みほ「マホウショウジョ?ウォー!」 (344)

ガルパン×まどマギのクロスSSです

やや、鬱・グロ描写があります。

ちょっと長いです。

初SSなので、稚拙な文と内容ですが
ご覧いただければ幸いです。

既に似たようなSSがあり
何番煎じかわからず、心が折れそうですが

全部書きたいと思います。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1386892651

初めまして、こんにちは。西住みほです

大洗女子学園で、戦車道の隊長をつとめ
させていただいています。

以前、母校の存続を賭けた、戦車道全国大会に出場し、仲間全員の協力により
優勝することができました。

さらに精進するべく、今回、××県見滝原市へ強化遠征に行くことになったんです。

その時、私の人生を大きく変える出来事に遭遇しました。



注)タイトル間違えました
正しくは (みほ「マホウショウジョウォー!」)です

濃い灰色一色の空 どこまでも続く丘陵

その中を、轟音響かせ疾駆する影が一つ
何かの大群に追われている。

大洗女子の隊長車 四号戦車である。

みほ「沙織さん!通信は!?」

沙織「ダメ!誰とも通じない!何なのよあいつらー!!」

通信手、武部沙織が悲鳴をあげる。

四号戦車は「何か」に追われていた。

黒い球体に、細い四本足のついた格好の
それは


ドンッ!ドドンッ!ドッ!ドンッ!!

華「ーーーーっ!」

球体上部に据えられた筒から砲弾と思しきものを撃ってくる。

車体を揺さぶる衝撃は、砲手、 五十鈴華の
目を鋭くさせる。

優花里「西住殿!逃げてばかりでは埒が明きません!応戦しましょう!」

装填手、秋山優花里が進言する

みほ「・・・・・・」

車長、西住みほは、ずっと後ろを…
追いかけてくる「何か」を見ていた。

「何か」が放つ砲弾は、戦車の周りに着弾すると、小さな粒をばら撒き、

それは補助装甲板(シュルツェン)に当たると細かな音をたてる。

みほ(榴弾…戦車相手にはあまり効果は無いのに。何故?)

疑念はそれだけでは無い。
どう見ても「何か」は砲弾を車体に当てる気があるようには見えないのだ。

麻子「西住さんヤバそうなところに入ったぞ」

操縦手、冷泉麻子の言葉に、みほは、
周囲を見回した。

いつの間にか、左右を小高い土手に挟まれた小道に追い込まれていた。

………話は少し前に遡る

マミ(遠距離からの榴弾攻撃…使い魔も
考えるものね)

自身の周りにマジカル☆マスケットを
数挺浮かばせ、巴マミは呟いた

目の前に横たわるのは黒い球体から細い四本足が生えた「何か」…もとい使い魔
である。

マミ(数体相手ならまだしも、包囲されたら厄介この上無い…早く魔女を倒さないと。)

使い魔を産み、使役し、この結界という
空間に潜み、人を食らう存在、

それが魔女

彼女、巴マミは、そんな魔女を狩る者
魔法少女である。

「ヘェ~、あんた、まだ生きてたんだ」

マミ「ーーー!」

後ろからの声に振り返ると、
槍を肩にかけ赤い衣で身を包み、
衣と同じ赤い髪を後ろで縛った少女が
立っていた。

マミ「佐倉さん…。何故ここにいるの?あなたのテリトリーは、隣街の風見野でしょう?」

その少女は佐倉杏子

かつてマミと袂を分かった魔法少女で、
一番弟子でもあった。

杏子「その風見野の魔女を狩りすぎたん
だよ。
今は使い魔が人を食って魔女に成
長すんのをまってんのさ。
その間、あんたのおこぼれを頂戴
しようってワケ。」

マミ「まだそんなことを…。」

杏子「それは私のセリフさ。あんた、ま
だ性懲りも無く使い魔退治までして
るっぽいじゃん。グリーフシード
出さないのに」

マミ「使い魔も人を食らうわ、放って
おけないの。あなたと違ってね」

杏子「・・・」

杏子は黙って右手を差し出し卵の形をした宝石を掲げて見せた。

杏子「この魔翌力の源…ソウルジェムは
力を使うほど濁りが溜まる。
だから魔女を倒してグリーフ
シードを手にいれ浄化する。
知ってんだろ?」

マミ「知っているわ、充分過ぎるほどね
あなたも知っているはずよ、
私がこの生き方をやめない理由を

杏子「………。」

マミ「あなたこそ、わざわざ私にかまう
なんて。何が目的?」

杏子「たまたま入った結界に、あんたが
いただけさ。ついてねえよ、
あいつに伝言まで頼まれたし。」

マミ「あいつって、まさか…。」

杏子「こっちにまっすぐ行った所にさ。


杏子は一方向を指差して見せた。

杏子「一般人が囚われてるらしいぜ。
さて、正義の魔法少女ならどうする
?」

その言葉が終わるや否や、マミは杏子が指差した方向へ駆け出した。

ーーー再び四号戦車ーーー

みほ(この地形…)

戦車は左右を土手に挟まれた小道に追い込まれていた。

その幅は戦車二台分、 機動力を制限された形になる。

ドーーーーン!!!!!

車体のすぐ近くで榴弾が破裂し、
子弾がみほの周りにばら撒かれる。

優花里「西住殿、身を乗り出すのは危険
です!ハッチを閉めてください
!!」
みほ「うん…」

みほは進言通り身をかがめる。

沙織「みぽりん、どうするの?やる?」

華「みほさん。」

麻子「…………。」

みほ(敵が何者なのか分からないうちは
無闇に攻撃するべきではない……。
でも…。)

みほの腹はきまった。

みほ「優花里さんの言うとおり、
逃げるだけじゃ状況は変わらない
むしろ悪くなっちゃう。」

優花里「で、では!」

みほ「うん、ちょっと荒っぽいことに
なるけど。」

砲塔が回転し、真後ろの目標に狙いを
定める。

優花里「装填よし!」

みほ「華さん、照準は常に目標を狙って
合図と一緒に撃ってください。
沙織さんは機銃を。」

沙織「まっかせて!」

みほ「じゃあ、麻子さんお願い!」

麻子「おう」

麻子が操縦管をひねると、戦車は左手の
土手に乗り上がった。

「何か」の群れは後を追うも

みほ「撃て!」

ズガアァァァァァァァン!!!!!!!

狙い済ました75mm主砲の一発に、その
思いは砕かれる。

やがて、戦車は土手を登りきった。

みほ「停車!全速後退!!」

戦車は土煙を上げ、後退しながら
混乱するする群れの背後に駆け下りる。

みほ「機銃掃射!!」

沙織「おりゃりゃりゃりゃりゃーーー!

ズガガガガガガガガガガガ!!!!!!

優花里「装填よし!」

みほ「撃てーーーーーーーーーーー!」

丘陵地帯を、マミは急ぐ。

その耳が、遠くからの砲声らしき音を
とらえた。

嫌な予感を覚え、さらに足を急がせ
ようとすると、

かすかな地響きがしてきた。

マミ「ーーーー?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

響きは次第に大きくなり、やがて、
前方の丘から何かが現れた。

マミ「何なの……あれ。」

優花里「西住殿!前方に何かいます!」

沙織「えー!さっきのお化け!?」

華「人影のようにも見えますが……。
遠くてよくわかりません。」


麻子(……やっぱり、いたか。)

マミ(使い魔?何にしても私を阻むなら)

手を一閃させ、マミは周囲に数挺の
マジカル☆マスケットを召喚する。

みほ「ー!麻子さん車体を斜めに!!」

麻子がみほの指示を実行すると同時に
銃声が響いた。

ドンッ!ドドンッ!ドーン!

その弾丸は、車体・砲塔に直撃し
戦車に激しい衝撃を与える。

みほ「麻子さん後退して!」

沙織「戻っちゃうの!?」

みほ「あんな小銃で戦車を揺らす相手に
正面から向かえないよ。」

優花里「しかし、正面からじゃなければ
?」

みほは小さく頷いた。

前方の影が、後退を始める。

マミ(いけない!あっちには囚われた人が
!!」

やがて、その姿が丘の向こうに消え、
マミもまた、そいつがいたところに
いたった。

みほ「撃て!!」

ズガアァァァァァァァン!!!!!!!

四号戦車の主砲が、マミのいた
丘の頂上を吹き飛ばした。

華「やったんで……しょうか?」

みほ「みんな油断しないでください
このまま後退して…」

麻子「できないぞ。」

みほ「!」

何かが素早く空を切り、車体を拘束する

みほが上部ハッチ側面の観測孔から
外をみると、それは、黄色いリボン
だった。

続いてみほは、少し離れた所に降り立つ
人影を見止めた。

みほ(人間?)

華「みほさん、砲塔が動きません!」

麻子「車体も」

みほの見止めた人影は、車体右側へ
どんどん近づいてくる。

みほ「どうすれば…。」

優花里「西住殿、自分に一つ考えが
あります。」

拘束したものを、マミはしげしげと
眺めた。

マミ(さっきは遠くてよく分からなかった
けど…これって、
いわゆる戦車ってやつ?)

戦車に向けて腕を伸ばし、銃を出す。

マミ(攻撃してきたし、敵よね?
犠牲者を助けるのを邪魔するなら
排除するのみ。)

その時、物体の側面についていた
扉らしきものが開いた。

マミ「なっ!?」

その中から出てきたのは、
四号戦車車長西住みほ、その人であった

側面ハッチから身を乗り出したみほは、
微動だにせず。

ただ、無言で目の前の人物を凝視する。

みほ(人間…だよね?しかも女の子…)

異常な事態の連続に乱れつつある心を
鎮め、みほは作戦を成功させようとする

対峙する少女、巴マミもまた、
一言も発することなく、相手の出方を
待った。




優花里「うおおおおおおおりゃああああ
あああああ!!!!!!!!」

その背中に優花里の奇声が浴びせられた

スコップを振りかざし、優花里は
マミの頭に打ちかかる。

マミ「くっ!!!」

すかさずマミは振り返り、その手に
拳銃を出現させ、

パァン!!

迫り来るスコップを弾き飛ばす。

優花里「西住殿ぉ!!!」

みほ「えーーーーーい!」

背中を見せたマミを、みほが押し倒す。

沙織「やっちまえーーー!!!」

華「わ、わーーーーー!」

麻子「おー」

マミは抵抗するも、四号戦車、あんこうチームの一団が、
よってたかって群がって、
完全に動きを封じ込められてしまった。

みほたちはうつ伏せになっていたマミを
ひっくり返し、仰向けにする。

沙織「こらっ!暴れないの!」

その言葉でまみはおとなしくなる。

みほ「えーと…その…あなた、人間…
だよね?」

マミは小さく頷いた。

と、同時に地面から無数のリボンが
現れ、土煙をあげる。

優花里(煙幕!?西住殿!)

土煙の勢いに、あんこうチームは
マミを手放してしまう。

やがて土煙がおさまると、
みほの目には、こちらに銃をかまえる
マミと、スコップを持ちみほを身を呈し守らんとする優花里の姿が写った。

睨み合うマミと優花里。

周りでは、残りの者が動けないでいる。



《マミ、その人たちは敵じゃない。
君が救おうとした犠牲者たちさ。》


場違いな声が、マミの脳内に響いた。

マミ「え…じゃあ、にんげん…?」

沙織「そ、そうそう、私たち人間、
敵じゃないよ。」

マミ「あ、あああああ、」

マミの顔がみるみる青ざめて行く

みほ「ねえ、もし良かったら、あなたが
誰なのか教え……。」

麻子「魔法少女だ」

華「麻子さん?。」

寡黙な麻子から似つかわしくない
言葉が出され、
一同の視線が麻子に集中される。

みほ「麻子さん、今、なんて?」

みほが問いかけるも、その言葉は
続かなかった。



ヒュルルルルルル……




大気を切り裂き、何かが飛翔する音

もとい、砲弾の落下音が、
聞こえてきたからだ。

みほ「みんな伏せて!」

目の前の優花里を押し倒し、みほは
仲間に呼びかける。

間を置かず、周囲に砲弾が雨あられと
降り注ぎ、容赦無く地面を震わせる。

その威力は、使い魔の砲弾の比ではない

沙織「なんなのよ、もー!さっきからー
!!」

マミ「それっ!!」

マミが上空に向けて手をかざすと

無数のリボンが現れ、寄り集まり、
巨大な傘を形成する。

ズガン!ズガアァァァン!

