貴音「荒野の女王」(392)

貴音「らぁめんを一つ」

 その豊満な銀髪の女性はカウンターに腰を下ろしながら言った。
 黒いウエスタンシャツにホットパンツ、ブーツとおそろいのガンベルトには実弾と銃が差し込まれている。

真「困りますよお客さん。この店では帽子を脱いでください」

貴音「……お許しを」

真「と言われましてもこの店のルールで――」

 ボーイッシュな女の子は目を丸めた。

真「驚いたなぁ……まさか四条貴音さん?」

 貴音は無言で人差し指を唇に当てた。

真「あ、すみません。つい興奮しちゃって……。
 まあ、貴音さんなら逆に帽子を被っておいて貰った方がこちらとしてもありがたいです」

貴音「申し訳ありません。らぁめんを食べたらすぐに出て行きますので」

 貴音はカウボーイハットを深く被り直した。


真「だけど、有名人ってのも大変ですね」

貴音「あなたほどではないですよ。その年で立派に店を切り盛りしているとは……私にはとても出来ません」

真「僕は手伝いみたいなものですから。店長代理です」

貴音「店長とは代理で出来るものだったのですか……始めて知りました」

真「いや~、話すと長くなりますから簡単に言いますけど、とある娘さんと僕は友達なんです。
 その娘さんは自分の引っ込み思案を直そうと店でウエイターなんかやってるんですけど、僕はその都度付き合わされて……というよりか心配で手伝いをしていたんです。
 そしたらいつの間にか店長代理ですよ」

貴音「なるほど。ではあちらで平謝りしているのが例の娘さんとやらですか?」

 貴音が視線を向けた先ではショートボブカットの少女が、テーブル席の男に向かって何度も頭を下げてる場面が繰り広げられていた。
 どうやらうどんを男の頭へぶちまけたようで、それについて謝っているようである。
 男は騒ぎ立てることもしていなかったので、店の中にでもこれに気がついていない者が数名いた。


真「……やっちゃったかー。まあ、そうです。ちょっとした男性恐怖症で……。
 ああいったことで問題が起こったときに対処をするのも僕の役目ですけど、幸い感じの良さそうなお客さんでよかった。
 あれなら雪歩の良い練習相手になるでしょう」

貴音「……雪歩。萩原雪歩?
 ……なるほど。大会社の娘さんでしたか」

真「口を滑らしちゃったかな~。
 別にばれたらマズイというわけでも無いですけど」

貴音「しかし、飲食店は萩原組がたるき亭と連携して行っている事業のはず……引っ込み思案や男性恐怖症を治したいのであれば、萩原組の本業である建設関連の手伝いをした方が良いのでは?」

真「あんな場所に雪歩を放り込んだら死んじゃいますよ」

 真がそう言ったときカウンターの奥の暖簾から盆に乗ったラーメンが突き出された。
 屈強な腕だけがこちら側に出てきている。
 真はそれを受け取ると貴音の前にそれを置いた。

真「おまちどおさま。ラーメンです」

貴音「……今のは?」

真「……厨房です。雪歩は絶対に近寄らない厨房です」

貴音「……そうですか」


真「あっ、つい興奮してて忘れてましたけど、飲み物はどうします?」

貴音「水を」

 貴音はラーメンと水がそろうと箸に手を伸ばした。
 その時である。

ごろつき「おい、ねぇちゃん。そんなものに金を掛けるくらいなら断然こっちの方が良いぜ」

 薄汚れた服の男が酒瓶を片手に近づいて来たのは。

ごろつき「俺のおごりだ。飲めよ」

 そういって男はバーボンをなみなみ注いだグラスを貴音に押しつけた。

真「お客さん――やめておいた方が良いですよ」

ごろつき「黙ってろ」

 真はこの男が腰に引っ提げている物を見て一瞬で真意を悟っていた。
 ガンベルトに差してある銃。つまり、この男も名を上げたいだけの馬鹿であると。


ごろつき「俺の酒が飲めねぇっていうのか? 俺のおごりだぜ?」

 貴音はそんなことは眼中に無い様子でラーメンを啜り始めた。

真「貴音さん……」

貴音「これは素晴らしい味ですね。替え玉をしてもよろしいですか?」

真「いや、貴音さん……」

 ごろつきは貴音のラーメンの上で酒瓶を逆さまにした。

ごろつき「もっとおいしくしておいてやったぜ。さあ、食べな」

貴音「……二度目は無いですよ。
 さっさとこの場から失せて下さい……とうもろこしにも劣るゴミ粒に用はありませんので」

 ごろつきの顔に朱が差した。
 しかし、コレこそがもっともこの男が望んでいたことであった。

ごろつき「糞アマが……立てよ」


雪歩「こ、困りますぅ! 他のお客様に迷惑を掛けないで下さい!」

 ごろつきに雪歩が声を張り上げた。
 数メートル離れた場所から。

ごろつき「黙っとけ!」

雪歩「ひぃ!?」

真「っ! ちょっとお客さん! いい加減にしないと叩き出すぞ!」

 雪歩は怒鳴り声だけで後ろに蹌踉めいた。
 蹌踉めいて背中で後ろにいる人間とぶつかる。

P「おっと」

雪歩「ひぃぃぃ!?」

 雪歩はロングスカートの中から取りだしたスコップを凄まじい勢いで振り回した。
 スコップの先がPの喉元を掠めていく。

P「こ、殺す気か!?」

雪歩「す、すみません、すみません! 先はうどんを掛けちゃうし次はスコップで叩きかけちゃうし……こんな駄目駄目な私は穴を掘って埋まってますぅ!」

真「掘らないで! 直すの大変だから!」


P「俺も早く支払いを済ませたいし、穴を掘るのは後にして欲しいかな」

雪歩「ご、ごめんなさい」

P「なかなかエキサイティングな店だったよ」

 Pはそう言うと貴音の隣で仁王立ちしている男に目を向け、驚いたような顔をした。

P「まさかこんな場所で会えるなんて……こんにちは、ファンなんです」

 Pはそう言いながらごろつきの手を取り、大きく上下させる。

P「光栄だな~。噂は聞いてますよ」

 ごろつきはまじまじとPを見つめた。

ごろつき「お前、まさか765プロのPか?」

P「そうですが」

ごろつき「離せこの玉無しやろう! チキンがうつっちまう!」

 ごろつきは乱暴に手を振りほどいた。

ごろつき「それに自慢じゃ無いが俺は噂になるようなことなんて何もしてないぜ。
 これから大物になるがな!」


 今度はPがまじまじとごろつきの顔を見つめた。

P「……人違いだったか……よく見れば顔はふやけてるし腕は棒切れみたいだ。
 何で見間違えたんだろ?」

 ごろつきはPの言葉を理解しかねたようにぽかんとした。
 Pはそれを尻目に上着を脱ぎゆっくりとごろつきの顔を拭き始めた。
 今の時代には珍しいスーツである。

P「顔が汚れてる。だから俺が見間違えるハメになるんだ」

 うどんの汁をたっぷりと吸った上着でごろつきの顔を拭く光景を周りの者は固唾を呑んで見ていた。

P「これで綺麗になっただろ……ん? あまり綺麗になってないな」

 ごろつきの顔から血色が完全に失せ、素早く銃に手が伸びた。
 次の瞬間には銃声が店内に響き渡る。

ごろつき「くっ……そがぁ!!」

 ごろつきが手を押さえて叫んだ。
 店の中で火を吹いた銃は一丁。
 貴音の手にある物だけであった。

P「……驚いた。俺の脇腹に穴が開くんじゃないかと思ったよ。
 良くそこから狙えたな」


 貴音の撃った銃弾はごろつきがガンベルトから銃を抜いた瞬間に、その手を貫いていた。
 一瞬の早業であるが、その正確さも驚嘆に値した。

貴音「この距離ならば目を瞑っていても当たります」

真「四条貴音になにいってるんだよ。当然じゃ無いか」

P「四条貴音? あの四条貴音か?」

 Pはそう言いながら振り返り、貴音を見て驚きの表情を浮かべた。
 ごろつきに見せた驚きの表情とは違う。
 軽薄なものではなく迫真のものであった。

P「……シルバークロス・ピースメーカー……」

 Pが見ているのは貴音が握っている銃であった。
 銃身に細かな装飾がしてあり、銃把には見えにくいが銀色の十字架が刻み込まれているその銃を見て驚愕している。
 貴音は一瞬眉根を動かし、銃を回転させるとガンベルトに差し込む。

貴音「なぜ、この銃の名前を?」

P「その銃は有名だからな。知らない奴は少ないだろ」


貴音「なるほど。……しかし、この銃を見てその名を口にした者は少ないですよ?
 なぜこの銃がシルバークロスだと分かったのです?
 銃把もろくに見えてなかったでしょう」

P「マニアなんだ」

貴音「……なるほど」

ごろつき「こ、この……」

 ごろつきがPの背後でナイフを取り出し、それを振り上げた。

真「お帰り下さい!」

 それを見た真がカウンターを飛び越えて蹴りを延髄に叩き込む。
 ごろつきは白目を剥くと床に崩れ落ちた。
 床に完全に崩れ落ちるのと同時に、暖簾から三人の屈強な男が飛び出してくる。

屈強な♂×3「そいやっ!!」

 雪歩はもちろんだが、それを見た店の客たちはビクリと肩を振るわせた。
 三人の男はごろつきを抱えるとそとに放り出し、風のように厨房へと戻っていった。


P「ありがとう。助かったよ」

真「あんまり助けたくなかったんだけどなぁ~」

P「嫌われてるな」

真「そりゃそうでしょ。女の子に闘わせてる765プロのプロデューサー……支払いを済ませたら早く出てってよ」

P「分かったよ。その前に……」

 Pは名刺を貴音に差し出した。

貴音「これは?」

P「勧誘だ。765プロで一緒にやらないか?」

貴音「一応、貰っておきます」

P「真面目に考えてくれよ。もしその気になったらそこに書いてある番号に連絡をし――」

 Pはそこで言葉を切った。
 切らざるを得なかった。後頭部に感じた鉄の感触はどんなお喋り人間も黙らせる地元の民間療法である。
 それが二つもとあってはPも黙らざるを得ないだろう。


美希「また貴音が変なのに絡まれてるの」

響「決闘で名を上げたい方か? それとも言い寄ってる方か?
 こういう手合いはもういい加減にして欲しいぞ」

貴音「響……美希……」

P「いきなり銃とはご挨拶だな」

美希「こういうのは飽き飽きしてるから一々相手をするつもりはないの」

貴音「美希、この方は765プロのプロデューサーです。別に決闘をしようとしたりしていた訳ではありません」

美希「765プロの?」

 Pは後頭部の銃が撃鉄を上げるのを肌で感じた。

P「どういうことかな」

美希「こういうことなの」

P「そういうことか」

響「それはさすがに不味いさー。
 賞金首ならともかく一般人だからね」

美希「だってむかつくの」

響「分かるけど……」


P「……これ以上ここにいると血を見そうだな。
 俺は見られないだろうけど」

貴音「そうですね」

P「さっさと退散するよ。先の話、良く考えて置いてくれよ」

 Pは金をカウンターに置くと両手を挙げた状態で店を出た。

雪歩「……今の人って?」

真「765プロのプロデューサーだよ。雪歩は知らないの?」

雪歩「765プロなんて始めて聞いたよ」

真「765プロって言う組織的に賞金稼ぎやってる会社だよ。小規模だけど政府公認のね。
 先の男はそこでプロデューサーをやってるんだ」

雪歩「賞金稼ぎさんだったんだ」

真「……いや、あいつは違うよ。
 賞金首の情報を集めたり、それを捕まえるお膳立てをするまでがプロデューサーの仕事だから。
 実際に賞金首を撃ってるのは会社に所属してる女の子だって話だ。
 自分は安全な場所でのうのうとやりながら女の子に闘わせてるんだよ。あいつは」


雪歩「そんな人には見えなかったけど……助けてくれたし」

真「はぁ? いつそんな――」

美希「ミキ的にはその話はもうどうでも良いかなー。
 とりあえず、水とおにぎりが欲しいの」

真「は、はい。急いでお持ちします」

響「こっちは水と食べ物は適当にこれで……」

 響は硬貨をカウンターに並べた。
 そして、雪歩に視線を向ける。

響「ああいった手合いに騙されたらだめだぞ。
 あの男がやってることが全てだぞ。どんなにいい人に見えても自分は闘わずに女の子に闘わせてるってのは事実だからね。
 最悪なタイプの臆病者さー」

貴音「……765プロのプロデューサー話で聞いていただけの時はそう思っていましたが……果たしてそうなのか……実際に会ってみて分からなくなりました」


響「どういうこと?」

貴音「先程もプロデューサーがわたくしに絡んでいた男を仲裁してくれた……ようにも見えました。
 かなり無謀というか……自分が代わりに喧嘩を買って出るようなマネをして」

響「……ごろつき相手じゃね……」

貴音「相手は銃を持っていましたが、プロデューサーは持っていませんでした」

響「それって……」

響&美希「ただの馬鹿だよ」


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 Pは太陽が照りつけ、埃っぽい街を歩いていた。

春香「プロデューサーさん! どこに行ってたんですか! こっちですよ、こっち!」

千早「自分で集合時間を指定しておいて遅れるなんて」

P「すまんすまん。ちょっと銃口を突きつけられる事態になってな」

 Pは日陰に佇む少女二人に近づいていった。

春香「え? ……どこでですか?」

 春香は肩に担いだライフルを指で叩きながら言った。

P「問題を起こそうとするなよ、春香。この通り無事だったんだから」

千早「……くさ……プロデューサーくさいです。なんか辛いような甘いような独特な匂いが……」

P「多分店でうどんをぶっかけられたからだな」

千早「やっぱ一言いいにいった方が良いんじゃないですか?」

P「千早、お前まで問題を起こそうとするな。うどんの件は事故だから。
 それに……珍しい奴にも会ったんだぞ」

春香「珍しい奴?」


P「あぁ、今をきらめくフェアリーの三人にな」

千早「フェアリー? 確か3人組の賞金稼ぎですよね」

春香「早撃ちで有名な四条貴音と……あと二人はどんなのでしたっけ?」

P「さぁ? あまり興味が無かったから俺も詳しくない。
 ……興味は湧いたけどな」

春香「……私も会ってみたくなりました」

千早「ちょっとくらい挨拶をしておくべきなのでは?」

P「おまえらの挨拶は洒落にならん。
 とりあえず会社に戻るぞ。社長に報告をしておきたいこともあるし」

 Pはそう言うと近くに繋いであった馬に飛び乗った。
 春香と千早もそれにならう。
 3匹の馬が駆ける道はどこまで行っても埃っぽく寂れていた。
 地球規模の天変地異は日本のみならず世界各国を衰退させていた。
 経済活動は縮小するところまで縮小し、日本では国民の8割が農業に従事している状態である。
 そこまで低迷した日本は当然従来の公共サービスを提供出来ずにいた。
 とりわけ、深刻な人員不足から無法者を取り締まることが出来ず、ついには賞金首制度が採用されるにまで至ったのだ。
 そして生まれたのが賞金首を狩ることを生業とする賞金稼ぎであった。
 今の日本ではこの賞金稼ぎと無法者が鎬を削り合っている状態なのである。


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 765プロ事務所

P「ただいま戻りました」ガチャ

小鳥「お帰りなさい。今回は随分と長旅でしたね」

春香「そのかいはありましたよ! 見て下さい、小鳥さん!」

 春香は袋を掲げて見せた。

春香「惚れ惚れとする重量ですよ」

小鳥「随分と稼いだのね」

千早「稼げた割に楽な仕事でした」

春香「私は割と大変だったよ……銃弾が脳天を掠めたときは禿げてないか何度も確認したもん」

小鳥「詳しく聞きたいけど、まずは食事にしたいでしょ? お風呂はすぐに沸かすから」

春香「お願いします! お金はあるのに途中、ろくな物を食べる場所が無くて……お腹がぺこぺこなんです」

P「俺は先に社長の所に行ってきます。いますよね?」

小鳥「いますよ。社長室に」


P「二人は先に食べててくれ」

千早「待っておきますから早く戻ってきて下さい。
 ご飯は出来るだけ大人数で食べた方がおいしいですから!」

P「了解」

 Pはそう言いながら奥の社長室へと向かった。
 ノックをすると返事を待って入室する。

P「戻りました。……って律子もここにいたのか」

 椅子に座っている高木社長と机の前に立ている律子が同時にPを見た。

律子「なんですかその言い方、いたら悪いみたいな」

P「そうだな。邪魔だからちょっと出てくれないか?」

律子「ずいぶんな言い方ですね」

P「ちょっと重要な話なんだ。今度食事をおごるからそう怒るなって」

律子「別に怒ってませんけどね。久々にあった同僚に向かってそれはないでしょう」

 律子はブツブツと文句を言いながら部屋を出て行った。


社長「キミにしては紳士でない対応じゃ無いか。よっぽどの急用があるのかね?」

P「そうなんです。それも社長二人で内密な話があるんです」

社長「よしてくれよ、こんな密室で男二人での熱い雰囲気は――」

P「シルバークロス・ピースメーカーを見ました」

 社長はそれを聞くと黙り込んだ。

P「アレは本物でした」

社長「今、それはどこに? 奪ったりはしなかったのかね?」

P「持ち主はフェアリーの四条貴音でした。悪そうな人間でも無かったので奪いはしませんでした。
 それに、あの子から銃を奪うのは体に3カ所ほど穴が開くのを覚悟しないといけないので」

