男「妹がちっちゃくなった」(78)

妹「おはよー……」

男「おはよー」

妹「私……今日学校休む」

男「どうした?具合悪いのか?」

男「……あれ、俺寝ぼけてんのかな」

妹「……お兄ちゃんはおかしくないよ。おかしいのは私」

男「……いつもより随分ちっさいな」

妹「……うん」

男「俺寝ぼけてるな」

妹「いやほんとに小さくなったんだってば」

男「幼稚園児?」

妹「高校生です」

男「……この場合はどういう病院がいいんだろう。内科じゃないよなぁ」

妹「病院は行かない!」

男「いやでもこれは……」

妹「行かないよ!恥ずかしいもん!!」

男「……でもなぁ」

妹「明日になれば戻ってるって!きっと!!」

男「うーん……」

妹「絶対行かないから!!」

男「……じゃあこうしよう」

男「俺は今日学校を休む。明日になっても小さいまんまなら病院へ連れて行く」

妹「……でも」

男「でももへちまも無い。また、お前の体調が少しでも悪くなったら救急車を呼ぶ」

妹「……で、でも」

男「ん?今すぐ病院へ連れて行こうか?」

妹「……わかりました」

男「じゃあ朝飯作るよ」

妹「いや私が作るよ」

男「いやでもその身長じゃ……」

妹「いいの、これは私の仕事。椅子があれば出来るよ」

男「……じゃあ頼むな」

妹「あいよっ!!」

妹「ベーコンと卵焼きでいいかなー?」

男「おう、ありがとう」

妹「いつもみたいに半熟でいいー?」

男「おう頼む」

妹「喜んでー!サニーサイドアップ!!」

男「こんな状況なのに楽しそうだな」

男「塩とって」

妹「はい」

妹「ソース取ってくれる?」

男「ほい。目玉焼きは塩コショウが至高だというのに……」

妹「ソースが至高に決まってんじゃん。マヨネーズとって」

男「ソースが至高じゃなかったのか」

妹「最初はソースのみ、後半はマヨネーズが私流」

男「そうか」

男「ごちそうさんでした!」

妹「おそまつさま!」

男「んー……このあと何しようか」

妹「なんでもいいよー!」

男「じゃあ体育館借りてバスケでもやろうか」

妹「やだ。元バスケ部が素人に負けたくないし」

男「まだ慌てる時間じゃない」

妹「お兄ちゃんは少し慌てた方がいいんじゃない?」

男「俺も28だからなぁ

男「……しかしちっさいなぁ」

妹「お兄ちゃんロリコンだからって欲情しないでね」

男「誰がロリコンだ。大体お前に欲情なんてしねーよ」

妹「えー……こんなに可愛いのに?」

男「まぁ可愛いとは思うけどな」

妹「え!本当!?」

男「でも欲情はしない」

妹「……そっかー」

男「そもそも小さくはなったけど幼くはなってないよな」

妹「そうだね。サイズだけがおかしい」

男「妹、ちょっとそこ立って」

妹「? ここでいい?」

男「もうちょっとこっち。そう、そこそこ」

妹「お兄ちゃん何してんの?」

男「ほら、そこの姿見見てみろ」

妹「おー、いつもの身長差だ」

男「遠近法!」

男「しかしお前ちょっと着替えろよ」

妹「でもこれが一番小さい服なんだよ」

男「うーん……つーかそれよくウエストずり落ちないな」

妹「紐で縛ってある」

男「しゃーない、何か買ってくるよ」

妹「いいよ、もったいない」

男「そうは言ってもそれ不便だろ」

妹「いいから。今日は家で過ごそう」

男「胸見えそうだぞ」

妹「包帯巻いてある」

男「そうですか」

男「……いい天気だなー」

妹「穏やかだねー……」

男「……」

妹「……ちょっとお兄ちゃん、ケータイ弄らないでよ」

男「? なんで?」

妹「私が暇じゃん」

男「お前もケータイ弄れば?」

妹「せっかく久しぶりに二人とも一日暇なんだから遊ぼうよ!」

男「ほんとは暇じゃないんだけどな」

妹「ごめんね」

男「いいってことよ」

妹「何して遊ぶ?」

男「そうだなー……」

妹「つーかお兄ちゃんぐらいの歳の人って何して遊ぶの?」

男「酒飲んだりかな」

妹「サークルとか入ってないの?」

男「さすがにこの歳じゃな……馴染めない」

妹「お兄ちゃんぼっち?」

男「話したりくらいはする」

