咲 「この本なんだろ……。『まーじゃん部昔話』?」(540)

代行ID:AvjLb7/e0


『モモ太郎』

むかーしむかしのことです。
あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは山へ芝刈りに、

大沼プロ 「裏鬼門へ行ってくる」

おばあさんは――

小鍛冶 「アラサーだよっ!」

――川へ洗濯にいきました。

おばあさんが川でせんたくをしていると、

桃子 「ドンブラコっすよー。もひとつ、ドンブラコっすよー」

と大きなモモが川上から流れてきました。
たいへん立派なモモでしたが、おばあさんはその存在に気づくことなく、

桃子 「ドンブラコっすよー。ドンブラコっすよー……。ょー……」

川下へと流れて、消えてしまいましたとさ。

『モモ太郎』 了


『北風と太陽』

あるところに、いつも競っている北風と太陽がいました。

洋榎 「なあ太陽、ウチのほうが凄いのはわかっとるんやろ?」

胡桃 「私のほうが優れてるに決まってるでしょ!」

売り言葉に、買い言葉。二人は北風の提案により、
「旅人の上着を脱がせることはできるか」という勝負で決着をつけることにしました。

そして、早速二人の前に旅人がやってきました。

宥 「……」

洋榎 「ほな、うちからいくでー」

胡桃 「負けない……」

短編は咲だと珍しいよね


旅人は夏であるにも関わらず、上着を羽織り、マフラーをしています。
北風はそんな旅人の前に降り立ち、こう言いました。

洋榎 「北風がキタでー!」

宥 「さ、寒い……」 ブルブル

胡桃 (馬鹿みたい……)

北風のダジャレがよっぽど寒かったのか、
旅人は両腕を体に回し、しっかり上着を押さえ座りこんでしまいました。

洋榎 「なんで今のダジャレで笑わんのやっ!」

胡桃 「じゃあ、次は私がいくよー」


今度は、太陽の番です。
太陽は座り込んでいる旅人の前に立つと――
おもむろに旅人のひざの上に座りました。

胡桃 「充電! 充電!」

宥 「!」

胡桃 (一見、わけのわからない行動に見えるけど……)

胡桃 (体を寄せ合うことにより暑くさせて、服を脱がせる作戦!)

無鉄砲な北風の作戦に対して、策を擁した太陽でしたが――

宥 「あったか~い……///」 ムギュウウウウ

胡桃 「ぎゃー! あついよー!」

逆に抱きしめられ、暑さで慌てて退散したのでした。


洋榎 「今回は、引き分けのようやなー」

胡桃 「……次は負けない!」

今回の勝負は引き分けに終わってしまいました。
北風と太陽はきっと、またこうやって勝負を繰り返すのでしょう。

洋榎 「しかし、ウチのダジャレが滑るとはなー」

胡桃 「あれはないでしょー。私の作戦は良かったと思うんだけどなー」

洋榎 「策士策に溺れる、やな」

胡桃 「むぅ……」

洋榎 「まあ、なんや。勝負したら腹減ったなー。一緒に飯でも食いにいこか?」

胡桃 「うん!」

ただ、なんだかんだで、仲が良いようです。
喧嘩するほど仲が良い、まさにそんな関係の二人でした。

『北風と太陽』 了


『かさこ地蔵』

むかしむかし、あるところに貧乏なおじいさんとおばあさんがいました。
貧乏をしのぐために、おばあさんは笠をこさえ、大晦日におじいさんは街に売りにでかけました。

すると、おじいさんは道すがら、六体のおじぞうさまを見つけました。
おじぞうさまの頭には、雪が積もってしまっています。

副会長 「ああ、気の毒に。そうだ、笠はいっぱいあるからかぶせてあげよう」

衣 「……」

副会長 「……あり」 ポスッ ←笠をかぶせる音

衣 (わーい)


一 「……」

副会長 「……あり」 ポスッ

一 (あり、ってなんだろう……)

胡桃 「……」

副会長 「……あり」 ポスッ

胡桃 (……きもちわるい)

健夜 「……」

副会長 「……ババアはなし」

健夜 (まだアラサーだよっ!)


漫 「……」

副会長 「う~ん……」

副会長 「……なし」

漫 (な、なんでやっ!?)

晴絵 「……」 ドキドキ

副会長 「……チッ」

晴絵 (えっ)


マホ 「……」  

副会長 「……ど」

マホ (……ど?)






副会長 「……どストラーイクッ!」 ポスポスポスポスポスポスッ!

マホ (きゃ、きゃああああああああああ!)


――――きゃあああああああああ!

―――きゃあああ……

――ぁぁ……

―……






副会長 「というわけで笠が無くなったんですけど」

副会長 「これ――緊急案件でOKですよね?」

久 「今すぐ出てって」

『かさこ地蔵』 了


『おおきなカブ』

ゆみ 「出席をとるぞ。蒲原」

智美 「あい」

ゆみ 「妹尾」

佳織 「はい」

ゆみ 「モモ」

桃子 「はいっす」

ゆみ 「津山」

睦月 「うむ」


ゆみ 「津山……返事が小さいぞ」

睦月 「……!」

ゆみ 「気合をいれろ! 津山!」

睦月 「……うむ!」

ゆみ 「もっとだ! 津山!」

睦月 「うむっ!!」

ゆみ 「やればできるじゃないか、さあ練習を始めるぞ」

桃子 (大きなウム、っすね)

『おおきなカブ』 了


『さるかに合戦』

むかーしむかしのことです。
あるところに、サルとカニがいました。

穏乃 「ウッキー!」

洋榎 「今度はカニかいっ! ……自分、ノリノリやな」

穏乃 「ウッキキー!」

ある日、サルとカニが一緒に遊んでいると、
カニはおにぎりを、サルは柿の種を拾いました。


榎 「おー、うまそうなおにぎりや!」

洋榎 「さっそく、頂くでー」


『さるかに合戦』

むかーしむかしのことです。
あるところに、サルとカニがいました。

穏乃 「ウッキー!」

洋榎 「今度はカニかいっ! ……自分、ノリノリやな」

穏乃 「ウッキキー!」

ある日、サルとカニが一緒に遊んでいると、
カニはおにぎりを、サルは柿の種を拾いました。

洋榎 「おー、うまそうなおにぎりや!」

洋榎 「さっそく、頂くでー」


穏乃 「……」 ジーッ

洋榎 「……なに、こっち見てんねん」

穏乃 「……」 ダラダラ

洋榎 「ヨダレぎょーさん垂らして、これ食べたいんか?」

穏乃 「……!」 コクコク

洋榎 「すまんな、これはウチが拾ったんや。諦めてくれ」

穏乃 「あきらめるわけがない!」

洋榎 (……うざい)

そこには、とてもしつこいサルがいました。


サルがあまりにしつこいので、カニは柿の種とおにぎりを交換してあげました。

穏乃 「やったー! カニさん、ありがとうございます!」

洋榎 「ええよー。ウチは柿の種を育てて、ぎょーさん柿を食ーたるでー」

カニはサルからもらった柿の種を庭に埋めると、妹と一緒に丁寧に世話をし始めるのでした。

洋榎 「早くおっきく、おっきくなるんやでー」

絹恵 「秋にはいっぱい実をつけてるんやでー」

洋榎 「絹みたいにおっきな実をつけるんやでー」

絹恵 「お姉ちゃん、セクハラは柿ちゃんの成長に悪影響やで!」


二人の気持ちがしっかり届いたのでしょうか。
やがて柿の種は芽を出し、木へと成長し、豊かな実をつけました。

絹恵 「やったー! ウチらもやればできるなー」

洋榎 「せやろー! さすがやろー!」

二人はオレンジ色に彩られた、大きな柿の木を見上げます。

絹恵 「おいしそう……」

洋榎 「今から食べるんやで……」

絹恵 「ウチらはどう考えても……」

洋榎 「カニ組……!!」

絹恵 「そこは、勝ち組とちゃうんかい!」


しかし、二人はここで大変なことに気がつきました。
大きな柿の木を見上げ、そして自分たちの体を確認します。

洋榎 「甲殻類に、この木を登れっちゅーのはちょっときついで」

絹恵 「甲殻類の悲しいところやな……」

すると、打ちひしがれる二人のもとにサルがやってきました。

穏乃 「うっきー! カニさんたち、どうしたんですか?」

洋榎 「実はな、サルからもろーた柿が実になったんやけど」

絹恵 「ウチらじゃ、木に登ることができへんのや」

穏乃 「じゃあ、私に任せてください!」

そう言うと、サルはするすると木を登っていきます。
そして、ほどよく熟した柿をもぎとると、もぐもぐと食べ始めました。

穏乃 「ハムッwww ハフハフ、ハフッwwww」


絹恵 「サルさーん!?」

洋榎 「あいつ、ウチらが育てた柿をひとり占めするつもりやで!」

穏乃 「うめぇwwwwwwwwww」

サルの身勝手な行動に、カニさんたちは怒ります。

絹恵 「エテ公、しばいたるどっ!」

洋榎 「こらーっ! ウチらにも柿をよこさんかい! ウチらが育てたんやで!」

穏乃 「確かにその通りです。でも……」

穏乃 「食わせるはずがない!」

そこには、とても腹立たしいサルがいました。


穏乃 「そんなに柿が食べたいなら、これでもどうぞ!」

サルはそう言うと、カニたちに向かってまだ青い上柿を投げました。

恵 「あたしゃ、いつも通り食われて、栄養となりますよ」 ヒューッ

しかし、サルのコントロールが悪かったのか、
まだ青い上柿は、そのまま地面へとぶつかりました。

絹恵 「これはもう食われへんなぁ」

洋榎 「せやな」

恵 「えっ」

ふと冷静になった二匹でしたが、サルに対する怒りは収まりません。
そこで二匹はサルを懲らしめるために、友達に協力してもらうことにしました。


洋榎 「作戦はこうや。まずはクリ、あんたが高火力でサルを火傷させる」

玄 「おまかせあれ!」

洋榎 「するとサルは火傷を直すために、水がめのところへいく」

洋榎 「そこであんたの出番や、ハチ」

洋榎 「水がめに隠れて、おもっくそコークスクリューツモをくらわせたれ」

照 「……ああ」

絹恵 「最後はウスさんですね」

純代 「……」

絹恵 「サルが慌てて家から飛び出したら」

絹恵 「屋根の上からサルめがけて思いっきり飛び降りてください」

純代 「……わかった」


洋榎 「懲らしめるのが目的やから、みんなほどほどになー」

洋榎 「そしたら、作戦開始やで!」

クリとハチはそれぞれの位置につき、サルの帰りを待ちます。
そして、最後にウスが屋根に登りはじめました。

絹恵 「お、お姉ちゃん。大丈夫かな、家が揺れてるで」

洋榎 「ウスが思ってたより重いみたいやな……」

そして、とうとうウスが屋根の上にたどり着こうとしたとき――

純代 「どっこいっしょ……あっ」 バギッ

洋榎 「あっ」

絹恵 「あっ」

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ドガシャーン!

