宥「玄ちゃんの皮あったかぁーい」憧「ひっ!?」(205)

穏乃「憧。迎えに来たぞー!」

憧「……」カキカキ

憧【おはよう。シズ】

穏乃「おはよう憧! 一緒に学校行こ!」

憧「……」フルフル

憧【あたしまだパジャマだから先に行って】

穏乃「着替える時間ぐらい待ってるって」

憧「……」コクン

憧【ありがとう。それならそこで座って待っていてくれる?】

穏乃「うっす」

穏乃(憧。やっぱりまだあの時のショックで声は出せないままか)

穏乃(筆談自体は別にいいんだけど、早くまた憧の元気な声が聞きたいな)

穏乃(とはいえ、憧がああなっちゃうのも無理もないよね)

穏乃(昔なじみの人が殺されるところなんて見ちゃったら、そりゃ……)

穏乃(私だってショックで吐きまくったし、未だに肉が食べられないもん)

穏乃(……あの日)

穏乃(部室でいったい何が起こったんだろう)

穏乃(私が到着した時には全てが終わった後だったけど、それでもあの光景は忘れられない)

穏乃(血だまりの中に気絶して倒れこんだ憧)

穏乃(そして、変わり果てた姿になった玄さん)

穏乃(本当に何が……)

穏乃(あの日以来行方不明の宥さんは、今どこで何をしてるんだろう)

