ジャン「一角獣と翼」(31)

サシャ「コホッコホッ」

コニー「ゴホッ」

「………」

コニー「ゴホッゴホッッ」

サシャ「大丈夫ですか。コホッ」

コニー「…ああ。サシャこそ平気か?」

サシャ「…実はあんまり」

コニー「…ゴホッ」

サシャ「コホッコホッ」

コニー「……そこ、気い付けろよ。ブレードのかけらだ」

サシャ「あ、はい。コホッコホッエホッ…エホッグッ…」

コニー「…待ってろ」ゴソ

サシャ「?」

コニー「これしばらくかじってろ。えずくのが楽になっから」

サシャ「コホッ…ありがとうございます」

コニー「サシャに食うもんやってこんな反応なんて、この前までじゃあり得なかったよなあ」

サシャ「ふふっ本当ですね」

「………」

コニー「ゴホッ」

サシャ「…煙が酷いですね」

コニー「乾いた木がな、足りないんだとよ。んで干して半年の薪もつかってるらしーんだ」

サシャ「だからですか。コホッ」

コニー「…人間だけじゃきちんと焼けないんだな」

サシャ「私も火葬は初めて見たから知りませんでした。こんな、においも…」

コニー「サシャ、そっち持つと腕が取れそうだ。反対がわ持った方がいいぞ」

サシャ「あ、はい」

サシャ「こんなでも…生き残って、嬉しいんです」

コニー「だよな。死にたくなくて頑張ったんだし」

サシャ「コホッ…はい。特にガスを手にした時は嬉しくて…」

コニー「わかんぞ。ゴホッ」

サシャ「そういえば、軽蔑しないんですか」

コニー「…そういやそんなこと言ったな」

サシャ「さ、どうぞ」

コニー「…ゴホッ軽蔑されたいのか」

サシャ「…わかりません……」

コニー「あのときにアニとミカサが助けてくれただろ」

サシャ「はい」

コニー「正直、あの二人なのはちょっと意外だったんだよなーゴホッ」

サシャ「確かにああいうのはライナーやエレンの役ですよね」

コニー「だろ?いつか…恩を返さなきゃな」

サシャ「ですね。コホッコホッ」

コニー「うっ…」

サシャ「どうしました!?」

コニー「来んな!!」

サシャ「?!」

コニー「わりい…こっちはちょっと酷いから」

サシャ「……大丈夫です。吐き出した固まりはさっき見ましたから」

コニー「そっか……」

サシャ「本当に」

コニー「ゴホッ」

サシャ「この人たちは本当に人間だったんでしょうか」

コニー「サシャ!」

サシャ「だって、おかしいじゃないですか!」

サシャ「この前まで話して笑って食べてたのに…おかしいじゃないですか…コホッ」

「………」

サシャ「マリアが崩れたって聞いたとき、どこか他人事だったんです」

コニー「ああ」

サシャ「ミカサやライナーたちはどんな気持ちだったんでしょうか…」

コニー「わかんねえよ」

サシャ「ゴホッ…強いですよね」

コニー「だな」

サシャ「私はあんな風にきっとなれません」

コニー「ゴホッ…ゴホッオレもだ」

コニー「サシャは、どこへ行くか決めたか…?」

サシャ「コホッゴホッいえ、まだです」

コニー「オレ自分は憲兵になるんだと思ってた」

サシャ「せっかく上位になりましたしね」

コニー「迷ってんだ」

コニー「ゴホッシーナは突破されなかったけど…」

サシャ「…はい」

コニー「オレの村はたまたま無事だっただけなんだな」

サシャ「…コホッ」

コニー「次に同じことがあったら家族のいる村は助からないんじゃねえかって…そんときオレは家族や仲間より王を守りてえのかな 」

サシャ「私も…わからなくなりました」

サシャ「きっと、ミカサやライナーは守りたいものがわかってるから強いんですよね」

コニー「ゴホッゴホッ…エレンどーなっちまうのかな」

サシャ「エレンはわかりませんが、ミカサはきっと変わりませんね」

コニー「そうだな」

サシャ「コホッゴホッ…!コニー!この人!息をしてます!!」

コニー「!!担架で治療班のとこまで運ぶぞ!!急げ!」

サシャ「よかった…!生きてる人間…!死体ばっかはもういややあ…」

コニー「泣くなよ!ホラそっちもて!いくぞ!せーの!」

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ーーー
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ライナー「コニー」