――サルの家が潰れました。


サルが家に帰ると、そこには木片の山があるだけでした。

穏乃 「なんだこれ……」

そのそばには、カニたちがバツの悪そうな顔をして立っています。
そして、二匹はサルに事の顛末を話します。

洋榎 「ちょっとあんたを懲らしめようと思っただけなんや……」

洋榎・絹恵 「ほんまに、ごめんなさいっ……!」

穏乃 「家が壊れた、寝床もない、食料もない。でも……」

穏乃 「……諦めるわけがない!」

サルはそう言うと、木片の山を黙々と片付け始めました。
カニさんたちはその姿を、唖然とした表情で見つめます。

穏乃 「家が壊れちゃったのはショックだけど」

穏乃 「もとはといえば、私のせいだから……頑張って、家を建て直すよ」

そこには、とても頑張り屋なサルがいました。


汗をたらしながら、サルはせっせと片づけを続けます。
その姿を見ていたカニさんたちは……一緒に片付けを始めました。

穏乃 「……!」

洋榎 「……ウチらにも、手伝わせてくれへんか」

絹恵 「せやせや、やっぱり家が壊れたのはウチらのせいやしな」

穏乃 「……ありがとうございますっ!」

三匹は満面の笑顔で、仲直りをすることができました。




――崩れた家の下

玄 「助けてお姉ちゃん……」 ブルブル

照 「暗いところ怖いよー……」 ガクガク

純代 「私だけ道具……」

※このあと助け出されました。

『さるかに合戦』 了


『ピノキオ』

むかしむかし、子どもの好きな時計職人のおばあさんがいました。
しかし、子どもがいないおばあさんは、かわりに木のあやつり人形をつくりました。

おばあさんは、人形にピノキオという名前をつけました。
そして、不思議なことにピノキオは自ら動き、自ら喋るのでした。

豊音 「おばーさん! おはようございます!」

トシ 「あら、ピノキオは今日も早起きねぇ。昨日は夜更かししなかった?」

ピノキオには、とても不思議な特徴がありました。

豊音 「うん! ちょーぐっすり寝たよー……って、うわわ!」 グィーン!

トシ 「あらあら……。昨日はオリンピックが放送されていたからねぇ」

ピノキオは嘘をつくと、背が伸びるのです。
ここ一年、ほぼ毎日嘘をついた結果、ピノキオの身長は30メートル程になってしまいました。


そして現在、日本のシンボルとして聳え立っている東京ス○イツリー。
その支柱となっているのは、何を隠そう、背が伸び続けたピノキオなのです。

豊音 「今日も観光客がいっぱいだよー」

豊音 「昔は都会や有名人に憧れてたけど」

豊音 「今や私は見られる側なんだねー」

すると、そこへ四人の少女がやってきました。

エイスリン 「スカイツリー、タカイ!」

胡桃 「エイちゃん、走っちゃだめだよ!」

塞 「ほらシロ、しゃきっとして」

白望 「……だるい」


豊音 「なんだか楽しそうな子たちがきたね」

豊音 「友達になりたいなー……」

ピノキオは思い切って、少女たちに話しかけてみることにしました。

豊音 「あのー……」

塞 「今、誰か話しかけた?」

エイスリン 「?」

胡桃 「頭大丈夫?」

塞 「ひどっ! でも、確かに聞こえたんだけどなぁ」


豊音 「あの!」

胡桃・エイスリン・塞 「!」

塞 「今、確かに聞こえたよね!?」

胡桃 「う、うん……シロ?」

白望 「……そこ」

シロと呼ばれた少女が指さした先には、スカイツリーの中心部から顔を出すピノキオがいました。
四人はあまりの大きさに腰が引けてしまいましたが、話をするうちに打ち解けていました。


塞 「なんで、そんなに大きくなっちゃったの?」

豊音 「私、嘘をつくと背が大きくなるんだー」

胡桃 「!」

塞 「すごい特異体質だね……。胡桃、どうしたの?」

胡桃 「わ、わたし! 実は男の子なんだ!」

塞 「は?」

エイスリン 「?」

白望 「……」

胡桃 「……」 ドキドキ


胡桃 「……」 ズーン

塞 「胡桃はなんで落ち込んでるの?」

白望 「……背が伸びると思ったんじゃない」

豊音 「ちょーかわいいよー」

エイスリン 「ピノキオ!」

豊音 「エイスリンさん、どうしたの?」

エイスリン 「ピノキオ、シンチョー、イクツ?」

豊音 「身長かー。今は1000メートルぐらいかなー」


豊音 「って冗談だよ!」

塞 「あっ」

胡桃 「あっ」

エイスリン 「アッ」

豊音 「あっ」

白望 「……ダルい」

豊音 「ち、違うの! 今のはなしいいいいぃぃぃぃぃぃぃ……!」 グィーン






――2012年・東京ス○イツリーは崩壊し、日本は世紀末を迎えた。

『ピノキオ』 了


『おおきなカブ・2』

純代 「……」

華菜 「……大きなデブ」










純代 「ふんっ!」 バキッ!

華菜 「ぬぎゃー!」

『おおきなカブ・2』 了

ちょいと休憩入れます
書き溜めはまだあるけど、もし、昔話や童話のリクエストがあれば受け付けます

嶺の上の花咲じじい

3匹の子豚

>>71,>>72
はなさかじじい、三匹の子豚 了解っす
今日中に投下できるかはわからんので気長に待っていただければ幸いです

再開しやす


『浦島太郎』

むかしむかし、ある村に浦島太郎というやさしい心をもった若者がいました。

智美 「蒲原太郎じゃないぞ~」 ワハハ

智美 「蒲焼さん太郎でもないぞ~」 ワハハ

今日は釣りをするために、海辺へとやってきました。
するとなにやら騒がしい声がします。
そちらを見ると、子どもたちが大きなカメをいじめていました。

緋菜 「えい! ひっくりかえしてやるし!」

菜沙 「とー! 棒でつっついてやるし!」

城菜 「とりゃ! まいったといえし!」

華菜 「いたいっ! 痛いからやめろしっ!」

智美 「なんか色々とおかしいな~」 ワハハ


カメが色々と可哀想だったので、浦島太郎は助けてあげることにしました。

智美 「おい、お前たち。カメをいじめちゃダメだぞ~」 ワハハ

緋菜 「おまえ誰だし!」

菜沙 「邪魔するなし!」

城菜 「代わりにいじめてやるし!」

智美 「……いじめられるのって辛いんだぞー」 ワハハ…

緋菜 「……なんかごめんだし」

菜沙 「……そのうちいいことあるし」

城菜 「SSでいじめられたぐらいでめげるなし!」

浦島太郎の大人の説得で、子どもたちもカメをいじめるのをやめて引き上げていきました。


華菜 「そろそろまぜろよ」

智美 「なんだ、1レス出番なかっただけなのにでしゃばりだな」 ワハハ

華菜 「……とりあえず、ありがとうだし」

智美 「なーに、気にするなー」 ワハハ

カメは助けてもらったお礼に、浦島太郎を竜宮城へ連れていくことにしました。
浦島太郎を背中の甲羅に乗せると、カメは海の底へともぐっていきます。

華菜 「竜宮城はとても綺麗なとこなんだ」

智美 「ごばばばばばば、ばぼっ」 ガババ

華菜 「姫様も仕え人もみんな良い人だから、楽しみにしてろし!」

智美 (い、息が……)


やがて、竜宮城へと到着しました。
浦島太郎は途中何度も気を失いましたが、
苦行には耐性があるのか、なんとかもちこたえました。

華菜 「ほら、竜宮城に到着だし!」

智美 (綺麗なとこだなー) ブクク

竜宮城はこの世のものとは思えない、とても美しいものでした。
見たこともないような色とりどりの魚が泳いでいたり、緑色のわかめが揺らいでいたり。
浦島太郎は、その光景を見れただけで満足してしまいました。

華菜 「姫様ー! 客人の到着だし!」


カメが叫ぶと、竜宮城の奥から女性があらわれました。

小蒔 「ようこそいらっしゃいました。カメを助けてくださったそうですね」

智美 (……!)

女性は――とても綺麗でした。
さきほど感動を受けた竜宮城ですら霞んでしまう、そんな美しさを備えていました。

智美 「がばっ! ごぼぼっ!」 ガババ

小蒔 「まだ水中に慣れていないみたいですね。これは失礼いたしました」

小蒔 「……えいっ」 パチッ

姫様が指をならすと、浦島太郎はたちまち呼吸ができるようになりました。

智美 「おおー、一気に楽になったぞー」 ワハハ


それからというものの、浦島太郎は竜宮城でとても楽しい時間を過ごしました。

姫様と語らい、

小蒔 「私、友達ができて嬉しいです!」

智美 「まだまだ、いっぱい遊ぼうなー」

従者たちと遊び、

霞 「ほら、水中だとおっぱいが浮くのよ」

初美 「浮かないですー」 グスッ

智美 「私もだー」 ワハハ


美味しいものを食べ、

巴 「今日はウミガメのスープですよ」

華菜 「にゃっ!?」

智美 「おー、うまそうだなー」 ワハハ

春 「……」 ポリポリ

智美 「春はなにを食べてるんだー?」 ワハハ

春 「……サンゴ」

素敵な海の底の景色を眺めて……。

智美 「綺麗だなー……」 ワハハ


しかし、馴れとは恐ろしいものです。
十日もすると、浦島太郎は竜宮城に飽きてしまいました。

智美 「おーい、姫様ー」 ワハハ

小蒔 「太郎さん! 今日はなにをして遊びましょうか?」 ニコニコ

智美 「いやー、実は……そろそろ地上に帰ろうと思うんだ」 ワハハ

小蒔 「えっ……」

智美 「そろそろみんなも心配しているだろうし、私も家族が恋しくてなー」

小蒔 「そうですか……。残念ですが仕方ありませんね、それではお見送りをしましょう」

浦島太郎の帰り支度が済むと、従者や大勢の魚たちがお見送りをしてくれました。
さらに姫様から「絶対に開けてはいけませんよ」、と大きな玉手箱をお土産にもらいました。


帰りもカメに送ってもらい、浦島太郎は十日ぶりに地上へと出ました。
しかし、辺りを見回すと以前と様子が違います。

智美 「おかしいなー。私の家がないぞー」 ワハハ

あるべき場所に浦島太郎の家はなく、
また、いるべき場所に浦島太郎の家族はいませんでした。

智美 「どういうことだ……。おっ、第一村人発見だ」 ワハハ

智美 「おーい!」

健夜 「……はい?」


村人に事情を聞くと、どうやら浦島太郎が竜宮城へ行ってから、十年の歳月が経っているようでした。
竜宮城での一日は、地上での一年だったようで、浦島太郎は大きなショックを受けました。

智美 「でも、十年しか経ってないのに、なんで私の家と家族はいないんだ?」 ワハハ

健夜 「あ、浦島さんでしたら、お父さんに問題があったみたいで」

健夜 「朝寝と朝酒と朝湯が大好きで、数年前に身上をつぶしたみたいです」

智美 「そりゃーもっともだー」 ワハハ

智美 「色々とありがとうございました。アラサーの村人さん」 ワハハ

健夜 「もうアラフォーだよ!」


帰る家もなく、迎えてくれる家族もなく、浦島太郎はとうとう一人ぼっちになってしまいました。
浦島太郎は海辺に座り、沈み行く夕陽を眺めながら、一人で「ワハハ」と笑い続けました。

そして、ひとしきり笑った頃には、空は満天の星空となっていました。

智美 「さーて、これからどうするかなー……」 ワハハ…

途方に暮れた浦島太郎は、そこでふと姫様から貰った玉手箱を思い出しました。
地上で孤独になった浦島太郎は、「絶対に開けてはいけない」という姫様の忠告など、もうどうでも良くなっていました。

智美 「どうせもう、私はひとりぼっちだしなー」 ワハハ…

智美 「開けちゃうか」 ワハ…

浦島太郎は意を決して、玉手箱に手をかけました。

智美 「なにが出るかな、なにが出るかな、ワハハッハッハ、ワハハハ」 パカッ!


