憧「シズへの気持ちが一方通行で辛い」(209)

憧「シズ。あたしのことどう思う?」

穏乃「好きだよ!」

憧「じゃあ玄のことは?」

穏乃「好きだよ!」

憧「宥姉、灼さん、ハルエも?」

穏乃「好きだよ!」

憧「ぐぬぬ」

憧「それなら質問を変えて、シズが一番好きなのは誰?」

穏乃「みんな一番好きだよ!」

憧「あえて順位をつけるなら!」

穏乃「ええー? それは、うーん」

憧「……」ドキドキ

穏乃「お母さんとか?」

憧「確かにお母さんは大切よね、うん……」

憧「シズがお母さんのことを大切に思っているのはよーく分かった!」

穏乃「いやー、改めて口にされるとハズいなー」

憧「でも、それはそれとして!」

憧「阿知賀麻雀部の中から誰か1人好きな人を選ぶとしたら……」

穏乃「ねえ憧。さっきから変な質問ばかりどうしたの」

憧「えっ?」

穏乃「好きに順位付けなんてしなくてもいいじゃん」

憧「それはその……」

穏乃「みんな好きってんじゃ駄目なの?」

憧「駄目じゃない……、けど……」

憧「うわーん! シズの馬鹿ぁー!」

穏乃「えええええ!?」

穏乃「私何か悪いこと言ったか!?」

憧「悪いこと言ったってわけじゃないけど、鈍感っていうか……」

穏乃「うーん。なんかよく分かんないけどごめんな、憧」

憧「!!」

憧(あたしが勝手に空回ってるだけなのに、自分から謝ってくるなんて!)

憧(やっぱりシズはいい子! というか可愛すぎ!)

憧「あたしの方こそ、なんか訳分かんないこと言ってごめんね」

穏乃「いいよ別に。気にしてない!」

憧「仲直りの印にラーメンでも食べにいく?」

穏乃「いいね。玄さんとかも誘ってみる?」

憧「!?」

憧「どうしてそこで玄の名前が出てくるの!?」

穏乃「玄さんも一緒の方が賑やかで楽しいかなー、って」

憧「うぐぐ」

穏乃「あれ? もしかして憧、玄さんのことあんまり好きじゃないの……?」

憧「そういう訳じゃない!」

憧「というか、好きか嫌いかなら好きに入る、けど……」

穏乃「けど?」

憧「せっかくだしあたしはシズと2人で……、ごにょごにょ」

穏乃「変な憧ー」

穏乃「ま、いっか。じゃあ行こう!」

憧「え?」

穏乃「ラーメンのこと考えてたらもう腹減って腹減って」

憧「あのさ、玄に連絡はとらなくていいの?」

穏乃「だって憧は皆でわいわいって気分じゃないんでしょ?」

憧「う、うん」

穏乃「それなら私は2人だけでもいいよ」

憧「シズ……」

穏乃「たまには憧と2人きりってのも悪くないし!」

憧「!!」

憧(2人きりも悪くない、か)

憧(ふふっ、シズったらもう)

穏乃「あ。灼さんだ!」

憧「えっ」

灼「穏乃に憧。外で会うなんて偶然だね」

憧(ちょ、これ駄目な流れじゃ)

穏乃「灼さんは何してるところなんですか?」

灼「ハルちゃんと一緒にラーメン食べる約束してて」

憧(あああああああ!)

穏乃「おお凄い! 実は私達もラーメン食べにいくところなんです!」

灼「そうなんだ。2人は仲がいいね」

憧「さすが灼さん! 分かってるー!」

灼「そ、そう? どうも」

穏乃「そだ。せっかくですし一緒にラーメン屋に行きません?」

憧(ガーン!)

灼(えっと……、なんか露骨に憧の態度が何かを訴えてるんだけど)

憧(お願い断って! 断って! 断って!)

灼「……」

灼「実はハルちゃんと、食事をしながら部の経費関連について話すことになってて」

灼「部長と顧問で真面目にお話ししたいから、悪いけど今回は」

憧(ありがとう! ありがとう灼さん!)

