照「園城寺さんを妹にしてええええええええ」(394)

菫「…………」

淡「…………」

照「…………」

菫「…………」

淡「…………」

照「園城寺さんを」

菫「二度も言わなくていい。聞いた上で無視してるんだから」

照「そうか」

照「まあ、聞いていたなら話は早い」

菫「…………」

照「千里山の先鋒、園城寺さん。覚えてる?」

菫「…………」

照「あの子をぜひとも私の妹にしたいと思う」

菫「…………」

照「どこで、どうすれば彼女を私の妹にできるのか」

菫「…………」

照「私も色々考えては見たんだが、いい案が浮かばなくて」

菫「…………」

照「なにか良いアイデアはないか?」

菫「…………」

照「なあ、聞いてるのか?」

菫「聞いてるわけないだろ」

照「ちっ……これだから菫は」

咲「浮気かおい」

照「なあ、淡はどう思う?」

淡「え、こっちに振るんですか……」

照「園城寺さん、可愛いと思うだろう」

淡「まあ、そうですねえ……私はモニター越しに見ただけなんで
  実際に見てどうなのかは知りませんけど」

照「モニター越しに見ても可愛いし、実際に見たらもっと可愛い。
  あんなに可愛い生き物がいたのかって衝撃を受けた」

淡「はあ」

照「小柄な身体、儚げな表情、やわらかそうな髪……
  それに声も可愛い。声優の小倉唯みたいな」

淡「さいですか」

照「あんな可愛い子を目の当たりにしたら、誰だって妹にしたいと思う。
  そうだろう?」

淡「その理屈がちょっと意味不明なんですけど。
  なんで可愛い子がいる=妹にしたい、になるんですか?」

照「は? 逆に聞くが、なんで妹にしたいと思わないんだ?
  頭がおかしいんじゃないのか?」

菫「おかしいのはお前だお前」

淡「普通に、友達になりたい、とかじゃダメなんですか」

照「友達になったところで休みの日に遊びに出かけるくらいだろう。
  それに女同士の友情というものを私は基本的に信用してない」

淡「はあ」

菫「…………」

照「私が求めるのは、もっとこう……蜜月の関係なんだ。
  友達程度ではない、恋人同士でも成し得ない。真に二人だけの世界。
  血縁という何物にも代えがたい関係で結ばれているからこその絆。
  何かもアニメでも言ってた。世界で一番美しいのは兄弟の絆だと」

淡「はあ、まあ……そうやって説明されると
  分からなくもない、って気にはなってきましたけど」

照「そうか、ついに淡も分かってくれたか。同士が増えて嬉しい」

淡「同士になったつもりは全くないんですが」

照「さて、本題に戻ろう。
  どうすれば園城寺さんを妹にできるかということだが」

菫「つーかお前もう既に妹いるだろ」

照「あっ、菫は私のこと無視するから同士に入れてあげませーん。
  都合のいい時だけ話しかけないでくださーい」

菫「小学生かお前」

照「で、何の話をしてたんだっけ」

淡「園城寺さんをどうすれば妹にできるか、という……」

照「ああ、そうだった。
  全国大会が昨日終了、千里山高校も早いうちに大阪へ帰ってしまうだろう。
  そうなる前に手を打たないと」

淡「えっ、マジで実行に移す気なんですか?
  ただ妄想と願望を語るだけではなく……?」

照「当たり前だろう。私は欲しいものは手に入れる女だ」

淡「手に入れられる側からしたらたまったもんじゃないと思いますが」

照「なあ、どうすればいい。
  今この瞬間にも千里山が大阪に向かって出発するかもしれない。
  早く何かアイデアを出せ、ほら、今すぐ」

淡「えー……んなこと言われましても」

菫「淡、無理して話に付き合うことないぞ。
  そんなバカな先輩の妄言にのらなくてもいい」

淡「はあ……」

照「淡、菫と話すな。菫菌がうつるぞ」

菫「お前もうマジで小学校からやり直せよ」

照「ほら淡、早く考えろ。
  なんなら法を犯しても構わないから」

淡「……うーん、率直な意見を述べさせて頂きますと……」

照「うん、なんだ」

淡「園城寺さんを妹にするのは不可能という結論に……」

照「その不可能を覆すのが淡の役目だ。。
  白糸台高校チーム虎姫の大将だろ、お前は。何とかしろ」

菫「無茶苦茶だなお前」

淡「不可能を可能にするのは無理ですが、なんとか妥協点というか……」

照「妥協点……?」

淡「はい。園城寺さんを妹にするのはどう考えても無理なので、
  一日一緒に遊びたい、とか一緒にディズニーランド行きたい、とか
  そういう妥協点を探ってみてはどうでしょうか」

照「いや、しかし妹に出来ないなら意味ない……」

淡「100にこだわりすぎるあまり、70や50を得るチャンスを逃すのは馬鹿らしいと思いませんか」

照「ううむ……しかし……でも……」

菫(面倒見のいい後輩だなあ……)

照「わかった……園城寺さんと一日遊ぶだけで我慢する」

淡「私もそのラインが一番現実的だと思います」

照「うん、まあ、そうだな……まずはここから始めて……
  そしていずれは園城寺さんを妹に……」

淡「できるといいすねー(棒)」

照「よし、じゃあ早速園城寺さんを誘いに行くか」

淡「え、今から行くんですか?」

照「当たり前だ。こうしてるうちにも千里山一行が大阪に帰って
  園城寺さんが私の手の届かない存在になってしまうからな。
  善は急げ、思い立ったが吉日、急がば回れだ」

淡「そうですか、じゃあ頑張ってきて下さい。陰ながら応援してます」

菫「あんまり私たちの恥にならないようにしろよ」

照「うん、分かってる……それじゃ、行ってくる」

淡「いってらっしゃーい」

照「…………」

淡「……行かないんですか?」

照「……淡、ちょっとついてきてくれないか」

淡「え? なんで私まで……」

照「ほら、知ってのとおり私は口下手だろう」

淡「そんな自慢気に言うことじゃないと思いますが」

照「だから園城寺さんを誘うのだってうまくいくかどうか不安だし
  千里山の人達に対して上手に接する自身もない」

淡「でしょうね」

照「しかし淡は人当たりがいいしコミュニケーションも上手だ。
  そこで私のサポートをして欲しい。同士として」

淡「はあ……」

菫「ついていってやってくれ、淡……
  こいつ一人じゃ何をやらかすか不安で仕方がない」

淡「あー、まあそうですね……じゃあ私も一緒に行きますよ」

照「おお、ありがとう。淡がいれば百人力だ」

菫「つーかお前、取材の時みたいな営業スマイル営業トークで喋れば
  誰に対してだって上手くコミュニケーションできるだろうに」

照「あれは取材の場、マスコミ相手だからああいう演技ができるんだ。
  一個人と一個人の対等な会話ではあんなふうに自分を偽るのは無理だ」

淡「典型的なコミュ障タイプですね……」

某ホテル

照「はあ、やっと着いた」

淡「ここですか、千里山の人が泊まってるホテル」

照「ああ、なかなか良いホテルだな」

淡「まあ私たちのところのほうが豪華ですけどね。
  てゆーか、よく場所わかりましたね」

照「ああ、強豪校の追っかけをしてるファンの人がいてな。
  その人から情報を聞きだしたんだ」

淡「へえー」

照「まあ、情報の見返りにスカートめくった写真撮らせてくれと言われた時は
  さすがに気持ち悪かったがな」

淡「それファンじゃなくてただの変態カメラ小僧じゃないですか……」

照「スカートめくるのは無理だからふくらはぎの写真で我慢してもらった」

淡「結局撮らせたんですか!?」

照「まあ、いいじゃないか。そんな写真一枚で大事な情報が聞き出せた。
  世の中ギブアンドテイク、持ちつ持たれつ。情けは人のためならずだ」

淡「嫌ですよ、そんな写真がへんな雑誌に載ったりしたら……」

淡「で、園城寺さんが泊まってる部屋はどこなんです?」

照「1020号室らしいんだが……
  ところで淡、大阪の人と話すときはやはりこちらも関西弁を使うべきだろうか」

淡「ヘタな関西弁使うと神経逆なでしますよ」

照「そうか……そういえば名探偵コナンでそんな話やってたな」

淡「あっ先輩、ちょっとトイレ寄ってもいいですか」

照「ん、ああ……早く済ませろよ」

淡「はーい」タッタッタッ

照「…………」

照「…………」

照「知らない建物の中に一人でいるのは心細いな」

 「ソレデナー」「ホンマニー?」「ナンデヤナー」
 ワイワイガヤガヤ

照「ん? あれは……」

フナQ「あれ? あの人もしかして……」

怜「み、宮永照? なんでこんなとこに……」

照(ま、まずい……いきなり最終目標に出会ってしまうとは……
  心の準備がまだ全然……しかしいつ見ても可愛い……)