社長「四条貴音……早撃ちで有名なあの四条貴音かね……ピースメーカーを持つ人間ってのは早撃ちが好きだねぇ」

P「一応勧誘もして情報屋にあとをつけさせてます。
 今後の動向次第でシルバークロス・ピースメーカーをどうするかを決めます」

社長「名銃と呼ばれるピースメーカーシリーズは4丁……どれも不遇なガンライフを送っているとしか言いようがない。
 ……シルバークロスを除いてはね」


P「はい。シルバークロスだけは他のピースメーカーシリーズと違い巨悪に立ち向かった逸話が多い銃です。
 四条貴音がそれを持つに相応しい人間ならば良いですが、もしジンクスに傷がつくような人間ならば……その時はその時です」

社長「ジンクスといえども大切にしていきたいからね。得に、こんな世の中では」

P「とまあ、報告は以上です。今回儲けた分は音無さんに計上して貰うのでそちらに聞いて下さい」

社長「分かった。
 それと、今回はもう次の仕事が用意してある。
 律子くんが持って来たとびっきりでね。どうしようか悩んでいたところなんだよ」

P「悩むとは?」

社長「私の古い友人が悪さをしようとしているようでね。
 少し手に余るかも知れないから手を出すのは控えようと思ってたところなんだ。
 この仕事に手をつけるかどうかはキミの判断に任せようと思う」

P「……状況次第ですね。とりあえず、その仕事の内容を詳しく教えてもらえます?」


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 Pはこの日、一人で町中をうろついていた。
 飲食店に顔を覗かせては外に出るという行為を繰り返している。
 そして、またもやPは飲食店に入ると、今度は回れ右をせずにゆっくりと部屋の隅のテーブルに近づいていった。

P「また会ったな」

貴音「……随分と早い再会になりましたね。
 まあ、予想していましたが」

P「予想してたか」

響「げっ、765プロの……」

美希「消えるの。おにぎりが不味くなるの」

P「まあまあ、ここのお代は俺が持つから話をするくらいは良いじゃないか」

美希「結局座ってるの……」

響「図々しいにも程があるぞ」

貴音「始めに聞いておきますがここで会ったのは偶然ですか」

P「予想していたってことは俺がつけてた情報屋はばれてたってことか……白状すると偶然じゃ無い」


響「あれってそっちの差し金だったのか。相当いらいらしたぞ」

美希「そんなのいた?」

響「美希はほとんど寝てたから知らないだろうね」

P「まあ、ここで会ったのは偶然じゃ無いが、この街に来てるって知ったときは縁があるって感じたぞ。
 あの話で良い答えが聞けるかと思って期待したりしてるんだが」

美希「あの話?」

P「あれ? 貴音は勧誘の話をお仲間にしてないのか?」

響「勧誘!? き、聞いてないぞ!
 貴音、どういうこと!?」

貴音「そんな話もありましたね。すっかり忘れていました」

P「その様子じゃ勧誘の話は期待しない方が良いようだな」

貴音「わたくしはこの三人でやるのが気楽で良いので」

響「だ、だよね。
 吃驚したぞ。おいてけぼりをくらうかと思って」

P「響は心配屋だなぁ」

響「うるさいぞ! それになんでさり気なく名前を読んでるの!? 教えたっけ!?」


P「俺のことはPって読んで良いよ」

響「な、馴れ馴れしい……」

P「HAHAHA!」

ハム蔵「ヂュ!」

P「HA?」

 Pは響の頭に乗っかっている小動物をまじまじと見た。

P「……言いにくいけど……ネズミが頭に乗ってるぞ」

響「ネズミじゃ無い! ハムスターだぞ!」

P「ネズミだろ。
え? 飼ってるの? それ」

響「ハム蔵は自分の大切な家族だぞ」

P「ネズミがペットとか斬新だな」

響「だ、だからネズミじゃないんだって!」


P「具体的に何が違うんだ?」

響「しっぽの長さとか……そもそも愛らしさが違うぞ。どうやったらネズミと見間違えるの?」

P「へぇ、確かによく見たらネズミとは違った愛らしさがあるような気がする」

響「でしょ!」

P「食べ物は穀物とか?」

響「うん。得にひまわりの種なんか好きなんだぁ」

P「おいしいよな。ひまわりの種」

響「意外と人間も食べれるよね。あれ」

P「でもハムスターを連れて旅なんかしてたら大変じゃないか?」

響「なにが?」

P「上空から鳥が狙ってたりするだろ。心配にならないのか?」

響「来たら分かるし。ご飯も増えて一石二鳥さー」

響はちょろいな


美希「響……まんまとあっちのペースにのせられてるの」

響「はっ!? そう言う意図が!?」

P「ないよ。もう勧誘は諦めたし」

響「そうなのか? 粘らないんだね」

P「粘ってどうにかなるような相手だとは思ってないからな」

貴音「粘る必要も無いでしょうしね」

響「どういうこと?」

貴音「恐らくこの方の目的はわたくしたち……と言うよりもわたくしの持っている銃です」

 Pが座っているテーブルの周りの空気が張り詰めた。

響「貴音が持ってる銃のことを知ってるのか……だったら近づいてくる理由も分かるぞ」

P「貴音の持ってる銃に興味が無いと言ったら嘘になるがな。
 今日は別件なんだ」

貴音「興味があると言うことは否定なさらないのですね」

P「興味大ありだ。前も言ったけどマニアだからな。
 知ってるだろ平和をもたらす銃、ピースメーカーの話は」

貴音「もちろん」


P「ピースメーカーと言ったらシルバークロスのことを差すことが多い。
 でも、ピースメーカーはシルバークロスの他に3丁あるって知ってたか?」

貴音「そうなのですか?」

P「あぁ、他の三丁はピースメーカーの名前に相応しい働きをしてないから有名じゃ無いけどな」

貴音「で、その銃マニアであるあなたはこの銃をどうしようと?」

P「シルバークロス・ピースメーカーは平和を作る銃だ。
 貴音がその銃を持つに相応しくないようだったら奪ってもっと相応しい人間に与えようと思ってる」

 店全体の空気が凍り付いた。

響「……随分とはっきりと言ったね」

P「冗談だからな」

響「冗談なの!?」

P「だって丸腰の俺にそんなこと出来るわけ無いだろ。常識的に考えて」

美希「やりようはいくらでもあると思うけど、確かにそこの人じゃ無理かな」

え…ピースメーカー?


P「そうそう。俺はシルバークロスの動向が気になってるだけだから。
 だってシルバークロスって今までもデカイ仕事に携わってきてるだろ?
 シルバークロスを追っていたら俺もデカイ仕事に一枚かめるかも知れないし」

響「うわー、凄くゲスっぽいぞ……」

美希「全くその通りなの」

P「まあまあ、そう言うなって。
 だから今回はその将来に対するお礼ってことでこっちから仕事を持ってきたんだ」

美希「いらないの。仕事には困ってないし」

P「他のピースメーカーをお目にする機会かもしれないのに?」

美希「どういうこと?」

P「厳密に言えばピースメーカーじゃないんだけどな。シルバークロス・ピースメーカーの生みの親は他にも3丁の銃を作ったってのは話したよな。
 その三丁っていうのはホワイトクロス・ピースメーカー、ゴールデンクロス・ピースメーカー、それに加えてブラッククロス・ピースブローカーってのがあるんだ」

美希「最後のだけ変な名前だね」

P「ブラッククロス・ピースブローカーは悪名が高い銃でな。制作者が銃の名前にバランスを持たせようとしてつけたって話で、様々な悪事に携わってきたとされる銃さ。
 今回、そのブラッククロスにお目にかかれるかも知れない仕事がこっちにはあるんだ」


貴音「……そのような仕事……どこから?」

P「何というか……ブラッククロスの所持者はうちの社長の古い友人でね」

美希「やっぱ765プロは悪党なの」

P「待て待て、うちは悪事とは無縁の会社だぞ。
 古い友人といってもつるんでいる訳じゃ無いしな。とっくの昔に袂は分かれた。
 ……黒井崇男って知ってるか?」

美希「……大物なの」

響「961プロの社長だよね。賞金稼ぎが表事業だけど裏でこそこそやってるって話があるぞ」

P「今回の仕事は黒井崇男が主犯」

響「え」

P「銀行を襲うらしい。手下20人を使って」

貴音「たしか765プロの総員は7人でしたね」

美希「ミキたちをいいように利用しようとしてるの」


P「だって無理だろ765プロだけじゃ。使える戦闘員となったら3人……その内一人は行方不明だし……。
 報酬はこっちが前払いで払う依頼料と銀行強盗を実行する奴らの中に手配犯がいるだろうから、そいつらを賞金に変えてその分の6割がそっちってのはどうだ?」

美希「7割よこすの」

P「勘弁してくれよ……最初からこっちはギリギリ譲歩なんだから……」

貴音「何故そこまで譲歩するのですか?
 実質、こそ分だと弾代におつり程度の儲けにしかならない可能性もあるでしょう」

P「社長たっての願いだからな。無碍には出来ないってのがある。
 それと、あわよくばブラッククロスをゲット出来るかなーと思って」

貴音「ブラッククロスに興味が?」

響「悪の銃に興味を持つなんて……」

P「ブラッククロスをハンマーで叩き潰すのが夢なんだ。
 で、この話にのるか?
 20人を相手取るといっても全員を仕留める必要は無い。
 狩りやすい奴を狩って小遣い稼ぎのつもりでも良いんだ」

貴音「わたくしは別に構いませんが」

荒野には口笛が似合うぜ


P「本当か! 銀行は隣町のやつだけど結構距離があるんだ。早めに移動して――」

美希「ちょっと待ったなの」

P「どうした?」

美希「貴音は賛成したけど、ミキ的には765プロと共闘戦線なんてごめんなの」

貴音「しかし、銀行が襲われるのを黙ってみておく訳にはいかないでしょう」

響「銀行が襲われる前にその話を触れ回れば事前に防げるんじゃ無いか?」

P「ああいった輩は掴まるまで犯罪を繰り返すよ。実行日が変わるだけさ。おまえらもこんな仕事をしてるんだからそれは分かるだろ?」

美希「うーん。でもこのままとんとん拍子に話が進むのは面白くないかなー」

P「お前なぁ……」

美希「あっ! 丁度いいの! 今、面倒臭そうな人が近づいて来てるからそれを追い払って欲しいの。それが出来たら今回の仕事を受けて上げる!」

 美希はそう言うとテーブルに男が一人近づいて来た。

P「面倒臭そうなやつだって良く分かったな」

美希「こう言った手合いはなれてるから雰囲気で分かるの」

あずさんか…
Pは大久保町の決闘みたいなラッキーガンマンな可能性も有るかな


男「よう。あんた四条貴音か?」

P「俺は違いますけど?」

男「……お前に聞いちゃいねぇよ。大体、てめぇが貴音なんて洒落た名前だったら俺は小梅でもおかしくねぇぜ」

P「いや、それはおかしい」

男「良いから黙ってろ。面倒なことになるぜ」

P「もうなってるよ。……お前がな」

 男がPに体を向けようとしたとき、Pは声を張り上げた。

P「動くな! ……面倒なことになってるのが分からないなら教えてやるよ。
 お前の右の金玉を机の下から銃が狙ってるぞ」

 Pは机に体を寄せて片腕を下に隠していた。

男「……てめぇ」

P「両手を上げろ弾で玉をはじかれたくなかったらな」

 男はゆっくりと両手を挙げた。


P「悪いね。また日を改めてくれよ」

 Pはそういって出口に向かって顎をしゃくった。

男「……覚えとけよ」

P「その台詞、聞き飽きてるよ」

 Pは男が店を出て行くのを見送るとほっと溜息を吐いた。

P「……寿命が縮んだよ。
 でも、これで仕事を手伝ってくれるんだろ?」

美希「……ますます、やる気は無くなったけど約束だから仕方が無いの……」

響「はったりだけで乗り切るとか……」

P「だって俺銃持ってないし」

響「相手が銃を抜いたらどうするつもりだったんだ?」

P「助けてくれよ」

響「絶対に助けないぞ」

P「そう言っときながら困ってる奴は見捨てては置けない性分だろ? 分かってるよ。土壇場で響が俺を助けてくれるのは」

響「う、うざいぞ」


P「まあ、とりあえず隣町に移動してくれ。そこで落ち合おう。
 なぁに銀行強盗20人を相手取るだけの簡単なお仕事です」

貴音「分かりました」


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P「という訳で意気揚々と店を出たら銃口を突きつけられてる。
 どういうことだ?」

男「自分が蒔いた種だろ」

P「まあ、待て。良く見てみろ。俺は丸腰だぞ。
 丸腰の人間を撃ったとあっては、お前も立派な賞金首の仲間入りだ。
 俺のお仲間にケツを追っかけられたくは無いだろ?」

男「……どこかで見たことがあると思ったら、765プロのプロデューサーか……。
 てめぇの頭を弾いたら俺は人気者になるんじゃねぇか?」


P「それはない……ともいえないな。
 まあ、あと三秒以内に決めてくれ。銃を下ろすか、引き金を引くのか。
 3――」

 Pがそこまで言ったとき、店からフェアリーの三人が出てきた。

P「よう」

美希「馬鹿なのwww!早速報復されそうになってるのwww」

響「じゃーねプロデューサーwww」

P「……いちごババロア……高級なひまわりの種……」

美希&響「!?」

P「助けてくれないか」

美希「い、いちごババロアは超レア品なの。おいそれと手に入るような物じゃないの」

響「高級ってなんだ? 普通のひまわりとどう違うんだ!?」

P「俺なら用意出来る! 出来るんだ!」

美希&響「……そのクズを離せクズ!」

P「ってことであっちと闘ってください」

男「……お前最低だな」


P「最初からフェアリーが目的だったんだろ? なら良いじゃないか」

男「四条貴音が目当てだったんだけどな」

P「大丈夫。他の二人でも十分名は上がるよ。勝てばだけど」

 Pは銃口で後頭部を小突かれ解放された。

P「え? やるの? いきなり超ダッシュで逃げよう」ヒソヒソ

 美希と響に近づいたPが小声で言った。

美希「つまらない冗談は嫌いなの。いちごババロア絶対に用意してね。嘘ついたら本気で怒るよ?」

P「用意するよ。別に闘わなくても」

美希「そうなの?」

響「でも、ここで逃げたら良い恥さらしだぞ」

美希「だったら響がやるの。ミキはここで観戦してるから」


P「いや、行くんなら美希にしてくれ」

美希「どうして?」

P「あいつ下に鉄板かなにかを着てる」

美希「……あはっ! いちごババロアの件と言い、ミキ達のこと調べたんだね」

P「ちょっとな」

美希「いいよ。やってあげる」

 美希は通路に出ると男と対峙した。
 道行く人が通路の脇に寄り、二人を見守る。
 賞金稼ぎどうしでの決闘は度々起こるので、みんな慣れた様子であった。

男「俺はデュエリストだ。勝つことだけに拘って生きてきた俺には勝てねぇよ」

貴音「でゅえりすと?」

 遠巻きに見ていた貴音が首を捻った。

P「賞金稼ぎで名を上げたやつらとの勝負を生業とする奴らのことだな」

貴音「それは何というか……迷惑な話ですね」

P「……そうだな」


響「そんなことしてる暇があったら賞金首の一人でも捕まえて欲しいぞ」

男「俺が一日ガンベルトから銃を取り出して構える回数を知って――」

美希「あふぅ……もうお話は良いの。早く始めようよ」

男「……おい765プロの! 合図を頼む!」

P「コインで良いか?」

男「あぁ」

 Pはコインを親指の上に乗せた。

男「……その綺麗な顔をフッ飛ばしてやる」

美希「キラキラしてるミキを見せて上げるね」

 Pがコインを弾く。
 高く舞い上がったコインは二人の中間距離あたりに落下し始めた。
 美希が銃に手を伸ばす。銃は標準的なシングルアクションのリボルバーである。
 コインが地面にぶつかり音を立てた。
 二人の手元が一瞬にして銃を引き抜いた。

