逮捕されていたりしたら・・・」

モモ「振り込みが出来なくて、蒲原先輩は帰って来られないっすよ!?」

俺「ワハハ」

ゆみ「うむ、そうだな。ここは一旦振り込みだけでもしてしまえば」

蒲原「ワハハ」

ゆみ「何っ!?」ドキッ

ゆみ「蒲原、今何と言ったんだ!?」

蒲原「ワハハ」

モモ「はっ!そ、そうっすよ!」

ゆみ「ああ、まったくもってその通りだよ蒲原!」

俺「ワハハ」

モモ「先輩っ!こいつ偽物っすよ!」

俺「ワハ・・・」

ゆみ「そうだな。本物の蒲原が言った通りだ!」キッ

蒲原「ワハハ」

ゆみ「ああ、ああ。いや、すまない蒲原。私は騙されていたようだ。助かったよ」

俺「ワハハ」

ゆみ「この偽物め!お前など、本物の蒲原の足元にも及ばない!!」

俺「ワハ・・・」

ゆみ「通報してやるから覚悟する事だな!」

ピッ

モモ「危なかったっすね!」

ゆみ「まったくだ。蒲原が機転をきかせてくれなければ、今頃どうなっていたか・・・」

蒲原「ワハハ」

ゆみ「ハハッ、まったくお手柄だよ蒲原!」

蒲原「ワハハ」

モモ「蒲原先輩のおかげで、騙されずに済んだっす!ありがとうっすよ!」

ゆみ「本当に助かった。ありがとう蒲原」

蒲原「ワハハ」



こうして蒲原の見事な機智と策略により、卑劣な詐欺事件の一つが解決した

だが、これですべての詐欺が無くなったわけではない

現代社会に渦巻く悪意と欲望が、次にあなたやあなたの家族を襲うかもしれないのだから・・・

【この物語は実際に起こった事件を元にしたフィクションです
振り込め詐欺には十分に注意し、振り込みを求める電話がかかってきた際には、第三者を交えて相談してください】


カン

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