フナQ「あのー、宮永さんですよね? 白糸台の……」

照「んっ、お。お、ああ、そ、そうですけろ……」

セーラ「何してるんや、こんなとこで」

照「そ、そそ、それはですね、えっと……あの……」

セーラ「あんたらが泊まってるホテル、ここと違うやろ?」

フナQ「なんかうちらに用なんですか?」

照「え、あ、ああ……なんというかその……」

フナQ「なんか要領を得んなあ。
   言いたいことがあるんやったらはっきり言うてくださいよ」

照(やばいやばいやばい……予想外の事態に頭が真っ白だ……
  こんな時のために淡を連れてきたのに肝心な時にいないんだから……!)

フナQ「? なんなんです?」

照「あ、ああ、いや、まあ……」

照(早く出てこい淡! いつまでトイレに篭ってる!
  ウンコか? ウンコなのか!? こんな時に!!)

怜「あ、セーラ……私ちょっと疲れたから
  先に部屋戻ってるわ」

セーラ「おう、一人で大丈夫か?」

怜「うん、平気や」

照(いかん! このままでは可愛い可愛い園城寺さんが
  自分の部屋に帰ってしまう……どうする?どうすればいい?)

照(今日のところは私も帰るか? この状態ではどうしようもない……
  一人じゃ園城寺さんを遊びに誘うなんて出来ない……淡がいないと)

照(いや、そんな情けないことでどうする、宮永照!
  こんなことでめげてちゃ園城寺さんのお姉ちゃん失格じゃないか!)

照(私だけでも、園城寺さんをお誘いしてみせる!
  これは園城寺さんを私の妹にするための大事な一歩なんだ!)

照(しかし、何と言えばいい……口下手な私のことだ、
  長台詞を喋ろうとしても確実に噛んでしまう……なるべくシンプルな方がいい)

照(今の私の気持ちを一言で表す、シンプルな言葉!
  それは、それは……そうだ、もうこれしかない!)

照「園城寺さん!!」

怜「は、はい?」

照「園城寺さんを妹にしてええええええええ!!!」

これはさすがの怜もドン引き

俺「はい喜んでー!!」

怜「…………は?」

セーラ「………………」

フナQ「………………」

怜「………………」

照「………………」

セーラ「………………」

フナQ「………………」

怜「………………」

照「………………」

淡「お待たせしちゃってすいません先輩……
  あれ? なんで顔面蒼白なんですか?」

照「………………」

淡「そしてなんで千里山の人達がここにいて
  しかも硬直してるんですか?」

怜「………………」

淡「私がいない間に何があったんですか……」

照「淡……いや、淡さん」

淡「な、なんですか」

照「フォロー頼む……」

淡「いや、無理ですよ!
  流石の私もこの取り返しの付かない空気をどうにかできるほど
  コミュニケーション能力高くないですよ!?
  てゆーかマジで何があったんですか私のいない間に!!」

フナQ「あー……貴方、白糸台の……大将さんやな?」

淡「あ、はい……大星淡と申します」

フナQ「そこの宮永さんより貴方のほうが話できそうやな」

セーラ「ちょっと説明してくれへんか……宮永照が何をしたかったのか」

淡「それはいいですけど……
  まずうちの宮永が何をやらかしたのか教えていただけませんか」

セーラ「園城寺さんを妹にしてええええええと大声で叫んだんや」

淡「うっわあ…………」

照「そんな露骨に引かないでくれ」

淡「引きますよ、誰だってドン引きですよ……
  そして一番引いてるのは園城寺さんですよ」

怜「引いたというか宮永さんの脳みそがおかしくなったんかと思ったわ」

セーラ「端から見てたらただのキチガイやったで」

フナQ「天才っていうのは、やっぱ他の部分がおかしいもんなんですかね」

淡「散々な言われようですね」

照「いたしかたなし……」

怜「で、結局何しに来たん? 私に用事か?」

淡「あっ、はい……実は……なんといいますか、
  うちの宮永が、そちらの園城寺さんにお願いしたいことがあるそうで」

セーラ「お願いしたいこと?」

フナQ「妹にしたいってことですか」

照「はい、できれば」

淡「お前が喋るとややこしくなるからもう黙ってろよ」

照「はい……」

淡「えっとですね、ま、その……宮永が園城寺さんを気に入ったみたいで……
  できれば園城寺さんを一日貸していただければと思いまして」

怜「えー」

淡「いや、もちろんそちらの予定が空いてれば、でいいんですけど……
  千里山の方も、もう大阪にお帰りになるんですよね?
  それなら別に断っていただいてもまったく構いませんので、ええ」

怜「大阪に帰るんは明日やで」

セーラ「今日は皆で東京見物行くことにしてたんや」

フナQ「でも園城寺先輩はまだ体調が万全やないんで部屋で休むって」

淡「あ、体調よろしくないんですか。
  そういえば準決勝戦でお倒れになってましたよね……
  お元気でないなら無理にとは言いませんので、
  それではこれで失礼いたします、お騒がせしてすみませんでした」