響「やっぱ美希の方が早いぞ」

P「でも、これからが問題だ」


響「男の方が着込んでる鉄板のこと? そんなもの問題にならないぞ」

 銃声が空に響いた。
 対峙していた片方が地面に崩れ落ちた。

男「な、なんでだぁ!」

 男は肩から溢れる血に驚愕していた。

男「拳銃で貫通出来るような鉄板じゃ無かったはずっ!」

美希「デュエリストを名乗ってるのにそんなものに頼るなんて恥ずかしいの」

男「う、うるせぇ! 勝つために研究に研究を重ねるのがデュエリストだ。
 お前達が手や足しか狙わないのは知ってたから入念に準備してきたのに……あ、あの野郎……不良品を掴ませやがってぇ!」

P「いや、鉄板に欠陥は無かったはずだ。拳銃の弾一発程度になら耐えていただろうな。
 でも、それが三発とあってはさすがに耐えられなかったんだろう」

男「どういうことだ?」

P「言った通りだが? 同じ場所に3発撃たれたから弾が鉄板を抜けた。
 それがお前の敗因。その辺りは研究しなかったのか?」

男「……あるわけ無いだろ……そんなことがあるわけ無いだろ!」


P「俺も吃驚したよ。噂には聞いてたけど本当だったとは……ワンスポットトリプルショットだっけ?
 始めに右手で撃鉄を起こし一発、左手を振り下ろして親指で撃鉄を弾いて一発、さらに小指で弾いて一発。合計三発を同じ場所に叩き込む。早すぎて銃声が一つに聞こえる程だ」

男「ありえねぇ……そんなものただの噂だ……そんな技……あるわけ……ねぇ」

 男は地面に俯せに倒れた。
 同時に、周りの見物人が歓声を上げた。

美希「どう? ミキ、キラキラしてた?」

P「あぁ、炸薬でな」

美希「約束のババロアお願いね!」

響「高級ひまわりの種も」

貴音「らぁめんも」

P「なんか約束してない物まで増えた気もするけど……問題は無いか。早速その約束を果たそう」

 Pがそういってその場をあとにしようとしたとき、辺りがざわついた。


やよい「うぅー、邪魔ですよー。みんな退いてくださーいっ!」

 ポニーが猛スピードで通路を駆け抜け、それを避けようとちょっとして混乱が起こる。
 ポニーはPの目の前辺りでとまった。

やよい「おはようございますっ! プロデューサー!」

P「おはよう、やよい」

貴音「やよい?」

P「保安官のやよいだよ」

やよい「いぇい!」

貴音「……敏腕と噂の保安官がまさかこんな子供だったとは……聞いていた噂だと2メートル超えで顔にさんま傷のある女性だと……」

P「だれだよそんな適当なこと言った奴。どう見ても天使のやよいをそんな化け物と見間違えんな」

やよい「うっうー!」

P「うっうー!」

響「うわぁ……」


やよい「所でプロデューサー! この辺りで銃声が聞こえたんですけど何があったんですかぁ?」

P「すまん。それ俺たちだ。あそこに転がってるのと決闘した」

やよい「駄目ですよー。放置してたら」

 やよいは男に近づくと抱き起こし、ポニーに乗せようとする。
 しかし、腕力不足でいつまで経ってもポニーの背中に乗せれずにいた。
 Pはそれをニヤニヤ笑いながら見ている。

P「見てみろよ。可愛いだろ?」

貴音「……果たして765プロと一緒に仕事をすると言う選択は正しかったのか……不安になってまいりました」

響「……変態だぞ」

美希「どん引きしたの」

 やよいは結局周りの人間の手を借りてポニーの背中に男を乗せることに成功した。

貴音「しかし、あの娘がかの有名な高槻やよいだとは……まことなのですか? 信じられません」

P「まことですよ。この街の平和を守り、悪党を薙ぎ倒してる張本人です」


貴音「では、噂に聞くHighTouchという銃技……あれもまことなのですか?」

 Pは苦笑した。

P「始めて聞いたよ。まあ、やよいの銃の撃ち方は少し独特だけどな」

やよい「プロデューサーさん。新しい手配書出ましたけど今からこっちに寄ります?」

P「またあとにするよ。仕事が詰まってるし。
 ……そうだ、今から伊織の所に行くんだけど一緒に行くよな? その男もいることだし」

やよい「はいっ! でも、伊織ちゃんの所に行くんだったら初めからこの人を連れて行ってくださいよー!」

P「うっうー! ごめんなさーいっ!」

響「気色悪い物まねはやめるさー!」

貴音「正気の沙汰ではありませんね」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


P「ってことで、ラーメンといちごババロアと高級なひまわりの種。よろしくぅ!」

伊織「消えなさい」

P「いや、そこを何とか!」

伊織「……あんたここをどこだと思ってるの?」

P「水瀬財閥本社……の中にある伊織お嬢様の休憩室」

伊織「分かってるじゃ無い。だったら大人しく飲食店にでも行きなさいよね」

P「ラーメンは外でも簡単に食べられるだろうけど、いちごババロアと高級ひまわりは難易度が高い。伊織に何とかして欲しいと思ってる」

貴音「……やはり無理があるのでは?
 水瀬財閥と言えば海水を真水に変える技術で一世を風靡している会社ですが、飲食店を経営しているといった話は聞いたことがありません」

P「お嬢様の部屋には何でも揃ってるんだよ。
 それにここ以外でいちごババロアや高級ひまわりの種の調達とか……何週間かければいいんだ?」

伊織「何週間でも何ヶ月でもかけて調達しなさいよ」

P「そこを何とか!」


伊織「……大体失礼よ。いきなり押しかけてきてラーメンをだせだのひまわりの種をだせだの……そこにいる三人のためでしょ?
 何が目的よ」

P「命を助けられたお礼」

伊織「……戻ってきたと思ったら何でそんな事になってるのよ」

P「こいつらフェアリー。で、一緒に飯を食べてたら変なのに絡まれた」

伊織「自業自得じゃないの?
 どうせ鼻の下伸ばしてだらしない顔をしてたんでしょ。そんなんだから小物に絡まれるのよ」

P「鼻の下なんて伸ばしてない。……伸ばしてないって!」

伊織「なんで二回言ったの?」

P「大事なことだから。仕事の話だったし鼻の下は伸びてなかったはずだ。たぶんな」

 伊織は盛大に溜息を吐いた。

P「伊織にしか頼めないんだよ。お金はちゃんと払うからさ……どうせ苺とか生クリームも完備してるんだろ? その材料を使ってちょっと俺を助けてくれれば良いじゃないか」

美希「そうそう。そこの人もこれだけ言ってるんだからお願いを聞いて上げなよ。
 えーっと、でこちゃん」

伊織「でこちゃん言うな! 私には伊織って名前があるのよ!」


P「次の仕事でこいつらに手伝って貰わないといけないし、頼むよ。
 ここでこいつらの協力が得られないことになったら俺の体に穴が開くかも……」

伊織「だったらそんな仕事やめてうちのビルで清掃員にでもなったら?」

P「弾丸が飛び交う中で格好つけるのって……最高に面白いじゃん?」

伊織「体に穴が開いても仕方が無い人間の見本ね」

P「…………やよいも来てるんだ」

伊織「え?」

P「下の双海病院に。ババロア食べさせてやるって……約束しちゃった……」

伊織「卑怯よ!」


P「すまんな伊織。
 というわけで、いちごババロア8個とラーメン8杯、ひまわりの種一袋用意してくれ」

伊織「多いわよ!」

P「だって俺と伊織とフェアリーの三人、やよいと双海病院の双子もくるだろ」

伊織「……分かったわよ……分かったわよ! 大人しくまってなさい!」

P「さすが伊織! デコにキスして良いか?」

伊織「ばばば馬鹿なんじゃないの!?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

いおりん可愛すぎる


美希「ま、まさかこんなところでいちごババロアにありつけるだなんて思えなかったの」ジーン

 美希はいちごババロアを口に運びながら感涙していた。

やよい「こんな物がこの世に存在していただなんて……感激ですっ!」

伊織「やよいならいつでも来ても良いのよ」

P「やよいには甘いな」

伊織「だってやよいは私の友達だもの」

P「俺も友達でしょうが!!」

伊織「ん? いや……違うけど……」

P「嘘だといってくれよバニーちゃん……」

 Pは悲しそうな目で伊織の膝に乗っている兎の人形を見た。

伊織「うさちゃんよ! バニーちゃんじゃ無い!」


貴音「水瀬財閥に是非とも飲食店を開いてもらいたいものですね。このらぁめんは絶品です」ズルズル

響「どうハム蔵。高級ひまわりの味は」

ハム蔵「ヂュ!」

響「やっぱひと味違うのかぁ」

真美「兄ちゃん! こんどの旅はどうだったの?」

亜美「武勇伝を聞かせて→!」

P「うむ。春香がカウンタースナイプされたんだがな、運良く肘が滑って銃弾が頭上を通りすぎるだけに留まった。
 そのあと相手側の狙撃手に近づいてた俺がそいつをセガールばりの体術でフルボッコにしたわけだけど、隠れてた奴に後ろから刺されそうになったんだよ」

真美「それで?」

P「春香がギリギリの所でビューティフォーしてくれたから助かった」

亜美「嘘くさいYO!」

P「うん。ちょっと脚色入ってるからな。でも大体こんな感じだった。
 千早はいつものように室内でショットガン無双してたし」


真美「今回はどれくらい休暇があるの?」

P「ないよ。明日には隣町に行って次の仕事の準備」

真美「えぇ→! もっとゆっくりしようYO!」

亜美「働き過ぎは体に毒ですぞ」

P「相手の方が待ってくれるんなら良いんだけどな」

伊織「フェアリーと一緒に仕事するんだっけ?
 珍しいわね他の所と組んでまでやるなんて。
 どちらかというと手堅く仕事をして無理はしないタイプじゃ無い? 765プロって」

P「ちょっと事情があってね」

伊織「事情?」

P「これは今回無理を聞いてくれた礼として特別に教えるんだが……隣町で銀行強盗がある予定なんだ。その主犯が社長の旧知でね。それを潰すのが次の仕事」

伊織「高木社長の旧知? まさか、961プロの黒井社長?」

P「うん」


伊織「嘘くさいわねぇ。黒い噂は絶えないけどしっぽは掴ませない男じゃない。
 なんで弱小の765プロごときが事前にあっちの動きを察知出来るのよ」

P「律子が信頼出来る筋から手に入れた情報らしいし、何もなければ無いでそれで良い。
 あわ良く行けば黒井社長が持ってるブラッククロス・ピースブローカーも手に入るかも知れない。
 この情報を手に入れておきながら動かない手は無いだろ」

伊織「……まだそんなもの追ってたんだ」

真美「ピースブローカー?」

亜美「兄ちゃんの話はあまり本気にしたらだめだYO、真美」

P「今回、上手くいけば最高の結果になるかも知れないんだぞ。
 貴音のガンベルトにささってるもの見てみろよ」

伊織「貴音? 悪いけどフェアリーの面々には詳しくないの。
 たしか、早撃ちの名手だってことは聞いたことがあるけど、顔までは――」

 そう言いながら伊織は一人一人の銃に目をやって驚愕した。

伊織「シルバークロス・ピースメーカー! ほ、本物!?」

貴音「はい」ズルズル

 貴音は麺を吸い込みながら頷いた。

麺啜りながら喋るとは面妖な

賞金首「誰だ!?」

千早「・・・・・・」

賞金首「なんだ壁か・・・」


伊織「どこでそれを手に入れたの?」

貴音「親に譲り受けただけですが」ズルズル

伊織「そんなあっさり……。
 ……で、どうするの」

 伊織はPを見た。

P「どうもしないよ。貴音は悪人って訳じゃ無いしジンクスに傷がつかないんならそれで良い」

伊織「でもこっちで管理してた方が良いんじゃない?
 人なんていつ悪に転がるなんて分からないわよ」

響「……おだやかな話じゃ無いね」

美希「人の銃をどうこうしようだなんてよく本人の前で話せるなんて、すっごく肝が据わってるなって思うの」

伊織「なによ。ここで銃を抜いてただで済むと思ってるの?」

P「それはお互い様だろ。この三人が暴れたらこっちもただじゃ済まないぞ。というか高確率でこっちが全滅する。
 やよいしか銃持ってないし」

伊織「使えないわね。あんたも銃くらいもってなさいよ。
 代わりの銃なんていくらでも用意してあげるわよ?」

P丸腰なのはフェアリー説得の為じゃなかっただと!?


P「いらない。銃なんて荷物になるだけだし」

貴音「しかし……まさか伊織殿までこの銃に興味を持つとは……少し意外でした。
 私が知らないところでこの銃は大人気のようですね」

伊織「……その銃を買い取らせてくれっていったら売る? 言い値で買うわ」

貴音「申し訳ありません。親から譲り受け、大切にしろと言われた品なので,売り渡すことは出来ません」

伊織「そう……だったらそれでも良いわ。
 でも覚えておいて。もしその銃の名前を汚すようなことがあれば、こちらは無料でその銃を譲り受けることになるって」

貴音「……覚えておきましょう」

P「なんだよこの空気www穏便に行こうぜ! テンション上げて行こう!
 ウェーイ!wwwww
 ほら! ウェーイ!wwww」

真美「に、兄ちゃん空気読もうYO」

亜美「亜美たちいおりんが何を話してるのか全く分からないけど、ふざけちゃいけない場面だってことは分かってたYO……」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

もしかしてこのP腕にサイコガン仕込んでね?


貴音「萩原流たるき亭……たしかここで待ち合わせでしたね」

響「たしか765プロのと始めて出会ったときもこの店だったね。チェーン店なんだ」

美希「早く入るの。で、いなかったら帰るの」

 貴音たちは765プロとは現地集合の約束をし、隣町まで来ていた。
 馬で2日かかる道のりであったが、急峻な地形が多い日本ではまだ近い方であった。
 遠いいとされる道のりはまさに命がけとなり数週間を掛けての旅になることはざらであるのだ。

P「お、来たな。貴音、響、美希! こっちだ!」

 萩原堂に入った三人に奥のテーブルに座っているPが呼びかけた。
 Pの隣には二人の少女が座っている。

美希「残念。いたの」

P「まあ、座って好きなものを頼んでくれ。それと、紹介しておくよ。
 こっちのリボンが春香でこっちのスレンダーなのが千早」

貴音「四条貴音です。よろしく」

 フェアリーと春香、千早はお互いに握手をして席に座った。


美希「で、この二人は使えるの? 足を引っ張られるのはヤなの」

 春香と千早が無言で席を立とうとした。

P「喧嘩っぱやすぎるぞおまえら」

貴音「今回は同じ仕事をこなす仲間です。穏便に参りましょう」

P「そうそう。春香と千早の腕は俺が保障するよ」

美希「そこの人に保障して貰っても意味ないと思うなー」

P「だって俺しか保障出来ないし。
 こいつら見ての通り早撃ちをするタイプでも無いから銃を撃つときは仕事の時だけ。
 しかも仕事で撃つとなると相手は全員豚箱行きだから……」

