P「かまいたち風の夜」(464)

http://www.youtube.com/watch?v=aRVXqUtkmVw&feature=context-chv

空は広く青く広かった。

雲ひとつ無くまさに快晴と断言できる。

首を動かすと、真っ白な斜面を軽快に滑る人達が見えた。



ズザシュッ! と、キレのいい効果音を伴って、粉雪が削り節みたいに顔にかかった。

真上から真が覗き込んでくる。

真っ黒なゴーグルがボーイッシュな髪形によく似合っていた。


真「プロデューサー大丈夫ですか? 思いっきり転んでましたけど……」

P「冷たい。主に顔と耳が」

雪面へ大の字にへばりついていた俺は、寝起きさながらにゆっくりと身を起こした。

板とストックが4メートルほど下に突き刺さっているのが見える。

リフトの上から笑い声が聞こえた。

響「プロデューサーはどんくさいなぁ。自分初めてだけどもうパラレルできるぞ」

得意げに目を輝かせて響がからかってきた。

悔しい。最初は俺が教えてやったのに数時間で抜かされてしまった。


P「響はダンスやってるからな」

理由になってないな、と自分でも思いながら立ち上がる。


冷たい風が汗ばんだ体に心地良い。

遠くに見える尾根はどこまでも白く、雄大な気持ちになった。


髪に絡んだ雪を払って、慎重に板を回収しようと足を持ち上げると

春香「うわ! うわわわ! ど、どいてくださーい!」

P「え?」

声に驚きながら振り返ると、真と響が左右にスーっと別れたのが見えた。

その間を春香が直滑降で……。

春香「ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」

P「俺たちは初心者コースに行こう。ここは危険だ」

春香「は、はい……」


あれだけのスピードでぶつかったのに怪我一つなかったのは幸運だった。

見栄を張って上級者コースに来たのを後悔しながら、コブを迂回してノロノロとボーゲンで下る。

4回転んだところで雪歩とやよいが雪だるまを作っているのが見えた。

日が落ちる前に全員を回収してペンションに向かう。

送迎バスは白く排気ガスを吐きながら待機していた。


今日は全員で旅行に来ている。いわゆる社員旅行だ。

一番楽しみにしていた社長が来られなかったのは残念だが、みんな雪山を堪能していたようだ。


滑り疲れて眠る者、興奮が冷めずに騒ぎ続ける者、雪合戦の勝敗について討論する者。

色々だ。

俺は筋肉痛の予兆に怯えながら、服の隙間に手を突っ込んで濡れた体を拭いていた。

P「「ひゃうん!」

溶けた雪がまだ残っていてパンツの隙間に入ってしまった。

美希「zzzzz」


肩に軽い頭が乗った。

綺麗な金髪は少しも濡れておらず、サラサラと音を立ててこぼれる。

幸せそうな寝顔だった。


起こさずに拭くのはいささか難しかったので、タオルを抜いて窓の外を見ると、凍りついた針葉樹の群れが見えた。

強くなった風が雪を撒き散らして窓ガラスにへばりついて消える。


いつの間にか出来あがった灰色の雲はのしかかる様でなんだか息苦しかった。

たぶん暖房で鼻が詰まったんだろうけど。

欠伸を噛み殺しながら思った。

ペンションに着くころにはすっかり暗くなっていた。


雪国特有の角度の着いた屋根が目新しい。

玄関脇に設置されたライトはオレンジ色で幻想的。

なんだかラブホみたいだ。


感想は自由だがそれを口に出したらどうなるのか、想像に難くないので黙っておいた。


それでなくとも姦しい彼女達は、暴走しがちなテンションでどやどやとバスを降りていく。

一通り忘れ物がないかチェックして俺も後を追った。

http://www.youtube.com/watch?v=GoCbkYnF5SE&feature=plcp


白い壁紙と艶のあるフローリングが好印象だ。

玄関先で雪を払って中に入ると、強力な暖房が素早く室内を暖め始めていた。


一度荷物を置いてリビングに集合することにした。

律子がカウンターから鍵を引っ張り出して順番に手渡している。

亜美「兄ちゃん兄ちゃん! 探検とかしていいの!?」

P「ダメに決まってるだろ。あんまり騒ぐと外に出しちゃうからな」

真美「げ→! そんなの雪だるまになっちゃうじゃんYO!」

律子「はいはい。アンタ達も早くシャツを着替えてきなさい。匂っても知らないわよ?」

亜美・真美「「う……」」

さすが律子だ。一撃で双子を黙らせた。

あれって途中で落ちてたのか

支援

やよい「あのー、私のお部屋はどこなんですか?」

律子「ちょっと待っててね。……やよいは伊織と同室よ。左に曲がって一番奥。これがカギ」

伊織「はいはい。行くわよ、やよい」

もしかしたらトンでもない大荷物で来るんじゃないかと密かに心配していたのだが、
キャリーバッグという一点を除けばごく普通の出で立ちで伊織が鍵を受け取る。

淡い単色のナップサックを背負ったやよいと並んで階段を上っていった。

俺も続こうと野暮ったいスポーツバッグを持ち上げると、早くも談話室でくつろいでいる二人を見かけた。


P「もう置いてきたの? 早いな」

千早「ええ、私たちは滑ってませんから」


複雑な紋様のソファーには千早と貴音が優雅に座っていた。

茶色のテーブルにはカップが二つ。

紅茶と緑茶だ。


P「貴音も滑らなかったの?」

貴音「はい、げれんでを見ながらのカツカレーは大変美味しゅうございました」

P「さいですか……」

どこまでもマイペースな二人はすぐに自分の世界に戻っていった。

千早は書店のカバーをかけた文庫本に、貴音は茶柱をじっと見ていた。

階段は壁に沿って伸び、勾配はやや急だ。

飾ってある小さな絵に気を取られた俺はうずくまる人影に直前まで気がつかなかった。

P「おわ!」

雪歩「はわわ……!ご、ごめんなさいぃ」


ビバークできそうなほどの荷物に、押しつぶされるようにして雪歩がうめいた。

寝袋と個人用テントがガッツリと固定されていて、このまま外に出ても生き残れそうだ。


P「なんでこんなものまで?」

雪歩「お父さんがどうしても持っていけって……」

P「あぁ……」

過保護なのだろう。

もっとも俺に娘がいたら同じことをしないとは言い切れないので笑えないが。


P「よいしょっと」

雪歩「ありがとうございますぅ」

二人がかりで危なっかしく階段を踏破した。

客室は全部二階となっている。

階段を中央に左右に廊下は続いていた。

きしみ一つ立てない真新しい造りは、吹き荒れる外界と完全に隔離されていてなんだかホッとする。


あずさ「あらあら~、どっちだったかしら?」

あずささんが困ったような、困ってないような、そんな声で廊下をうろついていた。


P「あずささん。迷子ですか?」

あずさ「えぇ、迷子というか……。迷子なんですけど」

ペロっと舌を出して照れ笑い。可愛い。

ニヤつきそうになった表情を自制して、部屋割りを思い出す。

階段から左手に折れると、廊下を挟んで4つの部屋がある。

右奥がやよいと伊織でその向かいが響と貴音。


やよいおの隣は美希と律子で、向かい合う部屋からは双子の騒がしい声が聞こえてきた。

指を差して確認していると律子がドアを開けて飛び出してきた。

律子「うるさーい!」

亜美・真美「「ひゃー! 鬼軍曹だー!」」

あずさ「うふふふ……」

階段を上った正面が俺の部屋だ。

右手側は一階からの吹き抜けになっているので、階段方面に客室はない。

手前から順に、春香と千早、あずささんと小鳥さん、真と雪歩……のはずだ。たしか。

脳内で地図を描く。

こんな感じだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【やよいお】 【みきりつ】  【P 】 【はるちは】 【あずぴよ】 【まこゆき】

【ひびたか】 【あみまみ】 【階段】 【       手摺り          】


―――――――――――――――l―――――――――――――――――――――

P「あずささんの部屋はここのはずです」

紳士精神を遺憾なく発揮してドアを開けると

小鳥「ピヨォ!?」

あられもない姿でした。

小鳥「変態紳士ですよそれは!」

P「いやホントすいませんでした! 悪気はなかったんです!」


誤解のないように言っておくが下着姿だった。

もしかしたら逆に喜んでいるかもしれない……、と思わないでもなかったが、無論そんなことはなくて。

顔を真っ赤にして怒られた。

P「あ、よいしょっと……」

まだまだ若いつもりだが学生時代のようにはいかない。

漏れた声に苦笑いが浮かんだ。


内装はシンプルにベッドが二つと、引き出しのついたナイトテーブル。

それにカーテンのついたクローゼットだけ。

入り口横のドアを開けると、小さなユニットバスがあった。

チラッと見た限りでは小鳥さんたちの部屋も同じだったので、客室は全部同じ作りなのだろう。


真っ黒な窓ガラスに近寄ると、白い粉がへばりついた。

分厚く重いカーテンに手をかけながら外を見るとすごい勢いで吹雪いている。

鍵が掛かっているのを確認して、カーテンを閉めた。


二重ガラスに防音効果はないようだ。

断末魔のような風の悲鳴を聞いてそれを知った。

着替え終わるとカバンから枕を引っ張り出した。

旅行に出かけるときはいつも持ってきているのだ。

もう一つのベットに備え付けの枕を放り投げて、マイ枕の感触を確かめながら寝転がってみる。

真っ白な天井を見ながら、真っ白な音に包まれていると手足の先がズンと重くなった。

頭に黒いモヤが掛かってまぶたが自然と閉じていく。

一つ息をついたところまでは覚えていた。

コンコン    コンコン

P「う……」

ノックの音で寝ていたことに気がついた。

P「あ、やべ……」

ずっしりと重い体は操縦がひどく億劫だ。


P「すぐ行くから!」

乾燥してしゃがれた声で呼びかけると廊下を移動する気配がした。

寝転がったまま腕時計を見る。

どうやら寝ていたのは10分程らしい。

シーツをしわくちゃにしながらベッドから降りると、床に近いところの空気が冷たい。

体をかきながら鍵を掴んでドアノブを握ると

ゾクリ

背筋が粟立った。


よく分からない感覚だ。

後ろからジッと見られているような、あるいは誰かが立っているような。


恐る恐る首だけで振り返るとカーテンが少し開いていた。

P「なーんだ」

僅かな空気の対流で室内の温度が変化したのだろう。

温まった背中に冷えた空気がぶつかっただけだ。

説明がつけば子供みたいに怖がっていた自分がバカらしい。

きっちりとカーテンを閉めて部屋を出た。

階段の下では談笑に花が咲いている。

手摺り越しに覗き込むと楽しげに少女達が集っていた。


寝ぼけて転げ落ちないように手摺りをつかんで階段を下りていると伊織に見つかった。

伊織「なにやってたのよ。遅いじゃない」

P「ごめんごめん、チョット寝てた」

やよい「あ、プロデューサー。座りますか?」

P「うん? いやいいよ。それより全員いるのかな?」


ソファーの許容量を越えた人数が談話室を埋め尽くしている。

カウンターにもたれかかるようにして見渡した。

律子「3人はいま料理をしています。春香とあずささんと響ですね。
   それ以外は全員いますよ」

P「了解」

ここのオーナーの小林さんは社長の知り合いだ。

脱サラして今シーズンからペンションを開くことにしたそうだが、
なにぶん初心者なもので勝手がわからないそうで。

ならば、ということで試験的に宿泊させてもらうことになったのだ。

ベッドメイクも掃除もこちらで行う。

その分料金は格安だ。


しかしこれをペンションと呼んでいいのだろうか?

