まどか「泣き虫な転校生」(310)

キーンコーンカーンコーン

杏子「ふわぁぁ…」ノビー

マミ「ふふ。おはよう、佐倉さん」

杏子「ん、おはよー」

マミ「今日も授業中眠りっぱなしだったわね」

杏子「まあね。ま、いいじゃんか」

杏子「あたしはバイトで忙しいんだしさ」

マミ「バイトは…そうだけど…」

杏子「だろ?」

マミ「でも今度のテストはどうするつもり?」

杏子「えっ?テスト?」

マミ「来週からのテスト、忘れてたの?」

杏子「いっけねぇ!忘れてた!」

杏子「ここ最近の範囲ぜんっぜんわかんねぇ…」

マミ「眠っていたものね」

杏子「ってかシフトも入れちまってるし…」

マミ「交代はできないの?」

杏子「いまさら変わってなんて言えねぇよ…」

杏子「あたしのバイトがここの購買なの、マミも知ってるだろ?」

マミ「ええ。…そうね、他のバイトのみんなもテスト勉強があるものね」

杏子「だから頼めねぇっての」

マミ「じゃあどうする?このままテストに挑むつもり?」

杏子「うっ…」

杏子「はぁ…唯でさえ学校とバイトと魔法少女で忙しいってのに」

杏子「これに加えてテストとか…あたしを魔女にでもするつもりかっての…」

マミ「だーめ、絶望しないの」

杏子「だってぇ」

マミ「ほら、これ」

杏子「これは…ノート?」

マミ「ええ、佐倉さん用のノートよ」

杏子「マミ…」

マミ「こうなると思って作っておいたの」

杏子「マミ…!」

マミ「ふふっ」

杏子「さっすがマミ!あたしが見込んだ女だぜ!」ダキッ

マミ「ちょっ…」

杏子「よっし!これがあれば何とかなるかも知れねぇ!」

杏子「あたしの為にありがとね、マミ!」ニカッ

マミ「!」

マミ「べ、別に佐倉さんのためじゃ…」

マミ「ふ、復習のついでよ、ついで!」

杏子「あ、そうなの?」

マミ「う、うん…」

杏子「まぁいいや、どの道助かったぜ」

杏子「これで赤点…」グゥー

杏子「あっ」

マミ「…お腹空いたの?」

杏子「……」コクッ

杏子「そ、その…今月ピンチでさ…」

マミ「お金ないのにゲームなんてするから…」

杏子「あれは息抜きなんだよ!」

マミ「ふふ、わかってるわよ」

杏子「はぁ…腹減ったぁ…」

マミ「佐倉さん、あなた今日はバイトなかったわよね?」

杏子「ん?ああ、そうだけど?」

マミ「ならこれから何か食べに行かない?」

杏子「え?うーん…でも、あたし金ねぇしさ」

マミ「お金は私が出すわ」

杏子「まじっ?なら行く!」

マミ「そうと決まったら、早速行きましょ?」

マミ「ついでに勉強も教えてあげるわ」

杏子「やった!これなら百人力だぜ!」

マミ「ふふっ」

杏子「へへっ。あたしの為にありがとね」

杏子「マミと仲良くなれて良かったよ」

マミ「さ、佐倉さん…」

杏子「?でもさ、どうしてマミはあたしにここまでしてくれるのさ?」

マミ「そ、それは…」

杏子「それは?」

マミ(一番のお友達だから…)

杏子「?」

マミ「さ、佐倉さんは…その、クラスメイトだし」

マミ「同じ魔法少女だから…」

杏子「あ、そっか。そうだよな」ポン

マミ「う、うん」

杏子「あははっ」

マミ「は、早く行かない?」

杏子「うん、そうだね」

マミ「佐倉さん、準備は大丈夫?」

杏子「ああ、バッチリさ」

マミ「それじゃ、行きましょ」

杏子「うん!」

ファミレス

店員「では、ごゆっくりどうぞ」

マミ「さて、まずは勉強の前に食べちゃいましょう」

杏子「腹が減ってはテスト勉強はできぬ!なんてね」

マミ「ふふっ、いただきます」

杏子「いただきます」

マミ「もぐもぐ」

杏子「なー、マミ?」

マミ「ん?」

杏子「なんか付き合わせちまって悪いね」

マミ「えっ?」

杏子「あたしとつるむよりも、他のやつらと一緒にいた方がほんとはいいだろ?」

マミ「え…なんで?」

杏子「だってさ、あたしはこんなんだし…今もマミにご馳走になってるわけじゃん」

マミ「それなら別に気にしなくてもいいのよ?」

杏子「いや、気にするって」

マミ「……」

杏子「だってマミはさ、いつも『ついで』とか『仕方なく』とか」

杏子「嫌々あたしに付き合ってるのかなって思ってさ」

マミ「っ…!別にそんなつもりは!」

マミ(私は…私はただ…)

マミ(佐倉さんともっと仲良くなりたくて…)

杏子「まぁ、マミは優しいからそう言うよな」

杏子「嘘でも嬉しいぜ、マミ」

マミ「だから嘘じゃ…」

杏子「…なあ、マミ」

マミ「…佐倉さん」

杏子「あたしが魔法少女じゃなかったら、あたしとこうして一緒にいることはなかった?」

マミ「……」

杏子「……ふっ、だよな」

マミ「…もしも、佐倉さんと私が互いに魔法少女じゃなかったら」

マミ「今こうして、一緒にいることはなかったかもしれないわ」

杏子「…」

マミ「でも、もしもなんて関係ない」

マミ「私たちはこうして一緒にいることは事実よ」

マミ「だからそんな顔しないで?」

杏子「マミ…ああ、そうだね」

杏子「ごめん!しけた話しちゃってさ!」

杏子「さ、早く食おうぜ!冷めちまったらもったいないしさ!」

マミ「…うん」

杏子「はむっ、はむっ」

マミ(本当はただ単に佐倉さんと仲良くしたいからだけなのにな)

杏子「うん、うめぇ!」

マミ(どうして誤魔化しちゃうのかしら…?)

マミ「もぐ…」

マミ(私がもっと上手くやれたらな)

マミ「……もぐ」

杏子「はむ、はむっ」

マミ(佐倉さんは私の嫁になるのだぁー!)

マミ(みたいな冗談言って、じゃれあって)

マミ(そんなことができたらいいのにな)

マミ(せめて…私の回りにそんなことができる子がいてくれれば…)

マミ「もぐ…」

杏子「ふぅ、うまかった!」

杏子「ごちそうさま!…ってあれ?」

マミ「?」

杏子「なんだ、マミぜんぜん食ってねぇじゃんか」

マミ「あ…ちょっと食欲が…」

杏子「食わねぇなら、あたしが食うけど?」

マミ「…ええ、なら―」

マミ「!」

マミ(彼処にいるのって…)

マミ(暁美さんと鹿目さん?)

杏子「?」

まどか「むむー…」ジィー

ほむら「まどか、どうしたの?」

まどか「あ、いや?なんでもないよ!」

ほむら「そう?」モグ

まどか「う、うん!」

ほむら「もぐ…そうだわ、まどか」

ほむら「今度のテスト…」

まどか「うぅー…」ジィー

ほむら「…にんじん嫌いなの?」

まどか「えぇっ?あ、えと…」

ほむら「さっきからずっと、にんじんを睨み付けてるわよ?」

まどか「あ、あはは…実はにんじんさんちょっと苦手で…」

仁美「あらあら、好き嫌いはいけませんわよ?」

まどか「あっ、仁美ちゃん」

ほむら「委員会が長かったようね」

仁美「ええ、ごめんなさい。委員会の仕事が少し長引いてしまって…」

ほむら「大丈夫、気にする必要はないわ。それに先に食べててごめんなさい」

仁美「構いませんわ、先に食べてと言ったのは私ですし」

仁美「それに、私を誘ってくれたことが、とても嬉しいんですの」

仁美「鹿目さん、暁美さん、今日はありがとうございます」

まどか「ううん、そんな」

ほむら「ええ、こちらこそ来てくれてありがとう」

仁美「うふふ」

ほむら(鹿目さん…ね、やっぱりまどかさんの方がしっくりくるわね)

ほむら(この時間軸の仁美がまどかに対して名字読みなのも仕方のないことだってわかってる)

ほむら(だって、この時間軸には…)

まどか「あっ、仁美ちゃんの分も注文しなくっちゃ!」

仁美「ありがとうございます、私は紅茶で十分ですわ」

ほむら「そう、わかったわ」

まどか「仁美ちゃん、お腹空いてないの?」

仁美「ええ、大丈夫ですわ」

ほむら「…もぐもぐ」

ほむら(この時間軸のまどかと仁美は…少なくとも親友ではないのはよくわかってる)

ほむら(私が転校してきて1ヵ月…これだけの時間があれば嫌でもわかるわ)

ほむら(こうして私がまどかや仁美といられるのもワルプルギスを倒すことができたから)

ほむら(マミと杏子の仲が良かった事は私にとって幸運だったわ)

ほむら(共闘も快く受け入れてくれたし、マミも孤独ではないから)

ほむら(必要以上にまどかを巻き込むことはしなかった)

ほむら(だからまどかも魔法少女になることはできずに、こうして…)

ほむら「…」チラッ

まどか「うぅぅ…」ジィー

ほむら「…」フッ

ほむら(こうして一緒にいることができる)

ほむら(これは私がずっと探し続けてきた世界)

ほむら(私が夢見た世界)

ほむら(なのに…何処か寂しいのは…やはり彼女がいないからなのかしら?)