千早「その辺りは別にどうでもいいでしょう。
 作戦を立ててやるわけでも無いのだから、お互いに背中を撃たないように注意をしておけばそれで良いと思います」

P「まあ、緻密な連携を取ろうって訳でも無いからな。
 けど、将来の仲間候補だから仲良くしとけよ」

響「はぁ? 仲間になんてなる気は無いぞ」

春香「こっちも仲間なんていりませんけど」


P「おまえらなぁ……もういいや……話を進めよう。
 銀行強盗の件なんだが――」

 店内に陶器が割れる音が響いた。
 音の方向に目を向けると一人の少女が震えながらこちらを見ている。

P「あれ? ……もしかして前に寄った街で俺にうどんぶっかけた子か?」

春香「あの子が?」

千早「へぇ」

雪歩「ぎ、銀行ごう……」

P「え? 大丈夫か? 割れた食器拾うの手伝うよ」

 Pはそういって席を立ち上がった。

雪歩「銀行強盗ですぅ!!」

 雪歩はそういってPを指さす。

P「へ?」

なんという早とちり


真「雪歩っ! そいつから離れて!」

 カウンターにいた真が飛び出してくる。

屈強な♂×3「そいやっ!!」

 その後ろにいつの日か見たことのある屈強な男衆が続いた。

P「ち、ちが――俺は」

屈強な♂×3「そいやっ!!」

P「やめろっ! は、離せ! おいっ、どこ掴んでやがる! このっ――アッー!」

春香「やだ、何あれ!」

千早「春香、プロデューサーを助けないと!」

春香「……もうちょっと見ておこうよ」ドキドキ

千早「……そ、そうね」ドキドキ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


P「ひどい目にあった」ボロッ

雪歩「ご、ごめんなさい! ほんと私ダメダメで……勘違いした挙げ句迷惑をかけちゃって……」

P「春香と千早はもっと早くに助けてくれよ。なんか色々と危なかったぞ」

春香「ごめんなさい。いきなりのことでどうすれば良いか分からなくて」シレッ

千早「一般人に発砲する訳にはいけませんし」シレッ

真「つまり、あなた達はこの町で起こる銀行強盗に備えてその話をしていたところだったって訳ですか」

貴音「また会いましたね。こことは別の場所で働いていたと思いますが?」

真「同じ場所で働いてると地元の人になれてしまうので、系列店を転々としているんです。
 雪歩の男性恐怖症を克服するのが一番の目的ですから」

貴音「そう言うことですか」

真「でもこんな短期間で貴音さんにまた会えるとは思ってなかったなー。
 銀行強盗があるって本当なんですか?」

貴音「765プロが手に入れた確かな筋からの情報らしいですよ」

真「765プロが?」

 真はジト目でPを見た。


P「正義感が強そうな子だから先に忠告しとくけど他言無用だからな。警察にも保安官にも」

真「なんで?」

P「他の銀行が襲われるだけだろうから。
 ここで馬鹿共を一網打尽にするチャンスだろ?」

真「……分かった。僕たちも手伝っても良いかな?」

P「……駄目に決まってるだろ。ミルクを買ってあげるからお家で飲んでなさい」

真「そっちが駄目だって言ってもこっちは勝手に首を突っ込むからな!」

雪歩「や、やめようよ真ちゃん。危ないよ」

真「でもこんな話聞いて放っておけないよ!」

P「こんな話はいくらでも聞くだろ。そのたびに首を突っ込んでたんじゃ長生き出来ないぞ」

真「こんな話を飲食店でやる方が悪い。普通は酒場とかじゃないの?」

P「酒場に入るような面子じゃ無いからな。こっちも場所を選ぶべきだったよ。悪かったと思ってる。
 だからこれ以上首を突っ込むな」

貴音「遊びでは無いですからね」


真「で、でもっ! 放って置けません!」

P「お前達に何が出来るのかが知りたいな」

真「人を集めて強盗に対抗する」

P「銃は使えるのか?」

真「……使ったことはありませんけど」

美希「それはさすがに無謀なの。被害が増えるだけだしこっちも人が多かったら邪魔で仕方が無いの」

響「誰を撃てば良いのか分からなくなるぞ」

P「という訳だ。じゃあな」

真「……くそぉ!!」


P「…………と思ったけど、このまま放って置くとなんかやらかしそうだな。
 ……名前は?」

真「……菊地真」

P「それじゃあ真」

真「いきなり名前呼び!?」

P「俺と一緒に今回の仕事をやろう」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 とある街。
 寂れたこの村では珍しい決闘が行われようとしていた。

あずさ「あらあら~。最近はよくこんな事に巻き込まれてしまって困るわ~」

決闘者「お前の最も卑怯だと言われるショット……見せて貰うぜ。一匹狼のあずさ」

あずさ「卑怯なことなんてしません。それに私、一匹狼じゃ――」

 誰かが二人の間にコインを投げた。あずさと決闘者が素早く構える。
 あずさは張り付くような長ズボンにシャツを来ていたが、そのシャツはダイナマイト過ぎる胸を収めきれず第二ボタンまで開いていた。
 前屈みに構えたあずさの胸元に決闘者の目が吸い寄せられる。
 その瞬間、銃声が鳴り響いた。

決闘者「ぐあっ!?」

 当然、撃たれたのはあずさの相手である。手首を撃ち砕かれて心底悔しそうにしている。

決闘者「こんな馬鹿な負け方! 絶対に他言できねぇ……っ!」

あずさ「私、一匹狼じゃありませんからね?」

 あずさは踵を返してその場を去った。

あずさ「どうやったら帰れるのかしら~。とりあえず、こっちの道でも行ってみましょう」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


真「もう三日もここで銀行を見張ってるけど本当にくるの?」

P「さぁ? あと一週間張って来なかったら諦めるよ」

真「そんな無責任な……」

雪歩「や、やっぱり止めようよ真ちゃん」

真「雪歩は店でウエイトレスをしときなって。危ないよ」

雪歩「一人でウエイトレスの方が嫌ですぅ!」

春香「騒がしいよ。始まったときに五月蠅いようだったら黙らすからね」

 春香はライフルをポンポンと叩いて見せた。

真「なにおう!」

P「五月蠅いって。……あっ、まさかアレか?」

 Pは砂埃を上げて近づいてくる一団に目を向けた。

春香「アレでしょうね」


P「どう見ても普通じゃ無いもんなー」

 Pたちは二階建ての建物の上からそれを見ていた。
 平面に潜伏してる美希たちにも合図を送り、目標が来た事を知らせる。

真「で、これからどうするんです?」

P「まずはな」

真「はい」

P「相手に金庫を奪わせる」

真「は?」

 真が困惑している間に一団は銀行の前へとやって来た。

P「うわー。質より量で攻めてきたかー。予想より十人くらい多いか? 30人はいそうだ。
 しかも、どいつもこいつも見たことない奴なんだが」

春香「お金になりそうじゃ無いですね」

P「まあ、現行犯ってことで捕まえれば報償は出るだろ」

真「ちょ、ちょっと待ってよ! 金庫を奪わせるってどういう事です!?」


P「五月蠅いって。……まあ、あっちはもっと五月蠅いから気がつかれないだろうけど、命に関わる問題だからもっと声のトーンを落としてくれ」

 Pは銀行の前に集まった一団を見た。

チャラ男A「ココッスカ、センパイ!」

チャラ男B「ッンナコトオレニキクナヤ!」

チャラ男C「パネェ! ケイカクハアクシテナイセンパイパネェ!!」

チャラ男D「ダブンココッショ?」

チャラ男E「マチガイナクネ?」

 強盗団はそう言いつつ銀行に雪崩れ込んだ。

P「大丈夫かよあいつら。ちゃんと金庫盗めるんだろうな」

真「いや、だから何で盗まれるのを見ておくんだよ!」

P「ここで30人を相手にドンパチを始めたらさすがにこっちが危ないから。
 それに知ってるか? 盗まれた金は取り返したらその分の報償が出るって」

真「っ! 最悪だ! あんた!」

P「まあまあ、大人しく見ておきなって。
 今始めて銀行員を人質に立てこもられでもしたら面倒だし、色々と理由はあるんだ」


春香「出てきましたよ、プロデューサーさん」

 銀行から強盗団と金庫を引きずる馬が出てきた。

P「昔は固定式でもと大きな金庫だったらしいけどな。
 銀行の金庫と言っても箪笥くらいしか無いな」

 6人ほどでチャラ男は用意していた台車に金庫を乗せる。

チャラ男F「ッベー。マジヨユウダッタワ」

チャラ男G「ズラカッゾ!」

P「外に出たのは8人か……まあ、いいや。
 やれっ! 響、美希!」

響「命令するな~!!」

美希「う、うざいの!」

 響と美希はそれぞれ大きめの台車を押して片側の道を完全にふさいだ。
 元々、木材を置いて少し道は狭くしてあった。
 響と美希は台車の裏に隠れて銃を撃ち始める。

チャラ男H「ッベェ!!」

チャラ男I「マジベェワ!!」

 早速二人仕留めるが、金庫を乗せた台車は馬に引かれて猛スピードで逃げ出した。


P「馬を狙えば早いんだろうけど……馬も頂きたいから人だけ狙ってくれ」

春香「……ビューティフォー。
 プロデューサーさん。ライフルで敵を一方的に捕らえたときの気持ちよさは最高ですね!」

 春香が引き金を引くと金庫と一緒に台車に乗っていた強盗の一人が地面を転がった。
 春香はレバーを前後させ薬莢を吐き出させる。
 レバーアクションのライフルが火を吹くたびに強盗が地面に転がった。

春香「……5人ですか。もう弾が届きません」

P「上出来だ。春香はここで引き続き取り残しを頼む」

 銀行内で独特の銃声が響いた。悲鳴が上がり強盗が数人飛び出してくる。
 それを美希と響、春香が一人ずつ仕留めた。

P「やってるな千早。
 よし。響、美希! 中を手伝ってやってくれ!」

響「……765プロで使われてる人間の気持ちが分かったぞ」

美希「……うざいの」

 二人はしぶしぶと言った様子で銀行に入っていった。


真「そ、それで僕たちは何をすれば」

P「うーん。春香の応援でもしておいて」

真「へ? だ、騙したなぁ!」

P「安全な場所で良い勉強が出来ただろ?」

雪歩「そうだよ真ちゃん……さすがに今回のは素人の出る幕じゃ無いよ……」

P「という訳で二人とも春香の応援よろしく。 
 俺はちょっと銀行を見てくる」

真「ぼ、僕も――!」

P「春香。二人の応援が不十分なようだったら、足でも撃って気合い入れてやれ」

春香「はーい」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 銀行から金庫が盗まれた直後、店内では小銭までかき集めようと強盗団の連中が騒いでいた。

チャラ男J「ニカイニモマダナニカアルンジャネ?」

オタク「行ってみようずwwww」

チャラ男K「ッベー! ナンダヨコイツ! アイカワラズキメー!」

オタク「ぐふぅwwwwwww」

 そんな中、隅で震えている少女が一人いた。

チャラ男L「マジカヨ! チョーカワイインダケド」

チャラ男M「コンナイナカニカワイイコナンテイルワケナイッショ」

チャラ男N「ッンスカ? ナンノハナシシテルンッスカ?」

チャラ男O「コエカケテミヨウゼ」

 強盗の一味は少女に近づいていった。

チャラ男N「ダイジョウブッスカ?」

チャラ男M「アーマジカワイイワコノコー」

チャラ男N「ッテカナンデコノクソアツイナカ、コートナンッスカ?」

 少女はコートにくるまって自分の体を抱くように佇んでいた。


チャラ男O「カンゼンニビビッテルワーオレタチニカンゼンニビビッテルワー」

チャラ男L「ナイッショ? オレタチチョウヤサシイジャン」

 その時、外で銃声がして店内が凍り付いた。
 店の前にいた台車が馬に轢かれて急発進し、中にいた強盗団に童謡が走る。

チャラ男P「ハ? オレタチオイテイクトカマジネーシ」

チャラ男Q「ッテイウカオレタチモニゲタホウガヨクネ?」

千早「……私がロングコート着てる理由が知りたい?」

チャラ男N「……ウッス」

チャラ男O「モウイイカラニゲッゾ!」

 チャラ男Oはガンベルトから銃を引き抜きながら叫んだ。

千早「だって武器が隠しやすいでしょ?」

 ロングコートの中から現われたショットガンが火を吹いた。
 チャラ男Oの腕が同時に吐き出された十数発の鉛球でズタズタになる。
 チャラ男Oが持っていた銃が床をカラカラと転がり、銀行内にいた人間がそれを呆然と眺めた。

チャラ男O「ッンスカコレ?」

チャラ男M「オマエヤバクネ? ビョウインニイッタホウガヨクネ?」


 千早はフォアグリップを前後させ次弾を装填すると、近くにいた強盗団に向かって発砲した。
 ここに至って室内はパニックとなる。

チャラ男P「ッベェ! アノオンナソウトウキレテッゾ!」

チャラ男Q「ウテヤ! オマエラトリアエズウテヤ!」

オタク「やばいでござるwwwここは一旦退散wwww」

 ショットガンの凄まじい制圧力は店内にいる強盗団を地獄にたたき落とした。
 外に逃げ出す者や退路を求めて二階へと上がる者、カウンター側に逃げ込む人間など様々である。
 千早は鼻歌を歌いつつ柱に身を隠し、次弾を装填した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 銀行の一階が慌ただしくなったとき、当然2階でもその異変を感じ取っていた。

チャラ男R「ジュウセイガシテネ?」

チャラ男S「ヤバクネ?」

チャラ男T「カクレタホウガヨクネ?」

チャラ男R「……ハ? チキンカヨ」

チャラ男T「ハ?」

チャラ男R「ア?」

チャラ男S「ヤメロヨ! ッメーラ」

 強盗団がお互いに睨みをきかせていると、数メートル離れた場所の扉が開いた。
 ごく自然な様子で現われた銀髪の女性に3人は呆然とした。
 そして、その女がガンベルトをしており、銃を差しているのを見て驚愕した。

チャラ男R「ッベー!」

チャラ男T「フイウチトカマジカヨ!」

チャラ男S「クウキヨメヤッ!」

 三人が銃に手を伸ばしたとき、銃声が連続して三発響いた。

 三人は銃を引き抜くまでに至らずそれぞれ手首を打ち抜かれた。

チャラ男R「ッテー」

チャラ男T「テンションサガルワー」

チャラ男S「クウキヨメヤッ!」

貴音「申し訳ありません」スチャ

チャラ男R「ハ? ナンデマタジュウムケテンダヨ」

 貴音は更に一発ずつ強盗団の太股に弾丸をくれてやった。

チャラ男S「アアアアアッ!? クウキヨメヤッ!!」

 貴音はもだえる3人を尻目に、シリンダーに新しい弾を込め始める。

貴音「逃がすと面倒になるので」

 貴音は廊下の中間距離に位置し、下から逃れてくる強盗を狩った。

チャラ男J「ッベ! ウエモヤバイジャン!」

オタク「そのようでwwww
 おやwwwというよりあの銀髪美女wwwwwww」


チャラ男K「ッベー! ヤッゾオマエラ!」

 強盗団が銃に手を伸ばしたのと同時に貴音も引き金を引く。
 二つの銃声が廊下に響き、それ以上は銃声がなることは無かった。

貴音「……どういうつもりですか?」

オタク「でゅふwwwwwww」

 オタクの足元にチャラ男Kが転がる。
 オタクに側頭部を打ち抜かれ即死していた。
 貴音に手首を打たれたチャラ男Jは顔を真っ赤にして怒鳴る。

チャラ男J「ッメーバカカヨ!? ナニミカタウッテンダ!!」

オタク「すまぬwwwすまぬwww」

 オタクはチャラ男Jに向かって引き金を引いた。
 額の中心を打ち抜かれたチャラ男Jが床に転がる。

貴音「これは一体……」

オタク「まさかこのような場所で四条貴音に出会えるとはwwwww感激の極みwwww」

 オタクはガンベルトに銃を収めた。

オタク「勝負でゴザルwwww拙者、バトルオタクゆえwwww」


貴音「構いませんが……ただで済むとは思わないで下さいね」

オタク「ワロスwwwwwwww」

 貴音は銃をホルスターに収めた。

貴音「合図はどのように――」

 そこまで行ったときオタクの手が銃に伸びた。
 直後、銃声が一発響渡る。

オタク「でゅふwwwwww」

貴音「……あまりにも抜くのが遅かったので美希のマネをして見ましたが……やはり同じ場所に三発は無理ですね」

 一発のように聞こえる程の早撃ちは、オタクの肩、肘、手首を撃ち抜いていた。

オタク「無理ゲーwwwww」ドサッ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

正々堂々いざ尋常に勝負でござるwwwwwww
拙者が勝てば貴音を嫁に貰う(キリッ


 銀行の一階では壮絶な銃撃戦が繰り広げられていた。
 カウンターの奥へと逃げ込んだ強盗団が、机や銀行員を盾にして激しい抵抗を繰り広げているのだ。
 それを千早、美希、響が相手取っていた。

響「うがー! 人を盾にするなぁー!!」

 柱の陰から響が怒鳴る。
 銀行内には銃声と怒号に混じって歌声も混じっていた。

美希「どうして歌うの?」

千早「迷惑だったかしら?」

美希「そう言うわけでは無いけど、不思議に思って」

千早「気分が良いときは歌いたくなるでしょ?」

美希「ミキは気分が悪いの……敵さんが隠れてばかりでイライラするから」

響「自分もこんな狭い場所だと動き回れないぞ」

美希「これ以上は粘らずに一旦引く?」

響「盾がある相手を仕留めるのは難しいぞ」

Pの本領発揮か!