               ,......-‐‐-...、 __
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  | | ././        /::;''  ljへ、:ヽ;:::::::::::::::l:l
  | | /./_____/::/‐-、  r‐‐`‐ヽ:::::::::j::l____
,ィ.l`iィ i \     ,':/.弋フ`  弋フ> l;-、::ノ:::l      \
l_f} ヽ .l   \    ;'/ l   ,      '´/':::::::l        \
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ヽゝ  |      \ ,..--..ヽ_   , .ィ !/ . |::::::::l          \
 |   .|       ハ:ヾ: :/: :/`Tヽ,-‐ /:ヽ. j::::::::l            \
 |  .|      イ: :、: : l: :/: : :!イ>、/: : /: :>、j              \
 l   |    i'´:=-: :_:_l: ::>.´ レ:l ./: ::_/: : : : :l: :`.、             \
 |   |__,ィ='´: : : : : : :./: : :ヽ:.:|:::レ:.:>_:_: : : : :..|: : : :ヽ              \
 l   .!:ヽ: : : : :ヽ:-:_:.l: : : : ::ヽ!//: : : : : : : : l:、: : : : ヽ_________ \

 |   ヽ、:_: : :ヾ:、r'´ .!: : : : : :/: : : : : : : : : : : :ゝ、: : :l: : ヽ           /│
 |    .ス: : : :ノ   '、 : : : : |: : : : : : : : : : :: :j'ヽ:、:.:j: :}: : :ヽ        /  │
 '、___,. ィ'=-''´¨    }: : .:.:.d: : : : : : : : : : : /  `Y:ノ: : :=-:ヽ     /   │

   /          }: : : :.:.l : : : : : : : : : :イ   ,-‐- 、: : 、_::ノ    /
  /          /: : : :.:.| : : : : : : : :/: :!   //., , .ヽ}:.}ノ   /
/           /: : : : : :| : : : : : : ノ: :.:l ⊂l | l! l_/'ィ/  /
│ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄      ̄ ̄│

│         姫様印の玉手箱              │
│                                 │


睦月 「……」

智美 「……」

睦月 「……」

智美 「……お前も一人かー?」 ワハハ

睦月 「うむ」

智美 「それじゃあ、二人で暮らすかー?」 ワハハ

睦月 「うむ」

智美 「そうかー、ありがとうなー。家事はできるか?」 ワハハ

睦月 「うむ、私なりに精一杯……」

智美 「そうかー。それじゃあ、今日からよろしくなー」 ワハハ

睦月 「うむ」

それから十数年、浦島太郎と寡黙な少女は、
末永く、末永く、二人で仲良く暮らしていきましたとさ。

『浦島太郎』 了


『三年寝太郎』

星夏 「……」

久保 「……」

星夏 「……コーチ」

久保 「!!」

久保 「……な、なんだ、文堂」

星夏 「私、こうやって高校生活の三年間、両目を閉じてましたけど」

星夏 「寝てたわけじゃありませんからね」

久保 「……そ、そうか」

星夏 「……」

久保 「……」

『三年寝太郎』 了


『金のオノ 銀のオノ』

むかしむかし、ある森の中で木こりたちが木を切っていました。

未春 「……よいしょっ」 ギコギコ

星夏 「……よいしょっ」 ギコギコ

純代 「……」 バキッ バキキッ

久保 「手を休めるなよ! 特に……」

久保 「池田ァ!」

華菜 「は、はいぃぃ!」 ギコギコ


木こりたちは仕事に精を出し、せっせと木を切り続けます。
そしてしばらく経ち、お昼休憩を取ることにしました。

久保 「よーし、休憩だ。みんなでお昼を食べるぞ」

久保 「こんな木屑が舞ってるところでご飯を食べるのもなんだからな」

久保 「少し歩いて、景色の良い所にいこうか」

木こりたちはお弁当を手に持ち、森の中をてくてくと歩き始めました。
そしてしばらくすると……一面に水面が広がる、ひらけた空間に出ました。

久保 「これは……」

久保 「池だァ!」

未春 「湖ですね」


久保 「そ、そんなことはわかってる……///」

華菜 「……」

久保 「なに笑ってんだ池田ァ……」

華菜 「え!?」

星夏 (完全な言いがかりだ……)

久保 「お前、私がハイキングにいったら」

久保 「山田君の前で『山だァ!』って言うキャラだと思ってんだろぉ……?」

華菜 「は? え、いや、全然そんなこと思ってないです!」

未春 (意味がわからない……)


久保 「これはお仕置きだな! おい、深堀!」

純代 「……」

華菜 「え、ちょ、ちょっとまって! いや、に、にゃあああああああああ!」

深堀と呼ばれた少女は、片手で池田を掴むと、池に放り込みました。
湖は大きな水しぶきをあげ、一瞬で池田を飲み込んでしまいました。

未春 「か、華菜ちゃん……!」

すると次の瞬間――湖から、とても美しい女神が現れました。


美穂子 「あなたたちが落としたのは、この娘ですか?」

緋菜 「ひなちゃんだし!」

久保 (か、可愛い……///)

星夏 「いえ、ちが―― 久保 「それだァ!」

未春 「え?」

美穂子 「それとも、この娘ですか?」

菜沙 「なずなちゃんだし!」

久保 (か、可愛すぎて鼻血が……)


久保 「そいつも貰っておこうかァ!」

星夏 (もう滅茶苦茶だ……)

美穂子 「最後にもう一人、この子もいかがですか?」

城菜 「しろなちゃんだし!」

久保 (も、もう、可愛すぎて……だめだあああ!)

久保 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ジャバーン!!

未春 「自ら飛び込んだ!?」


久保 「池だァ! ガボッ、池田ァ! ガボボッ、ガボダァ!」 バジャバジャ

未春 「……」

星夏 「……」

純代 「……」

美穂子 「……」







美穂子 「あなたたちが落としたのは、この久b 未春 「いえ、違います」

『金のオノ 銀のオノ』 了


『かぐや姫』

むかしむかし、竹を取って暮らしている夫婦がいました。

働き者の、お父さん。

純 「俺は女だっつーの!」

しっかりものの、お母さん。

透華 「しっかり働いて、稼ぎますわよ!」

二人は決して裕福な暮らしをしているわけではありませんでしたが、
つつましく、幸せな生活を送っていました。


ある日のこと、お父さんが竹やぶにいくと、根元が光っている不思議な竹を見つけました。

純 「へー、珍しい竹だな。金銀財宝が眠ってたりして」

おじいさんは強欲な一面を見せると、斧を一閃――

純 「うおりゃああああああああ!」

衣 「うわああああああああああ!」

――竹を切り落としました。


衣 「ひぃぃぃぃ……」 ブルブル

純 「こ、こ、こここここここ」

衣 「こ、怖いよぉ……」 ブルブル

純 「子ども!?」

衣 「こ、ここここここ子どもじゃない! わ、私は――」

純 (どうする? 喋ってるし、放っておいても大丈夫か?)

純 「いや――放っておけねぇ!」

玉のように美しい子どもを見つけたお父さんは、大喜びで腕に抱えて家につれて帰りました。
子どものいなかったお父さんとお母さんは、たいそう喜びました。

そして二人はその子を「かぐや姫」と名づけ、たいそう可愛がって育てました。


幾年の月日が経ち、かぐや姫はすくすくと背は伸びませんでしたが、美しく成長しました。
そしてお父さんの家業も順調で、一家は使用人を雇えるほど裕福な家になりました。
裏は竹林、表には広がる海。そんなところに、彼らの家はありました。

衣 「智紀! 一! 今日も一緒に遊ぶぞー!」

一 「今いきますよ、姫様」

智紀 「……今日は何をする?」

透華 「ふふ、まるで三姉妹のようですわね」

純 「ああ、二人とも良い子で良かったなー」

衣 「純! 透華! 二人も一緒に遊ぼうぞ!」

純 「ほら、姫に呼ばれたぞ」

透華 「ええ、行きましょうか」

かぐや姫を中心として、五人は毎日仲良く暮らしていました。


しかし、お父さんとお母さんは、かぐや姫のことで憂慮していることがありました。

衣 「……月が近い」

かぐや姫は満月の夜になると、いつもの無邪気さを失い、
一転、冷たいまなざしを空に向けるのです。

透華 「……」

純 「……」

一 「……」

智紀 「……」

そんな日の姫には、誰一人近づくことすらできないのでした。


次の満月の夜のことでした。
とうとうかぐや姫が両親に、話を切り出しました。

衣 「……純、透華。話がある」

透華 「……なんですの」

衣 「実は私は……月の世界のものなのだ」

純 「……!」

衣 「今まで二人に育ててもらったが、今宵月が満ちたとき……」

衣 「私は、月に帰らなければならぬ」

透華 「そんなっ……!」

純 「……そんなこと、認められるかよっ!」

二人は悲しみ、怒り、嘆きました。
そして使用人とも話し合い、今夜四人でかぐや姫を守ることを決めました。


その日は、五人一緒の部屋で過ごしていました。
今までの思い出を語り合いながら、今生の別れとわかっているかのように。
かぐや姫を守ると決めていながらも、予期するところがあったのでしょう。

ふと、使用人の一が空を見上げました。
赤い空が、夕闇へと変わり、そして黒に染まっていきます。

一 (夜の帳がおりてくる……)