穏乃「うーん。それなら仕方無いですね」

灼「それじゃあ私はあっちの方向のお店だから」

穏乃「はーい! ではまた部活でー!」

憧(ふうっ。なんとか2人きりキープできた)

穏乃「今日は何頼もっかなー」

憧「あたしは塩かな」


通行人A「テルー。東大寺はまだー?」

通行人T「待ってて。多分もうすぐだから。多分」

通行人A「あれ? この地図逆さ」

通行人T「えっ」

通行人A「観光って難しいね……」

通行人T「うん……」


憧「……」

憧(今すれ違った2人組、あたし達と同年代ぐらいなのに手を繋いでた)

憧(そういうのもありか!)

憧「ね、ねえシズ」

穏乃「ん?」

憧「久々に手でも繋がない?」

穏乃「え。嫌だよ」

憧「え? ……そ、そっか」

憧(なんだろ、断られても思ったよりは平静でいられて、それは自分でもビックリなんだけど)

憧(ただ、心臓が冷たくなったみたいな嫌な感じが胸の中に広がってる……)

憧「考えてもみればそうだよね、こんな年で手繋ぐとかキモいか……」

穏乃「別に気持ち悪いとかはないよ」

憧「え!? それならどうして?」

穏乃「だーってこの暑いのに手なんて繋いだらますます暑いじゃん!」

憧「あ、あははは……、なーんだ。そんな理由」

憧(よかった。あたしだから嫌ってわけじゃなくて)

穏乃「おっしゃ食べるぞー!」

憧「うら若き女子高生がチャーシュー麺とかどうなのよ」

穏乃「美味しければいいの!」

憧「ま、そのぐらいの方がシズらしいか」

穏乃「ちゅるるるっ、ちゅるっ」

憧「……」

穏乃「ちゅるるるる」

憧(こうしてみると、シズがラーメン食べてる姿って……)

憧(なんかちょっとセクシーじゃない!?)

穏乃「あの……。そんなに見られてると食べにくいんだけど」

憧「ごっ、ごめん」

憧「ふう。食べた食べた」

穏乃「美味しかったなー」

憧「ラーメンも時々はいいもんだよねー」

穏乃「私は毎日でもいけるよ」

憧「そりゃさすがにおかしい!」

穏乃「えへへへー」

憧(ああ、シズ可愛いなぁ)

穏乃「……」

憧(高校卒業しても一緒にいられるのかなあ)

穏乃「憧。私重要なことを思い出した」

憧「ん? デザートでも頼み忘れた?」

穏乃「そうじゃなくて……、いや、それもあったか……」

穏乃「おじさーん、ソフトクリーム1つー!」

憧「本当に食べるんかい! ……で、思い出したことっていうのは?」

穏乃「小さい頃に埋めたタイムカプセル!」

憧「あ、ああ。タイムカプセルね……」

穏乃「急に思い出したよ! 懐かしいな」

憧「……」

穏乃「ちょうどここに2人揃ってるわけだし今から掘り返さない?」

憧「それはえーと、どうかなー」

憧(無理無理無理! あの中には、あの中には……!)

憧(シズがまだ平仮名しか読み書きできないのをいいことに適当言ってサインさせた、2人の結婚届け(仮)が!)

憧(あれを今見られたら恥ずかしすぎる!)

穏乃「えー。付き合ってくれないの?」

憧「喜んで付き合うよ!」

穏乃「よっしゃー!」

憧(しまった! 付き合うという言葉がシズの口から出たもんだから、つい条件反射で!)

穏乃「確か近所の公園に埋めたんだっけ。シーソーのそば」

憧「よく埋め場所なんて覚えてたね。シズのことだから忘れてるものだとばかり」

穏乃「んー、まあね。憧との大切な思い出だし」

憧「……さっきまでタイムカプセルの存在自体忘れてた癖に」

穏乃「それはそれ! これはこれ!」

憧「調子いいんだから、もう」

憧(大切な思い出、か)

憧(そうだよね。どんなに恥ずかしくても、あたしにとってもあれは大切な思い出だ)

憧(仕方無い。腹をくくるか!)

