垣根「はぁ、っはぁ…」一方「もォ、やめ…」 (54)



・ホモスレ

・絶対能力者進化実験再構成(?)

・エログロ死ネタある(かも)

・息抜きに書くので投下間隔長め



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その日は、よく晴れた日だった。
本当に、太陽の照りつける暑い日だった。

その頃には、既に暑さという感覚を忘れていたけれど。

研究所から久しく解放されたその日は、休日だった。
公園で遊ぶ子供達を眺めていると、ボールが転がってきた。
白黒のそれは、サッカーボールと呼ばれるものだった。

『……ン』

拾い上げる。
視線を向けた先、三人の内一人、少年がやって来た。
自分と同じ位の年頃の少年だった。

『かえせよ!』

ひったくられた。
その上に、突き飛ばされた。

正確には。

突き飛ばそうとした少年の腕が、そっくりそのまま、威力を返されて。
あまりにも無様で奇妙な形に、ひしゃげた。


痛いよ、と泣き喚く声が聞こえた。
無意識下に、能力を使用してしまっていた。
ひしゃげた腕からは、白くて硬いナニカが突き出ていた。
残り二人の少年は、怪我をした少年を慌てて庇っている。
彼らもつられて泣きながら、大人を呼んだ。
やがて走ってきた警備員(アンチスキル)が、自分を捕らえようとする。

怖かった。

伸びてくる腕が、ひたすらに怖かった。
怖いという気持ちのままに腕を突き出すと、当たった。
反射膜を帯びた腕は、警備員の腕を、あの少年と同じように曲げた。
そんな自分すら恐ろしくて、怯えて、ひたすら逃げた。


走る、走る。

後ろから銃弾が飛んできて、跳ね返った。
ナイフのようなものが飛んできて、跳ね返った。
爆弾のようなものが投げられて、跳ね返った。

その全ては、大人達へ牙を剥き。
死屍累々と積み上げられる人体を尻目に、やがて袋小路の橋の上まで追い詰められた。

見上げる。

ヘリコプター、戦車、数え切れぬ程の対能力者兵器。
そして、自分を睨み、あるいは自分に怯える人々の姿。
このまま逃亡を続けていれば、自分のために世界が滅ぶ。
誇大妄想でも何でもなく、それは事実だ。

『………そォ、か』

自分が悪いのだ、と自覚した。
ただ、存在しているだけで災厄なのだと認識した。
善意だろうが悪意だろうが、ただ感情を向けただけで、相手を傷つけてしまう。

そんな存在が、人間だと言えるのだろうか。
言えないだろうなあ、と自分自身思った。

嗤った。

そうして、意識的に『反射』を解除した。
ぐじゅり、と嫌な肉の音がして、鎮静剤入りの銃弾が肌に突き刺さる。
世界の全てに絶望と諦念を植えつけられながら、ただ、静かに目を閉じた。


研究所を転々としていく中で。
自分はどこまでいっても最低最悪の化け物なのだと感じた。
どんなに優秀な研究員でも手が負えず、追い出しにかかる。
『木原』の手にかかって洗練されて尚、怪物度を増しただけで。

能力が素晴らしく有能になっていく程。
自分は『普通』から恐ろしくかけ離れていく。

嬉しさなどなかった。
ただ、研究員の階級に箔をつけてやっただけだった。

『木原』の手を離れ、暫く自由の身となった。
何をしたい訳でもなく、学校に行くつもりもなかった。
そもそも勉強などもはや必要ではないし、学校に行っても特別クラスで一人ぼっち。
どこまでいっても、何をしても、自分という存在は他者とは馴染めない。

だが、それで良かった。

自分に立ち向かってくる人間以外を、傷つけないで済むのだから。


ぼんやりと過ごしていても。
学園都市最強へ辿りついた自分を殴ろうと、あるいは殺そうと、襲撃者はやってくる。
どこにいても心が休まる瞬間なんてどこにもない。
それは、最強になってしまった自分の、どうしようもない宿命だと、そう思っていた。

『君が――― 一方通行、だね?』
『……あァ?』

聞き返す。
立っていたのは、黒服の男だった。

『無敵、という言葉に興味はないかね?』
『…何だそりゃ』
『今の君は学園都市最強、超能力者<レベル5>の序列第一位だ。
 しかし、今の生活は酷いものだろう。毎日のようにスキルアウトに襲われる』
『………』
『我々の生活は、今の君の現状を打ち砕くものだ。
 文字通りの無敵―――超能力者の上位、絶対能力者<レベル6>にたどり着くのが目的なのだよ』

