旅芸人「チムアを助けた」(39)




「チムア」とは人間とは異なる者という意である



ーーーーーーーーーー羅川真里茂「チムアポート」より


その一人と一匹が出会ったのは偶然か

はたまた運命だったのかーーーー

「プロローグ」

「こりゃ珍しいな…チムアか」

「………」フイッ

「はは、獣用の罠だろ?抜けれないのか?」

「あなたの仕掛けた罠じゃないの 」

「俺はこのあたりの人間じゃない。罠も違うな」

「そう」

「…外してやろうか?」

「………いい」

「逃げたくないってことはこの辺りはチムアにとって安全なのか?」

「………」

「おーい」

「………」

「だんまり耳欠けチムア」

「………」

「…獣用の罠じゃないのか」

「……もういい」

「あん?」

「僕はきっとこのまま狩られちゃうんだ」

「人間は僕らを、チムアを好きじゃない。だから僕らを狩る」

「そうしてどんどん数が減って、最期の一匹になるくらいなら…このままでいい」

「…ふんぬっ」ガチッ

「!?」

「ほらっ早く足をだせっ」

「えっえっ!?」

「はやくっしっろっ!」

「うっうん」ソッ

「ふいー、手ぇいたくなっちまった」

「なんで」

「まだ居たか。おりゃ、逃げろ」

「…無理だよ」

「あー足腫れてんな…動けないか?いたけりゃ泣けよ」

「………」

「…まただんまりか?家はどこだ?運んでやる」

「…なくなった」

「はあ?」

「人間に家を潰されて逃げてるうちに罠にかかった」

「…そうか」

「………」

「お前、家族は?」

「………」フルフル

「…俺は旅芸人をしてるんだ」

「………」

「旅はいいぞ?自由だ」

「………」

「お前もくるか?」

「……?」

「何も一生じゃない、気に入った場所があればそこで暮らせ」

「気に入った、場所?」

「ああ、世界は広い。チムアが安全な土地もあるらしい。悪い話じゃないだろう?」

「……う、ん」

「よし、決まりだ!お前、名前は?」

「……人間に名乗りたくない」

「かわいくねーなー!じゃあ俺の名前も言わないっ」

「いいよ。呼ぶときは旅芸人って呼ぶから」

「かーっますますかわいくねえ!!」

「オッサンくさ」

「んだと!?」

「!」ビクッ

「……ほら、おぶされ。いくぞ、‘脚’が待ってる」

「‘脚’がいるの!?」

「なんだ、‘脚’が好きか?」

「………」プイッ

ーーーこうして物語は動き始めました

チムアと旅芸人の向かう先
いったい何が待ち受けているのでしょうか


「プロローグ」おわり


彼らは迫害されて生きている

しかし、念や気(アウラ)は繊細でとても強いーーーー

「夜」

旅芸人「今日はここでキャンプだ」

チムア「うん…」

旅芸人「飯にするか!といいたいとこだがな」

チムア「?」

旅芸人「お前は寒いの平気か?」

チムア「平気だよ」

旅芸人「寝るときは外だからな」

チムア「……わかった」

旅芸人「チムアは飯はなに食うんだ?穀物はいけるか?」

チムア「だいじょうぶ」

旅芸人「よし、飯は保存しやすい穀物がほとんどだから旅の問題は無さそうだな」

チムア「………」

旅芸人「焚き火用の枝を探しにいくか」

チムア「……うん」

旅芸人「拾えるうちに拾わないとな。雨が続いて薪がなくなったら固形燃料を燃やす」

旅芸人「この辺りはあまり長い間はいられないだろうな」

チムア「冬が近いから?」

旅芸人「そうだ。冬が近けりゃ獣も腹が減って獰猛になるしな」

チムア「これから南へ向かうの?」

旅芸人「ああ、暖かいほうが身体も楽だしっ…て、またジジくさいとか言うなよ!?」