妹「いつも誰とお昼ご飯食べてる?」

男「……一人で」

妹「……ごめん」

男「いいってことよ」

男「じゃーお前もちっちゃくなったことだし、童心に返って折り紙でもしようか」

妹「お、いいねぇいいねぇ!!」

男「意外と乗り気だな。うちに折り紙ってあったっけ?」

妹「……無いね」

男「じゃあ適当な紙使うか」

妹「チラシ取ってくるね!」

男「おう」

男「……できた、正方形の紙とりあえず四枚!」

妹「じゃあとりあえず鶴でも折りますか!」

男「あ、折り方教えて」

妹「折れないの?」

男「折り方忘れた」

妹「駄目だねーそんなんじゃ外人にモテないよ?」テキパキ

男「結構外人にウケるらしいな、折り紙」モタモタ

妹「改めて考えてみるとすごい技術だよね、折り紙」テキパキ

男「最初に鶴折った奴ってどういう頭してんだろうな」モタモタ

妹「今でもものすごい作品とかあるよね。折り紙何十枚使ってんだ、っていう」テキパキ

男「もうちょっとゆっくり折ってくれないか。着いてけない」

妹「お兄ちゃんへたくそ」

男「できた!」

妹「うわ!へたくそ!!」

男「うるさい!味があっていいだろ!!」

妹「どういうことなの……」

男「お前カメラの折り方とか知ってる?」

妹「知らない」

男「じゃあ教えてやろう」

妹「なんで鶴折れないのにカメラを折れるの」

男「ギミック付きなのは結構知ってるんだよ。羽ばたく鳥とかな」

妹「カメラもギミック付きなの?」

男「そうだよ」

妹「ワクワクするね!」

男「そうだろそうだろ!!」

妹「できた!!」

男「……綺麗だね」

妹「お兄ちゃんのくしゃくしゃだね……」

男「なんで初めて作るお前の方が上手いんだ……」

妹「お兄ちゃんは不器用というより荒いんだよ。もっとしっかり折り目付けなきゃ」

男「む、じゃあ紙飛行機で勝負しよう。これは自信がある」

妹「お、私紙飛行機にはちょっとうるさいよ?」

男「悪いけど紙飛行機では負けない」

妹「こっちこそ!」

男「できた!」

妹「……なにこの丁寧さ!!」

男「紙飛行機は本気だから」

妹「角とか迂闊に触ったら刺さりそう……」

男「ちょっとでも歪になると、まっすぐ飛ばないんだよ」

妹「こんなに綺麗に作れるんだったら始めからこうしなよ」

男「やる気の違い」

妹「……まぁ実際よく飛ぶかどうかは飛ばしてみなきゃわかんないよね」

男「飛ぶよ。自信がある」

妹「じゃあ廊下目一杯使って飛距離で勝負しよう」

男「廊下か……まぁ仕方ないか」

妹「じゃあせーので飛ばすよ」

男「おう」

妹「よーし……」

妹「せーのっ!」ヒュッ

男「よっ」ヒュッ






男「圧勝!」

妹「なんでよ!!二つとも壁にまで届いたでしょ!!」

男「お前のなんてギリギリじゃん。俺のは投げた位置からほとんど高さが変わってなかった」

妹「今私の背が低いから!!だからギリギリだったんだよ!」

男「それを差し引いても俺の圧勝。たとえ俺が今のお前の高さから飛ばしたとしても危なげなく壁まで飛ばせたよ」

妹「むー……」

男「大体お前、投げるフォームが悪い。あれじゃ安定しない」

妹「う……」

男「紙飛行機自体は悪くないんだけどな。まぁまだまだ改良の余地はあるが」

妹「……」

男「本当はこういうのは体育館とかでやるんだよ。無風で広い場所。そしたらちゃんと結果が出たのにな」

妹「……わかった!負けを認めます!!完敗です!!」

男「おう。当然だ」

妹「……悔しい」

男「さてさて次の『童心に返ろう』は~?」

妹「なんだなんだ!」

男「スライムで遊びます!!」

妹「おーいいねー!」

男「いいだろいいだろ!!」

妹「でもうちにスライムなんて無いよ?作るの?」

男「えー先程調べたところ、スライムを作るのに必要な材料は!」

妹「なになに?」

男「絵の具!!」

妹「それならある!」

男「ホウ砂!洗濯のり!!」

妹「ねーよ」

男「というわけでちょっと百均でスライム買ってきていい?」

妹「うーん……」

男「駄目?」

妹「……許す!ただし可及的速やかに帰宅したまえ」

