春香「なんで事務所にアイドルマスターがあるんですか?」(288)

\アーイーターイー メール モー ケイターイーモー ナーラーナーイー/

社長「……良し」

律子「(良して……)」

小鳥「社長、やらないならコンセント抜きますよ? 光熱費もバカにならないんですから」

社長「まぁまぁそう言わず」

\モット ターカメテハテナク コーコローノ オークマーデ アーナータ ダケガツカエル/

小鳥「きゅんっ……」

律子「(きゅんて……)」

律子「電源落としますよー」

小鳥「えっ」
社長「えっ」

律子「……やらないんですよね?
    電気代の無駄ですから、やる時にだけつけてくださいよ」

社長「待ってくれ!せめて、せめてもう一度だけデモを見てからだね」

律子「そう言って2時間くらいつけっぱなしじゃないですかー」

社長「ぐぬぬ」

社長「律子くんはいけずだなぁ」

小鳥「いいもーん、ドラマCD聞こーっと」

律子「(こいつら……)」


春香「はぁ、はぁ、すみません遅れましたぁっ!」

小鳥「あら、春香ちゃん久しぶり~、夏休みどうだった?」

春香「小鳥さぁん♪ 私海に行ったんですよ~!あとお台場にも行きました!」

小鳥「ふふ、いいわねぇ」

社長「おお天海くん、連絡がないから心配していたのだが、電車どうだったかね」

律子「そうか、電車止まってたのよね」

春香「そうなんですよ~~! 鳥のいたずらとかで止まっちゃってて
    ああっ、社長おはようございますっ。律子さんもおはよう♪」

律子「(はぁ、ゲーム知らなさそうな一般人がやっと来てくれたわ
     ここ最近アイマスの話ばっかりで、変な空気だったものねぇ)」

春香「あれ……なんで事務所にアイドルマスターがあるんですか?」

律子「(ズルッ)」

律子「(なんなの?芸能事務所はアイマス好きが集まる法則でもあるの?)
    は、春香も知ってたのか~、意外ねぇ」

春香「やだなぁ、アイマスって言ったら有名じゃないですかぁ」

律子「そ、そうよね、有名よね……
    (ネットの一部でね……!)」

社長「おおお!天海くんも知っているのかね!」

小鳥「うふふっ、また深く語れる友が増えてしまいましたねっ」

春香「えへへへ、アイマスにはうるさいですよ~?」

社長「ということは、天海くんもプロデューサーなのかね?」

春香「もっちろんですよぉ~! ほらほら見てくださいっ」

小鳥「そ、それは!」

社長「四方田春香のプロデューサーノートではないか……!!」 ※当時キャラごとの小サイズノートが売られてました

春香「えへへへっ」

社長「夢のようだ……かつて、アイドルマスターと言えば物好きの中の物好きしか知らないゲームであった
    しかし、時を経ても尚、我らプロデューサーの心は繋がっていた
    仮初の絆ではない、アイドルマスターを支える本当の絆が今も息づいているのだな……グスッ」