チムア「………」

旅芸人「思うのもダメだぞ?」

チムア「わかった」

旅芸人「…チムア、夜の間に一番警戒するべきはなにかわかるか」

チムア「………」フルフル

旅芸人「人間だ。悲しいことに、な」

チムア「人間」

旅芸人「外で寝る理由もそれだ」

チムア「!」

旅芸人「金目のものを狙って押し入られたことがあるんだ。それ以来天気が悪い日以外は少し離れた外で寝てる」

チムア「……旅芸人も」

旅芸人「ん?」

チムア「旅芸人も外で寝るの…?」

旅芸人「当たり前だろ?」

チムア「………」

旅芸人「なんだ、お前、お前だけ外かと思ってたのか!?バカだな!」

チムア「………」

旅芸人「………ほんとに…バカだな」スッ

チムア「!」ビクッ

旅芸人「…薪も集まったし飯にすっか」ポンポン

ーーーー初めての一人と一匹のよるはゆっくりと更けていきます

辺りには梟の鳴く声が響きはじめていました

「夜」おわり


彼らは小さく慈愛に満ちている

ただ、残念ながらそれに気が付く人間はとても少ないーーーー

「出立」

旅芸人「~♪~♪」

チムア「それ、なんのうた?」

旅芸人「わかんねえな。どっかで聞いたんだろうがどこだったか…チクあたりか?」

チムア「…音痴」

旅芸人「んなわけないだろ。俺の美声がわからないとはなげかわしいねえ」

チムア「芸人なんだよね?」

旅芸人「そうだ。邦を渡る印はないからこっち側のみの旅だけどな」

チムア「何の芸をするの?」

だった「得意なのはジャグリングだな」

修正
だった「得意なのはジャグリングだな」

旅芸人「得意なのはジャグリングだな」

チムア「ジャグリング?」

旅芸人「ああ、荷台にある奴を使うんだ」

チムア「ふーん……」

旅芸人「こんど見せてやる。あとはパントマイムとアクロバットも少し」

チムア「ひとつじゃないんだ」

旅芸人「土地によって好まれる芸が違うからな」

チムア「…うたは?」

旅芸人「リクエストがありゃやるさ」

チムア「‘脚’が歌はやめとけって言ってるよ」

旅芸人「はあ!?コルトはそんなこと言ってるのか?」

チムア「コルト?」

旅芸人「‘脚’の名前だ。コルトは速い‘脚’じゃないが力持ちだ。ただ、おじいちゃんでな」

チムア「冬を20位越えたって」

旅芸人「ああ、そんなもんだろうな」

旅芸人「しっかし、‘脚’と会話できるとはな」

チムア「………おかしなこと?」

旅芸人「は?」

チムア「羊熊とはなしができるの」

旅芸人「…俺は旅芸人だ。変か?」

チムア「?」

旅芸人「お前はネコ型チムア。変か?」

チムア「………」

旅芸人「羊熊がコルトなのは変か?」

チムア「…………」

旅芸人「変じゃないならお前のソレも普通だな」

チムア「………」コクッ

旅芸人「言ったろ?世界は広い。人間やチムアができることなんて些細なことだ」

チムア「ささいなこと…」

旅芸人「今の戦が終われば印がなくても向こう側に行ける。そしたらもっと不思議なことにもあえるだろ」

チムア「向こうの邦にいきたいの?」

旅芸人「まあな。いつかは行ってみたいな」

チムア「いつか」

旅芸人「そうだ。それまでは気ままな旅を楽しむさ」

ーーーー上空を戦闘に向かう飛行機が雲を引いて飛んでいきます

一人と一匹は手綱を引きながら雲が見えなくなるまで眺めていました

「出立」おわり

今日はここまで。ゆっくり進める予定。
ベースは漫画の「チムアポート」


彼らの想いは時に人間の為に向けられる

そしてしばしば奇跡をおこすーーーー

「街」