オーナーが来るのすら明日になるというのだから気分としては豪華な山小屋と大差ない。

社長の友人らしいと言えばらしいが、なんとも自由な人である。

イメージした小林さんはアロハを着ていた。会ったことないけど。

P「美希にはまた後で説明してくれると助かる」

律子「はい……」

真上を向いて寝ている美希を見て律子がメガネの位置を直した。

P「それじゃあ一旦解散にするから」

俺の言葉でざわざわと気配が動きだした。


ふと思い出して、カップを片付けている雪歩に声をかける。

P「そういやさっき起こしてくれたのって誰?」

雪歩「え?」

P「俺寝ちゃっててさ。ノックで起きたんだけど」

雪歩「んと、ちょっとわからないですぅ。ごめんなさい」

P「そっか。ありがと」

俺は……


D 部屋へ戻った

じゃあ辞めます ごめんなさい

俺は一度部屋に戻ることにした。

時間まで寝よう。

体力は出来るだけ温存するのが大人の知恵だ。


オッサン臭いと自分でも思った。


真「プロデューサ~、ちょっと手伝ってもらえますか?」

真の情けない声に振り返ると、ソファーを占領した美希を抱えようとしていた。

P「おい無茶するなよ。そこで寝かせとけばいいんじゃないのか?」

真「だ、だめですよ! 風邪ひいちゃうじゃないですか!」

それもそうかと頭を掻いて美希に近寄る。

美希「zzzzzzzzz」

P「あー、こりゃダメだわ。完全に寝てる」

真の協力を得て美希を背負った。

発育のいい体がもたれかかって、年齢に不釣合いな手応えを背中で感じた。

スペースを有効活用するためにバリアフリーは犠牲になったのだ。

傾斜のキツイ階段を上りながら思った。

真「大丈夫ですか?」

P「ん」

短く返事をする。

階段もそんなに長くはないので大丈夫だろう。

踏み外さないように注意しながら足を送る。


雪歩「て、手伝いましょうかぁ?」

P「あぁ、いや。あとちょっとだから」

増援部隊は心強かったが、そちらに気を取られてつまずかない様に気をつけた。

P「えーっと……」

美希の部屋はどこだっけか。

ドアはどれも同じ形で判然としない。

脱力しきった美希は失礼ながらずっしりと重く息が上がりそうだ。

美希「あふあふ……」

おのれ、起きたら覚えてろよ。


愚にもつかない独り言を呟いて俺は


P「えーと……」



C 適当に開けてみる

うろ覚えでドアノブを回してみる。

ガチッ

当然のように鍵が掛かっていた。

順番にドアノブを回しながら廊下を巡回する。


ガチッ



ガチッ



ガチャッ

よしここだ。

開いた部屋は無人で、暗闇が大きく口をあけているようだった。

真「あの……」

P「え? なに?」

疲れがモロに出てぶっきら棒になってしまった。

こんなことじゃいけないと分かってはいるんだが、もう遅い。

真「いえ……」

P「ごめん、乱暴だったな。反省してる」

雪歩「そのお部屋私たちのなんです」

廊下右手の端はまこゆき組か。

P「う……、悪い。間違えた」

適当に選んで間違えたも糞もないけど謝った。


ずり下がった美希を背負いなおして



B ここに置かしてもらえないか聞いた

背筋が突っ張って痛い。

腰が嫌な音を立てる。

腕の筋は限界まで引っ張られてプルプルしていた。


P「ごめん、ちょっとだけでいいから置かしてくれないかな……?」

真「全然いいですよ!」

雪歩「すぐ片付けますから」

二人がカバンを端によけて、ベッドまでの道を作ってくれた。


最後の力を振り絞って美希をゆっくりと寝かせると

P「はぁ~、疲れた……」

座り込んでしまった。

真「大丈夫ですか?」

雪歩「なにか飲みたいものとかあれば……」

P「大丈夫だけど、ちょっとだけ休ませて……」

みっともない姿を見せてしまった。今更だろうけど。

>>44
仕方ないいまサッカーしてるから

美希の眠りは深く、規則正しく胸が上下していた。

美希「すー……。すー……」

P「ここまで眠ってるのはさすがに珍しいな。よっぽど疲れたのかな」

昼間なんどか見かけた姿を思い出す。

見事なテクニックでゲレンデの注目を集めていた。


真「勝負しようって誘ったんですけど、一人のほうが楽しいって断られちゃったんですよね」

残念そうに真が小声で言った。

雪歩「私はやよいちゃん達と雪だるまとかカマクラを作ってましたから……」

P「帰るときにちゃんと壊さないと怒られるぞ」

わりと真面目にアドバイスした。


段々と強まる風の音に窓を見ると斜面の雪がハッキリと見えた。

固く凍った枝が張り出してこちらに届きそうだ。

首を捻るとゴキリと鳴った。

起こさないように会話は小声に、そして次第に無言になった。

真「じゃあボクは下に行きますね」

真がバネの利いた体躯を見せ付けるように立ち上がった。

緩急のハッキリした動き、が立ち上がるという単純な一挙動にもよく現れていて感心した。


雪歩「私は何かお手伝いすることがないか聞いてきます」

対照的に流れるような動作で雪歩が言った。

日本舞踊の楚々とした挙措が美々しい。

静々と歩を進めた。


さてどうしようか。

人の部屋で長居する気にはならなかった。




B 雪歩についていった

疲れはあったがそれ以上に空腹だった。
考えてみれば昼間はずっと遊んでいてまともに食事を取っていない。

早めに夕食を取りたくなったので俺も手伝うことにした。

P「俺も手伝いに行くよ」

雪歩「あ、はい」

雪歩の後をつけるような形で歩く。

雪歩をよく見ればスリッパで絨毯の上をすり足で歩いていた。

頭の上下動は0で春香に教えてやって欲しいと思った。


廊下→階段→談話室→厨房と、選択式ADVなら必然となるであろう煩雑な手順を一気にすっ飛ばして目的地に到着。

P「ん?」

雪歩「あれ?」

厨房を覗き込んでる人影を見つけた。


P「なにしてんの貴音」

貴音「いつのまにかこんなところまで来てしまいました。まこと面妖な」

目は厨房に釘付けで、貴音の意思によるものは明白だった。

繁盛している中華料理店の厨房はきっとこんな感じなんだろう。

そう思わせるほどの活気がここにはあった。

熱意と芳香と活気が充満している。


響「亜美! これ運んで!」

亜美「アイアイサー!」

春香「真美、食堂の準備終わってる?」

真美「モチのロンだよ!」

あずさ「やよいちゃん、悪いんだけどそろそろ出来上がるからみんなを呼んできてくれる?」

やよい「はーい!」


むわっとした熱気に押されて雪歩は顔を引っ込めた。

逆に俺は匂いに釣られて首を伸ばす。

真下には貴音の頭があった。

同じレベルのようでなんだか悔しい。

春香「プロデューサーさん、もうすぐ出来ますからね」

P「はーい」

子供じみた返事で指をくわえた。

貴音の涎がポタポタと垂れて絨毯に染みている。頭の位置が逆だったら大変なことになるところだった。

あずさ「これ持ってってもらってもいいですか?……えーと、雪歩ちゃん」

薄切りにされたてんこ盛りの牛肉は、二匹の獣を素通りして安全牌であるところの雪歩に渡った。

P「肉……肉……」

貴音「肉……肉……」

肉々しい怨嗟の声に怯えながら雪歩は食堂へ逃げた。

狩りの時間である。

追跡はツーマンセル。貴音と目配せをして一直線に食堂へ追い詰めた。


雪歩「ひぅ……」

追いかけっこは食堂の隅であっけなく終わった。

肉を抱え込んで獲物が震える。

想像上の牙を伸ばしながら舌なめずりをした。

律子「なにやってんですか。ほら食べたかったら席に着く!」

P「はーい」

切り上げ時を見失っていたので助かった。

こればっかりは律子か伊織でないと出来ないのだ。

獣のポーズから人類へと華麗に進化すると

貴音「肉……肉……」

本気でやってやがった。



雪歩に謝りながら席に着くと真がやってきた。

彼女の望みとは裏腹に、快活に席に飛び乗る姿はヤンチャ坊主みたいだ。

真「お腹空きましたねー」

まったく同意だったので「お腹空いたよー」とモノマネをした。

真は膨れて、雪歩は笑った。

買ったー

食事は落ち着いて優雅に。

そんな紳士の約束事も空腹には敵わなかった。


P「うまい! うまい!」

胃に血液が集まって語彙が極端に貧弱になる。

手の届く範囲はすべて俺のものだとアピールした。

真「うわ……、男の人ってやっぱりすごいなぁ」

変な所で感心されてしまった。

P「うまい!」

雪歩「は、はい」

間違えた。


P「そうかな、だってほら……」

人らしく言葉をつむいで指差した方向には

貴音「美味! 美味!」

空の皿を次々に重ねる貴音がいた。

雪歩「あの、良かったらこれどうぞ」

P「うん? いいのか?」

雪歩「はい、私あんまりお腹空いてないんで……」

P「しっかりと食べないとダメだぞ。アイドルなんて言っちゃえば体力勝負なんだから」

偉そうにいいながらもフォークはしっかりと肉を突き刺していた。



お返しにクレープをあげると困ったような、はにかんだような表情で礼を言われた。

胃の隙間に流し込んだコーヒーが満腹を完成させる。

全身が胃袋になった気分だ。

P「さすがに食べ過ぎた……」

悔恨と征服感の狭間に揺れて心地いい。

真「そりゃそうですよ、ボクの三倍は食べてましたもの」

満足だ。

目をつぶって独り語ちた。

少々がっつき過ぎて、夕食は俺たちのテーブルが一番早く終わったようだ。

周りを見るとこれからデザートに取り掛かろうとしている。

特に慌てる必要はないし、ゆっくりと食後の時間を過ごそうと思ったときだった。


大変なことに気がついた。

P「美希、いなくない?」

真「え?」

雪歩「そういえば……」

あの目立つ金髪がどこを見ても見つからない。

P「もしかして……」

真「まだ寝てる?」

雪歩「はわわわ……」

俺は……



C 雪歩と見に行った             

P「ちょっと見てくるよ」

そう声をかけて立ち上がると雪歩も椅子をずらした。

雪歩「私も行きますね」

普段の自信のない喋りと違って、きっぱりと自分の意思を表していた。

P「ん。オッケー。真はもし美希が入れ違いになったら声をかけといてくれ」

真「わかりました」


さんざめく食堂を出ると急に声が届かなくなった。

行きと違い今度は俺が先頭になる。

P「まったく美希のヤツ、いつまで寝てるんだよ。なぁ?」

雪歩「そうですね」

会話はぶつ切れで電波の悪いラジオみたいだ。

俺と雪歩は遠い国の人なのかもしれない。


そんなわけないか。

階段を軽快にのぼって奥まった部屋を目指す。

扉の前で待機してると2秒遅れで雪歩が到着。

鍵を差し込んで……

雪歩「あれ?」

不思議そうに何度も回した。

P「どうした?」

雪歩「開いてます……」


ギョッとしたが、すぐに落ち着く。

P「じゃあ起きてるのかもしれないな」

驚くようなことじゃない。


ドアは静かに開いた。

真っ暗で中がよく見えない。

P「美希ー」

声をかけながらスイッチを探り当てた。

カチンと音がして点滅する。

雪歩「いませんね……」

P「どこいったんだろ?」

シーツにはシワ一つなく本当にここに寝かせたのか記憶を疑った。

雪歩がバスルームを見ている間にベッドへ近づくとキラリと光るものを見つけた。

P「これは……」

【MIKI】と自分の名前をかたどったネックレスだ。

寝ている間に鎖が千切れたのだろうか?


雪歩「なんですかそれは」

P「え?」

俺は、初めて雪歩を怖いと思った。

大きな瞳は艶をなくし、感情のこもらない声が不気味だ。

軽くかしげた細い首は簡単にへし折れそうで人形みたいに見えた。

http://www.youtube.com/watch?v=4Glf-cT8Eq4&feature=channel&list=UL


P「な、なんだよ……。別にいいじゃないか……」

気圧されて後ずさると、つまづいてベッドに腰掛けてしまった。

雪歩は無表情で手を伸ばし俺に近づいてくる。


雪歩「見せてください」

有無を言わさぬ喋りは抑揚がない。

唾を飲み込んで顔を見た。

P「雪歩……、だよね?」

当たり前の事を聞いてしまう。

それほどに彼女の雰囲気は変わり果てて、まるで幽鬼のようにその足取りは遅く、それでいて止まることはない。


俺は……

A 仕方なく差し出した。

B 拒絶した。

安価忘れてた

早い者勝ちでお願いします

A

俺は彼女に危険なものを感じ拒絶した。

P「い、いいだろ! 雪歩には関係ない!」

強く握り抱きこむようにかばうと、雪歩の形相が一変した。


雪歩「何を持っているんですか!?」

つばが飛ぶほど大きく口を開き目は釣りあがっている。

雪歩の激情がどこから来ているのか俺にはわからなかったが

P「ひぅ……!」

あまりの変わりように怯えて身をちぢ込ませた。


雪歩「見せてください!」

握った拳に爪を立ててまで開こうとしてくる。

皮がめくれ出血した。

だがそんなことにはお構いなしに、雪歩は必死に俺の手にしがみついてくる。

雪歩「うううう!!」

ついには唸り声を上げて噛み付いてきた。

前スレからみてたが結局P殺したのはゆきほなのかね

俺は恐怖した。

雪歩の変わりように。

彼女の形相に。

怨念めいた行動と、呪詛のような唸り声に。


俺は知らない。

こんな雪歩は知らない。

雪歩の獣声が部屋に満ちていくにつれて、俺の中で恐慌への水域が上がっていった。

P「や、やめろって!」

振り払おうと大きく腕を振るった。


ブン


    ドン

                 ガツン

ナイトテーブルが揺れた。

角には赤い塗料がついていた。

oh…

狂乱の時間は一瞬で終わった。

直前までの狂気は、なりを潜めて風が吹く。

俺は事態を把握することができないまま、自分の中の嵐が収まるのを待った。


P「……ゆきほ?」

返事はない。

ベッドの下を覗くように寝転がって白い四肢が投げ出されている。

茶色のショートボブは見る間に赤毛に変わり絨毯に流れ出していった。


P「え……」

頭に大きな穴が開いていた。

恐らく俺にも開いているのだろう。

風の音が耳について離れないのだから。

死ぬことがあるのは、Pだけだって言ってたじゃないか……

雪歩に手を伸ばそうとすると、握った手に痛みを感じた。

強張った指を解しながら開くと、美希のネックレスが手のひらを傷つけていた。

両面とも血まみれで、夢の中にいるみたいにリアリティがない。


汚さないように反対側の手で雪歩を揺らす。

ユサユサ
  
          ユサユサ

まだ温かいその体はなんの冗談か段々と冷えてきたようだ。

P「お、おい……」

揺することでなにか事態が変わるような気がした。

華奢な体を少々乱暴に揺すると、

P「ぐぅ……!」

ゴロリと頭が転がった。

表情はいっそ清々しいほどにいつもの雪歩で、それなのに気持ち悪いくらいに知らない顔だった。


俺は、雪歩が死んだことを、やっと認めた。

>>83
前スレではそう言ったがここではそうとは限らない…

奇怪な出来事が続き、俺の精神はとっくに限界を迎えていた。


コンコン

?「どうかしたの? 大きな音がしたけど」

ノックされたドアを光が消えた目で見つめた。


言い訳をする気にも

隠す気にも

逃げ出す気にもなれなかった。


俺は人殺しなのだから。


徐々に人の気配がドアに集まる


いつの間にかしまっていた鍵が硬い音を立てて開かれる。

ドアノブがゆっくりと回りだす時間を、他人事のように眺めていた。


                             終
http://www.youtube.com/watch?v=X6iQkhgSuJY&feature=plcp

雪歩可哀想です(´;ω;`)

ゆりしー大敗北(´;ω;`)

一応推理風なルートもありますんで、よろしくお願いします

レス番指定で >>+3

>>68 B

前スレ>>393のA

ちょっと探してきます

>>93
無限ループやん

393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/23(月) 19:44:37.68 ID:hSEKHdZJ0 [116/161]
P「ん? 待てよ……」

俺はコロンブス的な閃きを得た。

変に止めるからいけないのであって、むしろガンガン飲ませて潰してしまえば少なくとも俺は被害を免れるのではないか?


