「ジャスミンティー」 (76)




ずっと気になっていたんダ……


なんで私達、そのジャスミンティーを飲んじゃいけないノ?




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387366755

・アイドルマスターシンデレラガールズ 楊菲菲の短編SSです。

※地の文7割、セリフ少なめです。苦手な方はスルーかそっ閉じしてください。
※心情描写中心なのでキャラ崩壊に見えるかもです。

・書き溜め3割、ゆっくり書いていきます。

よければお付き合いください



1.

大きなLIVEのアト。有名番組に事務所の誰かが出演した2,3日後。
大体一ヶ月に一度のペースで、

その綺麗な赤いパッケージは事務所に現れるんダ。



あんまり詳しくないけど、多分そこそこお高いやつだネ。

頂きものだからと棚の一角に飾られているけれど、
私達の前でそれが開封されるのを見たことはなかった。

ちょっと飲んでみたい、とは思うヨ。
言った事はないけど。

せめてスレタイにモバマスとか付けないと開いてすらもらえないと思うの



『ファンメイドの飲食物を勝手に食べちゃダメ』
なんて事はこのギョーカイでは当たり前だし、
そうでなくてもいただいた封筒や小包は必ずプロデューサーやちひろさんがチェックしてくれるから、直接私達が触れることはめったにないヨ。


触っても大丈夫な物以外はリストアップだけされて原則処分されるし、
よっぽどの物以外は私達個人には手渡されず、

大丈夫だとしてもほとんどは事務所に飾るだけだったり、
大勢のいる場で消費される。





きっと、私達の目には触れなくても、沢山のものが届けられている。
沢山の思いが届けられている。

だからそーゆー物に対しては、
『モノよりキモチ』だと思って、頂いたことへの感謝を忘れた事はないヨ。
実際には受け取れなくっても。



ファンのみんなだってある程度は心得てくれているみたいだネ。

たまに、
『フェイフェイちゃんに似合うと思うよ!』
『和風チャーハンなんてどうですか?ボクはコレを愛用してます!』
なんてお手紙とともに小物やなんやらが同封されてる(されてたけど、もちろんチェックが入るから渡されるのはもっと後だネ)
こともあるけど。

でも大抵は、
「事務所的に大丈夫そうならぜひ使ってみて下さいね」
という文章といっしょに、売っている場所の紹介や詳細が書いてある程度。





だから、いままではあんまり気にしていなかったんダ……



プロデューサーとちひろさんが、
そのジャスミンティーを飲んでいる姿を見るまでは。

所用(デレラジ聴く)でちょっとストップ

>>6
あとで宣伝させてもらいに行くつもりです



2.

「カフェインの含有量が多いんですよ、意外と」

一緒にレッスンをしていたユキノが、そう教えてくれる。




紅茶が好き、と公言しているユキノなら、
事務所で二人と一緒にお茶をしたことがあるカモ……
もしかしたらあのジャスミンティーも?

と思って聞いたら、
否定と一緒に、意外な角度から返事がかえってきた。

ビックリ。



「コーヒーや、私の好きな紅茶もそうですけど、
清涼飲料水の中でもこういう類ってカフェインを多く含んでいるんですの。
そのせいもあってか、女性でカフェイン中毒になる人って結構多いらしくって」

かふぇいん?
なんだかよくわからないけど、プロデューサーはちょっとかふぇいん中毒かもって言ってたネ。
なかなか眠れなくなる、んだっけ?

ちゃんと寝ないとダメだヨ、プロデューサー。


「カフェイン自体に目を醒ます作用が有りますから。
 それに、中毒とまでいかなくても、
 あんまり摂取しないほうがいいのは確かですわ。
 
 例えば、女性ホルモンを活発にさせる作用があるので、
 あんまり摂り過ぎると健康に影響が出るって言われてて…
 
 お肌が荒れちゃったりだとか。
 利尿作用があって、カラダを冷やしちゃうのもよくないことですし。
 
 体調を崩したり、肌荒れやニキビを気にしないといけなくなったら大変でしょう?」




なるほどネー。
でも、ふぇいふぇいまだ若いから、すこしぐらいヘーキだしそんなに肌荒れないヨ?