穏乃「ついたついた! この公園の!」

憧「入り口から右手に見える水色のシーソーのそば、に……、えっ?」

穏乃「……」

憧「……」

穏乃「うっ、うそぉー!? コンクリートで舗装されてる!? いつの間に!」

憧「あれからだいぶ経ったもんね……。無理もないよ」

憧(そうだよね。時間が経てばどんなものだって変わっちゃう)

憧(あの日の淡い気持ちも、今は冷たいコンクリートの下、か)

憧(なんだか寂しいな……)

穏乃「うー。気持ちが不完全燃焼ー」

憧「だねー」

穏乃「さらば私のスーパーボール」

憧「あんたそんなもの埋めてたんかい!」

穏乃「うん……。あと未来の自分宛の手紙とかも入れたかも」

憧「普通気にするのはそっちでしょうに」

穏乃「憧は何入れたのか覚えてる?」

憧「あたし? あたしは、その……」

憧「シズと一緒で未来の自分宛の手紙と、お気に入りのビーズか何かと、それから……」

穏乃「それから?」

憧「け、けっ……、けっこ……」


 ̄ ̄ ̄ ̄
『タイムカプセルの中に入れられた未来宛の手紙』

未来の新子あこへ


この手紙を読むころ、あなたはいくつになっているのでしょうか
背はのびているのかな
マージャンも強くなってるとうれしいな
だけど一番の気がかりはシズと仲好くやれているかどうかです

あたしは、少なくともこの手紙を書いた時点ではシズのことが好きです
ただそれをシズに伝えるゆう気はまだありません
もしも未来のあたしが同じようにシズのことを好きなままでいて
しかも同じようにシズに気持ちを伝えられずにいるのなら
一しょに入れた結婚届けにはげまされて、がんばってみて下さい

すでにシズに思いを伝えられているのなら、こんなこともあったなとなつかしんてください

万が一、シズが一番好きな相手でなくなっていたならば……
自分が昔シズのことを好きだった気持ち、ちょっとでいいから思い出してね
でもそれはやだな。この気持ち忘れたくないや

なんだかシズのことばかりですが、これにて筆を置きたいと思います
未来のあたし、がんばってね


新子あこより

 ̄ ̄ ̄ ̄
憧「そういえばさ、舗装された地面を突き破って花が生えることもあるって言うじゃん」

穏乃「うん? 確かに聞いたことあるけど……、どうしてそんな話を?」

憧「なんていうかなー」

憧「時間が経ってコンクリに埋められて見えなくなっちゃったとしても、その上に新しい花が咲くこともあるっつーか……」

憧「ああ待って、やっぱりこれ無し。まどろっこしいのは止め止め!」

憧「……あたしね。あのタイムカプセルの中に、結婚届けを入れてたんだ」

穏乃「結婚届け?」

憧「うん。婚姻届じゃないところが、子供の浅知恵だよね。ドラマか何かでうろ覚えだったのかな」

穏乃「そんなもの入れてたんだー。憧ませてるぅー!」

憧「でね。その結婚届けってのが……、あたしとシズの結婚用のものだったの」

穏乃「ええっ!?」

憧「その時のあたしは、シズのことが大好きでさ」

憧「当時の気持ちは今となってはうろ覚えだけど、未来に想いを馳せて、そんなもの作ったんだったと思う」

穏乃「そうだったんだ……」

憧「馬鹿だよね。現実見えてないよね。シズは女の子なのにね」

穏乃「じっ、自分のことそんなに馬鹿なんて言っちゃ駄目だよ!」

穏乃「憧が私のこと好きでいてくれたって知って、嬉しいよ?」

憧「ありがと、シズ」

憧「でもね。あたしが馬鹿なのは今も同じなんだ」

穏乃「え? それって、その……」

憧「うん……」

憧「シズがあたしのこと、特別視してないのは分かってる」

憧「あたしのこと他の麻雀部メンバーと同じにしか見てないってのは痛いぐらい分かってる」

憧「でも、私、シズの特別になりたいよ……」

憧「だってシズのこと、一番大好きだから」

穏乃「憧……」

憧「だからお願い。あたしと特別な関係になって下さい」

穏乃「……」

穏乃「分かんないよ……」

憧「シズ?」

穏乃「どう答えればいいのか分かんないよ……」

憧「……」

穏乃「だって、憧がそんな気持ちだなんて知らなかったし。そんなこと考えてもみなかったし」

穏乃「なんかビックリしちゃって、頭の中ぐちゃぐちゃで」

憧(シズを困らせちゃった……)