あずささんはニコニコとワインを飲み続けている。

小鳥さんはケラケラと笑っていた。

ダメだ。二人ともザルだろこれ。

頭を抱えてしまった。


こうなったら……


A P「酔っ払いは嫌いです」

B 最後まで付き合う

C トイレと言って逃げ出す

これ


P「ん? 待てよ……」

俺はコロンブス的な閃きを得た。

変に止めるからいけないのであって、むしろガンガン飲ませて潰してしまえば少なくとも俺は被害を免れるのではないか?


あずささんはニコニコとワインを飲み続けている。

小鳥さんはケラケラと笑っていた。

ダメだ。二人ともザルだろこれ。

頭を抱えてしまった。


こうなったら……


A P「酔っ払いは嫌いです」

B 最後まで付き合う

C トイレと言って逃げ出す


>>+5

これか

P「酔っ払いは嫌いです」

俺は臆せず二匹の酒獣に歯向かった。

背筋を伸ばし、目を逸らさず、堂々と宣言した。

しかし、指先はバカ正直に震えていた。

めちゃくちゃ怖かった。


あずさ「………………」

小鳥「………………」

二人とも押し黙ってしまった。

少々言葉が過ぎただろうか?


俺は……

A フォローした。

B 調子に乗って説教した


>>+2

A

落としてあげろ
案かした

二人が黙ると雰囲気がガラリと変わった。

気まずい空気が伝染して食堂全体を気まずく汚染する。

無機質な食器の音がそれを助長し、更には批難の眼差しが飛んできているのをヒシヒシと感じた。


「おい、なにしてんだコラ」「早くなんとかしろ」「空気読めですぅ」


思念が伝わってくるようだった。


おかしい、俺は間違ったことは言ってないのに。

だけど世の中こんなもんで正論だけで渡れるほど甘くはないのだ。

P「な、なんてね……。旅先だとどうしても羽目を外しちゃって、えへへ……」

あずぴよ「………………」

P「お、俺も飲んじゃおうっかなー」

全員が固唾を呑んで俺たちの動向を注視していた。

書き溜めというかプロットあんの?

あずさ「あの……、無理しなくてもいいんですよ?」

小鳥「そうですよ……。プロデューサーさんはお一人で飲むのが好きなんですよね?」

あずさ「私たちみたいにもう若くない女と飲んでも楽しくないでしょうし……」


くそう。なんて面倒くさいんだ。

さっきまで俺の口にワインをビンごと突っ込もうとしていた人とは思えない。

P「そ、そんなことないですよ! ただ俺は年長者として……」

小鳥「自覚がなくてスイマセン……」

ぬうううううううん。

言えば言うだけ泥沼だ。

俺は近くにあったワインをグラスに注ぎいで一気に飲んだ。

P「美味しい!」

わざとらしい位に叫んで二人を恐る恐る見ると

あずさ「うふふふ……」

小鳥「じゃあ、今度は大人っぽく飲みなおしましょうか」

正解だったようだ。あっという間に酩酊状態になりながら思った。

酔いどれ乱交パーティですねよっしゃよっしゃ

一番恐れていた状態からは回避できた。

賑やかさを取り戻した食堂には、時折大きな笑い声が生まれては広がる。


あずさ「だいぶ酔っ払っちゃいました~」

あずささんが艶めかしく

小鳥「ん……」

小鳥さんが妖しく

P「うひゃはははっはははっはっははは」

俺がおかしくなっていた。


プールに潜ったときみたく視界が揺れて、脳が空を飛ぶ。

血流が耳元を騒がせて、気分が大きくなってきた。

P「楽しいですねぇ!」

声も自然と大きくなる。

今日は来て良かった。そう思った。

P「かまいたちっぽい夜」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/news4vip/kako/1342/13429/1342964329.html)

前スレですん

しっかりと酔っ払った俺は無敵だ。

今なら何でも出切る気すらしてきた。

グルグルと世界が回る中、雲の上を歩きながら移動する。

せっかくの旅先なのだ。親交を深めようじゃあないか。


いつの間にかワインは日本酒に変わり、日本酒はウィスキーに変わっていた。

細長いビンを掴みながら周囲を睥睨する。

そうだなぁ……。どこにいこうか?


A あずぴよ

B はるちは

C ひびたか

D みきりつ

>>+4

A

威勢よく立ち上がったのがマズかった。

足腰に血液が流れ込んで脳貧血みたいになる。

P「う……」

一瞬だが目の前がブラックアウトしてストンと座りなおした。

目を閉じると先ほどまでの酩酊感はどこかに消え失せて
いまは不快感のほうが大きい。

P「き、きぼちわるい……」

たいして飲めもしないのに調子に乗りすぎた。

机に突っ伏して深く反省していると

あずさ「だ、大丈夫ですか? プロデューサーさん」

小鳥「ど、どうしましょう? お部屋に運んだほうが……」

案じてくれる声がした。素直に嬉しい。


俺は……

A 不屈の精神で起き上がった

B 優しくまどろんだ

また書き忘れてた

次からはなかったら全部早い者勝ちでお願いします

世話を焼いてもらうのは、気恥ずかしくも心地いい。

背中をさする温かい手に安らいでいると、いつともわからず俺は眠っていた。


―――――――――――――――

P「う……」

背中に溜まった寝汗が、身じろいだせいで冷たかった。

それでも跳ね起きるほどの体力は残っておらず、薄目を開くとオレンジ色の光がぼんやりと端にある。

P「………………」

何度か瞬きをしながら記憶を取り戻そうと努めたが、何度繰り返しても一向に慣れることのない痛みがそれを妨げてくる。

鈍く、心臓の鼓動にあわせてこめかみと後頭部に電気が走るようだ。

P「いってぇ……」

なるべく衝撃を与えないように身を起こすと、ベッドの上だとわかった。

だらしなく口の開いているのは俺のカバンだ。

P「やっちゃったぁ……」

悔恨に包まれることしばし。しかし、俺は自分の姿を見て驚いた。

P「き、着替えさせられてる……」

着慣れない、まだ固さの残ったパジャマだ。

前日に買い込んできたものと柄がピタリと一致する。

紛れもなく俺の寝間着だった。


P「いや、違うだろ……。問題はそこじゃない」

もちろんスケスケのネグリジェやらピンクのパジャマを着せられていたら問題どころの騒ぎではないのだが、
今の頭を占める疑念は一点だった。

つまり

P「だ、誰が着せたんだろう……」

そこまで思考が走ると俺は戦慄した。

もどかしくズボンのゴムを引っ張り上げて中を覗き嘆息する。

P「セーフ」

ギリギリだがセーフである。

気恥ずかしさと酒精の二つで熱を持った頭を抱えてベッドを降りた。

喉が渇いたのだ。

寝静まったペンションは建物までも目を閉じているように静まり返っていた。

階段に足をかけると僅かな軋みすら全体に響きそうでギクッとする。

常夜灯のあかりを頼りに、人気がなく冷え込んだ談話室を抜けて直接厨房に向かうと、掛け声が聞こえてきた。


??「「ほい! ほい! ほい! ほい!」」

一定のリズムで二人の人影が腕を上下させている。

P「………………」

面妖すぎて物陰に隠れてしまった。

中央に置かれた銀色の調理台が邪魔をしてよく見えないが、二人はずいぶんと前からこのやりとりを繰り返しているようだった。

?「ふぅ……、なかなか決着がつきませんね」

?「そうですね~。あ、ちなみに次は私グーを出しますから~」

?「あー、私はなんだかチョキを出したい気分ですねー」

稚気に満ちた遊びと高度な心理戦が入り組んで、両者の視線で火花が散った。

?「……いきますよ」

?「ええ、いつでもどうぞ~」

一瞬の沈黙。

阿吽の呼吸。

二人は口元を歪ませて刹那の笑みを浮かべ

??「ジャンケンポン!」

腕を雄々しく突き出した。


パチン

アホらしくなって電気をつける。

6個の電灯が一斉に灯って二人の目を眩ませた。

体を傾けて勝負の判定をすると……


A 小鳥さんの勝ちだった

B あずささんの勝ちだった

C 引き分けだった          >>+5           5分ほど席を外します

A

驚いて俺を見ていた二人だが、同時に手元を確認して、歓声と落胆を見せてくれた。

P「あの……?」

よく分からなくてはっきりとしない疑問符が宙に浮いた。


ジャンケンはわかる。

グーとチョキとパーで行う遊びで、公平性が高いのでよく順番を決めるときにも使われる。

しかしなんの順番を決めると言うのか。時計を見ればちょうど0時だ。


あずさ「いえ~、たいしたことじゃないんですけど……」

小鳥「おやすみなさい……」

憮然とした表情で小鳥さんが横をすり抜けて暗闇に消えた。

幽霊みたいでちょっと声を掛けそびれてしまった。

P「はぁ……」

廊下をとぼとぼ歩く小鳥さんを見届けながら相槌を打つと

あずさ「プロデューサーさんのお世話をどちらがするかと……」

P「はぁ……、はぁ!?」

P「せ、世話ってなんですか」

あずさ「介抱……?」

目を細めて小首をかしげるあずささんは、年下なのにお姉さんみたいで抗いがたい何かを感じた。


P「でも、もう大丈夫ですし……」

あずさ「ダメですよ、明日に残ったらいけませんし。それにほら」

長い指がパジャマの裾を摘んで引っ張られる。

P「ひゅっ」

冷え切った汗が笛のような声を出させた。

あずさ「このままじゃあ、風邪引いてしまいますよ」

左手には固く絞ったタオルが湯気を出している。

おしぼりを広げて見せてくる姿は慈愛に満ちてなんの邪気もないようだ。

あずさ「さ、来てくれたなら丁度いいですし、脱いでもらえますか?」

鷹の目だった。

鋭く獲物を狙う瞳に、柔らかい笑みを浮かべた口元はひどく不釣合いで軽く混乱する。

P「ふ、風呂に入りますから!」

あずさ「うーん……、でも朝まで待ってたら本当に風邪引きますよ?」

P「え?」

あずさ「私も最初はお風呂でやろうと思ったんですけど……」

見かけに反して安普請なこのペンションは23時頃から温水が出なくなったそうだ。

俺は小林さんを全力で呪った。


あずさ「だから~、ここでお湯を沸かして持って行こうとしたんですけど……」

洋風の片手鍋からは白く蒸気が上がり、薄い雲を作っている。

P「あ……、でも……」

詰め将棋のように一手ずつ明確に追い詰められて、俺は逆接の接続詞を言うだけで精一杯だ。


あずさ「ご迷惑でした……?」

上目使いでチェックメイト。

俺は覚悟を決めた。

木製の丸椅子に尻を落として背中を向ける。

初めての美容院みたいで緊張した。

あずさ「あの……。脱がせましょうか?」

そういう店じゃないから!