ほむら(…不思議なものよね、いつもは彼女の存在が嫌だと思うこともあったのに)

ほむら(いざいないとなると…寂しいだなんてね)

まどか「あぅぅ…食べなくない…」

ほむら(でも、一番寂しいのはきっと、まどか)

ほむら(本人に彼女との記憶がなかったとしても…そうに違いないわ)

ほむら(それに、仁美も…)

仁美「鹿目さん、食べ物を粗末にしてはいけませんよ?」

まどか「うぅ…わかってるよぉ…」

ほむら(…こうしてまどかと仁美を会わせてみたものの)

ほむら(やっぱり今までの時間軸の用な仲にはそうそうならないわね)

まどか「はぁ…」

ほむら「まどか」

まどか「なあに?」

ほむら「どいしても食べられないのなら、私が食べてあげるわ」

まどか「えっ?ほんと?」

ほむら「ええ」

まどか「わーい!やったぁ!」

ほむら「ふふっ」

まどか「それじゃ、はい、ほむらちゃん」

ほむら「ええ」パクッ

仁美「!!」

まどか「ど、どうかな…苦い?」

ほむら「いえ、甘いわよ?」

マミ「…」ジィー

杏子「おい、どうしたのさ?」

マミ(あ、あの二人ナチュラルに…)

マミ(あ、あーん…だなんて!)

マミ(お友達同士なら普通なのかしら…?)

杏子「おーい!」

マミ「へっ?」

杏子「どうしたのさ、ボーッとして?」

マミ「あ、その…佐倉さんっ!」

マミ(なら…!)

杏子「ん?」

マミ「は、はいっ!あーん!」

杏子「?」

マミ「あーんよ!あーん!」

杏子「はぁ?」

マミ「わ、私のおかず食べさせてあげるわ!」

杏子「あっ、そっか!」

杏子「さんきゅー!」ハムッ

マミ「ど、どうかしら…おいしい…?」

杏子「うん、うまいよ」

マミ「そっかぁ…よかった」

杏子「ん?変なマミだな、別に作ったのマミじゃないじゃん」

マミ「え、あ…」

杏子「?」

マミ「さ、佐倉さんのばかぁ!」

杏子「え?なんで?」

ほむら(むこうが騒がしいわね…)

まどか「はい、もうひとつお願い」アーン

ほむら「はむっ」

仁美「!」ガタッ

まどか「?」

ほむら「?」

仁美「い、いけませんわ!そんな!」

まどか「えっ?いけないって…」

ほむら「なにが?」

仁美「女性どうしてそんな…!」

仁美「それは禁断の恋ですのよー!」ダダダッ

まどか「き、禁断の…?」

ほむら「恋…?」

まどか「…仁美ちゃん、行っちゃったね」

ほむら「え、ええ…」

まどか「何かいけないことしちゃったのかな?」

ほむら「さあ…どうかしら?」

店員「はい、紅茶です」

まどか「あ、仁美ちゃんの紅茶」

ほむら「と言っても、もう仁美はここを出て行ってしまったわ」

まどか「んー、でも飲まないのはもったいないよね?」

ほむら「そうね」

まどか「ねっ、二人ではんぶんこにしようよ!」

ほむら「ええ、そうしましょうか」

まどか「先に飲んでもいいかな?」

ほむら「構わないわ」

まどか「えへへ、ありがと」チュー

ほむら「……」

ほむら(やっぱり仁美だけじゃ物足りないわね)

ほむら(どうしてだかはわからないけど)

ほむら(何だかんだで私も、多少は彼女に依存でもしていたのかしら?)

ほむら(…いや、まさか)

ほむら(でもこの物足りなさは…)

まどか「はい、次はほむらちゃ…」

まどか「あー、ほむらちゃんピーマン残してるよ!」

ほむら「え?」

ほむら「あっ…ピーマンは少し苦手で…」

まどか「好き嫌いはダメだってママが言ってたよ」

ほむら(それをあなたが言うの?)

ほむら「…そ、そうね、好き嫌いはいけないわよね」

まどか「うんっ」

ほむら(突っ込みたいけど、どう突っ込めばいいのかしら?)

ほむら(こんな時、彼女ならどう突っ込んだのかしら?)

ほむら「……」

ほむら(やめましょう、彼女はこの時間軸にはいないのだから)

キュゥべえ「チョップ!チョップ!チョップステイック!」

ほむら「いたっ!」

キュゥべえ「ダメだよ、ほむら。お残しなんてしちゃ」

キュゥべえ「昔からお残しは許しまへんべえっつーでしょ?」

ほむら「インキュベーター…!」

まどか「あっ、キュゥべえ!」

キュゥべえ「あっ、まどか!僕と契約して魔法少女になってよ!」

まどか「嫌だよ」

キュゥべえ「そっか」

ほむら「…あなた、何しに来たの?」

キュゥべえ「まどかと契約!」

まどか「私は契約しないよ?だってみんなしちゃダメだって言うもん」

キュゥべえ「うーん、そこをなんとか!」

まどか「ダメだよ」

キュゥべえ「まぁいっか」

ほむら(いいの?)

ほむら「……はぁ?」

ほむら(時間軸によって多少は違いがでるのはわかっているけど)

ほむら(この時間軸は特におかしいのよ)

ほむら(まどかや仁美も少し違うし、マミや杏子はもっと違う)

ほむら(もっとも、そのおかげもあってワルプルギスを倒せたのだけど…)

ほむら(でも、こいつは!)

キュゥべえ「あっ、ハンバーグだぁ!」

キュゥべえ「ねえ、まどか!食べてもいい?」

まどか「えー?ちょっとだけだよ?」

キュゥべえ「やったぁー!」モグモグ

まどか「あぁ…ちょっとだけって言ってるのに」

キュゥべえ「まどかが!僕と契約してくれるまで!食べるのをやめない!」

まどか「もー」

ほむら(ぶっとばしたい!)

ほむら「…インキュベーター」

キュゥべえ「んー?」

ほむら「お願いします、どっかに行ってください」

まどか「ほむらちゃん?」

キュゥべえ「ほ、ほむらが僕に頭を下げた?」

キュゥべえ「はっ!これは何か裏があるはず…!」

キュゥべえ「こうしちゃいられない!」タタッ

ほむら「はぁ…」

ほむら(あいつがバカで助かったわ)

ほむら(そのおかげで、まどかも無事なんだし)

ほむら(…少しだけ、少しだけかだけど普通のキュゥべえの方が良かった気はするけど)

マミ「佐倉さん、もう勝手に食べてもいいわよ」

杏子「お、おう…」

杏子(なんだ?あたし、何かしたっけ?)

杏子「ん?」

キュゥべえ「うぉー!」

杏子(なんかウザいのが突っ込んできた…)

キュゥべえ「チョップステイック!」バシンッ

マミ「きゃっ?」

キュゥべえ「マミ!あーそーべー!」

マミ「あら、キュゥべえ」

杏子(はぁ、こいつが来るとほんと面倒なんだよなぁ)

マミ「今は遊べないわ、これから佐倉さんと勉強をするんだもの」

キュゥべえ「ケチケチ!魔女ケチケチー!」

キュゥべえ「マミなんて絶望して魔女ケチケチになっちゃえばいいんだー!」

マミ「はいはい」クスッ

杏子「なあ、キュゥべえ?あっちで契約したがってるおっさんがいたぞ」モグモグ

キュゥべえ「契約?えっ?どこどこ?」

杏子「そうだな、地球の裏側とか?」モグモグ

キュゥべえ「わかった!行ってくる!」ダダダッ

杏子「……あいつ、一生かかってもエネルギー集められないだろ」モグモグ

マミ「ふふ、そうかもね」

杏子「ふぅ、ごちそうさま」

マミ「あ、うん」

マミ(あーんは…仕方ないか)

マミ「さてと、なら勉強をしましょうか」

杏子「んー、面倒だけど仕方ないよなぁ」

マミ「でも、その前に」スクッ

杏子「ん?」

マミ「せっかくだし、4人で勉強しましょう?」

まどか「そうだ、そのピーマンわたしが食べてあげる」

ほむら「あら、いいの?」

まどか「うんっ、さっきのお礼」

ほむら「ふふ、ありがとう」

まどか「えへへ」

ほむら「はい、まどか」スッ

まどか「あむっ」アーン

ほむら「ピーマン、苦くない?」

まどか「んー、大丈夫だよ」

ほむら「そう、私は苦手なの」チュー

まどか「そうなんだ、ちょっと意外かも」

ほむら「そうかしら?」チュー

まどか「うん」

マミ「!」

マミ(この二人…食べさせ合うどころか同じ紅茶を同じストローで…!)