「…… そうですね、
 ちょっとうらやましいですわ。

 でも、多分ですけど、それ以外にも理由はあるかと。
 フェイフェイさんは、ジャスミンティーの作り方って知ってますか?」




ジャスミンティー。
茉莉花茶(モーリーホアチャー)とか香片茶(シャンピェンチャー )と呼ばれる、中国茶のひとつだネ。

ジャスミンの花自体からお茶が作られるわけではなく、
いわゆる”フレーバーティー”の一種として、
茶葉に花の香りを吸着させて作る。

そう言えば昔、学校の遠足で製造工程を見に行った事があったヨ。



乾燥させ、低温に保たれた茶葉の層の上に、開花したてのジャスミンの花をふんだんに積み、
熊手のような器具で急いでかき混ぜる。
遠巻きに見ていた私達にまで漂ってくる素敵な香り。

皆と一緒に、『很香!(いい香り!)』などとうっとりしていたネ。

緑茶で作るのが一般的だけど、高級なものだと、白茶やウーロン茶を使うこともある、だっけ。



「ただの推測ですけれど、あれはウーロン茶を使ってるものなんでしょうね。
 ウーロン茶は油を吸収する働きが強いので、喉の油分を奪ってしまってよくないんです。
 
 さっき言ったカフェインも同様に喉を痛める原因になるから、
 もしかしたらそういう事を考えて、
 アイドルの私達には飲ませないようにしてるんじゃないかしら」

確かに、歌のレッスンの時はトレーナーさんたちも色々気を使ってくれるネ。
特製ドリンクを作ってくれたり、飴を用意してくれたり、
とにかく『喉を大事に』って。

そーゆーことだったのかな?
それなら、ちょっと納得がいったヨ。




「せっかくなので、確かめてみませんか?
 
 たしかあれ、日本語のラベルが貼ってないので、
 成分表示をフェイフェイさんに読んで頂きたいのですが」

ということで、私とユキノは談話室へと戻った。




未開封のパッケージがひとつ、ちひろさんの机の上においてあった。
先週のLIVEバトルの後で届けられたのカナ?


パッケージの裏側を確認する。
どうやらユキノの予想どおり、ウーロン茶を使った物らしい。
赤い背景に白いジャスミンの花が映える印刷。

綺麗だネ、となんとなく光にかざして見ていたら、



帰ってきたちひろさんと目が合ってしまった。




「それは触っちゃダメです。今すぐ、離して」

ちひろさんはとても険しい顔で、そう言った。

一日半ほど何も書けてないorz

…夕方から何とか再開します。後半全部書き直すので遅くなるかも

誰もみてないかもしれませんがちゃんと最後まで書きます



3.

いつもニコニコしているちひろさんのこんな表情を見るのは初めてだった。
怒られる、と身構えたけど、なんだか様子がおかしい。

何かを隠そうとしているみたい。
そんな気配がするヨ。



とっさのことで声が出せなかった私の代わりに、ユキノが弁解してくれる。

「勝手に扱ってしまってごめんなさい。
 あの、私がフェイフェイさんにお願いして、
 そのパッケージの中国語を読んでもらおうと思ったんです、ですから……」


「いいから、それを置いてください」


怒気よりも困惑を強く含んだ声に、思わず手をおろしてしまう。




変だネ。
怒られるべきは私たちなのに、


「ええと、ちひろさん?」


なんでそんなに狼狽してるんだろう。
そんなに触っちゃマズイものだったノ?



堂々と目の触れるところにおいているのに。
何か怪しい匂いがするネ。


というか、そんなものなら処分すればいい。
わざわざ見えるところに飾ったりしないで。

なのに、プロデューサーとちひろさんはたまに飲んでるみたいだし。
なんだかあやふやダヨー。



「確かに、私とプロデューサーは時々いただいていますけど……」

「だったら、安全なんでしょう?
 
