杏「双葉杏の、NLSラジオー」 (26)


杏「おはニートー。双葉杏だよ。全国50万人のニートの皆、今日も元気に無気力してるー?」

杏「そろそろ夜型ニートは行動を開始する時間。深夜に食べるカップめんの味は格別だよね」

杏「さて、このNLSラジオはラジオの前の皆の快適なニートライフをサポートする目的で放送されてるよ」

杏「なりたてホヤホヤの新人も10年来のベテランも必聴、ニートのための唯一無二のラジオ。それがNLS」

杏「いつも通りゲストは無し。パーソナリティは私、双葉杏でお送りするよ」

杏「それじゃあ今日もいってみよー。最初はこのコーナー」

杏「『つうこんのいちげき!』」


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杏「おおニートよ、しんでしまうとはなさけない」

杏「このコーナーではニートの皆が周りから浴びせられた罵声の破壊力を、杏が独断と偏見でランク付けしていくよ。単位は1ニートン」

杏「破壊力ナンバーワンに選ばれたリスナーには杏から労りの言葉をプレゼント。わーぱちぱちー」

杏「んじゃ一通目は東京都から。ラジオネーム・無職Mk-2さん」

杏「『杏ちゃん、おはニート』……はいおはニート」

杏「『NLSラジオ、いつも楽しく拝聴しています』……」

杏「『今回は破壊力のある罵声を募集しているとのことですので、僕が言われて一番キツかった言葉を投稿させて頂きます』」




杏「『アンタなんか生むんじゃなかった、どうして生まれてきたの!』」



杏「『この言葉を母親から投げかけられた時初めて目の前が真っ暗になる感覚に襲われました。かなり破壊力高いと思います!』」

杏「ってことだけど……んー……この言葉ってさぁ、隙だらけだと思うんだよね。感情が先行してて、理屈が追いついてない」


杏「いや、杏も何回か言われたことあるし、確かに最初に言われた時はすっごく傷つくんだけど」

杏「二回目には『こっちだって産まれたくなかったよ。無計画に出産したのはお母さん達だよね?』って返しちゃってたなぁ」

杏「まぁその後それを聞いたお母さんから包丁突きつけられて警察沙汰になったりするんだけど……それはそれとして」

杏「産む側に産まないっていう選択肢はあるけど、産まれる側には選択の余地が無いもん。悪いのは最悪を想定しなかった産む側だよ。それがニートの理屈」

杏「って事で正直これはあんまりキツくない。慣れれば確定で反撃出来ちゃうから、破壊力は……20ニートンくらい?」


杏「それじゃあ次のお便り。秋田県にお住いのラジオネーム・クラゲ以下さん」

杏「『杏ちゃん、おはニート!!!!!』……おはニート。なんか無理に元気出してるっぽいね、躁鬱の気がある人?」

杏「『僕は昔から要領が悪くあまり物覚えが良くないのですが、それにイラついた母が度々吐き出してくる罵声を投稿します!!!』」



杏「『チッ……少しは頭使えよ。アンタ若年性アルツハイマーなんじゃないの!?』」



杏「『初めて言われたのは小学3年生の時でしたが、若年性アルツハイマーという言葉の威力に愕然としました!!まさに痛恨の一撃だと思います!!』」

杏「あー……いいねぇ、いい罵声だねぇ。これ杏的には結構高評価だよ」

杏「これの素晴らしい所は2つあるね。まず言葉の選び方だけど、小学3年生の自分の息子に向かって若年性アルツハイマーって言える人はそうそう居ないよ」

杏「言われた側にしてみればまず意味が分からないよね。でもなんとなく恐い。具体的な病名を挙げる事によって破壊力を底上げしてるから、単に”バカ”って罵るよりずっと効果的だよ」

杏「次にこれを繰り返し言われた、ってとこ。人間の思い込みの力って本当に凄くて、何度も言われるとそれが心と体に擦りこまれるんだよね」

杏「本来健康なはずの人が、だんだん自分は本当に病気なんじゃないか、頭がおかしいんじゃないかって疑い出して、いつしかホントにかかっちゃう。病は気からってよく言ったもんだよ」