マミ(やっぱりお友達同士なら普通なのかしら?)

マミ(それとも…)

杏子「おっ、ほむらとまどかじゃんか」

まどか「あっ、杏子さん。それにマミさんも!」

マミ「こんにちは、暁美さん、鹿目さん」

ほむら「マミ、杏子。あなた達も来ていたのね」

杏子「ああ、飯と勉強をね」

まどか「わたし達とおんなじだね」

マミ「ええ、と言うことで一緒に勉強しない?」

マミ「二年生の範囲なら教えてあげるわ」

まどか「んっと…それはほむらちゃんがいてくれるから大丈夫…かな?」

ほむら「あ」

マミ「……そ、そう」シュン

まどか「でも、四人の方が楽しいから一緒に勉強しましょうよ」

マミ「そ、そう!」パアッ

ほむら「やっぱりマミは分かりやすいわね」

杏子「ん?ああ」

二時間後

杏子「つかれた、もー無理…」

マミ「そうね、とりあえず今日はここまでにしておきましょうか」

まどか「やっぱりほむらちゃんは凄いね、スラスラ解いちゃうんだもん」

ほむら「もう慣れてるからよ」

まどか「?そうなんだ?」

杏子「さて、あたしはもう帰ったら寝るかな。明日はバイトもあるし」

ほむら「まどか、私達も帰りましょう」

まどか「うん」

杏子「マミも帰ろうぜ」

マミ「ええ…」

杏子「ん?どうかした?」

マミ「そう言えば何か暁美さん達に言いたいことがあったような…」

ほむら「私達に?」

まどか「何ですか?」

マミ「あっ、明日と言えば!」

まどか「明日と言えば?」

マミ「転校生!転校生よ!」

ほむら「転校生?」

マミ「暁美さん達のクラスに転校生がやって来るって聞いたの!」

杏子「えっ、マジでかよ?あたしは知らねーぞ?」

マミ「今日のホームルームで先生がちょっとだけ話していたのよ」

マミ「ふふ、佐倉さんは眠っていたから知らなかったのね」

杏子「へー、まぁあたしらには関係ないんだけどな」

マミ「そうかも知れないけど、暁美さんと鹿目さんには関係ありありじゃない」

ほむら「そうね」

まどか「やったね、ほむらちゃん!友達が増えるよ!」

ほむら「ふふっ、ある意味私の後輩になるのね」

ほむら「まどかはどんな子がいい?」

まどか「んー、明るくて元気な女の子がいいなぁ」

ほむら「!」

まどか「ほら、わたし達のクラスって明るくて元気な感じの女の子はいないから」

まどか「そんな子が来てくれたらそれはとっても嬉しいなって」

ほむら「まどか…」

まどか「えへへ」

ほむら「……そう」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら(やっぱり…まどかには彼女が必要なのね)

ほむら(美樹さやか…!)

まどか「あっ?あのね?その、わたし…」

まどか「別にほむらちゃんが明るくて元気な女の子じゃないのを責めてるわけじゃないんだよ?」

ほむら「えっ?」

まどか「わたし、ほむらちゃんが転校して来た時すごく嬉しかったもん!」

ほむら「まどか…」

まどか「わたし…あんまり友達がいなくて、一人になりがちで…」

まどか「そんなわたしに、ほむらちゃんは話しかけてくれて…優しくしてくれて」

まどか「友達になってくれて、わたし…すっごく嬉しかったんだ!」

まどか「だからわたし、ほむらちゃんが大好きだよ!」

ほむら「ありがとう、私もおなじよ。まどか」

まどか「てへへ…」

ほむら「ふふっ」

杏子「ほんと仲良いよねぇ」

マミ「ええ、羨ましいわ」

ほむら「……」

ほむら(…美樹さやか)

キュゥべえ「チョップ!チョップ!チョップステイック!」

折莉子「や、やめなさい!」

キリカ「待てー!しろまるー!」

マミ「まだやってる……」

杏子「さ、あのバカに絡まれる前にさっさと帰ろうぜ」

マミ「ふふ、そうね」

まどか「明日が楽しみだね、ほむらちゃん」

ほむら「そうね、まどか」

ほむら(まさか美樹さやかが転校生してくるなんてことは…)

ほむら(ふふ、さすがにないわよね?)

ほむら(……奇跡も魔法も…か)

翌日

和子「目玉焼きとは、固焼き半熟ですか?それとも半熟ですか?」

和子「はい、中沢くん!」

中沢「え?どっちでもいいってこの前…」

和子「違いますっ!」

中沢「えぇっ?」

和子「卵の焼き加減ひとつで―」

まどか「えー?言ってることが前と違うよぉ?」

ほむら「?」

和子「はい、あとそれから、今日はみなさんに転校生を紹介します」

ほむら(そっちが後なの?)

ほむら(それにしてもまさか私が転校生を迎える立場になるなんてね)

ほむら(こんな日がくるだなんて思いもしなかったわ)

ほむら(転校初日って緊張するのよね)

ほむら(…私も一番最初の転校はすっごく緊張したもの)

ほむら(だから転校生の気持ちがよくわかるわ)

ほむら(転校生の先輩として、私も力になろうかしら?)

ほむら「ふふっ」

和子「じゃ、美樹さん。いらっしゃい」

ほむら「!?」

ほむら(え…?)

まどか「美樹さんだって、女の子なのかな?」

仁美「そうですわね」

ほむら(まさか…ほんとに…?)

和子「あら?美樹さん?」

まどか「あれ?でてこないよ?」

仁美「恥ずかしがり屋さんかもしれませんわ」

まどか「あっ、ドアの隅っこに…隠れてる、のかな?」

ほむら「!」

さやか「……」フルフル

ほむら(あの髪色は…)

さやか「うぅ…」

ほむら(美樹…)

和子「…美樹さん」

さやか「あ、あの…わたし…やっぱり…」

ほむら(さやか…!)

和子「大丈夫、みんな優しいから…ねっ?」

さやか「で、でもぉ…」

和子「だから安心して?みんな美樹さんの味方、お友達よ?」

さやか「おとも…だち…」

和子「うん、だから大丈夫」

さやか「……うん」

まどか「あっ、来たよ!」

ほむら「…」

和子「さっ、美樹さん。自己紹介言ってみよう!」

さやか「…あ、あ…あ…」モジモジ

ほむら(まさか…彼女が…)

さやか「わ……わた…し…その…」

ほむら(美樹さやか?)

さやか「み、み…き…さや……」

さやか「うぅぅっ…」

まどか「……」

仁美「……」

和子「こ、この子の名前は美樹さやかさん」

和子「東京から引っ越してきたの、それに学校も…ううん」

和子「まだ見滝原にも慣れていないと思うから、みんな助けてあげてね」

ほむら「……」ジィッ

さやか「!」

ほむら(彼女が美樹さやかだとは到底思えないわ…)

ほむら(キュゥべえはともかく、他のみんなはそこまで変化はなかったのに)

ほむら(これは…)

ほむら(外見は髪を長くした美樹さやか…たしかに美樹さやかよ)

ほむら(でも…本当に美樹さやかなのかしら?)