セーラ「おう」

淡「さあ帰りますよ宮永先輩、帰ってお説教ですよ」

照「嫌だ」

淡「は?」

照「私が何のためにここに来たと思ってるんだ。園城寺さんを妹にするためだ。そうだろう?」

淡「だから無理だっつってんだろ」

怜「てゆーか同い年やから妹になるのはおかしいんとちゃう」

フナQ「そこですか問題は」

照「私はまだ、園城寺さんの口から明確な答えを聞いてない」

淡「…………」

照「園城寺さん、もう一度言わせて欲しい。答えを聞かせて欲しい。
  さっきはテンパッて大変なことになってしまったが、
  今度はちゃんと落ち着いて言うから」

怜「うん」

淡「宮永先輩……」

照「お、園城寺さん……今日でいい、今日一日だけでいいから……
  私の……私の妹になってくれないか?」

怜「ええよ」

淡「えっ!? いいの!?」

フナQ「そんなあっさり決めてええんですか?」

怜「ま、今日私だけ暇やし、宮永さんとはもう1回、
  改めてお話しとかしたいと思ってたからな……ちょうどええよ」

照「ついに悲願、念願、大願成就……!
  今日一日だけだが、私は今、園城寺さんのお姉ちゃんになった……!」

セーラ「ははは、りゅーかが聞いたらどう思うやろな……」

竜華「何ふざけたこと言うてんの?」

咲「……へぇ」

セーラ「うおっ、竜華いつのまに……」

フナQ「なんか負のオーラというか、殺気出てますよ!?」

竜華「宮永さん、やったっけ?
   あんた誰の許可もろて怜に手ェ出してるんや? ん?」

照「園城寺さんと仲良くするのに、誰かの許可がいるのか?
  貴方はたしか千里山の大将だったな……たしか清水寺さん」

竜華「清水谷や! 人の名前間違えんな!
   とにかく怜に何か用事あるときはなあ、一回私を通してからにしてくれへんか!?」

セーラ「怜のマネージャーかお前は」

照「そんなことを言われても困るな。
  園城寺さんは誰のものでもないんだから。なあ園城寺さん」

怜「そやなあ、お姉ちゃん」

照「お、お姉ちゃ……ブホォッ」

怜「竜華、そんな狭量なこと言うたらアカンよ。
  私は今日宮永さんの妹になるって決めたんやから。
  心配してくれるんは嬉しいけど、私はもう大丈夫やし」

竜華「でも、そんな人と二人で遊ぶやなんて……
   だいたい宮永照は……はっ!?」

淡「………………」

淡「……………………」

竜華「あ、あ、あああ……あああああ…………」

セーラ「な、なんや!? どうしたんや竜華!!」

淡「ふふふ……思い出しますね大将戦……楽しかったなあ」

竜華「い、いや……いやあああああ……」

セーラ「おい、竜華! 大丈夫か!?」

フナQ「トラウマスイッチが入ってしもたみたいですね……」

セーラ「トラウマスイッチ?」

怜「ああ、そういうえば竜華……大将戦で珍しくボコボコにされてたな」

照「一体どんな打ち方したんだ、淡」

淡「まあちょっと本気出しただけで……てゆーか試合見てくれてなかったんですか!?」

照「ああ、ちょうどその時は園城寺さんのことで頭がいっぱいだった」

怜「あんたの先輩、平気で恥ずかしいこと言うなあ」

淡「最高にして最低の先輩ですよ」

竜華「あああ……あああああ…………」ガクガク

淡「で、清水谷さん……園城寺さんを今日だけ貸していただけます?」

竜華「うう、うううう……」

淡「貸していただけますよね?」

竜華「わ、分かった! 貸す、貸すから!
   そんな近づかんといてえええええええええ!」

セーラ「おお、竜華が折れた……」

フナQ「信じられんことですね……」

淡「先輩、これで清水谷さんの許可も取りつけましたよ」

照「ああ、ありがとう……
  というか色々言ってたくせに結局協力してくれてるな」

淡「それはまあ……あれですよ、後輩の努めですよ。
  でもこれは貸しにしておきますからね」

照「ああ、分かった。感謝する。
  淡がいなかったら、今頃どうなってたか……」

淡「ホントにどうなってたでしょうね……」

怜「すまんな、竜華。戻ったら埋め合わせはするから」

竜華「あうう……」

> 淡「それはまあ……あれですよ、後輩の努めですよ。
>   でもこれは貸しにしておきますからね(そして私のお姉ちゃんになってもらいますからね)」


という事か!

照「では千里山の方々、園城寺さんは私が責任をもって預かる。
  他の人達にもそう伝えておいてくれ」

フナQ「はあ、分かりました。でもあんまり変なことしたらいけませんよ」

セーラ「ほら竜華、しゃきっと立たんかい」

竜華「腰が抜けてしもて……怜ぃ」

怜「何?」

竜華「帰ってきたら……今度はうちの妹にもなってな」

セーラ「何を言うてるんや……」

怜「まあ、気が向いたらな」

フナQ「さて、我々は東京見物に行きますか」

セーラ「スカイツリー行くで~」

フナQ「高いとこ好きですねえ先輩……」

竜華「怜~……怜~…………」

フナQ「ほらほら、いきますよ~」

竜華「あああぁぁぁ……」ズルズルズルズル

怜「おみやげ買ってきてや~」

照「さて、と。これでようやく園城寺さんを妹にできたわけだ」

淡「ここまで長かったですね」

怜「でも姉妹って言うたかて、何をするん?
  普通に遊ぶだけやったらアカンの?」

照「それはこれから考える。
  とりあえず部屋に戻ろうか」

怜「部屋って、私の部屋?」

照「いや、私たちのホテルに部屋を一つ確保してある。
  まずそこで姉妹の語らいをしようじゃないか」

怜「へえー、白糸台の泊まってるホテルか。
  ちょっと興味あるなあ」

淡「ちょ、ちょっと先輩」コソコソ

照「なんだ淡」

淡「どういうことですか、一部屋確保してるって……
  もしかして園城寺さんと一泊する気ですか?
  今日一日だけって言ってたのに……」

照「千里山が大阪に帰るのは明日だと言っていた。
  何も問題はあるまい」

淡「なんでそう自分中心に物事を考えられるんですか……」

ホテル

照「ここが私と園城寺さんのために用意した部屋だ」

怜「へえーっ、やっぱり凄いなあ~。
  私らのホテルもけっこう広い方やと思てたけど……」

照「そうだろうそうだろう」フフン

淡「……じゃあ先輩、私は皆のところに戻ってますんで。
  どうぞお二人でごゆっくり」

照「ああ、色々ありがとう。
  何かあったらまた呼び出すかもしれないが、その時はすぐに駆けつけてくれ」

淡「嫌ですよ、人を何だと思ってるんですか……まったく」
ガチャバタン

照「…………」

怜「ま……口ではああ言いつつも、
  実際には呼んだらすぐに来てくれる子なんやろな」

照「うん。淡は優しいからな……さてと」

怜「?」

照「ようやく二人っきりになれたな」

怜「なんや変な意味に聞こえるな……」

ふぅ……変な意味ってどんな意味?

照「いや、もちろん変な意味じゃない。
  やはり改めて姉妹というのを意識すると、恥ずかしいから」

怜(もしかして宮永さんの言う『姉妹』って『お姉様』的な意味なんやろか……)

照「えーと……じゃあまず、姉妹の第一段階として……
  お互いの呼び方を改めたいんだけど」

怜「呼び方か……私はもう宮永さんのこと、『お姉ちゃん』って呼んどるし」

照「ムッフフ……」

怜「お姉ちゃん」

照「ドゥフッ……」

怜「おね~えちゃん♪(ドギーマンみたいに)」

照「フッホホホホホ……オホォ」

怜「そろそろ本題に戻ろか」

照「そ、そうだな……」ニヤニヤ

怜「みや……お姉ちゃんがそんなニヤけ面するとは思わんかったわ」

照「まあ、私だって人の子だし笑うことだってある……」

怜「笑うのとニヤニヤはちょっと違う気もするけど」

照「で……私は園城寺さんのことを……」

怜「怜、でええよ。妹なんやから」

照「そうだな……じゃあ、呼ぶぞ」ゴホン

怜「そんな気合入れんでも……」

照「と…………怜…………」

怜「はい」

照「な、なんか……恥ずかしいな」

怜「いちいちそんな照れんでも……
  普通にしてくれたらええよ、友達に接してるみたいに」

照「と言われてもな……友達と呼べる人間なんて特にいないからな」

怜「あ……そうなん」

照「ああ、まあ」

怜「……なんかごめん」

照「え、いや……」

怜「……」

照(あれ? なんか空気が重い?)