男「ありがとうございます!」

妹「あ、ついでにアイス買ってきてくれない?」

男「わーったよ」

━━
━━━
━━━━

男「ただいまー」

妹「おかえりー!さっそくやろう!!」

男「ほら、スライムだ」

妹「うわー!久しぶりだなーこの感触!!」

男「しっとりするなー」

妹「……これどうやって遊ぶの?」

男「……」

妹「……」ニューッ

男「…………楽しいなー」ニューッ

妹「……次行こうか」

男「……おう」

男「さっき百均でついでにいろいろ買ってきた」

妹「ほんと?」

男「おう。次は紙粘土で遊ぼう」

妹「おー!いいねー!!」

男「ラップ持ってくるからその上でやろう」

妹「何作ろっかなー!!」

男「……」

妹「……」

男「……何作ってんの?」

妹「……秘密」

男「……そうか」

妹「……お兄ちゃんは?」

男「秘密だ」

妹「そっか」

男「……」

妹「……」

妹「……できた!!」

男「……何だそれ」

妹「見ればわかるでしょ!!猫だよ!!」

男「わかんねぇ」ゲラゲラ

妹「笑うな!!」

妹「お兄ちゃんはどうな……の…………」

男「一目でわかるだろ?」

妹「……おっぱいだね」

男「どうだこの曲線美」

妹「……お兄ちゃん中学生?」

男「失礼な。女体におけるおっぱいほど美しいものってなかなか無いぞ」

妹「……」

男「ちゃんと首筋まで作ってあるところがキモだ」

妹「…………」

男「お、もうこんな時間か」

妹「お昼だね。結構紙粘土に時間使ったねー」

男「二人共黙々と一生懸命作ってたもんな」

妹「ところでお兄ちゃんこのおっぱいどうするの」

男「捨てるに決まってんだろ。親に見られたくない」

妹「私には見られても良かったの」

男「無問題」

妹「そう」

妹「お兄ちゃんお昼ごはん何食べたい?」

男「そうだなー」

妹「冷蔵庫は充実してるから何でもいいよ」

男「じゃあオムライス!」

妹「よっしゃ、ふわとろに作ってあげる!」

男「いや、卵がしっかり固いやつを頼む」

妹「? お兄ちゃんふわとろが好きだったよね」

男「今日のテーマは『童心』だ。卵が固い奴の方がお子様ランチっぽい」

妹「……まぁわかったよ」

男「頼んだ!」

妹「出来たよー」

男「お、いい匂い!」

妹「……何それ」

男「旗だ」

妹「見りゃわかる」

男「お子様ランチには旗が付きものだろ」

妹「もうちょっと簡単な国旗を作ればよかったのに……アメリカって」

男「星の数も合ってるよ」

妹「日本でよかったじゃん」

男「最初はそのつもりだったんだけどな。なんか楽しくなっちゃって」

妹「そうですか」

男「ごちそうさまでした!」

妹「お粗末さまでした」

男「ふぅー……たまには固い卵もいいもんだなー……」

妹「私はどっちも好き」

男「……」

妹「……」

男「……平和だな」

妹「ほんと、穏やか……」

男「……ちょっと昼寝するか」

妹「それもいいねー……」

男「じゃあちょっと布団二組取ってくる」

妹「別にソファーでいいよ?」

男「幼稚園の頃さ、皆で雑魚寝したろ?」

妹「うん」

男「あれをやりたい」

妹「あぁーなるほど」

男「じゃ、一時間ほどおやすみー」

妹「おやすみー」

男「……」

妹「……布団並べて寝るなんて久しぶりだねー…………」

男「……そうだなー…………」

妹「……なんか、いいね」

男「……そうだな」

妹「……」

男「……」

━━
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━━━━

妹「おはよー……」

男「ん……おはよー……」

男「……でかくなってる」

妹「もう笑っちゃうよね!」

男「2メートルはあるな」

妹「プロレスしようか」

男「やだ」

男「なんだよー次は段ボールで迷路作ろうと思ってたのに」

妹「そんな素敵なこと考えてたの!?くそー……」

男「次は何するか……んー……」

妹「何する?」

男「……とりあえずさっき買ってきたアイス食わねぇ?」

妹「採用!!」

男「アイスカップが小さく見える」