千早「もうちょっと待って。
 もう少ししたらプロデューサーが来るから」

 美希と響は顔を見合わせた。

響「来るわけないぞ」

美希「千早さんジョーク上手いの」

P「うーっす」

響「は?」

 Pは銀行の入り口からなんの警戒もせずに侵入してきた。

P「やってるなクズ共。人質とはおまえらにしては頭を使ったじゃ無いか!」

チャラ男T「……ハ? ダレダヨアイツ」

チャラ男U「ッゼーマジウゼーワ」

P「やっぱ銀行の床は綺麗だな。歩くといい音が出るし。
 よし、タップダンスでも踏むか!」


チャラ男V「シネヤッ!」

 銃声が響き、Pを撃とうとして顔を上げた強盗団が床に転がった。

千早「頭上げる馬鹿を撃って」

美希「了解なの!」

P「こいつら結構良い銃持ってるな。売りさばくか」

 Pは弾丸が飛び交う中、転がっている強盗団の銃を集め始めた。

響「しょ、正気じゃないぞ」

千早「膠着状態になった方が危険だから」

美希「やったの! 人質とってる奴らは全員やったよ!」

響「あとは机の影に隠れてる奴を集中砲火で――」

千早「良い物があるわ」

 千早はそう言うとショットガンに弾を込め始めた。
 そして、フォアグリップを前後させて装填すると、誰も隠れていない机に向かって銃口を向ける。歌っている分それは周りの注目を集める行動であった。
 直後、ショットガンが火を吹く。
 吐き出された弾は机をいとも簡単に貫通し、大穴を開けた。


千早「スラッグ弾よ。影に隠れてる奴らは両手を挙げて出てきなさい。
 死にたくないんならね」

チャラ男W「……ンマジカヨ!」

チャラ男X「……シャレニナンネー」

チャラ男Y(チキンであるがリア充になるべく髪を染めてみた元文学少年)「……コワイヨママ」

 続々と両手を挙げた強盗が物陰から姿を現した。

千早「ガンベルトを外して銃と一緒にこっちに投げなさい」

響「そう言うのは最初から使って欲しいぞ」

千早「人質がいなくなるのを待ってたのよ」

P「よう。お疲れ」

千早「ありがとうございました、プロデューサー」

P「俺は相手を煽ってただけだけどな。相手がプロじゃなくて良かったよ。
 こんな下らない手が通用する相手なんて限られてるし」

黒ちゃんのくの字も無いわけだが…これは陽動か

響「でもちょっと見直したぞ」

美希「プロデューサーのことを勘違いしてたかもなの」

P「HAHAHA!」

真「どこだ悪党!」

P「HA?」

 真は千早たちに銃を向けられている面々を見て肩を落とした。

真「くっそー! 終わっちゃったのか!」

P「お前、春香の見張りをどうやって振り切ったんだよ」

真「別に特別なことは何もしてませんよ。屋根から飛び降りてここまで走っただけですから!」

P「すごいね」

 Pは窓から外にいる春香に向かって手を振った。
 春香はばつの悪そうな笑みを浮かべると首を引っ込める。

P「こいつらはたいした金にならないだろうし……765プロはフェアリーに払う分と弾代を考えればマイナスか?」


千早「それにプロデューサーが期待していた人は出てきませんでしたね」

P「黒井社長か……律子のやつ……帰ったらくすぐりの刑だな」

千早「理不尽な」

P「フェアリーはここに残ってこいつ等を警察に引き渡してくれ!
 俺たちは金庫を追うからさ」

千早「金庫の強奪は阻止出来なかったんですか」

春香「私も頑張ったんだけどねー」

千早「あ、春香。お疲れ」

春香「お疲れたよ」

雪歩「ひぃ!? 男の人がいっぱい倒れて……」

P「……信じられるか? 生きてるんだぜ。これ」

 強盗達は凄まじい怪我をしておりすぐに止血を施さなければ死にかねない様子であったが、辛うじて生きていた。

P「日本は犯人を生かして捕まえた方が報償が高いからな。
 アメリカは死体でも構わないらしいけど」

千早「そっちの方が楽ですよね」

千早コワイ


P「ということは……銃を持った現行犯の雑魚がだいたい25人で犯罪者規定に照らし合わせると……50万程度の報償か……盛大にドンパチ繰り広げてこれだよ」

貴音「上では二人死にましたのでもう少し報償は減ると思いますよ」

 貴音は階段を下りて来ながら言った。

P「お前がやったのか?」

貴音「いえ、ちょっとした同士討ちのようなことがありまして」

P「そうか……まあ、クズ共だし別に問題は無いな。
 出来るだけ手足を撃って生かそうと努力してるみんなの前で言いたくはないが、こんなしょっぱい町だ……病院に連れて行っても助かるかどうかあやしいやつもいるし。
 正直俺としてはお金に替わるときまで生きてくれてれば良い」

雪歩「はう……ち、血が……もう駄目ですぅ~」

 雪歩は惨状に耐えきれずに意識を失った。

真「雪歩っ!」

 床に倒れる前にそれを真が受け止める。

P「……外に出るか。春香と千早はこれから俺と金庫を奪い返しに行くぞ」

春香「イエスサー」

…小鳥はなにしてんのかね


美希「あとで追いかけるの」

P「追いついたときには仕事は終わってるだろうけど、それでも良いんならどうぞ」

 Pたちが外へと足を向けた瞬間であった。
 みなの気がカウンター方面からそれた瞬間、机の影から男が一人飛び出した。

チャラ男Z「ココデオレトウジョウィッシュ!」

 完璧に不意を突かれた面々はチャラ男Zに引き金を引くことを許してしまった。
 一瞬遅れてもう一つの銃声がなり響く。
 チャラ男Zの弾丸に倒れた人間と貴音の弾丸に倒れた人間が同時に苦悶の声を上げる。

チャラ男Z「ウィッシュ!!」

P「止めて下さい。死んでしまいます」

春香「プロデューサーさん!」

 春香はPに駆け寄った。
 直後、保安官が警察を従えて乗り込んでくる。

P「保安官! 俺たちの手柄だから! 銀行員達も俺たちの顔をちゃんと覚えてて!」

 銀行員は頷き、保安官は親指を立てて白い歯を見せた。

P「よし!」

春香「よし、じゃありませんよ!」


千早「春香、おおおおお落ち着いて」

P「千早もな。大丈夫だ肩に当たっただけだから」

 Pは左肩をポンポンと叩いて見せた。

響「もう少し中心側を撃たれたら重要な脈だぞ……」

春香「何やってくれてるんですかねぇ。足を引っ張るようなのがここに来るからですよ?」

 春香は真に銃口を向けながら言った。

真「ご、ごめん」

千早「なんで庇うんですか。彼女の身長だと当たってなかったのに」

 Pは咄嗟に真と雪歩の前に立ったことを責められ始めた。

P「それって結果論じゃ無いか。
 俺も銃口の向きを見て多分この子達には当たらないなーとは思ったりはしたけどな。
 でもさ……」

貴音「万が一を考えての行動ですか」

P「いや……そうした方が格好いいかなって思って」

響「ば、馬鹿がいるぞ」

 美希はその答えがツボに嵌まったのか腹を抱えて笑い始めた。

馬鹿だな!(笑顔


P「可愛い子を弾丸から庇うのって……最高に格好いいだろ?
 一気に二人に恩を売れるし」

春香「いや、それ本人の前で言ったら絶対に駄目な台詞ですから!」

真「か、可愛い女の子……」

P「もたもたしてる内に引き渡しも終わったし……フェアリーと一緒に金庫を追えるな」

千早「プロデューサーは休んでいて下さい」

 Pたちが銀行を出ると逃げたはずの台車が戻って来るのが見えた。
 台車に乗っているのは金庫と簀巻きにされた強盗が三人。
 それを引く馬を走らせているのは胸の大きな女性だった。

P「あずささん!」

あずさ「あらあら~。ようやくプロデューサーさんに会えましたね」

P「何ヶ月ぶりですか……3ヶ月?」

あずさ「今回は随分と長い間離れてしまいましたね~」

P「それにしても驚いたな。ちょうどその3人と金庫を追おうとしてた所なんです」


あずさ「いかにも悪人面で金庫を運んでいたので確保しました」

P「そ、そんな理由で?」

あずさ「うふっ、冗談です。必死の形相で血のついた荷台で金庫を運んでいたら何かあるって思うでしょう?」

P「まあ、確かに」

貴音「この方は?」

P「765プロに所属してる賞金稼ぎの一人……なんだけど、極度の方向音痴がたたって仕事をするたびに行方不明になるんだ」

あずさ「おかげで一匹狼のあずさなどと不名誉な渾名がついてしまいました~」

響「聞いたことがあるぞ。この世で最も卑怯なショットを使うんだっけ?」

P「何となく分かります。そう噂される理由が」

あずさ「そうなんですか?」ポヨン

P「はい」ジー

美希「何となく分かったの」


P「金庫も取り返してくれたしあずささんも戻ってきたし、今日は良い日だ」

あずさ「あの……肩に弾丸を貰ってるようですけど?」

P「かすり傷ですよ」

あずさ「そうは見えませんけどぉ」

雪歩「あ、あのぉ!」

P「あ、目を覚ましたんだ」

雪歩「今回は助けていただいてありがとうございました!
 お、お礼と言ってはなんですけど荻原流たるき亭でいくらでも食べていって下さい。
 傷の手当てもそこでどうぞ。道具は揃っていますから!」

真「今回は迷惑を掛けてしまったことを素直に認めます……皆さんもどうぞ店に来て下さい。
 僕が数ヶ月ただ働きする気でおごるんで!」

貴音「その言葉……うそ偽りはないでしょうね?」

美希「ラーメン魔人が本性を現したの」

響「覚悟しておいた方が良いぞ」

そりゃ…冷酷なまでの純粋な早撃ちで九頭龍閃くらい極めるだろ…あずささんなら…


P「そういえば貴音はラーメンが好きなのか?」

貴音「わたくしたちのことは調べたのでは?」

P「いや、貴音の情報はなかなか手に入らなくてな。
 早撃ちの名手としての名が高すぎて他の情報が集まらなかったんだ」

貴音「そうなのですか。
 ……らぁめんは大好物ですよ」

P「……俺もだ!」

春香「プロデューサーさんがラーメン好きだとか聞いたこともありませんけど!?」

千早「むしろうどんの方をよく食べている気が……」

あずさ「適当な事をいってますね~」

P「HAHAHA!」

 プロデューサーが高笑いを上げているとき、独特の高音が耳に届き始めた。

P「HA?」


春香「なんですかこの音」

千早「この町の中じゃ無い……もっと遠くの……私たちの街から聞こえる音じゃ無いかしら」

 千早は目を閉じて集中していた。

P「……これは水瀬財閥の緊急警報だろうな。
 一年に一回作動調査で少しだけ鳴らすだろ」

千早「確かにそのようですね」

貴音「そんなものがなぜ鳴っているのですか」

響「作動調査か?」

P「……やられたな。
 戻るぞ! 黒井社長に完全にしてやられた!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

やはり…狙いはショボい銀行ではなく水瀬財閥の金蔵…!


 そのころ水瀬財閥本社。

伊織「これ以上あいつらを上に上がらせないで!」

 ビル内では激しい銃撃戦が繰り広げられていた。
 それは水瀬財閥の総力とたった4人との闘いであった。

SP「お嬢様! 奥に!」

伊織「何なのよあの火力」

翔太「すごいねこの火力! さすがアンティーク!」

黒井「AK-47だ。拳銃など相手にもならんよ」

北斗「なんで翔太だけ? 俺たちのは?」

冬馬「別に要らないだろ。あんな物」

黒井「その通り。真のデュエリストにはあんな玩具必要ない」

北斗「俺はデュエリストのつもりは無いんだけど……」

伊織「こら黒井ー!! 何てことしてくれてんのよ! 絶対にぶっ飛ばーすっ!!


黒井「登場の仕方が不躾だったか?
 これは失礼。今日は折り入って頼みがあってここに来たのだ。
 ここにあるホワイトクロス・ピースメーカーとゴールデンクロス・ピースメーカー……それを譲り受けに来た。渡してもらえるかね?」

伊織「……そんなもの無いわよ。帰りなさい!!」

黒井「調べはついているんだ。大人しく差しだした方が身のためだぞ」

伊織「身のため?
 ……それは……こっちの台詞よ!!」

 水瀬財閥側からの攻撃が一掃激しさを増した。
 黒井たちの対面側に台車に乗った巨大な銃が現われる。

真美「準備完了!」

亜美「いつでも行けますぞ! 真美隊員!」

真美「病院を守れー!」

 真美の声に呼応する声が響く。
 このビルには病院も入っているのでその職員の一部が闘いに参加していたりした。

冬馬「なんだあの馬鹿デカイ銃!」

黒井「アレはガトリングだ」


 直後、亜美がハンドルを回し始め、激しい音がビルに響いた。
 黒井たちも物陰に飛び込み身を隠すほかは無くなる。

亜美「見よ! このビルをも吹き飛ばさんばかりの威力を!」

真美「こ、鼓膜が……」

伊織「ちょっとぉ!? 本当にビルが吹き飛ぶんじゃないでしょうね!?」

 凄まじい威力の弾はコンクリートもガリガリと削っていた。

黒井「これが木造立てだったら殺されていたな」

冬馬「どうする気だよ!」

黒井「まあ、見ておけ。ガトリングは威力は高いが弾を装填し直す時に大きな隙が生まれる」

冬馬「そんなのあっちも分かってるだろ」

黒井「あぁ、分かっているからこそ。一気に仕留めるチャンスだ」

 ガトリングが完全に停止した。
 その瞬間に黒井は通路に飛び出した。

真美「二台目~」

亜美「撃て!」

黒井「」


伊織「っ! 伏せなさい!」

 伊織は咄嗟に亜美と真美の頭を押さえる。
 直後、一際大きな銃声が鳴り響いた。
 間をつなごうとして銃を構えていた水瀬財閥側の人間が6人、その場に崩れ落ちる。

伊織「な、なにが!」

翔太「よっと」

伊織「なっ!?」

 一瞬で距離を詰められ、銃口を向けられた伊織は驚きの声を上げた。

翔太「驚いてる驚いてる。まあ、僕も初めて見たときは驚いたよ。
 黒ちゃんの六連続ショットには」

伊織「六連続!?」

黒井「信じられ無いか? まあ、信じようが信じまいがどうでもいいが。
 こんな物はお遊びだからな」

伊織「お遊び……」

黒井「ショットの絶対にして至高の技は……早撃ちだ。それ以外はショーの技に過ぎん。
 ……で、案内してもらえるかな? ピースメーカーの場所に」

伊織「……だからピースメーカーなんて銃……知らないわよ」


黒井「そうか。
 ……コレと同じ銃把に十字架が描かれている銃だ。思い出しただろう?」

 黒井は銃口を伊織の下にいた真美に向けた。

黒井「で? ピースメーカーはどこだ」

伊織「くっ!」

真美「い、いおりん! 何のことだか良く分からないけど、真美のせいで不利になるような判断は止めて!」

黒井「可哀想に。何も知らずに闘っていたのか?」

 黒井が撃鉄を起こす。

まさか…Pースメーカー…


冬馬「おい! 少しやりすぎじゃ無いか? もう銃は構えてないし……子供だ!」

黒井「お前は黙ってろ。ピースメーカーの価値は……小娘一人の命より重い」

 引き金にかかる黒井の指にじわりと力が加わった。
 銃口を向けられている真美の顔から血の気が失せる。

亜美「やめてぇ!」

伊織「っ! 分かったわ!!」

黒井「何がだ?」

伊織「ピースメーカーを……渡す」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


P「これは街から戦力を削ぐための黒井社長の策略だったんだ!」

 Pは馬を走らせながら叫んだ。

春香「なんで765プロが狙い撃ちされたんでしょうか!」

P「黒井の目的は高木社長だ」

貴音「? それでは水瀬財閥の警報が鳴っているのはどういう事なのでしょうか」

P「水瀬財閥には……ピースメーカーがある」

貴音「なんと」

春香「初耳ですよ! 初耳!」

千早「どうしてそんなことを私たちにまで黙っていたんですか」

P「すまん……実は隠し事がたくさんなんだ……」

春香「そんな……」

P「全部俺の責任だ。……すまん」


あずさ「でも社長が狙われているとしても、どうしてピースメーカーが関係してくるのでしょうか~」ボヨンボヨン

P「すごいな。馬ってすごい」ジー

あずさ「プロデューサーさん?」

P「は!? あ、いや……。
 ……水瀬財閥に保管されているピースメーカーなんだが……アレは元々社長の物だったんだ」

春香「えぇ~!?」

P「黒井社長は社長をライバル視していてな。決闘での勝負をつけたがっている……んだと思う。
 社長と黒井社長の対決は勝負がつかずに社長が引退したことで、停滞したままだから。
 社長のホワイトクロス・ピースメーカー。それを取り返して完璧な状態で決闘をしたいんだろう」

貴音「人に勝負を強制するとは、なんと傲慢な」

P「黒井社長は勝負に取り憑かれた魔物だと聞く。
 こう言った馬鹿には理屈は通用しない……俺も良く知ってる」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

いや、ガンマンだけに我慢ならんのだろう
生きて居るうちから銃を置くなんて腰抜けがッ!