そのときでした。

衣 「……きた」

純・透華・智紀・一 「!!」


かぐや姫の呟きと同時に、夜空が金色に光ります。
やがて光が薄らぐと、月より黒服の使者がまいおりてきました。

ハギヨシ 「衣様、お迎えにあがりました」

衣 「出迎えの大儀、ご苦労であった」

ハギヨシ 「父君と母君が、衣様のお帰りを心待ちにしておられます」

衣 「……わかっておる」

純・透華・智紀・一 「……」

四人は動かなければいけない、とわかっていながらも、
月よりの使者の神々しさ、奇怪さに気圧され動くことができませんでした。

そして、そんな四人に対して、かぐや姫は惜別の言葉を紡ぎます。


衣 「純、透華、一、智紀……」

衣 「生まれてこの方、私は何も知らなかった」

衣 「父の力強さも」

衣 「母の愛も」

衣 「姉妹の触れ合いも」

衣 「家族の絆も」

衣 「それら全てを教えてくれたのは……四人だった」


衣 「四人と日々過ごしていく中で」

衣 「月の国で孤独だった衣にも――家族ができるかもっ、と思うことができた」

衣 「ほ、ほんとうに、ありがとう……」

かぐや姫はそこで言葉を止めました。

ハギヨシ 「衣様、そろそろ行きましょう」

それを見た使者は、もうこれで用は済んだと判断したのか、かぐや姫を連れて月へと登り始めました。

衣 「……」


そのときでした。
お父さんが月に向かって叫びます。

純 「かぐや姫ー! 家族ができるかもってお前は言ったけど!」

純 「俺らは、本当の家族だったんじゃないのかよ!」

衣 「!」

衣 「で、でも……私とみんなは血の繋がりもないし!」

智紀 「そんなの関係ない……!」

一 「僕たちは姫様のこと、家族だと思ってる……それじゃダメなのかな!?」

透華 「そうですわ! あなたは私たちの、大切な家族ですわ!」


衣 「み、みんな……!」

衣 「わ、私もみんなを家族だと思ってる!」

衣 「純も、透華も、一も、智紀も……」

衣 「いや、お父さんも! お母さんも! 智紀お姉ちゃんも! 一お姉ちゃんも!」

衣 「大好きだっ!」 ポロポロ

純 「へへっ、あいつ初めてお父さん、お母さんって呼んだな」 ポロポロ

透華 「本当に……これで、本当の家族ですわね」 ポロポロ

一 「おとーさんも、おかーさんも泣きすぎだよ……」 ポロポロ

智紀 「そういう、一も……」 ポロポロ

そして、かぐや姫は月へと帰っていきました。


かぐや姫が月に帰ってから、再び幾年の月日が経ちました。
あれからも、四人は家族として仲良く暮らしています。

背中には竹林が、前面には海が広がる家に今も住んでいます。

そんな四人は、かぐや姫のことを忘れないためにも、
満月の夜には欠かさずあることをしています。

純 「さーて、今宵も満月だな。衣に会いにいくか」

透華 「そうですわね、一! 平たい花器は用意したかしら?」

一 「もちろんだよ、おかーさん。さあ、行こうか」

智紀 「……」 コク

四人は家を出ると、前面に広がる海へと向かいます。
そして海に花器を傾け入れると――海に映る月をすくいとるのでした。

『かぐや姫』 了

書き溜めしゅーりょー
全キャラ網羅するつもりで書いてるけど、なかなか出せないね

拾い読みしたけど、名前が挙がった童話・昔話は
『花咲かじじい』『三匹の子豚』『ごんぎつね』『シンデレラ』でいいのかな?

とりあえず今夜中の投下は無理だと思うんで、明日このスレが残ってたらまた投下します
付き合ってくれた人ありがとうございました

もし他に名前挙げてくれれば書き溜めリストに入れるんで
なにかあれば、どーぞ

走れメロス

とりあえず、今のところ>>160まで10個ストックした
金メダルやったね

こんちはー
保守ありがとうございます

今13個のお題のうち、7個書き終わりました。
全部書けるかわからないけど、6時くらいから投下できるよう頑張ります。

保守ありっした
なんとか十個書けたんで、ぼちぼち投下していきます
『ごんぎつね』と『赤頭巾』と『一寸法師』がまだ書けない……


『アリとキリギリス』

夏のある日、アリさんがせっせと食料を運んでいます。

胡桃 「よいしょっ、よいしょっ」

汗をかきながら、一生懸命に巣へと運んでいきます。
そんな様子を、一匹のキリギリスが眺めていました。

白望 「……ダルい」

夏の暑い盛りに飛び回るわけでもなく、冬に備えて食料を準備するわけでもなく。
するとそんな様子を見かねたのか、アリさんはキリギリスさんに忠告をします。

胡桃 「ちょっと、キリギリスさん! 今のうちに食べ物を蓄えておかないと、冬に困っちゃうよ!」

白望 「あー……。でも、動けない」

胡桃 「もー、知らないからね」


そして、寒い寒い冬がやってきました。
アリさんは夏にしっかり食料を溜め込んでいたおかげで、冬を越すことができそうです。

胡桃 「しっかり夏に働いて良かった! さて、キリギリスさんはどうしてるかな?」

胡桃 「きっと、食べ物がなくて困ってるはずだから……仕方ないけど、私が助けてあげよう!」

胡桃 「別に好きとか、そんなんじゃないんだけどね///」

アリさんは、暖かい家の中から白銀の世界を覗きます。
すると、そこには夏のときと変わらず、まったく動こうとしないキリギリスさんの姿がありました。

白望 「お腹空いた……」 グー

胡桃 「やっぱり!」


しかし、よく見るとキリギリスさんの周りには数羽の昆虫が集まっていました。

エイスリン 「パン、タベル?」

白望 「うん」

塞 「ほら、このままじゃ凍え死ぬから……毛布かけとくよ」

白望 「あー、ありふぁふぉ」 モグモグ

豊音 「動けないみたいだから、周りにかまくら作っておいたよー」

白望 「これで寒さをしのげる……」




胡桃 「あ、ありー……?」

予想外の状況に、不適切な発言をしてしまったアリさん。
アリさんはこれ以降、適度に手を抜くことを覚えたそうです。

『アリとキリギリス』 了


『花咲かじいさん』

むかしむかし、あるところにおばあさんとおばあさんが住んでいました。

和 「そういえば、iPS細胞というので同性の間でも子供ができるらしいです」

咲 「え、えぇ~……。う~ん……」

二人はとても仲が良かったのですが、なぜか子宝には恵まれませんでした。
そのかわり、エトペンという喋るペンギンの人形をとても可愛がっていました。

ある日、エトペンが畑で言いました。

エトペン 「ココホレペンペン、ココホレペンペン」

和 「エトペン……。ここを掘れといっているのですか?」

咲 「掘ってみようよ! 金銀財宝ざっくざくかもしれないよ!」

和 「そんなオカルトありえません。さ、畑仕事に精を出しましょう」

エトペン 「チョwwwww」


エトペンがあまりにしつこいのと、おばあさんのススメもあって、
二人は畑を掘ることにしました。するとどうでしょう、案の定、大判小判が出てきました。

咲 「ほらね!」

和 「こ、こんなの偶然ですっ! ……でも、エトペンありがとうございます」

エトペン 「ペンペン!」

すると、そんな様子をとなりの欲張りおじいさんが見ていました。

舞 (財宝ほり当ててやんよ!)

そして、欲張りおじいさんは二人に近づくとエトペンをよこすように交渉します。

舞 「なぁそのペンギンなんだけど うちのなんだ……返してくれないかなー?」

和 「は?」


舞 「実は遠い昔に……うちがそれ落としたこと知らなかった?」

和 「この人はなにを言っているのでしょうか?」

咲 「わ、わけがわからないよぅ……」

欲張りおじいさんは、その後も訳のわからないことを言い続けます
しかし、それを冷静に対応する二人に対して切れました。

舞 「いい加減に貸さんか!」

咲 「とうとう、貸せって言っちゃったよ」

和 「そうなんだ、じゃあ私畑仕事いくね」

舞 「キサマーーッ!!」


二人と一匹は欲張りおじいさんを無視して、畑仕事を再開します。
それを見た欲張りおじいさんは、内心、怒り心頭でした。

舞 (真鍋和の真似なんぞでウチの交渉を流しおってからに!)

舞 (大体なんだよそのクソみたいなペンギンは!)

そしてとうとう、強硬手段にでました。
欲張りおじいさんはエトペンを掴むと、無理やり引っ張りました。

舞 「いいから貸せって!」 グイグイ

咲 「あっ!」 グイグイ

和 「は、離してください!」 グイグイ

エトペン 「ファー…ブルスコ…ファー…ブルスコ…ファ-」


舞 「よこせ……って!! ……あっ!」 グイッ!

和・咲 「あっ!」

エトペン 「モルスァ」

両側から引っ張られた結果、エトペンの腕が千切れてしまいました。
ちぎれた部分から白い綿が畑に飛び散ります。

和 「エトペン!う、うわああああああああああん」 ポロポロ

咲 「の、和ちゃん……」

舞 「やばっ、逃げよっ」

悲しみに打ちひしがれる二人をよそに、欲張りおじいさんは逃げ出しました。
二人はエトペンの白い綿を全て集め、布地の部分は庭に埋めました。


次の日、おばあさんとおばあさんがエトペンの墓参りにいくと、
なんと、エトペンを埋めた部分から大木が生えていました。

そのとき、ちょうどふわりと風が吹きました。
おばあさんたちが抱えた白い綿が風に乗り、大木にフワリとかかりました。

すると――綺麗な淫r、ピンクの花が咲いたのです。

和 「わぁっ、綺麗ですねっ……!」

咲 「本当! 和ちゃん、きっとこれはエトペンが生まれ変わったんだよ!」

和 「そ、そんなオカルト……。いえ、そうかもしれませんね」

満開の花の前で、二人は手をつなぎ二人はにっこりと笑いました。

咲 「さてと、もう一つ花を咲かせなきゃね……」


その日の夜、お殿様が従者を引き連れて山を登っていました。
頂上にさしかかると、山の上にある一本の大木の前におばあさんがいることに気づきました。

衣 「こんなところに人が……。おい、皆の衆とまれ」

殿様は従者を引き連れながら、おばあさんへと近づいていきます。

衣 「おい、そこの……ひぃっ」

咲 「森林限界を超えた高い山でさえ、可憐な花が咲くことがあるんだよ」

咲 「お前もそんな花のように強く――」 ギュアッ!

舞 「サ、サキサマーーッ!」




その日、山の上の大木に満開の花が咲きました。
その見事な咲きっぷりに、お殿様たちは花の下で宴会を始めるほどでした。

咲 「汚ねえ花見だ……」

『花咲かじいさん』 了


『雉も鳴かずば』

照 (……冷蔵庫に入れておいた、私の『牛乳プリン・四個入り』が無い)

照 「なあ、みんな」

菫 「……」

尭深 「……」

誠子 「……」

淡 「……」

照 「……菫」

菫 「……なんだ」

照 「とろふわプリンはうまかったか?」


菫 「……」

淡 「え? あれって牛乳プリンですよn……あっ」

照 「ほう、淡よく知っているな」

淡 「あ、あ、あああああ……」

照 「覚悟はいいな……?」

淡 「あ……あ……」 ブルブル

菫 (淡よ、おまえも喋らなければ、ばれずにすんだものを)

誠子 (無用な発言をしたばっかりに……アーメン)

尭深 (牛乳プリンおいしかった……)



照 「コークスクリューツモッ!」 ギュアア!