ほむら(信じられない…)

ほむら「……」ジィーッ

さやか「うぅぅ…」オロオロ

「美樹さんって、前はどこの学校だったの?」

さやか「と…東京の…がっこ…」

「部活とかやってた?運動系?文化系?」

さやか「…その…わた…がっこ…に…」

「すっごい長い髪だよね。シャンプーは何使ってるの?」

さやか「え、ぇと…おかあさんが……」

ほむら「……」

ほむら(美樹さやか…)

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「…まどか」

まどか「美樹さん、恥ずかしがり屋さんなのかな?」

まどか「それとも…」

ほむら「…そうね」

ほむら(まるで昔の私を見ているようだわ)

ほむら(…たぶん、あそこまでじゃなかったけど)

まどか「みんな美樹さんに話しかけてるけど…美樹さん困ってるような…」

ほむら「…無理もないわ、ただでさえ転校初日は緊張するもの」

ほむら「ましてあの性格なら…」

まどか「大丈夫…なのかな?」

ほむら「心配?」

まどか「…うん、だって怯えてるように見えるもん」

ほむら「…そうよね、怯えているわ」

まどか「……ねえ、ほむらちゃん」

ほむら「なにかしら?」

まどか「ちょっとだけなら、嘘ついてもいいよね?」

ほむら「嘘?」

まどか「うん、嘘」

ほむら「まどか、嘘って…」

まどか「ほむらちゃん、ついてきて」

ほむら「ちょっと、まどか?」

「美樹さんって人魚さんみたいだね」

「あー、マーメイドっぽいかも!」

さやか「うぅ…」

まどか「え、えと…み、美樹さん!」

さやか「……」

まどか「あ、あれ?聞こえてないのかな?」

ほむら「あちこちから話しかけられてるもの、仕方ないわ」

まどか「うぅ…」

ほむら「美樹さんを連れてくればいいの?」

まどか「う、うん!」

ほむら「わかったわ、待っていて?」

まどか「ほむらちゃん…!」

ほむら「みんな、少し退いてもらえる?」

さやか「…?」

ほむら「美樹さやかさん…よね?話があるの、ついて来てくれない?」

さやか「ぇ…」

ほむら「ほら」スッ

さやか「…ぁ…ゃ…ぇと…」

ほむら「大丈夫、何も悪いことなんてしないわ」

ほむら「まどかが話をしたいらしいの」

さやか「まど…か…?」

まどか「あ、んと!えへへっ」

さやか「……」

「鹿目さん、どうしたの?」

まどか「えぇーっと…」

まどか「そ、その!美樹さんは体が悪くって!えと…保健室に行かなきゃいけないの!」

さやか「ぇ…?」

「あっ、そうだったの?」

まどか「う、うん!だから保健委員のわたしとほむらちゃんが…」

「そっかぁ。ごめんね?引き留めちゃって」

「また今度お話しようね」

さやか「ぁ…ぁの…」

ほむら「なるほど、そう言うことね」

まどか「えへへ…美樹さん、ついて来てくれない…かな?」

さやか「……」

ほむら「まどか、保健室に行ってどうするつもり?」コソ

まどか「んっと…お話…かな?」

ほむら「でも美樹さんは大丈夫かしら?」

まどか「わ、わたし、頑張るから!」

ほむら「…まどかがそう言うなら私は構わないけど」

ほむら「どうして美樹さんを?」

まどか「えと…よくわかんないんだけど、美樹さんを助けたいって思って…」

ほむら「そう、わかったわ」

さやか「……」オロオロ

まどか「あ、ごめんね?保健室行こっ?」

さやか「ぇ…でも…わたし…」

ほむら「美樹さん、初めての教室って緊張するでしょ?」

さやか「ぇ…」

ほむら「私も先月転校してきたばっかりだからよく分かるわ」

さやか「!」

まどか「わ、わたしは転校生じゃないけど…やっぱり最初は緊張したし」

まどか「それに転校生って珍しいから、みんなはしゃいじゃって」

ほむら「二人目だけどね」ボソッ

廊下

さやか「ぅ…」

さやか(どうしよう…知らない子に保健室に連れていかれるなんて…)

さやか(わたし…別に病気なんかじゃないのに…)

さやか(一人でいたいのに…)

さやか(……でも)

まどか「ごめんね?迷惑…だったかな?」

さやか(この子は悪い子には見えないし…)

ほむら「同じ転校生同士仲良くしましょう?」

さやか(この子は…先月転校して来たばっかりの…転校生仲間…)

さやか(仲間……)

ほむら「美樹さん!」

さやか「ぇ…?」

ドンッ

さやか「きゃぁっ?」

恭介「うわっ?」

さやか「っ…」ヨロッ

恭介「っと、危ない!」ギュッ

さやか「ぁ…」

恭介「あ…だ、大丈夫…?」

さやか「………」

まどか「美樹さん、大丈夫だった?」

ほむら「下向いて歩くから…」

恭介「いや、前を見ずに歩いていた僕のせいだよ」

恭介「えっと、美樹さん…だよね?ごめん、次からは気を付けるよ」

「おーい、上条ー早く来いよー」

恭介「わかった、今行く!」タタッ

まどか「もー…美樹さん、もう大丈夫だからね」

さやか「………」

ほむら(美樹さやかと上条恭介…やはり幼馴染みではないようね)

ほむら(これは本人にとって幸運なのかしら?それとも…)

ほむら(……私が、もしまどかと出会わないままだったら…)

ほむら(………)

まどかとさやかでマスターピース

保健室

さやか「……」

まどか「先生もいないし、今は貸切だね」

ほむら「そうね」

まどか「あっ、わたしお茶ついでくるね」

ほむら「勝手に使っていいのかしら?」

まどか「大丈夫だよ、わたし達は保健委員なんだしさ」

ほむら「ふふ、それもそうね」

まどか「それじゃあ美樹さん、ちょっと待っててね」

さやか「……」

ほむら(それにしても静かね…いくら緊張してるとは言え…)

ほむら(私も似たようなものだったとは思うけど…)

ほむら(私の場合はずっと入院してて、学校自体が久しぶりだったんだもの)

ほむら(だから私は仕方なかったのよ)

ほむら(……たぶん)

ほむら(…いえ、素直になれば怖かったから…なのよね)

ほむら(いっつも一人だったから誰かと話すことすら怖くて…)

ほむら(…なら、この美樹さやかもそうなのかしら?)

ほむら「…」ジィー

さやか「うぅ…」

さやか(さっきからずっと睨まれてる…)

さやか(わたし…まだ何もしてないのに…)

さやか(また…虐められるのかな…?)

さやか(わたしは何も悪くないのに…)

さやか(もう嫌だよ…あんなの…)

さやか(やっぱり学校なんて…無理だよ…)

さやか(早くお家に帰りたいよ…)

さやか(お母さん…)

さやか「うぅっ…」グスッ

ほむら(私はまどかがいてくれたから元気になれたわ)

ほむら(まどかが私を助けてくれたから、今の私がいるの)

ほむら(なら…私はどうすればいいの?)

ほむら(私がこの子にできることは何かあるの?)

ほむら(まどかならどうするのかしら…?)

ほむら(いえ、考えるまでもないわね)

ほむら(まどかなら、きっと)

さやか「うぅ…」

ギュッ

さやか「ぇ…?」

ほむら「やっぱり、まだ緊張するわよね?」

さやか「……」

ほむら「私も、あなたと同じだったから分かるわ」

さやか「……違う…」

ほむら「えっ?」

さやか「…あなたと…わたしは違う…もん…」

ほむら「…」

さやか「わたしは…何にもできない…から…」

さやか「わたしは…引きこもり…だもん…」

ほむら(引きこもり…?)

さやか「………」

ほむら(さやか…)

ほむら「……私はね、ずっと入院してて通学していなかったの」

ほむら「ちょっと走っただけで貧血になっちゃうくらい病弱で、それにドジだったわ」

ほむら「勉強だって…だから私はそんな自分が嫌だったし、友達だっていなかった」

さやか「……」

ほむら「でも今は違うわ」

ほむら「友達が私を変えてくれたんだもの」

ほむら「だからあなただって変われるはずよ」

ほむら「今からでも十分間に合うと思うの」

ほむら「だから」

さやか「うそ…」

ほむら「え?」

さやか「…うそでしょ…たった1ヶ月で変われるわけないもん…」

ほむら「あ…」

ほむら(た、たしかに…)

