春香「プロデューサーさん! ミサイルですよ、ミサイル!」(73)

 事務所にて……

春香「こんにちわ」

P「遅かったな、春香。もうみんな揃ってるぞ」

春香「え? あ、本当だ」

春香「あ、でも、亜美とあずささんと伊織はいませんよ?」

P「律子もな」

春香「ふーん」

真美「いや、気付こうよ、はるるん」

春香「? ……あ、竜宮小町」

P「そうだ。竜宮小町だけはどうしても予定が外せなかったんで、四人待ちだ」

響「四人が戻ってきたらすぐに始めるんだからな」

やよい「とっても楽しみです」

P「まあ、本当なら慰安旅行とかでも良かったんだろうけどな」

千早「仕方ないですよ。皆の休みが合うのが今日の午後だけしかなかったんですから」

貴音「誰かが欠けた旅行など、詰まらぬものですから」

P「ま、いいさ。一晩限りだけど、今夜は食べて飲んでのどんちゃん騒ぎだ」

美希「パーティで盛り上がるの!」


真「あれ?」

雪歩「どうしたの? 真ちゃん」

真「なんか人が騒いでるような」

雪歩「外? ……え?」

真「うわ、車が。な、何が起こってるの?」

P「どうした?」

雪歩「窓の外……」

真「雪歩、見ちゃダメだ」

P「うわっ……なにが……」

美希「どうしたの? ハニー」

P「美希、やよい、真美、外を見るな!」

千早「どうしたんです?」

P「酷い事故だ……」

貴音「千早も見ない方がよろしいかと」

P(事故なのか? ワザと轢いて……いや、人がいるのもお構いなく走ってる)

P(それも一台二台じゃない)

P(いったい何が起こってるんだ)


貴音「正気とは思えませんね」

P(だけど……人を轢こうとしていると言うより)

P(轢いても構わないつもりで走っている?)