淡 「うわああああああああん! ごべんなざーいっ!」

『雉も鳴かずば』 了


『シンデレラ』

むかしむかし、とても美しくてやさしい娘がいました。
しかし、悲しいことに母は若くして亡くなってしまいました。
今は父の再婚相手である新しいお母さんと、二人のお姉さんと暮らしています。

娘は今日も率先して家事をこなしていきます。

星夏 「掃除なら私たちもしますからっ……!」

未春 「それに、もっと綺麗なお洋服を着てください」

純代 「……」 コク

美穂子 「いいんですよ、私は。それより、みなさん今日も舞踏会ですよね?」

美穂子 「精一杯楽しんできてください、ドレスは綺麗にしておきましたから」 ニコッ

心の優しい彼女は、みんなからシンデレラと呼ばれています。
とても美しいシンデレラでしたが、自分に自信がもてなくてあまり外には出ませんでした。
なので、華やかな舞踏会に参加したこともありません。


ある日の事、お城の王子さまが、お嫁さん選びの舞踏会を開く事になりました。
シンデレラのお姉さんたちにも招待状が届きました。彼女らはおおはしゃぎです。

未春 「もしかすると、王子さまのお嫁さんになれるかも……」

星夏 「いいえ、絶対、必ずお嫁さんになりましょう」

純代 「……またうまい飯食べれる」 ジュルリ

シンデレラには招待状は届いていなかったため、
いつも通り、彼女たちの支度を手伝い、舞踏会へと送り出しました。

美穂子 「ああ、私も舞踏会にいきたかったわ。王子様に会いたかったわ」 シクシク

シンデレラが一人残された家で泣いていると、どこからか声がしました。

華菜 「泣いちゃだめだし!」


そこには、真っ黒なフードつきのローブを着た少女がいました。
頭からはネコ耳が、お尻からは尻尾が生えています。

美穂子 「あなたは誰……?」

華菜 「華菜ちゃんは立派な魔法使いだし!」

華菜 「華菜ちゃんの魔法で、シンデレラを舞踏会へといかせてあげるし!」

華菜 「まずは、お城へと向かう荷馬車と御者を用意するし!」

魔女はそう言うと、黄色く分厚い本を見ながら電話をかけはじめました。
そして十分後、彼女らはやってきました。

洋榎 「まいどおーきに!」

洋榎 「どこよりも速く! どこよりも安く! どこよりも荒く! がモットーの姫松運送です!」

絹恵 「おねーちゃん、荒くは余計やっ!」


華菜 「これで舞踏会に行けますね! 」

美穂子 「ありがとうございます、可愛い魔法使いさん」 ナデナデ

華菜 「にゃー……」

由子 「イチャついてるとこ悪いけど、先にお勘定お願いしますなのよー」

華菜 「えっ……」

華菜 「あっ……お金ないし」

美穂子 「大丈夫ですよ、ここは私が払いますから」 ニコッ

恭子 「おおきに、一万円になります」

華菜 (しかもたけぇっ!)


美穂子 「でも、舞踏会で踊るドレスがないわ……」

華菜 (ここが華菜ちゃんの腕の見せ所だし!) ピコーン

華菜 「安心してください! ちゃんと用意してあります!」

そういうと、魔女は白いドレスを取り出しました。
胸には「2-3 かな」と刺繍されています。

華菜 「このドレスはなんと、胸元の布で顔を隠すことができるし!」

華菜 「泣き顔も隠せる、超万能ドレスだし!」

美穂子 「ありがとう、小さな魔法使いさん。じゃあ早速……」

美穂子 「あら、ちょっと胸のあたりがきつくて……着れないわ」

華菜 「!」 ガーン!


漫 「それなら大丈夫ですよ。ウチでは冠婚葬祭用に、ドレスの貸し出しもしてますから」

美穂子 「あら、助かります。じゃあ、お願いしようかしら」

洋榎 「おおきにー。絹、適当に見繕っといてー」

絹 「オッケー」

そして、シンデレラの前に出されたのは、とても綺麗な純白のドレスでした。
美しい顔立ちのシンデレラに、映えることは間違いないでしょう。

美穂子 「素敵……。これにするわ」

恭子 「おおきに、三十万円になります」

華菜 (やっぱりたけぇっ!)


由子 「これで準備はバッチリなのよー」

美穂子 「ありがとうございます」

華菜 (全然役に立つことができなかったし……)

華菜 (それでも、これだけは言わなくちゃ!)

華菜 「シンデレラ、一つ守ってほしいことがあるし」

華菜 「必ず、十二時までに帰ってきてください」

美穂子 「それは何故ですか?」

華菜 「華菜ちゃんの魔法が解k 恭子 「ウチらの営業時間の関係ですね」

美穂子 「あら、それは大変。守らなきゃね」

華菜 「……」 グスン


装いを整えたシンデレラは、姫松運送の荷馬車に揺られてお城へと向かいます。
そして会場に到着したシンデレラを迎えたのは、煌びやかな世界でした。

美穂子 「すごい……」

シンデレラは初めての舞踏会に大興奮でした。
優雅に踊る男女、色鮮やかな装飾品、美味しそうな料理。

ハギヨシ 「お嬢様方、お料理はいかがですか?」

星夏 「あ、ありがとうございます!」

未春 「牛フィレ肉おいしい~」

純代 「私だけ焼き鳥……」

全てが新鮮でした。
そしてなにより――

久 「……」

美穂子 (……素敵な王子様)

王子に目が奪われてしまうのでした。


舞踏会はクライマックスを迎えます。
いよいよ、王子が会場の中から、一緒に踊る女性を一人選ぶのです。

久 (あんまり可愛い子がいないわねー……見つけたっ!)

美穂子 「……」 ドキドキ

久 「お嬢さん、良ろしければ私と一緒に踊ってくれませんか?」

美穂子 「……は、はいっ!」

幾人もの女性の中から、なんとシンデレラが選ばれました。
会場の注目を浴びながら、シンデレラは王子と夢のような時間を過ごします。

久 「あなたの目……綺麗ね」

美穂子 「……ありがとうございます///」


しかし、夢のような時間にも終わりはおとずれます。
時計の針は、間もなく12時を指そうとしていました。

久 「お嬢さん、この後もしよろしければ……」

美穂子 「あ、あのっ! 私帰らないと!」

久 「えっ、まだ12時よ?」

美穂子 「帰らないと、延滞料金が……ごめんなさい!」

シンデレラはそれだけ言うと、会場から走って飛び出していきました。
会場は騒然とし、王子様はその後姿を全速力で追いかけます。

しかし、結局シンデレラを捕まえることはできず、そこには小さなガラスの靴が残るだけでした。
王子様はその靴を優しく拾うと、こう言いました。

久 「明日……町に彼女を探しにいきましょう」


翌日、町の娘たちは大騒ぎでした。
王子様が結婚相手を探しにきている。ガラスの靴がぴったり履ければ、王子様と結婚できる、と。

王子様は順番に町の娘にガラスの靴を履かせようとしますが、
あまりに小さく、誰一人として履ける人はいませんでした。

そして、そろそろシンデレラたちの番です。

星夏 「履ければ、リーチッ……!」

久 「履けないな……次だ」

星夏 (王子様――!!!)

シンデラレの番は次の次です。
もし次の人が履けなければシンデレラだと、ばれてしまう――

純代 「……フンッ!」 バキィッ!

久 「えっ」

美穂子 「えっ」

――はずでしたが、なんと、ガラスの靴は、粉々に砕けてしまいました。


純代 「ずいぶん壊れやすい靴ですね」

純代 「まあ、でも壊れたものは仕方がないのですし」

純代 「恐らく私は履けたので、私と結婚しますか」

久 「えっ」

美穂子 (こんなのおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい
      あの靴を履けるのは、私なのに私なのに私なのに私なのに
      王子様王子様王子様王子様王子様王子様王子様王子様)

純代 「それじゃあ、よろしく」

久 「えっ」


というわけで、王子様はシンデレラのお姉さんと結婚して、めでたしめでたし。

と、おもいましたが、おうじさまはさいわいなことにしんでれらのかおをおぼえていたみたいです。
すてきなおうじさまと、わt……しんでれらは、すえながく、しあわせにくらしたそうですよ。

『シンデレラ』 了


『三年峠』

あるところに、「三年峠」と呼ばれる美しい峠がありました。
しかし、そこにはこんな言い伝えがありました。

霞 「三年峠で転んではだめよ。そこで転んだら、三年しか生きられないから」

村人たちはこの言い伝えを恐れ、三年峠にさしかかると注意深く歩くようにしていました。
そんなある日のことでした。四人の少女が三年峠を歩いていました。

初美 「とうとう三年峠まできちゃいましたー」

春 「気をつけて歩く……」

巴 「特に姫様、気をつけてくださいよ」

小蒔 「大丈夫ですよっ!」

小蒔 「細心の注意を払って歩……き……ますか……ぐぅ」

初美・巴 「あっ」

少女は急に眠りに落ちると、そのまま崩れ落ち、三年峠で転んでしまったのでした。


小蒔 「うぅ……三年峠で転んでしまいました」

小蒔 「私はもうすぐ死んでしまうのでしょうか……」

少女は心配のあまり寝込んでしまいました。
不安で不安で、大好きなおやつも喉を通りません。

すると、その様子を憂慮した「ハルル」という少女がこう言いました。

春 「姫様、もう一度三年峠へ」

春 「一度転ぶと、三年生きることができる」

春 「それなら、二度、三度転べば、六年、九年」

春 「たくさん転べば、それだけ長生きできる」


それを聞いた少女は、もう一度三年峠にいきました。
そして何度もころん、ころん、と転び、すっかり元気を取り戻しました。

霞 「長生きねぇ……ふんふむ」





舞台は現代へと移ります。
20XX年、麻雀が空前のブームとなり、麻雀人口は一億人を突破しました。

恒子 「さあ、全国大会二回戦の大将戦がはじまります!」

恒子 「シードの永水女子、大将はもちろん、この人です!」

恒子 「永遠の17歳・石戸霞選手だーっ!」


霞 「よろしくお願いしますね」

恒子 「石戸選手は高校生とは思えない大人っぽさがありますね?」

健夜 「ええ……。石戸さんはこれで、37年連続の出場になりますね」

健夜 「私が高校三年生のときも、彼女と同卓になったことがあります」

恒子 「ということは、すこやんは今年で55歳だーっ!」

健夜 「37年前にあたったわけじゃないよ!?」

恒子 「さて、石戸選手の若さの秘訣はなんでしょうっ!?」

健夜 「三年峠がなんだか、とインタビューで読んだことはありますが……」





霞 「さて、また三年峠で転ぶ作業が始まるわ」 ニコッ

『三年峠』 了


『白雪姫』

むかし、ある城に女王が住んでいました。
女王は魔女であり、そして伝説(レジェンド)でもあります。

女王は今日も、魔法の鏡に向かってこう言います。

晴絵 「鏡よ鏡よ鏡さん、この世で一番美しいのは誰だ?」 ドキドキ

すると、魔法の鏡はこう答えます。

灼 「阿知賀の伝説(レジェンド)・晴ちゃんです!」

それを聞くと、女王は満足そうに頷くのです。

またある日、女王はいつものように、魔法の鏡に向かってこう言います。

晴絵 「鏡よ鏡よ鏡さん、この世で一番美しいのは誰だ?」 ワクワク

灼 「……」

晴絵 「……ん?」


すると次の瞬間、魔法の鏡は一人の可愛らしい少女を映します。
そして、鏡の中の少女はいたずら顔でこう言いました。

灼 「憧『晴絵だと思った? 残念! 阿知賀のアイドル・憧ちゃんでした~』」

晴絵 「……」

灼 「……はっ」

晴絵 「……」 グスッ

灼 「は、晴ちゃん!これは、ち、違うの!」

晴絵 「……鏡よ鏡よ鏡さん、この世で一番私服がダサいのは誰だ?」

灼 「憧 『ねぇ、シズ……。灼の服、ちょっとダサくない?』」

灼 「や、やめてええええええええええ!」


女王と魔法の鏡はお互い傷つけあいましたが、
やがて怒りの矛先は、阿知賀のアイドル・憧ちゃんへと向かいました。

女王は家来に阿知賀のアイドル・憧ちゃんを殺すように命令します。
しかし、阿知賀のアイドル・憧ちゃんを可哀想に思った家来は、
阿知賀のアイドル・憧ちゃんを殺すことができず、森の中に置いてきたのでした。