ドオォォォォォォン!!!!!!


これまた数えきれない砲弾がを直撃
するも、傘はびくともしない。


あんこうチームの面々は、伏せたまま
呆然と、不思議な術を使う少女を
見つめる。

ただ一人、冷泉麻子を除いて。

麻子は落ち着き払って立ち上がる。

ズドオォォォォォォォン

麻子「沙織、みんな、いこう。」

ズガアァァァァァァァン

沙織「ね、ねえ麻子。あんた何か
知ってんの!?。」

麻子「今はそれどころじゃないだろ、
ここを離れるのが先決だ。」

みほ「そうだね。みんな戦車に乗って!
離脱します!
あなたも!!」

マミ「は、はい!」

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー

はるか彼方で砲煙が上がっている。

命からがら、脱出に成功した一行は、
ある丘の陰に身を隠すこととした。

みほ「ただいまー」

二人の人影が戦車に近づく。
偵察に出ていた、みほと優花里である。

沙織「おかえりー。」

優花里「武部殿、何か変わったことは?


やや声を荒げた優花里が問う。
その時、ちらっとマミのほうを見た。

沙織「心配御無用!何たって、この、
魔法少女マミちゃんが
いるもんね!」

みほ「まほーしょーじょ?」

優花里「武部殿!西住殿が戻られるまで
何もしないようにと……!」

沙織「ゴメンゴメン、でも好奇心には
勝てなくてさ。色々聞いちゃった
んだ。」

戦車から沙織、華、麻子が降りてくる。
その後から、マミが続いた。

マミ「あの………」

華「巴さん、二度手間になってしまい
ますけど、もう一度自己紹介お願い
します。」

マミ「はい。ええと、西住さんに秋山さ
んですね。
私、見滝原中学校三年
巴マミです。」

言い終えると、マミは深々と頭を下げた

マミ「先程は、間違いとはいえ、
申し訳ございませんでした!

みほ「えー、と、気にしないで。
私たちも同じようなものだし。」

みほは、ふと、あることに気づく。

みほ「あれ?巴さんって年下?」

華「そうなんです、みほさん。
そして、その正体は!」

沙織「災いをもたらす魔女と、世のため
人のため日夜戦い続ける
正義の魔法少女!…でいいよね?

華と沙織にはやしたてられ、
まみは赤面する。
満更でもなさそうだが。


沙織「聞いてよみぽりん!マミちゃんて
すごいんだよ!
私たちより二歳も下なのに
毎日、魔女や、さっきの使い魔
とかいうのと戦ってるんだって。


華「人しれず、世界を裏から守り
その姿は華麗、かつ力強い…。
私の求めていたものかもしれません
。」

マミは少々混乱していた。

日頃から異常なことには慣れている
つもりだったが、
戦車を乗り回す犠牲者には、面食らって
しまった。

マミ(何で、こんなことに?)

自分が言うべきことを次々言われ、
どうしたものかと思案する。

マミ(うーん…)

麻子「二人とも、巴さんが困ってるぞ
少し落ち着け。」

麻子に場を鎮めてもらい、
マミは説明を始める。

魔法少女に魔女のこと、
使い魔、結界、etc、etc…。

マミの口から語られる
奇想天外奇天烈極まる別世界に
みほと優花里は驚きを持って聞きいる。

しばしの沈黙、最初に口を開けたのは
優花里だ。

優花里「俄かには、信じ難い話です。」

その目には不信の色が浮かんでいる。

マミ「突拍子もない話だと思います。
でも、これが現状なんです。」

沙織「まあ、信じるしかないよね。
私たちも、ついさっき使い魔と
戦ったんだし。」

マミ「たたかった?」

沙織「機銃で穴だらけにしたけど、
ダメだった?」

マミは記憶の中をさぐり、使い魔に
立ち向かって勝った一般人を探す
もちろん、いない。

沙織「しっかし、驚きだねー。
こんな結界が、実はあちこちに
あって、その中でお化けが
うようよしてるなんてさ。」

華「私は、魔女の口づけが怖いです。
人の心絶望満たし、殺人や自殺に
追い込むなんて…。」

沙織「それよか、私は彼氏の口づけが
怖いね!
一発で昇天する自信あるもん!」

麻子「お前はとことんそれか。」

優花里「・・・・・・」

みほ「優花里さん、どうしたの?
さっきから元気が無いみたい。」

優花里「いえ、何でもありません。
ただ、異常なことが続いたもの
ですから。」

声をかけられ、優花里はみほのほうを
向く。

ふと、みほの手をみると、
優花里は目を見張った。

優花里「西住殿!それって…」

みほ「うん?」

みほの手。

その手には一ページにびっしりと
文字が書き込まれたメモ帳があった。

沙織「みぽりん、何なのそれ」

みほ「今まで巴さんから聞いたことを
纏めてみたの。
それと、いつまでここにいるか
わかんないから節約しなきゃね。」

言い終えるとみほはマミのほうを向く。

みほ「説明ありがとう巴さん、
一つ確認したいんだけど、この
結界から脱出できるの?」

マミ「それなら大丈夫です。
閉じ込められた訳ではないので
安心してください。」

みほ「よかったあ、それだけ気がかり
だったんだよね。」

優花里「それなら早く出ましょう!」

麻子「しかし、あそこを通らないと
いけないぞ。できるのか?」

マミ「あ…」

麻子の言うとおりだった。
脱出するには、今しがた砲撃を受けた
所を通る必要がある。

優花里「し、しかし、巴さんの力を
もってすれば!」

みほ「確かにあの弾幕を突破するのは
キツイかな、
もし、巴さんがやられたら……」

マミ「私なら平気です!必ず皆さんを
出口まで連れていきます!」

みほ「そう言っても、敵の全容が
分からないうちは、無闇に
動けないよ。」

マミ「でも、私は…」

ぐぎゅるるるるるるるる~

みほ「華さん?」

華「すいません、帰れると思ったら、
気が緩んでしまいました。」

沙織「ねえねえ、さっきから色々
話してるけどさ、逃げる以外に
何かないの?」

マミ「ない事はないですけど…
一番は魔女を倒すことですね。
そうすれば結界が消滅し、
帰れます。」

沙織「ならさ、マミちゃんを魔女の所
まで送ってあげようよ!」

マミ「へ?」

華「それはいいですね。もっと巴さんと
お話できます!」

マミ「あ、あの。ちょ…」

言い返す暇もなく。二人に押し切られた
マミは、
気がつくと戦車に乗せられていた。

第一部 完です


一旦休みます

あと携帯からなので、すごく遅いです

すいません

初めてなので色々グダグダです

それでも、よろしければお付き合い
ください

再開します

使い魔の存在を確認しつつ、戦車がいく

その中で、巴マミは何の因果か、紅茶を
啜っている。

華「巴さん、窮屈ではありませんか?」

マミ「いえ、それほどでもありません。
思ったより快適です。」

沙織「ほら、ゆかりんの取り越し苦労
だったでしょ?
一緒に乗っても全然大丈夫
じゃない。」

優花里(そういう意味で言ったのでは、
ないのですが…)


魔法少女になって、一年
こんな経験はない。

マミの頭の中で様々な事が交錯する。

再度、偵察を行った結果、
結界の出口までには、大砲を主体とした強固な防御陣が展開されていることが
判明した。

そして、このまま強行脱出するのは
酷であると判断されたのである。

マミはそれでも、彼女達を脱出させ
たかったが、沙織と華に言いくるめ
られてしまった。

マミ(移動だけでも魔力は減るから
正直、助かっているけど…)

これでいいのだろうかと思いつつ、
マミは紅茶を飲み終えた。

戦車道

鎌倉時代の馬上薙刀道より発展した
武道で、女子のたしなみとされている。

マミ(戦車道……か。)

マミはふと、持っているティーカップに
目をやる。

大量生産の類いではない。
丹念に職人の手が施されている一級品だ

話によると、聖グロリアーナという
学校と親善試合を行った際、
友情の証として茶葉とともにもらった
らしい。

この茶葉もまた、一級品である。

マミ(友情…)

この言葉にマミの心は少し曇った。

みほ「巴さん、咽頭マイクの調子は?」

マミ「え、はい、よく聞こえます。
こっちからは?」

マミは首にかけた咽頭マイクに手を
かける。
うるさい車内だとこれ無しでは
話もできない。

みほ「感度良好だよ。紅茶を飲む音も
ばっちり。」

沙織「この紅茶すっごく美味しいよ
マミちゃん!
やっぱりいれる人が変わると
味も変わるのかな?」

みほ「魔法で出したお湯で入れたから?
巴さん、お茶が大好きなんだね」

マミ「それを五十鈴さんに口臭で
悟られるなんて、びっくり
しました。
歯磨きはしたんですけど。」

沙織「あー気にしないで、華って、毎日
花いじっているから鼻が
めちゃくちゃ効くの。」

マミ「花を?ガーデニングですか?」

沙織「ううん、華道やってんの。それも
五十鈴流っていう家元のお嬢様。」

華「・・・・・・・」

華はマミをじっと見ている。

その目に決意を満たして。

沙織「どしたの華、ずっとマミちゃんの
顔見て、黙っちゃって。」

華「…巴さん、率直に申し上げます。」

マミ「?」

華「魔法少女になるにはどうすればよい
のですか?」


優花里「!!!」

麻子「!!!!!!!!!」

ギギギギギギギギギギッッッ!!!

戦車が急停車した。

沙織「アイタタタ…もう!急にとまん
ないでよ麻子!!」

みほ「はにゃぶつけた……」

優花里「あああ!西住殿、鼻血があ!」

マミ「冷泉さん使い魔ですか!?…て、
あれ?」

操縦席を見ると、麻子が消えていた。

何事かと思っていると、外から
コンコンと音がする。

麻子「開けて」



優花里が側面ハッチを開けると
麻子が入ってきた。

マミ「な…何か?」

麻子「私は気にするな、続けて。」

マミと優花里の間に麻子は座った。

その目で凄まれたマミは理由を聴くのを
やめ、華の話を聞くことにした。」

華「はい、是非にも。どうすればいいか
教えてください。」

マミ「その前に理由を言ってください。
それが分からないうちは、
教える訳にはいきません。
魔法少女というのは…」

華「そうですね、すいません、先走って
しまって。では…」


華の語りが始まった。

華「私は沙織さんの言うとおり、華道の
家元、五十鈴家の一人娘です。
そのため、幼少より華道の手習いを
仕込まれてまいりました。」

最初はゆっくりと

華「でも、自分の作品にどうしても、
もの足りなさを感じる時期があり
さらなる成長のため、戦車道を
始めることにしたのです。」

目がキラリと光る

華「戦車道を通して、新たなる境地へ
至ろうとし、実際にそうすることが
出来ました。
ですが、近頃それでも満足出来なく
なって来たのです。」

目から光が失せる

華「焦りを覚え始め、どうしようと
思っていた時、巴さん、魔法少女の
あなたに会えたのです。」

マミ「もしかして、華道の精進のため
魔法少女になるというんですか?」

華「はい!巴さんの勇姿は照準器から
拝見させていただきました。
戦車を前にしてひるむことない
力強さ、
そして、優雅な立ち振る舞い、
それこそ、私が求めていたものです
!!」

沙織「落ち着いて華!いきなりなに
言ってんの?」

華「華道は私の生き甲斐なんです。
魔法少女になれば、もっと…」

マミ「残念ですが、そのような理由では
教える訳にはいきません。」

華「そのようなって…私は!」

マミ「成長しようというその気持ちを
否定する訳ではありません。
ただ、そのために魔法少女に
なるべきではありません。」

マミの声に鋭さがにじむ。

マミ「魔法少女になるにはキュゥべえに
願いを叶えてもらう必要があります
その対価として魔法少女となり、
魔女との戦いを受け入れるのです。
一生、死を覚悟で。」

沙織「死って…そんなにハードなの?」

マミ「だからこそ、人生を賭けてもいい
願いでないと絶対に後悔します。」

そもそも、とマミは続ける。

マミ「一度、魔法少女になれば、それが
生活の基本となり、他のことに
かまっていられません。
戦車道と同じではないんです。」

優花里「つまり、魔法少女をしながら
華道はできない、と。」

麻子「本末転倒だな。」







麻子がつぶやくと、華はうなだれた。

沙織「華、どうするの?」

親友が覗き込むも、彼女は黙ったまま。

それを見るマミは、どこか辛そうだ。

優花里「巴さん、一ついいですか?」

マミ「何でしょう」

優花里「さっき巴さんは、魔法少女に
なるにはキュゥべえに願いを
叶えてもらうと言ったけど…
キュゥべえとは?」

マミ「!!!」

マミは自分の迂闊さに気付くも、
遅かった。

マミ(どうしよう、流石に本人がいないと
説得力がないし…
何度もテレパシー送っているのに
何で出てきてくれないの!?)

