【ダンガンロンパ】苗木「気がついたら洞窟の中にいた」【Elona】 (63)

ダンガンロンパとElonaのクロスSSです。
ElonaのVerは1.22です
ダンガンロンパは1、2のネタバレがあるので注意


遅筆ですがよろしくお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1386903715

ジャバウォック島に向かうはずの船の中
まもなく夜が明けんとする頃に、
ボクは突然悲鳴のような轟音に起こされた。

ベッドで眠っていたはずなのに、
貨物の中で座っていた自分を見つけた状況に首をかしげながら
周囲の音に耳をすました。

木材の裂ける音、船体をゆさぶる波の振動
帆を食い千切る風の唸り
まるで悪魔がもたらしたような突風の中で
見慣れぬ年老いた水夫が神を呪って呟いた。

「エーテルの風だ」

…そして、船が二度目の悲鳴をあげた。
波の重壁が何もかもを押しつぶし、自らの幸運に祈る間もなく
船は夜の海にのまれていった。




ボクは意識を取り戻した。

????「…意識が…もう戻ったのか? 驚いたな。
君の回復を待つために、我々の急を要する旅がいつまで中断されるのか、気を揉んでいたのだが」

????「君は重傷を負い川辺に倒れていた。
宵闇が辺りを覆う前に、癒し手の力を持つ我々に発見されたのは、全くよくできた偶然だ」

苗木「あの……あなたは……?」

????「ああ、私の名はロミアスという」

ロミアス「…そんな物珍しげな顔をするな。君の察する通り、我々は異形の森の民だ」

苗木「異形の森……?」

ロミアス「……知らないのか?」

苗木「はい…。っ、いてて」

ロミアス「まだ傷が完治していないようだな…。ラーネイレ、もう一度頼んでいいか?」

(ラーネイレと呼ばれた青髪の少女がこちらを振り向いた)

ラーネイレ「ええ、構わないわ。……癒しの手」

苗木「……!!」

膝についた擦り傷が、あっという間に治癒していった。
こんな才能、聞いたこともない……。
それに、彼らは一体何者なのだろうか?絶望しているようには見えないけれど……。

苗木「あ、ありがとうございます」

ラーネイレ「気にしないで」

苗木「あの、ボクは苗木誠と言います。ここは、ジャバウォック島か…付近の島ではないんですか?」

ロミアス「ジャバウォック島…?聞いた事もないな。それに、ここはノースティリス……ティリス大陸の北だ」

苗木「ティリス大陸?」

ロミアス「…君は、記憶喪失か何かなのか?ラーネイレでもそれは癒せないぞ」

苗木「…ボク自身、何がなんだか分からなくて…」

ロミアス「……しかし、我々はいつまでも君に構っている暇はない。すぐにでも、旅を再開しなければならない身だ」

苗木「…すいません」

ロミアス「余計な世話でなければ、この土地での生活の知恵を授ける程度の時間は割けるが…どうする?」

苗木「お願いします」

ロミアス「…賢明な判断だな。まずは最も基本的で重要な行動である食事をしてみよう。
     足下にある食料を食べてみるがいい」

苗木「……乞食の死体?」

あからさまに危なそうな肉だ……。
でも、お腹も減ってるし……まさか、本当に人間の肉なんてこと…ないよな…。
でも、生で大丈夫なのかな…。

苗木「…いただきます」パクッ

苗木「……!!」

…うえぇ!これは人肉だ!

苗木「うげぇ…うっ、げほっ、げほっ」

苗木「キョキョキョ」
苗木「クワッ」
苗木「ねうねう♪ねうねう♪」

ロミアス「…本当に食べてしまったのか?」

数分後……

苗木「はあ…はあ…」

苗木「酷いじゃないですか!まさか、本物の人肉だなんて…」

ロミアス「食べる物には気をつけろという事だ」

苗木「えー…。う、おえっ」

ロミアス「では、次は…『穴掘り』を実際に試してみようか」

苗木「穴掘り…ですか?なら、そこにあるつるはしを…」

ロミアス「それはいらない」

苗木「えっ」

ロミアス「とりあえず適当な壁の前に立ち、穴を掘ってみてくれ」

苗木「……つるはしもなくどうやって…」

苗木「…!掘れた!これは…」

苗木誠は途方もない価値の金塊を拾った。

ロミアス「…どうやら何かを掘り当てたようだな」

ロミアス「多くのアイテムは、その本当の価値を知るためには「鑑定」をする必要がある。
     街にいる鑑定者に頼んだり、鑑定の巻物や、魔法を唱えることで鑑定はできる。
     未鑑定の品は店での売価が低くなり、中には呪われた装備、
     危険な効果のポーションや巻物もあるので注意が必要だ。
     武器や防具は、長い間所持していると簡単な鑑定がされるが、
     装備の持つ魔翌力や本当の性能を知るためには、やはり鑑定が必要だ」

苗木「装備…?ポーション、巻物…」

薄々感付いてはいたけれど……魔翌力とか言ってるし、多分間違いない……。

ここはジャバウォック島どころか…希望ヶ峰学園のあった、あの世界ですらない……。

困ったな…。いや、本当に……。

ロミアス「…では、今足元に置いた鑑定の巻物をxキーで読み、その金塊を鑑定してみるんだ。」

人肉を差し出してくるような人だし…結果は想像付くけど、試してみるか…。

苗木「途方も価値のない錆びた偽物の金塊…か。はあ…」

ロミアスと名のった緑髪の男性はにやりと笑った。
どうやら、この偽物の金塊は彼がいつの間にか埋めたらしい…。

ロミアス「…次は戦闘について教えるが、戦う前にまずアイテムを装備し、準備を整えなければならない」

苗木「戦闘…ですか?それなら、ボクの妹のお古のメガホンが…あれっ?」

ロミアス「メガホン…?聞いた事もない名前の武器だな…。しかし、持っていないのだろう?
     使い古しだが、君のために弓と矢を用意した」

苗木「あっ…ありがとうございます」

ボク、弓なんて持った事すらないんだけどな…。

苗木「持ちましたけど、これでいいんですか?」

……ん?何か、ドス黒い感覚がする…。……!
この弓が身体から離れない…!