照(まずいな、なんとか違う話題を……)

照「そ、そうだ、怜……準決勝で倒れてたけど、もう体の方は……」

怜「え、ああ、もう平気や……
  病院で一晩点滴打ってもろたら良うなったよ」

照「そっか、なら良かった……
  あの時は突然倒れるからさすがに驚いた」

怜「ま、それくらい凄い対局やったってことやな」

照「でもあの時はすまなかった……
  なんというか……私が調子に乗りすぎたせいというか」

怜「何を言うてるんやな……
  別にみや……お姉ちゃんが気に病むことなんかあらへんよ。
  おたがい本気の勝負が出来て嬉しいくらいや」

照「そうか……? でも間接的には私のせいというか……」

怜「だから別に気にせんでええってば」

照「そうかな……」

怜「……」

照「……」

怜(空気が重いなあ……)

怜(二人とも大人しい方というか、あんまり喋らへん人やから
  慣れてくるまでは気まずくなるのは仕方ないんかな……
  なんか違う話題、違う話題……)

怜「あ、そうや……お姉ちゃんって、ほんまの妹もいるんちゃうの?」

照「本当の妹……? 私の妹は怜だけだよ」

怜「そうなん? 清澄の嶺上使い……宮永咲、やったっけ」

照「…………」

怜「あの人、宮永照の親族……っていうか、妹とかいう噂を聞いたで」

照「違う。そんな人のことは知らない」

怜「ふーん、でも結構似てる感じやけど」

照「違うって言ってるだろ。
  宮永咲は私の妹なんかじゃない、私に妹はいない!」

怜「あ、ご、ごめん……」

照「あ、いや……すまない……」

怜「…………」

照(まずいな、プラズマズイ……園城寺さんと仲良くするつもりが……
  なんでさっきからこんな重苦しい空気に……
  こんなときはSOSだ、救世主大星淡の教えを請うしかない)

咲ちゃんは嫁だから

照「すまない、ちょっとトイレに……」

怜「あ、うん……」


照「ピッピッピッ……プルルルル」

淡『……あ、もしもし?』

照「淡、ちょっと今ヤバイ。空気がヤバイ。助けてくれ」

淡『は? 空気がヤバイ? 真空状態なんですか?
  宇宙と繋がっちゃったんですか? 宇宙キターな感じですか?』

照「冗談を言ってる場合じゃない……
  互いに話題のチョイスをことごとく間違えてるせいで気まずくて仕方がない。
  地雷原をローラースケートで走ってるみたいな感覚だ」

淡『その喩えはよく分かりませんが。
  姉妹なんだからそんな気を遣わなくていいんじゃないですか。フランクにいけば』

照「は? 私と園城寺さんは姉妹ではなく赤の他人同士だ。
  気を遣わずに接せられるわけがないだろう」

淡『こんな時だけ現実的にならないでくださいよ』

照「で、どうすればいい」

淡『えー……じゃあ気分転換に2人で出かけたらどうですかあ』

( 0`´0)宇宙キター!

照「出かけるって言ったって……どうすれば」

淡『普通に友達と出かけるようにすればいいじゃないですか。
  あ、友達いないんでしたっけ』

照「他人から言われるとムカつくな」

淡『あれ、でも時々弘世先輩と一緒に放課後に寄り道したりしてますよね。
  園城寺さんともその時みたいに遊べばいいじゃないですか』

照「いや、別に遊ぶために寄り道してるわけじゃない。
  菫とは一緒に本屋に行ったり、雀荘に行ったり、
  マックや牛丼屋の新メニューを食べて品評会するくらいしか」

淡『あんたらホントに女子高生かよ……』

照「淡、私はどうすればいいんだ。
  まともに会話も盛り上げられない、ろくに遊びも知らない……
  そんな私が姉になろうとしたのがそもそもの間違いだったのか?」

淡『そんな思いつめないで下さいよ。
  とにかく、目的は決めなくていいんで、とにかく二人で出かけて』

照「目的がないとグダグダにならないか?」

淡『大丈夫です、適当にウィンドウショッピングとかしてるだけでも結構楽しめますし』

照「ウィンドウショッピング? 商品見るだけで何が楽しいんだ?」

淡『あんた以外はみんな楽しんでんだよ!』

照「しかし出かけたところで会話が続かないと……
  結局また気まずくなるんじゃ」

淡『いいですか、会話の基本はクエスチョンです。
  とにかく相手に質問をぶつけるんですよ』

照「はあ」

淡『でもただ質問を繰り返すだけじゃ無味乾燥な会話にしかなりません。
  なるべく相手の興味のありそうな話題の方へと誘導していくんです』

照「なんだか難しそうだなあ……」

淡『別に高度なテクニックじゃありませんよ。
  それで、うまいこと相手の興味ある話題を引き出せたら、
  それを参考にして次の目的地を決めて下さい』

照「目的地を決めるって言ってもな……
  どこにどんなお店や施設があるかなんてわからないし……」

淡『それが無理なら適当にぶらぶらして帰ってくるだけでもいいですから。
  とにかくこのまま部屋に篭っててもお互い気まずいだけですよ』

照「そ、そうだな……分かった、なんとか頑張ってみる」

淡『はーい、じゃあ切りますよー』

照「あ、待って……できれば私たちの後ろからついてきて」

淡『…………』



照「…………」

怜「…………」

照「……いやあ、まだまだ暑いなあ」

怜「そーやなあ、夏やしなあ……」

照(いかんな、まだ会話がぎこちない……
  しかし、このお出かけで何としても距離を縮めてみせる!)

照(淡はちゃんとついてきてくれてるな……)チラッ

淡(私ってすげー優しいよなー)コソコソ

照(よし、淡さえいればちょっとくらい失敗しても大丈夫だ……
  なんとか積極的にいかないとな)

照「おんj……怜、向こうの方にショッピングモールがあるんだ。
  そこなら涼しいし、ちょっと行ってみないか」

怜「うん、ええな。とにかく暑いのはかなわんわ~」

照「怜は暑がりなのか?」

怜「そやなー、暑いと体力ゴリゴリ削られてく気がするわ」

照「そうか、ははは」

            __
      , <:: ̄:::::::::::::::: `>、

      /::::::::::: i::::::::::::::::::::ヽ::::::::ヽ、
    /::::::::::::::::::;!::::::/l:::;:::::::::::\:::::::ヽ
   //::/:::/::;ハ:::/::::Vト、i::::::::::ヘ:::::::ハ

  ,イ/::::/:: /::/ ,Y-:::::ハ ヽl::::::::::::ヘ::::::l
. //:::::/::::イ:// l::i::::::! l! .V::::::::::::';::::! 
 jイ:::;イ:;∠ィ-―- vヘ::::|-t―ト、::::::::::V

.  l:/ l::::/ ,イチム    V!ィ升へ V::v-、)
.  ´ l::人! 弋_ン    `弋_ク  V.,イ/     
    レ ハ       ,       /_ノ '´  このスレから妹のにおいが
     rニヘ、/// _ _ /// / _二7
      /::;>       ィ´l_ハ::ヽ
.     /::::7  /`!ー .<ト、    !:::ヘ
     l:::::::l/ lノ    ,V ヽ、 l::::::l
     l;:ィ/  lヘ  _ ノ/ _ .へ!、:::l_
  r‐(二イ   レ^ く_ //// ト、_ コ-、
  / l i /    ヽ! /  Li/  l    /

>>158
じゃがいもでも食ってろ

某ショッピングモール

 ザワザワザワザワ ガヤガヤガヤガヤ

怜「なんかめっちゃ人おるなあ……」

照「なるほど、全店連動で大規模なセールやってるみたいだな」

怜「うーん……」

照「と、怜は人ごみは苦手か?」

怜「そうやなあ、どっちかといえばあんまり好きやないな……
  冷房もあんまり効かんようになるし」

照「最近はただでさえ節電節電で設定温度高めだからな……」

怜「まあ、でもこれくらいなら我慢するわ。とりあえずどっか見て回ろ?」

照「そうか? 無理しなくてもいいんだぞ」

怜「ううん、別に大丈夫やで」

照(と、園城寺さんは言っているが……どうすればいいだろう、あわえもん)

淡〈パッパッパッ パツパッパッパッ パッパッパッ〉

照(キッサテンニハイレ……か、よし、了解)

淡(覚えててよかった手旗信号)

照「そうだ、まずそこの喫茶店入らないか?
  ちょっと喉乾いたし……」

怜「そうやな、あのお店は結構空いてそうやし……」

照「なんか済まないな、こんなに混んでるとは思わなくて」

怜「気にせんでええって。
  私こういうところあんまり来たことないから、ちょっと新鮮やわ」

照「そっか、私もあんまり……というか初めてで」

怜「そうなんや」

照「ああ」

怜「じゃあ休みの日とか何してるん?」

照「土日も祝日もずっと部活だな……遊ぶ暇なんてないよ」

怜「へえー、やっぱり強いとこはそうなんやな~」

照「千里山も強豪校じゃないか……全国2位なんだから」

怜「まーな……でも私はずっと入院してて幽霊部員やったからな~」

照「でも退院してからはずっと練習漬けだったんじゃないのか?」


淡(ば、ばかな……宮永先輩が同年代の女子と普通に会話してる……だと……)