魔法少女の基本能力テレパシー

マミはそれを使って友を呼ぶも、
待ち人はこない。

麻子《巴さん。キュゥべえなら私が呼ぶ
までこないぞ。》

マミ「え!?冷泉さん!?」

優花里「?」

突然、マミは動揺し出した。

しかし、さらに驚くべき存在が、
その膝の上に乗っていた。


QB「まったく、なかなか出させて
くれないなんて。マミが困っている
じゃないか麻子。」

麻子「久しぶりだなキュゥべえ、
会いたくなかったぞ。」

QB「なら呼ばなければいいじゃないか」

麻子「巴さんの話に説得力をもたせる
ためだ。
お前がいないと決め手に欠ける。」

QB「それなら最初から呼べばいいじゃ
ないか。」

麻子「さっきも言ったろ、巴さんに
必要になったからだ。
最初から呼んでいたらお前は…」

沙織「あのー麻子?その子だれ?」


いきなり、白い猫もどきと話し出した
幼馴染に沙織は声をかける。


麻子「仕方ないから紹介するぞ。
キュゥべえだ。」

QB「初めまして、僕、キュゥべえ。
早速だけど、僕と契約し」

契約という言葉が出た途端
麻子がキュゥべえの口を塞ぐ。

QB「麻子はひどいなあ。」

マミ「キュゥべえ!何度もテレパシーを
送ったのに何で来てくれなかったの
?」

QB「テレパシーの圏外だったからさ。
だから、杏子に伝言を頼んだんだ。
やっと伝わるところまできたら、
今度は麻子に口どめされたよ。
出てきたら耳を千切るってさ。」

麻子「なんだ本気にしてたのか。」

QB「ひどいなあ。」

沙織「話してるとこ横から悪いけど、
麻子って魔法少女の関係者?」

麻子「昔、キュゥべえに契約を迫られた
ことがあるだけだ。
両親が交通事故で亡くなった
直後にな。」

麻子の言葉にマミは目を見開く。

マミ「まさか冷泉さん、あなたも?」

麻子「いや、私は契約していない。
する気にならなかったからな。」


話終えると、麻子は一同を見渡した。

麻子「西住さん、私が巴さんと
キュゥべえのいうことは本当だと
保証する。
どうか信じて欲しい。
貴重な情報源だ。」

沙織「ちょっと待って麻子、それじゃ
みぽりんがマミちゃんを信じて
無かったっていうの?」

麻子「その通りだ。証拠もないのに
いきなり信じるなんて、無理な
話だろ。」

優花里「情報は真偽をしっかり確認
すべし!
そうですよね、西住殿!?」

みほの賛同を期待しつつ、優花里は
その顔を見る。

みほ「麻子さんの言うとおり、最初から
全部信じる訳にはいかなかったのは
本当だけど…」

我が意を得たりと優花里の表情は
自然と緩む。

沙織「みぽりんまで、そんな…」

麻子「逆に何でお前は信じれるんだ。」

沙織「麻子もみぽりんも斜めにかまえ
すぎだよ!だってマミちゃん…」

口論を始める沙織と麻子。

優花里がとりなそうとし、

華は未だに黙っている。

みほ(まずいな…)

よくない状況だ。

情報の確実性を求めた結果、
仲間の結束が揺らいでしまった。

みほ(この状況では、連携こそ重要なのに)

得たものはあった。

麻子が保証するなら、巴マミ、及び
キュゥべえとやらのいうことは、
本当のことと思っていい。

しかし、対価は安くなかった。

情報を活用するには連携が必要だが、
その連携が失われつつある。

みほ(みんなを何かに集中させられれば…
何か… みんながびっくりするものを)


QB《お困りのようだね、みほ》

みほ《えっ?》

QB《僕だよ、キュゥべえさ。これは、
魔法少女の基本能力、テレパシー。
話相手を思い浮かべて、
念じてごらん。》

みほ《でも私、魔法少女じゃ
ないのに?》

QB《魔法少女の素質を持つ者は、僕を
中継してテレパシーを使えるんだ。
そして、君にはすごい素質がある》




今日はここまでにしておきます

みほ「私が…魔法少女?」

思わず呟いたその言葉に
みほは、全員の注目を集める。

麻子「西住さん、何言ってるんだ?」

みほ《麻子さん、みんな、聞こえる?
私、魔法少女の素質があるみたい》

麻子「なっ!?」

沙織「すごっ!なにこれ!?」

優花里「テレパシー…というやつで
しょうか?」

QB「その通り、そして、テレパシーを
受信出来たということは、
全員、魔法少女の素質があると
いうことさ。」

あんこうチームはQBの説明を受けた。

麻子は嫌がったが、QBはマミに守られ
話した。

QB「魔法少女になるには、僕と契約
するんだ。そして、
魔女との戦いを受け入れる代わりに
何でも一つ願いを叶えてあげるよ」

みほ「私にすごい素質があるとは?
……詳しく聞かせて。」

優花里「西住殿!?」

ぶつかり合いかけた仲間たちは、
ひとまず落ち着いた。

少々、驚きはあったものの、この状況を
利用しない手はない。

しかし、魔法少女が話題の中心である
ことに変わりはなく、
分裂の危険はまだある。

もう一押し欲しい、話の本質を変える
何かが。

みほ「なぜ、私にそんなものが?」

QB「それは、君の持つ因果が大きい
からさ。」

思い当たる節はあった。

だが、今はどうでもいい。
皆の口論を興ざめさせるのだ。

連携を維持するためであり、

何より仲間がいがみ合うのは嫌だった。

みほ「因果というと?」

QB「君たちにとっての悲劇的な過去、
または、大いなる偉業といった
ところかな。
つまりは人生の濃さということだよ」

沙織「納得だね。だってみぽりん
戦車道で辛いことあったもん。

優花里「さらには戦車道全国大会優勝に
よって、
学園艦を廃校から救い、
そこに住む多くの人の生活を
守りました。
もっともな話です。」

優花里はどこか辛そうな顔をした。

QB「偉業が元で、強い素質を持つ者は
少ないんだ。大抵は…」

キュゥべえは何かに気付き
麻子とマミを見る。

QB「大抵は、悲劇的な過去を持つ者が
強い素質を持つ。
そういえば、マミと麻子は似た
過去を持っているね。」

マミ「キュゥべえ!それは…」

QB「一つ分からないことがある、
どうして君は、五十鈴華の契約に
理由をつけてまで反対したんだい?
仲間を欲しがっていたじゃないか。」

華「そう…なのですか?巴さん」

ずっと黙っていた華が、顔をあげる。

沙織「それに、麻子と似た過去って…」

マミ「…………」


みほは複雑な気持ちだった。

話題は魔法少女から、巴マミの過去へと
移りつつある。

みほが望んでいたことだが、
そのためには、マミが辛い思いを
しかねない。

しかし、中途半端に話を切り上げれば、
別の意味で雰囲気が悪くなる。

みほ(どうしようかなあ…)

マミ「あの…」

沙織「えーと、マミちゃん?
別に言わなくても私、気にしないよ?」

マミ「いえ、いいんです。確かに
私と冷泉さんの過去は似ています」

麻子「交通事故が…か?」

マミ「はい、それが私の人生を大きく
変えました。」

マミは朗々と語り出す。

両親とのドライブ、

楽しい思い出になるはずだった。

それが一瞬にして悪夢へ変わる。

強い衝撃を感じて気を失い、

気がつくと、ひっくり返った車内で

自分は死にかけていた。

マミ「その時、キュゥべえに出会い
ただ、自分一人助かりたいがために
契約したんです。
それからは、魔女との戦いと
他の魔法少女との競争の日々でした」

麻子(私にはおばあがいるが、この子は…)

みほ「ねえ、何で競争なんか?」

沙織「そうだよ、仲良く協力すれば
いいじゃん。」

マミは無言で、黄色い宝石を出した。

マミ「これは魔法少女の力の源、
ソウルジェムというものです。
力を使うほど、この中に濁りが
溜まります。それを」

マミ「この、グリーフシードで浄化
します。
これは、魔女を倒すと手に入る
いわば、報酬ですね。」

グリーフシードをソウルジェムに
近づけると、
ソウルジェムから黒い煙が立ち昇り、
グリーフシードへ吸い込まれる。

マミ「キュゥべえ曰く、濁りが溜まり
切ると死ぬそうです。」

沙織「そうなの?」

QB「うん、魔法少女としての死だ。」

マミ「力を使わずとも濁りは溜まり
しかも、グリーフシードの数には
限りがあるんです。
当然、奪い合いになります。」

QB「まあ、君はそのかぎりでは
なかったけどね。」

無視してマミは続ける。

マミ「もっと早く伝えるべきでした。
魔法少女は孤独なものなんです。」

マミは華の方を向いた。

マミ「五十鈴さん、あなたにはもう
仲間がいます。
一人ぼっちになってほしく
ないんです。」


マミの目は華の顔を離れ、壁の一部に
向けられる。

そこには、いくつかの写真がはられて
いた。



様々な戦車と人があんこうチームと 一緒に写っている。

おそらく今までの戦歴だろう。

どれも、互いの健闘を称え合い
友情を感じあって見える。

マミ(この人たちを、私たちの世界に
引き込むわけにはいかない。)



魔法少女は孤独である。

それは、マミが一番知っている。

マミ(そう…ひとりぼっちは私だけで充分)

両親を生き返らせず、一人助かる道を
選んだ結果…

足元でハッチが開く音がする。

誰か外へ出るようだ。

華「沙織さん?」

優花里「武部殿!不用意に出ては…!」

友の制止も効果無く。

やがて、側面ハッチをたたく音がする。

麻子が入ってきた扉だ。

優花里が開けると沙織が入ってくる。

そして、麻子と優花里を押しのけ

マミの前に至った。

マミ(???)