ロミアス「ああ、その弓は呪われているぞ。
     呪われたアイテムを装備してしまうと、装備が外せなくなるだけではなく、様々な悪い効果が発生する。
     この解呪の巻物で呪いをといてくれ」

なるほど、呪われていると危険なんだな…。
ドラクエみたいに教会で呪いを解いたりできるのかな……。

苗木「…なんだか、あの黒い感覚がなくなった気がする…」

ロミアス「ああ、それなら解呪は成功だ」

ロミアス「…よし、訓練用のモンスターを召喚するぞ。可能なら、使い勝手を知るために射撃で倒してみてくれ。
     危なくなった時のために、治療薬を足元に置いておこう…必要ないとは思うが」

ロミアスは隠し持っていたプチを放った。

苗木「プチって、何だか可愛い名前だなあ」

苗木「悪いけど…倒すしかないんだよね…」

苗木誠は矢を放った。

苗木「あれ…そういえば、この矢が尽きたらどうすればいいんだろう…」

ロミアス「何を言っているのか分からないが、矢や銃弾は尽きることはないぞ」

苗木「えっ」

ロミアス「…それより、全てのプチを倒してくれ」

苗木「あっ、はい……。って、全然ダメージが入っていないような…」

ロミアス「ああ、全て避けられているからな」

やっぱり…使ったこともない弓なんて使わない方がいいんじゃないか…。

苗木「素手で倒せるのかな…」

プチを素手で殴って軽い傷を負わせた。

苗木「この調子なら…っつ、いてて」

苗木「ポーション…これを飲めばいいのかな…」

苗木「ふう…痛みが引いた気がする」

*ぷちゅ*

苗木「よし、一匹倒せたぞ!」

苗木「この調子で…」

ロミアス「…上出来だ。

…ノースティリスの地理について少し説明しよう。
シエラ・テールには幾多の国が存在するが、ノースティリスはどの国の支配も受けておらず、
《ネフィア》と呼ばれる迷宮群が存在する特殊な場所だ。
この地では、地殻変動とともに新しい迷宮がしばしば生成される。

迷宮の主を倒すと貴重な物資や財宝が手に入るため、冒険者にとっては
格好の収入源になるわけだ。迷宮に辿り着くと、その場所の危険度が表示される。
危険度が自分のレベルより高い場所を探索することは、まず避けたほうがいいだろう」

苗木「ネフィア…かあ」

ロミアス「そうだ、迷宮に落ちている宝箱の開け方を知っておく必要があるな。

足下に宝箱を置いた。まずは開けてみるといい」

苗木「はい。…あれ、鍵がかかってる」

ロミアス「そうだ、宝箱の鍵は、ロックピックを所持していて、鍵開けの技術が開錠に必要な値に達していないと、解除することはできない。
君の技量では、おそらくその宝箱を開けることはできないな。
宝箱はダンジョンに落ちていることもあるが、生憎と重い代物なので、
開けられない時は諦めるしかないだろう。
気をつけろ…宝箱に押しつぶされて無様な死をさらした冒険者を、私は何度となく見てきている」

苗木「開けられないんですか…」

ロミアス「なに、たいした物は入っていない」

なんか…この人を見てると、学級裁判での十神クンを思い出すな……。
…そうだ、ボクは十神クンや霧切さんと一緒に…ジャバウォック島に向かってたはずだ…。
皆はどこにいるんだろう?

ロミアス「宝箱に限らず、荷物を持ちすぎると速度にペナルティが課せられるため注意が必要だ。
必要のないアイテムは、家に保管しておくといい。

最後に、家について説明しておこう。家はアイテムを保管したり、安全に魔法を学んだり、
また単に装飾して楽しむために利用できる。
家の権利書を購入できるようになれば、ノースティリスの好きな場所に家を建てることができるだろう。
ただし、家は一つしか持てない。

家の中にあるハウスボードを使うことで、壁を作ったり、床の模様を変えたり、
滞在者を募ったりできるぞ。後で試してみるといい」

苗木「ハウスボード…これかな」

なるほど…草を生やしたり、壁を作ったりできる訳だ…。
本当に、ボクのいた世界とは何もかもが違うんだなあ。

ロミアス「よくやった。これでノースティリスで生活するための、基本的な知識は身に付いたわけだ。
自分の状態を把握し、慎重に行動すれば、瀕死の状態を高慢なエレアに拾われ、講釈をたれられることも、もうないだろう」

苗木「ははは……。いえ、ありがとうございました」

ここまで

訂正>>6
×魔翌翌翌力→○魔翌力

E-mailの欄に saga って入れると魔翌力→魔力 になるよ

×sage ○saga

>>14
さんくす
>>1では入れてたのにいつの間にか外れてた

苗木「あの…介抱していただいて、ありがとうございました」

ラーネイレ「いいえ、困った時はお互い様よ」

苗木「お二人は、どうしてこんな所に?」

ラーネイレ「私達は、ヴィンデールの森からの使者。森とエレアの民に降りかかる嫌疑を晴らす為に、ジャビ王の居るパルミアに向かっているの」

ラーネイレ「…と言っても、あなたは分からないのかしら?」

苗木「はい…。もう何がなんだか、さっぱりで…」

ラーネイレ「そう…。でも、これだけは知っておいて。この世界の常識のようなものだから」

ラーネイレ「ヴィンデールの森とは、エーテルという物質を出している森。
そして、この世界では以前…レム・イドと呼ばれる文明の時代に、メシェーラという災害が起こり、多くの人々が亡くなったの」

苗木「災害…ですか」

絶望的事件も…災害と言って過言はないほど…ひどいものだった。
だからボク達は、絶望と戦ってた……はずなんだけど…

ラーネイレ「そのメシェーラとエーテルは、同一のものだと言われているの」

苗木「それは…つまり、エーテルが災害の原因ってこと…ですか?」

ラーネイレ「この世界では、遍くそう言われているわ。けれど、私達は世界を喰らう者ではない…。そのことを主張するために」

苗木「パルミアというところに向かっている…ということですか」

ラーネイレ「そうね」

苗木「ところで…さっきロミアスさんも仰ってましたけど、ノースティリスというのは?」

ラーネイレ「アセリア大陸から大洋を隔たち、ティリス大陸の北に位置するのがノースティリスよ。
自由と平和の国パルミアの統治の下、古代の遺跡群ネフィアを巡り、多くの旅人や商人がこの地を訪れるの。
あなたも、そんな旅が目的でここに来たのかもしれないわね」

苗木「旅……」

ボクの目的は…ジャバウォック島に行くこと…その後は?
何をしようとして…ジャバウォック島に向かったんだ?