阿知賀のアイドル・憧ちゃんは、見知らぬ森の中をとぼとぼとさ迷います。
すっかり暗くなり、流石の阿知賀のアイドル・憧ちゃんも、森の中に一人でいるのは心細くなってきました。

憧 「も~、いきなりなんなのよ、最悪」

憧 「あ、家発見。事情を話して泊めてもらおう」

憧 「優しい人だといいな~」

運よく家をみつけた阿知賀のアイドル・憧ちゃんは、玄関をノックします。
しかし、返事はありません。仕方ないので、扉を開けて中に入ると、そこには7つの小さなベッドが置いてありました。

憧 「ちょっと小さいけど……寝させてもらおう……」 グー

阿知賀のアイドル・憧ちゃんは眠りへと落ちていきました。


すると、しばらくして陽気な歌声が聞こえてきました。
楽しげに歌うのは、七人のこびと達です。

衣 「ハイテー、ハイテー♪ 親番が好きー♪」

衣 「ペーポン、ペーポン、ペーポン、ペーポン♪」

衣 「ハイテー、ハイテー♪」

胡桃 「勝手に歌詞を変えない!」

マホ 「ハイテー、ハイテー♪」

胡桃 「そこ、真似しない!」

ちょいせきはずします


一 「まあまあ、それよりそろそろ家につくよ」

優希 「お腹ぺこぺこだじぇ! 早くタコスを食べるじぇ!」

淡 「食後のプリンも買ってあるしね~」

漫 (ウチは小人に入ってええんかな……)

七人の小人が家に到着し、扉を開けます。
すると、そこには阿知賀のアイドル・憧ちゃんがいました。

胡桃 「誰!?」

憧 「あ、お邪魔してまーす」

憧 「阿知賀のアイドル・憧ちゃんで~す」


七人は突然の来客に驚きましたが、
阿知賀のアイドル・憧ちゃんは、とても可愛かったのですぐに仲良くなりました。

わいわいと話しながら、夕ご飯を一緒に食べます。
時間は和やかに過ぎていきましたが、食後のデザートタイムに事件が起こりました。

淡 「さあ、みんなでプリンを食べよー」

優希 「待ってたじぇ~」

しかし、冷蔵庫を開けるとそこには――
空っぽになったプリンの容器が七つあるだけでした。

淡 「あ、あわあわ……」

マホ 「デザートなしになっちゃったのです!」


食後のとっておきのプリンが無くなり、七人は呆然としています。
すると阿知賀のアイドル・憧ちゃんは、舌をぺろっと出し、上目遣いでこう言いました。

憧 「ごめーん! 阿知賀のアイドル・憧ちゃんが食べちゃったんだ~」

憧 「許してほしいなっ! 阿知賀のアイドル・憧ちゃんからのお願いだよ?」

阿知賀のアイドル・憧ちゃん、かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
そこらへんの男性諸君なら、そう言って許したことでしょう。

しかし、とっておきの楽しみを失った七人の小人は、それでは許しませんでした。

淡 「へ~……」

胡桃 「絶対許さないからね!」

衣 「この愚者に……裁きを下す!」

マホ 「マホ……今なら殺れる気がします」


希 「とりあえず、こいつにプリンを買いにいかせるじぇ!」

一 「そうだね、ついでに皿洗いもしてもらおうか」

漫 「さあ、早速働いてもらうでー」

憧 「あ、あれ……?」

それからというもの、阿知賀のアイドル・憧ちゃんは七人の小人に厳しくしつけられました。
家事をこなし、山に木を切りにいき、一般常識の教育を受けます。

そして、一年後――

憧 「阿知賀女子麻雀部、新子憧と申します!」

そこには、立派に自立した新子憧がいました。
そう、七人の小人に出会ったことによって、かつてわがままし放題だった、
『阿知賀のアイドル・憧ちゃん』は死んだのです。

可愛ければなんでも許されるわけじゃない。
とても大事なことを、新子憧は教えてもらったのでした。

『白雪姫』 了


優希 「とりあえず、こいつにプリンを買いにいかせるじぇ!」

一 「そうだね、ついでに皿洗いもしてもらおうか」

漫 「さあ、早速働いてもらうでー」

憧 「あ、あれ……?」

それからというもの、阿知賀のアイドル・憧ちゃんは七人の小人に厳しくしつけられました。
家事をこなし、山に木を切りにいき、一般常識の教育を受けます。

そして、一年後――

憧 「阿知賀女子麻雀部、新子憧と申します!」

そこには、立派に自立した新子憧がいました。
そう、七人の小人に出会ったことによって、かつてわがままし放題だった、
『阿知賀のアイドル・憧ちゃん』は死んだのです。

可愛ければなんでも許されるわけじゃない。
とても大事なことを、新子憧は教えてもらったのでした。

『白雪姫』 了


『鶴の恩返し』

むかしむかし、あるところにとても親切な少女が住んでいました。
彼女はとても心優しく、村人からも好かれています。

煌 「さあ、今日も頑張りますよ……おや?」

少女が見つけたのは、罠にかかっている二匹の鶴でした。
少女はすぐに駆け寄ると、すぐに罠を外してあげます。
すると、自由になった鶴は、二匹仲良く山のほうへと飛んでいくのでした。

煌 「今日もすばらな一日でしたね……ん?」

その晩、少女が家で晩御飯を食べていると、玄関を叩く音が聞こえました。
少女は腰をあげ、扉を開けます。するとそこには、美しい二人の少女がいました。

姫子 「こんばんはー」

哩 「道に迷ってしまいまして……今晩、泊めていただけませんか」


煌 「こんな狭苦しいところで良ければ、喜んで!」

姫子 「いいんですか?」

煌 「人助けができるなんて、すばらですっ!」

二人はこの言葉に喜び、そこに泊まることにしました。

次の日も、また次の日も雪は降り続き数日が過ぎました。
家主の少女は心優しく、二人のために炊事、洗濯、何でもやりました。

煌 「二人とも、お風呂が沸きましたよ!」

姫子 (あ~、人間に化けて恩返しするつもりだったのに、なんかどうでもよくなってきちゃった)

哩 (居心地がよか……)


ある日のこと、二人の少女はこう言いました。

姫子 「これから私たちは部屋にこもって話し合いをします」

哩 「話し合いをしている間は、決して部屋を覗かないでください」

煌 「わかりました!」

少女は二人の言いつけどおり、決して部屋を覗くようなことはしませんでした。
しかし、二人の話し声は大きく、薄い扉を隔てて声が漏れてきました。

哩 「ここは居心地が良いし、もう寄生しようか」

姫子 「そうですね! あの人もちょーお人よしですし、許可してくれますって!」






煌 「聞いてしまった、うわぁショック~」


煌 「なんってことはないですね!」

煌 (ヒモ扱いでも私を必要としていてくれる)

煌 (こんなすばらなことはないですねっ!)

煌 (二人のお世話――任されました!)

少女は二人と一緒に住むことを決めました。
一生懸命お金を稼ぎ、一生懸命に二人の世話をします。

そんな少女の噂は村をこえてたちまち広がっていきました。
そして今日もまた、彼女のもとには人が訪ねてくるようです。

咏 「なんか、ここで一生養ってもらえるって聞いたんだけど~」

煌 「これで60人目……すばらですっ!」

『鶴の恩返し』 了


『三匹の子豚』

あるところに、三匹の子豚の姉妹がいました。

長女は病弱ですが、頑張り者。

怜 「こほっ、こほっ……。さあ、今日も頑張るで……」

次女は天然ですが、頑張り者。

玄 「お姉ちゃん、疲れたら私にお任せあれ!」

三女は聖人のうえに、頑張り者。

煌 「お姉様、その心意気すばらですっ!」

怜・玄・煌 「ぶひぶひぶひ」

三匹はとても仲良しです。


怠け者は誰一人いないのですが、話も進まないので、
母親は三匹に家を出るように、と自立を促しました。

家を追い出された三匹は、それぞれ家を建てることになります。

怜 「なにも追い出さなくてもなー」

煌 「まあ、何事も経験がすばらですっ」

玄 「ふぅーむ、なるほどなるほどー」

みんな頑張りやさんなので、一日中せっせと働きます。
そして、三匹はレンガ作りの家を隣同士に並べて完成させたのでした。

怜 「やったでー。早速、お祝いや」

煌 「盛大にやりましょう!」

玄 「それじゃあ、私の家でやろっか!」

怜・玄・煌 「ぶひぶひぶひ」

三匹はとても仲良しです。


そんな様子を遠くから見つめるものがいました。
茶色い毛、大きな口、回転する右腕――そう、狼です。

照 「……うまそうな匂いがする」

狼は鼻をくんくん、と鳴らすと匂いの根源を探ります。
それは、さきほど完成した豚さんたちの家から匂ってくるのでした。

照 「……今夜は腹いっぱいになりそうだな」

狼は舌なめずりすると、迷わず子豚の家へと向かいます。
そして玄関の前に立つと、コンコン、とノックをします。

玄 「はい! どなたですか?」

照 「あ、狼です」


怜 「狼やて……!」

玄 「ど、どどどーしよー、おねーちゃーん」

煌 「あまりすばらくない状況ですね……」

三匹は突然の狼の来訪に慌てふためきます。
何度もノックの音が響きます。三匹は震えながら身を寄せ合いました。

照 「開けてもらえない……。しょうがない、これを使うか」

狼は右手でドアノブを掴むと、そのまま右手を回転させました。
するとどうでしょう! ドアノブが回転により破壊されてしまいました。

照 「よし、開いた」


一方、ドアノブが壊された三匹は恐怖で縮みあがってしまいました。

怜 「どーする、どーする……」 アタフタ

玄 「だ、誰かが止めにいきませんか……?」 アタフタ

怜 「え……ごほっ! ごほっ!」

煌 「わ、わざとらしい咳ですね」

怜 「なんや、仮病やないで。まあ、ええ。長女やし、ウチがいったるわ」

玄 「おねーちゃんに行かせるなら、私が行くよ」

煌 「それならばっ! 私が行きましょう!」

怜・玄 「どーぞどーぞ!」

煌 「……」

怜・玄 「ぶひぶひぶひ」

二匹はとても仲良しです。


煌 (まあ、仕方がないですね)

煌 (捨て駒――任されました!)