黒井「……確かにホワイトクロス・ピースメーカーだ」

 黒井は銃把に白い十字架が刻まれ、細工の美しい銃を手に満足そうに頷いた。
 ガンベルトもおそろいの模様でセットである。

黒井「これだけか?」

伊織「他に何があるっていうのよ」

黒井「ゴールデンクロス・ピースメーカーだ」

伊織「無いわよそんなもの。金庫の中はみたでしょ?
 疑うんならいくらでも調べて良いわよ」

黒井「いや、そんな時間は無い。
 それにゴールデンクロスがここにないのは本当なんだろうな」

 伊織はほっと溜息をついた。

伊織「だったらさっさとビルから出て行ってくれる?」

黒井「ここにないのは本当だろうが、だがゴールデンクロスの動向がこの辺りで途絶えたのはこちら側も掴んでいる情報だ。
 水瀬財閥がそのことについて何も知らないとはとても思えんなぁ!」

伊織「知らないの。……本当に知らないの」


黒井「いや……知っているはずだ」

 黒井は人質として連れてきていた真美と亜美にまたもや銃口を向けた。

伊織「そ、そんな脅しがいつまでも通用すると思ったら大間違いよ!」

黒井「私が人質を二人連れてきた理由……それを知りたいのかね?」

 伊織の額に汗が浮かぶ。

黒井「さぁ……早く――」

社長「手を上げたまえ」

 黒井は背後からかかった声に硬直した。
 素早く振り返った冬馬たちが銃を構える。
 ドアの辺りに高木社長、律子、小鳥の三人が立っておりそれぞれが銃を構えていた。

社長「早く手を――」

黒井「つまらん」

社長「……」

黒井「いつからこんなにもつまらない男になった?」


 黒井は振り返りながらホワイトクロス・ピースメーカーをガンベルトごと高木社長の足元に投げてた。

小鳥「……この銃は……」

律子「もう一つの銃も床に置きなさい!」

黒井「勘違いをするな小娘。
 高木、取れ!」

社長「言う通りにすると……そう思うのかね?」

黒井「思うさ。どうやらお前の隣にいる二人は素人のお荷物……我々と打ち合えば死人が多く出るのはそっちだ。
 だから私とお前の一騎打ちで勝負を決めようじゃ無いか。
 約束する。お前が決闘を受けるなら他の者には手出しをせずにここを去ると!」

 高木社長は随分と長い間無言を貫き通した。
 そして、観念したように息を吐き出し銃口を下げる。

社長「約束だぞ。私が決闘を受ければ他の者には手を出さない」

黒井「あぁ、約束だ」

 社長は足元のガンベルトに手を伸ばし、腰に巻き始めた。

律子「だ、大丈夫なんですか!?
 社長はもう数年前に引退したはずじゃ――」

社長「なに、感覚は忘れてないさ」


小鳥「でも社長……」

社長「いいから……黙っておいてくれたまえ」

 社長はまえに進み出た。

黒井「……やっと決着が着くのか……長かったぞ。
 貴様が引退と同時にホワイトクロスをどこぞへと隠し、私との勝負から逃げ出したときは腰が抜けたぞ」

社長「先に断言しておく……私は負ける」

黒井「……手を抜いたら容赦しないぞ。お前のショットは天才だ。私が長年積み重ねてきた物が撃ち砕かれてもおかしくないほどの天才的なドロースピードだ。
 お前が才能で勝ち上がってきたのなら私は努力でここまで登ってきた。
 ……見てみろ」

 黒井は腰にあるブラッククロス・ピースメーカーを指で撫でた。
 銃把だけしか見えていないが、その存在感は異常でった。
 黒井が構えをとったことにより空気が重たくなったと感じるほどである。


黒井「……感じるだろ。この銃の重みを。何百、何千と人を撃ってきたこの銃の歴史の重みを。
 私も撃ってきた。より早く、より早くと!
 そしたらいつの日かこの銃に悪魔が取り憑いた。
 いや、最初から取り憑いていたのかもしれんが……私が銃を抜くときにその悪魔の手が……私の手を触るんだ。
 そしたらどうだ。私は誰よりも早く撃っている」

社長「……馬鹿な」

冬馬「合図はおれがする。天上に向かって一発撃つからその銃声が合図だ」

黒井「よし」

社長「……よし」

 冬馬が拳銃の撃鉄を起こし天上へと向けた。
 静寂が訪れる。
 社長と黒井は腰にささった銃に手を添え、臨戦態勢をとっている。

伊織「……こんなの……こんなの間違ってるわ!」

 冬馬が持つ銃の引き金が引かれた。

黒井「見ろ高木――コレが悪魔のショットだ」

小鳥素人だったのか


 黒井の肘から先が完全に消失した。
 そして、再び現われたときは一瞬であり、銃が向けられていた。
 その銃が火を吹く。

伊織「……あぁ……」

真美「社長が!」

亜美「撃たれちゃったYO……」

 社長は右の鎖骨と肩の骨のつなぎ目を撃たれ、その場に崩れ落ちた。
 社長はガンベルトから銃を抜くことすら出来ていなかった。

黒井「……なんだその……ふぬけたドローは!」

高木「コレが今の私の全力だ」

 黒井は大きく息を吸い込み、怒鳴ろうとし……それを止めた。
 大きく溜息を吐き、天上を見上げて再度溜息を吐く。

黒井「そうか。それが今のお前か。
 ……分かった」

 黒井はそういって真美に銃口を向けた。

黒井「水瀬財閥のお嬢さん。取引の再開だ」

社長「なっ!? 約束が違うのではないのかね!?」


黒井「ふぬけと守るべきような約束はない!」

社長「勝負に不満があるのかもしれんが、私は全力を出した!
 約束くらい守ってくれても良いのではないのかね!」

黒井「……何が全力だ。
 手加減までさせておいて……それが私は許せない。
 私はお前の心臓を撃ち抜くつもりだった……だがいざ勝負をして見たらどうだ?
 私が抜いたときお前はまだ銃に手を触れたばかりだったでは無いか……手を抜くにしても酷すぎる……あのドロースピードは子供にも劣るスピードだ」

社長「……全力だったんだ。信じてくれ」

黒井「信じられんなぁ。もうお前と話すことは何もない!
 ……さあ、水瀬財閥のお嬢さん……ゴールデンクロス・ピースメーカーはどこに?
 今の私は気が短いぞ!」

冬馬「落ち着けよ。約束は約束だろ。ここは引くべきじゃないのか」

黒井「お前もデュエリストならいつか分かる時が来る……頂に至ったときの孤独が」

冬馬「なにを――」

黒井「競うべき相手が欲しいんだ。
 もう私には……ゴールデンクロスしか残っていない!」


伊織「ゴールデンクロスはただの銃よ! それに……シルバークロスもあるわ!」

黒井「四条貴音か? ……アレは駄目だ……ショットから魂を感じられない。
 早いが……早いだけだ」

伊織「ゴールデンクロスを手に入れたからって求めるような相手が現われるわけじゃ無い……そんなことも分からないの!?」

黒井「……目星はついている。ジャックだ。
 ゴールデンクロス・ピースメーカーの最後の持ち主とされるデュエリスト。こいつを探し出す。短期間に100以上の勝負を繰り広げ、全てに勝利し無慈悲なジャックとして恐れられたこいつなら……私の相手に相応しいはずだ。
 さあ言え!」

 鬼気迫る迫力に真美は腰を抜かし、その場にへたり込んだ。

黒井「……一発撃ってみるか」

伊織「ま、待って! ゴールデンクロスの場所は本当に知らないの!」

黒井「そう言う言葉遊びみたいなのはもう要らないのだよ。
 ゴールデンクロスの隠し場所は知らない。だが、大体の予想はついている……なんて言ってみろ……その時は……」

 伊織の表情に動揺が走ったのを黒井は見逃さなかった。


社長「待て!」

黒井「……お前と話すことはもう何もないと言ったはずだ。次はないぞ」

社長「ジャックもゴールデンクロスも……その情報は私が知っている」

伊織「社長!」

社長「もう良いんだ。ここまでの協力……感謝する。
 これはこういう世界で生きる人間の運命だ。彼もここで死人が出るよりこの選択を望むだろう。黒井は本気だ。いずれ辿り着く結果でもある」

伊織「でも……でも」

黒井「聞かせてみろ」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


P「どうなってるんだこれは!」

 二日後、血相を変えた集団が765プロの事務所に飛び込んで来た。

伊織「見ての通りよ」

P「伊織、ここにいたか。一体何が起こったんだ?
 街の中は慌ただしいし水瀬財閥は警察に包囲されている……途中で社長が撃たれたって噂も聞いたんだが本当か!?」

真美「ごめんね兄ちゃん……真美達が掴まったせいなんだ……」

 Pたちを出迎えたのは、律子、小鳥に加え、いつもは水瀬財閥のビルにいる真美、亜美、伊織の三人であった。

P「……いや。俺の所為だよ。社長の容態は?」

亜美「怪我は大したことないんだけど歳だから……ちょっと回復は遅いかも。
 命に別状は無いYO。今は仮説病院に入院してる」

伊織「黒井がビルで立てこもっているから……水瀬財閥の技術資料を盾に」

P「それってまずくないか?」

星矢「黄金聖衣がここに…?」


伊織「海水を真水に帰る技術は先達からの応用も多いしまた一から作るとなると……もしも資料が破棄されるようなことがあれば日本は今の人口を維持出来ないかもね。
 といっても、機械の方が破壊される訳じゃないからそれほど被害は出ないと思うけど。
 技術は現場でも生きてるわけだし」

P「そうでも被害は未知数だし損失は尋常じゃ無いだろ」

伊織「……どうとでもなるわよ」

P「……まぁ、いいや。
 とりあえず社長がいる仮説病院とやらに案内してくれないか?」

真美「うん、こっちだYO」

 そして、真美の後ろに続いて歩いていていたPであったが、そのPは前触れもなく倒れた。


真美「っ!? 兄ちゃん!?」

春香「プロデューサーさん!」

 すぐさま周りの者が駆け寄りその異常に気付く。

貴音「これは! 凄い熱です!」

響「何でこんな熱が……あっ!」

美希「銃で撃たれたからに決まってるの」

千早「あまりに普通にしていたので気がつけませんでした」

貴音「早く病院に運びましょう」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 仮設病院

春香「それで、プロデューサーさんの容態は?」

亜美「面会謝絶!」

春香「そ、そんなに悪いんですか?」

真美「いや→感染症だって。
 弾は変な場所に入ってたのを切開して取り出しただけだから。
 命には全く別状は無いYO」

春香「よ、よかった~」

伊織「そういうこと! ハイ解散! かいさーん!」

真美「あとは病院にお任せ下さい!」

亜美「三名様お帰りになられま→す!」

春香「えぇ!?」


千早「ちょ、そんなに押さなくても」

あずさ「あらあら~」

 いきなり閉め出されることになり困惑する三人であったが、あっという間に病院から押し出されてしまった。

春香「な、なんなのこの扱い」

千早「……変ね」

あずさ「プロデューサーの言っていたピースメーカーの件と良い……まだまだ裏がありそうね~」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


小鳥「失礼しまーす」

律子「同じく」

 その日の深夜、プロデューサーが眠る病室に忍び込む影が二つあった。

小鳥「プロデューサーさん? 起きてますかー」

律子「……起きてませんね」

小鳥「……と言うことはこの話は話せなかったとしても仕方が無かったと言うことで」

律子「じゃあ帰りましょう」

P「……起きてますけど」

律子「うぇ!? プロデューサー!」

P「その反応はおかしいだろ」

律子「す、すいません。……起こしてしまって。それでは」

P「待てよ。何か言うことがあるだろ。」

律子「無いですけど」

P「伊織たちもおかしかった。
 それに黒井社長が下手に立てこもっている理由も……何となく分かってる。
 あんな場所に立てこもっても時間の問題だ。なにか短期的な要求があることくらい分かるさ」


小鳥「……黒井社長の直々の指名が来ています。プロデューサーさんに。
 ゴールデンクロス・ピースメーカーを持って来い……だそうです」

律子「ちょっと律子さん!」

小鳥「こうなってはもう仕方が無いでしょ。これからの判断は全てプロデューサーさんに任せましょう」

 律子はしばらく葛藤して顔を上げた。。

律子「……先程もプロデューサー殿が言った通り、立てこもっている黒井社長にも限界は来ます。黒井社長の要求を無視する……と言う選択肢もあるんですよ」

P「その場合は色々と被害が出そうだけどな」

律子「誰も責めませんよ。あんな狂人、放って置けば良いんです」

小鳥「プロデューサーさん、好きな様にして下さい。この話を知っているのは私たちを含めて伊織たち3人。
 この5人はプロデューサーさんが黒井社長の下へ行かなかったとしても責める気は全くありませんから」

P「アーザスッ!
 ……とりあえず今は保留と言うことで良いですか? 明日の午後以降には答えを出しますから。
 いまは……体が重くて重くて……とても何かが出来る感じじゃないんです」


律子「そうですよね。ごめんなさい、こんな夜に押しかけて」

P「吃驚しましたよ。夜這いに来たのかと思った」

律子「……傷が悪化して死ね」

P「……めんご」

小鳥「それだけ元気なら大丈夫そうですね。じゃあ、失礼します」

律子「安静にしておくんですよ。押しかけてきた人間が言う台詞じゃ無いですけど」

P「そうだな。帰れ帰れ」

 Pは小鳥たちの背中を見送って溜息を吐く。
 そして、閉じられたドアを数分間じっと見つめ続けていた。

P「……夜の病院だってだけでちびりそうだな。そう思わないか?」

 閉じられていたドアが再び開く。

やよい「……そうですねぇ」

P「やよいか……意外だな。誰かが来そうな予感はしていたんだが」

やよい「あの、プロデューサー。手を上げてもらえますかぁ?」

 やよいの手に握られている銃がプロデューサーに向いた。

>>235
律子なに言ってんの


P「右手だけで良いか? 左は怪我をしてて上がらないんだ」

やよい「はい。問題ありません」

P「……やよいは冗談が上手いなぁ」

やよい「えへへー。冗談じゃ無いですよぉ?
 私、黒井社長にプロデューサーを連れてくるように頼まれちゃいましたので」

P「俺は行くよ。黒井社長の元に」

やよい「へ?」

P「今からいくから、やよいも帰って自分の仕事をしろよ」

やよい「…………うぅー、プロデューサー……ご、ごめんなさい」

 やよいは声を押し殺すように泣き始めた。

頑張れ


やよい「く、黒井社長に家族を傷付けられたくなかったらプロデューサーを連れてこいって……ほ、保安官の仕事も選挙制だから……人をいっぱい使ってこの仕事も出来無くさせてやるって言われて……それで――」

P「やよいは冗談が上手いな。
 だけど、冗談で銃を向けるくらいはこの業界ではまだまだ軽いジョークだからな。
 今度はもうちょっと捻ったシチュエーションを用意しろよ?」

やよい「プロデューサー!」ポロポロ

P「じゃあ行くか。二人でビルに乗り込む丁度良い口実じゃ無いか。
 そのまえに……先に事務所に寄って良いか?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