沙織「マミちゃん!」

マミ「な、なにか?」

沙織「魔法少女になるのは、
無理っぽいけど。」

マミ「?」




沙織「私、マミちゃんのお姉ちゃんに
ならなれるかな!?」

マミ「はい?」


麻子「なに、言ってんだお前。」

沙織「魔法少女になったら、
マミちゃんと争うかもしれないん
でしょ?
それなら、ならなきゃいいんだ。」

優花里「まあ、そうですね。」

沙織「それだとマミちゃんは
ひとりぼっちのまま。
でも、魔法少女の気持ちは
魔法少女じゃないと
分からないかもしれない。」


麻子「何が言いたい」

沙織「魔法少女にならず、なおかつ
マミちゃんの気持ちを知るには、
どうすればいいか!
私は考えたんだ。」

みほ「で、それが…」

沙織「義兄弟ならぬ、義姉妹になること
だよ!
そうすれば、私とマミちゃんの
間にある、魔法少女とかいう
壁はなくなるのさぁ!」



しばしの沈黙

やがて、くすくす笑う声がしてくる。

沙織「こらー!笑わなーい!
一大決心だったんだからねー!!」

みほ「ごめんなさい、でも、何で?」

沙織「カワイイ後輩が、孤独に悲しむ
なんて、お節介かもだけど許せない
私がマミちゃんの世界に入る
わけにはいかないなら、
マミちゃんを私たちの世界に
入れちゃえばいいんだよ。」

麻子「それで、妹か?」

沙織「うん!」

華「巴さん、いかがです?」

マミは目を閉じ何も答えない。

反応のないマミに、
沙織はようやくあわてだした。

沙織「あー、えーと、ごめん。
いきなりすぎたよね? 正直、
自分でもなに言ってるか…」

マミ「いえ、違うんです。その…
嬉しくて。」

マミは目を開け沙織を見る。

毒気が抜けたような顔をしていた。

マミ「沙織さん。」

沙織「はい、何でしょう!」

マミ「あまり、いい妹ではありませんが
よろしくお願いします。」

沙織の顔が一気に明るくなった。

沙織「よっしゃあ!カワイイ妹が
出来たぁ!」


華「おめでとうございます!さっそく
盃を交わしましょう!」


麻子「ちょっと違うぞ、それ。」


沙織「そんじゃ、さっさと魔女退治と
行こうか!みぽりん!」


みほ「じゃあ…パンツァー・フォー!」


あんこうチーム内のいさかいは回避され

巴マミとの関係も良好となった。

以前、仲間との通信は不可能であり、
心配だが、

今は、魔女の元へ向かうしかない。


優花里(しかし…)


秋山優花里のみは、未だ、 マミを信じきれていない。

だが、隊長たる西住みほは、
マミを信用に足る人物とみているようだ


優花里(西住殿と考えを違えるなんて…
そんなの、嫌だ。)

マミはマミで、華のことが
気になっていた。

さっきから壁の方を向いて黙っている。

正しいと思っていた考えを否定された
ようなものだ。

いくらかショックをうけたのだろう。

何か話さねば。

マミはその思いに、自然と至った。


マミ「あの、五十鈴さん?」


華「ふぁい?」


振り返った華の口は芋で溢れていた。

華「あ、食べます?大洗名物の干し芋」


マミ「五十鈴さん、あの…」


華「魔法少女のことですか?
もう、大丈夫ですよ」


そういう華は、どこかふっきれた様子だ


華「私の悪いところです、これはと
思うと、ろくな考えなしに
首をつっこんでしまう。」


マミ「・・・・・・・」


華「でも、諦めた訳ではありません。
契約なしでも、魔法少女から
学びとれることはあるはずです。」


マミ「前向きですね、羨ましいです。」


華「巴さんも、現状を悲観しないで。
あなたのしていることは、
素晴らしいことだと、
私は胸をはって言えます。」


華は、壁の一部に目をやる。
写真が貼ってあるところだ。


華「今度は、私たちの紹介を
しましょうか。」

結界の中を戦車がゆく。

その中では、大洗女子の紹介が写真を
用いつつ行われていた。


マミ「えーと、この人たちがカバさん
チーム。で、こっちが
アヒルさんチーム。
当たってます?」


沙織「マミちゃん記憶力いいねー、
お姉ちゃん嬉しいよ!」


みほ「巴さん、大体分かって貰えた?」


マミ「おかげさまで。みなさん個性的で
すぐ覚えられました。」


華「そうですね、カバさんチームは
歴史が好きで、
アヒルさんチームは元々
バレー部でしたし。」


沙織「言われてみればそうだね。
我ながら濃い仲間だこと。」



優花里「・・・・・・・」

マミ「学園艦というのもびっくりです、
船の上に学校や街があるなんて
初めて知りました。」


沙織「それは、こっちのセリフだよ。
見滝原中学って地上にあるんでしょ
学校はみんな学園艦の上にあると
思ってた。」


華「街一つが乗るほど大きな船は、
維持費も大変ですから、最近は
安くつく地上に学校を建てることが
見直されてきているんらしいです。」



優花里「・・・・・・・・」



談笑にふける三人を横目に
優花里はテレパシーを試してみた。

相手はみほである。

優花里《西住殿、内密の話があります》


みほ《テレパシー…優花里さん?
口に出せない話?》


優花里《巴さんのことです。私は、
どうもあの子を信用しきれません》


みほ《そんな…魔法少女や契約のことに
ついては、麻子さんが保証すると…》


優花里《そのことではありません、
巴さん自身についてです。彼女、
まだ何か言ってないような
気がします。》








みほ《確かに巴さんは、完全に私たちの
味方になったとはいえないのは
事実だよ。
もしかしたら、寝首をかかれる
かもしれない。》


優花里《では!》


みほ《でも、巴さんが今の状況を一番
的確に対処できるのもまた事実。
協力はどうしても必要だよ。》


優花里《・・・・・》


みほ《優花里さん、ひとりで
気張らないで。それに、
さっきみたいなことはもうしないで》


さっきみたいな、とは、すなわち
巴マミと最初に出会った時である。

最初は、優花里が単独でマミの背後に
回り込み、奇襲する予定だった。

ここで、みほがオトリをかってでたのだ

優花里は当然、反発したが、
みほに押し切られてしまった。


みほ《自己犠牲は美徳だけど、その前に
みんなで補い合うことが大事だと
思うな。》


優花里《わかり…ました。》


みほ《ありがとう、じゃあ、巴さんが
言ってないこと、聞いちゃおうか》


優花里《へっ!?》

みほ「巴さん、ちょっといい?
聞きたいことがあるの。」


マミ「はい、何でも聞いてください。」


みほ「巴さんが、魔法少女は互いに
争い合う関係と言った時、
キュゥべえが巴さんはそのかぎり
では無いって言ったよね。」


マミ「あ……」


みほ「もしかしてそれは、
昔、一緒に協力
していた仲間がいたってことじゃ
ないかな。」

ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー


薄暗い空が様々な音がこだましている。

丘の上を銃声と共に、光線が一筋二筋
飛び交い。

砲声に続いて、地面がえぐられる。

杏子「はあ…はあ…はあ…。」

そのただ中で、佐倉杏子は満身創痍の
体を成し。
巨大な敵と対峙している。


いうまでもなく、魔女である。



杏子「こんなデケェ結界の主って
いうくらいだからよぉ…」


杏子は槍を持ち直し、改めて相手をみる


全体としては、山そのもの、
高さは百メートルをゆうに超すだろう。


その表面たるや機銃、大砲、索敵レーダー
その他諸々埋めつくし。


堂々たる様は難攻不落を体現したかの
ごとくである。


杏子「魔女要塞……てか。」


流れ出る血をもろともせず。
杏子は再度、槍を構えた。

ダダダダダダダダダダッッッッッ!!!


機銃の応射が始まる。

避けようとするも


ドンッ! ドドンッ!ドンッ!!


大砲に狙い撃ちされてしまう。

退けば大砲、寄せれば機銃。

杏子は近づくことすらままならない。


杏子(相性が悪すぎる…)


彼女のソウルジェムは、すでに
六割ほど濁っている。

杏子(マミ…)


一瞬、かつての師であり、戦友であった
者の姿を思い浮かべる。

しかし、すぐにその思いを振り払う。


ズガガガガガガガガ!!!!!


槍を変化させた多節槍で、飛んできた
砲弾を叩き落とすも、体はフラフラで
ある。


巴マミのように、遠距離から
攻撃できる能力が望ましい。

マミの支援があれば…


杏子「何考えてんだよ…私…」


かつて、自分からマミに三下り半を
突きつけたのである。

マミの協力を求めるなどプライドが
許さない。


ズガガガガガガガガ!!!!!

ズドオォォォォォン!!!

要塞の中腹より光がまたたき、直後、
足元の地面が吹き飛ぶ。

杏子は飛び上がって難なく避けると

ある丘の頂上に降り立った。


杏子(さぁて、本格的に何とかしねーと…)


ざわざわ… ざわざわ…


杏子(あれ?)


杏子は前方の地面が波打っていることに
気付いた。

ざわざわ ざわざわ ざわざわざわ

前だけではない、後方、左右も同じく
波打つ。


ボゴォォォォォォ!!!!!


杏子「!」


地面の中から使い魔の大群が現れ
杏子を取り囲む。

伏兵だ。


杏子「飛んで火にいる虫ってか…?」


体が限界に近づくも杏子は笑みを
浮かべてみせる。


杏子「上等だ、かかってきな!!!」

シュルルルルルルルルルルルッ


突然、黄色いリボンが現れ、
杏子の体を拘束し、空中へ持ち上げる。


杏子「何だぁ!?」


地上を見ると、使い魔の群れは
黄色いリボンで出来たいくつかの檻で
小分けに閉じ込められている。


杏子(このリボン…)



マミ「ティロ・リチェルカーレ!!」

多目標同時砲撃魔法ティロ・リチェルカーレ


放たれた砲弾は、それぞれの檻を直撃し

使い魔を肉塊へと変える。



一方の杏子は、縛られたままどこかへ
つれていかれる。

やがて見えてきたのは、かつて見知った
顔。そして、


杏子「戦車?」


杏子はエンジン音を響かせる鉄の塊の
上に降ろされた。


マミ「また会ったわね、佐倉さん。」


杏子「何で、あたりまえみたいに戦車
乗ってんだよ」


マミ『こちら巴マミ、佐倉さんの回収に
成功しました。どうぞ。』


マミが咽頭マイクより通信を送ると
砲塔上部ハッチが開いた。


みほ「お疲れ様です、巴さん。
あなたが佐倉さんですか?
私、西住みほと言います。」


それに続き


パカッ


沙織「おおー、大漁だねマミちゃん。」


パカッ


華「大丈夫ですか? ひどいケガ…」


パカッ


優花里(増えた…)


パカッ


麻子「乱暴そうな奴だな。」


いたる所から見知らぬ顔が飛び出す。


杏子「?????????」

マミ「あなたの協力が欲しかったけど
そのケガじゃ無理そうね。」


杏子「な!?おい何言ってんだ離せ!」


自分が縛られいることを思いだし、
杏子は暴れる。

マミは何も言わず、杏子の胸についた
ソウルジェムにグリーフシードを近づけ
浄化した。


マミ「キュゥべえ!」

マミは濁りを吸収し切った
グリーフシードをキュゥべえに投げ渡す

それはキュゥべえの背中に吸い込まれた


沙織(へー、ホントにそうやって処理
するんだ。)


マミ「みなさん、佐倉さんのこと
お願いします。」


杏子「勝手に何決めてんだ、オイ!!」


マミ「そんなボロボロで戦える訳
ないじゃない。どうせ、また、
後先考えず突っ込んだんでしょう」


杏子「うるさい!あれは私の獲物だ!」


マミ「魔女とは私が戦います。でも、
傷を直して加勢してくれたら
手に入れたグリーフシードは全部
あげる。
それでどう?」

しばし杏子は黙る。

やがて、その顔に不満の色がありありと
浮かんだ。


杏子「……変わってねえ、
その勝手な所といい、
馬鹿みてえに自分を犠牲にする
所といい…」


マミは何も答えず、杏子を縛ったまま
砲塔の中へ押し込んだ。


杏子「おい、やめろ!私はそれでいい
なんて言ってないぞ!!」


マミ《そのリボンには治癒魔法が付加
されているから、早い治るわ。》


杏子「はなせはなせはなせーーー!!」


杏子の怒声も虚しく、マミは戦地へ
飛び立った。

押し込められた杏子を、
あんこうチームが取り囲む。


みほ「佐倉さん。どうか落ち着いて。」


杏子「うるせえ!何なんだあんたら!」


華「私たちは巴さんに助けられた者です
色々無理を言って、一緒に来させて
もらいました。」


杏子(あのヤロー…)


沙織「ねえ、ちょっと聞きたいことが
あるんだけど。」

杏子「……何だよ」


沙織「マミちゃんから聞いたよ。
あんた、一番弟子だったんでしょ」


杏子「何が言いてえんだ、本題をいえよ」


沙織「あんたと会う前、そして別れた後
マミちゃんはホントにずっと
一人で戦ってきたの?」


杏子「そうだよ、たまに他の奴と協力
してたみてーだけど、大抵
裏切られてたね。」

沙織(・・・・・・)


杏子「これもマミから聞いたか?
魔法少女は孤独なんだ。」


沙織(・・・・・・)


杏子「魔女を退治しても、誰も褒めたり
してくれない。なのに、
マミは人の為に魔法少女をしてる
馬鹿な奴さ。」


沙織「そんなことない!」


沙織は通信器に手をかけ電波をだした。



マミ(大物ね……。)


魔女要塞を臨む丘に、マミは降り立った


突然、通信が入る。咽頭マイクをつけた
ままだった。


沙織『あー、マミちゃん聞こえる?』


マミ『武部さん?どうされたんです?
まさか、佐倉さんが…』


沙織『そうじゃないの、ちょっと
言い忘れたことがあってね。』


マイクから息を吸う音がした。

沙織『いってらっしゃい!
早く帰ってきてね!』


マミ「っ!」


久しく聞いていない言葉だった。

何と返せばいいか、一瞬、思い出せない



沙織『おーい、どうしたのー?
マミちゃーん?』


やっと思い出した時、胸の底が熱くなる


マミ「いえ…いってきます!」

マミは再び魔女要塞と向き合う。

周囲に数門の大砲を出現させ、
狙いを定める。


マミ(絶対にみんなを助ける!だって…)


砲火が輝き、轟音が轟く


マミ(私は、もう一人じゃない!)