ラーネイレ「目的が決まっていないのなら、南の炭鉱街ヴェルニースに行くといいわ。
あなたの探しているものが、見つかるかもしれない」

苗木「…そうですね、ずっとこの洞窟にいても仕方がないですし」

苗木「そういえば、お二人は旅の途中だったんじゃ?」

ラーネイレ「…そうね。私達に残された時間は残り少ないわ、行きましょう、ロミアス」

ロミアス「…ああ、わかった。パルミアまでは長い旅路だ。一時であれ休息をとれて良かったのかも知れないな」

ラーネイレ「また巡り会う時まで、苗木誠。あなたに風の加護のあらんことを」

二人は荷物をまとめ洞窟を後にした。
ボクも、このよく分からない世界から抜け出す方法を探さないとな…。
とりあえず洞窟を出て来たのはいいけれど…どこに行こう?
南にヴェルニースって街があるらしいけど…街道は東に続いてるし…。
でも、原っぱを抜けていくのは少し怖いな…。

苗木「素直に街道を行こう」

数時間後……。

苗木「ふう、やっと着いたよ…。ここがヴェルニースか」

苗木「鉱山が沢山あって、まさに炭鉱街って感じだなあ」

兵士「おい、そこのお前。止まれ」

苗木「えっ?は、はい」

兵士「ふん……冒険者か?それにしては貧弱な身なりだな…。
種族は?……人間?ああ、エウダーナ人か。
職業は…観光客だな」

苗木「あの、あなたは…?」

兵士「ああ、我々はザナンの兵士だ。ザナンの皇子、サイモア様がここに遊説に来ているんだよ。
よし、もう行っていいぞ」

ザナン…?さっきの二人は何も言っていなかったけど…。
広場に人だかりが出来てるな、行ってみよう。

サイモア「…そして深い悲しみが 私を襲う。ザナンが新王国との戦に敗れ、指導者を失った大陸が
二大国間の戦火の舞台となり、幾多の歳月が過ぎよう。
今は亡きクライン皇子のあとを継ぎ和平に模索しても、二国の対立の溝はうまらず、
未だ緊張の糸は張り詰められたままだ。

戦争…シエラ・テールを襲うかつてない危機に、血と炎に身を染めた国々は気付かないのだろうか?
災いの風が我らの森をむしばみ、今この時にも多くの同胞が命を落とし、その土地を奪われているというのに。
異形の森と 異端の民エレアが、レム・イドの悪夢の残骸《メシェーラ》を呼び覚まそうとしているのに。」

メシェーラ……。そうか、あの二人が言っていた事は…このことか。

サイモア「イルヴァに遣わされた大いなる試練は、同時に結束の機会である。
もし我々が互いに争うことをやめ、他者を理解することを学び、共に手をとり立ち向かうならば、
腐った森と異端児をこの地から一掃し、災厄に打ち勝つことも可能なのだ。

今日のザナンに大国を動かすかつての影響力はない。
然るに、私が成せる事は、諸君に知ってもらうだけだ。二大国に迎合せず確固たる地位を築いたパルミア、
そしてその忠実な民の決意こそが、シエラ・テールの希望であるということを。」

腐った森と異端児を一掃だなんて…まるで、絶望を皆殺しにしろと言った未来機関の人みたいな事を言うんだな…。
あの二人はボクを助けてくれたし、悪い人ではないと思う。
無事だといいけれど。