 それなら、私達が飲んでは、
 ひいては触ってはいけない理由はないと思うのですが」

もしかして、とっても美味しいから二人で独占してるノ?


「そういうことではなくて……
 とにかくだめなんです。
 
 あなた達には、知ってほしくないの」



知ってほしく、ない?

何をだろう。どうして。
そもそも、このジャスミンティーは、どこから……

教えてほしいナ、ちひろさん。
なにを『知ってほしくない』のか。



失言だったと気づいたのか、ちひろさんがハッとする。
あれ?
なんだか立場が完全に逆転してしまったヨ。



「あの……
 
 疑いたくはないのですが、
 なにか疚しいことでもあるんですか?
 
 違いますよね、ちひろさん」


そういってじりじりと近づいていくユキノの眼力にちひろさんが怯んでいる。
あ、折れたネ。





「分かりました……
 ちゃんと説明します。
 2人が納得してくれるかどうか、わからないですけれど」

「すみません、強要したようで。
 でも、私たちだって理由を知りたいんです」

ちひろさんを責めているようで申し訳なくなってきた。
でも、変な疑いを残したくはない。
ちゃんと、知りたい。

「……簡単にいうと、
 このジャスミンティーは、私とプロデューサーにとっての『戒め』みたいなものなんです。

 だから、届くたびに見えるところにおいて、
 私達だけで消費しています」



『イマシメ』…… 少し耳慣れない日本語ダネ。
たしか、教训・箴言って意味。

知らない誰かから送られた〈モノ〉に対しても使える言葉なのカナ?
少し混乱する。


「えっと、何から説明したらいいでしょうか。
 
 実は……
 これ、前に私達がいたプロダクションからの差し入れなんです」




4.

前のプロダクション?
そういえば、プロデューサーはどこかから独立した、って聞いたことがあったネ。

「知っていたかどうかわかりませんが、
 このプロダクションが出来る前、
 私とプロデューサーさんは別のプロダクションで働いていたんです。
 
 その、名前とかは言えませんけど、
 今は少し落ち目ですが、そこそこ大手で有名な。
 
 もしかしたら、二人もLIVEバトルなどでそこのアイドルと会ったことがあるかも知れません」



ユキノはなんとなく思いあたったみたい。
ほかのプロダクション……
意識したこともなかったヨ。

うちの事務所だけでも所属アイドルがいっぱいいて、
正直ほかの所のアイドルなんて、ほとんど覚えていない。


「有名だったんです。
 いい意味でも悪い意味でも。

 私達のような末端の一社員にすべてが把握できたわけではありませんが、
 こことは違って、人の出入りが多いプロダクションだったんです。
 引退も引き抜きもそれ以外でも。
 
 プロデューサーも、しょっちゅう担当アイドルが変わる、って嘆いてました。


 当然、黒い噂も多くて。
 経理に少し係わっていた私にはなんとなく不自然なお金の動きがあることを見て取れましたし、
 その、あまり口に出したくないような『営業』もあったみたいで」