律子「(この事務所アカン)」

小鳥「そ、それ、誠くんのもあるの!?」

春香「ありますよっ、オークションにならまだ出てるかもっ」

小鳥「そう! 社長、私用でパソコン使ってもいいですか?」

社長「どんどんやってくれたまえ」

律子「(事務所が私物化されていく……)」


春香「でもすごいなぁー、これ動くんですよね?」

社長「もちろんだとも!」

律子「しかもサーバーをゴニョゴニョしてるから、オンラインの仕様で動くわよ」

春香「うわぁ♪ いいないいなぁ、やりたいよぉ」

社長「もちろん、フリープレイだ」

律子「(なぜドヤ顔……)
    そういえば聞いてなかったんですけど、どうして家じゃなくて事務所に持ってきたんですか?」

社長「うむ、実はな、私も初めは自宅でやろうと思っていたのだよ
    しかしだね、その……玄関を通らなくてね」

律子「あー、横に大きいですもんね」

春香「はやくはやくっ、電源いれましょうよぉっ」

\デッデッデッデッデッデッデデデデッ/

春香「でっでっ ででっでー」

律子「(タイトルを歌う人だわぁ……)」

社長「して、天海くんはどれほどの実力なのだね」

春香「実力だなんてぇ、センモニには何回か乗りましたよ♪」

社長「なっ……」

律子「(めちゃくちゃやりこんでんじゃないのよ……)」

※センモニ センターモニターの事 全国ランキング上位20位までのユニットが放送される

春香「えへへ、事務所も作ってたんですよぉ、みんな集まってくれて嬉しかったなぁ」

社長「ひいいっ! 天海くんそれは、それは、まさかランカーだったのかね!」

※ランカー ランキング常連の事 全てにおいて異次元の民

律子「(ランカーなんて久しぶりに聞いたわぁ……)
    へえ、春香のプレイが楽しみになってきたわ」

春香「もお~やめてくださいよぉ、私へたっぴなんですからー」

律子「センモニ乗れるのは下手とは言わないわよ、ねえ早く見せて」

春香「えっへへ、照れちゃうなぁ♪」

春香「えーっと、確かお財布に、あったあった」

\プロデューサーカードヲ イレテクダサイ/

春香「カード イン!」

律子「まだカード持ち歩いてたの!?」

春香「なんだか手放せなくて、お守りみたいな感じなのかな
    えへへ、変ですよね、ゲームのカードなのに」

社長「いいや、どこが変なものか、その精神こそプロデューサーたるものではないか!」

律子「(誰かこの二人を止めてー)」

\ユニットカードヲ イレテクダサイ/

\ドッデッデッデッデッデッデッデッ/ ←ドラゴンボールOPに聞こえる

\オハヨウゴザイマス プロデューサーサン/

春香「わああっ、春香ちゃん久しぶりぃ~!元気にしてたぁ?」

律子「(う、うわぁ、話しかける人だわぁ……)
    って、春香が春香をプロデュースしてんのかい!」

春香「えへへっ、だっておんなじ名前なんですよ? 他人に思えなくなっちゃって
    ほらほらリボン好きも同じなんですよっ」

律子「そ、そうね」

社長「お、ぉお!アマーミンPではないか……」

春香「えっ? 社長、私のこと知ってるんですか?」

社長「何を言う、ジュンPを覚えていないかね?」

春香「あ、あー! 遠征の手伝いしてくれたジュンPさんですか!?」

※遠征 遠くのゲーセンにアイマスをする為に行く事 遠くのゲーセンにアイマスをする為だけに行く事 わざわざアイマスの為に金かけて遠出する事

社長「そう、そうだとも! まさかこんな巡り会いがあるとは……」

春香「う、うわぁぁ、その節はありがとうございました、おかげでスタンプラリーも
    まさか社長がジュンPさんだったなんて、びっくりですよぅー」

律子「……ええと、つまりお知り合いだったんですか」

社長「うむ、天海くんは私が所属していた事務所の長でね
    しかしまだ学生という事もあって、オフ会の際には我々成人組が手配をしていたのだよ」

律子「(いちいち言い回しが古いな……)
    へえ、偶然ってあるものですね」

春香「直接会った事なくて……ぜんぜん知らなかったですっ」

社長「ほっほ、プロデューサー同士は引かれ合うという事だな」

律子「(んなスタンド使いな……)」

春香「えーっと、春香ちゃんはどこまでやってたかな」

律子「やりこんでる割にはソロユニットなのね、意外だわ」

春香「えへへ、ユニットを組むのも面白いんですけど、やっぱり大好きな春香ちゃんはソロですよっ」

律子「(大好き入りましたわぁ……)」

春香「そっか、LT受けるとこだ」

律子「今どんな感じなの?」

春香「えっとね、ボナレ4引きで……トップ380狙える感じですね」 ※ボナレ ボーナスレッスン

律子「い、いやそうじゃなくて……特別とか」

春香「それは完璧ですっ、タイミングあわなくてVi升だけ抜けてるんですけど、それ取ったら765行きですっ」 ※765 70k60k50kオーディションの事

律子「あー、て事はボムは全然使わないプレイかぁ (既に化物の基準だわ……)」

春香「でもランクアップコミュと、風景はやりたいですし」 ※風景 ある日の風景の略、アイドルの日常を描いたコミュ

律子「そう、コミュは回収するわけね、それでも350は超えそうね」

春香「そうですね~、でもスコアなんて今更ですよ、全部コミュに回しちゃってもいいかも
    だって一年ぶりの再会だもん……」

律子「(再会て……)」

\サア ドノ オーディションヲ ウケヨウカ/

春香「久しぶりで緊張するなぁ」

律子「春香は5秒インするんだ」

春香「うん、特別なら先入りしていいんだけど、やっぱり怖い偽装もいるから」

律子「(基本抑えてるわね……)
    私は構わず先入りするわね、後入り枠外戦もどんと来いだわ」

春香「わあー、律子さん対人できるんですね~私対人になると勝てなくて……」

律子「まぁねぇ、読み合いは慣れだから
    でも対人もしないとランクには乗れないでしょ?」

春香「そうなんですよ~~! 70k行くといっつも同時インしちゃってぇ」

律子「7万はねぇ」

春香「だからワクテカ待ってやってたんですよぉ」 ※ワクテカ わくわくてかてか

律子「(懐かしい単語きたぁ……)
    ブーストかぁ、もうメールプリーズないのよねぇ」

春香「……うぅ、春香ちゃんのメールほしいよぉ」

律子「(あんたが言うと危ない人に聞こえるわよ……)」

\スッ/
さとしP/ピカピカ虫 Da Lv10 悪徳持ち

春香「む」

律子「ピカチュウきたかぁ」

春香「こいつバッドするから見送りですね」 ※CPUの中には、バッドボムを打ちやすいものもいる

律子「(ふぅん、慎重にプレイするのね)
    そうねぇ、LTでジェノはされたくないわよね」 ※オーディションは2回まで見送れる

-アイドル吟味中-

春香「これはいいかな」

\デンッ/

春香「よぉーし、がんばるぞ~!」

律子「(頑張るぞて……Lv14で負けるわけないでしょうに)」

\ウゥーン ナンカ チガウンダヨネ/

\ソンナ トニカクナンテ イワレテモォ/

律子「なんか、テンション下げられるわね」

春香「勝てばいいんですよ勝てばっ」 ※アーケードでは、途中でテンションが落ちてもオーディションには影響しない 無印では影響した

\ジュラーン/
3rd 1st 2nd

律子「余裕ね~」

春香「は、話しかけないでくださいぃ」

律子「失礼」

春香「ふん、ふん、ふん……」

律子「(あー……リズム感ないもんねぇ、リアルの春香)」

春香「なみしぶきー……あげて(ボソボソ」

律子「(歌い出しちゃったかぁー)」

\ジュラーン/
2nd 2nd 1st

律子「(周りLv10だし、こんなもんよね)」

\キュイーン ポヨポヨポヨポヨポヨポヨポヨポヨポヨ/

律子「な、なぜにボム飛ばした!?」

春香「お守りですっ!」

律子「さようで…… (こいつ、オーディション苦手ね……?)」

\ジュラーン/
1st 1st 1st

社長「ふむ」

律子「どうしました?」

社長「いや、アマーミンPと言えば、一桁は取らなくともランキングには顔を出す実力者なのだがね」

律子「私も名前は見たことありますね」

社長「なるほど、確かに」

律子「(いや、何言いたいのかは伝わるけど……)」

春香「緊張したぁぁ、オーディションってこんなに難しかったですっけ」

律子「いやまぁ、久しぶりなら仕方ないでしょ」

\ゴウカクシャヲ ハッピョウスルゾ ドキドキスルダロ/

\1バン ゴウカクダ オメデトウ/

春香「ふぅぅ……」

律子「もう、何ため息ついてるのよ、☆30とってるのに落とすわけないでしょう?」

春香「そんな事いって、この中に偽装に偽装した人がいるかも知れないんですよっ」

律子「(いたなぁそんな奴……)」 ※人に偽装したCPUに偽装する人がいた

春香「それで何度フレ負けしたか……」 ※フレ フレッシュの略、プレイヤー同士で同点になった場合、新鮮なアイドルが優先される

律子「でもこれ、もうオンライン終了してるから……」

春香「そ、そうだった!」

律子「まぁゴニョゴニョしてるから偽装はくるけど」 ※オフラインモードでは偽装も来ない

\キャー キャー ワー/

春香「!! 春香ちゃんオンステージ!」

律子「(あんたが言うと自分大好きみたいに聞こえるわ……)」

\モット トオクヘ オヨイデーミタイ/

春香「もおと とおくへ およいでーみたいっ」

律子「!?」

\ヒカリ ミチル シロイアーイラーンド/

春香「ひかり みちる しろいあーいらんっ」

\ズット ニンギョニ ナッテイタイノ ナーツニ/

春香「今だああああいびいいいいん!」

小鳥「!!?」

律子「は、春香!抑えて抑えて」

春香「わわっ、すみません……」

社長「いやいや、それもアイマスの楽しみだよ、うむ」