苗木「ふう…。折角街に着いたんだし、街を見て回ろう」

苗木「…ん?」

??「なえ…く…」

懐かしい声が聞こえる……この声は…

苗木「霧切さん!」

霧切「はあっ、はあっ、なえ、ぎ、くん……。久しぶりね……」

苗木「き、霧切さん…!良かった、知ってる人に会えて!」

霧切「ええ、私も…。ジャバウォック島に向かう途中に船が沈んで、気付いたらこの街にいたのよ」

苗木「同じみたいだね…。ボクはこの街から少し歩いたところにある洞窟で、助けて貰ってたんだ」

霧切「…誰に?」

苗木「ロミアスとラーネイレって人だけど…知ってる?」

霧切「いいえ、全く」

苗木「そうか…。まあ、とにかく霧切さんが無事でよかったよ」

霧切「ありがとう…。ところで、あの船に乗っていたのは、私と苗木君と…十神君もいたはずよね」

苗木「そうか、だとすると…十神クンもここに流れ着いて…」

霧切「…早く探さないといけないわね」

苗木「うん。それに、ここから脱出する方法も」

霧切「そうね」グーッ

霧切「……」

苗木「あ、ぼ、ボク食べ物なら持ってるから…、あげるよ」

霧切「……」パクパク

相当お腹が空いていたみたいだ…。

苗木「霧切さんはここに着いてからどうしてたの?」

霧切「ん、私は……モグ、この街を拠点にして…ムシャ、生き延びようと必死に過ごしていたわ」

苗木「食べ終わってからでいいよ…。じゃあ、霧切さんがここに着いたのは、ボクより少し前なのかな」

霧切「そうね…ふう。
…この世界は、絶望が蔓延っていたあの頃より酷いかもしれないわ。想像もつかないほど、荒れ果てている」

苗木「……そうなの?見た目には、普通に栄えてるようだけど…」

霧切「…というより、私達の倫理観が通用しない…と言った方が正確かもしれないわね。苗木君、何か怪しいものを食べさせられたりしなかった?」

苗木「…あ、ああ…その、さっき言ったロミアスって人に…人肉を……」

霧切「……!!」バッ

苗木「き、霧切さん!?」

霧切「離して、苗木君。そいつはミンチにしないといけない人間よ」

苗木「な、何言ってるのさ!?」

霧切「苗木君は……人肉を食べさせられていいの?それで平気なのかしら?」

苗木「それはもちろん……嫌、だよ」

あの味が未だに思い出せるとは言えないな……。
生じゃなければ、調理してたら、ひょっとしたら食べられるかもしれない……

いや、それは…違うよ。そんな事……まるで、絶望みたいな……

苗木「……だからと言って、人をミンチにするなんて……いつもの霧切さんらしくないよ」

霧切「……そうね。久しぶりに苗木君に会えて、少し平常心を失っていたのかもしれないわ。ごめんなさい」

苗木「あはは、もう何とも思ってないよ。ところで、霧切さんはこの街を拠点にしてる…って言ってたよね。
良かったら、この街のことを少し教えて貰えないかな?」

霧切「ええ、構わないわ。行きましょうか」

とりあえずここまでです

緑はいずれミンチにする予定です
エーテルダガーはおそらく冒険者のランダム生成から手に入れることになりそうです
すくつは恐らく行きません

>>21訂正
エウダーナ→イェルス

霧切「この街はパルミア国内で一番大きな炭鉱街。鉱夫や彼らの子供の姿が見受けられるわ」

霧切「地下には洞窟があるらしいけれど…敵が強くて、私は行けなかった」

霧切「それから、さっき苗木君も会ったと思うけれど…ザナンの兵士が駐屯しているわね」

霧切「じゃあ、街をぐるりと一周してみましょうか」

苗木「うん」

霧切「街の西側に武具屋、雑貨屋、癒し手、魔法店があるわね。癒し手と魔法店の隣には宿屋があって、パン屋も同じ場所にあるわ」

苗木「その向かいに見える…バーかな?あそこに赤い髪の軍人みたいな人がいるけど」

霧切「彼はザナンの将校の『ロイター』という人らしいわ。話しかけると無視されるから、詳しくは知らないけれど」

苗木「ふうん…。あれ、ルンバみたいなロボットがいるね」

霧切「あれは『ダンジョンクリーナー』というロボットよ。あのバーの清掃をしているそうよ」

苗木「へえ、この世界にもロボットなんているんだね。魔力なんて言葉を聞いたから、機械はあまりないと思ってたよ」

霧切「過去の遺物……だそうよ」

苗木「え?」

霧切「大昔に滅んだエイス・テールという文明の残骸が、この世界の物質文明を支えている…って、街の人々が言っていたわ」

苗木「ロストテクノロジーってやつかな?少しワクワクするね」

霧切「……そうかしら?」

苗木「そうだよ!あ、北には墓場があるんだね。……誰かいる」

????「よそへ行ってくれ…」

苗木「あ、……すいませんでした」



霧切「……彼に近づいては駄目よ」

苗木「…どうして?」

霧切「この世界の麻薬…クラムベリーというもののジャンキー。ずっと墓場近くにいる人……」

苗木「そう…なんだ。わかった、近づかないようにしておくよ」

彼は…黒い剣を持っていたなあ。強そうだなあ。
剣……といえば、誰だったか……凄腕の人を知っていた…はずなんだけど…。
誰だったんだろう?