コニー「ライナー…そっちはどうだったんだ?こっちは助かったやついたけどよ」

ライナー「…前線まで行ったがあっちはほとんどだめだ。自力で脱出出来なかった負傷者以外は手遅れだ」

コニー「ゴホッライナーは超大型みたか…?」

ライナー「…ああ、あんなにでかいんだ。嫌でも目にはいる」

コニー「……でかかったな」

ライナー「他の巨人とは比べ物にならないくらいな」

コニー「急に消えちまったけどどこいったんだろうな。ゴホッゴホッ」

ライナー「さあ、わからん」

コニー「エレンやアルミンから聞いちゃいたけど…あんなの倒せるのか?無理だろ?」

ライナー「……今は考えることよりも先にすべきことをやるべきだろう」

コニー「生存者の確認、遺体の処理、回収可能な備品探し……」

ライナー「そうだ」

コニー「オレ、こんなことするために兵士になったのか…?わかんなくなっちまった」

ライナー「………」

コニー「見たことがあるやつの死体を運んだんだ。ゴホッ、ガスが空でよ。でも食われてなくて…首に切り傷があった」

ライナー「自殺か」

コニー「…アルミンがな、ゴホッ」

ライナー「アルミン?」

コニー「食われるなら自分で死ぬ気だったみてえなんだ」

ライナー「そうか…」

コニー「ミカサが止めたけどオレ、わかるんだ。巨人はひでえ食いかたしやがるしよ」

ライナー「そうだな」

コニー「さっき運んだやつなんか…ゴホッゴホッッ!ウエッ!!」

ライナー「おっおい!大丈夫か!?」

コニー「ゴホッ…ハー…平気だ。吐き気止めのハーブかじってっから少しましなんだ」

ライナー「無理するな。水飲むか?」

コニー「や、いらねえ。…さっきのは…頭のかけらしかなかったんだ」

コニー「黒髪のやつってことくらいしかわかんなくってよ…最初はネズミかと思ったくらいだぜ」

ライナー「惨いな…」

コニー「オレもいつかああなっちまうのかな」

ライナー「憲兵になるんじゃないのか?」

コニー「わかんねえ。サシャともその話さっきしたんだけど憲兵になっても内地が安全とは限らねえだろ?」

ライナー「確かにマリアが破れて今回はローゼが狙われてたのは明らかだな。シーナも狙われてると考えるのが妥当だろう」

コニー「だよなー」

ライナー「……もし、この世界に壁がなかったらコニーはやりたかったことはあるか」

コニー「壁がなきゃ巨人に食われちまうじゃねーか」

ライナー「そうじゃなくてだな。もしも巨人がいなくて壁もなかったらの話だ」

コニー「うーん…壁は関係ねえけどフツーに暮らしてえなあ」

ライナー「普通に…か」

コニー「ああ、いつか結婚してよ。子供がとーちゃんいってらっしゃいっつて、昼は嫁の弁当食って…フツーだろ?ゴホッ」

ライナー「…は、いい夢だな」

コニー「オレんちは父ちゃんがけっこうカッコよくてよ」

ライナー「ほう」

コニー「馬の扱いなんかもうまくて、オレみたいにバカじゃねぇんだ」

ライナー「自慢のオヤジなんだな?」

コニー「ゴホッおうっ母ちゃんはよく笑ってたな。オレが兵士になるのは喜んじゃいなかったけどよ」

ライナー「そうか」

コニー「だからそんな風に暮らしてえ」

ライナー「………」

コニー「馬鹿にされんじゃなくて子供らに尊敬されるやつになって暮らせたらいいだろうな。ゴホッゴホッ」

ライナー「お前を、心底馬鹿にするやつなんかいないだろう。訓練も今回も本当によくやったしな」

コニー「ならいいけどよ…ライナーだったらどうしたいんだ?」

ライナー「……さあな。そろそろ行くか」

コニー「んだよ。ずりーな」


ライナー「昔からだ」

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ーー

ライナー「酷い顔色だぞ」

ジャン「…ライナーか」

ライナー「コニーが吐き気止めのハーブをもっ」

ジャン「マルコが死んだ」

ライナー「!」