興味が湧いた。
もしも無敵になれば、もう誰も傷つけなくていい。
自分と戦おうと考えることすら馬鹿馬鹿しいと他人全員が思う、そんな存在になれば。




もう誰も――――――

『イイね。なかなかおもしれェ事考えるじゃねェか』


実験内容は、拍子抜けするような内容だった。
同じ年頃の超能力者と生活する、というものだった。
生活をしながら、共同で実験をこなしていく。

嗚呼、それは、自分がずっと避けてきた道なのに。

もう一つの案、元の案は、第三位のクローンを殺害する、というものだったらしい。
そちらよりは幾分か楽なのかもしれないが、正直どちらも茨の道だ。
しかし、それでも自分の選んだ道なのだ。進むべきだとは思う。
内容は毎日手紙が来て通達されるらしい。ご苦労なことだ。
目安としては二万回。日数ではない、とのこと。

同居相手は、超能力者第二位の『未元物質』。

自分と同じ、『絶対能力者』へ到れる可能性を持った相手。
二万回目の実験内容で殺し合いでもするのだろうか、とふと思う。

「……ンじゃ、入るか…」

相手は先に入っているらしい。
ポケットからカードキーを取り出し、開錠。
ドアを開けた先、ソファーでだらりと寝そべっている少年が、こちらを見た。

「お前が第一位?」
「あァ。オマエが第二位だ」
「垣根帝督」
「……あン?」
「俺の名前。名前で呼べよ。お前は?」
「……忘れた」
「は?」
「忘れたンだ」
「ふーん」

垣根と名乗った少年は、ぴらり、と白い封筒を見せてくる。
腹筋の力だけで起き上がり、彼は薄く笑んだ。

「まあ何だ。とりあえず一番目の実験に取り組むとしようぜ」





そうして彼が懐から取り出したモノは―――――――


しろく、うすく、どこか、

みおぼえのある、
  


とりあえずここまで。ゆるゆるやります




一方「……立体パズル作成キット?」

垣根「ちなみに西洋の城」

一方「これで何しろってンだ」

垣根「二人で協力して作り上げろだと」

一方「ふざけてンのか、オマエ」

垣根「まさか。実験だから、渋々だよ」

一方「………」


「一方通行、三番くれ」
「ねェよ」
「マジかよ。……あ、俺が踏んでた」
「ふざけンな」

何をやっているのだろう。

台紙からパズルを切り取り、組み立て担当である垣根へ渡してやりながら、一方通行は緩やかに溜め息をついた。
対して、指先が器用らしい垣根はのんびりと城を組み立てている。
こんな実験に、一体何の意味があるのかさっぱりわからない。
研究者には研究者なりの意味のわからない理由があるのだろうが。

「後は窓か…」

学習用立体パズルとはいえ、学園都市製。
古風な窓ガラスまで、きちんとミニチュアだ。
精巧な西洋の城(ミニチュア立体パズル)は、説明書の所要時間通り、およそ三時間で完成した。

「あー、出来た」
「……ンで? これはどォすンだ。ゴミだろ」
「ディスプレイケースに飾る。…って実験指示書に書いてあるしな」


ディスプレイケースは、家具に混じり配置済み。
垣根はゲームセンターの店員の如く西洋の城をそっと飾り、ケースに鍵をかけた。

「頭使ったら腹減ったな」
「…近場のファミレスなら心当たりがある」
「とりあえずそこでいいか」


敵意も正義も悪意も善意もない。
垣根帝督という存在は、不思議と一方通行の精神を刺激しなかった。
他人とは思えない程、まるで何年来かの親友のように―――馴染んでいた。

「何食う?」
「オマエに言う必要はねェよ」
「これから長く暮らすかもしれねえんだし、仲良くしようぜ?」
「………」

しかし、得体のしれない男だ。
まるで警戒心がない。人見知りしないタイプなのだろう。

「ハンバーグがステーキか……」

メニューを眺めて悩む様は、まるで普通の男子高校生だ。
第二位にも関わらず。

自分とは、違って。


「オマエ」
「ん? 何だよ」
「何でこの実験に参加した」

ハンバーグを食べる手を、一時的に止め。
垣根は暫く黙り込み、それから、一方通行を見た。
その瞳には何の感慨もなく、感情も宿っていない。
ただ、口元にはうっすらと笑みが浮かんでいる。

「お前に言う必要はねえよ」

意趣返しのつもりか、彼はそう言った。
一方通行の気分を害したところで殺されはしない、とタカをくくった様子に見えた。

「………」

ガドン、とテーブルが嫌な音を立てる。
無言での脅しだった。
しかし、垣根は首を傾げ。

「実際、知ったところでどうなる訳でもないだろ?}


絶対能力者になれる可能性がある人物は、二名のみ。




その中で到れる者は――――たった、一人。


第一次実験は城パズル組立でした。
(一垣とも垣一とも言い切ってないしエロ描写ばっかりじゃ疲れるじゃないですかーやだー)