やよい「だ、大丈夫ですか~?」

P「体が重いよ。長風呂したときの感覚に似てる」

 Pは鍵を使って事務所の扉を開いた。

やよい「ここにピースメーカーが?」

P「そうだよ」

 Pを椅子を振り上げながらやよいの方を向いた。

やよい「わわっ! ぷ、プロデューサーやっぱ怒ってます!?」

P「ちょっと、そこ退いてくれ」

 やよいは言われたように横に避けた。
 Pは椅子を壁に叩きつけ始める。
 そして、穴を開けるとそこに手を入れた。

P「この事務所を建てたときに埋め込んだんだよ」

 Pが穴の中から手を抜くと、ガンベルトにささった金色の十字架が描かれている銃……ゴールデンクロス・ピースメーカーが現われた。

黒ちゃんこんなんでいいの相手


やよい「これがピースメーカーですかぁ?」

P「高そうな銃だろ?」

貴音「そうですね」

 Pとやよいは驚いて入り口に目を向けた。
 そこにはフェアリーの面々が立っていた。

P「驚かすなよ」

貴音「ゴールデンクロス・ピースメーカー……無慈悲なジャックと言われる決闘者と共に消えたと聞いていましたが……あなたがジャック……と言うことですか?」

P「どう見てもジャックじゃ無いだろ。どう見ても赤羽根とかメガネマンとかそんな感じの顔だろ」

響「確かにジャックはないぞ」

美希「ジャックはただの渾名なの。名前を名乗らずに暴れてたからごろつきって言う意味のジャックって呼ばれるようになったんだよ」

響「く、くわしいね」

美希「この業界にいたらこれくらい当然だと思うなー」


貴音「近年で最も速いと噂される決闘者の一人ですし、その名を知る者は多いでしょうね。
 短期間で姿を消したので実在しないとの説もありましたが」

響「……あぁーそういえばそんな人もいたね」

やよい「嘘を吐いてる顔ですーっ!」

P「やよいは本当に保安官の才能があるなぁ。可愛いし」

響「う、嘘吐いてごめんなさい」

美希「ねぇねぇ! どうしてそんなに凄腕なのにプロデューサーなんてしてるの?」

P「引き金恐怖症になってね」

響「またそんな適当な事を……」

貴音「噂では100の勝負に勝ったとか……それも名のある人間ばかりに」

響「……それはすごいぞ」

P「凄くないからな」

美希「謙遜しなくても良いのに」


P「…………確かに俺は昔、名のある人間ばかりに決闘を挑んで粋がってた時期があったよ。無慈悲なジャックとか呼ばれて調子に乗ってた。
 で、だ。その時期の犯罪件数の推移を知ってるか?」

 美希は首を傾けた。

P「とんでもない右肩上がりだったんだよ。
 有力な賞金稼ぎばかりと勝負をして狩っていたんだから当然だな。
 たった100の勝負でそこまでなるって信じるか?
 噂やジンクス……それがもたらす力は想像以上なんだよ。
 俺が勝負に勝つたびに賞金稼ぎが狩るはずだった犯罪者が逃げおおせ、犯罪者が好き勝手出来る環境が更なる犯罪を呼んだ。
 ……俺は最低のクズだった」

美希「まあまあ! 気にしない気にしない!」

P「軽いな! 765プロの人間にでも社長と小鳥さん以外は知らなかった話なのに!
 まあ、律子や伊織たちにはばれてたみたいだけど……」


美希「昔の失敗はこれからの成功で取り返せば良いの!
 早速そのチャンスが来てるよ、ハニー!」

P「は、ハニー?」

美希「ミキたちも手伝ってあげる」

響「そのために見張ってたんだしね」

貴音「黒井殿の悪行を見て見ぬふりは出来ません」

P「俺が一人で行った方が良くないか?
 下手に刺激するかも知れないし」

美希「もー! そんなやる気を削ぐようなこと言っちゃヤ!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


やよい「うっうー! 今から保安官の私と協力者とでビルに入りますっ!」

 包囲をしていた警官隊に不安の色が浮かんだ。

P「いえーい! 見てるー?」

 Pはビルの最上階から見下ろしている影に向かって手を振った。
 下からでは確認出来ないが、おそらく黒井社長だろう。
 Pはゴールデンクロスを掲げてみせる。

P「貴音もシルバークロスを見せてやれ。そうすれば一緒に入っても文句は無いだろ」

貴音「見てますか?」

 貴音は目を細めてビルを見た。

P「俺にも見えない。だが……頷いた、ような気がする」

やよい「いきますよー!」

 やよい、P、フェアリーはビルの正面から堂々とビルに侵入した。

P「……エレベーターは……使えないな。照明はついてるのに」

貴音「えれべぇたぁ?」

P「楽して上に登るための機械だ。使えないってことは階段だな……高層ビルを階段とか……勘弁してくれよ。こっちは怪我人なんだぞ」


貴音「肩を貸しましょうか?」

P「それは格好悪いだろ」

響「また格好を気にして……ほら!」

 響はPの手を取ると自分の首へと回した。

響「怪我人なんだからこれくらい頼ればいいさー」

P「……すまん。身長差がありすぎてあまり意味ない。
 なんか俺が響に肩を回してパイタッチしてるだけだ、これ」

響「うぎゃあああ! 変態プロデューサー! ひ、人の好意を無碍にしてぇ!!」

 響はPを突き飛ばした。
 左肩から壁にぶつかりPはプルプルと震え出す。

P「い、痛い。これは痛い」

響「あ、ごめん」

貴音「なにをしているのですか、響」

美希「ぐちゃ☆って音がしたの」

やよい「傷口が開いたんじゃないですかぁ?」


P「まあ、大丈夫だけど。
 昔、太股を撃たれたときの方が痛かったし。足は本当に勘弁して欲しいんだよな。
 気合いでどうこうできるレベルじゃ無くなるから」

美希「そうなの?」

P「うん。腕とかなら歯を食いしばって走れるけど、足を撃たれてたら痛みは耐えられても物理的に走れないからかなり厳しい状況に感じる。精神的な攻めと痛みが二重に襲ってくるんだ」

美希「ふーん、そうなんだ。ミキ銃弾に掠ったことすら無いから分かんないや」

P「そういうことはフラグになるから言わない方が良いぞ」

美希「フラグ?」

P「気にするな。俺がこう言ったことによりすでにフラグは消失したはずだから」

やよい「やっと9階ですかぁ……」

響「最上階までまだまだあるぞ」

P「はい、休憩! もう疲れた!」

やよい「大丈夫ですかー?」


冬馬「肩でも貸してやろうか?」

P「……今日は不意に声を掛けられるのが多い日だな」

 Pは階段の上に目を向けた。
 そこには銃を構えた三人の少年がいた。

冬馬「ピースメーカーを持って無い人間にはここまでだ、帰って貰うぞ」

美希「そういっておめおめと帰るミキじゃないの」

響「ぶっ飛ばしてやるさー!」

翔太「ハハ、威勢が良いねー」

北斗「とんでもないエンジェル達だよ」

やよい「もぉ血ぃ見んことには収まりつかんですよ!」

P「やる気満々だなおまえら。
 あまり無理するなよ。じゃあな、俺は行くから」

響「おい!」

P「え? だって俺ピースメーカー持ってるんだぞ。
 無血開城だろ? だよな?」


冬馬「…………通れ!」

 Pは冬馬に銃を突きつけられながら三人の間を通り抜けた。

P「……AKか……良い銃を持ってるじゃ無いか」

 Pはすれ違いざまに翔太の持つ銃に目を向けた。

翔太「あげないよ?」

P「欲しいなぁ。アンティークの凄い銃だし」

北斗「行った行った」

P「おまえらは無理するなよ。拳銃でAK相手なんて馬鹿馬鹿しいから。じゃあな」

やよい「ほ、本当に行っちゃいました」

美希「ハニー型破りすぎるよ」

 貴音もそれに続いていたが、冬馬に銃口を突きつけられる。

冬馬「お前は何上がろうとしてるんだよ」

貴音「はて……ピースメーカーを持っていればここを通れるという話しでは無かったのですか?」


冬馬「おっさんはお前をピースメーカーの保持者として認めていない。
 それを置いてここから消えろ」

貴音「…………なるほど」

 貴音は後ろへと跳躍した。
 階段を自然落下しながらシルバークロスを抜く。銃声が3発鳴り響いた。
 少年達はそれぞれそれを回避していた。
 それに追い打ちを掛けるように美希、響、やよいが引き金を連続して引く。
 階段という限られた場所で身を隠しながらの銃撃戦が始まった。
 お互いに曲がり角に身を潜めて打ち合う。

P「始めたか」

冬馬「うお!? なんでここにいるんだよ!」

 身を潜めた場所にはPが腰を下ろしていた。
 彼は階段の曲がり角を曲がったすぐそこで腰を下ろしていたのだ。

P「俺が無慈悲なジャックって知ってるのか?
 多分君たちに銃口を向けるのなんて一瞬だけど」


翔太「それがー?」

 翔太はそう言いながら下の貴音たちに向かって引き金を引いた。

冬馬「やって見ろ! 勝負はやってみないとわからねぇ! 死んでも食らいついてやる!」

P「……やっぱ熱血派は面倒だな。まあ、いいや。俺は行くよ」

北斗「い、行くのかい?」

P「だって俺が銃向けても止まりそうじゃ無いからな。
 あまり調子に乗って女の子に怪我させるなよ」

 Pはそういって階段をヨロヨロと登り始めた。

冬馬「何なんだあいつ……」

北斗「アレで本当に強いのかな?」

翔太「さーねー」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


響「うがあああああああ!? 何発撃てるんだ!? その銃!」

翔太「すごいでしょこれ!」

響「威力も冗談じゃ済まないぞ!」

翔太「冗談じゃないからね!」

 撃ち合いは引いて押しての掛け合いでついには個別戦のような体となっていた。
 突出した響と翔太がぶつかり合い、諦めて他の道を探しに行った美希や「ここは任せました」などと言った直後消えた貴音とは別行動になったのだ。
 別ルートへ行った美希と貴音を止めようとしてか、冬馬と北斗もこの場にはいなかった。

やよい「うっうー! 死んでくださーい!」

 やよいは遮蔽物から乗り出すと引き金を引く、弾は翔太の顔を掠めていった。

翔太「か、顔はやめろよ!」

やよい「顔の中心に風穴開けてやりますっ!」

翔太「容赦ないね」


 翔太が引き金を引くと同時にやよいはまた遮蔽物に身を隠す。
 そして、数発撃ったあと、弾切れを起こしたことやよいと響は感じ取った。
 これまでもAKの弾切れはあったが、弾倉の入れ替えが非常に速いので隙を突けずにいた。
 後退しながらそれをやられると、たとえ距離を詰めても最終的にはこちらの身をさらしてしまうだけで終わるのである。

響「どうすれば良いんだ!」

やよい「行ってくださーい!」

響「え?」

 やよいは銃口を響に向けた。

やよい「行ってくれますかぁ?」

響「う、うわああああん! なんで貴音と美希は自分をおいていったんだ~!!」

 響は半泣きになりながら翔太に特攻を仕掛けた。

翔太「うわっ、出てくるんだ。無理しない方が良いのに!」

 響の出だしが遅れた分、AKの弾倉の入れかえは余裕を持って行うことが出来た。
 翔太は遮蔽物から飛び出すと、銃口を響に向ける。


響「な、なんくるないさー!!」

 翔太が引き金を引くのと同時に響は横に跳躍し、更に追従してくる銃撃を壁を蹴って上に逃れた。

翔太「すごっ!?」

やよい「いきますよー!」

 やよいは身を出し、響を追うために銃口をあらぬ方向に向けている翔太に狙いを定めた。
 片腕を前に突き出すその撃ち方は、ヒップショットに比べて格段命中率が良い。
 やよいが放った弾丸が翔太の二の腕を捕らえる。
 反動でやよいの銃が頭上へ跳ね上がるが、やよいは挙げていた左手で撃鉄を叩いた。
 やよいの頭上で放たれた弾丸が次は翔太の太股を捕らえる。

翔太「うわぁ!?」

 床に倒れた翔太に響が銃を突きつけた。

響「もう終わりだぞ! これで終わりだぞ! 死ぬかと思ったぞ!」ポロポロ

翔太「そ、そうみたいだね」

 翔太は床に仰向けになって降参の意思を示した。

やよいすげぇ!?


やよい「うっうー! やりましたねっ!」

響「う、うん」

やよい「すみません手を挙げてもらっても良いですかー?」

 響は肩を振るわせてやよいの銃を確認した。
 とっくの昔にガンベルトに収められているようだ。

響「な、なに?」

 響はそう言いながら両手を挙げる。

やよい「うっうー! いきますよー?
 ハイ! ターッチ!」

 やよいは響と手を合わせ、上機嫌だった。

響「な、なんなんだ?」

翔太「あぁ……もしかして先、僕がやられたのが有名なショット、HighTouch?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


北斗「フフッ、あの双子は良い物を残してくれたね」

 北斗はガトリングを撫でて言った。

北斗「これで階段を上がってくる奴らは一網打尽さ」

美希「すごい銃なの」

 ガトリングを撫でていた北斗の後ろに美希が立つ。

美希「あっ、もしかしてこういうのがハニーの言っていたフラグなのかなー?」

北斗「……ち、チャオ」

美希「チャオ☆」

 美希はそういって銃の引き金を引いた。
 ガトリングの機巧部へのスポットトリプルショットである。
 ハンドルを回せなくなったガトリングは完全なゴミと化した。

なんというw


北斗「……まさか後ろから来るとはね」

美希「別の階段なんていくらでもあるし、封鎖もしてないんだから当然かなー」

北斗「……そうだね。そもそも三人で防衛とか無理がある。
 水瀬財閥の技術資料という盾が通用しない相手には所詮こんなものさ」

美希「そうなの。で?」

北斗「降参。人間、諦めが肝心だからね」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 貴音と冬馬は出会い頭に銃を撃ち合ったが、お互いに両手を挙げて遮蔽物から姿を現した。

貴音「……お願いがあるのですが」

冬馬「お願いだなんて物はいらねぇよ。
 俺から挑戦する! 四条貴音、俺と早撃ちで勝負しろ!」

貴音「それはこちらも望むところですが……何故です?
 打ち合っていた方が時間は稼げると思いますが」

冬馬「何を自分が勝つことを前提に話を進めてやがる。
 それに、お互い身を隠しての打ち合いなんてデュエリストのやることじゃねぇ!
 デュエリストなら早撃ちでの勝負が基本だ!」

貴音「なかなかの気概です」

冬馬「そんなんじゃない。俺たちはどちらにしろ捕まるのがオチだからな。
 ここであんたとやってみたくなっただけさ」

貴音「わたくしにはあなたが道を踏み外すような人物に見えません。
 ……なぜ、このような事を」

冬馬「道を踏み外したとは思ってない。
 おっさんのやることは滅茶苦茶だが、それはデュエリストとして間違ってないと俺は思う。
 俺はただ最強のデュエリストになりたいんだ!」


貴音「……なるほど。プロデューサーが言っていた通りですね。
 理屈は通用しない、と」

冬馬「合図はコインで良いか?」

貴音「いえ……わたくしが銃を抜いて一発天上に向かって撃つのを合図にしましょう」

冬馬「……は?」

 貴音は構えをとった。

冬馬「舐めてんのか?」

貴音「怒っているのです。
 下らない理由で多くの人を巻き込んだ傲慢……それをただの賞金稼ぎが撃ち砕いて差し上げます。
 構えなさい。私がガンベルトから銃を抜いた時、その時から始めてもらっても構いません」

 冬馬は貴音の威圧に負けて構えをとった。
 直後、貴音はガンベルトから銃を抜く、冬馬はそれに素早く反応して銃に手を伸ばした。
 銃声が三発鳴り響いた。
 貴音が天上に撃ったので一発、正面に向かって撃ったので一発、冬馬が撃ったので一発の合計三発である。


冬馬「ぐっ!」

 冬馬は手首を押さえて銃を取り落とした。
 貴音の方はと言えば、弾丸が腕を掠め、そこから血を流すのみに留まっていた。
 天上に発砲したあと冬馬に向けた銃であったが、それでもなお冬馬より一瞬速かった。

貴音「お大事に」

 貴音は冬馬の隣を通り過ぎながら言った。

冬馬「……くそっ! 待てよ!」

貴音「……なんですか?」

冬馬「確かにお前は速い。速いが……凄くない。
 おっさんの所に行っても命を無駄にするだけだぜ!」

貴音「……ご忠告ありがたく受け取っておきます。では」

 貴音は上へと続く階段を進んだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


P「やっと最上階か。病人に無理をさせるなんてどうかしてる」

黒井「それは知らなかった。悪いことをしたな」

 黒井は部屋から悠然と現われた。
 廊下でPと黒井は対峙する。

P「左肩も痛いし……吐きそう……吐いていいか?」

黒井「……ご自由に」

P「オエッ……オ、オ、オエッ!
 ……以外と吐けないもんだな。ちょっと待って。
 オエェェェェ! オ、オエエエエエエエエ!!
 ……出ないな。もうちょっと頑張れば……」