俺はうつむき加減でボタンをゆっくりと外した。

湿ったパジャマは肌にへばりついて、剥がすとひんやりとした厨房の空気に軽く鳥肌が立つ。

脱いだパジャマをどうしようかと丸めていると、背中に温かいものがあたった。


あずさ「うんしょ……、うんしょ……」

加減しすぎてこそばゆい。

それでも丁寧に上下するタオルが汗をふき取ってホッとしてしまった。

あずさ「どうですか? 痛くないです?」

P「え、えぇ……、大変けっこうなお手前で……」

こんなときはどうすればいいのかよく分からない。

あずささんは真剣で、それなのになんだか楽しそうだ。

あずさ「ふふ……」

あずささんの漏れた息が首筋に直撃して、変な気分になりそうだ。

P「ん? どうかしました?」

そんなことはおくびにも出さずに聞いてみる。

黙っているよりかはずっといいと思ったのだ。


あずさ「むかしお父さんの背中をこうやって洗ってあげたなぁって……」

P「……あずささんはお父さんが大好きなんですね」

あずさ「ええ、でも中学に上がるころから一緒に入ってくれなくなっちゃって……。あの時は寂しかったです」

P「そりゃあ……」


中学になるまで一緒に入っていたとは驚きだ。

あずささんはどこかズレてる。

だけど、それはあずささんの良いところでもあって

P「……お父さんもあずささんのことは大好きだと思いますよ」

フォローしてあげたくなった。全面的に。

あずさ「はい、背中は終わりましたよ~」

P「え? もう……、あっ」

つい本音が出てしまった。

慌てて口をふさいでももう遅い。


くすくすと口元を押さえながら

あずさ「前もやりますね」

P「……お願いします」

あずささんには敵わないと実感した。


正面にかがみ込んで腕の先から肩口までタオルを滑らせてくる。

途中でタオルを何度も洗って、実に献身的だ。

あずさ「………………」

沈黙は優しく、あずささんの表情はどこか嬉しそうでもある。

P「楽しそうですね」

ちょっとイジワルしたくなった。

あずさ「はい、プロデューサーさんのお役に立てて私すごく嬉しいです」

真っ直ぐすぎて目がつぶれそうだ。

光沢のある髪が一拭きごとに揺れ動いて、額に浮かんだ小粒の珠を弾く。

見とれてしまうほど美しかった。


上半身をくまなく拭かれて、虫のいいことに残念な気持ちだ。

丸めたパジャマを広げて失敗に気がつく。

P「あ……」

着替えは部屋にしかなくせっかく温まったのに、半端な裸族か、濡れたパジャマを着込んでいくかの二択。

ほど良く煮あがった体の処遇に迷ってしまう。

あずさ「あ……」

あずささんも気がついたようだ。

P「も、戻りましょうか」

余すことなく見られているのに、パジャマで体を隠しながら俺は提案した、

あずさ「んー……」

困ったように眉根を寄せてあずささんは、ポンと手を打つと

あずさ「失礼しますね」

ぴったりとくっついてきた。


P「え、え? ええ?」

あずささんは胸板に手を添えて俯いていた。

髪の隙間から覗く顔は朱に染まって色っぽい。

あずさ「こ、これなら冷えないと思いますから……」

P「う……、は、はい」

ここで断っても、意外と頑固なあずささんは聞いてくれないだろう。

問答に費やした時間が、そのまま二人の密着する時間に変わるのは自明だ。

おっとりした彼女のこういう姿は新鮮で、いつまでもこのままでいたいと思わないでもなかったけど

P「い、いきましょうか」

あずさ「はい……」

それ以上に恥ずかしさと申し訳なさがあった。

P「……足元気をつけてくださいね」

あずさ「は、はい」

ついて離れず、二人で静かに暗闇の中を物音一つ立てずに歩いた。

あずささんの呼吸が俺の胸に当たり、俺の鼓動があずささんに直に伝わる。

真っ暗と言うのがいけなかった。

小鳥さんが消したのか、常夜灯はその意味を成さず沈黙し、自然歩みは遅くなる。

鋭くなった耳がさらりと髪が動くのすら教えてくれた。


目が慣れてくるころにようやく階段に到着だ。

湯の熱はとうに消え失せたのに違う熱が次か次へと生まれて熱い。

一歩ずつ階段を踏みしめる姿はバージンロードを想像させた。

長く短い夜の逢瀬は部屋の前までだ。

そう思っていました。

P「あ、ありがとうございました」

あずさ「いえいえ、こちらこそ」

薄ボンヤリとした人影が頭を下げた。


P「じゃ、じゃあおやすみなさい」

あずさ「え?」

P「え?」


どうやら俺はあずささんを甘く見ていたようだ。

P「あ、あの……。さすがにこれは……」

あずさ「ダメですよ~。最後までキチンとお世話しないと。私たちのせいなんですし、それに小鳥さんに怒られちゃいます」

俺はベッドの中。あずささんは枕側の床にぺたんと座っていた。

ちょうど寝る前に本を読んでとせがむ子供とその母親の構図だ。

P「でも……、それじゃあずささんが……」

でも、だけど、しかし。

あずささんと話しているといつもこんなことばかり言ってる気がする。

そして決まって最後には、あの笑顔に押し切られて頭を掻くのだ。


あずさ「大丈夫ですよ~。ちゃんとプロデューサーさんが眠ったらお部屋に戻りますし」

P「………………」

どうしてここまでしてくれるのか。

ちゃんと聞いたことはない。

分かるようで分からない、そんなあやふやな疑問はあやふやなままのほうがいいと思うからだ。


中途半端が一番いけない。

そんなことは分かりきっている。

だけど、俺にはどうしてもハッキリさせることが出来なかった。

それはきっと俺と彼女の向いている方向が違うからだ。

俺は彼女をトップアイドルにしたい。

だけどあずささんはもう少し地に足の着いた夢があって。

それを叶えてあげるのは実にたやすい。

だからこそ俺は迷うのだ。

本当にそれでいいのかと、何度も何度も自問してそのたびに延々と輪を巡る。


あずささんの魅力と未来と夢。

俺は笑ってしまうくらいにエゴに満ちた希望と、彼女に相応しい男性を思い描いては頭を抱える。


そんないつもの堂々巡りに嵌っていると

あずさ「スー……、クー……」

誰もが甘えてしまいたくなるような、そんな寝顔だった。

クスリと声もなく微笑んで俺は静かに起き上がる。

柔らかい体を傷つけないようにベッドに寝かせた。

沈み込んだ体に布団をかけて寝顔をしばし堪能した。


これはきっとプロデューサーとしての本分を逸脱していると思うけど、少しだけ。

さらさらと流れた髪をそっとよけて額に口付けた。

卑怯だと思うし、なんの意味もない。

客観的に見ればただのセクハラだ。


あずさ「ふふ……」

それでも嬉しそうに夢を見ているあずささんは幸せそうだった。

隣のベッドから毛布を剥ぎ取りドアの前で振り返った。

気がつけば吹雪は終わり、静かに雪が舞っている。

P「おやすみなさい……」

鍵を閉めるまで、部屋は静まり返ったままだった。



――――――――――――――――――

P「ぶえっくしょい!」

自分のくしゃみで目が覚めた。

身震いしながら毛布をかぶり直すとベッドの硬さに違和感を覚えた。

違和感は追憶に追いやられ、ソファーで眠ったことを思い出す。

毛布をずらして時計を見れば午前6時だった。

ほのかに白みだした景色が、積もった鏡を受けて部屋を明るくしている。

真横の柔らかい感触はしばらく棚上げすることにした。

二日酔いはなかったようだ。

疲労はまだあるが、もちろん動けないほどではない。

砂のような血流が少々不快だったが、それ以上にこの柔らかな存在が強烈に主張している。

P「…………はぁ」

苦笑とも溜息ともつかない声が朝の澄んだペンションに取り込まれていく。

あずさ「すー…………、すー…………」

まったく気がつかなかったとは迂闊にもほどがある。

そろそろ起きはじめたペンションは、上の方からゴソゴソと音がした。

P「あずささん……、起きてください……」

寝間着代わりのトレーナーをしっかりと、赤ん坊みたいに掴まれている。

大きな声を出すわけにも行かず揺さぶっていると、あずささんがぼんやりと目を開いた。


P「あずささん……」

なにやら苦言を呈しようと口を開きかけて

あずさ「……おはようございます、プロデューサーさん」

いつもの笑顔で挨拶された。


そして俺はまた何も言えなくなって、頭を掻いたのだった。







おしまい

推理パートへはどうやったらたどり着けるのか

もし希望があれば適当に続けます

推理パートかピヨルートで頼む

小鳥さんルートは前回入ってますんで、推理パートですね

推理って言っても原作風味に選択肢がいやらしいんでヒントモードオンでいきやす

美希は、ネタルートで大活躍します

http://www.youtube.com/watch?v=4Glf-cT8Eq4&feature=channel&list=UL


P「な、なんだよ……。別にいいじゃないか……」

気圧されて後ずさると、つまづいてベッドに腰掛けてしまった。

雪歩は無表情で手を伸ばし俺に近づいてくる。


雪歩「見せてください」

有無を言わさぬ喋りは抑揚がない。

唾を飲み込んで顔を見た。

P「雪歩……、だよね?」

当たり前の事を聞いてしまう。

それほどに彼女の雰囲気は変わり果てて、まるで幽鬼のようにその足取りは遅く、それでいて止まることはない。


俺は……

A 仕方なく差し出した。

なにを馬鹿なことを……。

自分達の部屋に落ちていたのだから、普通は私物だと思うだろう。

繊細な年頃なのだ。見られたくないものだってあるはずだ。


笑おうとしたが、口元が引きつるだけだった。

握った手を雪歩の前に差し出してゆっくりと開く。

雪歩「美希ちゃんのネックレスですね……」


落ち着いた口調に俺も安心した。

勝手に怯えていただけで、雪歩はいつもと何も変わらない。

綺麗に整えられた指先でネックレスをつまみあげると、しげしげと雪歩は観察した。

雪歩「後ろの金具が外れてますぅ。寝返りを打ったときに外れたのかな?」

別段千切れたと言うわけでもない。途端に俺の警戒レベルは標準まで下がった。


ドサリと雪が落ちて、窓を見る。

開けっ放しのカーテンには、俺と、ネックレスを見つめ続ける雪歩が写っていた。

しかしそうなると、美希はどこに行ってしまったのだろうか?

眠って、起きて、自分の部屋ではない……。

俺ならとりあえず下に降りるだろう。

自分の部屋に戻って寝なおす、と言うのも美希らしいといえばらしいのだが、ちょっと考えづらい。


雪歩「一度下に戻りませんか? もしかしたらすれ違っているのかも……」

ふむ。

P「だな。探すにしても二人じゃ広すぎる」


先に廊下に出て、雪歩が鍵をしっかりと閉めるのを確認した。

そういやゆきまこの部屋だったな

真「いや、来てないです。おかしいなぁどこに行っちゃったんだろう?」

手持ち無沙汰な様子の真は、ストローで遊びながらそんなことを言った。

P「誰か美希を知らないか?」

手を叩いて耳目を集めてから聞いてみる。

……芳しくないようだ。

みんな首を横に振り、中には今初めて一人足りないことに気がついた者までいた。


P「すまないが手の空いてる人は手伝ってくれないか?」

俺の呼びかけに炊事担当の三人以外で残っている全員が集まった。

P「手分けして探そう。
  
  二階は律子・貴音・真。一階は伊織と亜美・雪歩。小鳥さんは談話室で待機しててください」

分担をテキパキと決めると散り散りに動き出す。

さて俺は……

A 一階を探した

B 二階を探した     >>+3            

※どっちかに行くとヒントくさいものが出ますけど無くても問題ないかもしれなかったりします

小鳥さんと談話室で談話したいが、心を鬼にしてAを選んだ

一階の間取りは、談話室、カウンター、管理人室、倉庫、食堂、厨房だ。

談話室と食堂厨房を除くと三部屋しかない。

談話室までは小鳥さんも一緒に、そこからは四人で探し始める。


探すといってもカウンターは覗き込んだだけで、管理人室は鍵が無いのでスルー。

結局は倉庫を探すだけになった。

伊織「なによこれ。新築なのになんでこんなに埃っぽいのよ……」

怒りっぽい伊織はプリプリしながら乱雑に物を動かしている。

亜美「おお? これは……」

亜美は倉庫に眠るお宝に目を輝かせていちいち手が止まっていた。

P「こら、真面目にやりなさい」

亜美「あーい」

どうにも緊張感に欠けているようだ。もっとも少なからずそれは全員に言えたことなのだが。

雪歩「プロデューサー、ちょっと来てもらっていいですか?」

一人離れたところで地道な発掘作業をしていた雪歩に声をかけられた。

P「見つけたのか?」

雪歩「いえ、地下室があるみたいなんですけど……」

亜美「え! なにそれ、見たい見たい! 亜美も見たいよ!」

遊んでるんじゃないんだぞと、釘を刺してぞろぞろと移動すると、木製の格子が嵌った四角い穴に案内された。


雪歩「これなんですけど……」

伊織「見事に地下ね。……まったく、こんなものを作るくらいならもっとマシな工法にすればいいのに」

ブツブツワヤワヤと騒ぎながら階段を下りると思ったよりも温かい。

伊織「ワインの貯蔵庫なんだから当然よ。……もしかして知らなかったの?」

P「いや……」

遠い記憶では寒かったような気もしたが気のせいだろう。

壁を撫でて電灯をつけると三部屋分の地下室がその全容を露にした。


見逃しがないようにワイン棚の間を一本ずつ歩く。

俺は詳しくないので分からないのだがけっこうな値段がしそうだった。

思考の隙間に生まれた空白を眺めていると、わずかな棚の隙間をピョコピョコ動く頭を見つけた。

亜美だ。

P「マジメニサガセエエエエ」

亜美「ひぇええええ!」


限界まで低い声を出してからかっていたら伊織に怒られた。


雪歩「いませんでしたね……。二階にいるんでしょうか?」

伊織「まったくどこにいったのかしら。見つけたら叱ってやんないと」

亜美「ミキミキはかくれんぼも上手いんだね→」

階段を登りながら後ろの雑談に耳を傾けていると、気になるフレーズがあった。


それは……



ちょっと休憩します。

安価じゃないんで、気になったフレーズってこれだろ? とずばり当ててください

http://www.youtube.com/watch?v=RY2v0Q_nWUE&feature=plcp

今はこんな感じですね

かくれんぼも上手いってとこか?
美希は色々天才的だが、こういうのは一番最初に思ったことが大体合ってる

P「亜美、今なんて言った?」
亜美「え? なんか言ったっけ」

P「ほら、美希がどうたらって」
亜美「あぁ、かくれんぼだよ。全然見つからないんだからすごいよね→」


かくれんぼ。

一人ないし少数の鬼とそれ以外の全員が隠れる遊びだ。

美希ならかくれんぼの才能があったとしてもおかしくはないだろう。


しかし

P「なぁ……、美希って隠れてるのかな?」

誰から隠れると言うのだ。

遊びには遊びのルールがある。

勝手に隠れてそれが遊びになるだなんてことはない。

じゃあ美希はなぜ隠れなければならないのか?


それとも……。俺はその可能性を失念していた。

誰かに、隠されている……?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

美希はずっと寝ていた。

眠ったままの美希に妖しい人影ゆっくりと手を伸ばす。

深く寝入った美希は起きる気配がない。

首筋に絡みついた腕が蛇のように巻きついて、美希は苦悶の表情を……。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

P「ないない」

一体誰がそんなことをすると言うのだ。

ここは雪山で外は吹雪だ。

車でも移動は危険だろう。

いくらアイドルが泊まりに来るといっても、日程と場所を調べ上げて危険を犯しわざわざ進入するなんてありえない。

後ろをちらりと振り返ると、たいして焦った様子も無く少女達がお喋りに興じていた。

彼女達の誰かが美希に危害を加える可能性は、今いる場所を加味してももっと少ない。

みんなで仲良く。それは半ば社訓みたいなものなのだ。

仲良きことは美しき支援

倉庫を出たついでに厨房に顔を出してみる。

春香「あ、プロデューサーさん。美希いました?」

P「いや、一階にはいないみたいだ。……変な所で寝てなきゃいいけど」

先ほどの想像を打ち消すように、あえて冗談めかして言ってみた。

響「これでお皿全部だよー」

あずさ「ありがとうね、響ちゃん」

響「へへ、なんくるないさー!」


厨房はまだ忙しそうだ。

邪魔にならないように談話室へ戻ろうとして、俺は廊下の突き当たりにドアを見つけた。

P「ん?」

厨房から漏れる光と、置かれた棚が邪魔をして今まで気がつかなかった。

P「これ、どこに繋がってるんだ?」

その場にいる全員が首を横に振った。

間取り図を思い浮かべてみたが、方向くらいしかわからなかった。

俺の部屋の窓側だ。

鍵を捻ってみると、凍りついたように固い。

P「ふん……!」

指先に力を込めるとパキパキと音を立てて回った。

本当に凍っていたようだ。


ガチャッ

裏口だった。

積もった雪を押しのけると足元にコンクリートが見えた。

P「何も考えてないだろコレ」

呆れてしまう。

扉の外は険しい斜面で横殴りに雪が降ってくると言うこともない。

斜めに生えた木が窓に向かって腕を伸ばしていた。

地面を見ても足跡があったりはしない。

少なくとも数時間は誰も使っていないのだろう。

左右を見てもコレと言って何も無かった。

勝手口と言うにもおこがましいほどに不便だ。

業者の出入りも玄関でいいんじゃないか?