苗木「あー、なんだか少し喉が渇いたな…。水って持ってる?」

霧切「ここでは水は貴重品よ。水道が破壊されて水に困っていたあの頃と同じように」

苗木「そっか、じゃあどこかで水を汲んでこないといけないね」

霧切「井戸があるにはあるけれど…飲むのは勧められないわね」

苗木「何か病原菌でも入ってるの?」

霧切「飲むと、たまにエイリアンに寄生されたり…そうでなくてもモンスターを呼び寄せたりするわ」

苗木「お、恐ろしいね……。その水って浄水できないの?」

霧切「浄水できるようなものは一切見当たらなかった……。だから、どうしても水が飲みたい時は井戸の水をじかに飲んだわ…」

苗木「……覚悟しないといけないんだ」

霧切「でも、苗木君なら…あるいは、素晴らしい幸運を引き寄せられるかもしれないわ」

苗木「素晴らしい…幸運?」

霧切「どんな願いでも叶えてくれる…というものよ」

苗木「それって…ここから出たい、とかも?」

霧切「分からないわ……私がそれを引き当てたのは一度きり。その時は、あまりにお腹が減って飢え死にしそうだったから…食べ物を願ってしまって…」

苗木「そっか…。……ボクの『幸運』でそれを出せたら、絶対に『元の世界に戻して欲しい』って願うことにするよ」

霧切「ええ、そうして頂戴。……幸運…」

苗木「どうかしたの?」

霧切「どこかで……苗木君と同じように、『超高校級の幸運』を持った人と会った…気がするの」

苗木「ボクと同じ幸運……。ボクも、そんな覚えがあるよ」

霧切「……誰、だった…かしら」

苗木「どうして思い出せないんだろう……」

霧切「……ごめんなさい、話の腰を折ってしまって。それが誰なのかなんて、今はどうでもいいことよね」

苗木「ううん、ボクも少し気になったから。じゃあ、水を飲んでみるよ」

*ゴクッ*
*ゴクッ*
*ゴクッ*

苗木「……眠くなって、視界が突然暗くなって、突然身体が麻痺して、気付いたら水が尽きてたよ…」

霧切「…仕方ないわね。中々出るものじゃないわ、『どんな願いでも叶えて貰える権利』なんて」

苗木「期待させちゃって…ごめん」

霧切「気にしないで。ああ、そこの井戸は燃やしておくわ」

苗木「え!?」

霧切「何故か知らないけれど…この街は、3日経つとどんなに破壊されても元通りになっているのよ」

苗木「……凄いね、それ…。でも、それと井戸を燃やすのとどんな関係が?」

霧切「水が涸れた井戸に再び水が戻るのを待つより、燃やしてまた作り直させるほうが早いのよ」

苗木「な、なるほど…。ボク、マッチなんて持ってないけど…霧切さんは?」

霧切「この火炎瓶を投げつければ、火はつくわ」

苗木「……延焼しない?」

霧切「そんな時の為に、蜘蛛の巣の杖よ」

苗木「蜘蛛の巣の杖?」

霧切「これを振ると、何故か蜘蛛の巣がそこに出現するの。もう疑問に思う心すら薄れてきたわ」

苗木「まあ、魔法とか3日で元通りとかを目の当たりにすればね…。ところで、蜘蛛の巣で消火できるの?」

霧切「ええ、今まで蜘蛛の巣が出て火が消えなかった事は一度もないもの。それじゃあ、投げるわね」

苗木「う、うん…」

こんな時……桑田クンがいたら、百発百中なんだろうな。
……彼は死んでしまったけれど。
でも、忘れたことなんてない……。あの中で毎日を必死に過ごしたこと、皆のこと、それに……。

霧切「火が着いたわ!苗木君、杖を振って!」

苗木「こ、これでいいのかい!?」

霧切「狙いを定めて頂戴!井戸だけを狙って!」

苗木「え、えーい!」ブンッ

霧切「……大丈夫、火は消えていってるわ。もう小さくなっているし…大丈夫よ。ありがとう」

苗木「ふ、ふう……。少し心臓に悪いね、これ…」

霧切「延焼すると周囲の人が怒って私達に攻撃してくるから、もっと心臓に悪いわね」

苗木「そういうことはもっと早く言ってよ!」

霧切「大丈夫よ、3日で火も消えるから」

苗木「…そういう問題なのかなあ……」

???「なんであたしがこんな目に…」
「人殺しだ!」


霧切「!」

苗木「…誰かが…殺された?」

霧切「チャンスよ、苗木君。行きましょう」タッ

苗木「えっ…?チャンス?」


バーの中にて


霧切「……やはりそうね、今の悲鳴はシーナさん」

苗木「はあ、はあっ…。霧切さん、チャンスって一体どういう意味?」

霧切「見て、苗木君。彼女のはく製と、カードよ」

苗木「は、はく製……?本当だ、随分と精巧にできてるね…」

霧切「それに杖も…!どんな杖だか分からないわ、鑑定しないと……死体は…おいておきましょう」

苗木「き、霧切さん?」

何を…やっているんだ?
死体を漁って……周りの人は誰も咎めないし……。

苗木「霧切さん……」

霧切「苗木君、落ち着いて。私の話を聞いて」

苗木「落ち着いてなんていられないよ…。死体を漁るなんて、……どうして?」

苗木「人が殺されたっていうのに!」

霧切「数日で蘇るわよ」

苗木「……えっ?」

霧切「だから、言ったじゃない。私達の倫理観なんてまるで通用しない世界だって」

霧切「死体は放っておけば消えてしまうわ。でも、私は見てきた……人を殺してその死体を喰らう人間を」

霧切「火葬でもすればいいのだろうけど……燃やせば放火魔になってしまうし、死体を持って行く趣味はないわ」

霧切「これしかないのよ……。今の私に出来る、私の知っている『霧切響子』が出来ることは」

霧切「ほんの一時死んでしまったシーナさんに手を合わせて…落とし物を拾うこと」

霧切「こうでもしないと、生きていけなかったの」

苗木「……そうか、全然違う世界なんだよね…。それをすっかり忘れて、霧切さんだけを責めて…ごめん」

苗木「……生きていく為には、受け入れるしかないんだ」

それは…同じじゃないか。コロシアイをしていたあの頃とも、絶望と戦っていたあの頃とも。
ボクには…死んで希望の光になるなんて事は…できない。
生きていないと…逆に言えば、生きてさえいれば…なんとかなるってことを…納得させて、ここまで来たんだ…。

苗木「…はく製とカードは、持っていると何か良いことでもあるの?」

霧切「……博物館という施設があるわ。そこにその二つを置くと、だんだん人が集まってきて、収入になるわ」

霧切「けれど、まだ私達では買えないわね」

苗木「お金か…。お金はどうやって稼げばいいんだろう」

霧切「依頼を受ける、というのが一つの手段よ」

苗木「依頼?」

霧切「依頼掲示板に様々な依頼が書いてあるわ。見に行きましょう」

苗木「うん」

*保存*
ここまでです

苗木「どれどれ…」

・家の周りのモンスター ★ (即時)
近所の近辺にモンスターが出没して困っているの。退治してくれるなら、報酬として金貨1333枚と装備品を払うわ。

・代わりに収穫して ★ (即時)
この時期になると、なんだか気が重くなるわ。畑に育った作物を、どっさりと掘らなきゃならないのよ。
金貨606枚と補給品を払うから、代わりに17.5sぐらいの量を収穫して来てくれないかな!

・魔物退治 ★ (即時)
金貨1911枚と装備品を報酬として払う…。ある場所の魔物どもを退治してもらいたいんだ…。

・アイテムの納入 ★★ (6日)
ちょっとした用事で、魔法の矢の魔法書が必要になった。期限内に納入してくれれば金貨959枚と補給品を払う。

・死ぬ前に一度だけ ★★★★ (6日)
言わなくてもわかっているんでしょ…?そう、自分の最愛の人がもうすぐ病気で死んでしまうの…。パルミアに、最後に思い出の街パルミアに連れていってやりたいの…!金貨4980枚と補給品で引き受けてよ…。