憧「……」トントン

穏乃「あ……。悪い憧。ぼけっとしてた」

憧「……」フルフル

憧【待たせたのはあたしなんだから、シズが謝ることない】

憧【そんなことより行こ】

穏乃「そうだな!」

憧「……」

穏乃「そういえばさ」

憧「……?」

穏乃「最近のお前って、夏前よりもスカート長いよね」

憧「……」

憧【そういう気分で】

穏乃「心境の変化ってやつかー」

穏乃「でもまだ熱いし、その長さだと暑くない?」

憧【意外と大丈夫】

穏乃「そんなもんかー」

穏乃「ま、そんぐらいの長さのほうが、清楚っぽくていいと思うけど」

憧「!」

憧【シズは今のスカートの長さのほうが、前のあたしの着こなしより好き?】

穏乃「どちらかというとね」

憧【よかった。だいぶ長さを変えたから、似合ってなかったらどうしようって少し不安で】

穏乃「憧は割と何着ても似合う方じゃない」

憧【そうかな】

穏乃「うん。私なんか似合う服少ないからなー」

憧【シズだって色々お洒落できるよ】

憧【今度一緒に服でも見に行く?】

穏乃「あはは、いいよー。ガラじゃないって」

穏乃「あー。平和だなー」

憧【4限に数学の単元テストあるのに?】

穏乃「マジで!?」

憧【マジで】

穏乃「やっばー。学校ついたら悪あがきのテスト勉強でもするかなー」

憧「……」コクコク

憧【範囲狭いし付け焼刃でもやらないよりはマシなんじゃない】

穏乃「せいぜい足掻いてみるか!」

びゅおおおおおおお

穏乃「うおっ! 強い風!」

憧「……」ガタガタ

穏乃「……ん? 憧?」

憧「……」ガタガタ

穏乃「大丈夫? なんかめちゃくちゃ顔色悪いよ?」

憧「……」ハッ

憧「……」

憧【ごめん。なんでもない】

穏乃「そう? 私でよかったらなんでも聞くからね」

憧【ありがとう】

穏乃「お礼なんかいいって」

憧【シズは優しいね】

穏乃「今更ー? 幼馴染の割に気づくの遅いぞ、憧」

憧【調子に乗んな!】

穏乃「でっへっへ。悪い悪い」

憧【でも、最近は本当に助かってる】

憧【シズがいなかったらあたし、学校行けなくなってた】

穏乃「憧……」

憧【あたし、こうして助けられる内にシズへの気持ちに】

穏乃「私への気持ちに?」

憧「……」

穏乃「……?」

憧【やっぱ止めた。これ登校中にする話じゃないわ】

穏乃「ええー!? 途中まで言いかけたのに!」

憧【ま、いつか話すよ】

――――

昼休み


穏乃「終わった……」

憧「……」

穏乃「私の数学人生は終わった……」

憧【そんなもん最初から始まってすらいないでしょ】

穏乃「確かにそうだけどさあ」

穏乃「くっそー! まさか半分も空欄になってしまうとは!」

憧【うーわー。それはまたひどい】

穏乃「あー。絶対成績やばいよー」

憧「……」

憧【今度数学教えようか?】

穏乃「おおお、本当に!? 助かる!」

憧【ビシバシいくぞー】

穏乃「ええー。スパルタは勘弁」

憧【じゃ、優しく手取り足取り教えてあげる】

穏乃「私の知ってる数学は足必要ない!」

穏乃「さってと。昼どこで食う? 教室?」

憧【屋上はどう?】

穏乃「あー。たまにゃいいか」

憧「……」コクン

穏乃「誰か他の人も誘う?」

憧「……」

穏乃「たとえば灼さんとか」

憧「……」ビクッ

穏乃「えーと、嫌だった?」

憧「……」

憧【シズと2人で食べたい気分】

穏乃「あはは、お前私のこと好きだなー」

憧【ばーか】

穏乃「もぐもぐもぐ」

憧「……」モグモグ

穏乃「はぁー。いい天気」

憧「……」コクン

穏乃「この空みたいに、分かんないことが全部すっきりしちゃえばいいのになぁ」

憧「……」

憧【シズ】

穏乃「ん」

憧【内緒の話があるの】

穏乃「内緒の話?」

憧【うん。玄が殺された時の話】

穏乃「えっ!?」

憧【あの時】

憧【部室にいたのはあたしを含め4人だった】

穏乃(4人……?)

穏乃(玄さんが殺された日、私が部室へ行った時には……)

穏乃(部屋には既に「玄さんの遺体」と「気絶した憧」の2人しか見当たらなかったはず)

穏乃(床に転がっていた「宥さんの指紋付き包丁」から、)

穏乃(警察は容疑者を「事件以後行方不明の宥さん」に絞ってるみたいだけど……)

穏乃(憧、玄さん、宥さんを合わせても3人)

穏乃(つまり、はじめはこの3人以外の誰かも部室にいたの?)

憧【警察に最有力容疑者とされている宥姉は、】

穏乃「……」

憧【本当は、】

ぎいいいっ。ばたん

憧「……」ビクッ

灼「あれ。屋上まで風にあたりにきたら、まさか2人もここにいるなんて」

穏乃「あ。灼さん!」

憧「……」ガタガタ

穏乃「……憧?」

憧「……」ガタガタ

穏乃「憧、大丈夫?」

憧「……」ガタガタ

穏乃「大丈夫。大丈夫だよ憧」ギュッ

憧「……」ガタガタ

灼「憧、まだ調子よくないんだ」

穏乃「はい」

穏乃「ごめんなさい灼さん、2人にしてもらえますか?」

穏乃「どうも憧はそのほうが落ち着くみたいで」

灼「……ま、いいけど」

穏乃「すみません」

灼「憧」

憧「……」ビクッ

灼「早く声が出せるようになるといいね」

憧「……」ガタガタ

灼「それじゃあ、またね」

穏乃「また2人になったよ、憧」

憧「……」ガタガタ

穏乃「大丈夫だから。そんなに震えないで」ギュウッ

憧「ひっく、ぐすっ、ぐすっ」

穏乃「私が傍にいるからさ」

憧「ぐすっ、ぐす……」

穏乃「よしよし」

憧「……」

穏乃「少しは落ち着いた?」

憧「……」モジモジ

穏乃「あれ? どうかしたの?」

憧【どうしようシズ】

穏乃「へ?」

憧【漏らしちゃった】

穏乃「漏らし……、え!?」

憧「……」カアアアッ

穏乃「いやでも、別にこぼれたりしてないみたいだけど……」

憧「……」フルフル

憧「……」ピラッ

穏乃「ちょっ、憧!? いきなりスカートめくったりなんかして一体!?」

穏乃「って、あ……」

穏乃「そっか。こぼれてないのはそういうこと」

憧「……」モジモジ

憧【赤ちゃんみたいだよね。さすがに引いた?】

穏乃「ううん。引いたりなんかしないよ」

憧【ありがとうシズ。すごく嬉しい】

穏乃(お洒落好きの憧がこんなものをつけるなんて……)