玄関は開ければチャイムが鳴ってどこにいてもペンションの中にいればすぐに分かるんだし。


ドサッ

首をすくめた。

見上げればひさしが視界をさえぎっている。

斜面の針葉樹と握手するみたいに近づき合っていた。

落ちてきた雪の塊は重そうで、見ているだけで震えそうなほど冷たかった。


伊織「ちょっと! そろそろ戻りましょう!」

P「……あぁ」

伊織「? どうしたのよ、ボーっとして」

P「いや、ちょっとね」

雑然とした思考の中に、微かに閃いた何かを逃すまいと口数が減った。

小鳥さんがクロスワードに熱中していたのでクロスチョップをお見舞いしてあげた。

小鳥「ひ、ひどいじゃないですかぁ……」

聞こえないフリをしてやった。


そのまま待機していると、上を探しに行った三人がほどなく帰ってきた。

P「どうだった?」

律子「部屋には戻ってないようです……。一体どこに行ったのかしら?」

一階にも二階にも美希はいない。

その事実が重くのしかかってきた。

双子ですら口数が減っている。

P「あれ? 千早とやよいは?」

真「二人とも部屋です。千早は音楽を聴きながら本を読んでいたそうで、特に気がついたことは無いみたいです。
   やよいは勉強してたんだっけ?」

真美「うん、こんなところまで宿題持ってきてるんだからウゲ→ってなっちゃった」

おどけた真美のセリフにもいつもの笑いはない。

ちょっとミスった 二階組にマミマミを入れといてください

P「どこにいったんだアイツ……」

いつも眠そうな甘えた声がひどく懐かしい。

少々甘えすぎなところもあるけど、もっと大事にしてやればよかった、だなんて縁起でもない。

頬をパシンと叩いて二階組の報告をまとめた。


律子と貴音は階段の前で見逃さないように立っていたそうだ。

真と真美以外の出入りはないと保証してくれた。

真美は階段から向かって左側、つまり【やよい・伊織】【美希・律子】【響・貴音】【亜美・真美】の部屋を調べたそうだ。

真はその反対側、【俺】【春香・千早】【あずささん・小鳥さん】【真・雪歩】の四室。


結果は空振り。

全員で途方にくれてしまっていた。

……俺を除いて。

二階は律子・貴音・真

で真と真美って見えてたから違和感なかった

一応部屋割り>>15

ソファーに深く腰をかけて熱いコーヒーをすする。

徐々に焦燥感が増してきた談話室で推理することにした。

背中を丸め手を組んで鼻先を埋めてどっしりと。



まずこの事件―――事件と読んでも差し支えないだろう―――は、犯人がいる。

美希を隠したその犯人の動機はイマイチよくわからないが……。

少なくとも危害を加えることは無い、と思う。


さてまずはご本尊がどこかにあるかだ。

美希はズバリ……

A まだペンションの中にいる。

B ペンションの外にいる。

C ペンションの外でも中でもない。


>> 06:10に一番近いレス

適当にアラをつついてください

http://www.youtube.com/watch?v=rgW6tNU8Fzo&feature=BFa&list=ULsDDhnyBm_00

もう答えだせる状態なのか・・・玄関はチャイムがなるし裏口に足跡無し
吹雪いてても足跡つけたら残るもんなのかね

あんまり真面目に推理されると困っちゃうレベルです

じゃあ気楽にいくわ
Aで犯人は亜美真美
真美が自分の部屋を調べている
真も自分の部屋を調べているが一度雪歩と探しにいっているため除外できる

そう、美希はまだペンションの中にいる。

玄関から出入りすれば誰かが気がつくし、裏口には鍵が掛かっていた。

誘拐されたのならばどちらもありえない。おまけに裏口付近は足跡がなかったのだ。

必然美希はペンションの中という結論になる。


では、美希はいつ移動したのだろうか?

夕食前に俺と真と雪歩の三人が部屋を出てからは美希一人だった。

それから食事まで30分程度。

その間に移動したことはほぼ間違いないだろう。


と、なると問題はあと二つ。

どうやって誰の目にも触れられずに移動したのか?

そして誰がそれを行ったか、だ。

俺の中の探偵としての才能が火花を散らす。

脳細胞が激しく活動し、知的興奮に燃えた。

いくつかのピースが音を立ててはまり込んでいく。

パチリ パチリ


埋め尽くされたパズルはある人物の肖像となった。

意外な人物である。

俺は首を回しながら立ち上がると視線が集まるのを感じた。


P「犯人が分かった」

ざわ……。

ひそひそとした喋り声が止まった。

黙考している間に千早とやよいも下りて来たようだ。


俺は高らかに宣言した。

P「犯人はこの中にいる」

気持ちよかった。


犯人は >>+5

ksk

http://www.youtube.com/watch?v=toTp9X2_V5w&feature=plcp

真&雪歩

人がいないな・・・ユッキー&真

「だ、誰なんですか!?」叫んだのは律子か春香か。

たっぷりと間を取ってから俺は指をさしながら告げた。

P「犯人はお前達だろ?雪歩、それに真」


二人ともポカーンと口を開けていた。


春香「ど、どういうことなんですか!? プロデューサーさん!」

俺は自信満々に推理を披露した。

P「まずは時系列順に話そうか」

P「俺達は美希を連れて二人の部屋に連れて行った。
  その後三人はバラバラになったんだが、真だけが単独行動をしていた」

真「え?」

亜美「それだけ?」

そんなわけがない。

P「いいか? 部屋には鍵が掛かっていたんだ。開けるには二人がもっている鍵が必要だ。
  マスターキーはカウンターにあるが、談話室には常に人がいて見られずに抜き取るのは難しい」

律子「はぁ……」

P「真は一度俺たちと別れると、一人で部屋に戻った。
  美希を隠すためだろう。」

真美「ふむふむ」

今のところは順調だ。気をよくして続ける。

P「そして二階の探索のときはもっと簡単。
  自分の部屋を自分でチェックするんだからな。
  適当に時間を潰して、いなかったと伝えるだけでいい」

春香「プロデューサーさんすごい……!」

ふふふ。もっと言え。

雪歩「あ、あの……。プロデューサー? 私と一度部屋を見に行きましたよね?」

P「それが計算だったのさ。
  俺と言う何も知らない人間がチェックしたと言う事実が心理的死角を生み出したのだ!」


口にすればすべて正しく聞こえてきた。

いや、これは事実正解なのだ。

これ以外の解答などありえない。

響「……じゃあ、プロデューサーが一緒行ったときはどこに美希はいたんだ?」

響の鋭い指摘に俺はちょっと考え込んだ。

ベッドの上は空っぽだった。

隠れられそうな場所といえば……。

間取りはすべて同じなので、思い出すのに苦労はしない。

伊織「……早く言いなさいよ」


P「……それはだな。>>+3だ」



A ベッドの下

B バスルーム

C クローゼットの中

kskst

kskst

伊織「ベッドの下?」

P「あぁ間違いない。なぜならベッドの横にはコレが落ちていたからな」

ポケットから【MIKI】のネックレスを取り出しながら言った。


響「どこに隠れても落ちると思うけど……」


聞こえないふりをした。


P「さぁここまで証拠が出揃ってまだ言い逃れをするつもりか?
 なにがしたかったのか知らないが、正直に言うんだ」

プロデューサーせんせーい! などと悔悟の涙を流して抱きついて欲しいわけでは無かったが

真・雪歩「「………………」」

凍りそうな目つきで見られるとは思わなかった。

P「ひ、否定するなら部屋を見せてよね!」

伊織のモノマネで空気を変えようとしたがますます冷たくなっただけだった。

俺を先頭に全員でゾロゾロと階段を上る。

真「開けますよ」

一直線にベッドに向かい腹ばいになった。

P「あれ?」

いない。

それどころか薄く積もった埃はそれ以前にも誰かが潜り込んだ様子は無い。

ならばこっちだ! とダイナミックに寝転がって反対側を覗いても以下同文。


雪歩「あの……、それで美希ちゃんはいたんですかぁ?」

静けさの中に怒りが見えた。

青い炎。凍った怒り。

雪歩と真の周りから人が離れていく。


俺は……。

A P「待て待て、まだ慌てるような時間じゃない。違う場所も調べてみよう」 往生際悪く探索を続けた。

B P「いや本当にスイマセンデシタ」  土下座した。

C P「あれれれ~、おかしいなぁ?」  とぼけた。

D P「これは宇宙人の仕業なんだよ!」 発狂した。    >>+4  たぶんそんなに変わんないです

A

kskst

A

P「待て待て、まだ慌てるような時間じゃない。違う場所も調べてみよう」 

俺は往生際悪く探索を続けた。

クローゼットを開いて二人のコートをかき分ける。

もちろん美希が立ったまま寝ているようなことも無く、室内の体感温度はさらに下がった。


P「本命はバスルームだから!」

人を掻き分けてバスルームに飛び込むが、誰もいないのは一目で分かった。

P「天井……、天井を使う……」

見上げたところでゲームのように屋根上にいけるような作りにはなってない。

完全に詰んだ。


真「プロデューサー……、満足しましたか?」

雪歩「適当なことばかり言って……、埋めちゃいますよ?」

P「な、まて! 話せば分かる! な!? みんなもそう思うだろ!?」

助けを求めて伸ばした手は、バタンとドアが閉じて力なく床に落ちた。


一階から美希のはしゃいだ声が聞こえて、俺はこの後の惨事を思い震えた。         終

oh…

ところで前回Pを埋めたのと部屋をノックした人物って誰なんだろう
言えないなら言えないでもいいけど

どっちも話を軽くするためにボツにした要素っすね

ノックと埋めた人は違います

あと埋めた人は雪歩じゃないです

ふむふむ
今日はもうおしまい?

もう少しだけ出来そうです。

8:00から再開しますので次のレスで指定された番号から開始します。


それと指摘があったんですけど、やたら長い上に分岐潰して新しいルート行くこと考えると速報でやったほうがいいかなぁ、と。

落ちたら前向きに検討します

>>133のAにしようと思ったけどやめた

速報での安価スレって読んだことないけどちゃんと成立すんのかな
人いなくて安価だしたまま進まないってことになりそう

俺は二階に行くことにした。

律子・貴音・真・真美のグループだ。


5人で階段前に集まり、おおよその方針を決める。

P「じゃあ、今言った感じで」

四人「はーい」


律子には俺の部屋の前で美希が出てこないか見てもらった。

俺は真とペアを組んで端から見ることにした。

真「開けましたよ」

P「お邪魔しまーす」

二人で手分けして探すと5分もかからない。

そもそも隠れられそうな場所がそんなにないのだ。

俺がバスルームから出ると、真がベッドの下から這い出てきた。

P「覗くだけでいいんじゃないのか?」

真「いえ、もしかしたら何か落ちてないかなって」

真の言葉にネックレスの存在を思い出した。

ポケットを触ると硬い感触がある。

美希はネックレスが無いことに気がついているのだろうか?

春香にとってのリボンみたいなものだと思っていたのだが……。


真「プロデューサー? 次行きますよ」

P「ん、ああ」

部屋を出てドアを閉めるとどこかで雪が落ちたようだ。


あずささんと小鳥さんの部屋は鍵が掛かっていた。

二人で談話室に行き鍵を借りる。

俺はバスルーム、真はクローゼット。

ベッドの下を覗いてもやはり誰もいなかった。

コンコン

ノックしたが返事は無い。

P「あれ? 千早がいると思ったんだが……」

真「お風呂じゃないですか?」

P「どうしようか」

なんて話しているとドアが開いた。

千早「プロデューサー……と真。どうしたの?」

文庫本に指を挟んで、イヤフォンをぶらつかせながら顔だけを出してきた。

P「美希がどこかに行っちゃってさ。千早知らないかな? それともなにか気がついたことがあれば……」

千早「すいません……。私、食事の後すぐに部屋に戻って今まで音楽を聞いてたんです。
    ちょうどトイレに行ってて、それで気がついたんですけど。それ以外となるとちょっと自信がないです」

P「そうかぁ」

本気で知らなさそうだ。

真「ちょっと部屋見せてもらってもいい?」

千早「? ええ、いいわよ」

どこも同じ作りなはずなのに、持ち込んだ小物一つで雰囲気がガラッと変わっている。

小さなポーチと、傍に置かれた音楽プレイヤーが春香と千早の部屋を持ち主の色に変えていた。

P「じゃあさっきと同じで」

真が頷き返したので、バスルームに

千早「ちょ! やめてください!」

千早に後ろから羽交い絞めにされた。


P「え? な、なんでだよ。見られちゃまずいものでもあるのか?」

千早「そういうわけじゃないですけど……」

妖しい。

それもかなり露骨にだ。

P「真! 千早を押さえろ!」

真が千早を引き剥がした隙にバスルームに滑り込む。

千早「やめて!」

必死な悲鳴が聞こえた。

目を皿のようにしてバスルームを探す。

室内ではいまだもみ合う音が聞こえた。

ユニットバス、トイレ、洗面台。

便座を持ち上げてタンクの中まで見た。



P「なにもないじゃないか」

千早「そう言ってるじゃないですか!」

少し涙目だ。

P「じゃあなんで隠すんだよ。妖しすぎだ」

千早「くっ……くくくっ……」


強烈なボディをもらった。

においがどうだったのか気になりますねぇ

P「いや、ごめん。ごめんって、反省してるから……」

使用後のトイレをチェックされたのが相当屈辱だったようだ。

千早は一言も口を聞かずに音楽を再生して、本の世界へ旅立った。


真「ボクもうっかりしてました……」

二人で頭を下げて部屋を出た。

へそを曲げると扱いが難しいのだ。


律子に簡単に事情を説明して、呆れた顔をされた。

最後は俺の部屋だ。

鍵を差し込んで

P「あれ?」

掛け忘れていたようだ。うっかりさん☆

真「すごく……気持ち悪いです」

悪かったよ。

荷物はカバン一つ。

着替えとちょっとした生活用品しか入っていない。

すっかり慣れきった作業を二人でこなしてわかったのは、美希はこの四部屋にはいないということだ。

P「一階はどうだろうな」

真「うーん……、変なところに隠れたなぁ」


隠れた。

本当に自分の意思で隠れたのだろうか?