憧「ごめんね、シズ」

穏乃「ううん。謝ることじゃない」

憧「でも……」

穏乃「ねえ憧。手繋ごっか」

憧「へ?」

穏乃「繋ごうよ」

憧「あ、うん」

穏乃「手繋ぐと暑いけどあったかいね」

憧「うん、そうだね」

穏乃「あのさ。憧」

憧「……」

穏乃「このまま今から山登ろう!」

憧「はぁ!? 山!?」

穏乃「ね!」

憧「まあ……、いいけど。惚れた弱味っていうか。にしても突拍子ないな」

穏乃「ありがと。頂上につくまでには気持ちの整理するから」

憧「あの、無理して急ぐことないよ……?」

穏乃「ううん。何より他でもない私自身が、この胸のもやもやを整理しちゃいたいの」

憧「そっか」

憧「山歩きあっつー!」

穏乃「ここらでジュース飲むか」

憧「おー」

「おねえちゃーん、疲れたよー」

穏乃「ん? あの声は?」

宥「頑張ろう玄ちゃん!」

玄「うぅー、おもちで栄養補給したいよぉー」

憧「玄に宥姉……」

宥「あれ? 憧ちゃんと穏乃ちゃんだ」

穏乃「こんにちはー! 山登りですか?」

玄「旅館で使う山菜を集めてきた帰りだよ」

玄「それにしても……」

穏乃「え?」

玄「ふぅーむ、なるほどざわーるど」

玄「シズちゃんと憧ちゃん、今日は手を繋いでて仲良しさんだね!」

憧「あっ」

穏乃「あははー。そりゃもう幼なじみですし」

憧「……ん?」

憧(あれ? シズの顔も、ちょっと照れた感じになってる?)

憧(なんか……、小さなことだけど嬉しいな、えへへ)

憧(今までだったら照れてすらもらえなかったはずだから……)

宥「それじゃあ、私達はこれで」

穏乃「はい! お気をつけてー!」

玄「2人も熱中症にはご注意をば!」

憧「熱中症ってったらそんな格好してる宥姉が一番心配だよー」

宥「私?」

玄「お姉ちゃんには私がついてるから大丈夫!」

穏乃・憧(あんまり大丈夫な気がしない……)

>>110の続き

 ̄ ̄ ̄ ̄
穏乃「山頂!」

憧「到着ー!」

穏乃・憧「いえーい!」パンッ

憧「おっつかれー、シズ!」

穏乃「おっつかれー、憧!」

憧「山を登りきるとテンション上がるよねー」

穏乃「本当、本当。勢いであと2往復ぐらいしたくなってきた!」

憧「ごめん。それはさすがに付き合いきれない……、かも」

穏乃「なはは冗談冗談」

憧「にしても、ここはいい空気だね」

穏乃「うん。変わらないなぁー」

穏乃「ところで憧」

憧「ん?」

穏乃「実は私も何年か前、お前に言えなかった言葉があったことを思い出したんだ」

憧「えー、なんだろ。愛してるぜ憧とか?」

穏乃「ぶっぶー」

憧「ハズレかー!」

穏乃「正解は、『行かないで憧』、でした!」

憧「行かないで……? どういう意味?」

穏乃「今だから白状できるけどね。本当は私、憧と和と3人で同じ中学に行きたかったんだ」

憧「え? シズ、そんなこと一言も」

穏乃「うん。言いたかったけど、言っていいことなのかどうか分からなくってさ」

穏乃「憧の意思を尊重するのが正しいのかなって、迷ったあげく結局そっちに転んじゃったんだ」

憧「そうだったんだ……」

穏乃「こうやってバラバラになるのが大人になるってことなのかなー、なんてね」

穏乃「無理に背伸びして強引に納得しようとしてたのかも」

憧「シズも色々考えてたってわけかー」

穏乃「当然だろ」

憧「なんか意外だ」

穏乃「いやおい、私のことなんだと思ってたんだよ!」

憧「ぷっ……。ごめんごめん!」

憧「んー、でも考えてみれば、あの時もシズはあたしに、阿知賀に来いとまでは言わなかったっけ」

穏乃「あの時って?」

憧「ほら、和がインターミドルで優勝した日の電話」

穏乃「ああ!」

憧「今のシズの話からすると、あれも……」

穏乃「うん。本当は阿知賀にきてって言いたかったけど、そんな風に憧の進路を乱していいのか分からなくて、言えなかった」

憧「そうなんだ……」

穏乃「それだけに憧が自分から駆け付けてきてくれた時はすっごく嬉しかったよ!」

憧「……」

憧(あたしが部室に行った時、シズは喜んでくれてたんだ……)

憧(うーわー。その事実だけで胸がどきどきする!)