さやか「……わたしに合わせて…うそなんかつかなくてもいいよ…」

さやか「あなたと…わたしは違うから…」

ほむら「で、でもっ!人は変われるわ!」

ほむら「私だって本当に変われたのよ?」

さやか「たしかに人は変われるよ…」

ほむら「そ、そうでしょ?」

さやか「…わたしも…変わったから…」

ほむら「え?」

まどか「ほむらちゃん、美樹さん、お待たせ」

まどか「遅くなってごめんね?」

ほむら「まどか…」

まどか「えへへ、って…わわっ?」グラグラ

ほむら「あっ、危ない!」

まどか「きゃぁっ?」ドテッ

ガシャーン

さやか「あつっ!」

まどか「わわわ!ごめんなさいっ」

さやか「ちょっと、何してんのよ!もー!」

まどか「!」

ほむら「!」

さやか「あたしの制服……」

まどか「…美樹さん?」

さやか「あ、あ…あ…」

さやか「…ご、ごめんなさい……」

まどか「あ、いや!謝るのはわたしの方だよっ!」

まどか「ごめんね?新しい制服なのに…」

さやか「ぃ…ぃぇ…」

まどか「えと、タオル持ってくるね!」

ほむら「……」

さやか「うぅぅ…」

ほむら(さっきの反応…あの時だけ私の知ってる美樹さやかだったような…)

ほむら(……私の気のせいかしら?それとも…)

さやか「………」

キーンコーンカーンコーン

ほむら「あっ、チャイムが…」

さやか「ぁ…」

ほむら「でも、その格好じゃ授業は…仕方ないわ、後で先生には話しておくから」

ほむら「もう暫くここにいましょう」

さやか「………」

ほむら「…美樹さん」

さやか「……」

ほむら「あなたの過去に何があったかは聞かないわ」

ほむら「でも、何時までも殻に閉じ籠っているのはよくないことだと思うの」

さやか「……そんなこと…言われても…」

ほむら「私は転校をきっかけに変われたと思うの」

ほむら「もちろん、それ以外にもたくさんのことがあったけど…」

ほむら「東京のころの弱い私から少しは変われたって言い切れるわ」

さやか「…でも、わたしは……」

ほむら「そうだわ、東京のころの私の写真見る?」

さやか「え?」

ほむら「少し待ってて」タタッ

さやか「………」

さやか(…あたしは変われなくていいのに…)

さやか(変わりたくなんかないのに…)

まどか「ごめんね?美樹さん、熱かったよね?」

さやか「ぁっ…」

まどか「んと…今から拭くね?」

さやか「……」

まどか「えと…えと…」

まどか「うぅ…やっぱり怒ってる…よね?」

さやか「………」

まどか「ご、ごめんなさい…わたしがドジだから…」

まどか「うぅ…」グス

さやか「ぁ…ぇっと…だ、大丈夫…」

まどか「え…?」

さやか「お、怒ってない…から…?」

まどか「ほんと?」

さやか「う、うん…」

まどか「そっかぁ。えへへ、よかった」

さやか「……」

ほむら「お待たせ…あら、まどか」

まどか「あっ、ほむらちゃん。美樹さん怒ってないって!」

さやか「……」

ほむら(さやか…)

ほむら「そう、よかったわね。まどか」

まどか「うんっ」

ほむら「それと美樹さん、持ってきたわよ」

さやか「ぁ…」

まどか「あれ?ほむらちゃんの写真?」

ほむら「ええ」

さやか(どうして自分の写真を持ち歩いてるのかな…?)

まどか「わぁ!見せて見せて」

ほむら「いいわよ」

さやか「……」

ほむら「もちろん、あなたにも見せるわよ」

まどか「???」

ほむら「まどか、どうしたの?」

まどか「いや…こんな写真撮った覚えがなくて…」

ほむら「え?」

まどか「んー…わたしとほむらちゃんのツーショットばかりだけど…」

ほむら(しまった!)

まどか「うーん…やっぱり撮ってない…よね?」

ほむら(間違えた!)

ほむら「ま、まどか!えっと!これは!」

まどか「…ほむらちゃん」ジッ

ほむら「うっ…ち、違うの!これはそのっ!」

さやか「……」ポカーン

まどか「……」テクテク

ほむら「ま、まどかぁ…」

ほむら(まずい、完全に誤解されてしまったわ…)

まどか「ほむらちゃん」スッ

ほむら「っ…」

ギュッ

ほむら「…えっ?」

まどか「えへへ、ありがとう。ほむらちゃん」

ほむら「…?」

まどか「この写真って、ほむらちゃんが作ったんだよね?」

ほむら「えっ?作った?」

まどか「わたしと一緒にこんな写真撮りたいのかなって」

まどか「そう思ったの!」ニコッ

ほむら「……まどか」

まどか「それで、美樹さんともこんな感じに一緒に撮ろうって言いたかったんだよね?」

さやか「!」

ほむら「え、えっと…」

まどか「美樹さん」

さやか「……」

まどか「ほむらちゃんはね?たまに素直じゃない時があるから」

まどか「うまく言いたいことが伝えられないのかな?って思うの」

ぶっちゃけこんなの目の前で見せられても困惑するだけだよな

まどか「でも、これだけは言えるよ」

まどか「ほむらちゃんは優しくてカッコいい女の子なんだって」

ほむら「まどか…」

さやか「……」

さやか(ほら…やっぱりわたしなんかとは全然違う…)

まどか「美樹さん、ほむらちゃんは美樹さんと仲良くなりたいって思ってるんだよ?」

まどか「そしてわたしも」ニコッ

さやか「…!」

さやか(な、なにがなんだか…)

さやか(この子は何を言っているの?)

さやか(…わたしと仲良く…?)

さやか(どうしてそんなこと…)

まどか「わたしは…何の取り柄もないし、誰の役にも立てないけど」

まどか「それでも、友達と仲良くしたいって気持ちは誰にも負けたくないの」

さやか「……えっ…と…?」

まどか「あれ?わけわかんなくなっちゃった?」

まどか「んと…わたしは…わたしと、ほむらちゃんはね?」

まどか「あなたと、美樹さんと友達になりたいの」

さやか「…!」

まどか「そうだよね?ほむらちゃん」

ほむら「…ふふっ、ずいぶん回りくどくなっちゃったけど」

ほむら「ええ、つまりはそう言うことよ」

ほむら「美樹さん、私達と友達になりましょう」

さやか「……」

ほむら(不思議ね、私からこんな言葉がでるなんて)

ほむら(私は今まで幾度となく美樹さやかと衝突してきた)

ほむら(この手で殺そうとしたこともあった)

さやか「…!」

なのは「!?」


なんか通じるものがあるな

ほむら(美樹さやかとは意見が合わなかったし、結果的にまどかを悲しめることばかりだった)

ほむら(だから私は美樹さやかを…嫌だと思った)

ほむら(まどかさえ助けられるのであれば、私は…)

ほむら(…でも本当は違ったのかも知れない)

ほむら(本当はさやかとも仲良くなりたかったのかも知れない)

ほむら(だけど仲良くなることなんて…いっつも無理で…)

ほむら(私はさやかと仲良くなることをずっと諦めていたんだわ)

ほむら(でも、今は違う)

ほむら(まどかだけじゃなく、マミや杏子とも仲良くなれた)

ほむら(でもこれは私が頑張ったから…と言う訳じゃないのかもしれないわ)

ほむら(この時間軸が私にとって都合の良い時間軸だった)

ほむら(ただ、それだけのことかもしれない)

ほむら(そんな中…唯一、私の都合に良くなかったことは)

ほむら(美樹さやか、あなた…だったのね)

ほむら(私はあなたがいないこの時間軸に寂しさを感じた)

ほむら(何時もいるはずのあなたがいなかった)

ほむら(そしてやっと現れたと思ったら、中身はまるで別人だった)

ほむら(それがまた、寂しかった…)

ほむら(だから私は…さやか、あなたと…)

―ちゃん!

ほむら(…)

ほむらちゃん!