喫茶店

「おまたせしました、烏龍茶です~」

怜「あ、どうも」

照「この店は静かでいいな」

怜「外は人でごった返しとるけどなあ」

照「でもセールやってるんなら、色々安く帰るかもな」

怜「ああ、服とかなあ」

照「怜は普段はどういうとこで服買うんだ?」

怜「いっつも竜華に選んでもらってるわ」

照「仲いいんだな」

怜「まーな……お姉ちゃんは?」

照「まあ……色々かな。色々」

淡(色々って……普段服なんか全然買わないくせに……)

照(淡、これから服を見に行く。良さ気な店を教えろ。
  私のセンスの無さがバレないようなレベルの店で頼む)チラッ

淡(知らん、適当に見て回れ)パッパッパッ パッパッパッパッ

竜華「ちょっと保守しといて」

ファッションフロア

  ワイワイガヤガヤ

怜「いっぱいお店あるなぁ~」

照「そうだな……」

照(ここはやはりカッコつけてオサレなお店に入るべきか?
  いやいやしかしここは分相応の……)

怜「あんまりオシャレなお店に入るんは、ちょっと気が引けるな」

照「う、うん、そうだな、そうだよな。
  やっぱり高校生らしいお店にするべきだよな、うん」

怜「そやな~。でもこういうとこあんまり来いひんから、
  自分にあった店ゆうんも、ようわからんわ」

照(うん、そうだな……なるべく派手じゃなくて、
  人がいなくて、ゆっくり見て回れそうな店……)

照「そうだ、あそこなんかいいんじゃないか?」

怜「うん、そやね、あのお店見てみよ」


淡(ちょ、二人とも何やってるんですか! そこオバハン向けの店ですよ!)

淡(そんな店はいるな! おい、ちょっと気づけ!)パッパッパッパッパッパッパッパッパッ

あわあわ原作でもこんなキャラなん?

20分後

照「……この店はちょっと失敗だったな」

怜「そうやな……まあオシャレでもなかったけど……
  高校生らしい店でもあらへんかったな」

照「お互いにもっと早く気づけばよかったな……」

怜「そうやな、店内2週もせんで済んだな……」

照(入った時点で気づいたけど自分から提案した手前
  やっぱり間違えた、なんて言ったらかっこ悪いし……)

怜(入った時点で気づいたけど宮永さんが選んだ手前
  ちょっと間違ってるんちゃう?なんて言えへんし……)

照(いきなり危惧していた失敗が起こってしまった……
  淡、どうすればこの失敗を取り戻せる? あれ、淡?)キョロキョロ

照(何処に行ったんだ、淡のやつ……本当に肝心な時に……)

怜「どうしたん、キョロキョロして」

照「ああいや、なんでもない」

怜「ほな、次はどこに……おっと」フラリ

照「と、怜!?」

照「だ、大丈夫か……?」

怜「ああ、心配せんでもええよ……ちょっと目眩しただけやし」

照「ちょっと目眩しただけって……まだ体調悪いんじゃ」

怜「いやいや、元から病弱やしな。このくらいが私の普通やねん」

照「そうなのか……?」

怜「うん、普通普通。だから心配せんといて」

照「なら、いいんだけど……」

怜「ほな次どこのお店見に行く?」

照「そうだな……服屋はもうやめて、別のとこ行こうか」

怜「せやな、そのほうが賢明や」

照「じゃあ、本屋に寄ってもいいかな……欲しい本があるんだ」

怜「うん、ええよ」

照(そうだ、無理して背伸びした場所に行く必要なんてない……
  普通でいいんだな、普通で。うん)

怜「あ、待って……ちょっと歩くん速………………」

照「ん……怜……?」

怜「……あ…………」バタン

照「と、怜! おい、しっかりしろ!」

怜「あ、ああ……ちょっと貧血かな……歩きすぎたかも」

照「え、ど、どうしよう……どうしたら……」

怜「ちょっと休んだら……ようなるし……慣れとるから……」

ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ

照(どどどど、どうしたらいいんだ……誰か呼べばいいのか?
  お店の人とか? 救急車? 貧血で救急車呼んでもいいのかな……?
  ど、どうしよう……淡、どこ行ったんだ……こんな時に……)


警備室

警備員「君ねえ、こんな人ごみの中でこんなもん振り回して……危ないでしょ?」

淡「すいません……反省してます……」

警備員「ぶつかりそうになったって言ってる人もいるからさあ……常識で考えたら分かるでしょうに」

淡「はい……ごめんなさい……」

警備員「君、高校生? 学校どこなの?」

淡「あ、学校は勘弁して下さい……許してください……すんません……」

ホテル

照「…………………」

怜「…………………」

照「…………………」

怜「そんな気に病まんでもええで」

照「いや、でも……私のせいで、私が連れ回したせいで……
  体調に気づけなくて……また倒れさせてしまった」

怜「また、か」

照「すまない……」

怜「謝らんでええってのに。
  お店の救護室で寝かせてもらって、もう元気になったし」

照「でも……気を使わせてしまって」

怜「え、何?」

照「私に気を使って、体調が悪いのを言い出せなかったんじゃ……」

怜「いや、そんなことないって。
  言わへんかったのは、み……お姉ちゃんと出かけたのが楽しかったから……
  私が体調悪いって言うたら、そこでもう打ち止めになってしまうやろ」

怜「うちのが大きいやん…?」

http://lh4.ggpht.com/-Ug0ZIPh-wvA/UAlCp3QfFYI/AAAAAAAAAHw/MOLdaj74R_Q/sakiachigapad1.jpg?imgmax=400

http://lh4.ggpht.com/-Ug0ZIPh-wvA/UAlCp3QfFYI/AAAAAAAAAHw/MOLdaj74R_Q/sakiachigapad1.jpg

竜華「せやろか」

http://lh3.ggpht.com/-8CT1Egu0W4Y/UAlCp75iYII/AAAAAAAAAH4/9JghJIouqPI/sakiachigapad2.jpg

照「………………」

怜「私なあ、友達と出かけるのなんかほとんどなくて……
  あったとしても、私の身体に障らんようなところばっかりで……
  今日みたいなお出かけはホンマに初めてで、楽しかったで」