夕食もとらずに一人でかくれんぼ。

それは美希のイメージとあまりにかけ離れていて、不自然に思えた。


もしかしたら……。

俺はいやな想像をした。

急に何もかも嫌になって逃げ出したのでは?

吹雪く山荘からやけっぱちになって着の身着のまま飛び出す美希。

しかし、白く冷たい手が美希を永久の眠りへいざなう……。

P「ないない」

あの美希だぞ?

悩むことが合っても逃げ出したりはしないだろう。

しっかりと前を向いて問題に立ち向かえる強い子だ。


それにここの玄関は開閉するとチャイムがなる仕組みだ。

どこにいても聞こえるようになっていて、全員がそれを聞き逃すだなんてありえない。

強くなった風の音に耳を傾ければ、ビュービューと休むことなく吹いていた。


不吉な想像を手で払って、俺は部屋を出ようとした。

真「あれ? プロデューサー、鍵開けっ放しじゃないですか」

窓に寄っていた真が教えてくれた。

真「まったく、だらしないんだから。ドアも窓も開けっぱなしだなんて、泥棒がいたら感動しますよ」

P「あははは……、めんぼくない」

部屋の前には、すでに調査を終えた貴音と真美が律子と一緒に待っていた。

P「……」

どうだった? とは聞かなかった。

三人しかいないからだ。

上りよりも若干力なく階段を下りていくと、談話室で伊織が小鳥さんに説教しているのが見えた。



P「どうだった?」

伊織「ダメね。地下室があったんで見てきたけど、誰もいなかったわ」

雪歩「裏口も見たんですけど、特に出入りした様子は……」

亜美「おーい! ミキミキー! 出てきてよー!」

亜美が両手でメガホンを作って叫んだが、効果はなかった。


P「どこにいったんだアイツ……」

いつも眠そうな甘えた声がひどく懐かしい。

少々甘えすぎなところもあるけど、もっと大事にしてやればよかった、だなんて縁起でもない。

頬をパシンと叩いて一階組の報告をまとめた。

一階は管理人室を除いてすべてを見てきたようだ。

と、言っても大部分は地下の探索で終わったそうだが。

念のために倉庫をもう一度数人で見たが結果は同じだった。


不穏な気配を察したのか、千早とやよいが階下に来た。


どこを探しても見つからない。

全員で途方にくれてしまっていた。

……俺を除いて。

ソファーに深く腰をかけて熱いコーヒーをすする。

徐々に焦燥感が増してきた談話室で推理することにした。

背中を丸め手を組んで鼻先を埋めてどっしりと。



まずこの事件―――事件と読んでも差し支えないだろう―――は、犯人がいる。

美希を隠したその犯人の動機はイマイチよくわからないが……。

少なくとも危害を加えることは無い、と思う。


さてまずはご本尊がどこかにあるかだ。

美希はズバリ……

A まだペンションの中にいる。

B ペンションの外にいる。                   ×

C ペンションの外でも中でもない。


>>08:55に一番近いレスでお願いします

コンビニ行ってきます

ようやくわかったかもしれぬ
こりゃCだわさ

そう、美希はまだペンションの中にいる。

玄関から出入りすれば誰かが気がつくし、裏口には鍵が掛かっていた。

外に出たのならばどちらもありえない。おまけに裏口付近は足跡がなかったのだ。

必然美希はペンションの中という結論になる。


では、美希はいつ移動したのだろうか?

夕食前に俺と真と雪歩の三人が部屋を出てからは美希一人だった。

それから食事まで30分程度。この時の食堂には美希外の全員が揃っていた。

その間に移動したことはほぼ間違いないだろう。


と、なると問題はあと二つ。

どうやって誰の目にも触れられずに移動したのか?

そして誰がそれを行ったか、だ。

俺の中の探偵としての才能が火花を散らす。

脳細胞が激しく活動し、知的興奮に燃えた。

いくつかのピースが音を立ててはまり込んでいく。

パチリ パチリ


埋め尽くされたパズルはある人物の肖像となった。

意外な人物である。

俺は首を回しながら立ち上がると視線が集まるのを感じた。


P「犯人が分かった」

ざわ……。

ひそひそとした喋り声が止まった。

鳩時計が10回鳴いた。


俺は高らかに宣言した。

P「犯人はこの中にいる」

気持ちよかった。


犯人は >>+4           http://www.youtube.com/watch?v=toTp9X2_V5w&feature=plcp

美希

「だ、誰なんですか!?」叫んだのは律子か春香か。

たっぷりと間を取ってから俺は全員の顔を見回した。

P「犯人は……美希だ」


全員あっけに取られたような顔をしていた。


律子「そ、そりゃあそうでしょう。まさか誰かを疑ってたんですか?」

ジト目が胸に突き刺さる。

P「もちろんそんなことはないぞ」

良心が痛んだ。


春香「そ、それってつまりどういうことなんですか?」

俺は自信満々に推理を披露した。

P「まず俺がおかしいと思ったのは、美希が寝ていたことだ」

亜美「そんなのいつものことじゃ→ん」

真美「へっぽこ探偵真面目にやれ→」

P「……寝すぎなんだよ。バスに乗ったのが5時位だったか。
 それから起きていたのはペンションに入る時だけだ。
 メシも食わないで延々と5時間だぞ?
 さすがにおかしいと思わないか」

真「美希ならありえそうだけど……、でも夕食の時間にまで起きてこないのは確かに変ですね」


P「俺の推理では恐らくこういうことだろう」

俺は組み立てた推理を確認しながら一つずつ口にする。

P「まず美希は寝たフリをしていた。理由はわからないがな。
 俺たち三人が部屋を出た後、食事が始まったくらいに移動したんだ。
 ネックレスはその時落としたんだろう」

俺はポケットから美希のネックレスを出した。

P「その後は……なんだ、上手く隠れて今に至る、と」

多少穴の開いた推理だが、時間的なことを考えればコレが一番筋が通っている。

響「一番肝心な部分がそれじゃあ、ミステリーマニアにボコボコにされるぞ」

真面目に考えよう。

P「うん……。ペンションの中にいるのは間違いないんだ。
 玄関から出れば誰かが気がつくし、裏口は誰も出ていないんだろう?」

伊織が頷く。

P「必然的に美希はペンションの中にいるってことだ」

千早「あの……、それは靴を調べればわかるのでは?」

P「………………」

話の腰が砕け散った。

P「ともかく! ヤツはこのペンションの中にいるんだ!」

伊織「だーかーらー! そのどこにいるかが重要なんでしょうが! アンタ大丈夫なの!?」

ええい小癪な。


P「それはだな……、>>+5 じゃないかな?」

隠れ場所までは考えていなかったので謙虚な物言いになってしまった。

一応選択肢

【一階】 食堂 談話室 カウンター 管理人室 倉庫(地下含む) 厨房

【2階】  誰の部屋か指定

P「それはだな……、俺の部屋、じゃないかな?」

律子「じゃないかなって……」

真「待ってくださいよ。さっき一緒に見てきたじゃないですか!」


まぁまぁと宥めながら全員で階段を上る。

正直自信はないけど、それを言うと烈火のごとく怒りそうな面子に心当たりがあったので黙っておいた。

鍵を開けて部屋に入る。

全員入るとそうとう窮屈だった。

小鳥「それで……、美希ちゃんはどこに?」

期待されても困ります。

苦し紛れに俺が指差したのは……

A 窓

B 隣の部屋

C 天井

D ドア

P「そ、そこにいるんだろ! 美希!」

やけくそになって窓を指差した。

大量の視線が俺の指と窓を往復する。

そして最後に俺の顔で止まった。

春香「えーと……?」

P「つ、つまり窓の外にいるんだよ!」

真美「……なんで?」


大人は質問に答えたりしないのだ。

俺は圧倒的黙秘録の登場人物さながらに真美の質問を無視して窓に近寄った。

鍵を開けて窓を大きく開く。

寒風が雪を混ぜて部屋の中に雪崩込んできた。

P「うぉっ、さぶっ!」

首を出して左右を見る。

いなかった。

つまり最初にPの部屋でノックをしたのは美希、ただし鍵がかかっていなかったので
ノックする前にP部屋に入って窓の鍵を開けて後から窓伝いに侵入する算段だったってことか?

美希は雪歩の部屋の窓からPの部屋に入った
美希が消えた後に雪まこ部屋の外で雪が落ちたのは、雪真の部屋の窓の外にいたからか

Pが美希のネックレス発見の後一階に行ったパターンではゆきまこ→P部屋へと移動して
Pの部屋のドアから鍵を開けて出たってこと?
でも美希が一階で見つかった理由とかそもそもなんでそんな移動をしなくてはいけなかったかとかわからんから降参です

美希「あはは! 残念なの!」

声は後ろから聞こえてきた。

ギョッとして振り返ると美希がドアから覗いていた。

美希「惜しかったね、ハニー。でもすごいと思うよ」

亜美「え→!? どこにいたの?」

真美「教えて教えて~」

美希「内緒だよ♪ それよりミキ、お腹すいちゃった」


飛び交う質問を笑ってよけながら、美希は集団を引き連れて階下へ行った。

遅い夕食を始めるのだろう。


P「あれ~?」

大分良いトコまで言ったと思ったのだが。

俺は一人で首を捻っていた。

廊下に出ると微かに湿っているような気がした。


                                         終

まぁ大体おわかりですよね

ホワイダニットじゃないんで動機はこれだけじゃわかりません
一階で見つかった理由も別に大したことやってません

>>291
① ノックしたのは美希じゃないです

② 窓の外を使って移動は正解です。
移動パターンは選択肢によって変わりますが、概ねこの二部屋のどちらかにいます。
今回はプロデューサーの部屋は窓が閉められたので、というわけですね。

③ 一階捜索時に見つからなかった理由はいなかったからです。
   彼女は普通に階段を利用して移動しました。

動機はたいした理由じゃない、かもしれません

それと蛇足ですが本来は生き埋め編と絡めた構成を考えていたのですが、
ずっと寝てるだけのうえに危険な目にあう美希が不憫になって変更しました

ご飯食べたらまた適当にやりますね

ネタルートを希望する場合は 談話室→千早 か 初めから です
ピンクルートはフラグを立てながらそれっぽい選択肢を選べばいいようになってます

ただいま戻りました

修羅場トリオの三人に関しては自分の部屋で選択肢を出すようにします

それと律ちゃんは専用ルート以外だと本気で事件解決しそうなので出番少なめです ごめんなさい

それじゃレス番指定お願いします  >>+4

http://www.youtube.com/watch?v=aRVXqUtkmVw&feature=context-chv

空は広く青く広かった。

雲ひとつ無くまさに快晴と断言できる。

首を動かすと、真っ白な斜面を軽快に滑る人達が見えた。



ズザシュッ! と、キレのいい効果音を伴って、粉雪が削り節みたいに顔にかかった。

真上から真が覗き込んでくる。

真っ黒なゴーグルがボーイッシュな髪形によく似合っていた。


真「プロデューサー大丈夫ですか? 思いっきり転んでましたけど……」

P「冷たい。主に顔と耳が」

雪面へ大の字にへばりついていた俺は、寝起きさながらにゆっくりと身を起こした。

板とストックが4メートルほど下に突き刺さっているのが見える。

リフトの上から笑い声が聞こえた。

響「プロデューサーはどんくさいなぁ。自分初めてだけどもうパラレルできるぞ」

得意げに目を輝かせて響がからかってきた。

悔しい。最初は俺が教えてやったのに数時間で抜かされてしまった。


P「響はダンスやってるからな」

理由になってないな、と自分でも思いながら立ち上がる。


冷たい風が汗ばんだ体に心地良い。

遠くに見える尾根はどこまでも白く、雄大な気持ちになった。


髪に絡んだ雪を払って、慎重に板を回収しようと足を持ち上げると

春香「うわ! うわわわ! ど、どいてくださーい!」

P「え?」

声に驚きながら振り返ると、真と響が左右にスーっと別れたのが見えた。

その間を春香が直滑降で……。

A 避けない

B 避ける ←NEW!

すんでのところで身をかわした。

風切り音を残して真横を誰かが通っていく。

「うわあああぁぁぁ……」とドップラー効果を実演しながら春香は真っ直ぐ滑っていった。


P「いやぁ、スキーって難しいね!」

青空に負けないくらい爽やかに言った。

真・響「………………」

賛同は得られなかった。コイツラだって避けたくせに……。


二人の視線は厳しく、俺はヨロヨロとボーゲンでパークまで降りた。

汗をびっしょりかいて、雪に顔をうずめたくなるほどだ。


板を抱えて休憩所を探していると、

やよい「あ、プロデューサー! 大変なんです!」

やよいが血相を変えて走ってきた。

P「ちょ、ちょっと、そん、なに、引っ張らないで」

グイグイと腕を引かれて案内されたのはパークから外れた林の中だ。

一面白一色の中に、茶色と緑が健気に残っている。

乱立する樹木をひょいひょいと避けながら先導するやよいを、必死になって追いかけた。

気分はアリスだった。


雪歩「あ、プロデューサー!」

ぽっかりと丸く開けた場所に雪歩は立っていた。

傍らには、こんなときにでも持ち歩いているシャベルが突き立っている。

しかし、それらをぶっ飛ばすほどの強烈な景色が目の前に繰り広げられていた。


P「うぉ……、これはすごいな……」

絶句してしまった。

円形の広場には無数の雪だるまが建造されていた。

大きさは俺くらいの巨大なものから、手のひらに乗るほどの小さな者まで様々だ。

小枝とマンリョウの実で表情豊かに彩られている。

やよい「そっちじゃないんです!」

P「え?」

眼前の光景に圧倒されているとやよいがさらに腕を引いてくる。

雪歩「こ、この子なんですけど……」

差し出されたのは雪ウサギ。

雪で作られた真っ赤な目をしたウサギだった。


P「????」

ワケがわからない。

これがどうしたというのだろうか?