律子「(恥ずかしい人らだわぁ……)」

小鳥「でも、つい歌っちゃうのはわかるなぁ」

\ドリーム ユメナラ サメナイ デッ/

春香「さめないっでっ↑」

律子「(音程ずれてるから……)」

小鳥「太陽のジェラシーですよね」

社長「うむ、オケが特徴的な曲だな」

春香「えへへ、ゲームセンターじゃいつも我慢してて、つい……」

律子「つい……じゃないわよ、さっきの大声は下のカラオケ教室まで響いてたわよ」

春香「わぁぁん、ごめんなさぁ~いっ」

社長「まぁまぁ、日中なのだから良いではないかね」

律子「はぁ、楽しそうで何よりだわ」

律子「写真は取らなくていいの?」

春香「うん、もうベストショットしちゃってるから」

小鳥「そういえば春香ちゃんってどれくらいの歴なのかしら」

春香「それ、それなんですよ!聞いてくださいよぉ~!」

律子「(うわ、地雷踏んだわこれ)」

春香「近所のデパートに偶然おいてあったんですっ
    あ、それヅャスコなんですけど」

春香「そこで音楽のゲームかなーって見たら、女の子を育てるゲームで!
    あ、私音ゲー好きなんですっ」

律子「(めんどい話し方だわぁ……)」

春香「その時に私とおんなじ、はるかって女の子に出会っちゃって!
    あ、私天海春香っていいます」

律子「漫才かっ!」

春香「てへへ、つっこまれちゃいました」

春香「それでですね、一目惚れしちゃいまして……///
    ずーっとやってたんですけど、初めてすぐにアイマス撤去されちゃったんですよぉぉ……」

社長「アイマスを価格を考えれば仕方ない……」

小鳥「普通に買ったらどれくらいしたんですか?」

社長「私も詳しくないが、これは4台+センターモニターのセットでしか買えなくてね
    確か1000万はしたと思ったが……」

小鳥「へっ……?」

律子「筺体って定価はそれくらいするんですよねぇ」

小鳥「え、えっ!?」

春香「やっぱり高くて撤去されちゃったんですかぁ~~」

律子「それにアイマスって人気なかったのよねぇ」

社長「うむ、我々専用と言っても過言ではなかったな」

小鳥「誠くんかわいいのに……」

律子「普通に考えてですよ? 人前でギャルゲーできます?」

小鳥「え、できないの?」

律子「(普通に考えてくださいよ……)」

社長「それに加えてこの難しさとくれば、一部の人間にしか受けないのも仕方ない……」

小鳥「誠くんかわいいのに……」

春香「それで、隣町の大きなゲームセンターにあるのを知って通ってたんですよぉ」

社長「おお、それがプラボかね!」

春香「はい!あそこまで通ってたんですよおぉぉ~~~!
    片道1時間で大変だったんですから」

小鳥「片道1時間!?」

律子「アイマスは大型筐体ですから、それなりに大きなゲームセンターしか買わなかったんですよ
    片道1時間かけてやりに行くのは地方じゃ当たり前です」

小鳥「愛のなせる技ね……」

律子「(愛て……)」

小鳥「え、でも待って、アイマスって3回500円よね、学生さんでもプレイできたの?」

春香「あ、そこのお店だと500円で5回なんです     ※現実ではアケマス終了間際になるまでクレジット改造はありませんでした
    お年玉やお小遣いで少しずつやってたんよぉ」

社長「アイドルに魅了された者は皆そうなる運命なのだよ」

律子「……否定はしませんけどね
    (私も人のことは言えない)」

小鳥「私なら、あれを我慢すれば月3万は……(ボソボソ」

律子「……」

春香「でもプラボも去年……」

社長「うむ、オンライン終了と共に撤去されてしまったか」

春香「そうなんです……春香ちゃんに会えなくて……」

社長「天海くん、ここでなら好きな時にやってくれて構わない、私が許可を出そう!」

春香「ジュンPさん……!」

社長「アマーミンくん!!」

ガシッ

律子「(友情の握手である)」

小鳥「あ、ごめん、律子さんこれ見て」

律子「え、はい
    ああ私の方で接続しちゃってるんですよ、今プリンタ開けますね」

小鳥「ごめんね~」

春香「あ、あれ、律子さ~んアイマス見てくれないの……?」

律子「あの、ここ一応職場なんで……」

社長「ぅおっほん! そうだったな」

律子「(おい……)」

\プロデューサーカードヲ コウシン シテイマス/

春香「あ、そっかー磁気の期限切れだ」

\プロデューサーカードヲ オトリクダサイ/

春香「えへへ、ピカピカのカードになりました」

律子「もうやらなくていいの?」

春香「うん、元気な顔見れたから」

社長「ブワッ」

律子「(なぜ泣いた)」


律子「ああそうそう、春香のスケジュールに変更あるのよ、夕方からデモテープもらいに行くんだけど電車大丈夫よね」

春香「うん大丈夫、デモテープってこの前もらった曲じゃなくて?」

律子「新しい奴ね、カバー曲の話あったでしょ」

春香「伊織のカバーするかもって話だよね、じゃあ次のシングルは三曲入りなのかな」

律子「それなんだけどねぇ……」

給湯室

小鳥「律子さん、やっぱり事務仕事の方が向いてるんじゃないですか……?」

社長「うむ、私もそう思う」

小鳥「ええっ? ならどうしてアイドル候補生にっ?」

社長「……律子くんの、アイドルを見る目だよ
    憧れている、いや羨ましがっている、どこか妬みにも見える」

小鳥「それは……あれですよね、伊織ちゃんのことですか」

社長「なんだね、音無くんもわかっていたんじゃないか、それなら私のフォローをしてくれても……」

小鳥「約束しましたよね? 私は社長のブレーキ役なんだって、忘れましたか?」

社長「ああいや……うむ」

社長「……ああいう目を見ると、アイドルの世界を見せてあげたくなるのだよ」

小鳥「…………また、懐かしいセリフですね」

社長「そうだな」

小鳥「本当の狙いはそれだけですか?」

社長「……相変わらず鋭くてかなわんね
    今回は、彼の教育も兼ねたいのだよ」

小鳥「新人くんと律子さんを組ませるつもりですか」

社長「うむ、彼は意気込みは十分だが、今のところ意気込みしかないからね
    律子くんの冷静さに触れることで新しい可能性が見られるのではないかと考えているのだよ」

小鳥「それ、二人が聞いたら怒りますよ」

社長「承知の上だ
    時には心情を蔑ろにする選択も必要だ」

小鳥「……社長、取引しません?
    律子さんが無事アイドルとしてデビューできたら、新人くんを一人前に認めてあげる事」

社長「それはもちろんだ、彼もそろそろ独り立ちする頃だと考えていた」

小鳥「まだ続きがありますよ
    その時は、律子さんもプロデューサーとして受け入れてあげてほしいんですよ」

社長「ふむ……」

小鳥「アイドル兼プロデューサーも珍しくないですからね、伊織ちゃんが頑張ってる今なら余裕もあります」

社長「実はそれも視野に入れていた、マネジメント志望の夢も叶えられないかとね
    ……しかし、その取引は私が負担するばかりではないか、何か音無くんにも負担してもらわないと飲めないな
    どうだね、二人が結果を残せなかった時には」

社長「目算を見誤った私に、慰めの一曲を歌うというのは」

小鳥「……ふふ、安い賭け金ですね」

-事務室-

春香「えぇ~~……B面の話はご破算なんですかぁ?」

律子「ああもうアイドルがB面とか言わないの、芋っこいでしょうがー」

春香「芋じゃないですよ~~!都会っ子ですよ~~!」

律子「はいはい、わかったら時間まで休んどきなさい、今日も暑いわよ」

春香「はぁ~い……」


律子「はぁ、どうにも風向きが悪いのよねぇ」

小鳥「戻りました~」

律子「おかえりなさい、話ってなんだったんです?」

小鳥「ふふ、ヒミツです」

律子「ああすみません、夫婦水入らずですよね」

小鳥「ち、違うわよぉっ!」

律子「冗談ですって」

律子「んーしかし、今日も伊織が来るまで仕事が進まないわ」

\ピュコイーン/

\ドゥッデッデッデッデッデッデッデッ/

律子「春香、何をしているの」

春香「悲しいことがあったから春香ちゃんに慰めてもらうんですぅ」

律子「ああそう……」

春香「おっはよっ はっるかっ」

\プロデューサーサン? ナンカ ヘンデスヨ?/

\ンベンベンベー/

春香「ぎゃうんっ」


\ガチャ/

伊織「もどり~」
雪歩「た、ただいまですぅ」

小鳥「二人共おかえりなさーい」

律子「やっと来たわねー」

伊織「どうも小鳥」

伊織「あーら、事務員(強調)のお姉さんもいたのね」
雪歩「い、伊織ちゃんっ……」

律子「ええマネージャーの律子さんならここにいるわよ」

伊織「あらぁ、マネージャーらしい事をされた覚えがないから事務員(強調)かと思ったわぁ、ごめんなさぁい?」
雪歩「うぅぅ……」

律子「スケジュールの事でしょ、補足が足りなかったのは謝るわ」

伊織「な、何よ素直ね……わかればいいのよ」

律子「……謝るから、今度からは電話もとってくれるかしら
    今日は雪歩がいたからなんとかなったけど、最悪相手のタレントを待たせる事になったのよ」

伊織「だから何よ、時間には間に合うようにしてたんだから文句ないでしょ!?」

律子「そうね」

伊織「だったら口出ししないでくれる? あんな紙切れなくても私は一人で十分だから」
雪歩「ぅぅ……」

小鳥「雪歩ちゃん、こっち(ボソボソ」
雪歩「はぅぅ……(避難」

伊織「……もう終わり? 張り合いない奴」

律子「(プロデューサーはどんな躾けしてんのよ……)」

律子「(……伊織の言う通り、伊織とプロデューサー殿の二人組がいれば、私の役目はないと思う
     私がやっている事も、小鳥さんの手伝いと中途半端なマネジメントごっこに過ぎない、そんなのわかってる……)」