その頃、戦車の中では


麻子「粋なことするな、沙織は。」


華「とっても、カッコ良かったです!」


沙織「そーお?まあ、お姉ちゃんなら
言うべきかなーって思ってさ。」


展開された人情話しに三人は盛り上がる


杏子「……」


みほ《佐倉さん…お話、いいかな?》

杏子《テレパシー…》


みほ《あなたは、巴さんがずっと一人で
戦ってきたと言ったけど、
佐倉さんも?》

杏子《……そうだよ、》


みほ《さみしくなかった?》


杏子《…………》


みほ《ごめんなさい、変なこと聞いて。
佐倉さん、怒りつつも何だか、
巴さんを気にかけている
みたいだったから。》


みほはそういうと、再び外へ身を出した

砲塔の中杏子は縛られ転がっている。


杏子(どうしてこうなった?)


戦車道、大洗女子学園、あんこうチーム


みんなの説明を受けたが、頭に入らない


QB《混乱しているようだね、杏子。》


杏子《キュゥべえか…》


QB《僕としてはそうしてくれれば助かる
これから仕事があるんだ。》


杏子《ーーー!!》


QB《西住みほ、彼女の素質は素晴らしい》

ドーン!! ドドーン !! ドーン!!!


双眼鏡の向こうで砲火が飛び交っている

ズドオォォォォォン!!!

マミの攻撃により、巨大な魔女要塞が
その身を震わせ


ズガン!ズガン!ズガン!ズガァァン!


負けじと魔女要塞も撃ち返し、
マミの周りに大きな穴を作っていく。
戦車など一発で粉々になる威力だ


マミは軽々と避け、反撃する。



みほ(これが、魔法少女の戦い…)


司令塔から顔を出しみほは観戦していた


そして、その横にキュゥべえがいる。




QB《驚いているのかい?みほ》


みほ《うん、巴さんってとっても
強いんだね。》


QB《確かにマミは強い。でも、今回は
少々、分が悪そうだ。》


みほ《えっ…》

QB《マミは先程、杏子のソウルジェムを
手持ちのグリーフシードで浄化した
実は、それが最後の一つだったんだ。》


みほ《つまり、どういうこと?》


QB《あの魔女を倒すまで、マミは
浄化ができなくなるということさ、
その前に濁りが溜まると、彼女は
死んでしまう。》




みほ《なら、その前に倒せば…》


QB《理想としてはね。しかし、今回の
魔女はかなり強力だ、マミは
ベテランだけど、一人では心もとない》


みほ《じゃあ…》


QB《そう、君が契約して加勢すれば
勝利の確率は跳ね上がる。》

みほは自分にも何かできないかと
悩んでいた。


しかし、目の前の戦場は、その思いが
身のほどに合わぬものであると
彼女に思いしらせた。


みほ(何かできるとすれば、契約を…)


そうすれば、みんな助かる。


また、助けられてばかりも嫌だ。


ドガァァァァァァァン!!!


みほ「!?」

マミのいた所に砲弾が直撃した。


沙織『マミちゃん大丈夫!?』


マミ『かすった…だけです!』


『ズガガガガガガガガ!!!!!』


マミ『くぅ!!』


沙織『マミちゃん!』


マミが押されている?


みほ(やっぱり、私が…!)



杏子《聞こえるかー?センパイ》

みほ《うえっ!?》


杏子《キュゥべえにえらく気にいられ
てんじゃん。すごい素質だってな》


みほ《うん、だから契約を…》


杏子《慌てんな、マミはあんなやつに
負けやしない。それに、あんたが
行っても足手まといだ。》


みほ《・・・・・・》


杏子《先輩として言っとくぞ、誰かの為
魔法少女になんかなるな。》

みほ《何故そんなこと、私に?》


杏子《ただの気まぐれさ、魔法少女自体
いいもんじゃない。私を見りゃ
わかんだろ。》


ボロボロになった杏子を思い出し
みほの決心しかけた心が揺れる。


杏子《それに、これ以上魔法少女が
増えても困る。グリーフシードの
取り分が減るしよ。》

みほが思いを巡らす中キュゥべえが
つぶやく。


QB《困っているね。みほ。杏子の差し金かい?》


みほ《…………》


QB《まあ、無理にとは言わないけどね
おすすめできないのも事実だ》


みほ《え?》


杏子《んなっ!?》


杏子《キュゥべえ…おまえ…?》


QB《あれ?僕はあたり前のことを言った
だけだよね?》


杏子は驚いた。

キュゥべえは一度見つけた標的には、
しつこく、しつこく、つきまとう。


こんなことをいうタマではない。


杏子(なに企んでいやがる。…)

ズドオォォォォォン!!!


いきなりの轟音に、みほは我に帰った。

見ると、魔女要塞の中腹が大きく
吹き飛んでいる。


沙織「やったよみぽりん!マミちゃんが
やった!」


華「よくわかりませんが、もう少しです!」


車内は一気に盛り上がる。


ドシュッ!ドシュッ!ドシュッ!


優花里「西住殿!何か飛んできます!」

要塞から撃ち出れたそれは弧を描き
戦車の周りに着弾した。


みほ(あれは…。)


見ると、それは円筒型の物体だった。

やがて、縦に一筋線が入り


みほ(まさか…)


ぱかり、と左右に割れた。

その中から使い魔の群れが飛び出した。


みほ「麻子さん、出して!」

魔女をあと一歩まで追い詰めたマミだが

咽頭マイクからの悲鳴にあんこうチームの
ほうを振り返る。

マミ「みんな!」


その目に映ったのは使い魔の大群に
囲まれた戦車だった。

マミ『みんな!大丈夫ですか!?』


マミから通信が入る


みほ『こちら、あんこうチーム。現在
敵に包囲されています!』


優花里「装填よし!」


華「えい!」


ズガァァァン!!!


戦車砲が群れの一角を吹き飛ばす。

しかし、使い魔の勢いは止まらない。


バキバキバキバキ…


群がる使い魔を履帯で踏み潰すも
一匹潰せば十匹が群がってくる。


華「このっ!!」


砲塔を左右に振り回し、車体に取り付く
使い魔を幾らか叩き落とすも効果は無い


みほ(どうする?このままじゃ…)


一瞬、契約の二文字が頭に浮かぶ。


みほ(く……)


杏子《助けてやろうか?》

みほ《え?》


杏子《このリボン解いてくれたら、
助けてやるってんだ。》

麻子《ちょっと信じられないな。》

麻子が即座に反論する。


杏子《マミが、加勢したら、とった
グリーフシード全部くれるって
言ったんだ。あんたら助けるのも
加勢のうちだ。》


みほ《本当に?あなたが逃げ無いという
保証は?》


杏子《私が逃げるにしても、使い魔を
吹っ飛ばさなきゃならない。
そしたら、あんたらはその後を
ついてくればいいだろ。》


みほは聞き終えると、無言で
杏子の拘束をはずしにかかった。

ズドドドドドオォォォォォ!!!!!!


地中から現れた複数の巨大な多節槍が
空を切り

戦車に取り付いていたもののみならず
周囲にいた使い魔も吹き飛ばす。


攻撃が収まると、戦車の上に
杏子が仁王立ちでたっていた。


杏子「いまの私はムシャクシャしてんだ
…覚悟しな。

多節槍が宙を舞い、並みいる使い魔を
屠っていく。


杏子「オラオラオラオラオラァ!!!」


みほ「いける!全速前進!!!」


命令と共に戦車が速度を上げる。


使い魔を吹き飛ばしながら進む
戦車の姿は壮観である。


マミ《佐倉さんあなた…》


杏子《魔女に集中しろマミ!》

麻子「で、どこ行くんだ?」


みほ「とりあえず、この場を離脱します
方角を見失なわないで!」


麻子「わかっ・・・。」


優花里「うわっ!?」


沙織「ひゃあ!?」


華「これは?」


突然の異変が戦車を襲った。

いきなり車体が持ち上がり、
前進が止まったのだ。


みほ「何が!?」


杏子《使い魔だ!使い魔に持ち上げられてる!》


麻子「履帯がカラ回りしてる。上手に
持ち上げられたな。」


優花里「佐倉さん!排除願います!」


杏子《言われなくても・・・・って
うわあああああ!!??》


ズドオォォォォォォォォォン!!!!!

ズドドオォォォォォォォォォン!!!


持ち上げられた戦車に砲弾が降り注ぐ

最初みほたちを砲撃した大砲だ。


杏子(動きを止めて狙い撃ちってか!?)


杏子により砲弾は防がれるも

使い魔の排除ができない。

陥落は時間の問題だ。


『たい・・・ちょ・・・』


沙織「?」


ズドオォォォォォン!!!


車体の下で何かが爆発し、戦車が着地する。


優花里「これは…?」

みほ「麻子さん、前進して!」

続いて、戦車の周りで砲声が響いた。


状況を確認するため、みほは司令塔から
顔を出す。


その横を見慣れた影がすれちがった。

『撃て撃て撃てぇーーー!!!!』


『隊長に指一本触れさせるなぁ!!』


『これでもくらえーーーーー!!!』


通信機から懐かしい声が聞こえてくる。


ズドオォォォォォン!!ズガァァァァァァァン!!ドガガガガガガ!!!!!!


追い迫る使い魔たちはたちまち引き裂かれていった。


みほ「みんな…みんなだ…。」

第二部 完 です


ちょうど半分です


早くおわらせたいです

再開します

杏「西住ちゃーん、だいじょーぶー?」


エルヴィン「隊長!ケガは無いかぁ!!
グデーリアンは!?」


優季「せんぱーい!」


ナカジマ「たいちょー、どっか壊れて
ないー?」


続々と通信がはいる。

間違えるはずの無い仲間たちの声だ。


みほ(これで…)


優花里「これで脱出できます!
我々だけでは無理でも、みんな
一緒なら!」


そうすれば、あの人は…





ヒュルルルルルル………



みほ『ーーー!みんな!後退して!』


ズガァァァァァァァン!!!!!!


あや『ひゃあああああああ!?』


左衛門佐『何事だ!?』


みほ『大砲です!戦車が一発で破壊されるくらいの!』


ツチヤ『戦略的撤退!』



ズドオォォォォォン!!!


見えない大砲からの砲撃に続き
魔女要塞も大砲を向ける。


マミ「よそ見しない!」


ドンッ!ドンドンッ!ドドンッ!


スキを見逃さず、マミは攻撃を加える。


マミ『西住さん、何が起こったんです!?』


みほ『みんなだよ、みんながきてくれた!』


マミ(みんなって…)

マミは、みほたちがいるであろう
方角を見た。


戦車が五台走っている。


三号突撃砲 M3リー ヘッツァー

そして、ポルシェティーガー


いずれも、みほに教えてもらった戦車だ


しかし、


マミ(足りない?)

ブシュウウウウウウウウ!!!!!!


マミ「なに!?」


魔女要塞の砲という砲から、白い煙が
吹き出した。


マミ(煙幕!?いけない!)


シュウウウウウウウ…………


その煙はすぐに、みほたちの所へ達した


あゆみ「なんだぁ!?」

煙が立ち込める中、マミは敵の所在を
探る。


マミ(これは?)