雪歩「い、生きてるんです、この子」

P「はぁ?」

半笑いになってしまった。

冗談にしては中途半端で、どう笑えばいいのかよくわからなかったからだ。

ピクピク

P「……!」

目を疑った。

雪ウサギの耳が動いたのだ。

作り物めいたところは少しもなく、まったくの自然そのままに雪で出来た耳が痙攣した。

P「生き……てる? そんなばかな……」

俺の理解を超えていた。


やよい「あの……、わたしと雪歩さんで雪だるまを作ってたんですけど」」

P「うん」

やよい「この子、いつの間にか近くにいて」

雪歩「最初はやよいちゃんが作ったんだと思って」

やよい「わたしは雪歩さんが作ったと思ってました」

P「なるほど」

なにがなるほどなのか良くわからなかったが頷いた。

こういうときに年長者は落ち着いていなければならない。内心ではパニック寸前だったけど。

雪歩「どうしましょう……?」

本当にどうしましょうか。

ウサギはそんな俺たちにお構い無しに雪歩の手の平でくつろいでいた。


P「うーん……。自然のものは自然に返すのが一番なんだけど……」

造形はモロに人工物だ。

これを自然のものと言い切っていいものだろうか?

天然由来100%ではあるけども。

やよい「やっぱり飼えないですよね……?」

どこかに望みを残したまま聞かれた。

P「うん……、そもそもこいつがなんなのかすらよく分からないからなぁ……」

松の葉に良く似た鋭いひげがひくひくと動く。


雪歩「でも可愛いですぅ」

それは同意だ。

愛くるしい所作で雪ウサギは鼻先を掻いている。

P「そうだな、じゃあ帰るまで」

そう言って腕時計を確認した。

P「あと一時間だな。それまでは一緒に遊べるよ」

残された時間は親睦を深めるには物足りず、未練を残すには十分な時間だった。


二人が走り回るとそのあとをウサギがついて走り、抱き上げれば目を(どういう構造なのか)細めて嬉しそうだ。

雪だるまで埋まった広場は二人と一匹の声でさらに賑やかになった。


俺はその光景をいっぺんに視界に納めようと思い、数歩後ずさる。

カメラを持って来れば良かった。そう思うほどに幻想的だった。

さらにいい位置を探そうとジリジリと下がっていくと、背中から硬いものにぶち当たった。

P「おっとっと……」

振り返ると俺より頭一つ小さい雪だるまが両手を広げていた。

春香を模したのか頭にはリボン型に葉っぱがくっつけられていた。

これ以上うしろに下がると春だるまを倒してしまうと判断した俺は、その場でうさぎと少女を観察する。

P「……いいね!」

親指をグッと立ててみた。

モコモコした手袋が邪魔でイマイチ決まらなかったけど。


ポンポン

P「ん? なに?」

肩を叩かれて返事をする。

今はやよいがウサギを頭の上に乗せていた。

微笑ましい姿を目に焼き付けようと食い入るように眺めていると


ポンポン

P「だからなに?」

邪魔しないで欲しいのだが。

ポンポン

P「あぁもう、なんだよ。口で言えばすむ話だろ?」

振り返って俺は理解した。

口が無かったのだ。


春だるまは器用に太い枝を使って俺の肩を叩いていた。

P「」

言葉をなくしてじっと見ていると、なかったはずの口が開いた。

獰猛なサメを思わせる大きな口には真っ白に尖った歯がのこぎりの様に並んでいた。


P「な、な、な……」

春だるまの口がカチカチと音を鳴らして開閉する。

親指ほどの太さだった腕はいつの間にか俺の腕よりも太くなっていた。

春だるま「プゥウウウウロオデュウサアササササササン」

後ろに跳んだ。

寸前まで俺がいた場所に春だるまが食らいつく。

足が無いのににじり寄って来る姿はシュールすぎて笑えない。というか怖い。

股座が縮み上がるのを感じながら雪歩たちの事を思い出した。

P「雪歩! やよい!」


叫びながら振り返ると

春だるま「プゥウウウウロオデュウサアササササササン」

春だるま「プゥウウウウロオデュウサアササササササン」

春だるま「プゥウウウウロオデュウサアササササササン」

春だるま「プゥウウウウロオデュウサアササササササン」

広場にいた雪だるまはすべて春だるまに変わっていた。


P「う、うわ、うわわわわわ!」

両腕を振り回して牽制する。二人はどこだ?

奇妙なものを見つけた。

一見するとそれは雪だるまが倒れているようにしか見えなかった。

異常なのはその雪だるまが、動物の生々しさを持ってうごめいている事だ。


すごく、嫌な予感がした。

二人はどこだ?


春だるまはうごめく集団を気にしてチラチラとそちらを見ている。

二人はどこだ?


俺は大声をあげた。

P「雪歩ー!! やよいー!! どこだー!!」

二人はどこだ?


倒れた雪だるまと、その周囲の地面が赤く滲んできた。

二人は、どこだ。

一番ありえそうな解答だけは受け入れられなかった。

たとえ赤く染まった地面に雪ウサギの残骸が落ちていたとしても。

凛と引き締まった雪景色に、鉄の臭いが混じったとしても。


P「お、おおおおおおおお!!??」

足元から雪で覆われた石を担ぎ上げる。

普段なら、泣き言を言ってしまうほどに重いその重量が今は頼もしい。


頭上に高々と掲げ、俺は紅色の雪を踏んだ。

P「――――――――――――!!」

なにを叫んでいるのか自分でも分からない。

ただそこに込められた意思は正確に両腕を通して石に伝わった。


中央めがけて投げ込んだ石は春だるまA、B、Cの頭を粉々に打ち砕いた。

遠くから眺めている春だるまに動揺が走ったのが分かる。

雪の塊をかき分けると、まん丸な目玉がこちらを見ていた。

なんだこれ。

手袋を外しつまみあげると思ったよりも硬い。

思ったよりも? 俺はコレがなんなのか知っているのか?

よく分からなかった。

ざくざくと掘り進めると茶色っぽい髪が出てきた。

長い癖っ毛と短い直毛だ。


P「手が冷たいなぁ……」

春だるまに見守られながら俺は素手で雪を掘っていく。

シャベルがあれば楽なのに。

P「なぁ雪歩。ちょっとシャベル貸してくれない? すぐに返すから」

返事は無かった。

P「あぁ、まだ使うのね。了解、終わったら貸してくれよな」

真っ赤な雪はなぜか温かかった。

指先の感覚がなくなり爪が半分なくなった頃、ようやく地面が見えてきた。
黒っぽく凍りついた土を見ていると、ここでなにが起きたのか忘れてしまいそうだ。
一度引っ込んだはずの汗が目に入り、悲しくも無いのに涙が出てきた。


春だるま「プゥウウウウロオデュウサアササササササン」

P「どうした春香」

転ばないようにか、春香がゆっくりとこちらに向かってくる。

あいつの転び癖はいつになったら治るんだろうか?

掘り返した雪は黒い土と赤い何かで汚らしい。

真っ白な部分を選んで寝転がった。


青い空と冷たい風が気持ちいい。

雪はフカフカしてて思ってたよりもずっと温かかった。

春だるま「プゥウウウウロオデュウサアササササササン」

P「早く来いよ」

俺の言葉を合図に、数え切れないほどの春だるまがのしかかってきた。

頭蓋が砕ける音を聞くまでにそう時間はかからなかった。

――――――――――――――――――

P「と言う夢を見たんだが……」

響「こ、怖すぎるぞ……」

真「あの、本当に病院行かなくていいんですか?」

春香「それよりも私の扱い悪すぎませんか!?」

P「妥当だと思うぞ」

じろりと見ながら言ってやる。


目が覚めると足首が動かなかった。

避けそこなった俺は変な体勢で春香と絡まりあってパーク付近まで転がったそうだ。

ちなみに春香は無傷である。文句の一つも出るというものだ。

響「鬱屈してるのかなぁ……、とてもそうは見えないけど」

P「失礼な。これでも繊細な精神と貧弱な肉体だと自負しているんだぞ」

真「全然自慢できてませんよ、それ」

春香「あははは……」


パークの中は熱気がこもり動いてもいないのに汗が出てきた。

春香「何か飲み物買ってきますね。プロデューサーさんは私が見てるから二人とも行ってきてもいいんだよ?」

春香の言葉に二人は顔を見合わせて

真「じゃあ、お言葉に甘えて行って来ようかな」

響「春香、貸し一つだぞ」

春香「えー……」

なんだか良くわからなかったが響に借りを作ったようだった。

コーヒーを頼むとワタワタと動き、人にぶつかって頭を下げながら春香はフードコートへ歩いていった。

時計を見ると16時半だ。

時間までここでノンビリ過ごすのもいいだろう。

そう思ってた。


やよい「あ、プロデューサー! 大変なんです!」

やよいが血相を変えて走ってくるまでは。












                                               終

いやぁメルヘンでしたね

正直何も思い浮かばなかったのでふんわりとした雰囲気で誤魔化してしまいましたよ

次回は13:30からです

レス番指定お願いします  >>358

んじゃ318A

響「プロデューサーはどんくさいなぁ。自分初めてだけどもうパラレルできるぞ」

得意げに目を輝かせて響がからかってきた。

悔しい。最初は俺が教えてやったのに数時間で抜かされてしまった。


P「響はダンスやってるからな」

理由になってないな、と自分でも思いながら立ち上がる。


冷たい風が汗ばんだ体に心地良い。

遠くに見える尾根はどこまでも白く、雄大な気持ちになった。


髪に絡んだ雪を払って、慎重に板を回収しようと足を持ち上げると

春香「うわ! うわわわ! ど、どいてくださーい!」

P「え?」

声に驚きながら振り返ると、真と響が左右にスーっと別れたのが見えた。

その間を春香が直滑降で……。

A 避けない  ←

B 避ける 

>>3
>>4
>>5
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>>9
>>10
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>>12
>>14
>>15
>>16
>>17

着替えを終えてカバンから枕を引っ張り出す。

叩いてふくらみを持たせると慣れ親しんだ感触に戻った。

もう一つのベットに備え付けの枕を放り投げて、寝転がろうとするとナイトテーブルに一冊の本があった。

赤絹の装丁で分厚く、聖書の類とも思えない。

何とはなしに手に取ると叡智の重みをずしりと感じた。


俺は……

A 本を開いた。

B 読む気になれず引き出しにしまった。




>>+3

ベッドにうつ伏せになりながら本を開く。

小林さんのものなのだろうか?

とりあえずパラパラとめくると赤と緑の文字が数ページごとに入れ替わって見た目に美しい。

各ページはつる草をあしらった様なデザインで、なかなか手が込んでいた。


P「ん?」

半ばまでめくるとしおりが挟まっていた。

ピンク色で革をなめしたこれまた手の込んだつくりだ。

ひっくり返してみると果物のような匂いがほのかにした。


挟んであったページを開くと、そこには変なことが書いてあった。

【ちょっとエッチなおまじない】

小林さん……。

本は旧字体と筆記体の英語が混じっていて読解に苦労した。
携帯に入れてあった英和辞書と頼りない知識で読み解いていく。
時々メモを取りながら少しずつ理解を深めた。


べ、別に信じてるわけじゃないんだからね!


各位方面に誠意ある謝罪をしながら作業を進めた。

没頭していると、風の音も気にならない。

ドアがノックされたような気がしたが、待っても続きが無いので気のせいだと思うことにした。


P「えーと? これでいいのかな?」

俺の目の前には広げた本とピンク色のしおり。

そしておまじないに必要ないくつかの小道具だった。

代用品も多々あるが、問題ないだろう。

さて……、対象は誰にしようか?

A 美希

B 真

C 雪歩               >>+4

エロの時の早さはすごいなぁとぼくはおもいました

ちょっと暑いから飲み物とってきます

エロ展開に要望があればどぞ

ちょっと調査してきます

俺は本に描かれた紋章を正確に描いた。

聖水の代わりに雪を溶かした水を天井に向かって振り掛ける。

P「エロエロー……えーと、あぁそうそう。エロイコトダイスキーハンザイジャナイヨー」

所々つっかえながら呪文を唱えた。

鶏と黒猫の血はちょっと難しいので鼻水で代用。成分的には似たようなものだ。

複雑な法儀式を何度か中断しながらこなすと、それっぽい感じになってきた。

最後にキリストの心臓―――そんなものは無論無いので―――の代わりに、俺の鼻くそを魔方陣に擦り付けた。


もわもわもわもわ~ん

P「やったのか!」

ピンク色の煙が部屋に立ち込めてきた。

俺は三度拍手を打ち早口で願いを言った。

P「雪歩とセックスできますように!」


俺の願いは聞き届けられたのだろうか?

煙は意思を持ったかのようにするすると部屋の隙間に消えていった。

そわそわと落ち着きが無くなってしまった。

魔方陣を片付けて手持ち無沙汰になった俺は部屋を熊みたいに歩き回った。

窓に映った自分を見て苦笑い。

今度はベッドに座ったり立ったりを繰り返した。


本の内容は可能な限り忠実にシミュレートできたはずだ。

これで失敗したら小林さんに文句を言わなければなるまい。


初めてエロ本を拾ったときのように胸がドキドキした。

これからもお世話になるかもしれない赤絹の本を、丁寧にパンツ(新品)に包んでうやうやしくカバンに入れた。


コンコン

来たか……!

申し訳ないがここからは18歳未満は立ち入り禁止だ。

俺は大人の余裕を見せてクールに返事をした。

P「は、入ってます!」

雪歩「あ、そうなんですか……」

そのまま立ち去りそうな気配に突っ込みを入れた。

P「いるから、俺はここにいるから!」

青春とはなんぞや。

強く自分の存在を訴えかけて俺は哲学的に考えたりはせず獲物を逃すまいと勢いよく扉を開いた。

P「や、やぁ……」

なんだキャラが変わった気もするけど気のせいだ。

これはきっと大人の時間に相応しい人格になったのだろう。

実に至れり尽くせりで、俺は赤絹の本に感謝した。

雪歩「? はい。どうかしました?」

P「入りなよ、待ってたんだ」

雪歩「何かお話でも……?」

分かってるくせに。

俺はニヒルな笑顔だけで答えると雪歩を部屋の中へ誘った。

後ろ手で鍵をしっかりとかけてコレで大丈夫。

あれ もしかして美希だった?