ジャン「アイツ、右側が無くてよ…食われてた」

ライナー「マルコが………」

ジャン「ゴホッ本部の作戦時にはいたよな?」

ライナー「あ、ああ…」

ジャン「…クソッ!!いついなくなったんだよ!?」

ジャン「…マルコはいい憲兵になれたはずだ。ライナーもそう思うだろ?」

ライナー「そう…だろうな」

ジャン「オレなんかと違ってあいつは真面目で真っ直ぐだった。ゴホッゴホッ!覚えてるか?初めて立体機動を持ったときマルコはずっと眺めてた」

ライナー「ああ、あんまり見てると穴が開くぞって笑ったな」

ジャン「ゴホッ…あいつ、本当に心臓を捧げる気だったんだろうな。敬礼がきれいだって褒められた時は珍しく夜更かししてて…叱られて…」

「………」

ライナー「今…マルコは?」

ジャン「…遺品を家族に渡すために装飾品の確認中だ」

ライナー「装飾品?」

ジャン「マルコは装飾品なんかつけちゃいないだろうけどな…身元がわかりゃ装飾品や遺髪は家族にかえせるらしい」

ライナー「…駐屯兵には既婚者も多いからだろうな」

ジャン「ゴホッ…どれくらい死んだんだろうな?」

ライナー「さっき聞いた感じだと100は超えると言っていた」

ジャン「優秀だろうが劣等だろうが死ねば戦死者の一人って扱いになるんだぜ?はっ上位がくだらく思えるな」

ライナー「お前らしくないぞ。動揺するのはわかるが」

ジャン「ゴホッいや…落ち着いてる」

ライナー「そんなわけないだろう」

ジャン「そうか?今は怖いくらい静かだ」

ジャン「昔暮らしてた区がメチャクチャになって仲間が食われて…ゴホッゴホッゴホッ!あの馬鹿野郎は巨人で…考えるのも疲れちまった」

ライナー「そうか…ジャンはトロスト出身だったな」

ジャン「この先のパン屋のおやじも知ってるし、あそこに見える建物には昔遊んだやつが住んでたな」

ライナー「……なんの慰めにもならんかもしれんが、今のところ避難が早く済んだから民間人の被害は確認されてないそうだ」

ジャン「そりゃシガンシナの教訓でか?」

ライナー「らしいな」

ジャン「…ライナーにまで慰められるなんて相当ひどい顔してんだろうな?ゴホッ」

ライナー「なんだ俺が慰めたらおかしいか?」

ジャン「ライナー達のほうが酷かったんだろ」

ライナー「?なんの話だ」

ジャン「ああ?マリアの被害者だったよな?」

ライナー「……そうだな」

ジャン「…ハエが死体に卵生んでるだろ」

ライナー「ああ、ハエも蛆も酷いもんだ」

ジャン「人間から出た蛆を蜘蛛が食ってたんだ」

ライナー「蜘蛛が?」

ジャン「オレたちは…蛆みたいなもんなんだろうな」

ジャン「増えたら巨人を呼んで餌になる」

ジャン「生きてえ……!」

ライナー「………!」

ジャン「オレは…弱いんだ。食われたくない…」

ライナー「そう思うのは、お前だけじゃない筈だ」

ジャン「巨人なんて二度とみたくねえ……だけど」

「………」




ジャン「ライナー」

ジャン「お前から見てオレはまともか?それともおかしくなっちまってるのか?」


ライナー「ーーーまともだ。お前は、な」



.

ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー




.



サシャ「コニーはライナーに憧れてましたもんね」

コニー「なんで知ってんだよ!?」

ジャン「お前…気付かれてないと思ってたのか?やっぱり馬鹿なんだな」

コニー「うっせえ!他のやつらには言うなよな?」

ジャン「わかったわかった。気付いてない奴がいたら黙っててやるよ」

サシャ「兵長から大切なこれからの話ってなんでしょう?」

コニー「…さあな」

ジャン「あらたまるってことは大切な話なんだろ」

コンコン
リヴァイ「……入れ」




おわり

ありがとうございましたー

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