みほ『巴さん、状況はわかりますか?』


マミ『……魔女と使い魔の反応が…
消えました。』


みほ『それって…?』


マミ『半径十キロ以内に敵はいません』


やがて、煙幕は晴れ、停止した戦車
たちが姿を現した。

みほはハッチを開け、砲塔の上に立った


他の戦車も次々とハッチが開かれ、

懐かしい顔を覗かせる。


それらは地面に飛び降り、

我先に四号戦車へ駆け寄ってきた。

あや「たいちょー!あいたかったですー!」


優季「怖かったー!無線もケータイも
つながらなかったー!!」


桂利奈「あいーーーーーーーー!!!」


あゆみ「ちょ、ちょっと落ち着いてぇ!」


紗希「・・・・・・・・・・・・・・」


みほに一年生チームこと
ウサギさんチームがとびつく。

梓「隊長。」


そんな中、ウサギさんチームリーダー
澤梓がみほに声をかける。


みほ「澤さん、大変だったね。」


梓「…………」


何も答え無い。ただ静かに敬礼をした。

エルヴィン「生きてたかぁ!グデーリアン!!」


優花里「エルヴィンさん、左衛門佐さん
カエサルさん、おりょうさん!」


おりょう「なんちゃあのうて、まっこと
えいがったぜよ。」


左衛門佐「見たところあんこうは全員
揃っているな。」


カエサル「本当に何もないか?
心配したんだぞ。」


杏「いやいや、おつかれさんだね~。」

杏「いやいや、西住ちゃん、
大変だったね~。」


ひょっこり現れたのは、カメさんチーム
リーダーであり、生徒会長の、角谷杏。
そして副会長の小山柚子である。


杏「なにしても連絡つかないから、
心配したよ。」

みほ「会長、一つ聞いていいですか?」


杏「んー?いいよー。」


みほ「河嶋先輩はどこに?それに何人か
足りないようなんですけど。」


柚子「実は桃ちゃん、この事態に気絶
しちゃって…」


杏「あと、アリクイさんチームに、カモ
さんチームに、アヒルさんね。
これ見てよ。」


杏はケータイを操作し、一通のメールを
見せた。

みほ「これ…そど子さんからの?」


そど子こと、園みどり子
風紀委員である。同時に、


麻子「みせてください。」


麻子と奇妙な関係を維持している人である。

それは、試合中にアリクイさんチームの
三式中戦車、
アヒルさんチームの89式
中戦車、
さらにカモさんチームの
ルノーB1bisが相手チームに
撃破されたことを知らせる内容だった。


杏「どうしても連絡つかないから、私に
メールで伝言頼んだんだ。
風紀委員は真面目だねぇ。」


柚子「だから、今この変なところにいる
のは、私たちで全部です。」


麻子「確かにそど子のアドレスだ。」


みほ「………」



腑に落ちないところはあったが
筋は通っている。

何より信じたかったのでそうすることに
した。


杏「それよりさー」


杏はこちらを見つめる、奇妙な服装の
少女たちを横目で見た。


杏「なんか面白そうなことやってんじゃん」


そういいつつ、杏は芋をくわえた。

再開します

荒野のただ中に数台の戦車が停まり

その中の一つ四号戦車の前に人だかりが
できている。


みほ「…以上がこの結界と魔女、そして
魔法少女についてです。」


QB「きゅっぷい」


マミとキュゥべえの助力を得つつ、
みほは今の状況を説明した。


予想通り、皆一様に困惑の色をありありと浮かべ、

ある者は顔を見合わせあい、ある者は
先々の不安に身をすくませ、

またある者は芋をほおばり…


杏「あ、食べる?」


杏子「くれ」


みほ「んな!?」

ホシノ「会長は相変わらずか?」


スズキ「どこでも、芋があればいいもんな」


ツチヤ「肝っ玉でかいよねー、後は
ちっちゃいけど。」


杏「聞こえてんぞー、あんたらもたべな」


自動車部ことレオポンさんチームの
茶々に、杏が間抜けた声で答えると。
全員の空気が少し和んだ。


その後、芋の袋が全員に回された。

杏「ほら、あんたも。」


マミ「あ、ありがとうございます。」


杏「んでさ、西住ちゃん、これから
どうすんの?」


みほ「いま、優花里さんと沙織さんに
偵察を頼んでいます。まずは、
情報を集めないと。」


噂をすれば影。その二人が帰ってきた。


沙織「みぽりん、いってきたよー!」


優花里「報告します!敵部隊、
現地点より5キロ四方に展開!」


みほ「!!」

優花里は声が大きすぎたと気づくも
遅かった。

再び動揺が広まる。


桂利奈「私たち、食べられちゃう?」


あや「いやだよそんなの!隊長ぉ!」


優季「これからどうなるの?あゆみちゃん。」


あゆみ「わ、私に言われても…。」



最初、バラバラに結界に囚われ、

使い魔に追い回されているうちに
みんな合流したと杏は話した。

やっと振り切った矢先、みほたちを
見つけたという。


再び恐怖が蘇り、ウサギさんチームが
顕著である。

みほ「え…と、みんな?その、」


梓「みんな!落ち着いて!!!」


恐怖が沸点に至る直前、梓の一喝で
その場は収まる。


梓「隊長、指示をお願いします。」

優花里の説明、再度の偵察により、


幾つかの敵部隊は、間隔をあけて
完全に戦車隊を包囲していることが
わかった。


しかし、攻撃のそぶりは、全く見せない


ナカジマ「何で襲ってこないかね?」


カエサル「こちらが恐怖に震えるのを
笑っているのか?」


様々な意見が飛び交った。

杏「ねー、巴ちゃんだっけ?ちょっといい?」


マミ「何でしょうか、角谷さん。」


杏「魔女とか使い魔ってさ、お腹とか
空くの?」


マミ「人を食べたりしますけど、基本、
何も食べなくても……まさか。」


杏「じゃー、あれだね、兵糧攻めじゃ
ないの?」


みほはハッとした。

包囲戦において、最小の犠牲で最大の
戦果を成すには一番の方法だ。


相手はいくらでも待てるのだから。

左衛門佐「まるで、備中高松攻めか、
小田原攻めのようだ。」


おりょう「いや、ここは会津若松ぜよ」


エルヴィン「スターリングラード…
は、言い過ぎか。」


マミ「??????」


カエサル「巴さん、これが普通だから
気にするな。して、隊長、
これからどうする?」


それは、みんなの疑問であり、みほは、
返答に困る。」




QB「私見だけど、このままじゃ状況は
変わらない。むしろ、悪くなるね」


代わりにキュゥべえが、いつか聞いた
言葉を口にした。

杏子(こいつ…)


QB「僕が見えるということは、みんな
魔法少女の素質があるということ。
誰か一人でも、契約すれば、全員
助かる。」

マミ「キュゥべえ!!」


QB「でも、さっきみほが言った通り、
代償は大きい。それに、
君たちは契約無しでも、この状況を
打開できる力を持っている。」


梓「つまり、こちらから打って出ると?」


QB「その通りさ。」


全員の脳裏に、戦車で進軍する己の姿が
浮かぶ。



みほ「……優花里さん、食糧は持って
どのくらい?」


優花里「会長の干し芋と私の戦闘糧食が
全部食べられるとして、
二日ほどでしょうか。」


みほは、しばし視線を落とし、やがて、
顔を上げた。


みほ「各車車長は集まってください。
残りの人は戦車の点検を。
それと巴さん、」


マミ「はい。」


みほ「会議で意見してください。」

ナカジマ「んじゃ、あんたたち、整備
よろしく。」


ホシノ「ボルト締め直すぐらいしか
できないんじゃ?」


スズキ「溶接ごてあったよね、他に色々
できるよ。」


ツチヤ「燃えるねぇ♪」

優季「梓ちゃん…。」


梓「しっかり!こういう時は気持ちが
大事だよ!」


あゆみ「だ、だよね!前向きにいこう!」


桂利奈「怖がらされた分お返しだ!」


あや「食われてたまるかってんだあ!」


紗希「・・・・・・・」


一同にわかに活気づいた。

全員、自分なりの仕事を見つけ、
務めをはたす中、

佐倉杏子は、ある人物をつけていた。


副会長 小山柚子である。


車長会議に出る角谷杏と別れた後、
カメさんチーム車 ヘッツァーに戻る
ところだ。


杏子(キュゥべえもあいつも、なに隠して
やがる。)


それに柚子が言った言葉も気になる。

杏子(モモ……)


かつて、自分の祈りのせいで死に別れた
妹の顔が浮かぶ。


杏子(違う…それが気になる訳じゃ…)


麻子「なにこそこそしてる?」


杏子「うおっ!?」

突然、後ろから声をかけられ
杏子は情けない声を出した。

その口を麻子が抑える。


杏子「なにしてんだ、びっくりすんだろ」


麻子「小山先輩に聞きたいことがある。
お前はどうしてだ?」


杏子「……………」


麻子「言いたくなければいい。」

ヘッツァーは他の戦車とは、やや離れた
場所に停められていた。

周囲の丘がうまく隠している。


杏子「私はわかるけど、なんでアンタも
こそこそしてんだよ。」


麻子「今、先輩は一人で警戒している。
河嶋先輩のいるヘッツァーに戻り、
安心したスキをつくんだ。
その方が聞きやすい。」


杏子「聞くって何を。」


麻子「全体の士気、特に西住さんに
関わることだ。」


杏子(西住さんねェ…)

麻子「どうした?」


杏子「その西住って人、えらく仲間に
親しまれてんじゃん。あと、
キュゥべえにも。」


麻子「あいつは余計だ。西住さんも誰も
契約なんかさせない。
あんな運命背負わせられるか。」


杏子「マミに聞いたよ、あんたも昔、
キュゥべえにあったんだろ。」


麻子「ああ、両親が交通事故で死んだ
直後にな。」

杏子「あっさり言うな、あんた…。
てか、あんたもかよ。」


麻子「巴さんもそうらしいな。一緒に
事故にあったかどうかの違いだ。」


杏子(そうじゃねぇよ。)



麻子は話し終え、前をみる

そこには、柚子がこちらをみて立っていた。

柚子「冷泉さんに…佐倉さん?何か
ご用?」


麻子「ふにょ!?」


杏子(あっ、バレた。)


少々声が大きかったようで、尾行が
バレてしまった。

今度は麻子が情けない声を出す。


杏子《あんた、カワイイ声出すのな。》


麻子「小山先輩、聞きたいことがある」


杏子のテレパシーを無視するも、
その顔は赤かった。

柚子「見当たらない人たちのこと?それなら…」


麻子「あのアドレスはそど子のものじゃ無かった。
何か訳があるとふんで話を合わせただけです。」


柚子「………」


麻子「それに、真面目なあいつが、
連絡をメールで頼むとは考えにくい。」


麻子に問い詰められた柚子は黙ってしまう


杏「あはは、やっぱ無理があったか。」


後ろからの声に振り返ると杏が立っていた。



柚子「会長…会議は?」


杏「芋が切れたから抜けてきた。
話したげようよ、その代わり
絶対、秘密ね。」

杏の話によると、

最初、結界に入ったとき
カメさんチームだけだったそうだ。

そして、周囲を確認するため一際高い
丘へ登った。


柚子「その時見たの、すごく遠かったけ ど、
今いない人の戦車が使い魔に追いかけられてるところ。」


杏「あっという間に消えちゃってさ、
こっちにも追手がきたから、逃げて
そのままそれっきり。」


杏は自嘲的に口元を歪ませる。


麻子「つまり、安否はわからない、と?」

柚子「大丈夫…絶対、死んでなんか…」


杏「小山、どーどー。」


一瞬、感情を噴き出す柚子を、杏がいさ める。


杏子「このこと知ってんのはあんたたち
だけか?なんで言わねえんだ。」


杏「佐倉ちゃんだっけ?もちろん
知ってるのは私たちだけ、
教えないのは士気の低下を防ぐため。
そして…」


杏「佐倉ちゃんは西住ちゃんに会うのは
初めてだから…
そうだね、イチから説明するよ。」

西住みほ

彼女は元々、大洗の人間ではない。

かつて熊本県は黒森峰女学院に在校し、

戦車道流派「西住流」を伝える西住家の次女であった。

そして、姉の西住まほ率いる戦車隊の
副隊長を務めていた。

柚子「黒森峰は全国大会を連覇するような
強豪校であと少しで十連覇ってとこまで
きていたの。」


杏「ある大会の決勝で、味方戦車が川に
落ちちゃってね。助けようとしたら
そこを攻撃されて連覇ならず。
責任感じてトラウマもらったわけ」

杏子(それなりの過去持ってんだな。)


杏「なのに、傷心気味ところ強引に
戦車道を履修させたのが私たちでさ
酷なことしたなーって思ってる訳よ」


麻子「そのことなら、西住さんは克服した。」


杏「だからだよ、本当のこと知ったら、
西住ちゃん心配するでしょ?
下手したら、またトラウマもらい
かねない。
そんなのいやなんだ。」


麻子「……………」


杏子「………いつかバレるぞ、それ。」


杏「バレたときは、甘んじて罰を受けるよ。
それに、少なくとも今、私たちが話さない限り
西住ちゃんは悩まない。」


柚子「私たち生徒会は、西住さんだけ
心配する訳にもいかないの、
最低限、今いる人たちだけでも
無事に帰さなければいけない。」


杏「私たちの力じゃ出来無いけど、
西住ちゃんにはその力がある。
心配事かかえて全力出せなくなっても
困るんだ。」

杏子「勝手だな、あんたたちも。」


二人とも何も答えなかった。




桃「う、うう~~~~~~」


柚子「あ、桃ちゃん気がついた。」


杏子(こいつが…モモ?)