妹「身体が大きいの!……おいしい」

男「……」パクパク

妹「……」パクパク

男「……」モグモグ

妹「……お兄ちゃん」

男「何?」

妹「お兄ちゃんはどうしてそんな歳で大学に入ろうと思ったの?」

男「そんな歳って……」

男「……こないだまで俺建築の現場作業員やってたじゃん?」

妹「うん」

男「そんで、建築に興味が出て本格的に勉強したいと思った。そんだけ」

妹「……すごいなぁ」

男「なんでだよ。貯金とバイトだけじゃ学費払うのでで精一杯だっから結局実家に寄生してんだぞ」

妹「私はそんなバイタリティ無いもん」

男「そんなすごいもんじゃないよ。単に興味が出ただけ。趣味と一緒だ」

妹「でも自分で学費払ってんじゃん」

男「もしかして大学の学費払ってもらうの気にしてんのか?そんなの現役なんだから親に出してもらっても何の問題も無いぞ」

妹「……」

男「俺は一回社会出ちゃったからな。自分で払って当たり前。つーか奨学金貰ってバイト増やせばほんとは生活費だって自分で払えるんだけどな」

妹「……うん」

男「……まぁ遠慮するわけも分からんでもないけどな。うちはちょっと特殊だから。でもそんなことまったく気にしなくていいんだからな」

妹「……うん」

男「シャボン玉やろう」

妹「おー!いいねー!!」

男「あ!お前大きくなっちゃったから『童心に返ろうシリーズ』が成り立たないじゃん!!」

妹「細かいこと気にしない!!」

男「じゃ、シャボン液にハチミツ混ぜてくる」

妹「? なんで?」

男「こうするとシャボンが丈夫になるらしい」

妹「へー」

男「……」フーッ

妹「おー!綺麗!!」

男「ハチミツの配合が難しいな……」

妹「……」フーッ

男「まぁ上出来か!」

妹「上出来上出来!」

男「ここで秘密兵器!!」

妹「お!水鉄砲じゃん!!」

男「これでシャボンを撃ち落とせ!!」

妹「やるやるー!!」

男「……」フーッ

妹「はい、灰皿」

男「おっと、忘れてた」

妹「……」フーッ

男「……お袋たち帰ってくんのいつだっけ」

妹「明々後日」

男「……そっか」

妹「……」フーッ

妹「液なくなっちゃった」

男「じゃあ次の遊びに移るか」

妹「そうだね。何するの?」

男「スーファミやろうぜ」

妹「おー!いいね!ソフトは?」

男「カービィ」

妹「スーパーデラックス?」

男「おう」

妹「私カービィ使っていい?」

男「おう。俺はむしろヘルパーの方が好きだしな」

妹「やった!」

男「あ、こら!それ口移しさせろ!!」

妹「ん?今噛んでるガム欲しいの?」

男「ゲームの話だ!!お前今回復アイテム取ったろ!」

妹「仕方ないなー。口出して」

男「あ、そういえばヘルパーってカービィのところへワープ出来るんだった」

妹「ちょっと、無視しないでよ」

男「お、バイオスパークだ!!」

妹「ちょっと」

━━
━━━
━━━━

男「……お、もう夕飯の時間じゃん」

妹「ほんとだ。いやーカービィ楽しかった!」

男「腹へったー!」

妹「晩ご飯何がいい?」

男「うーん……」

妹「なんでもいいよ」

男「……」

妹「……」

男「……」

妹「……早く決めてよ」

男「……いいや、おまかせする」

妹「おまかせ?いいの?」

男「うん。あ、魚食いたい」

妹「わかった。適当に作るね」

男「頼んだ」

━━
━━━
━━━━

妹「出来たよー」

男「お、いー匂い!」

妹「身長高いと台所が使いやすかった」

男「味噌汁焼き魚煮物!!いいねぇ!!」

妹「ちょっと手抜いちゃった」

男「いやいや今の俺の気分ドンピシャだよ!いただきまーす!!」

妹「召し上がれ!」

男「ほんと、お前の飯はうまいよな……」

妹「な、何さいきなり」

男「お袋には言えないけど、週に三度のお前が飯を作る日が楽しみで仕方ないんだよね」

妹「べ、べた褒めじゃん!!どうしたのさ今日は!!」

男「? いつも言ってない?」

妹「言ってない!」

男「こういうことをちゃんと言うのが夫婦がずっと仲良くいられるポイントらしいぞ」

妹「ふ、夫婦て!」

男「良いお嫁さんになるよ」