春香「……あ、ああ……」

千早「どうしたの? はるか」

春香「テレビつけてみたら……」

美希「え……」

貴音「面妖な……」


真美「なに、これ……」

雪歩「あ……あ……」

真「落ち着いて、雪歩。大丈夫、ボクがついてる」

P「どうしたんだ?」

千早「見てください……臨時ニュースです」

春香「……プロデューサーさん、ミサイルですよ、ミサイル……」

P「ミサ……イル?」


 それは核ミサイルが誤射された、というニュースだった。

 そして迎撃が一部間に合わず、直撃を受ける都市があると。

 誤射されたミサイルが何処の国の所属であるかはこの際どうでもいい。

 肝心なのは、数発の核ミサイルがここに向かっていること。

 狙われていたのは事務所のある都市。

 撃墜は既に不可能。残った時間では着弾の被害範囲からは逃げ切れない。

 それでもやよい、真美、響はそれぞれの理由で家に帰りたがった。三人の自宅も被害圏内だというのに。
 
 残りのメンバーは事務所に残っている。

 外の騒ぎはますます広がっている。

 それでも、事務所の中はいつも通りだった。


小鳥「お茶です。これ、プロデューサーさんのぶんですよ」

P「ありがとうございます」

P「ん」

小鳥「やっぱり、最後まで雪歩ちゃんのお茶には勝てませんでしたか?」

P「いやいや、小鳥さんの本業は事務じゃないですか」

春香「え、もしかして、雪歩の本業ってお茶くみなんですか?」

P「あ、そういう意味じゃなくて」

春香「酷いなぁ、プロデューサーさん」

P「いやいや、そうじゃなくて」

千早「そういえば、雪歩は? さっきまでそこにいたような……」

貴音「先ほど、真と一緒に部屋を出て行きましたが」

春香「あ、そっか……」

美希「二人はそっとしておいてあげるの」

小鳥「二人きり……」

P「小鳥さん、覗きに行っちゃ駄目ですよ」

小鳥「ピヨ?」

春香「……最後の最後まで」

美希「小鳥らしいの」





 prrrrr  電話が鳴った。





小鳥「はい、もしもし。あ、真美ちゃん」

小鳥「そう。お父さんとお母さんは一緒なのね」

小鳥「いいえ、亜美ちゃんからの連絡はないわ」

小鳥「竜宮からは誰も連絡がないの」

小鳥「わかった。そう伝えるわ」

P「真美ですか?」

小鳥「はい。病院の回線をこれ以上私用で使えないから、もう切るって」

春香「そっか。病院内だと携帯も禁止だもんね」


千早「やっぱり、病院に?」

小鳥「真美ちゃんのお父さん、最後の最後まで医者としての使命を全うするって言ってるそうよ」

小鳥「真美ちゃんも、出来る限り手伝う。亜美ちゃんから連絡があったらそう伝えて欲しいって」

美希「最後まで……」

 窓の外をそっと眺める美希と春香。

春香「大騒ぎだもんね」

千早「どうして、こんな時にまで争っているのかしら」

貴音「愚か……と誹るのは簡単なのでしょうね」


小鳥「こんなことにもなれば……仕方ないかも知れない」

千早「そうですね。まさか、こんなことになるなんて……」

P「ああ。俺だって、必死だよ」

千早「プロデューサー?」

P「お前達の前では無様を見せたくない。ただ、それだけだ」

P「我ながら、意地っ張りだと思うよ」

貴音「逃げ切れないと知り、あなた様は諦めて吹っ切っているのかと」

P「ま、それもあるな。でも……」


P「もしかしたら不発かも知れない」

P「もしかしたら、ギリギリで迎撃するかも知れない」

P「もしかしたら、外れるかも知れない」

P「もしかしたら、そんなに酷い被害じゃないかも知れない」

P「そういう意味では、足掻いているよ」

春香「足掻きましょうよ」

千早「最後まで、信じてみてもいいですよね」

小鳥「妄想……信じることは得意ですから」

美希「ハニーと一緒なら、何だって信じるの」

貴音「あなた様が為されるのなら、わたくしも共に」




 prrrrr  電話が鳴った。



小鳥「はい、あ、響ちゃん」

小鳥「うん、大丈夫」

小鳥「わかってる。プロデューサーさんだって、貴音ちゃんだってわかってるから」

小鳥「響ちゃんの大切な家族なんでしょう?」

小鳥「手の届く範囲に大事な家族がいる。何処に問題があるのかな?」

小鳥「わかった。響ちゃんも、皆によろしくね」

小鳥「ちょっと待って……貴音ちゃん、響ちゃんが替わって欲しいって」


貴音「はい。響……ええ、それは真ですか?」

貴音「気にすることなどないのですよ」

貴音「わたくしたちはいつも一緒でした」

貴音「ええ、これからも」

貴音「……わたくしも……」

貴音「響、かなさんどー」

P「響か……」

貴音「家族は皆、響と一緒にいるそうです」

P「そうか、よかったな」


千早「そうすると、あとは高槻さんだけですね」

春香「社長が送っていったのは……真美と響ちゃんと、やよいの三人ですからね」 

P「社長、大丈夫かな。暴徒や自殺事故に巻き込まれてなきゃいいけど」

P「無茶苦茶な運転してる連中がいるからな……」

小鳥「プロデューサーさんは、ここにいること。社長命令ですからね」