麻子「すっかり忘れてたな、この状況で
気絶してたんだっけ。」


杏「あー、それはホントね。」


柚子「桃ちゃん、大丈夫?」


桃「桃ちゃんいうな!って誰だあんた。」


杏子「………………」

桃「それより会長、ここはどこなんです?」


杏「あ~、それはだね~。」


杏子「………………」


杏子はじっと、桃の顔を見ている。


桃「な……なに?」


杏子「どんな奴か思ったら…がっかりだな。」


桃「はあ!?」

納得いかない桃の罵声を背に浴びつつ

二人は帰路についた。


麻子「結局、お前は何しにいったんだ?」


杏子「身内にモモって奴がいた。同じ
名前だから、気になっただけだ。」


麻子「……………」


杏子「なぁ、こっちからもいいか?」


麻子「うん?」


杏子「何で親を生き返らせられたのに、
そうしなかったんだよ。
マミみたいに自分が死にかけてた
わけじゃなかったんだろ?」

麻子「・・・腹が立ったんだ。」


杏子「ハラが?」


麻子「あいつは、キュゥべえは、こっちが
気にしたくないことをを、
延々とほじくり返して契約を迫ってきた。
だから、どうしようもなく腹が立って
断ったまでだ。」


杏子「マミと似たようで違うな。後悔とかねぇの?」


麻子「無いといえば嘘になる。
巴さんは、自分一人助かることを
願って、それを後悔してると言った。
私も自分の都合で契約しなかったから
似たようなもんだ。」



杏子「………………それで、いいんだよ。」

麻子「何?」


杏子「何かを願うのも願わないのも、
自分のためにすべきなんだ。
他人のためになんかしても裏切られ るだけだ…」


麻子「昔、何かあったか?」


杏子「別に、」


杏子は懐から菓子を取り出し、
口にくわえた。



杏子(どいつもこいつも、昔の私みてぇに
人のためって……………。
ほっとけなくなるじゃねえか。)

ある丘のふもと、戦車に囲まれた平地に
戦車長会議の席はあった。


ナカジマ「あれ?会長は?」


梓「芋が切れたから一抜けだそうです。」


マミ「………………」


マミは会議から離れ、意見がまとまるのを
待っていた。


マミ(こんな会議…)


結論がどうなろうとマミの答えは既に
出ていた。



エルヴィン「巴さん、だったか?」


不意に横にいたエルヴィンにマミは声を
かけられた。

エルヴィン「お礼がまだだったな、
隊長を守ってくれてありがとう。」


マミ「あたり前のことをしたまでです。
…松本さん、でしたっけ?」


エルヴィン「エルヴィンでいい、みんな
そう呼んでいる。」


マミ「じゃあ、エルヴィンさん?」


エルヴィン「ん?」


マミ「会議には参加しないんですか?
さっきから黙ってて。」


エルヴィン「私は隊長の命令に従うだけさ
信じているからな。」

マミ(そうなんだ……)


エルヴィン「一つ聞いていいか?
あの魔女はなぜ逃げたり
したのか。」


マミ「あいつは相当の戦上手です。
みなさんという未知の勢力を警戒
したんでしょう。」


エルヴィン「勢子やら伏兵やらも使うらしいな、
侮れない相手だ。」




みほ「巴さん?いいかな。」

気がつくと、議論が終わり、
みんながマミを見ている。


マミ「意見は、まとまりましたか?」


みほ「その前に、巴さんに質問したいの。
いいかな。」


マミ「…………」


みほ「あの魔女に勝てる?」

マミ「……負けることは、ありません。」


ナカジマ「ホントにホント?濁りとか
大丈夫?」


マミ「………………」



梓「決まり、ですね。」


マミ「え?」


梓「私たちが巴さんと共に敵陣を突破し
脱出するということです。」


マミ「そんな!みなさんに苦労かける
わけには…」


ナカジマ「それはコッチのセリフ。」

マミ「いえ、こうなった以上は全員
私が守りながら脱出させます!
戦車を捨ててください、
こっそりといったほうがいいです。」


エルヴィン「そういうわけにはいかないな。」


みほ「キュゥべえから聞いたよ。もう、
グリーフシード無いんでしょ。」


マミ「それは…」

梓「出しゃばりがすぎるかもしれない。
でも、年下のあなただけ苦労かける
わけにはいかないの。
私たちも出来ることがしたい。」


梓がまくし立てる。彼女が主戦派の筆頭
らしい。


みほ「巴さんの方法だと何日かかるか
わからないし、第一巴さんが
まいってしまう。だから、
おねがいします。」

マミは無言で賛成の意を表した。

車長たちはそれを見ると、腰を浮かす。


みほ(早く脱出しないと…私の指揮に
かかってるんだ…。)



行方不明の仲間も気がかりだが、
それを知るすべはない。

杏の話を信じるしかなかった。



みほ(もしものときは、私が…)

会議はお開きとなり、会議をしていた
場所には、マミが残っている。


エルヴィン「あんまり一人で背負い
こむなよ。」


エルヴィンがマミの肩を叩き、励ます。


マミ「エルヴィンさん、私…」


エルヴィン「しっかり働いてもらうぞ、
歩兵の支援がない戦車は
めっぽう弱いからな。」


マミ「そうなんですか?」


エルヴィン「今回の戦法は電撃戦、どんな戦法でもそうだが
事前の偵察がカギを握る。
そこで相談なんだが…」


マミ「?」

麻子と杏子がみんなの元にもどると
何やら大掛かりなことになっていた。

バチバチバチバチバチバチッッッ!!!


戦車のあちこちで溶接の火花が散る。

二人があっけに取られていると
麻子のこめかみに銃が突きつけられる。


エルヴィン「Griff auf!!!」


麻子「エルヴィンさん、何やってんだ?
それにこれは?」


エルヴィンは奇妙な銃を持っている。

エルヴィン「今、巴さんと偵察から帰ってきた所だ。
武器にと飾りのMG34を巴さんに術を
施してもらい、強化したんだ。」


カエサル「私の愛槍もしてもらったぞ。」


左衛門佐「弓道部の腕を見せる時がきた!」


おりょう「今宵の陸奥守吉行は血に餓えちょるぜよ。」


みな、飾りやお守りとして持っていた
ものを強化してもらったという。

歴女たちは誇らしげにそれぞれの得物を
掲げて見せた。



みほ「麻子さんどこ行ってたの?
心配したよ。」

麻子「ちょっとトイレにな。それより、
何でこんなことに?」

みほ「これから打って出るって決まって
予定が立ったからみんな張り切ってるの。」


エルヴィン「隊長も隊長だ。いいというのに
一緒に偵察に行くときかなかった。」


左衛門佐「大将はどっしりしてればいい」


みほは苦笑し、杏子の方を見た。


みほ「佐倉さん、ちょっと話したいことがあるの。
いいかな。」


杏子「いいけど…」

優花里(西住殿?)


空薬莢を捨てる作業をしていた優花里は
みほが杏子を連れ、どこかにいくのを
見つけた。

優花里(…………)



沙織「あれ?ゆかりん空薬莢持って
どこいくの?」


優花里「え……と、お手洗いに…」


沙織「え"っまさかその中にすんの!?」


優花里「い、いってきます!」


華「お気をつけて。」

一旦休みます

杏子はみほについていき、少し離れた
所に至る。

そこにはマミがいた。


みほ「お待たせ、巴さん。」


杏子「マミ……」


マミはいつになく神妙な面持ちで、
静かに口を開いた。


マミ「あんこうチームのみんなを助けて
ありがとう佐倉さん。でも…」

マミより先に杏子は察した。


杏子「これ以上。、協力する義理はないってか?」


マミ「ええ、成り行き上、協力を求めた
けど、そもそも、あなたにとって
大洗の人たちを助けることで、
利益はないわけだし…」


みほ「会議の結果、打って出ると決まり
ました。だから、魔女が私たちに
気を取られているスキに脱出して
ください。」


杏子「…………」


マミ「何にもお礼はでき無いけど、
せめて…」


杏子「うぜえ。」

マミ「え?」


杏子「うぜえっつってんだ。みんなして
勝手なこと言いやがって、
気遣ってるつもりか?」


みほ「でも…」


杏子「申し合わせたみてえに他人のため
他人のため。 西住とか言ったかアンタ
キュゥべえから聞いたけど、大層な
素質持ってんだってね。」


みほ「そうみたいです。いざという時は
私が契約します。」

マミ「………………」

杏子「その様子じゃ、マミも承知済みか」


マミは、無言で肯定する。


杏子「アンタさ、契約してみんな助けて
魔法少女になって。それから
どうする気だ?」


みほ「それは…後から…」


杏子「魔法少女は一生の仕事なんだ。
行き当たりばったりで決める
もんじゃない。
ましてや、人助けのためなんか
論外だ。裏切られるのがオチさ。」

杏子は口をしかめ、横目でみほを見る。


杏子「私は人の為に何かすんのとか
キライだ。それにな…」


突然、杏子は口をもごもごしだした。」


杏子「約束忘れる奴もキライだ…
一緒にいく。」


マミ「はい?」

杏子「約束だよ約束。言ったろ?
加勢したらグリーフシード全部
くれるって。」


マミ「ああ、あれならもう…」


杏子「無しにされてたまるか。あんな
大物見逃せねえ。それに一人じゃ
ヤバかったろ。」


マミ「協力してくれるの?昔みたいに?」


杏子「アンタが私にだ…勘違いすんな。
一人より二人のほうが勝率は上がる
私はそっちをとったまでだ…。」


飄々とした態度はなりを潜め、杏子の
口調はしどろもどろになる。

その様子を見てマミは微笑んだ。




みほ《いったいどうしたの?佐倉さん》


マミ《私は納得しました。素直じゃない
けど、根はいい子なんです。》


杏子「まあ、そういうわけだ。あんたが
契約しなくても事足りるって
ことだよ。」


気持ちを落ち着かせた杏子が言った。


杏子「それと、さっきから心配してる
奴がいるみたいだぜ。」



優花里「!」

物陰から優花里が姿を現した。


みほ「優花里さん?」


優花里「契約、してしまうんですか?」


みほ「それは…」


優花里「そんなのイヤです。」


みほ「ぇ?」


優花里「西住殿が遠くに行ってしまう
なんてイヤです。」


みほ「…………」

優花里「西住殿が魔法少女のことを知ってから、
いつ契約するか気が気ではありませんでした。」


口調に嗚咽が混じる。


優花里「巴さんを快く思わなかったのも
西住殿を遠くに連れて行って
しまいそうな気がしたからです。」


マミ「……」


みほ「優花里さん…」


優花里「自己犠牲は美徳です。しかし、
今はそれをしないでください!
勝手な言い分かもしれません!
でも、契約したら西住殿は…」


優花里は深々と頭をさげ、懇願した。

足元には涙の後が幾つかできた。


優花里「西住殿は私の憧れです…
ずっと一緒に…戦車道をしたい…」

杏子「泣かせるねえ。で、どうすんだ
隊長さんよ。」


すっかり本調子を取り戻した杏子が
みほに問う。


みほ「ごめんね、優花里さん。心配させて。」


優花里「いえ!そんな…」


みほ「自分の力をだし切らないで、
願いを叶えるようなんて、そもそも
間違ってる。」


優花里「それじゃあ…」


みほ「契約はしないよ。一緒に頑張ろう
優花里さん。」

マミ(いいなあ…)向かい合う二人の戦友
同士を見て、マミは思った。

自然と隣にいる元仲間に目がいく。


杏子「何だよ。」


マミ「ううん、別に。」


杏子「どーせ、仲間っていいなとか、
そんなだろ。」

マミ(うぐっ!)