穏乃(可哀想に。本当に気持ちが参ってるんだな)

穏乃(スカート長くしてたのはコレが理由か)

穏乃「保健室に行って着替える?」

穏乃「そのままだと肌がかぶれちゃうかもしれないよ」

憧「……」フルフル

憧【保健の先生にも知られたくない】

穏乃「そっか」

憧【こんな恥ずかしいことでも話して大丈夫だと信じられるのは、家族とシズだけだよ】

穏乃「憧……」

穏乃「……」

穏乃「ねえもうこのまま学校サボっちゃおうか」

憧【でも】

穏乃「私も付き合うからさ」

憧【本当に?】

穏乃「おうよ! 5限6限なんかより憧のほうが大事だもん!」

憧「……」

憧【ありがとう】

穏乃「サボりだサボりー! 家に連絡いくかなー」

憧【あたしのせいで親に怒られちゃったらごめん】

穏乃「なーに言ってんだか。最初にサボろって言い出したのは私だろ」

憧【あはは。そうだったね】

穏乃「そーそ」

憧「……」カキカキ

穏乃「お。何書いてんの?」

憧「……」

憧【じゃーん! シズの似顔絵だぞー!】

穏乃「わあ可愛いー。って、猿じゃんかコレ!」

憧【てへ】

穏乃「ったくもう」

俺のしずのんが死にそうで怖い

憧「……」カキカキ

穏乃「えー。今度は何」

憧【シズモンに可愛い彼女をつくってみましたー】

穏乃「いやおい、私女なのになんで彼女!?」

穏乃「しかも私と一緒にいる女の子、憧と同じ髪型だ」

憧【どうだ嬉しいだろー】

穏乃「あー。まあ、相手が憧なら楽しそうでいいかもな」

憧「!!」

憧「……」

穏乃「にしても腹減ったー。あんパン食べたい」

憧【お昼食べたばっかだよ?】

穏乃「あんことラーメンは別腹だから」

憧【ラーメンはさすがに違うだろ】

穏乃「そうでもないんだな、これが」

憧【馬鹿なんだから】

穏乃「あ、そうそう。私このまま憧の家までついてっていいかな?」

憧【うん。というか、そうしてくれると本当に嬉しい】

しずのん頑張れ
保守

穏乃「……」

憧「……?」

憧【あたしの顔なんか見てどうした?】

穏乃「なんか、小さい頃と比べて大人びたよなーって」

憧【つーかシズが変わらなさすぎなんだっての】

穏乃「人が気にしてることを!」

憧【でも、あたしはその方が嬉しい、かな】

穏乃「なんで?」

憧【変わらないシズを見てると、ホッとできるんだよね】

穏乃「そういうもんかー」

穏乃「じゃ、また明日な!」

憧【うん。また明日】

――――


「寒いよぉ……」

「玄ちゃんの皮、玄ちゃんの皮」

「……」

「ふぁぁ。あったかぁい」

「あったか……、う、うぐっ」

「玄ちゃん、玄ちゃん、玄ちゃん、返事をして……」

「お姉ちゃんだよ、玄ちゃぁん……」

「時間をおいても狂いっぱなし、なのはいいんだけど」

「いつ正気に戻るかもわからない存在を放置しておくのは、やっぱり大きすぎる不安要素か」

助けて小走先輩

――――


憧「……」

憧(今日は散々だったな)

憧(シズの前でお漏らししちゃうし、それに)

憧(……)

憧(……)

憧(怖い怖い怖い怖い)

憧(怖いよシズ、怖いよ……)

憧(う、うう)

憧「うえぇぇ、ひっく、ひっく、ぐずっ」

憧(助けてシズ……)

憧「……」

TELLLLLL TELLLLLLLL

憧「!?」

憧(メールだ。誰からだろ)

憧(って、あれ?)

憧(なんで宥姉の携帯からあたしにメールが……?)