P「くっ……それはしかたないのか…

P「お前達、本当にいいのか? 今からでも、俺が運転すればもしかしたら……」


春香「いいんです。どうせ、私は間に合いません」

千早「私は一人暮らしだし」

貴音「家族に関してはとっぷしぃくれっとですが、わたくしもここがいいのです」

美希「ミキだって、ハニーと一緒がいいの」

小鳥「真ちゃんと雪歩ちゃんは、あんなですしね」

春香「だったら、最後はプロデューサーと一緒がいいかなって」

P「お、おい、春香」

貴音「大胆になるものですね」


春香「なりますよ。だって、これが最後かも知れないし」

春香「千早ちゃんだって、そうだよね」

千早「え、私は……春香がここにいるから……」

春香「本当にそれだけ?」

小鳥「ふっふっふ」

美希「怪しいの」

貴音「白状するのです」

千早「なんなんですか、もう……」


千早「……プロデューサーがいるから」

千早「プロデューサーがいるからに決まってるじゃないですか!」

P「え、おい、千早まで」

貴音「あなた様? まさか、この三人だけと思っているのではありませんよね?」

P「へ? あれ、まさか」

貴音「わたくしと……」

小鳥「私も、ですよ」



 prrrrr  電話が鳴った。



小鳥「はい。……あ、やよいちゃん?」

小鳥「うん。そう、良かったわね。うん、大丈夫」

小鳥「プロデューサーさん、やよいちゃんが替わって欲しいって」

P「ああ、やよい」

P「今、家からか?」

P「そっか……よかったな。うん、みんな一緒にいるんだな」

P「お父さんとお母さんはまだなのか?」

P「きっと帰ってくるさ、まだ、二十分程残ってるからな」

P「気にするな。こっちは大丈夫だ」


P「ああ、春香もここにいる。千早も美希も小鳥さんも。真と雪歩、貴音もいるよ」

P「響と真美は家に帰ったよ」

P「律子と竜宮は、まだスタジオにいるはずだ」

P「こら、泣いちゃ駄目だ」

P「やよいはお姉ちゃんなんだろう?」

P「わかった、今だけな。今だけは俺が聞いてやるから沢山泣いていいよ」

P「その代わり、これが終わったらやよいはお姉ちゃんに戻らないと駄目だぞ」

P「うん。うん。そうだな。これが終わったらやよいの家に遊びに行くよ」


P「楽しみにしてる」

P「俺もまた、やよいのプロデュースを頑張るから」

P「ああ、それじゃあ、やよい」

P「今まで、ありがとうな」

千早「高槻さん、どうでした?」 
  
P「さすがやよいだよ。きちんとお姉さんしてるみたいだ」


千早「よかった」


小鳥「あら? 貴音ちゃん、何を……」

貴音「召し上がりますか?」

P「……ラーメン、か」

貴音「空腹のまま最期を迎えるのも、些か業腹かと」

美希「うーん」

P「あ、ご飯無かったかな、レンジでチンする奴」

春香「おにぎりですか?」

美希「!!」

P「ないよりマシ程度だろうけど、美希はおにぎりの方がいいんだろう?」

美希「さっすがハニー、ミキのことよくわかってるの」

千早「まだ、ラーメンはあるのかしら?」

小鳥「買い置きがまだあるから、充分よ。好きなのを選んで」

P「……人生最後の食事がカップラーメンってのもどうなんだろ?」

美希「最後に一緒に食べてる相手がハニーだと思えば、食べてるものなんてどうでもいいの」

千早「食べるものより食べる相手、か……」

春香「だったら、これ以上のものはないですよ」

貴音「春香の言うとおりです」



小鳥「……今まで、楽しかったですね」

P「ええ」

美希「うん」

春香「はい」

貴音「真に」

千早「……」

 時間が迫っている。
 と、誰もが感じた。



千早「……」

 そして、千早は歌い出す。

 それは、誰もが知っている歌。

 春香が、美希が口ずさむ。

 貴音が、小鳥が。
 
P「……いい歌だ」

 窓の外、空へと自然に目が向いた。





 空の一角で異様な存在感を放つ、忌まわしくも禍々しいものが見えたような気がした。

 それは何故か、ひどくゆっくりと動いているように思えた。




 以上、お粗末様でした

元ネタ何?

俺「待たせたな」

P「あなたは...?」

俺「名乗る程の者じゃない、が...そうだな...俺とでも名乗っておこうか」

春香「俺さんは何をしにここに?」

俺「核を止めにきた。と言ったら笑うか?」

春香「え...そんなことが出来るんですか!?」

俺「まぁ見てな」

>>62

松本清張の「神と野獣の日」です



俺「」しゅっ

核「」しゅっ

P「核が...」

美希「消えたの...」

小鳥「私達は助かったんですか?」

俺「そうみたいだな」

春香「よがっだ...ぐすっ...よがっだぁ...」

俺「よしよし」なでなで


ゃょぃ「俺さん最高ですぅ!」
春香「俺さん!クッキー焼いてきたんですけどどうですか!?」

俺「やれやれだぜ」

fin

こだわった点は俺をいかにかっこ良く見せるかです!

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