でも、ここにいるっていうことは、ちひろさんはかかわってないんダヨネ?
たぶん、プロデューサーも。


「係わっていたら、きっとこの業界には残ってなかったでしょう。

 いえ、被害者というか、そういった形で引っかかったことはあって、
 その結果としていまここにいるんですけどね」


「なにがあったのですか?
 差支えがなければ、教えていただいてもよろしいでしょうか」



「当時プロデューサーが受け持っていた担当グループが、巻き込まれかけたんですよ。

 スケジュール調整を一手に引き受けていた私が、
 提出されたスケジュールと
 プロデューサーの把握しているスケジュールとの食い違いに気が付いたんです。
 
 それを知って全てを察したプロデューサーが、
 烈火のごとく怒って、上に噛みつきに行ってしまって」



ちひろさんは、ところどころぼかした表現をしてくれている。
でも、なんとなくわかって、ちょっとショックダヨ……

本当にそういうことがあるなんて。

平和ボケ、ってヤツなのかな。
このプロダクションじゃありえないことだったから、
すっかり忘れていた。
そういう業界だってコト。



「結局未遂で済みはしましたが、その子たちはアイドルを辞めてしまい、
 プロデューサーは干されてしまって。

 私がタッチしていたことには気づかれなかったため不問でしたが、
 当然そんな職場で働いているのが苦痛になってきてしまいました。


 そういった流れの中で、今の社長と知り合って。
 その時はまだ〈社長〉じゃなかったんですけどね。

 でも、この業界のことに詳しくて、
 当然このような事態についても把握していらっしゃったようで。
 君たちのやったことは正しいと、そう言ってもらえたんです。
 
 それから少しして、
 新しくプロダクションを建てるから2人とも是非来てほしい、と誘っていただいて。
 救いの神に見えた私達は一も二もなくその誘いに飛びつき、

 逃げるようにして、このプロダクションに移ったんです」


中途半端ですが、書いててリアルに胃が痛くなってきたので中断
明日また再開します



沈黙。
思わぬところで、プロデューサーとちひろさんの過去を知ってしまった。

私達が、
このプロダクションがそういったコトと無縁だったのは、
きっとちひろさんとプロデューサーがそれを許さなかったからなんだ。

当たり前だと思っていたけれど、私達は色々なものから守られている。



でも。
それとこのジャスミンティー、何か関係あるノ?