苗木「へえ、本当にいろいろな依頼があるんだね」

霧切「ええ、依頼は数日ごとに変わるから、受けられなさそうな依頼しかなかったらまた数日後に覗くといいわ」

苗木「モンスター…は、やめておいた方がいいかな。そこそこお金が貰えそうだけど」

霧切「ええ、もう少し強くなってからでも遅くはないわ。今の苗木君なら…そうね、この魔法書の依頼が一番楽そうね」

苗木「魔法書って、どこかの店で買わないといけないんじゃないのかな」

霧切「このヴェルニースのすぐ近くに、子犬の洞窟というネフィアがあるのよ。そこに魔法書がよく落ちているわ」

苗木「なるほど、そこで拾ってこの依頼主に渡せばいいってことだね」

霧切「その通りよ」

????「お兄さん達、子犬の洞窟に行くの?」

霧切「ええ、そのつもりだけど、あなたは?」

????「私、リリアンっていうの」

リリアン「私の子犬のポピーがいなくなっちゃったの…。あの洞窟に行くのなら、探してきてくれないかな…」

霧切「どうするの、苗木君?子犬の洞窟は、油断さえしていなければそれほど危険ではないけれど」

苗木「それなら大丈夫かな…。まかせて」

リリアン「よかったぁ!あの洞窟は、この街を出て、すぐ東にあるよ。冒険者さん、よろしくね」

苗木「うん」

霧切「それじゃあ苗木君、依頼を早速受けに行きましょう。6日もあれば必ず手に入るから、安心して」

苗木「そうだね、…って、この人を探しに行かないといけないのかな?」

霧切「その必要はないわ。依頼主に会おうと思えば、一瞬で依頼主の前にテレポートできるわよ」

苗木「も、もうなんでもありだね…」

癒し手のアノン(依頼主)「それでは頼んだぞ」

苗木「はい」

霧切「洞窟に行く前に、道ばたでアピの実を拾っておきましょう」

苗木「さっき霧切さんに渡した食べ物だね。どうして?」

霧切「アピの実は腐らないのよ。だから、遠出をする時には持っているといいわ。ただし、呪われているものには注意して」

苗木「…なんとなく分かるよ。何か悪い事が起こるの?」

霧切「呪われているものを食べると吐いてしまうわ。連続して吐くと拒食症になって、その状態で何かを食べるとまた吐いてしまう…。そういう人を見てきたもの」

苗木「それって、直す方法はあるの…?」

霧切「その人は一度亡くなって、また蘇った時には治っていたから、一度死ねば治るらしいけれど…さすがに試す勇気はないわね」

苗木「そうだね…。とにかく、呪われたものは食べなければいいんだね。判別方法は…鑑定するしかないのかな」

霧切「私はなんとなく分かるわ、どれが呪われているか、そうでないか」

苗木「それは凄いね!じゃあ、食べる時は一旦霧切さんに渡せばいいのかな」

霧切「ええ。ただ、お腹が減っている時でないとその勘は働かないから注意して」

苗木「分かったよ。じゃあ、準備も出来たし出発しようか」

霧切「ええ」

子犬の洞窟にて


苗木「なるほど、巻物とか魔法書とかがよく落ちてるんだね。階段を下りたらさっそく一巻見つけたよ」

霧切「でも、鑑定できていないようね…。鑑定にもお金がかかるのよ」

苗木「今、手持ちはそれほどないけど……」

霧切「私のお金を少しあげるわ。魔法書を数冊集めたら鑑定すれば、魔法の矢の魔法書は出ると思うわ」

苗木「鑑定って、街の鑑定屋に行けばいいのかな?」

霧切「他にも鑑定の巻物を読んだり、鑑定の杖を振ったり、鑑定の魔法なんてものもあるらしいけれど…一番手っ取り早いのは鑑定してもらうことね」

苗木「なるほど。……あ、プチだ」

霧切「プチのお肉を食べた事はある?苗木君」

苗木「いや、ないけど」

霧切「あれを食べると肌がつるつるになって、少し綺麗になるのよ。一度食べてみるといいわ」

苗木「霧切さん、モンスターの肉を食べたの?チャレンジャーだね」

霧切「むしろ、普通の肉の方が少ないわよ?私達の知っている肉なんて、この世界には鶏、馬、兎、羊、犬や猫のものくらいしかないわ」

霧切「犬や猫はちょっと…ね」

霧切「それに、カエルの肉、かたつむりの肉、挙げ句の果てには蜘蛛の肉なんてものもあったわ」

霧切「食べる気にならなかったけれど」

苗木「……食べ物まで、常識を捨てないといけないんだね」

霧切「でも、果物は普通のものが多かったわ。ヴェルニースにも果物の木があるのだけれど、あいにく実はまだ生っていないのよ」

苗木「なるほど…。食べられるものまで自分で探していかないといけないんだね」

霧切「そうね…。探偵として、何かあった時の為に少しはサバイバルの知識も身につけたつもりだったのだけれど……まるで役に立たないわ。だって、蜘蛛の肉、ですもの」

苗木「……これから、生きる術を身につけていけばいいと思うな。どう足掻いたって、生きていくしかないんだからさ」

霧切「そうね…。生きていなくちゃ、ね」

霧切「…そうこう言っているうちに、敵が出て来たわね…。あれはかたつむり。プチよりも弱いわ、簡単に倒せるはずよ」

かたつむりを切り払いミンチにした。

苗木「ほんとだ」

霧切「それと、上の方に大道芸人がいるわね。特に注意することはないけれど、敵とはいえ人間だから、落とすお肉は食べない方がいいわ」

苗木「うん、分かったよ」

霧切「…そこの緑色のは、餓鬼ね。気をつけて、そいつに触れられるとお腹が減るわ」

苗木「じゃあ、出来るだけ早く倒さないとね」

餓鬼を切り払い傷つけた。

苗木「もう一回…!」

餓鬼を切り払い殺した。

苗木「ふう、こんなものかな。…あれ、なんだか体力が少し増えた気がする」

霧切「レベルが上がったようね。頭に浮かんでこないかしら?そういう言葉が」

苗木「レベル……ってことは、これはゲームの世界なのかな?」

霧切「そうね、ロールプレイングゲーム……だったかしら?そういう概念があるというのは知っているわ」

苗木「だとしたら……どうしてボク達はゲームの世界にいるんだろうね。…!霧切さん、後ろ!」

霧切「分かってるわ。…それっ!」

霧切響子はイークを切り払いミンチにした。

苗木「霧切さん、強いんだね…」

霧切「苗木君よりも早くからこういう生活をしていたから…かしら。でも、苗木君もすぐにこれくらい出来るようになる…と思うわ」

苗木(なんで疑問系なんだろう…)