妹「ちょ、調子狂うなぁ……」

男「俺の方だよ、調子狂うのは。なんなんだよ小さくなったり大きくなったり」

妹「私が知るか!!」

妹「わ、私お風呂入ってくる!」

男「もうお湯入れたの?」

妹「あ、そうか!まだだった!!」

男「慌てんなよ。ちょっと俺がらしくないこと言ったくらいで」

妹「自覚あんのか!!」

男「お前が先に湯船入ったらお湯がだいぶ減りそうだな……」

妹「あ、そっか……この図体じゃね……」

男「冗談だよ、そんなの気にすんな」

妹「先入っていいの?」

男「一緒に入る?」

妹「物理的にも心理的にも無理」

男「残念」

━━
━━━
━━━━

妹「上がったよー」

男「おう。今日は長風呂だな」

妹「……ちょっといろいろ考え事してて」

男「じゃあ俺も入ってくるかな」

妹「あ、ちょっと待って」

男「?」

妹「これ見てよ」

男「うわ!!」

妹「サイズ自由自在」

男「なにこれ面白!!」

妹「私知らない間に悪魔の実でも食べたのかも」

男「お前ほんとに身体大丈夫か?」

妹「体調には異状なし。ほら見てよこんなに大きくなれる」

男「すげぇ……天井に背中つけてる」

妹「そんでこんなに小さくなれ……ぎゃあ!!」

男「そりゃズボンも落ちるよ。馬鹿だな」

妹「パンツ見たな!!」

男「シャツが覆ってて見えねーよ」

妹「興奮した?」

男「しねーよ」

妹「本当に?」

男「当たり前だろ」

妹「何で?血が繋がってないのに」

男「……」

妹「そんなに私魅力無い?」

男「……そうだよな、お前も18だもんな。それくらい聞いてるよな」

妹「まぁね」

男「いつ教えてもらった?」

妹「高校入った時点で」

男「なんで今カミングアウトした」

妹「いや普通に生活してて『お兄ちゃん!!私達血の繋がり無かったんだね!!』なんて言う機会ないじゃん」

男「まぁな」

妹「今がそのときだと思ったんだよ」

男「……辛かっただろ。そういうときは甘えて欲しかったよ。当事者にってのも難しいのかもしれないけど」

妹「? むしろ逆だよ」

男「逆?」

妹「むしろ色々得心がいったよ」

男「?」

妹「なんでお兄ちゃんとこんなに歳が離れてるのか、とか」

男「あぁ」



妹「なんで私はお兄ちゃんを好きなんだろう、とか」



男「ん!?」

妹「血の繋がりが無いとわかれば当たり前なんだよねー」

男「え!?」

妹「だって実の父親が好きになった人の息子だよ?その上その人と一つ屋根の下で暮らしてんだよ?」

男「……」

妹「自然な流れすぎる」

男「…………あのな」

妹「お兄ちゃんはどうなの?」

男「え?」

妹「知ってる?私達苗字は同じだけど結婚できるんだよ?」

男「……知ってるよ」

妹「そっか。で、どうなの?こんな美少女が身近にいてさ」

男「……」

妹「まさか私がこんな赤裸々告白したのにだんまりってことは無いよね?」

男「……お前は妹だ」

妹「形式としてはね」

男「……そういう対象として、見たことは無い」

妹「……本当に?」

男「…………本当だ」

妹「……そっかぁ」

妹「ねぇ、知ってる?」

男「? 何をだ」

妹「お兄ちゃんさ、嘘つく前には絶対頭掻くの」

男「……!!」

妹「いやーよかった!!お兄ちゃんの気持ち知れた!!」

男「い、いや今のは!!たまたま頭が痒かったんだ!!」

妹「またまたー」

男「本当だからな!!」

妹「両想いじゃん。何を遠慮することがあろうか?」

男「だから違うって!!」

男「本当に違うんだって!!」

妹「はいはい。お兄ちゃんはきっとお父さんに遠慮してるんだよね」

男「ち、違うって!!」

妹「大丈夫だよ。お父さんはお兄ちゃんのこと買ってるから。息子としても、男としても」

男「……!」

妹「ところでお兄ちゃん来年の春から一人暮らしだよね?」

男「……それがどうした!」

妹「私さ、お兄ちゃんの就職先のことも考えて大学選んだんだ。一緒に連れてって?」

男「……! 駄目に決まってんだろ!!」

妹「なんでさー。言っとくけど私お兄ちゃんの気持ち知っちゃったのに諦める気なんてさらさら無いから」