……トクベツな商品、とか?
そんな感じはしないけれど。

ユキノは何か考えこんでいるけど、私にはさっぱりつながりが見えないヨ。



「なるほど、その社長が毎回これを送っていらっしゃるのですね…
 大体、事情はわかりました。

 しかし、『戒め』というのは考えすぎな気がしませんか?」

「いえ、あの人は……
 あの社長は、そういう人ですから。


 これが届けられているのは、恐らくこのプロダクションだけではありません。
 
 物品のリストには度々あがっていましたし、
 
 機会があるごとに、複数のプロダクション、
 そして時にはアイドル個人に宛てて贈り物がされていた事は把握しています」



・・・

いつの間にか、私の理解を追い越して話が進んでいる。

たぶん日本人特有なんだろう、あやふやでぼかされた会話。
主語を省いて、
〈あれ〉〈これ〉を多用して、
あっちこっちに寄り道して。

流れを察することを前提に筋書きを進めていく話し方。

日本に来てしばらく経っているけれど、未だに慣れないネ。



何の確認かわからない会話がしばらく続いたあとで、
ようやく一番知りたかったコトに流れが向いてきた。


「それで、なんでジャスミンティーなんでしょうか?
 2人を疎ましく思うなら、ハンカチを送ってもいいでしょう。
 お茶を送るのなら、日本茶だと思いますの。

 そもそも花に関係するものを送るのならば、花言葉ぐらいひいて選ぶはずです。
 なぜよりによって、ジャスミンを選んだのでしょう」



「……皮肉なんだとおもいます、ひとつは。」

皮肉。
皮肉骨髄のほうじゃなくて、
《正反対の事を言って遠回しに・意地悪く非難すること》
って意味で使うんだっけ、ニホンゴだと。

ちょっとわかった気がするヨ。
『アイドルと言うものは、このジャスミンの花のように綺麗で無垢だとでも思ってるのかね』
って言われてるってコト。


さっきの話と総合すると、なんとなくつかめる。
……つかめたと思ったのに、まだ続きがあって。



「でもそれが全てではないんですよ。
 
 強い嫉妬心が、憎しみがこもっているんです。
 自分たちよりも成功しているものの全てに。
 
 あの場所を捨てた私達が、同じ業界で上手く生き延びている事に。
 
 誰の身も傷つけることなく、手を汚すことなく成功を掴んでいることに。」



隣で、息を呑む音。
ああ、またわからなくなった。


「……ちひろさん、
 おっしゃっていることが、あまりにも飛躍していますわ」

「わかっています。
 考え過ぎかもしれない、負い目を感じて意識しすぎているのかもしれない。

 でも、私もプロデューサーも気づいたんですよ。
 たったそれだけのことで、何度も送ってくるはずがないって。
 
 えっと、ジャスミンティーの効能について、二人は知っていますか」



ジャスミンティーの効能。
さっきユキノと話していたから、大体は知っているヨ。

だけど、その中からだと思い当たるようなことはなかったので、
だまって次の言葉を待つ。



「脂肪分解促進、二日酔いの解消、覚醒作用、消化促進、殺菌作用。
 色んな物をリセットしてくれるんです。

 市販のものでなく、中国から取り寄せられたものを。
 特にそういった効果が強いと評判の物を、
 わざわざ選んで送ってきているんですよ。
 

 オーディションでこちらのアイドルが通った時。
 次の仕事に繋がるような、大きな仕事が終わった後。


 つまり、簡潔に言うと、
 『いつまでも調子に乗るな、さっさと目を覚ませ』ってことです」



自分の所の失敗と、このプロダクションの成功が噛み合ったタイミングで送ってくるってコト?
逆恨みみたいな感じかも。なんとか理解できる。
だけど、それだと違和感があるんだヨ。


「何か仕込むわけでもなく、新品を送ってくるということは、
 わざわざ、警告をしているということでしょうか。
 
 なんだかそれって……」

憎しみと紙一重の感情も、込められている気がして。




「もしかしたら、愛されていたのかもしれませんね。
 私かプロデューサーかわかりませんが。
 
 だからこうしてわかるような形で送ってくるのかもしれません。
 そういう風に取ることも出来ます。」


一時の成功に酔うな、脂が乗っているだけだ。
上手い例えと忠告。
ナルホド、それで『イマシメ』なんだネ。



「ですから、私達はこれを捨てられず、『戒め』として受け取って
 体に入れているんです。
 複雑な感情をちゃんと受け止めるために。

 でも、あなた達にはただの敵意しか向けられていません。
 あちらのアイドルを蹴落として、輝く舞台へと登っている敵なのですから。」

ライバルといえば聞こえがいいけれど、
後から出来た新興プロダクションのアイドルに、枠を取られ、勢力を伸ばされる。

自分たちにとっては、あの手この手で手に入れたであろうチケットを、
難なく奪っていったように見えるのかな。



「想いを込めたものって、伝わるんですよ。
 良い物も、悪いものも。
 
 ですから、あなた達にはコレを触らせたくなかったんです。
 
 ……全て伝えてしまいましたが、
 本当は知らないままでいて欲しかったとも思っています」


『想いは必ず伝わる』

……プロデューサーがいつも、LIVEの前に言ってくれる言葉の一つ。
一生懸命、ココロを込めて歌えば、必ずお客さんに伝わるから、って。

身を持って知っているから、私達は頷くしかなかった。




「ごめんなさい、重たい話をしてしまって。
 
 ……これからは、もう少し気を配るようにします。
 まさかみなさんがそんなことを気にしてると思わなかったので。


 さあ、そろそろ帰りましょうか。
 さっきの話は、くれぐれも他言無用でお願いしますね」


知らぬが花、だったんだネ。
気まずい空気が残ったまま、事務所を出る。

会話も出来ぬまま、ユキノと一緒に寮へと帰った。


※一旦中断、ご飯食べてからまた続きを書きつつ投げます。
あと10~15レスぐらいで終わると思います、恐らく

重たい。ところどころ乱文でごめんなさい



5.