律子「(私はどうすればいいのよ……)」

雪歩「あ、あのね、律子さん
    伊織ちゃん、今日はプロデューサーにも同じことで怒られて、不安定になってるんです、だから……」

律子「大丈夫、大丈夫よ、怒ってなんかいない、嫌いにもならないから……雪歩まで落ち込まないの」

雪歩「はぅ……慰めようとおもったのに、慰められちゃいました……」

小鳥「そこが雪歩ちゃんのいいところなのよね、ふふ」

律子「(はぁ……雪歩が羨ましいわ)」


P「すみません戻りました」

小鳥「おかえりなさ~い、麦茶いれますね」

P「ああすみません」

律子「お疲れ様です」

雪歩「お、おひゅかれさま……です(小声」

P「おつかれおつかれ、律子フォローありがとな、助かったわ」

律子「いえ、元は私のミスですから」

P「まぁそれもあるんだが、今回は俺の責任が大きいからな、だからありがと」

律子「(……見え見えの社交辞令、出来る人に慰められても余計落ち込むだけね)」

小鳥「はい、どうぞ~」

P「ありがとうございます小鳥さん」

小鳥「ふふ、プロデューサーさんに倒れられたらうちおしまいですから」

P「割と重い言葉っすね」


P「そいじゃ次行ってきます、伊織と雪歩はもう何もないのでお任せします」

小鳥「はーい、頑張ってきてくださいねっ」

律子「いってらっしゃいです」


律子「で……」

\デッデデーデデデデデデデッデデッデデデデッ/

春香「よぉーっし!ナイス春香ちゃん!」

律子「まだやってるんかい……」

雪歩「春香ちゃん春香ちゃん、今のはテレビにでれるの?」

春香「うんっ、ステージで踊れるよ~」

雪歩「わ、わ……いいな、私も、ちっちゃい会場だったら踊ってみたいな……」

春香「あはは、雪歩は怖がりだなぁ」

律子「(春香は怖いもの知らずすぎなのよ……)」

\モット トオクヘ オヨイデーミタイ ヒカリ ミチル シロイ/

春香「あーいらんっ」

雪歩「!?」

春香「えへへ、この曲大好きなんだ~」

雪歩「そ、そうなんだ……」

伊織「なになに? 何してるのよ」

春香「あっ、伊織~! おかえり~!」

伊織「さっきからいたわよっ、イヤホンしてるから気付かなかったんでしょ?」

春香「あ、そっかそっか、ごめ~ん」

伊織「んもぅ、春香がゲーム好きだなんて知らなかったわ」

伊織「これアイドルを育てるゲームでしょ?」

春香「伊織も知ってるのっ?」

伊織「まっさか~私ゲームなんてやらないもん、そこのメガネが言ってたのよ」

雪歩「わわわ……だ、だめですよー、そゆこといっちゃ、だめですよー……(小声+ウィスパー」

春香「こ~ら! ちゃんと名前で呼ばなきゃダメでしょ」

伊織「むぐぐ……わかったわかったから、つむじ押すのやめなさいよぉっ」

春香「そうです、アイドルマスター春香さんの言う事は絶対なんです」

伊織「……へ?」


社長「うむうむ、彼女たちの憩いの場、それがアイドルマスター」

小鳥「……珍しいものに集まってるだけかと思いますけど」

律子「小鳥さんデータ送ります」

小鳥「あ、はーいっ」

小鳥「社長も早く書類読んでください、仕事詰まっちゃいますよ?」

社長「すまんすまん、すぐ目を通すさ」

-夕方-

律子「それじゃ行ってきます」

春香「うえぇ~~~ん!! いやぁぁ!いきたくないぃ!春香あぁぁ!!」

律子「はーい恥ずかしいから静かにしましょうねー」

\バタン/

伊織「……あいつどんだけ自分大好きなのよ」

雪歩「春香ちゃん楽しそうだったね……他にどんな子がいるのかな」

社長「ふむ、やってみるかい?」

伊織「社長はこれ知ってるの?」

社長「何を言うかね、買ってきたのは私だ」

伊織「え゛っ うちの馬鹿プロデューサーかと思ってたわ……」

小鳥「あら、彼はゲーム全然やらないって言ってたわよ」

伊織「そうなの!? 意外だわぁ」

社長「どれ、キャラクターの事ならこの本に書いてあるから、好きに見るといい」

小鳥「!?」

小鳥「見せて見せて!誠くんっ!」

『よく男の子と間違えられるけど、本当はバリバリの女の子
 自分の魅力を全世界に発信する為にやってきた美少年、もとい美少女』

小鳥「きゅんっ」

伊織「きゅん、て……あんた」

伊織「この菊地誠って、うちの真と同じ名字ね
    ふぅんボーイッシュキャラね、王子様って感じねー」

雪歩「さっき春香ちゃんがプロデュースしてたのは……あった
    四方田春香ちゃん、歌とお菓子が大好きな女の子……私と同い年ですぅ」

小鳥「社長、なぜこの本がある事を黙っていたんです……?」

社長「聞かれなかったからね」

小鳥「ぐぬぬ……」

伊織「他にはどんなのが……柳瀬沙織?
    沙織、アイドルになるためならなんでもしちゃいまーす
    かわいくて、やさしくて、うたがうまい沙織をよろしくおねがいしまーす?」

伊織「ぶふっ! ばっかじゃないの~、どう考えても腹黒キャラだわぁ
    騙すなら上手く騙しなさいよねぇ」

小鳥「……」

雪歩「あ、これ」

伊織「ちょ、ちょっとぉ、くっつかないでよぉ」

雪歩「ご、ごめんっ……」

伊織「こいつぅ? 荻原美雪、優しくて穏やかな女の子、気弱なのが玉に瑕」

伊織「イジメられキャラね」

雪歩「ええっ!?」


社長「ふむ、どうだね、やってみるかい?」

伊織「私パス、これ攻略本でしょ?ざっと読んだけど覚えられそうにないわ」

社長「むぅ」

雪歩「わ、私にも、無理だと思います……」

社長「萩原くんは無理だと思っているかも知れないが、美雪くんは萩原くんにプロデュースしてほしがっているぞ?」

雪歩「え?……そうなの?」

雪歩「うん……うん……あの、ちょっとだけなら……」

社長「うむ! では私のサブカードを使うといい、初めからやるよりは簡単なはずだ」

雪歩「え、そ、その……社長に迷惑ではないですか……?」

社長「はっはははは!!」

雪歩「ひっ」

社長「すまんすまん、私は他にもたくさん持っているからね、それは萩原くんに貸そうじゃないか」

雪歩「あ、ありがとうございますっ」

社長「こらこら頭を上げたまえ、礼儀には感心するが、些細な物の貸し借りはもっとラフにだね」

雪歩「ふぇぅ……すみませんすみませんっ」

社長「あ、あー……」

伊織「まったく社長は、雪歩~だいじょぶよー、ほら男の人見えないわよ」

雪歩「うん……ぐすん、社長すみません、ありがとうございますぅ」

社長「いやいや、私こそすまなかった
    (まだ男性恐怖症は拭えないか……萩原くんに関しては、私も腰を据えてじっくりと面倒を見るとしよう)」

小鳥「よ~っし、作業おわりっ! ここは経験者のお姉さんが力を貸してあげるわ!」

社長「これはなんとも、不安な布陣が出来上がってしまったなぁ……」

\シャチョー アタラシク オンナノコヲ プロデュース シタイノデスガ/
  \     イイネェ ドンドン ヤッテクレタマエ      /

\オンナノコヲ フクスウ エラブコトモデキルガ ドウスルネ/

雪歩「え?え?」

小鳥「デュオとかトリオもできるみたいよ」

伊織「雪歩どうしたいの?」

社長「ふむ、人数が増えるとその分難易度もあがる、しかしユニットはより強力になるぞ」

雪歩「は、初めてだから……一人にします」

\ピョイン/

雪歩「えっと、キャラクターは」

\オギワラミユキクンヲ エランダカ カノジョハ オダヤカデ イイコダゾ/

雪歩「えへへ……優しい子だといいです」

\カノジョニハ カイダシヲ サセテイル ムカエニイクト イイ/

伊織「ぶっ……アイドルに買い出しって、ブラック事務所か!」

社長「(グサッ!)」

小鳥「(お掃除任せてごめんねやよいちゃん……)」

\ア、アノ モシカシテ ナンパヤサン デスカ/

雪歩「なっななななナンパなんかしてません~~~!」

伊織「落ち着きなさいよー、ほら選択肢出たわよ」

雪歩「ええとええと……えい」

\キミノ プロデューサー ダ/

\ソレジャ ワタシ デビュー スルンデスカ/

雪歩「(美雪ちゃんも私といっしょで怖いんだね……)」

伊織「気弱すぎよこいつ、イライラするわ」

雪歩「しゅん……」

伊織「ちょ、雪歩のことじゃないわよ?」

雪歩「わ、わかってるよぅ……」

\デモ コノミチハ イヌガイルノデ トオレマセン/

雪歩「い、犬がいたら通れませんよね」

伊織「え……?」

\ココハ オレノウシロヲ ツイテコイ/

雪歩「(かっこいいなぁ……)」

伊織「うーわ、優男っぽーい」

雪歩「(さっきからひどいよー!?)」


伊織「あ、レッスンだって」

雪歩「どれしたらいいんだろう……」

小鳥「歌詞レッスンと表現力レッスンはダメよ!」

雪歩「は、はいっ」

伊織「……でも本にはボイスとダンスは難しいって書いてあるわよ」

雪歩「え、え、え……」

\ナニ リンジキュウギョウ ノ レッスンガ アルダッテ/

雪歩「ぽぽぽぽぽーずれっすんは選べませんんんん」

伊織「ああもう、今ボーカル流行なんでしょ、歌詞選んどけばいいのよ」

\ピョイン/

\ハジメテデスケド ガンバリマス オネガイシマス/

雪歩「ええと、ええと」


   もう伏し目がなち昨日なんていらない


雪歩「え?え?」

伊織「間違いを入れ替えるのよ、ここだってば」

雪歩「あ、伊織ちゃんすごい」

伊織「もー、落ち着きなさいよぉー」

雪歩「ごめんね……」


   今日 これから まる始私の伝説


伊織「簡単じゃない」

雪歩「わ……伊織ちゃんすごいね」

伊織「ゲームで褒められても微妙ね」

小鳥「あれ……経験者の私より上手い気が」

\キョゥハ アリガトウゴザイマシタ プロデューサー/

\サイゴクライハ ……/

       キスしてくれる?