照「でも、結果的にはこんなことになってしまった……
  ……私はお姉ちゃん失格だよ」

怜「……もう、そんなに思いつめんといてや」

照「…………」

怜「それにしても、ここのホテルの枕、硬いなあ~。
  寝心地悪うてかなわんわ~!」

照「?」

怜「なあお姉ちゃん、ちょっと膝枕してくれへんか?」

照「ひ、ひ、膝枕……!? な、なんで!?」

怜「いっつも竜華にやってもろてるんや。
  体の調子が良うない時は、よく竜華の膝枕で寝さしてもらうねん」

照「そ、そうなんだ……」

怜「せやから、お姉ちゃんにも膝枕してほしーなー」

照「うっ……」

http://www.saki-anime.com/blog/

コークスクリュー膝枕

照「し、仕方ないな……私の膝で良ければ……」

怜「ふふ、ありがとう.……よいしょっと」

照「ど、どうだ……?」

怜「うん、そやな。なかなかええ感じやな……
  高さもちょうどええし、柔らかいし、あったかいし」

照「柔らかいって……」

怜「……今日はホンマに楽しかったよ」

照「あんなんで、楽しかったのか?」

怜「内容は関係あらへんよ。誰と一緒にいたか、っていうのが大事なんやから」

照「誰と一緒にいたか、か……」

怜「そうそう」

照「……そういう人のことを友達と呼ぶのかな」

怜「多分、そうなんやろな……それよりお姉ちゃん」

照「な、なんだ」

怜「頭もなでなでしてくれな。膝枕の常識やで」

照「ほんまかいな……」ナデナデ

さすが膝枕ソムリエでんな

淡はどうなったんや・・いいこなのに不憫や・・

白糸台部屋

淡「ただいま戻りました……」

菫「ああ、お帰り。照と園城寺さんはどうだったんだ?」

淡「途中まで良い感じだったんですけど。
  見失ったというか、見失わされたというか」

菫「なんだ、はぐれたのか……」

尭深「じゃあ賭けは不成立」

誠子「もともと不成立でしょ、みんな『宮永先輩が嫌われる』のほうに賭けてたんだし」

淡「なにげに酷いことやってますね」

尭深「いや、宮永先輩が嫌われれば淡に全額払わせる予定だった」

淡「それはマジで酷いですね」

菫「まあいいや、晩御飯にしよう。ご飯どうする?」

淡「私ルームサービスでいいです」

菫「ああ、そう。じゃあ私らレストラン行くから」

誠子「ここのホテルのご飯おいしいですよね」

尭深「お茶も美味しい」

レストラン

菫「あ、照」

照「ああ……みんなも晩御飯か」

怜「どうも、こんばんは」

尭深「こんばんは……園城寺さん」

怜「はい?」

尭深「単刀直入に聞きますが、なぜうちの宮永なんかの妹に?」

誠子「何か弱味を握られてるとか、金品に釣られたとか……?」

照「菫、もしかして私って後輩に嫌われてる?」

菫「いじりだよ……多分」

照「なんで目をそらすんだ」

怜「お姉ちゃん、この人らが変なこと聞いてくるで」

照「そんな人らの言うことなんか聞かんでええで、向こうで食べよな」

怜「はーい」

菫「関西弁うつりすぎやろ」

怜「なあお姉ちゃん、食べさせあいっこせえへん?」

照「ああ、いいよ。じゃあ怜のそのフライドポテトちょうだい」

怜「はい、あーん」

照「あーん」モグモグ

怜「お姉ちゃんのお刺身一切れちょーだい」

照「いいよ、あーん」

怜「あーん」



菫「あんなデレデレしてる照は初めてだ……」

誠子「ほんとに姉妹ごっこだけなんですよね……
   なんかちょっと危ない関係に見えるんですけど」

菫「お姉ちゃんがお姉さまにならないことを祈るしかないが……」

尭深「このままいくとマリア様がストロベリィパニック」

誠子「全国1位2位のエースがレズカップルになるって、相当スキャンダラスですよね」

菫「嫌だなあ、新聞や雑誌にそんな形で名前出るのは……」

尭深「それはそれで面白いですけど」

テレビ中継見ながら「クロチャーのレイプ目いただきました!本当にありがとうございます!」
とかか胸熱

照「ほらほら怜、口にケチャップ付いてるじゃないか」

怜「お姉ちゃんも鼻の頭にマンゴーソース付いてるで」

照「え、本当に? どこ?」

怜「ここや、ここ」フキフキ

照「あ、ありがとう」

怜「もう……お姉ちゃんはちょっと抜けたとこあるなあ」

照「ふふ、だから怜がそばについててくれないと」

怜「も~」


菫「…………………」

誠子「先輩、エビフライがタルタルまみれになってますよ」

菫「お、おおっ、しまった」

尭深「そんなに向こうが気になるんですか」

誠子「明日になれば終わるんですから、そんなにヤキモチ焼かなくても」

菫「や、ヤキモチなんかじゃないっ!!」

尭深「へえー、じゃあそういうことにしときます」

照「菫?誰そr・・・はは、冗談に決まってるじゃないか」

照「怜、デザートは何にする?」

怜「そやな~、ゆずシャーベットにしよかな~」

照「そんなの食べたらお腹冷えちゃうだろ」

怜「そう? じゃあこっちのパフェにしよかな」

照「夜にそういうの食べると太っちゃうぞ」

怜「えー、じゃあどれにしたらええんよー」

照「白玉あんみつはどうだ? これなら……」

怜「お姉ちゃんが食べたいだけとちゃうのー?」

照「そんなことないよ、ちゃんと怜のことも考えてだな……」

怜「もう、嘘ばっかり~」

照「ほんとだよぉ~」



菫「ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ」

誠子「先輩、ほらもう部屋戻りますよ、先輩!」

尭深「その鬼の形相をやめて下さい、他の客がビビってます」

しえ

照怜部屋

照「どうだった? ここのレストラン、なかなかレベル高いだろう」

怜「そうやなー、あんな高そうなもん食べたのも初めてやし……
  ああいうメニュー自体も初めてやったわ」

照「というと?」

怜「いっつもは健康に配慮したメニューばっかりやしな。
  栄養士さんがな、きっちり献立作って、そのとおりにせなあかんねん」

照「え、そ、そうだったのか? じゃあ今日の食事は……」

怜「いやいや、別に一日くらいかまへんよ。
  それに味気ない栄養食ばっかりでもつまらんしな」

照「そう? 問題ないならいいんだけど……」

怜「ふふ、お姉ちゃんと一緒にいると、
  いろいろ初めてのことが経験できて、ほんまに楽しいわ」

照「そ……そうかな。そう言ってくれると、姉冥利に尽きるというか……」

怜「姉冥利て……ていうか、これホンマに全部おごりでええの?
  食事も、宿泊も……言うてくれたら、ちゃんとお金払うよ」

照「ああ、こっちから誘ったんだから、気にしないで。怜はゲストなんだから」

怜「うーん……でもなんか悪いなあ……」

照「気にしなくていい。
  私が好きでやってることなんだから」

怜「そうかな、まあそれならええけど……」

照「さてと、そろそろ風呂にはいるか」

怜「先に入ってええよ」

照「…………………」

怜「ん、どしたん?」

照「…………もし、怜がよければでいいんだが……」

怜「一緒には入らへんで」

照「こ、心を読まれた……!?
  一巡先を読む力は麻雀以外にも使えたのか……」

怜「いや、なんとなく予測できたし」

照「そうか……」ガクリ

怜(まあ、何回も竜華に同じように誘われたことあるしな……)

照「じゃあ先に入る……はぁ」

怜(最強高校生宮永照もため息なんかつくんやな)

あわあわあわわ

怜(……宮永照)

怜(もう一回会った時は、今度こそ麻雀で勝ったろうと思てたけど……
  なんか今日一日一緒に遊んで、なんかどうでもよくなってきたな)

怜(それにしても、竜華やセーラ以外の友達と
  こんなに長い時間一緒に過ごすなんて初めてやな)

怜(竜華か……今頃心配しとるかなあ)

 プルルルルルル プルルルルルル

怜(あ、ちょうど竜華から電話や)

怜「もしもし~」

竜華『怜ぃぃぃ、あんた今どこにおるん? もう夜やで、はよ戻ってきい!』

セーラ『オカンかお前は……』

怜「あー、なんか泊まることになってるみたいやから。
  今日は宮永さんとホテルに一泊するわ」

竜華『ホテル!? お泊り!? あかんで怜、そんなん許さへんで!
   今すぐに帰って来なさいよ!! ええな!?』

怜「………………大将戦」

竜華『ひっ!?』

怜「白糸台…………大星淡…………」

竜華『あ、あ、あああああばばばばばばば』ブクブクブク

セーラ『こらこら怜、そのへんにしといたってくれ……』

怜(これは結構便利やな……)

セーラ『で、怜は今晩そっちに泊まるんやな?』

怜「うん、ごめんな、わがまま言うて」

セーラ『いやいや、ええよ。怜も遊びたい時くらいあるやろしな』

怜「まあ、それだけやあらへんけどな……」

セーラ『ところで姉妹ごっこはまだ続いてるん?』

怜「なんだかんだで続いてるよ。お姉ちゃん呼びにも慣れてきたし」

セーラ『そっか。しっかしなんで宮永照は、怜を妹にしたがったんや?
    浩子も不思議がっとったで』

怜「うーん、どうなんやろな。
  なんか『妹』っていう存在に対して思うところがあるみたいやけど」

セーラ『ふーん。まあよう分からんけど、頑張って妹やってくれや』

怜「妹を頑張るっていうんも、なんか変な表現やな」

なんだシリアル展開はいるのか?