ほむら「!」

まどか「ほむらちゃん!どうしたの?大丈夫?」

ほむら「まどか?」

まどか「急に黙ってボーッとしてたから…」

ほむら「あっ、ごめんなさい…」

まどか「ううん、いいの」

まどか「それに」チラッ

ほむら「それに…あっ!」

さやか「ふふ…」

ほむら「…そっか」

さやか「?」

まどか「美樹さん、初めて笑ってくれたね」

さやか「えっ?笑った…?」

まどか「うんっ」

さやか「あ…」

さやか(たしかに…笑った…かも)

さやか(だって…)

さやか「ふふ…ふふふっ」

まどか「ほらっ、また笑ったよ」

ほむら「ええ」

まどか「よくわかんないけど、美樹さんが笑ってくれてよかった!」

さやか「…よくわかんないのは…あなた達だよ」

まどか「えっ?」

さやか「だって…わけわかんないんだもん」

まどか「えと…」

さやか「だって、考えてもみてよ?」

さやか「まだ名前も知らない人、二人に保健室に連れてこられてさ」

さやか「何をするかと思えば急に変われるだなんて言い出すし」

さやか「それにお茶まで溢しちゃってさ」

さやか「それが終わったと思ったら写真持ってきて」

さやか「目の前でいちゃつき始めたと思ったら今度は友達になりたいって」

さやか「ほんと、わけがわからないよ」

さやか(でも……いや、いいか)

まどか「………」

ほむら「………」

ほむら「美樹さん」

さやか「なに?」

ほむら「あなた、ちゃんと話せるのね」クスッ

さやか「え?」

ほむら「だってさっきまでは掠れるような小さな声でずっと話していたのに」

ほむら「今ははっきりと話していたじゃない」

さやか「!」

さやか「そ…そ、それは…わたしだって…人間…だから…」

ほむら「ふふ、そうね」

さやか「……笑わないでよ…」

ほむら「ごめんなさい」

さやか「もう…」

まどか「ねえ、美樹さん」

さやか「……なに?」

まどか「わたし、鹿目まどか!」

さやか「!」

まどか「ごめんね?自己紹介まだだったよね」

まどか「わたしは鹿目まどかって言うの」

まどか「だから、まどかって呼んでくれたらそれはとっても嬉しいなって」

さやか「…」

まどか「えへへ」

さやか「…ふふっ」

まどか「あっ、また笑ってくれたね」

さやか「だって、すっごいマイペースなんだもん」

まどか「えー?そうかな?」

さやか「あなたもそう思うでしょ?」

ほむら「ふふ、たしかにそうかも知れないわ」

まどか「えぇっ?ほむらちゃんまで?」

さやか「ほんと、マイペースだよ」

さやか「こんな幼馴染みがいたら楽しかっただろうな…」ボソッ

まどか「?」

ほむら「……」

ほむら(さやか…やっぱりあなたの根は変わっちゃ…)

ほむら「…美樹さん」

さやか「今度はなに?」

ほむら「私はほむら、暁美ほむらよ」

さやか「……」

ほむら「今日は色々と申し訳なかったわ」

ほむら「自分でも何を言っているのかよくわからなくって」

さやか「……だろうね」

ほむら「ただ、これだけは分かっているわ」

ほむら「私はあなたを助けたい…友達になりたいって」

さやか「!」

さやか「…なんでまた…そんなこと…」

ほむら「それは」

まどか「そんなの簡単だよ!」

さやか「簡単…?」

まどか「美樹さんはクラスメイトだし、それに…」

まどか「美樹さんと仲良くなれたら、絶対楽しいもん!」

さやか「……あなたがそう思っても、わたしがそう思うとは限らないよ?」

まどか「なら、美樹さんが楽しんでくれるまで、わたし頑張る!」

さやか「…!」

まどか「美樹さんが笑ってくれるなら、わたし何でもするよ!」

さやか「……」

さやか「…今、なんでもするって言ったよね?」

まどか「うんっ」

さやか「なら、今すぐここから出ていって」

まどか「え…」

ほむら「ちょっと!」

さやか「出ていくのが嫌なら話しかけないで!」

まどか「……」

さやか「息しないで!」

まどか「…」モゴ

ほむら「ま、まどか…」

さやか「………」

さやか「…バカじゃないの?」

ほむら「そんな言い方…!」

まどか「…」モゴ

さやか「だってバカだよ!なんで本当に息なんて止めてんのよ!」

まどか「だ、だって美樹さんがそう言ったから…」

さやか「そんなの冗談に決まってるじゃん!」

まどか「え?冗談…なの?」

さやか「当たり前でしょ?」

まどか「そっか、よかったぁ。」

さやか「…」

まどか「てへへっ」

さやか「っ…!」

さやか「なんで…」

まどか「え?」

さやか「なんで笑ってるの…なんで怒んないのよ…」

さやか「だってわたしは…」

まどか「えー?このくらいで友達に怒るわけないよ?」

さやか「…友…達」

まどか「うん、だって美樹さんはもう友達だもん」

さやか「……ふふ」

さやか「ふふふっ…」

さやか「あははははっ」

ほむら「あなたの負けね、美樹さん」

さやか「うん、そうだわ」

まどか「え?え?」

さやか「もう人前で話すなんてしないって決めたのに」

さやか「もう笑わないって決めたのに」

さやか「…もう昔のわたしに戻らないって決めたのに」

さやか「性格が変わったって…思ってたのに…」

さやか「…ここにいると…昔のわたしに戻っちゃうなんてさ…」

まどか「?」

ほむら「美樹さん、あなたの本質は何も変わっていなかったと言うことよ」

さやか「……そうかな?」

ほむら「あなたに何があったかはわからないわ」

ほむら「でも、素の自分まで変えることはできなかった」

ほむら「そうなんだと思うわ」

ほむら(そうよ…私だって…)