苗木「あれ、この魔法書…」

霧切「まずは一冊入手ね、この調子でいきましょう」

数時間後、ヴェルニースにて


苗木「鑑定だけでかなりお金がかかっちゃったね…。でも、依頼も完了できてよかったよ」

霧切「それに、鑑定は一度すれば、同一のものは同じだと分かるわ。将来への投資のようなものね」

苗木「あっ!……そう言えば、子犬を探してくるの忘れてたよ…」

霧切「…でも、3層あたりで強いコボルトも出て来て危険だったわ。それでも子犬は見当たらなかったもの、もっと深くにいるかもしれないわ」

苗木「確かに…。あそこで階段を上らなかったら危なかったかもしれないね」

霧切「生きてさえいれば、それからどうにでもなる。そうでしょう?苗木君」

苗木「そうだね、あの子には悪いけど…子犬はもう少し後になってから探しに行こうか」

霧切「そうね…少し、眠いわ…。寝ましょう」

苗木「……どこで?」

霧切「鑑定屋の中に2段ベッドがあるわ。そこで眠ると、朝すっきりと目が覚めるのよ」

苗木「……霧切さんと一緒に?」

霧切「2段ベッドよ、何か問題があるかしら?」

苗木「いや……霧切さんが構わないなら、いいよ…」

苗木(はあ……。霧切さん、凄くタフになってるなあ…)

霧切「お休みなさい、苗木君」

苗木「おやすみ、霧切さん」

*保存*
ここまでです

翌日……。


霧切「苗木君、起きて。朝よ」

苗木「ふああ……。あ、おはよう、霧切さん」

霧切「おはよう、苗木君。よく眠れたかしら?」

苗木「そこそこ、ね…」

苗木(上に霧切さんがいたら、眠りたくても眠れないよ…)

霧切「また依頼掲示板を見に行きましょう。何か新しい依頼が来ているかもしれないわ」

苗木「うん、わかった」

・鉱石のプレゼント ★★(10日)
長年の友好の証として、ガードのエルにミカを送ろうと思っている。1021gpでパルミアまで運んでもらえないかな?

・急ぎの護衛 ★★★★ (6日)
とにかく大至急パルミアまで送ってもらいたい人がいるの…。報酬は15216gpよ…。くれぐれも期限を過ぎないよう注意して…。


苗木「この二つを同時にやれば、少しお金が稼げるんじゃないかな」

霧切「苗木君、パルミアの位置は分かっているの?」

苗木「街の人が東に進めばいいって言っていたから、東にあると思うんだけど…」

霧切「ただ、街道は南に続いているのよ…。あまり遠くへは行ったことがないから、その先がどうなっているのかは知らないの」

苗木「ボクの勘……なんだけど、やっぱり東にあるって言われてるんだから、南に行ったら遠回りじゃないかと思うんだ」

霧切「そうね…。道中、いつ突然雷雨になるかも分からないものね」

苗木「雷雨?」

霧切「そういえば、まだ説明していなかったわね」

霧切「この世界には、天候は5種類しかないの。晴れ、雨、雷雨、雪、そして*エーテル*よ」

苗木「エーテル……って、エーテル病の?」

霧切「もう知っていたのね、それならば話が早いわ。その通りよ、そして*エーテル*の間はエーテル風が吹き荒れているの」

霧切「その中にいると、すぐにエーテル病を発症してしまうらしいわ」

苗木「それは危険そうだね…」

霧切「そうね…。エーテル病についてまだ殆ど何も分かっていない以上、*エーテル*の時に外に出るのは自殺行為でしょうね」

苗木「ということは、家の中にいれば防げるのかな?」

霧切「ええ。それと、街にはシェルターという施設があって、そこでも防げるわ」

霧切「*エーテル*は、3の倍数月の月初めから10日までの間に吹き始めるの。その間は街の付近にいるのが賢明かしら」

苗木「3の倍数月…って、もう今日は8月20日だよ。
この依頼が終わったら、すぐにシェルターに入ってやりすごした方がいいんじゃないかな?」

霧切「残念ながら、街のシェルターは天候が悪い時…雷雨、雪、*エーテル*の時しか開放してくれないの」

霧切「吹き始めるのを待つしかないわね」

苗木「仕方ないか……。じゃあ、早速依頼を受けにいこう」

霧切「そうね」

苗木「それじゃあ、東に向かって出発!」

霧切「苗木君、随分明るいのね」

苗木「前向きなところだけがボクの取り柄、だからね」

霧切「いいえ、苗木君は皆の希望よ」

苗木「ま、真顔で言われると照れるなあ……」

霧切「…!襲撃よ、苗木君!」


霧切「かたつむりにプチ…はいいけれど」

苗木「あの白いモンスターは、確か子犬の洞窟で会った……コボルトだっけ?」

霧切「ええ、そうよ。この中ではあれが一番強いわ……。真っ先に倒しましょう」

苗木「うん」

霧切「…………」

苗木「…………」

苗木(な、何も起こらないと会話が続かないなあ…)

???「……」ドンッ

苗木「あっ、すみません!」

???「…お前さん、ついてないですわ。私達は泣く子も黙る冷血な盗賊団、その名も空飛ぶスパゲッティモンスターの集いですわ。
命が惜しければ、おとなしく荷車の積荷と金貨1011枚を渡すがいいですよ」