三女は意を決して、今にも開かれようとしている扉へと近づきます。
鼓動は高鳴り、手に汗が滲みますが、一歩ずつ扉へと近づきます。

煌 (大丈夫、大丈夫……。それに狼も客人、すばらな対応をすべきです)

そして扉まであと1メートルの距離となった瞬間――

照 「お邪魔します」

煌 「どひゃぁっ!」

狼さんがいらっしゃいました。


煌 「な、ななななななん、なん、何のようでしょうか!?」

煌 (用件ぐらいは聞いておくべきでしょう! もしかしたら、良い狼さんかもしれませんし!)

煌 (ただ、引越し祝いに粗品を差し入れにきただけかもしれませんしねっ!)

照 「腹減ったから、食いにきた」

煌 「ずばりですねっ!」

煌 (も、もうだめかもしれませんね……)

煌 (お姉様方、捨て駒すら全うできない私をお許しください)

三女が死を覚悟した、そのときでした。

照 「……この匂い」

煌 「え――」


子豚さんの家の中は、食欲をそそる匂いで満たされています。
裂かれた肉は、炎で焼かれ、食物連鎖のごとく強者の胃袋に入っていきます。

怜 「なんやー、狼さんも腹へってただけなんやなー」 ジュージュー

照 「焼肉の良い匂いにつられてしまった」 ジュージュー

玄 「私たち、ちょうど新築パーティーをしていたんですよ」 ジュージュー

照 「そうか……。せっかくのお祝いなのに、お邪魔して申し訳ない」 ヒョイパク

煌 「いえいえ、全然かまいませんよ。それに、人が多いほうがすばらですっ!」

照 「ありがとう。……このタレおいしい、なにを使っているの?」

煌 「エバラですっ!」


照 「なるほど、黄金の味というわけか。そして、このお肉は?」 ジュージュー

怜 「もちろん、牛にきまっとるやろ。ウチら、豚やで」

玄 「流石に共食いはちょっと……」

煌 「すばらくないですねっ!」

照 「なるほど、これは失礼した」

怜 「まあ、ええってことよ。牛肉焼いても、豚焼くな、ってな」

怜・玄・煌・照 「ぶひぶひぶひ」

四匹はとても仲良しになりましたとさ。

『三匹の子豚』 了


『赤ずきん』

むかしむかし、赤頭巾のよく似合う可愛らしい女の子がいました。
そのため、女の子はみんなから「赤ずきんちゃん」と呼ばれていました。

久 「おはよ~、赤ずきん」

咲 「おはよう、お母さん!」

決して、赤い血の色が似合うとかいう由来ではありません。

そんなある日のこと、赤ずきんちゃんはお母さんにお使いを頼まれました。
病気で寝込んでいるおばあさんのところへ、ケーキとワインを持っていくのです。

久 「いい、赤ずきん。森の中ではオオカミに注意するのよ?」

咲 「わかった! それじゃあ、いってきまーす!」

赤ずきんは元気よく出発します。




咲 「うぅ……。ここ、どこ……」 エグッ

そして、早速森の中で迷子になりました。


咲 「……うぅ」 キョロキョロ

照 「おや、あれは……赤ずきんちゃん?」

照 (って、なんでまた狼なんだ……まあ、いい)

そんな迷子の様子の赤ずきんちゃんを見つけたのは、オオカミでした。
赤ずきんちゃんの困っている様子を見かねて、オオカミは声をかけます

照 「赤ずきんちゃん、どうしたの?」

咲 「オオカミさん!実は迷子になっちゃって……」

赤ずきんちゃんは、これからおばあちゃんの家に行くことを話します。


照 「そうなんだ。じゃあ、私と一緒に行こうか」

咲 「ほんとっ!? 森の住人のオオカミさんと一緒なら、安心だねっ!」パァッ!

照 (赤ずきんちゃんかわいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!)

咲 「オオカミさん、鼻血でてるよ。大丈夫?」

照 「だ、大丈夫。じゃあ、一緒に行こうか!」

咲 「うん!」

赤ずきんとオオカミは元気よく出発します。




照 「迷ったよぅ……。ここ、どこ……」 エグッ

咲 「うええええええん! おかーさーん!」 ボロボロ

そして、結局森の中で迷子になりました。


夜もだいぶ遅くなった頃、迷子になった赤ずきんとオオカミをお母さんが見つけました。

久 「赤ずきん! 無事だった!?」

咲 「お、おかーさん……。怖かったよぅ……」 エグッ

久 「なにがあったの……? 怒らないから、言ってみなさい」

咲 「森の中で迷って、オオカミさんに会って、オオカミさんについていったらまた迷ったの」 グズッ

咲 「ごめんなざい……うええええええええええん!」 ボロボロ

久 「もう、だからオオカミに気をつけなさいって言ったでしょ」

照 「えっ」


久「でも、赤ずきんが無事で良かったわ」

咲 「うん!」

照 「ふぇぇ……」 エグッ

久 「じゃあ、一緒に帰りましょうか!」

咲 「うん!」

照 「うえええええええん!」 ボロボロ

森の中に、オオカミさんの大きな泣き声が木霊しました。




――おばあさんの家

京太郎 「きませんね……赤ずきんちゃん」

トシ 「そうだね」

『赤ずきん』 了


『走れメロス』

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐な王を除かなければならぬと決意した。
メロスには手に豆ができぬ。メロスは、麻雀打ちである。日々、麻雀を打ち、楽しく暮らしてきた。

けれでも、にわかに対しては人一倍に敏感であった。

メロスは気晴らしに町へと出ていた。
猿に似た少女があんぱんを買うのを眺めながら、ぶらぶらと大路を歩いた。

メロスには竹馬の友があった。ハツセンティウスである。
その友を、これから訪ねてみるつもりなのである。

しかしメロスは歩いているうちに、町の様子を怪しく思った。
町全体の雰囲気が暗いのである。メロスは若い衆を捕まえて、なにがあったのか訪ねました。

美幸 「王様は、ドラを集めます」

やえ 「なぜ集めるのだ」


美幸 「カンドラが乗っている、というのですが、誰もそんなに、カンなどしませぬ」

やえ 「たくさんのドラを集めたのか」

美幸 「はい、はじめはツモドラ6を。それから、ノベタン片上がりで三色ドラ6を」

やえ 「驚いた。王様はにわかか」

美幸 「いいえ、にわかではございませぬ。ドラしか信ずることができぬ、というのです、もー」

聞いて、メロスは激怒した。

やえ 「呆れた王だ。仕方が無い、私が見せてやろう……」

やえ 「王者のうち筋を!」

メロスは単純な男であった。そのまま、のそのそと王城に入っていった。
たちまち彼は捕縛された。調べられて、メロスの手には豆が出来ていなかったので、騒ぎが大きくなってしまった。
そうして、メロスは王の前に引き出された。


玄 「なにをしにきたのですか?」

暴君クロニスは静かに、けれども威厳を以もって問いつめた。

やえ 「ドラをにわかの手から救うのだ」

玄 「何故ですか?」

やえ 「ドラを集めるのは、最も嫌われる打ち筋だ。王は、民の赤ドラでさえ疑って居られる」

玄 「むぅ~……」

王の打ち筋を批判したメロスは、王の命令によって磔とされてしまった。
王は怒り心頭で、すぐにでもメロスを刑に処すつもりであった。


玄 「詫びたって、もう許しませんからね!」

やえ 「ああ、王はにわかだ。自惚れているがよい」

やえ 「私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」

メロスは視線を落とします。そして少しばかり躊躇い、こう言いました。

やえ 「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい」

やえ 「今度、麻雀の県大会があるのです。三日のうちに、私は母校を全国へ導き、必ず、ここへ帰って来ます」

メロスの言葉に、王様はくすくすと笑いました。
そんなことは、とうてい信じられぬ、といわんばかりの顔です。


やえ 「私は必ず、帰ってくるのです。約束は守ります」

やえ 「私の友人に、ハツセンティウスがいます。無二の友人だ」

やえ 「あれを、人質としてここに置いて行こう。私がここに帰って来なかったら……」

やえ 「あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい」

玄 「願いはききました。身代わりを呼びなさい」

玄 「……少し遅れてくるといいですよ、そしたら、あなたの罪は永遠に許されます」

やえ 「なんとにわかなことを……!」

メロスは口惜しく、地団駄を踏んだ。ものも言いたくなくなった。


竹馬の友、ハツセンティウスは、深夜、王城に召された。
暴君クロニスの面前で、二人の友は二年ぶりに再開した。
メロスが友に一切の事情を語ると、ハツセンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめた。

初瀬 「メロス先輩、私は一度友に裏切られています」

初瀬 「一緒の学び舎に進もうと誓った友は、黙って違う学び舎に進みました」

やえ 「なんと、にわかな奴よ」

初瀬 「それでも私は、メロス先輩を信じています」

初瀬 「先輩、頑張ってください!」

やえ 「……ありがとう」

メロスはハツセンティウスに背を向け、左手をスッと挙げる。
友と友の間は、それでよかった。そしてハツセンティウスは、縄打たれた。

それを見たメロスは、すぐに出発した。
小走りで。


結果からいうと、メロスの罪は許された。
小走りで走り続けた結果、三日で町まで戻ってくることはできなかったのだ。

さらに言えば、麻雀の県大会では初戦敗退であった。
初見のドラ麻雀相手に、メロスは大幅なリードを許してしまったのだ。
ちなみに、こちらの罪は某所でも未だに許されてない。