                 ニコッと笑って
   握手しようか

雪歩「えっと……これかな」

\ニコットワラッテ/

\コ、コウデスカ/

雪歩「えへへ、笑ってくれましたぁ」

伊織「ふーん……面白そうなゲームね」

小鳥「そうよ!誠くんがかわいいんだからっ」


社長「うむうむ、仲良き事は美しき哉」

-そして翌日-

\プロデューサーサン♪/

春香「は~る~か♪」

律子「……で」

小鳥「今朝からずっと……」

律子「……まさか春香がコアゲーマーだとは思わなかったわ」

小鳥「社長も出てるから、ずっと占領されてるのよ……うぅ、誠くぅん」

律子「この人気が7年前にあればなぁ……」


\ガチャ/

伊織「おはようございまーす」
雪歩「し、失礼します……おはようございます」

律子「おはよう、ってあら?」

小鳥「あれっ? 二人共今日は仕事なかったわよ?」

雪歩「あの、その……」
伊織「雪歩がね、あのゲームやりたいって言うのよ、だから来ちゃったわ」

小鳥「そうなの、事務所は別に構わないけど……」

春香「あ、雪歩~伊織~おはよ~!」

伊織「へ……?」

律子「先客がいるのよねぇ」

雪歩「わ、私は後ろから見てるだけでも……」

春香「聞いたよ~、雪歩も始めたんでしょ? 私もう終わるから次やってやって~」

雪歩「え、あ、でも……」

伊織「雪歩がやりたいって言ったんでしょ?遠慮してどうすんのよ」

雪歩「そ、そうだよね……」


雪歩「そ、それじゃ始めます」

伊織「……てゆか、あんたらは仕事しなさいよっ」

小鳥「いいじゃないのよう~」

律子「まぁ、今日はこっちの仕事量も少ないのよ、初心者ならサポートが必要でしょう?」

春香「えへへ、私も応援するねっ」

伊織「いーらーなーいーわーよっ! こっちには攻略本があるのよっ」

律子「ああ……それ、ほとんど役に立たないわよ」

伊織「はあ!?攻略本よ!?公式攻略本よ!?」

春香「それだけじゃ多分足りないと思うなぁ……」

伊織「た、足りない!?」

伊織「え、なに……これだけでも凄い量なのに、まだ何かあるの? このゲームなんなの?」

雪歩「えと、伊織ちゃん、私はみんなと遊ぶの楽しいから平気だよ……?」

律子「こっちも余計なネタバレはしないから安心なさい」

春香「はやくはやくっ」


\プロデューサーカードヲ イレテクダサイ/

\ドッデッデッデッデッデッデッデッ/

雪歩「わ、どきどきする……」

伊織「ちょっと、どきどきするの早いわよー」

春香「わかるわかるっ、朝の挨拶ってドキドキするよねぇ、美雪ちゃんってスパイラルするから……」

※スパイラル (如月千早)の得意技、いかなるテンション回復を行なっても、翌週の朝の挨拶を失敗するとテンション中に落ちるキャラ・状態の事

律子「スパイラルて……まだそういうのわからないでしょう」

伊織「……きっとあの会話についていったら負けなんだわ……」

\オハヨウゴザイマス プロデューサー/

春香「うわっ、スパイラルライン!」

律子「(確かに際どいわね)」

雪歩「うぅぅぅっ、選択肢選ぶの怖いですぅぅっ」

伊織「ほらー、二人が脅かすから
    雪歩もゲームなんだから気楽にやりなさいよねー」

雪歩「で、でも、私のせいで美雪ちゃんが気分悪くなったら……わわわ」

春香「わかるなぁ、そう思っちゃうと一週一週が重くてぇ」

律子「コイン入れるまでがつらいのよね」

伊織「いちいちやかましいギャラリーねぇ……」

雪歩「これ、かな……」

\オッハヨ ミユキ/

\ヒィッ ビックリシマシタァ/

\ンベンベンベー/

雪歩「お、脅かしちゃいましたぁぁ……」

律子「美雪は男性が苦手なのよねぇ、でも雪歩なら気持ちがわかるんじゃない?」

雪歩「はぃ、そう思って、あの……笑わないでくださいね?
    他人のように思えなくて、助けてあげたいなって思って……」

律子「そうね、美雪はちゃんと応えてくれる強い子だから、育ててみる価値はあるわよ」

雪歩「えへへ、私も……強くなれたらいいな」


雪歩「え、えっと、ここはどうしたらいいのかな、レッスン?」

伊織「ねえ、テンションどうなってんの?」

律子「ものすっごく薄いけど、まだ高のままね」

春香「でも気をつけてっ、一回落ちたテンションは戻すの大変だよっ」

伊織「むぐぐ、雪歩オーディション行きましょ」

雪歩「う、うん……レベル4で足りるかな」

律子「(いい判断ね、ここで回復しておけば次に回していける)」

春香「レベル4ならルーキーズ行っちゃう?」

伊織「それ特別の奴でしょ? 難しいんじゃないの?」

春香「やり方さえわかれば大丈夫だよ、いけるいけるっ」

伊織「ほんとぉ? そりゃ1万増えたらすぐにランク上がるけど」

律子「ルーキーは平均レベル4だから勝てなくはないわね」

雪歩「や、やってみるね……」

春香「雪歩がんばれ~!」


春香「あ、待って雪歩、ここでルーキーズって選ぶでしょ」

雪歩「う、うん」

春香「そしたらすぐにエントリーしないで、残り10秒くらいまで待つの!」

律子「(はは、手厚いサポートねこれは)」

雪歩「え、な、なんで?」

\スッ/
家畜人/ヤプー Da Lv3

春香「今誰か入ってきたでしょ? こうやってCPUが入ってくるの
    もしそいつが凄い強いのだったら大変だよっ」

雪歩「そ、そうなんだ……わかった」

春香「強いの来たら教えるからねっ」

伊織「ちょ、ちょっと待って、もしかして……全部覚えてるの?」

春香「え……覚えないの?」

伊織「えっ」
小鳥「えっ」

律子「(ああ、廃人と一般人の壁ができた……)」

雪歩「はぅぅ、怖いぃ……」

律子「何かあったら教えるから安心しなさいな」

雪歩「うん……ありがとうございますぅ」

春香「残り10秒……雪歩入って!」

雪歩「はいぃ」

\デンッ/

春香「よぉーし……強いのはいないね」

\キョウ アツマッタ カタガタ デス/

律子「(平均レベル3、これはもらったわね)」

春香「格下戦だよっ、勝てる勝てるっ」

伊織「うるっさいわよっ、見ればわかるわっ」

\ソレデハ 1バンノカタ ダイヒョウシテ ヒトコト/

雪歩「えっと、これ……」

\ボーカルニハ ジシンガアリマス/

\イイデスネ キタイシテマス/

雪歩「ほっ……」

伊織「テンション下げるだけじゃないのねー」

\トニカク ガンバレ/

\トニカク ガンバッテキマスッ/

雪歩「わ、やった……」

律子「(テンションは半分まで回復してるわね、これなら次はスパイラルにはならずに済みそう)」

伊織「……ねえ、急に静かにするのもやめてよ」

春香「ええっ?」

伊織「調子狂うでしょ~?」

春香「そ、そっかぁ、ごめんね~」

律子「(伊織も素直なら可愛いのに、なんで私にだけきついのかしら)」

雪歩「どきどき……」

\ソレデハ シンサヲ ハジメマス/

雪歩「どきどきどき……」

\オナジ アピールガ ツヅクト/

雪歩「どきどきどきどき……」

\ツネニ シンセンナ アピールヲ オネガイシマス/

雪歩「始まっちゃう……」

律子「さっき説明したように、一番最初に思い出を使いきれば後は勝てるわよ」

雪歩「うぅぅ……」

伊織「簡単に言ってくれるわね」

雪歩「失敗したらどうしよう……」

伊織「大丈夫よ、失敗したら私が代わってあげる、それなら出来るでしょ?」

雪歩「え……うん……ありがとう」

伊織「いいから、ほら始まるわよ」

律子「(……面倒見も良い、性格が悪いわけじゃないのは知っていたけど……)」

\キュイーン ポヨポヨポヨポヨポヨポヨ/
\キュイーン ポヨポヨポヨポヨポヨポヨ/
\キュイーン ポヨポヨポヨポヨポヨポヨ/

雪歩「やったっ」

律子「後は教えたテンプレ打ちで行けば平気よ」

雪歩「は、はい」

伊織「ねえ、あんたはこれ出来るの?」

律子「それなりには出来るわ」

伊織「ふうん」

春香「雪歩がんばれ~」

雪歩「わ、わっわっ……ブワッ」

春香「あちゃー」

雪歩「一回押せませんでしたぁ……」

律子「まだ余裕よ、周りも弱いから負けたりしないわ」

春香「パネルの反応悪くて押せないときってあるんだよねぇ~」

律子「そうねぇ、店員がこまめに掃除してる店はそういう事もないけど」

伊織「小鳥もこれ出来るのよね?」

小鳥「え!? 社長が買ってきてから始めたのよ!?」

伊織「なぁんだ、雪歩と変わらないくらいなのね」

雪歩「い、伊織ちゃん……」

伊織「なに?どうしたの?」

雪歩「ゆび、震えちゃて……」

伊織「もー、代わってあげるわよ」

春香「いまダンス押すところからだよっ」

伊織「見てたから平気よ」

律子「(伊織、ゲームはやらないって言ってたけど、操作慣れしてるわね)
    そういう伊織は初めてなのよね?」

伊織「これは初めてよ、クイズのゲームは友達に誘われてやってたわ」

小鳥「あっ!マジアカね!マジアカよね!」

伊織「あのね、今やってるんだから静かにしてちょーだいっ」

小鳥「ぴよよ……」

雪歩「どうして喋りながらできるんだろう……」

小鳥「15分間の休憩になります」

\ジュラーン/
1st 1st 1st

伊織「終わったわよ」

雪歩「ごめんね……?」

伊織「謝るなら次は一人でやってよね」

雪歩「うん……」

伊織「ん……? これ10点しか入ってないけど、いいのよね?」

律子「ええ、審査は1回しかないから10点満点よ」

伊織「そ、良かったわ」

春香「すごいなぁ、ナイスアピールばっかりだったよぉ
    私ぜんぜん取れないのに」

律子「(春香はナイスって言う派なのか、なるほどね)」 ※ジャストアピール、ナイスアピール、どちらも同じ意味 呼び方で参入時期などがわかる

伊織「え、リズム取るだけでしょ?」

春香「うう、出来る人の理論で言わないでよぉ」

律子「雪歩もタイミング取れてたわね」

\ソレデハ ゴウカクシャノ ハッピョウデス/

雪歩「どきどき……」

伊織「雪歩は家で音ゲーやってるのよね」

雪歩「どきどき……」

\1バンノカタ ゴウカクデス/

雪歩「ひゃっ!!!」

伊織「!?」

雪歩「う、受かりましたっ」

伊織「びっくりするじゃないのよーっ、声裏返るくらい叫ばなくてもいいじゃないっ」

春香「しょうがないよぉ、初めてはほんとーーに緊張するもん」

律子「(気持ちはわかるけど……雪歩、あんた美雪に負けないガラスのハートね……)」

雪歩「えへへ……美雪ちゃん、喜んでくれたかな」

\ナクコトーナラタヤスイケーレド/

雪歩「いいなぁ、気持ちよさそうに歌ってます……」

雪歩「私もいつか……」

伊織「弱気にならないの、私そういうところ嫌いよ?」

雪歩「う、うん……」

春香「ほらほら、写真とれるよっ」

雪歩「え、ど、どうしよう」

\ジュラララーン/

雪歩「え、えいっ」

律子「(最初はアピールのところ撮りたいわよねぇ)」

春香「わぁ、綺麗にとれてるっ」

律子「(私のは……うわ、ネタ写真ばっかだわ)」

春香「ん? あー!律子さんのユニットカード!!!」

律子「わ、ちょっ!」

春香「ぶっ! 変な顔ばっかり~~!」

伊織「なによなによ、見せなさいよっ
    ぷふっ……なんで、なんで流し目ばっかりなのよ、ぷふふふっ!」

律子「あああああもう……っ///」

春香「でも全部360万だ、すごいなぁ……」

伊織「なによ、それ凄いの?」

\ソレデハ ケッカガタノシミナ アイドルランクホウコクダ/
\ランクアップ アイドルランクE/

雪歩「えへへ、やった……」

春香「アイマスは380万台がだいたいの理論値になるの、変わったスケジュールだともう少し増えるんだけど……」

伊織「つまりなに、これやりこんでるって事ね」

春香「うん!律子すごいなぁ、私もこれくらいやりたかったよぉ」

律子「(ランカーが何を言う……)
    はじめの方は酷かったけどねぇ」

伊織「普通にやったらどれくらいいくの?」

春香「う~ん、はじめての人は50万行かないよね、慣れたら100万くらいかな……」

律子「わかってくると200万は安定できるわ、そこからが面倒だけど」

伊織「ふぅん……だそうよ、雪歩」

\オッハヨッ ミユキ/
\ヒィッ ビックリシマシタァ/

雪歩「また驚かせちゃいましたぁぁ……」

※呼称間違えたけど知らない

伊織「聞こえてないわね」

春香「あははは、私も記憶を消してもう一度やりたいなぁ~」

伊織「なにそれ、どういう意味?」

春香「謎解きゲームとかをさ、もう一度何にも知らないところからやりたいなぁって思わない?」

伊織「そういう意味ね、推理小説なんかは思った事あるわね」

律子「ゼルダなんかでよく言われる言い回しよね」

伊織「え、ゼルダ知ってるの?」

律子「ゼルダは有名タイトルよ」

伊織「そうなの……まぁあれだけ面白かったらね」


-数プレイ後-

伊織「雪歩も慣れてきたわね」

雪歩「そ、そんな事ないよ……レッスンは伊織ちゃんと分担してるよ?」

伊織「それはいいのよ、見てるだけじゃ退屈だもの」

律子「(慣れてきてはいるけど、さすがに減衰ことは教えた方がいいわよね……)」

春香「あ、二人とも気をつけてっ、そろそろ曲を新しくする時期だよっ」

律子「え、早くない?」

春香「早くないよぉ、9週に曲変更しないとっ」

律子「あー、春香は9週派か……」

春香「律子さんは14週派なの?考えが食い違ったね……」

律子「私は大減衰を先延ばしにして延命させた方がいいと思うわ、7万を引く猶予にもなるもの」

春香「いーえっ、初めのうちからスコアなんて狙いませんっ
    大事な序盤に減衰は受けない方がいいとおもいまーすっ」

伊織「ちょ、ちょっと、わかるように話してっ!」

律子「つまり」

春香「私が説明するねっ」

律子「(はっはは……)」

春香「あのねあのね、曲減衰っていうのがあって、早めに変えないといけなくて
    あ、減衰っていうのはステータスが減る事なのね
    あ、ステータスにはレッスン値と補正値があって
    あ、レッスン値っていうのは暗い部分のことで」

伊織「ストップ」

伊織「律子、お願い」

春香「えぇえぇぇ~!? 天海派になろうよぉ~」

律子「(派って何よ派って……)
    あーつまり、同じ曲を使ってると、飽きられてレベルが下がるのよ、そのタイミングが三回あるって話」

伊織「ふぅん、一回受けて変えるのと、一回も受けないで変える考えがあるって事ね」

律子「(飲み込み早っ)」

伊織「まだ9週でその話って事は、これ3曲だけじゃどれか1曲は必ず最後まで減衰を受ける事になるんじゃない?」

春香「そうそうっ、だから最後にもってくるジャンルが大切なの!」

伊織「雪歩わかる?」

雪歩「う、うん、なんとなくだけど……私、やっとレベル上がってきたから……あんまり下げたくないような」

伊織「そ、なら今変えちゃいなさいよ」

雪歩「うん」

春香「あっはは♪ 二人とも天海派にようこそ!」

律子「(この人恥ずかしいわぁ……)」

春香「ああああ!待って待って!」

伊織「今度はなによーもう」

春香「曲変えるのね、同じジャンルじゃだめなの!
    今の蒼い鳥はボーカルだよ
    あ、曲にはジャンルっていうのがあって」

伊織「律子、解読」

春香「えええっ!?」

律子「ボーカル以外にしろ、以上」

伊織「はい」

春香「えうえうー……」

伊織「同じジャンルが続くとどうなるの?ペナルティでもあるの?」

律子「減衰が止まらないのよ」

伊織「……それ、本には書いてないけど」

律子「だから言ったでしょ、それ不十分だって」

伊織「……難易度の調整ミスってんじゃないの?」

律子「(それみんなに言われてたわ……)」

律子「それで曲は何にしたの?」

雪歩「ポジティブにしてみましたぁ
    えっと……前向きに、なりたくて」

春香「いいよねぇ!私ね晴海江美ちゃん大好きなんだよ~」

律子「優美の方はどうなの?」

春香「うーん……最後でごねたからちょっと嫌い」

律子「あー……
    (優美は不憫だわ……)」

伊織「なんでポジティブだとそいつらの話になるの?」

春香「持ち曲なのっ」

伊織「……ああ、持ち曲っていう概念があるのね」

律子「ちなみに攻略に関わってくるわよ」

伊織「ほんとね、持ち曲は他よりもステータスが上がるって書いてあるわ」

春香「あとね!選んでおかないと絶対後悔するからね!」

伊織「なによ、その出来の悪いキャッチセールスみたいな言い方……」

律子「まぁラストに影響があるのよ、ネタバレだからあんまり言えないけど」

小鳥「25分の休憩になります」

雪歩「えーっと……ビジュアル低いから……ポーズレッスンかな」

\ピョイン/

伊織「この本ダメじゃない! 必要なことが全然書いてないわっ」

春香「だから言ったじゃない~~」

律子「それが発売される前にネットで解析し尽くされたのよね」

伊織「解析までしないと難しいゲームってわけね……」

律子「まぁ、そうなるわね」

伊織「……デバッグやり直し!」

律子「(仰るとおりで……)」

雪歩「上、右、下……」

\コウデスカ?/

\コッチデスカ?/

\エヘヘ/

\グッドレッスン/

\プロデューサーノ オシエカタ ジョウズ デスヨネ/

伊織「あ、雪歩それ私やるって言ったじゃない」

雪歩「えへへ、自信ついてきたから」

伊織「そ、そう?」

春香「あ、律子さんみてみて」

律子「ん、って……これポーズレッスンのパターン表じゃないの」

春香「てへ☆」

律子「春香は気合入ってるわねぇ……」

春香「私、本当はゲーム苦手なんだけど、アイマスだけはどうしても上手くなりたくて
    だからどんなやり方でもいいから、少しでも春香ちゃんを上に行かせようと思って頑張ったの」