憧(……)

憧(ああ、そっかぁ)

憧(そういうことか)

憧(アイツははじめからそのつもりで)

憧(あたしを、利用しようと……)

憧(……)

憧(だとしても、行かなきゃ)

憧(あたしが行かないと殺されちゃう……)

――――

松実宥を殺害したと思われる少女の遺書


【シズ。好き】

【大好きだよ】

【こんなことなら今日の登校中に言いかけた時、勢いで告白しちゃえば良かった】

【シズともっといたかった】

【もう今以上だなんて高望みはしない】

【そばにいられればそれで】

【だけどさよなら、シズ】

【私は今から、宥姉を殺した罪を償うために死にます】

【これできっと何もかも終わりにできる】

【お母さん、お父さん、お姉ちゃん、迷惑かけてごめんなさい】

【あたし、もっと生き※※※※※】


ここから先は文字が涙でにじみ、また著しく筆跡が乱れているため、解読ができない

悲しい展開やめちくり~(懇願)

――――


穏乃「嘘だ……」

穏乃「こんなの、嘘っぱち……」

穏乃「憧は誰かを殺すような奴じゃない」

穏乃「憧は、私の知ってる憧は……」

灼「……」

――――

数週間前


玄「う、あ……。な、なんで……?」

レジェンド「お前さえいなければ、お前さえいなければ私は!」

レジェンド「ロクに相手校の研究もできない監督だなんてレッテルを貼られたばかりに、私のプロ行きの道は!」

灼(ハルちゃん。この頃様子がおかしいとは思ってたけど、まさか玄を包丁で刺すだなんて)

憧「ひっ……、ひっ……」

灼(憧は……。相当怯えてるね)

灼(腰が抜けて立つこともできないみたい。その上、おしっこを漏らしてる)

灼(強気な割に案外臆病なんだね、憧。これなら脅しで口封じできるかな)

灼(ハルちゃんを刑務所になんて送らせない)

レジェンド「あ、あああ、あああああああ!!」

灼「落ち着いてハルちゃん」

レジェンド「くそくそくそ! 終わりだ! これで何もかも終わりだ!」

灼「大丈夫。私がハルちゃんを、犯人だとわからないよう警察から守ってあげる」

レジェンド「何……?」

灼「私に考えがある。ハルちゃんとは別に犯人を、」

がらがらがら

宥「こんにち……、は?」

灼(また1人目撃者)

宥「あ、あれ? えへへ、えへ」

宥「この部屋、あったかぁいので一杯」

宥「玄ちゃん……?」

宥「あは、玄ちゃんもあったかいのでいっぱい」

宥「あったかぁい色」

宥「くろちゃん、よしよし。でも部活中に寝たら駄目だよ」

宥「ふふ。玄ちゃんの皮、あったかぁーい。赤色だね」

宥「あはは、あは……」

灼(気が狂っちゃった?)

灼(なら犯人役は宥さんでいいか)

灼(……いや)

灼(気の動転が一時的なもので、後から正気を取り戻されでもしたら厄介だ)

灼(宥さんは監禁してしばらく経過を見よう)

灼(今後の雲行き次第では……)

灼(なんとか憧を利用して、宥さんには犯人と疑われたまま殺されてもらうのもありか)

灼(ただ、あまりすぐでは口封じだと割れかねない。少しは日を置こう)

アコちゃーーー!!