ハンバーグを食べ、外に出る。
ファミレスのメニュー程度では満腹にはならない。
とはいえ、垣根も一方通行もそんなに食べるという行為が好きな訳ではない。
そのため、二人がやってきた場所は。

「お前ゲームセンターきたことある?」
「ねェよ。くっだらねェ」
「まあ俺が来た理由も実験通知書に書いてあるからなんだけど」
「はァ?」

つくづく、研究者にやる気はないのかと思う一方通行である。
垣根はポケットから手紙を取り出し、封筒ごと手渡してくる。
内容としては明快で、自由度の高いものだ。
要するに、二時間ゲームセンター内で好きなゲームを遊んでこいというもの。
対象となったこのゲームセンターは旧型、都市製、その両方がある。

「何やるか」
「対戦ゲームでイインじゃねェの」

くだらないと感じても、実験は実験。
無敵に近づくにはやらなければならない。
それに、たったの二時間だ。内容も辛くない。


垣根「パズルゲームか」

一方「一般的な落ちモノって所か」

垣根「俺こういうの苦手なんだよな」

一方「何でこれを選ンだンだよ」

垣根「お前が得意そうかなって」

一方「……」

一方(意味が繋がらねェ)

垣根「まあいいや。ほら開始」

一方「そォだな」


垣根(まず青の餅を積み、赤い餅を横に配置する。
   与えられた色を把握し、まずは連鎖のタネを作成する)

一方(厄介なのが紫豆が来た時だ。連鎖の邪魔にしかならねェ)

垣根(幸いにして選んだモードはお祭りモード。
   相手が連鎖したタイミングで俺が連鎖すればすぐお祭りモードに突入する)

一方(祭りモードにしちまえば後はこっちの天下。
   モード突入中は勝手に連鎖のタネが落下してくるしなァ)

垣根(つまりこの勝負、運や策略じゃねえ。
   肝心なのはタイミングと待つ度胸、そして操作の的確さ)


((とでも思っているん(ン)だろうが))


垣根(お祭りモードで連鎖のタネを全て消したからといって完璧な相殺は決定しねえ)

一方(むしろ、この局面で要求されるのは単純な力押しに他ならねェ)

垣根・一方((先に、一つでも多くタネを積み上げて連鎖を開始した側の勝利確率が上がる))

垣根(いいぜ、来いよ)

一方(第二位)

垣根(悪いがこの勝負)

一方(俺の完全勝利だ)


垣根「く……」

一方「は、……」

垣根(現時点、お互いに相殺でプラマイゼロが続いている)

一方(こォなりゃ体力と集中力勝負にしかならねェ)

垣根(喉が渇いた…が、勝負中の離席は敗北に直結する)

一方(何しろこれは操作を諦めた者が負ける高位の争い)

垣根(立てよ第一位、お前の負けだ)

一方(立ち上がれ第二位、オマエは詰ンでる)

垣根「とうとう奥の手を出す時がきたな」

一方「な、ン…だと…それは――――」

垣根「見ての通り。お助けアイテムだ」

一方(この連鎖タネを積み上げる途中でアイテム稼働コマンドを入力しよォってのか?!)
   正気の沙汰じゃねェ。コイツは落ちモノが苦手なンじゃ…まさか)

垣根「そこがミスリードだ、第一位。俺が嘘をつかないなんて誰が保障した?」

一方「ふざけンじゃ、ねェぞ!!」



結局。
引き分けが続き、最後はタイムアップで引き分けのまま終了。
不完全燃焼のまま、パズルゲームからダーツへと移る。
しかしこれもまた、お互いの妨害対策すら効果なく引き分け。