律子「その分だとコミュノートもありそうね」

春香「うん、それも作ったよ、でも捨てちゃった……
    コミュだけは自分の頭で選びたかったから」

律子「(春香も、亜美真美と同じ事を言うのね)
    良い考えだと思うわ」

春香「律子さんはどうなんです?どうやって攻略してました?」

律子「……私かぁ」

春香「聞かせてください、雪歩にしたオーディションの説明聞いたときに、凄いって思って」

律子「……私には、どうしても見返したい奴がいたのよ
    そいつ、私が気に入ってたキャラの事を口に出して馬鹿にして」

春香「うわ、絶対許せないですね!
    絶対うまく行かなかった腹いせで酷い事言ってるんですよ!」

律子「それがそいつランカーなのよ」

春香「えぇぇぇぇー……」

律子「……そいつの記録狙いユニットを、何としてでも蹴落として……
    かけた金も、時間も、全部台無しにして、嘲笑ってやろうって」

律子「そんな気持ちで強くなったわ
    攻略にはプロデューサーランクが必要とわかれば、キャラを何人犠牲にしてでもアイマス昇格の為に強制引退をさせたわ」

律子「そうしてようやく主戦場で戦えるくらいにゲームを覚えた頃には
    もうそいつは引退して、別のゲームに移ってたわ」

春香「……」

律子「馬鹿よね、こんな気持ちでプレイしても、何も楽しくないってわかってたのに」

春香「律子さんのプレイは好きじゃないですけど、好きな子の悪口を許せない気持ちは、わかりますよ
    大好きなんですね、その子……」

春香「その子、誰か教えてもらっていいですか?」

律子「若槻ゆめみよ」 ※夢見月 3月の事

春香「健気で可愛いですよね、ゆめみちゃん」

律子「…………攻略法の事よね
    私はネットでひたすら情報を集めたわ、これでもかってくらいね」

律子「とくにオーディション、CPUの動きは調べ尽くしたわね」

春香「うわー、私と正反対だなぁ
    オーディションすっごく苦手で、だからレッスンとかスケジュールで頑張ってるんですよぉ」

律子「そうねぇ、レベルさえあれば勝てるもの、それも正しいやり方だわ」

春香「いいですね、一人一人に戦い方があって、どんなやり方でも上達していくのって」

律子「……そうね (そこだけは、アイマスの良いところだと思うわ)」


雪歩「はぅぅぅぅっ」

伊織「ねえちょっと、二人ともっ」

春香「はいはいなにかなーっ」

伊織「テンション下がっちゃったんだけど?」

小鳥「ふふ、ふふふ……何の話かさっぱりだわ……でもいいの、誠くんのドラマCDがあるから」


律子「テンションて……」

春香「初めの内は休むのがいいよっ」

伊織「そうよね」

律子「あ、待った」

伊織「何よっ?」

律子「ほら、美雪ってスパイラルキャラだから」

春香「あーそっかぁ……」

伊織「んんん、つまりどういうことっ!?」

律子「美雪ね、休んでテンションが回復しても、次の朝の挨拶を失敗するとテンション中に落ちかねないのよ」

伊織「……つまり失敗したらループって事ね」

律子「そうね、確率としてはそう起こらないけど、でもオーディションに慣れてないうちは休んだ方が無難よ」

伊織「そう、わかったわ」

雪歩「えっと、じゃあお休みにするね」

春香「うんうん♪ 雪歩も美雪ちゃんのこと好きになってね」

雪歩「えへ……私と似てるから、頑張ってほしいなって……」

春香「そっかぁ、でも雪歩も頑張らなきゃだめだぞ~?」

雪歩「はぅぅ……がんばりましゅぅ……かんじゃった」

伊織「こーらっ、雪歩で遊ばないでよー」


小鳥「あら、もうお昼だわ、千早ちゃん遅いわねぇ」

律子「うわ、忘れてた、千早からは連絡来てます?」

小鳥「それが何にもないのよ……もしかして、また」

律子「ああもう、電話貸してください」

小鳥「わわ、はいっ」

-アイドル電話中-

律子「ビンゴ、行ってきます、プロデューサー殿に連絡お願いします」

小鳥「了解です」

春香「なになに、千早ちゃんどうしたの?」

律子「あれよ、あれ……」

伊織「まぁた閉じこもってるの?」

律子「そうなのよ、今日は予約がうちだけだからいいけど、わがまましてくれちゃって……」

春香「私も行くっ!」

伊織「春香はここで雪歩と待ってて、私がついていくわ」

春香「え、え゛ぇっ!?」

伊織「あんた、千早のことになるとムキになるからよ、ついて来ても逆効果だわ
    それよりも、ここに戻ってきたときに慰める役が適任よ」

律子「なんでもいいけどすぐ出るわよ、プロデューサーは神奈川から戻れないんだから」

春香「あ、私のプロデューサーさんならスタジオの近くにいるけどっ」

律子「(あんたのって、あの新人かいっ)」

伊織「ばっかね、あいつ口下手でしょ、千早に丸め込まれるのがオチよ」

春香「えぇぇぇ……でも、うぅ、プロデューサーさんごめんなさい……返す言葉が見つからないよぅぅ」

小鳥「律子さん、タクシー呼べるわよ」

律子「いえ、この時間なら駅前に溜まってますから走った方が早いです」

小鳥「そうね、了解!気をつけてね!」

律子「駅まで最短で走るわよ」

伊織「スタジオって駅の反対方向よね」

律子「そうか、大通り沿いに駅に向かって、うまい事拾えるようにした方がいいわね」

伊織「わかったわ、走るわよ!」

律子「伊織は厚底なんだから無理しないのよ」

伊織「ふん、馬鹿にしないでくれるっ?」

どっどっどっどっどっ

律子「ああ……そこ売れアイドルがドタバタ走りよる……」


-大通り-

伊織「すみませーん!」

律子「はぁ、はぁ、よく走れるわね……」

運ちゃん「どちらまで」

律子「旧山手通りを左折して、高校の手前で止めてください」

運ちゃん「第一高校のところですか?」

律子「はい、お願いします」

律子「はぁ……」

伊織「何よ、体力ないわね」

律子「伊織はトレーニングしてるから体力あって当然じゃないのよ」

伊織「そういう言い方、やめてくれる?」

律子「(……じゃあなんて言えばいいのよ)」

-スタジオ-

伊織「てか、なんで住宅街のどまんなかにレッスンスタジオがあるわけ!?」

律子「そんなの建てた人に聞きなさいよ」

\ガラッ/

管理人「ああ765プロの方?あのお姉ちゃんなんとかしてくんない?」

律子「すみません、本当にすみません、すぐ連れて帰ります」

管理人「うん……こういう事されちゃうとねぇ、悪いんだけど次から貸しにくくなるからねぇ」

管理人「じゃあ事務所にいるから、終わったら呼んで」

伊織「……感じ悪」

\ガチャ/

 『――――――――――――』

律子「絶賛音程確認中ってところね……」

律子「千早!」

千早「……律子」

律子「帰るわよ」

千早「……まだ、今日は音がいいから、もう少し」

律子「時間、過ぎてるのはわかってるのよね」

千早「ええ、延長料金は払うから続けさせてほしいと伝えたつもりだけど」

律子「ここの人はさっさと帰ってくれと言ってるわ、諦めて帰るわよ」

千早「お願い……もう少しで、わかる気がするの」

律子「その少しの時間も使い切ったわ、引きずってでも連れて帰るわよ」

千早「……そう、迷惑をかけてごめんなさい」

律子「(……先生もつけずに部屋に篭って、何が練習だっていうのよ)」

律子「申し訳ありません、こちら代金です」

管理人「ああいいよ包まなくてもさぁ」

律子「どうか謝罪させてください」

管理人「そう?悪いねぇ、さっきはきつく言って悪かったねぇ、また借りてってよ」


-帰路-

千早「申し訳なかったわ」

律子「これで二回目よね」

千早「私は伝わっていたと思っていたのだけど」

律子「……プロデューサーもあそこのスタジオは胡散臭いって言ってたから
    千早だけのせいではないと思うけど、どうして連絡してくれなかったのかしら」

千早「集中したかったから……これは言い訳になってしまうわね、ごめんなさい」

律子「夢中になれるのは良い事よ、でも千早はまだ候補生でしょ
    本格的なレッスンがしたかったら、プロデューサーに相談するのが筋じゃないのかしら」

千早「……私は、安くスタジオが借りられると聞いたから、少しでも実力を高めたくて」

伊織「ストップ」

伊織「道端で言い合ったってどうにもならないわよ、続きは事務所でやって」

律子「ちょっと何勝手に」

伊織「あのね、私たちって世間的にはただの小娘なの
    ここで世間知らずの小娘三人が結論を出すより、プロデューサーを入れて話し合うべきじゃないのかしら」

律子「……そうね、ごめんなさい千早」

千早「いえ……迷惑をかけてごめんなさい」

律子「(…………)」


-765プロ応接室-

P「なるほどな、話は理解したよ
  俺さーてっきり千早が熱中症かなんかで倒れたのかと思ってさ、仕事上の空で真美に怒られちまってさぁ」

P「いやでも、なんでもなくて良かった
  スタジオなんてのは時間押したり、撤収に時間かかったりしてなんぼだから、そんな気にすんなよ
  ま、一時間やっちまったのはNGだけどな」

千早「申し訳ありません」

P「スタジオの方に電話したけど、気にしてなさそうだったからさ、まぁ次は上手く切り上げてくれな、説教終わり!」

律子「え、ちょ、適当に済ませないでください!!」

P「んー適当かぁ、逆に聞くけど律子はどこがまずいと思う?」

律子「責任問題です、時間は芸能に限らず疎かにしてはいけない責任問題です」

P「そうだな、聞こえは悪いが、俺達は数を出すっていう信用で食ってる生き物だ
  責任を持つってのは大事な話だよな」

千早「……」

P「なら問題だ、今回の件で誰かの信頼を損ねたか?」

律子「少なくともスタジオさんの信用は下がったかと」

P「うん、その信用を取り戻すのにお前さんが何をしたのかは聞いた
  相手さんが返したいって言うから、後日俺が受け取りに行く事になったけどな」

律子「……」

P「でも次も借りてくれって言ってたぞ、要するに今回の件なんてこんなもんなんだよ
  これが大御所も借りるような設備のスタジオだったらヤバかったけどな、まぁそんなの借りる金ないけど」

律子「失礼ですが、認識が甘いと思います」

P「そうか、律子は認識が甘いと言うんだな」

律子「……はい」

P「申し訳がございません!! 我々の監督不行届きです!!」

律子「え、は……ちょっと、プロデューサー」

P「千早は未成年なんだ、責任は俺たち大人にある」

千早「や、やめてください」

P「今後二度とこのような事が起こりませんよう徹底致しますので、どうか今回はご勘弁ください!」

律子「そ、そういう事を言ってるんじゃ……」

千早「違います、頭を下げるのは私で……」

P「バカ言うなって、アイドルが頭下げるのはな
  引退する時か、結婚する時って決まってんだよ」

律子「…………私こそ、生意気言ってすみませんでした」

P「今ので俺も目が覚めたよ、しっかりしなきゃな
  千早もスタジオ借りる時は、アラームとか仕掛けてちゃんと終われるように気をつけてくれな」

千早「は、はい」

P「それとな、今度伊織のボイスレッスンあるから、見学して勉強して来い、プロの先生いるからさ」

千早「は……はい!」

-千早離脱-

律子「……すみませんでした」

P「いいって、予約ないのに延長効かないスタジオもどうかしてんだ
  だからあの値段だろ?」

律子「……」

P「社会ってのは、お前が考えてるほどしっかりしちゃいない
  どいつもこいつも、大人の振りして偉ぶってるだけだ、そんなに肩肘張るな」

P「むしろだ、俺の尻拭いしてくれてありがとな、んじゃ解散!」

律子「…………」


-給湯室-

伊織「おつかれ」

律子「……うん」

伊織「怒られた?」

律子「……いいえ、一つも」

伊織「でしょうね」

伊織「千早が素直で良かったわ」

律子「そうね、この前は言うこと聞かなかったもの」

伊織「どうしてああなったのかわかる?」

律子「……さあね、自覚がないんじゃないの?」

伊織「……あんたは自分でもよくわからない、勘みたいなものでしか感じられない何かを求めて
    がむしゃらになって頑張ったことってある?」

律子「随分抽象的ね」

伊織「なんでもいいわよ、勉強でもなんでも」

律子「……不確かなものは信用してないわ
    そんなものにすがるなんて、馬鹿馬鹿しいわよ」

伊織「そうよね、秋月律子はそういう女よね
    だから私は律子が嫌いよ」

律子「呆れた、口喧嘩しに来たの?」

伊織「伝えるべきか迷っていたけど、はっきり伝える事に決めたわ」


     伊織「アンタに千早を責める資格はない」

 