さやか「……でも、こうして人と話すのは本当に久しぶりなんだ」

さやか「さっきの自己紹介だって、ほんとに怖くて怖くて仕方がなかった」

ほむら「…」

さやか「二人にここに連れてこられた時、ほんとに怖かった」

まどか「わわっ?ご、ごめんね?」

さやか「…今すぐにでも家に帰りたかったんだよ?」

まどか「ご、ごめんなさい!」

さやか「だから…今は不思議でしかたないんだ」

まどか「え?」

さやか「まるで今までのわたしが、全くの別人だったような気がして…」

ほむら「…実際、あなたは別人そのものだったわ」

さやか「…なんでわかるのさ」

ほむら「理由は話せないけど、私にはわかるもの」

さやか「……わけわかんないのは、こっちもだったか…」

さやか「まぁいいよ、今は気にしないでおく」

ほむら「その方が私としても助かるわ」

さやか「……ありがと」ボソッ

ほむら「!」

まどか「美樹さんっ」

さやか「……悔しいけど、久々に話せて、笑えて」

さやか「嬉しかった…よ」

まどか「わぁ…!」

さやか「ちょっとだけだけど」

まどか「やったね、ほむらちゃん!」

ほむら「ふふっ」

さやか「ちょっと!ちょっとだけだからね!」

昼休み

キュゥべえ「まーじょ♪まーじょー♪」

杏子「またバカが来やがった」

マミ「うふふっ」

キュゥべえ「今日のお昼はなんだい?」

マミ「私はサンドイッチよ」

杏子「あたしはのり弁だよ、購買で一番安いやつ」

キュゥべえ「おぉ!竹輪の磯辺焼きー!」

杏子「言っとくけど、やらねーからな」

キュゥべえ「なにをー!かくなる上は…!」

キュゥべえ「チョップ!チョップ!チョップステイッ…!?」

杏子「ん?」

キュゥべえ「オーマイガー!」

マミ「キュゥべえ、どうしたの?」

キュゥべえ「チョップステイックワスレーター…」

杏子「え?今まで箸で叩いてたっけ?」

キュゥべえ「箸?」

杏子「え?だってチョップステイック忘れたんだろ?」

キュゥべえ「チョップステイックと箸は関係ないじゃないか」

杏子「はぁ?」

マミ「チョップステイックは箸のことだけど…」

キュゥべえ「え?そうなの?」

マミ「うん」

キュゥべえ「ふーん…まぁいいや」

杏子「おいっ!」

マミ「ならキュゥべえは何を忘れたの?」

キュゥべえ「見てわからないかい?」

マミ「あっ」

杏子「耳のわっかみたいなやつがない!」

キュゥべえ「アレーガマイチョップステイック…」

杏子「どうでもいい知識が一つ増えたな」

キュゥべえ「失礼な!」

杏子「ほら、磯辺揚げあげっからどっか行きな」

キュゥべえ「ほんと?」

杏子「ああ」スッ

杏子「取ってこいっ!」フルスイング

キュゥべえ「竹輪の磯辺焼きー!」

杏子「ったく、好きなら名前くらい覚えろっての」

マミ「そうだわ、佐倉さん。どうでもよくない知識があるわよ」

杏子「ん?なんだよ?」

マミ「美樹さやかさん」

杏子「美樹さやか?誰だっけ?」

マミ「ほら、昨日話した転校生よ」

杏子「あぁ!そいつがどうかしたの?」

マミ「なんでも、一時間目からいきなり授業サボったんですって」

杏子「へぇー、いきなりやらかしたか」

杏子「んじゃ真面目なタイプの生徒じゃないんだね」

マミ「美樹さん本人はものすごく静かな子らしいわ」

杏子「と言うと?」

マミ「極度の恥ずかしがり屋らしくて、自己紹介すらできなかったって噂が広まってるわ」

杏子「ふーん?恥ずかしがり屋ねぇ…」

マミ「髪型は佐倉さんと同じらしいけど、性格は反対のようね」

杏子「反対…って言われてもピンと来ないな」

杏子「それに髪型ってもポニテなんて別に珍しくともなんともないし」

マミ「でも、赤と青で同じポニーテールは何か良いと思わない?」

杏子「思わねーって」

マミ「それのポニーテールのリボンが鹿目さんの物だったとしても?」

杏子「ん、てことはまどかとほむら、その転校生と仲良くなったのか」

マミ「ええ、何でもあの二人が美樹さんを保健室に連れ込んで」

杏子「授業をサボったってわけか」

マミ「うん、少し意外だけどね」

杏子「だよなぁ、ほむらは真面目だし、まどかだってサボるような性格じゃないしさ」

マミ「ふふっ、二人が並んで説教されてたんだもの」

マミ「私も驚いちゃったわ」

杏子「なるほどねぇ、んで?話しはそれで終わり?」

マミ「ううん、ここからが本番よ」

マミ「放課後、美樹さんの家に二人がいくらしいの」

マミ「そこで私と佐倉さんにも来て欲しいんだって」

杏子「え?あたしらが?」

マミ「ええ」

杏子「うーん、でもいいのか?その美樹って子は恥ずかしがり屋なんだろ?」

杏子「それにあたしらより先にクラスメイトと…」

マミ「佐倉さん、そこは察してあげて」

杏子「え?」

マミ「ほら、鹿目さんも暁美さんも…」

杏子「そ、そっか…うん、わかった」

マミ「あ、でもクラスメイトからもう一人来るんだって」

杏子「聞いてもわかんないだろうけど、一応聞いとく」

杏子「そのクラスメイトってだれさ」

マミ「えっと…志筑仁美さん…らしいわ」

放課後

さやか「ここがわたしの部屋だよ」

ほむら「お邪魔します」

まどか「お邪魔しちゃって、ごめんね」

さやか「いいよ、お母さんもお父さんもまだ帰ってこないし」

さやか「他に誰も来ないしさ」

ほむら「…そう」

さやか「…ここに二人を呼んだのは、わたしの話を聞いて欲しかったからなんだ」

さやか「あたしがこうして普通に話せるのは二人だけだし」

さやか「もう開き直って、わたしのこと話そうと思ったんだ」

ほむら「美樹さん…」

まどか「ありがとう、でも無理しないでね?」

さやか「大丈夫、開き直っちゃってますからね」

さやか「それに大した話でもないから、簡単に話すよ」

さやか「言う必要はないのかもしれないけど、二人には話さなきゃいけないきがしてさ」

まどか「……」

ほむら「…お願いするわ」

さやか「…わたしはさ、虐められてたんだ」

まどか「い、虐め…?」

ほむら「……」

さやか「最初に虐められてたのは、わたしじゃなかったんだ」

さやか「クラスで一番暗くて静かな子だったよ」

さやか「…わたしはその子が虐められてるのを見るのが我慢できなくて」

ほむら「…助けた」

さやか「…うん、わたしは…今はこんなんだけどさ」

さやか「小学生のころは友達も多くて、結構人気あったんだよ?」

さやか「まぁ、今はこれだから嘘だと思うだろうけどね」

やりすぎんなよwww

まどか「ううん、嘘だなんて思わないよ」

ほむら「私もよ」

さやか「…ありがと」

さやか「それでよく虐められっ子を助けてたんだ」

さやか「友達もみんな応援してくれたし、助けた子も喜んでくれた」

さやか「わたしはそれが嬉しくってさ、東京の平和はこのさやかちゃんが守る!」

さやか「って…自分のことを正義の味方だと思って毎日を過ごしてたんだ」

さやか「そして中一のころ、クラスで虐めが起きた」

さやか「もちろん、わたしは助けたよ」

さやか「そして次の標的がわたしになるのもわかってた」

さやか「でも怖くは無かったよ、だってそれまでずっと味方がいてくれたもん」

さやか「なのに…」

まどか「な、なのに?」

ほむら「……」

さやか「誰もわたしの味方をしてくれなかった…」

さやか「友達も先生も助けた子も…みんな見てみぬ振りをして…」

まどか「そ、そんな…ひどい…」

さやか「うん…ひどい…ひどかったよ…」

さやか「それでもわたしは諦めなかった」

さやか「わたしは間違ってなんかないんだから、必ず誰かがたすけてくれるって信じてた」

さやか「なのに…結局は誰も…」

さやか「…味方どころか、どんどん友達もわたしを避けるようになって…」

さやか「教科書やお弁当もゴミ箱に捨てられるし…」ウルッ

さやか「すてられなかった日も、トイレで一人で…」ウルウル

さやか「なんでっ?どうして誰もわたしを助けてくれないの?」

さやか「わたしはみんなを助けたのに、みんなはわたしを助けてくれないの?」

まどか「美樹さん…」

さやか「なんでっ?どうしてっ…?」

さやか「うぅぅっ…」

まどか「だ、大丈夫…?」サスサス

ほむら(そんなことが…)

さやか「わたし…その時初めてわかったんだ…」

さやか「わたしは正義の味方なんかじゃないって」

さやか「ただの自己満足なんだって…」

さやか「わたしが間違ってたんだって…」

さやか「わたしの性格が悪いからみんな離れていくんだって…」

まどか「そんなこと…」

さやか「……だから、もうこんな性格嫌だって」

さやか「みんな嫌だって…学校が嫌だって…」

さやか「…わたしは…学校に行かなくなって…」

さやか「部屋から出なくなったんだ…」

まどか「美樹さん…」

さやか「そして…人と話せなくなって…」

さやか「人が怖くなって…」

さやか「…そんなわたしなんかの為に、お父さんは無理して転勤を頼んで…」

ほむら「そして見滝原に来たのね?」

さやか「うん…」

ほむら「そう…辛かったわね」

さやか「うぅぅっ…」

ほむら「……」ギュッ

さやか「悔しいよぉ…辛いよぉ…寂しいよぉ…」

まどか「大丈夫…もう大丈夫だから」

さやか「わたし…わたしはぁ…っ…」

ほむら「…まどか」

まどか「うん」

ほむら「美樹さん…いえ、さやか」

さやか「…!」

ほむら「あなたがこれまでどんなに辛い思いをしてきたのかは分かったわ」

ほむら「でも、ここで立ち止まっていてはダメよ?」

さやか「でも…でもぉ…」

ほむら「また一からやり直しましょう?」

さやか「一…から…?」

ほむら「うん、私達ともう一度初めからやり直すのよ」

さやか「……でも、わたしなんか…」

ほむら「大丈夫、心配なんていらないわ」

ほむら「私達はあなたと一緒にいるから」

さやか「私…達…?」

ほむら「ええ、私とまどかと、そして…」

マミ「私たちがね」ニコ

さやか「ぇ…」

杏子「あんたがさやかか、たしかにあたしと似てるね」

さやか「ぇ…ぁ…ぇと…」

ほむら「大丈夫、彼女達は私の友達よ」

さやか「ぁ…あ、あ…あ…」

さやか「で、でも…わ、わたし…」

杏子「心配すんなよ、さやか」

さやか「ぇ…」

杏子「話しは聞いてるぜ、ひとりぼっちは寂しいもんな」

さやか「で…も…」

マミ「脅かせてしまってごめんなさい」

マミ「でも安心して?私も美樹さんの味方よ?」

さやか「は、初めてなのに…」

マミ「うん、たしかに今は初対面だけど…初めはみんな初対面でしょ?」

さやか「それは…」

マミ「初めから友達や親友の人なんて誰もいないわ」

マミ「でも、少しずつ仲良くなっていくものでしょ?」

マミ「だから、これから少しずつで大丈夫だから」

マミ「私のお友達になってほしいの」

さやか「だ、だけど変だよ…いきなり会って、友達なんて…」

杏子「難しい事考えるもんじゃないよ」

杏子「誰だってひとりぼっちは寂しい…だろ?」

さやか「……」

杏子「だからさ、一緒にいてやるよ。さやか」

杏子「あたしは杏子だ、よろしくね」

さやか「え、えと…」

マミ「私の名前は巴マミ、見滝原中の三年生よ」

マミ「よろしくね、美樹さん」

さやか「あ、あぅ…」

さやか「わ、わたし…」

マミ「うふふっ」ニコッ

杏子「バイト先からちょっと借りてきたんだ、食うかい?」

さやか「え、えっと…」

さやか「………ふっ」

さやか「あはは…わたしの負けみたいだね」

マミ「?」

杏子「えっ?」

さやか「ほんと、ごり押しなんだもん」

ほむら「ふふ、ごめんなさい」

さやか「ううん、ありがとう」

さやか「そ、その…わ、わたし美樹さやか…って言います」

さやか「よ、よろしくお願いします…巴さん、佐倉さん」

マミ「ええ、よろしくね」

杏子「へへっ」

さやか「えへ…」

ほむら(これでみんな揃ったわね)

ほむら(やっと…!)