穏乃「憧」

憧「うん」

穏乃「私、こうして憧といると楽しいよ」

憧「うん」

穏乃「それだけじゃ、憧はいや?」

憧「……うん」

憧「あたしシズのこと……、やらしい目で見ちゃってるから」

憧「だからごめん。ごめんね。ただ一緒にいるだけじゃ寂しいんだ」

穏乃「そっ、か」

穏乃「もう1つだけ聞かせて」

憧「うん」

穏乃「特別な好きになったら、憧はずっと私と一緒にいてくれる?」

憧「それは……、約束する!」

穏乃「大事なこと黙って決めちゃったりしない?」

憧「うん!」

穏乃「分かった。それなら付き合おう、憧」

憧「え?」

穏乃「恋人になろ!」

憧「えと……、マジで!?」

穏乃「マジで!」

憧「ほっ、本当にいいの、シズ?」

穏乃「うん!」

憧「あたし、その……、シズとキスとかエッチなこととか、したいと思っちゃうような人間だよ……?」

穏乃「さっきやらしい目で見てるとか聞いたからそんなの分かってるよ」

憧「それでも、あの」

穏乃「もーっ! いいから黙って私の胸に飛び込んでこい!」

憧「……、うんっ!!」

憧「シズ……、シズ……」

穏乃「聞こえてるよ」

憧「ずっと好きだったんだよ……」

穏乃「ありがとう」

憧「恋人になれて嬉しいよシズ……」

穏乃「私も嬉しいよ」

憧「大人になっても一緒……?」

穏乃「もっちろん! アラサーになってもアラフォーになってもずっと一緒だ!」

憧「それとシズ……」

穏乃「今度は何?」

憧「汗、超かいてる」

穏乃「やっ、山に登ったんだし仕方ないじゃん!」

憧「確かに。ふふっ」

憧「よし! さっそく今からキスしよ!」

穏乃「えええっ!? 外で!?」

憧「どうせ山の上だし誰も見てないよー!」

穏乃「そっ、それでも外でってのはどうなの?」

憧「大丈夫大丈夫!」

憧「それにあたし、何年も我慢してきたんだもん。もう我慢したくないよ」

穏乃「じゃあえっと……、キスしよっか」

憧「やたっ!」

穏乃「ところでこういう時って目は閉じるのかな? 開けたままかな?」

憧「あー。それは……。どっちなんだろ?」

穏乃「うわー! なんか私ダメダメだー!」

憧「ではここは一つ、目を開けたままキスしよう!」

憧(テレビかなんかで閉じる方が多数派って見た気がするけど、開けた方が顔が見れていいよね?)

穏乃「うおお! よりによって恥ずかしい方を選んできたか!」

憧「だってこっちの方が近くでシズのこと見れるから……」

憧「なっ、なーんちゃって! あはは!」

穏乃「……」

憧「えと……、急にベタベタ過ぎて引いた?」

穏乃「憧ってさ」

憧「うっ、うん」

穏乃「なんか可愛いよね」

憧「かわっ……、あ、ありがと……」


 ̄ ̄ ̄ ̄

穏乃「……で、けっきょく一人だけ目閉じちゃうんだもんなー」

憧「ごめーん。いざシズの顔が近付いてきたら、なんだか予想以上に恥ずかしくて……」

穏乃「憧って案外ヘタレ?」

憧「ぐぬぬ。反論できない」

穏乃「でもそういうとこも好きだよ」

憧「……」

憧(可愛いとか好きとか言われるだけで嬉しくなるとか、あたしってこんな安い女だったんかい!?)

憧(くぅー、なんか負けた気分!)

憧(でもいいや。シズにはもうとっくの昔から負けてたし……)

憧「ね、シズ」

穏乃「んー?」

憧「あたしのことどう思う?」

穏乃「大好きだよ!」

憧「!!」




憧「シズへの気持ちが一方通行で辛い」

おわり

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