-翌日-

律子「(……私に、千早を責める資格はない)」

小鳥「ごめ~ん、仕事お願いしていいかしら」

律子「……あ、はいっ!」

小鳥「ん? だいじょうぶ? ちゃんと水分とってる?」

律子「すみません、考え事してました」

小鳥「そう、ふふ……こんなにいい天気だものねぇ」


\ヤ、ヤダァ プロデューサーサンノ……エッチ/

春香「…………」

\ハルカニハ イイオモイデガ デキタヨウダナ/

春香「……良い」


律子「(……あそこだけ異様な空気を放ってるわね)」

律子「…………ここ間違いですか?」

小鳥「あ、そう……みたいね、確認取るわね」

律子「お願いします」

律子「……」

小鳥「(……落ち込んでるなぁ
     私には話してくれそうにないし、どうしようかしら)」

小鳥「もしもしー、小鳥ですー、昨日の報告書なんですけど
    え?いま下にいる?」

\ガチャ/

新人P「すみませんすみません、戻りました」

社長「おお、どうだったね」

新人P「おっけーです!」

社長「よしッ!君の粘り勝ちだな!」

新人P「お力添えありがとうございました!」

小鳥「なによー浮かれちゃってーこっちはおっけーじゃないのに」

新人P「あああすみませんっ、すぐ打ち直します!」

律子「新人さんお疲れ様です、もしかしてオンエアのあれですか?」

※新人P ちゃんと名前で呼んでます、設定がないだけです、春香の担当   もう一人のPは伊織、雪歩、亜美真美担当

新人P「そうなんだよ~!深夜番組だけど新譜紹介に載せてもらえる事になった!」

律子「いい滑り出しですね、まぁ当の本人は心ここにあらずですが」

\ソノ プロデューサーサン トナラ エヘヘ/

春香「うん……えへへ」

新人P「またゲームやってるのかぁ、おーい春香ー!」

春香「あ、プロデューサーさん!おはようございます!」

新人P「ゲームなんてやめて、外で野球しようぜ!」

春香「……え?」

新人P「冗談だ、それよりな、音楽番組でデビューシングルを流してもらえる事になったぞ!」

春香「ほ……本当ですかああ!?」

律子「よかったわね、春香」

小鳥「それより修正はやくぅ……お昼になっちゃいますよぅ」

-午後-

小鳥「新人くん、頑張るのはいいんだけど……もうちょっと周りを見てほしいわねぇ」

律子「元甲子園球児でしたっけ、見た目通りの熱血漢ですよね」

小鳥「さて、半分終了っと」


小鳥「……アイマスが動いてないと静かね」

律子「いやいや、あれが動いてる方がおかしいんですよ、一応」

小鳥「春香ちゃんは撮影に行っちゃったし、社長はそれを見届けるって出て行っちゃったし
    ねえ律子さんアイマスやってよぅ~」

律子「どんな理屈ですか……」

小鳥「ねえ、律子さんが一番好きな子って誰なの?」

律子「アイマスでですよね
    若槻ゆめみが好きでしたね」

小鳥「えーっと……あった、若槻ゆめみ
    元気爆発、パワー全開、貧しい家庭を持つがそんな暗さを感じさせない健気な子です」

律子「ええ、その子ですね」

小鳥「この子はどんな裏があるの?」

律子「裏て……」

小鳥「だってアイマスのキャラって、みんな書いてある設定と違うんだもの」

律子「ゆめみはそのままですよ、隠し玉もなしです」

小鳥「ふふ、じゃあ律子さんは元気で真面目な子が好きなんですね」

律子「好きとは、ちょっと違うんですけどね
    貧乏という目に見える現実と向きあって、堅実に生きて行こうとする姿に関心を持ったというか」

小鳥「やっぱり元気で真面目な子が好きなんじゃないですか」

律子「そうなりますね、はは」

小鳥「じゃあ、如月千春ちゃんみたいに、夢を追いかける子は好き?」

律子「あまり好きではないですね……」

小鳥「どうして?」

律子「夢は夢ですから、本人に叶えるつもりがあったらそれは夢ではなく計画ですよ
    不明確な幻に憧れて絵空事を追い求める人は、例え非現実でも好きじゃないんです」

小鳥「うん……そうよね」

小鳥「私達も芸能事務所をやっているから、夢に憧れて入ってくる子はよく見るわ
    それを確かに世間知らずだなって思ったりもするわね」

律子「ええ……」

小鳥「でもね、その夢がなかったら、きっと誰もタレントになろうなんて考えないんじゃないかって思うのよ」

律子「……伊織に言われました?」

小鳥「ううん……私の盗み聞きです」

小鳥「この前の質問をもう一度するわね
    律子さんはネタバレされるのと、自分で気付くの、どっちがいいのかしら」

律子「……やっぱりこの件に関してはネタバレしてほしいです」

小鳥「そうね……律子さんはきっと、頑張ることを無駄だと思っている」

律子「それは……違いますよ
    ちゃんと理にかなっていれば努力は結果になります」

小鳥「理にかなっていなくても、努力は結果をくれるわ」

律子「……それは気休めです」

小鳥「そうよね……自分の頑張りに、それくらいで満足しちゃいけないんだって叱咤するのは良い事よね」

小鳥「でもね、それは自分に言うから許されるんだと思う」

律子「……」

小鳥「……人の努力を否定する為に使われる言葉ではないと思うわ」

小鳥「律子さん、マネジメント志望の前は、プロデューサー志望だったのよね」

律子「そう、ですね」

小鳥「この事務所に入って、プロデューサーがどんなお仕事かわかってきた?」

律子「はい、どのように売っていくか、その全体像は見えてきています」

小鳥「うん……でもね、律子さんにはプロデューサーにとって一番大切なものが欠けているの」

小鳥「それは信用してあげる事」

小鳥「プロデュースってね、その人が持っているたくさんの可能性の中から、道を教えてあげる事だと思うの
    だから信用し合わないと前には進めないのよ、二人三脚だもの」

律子「……」

小鳥「ふふ、全部社長の受け売りだけどね」

律子「社長ですか」

小鳥「千早ちゃんはまだ努力の仕方がわかっていないの
    プロデューサーさんも社長もなんとかしてあげたいんだけど、時間がないでしょ?
    彼女、知識と経験があるから、あまり学のない人が教えても為にならないと思って、私達はしばらく保留する事にしていたの」

小鳥「だからお願い、今はあの子の頑張りを認めてあげてほしいの」

律子「それは、わかりました」

小鳥「……ありがとう」

小鳥「それとね……自分の可能性も、信じてあげてね」

律子「信じていますよ、自分の事はよくわかっていますから」

小鳥「……そうね」


小鳥「うんっ、湿っぽいのはおしまいにしましょう
    ごめんなさいね、歳をとると話が長くなっちゃうみたい、ふふ」

律子「私の方こそご心配おかけしてすみませんでした」

小鳥「ふふ、じゃあこれでおアイコね」

律子「え、何がアイコなんですか?」

小鳥「いつもお手伝いしてもらってるでしょ?」

-翌日-

春香「おはようございまーす!」
雪歩「し、失礼しますぅ」

小鳥「あら、おはよう」

律子「おはよう、って今日は二人とも予定ないわよ」

小鳥「ふふ、エアコンつけるわね」

春香「わーいっ、ありがとうございます~」

雪歩「あの、すみません、お邪魔ですか……?」

小鳥「そんな事ないわよー、みんながいてくれると楽しいもの
    社長が戻ったときにみんながお出迎えしてくれたらきっと喜ぶわよ」

律子「で、何しに来たのかしら?」

春香「それはもちろん」
雪歩「えと、その……いつでもいいよって言ってもらいましたし……」

律子「(ですよねー)
    今電源入れるわね」

春香「えへへっ、律子さんありがと~!」

律子「(うちはアイマス寺かってのよ)」

\ミュゥゥゥン デッデッデッデッデッデッデデデデッ/

小鳥「あぁ、このタイトルが流れてないと……」

律子「それ立派な末期症状ですよ」

律子「そういえば雪歩はどこまで進んだの?」

春香「ふっふっふ、なんと!めでたくランクBです!」

律子「ええっ!? 昨日はほとんどやってなかったし、いつの間にそこまで進んだのよ」

雪歩「伊織ちゃんがね、まだ動いてるお店を探してくれて……」

春香「都内にまだ一箇所あったんですっ、そこで少しやって来ちゃいましたっ」

律子「もしかして秋葉原?」

春香「そうですそうですっ、律子さんも知ってたんですか?」

律子「今もあるのは知らなかったわ、まだ残ってたのねぇ」

春香「今度行ってみてくださいねっ、安くていいお店でしたっ」

雪歩「えっと、始める……ね?」

春香「はやくはやくっ」

小鳥「律子さん、こっちやっておくから混ざってきて」

律子「え、いいですよ」

小鳥「いいからいいから、息抜き息抜き」

律子「うわ、ちょっと!」

小鳥「はい、春香ちゃんあげる」

春香「え?ええ!? 律子さんをもらっていいんですか?」

律子「ああもう、あげるなもらうなー」


春香「律子さんよーく見ててね、雪歩すっごく上手になったんだよっ」

雪歩「いえ、そんな……」

律子「ほーう、いいわね、私が見てあげるわ」

春香「昨日の通りにやればいいよっ」

雪歩「う、うん……やってみるね」

\オハヨウゴザイマス プロデューサー/

雪歩「美雪ちゃん、いくよっ」

\ナニカ イイコトガ アッタンデスカ?/

律子「何、今の掛け声」

雪歩「春香ちゃんのおまじないなんです……」

春香「このおまじないは多分成功するぞっ☆」

律子「(すでに天海教に毒されているわぁ……)」


\ソレデハ コンシュウノ リュウコウジョウホウダ/

雪歩「ぁ、入れ替わった」

春香「よーし、私が教えた通りにコーディネートするんだよっ」

雪歩「うん」

\カワイイ アクセサリー デス プロデューサー ノ シュミ デハナイデス ヨネ/

春香「ナーイス雪歩ナイスだよ!」

律子「(ふむ……確かにステータス調整もバッチリね、これが春香の入れ知恵かぁ、恐るべしだわ)」

春香「あのね、このアクセはDa2なんだけど、ボーナス効果で付けてるから、バラバラにしちゃダメだよ」

雪歩「う、うん」

春香「じゃあオーディションゴー!」

律子「え、今テンション中だったわね」

春香「ふっふっふ」

春香「雪歩はついに回復オーディションを覚えたんだよ!!」

律子「お、おお……」

雪歩「そ、そんな……昨日はまぐれで……」

春香「ちがうでしょー? 私何にも言ってなかったのに、雪歩一人でどんどんやっていくんだもん、びっくりしたよぉ」

雪歩「それは、その……
    美雪ちゃんが頑張ってるから、私もがんばろうって……」

春香「雪歩……
    いま、雪歩が輝いて見えるっ!」

律子「(もう宗教的な会話にしか聞こえないわね……)」

※猿
\ソレジャ シンサヲ ハジメルゾ―/

律子「なんだかんだで格上戦だけど平気なのかしらね」

雪歩「えっとね、一応やり方は知ってる……かな」
                                GODD>
                                GODD>
                                GODD>
雪歩「あ……」