ドロー。

ドロー、ドロー、ドロー。

決して終わらぬメビウスの輪のように。
それが、垣根帝督と一方通行の戦いに相応しい結末だとでも宣告するかのように。

「……二時間終わっちまったな」
「…そォだな」

勝負が終わり、のしかかる疲労感。
何を必死にやっていたのだと、二人項垂れ。
それから顔を見合わせて、少しだけ笑った。

まだ、実験は始まったばかりだ。


今回はここまで。

あけましたほもでとうございます。
俺たちの実験は、まだまだこれからだ!  ノロノロペースで本年もよろしくお願いいたします。


自分の感覚だと一ヶ月近く更新してないんですが、どうやら実際の時間とだいぶズレてるようです。












投下。


垣根帝督は、異端者だった。
人間として基本的な性能はきちんと揃っているのに。
どこか、人間としては曖昧な部分があった。

理由もなく、自殺志願者なのだ。

何かに失望した訳ではない。
誰かに裏切られた訳ではない。

ただ漠然と、絶望している。
生きていることが苦痛ではないのに、死に向かいたがる。
気がつけば死ぬことを考えている。

絶対能力者進化実験<レベル6シフト>。

その最後の実験内容を聞き、垣根は参加を希望した。
最後の実験内容は、単純な殺し合い。

自殺をする勇気はない。
殺してもらう方がずっと楽だ。

だから。


「という訳で、今日の実験は大食い」
「何が"という訳"なのかさっぱり分かンねェンだが」

垣根と一方通行がやって来たのは、大食い界で有名な店だった。
実験内容としては、任意のメニューを二人で食べきること。

「お前少食だったりする?」
「身に付いてねェだけで、食べる量は平均的じゃねェの」
「ん、了解」

垣根は返事をし、メニューを眺める。
冷めると脂が浮いてくるものはキツい。
賢い方法は、食べるのに時間がかかることを想定して選ぶこと。

「サンドイッチにするか」
「ビッグサイズ、ねェ」

メニューを覗き込み、つまらなそうに一方通行は零す。
共に生活する中で、二人の距離は少しずつ縮まっていた。

「このチキンなんとかサンド」
「ン」


ででーん。

そんな効果音がつきそうな程、そのサンドイッチは巨大だった。
垣根と一方通行はナイフを片手に、暫し沈黙する。
どちらが先に手をつけるか、と無言で視線を合わせる。

「……」
「……」

ひとまず、半分に切る。
一ミクロンも傾きのないよう気をつけて。
ちなみにこちらのメニュー、三人まで同時挑戦可。
三人でも食べきれないと認定されているメニューだ。

「…ん」

もぐ。

一口。

まず、チキンはもも肉を蒸したもので、旨みがきちんと残っている。
一緒に挟まれているプチトマトは温まっており、とても甘い。
とろとろとした黄色い半液体は、チーズソース。
三種のチーズを使用した濃厚なものである。
アクセントに効いているのはさっぱりとしたレモン果汁。
フレッシュレモン故に、嫌な酸味は感じられない。
パンはバゲットをカットしたもので、表面はパリッと硬く、中は白くふんわりと柔らかい。
極めつけはきちんと水気をきったグリーンカール。
口の中の塩分を優しく包み、後味のレモンの香りだけを残していってくれる。

美味しい。

一言に集約すればそういうことである。
一口一口に重量感があり、胃腸は過重な負担を訴える。
が、それが気にならなくなる位に美味しい。


もぐもぐがつがつ。

着実に食べ進めていき、やがて胃の容積が限界を迎えた頃。
垣根と一方通行は無事にサンドイッチを食べ終えた。
もうたったの一歩も動けず、ただただ、深呼吸を繰り返す。

「美味かったな」
「おォ」

水を飲み、深呼吸を三十回程した後、外へ出た。
一方通行はゆっくりと空を見上げる。
他人と食事をするのは、垣根が初めて…のような気がする。

「…缶コーヒーの在庫がねェな」
「じゃあ買いに行くか。…ドリップの方が良いんじゃねえの?」
「淹れる手間があンだろ」

歩き進む。
誰かと一緒に歩く午後は、悪くない。


やがて二人がやって来たのは、水族館だった。
二人の行動が今後の実験内容に関わっていた場合、その分だけ免除になる。
そんな事情もあって、二人は比較的自由に遊んでいた。

「水族館の隣に海鮮丼屋…」
「…夢もクソもねェな」

感想を呟きながら、中へ。
昼間の為、客は少ない。
平日の昼日中、学生のほとんどは学校に行っている。

「常に泳いでねェと死ぬのがマグロか」
「どうも魚見ると食欲しか湧かないな」
「さっき散々食っただろォが」
「まあな」

垣根は水槽を眺め。
そうして、右手のひらをぺたりとくっつける。
どこかぼんやりとした表情で。

「………この中に閉じ込められたら、あっさり溺死しちまうのかな?」
「………、…」

一方通行は、唇を噛む。
何故だかその発言は、酷く気に障った。

「死なせねェよ」

ほとんど無意識でそう言った。
垣根は、少し驚いた表情を浮かべ。

「…俺が死んでも困らないだろ?」

それきり、その日、二人は会話しなかった。


ループモノってやっぱり流行りなのかな…。
今回はここまで。


早くもエンドまで書けない気がしてきたので支部に移るかもしれません…


スレとして残しておくのは忍びない程早々には続きを書けないので、支部に移しました。
スレタイでググれば出ると思います。申し訳ないです…こっちは依頼出してきます。

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