そして、一週間ほどして、メロスは町へと戻ってきた。
ハツセンティウスは王より哀れみをうけ、彼は磔から免れていた。

メロスが町に姿を現すと、群集はどよめいた。
にっわっか、にっわっか、と口々にわめいた。

やえ 「ハツセンティウス。私を殴れ、力いっぱい殴れ」

初瀬 「はい」

竹馬の友、ハツセンティウスは躊躇うことなく、メロスの頬を殴りつけた。


それを見た群集は、歓声をあげた。
群集は次々と、メロスに王者の言霊を浴びせ続けた。

「ありゃ相当打ってる(笑)」

「見せてやろう……王者のうち筋を(笑)」

「私は小3の頃から、マメすらできてない(笑)」

「ニワカは相手にならんよ(笑)」

やえ 「……」 プルプル

髪を逆立てた少女が、壁をドンと拳で叩いた。メロスは、まごついた。
佳き友は、気をきかせて教えてやった。

初瀬 「メロス先輩、あなたやっぱりにわかじゃないですか」

初瀬 「尊敬していた先輩の醜態を、中継で皆に見られるのが、私はたまらなく口惜しいです」

にわかは、ひどく赤面した。

『走れメロス』 了


『一寸法師』

むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
二人には子どもがいませんでした。なので、二人は神さまにお願いしました。

塞 「神さま! 親指くらいの小さい子どもでもいいから、どうか子どもをさずけてください!」

白望 「あんまり小さすぎてもダルい……」

すると願いが通じたのか、本当に小さな子どもが生まれました。

胡桃 「おぎゃー!」

ちょうど、おじいさんの親指くらいの男の子です。
あまりに小さいので、二人は一寸法師と名づけました。


二人は一寸法師を大層可愛がりました。

白望 「ほら、こっちおいで……」

胡桃 「ゎー!」 ピョンピョン

塞 「可愛いねー……って、あれ!? 見失った!」

白望 「……」

塞 「一寸法師、どこーっ!?」 プチッ

胡桃 「ぎゃー!」

塞 「あ」

あまりに小さいため、ときには潰してしまうこともありましたが。


やがて一寸法師も心が成長し、都へいって働くことになりました。
そして都で姫に出会い、姫のお守り役として働くことになりました。

胡桃 「姫さま、起きてください!」

エイスリン 「ンー……オハヨ。イッスン、ボーシ」

姫は愛用のホワイトボードの上に、一寸法師を乗せて歩きます。
二人はいつも一緒に行動していました。

ある日の、二人でお寺にお参りをしているときのことです。
道中、突然大きな鬼が二人の前に現れました。

豊音 「やっほー」

エイスリン 「ヒ、ヒィィ……」

胡桃 (すごいおっきいよぉ……)

胡桃 「でも、姫は私が守る!」

一寸法師は一本の針を取り出すと、鬼に向かっていきました。


胡桃 「とりゃあああああ!」

豊音 「ん?」

豊音 「なにこの小さい子……ちょー可愛いよー」

可愛さのあまり、鬼は思わず一寸法師を手で捕まえようとしました。

豊音 「えいっ」 プチッ

胡桃 「ぎゃー!」

豊音 「あっ」

エイスリン 「アッ」


豊音 「本当にごめんねー」

胡桃 「だ、大丈夫だよ……」

豊音 「お詫びに、これをあげるよー」

鬼がくれたのは、小さな木槌のようなものでした。

豊音 「これは打出の小槌といって、振るとなんでも好きなものが出てくるんだよー」

胡桃 「それじゃあ、私の身長を大きくすることもできる!?」

豊音 「もちろん! 背出ろー、背出ろー、って言えばオーケーだよー」

胡桃 「姫さま、お願いします!」

エイスリン 「ウン!」


姫は打出の小槌を握ると、大きく振りかぶります。
そして、ブンブンブン、と三回打ち下ろしました。

エイスリン 「セ、デロ! セ、デロ! セ、デロ!」 プチッ プチッ プチッ

胡桃 「ぎゃー! ぎゃー! ぎゃー!」

エイスリン 「アッ」

豊音 「あっ」




胡桃 「もー、ちっちゃいの嫌だー!」 ビエーン

『一寸法師』 了

PC調子悪いのでちと休憩しやす

少しだけ調子良くなったから続けます
一応、これが現在のストックの最後


『ウサギとカメ』

むかしむかしあるところに、足の速いウサギと、足の遅いカメがいました。

咲 「ねぇねぇ、カメさん」

恭子 「な、なんや、ウサギさん」

咲 「明日、向こうの山の頂上までかけっこの競争しませんか?」

恭子 「……え」

咲 「……だめ?」

恭子 「……べ、別にええよ」

咲 「やった~! 絶対ですよ!? じゃあ、明日の朝八時に山の麓に集合ですからね!」

恭子 「わかった……」


洋榎 「ええんか、恭子。あんな約束して」

由子 「カメのウチらじゃ、ウサギにかけっこで勝つなんて無理なのよー」

恭子 「ええんです、主将。それに――」

恭子 「凡亀のウチが、ウサギ相手にどこまでやれるか楽しみですわ」



――翌朝

咲 「あ、カメさん! おはよ~ございます!」

咲 「かけっこの話を友達にしたら、二匹も参加したいって」

霞 「バッファローです。よろしくお願いしますね」

豊音 「キリンだよー。よろしくねー」

恭子 「」


恭子 (なんやこれ……) カタカタ

咲 「それじゃあ、はじめよっか!」

恭子 (まて、考えるのをやめたら、それこそただのバカメや)

咲 「位置について……」

恭子 (諦めたらアカン……勝機はあるはずや!)

咲 「よーい……」

恭子 (甲羅を磨いて発想も磨くで!)


咲 「――ドンッ!」 ヒュッ!

霞 「――バッ!」 ドドドドドドド!

豊音 「――シッ!」 ダカダッ! ダカダッ!





恭子 「いくでー」 ノロノロ…






洋榎 「これは無理やろ……」

由子 「イジメなのよー」


正午になり、カメはやっと山の中腹部にたどり着きました。
すると、そこに広がる原っぱには先にいったはずの三匹がいました。
どうやら、お弁当を広げてランチをしているようです。

咲 「おいしいねー」

霞 「いっぱい食べてね」

豊音 「ちょーおいしいよー」

恭子 (なんや! なめやがって!)

恭子 (まあいい、この隙にウチがリードさせてもらうで)

恭子 (やっぱり、着実に努力を重ねるものに神様は味方するんや!)

カメさんは三匹に気づかれないようにしながら、一人だけ先に歩みを進めました。
そして、しばらく経つと三匹がいた原っぱは見えなくなりました。


恭子 「どや! 出し抜いてやったわ!」

豊音 「追っかけるけどー」

恭子 「どぅわっ!?」

気づけば、背後にキリンさんが迫っていました。

恭子 (こいつ、わざと先にいかせて後から仕留める――)

恭子 (背向のトヨネか!)

豊音 「おさきにー」

キリンさんは、あっという間にカメさんを追い抜いていきました。


日が傾きはじめたころ、カメさんは山の7合目まできました。
7合目まで来ると、頂上までは遠回りで緩やかな細道と、険しい近道にわかれています。
すると、さきほどカメさんを追い抜いていったキリンさんの姿を見つけました。

恭子 「キリンさん、どーしたんや?」

豊音 「これみてよー」

『バッファロー以外通行禁止』

なんと、近道にこんな札が立てられていました。
これでは、キリンさんとカメさんは遠回りをするしかありません。

恭子 (これは、バッファローだけに近道を限定する――)

恭子 (絶一門か……っ!)

仕方ないので、キリンさんとカメさんは遠回りの細道から行くことにしました。


二匹はゆっくり、ゆっくり進みます。
やがて、二つの道の合流地点にたどり着くと、今度はそこにはバッファローさんがいました。

霞 「あらら……」

よく見ると、落とし穴にはまって身動きがとれなくなっています。

恭子 「どうしたんやー、バッファローさん」

霞 「実はあっちの近道からきたんだけど、ここに着いたらカンされちゃったのよ」

恭子 「カンされた、ってどういうことや?」

霞 「そうねぇ……。どこからか『カン』って聞こえてきて、気づいたら穴に落ちてたわ」

豊音 「なんか怖いねー。今助けるよー」

恭子 (普通のかけっこさせてーな……)

二匹は頑張ってバッファローを穴から引っ張り挙げます。
なんとか穴から脱出できたバッファローでしたが、足を挫いてもう走れません。


三匹は一緒に頂上を目指すことにしました。
あたりはすっかり暗くなってしまっているので、ウサギさんはとっくにゴールしているでしょう。

三匹はゆっくり、ゆっくり頂上を目指し、とうとう山頂が見えてきました。
するとそこには、たくさんの観客がいました。

恒子 「おおーっと! ここで、カメ、キリン、バッファローがさんすくみで登場だーっ!」

恭子 「なんや、いつの間に実況なんておるんや」

豊音 「大事になってるねー。まあ、完走できたらいいんじゃないかなー」

霞 「そうね、ウサギさんに一位は取られちゃったけど、こういうのもいいわね」

ほのかな友情が芽生え始めた三匹ですが、直後思いもよらぬ言葉を聴きます。

恒子 「さー! 誰が一位となるのか! ウサギさんが迷子の今、優勝は誰の手に!」

恭子・豊音・霞 「えっ」


健夜 「ウサギさんはどうやら、山の八合目あたりで迷ってしまったようですね……」

恒子 「それは大変ですね! そして、三匹の中で頭抜けるのは誰でしょう!?」

実況と解説の言葉を聞いた後、三匹は顔を見合わせます。
そして、笑顔で頷くと、今までと変わらない歩調で進みます。

恭子 「ここまできたら、一緒にゴールしようや」

豊音 「そうだねー。盛り上がってるところわるいけどー」

霞 「さあ、いきましょう」

三匹が横並びとなり、ゴールテープの前に立ちます。
そして同時に足を踏み出した瞬間――

咲 「うぅ~……ここどこっ、ってみんな!」 パァッ

横の茂みから、迷子のウサギさんが飛び出してきて、
なんと四匹同時にゴールテープを切ったのでした。


恒子 「なんと! ここでウサギさんが迷子から生還! 奇跡の四匹同着だー!」

恭子 「なんや……ウサギさん、無事だったんかい」

豊音 「まあ、三匹でゴールも四匹でゴールも変わらないよー」

霞 「そうね、むしろこのほうが良かったかもね」

恭子 「せやな。とりあえず、みんなお疲れさん」

豊音 「ありがとうございましたー」

霞 「ありがとうございました」

咲 「ありがとうございました」 ピョッコリン


恭子 (ま、これで一件落着やな……)

恒子 「しかし、四匹同時ゴール! タイム差プラマイゼロとは珍しいですね!」

健夜 「そうですね。ただ、兎さんは過去に参加したレースで、二度同じようなことになっています」

恭子 (……え。ま、まさか……)

咲 「……カメさん」

恭子 「あ、あああ……」

咲 「かけっこって楽しいよね!」

恭子 「うわあああああああああああああ!」




洋榎 「トラとウマやな……」

由子 「タイトルとかけなくていいのよー」

『ウサギとカメ』 了

とりあえず書き溜め終了
まだ主要キャラ出し切ってないし、
リクエストもらったごんぎつねも書けてないが

さて、このスレどうすっかな

せやね
きっちり区切りつけたかったけど、ちょうど日付も変わるし
これにてお開きということで。二日間ありやーした

怜以外の千里山面子といくのんを出せなかったのが心残りだったわ

みんなまじでthx
しばらく適当に覗いてますわ

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