旅芸人「そろそろ街がみえてくるはずだ」

チムア「……うん」

旅芸人「滞在は2日くらいを予定してるからな」

チムア「どんなところ?」

旅芸人「規模はそこそこだが戦士の憩いの街だな。酒場が多い。けっこう稼げる街だ」

チムア「…僕は芸の間は荷台にいていい?人間に見られたくない……」

旅芸人「…ああ、俺の活躍は中からみてろよ?」

旅芸人「さあさ!よってらっしゃいみてらっしゃい!」

「旅芸人が来たぞ!」

「一年ぶりくらいか?」

「なんの芸をするの!?」

旅芸人「なにがみたい?ジャグリング、パントマイムにアクロバット!リクエスト受付中だ!」

「「「ジャグリング!!!」」」

「アクロバット!」

旅芸人「じゃあアクロバットとジャグリングだな!皆さん楽しんでくれよ!」

チムア「…凄いひと」ソッ

チムア「………」

チムア「ジャグリングって凄いなぁ。あ、バク宙しながらやってる……」

コンドハコノボックスヲソコノオネエサン!ナゲテキテ!!
アリガトウ!オレイニキスヲ…エッイラナイ!?ザンネン!

チムア「…ふふっ」

チムア「………」

チムア「~♪」ボソ

「いいぞー!アハハハ…ハ?」

~♪~♪

「…なんだ?綺麗なうたごえだな」

旅芸人「!」

「お兄ちゃん、これも出し物?」

旅芸人「あ、ああ!自慢の唄い子だ!恥ずかしがりやだから表立つのはいやがるけどな!」

「ほー」

旅芸人「さあ、次はこの駒!うたに合わせて生きてるかのように動き回るよ!」

「おおー!」

ーーーー唄を愛するチムアと生きるために芸をする一人

彼らが出会い人間に新たな歓びを与えるのでした

「街」おわり

ありがと!ファンタジーと思ってくれればおk
師走だから忙しくて更新おくれてる…投下


彼らが迫害されている理由

人間とは違う、ただそれだけであるーーーー

「硬貨」

旅芸人「いやー儲けた儲けた!」ジャラジャラ

チムア「お…つかれさま…」

旅芸人「お前もお疲れさん!」

チムア「僕?」

旅芸人「ああ、うたはすきなのか?」

チムア「……別に」フイッ

旅芸人「あれはお前がいた辺りのうたか?聞いたこと無いうただったが」

チムア「…わかんない。昔からお母さんがうたってたうただから」

旅芸人「へえ」

チムア「お母さんはお祖母ちゃんに教わったって」

旅芸人「受け継いでるんだな」

チムア「うん」

旅芸人「なあ、もしよかったらお前が同行する限り今回みたいにうたわないか?」

チムア「………」

旅芸人「勿論、姿は見せなくていいし、気が乗らないならうたわなくていい」

チムア「………」

旅芸人「そんで、手ぇだせ」ジャラ

チムア「?」ソッ

旅芸人「お前のうたに報酬を出す」チャリジャラ

チムア「こんなに!?」

旅芸人「ああ、普段よりかなり稼げたからな。チムア、お前のお陰だ」

チムア「!」

旅芸人「?どうした?」

チムア「…なんでも」フルフル

旅芸人「ま、次の街までに考えておいてくれ」

旅芸人「じゃ、買い出しするか!必要なものはあるか?」

チムア「…ない」

旅芸人「んじゃ留守番しとくか?」

チムア「………」コクッ

旅芸人「よし、待ってろよ!」

チムア「あ!」

旅芸人「なんだ!?」

チムア「コルトが茶色いのより緑のご飯がいいって」

旅芸人「はは、そっか!わかった!行ってくる!」

チムア「…気を付けて」ボソ

ーーーー馬車から一人が飛び出すのを見届けます

そして一匹は手の中のものをそっと撫でるのでした

「硬貨」おわり

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