晩。
女子寮の自室。
薬缶がこぽこぽと小気味よく音を立てるのを、風呂あがりの頭でぼーっと聴く。

たしか、ママから送って貰ったのがまだ残っているはずだヨ……
あ、あったあった。

隅っこにおいてあるダンボールから、ガラス製の茶器と、まん丸の茶葉がいくつか入った銀の袋を取り出す。



"露 华 洗 出 通 身 白 沉 水 熏 成 换 骨 香
(真っ白なジャスミンが体の内で花を咲かせ、その蜜で体の外まで香りを漂わす)"

ジャスミンティーが嗜好品として広まり始めた南宋のころ、叶廷圭という詩人がその素晴らしさを唄った詩。
学校で習った時から好きだったから、諳んじている。



パパもママも好きだったから、昔からジャスミンティーはよく飲んでいた。
だから、ずっと気になっていたんダ。

でも、こんな事になるとは思っていなかったヨ……



薬缶が笛を吹いて、意識がこちらに戻る。
沸かしたてのお湯でないとネ。

こぽぽぽぽ。

透明な茶器の中で、茶葉がゆっくりと花開く。

http://i.imgur.com/0LUrnkh.jpg


丸められた茶葉の中に綺麗に収められていた花が開くこの瞬間が、たまらなく好き。




ジャスミンの花言葉は……
〈愛嬌・素直・無邪気・優美・純真無垢〉。

ママがいつも、ふぇいふぇいに似合う花ネ、と言ってくれた。


そんな素敵な花に、どうして嫉妬の念なんて込められるんだろう。



【東方美人】

大好きなこの工芸茶の名前。

私が憧れ夢見た日本のアイドルは、まるでこの花のように、
舞台の上で幻想的にゆらゆら揺れていた。

彼女もずっと、あんな感情をぶつけられていたんだろうカ……?

それでも彼女はずっと輝き続けていて、

夢を与えてくれて、私がアイドルになったキッカケをくれた存在だった。
今はどこにいるのか、わからないけれど。



故郷香港から北東。
時差にして1時間、約3000kmほどの距離にあるこの場所、東京。

時を越えて同じ場所にいるというのに、
私は何も知らないままで。



ずっと守られていた。
表面だけを見て、人の優しさにだけ触れて、

それが全てだって、勘違いしていたンダ。



触れたいナ。
今度は好奇心だけではなく、自分のために。

いつまでも守られてはいられないから。
いつまでも、2人にだけ背負わせたくはないから。



『清濁併せ呑む』だなんて言葉を思い出す。
善も悪も分け隔てず、来るがままに受け入れられるように。

ドロドロした感情も、目を逸らさずに受け止めたい。
それでダメになったとして、

ふぇいふぇいには向いてなかった、って、それだけのコト。

いつか知ることだったのなら、
今日それに触れてしまったのなら。



明日の朝、もう一度ちひろさんと話そう。
頼んでみよう、ちゃんと。


そう決心をして、ゆっくりと目の前のジャスミンティーに口をつけた。




[了]



終了です。

Co,Paと書いたのでCuのお気に入りの子を、と思ってフェイフェイを。
フェイフェイはガチャでの遭遇率からffdyだなんて言われますが、
繚乱でキュンと来て、ハートフェルトパーティーで惚れなおした私みたいな人も多いのでは。

日本のアイドルに憧れてやってきたフェイフェイにとって、
周りの目は、文化の違いはどううつったんだろう、と思って書き始めたのに、
なんだか重たくなってしまってすみません。

あと、雪乃さん再登場おめでとう。書き始めた後だったからびっくりした。


すごく胃に悪かったので次は明るいの書けるように頑張ります。
クリスマスとか。



蛇足1:贈り物において、

ハンカチ…漢字で書くと「手巾(てぎれ)」→縁を切る、お別れをする

日本茶…弔事などで使われるため、お祝いには不適切


蛇足2:ジャスミンティーに特に悪い意味はありません。
    普通に飲むのであれば何も問題ありません。むしろ健康に良い。

    ただ、安物だと匂いがキツくてつらかったり、
    (ジャスミンに限らずハーブ系は)体質に合わなくてダメ、ということはあるかもしれません。

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