黒井「……やめろ」

P「もうちょっとだから」

黒井「やめろ! 貰いゲロをしてしまいそうだ!」

P「ごめん」

黒井「……大丈夫なんだろうな。勝負は出来るのか?」

あまとう「次はヴァンガードファイトだっ!」


P「この状態でも余裕だ」

黒井「なにぃ?」

P「ゴールデンクロス・ピースメーカーには悪魔が宿ってるからな」

 黒井の口元が釣り上がった。

黒井「ほう……さすがに無慈悲なジャックと言ったところか?
 聞いたぞ。高木から天才的なショットを奪ったのもおまえだそうだな」

P「あぁ、高木社長の肩を撃って壊した。それ以来社長は早撃ちが出来なくなった」

黒井「やるではないか」

P「どうかな。あのときの社長は銃を抜かなかったし……無抵抗の人間を撃って……それから俺も心を入れ替えて生きようと思った。
 でも、今ここでゴールデンクロスを持ってるっていうことは、一体どういう意味なんだろうな?」

黒井「衰えては無いんだろうな」

P「余裕だと言っただろ?」

黒井「その自信……地獄で嘆いても遅いぞ」

支援


P「合図はコインで行くぞ」

 Pは懐を探ると一番安い硬貨を取り出した。
 それを指で大きく弾く。

黒井「お前は銃に悪魔が宿っていると言ったがな……ブラッククロス・ピースブローカーにもそれは宿っているのだぞ」

P「HAHAHA!」

 コインが床にぶつかる。

P「そうか」

 音も無く銃口が黒井に向いた。
 ゴールデンクロス・ピースメーカーの銃口は、勝負が始まる前からずっと向けられていたのではないかと錯覚するほど自然に、突然、Pの手に収まっていた。
 黒井はガンベルトからブラッククロスを半分ほど抜いた状態で固まる。


P「降参しろ」

黒井「……なんと……」

P「お前の負けだ」

黒井「負抜けたドローだ」

 黒井は大きく溜息を吐いた。

黒井「まさか貴様もそっち側だったとはな……奪う気の無いドロー……つまらん!
 撃つ気が無いのなら……奪う気が無いのなら初めから抜かなければ良いのだ!
 魂ごとぶつけていく勝負でなければ話にならん!」

P「負け惜しみは見苦しいぞ」

黒井「負け惜しみでは無い。……今それを証明してやる」

 黒井は金の硬貨を取り出した。

黒井「今から私は銃口を突きつけているお前より速く撃つ。
 コインが床についたときが合図だ」

 黒井が硬貨を弾き、Pの額に汗が浮かんだ。

なるほど
引金を引く気が無い分抜く動作に特化出来ると…


P「銃を……撃てば……っ!」

 Pは人差し指に力を込めたが引き金は降りなかった。

P「ここまでか」

 Pはほっと溜息を吐いた。
 コインが床に落ちる。

黒井「勝負をするにあたいしないクズめ。地獄を見ろ」

 四発の銃弾がPを貫いた。
 Pは床に苦悶の声を上げて崩れ落ちる。

貴音「そん……な」

 そこへ階段をちょうど上がってきた貴音がやってきた。

貴音「あなた様!」

 急いでPの元へと駆け寄る。

P「俺はもう駄目だ。……おっぱいもませてくれないか?」

貴音「……両肩と両足に一発ずつ……このままでは出血多量で死んでしまいます!
 運ぶにしても無理がありますし……待っていて下さい!
 すぐ医者を連れて参ります!」

台無しだよw


P「無茶苦茶痛いよ。心臓を撃ってくれてればこんな思いをしなくて良かったのに」

黒井「言っただろ。勝負をするに値しないクズ、だと。
 それに、医者を呼ぶことを私が許すとでも?」

 黒井は銃を見せびらかして言った。

貴音「……黒井殿ッ! わたくしはあなたを許せそうではありません!」

黒井「四条貴音か……お前のドローは以前に見たことがある。
 貴様もただ速いだけのポンコツだ」

貴音「ためしてみますか?」

P「おい貴音。シルバークロス・ピースメーカーを持ってるやつがそんな悪人面したら駄目だろ」

 貴音は大きく息を吸い込みゆっくりと吐き出した。

貴音「……あなた様……すぐに済ませます」

 貴音は黒井に対峙した。

貴音「黒井殿、早撃ちで勝負です」

あれ?いつから『あなた様』だった?


P「ゴールデンクロスで?
 無理無理。だってもう何年も整備してないし引き金ひいたら暴発しそうだもん」

黒井「貴様っ!」

P「それに高木社長を撃った時から引き金恐怖症なんだ」

黒井「クズめ! 仕方が無い! コインが合図だ」

 黒井は硬貨を取り出し、指で弾いた。

P「貴音……シルバークロスは正義の銃だ。その心さえあれば、負けるはずがない」

貴音「正義など考えたことはありません。
 ただいまは……黒井殿がやったことを許せない! それだけです!」

 床にコインが落ちた。
 黒井の手元が消失する、貴音の手が高速で銃へと伸びる。
 Pの目には二人の間にある実力差が悲しくなるほど見て取れた。
 どう見ても黒井の方が速いのである。

P「くっ! 貴音っ!」

 Pは立ち上がろうとして床に崩れ落ちた。

黒井「さようならだ」


黒井「……まあ、よかろう。
 そこの死に損ない! 合図だ!」

P「ゴールデンクロスで?
 無理無理。だってもう何年も整備してないし引き金ひいたら暴発しそうだもん」

黒井「貴様っ!」

P「それに高木社長を撃った時から引き金恐怖症なんだ」

黒井「クズめ! 仕方が無い! コインが合図だ」

 黒井は硬貨を取り出し、指で弾いた。

P「貴音……シルバークロスは正義の銃だ。その心さえあれば、負けるはずがない」

貴音「正義など考えたことはありません。
 ただいまは……黒井殿がやったことを許せない! それだけです!」

 床にコインが落ちた。
 黒井の手元が消失する、貴音の手が高速で銃へと伸びる。
 Pの目には二人の間にある実力差が悲しくなるほど見て取れた。
 どう見ても黒井の方が速いのである。

P「くっ! 貴音っ!」

 Pは立ち上がろうとして床に崩れ落ちた。

黒井「さようならだ」


 黒井が引き金を引いた。
 軽い鉄同士がぶつかるような情けない音が廊下に響いた。
 弾切れでは無い。
 それは名銃ブラッククロスが起こした製造されてからただ一回の動作不良であった。
 直後、貴音のシルバークロスが火を吹く。
 黒井のブラッククロスが弾き飛ぶ。銃身が微妙に曲がり、この時ブラッククロスは名銃としての命を終えた。
 更に、貴音は黒井の鎖骨辺りを撃ち抜く。

貴音「脈を撃ちました。
 ……あなたのための医者も呼んであげます」

 それを聞いて黒井は高らかに笑う。

黒井「要らん!」

 そう言って黒井は床に倒れた。


貴音「……あなた様……すぐに医者を呼んで参ります。とりあえず止血を――」

P「ブラッククロス……ピースメーカー」

貴音「?」

 Pは床に転がった銃に刻まれた文字を見ていた。

P「ピースブローカーじゃなかったのか」

貴音「銃はただの銃ですので。使い手に恵まれなければ本来願われたようには使ってはもらえません。
 人の悪行に携わる内に、いつの間にやら不名誉な名前で呼ばれるようになったのでしょう」

P「……良かったな。最後はピースメーカーとして逝けて」

 Pは銃身の曲がったブラッククロスに言った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ヒュー!


 数日後。
 水瀬財閥本社ビルの中にある病院の一室。

P「と言うことで俺生還」

真美「まだだYO! 峠は越えたけどこれからも感染症とか気を付けていかないと!」

亜美「まったく~。死ぬのかと思いましたぞ!」

P「俺が死ぬわけ無いだろ」

春香「いや、実際死にかけましたからね!」

千早「何やってるんですかプロデューサーッ!」

P「千早、声でかい。傷口に響く」

小鳥「……まったく……無茶して」

律子「答えは次の日の午後に出すとかいってたので完全に油断してましたよ」

あずさ「まさか病院に担ぎ込まれたその日にビルに向かうなんて~本当に無茶ばかりするんですから~」

やよい「うぅー……」


あずさ「私、雰囲気的にもう一仕事あるのかと思ってたのに、拍子抜けしてしまいました」

春香「絶対に765プロの仲間である私たちが活躍する場面が来ると思ってたのにね」

千早「現実は辛いわね。フェアリーにいいとこ取りされるなんて」

あずさ「プロデューサーさんも無理しないで、私たちに声を掛けてくれれば良かったんじゃありません?」

P「余裕だと思ったんだけどな」

社長「返り討ちにあうのがかい?」

P&社長「HAHAHA!」

 二つ並んでいるベッドで男二人が笑った。

響「でも、大事に至らなくて本当に良かったぞ。
 黒井社長達も逮捕されて当分は豚箱ぐらしさー」

美希「いい気味なの」

P「手下の方はすぐに釈放されそうだけどな」


美希「黒井社長が脅してコマにしたって言ってたもんね」

響「本当なのかな?」

美希「……響……考えるまでもなく嘘に決まってるの」

P「庇ってるんだろうな」

伊織「まあ、こっちの追求は厳しめにいくから全員容赦ない裁きが下ると思うけどね」

P「……手加減してやれよ」

伊織「何言ってるあんた。大けがをさせられた張本人じゃ無い。もっと怒りなさいよ」

P「血が無くなりすぎてそんな元気がでない」

社長「……それで……怪我の具合はどうなのかね?」

P「……社長とおそろいですよ」

社長「そうか……勿体ない」

P「良いんですよ。どうせ銃なんてあのときから今後一切撃つ気なんてありませんでしたし」


美希「ハニー」ゴソゴソ

春香「ちょ!? なにしてるの?」

美希「添い寝なの」

千早「プロデューサーの迷惑になると思うの。迷惑になると思うの!」グイグイ

美希「や、やめるの! 引っ張ると危ないの!」

P「美希! おまっ!? 傷口を鷲づかみにするな!」

貴音「決めました!」

P「な、なにをだ」

貴音「わたくしは765プロに入ろうかと思います。
 響、美希……あなた達はどうしますか?」

美希「え? 貴音も765プロに来るんだ」

響「すでに自分は765プロの一員であるかのような言い方をしてるぞ……まあ、自分も一人取り残されるのはお断りさー」

貴音「と言うことです」

P「おぉ、心強いな」


社長「これだけ有能な頭数がいれば、一気に稼いで銃弾が飛び交う中を冒険する暮らしからも解放されるかも知れないね。今回の報償もかなりのものだったし」

P「もしそうなったらどうします?」

社長「うーん、悠々自適にアイドル事務所でも開こうか」

P「このご時世にですか? ……まあ、面白そうですけど」

貴音「それは真に良き考えです」ギシッ

P「……近くないか?」

貴音「えぇ、皆に挨拶をしておこうと思いまして」

P「どういう意味だ?」

貴音「こういう意味です」

 貴音はPに顔を近づけると触れる程度のキスをした。

貴音「今後ともよろしくお願いいたしますね、あなた様」


fin.

後日談では無いけど本来書いてたエンディングも一応書きます
10分後くらいに
この世界観が好きな人は緊急避難して下さい


 という映画を765プロの面々は事務所で見ていた。

小鳥「ついに地上波で放送ですかー」

律子「961プロと合同で作った『荒野の女王』ですか。人件費も時間もあらゆるコストを削って作ったB級映画の割に興業収入はかなりの物だったんですよね」

小鳥「人件費削減と言っても自社製作ってことで売れ行きのアイドル達と961プロのジュピターが安いギャラで出ていますしね。
 利益のほとんどは961プロに持っていかれましたけど、もともと961プロがお膳立てしてくれた企画ですし良いじゃないですか」

律子「そうですね。うちのアイドル達も宣伝出来て仕事も増えましたし」

社長「おっさんは引っ込めなどと批判もあったが、良い味をだしているじゃないか」

律子「なんと言っても話題作でしたしね」

小鳥「プロデューサーが刺されてそこそこ売れてた映画のチケットが爆発しましたからね」

律子「宣伝料も払ってないのにニュースで取り上げられましたからねぇ」

真美「兄ちゃんの犠牲は忘れないYO」

亜美「お空から見ててね」

P「殺すなよ」


春香「プロデューサーさん。本当に傷の方はもう大丈夫なんですか?」

P「あぁ、大丈夫だ。
 刺されたときは死を覚悟したけどな。刺さってる状態のナイフが捻られるのが見えたし」

やよい「うぅー、生々しいですー」

P「貴音原理主義者は敵に回したら駄目だってことが証明されたな」

響「アイドルとプロデューサーがキスなんてするからだぞ」

美希「この映画は何回見ても泣けるの」ニコッ

響「血涙!?」

P「しかし、961プロに気を許すものじゃないな。映画の制作費はあっちが持ってくれるって話だったから何て気前が良いんだって大喜びで乗ったけど、刺されたときに壮大な悪意を感じたよ。
 あぁ……これが狙いかって」

小鳥「さ、さすがにそこまで考えてなかったんじゃ……黒井社長も珍しく申し訳なさそうな顔をしてお見舞いに来てくれたじゃないですか」

社長「黒井もノリノリで出演していたしねぇ……こう言うのが意外と好きな奴なんだよ」

P「いえ、人件費削減とか言って俺たちを映画に出演させたのも全て黒井社長の策の一部だったんです。
 今も貴音のファンを煽って俺の背後にアサシンを送り込もうとしてるはずですから」キョロキョロ


千早「プロデューサー……あの一件から異常に背後を気にするようになりましたね」

P「誰だそこにいるのはッ!
 …………誰もいないか……?」

真「定期的にああやって後ろに怒鳴ってますし」

雪歩「プロデューサー可哀想ですぅ」

貴音「これはわたくしが責任を持ってなんとかせねばなりませんね」

美希「ミキが責任を持つの」

貴音「わたくしは人の気配に敏感ですし、多少、武術の心得があります。わたくしが一番、適任でしょう」

P「そうか! 人の気配が分かるってのは心強いな」

貴音「では出来るだけ私の側を離れないようにして下さいね」

P「闘おうだとか考えなくていいから、変なやつがいたら教えてくれ。超ダッシュで逃げよう」

貴音「はい」

P「あぁ~久々に神経が休まるなぁ。貴音の側にいると安心出来る」


貴音「ならばずっと側にいて良いですよ?」

P「貴音の側にいられて安心出来るとか最高の状況だな!」

貴音「ふふっ」

P「なんかドキドキしてきた」

春香「」

美希「大変! 春香が息をしてないの!」

あずさ「そう言いながら血の涙を流す美希ちゃんでした~」

真美「って、余裕を見せながらも持ってるティーカップが震えまくってるあずさお姉ちゃんでした→!」

亜美「……悲しいね。真美」

貴音「これは……勝利宣言をした方が良いのでしょうか?」

P「もっと密着しておこう」ギュ

 Pは貴音を抱きしめた。

貴音「……何やら面妖な形で勝利を手にしてしまったようですね」ギュ


fin.

すまん。俺だったんだ……
カウガール姿の貴音の尻を盛大にファックする予定だったのに何故か西部劇になってた

途中、やよいのショットについて疑問が多かったけどあれは
撃って跳ね上がった銃を頭上で操作するという独特のショットを、やよいが一仕事終わったあとにするハイタッチを見てHighTouchだという技だと勘違いしていたって話です

ここまで読んでくれた人!ありがとう!クソコテをさらしてごめん!!
ということで
以前書いた↓もよろしく!
キョン「長門の肛門を徹底的に犯す」
岡部「クリスティーナを無視ししつつも愛情をそそぐ」.
天王寺「何やってんだ?岡部」鈴羽「あぅ…ぁ…ぁぁ…」
鈴羽「またあたしのお尻なの…?」
岡部「精力増強剤?」ダル「うん」
P「やっぱ響はイジメがいがあるな」響「うぅ……やめて欲しいぞ」
春香「アイドルマスター!(物理)」

乙でした、来週は
やよい「荒野の七輪」
あずさ「OK牧場の決闘」
響「アヒルの決闘」
の三本です

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