セーラ『いやいや、怜が頑張って宮永照の納得いく妹を演じ切らんと、
    何日経っても返してくれなさそうやからなあ』

怜「あはは、それもええかもな」

セーラ『ようないわ、竜華が大変なことになるっちゅうねん』

怜「ふふ、それもそやな。まあ明日中に帰れるように頑張るわ」

セーラ『おう、明日のお昼にバスが出るからな、それまでに帰りや』

怜「分かった。ほな、おやすみ」

セーラ『おやすみ』プチッ

怜「……………………」


怜(妹を演じる、か……)

怜(宮永咲の……『実の妹』の話をした時のあの反応……
  やっぱり宮永照は妹に対して何かあるんやな……)

怜(私というニセの妹を用意したのは何でや……
  理由は、意味は、目的は何なんや……)

怜(擬似の妹として、擬似姉妹関係の中で、
  宮永照にしてあげられることは何なんやろ……)

怜(宮永照は、何を求めてる……?)

白糸台部屋

菫「はーあ、いい湯だった」

淡「…………」

菫「ん、淡はもうオネムなのか?」

淡「はあ……今日はいろいろあって疲れたんで……」

菫「なんだ、せっかく家からゲームキューブとマリオパーティ持ってきたのに」

淡「バカじゃないですか」

菫「しゃーない、尭深と誠子をここに呼ぶか……」

淡「寝たいっつってんだろ」

菫「そういえば照と園城寺さんは同じ部屋で寝るのか?」

淡「へ? そりゃそうでしょう」

菫「ふーん、そっかそっか」

淡「なんですか、嫉妬ですか」

菫「いや、そんなんじゃないけど……あいつイビキと寝言が酷いんだよなー」

淡「え、そうなんですか?」

菫「ああ、あれがアイツの唯一の欠点といってもいいだろうな」

淡「唯一……?」

菫「それに加えて寝相も悪いからなあ。
  隣で寝ようもんなら蹴っ飛ばされて目が覚めるし、布団は行方不明だし……」

淡「見てきたように言いますね」

菫「何度か照の家に泊まったことあるしな」

淡「へえ、そうなんですか」

菫「……なのになんで照は私のこと友達としてみてくれないんだろうな」

淡「ああ、まあ、その……強く生きて下さい」

菫「ちくしょー、酒だ、酒! 酒買ってこい淡!!」

淡「買えるわけないでしょ!!」

尭深「酒ならばここにございます!」

誠子「ビール日本酒発泡酒ワイン紹興酒焼酎ウイスキーブランデーなんでもありますよ!」

淡「いきなり入ってきた!?」

菫「よっしゃー、今日は朝まで酒盛りじゃー!」

淡「寝かせてくれえええええ!!」

照怜部屋

照「うーん……むにゃむにゃ」ゲシッ

怜「いだっ!!」

怜(うう、また蹴られた……)

怜(何が『姉妹なんだから一緒のベッドで寝よう』や……
  寝相は悪いしイビキはうるさいし……)

怜(もーやっとられんわ、自分のベッドで寝たる)

照「……我々の勝利だ……海も我々人間のものだ……
  我々の海底開発を邪魔する者は、二度と現れないだろう……むにゃむにゃ」

怜(どんな夢見とるねん……)

怜(しっかしこんなアホみたいな顔でヨダレ垂らして
  意味不明な寝言とイビキをわめきちらしてるとこ見てると
  宮永照も一人の人間なんやなーって思うなぁ)

怜(麻雀してる時の冷酷かつ圧倒的な存在感……
  そのイメージばっかりが先行しとるけど)

怜(彼女もただの少女であって……そしてただのお姉ちゃんなんや)

照「英雄ってのはさ……英雄になろうとした瞬間に失格なのよオオオ」

怜「あああ、もう、やかましい!」バフン

おいライダーバトルに参加してるぞ

翌朝

怜「…………」

怜「……朝か」

怜「ああ、そうか……宮永照と一緒に泊まってたんやったっけ……」

怜「お姉ちゃんのイビキ寝言がやかましすぎて寝られんわと思ってたけど
  いつのまにか寝てたみたいやなあ」

怜「今何時や……8時前か」

照「すう……すう……」

怜「お姉ちゃん、朝やで~。起きや~」ユサユサ

照「う、うーん……」

怜「朝ごはん食べてしまうで~」

照「もうちょっと……寝かして……咲……」

怜「!!」

照「ん……あれ……ああ、怜か……おはよう……」

怜「あ、うん……おはよう」

照「うん?どうした?」

怜「あ、いや、なんでもあらへんよ。
  ちょっと顔洗ってくるわ」

照「ああ」


怜(宮永照は今たしかに咲って言うた……間違いなく宮永咲のことやろな……
  そして宮永咲は、確実に宮永照の実妹)

怜(二人の間に何があったかは知らんけど。
  なんか複雑な関係なんやろうなあ)

怜(私は擬似妹としてここにいる。つまり宮永咲の代わりなんや)

怜(宮永照は私を宮永咲の代わりにして何がしたい?
  私は宮永照に何をしてあげられる……?)

怜(宮永照は私に色んな楽しみをくれた。
  たった一日やったけど初めての経験も色々あった)

怜(私は宮永照にお返しをせんとあかん……)