苗木「えっ…盗賊団?」

霧切「!……苗木君、ここは彼らの言うとおりにした方がいいわ」

苗木「……そうみたいだね。逃げる手段も…なさそうだし」

苗木「……わかりました」

盗賊団「ふふ…賢明な判断ですよ」

盗賊団は去って行った。

苗木「……はあ。何か、寿命が少し縮んだ気がするよ……」

霧切「ごめんなさい、苗木君……。逃走手段を用意しておかなかった私の所為よ……。本当にごめんなさい」

苗木「そんな、霧切さんが気にする事じゃないって。でも、逃走手段があるの?それなら知りたいなあ」

霧切「あそこで積荷を渡すのを断ると、彼らと戦闘になるの。そのマップから逃げれば逃走できるし…、戦って倒すことも出来るわ」

苗木「逃げるって言っても、足は向こうの方が早そうだよ?」

霧切「テレポート、ショートテレポートという巻物があるのよ。子犬の洞窟で探しておくべきだったわ」

苗木「いしのなかに入ったりしないかなあ」

霧切「それは大丈夫だと思うわ……多分」

苗木「でもまあ、逃げられるって分かってよかったよ。あげてばかりじゃ悔しいしね」

霧切「そうね。あら、着いたわよ、苗木君」

苗木「この大きな街がパルミアか…!首都だけあって、さすがに大きいね!」

霧切「右にカジノがあるわね。苗木君、やってみる?」

苗木「あまりお金はないけど……一か八か、やってみようか」

霧切「どれなら勝てそうかしらね」

苗木「ダーツとかなら少しは出来そう……えっ?ブラックジャックしか出来ないんですか?」

??「……ああ、初めてのお客さんかな?じゃあカジノチップ10枚、お試しであげるよ」

苗木「ど、どうも」

霧切「苗木君、ブラックジャックのルールは知っているの?」ヒソヒソ

苗木「…セレスさんに聞いた事があるんだ。カードの合計を21に近づければいいんだって。J、Q、Kは10、Aは1か11って事だけ知ってればいいらしいよ」

霧切「!……そう。なら、頑張って頂戴。幸い、チップしか失うものはなさそうだから、ね」

苗木「うん。やれるだけやってみるよ」


苗木「全部21で返された……」

??「あははっ、どうやら今のボクはツイてるみたいだね。ご愁傷様……と言いたいところだけど、キミも幸運なんじゃなかったの?」

苗木「え?」

霧切「あなた、苗木君を知っているの?」

??「……むしろ、キミ達の反応の方が意外だなあ。ああ、ボクが救いようのないクズだから忘れられてるだけだね、なるほど!」

苗木(なんだろう……ボクは以前、こういう性格の人をどこかで……見ていた気がする)

霧切「……ごめんなさい。私達、何も覚えていないのよ。あなたが苗木君を知っていると言うのなら、教えて頂けるかしら?あなたの事を」

??「……じゃあ、キミたちが黒幕じゃなかったんだね。まあ、そうだろうと思ってたけどさ」

苗木「…どういう事なんですか?」

??「キミ達みたいな希望の中の希望なら、ボクなんかに頼らなくてもきっと答えを見いだせる筈だよ」

霧切「……答えになっていないわ。私達は今、どうしてこんな所に居るの?あなたがそれを知っているなら、せめてそれだけでも答えてくれるかしら」

??「……さあね。ボクだってさ、何が何だか分からないんだよね。ただ一つ言えるとしたら……、ボクは本当に救いようのない、人類の敵、ゴミクズ、虫けら以下の存在ってことかな」

苗木「……どうしてそこまで、自分を卑下するんですか?」

??「だって……ボク自身が一番ボクの事を理解してるはずだから…ね。それはキミ達だってそうだろう?」

苗木「……でも、ボクは…ボクが知らないボクを霧切さんが知ってる事だってあるって…思います」

霧切「苗木君……」

??「……うらやましいな。そう思える人がいるって事は、さ」

??「ああ、そういえば……自己紹介がまだだったかな……」

??「ボクの名前は狛枝凪斗。才能は超高校級の幸運だよ。キミ達は希望ケ峰学園の第78期生の二人だよね?ボクは77期生なんだ」

苗木「こまえだ…さん、ですか」

苗木(このもどかしさは、何なんだ……。ボクは確かに、彼の事を知っていたはずなんだ。彼に紹介されるより前に。彼がどういう性格なのかさえも!)

霧切「こまえだ、なぎと……」

狛枝「…何かな?」

霧切「私達、ここに来る前に船に乗っていたのよ。そこでは私と、苗木君と…あと一人の私達の仲間と、船を操縦してくれた人を除けば…誰も乗っていなかった筈」

霧切「それなのにあなたは、私達と同じようにこの世界に迷い付いている」

霧切「あなた、一体どこにいたの?」

狛枝「……それすら覚えてないの?」

霧切「ごめんなさいね」

狛枝「うーん……ボクはさ、キミ達がやろうとしてた事…知らなかったんだよね」

霧切「…え?」

狛枝「でも、キミ達の願いは叶わず……、ボクだってあんな目に遭うくらいなら、キミ達の思い通りになってた方がよかった」

狛枝「なのに、また来たんだね?ボク達みたいな終わってる奴を更正させる為に?」

狛枝「あははっ、もういいよ。もう、今更、何したって、ゴミはゴミのままなんだ」

狛枝「……そう言いたかったんだけどね。この世界でふらふらしてる内に、この街に来て……出会ったんだ。彼に」

苗木「彼……って、ひょっとして……背が高くて眼鏡を掛けた人ですか?」

狛枝「いや……違うよ。そこの角を左に曲がったら……この国の王宮があるから、その中にいるはずだよ」

苗木「それは、希望ケ峰学園の生徒だった人ですか?」

狛枝「ああ……うん。そうだね。希望……希望か……。
なんか、思うところが色々あって……この言葉を呟いてる間は、辛い事とか目を背けたい事とか……全部、忘れられるんだ」

苗木「……ボクは、希望っていうのは……逃げるより、立ち向かう時に使う言葉だと…思うな」

狛枝「……さすが、あの中で生き延びただけはあるね。だからボクは……キミ達だけは生きていて欲しいって思うんだ」

苗木「……そう、ですか」

苗木(絶望って……希望って……何なんだろう?まるで分からない……何も。何もかも)

苗木(でも、これだけは言える)

苗木(ボクは……きっと、『誰か』と『未来への希望』を求めて……あの島に行ったんだ)

苗木(彼を見ていて……そんな気がした)

*保存*
ここまでです

多忙で中々更新できずすみません…
今週中には書き込みます

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