男「だ、だから違うんだって!!」

妹「強情だなー」

男「とにかく!!絶対に連れてかないからな!!」

妹「うーん……まぁ今はそれでいいよ」

男「今はって……」

妹「ところでお兄ちゃん」

男「……何だよ」

妹「クリスマス暇だよね?デート行こうよ!!」

男「!! 行かねぇよ!!」

妹「残念」

━━
━━━
━━━━

男「じゃ、休み取れたらまた帰ってくるよ」

父「おう、いつでも帰ってこい。待ってるからな」

母「寂しくなるね……本当に……」ポロポロ

男「なんだよお袋……俺が家出るなんて十年前にすでに経験済みだろ?」

母「うん……でも…………本当に……」

男「なるべく帰ってくるし、こまめに連絡もするからさ。そんなに泣くなって」

母「うん……うん……」

男「ところで妹は?」

父「……あいつは今日友達と約束があるらしい」

男「なんだよ薄情だな……。ま、うるさくなくていいか」

父「……頼んだぞ」

母「頑張るのよ」

男「……? うん、立派にやってみせるよ」

父「まぁお前なら心配ないだろうがな」

男「任せろ!」

父「困ったらいつでも相談するんだぞ。いろいろと」

男「?? うん、わかったよ。それじゃ行くね」

父「おう」

母「頑張ってね」

━━
━━━
━━━━

男「……久々の一人暮らしだな」

男「…………」

男「……荷解きめんどくせぇー…………」

男「……始めるか。まずはこの段ボールから」ベリベリ





妹「やぁ」




男「!!?」

男「お前っ!何で!!」

妹「いやーお兄ちゃん連れてってくれそうになかったからさー」

男「このっ……しゃあしゃあとっ……!!」

妹「小さくなって荷物に紛れさせてもらいました!!いやー便利な能力を得たね!!」

男「……親父に電話して連れ戻させる!!」

妹「あ、無駄だよ」

男「はぁ!?」

妹「うちの両親にはもう全部話してあるから」

男「は!?」

妹「いやー理解ある両親でよかった!!」

男「そんな馬鹿な……」

妹「さすがお兄ちゃん!!あっさりお父さん理解してくれたよ!!」

男「……」

妹「じゃ、荷解き手伝うね!あ、私の生活用品は後で送ってもらう手筈になってるから!」

男「……冗談じゃない!!」

男「力ずくでも追い返してやる!!」

妹「やだぁー」

男「大きくなんな!!」

妹「動かせるもんなら動かしてみな!!」

男「この……!」

妹「無駄無駄ァ!!」

男「……くそ」

妹「諦めな」

妹「お兄ちゃんはここまでしないと折れないってこと、よくわかってんだー」

男「……」

妹「本当良かったよ。このタイミングでこの能力を得たのは神様の思し召しとしか思えないね!」

男「……あのな、妹」

妹「説得は無理だよ!よくわかってるでしょう?」

男「……くそ」

妹「そんなことよりどう?お兄ちゃん」

男「……何がだ」

妹「好きな女の子にここまでさせるってのは。そろそろ腹括ったら?」

男「……だからそれは」

妹「往生際が悪いよ。家族なんだ。お兄ちゃんが何を考えてどう思ってるかかなんて手に取るようにわかる」

男「……」

妹「ここまで逃げ場を無くしてあげたんだ、お兄ちゃん」

妹「一言、ちょうだい」

男「……」

男「あーもうわかったよ!!」

妹「お、何がわかった?」

男「認めるよ!!お前が言ったこと全部!!」

妹「つまり私のことが好きだと?」

男「……そうだよ!!」

妹「嬉しい!!私もだよ!!!」

男「はぁー……」

妹「じゃー荷解きしますか!!」

男「……ああ」

男「……でもいいのか?」

妹「何が?」

男「兄妹でなくても10歳差だぞ。確実にお前は俺のオムツを取り替えることになる」

妹「どんとこいだ!それくらいの覚悟が無くてどうする!!」

男「……そうか。後悔しないんだな?」

妹「うん!」






男「じゃあ……これからよろしくな」

妹「よろしく!!あ、エロ本だ。捨てちゃうね!」

男「えっ」



fin

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