照「あれ?そういえば昨日同じベッドで寝なかったっけ?」

怜「え、そうやったっけ……?多分思い違いやろ」

照「そうかな……確かに同じベッドで寝た気が……あれ、菫の時と勘違いしてるのか?」

怜「うん、多分そうや」

>菫の時
ふーむふーむ

照「怜は今日は何時に帰らないといけないんだ?」

怜「お昼前には出んと間に合わへんかな」

照「そっか……じゃあもうあと3時間くらいしかないな」

怜「さみしい?」

照「そりゃさみしいさ。妹との別れはな」

怜「そっか。じゃあ帰る時間までは二人っきりで過ごそか」

照「いいのか?」

怜「うん、ご飯はルームサービスとればええし……
  それに外出歩くんは好きじゃないしな」

照「そうだな……じゃあ時間までこの部屋で過ごそう」

怜「うん」

照「ほら」ポンポン

怜「ン、何?」

照「膝枕してあげる」

怜「えへへ、まさかお姉ちゃんの方から誘ってくるとはな」

照「ま、いいじゃないか」

怜「お姉ちゃんの膝枕は竜華の次にええ感じやな」

照「光栄だな」

怜「頭ナデナデも忘れへんかったら、なおええんやけどな」

照「おっと、忘れてたよ」ナデナデ

怜「んふふ」

照「ところで清水谷さんとはずっと仲がいいのか」

怜「そうやな。中学の時からずっと。
  私を全国大会までつれてきてくれたんも竜華や」

照「いい友達を持ったな」

怜「うん、大親友や。そのうち結婚も考えてる」

照「えっ!?」

怜「いや、まあ冗談やけどな」

照「ああなるほど……今のが大阪人のボケか」

怜「……それより、お姉ちゃん」

照「なんだ」

怜「宮永咲のことなんやけど……」

照「なんのことだ?」

怜「ええよもう、隠さんでも……私は宮永咲の代わりなんやろ?」

照「…………」

怜「別に誰かの代用品にされたことを怒ってるわけやないで……
  代用品なら代用品としてのつとめを果たそうと思ってた」

照「…………」

怜「でも色々考えてみたんやけどな……
  結局何をしても一時の気休めにしかならへんと思うねん」

照「…………」

怜「お姉ちゃん……いや、宮永さん。
  あんたホンマは……」

照「…………」

怜「宮永咲に戻ってきて欲しいんやろ」

照「…………」

怜「他人の家庭の事情に首突っ込むのは失礼かもしれへんけど。
  でももう一度宮永咲のお姉ちゃんになりたいんやったら……」

照「……無理だよ」

照「無理だよ、いまさら、そんなこと…………
  私と咲のあいだにはもうどうしようもない溝が出来てるんだ」

怜「そやから、誰かを妹の代わりにして傷を癒すんか?
  そんなその場凌ぎのことをずっと続けるんか?」

照「…………」

怜「そんな偽物で満足なんか?違うやろ?」

照「……でも私の可愛い後輩が言っていたよ。
  100を得られないなら70や50で妥協しろってね」

怜「それは100を掴もうとした人が言う言葉や。
  あんたは最初っから妥協点に逃げてるだけやんか」

照「…………」

怜「宮永咲のお姉ちゃんやろ、あんたは……」

照「…………」

怜「ああ……こんなこと話してるうちにもう時間が来てしもたな……」

照「え、もうそんな時間か……」

怜「すまんな、宮永さん……最後にこんな辛気臭い話してしもて」

照「いや……園城寺さんの言うことは、全部合ってる。的確だ。的を射てる」

怜「それじゃ……もう行くわ。
  色々ありがとうな、ほんまに。お世話になった」

照「うん……」

怜「…………」

照「……あの」

怜「ん?」

照「また……会ってくれるか?
  こんな、情けない私でも……嫌いにならずに、また……」

怜「別に嫌いになんかならへんよ。むしろちょっと好きになったくらいや。
  ああ、チャンピオンもこんな人間臭い悩みがあるんやなーって」

照「そうか……」

怜「そやな……じゃあ今度は3人で会いたいな」

照「3人?」

怜「お姉ちゃんと、妹ふたりで、3人」

照「……うん、そうだな……分かった。
  実現できるように努力するよ……ありがとう、園城寺さん」

怜「頑張ってや、お姉ちゃん」

これが私と園城寺さんが擬似姉妹を演じた一日半のすべてである


私が愛してやまない存在であり、でももう二度とは戻ってこない人……

宮永咲の代用品として他人を利用するという私の最低な考えを

園城寺さんはすべて見透かしていた


それでも園城寺さんは私に愛想を尽かしたりしなかった

むしろ好きになったくらいだと言ってくれた

そしてさようならの代わりに頑張ってという言葉を残していった


擬似姉妹……私の臆病心とエゴによって生み出された歪んだ関係

こんなものは間違ってる

でもこのおかげで得られたものも確かにあったのだ……


私は答えなければならない

園城寺さんの気持ちに

そして何よりも自分自身の気持ちに……

以下蛇足


怜「ただいま~」

セーラ「おー、やっと戻ってきたか」

怜「すまんなー、心配かけて」

泉「いやあ、その言葉は私らよりもまず清水谷先輩に…………」

竜華「ときいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

怜「うわあ!?」

竜華「大丈夫やったか怜!? 何もされへんかったか!? 怪我とかしてへんか!?
   何か買わされへんかったか!? お金取られたりしてへんか!? 盗撮されてへんか!?
   事件や犯罪に巻き込まれたりしてへんか!? 何にも変わりないか!? 体調はどうや!?
   寝る前に歯磨いたか!? 風邪とか引いてへんか!? 忘れ物してへんか!?
   変なこと吹きこまれへんかったか!? ちゃんと寝られたか!? ご飯食べさせてもろたか!?
   なんも危ないことしてへんやろな!? 虫に刺されてへんか!? 朝の占いで1位やったか!?
   それよりなにより処女膜は無事かあああああああああああ!!!」

怜「やかましい!!」バシッ

竜華「あうっ」

怜「なんもされとらんわ、大声で処女膜とか言うな」

フナQ「ああ、はしたない……」

※竜華の膜は怜に破られています

セーラ「てゆーか怜、ホテル代とか全部向こう持ちなんか?」

怜「宮永さんはそのつもりやったみたいやけど、
  やっぱり流石に申し訳ないしな……大阪帰ってから白糸台に送金するつもりや」

セーラ「ま、そのほうがええやろな」

怜「何円になるかは分からんけどな」

竜華「なあ怜、ちょっと怜……聞いてる?」

怜「聞いた上で無視してる」

竜華「ひどっ!」

怜「で、何?」

竜華「もう宮永さんと会ったりしたらアカンで。
   今度は何されるか分からへんからな!」

怜「別にそんな悪い人とちゃうって……
  それにまた、多分会えると思うねん。近いうちにな」

竜華「えー……じゃあその時はウチも付いてくわ」

怜「…………大将戦」

竜華「もうそれ免疫ついたわ」

怜「早っ!」

白糸台部屋

照「ただいま」

淡「あー、おかえりなさい。園城寺さんは……」

照「千里山に帰ったよ」

淡「そうですか。で、どうでした? かわいい妹のいる生活は」

照「うん、まあなかなか良かったかな……それよりも」

淡「なんですか」

照「そこの菫はなんでそんなに具合悪そうなんだ」

菫「うう……うえっぷ」

淡「端的に言えば二日酔いですかね」

菫「はああ……くそっ、あいつらも同じくらい飲んでたのに、何で私だけ……」

淡「あの二人はお酒強いですし」

照「そうだ、菫」

菫「なんだ」

照「膝枕してやろう」

菫「ああ? 何馬鹿なこと言ってるんだ……」

照「具合悪いんだろう。私の膝で休むといい、ほら」

菫「そんな恥ずかしい真似できるわけ無いだろ……」

照「別に恥ずかしくないだろ。ほらほら」

菫「いい、いらんいらん!」

照「なんだ、つまらん……」

淡「てゆーか何でいきなり膝枕なんですか……」

照「まあ、なんというか園城寺さんに教えてもらったというか……
  そういえば園城寺さんと話してて思ったんだが」

淡「なんですか」

照「もしかして私と菫って友達ってことになるのか?」

淡(おおっ)

菫「て……照……! お前……」

照「ん? 間違ってる?」

菫「てるうううううううううううううううっ!!」ガバッ

照「うわっ!?」

菫「苦節3年、ついにお前の口からそんな言葉を聞けるとは……!!」

照「離れてくれ暑苦しい」

淡「こんな喜色満面の弘世先輩初めて見た……」

菫「私は嬉しくて嬉しくてもううえええええええげろげろげろげろ」

照「うわああああああ!!」

淡「思いっきりゲロ吐いたー!」

菫「ようし照、やっと友達だと認め合えた記念に、
  これからお互いのことを『てるてる』『すみすみ』と呼び合うことにしよう、そうしよう!」

照「絶交しようかな……」

淡「赦してあげて下さい……多分ちょっとテンションおかしくなってるだけだと思うんで……」

菫「よーしてるてる、家に戻ったら早速マックの新メニュー食べに行こうぜ!」

照「まずお前の吐いたゲロを全部掃除してから……うっうええええええ」

淡「も、もらいゲロですか!?」

尭深「宮永先輩帰ってきたんで……うわ、ゲロくさっ」

誠子「なんですかこの部屋、何があったんですか」

淡「まあ色々と……」

菫「はあ……なんで私がこんなことを」フキフキ

淡「先輩が吐いたゲロじゃないですか」

菫「てるてるもちょっと手伝ってくれ」

照「いや、私はこれから行くところがある……あとてるてるはやめろ」

淡「行くところって、どこ行くんですか? 今から?」

照「大事なところ……大事な人に会わなきゃいけない。
  もう逃げないと決めたんだ」

淡「はあ、なんかよく分かりませんが、頑張ってください」

照「うん……それじゃ、行ってくる」



照(そう、取り戻すんだ。私の大事な妹を)

照(待ってろよ咲……お姉ちゃんが今からそこに行くからな)

照(今度は擬似姉妹なんかじゃない、本当の姉妹に……)
 

菫「ゲロ取れないなあ……」


     お    わ     り     

おしまいです
話が変な方向に行ってしまった気がしなくもないけど許せ

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