ほむら(私達、みんなが)

ほむら「!」

ほむら(…いえ、もう一人いたわね)

まどか「ほら、緊張しなくても大丈夫だよ」

仁美「で、ですが…」

ほむら(仁美…!)

さやか「あっ」

仁美「あっ」

さやか「ぇ…ぁ…あ、あなた…は…同じクラスの…」

仁美「し、志筑仁美と言いますっ!」

さやか「は、はいっ!」

仁美「あっ?脅かせてしまってすみません」

さやか「あ、いや…」

仁美「んと…」モジ

まどか「大丈夫だって、仁美ちゃん」

さやか「ど、どうして…あなたが…」

さやか「暁美さんが呼んだの…?」

ほむら「いいえ」

さやか「じゃあ鹿目さんが…?」

まどか「ううん」

さやか「なら…」

マミ「私達も違うわよ?」

杏子「あたしらも初対面だしさ」

さやか「ぇ…なら…?」

仁美「わ、私っ!どうしても美樹さんと話がしたくて…!」

さやか「…」

仁美「どうしてだかはわかりませんの…ですが、初めて美樹さんを見た時…」

仁美「何処か懐かしいような気がして…」

仁美「それで…不思議な気持ちになって…それでお話を…」

まどか「要するに、仁美ちゃんも美樹さんと友達になりたいんだよね?」

仁美「そ、そうですわね…」

仁美「私も美樹さんの友達にしてください!」

さやか「ぇと…」

さやか(もう…ほんとわけわかんなあなぁ…)

さやか(みんな急すぎるっての)

さやか(でも…)

さやか「…気のせいなら、わたしも懐かしいような…」

仁美「!」

さやか「暁美さんや巴さん、佐倉さんもそうだけど」

さやか「…鹿目さんと志筑さんとは特に不思議な感じがして」

さやか「まるで昔別れた友達ような感覚がしたんだ…」

仁美「まあ…!」

まどか「えっ?美樹さんもそうだったの?」

まどか「実は私もそうなんだ!初めてあったような感じがしなくって」

ほむら「!」

ほむら(そっか…だからまどかは…)

まどか「えへへ、もしかしたらわたし達は前世でも仲良しだったのかもしれないね」

仁美「鹿目さん…ええ、そうですわね」

さやか「前世で仲良し…か」

まどか「うんっ!」

マミ「前世での因果…もしかしたらそうなのかも知れないわね」

杏子「なに難しい事言ってんだよ」

マミ「えっ?でも」

杏子「みんな友達になれた、それでいいじゃんか」

マミ「……そうね、佐倉さんの言う通りよ」

杏子「…まぁ、あたしもマミと初めて会った時そんな感じがしたんだけどね」

マミ「えっ?ほんと?」

杏子「ああ」

マミ「えへ、そっか」

ほむら「……」

ほむら(私だけ記憶を受け継いでいた気でいたけど)

ほむら(案外、そうじゃなかったのかも知れないわね)

ほむら「ふふっ」

まどか「ねえ、美樹さん」

さやか「なに?鹿目さん」

まどか「美樹さんのこと、さやかちゃんって呼んでもいい?」

さやか「えっ…」

まどか「…まだ、馴れ馴れしいかな?」

さやか「あっ、いや…」

さやか「……いいよ」

まどか「えっ?」

さやか「さ、さやかちゃんでいいよ」

まどか「ほんとっ?」

さやか「う、うん…」

まどか「わーい!」

仁美「うふふっ」

さやか「で、でも…条件がある…」

まどか「えっ?なにかな?」

まどか「わたし、頑張るよ!」

さやか「え、えと…わ、わたし…」

さやか「わたしも…鹿目さんのこと…」

―――――

―――

さやか「まーどかっ!なにやってんの?」

まどか「あっ、さやかちゃん!」

さやか「なになにぃ?…日記?書いてんの?」

まどか「うん、正確には日記じゃないんだけどね」

さやか「ふーん、ねっ!呼んでもいーい?」

まどか「だ、ダメだよっ!」

さやか「えー?まどかのケチ!」

キュゥべえ「ケチケチ!魔女ケチケチー!」

さやか「あれ、キュゥべえじゃん」

キュゥべえ「早く僕と契約してよぉー!」

キュゥべえ「いったい僕を何年待たせるつもりなんだー!」

さやか「いや、初めから契約なんてするつもりないし」

キュゥべえ「えぇっ?」

さやか「ねー、まどか?」

まどか「うんっ、さやかちゃん」

キュゥべえ「むむむ!ゆるすまじ!」

キュゥべえ「チョップ!チョップ!チョップステ…」

ほむら「これあげるから向こうに行ってなさい」

キュゥべえ「わー!竹輪の磯部焼きだぁー!」

ほむら「ほらっ」ポイッ

キュゥべえ「ばきゅーん!」

さやか「よっす、ほむら!」

ほむら「あなた達は今日も元気そうね」

まどか「えへへ」

ほむら「まどか、さやか。仁美が今度の休みに一緒に勉強しようと行っていたけど」

ほむら「どうする?行く?」

さやか「仁美ってことは、また別荘かな?」

まどか「行きたい!」

ほむら「ふふっ、もちろんそうなるわよね?」

ほむら「もう仁美は四人分の準備ができているそうよ」

さやか「やったー!さすが仁美!」

ほむら「でも、遊びに行く訳じゃないんだから勘違いしちゃダメよ?」

さやか「わかってるよぉ…」

まどか「マミさん達は大学受験で忙しいのかな?」

ほむら「ええだから今回は四人ってわけ」

まどか「そっかぁ」

さやか「ま、あたし達はさっさと宿題終わらせて、遊ぼー!」

ほむら「とか言ってるさやかが一番宿題残ってるわよ?」

さやか「うっ…」

ほむら「それに私はもう殆ど終わっているのよ?」

さやか「うぅっ…ま、まどかは?」

まどか「わたしはあと少しかな」

さやか「何が残ってんの?」

まどか「自由課題だよ」

ほむら「私と協力して作ってるのよね」

まどか「うんっ!」

さやか「えー?まどかだけずるーい!」

まどか「さやかちゃんだって、仁美ちゃんに手伝って貰ってるのに」

さやか「それとこれは別よ、別!」

さやか「むー…まあいいや、せめて何を作ってるのかだけで良いから教えてよ」

まどか「んー…大丈夫かな?」

ほむら「構わないわ」

まどか「わかったよ、実はね?さっきのこれがそうなんだ」

さやか「あー、日記みたいなやち?なんなのそれ?」

まどか「んっとね、わたしとほむらちゃんの親友のお話かな」

さやか「まどかとほむらの親友…?」

ほむら「ええ」

さやか「はっ!まさか…仁美か!」

まどか「半分正解だけど」

ほむら「半分不正解ね」

さやか「えー?なら誰なのさ?」

まどか「もー、わかってるんでしょ?」

さやか「えっ?」

ほむら「照れ隠ししても無駄よ?」

さやか「うっ…」

まどか「だって、正解は」

ほむら「さやか、だからね」

さやか「まどか…ほむら…」

さやか「うぅっ!さすがはあたしの嫁だぁー!」

まどか「もー、やめてよさやかちゃん」

ほむら「ふふっ」

さやか「まどかもほむらもあたしの嫁なのだぁー!」

まどか「てへへ」

さやか「んで、あたしの何を作ってるの?」

さやか「泣き虫がどうこうって見えたけど」

まどか「わたし達とさやかちゃんの出逢いを本にしてみたの」

ほむら「名前こそ変えているけど、私たちの実話よ」

さやか「え…てことは、その泣き虫ってあたし?」

ほむら「ええ」

さやか「えー?あたしのどこが泣き虫なのさ?」

まどか「んっと…全部?」

ほむら「だって自己紹介の時も、私たちと保健室に行った時も」

まどか「さやかちゃんの部屋に行った時も」

まどか「さやかちゃん、ずっと泣いてたんだよ?」

さやか「そ、そうなの?ぜんぜん覚えてない!覚えてないからノーカン!」

ほむら「じゃあ今はどうなのかしら?」

さやか「えっ?」

まどか「えへへ、さやかちゃん今も泣いてるよ?」

さやか「えと…こ、これは…これは嬉し泣き…だよ」

さやか「えへ…」

ほむら「ふふっ、まどか。私ちたのタイトルを教えてあげて」

まどか「うん、わたしたちと親友のお話」

まどか「泣き虫な転校生」

おわり

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