灼「ねえ憧。1つお願いしてもいいかな」

憧「……」

灼「玄を殺した犯人は宥さん。そういうことにして」

憧「っ……」

灼「幸い今日は日曜」

灼「麻雀部以外だと運動部員ぐらいしか学校にはいないから、人目を避けての工作もやりやすい」

灼「凶器は宥さんに包丁を握らせるとかしてでっち上げるからさ。ね?」

憧「……」パクパク

憧「!?」

憧「っ……」パクパクパク

灼「あれ? もしかして憧、声が出せなくなっちゃったの?」

憧「……」コクン

灼「じゃあ頷きで返事してくれればいいよ」

灼「玄を殺した犯人は宥さんだった。いいよね、憧」

憧「……」フルフル

灼「あれ、駄目なんだ」

憧「……」コクン

灼「……高鴨穏乃」

憧「……!?」ビクッ

灼「ああ。やっぱりその反応か」

灼「今日はインハイ反省会も兼ねて、1時から部活をしようってことになってたよね」

灼「もう1時なのにまだここへきてないけど、穏乃は今日は休みなのかな?」

灼「それとも、単に遅刻してるだけか」

憧「……」

灼「ま、どちらにせよだ」

灼「憧の態度次第では、私、穏乃に手を出すから」

憧「!!?」

灼「私自身はまだ刑務所入りになるような罪は犯してないからね」

灼「ハルちゃんが捕まって拘束されることになっても、私は自由の身」

灼「そうなったらハルちゃんと離れ離れ。悲しいな」

灼「だからハルちゃんと同じ場所に入るための手段として、穏乃をグサグサってしようかなー、なんて」

憧「……」ギリッ

灼「おもらし憧ちゃんに睨まれても全然怖くないって」

憧「……」カアアアッ

なんてことだ…

灼「憧。宥さんを犠牲にしさえすれば、穏乃は助かるんだよ」

灼「だからさ……、いいでしょ? ね?」

憧「……」

灼「分かった」

灼「なら妥協して、ハルちゃんが犯人だということを黙秘してくれるだけでもいい」

灼「そうだなあ」

灼「ショックで気絶しちゃって、玄が殺された時の記憶が混濁してるって設定でいこう」

灼「声が出なくなったことも、そういう設定に信憑性を増すだろうし」

憧「……」

灼「決まりだ」

――――

現在


灼「玄を殺したのは宥さん」

灼「どうも宥さんは色々と精神がおかしくなっていたらしい」

灼「そして玄殺害後、潜伏していた宥さんがメールで憧を呼び出す」

灼「しかし憧が宥さんを返り討ちにした」

灼「その後すぐ、憧は殺人を悔み自殺」

灼「計画通り世間ではそういうことになったよ、ハルちゃん」

レジェンド「よしよし。灼はいい子だな」

灼「ハルちゃぁん……」

レジェンド「10年前だってそうだ」

レジェンド「灼は私のほしいものを、いつだって1人だけくれる」

灼「だってハルちゃんのこと、大好きだから……」

レジェンド「ありがとう灼。私も」

「みーつけた。ここにいたか」

灼「穏乃!?」

穏乃「玄さんが亡くなった部室でいちゃつくなんて、本当に酷いな」

レジェンド「……」

穏乃「憧の言葉をもう一度よく考えて、私にも分かったよ」

穏乃「2人のうちのどっちかなんでしょ?」

穏乃「玄さんや宥さん、それに憧を死に追いやったのは」

頑張れしずのん

灼「何言ってんだか」

灼「玄を殺したのは宥さん」

灼「宥さんを殺したのは憧」

灼「そして憧は自殺、だよ」

穏乃「……憧は殺される前日、玄さんが殺された時には部室に4人の人間がいたと話していた」

灼「アイツ、そんなことを……?」

穏乃「憧、玄さん、宥さんを合わせても3人」

穏乃「赤土さんか灼さんのどちらかはその場にいたことになる」

穏乃「しかもこれは、宥さんが犯人だと仮定した場合の話」

穏乃「その仮定をとっぱらって、」

穏乃「実は宥さんが、玄さんが刺される瞬間に、その場にいたとは限らないと考えると、」

穏乃「ひょっとしたら2人とも玄さん殺害現場にいた可能性すらある」

さすが主人公かっこいい!(テノヒラクルッ

レジェンド「憧がお前に本当のことを話していたとは限らないだろ」

穏乃「ううん、憧が言っていたのは本当」

穏乃「憧は大切なことでは私に嘘はつかない」

穏乃「それに……、2人が本当に犯人じゃないなら……」

穏乃「仲間である玄さんが亡くなったこんな場所で、呑気にいちゃいちゃなんてできっこない」

穏乃「殺人だなんて酷いことができるような人間だからこそ、ここでのうのうとしてられるんだ」

レジェンド「うるっせーよ」

レジェンド「んなもん、単なる憶測じゃねーか。情況証拠未満だ」

穏乃「その憶測の内容自体を頭ごなしに否定することはしないんだ?」