なんでもないっす

http://www.youtube.com/watch?v=ppOVB3rFqXY&feature=plcp

BGMが切り替わったのを超越した能力で感じた。


雪歩はなんだか困惑した表情でモジモジとしていた。
庇護欲と破壊衝動を同時にもたらす、そんな可憐な面持ちだった。

P「座ったら?」

洋画の字幕っぽく略しまくってから雪歩の隣に立つ。


雪歩「は、はい」

んー……、まだ固いな。

俺は肩に手を回すとベッドに並んで座った。

あまやかな香りと華奢な肉付きがたまらない。

一気に押し倒したくなる衝動を堪えてささやいた。

P「星が綺麗だね」

雪歩「吹雪いてますけど……」

P「雪が……、そう雪が綺麗だね……」

雪歩「真っ暗でよく見えません……」

おかしいな。

俺の予定ではもうそろそろ二回戦に突入してるはずなんだが。


イマイチ上手く行ってない事に小首をかしげながら俺は雪歩の肩を抱き寄せた。

雪歩「あ……」

強い抵抗は無かった。

赤く恥じらいながら床を見つめて黙り込む。
細い毛先がふるふると揺れていた。


P「雪歩……」

雪歩「は、い……」

いける!

俺は確信を持って口説いた。

P「キス……していい?」

雪歩「えっ……」

声音に現れたのは純粋な驚きで、そこに拒絶や嫌悪は感じられなかった。

目を覗き込むと潤んでいて、まるで誘っているかのようだった。

雪歩「あ……、ん……」

少々強引に唇を押し付けた。

雪歩の返事を待っていたら次の客が来てしまうだろう。

幸いにも雪歩は抵抗せずに俺を受け入れてくれた。

唇をに擦り合わせるだけの稚拙なキス。

だけど雪歩はそれでもう一杯一杯だったようで

雪歩「ふひゅう……」

目を回してベッドに寝そべってしまった。


P「大丈夫?」

せめて言葉だけでもと優しく聞くと

雪歩「あの……」

P「うん」

雪歩「もう、一回……いいですか? ……そのよくわからな……ん」

最後まで我慢できずに覆いかぶさってキスをした。

握った手は弱々しく震えて、俺の劣情を刺激した。

おひょひょ

しかし>>1は頑張るな~

唇を離すと苦しそうな呼吸が聞こえた。

酸欠だけが理由とは思えないほどに真っ赤な顔をして、何度でもむしゃぶりつきたくなる。

P「…………」

見つめあう二人に会話はいらない。

俺はそっと手を伸ばして

雪歩「だ、ダメですぅ!」

はたかれた。やっぱりコミュニケーションは大事だった。


P「雪歩……」

雪歩「は、はい……」

この状況と彼女に一番相応しいセリフを、脳内から超高速で検索する。

ファンが回りだしてハードディスクを読み込む音がした。

付き合ってくれ。好きだ。愛してる。一緒になろう。いいかな? 脱がすよ……。抱くぞ。

主にエロゲと官能小説で得た知識から該当するフレーズを僅か0,02秒で導き出した。

それは

P「セックスさせてください!」

しまった。先走りだ。

まだ本汁じゃないのでフォローはきくはずだ。


雪歩「あ、あの……、あの、あの……」

雪歩は壊れたCDみたいに何度も同じ言葉を繰り返していた。

あの『あの』が止まる前に挽回しなければいけない。


P「え? どうかしたの?」

すっとぼける作戦に出た。

雪歩「い、い、いまなんて言いました? へ、変なこと言われたような気がして……」

P「えーと、なんて言ったんだったかな。よかったら教えてくれない? 思い出せるかもしれない」

白く歯を光らせて爽やかに微笑んだ。

雪歩「い、いえ。いいです、たぶん私が勘違いしちゃっただけですから……」

セーフ!

危ないところだと額の汗をこっそりと拭いた。

いやーあぶないところでしたピヨ

どうやら言語中枢に深刻な異常が発生したようだ。

俺は男らしくアクションのみで雪歩に意思を伝えようと思った。


雪歩「ん……ちゅ……ふ、ぁ……」

繰り返しついばんで力を抜かせる。

細い腰の下に手を回して抱き寄せた。

軽すぎて少し不安になったが、柔らかい感触は紛れもなく女だ。

口付けはそのままにゆっくりとボタンを外していく。

慌てたらそこで試合終了です。


雪歩は俺の行動に気づいたようだが、わずかに眼差しに批難の色が混じるだけで声をあげたりはしなかった。

壁に掛けられたオサレなランプがゆらめく。

再び雪歩をベッドに降ろした時には、下着だけになっていた。


練習しといてよかった。

P「雪歩……」

余計な言葉を挟まない。

ここでチョイスを間違えるとホテルに一人残されることもある。

大体ダメって言われたって止まれねえんだよ!

よく分からない怒りに身を任せて、雪歩の―――本人曰くひんそー―――な胸に触れる。

雪歩「…………っ」

肩をすくめて縮こまった。

痛いわけでは無さそうだ。

ゆっくりと時間をかけて解してやろう。

上下左右から優しく圧を加えて形を変える。

雪歩「……ふ……っ」

時折、揉みこむような動きを加えて単調にならないよう工夫した。

P「どう?」

雪歩「よく……わからないです……」

徹底的にやることにした。

息が荒くなってきたのでブラを外した。

上下共に水色で可愛らしいデザインだ。

目が閉じているのをいいことに頭に乗せ……たりはしなかった。

見つかったら最終奥義の土下座を出すしかなくなるからだ。


固くなり始めた山頂を、ギリギリ触らないくらいの距離で責める。

指は空を切り、触れたとしても皮一枚だ。

だが、刺激に慣れていない雪歩にはそれで十分なようで

雪歩「くぅ……ん……」

可愛らしい鳴き声をあげた。


急に摘んでみた。

雪歩「はぅぅっ!」

すぐに離す。

ピンと立った乳首は真っ赤に充血していた。

白い肌が朱に染まり始めたころ、俺は自分の体の異変に気がついた。


P「あれ?」
雪歩「はぁ……はぁ……。……?」

目で「なにかあったんですか?」と聞かれた。
P「いや、気のせいだった」

甘くキスをしながら、気のせいどころではない非常事態に、俺は率直にいってものすごく焦っていた。

例えるなら受験の時に受験票と文房具を忘れて、試験範囲を間違えたことに気がついた。

その上さらに受験校とは何の関係もない学校に来てしまった……、といえば少しは近いかもしれない。


手はシステマチックに見つけたばかりの雪歩の性感を開発していたが、脳内では問題解決に向けて会議が行われていた。


議長「……それで、何が問題なのかね」

議員1「はい。事ココにいたってようやく気がついたというのは危機意識の欠如が明白であり汗顔の至りであります」

議員2「釈明は結構だ! そんなことより議題の進行を早くしてください!」

議員1「えー……、つまり、ですね。なんらかの理由によりまして、その、局部に十分な血液が流れ込まないと……」

議員3「お前の話はまだるっこしくていかん! はっきり言え!」

議員1「は、はい。分かりやすく言いますと……そのチンコが……勃ちません」

         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!
          cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・
ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/   ゙̄`ー-.、     u  ;,,;   j   ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\   ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
'"       _,,.. -─ゝ.、   ;, " ;;   _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ  | 、  .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
  j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
      :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ
       \_    _,,......::   ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... '  u ゙l´.i・j.冫,イ゙l  / ``-、..- ノ :u l
   u      ̄ ̄  彡"   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /
              u      `ヽ  ゙:l   ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_   ̄ ー/ u /
           _,,..,,_    ,.ィ、  /   |  /__   ``- 、_    l l  ``ーt、_ /  /
  ゙   u  ,./´ "  ``- 、_J r'´  u 丿 .l,... `ー一''/   ノ  ト 、,,_____ ゙/ /
        ./__        ー7    /、 l   '゙ ヽ/  ,. '"  \`ー--- ",.::く、
       /;;;''"  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \..,,__
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i





いきなり議員達がアップになってちょっとビビッた。

俺は漢の矜持と雪歩の繊細な心を守るためにどうすればいいのか、乳首をいじり倒しながら真剣に悩んだ。

「あ、ごめん。お前じゃ勃起しないからやっぱいいや」などと言おうものなら商売のお姉さんでも青筋を浮かべること必死である。

八方丸く治めるために俺の弁舌が試された。乳首を甘噛みしながら不敵に笑った。

カチンコもなしにカメラは回りだした。

まず俺は雪歩から離れるともう一つのベッドに座り頭を抱えた。

P「俺は……バカだ!」

みんな知ってるけど演出なので口にした。

雪歩「プ、プロデューサー……?」

雪歩の気遣う声は聞こえないフリをしてさらに言葉を連ねる。

P「こんな……こんなことをしてしまうだなんて……!
  俺はプロデューサー失格だ!」

髪を掻き毟りアピールする。

雪歩「ど、どうしたんですか、プロデューサー……」

1時間前だったら信じられないが、雪歩は胸を丸出しにしたまま下着一枚で俺の前に立った。

指の隙間から覗くと、ぬらぬらと光る唾液と微かな歯型のついた乳首は、まだ勃起したままでひどく興奮した。

チンコはピクリともしなかった。

セックス代行はよ

物資が切れたでござ候
少々お待ちください

P「俺は、お前たちを……。いやお前を……雪歩をトップアイドルにしたいと本気で思ってたんだ……」

この辺は嘘じゃないので真実味が増してると思う。

P「なのに……、なのに、手を出してしまうだなんて……。俺は一体何をしているんだ……!」

このクソ息子は本当に何をしているんだ!

ベクトルの違う怒りを重ね合わせて迫真の演技となった。


P「すまない……、本当に、なんて言ったらいいのか……」

雪歩「プロデューサー……」

……よし、これで少なくとも俺がEDだとはバレてないだろう。

後は悔悟の涙を流しながら抱きつけばミッションコンプリートだ。


しかしここで予想外の出来事が起きた。

それは……

A 雪歩に抱きつかれた

B 雪歩に蹴り飛ばされた

エロの時は猛スピードのうえに統率とれすぎ

A

ふわっと柔らかく包まれた。

あれ?まだ泣いてないぞ?

脚本どおりに進まないと不安になる。

どう修正しようかと迷っていると、むき出しの腕に熱いものが落ちた。

雪歩「ごめん、なさい……。ごめんなさ……い」

ここは俺が涙を流して謝るシーンであって、雪歩が泣く展開ではない。

俺はひどく混乱した。

P「ど、どうして……?」

1から10まで俺が悪いのに。

雪歩にはなんの落ち度もないのに。

雪歩「わ、わたし、恥ずかしくて……、プロデューサーは真剣に考えてくれてるのに……、
    キスしてもらって、……その、愛して……もらえるって思ったら、嬉しいだけで……」

このときの俺の感情は、一言では説明しにくい。

顔の形が変わるまで殴り飛ばしたいほどの憤怒と、この雪のように深い後悔と、山の奥に消えたくなるような慙愧。

それに加えてどうしようもないほどに持て余した愛しさがグッチャグチャに混ざっていた。

P「うん……」

余計なことまで出てきそうで歯を食いしばった。

自然と頬が濡れていく。

P「もう少し……、もう少しだけ、待ってて欲しい」

とび色の瞳が濡れて揺れる。

淫らな気持ちは少しも湧かなかった。

P「焦らなくても、きっと全部丸ごと、笑っちゃうくらいにあっけなく上手く行く時が来るから」

楽観過ぎだが、歩んでいる道を間違えなければそれは確実に訪れる。

なんの保証もないのに確信を持ちながら続けた。


P「その時に、この続きをしよう」

奇跡的に鼻水は出なかったので言葉がにごることはなかった。

雪歩は言葉を詰まらせたまま幾度も頷いた。

滑らかな肌は絹のようで、いつまでも抱いていたいと思った。

出かけるので夜まで続けろください

見られるのは恥ずかしいとのことなので後ろを向いて待機した。

衣擦れの音が妙に艶めかしい。

やり場に困った視線を床に向けると、役に立ったのか立たなかったのか。

魔方陣が残っていた。

問われたら答えようがないので、こっそりベッドの下に押し込もうとすると、鼻水が伸びて文字の一部が消えた。

その瞬間、隙間に入り込んだはずのピンクの煙が凄まじい勢いで陣に吸い込まれる。

呆気に取られていると、雪歩が着替え終わった。

P「み、見た?」

雪歩「え? なにをですか?」

P「いや……」

あれはなんだったのだろうか。

腑に落ちないものを感じていると、

雪歩「私も頑張りますから、早くトップアイドルにしてくださいね」

正面に立った雪歩が背伸びをした。

唇の感触に気づく間もなく、離れていく。

雪歩「えへ……、次はプロデューサーからしてくださいね?」

その笑顔を見た瞬間、俺の愚息は先ほどまでの無能ぶりが嘘のようにいきり立った。

P「う、うん……」

感動的なシーンを終えたばかりでこれはきっつい。

押さえ込むわけにも行かず、中途半端な構えで見送った。



P「これは一体……?」

ズボンを突き破ろうとする筍に聞いてみた。

ビクン ビクン

P「もしかして……、あの魔方陣のせいかな……」

そうだとしたらトンでもない欠陥品だ。

小林さんには誠意ある謝罪(物理)を請求しようと思った。

俺は壁に耳を当てた。

両方だ。

物音はしなかった。

鍵をチェックする。

しっかりとかかっていた。


俺はティッシュを箱ごと持ってくると、ベッドの上に座り、勢いよく全裸になった。

P「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

摩擦で火がつきそうなほど激しく擦りあげる。

P「ゆきほおおおおおおお! ゆきほおおおおおおおお!」

雄たけびを上げながらフィニッシュに向けてスパートをかけていく。

コンコン

ノックをされた。

窓のほうから。

カーテンが全開になって外から丸見えだった。

雪の中で立ち尽くしていた人影は……。                     終

ちなみに蹴飛ばされるほうを選ぶと、切れた雪歩が女王様属性に目覚める展開でした

しかし俺の限界はここまでのようだ。


きつい西日を受けて眉根を寄せる。
脱力しきった体は変な匂いがする。
食いしばった歯の隙間から泡が出て潰れたカニみたいだった。

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