律子「(ボムを見てすかさず2-3プレスに逃げたわね
     これを見越して2位のVoから叩いてたわけね)」

\ジュラーン/
3rd 5th 2rd

律子「(絶妙だわ、運もあるでしょうけど)」

雪歩「うーんと……」
                                 BAD>
                                GODD>
                                GODD>
                                 BAD>
雪歩「ぁ……」

律子「(もうDa興味が半分を切ったわね)」

雪歩「……これかな」

律子「(今度は1-3プレスね、怖いくらい迷いがないわ……)」

\ジュラーン/
2nd 3rd 6th

雪歩「よかったぁ……」
春香「良い感じだよー」

律子「(まだおぼつかないけど、JAも取れてるし何より決断が早い……)」

\ジュラーン/
3rd 2nd 6th

律子「(Da審査員が帰らないと判断したらすかさず1―3プレス、しかも先打ちまで知ってるのね)」 ※CPUは興味ゲージがなくなると途端に空気を読んでアピールしなくなる

\ゴウカクシャヲ ハッピョウスルゾ ドキドキスルダロウ/
\4バン 1バン 2バン ゴウカクダ/

雪歩「ふぅぅ、なんとかいけましたぁ」

律子「びっくりしたわ、春香の入れ知恵ね?」

春香「え、私ほとんど教えてないけど
    ちょっと基本を教えたら雪歩どんどん上手くなっていくんだよ~~」

雪歩「その……春香ちゃんにね、失敗してもいいんだよって、言ってもらえたから……」

律子「なるほどね、それで緊張がほぐれたわけね」

律子「(曲は14-27変更ね……  ※14-27曲変更 14週と27週に曲を変更することで、小減衰をそれぞれ受け、中減衰を回避するテクニック
     レベル12は春香の入れ知恵ね?雪歩のレッスン苦手さを考えれば、ここは何かしていないとレベル12には届かないもの)」

春香「私はアドバイスしただけだよぉ、雪歩が丁寧にプレイしてるからだよ~」
律子「丁寧にやっただけじゃ初プレイでランクBは行かないわ
    一体どれだけ助言したのよ……」

春香「スケジュールの組み方とか、減衰のこととか……でもでも、私はホントに教えただけだよ?」
雪歩「でも、教えてもらえなかったら……私きっと何にもできなかったと思う……」

律子「(ランカーが横にいるだけで初心者もここまで出来るものなのね……びっくりだわ
     まぁうちの亜美真美は言うこと聞かなくてダメだったけど……)」

雪歩「で、でもね……その……やっぱり、ゲームを進めるうちにね、美雪ちゃんが前向きになっていくのがわかって
    そしたら私も頑張らなきゃって思って……」
雪歩「その……げ、現実の私もね、頑張ってオーディション受けるぞって……」

春香「よしよしよし」
律子「そっか…… (ゲームに影響受ける、か……私も昔はそんな頃があったわね)」

律子「たかがゲーム、それどゲーム
    馬鹿に出来ないわよね」

春香「えへへへ、私もね、こうやって本当の意味でアイドルを目指せたのは、恥ずかしいけどこのゲームのおかげなんだよ?
    本当はもっと小さい頃から憧れてたんだけど……最後に一押ししてくれたのは、アイドルマスターの春香ちゃんだったんだ」

律子「(……亜美真美なんか、本気で泣いちゃったものね……)」

律子「今の話を社長に聞かせたら喜ぶわよ、あの人も熱狂的だから」

春香「律子さんが初めて若槻ゆめみちゃんをプロデュースした時の話、聞きたいな」

律子「……もう昔の話だから思い出しながらになるけどいいわね?」
春香「うん、それでも聞きたい」

律子「正直、初めは馬鹿にしてたわ……ゲームセンターでギャルゲーなんて、しかもアイドル育成なんて、流行るわけないって
    でも本当は気になってたのね、横目でチラチラ見て、人のプレイを通りすがりに覗いたりして」
律子「そうこうしてるうちに、若槻ゆめみに出くわしたのよ……あの子ったら掃除してたのよ?アイドル候補生なのに」

春香「あははは、うちのやよいもたまに掃除してるよね」

律子「素直で、健気で、真面目で……あなたいつか悪いやつに騙されるわよって突っ込みたいくらい純粋で
    なんていうのかしら、ほっとけなかったのよ……」
律子「そしたらもうプレイしたくて、ゆめみの事が知りたくて……それが初プレイの心境だったわ」

春香「私が春香に会った時もそんな感じだったなぁ……」

律子「……結果は言わなくてもわかるでしょ?」

春香「C落ち?」

律子「あははっ、Dにも行けなかったわ、面白いくらい転げ落ちてDで引退……
    もう悔しくて悔しくて、それから毎日のように通って、ネットも目を通して攻略法を調べてたわね」
律子「ゲームに熱中するなんて馬鹿げてるってわかっても、あの時はやめられなかったわ
    そうしてるうちに、だんだんランクCに行けるようになって、気付いたらドームエンドが見れるようになってた……」

春香「私も何回も春香ちゃんに悲しい思いさせちゃってたなぁ……」

律子「でも……」

      『りっちゃんは、その後悔をなかった事にしたいって思った?』

律子「不思議と嫌な気分じゃなかった……
    どれも、あの子と歩んだ大切な思い出だったわ」

春香「……ただのゲームじゃないんだね
    みんなそれぞれ思い入れがあって」

雪歩「うん……」

律子「プレイの仕方は違っても」

春香「どこかでアイドルを愛してる……」

律子「はぁ……春香につられて臭いセリフ吐いちゃったわ」

春香「く、くさい!?」

律子「あら、自覚なかったの?」

春香「ひどいよぉ律子さぁんっ」

___ __ _ ___ _ __   __  _   _    _ /,,二ニO、 ____ _____ ____ __
|_  ___|  |__| || ____||__|| __ \/ _,.,_ \| |   |  \ /  |/,,/=-、V ____||___  ___|| ___|| _ ヽ
  |  | |  ___  || ___|| || |▽) | (○) | |__|  ,   , |i / ///ノ ∧___ ヽ  | |  |  __|| 二" ノ
  |  | |  | | |ヽ ̄ ̄|| ||  ̄ /\  ̄ /ヽ___||  |ヽ_/| |ヽ ー= /|___/ .| |  ヽ__|__| \\
   ̄   ̄   ̄   ̄ ̄  ̄  ̄ ̄     ̄       ̄    ̄\二二/        ̄           ̄

-夕暮れ-

律子「雪歩……まさかゲームの影響を受けて、デビューまで漕ぎ着けるだなんてね
    …………私はどうする?」

律子「ゲームの影響を受けて、アイドルを目指す馬鹿の一人になるか
    それとも……いつも通り、現実的に生きるか」

律子「……自分の可能性か」


-後日-

伊織「……決めたんだって?」

律子「ええ、決めたわ」

伊織「いいの?いつもあんたが言ってた『現実的に考えて裏方が向いてる』ってのに反しちゃうわけだけど?」

律子「……笑ってくれていいわ
    私はね、あのゲームに感化されて、あてのない夢を追う事にしたのよ」

伊織「ぷふっ……なによそれぇ、カッコ悪いわねぇ」

伊織「でも……いいじゃない、かっこ悪くて
    アイドルなんて表向き綺麗だけど、本当はつまんない事ばっかりなんだから」

律子「そうね、でも決めたのよ、そのつまんない事も……全力で楽しんでやるってね」

伊織「……この前私があんたに怒ったでしょ? その理由わかる?」

律子「夢を見てない奴が、夢を追いかけてる奴を馬鹿にするなって事でしょ」

伊織「馬鹿ねぇ、全然違うわよ
    初めから諦めて可能性を捨ててるから怒ったの」

伊織「律子さ、私たちを見る時、羨ましそーに見てるのよね
    でもいつも諦めてる、わかるのよ諦めてる目って」

伊織「だから私は秋月律子が嫌いだったのよ」

律子「……自分でも気付かなかったわ、伊織たちの事をそうやって見てたって」

伊織「でも今は違うじゃないの
    妥協じゃない、前を向いてるじゃない」

律子「立場も肩書きもたいして変わってないけどね」

伊織「そんなのどうだったいいわよ
    大事なものは、いつだって心構えなんだから」

伊織「手、出しなさい」

律子「何?いきなり私を潰そうっていうの?」

伊織「もお~おかしな事言わないで? この伊織ちゃんがアンタなんかを敵視するわけないでしょお?」

伊織「握手よ、今までごめんねと、これからよろしくの意味で」

律子「……これからはアイドルとマネージャーじゃなくて
    同じアイドルとしてって事ね」

伊織「ま、私と張り合いたかったら、さっさとデビューしてくる事ね
    その頃にはもーーーっと遠いところに行っちゃってると思うけどぉ? にひひっ」

律子「言ってくれるじゃない、一夜で登り詰めてやるわ」

伊織「……ぷふっ、あはははっやだもう、アンタってノリ良かったんじゃない」

伊織「いいわ、かかってきなさい、正面から受け止めてやるわよ」

律子「待ってなさいよ、必ず追いついてやるわ」

伊織「おっきい手ね……」

律子「伊織は人形みたいな手ね」

伊織「ふんっ……」

社長「……彼女もようやく自信を持ってくれたか」

小鳥「いつもながらの荒療治ですね」

社長「鉄は熱いうちに打てと言うではないか
    時には無理も通すさ」

小鳥「……でも、まさか最後の一押しをゲームにされるとは思いませんでしたね」

社長「はっはっは、事実は小説より奇なり
    私はわかっていたがね」

小鳥「またまたぁ」

社長「はっは……仲良き事は」

小鳥「美しき哉」



アイドル
それは女の子達の永遠の憧れ
だが、その頂点に立てるのは、ほんの一握り
そんなサバイバルな世界に
9人の女の子達が足を踏み入れていた

そして、新たなアイドルが足を踏み入れようとしていた




              go to next produce



         プロデューサーカードを入れてください

     □□□□□□□■■■■■■■■■■■■■■■
     □□□□□□□■■■■■■■■■■■■■■■




         プロデューサーカードをお取りください




                                   game over.

 
 

終い

猿は害悪
次はない

亜美はもらっていく

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