杏「って事でクラゲ以下さんの罵声の破壊力は……70ニートン。結構いいね」


杏「次のお便りは鹿児島から。ラジオネーム・ゴミ箱の中のティッシュさん」

杏「『杏ちゃん、おはニート。夜型の僕はこれから新聞配達の音が聞こえてくるまで好きなゲームに興じます』……ニートライフエンジョイしてるね」

杏「『そんな僕が姉に浴びせかけられた罵声の中で最も記憶に残っているものを投稿します。是非是非ランク付けしてください!』」



杏「『アンタキチガイなのになんで障碍者認定してもらえないのよ……重度なら年金くらい貰えたのに……』」



杏「おお、中々。実際に重度の障害を背負って暮らしている人とその家族の事を全く考慮してない無造作な一撃だね。いわゆる無拍子」

杏「自分の弟が健常者と障害者のボーダー……明らかに普通の人よりも欠如している部分があるのにサポートはしてもらえない」

杏「そんな一番割を食うところに居るのが許せないんだよね」

杏「最早まともになる事を期待してないってのも高ポイント。きっと全てが手遅れなんだね」

杏「ふむ……それじゃあゴミ箱の中のティッシュさんの罵声の破壊力は……65ニートンってとこかな」


杏「さて、今回の『つうこんのいちげき!』のお便りはここでおしまい。最も破壊力の高い罵声を浴びせかけられたクラゲ以下さんにはこの言葉をプレゼントするよ」

杏「クラゲ以下さん。若年性アルツハイマーになるのは、主に40代から50代だよっ」

杏「……ま、杏が言っても何の慰めにもならないと思うけどね」

杏「今回漏れてしまった皆もこれに懲りずにどんどんお便り送ってね」

杏「ニートでいれば浴びせられる罵声のボキャブラリーには事欠かないだろうし。杏はいつでも待ってるよ」

杏「以上、『つうこんのいちげき!』のコーナーでしたー…………はぁ」

杏「疲れたー…………うぇ?分かってるよ、ちゃんとやるってば」


杏「んじゃ、次はこのコーナー」

杏「『ニート川柳~冬景色~』」

杏「このコーナーは読んで字の如くニートがニートの心を詠む、風流なニート川柳を募集するものだよ。最優秀作品には杏から太鼓判をプレゼント。すごーい」

杏「よし、早く終わらせたいからテンポよくちゃっちゃと行っちゃうよ。まずは神奈川県・割れた貯金箱さんの一句」

杏「『年下の 野球選手と 比較され』」

杏「テレビによく露出する”理想的子供”としてニートの引き合いに出される高卒プロ野球選手。いくら羨んだって入れ替わるわけじゃないのにね」


杏「次は……広島県・湿ったポテチさんの一句」

杏「『自己弁護 止まぬ自分に 自己嫌悪』」

杏「生きていくためには自分を守らないといけない。なのに、自分を追い詰めなければ生きていけない。そのどん詰まりの中で身動きとれずにいるのがニートなのかも」

杏「愛媛県・腐ったみかんさんの一句」

杏「『兄弟が みなエリートで 俺ニート』」

杏「身近に比較する対象が居るってのはニートにとってとんでもない苦行だね。語感の可笑しさの中に哀しみが染みてくるいい句だと思うな」

杏「次で最後かな……北海道・腐肉さんの一句」

杏「『言わずとも 出てくる飯に 泣き笑い』」

杏「今日も働かず、学ばず、成長せず……それなのに食べるご飯はどうしてこんなにも美味しいんだろう。そんな感じ?」


杏「それじゃ、今回の最優秀賞を発表します。最もいい感じな川柳を詠んだのはー……」

杏「愛媛県・腐ったみかんさん。笑いの要素が含まれてるのがいいね。風流を感じたから、杏から太鼓判をプレゼントするよ」

杏「このコーナーでは全国のニートの皆の川柳を大募集してるよ。ぱっと思いついたら推敲なんてせずに送ってね」

杏「お次のコーナーは……っと」

杏「『ニートの……フ・シ・ギ♪』」


杏「ニートだって人間。分からない事、知りたい事があって当たり前だよね。新人なら尚更、ニートっていう生き物やその家族の生態について知識を深める事は大事だよ」

杏「このコーナーではそんな新人ニート君やニートの卵達の質問に、杏が分かる範囲で答えていくよ」

杏「早速届いてる新潟県・蛆虫さんの質問に答えるよ。なになに?」

杏「『杏さん、おはニートです』……おはニート。蛆虫さんは年下なの?」

杏「『ニート一周年なのですが、かねてから疑問に思っていたことがあります。何故親は年始のあいさつにニートを連れ出すのでしょうか?』」

杏「『話題が説教だらけになる事は目に見えてますし、お互い嫌な気持ちになるだけで誰も得をしないと思うのです』」


杏「蛆虫さん、良い所に気づいたね。そう、これは全く不合理。だからホントは親だって連れて行きたくないんだよ。親戚だって顔合わせたくないよ」

杏「でも誰もそれを面と向かって言う事が出来ないだけ。正月は集まらなきゃいけないっていう風習に仕方なく従っているに過ぎない」

杏「だから蛆虫さんがこの不合理を解消するなら、朝イチでネットカフェに入り浸る。空いてなかったら町に繰り出す」

杏「『僕が居る事で場の空気を悪くしないように』っていう気遣ってる風の書置きがあればモアベター」

杏「ただその場合、家に帰ってみたら玄関の鍵が開かないなんて事も十分起こり得るから対策は万全にしておいてね。杏からのアドバイスだよ」

杏「……とまぁこんな感じで、些細な疑問でもちゃんと答えるよ。一応。駄目元でお便り送ってみてもいいんじゃない?」

杏「以上『ニートの……フ・シ・ギ♪』のコーナーでしたー」


杏「………………………………ふぅ」

杏「疲れた。もー無理。これ以上やったら過労死しちゃう。今日はここまででいいでしょ?」

杏「夜型ニートは頑張って。昼型ニートは明日に備えてもう寝よう」

杏「このラジオは不定期放送だから、あまりにも暇で死にそうな時に聴いてみてねー。内容が更新されてるかもしれないし。されてないかもしれないけど」

杏「現状のコーナーへのものじゃなくても、NLSラジオではニートの皆からのお便りはどんなものでも随時募集してるからねー」

杏「てことで、エンディングー。……曲は倉橋ヨエコで『夜な夜な夜な』」

杏「ふぁぁ……んじゃ、おやすみー……」

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