レジェンド「何……」

穏乃「これで確信した。2人は玄さん殺害現場にいたに違いない」

穏乃「玄さんが殺された現場を見ているのに、そのことを隠し通すのは、」

穏乃「2人に後ろ暗いところのあるれっきとした証拠だ!」

レジェンド「チッ。あまりわめくなよ、穏乃」

レジェンド「玄を殺したのは宥。宥を殺したのは憧」

レジェンド「もはや世間じゃこれが真実。そういうことになってるんだ」

レジェンド「今更、一高校生にひっくり返せるかよ」

穏乃「憧は絶対に誰かを殺したりなんかしない!」

穏乃「宥さんも本当に優しい人だ!」

穏乃「お前たちが事実を話してくれれば、きっと今からでもこの2人の汚名は……」

灼「そんなことするわけないじゃん」

穏乃「……赤土さんは、どうですか」

レジェンド「話にならないな」

穏乃「くっ……」

レジェンド「憧も大概バカな死に方をしたと思うが、お前も――」

穏乃「憧をバカにするな!!」

レジェンド「っ!? こいつ刃物を隠し持ってやがったのか!?」

穏乃「せめてきちんと謝れば、認めれば、こんなもの使う気はなかった!」

穏乃「だけどお前は、謝るどころか憧を馬鹿に……!」

穏乃「うわあああああああ!!」

灼「危ないハルちゃん!」

レジェンド「灼!?」

穏乃「ふうっ、ふう、ふう」

穏乃「灼さんに庇われたか」

灼「いたっ! い、痛い! 痛いよハルちゃん!」

レジェンド「おい、しっかりしろ灼! くそっ、今救急車、を……」

穏乃「させるか! お前らどっちも死ぬんだ!」

レジェンド「が、はっ!!?」

穏乃「かえしてよ! みんなを返してよ!」

レジェンド「ちょ、ま、あ……」

穏乃「なんでみんな死ななきゃならなかったんだよ!?」

レジェンド「私はただ……、自分を……認め……、欲し……」

灼「ハル、ちゃん……?」

レジェンド「……」

灼「う、嘘、だよね……? やだ! いやぁあああああああ!!」

ハッピーエンドは無理そうですかね

ダメみたいですね(冷静)

灼「ハルちゃん! ハルちゃん!」

灼「誰が認めなくても、私がハルちゃんの味方になるから!」

灼「だから、置いてかないで! 置いてかないでよ!」

灼「あの日ハルちゃんを見て、私の人生は、価値観は……」

灼「変わっ……」

灼「あ……」

穏乃「誰かを巻き込んだ時点で、そんな気持ち純粋でも何でもない」

穏乃「そんなのあの世で勝手にやってればいいんだ」

穏乃「……」

穏乃「そしてそれは私も」

穏乃「後は、私だけ」

穏乃「ねえ憧」

穏乃「私さ、憧の家族に無理言って、憧が最後に受信したメールを見せてもらったんだ」

穏乃「最後に憧は『呼び出しに応じなかったら高鴨穏乃を殺す』って脅されてたんだな」

穏乃「だから私、憧は私のために死んだんだなって、分かっちゃってさ」

穏乃「それで……」

穏乃「なんか何も考えられなくなっちゃって、気が付いたらこんな……」

穏乃「……」

穏乃「……ちくしょう」

穏乃「ごめんな憧。助けてあげられなくて、ごめんな」

やめてくれよ…(絶望)

――――

20XX年、■月○日。

阿知賀葬儀場にて、少女(16)の遺体が発見された。
少女は、近日火葬予定だった別の少女(16)の遺体の側で自殺をはかったもよう。
自殺した少女と火葬予定の少女は親しい間柄だったとされている。

なお、自殺した少女が用いた刃物には、異なる2名の血液も付着していた。
調査の結果、それらの血液は、
同日阿知賀女子学院で遺体となり発見された赤土晴絵(同校教諭)、
並びに17才の少女(同校学生)のものであることが判明している。

警察では、何らかの対人トラブルが背後にあったとして、調査を進めている。

――――


しずの「おはよう憧」

あこ「にゅ。おはよー、シズ」

しずの「それと憧、誕生日おめでと」

あこ「え? あたしの誕生日、今日じゃないよ?」

しずの「んー。そりゃそうか」

あこ「変なシズ」

しずの「あははは、悪い悪い」

あこ「でも……。ハッピーバースデー、あたし達」

しずの「なんだ。憧も誕生日おめでとうの意味分かってるんじゃん」

あこ「まあ、ね。ちょっと最後にシズに意地悪してみただけ」

しずの「ひっどー。……じゃ、一緒に行こっか憧」

あこ「うん。行こうシズ」


おわり

なんでや!……なんでや!

おつおつ
これはレジェンゴ救済のSSが待たれる

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