みほ「…ねえ巴さん、私たち仲間に
なれないかな。」


マミ「いえ、そんな、私なんて…
そもそも、あの時あんこうチーム
だけでも脱出させられていたら
こんな事態には…」


みほ「そうしなかったから、私たちは
みんなに会えたんだよ。それに、
私、巴さんに謝らなきゃならない
ことがあるの。」


マミ「私に謝ることなんか…」


みほ「私ね、最初から巴さんのこと
信用してたわけじゃないんだ。」


マミ「!?」


みほ「魔女と必死に戦っている姿を見る まで、
本当に正義のため戦っているんだなって
確信できなかったの。
だから、ごめんなさい。」

マミ「いえ、そんな、私なんて…
そもそも、あの時あんこうチーム
だけでも脱出させられていたら
こんな事態には…」


みほ「そうしなかったから、私たちは
みんなに会えたんだよ。それに、
私、巴さんに謝らなきゃならない
ことがあるの。」


マミ「私に謝ることなんか…」


みほ「私ね、最初から巴さんのこと
信用してたわけじゃないんだ。」


マミ「え…?」


みほ「魔女と必死に戦っている姿を見る まで、
本当に正義のため戦っているんだなって
確信できなかったの。
だから、ごめんなさい。」

みほは頭をさげ、非礼をわびた。


みほ「こんな私が仲間になろうなんて言う
資格ないかもだけど、巴さん…」


マミ「そっか、そうだったんだ。」


みほ「…」


マミ「大洗のみなさんが西住さんに
会えた時、あんなに喜んだ理由が
わかった気がします。
西住さんなら、誰でもついて
いきますよ。」


みほ「え?そんなこと、」


慌てるみほの前でマミは握手を求めた。


杏子「……」


マミ「ほら、あなたも!」


杏子「お、おう。よろしく…」


四人は固い握手をしあった。

第三部 完です


次の第四部で終了です


ちょっと書いて、今日は終わります。

薄暗い空にエンジン音が響く。

四号戦車がその身を震わすと、
僚車もそれに続き、黒い煙を吐き出す。


みほ『巴さん、状況は?』


マミ『敵部隊、依然と変化ありません、
前進してください。』


みほ『では・・・・』


息を整える、みほは叫んだ。


みほ「パンツァー・フォー!」

土煙を身にまとい、次々と戦車が
出撃して行く。


四号戦車を頂点とした、クサビ型陣形をとり、
左斜め下にヘッツァー、右斜め下に
三号突撃砲、M3、ポルシェティーガーと続く。


みほ『河嶋先輩、もう気分は大丈夫ですか?』


桃『西住か、もう平気だ。しかしな、』


みほ『しかし?』


桃『なぜこいつがヘッツァーに乗ってい る?』


杏子『こっちのセリフだっつーの』


ヘッツァーの上に乗っている杏子が
横から入る。

ヘッツァーは厳密には戦車ではない。

車体と砲塔が一体となった
自走対戦車砲である。

しかも、設計の都合で主砲は右よりに
配置されている。


みほ『だから、右側の視界がとり辛いの
右の守りは、私たちが固めるから 佐倉さんは索敵と防御をお願いします。」


直接、車体を向けねば照準を合わせられ
ない、カメさんチームに対する
みほの采配である。

マミは一足早く偵察にでていた。

後方からエンジン音が聞こえ、

振り返ると、そこに友軍の姿を見止めた


機会を見計らい、近づいてきたM3に
飛び乗る。


M3もまた変わった戦車で、ヘッツァー
同様、車体と主砲が一体となっている。

しかし、上部に360度回る副砲が
ついている。


梓『巴さん、乗り心地は?』


マミ『快適です、それに遠くまで見渡せます。』


ナカジマ『急ごしらえで取っ手つけたけど、
あくまで気休めだからねー。』


兵士が戦車に背負われ、共に突撃する

これを、タンクデサントという。

みほ『みなさん、こんなことになって
まだ、混乱しているとおもいます。』


全車に対し通信が飛ぶ。


みほ『でも、今は気を引き締めてください。
これは、戦車道の試合ではありません。
下手をうてば…』


言葉が続かなかった。むごい現実だった。


沙織(みぽりん…)


修羅の戦場に放り出された戦友の運命は
みほの判断一つで、いかようにも変わる。

梓『隊長、隊長が動揺すれば、全体が
乱れますよ。』


みほ『澤さん…』


エルヴィン『今更何を言う、今は
至る所を制すのみだ。』


ナカジマ『そうそう、気張らない気張らない。』


杏『リラックスしなー。芋でもくうかい?』


みほ(みんな…)

華「一本取られましたね、みほさん。」


沙織「頑張ろうよ、みぽりん!」


麻子「しっかりしろ。西住さんのことなら、
何でも聞く。」


優花里「西住殿!一緒に頑張るとの約束です!」


みほ「・・・・・・・・」


みほは、無言で皆の優しさを噛み締めた。




豪裂の音土を呑み エンジンの調べたからかに

恐れを知らぬ鋼鉄のけだものは

敢然と、その歩みを進める。

地平線の彼方、いつか見た使い魔の
群れが現れる。

マミの報告によると、左右800m
前後50mにおよぶ陣地である。


M3に跨り、マジカル☆マスケットを
握るマミは、自然とその手に力を込める。


みほ「華さん、敵との距離は?」


華「大きさから察するに3000mです。」


みほ(まだだ…)


華「距離、2400m!」


沙織「みぽりん…」


みほ(まだ…)

さらに戦車隊は近付く。


華「距離、1000!」


みほ「みんな、今です!!」


時は来た。


号令一下、戦車隊はよく訓練された
踊り子たちのような正確さで向きを変え

敵陣左翼端へ殺到する

砲塔は砲塔で左翼端にピタリと照準を合わせ、

別名を待つ。


みほ「撃て!」

ドンッ!!ドドンッ!!

ズガァァァァン!!!!!!

回転砲塔を持つ 四号 M3
ポルシェティーガーが弾丸を吐き出し、
敵陣を吹き飛ばす。


中央、及び右翼端の使い魔たちは
あわてて向きを変えるも


みほ『巴さん!!』


マミ「ティロ・ボレー!!!!」


ズダダダダダダダダーーーン!!!!!


右側を向いた使い魔たちの横っ腹に
遅れて移動させて来た
マジカル☆マスケットが宙を舞い、
銃撃を浴びせる。

桃「フハハハハハハハ!!!!!
敵陣突破成功ぉ!!!!
圧倒的ではないかぁ!!!!!」


杏「かーしまー、おちつけー。」


杏子《そーだぞ、モモちゃん。》


桃「モモちゃんいうな!!」


みほ『気を抜かないで!敵もすぐ反撃
してきます!!』

ヒュルルルル・・・・・・

ヒュルルルルルルルル・・・・・


みほ「この音…!」


忌まわしき大砲の音。

魔女要塞以外で唯一戦車に抗える存在である。



ズドォォォォォォォォォン!!!!!!


ズズンッ!!!ズガァァァァン!!!!


いつかの衝撃が戦車を揺らす。


あや「いくら何でも早すぎでしょうがー!」


優季「きゃああああああーーーー!!」


あゆみ「どこだぁ!ぶっとばしてやる!」


桂利奈「でてこーい!!!!!」

マミ『西住さん!前方に大砲陣地の反応
左右二つあり!このままだと
十字砲火を受けます!!」


みほ『みんな!これから巴さんと佐倉さんの
支援を受けつつ、左の大砲陣地に
突撃します!』


エルヴィン『我らの出番か!』


カエサル『突撃砲の真髄、見せてくれる!』


桃『わ、私たちも忘れるな!』

マミのリボンが巨大な傘を作り
砲弾を防ぐ


みほ『巴さん、大砲陣地はどこ!?』


マミ『あそこ!正面の丘の向こうです!」


麻子『あれか』


一つの丘に戦車隊は狙いをつけ突進する


しかし、



ボンッ!!!!


みほ「なっ!?」



ヘッツァーの履帯が爆発音と共に
吹き飛んだ。


桃「何だ!?どうしたぁ!!??」


杏「んー?地雷かねー?」


柚子「西住さん!状況を!」


みほ『おちついて!履帯が千切れただけです!
全車停止!!地雷原です!」


ズガァァァァン!!!!
ドガァァァァァァァン!!!!!

目の前の丘の頂上に無数の砲弾が
撃ち込まれる。

ズガァァァァン!!!!!!

一歩たりとも通すまいという勢いだ。


近すぎて狙いが定まらず、こちらに
当たることはないが、
少しも動けない。

みほ(どうすれば…)

マミ『まかせてください!佐倉さん!』


杏子「あいよ、オラァ!!!」


杏子は槍を多節槍へと変化させ、
前方の地面を掘り起こし、
埋められていた地雷を宙に舞い上げる。


杏子「いまだ!マミ!!」


マミの周りに無数の銃が現れ、一斉に
発射される。


ズダダダダダーーーーーーーン!!!


放たれた弾丸は正確に舞い上がった
地雷を撃ち抜き破壊した。


エルヴィン「仕上げだ!巴さんに続け!」


ドンッ!!ドドンッ!!ドォン!!!


地雷の破壊により生じた煙幕を隠れ蓑に

三号突撃砲の砲弾が大砲陣地を破壊した。


手柄を奪われたカメさんチームだが
それどころではなかった。


桃「履帯が壊れたあああああーーー!!!
もうダメだぁぁぁぁぁーーー!!!」


杏「治してらんないし、タンクデサントでもする?」


マミ『それには及びません!』


マミはリボンを出すとヘッツァーの
転輪に巻きつけ履帯の代わりとした。


杏「こやまー、いける?」


柚子「いけます!ありがとう巴さん!」


桃「あうぅ…ううぅ~…」


杏子(ホントなんなんだこいつ…)

ズガァァァァン!!!!!!


もう一つの大砲陣地より、砲弾が撃ち込 まれる。


みほ『レオポンさん!ウサギさん!
砲撃用意!!』


ホシノ『了解!!!』


あや『クロスファイア返しぃぃぃ!!!』


四号の75? ポルシェティーガーの
88? M3の37?副砲


狙いをつけた、その勇姿は


みほ『撃て!』


ズドォォォォォン!!!!ズドン!!!
ズガァァァァン!!!!!!

一斉に火を吹き、陣地を粉砕した。

後顧の憂いを絶ち、さらに進軍は続く。

小隊規模の使い魔たちが何度か肉迫してくるも、
マミの銃撃と杏子の多節槍が難なく
撃退する。


彼女たちの通った跡は履帯の跡と
使い魔の肉片が残るのみ。



みほ(あれは!?)


もうすぐ出口というところで

巨大な影が姿を現した。

みほ(魔女要塞…やはり出口付近にいた。)


向こうも気づき、無数の砲口を向ける。


桂利奈「きたきたきたぁぁぁ!!!」


ツチヤ「どーすんのこれ!?」


おりょう「我に一計あり、ぜよ。」


みほ『全車停止!!』



ズドドドドォォォォンッッッッ!!!!
ズガァァァァン!!!!!!ズガァァァァン!!!!!!ズガガガガガガ!!!
ズガァァァァン!!!!!!!!!!!

魔女要塞から撃ち出された砲銃弾は

地面にいくつもの穴をあけ、
自身よりも高い砲煙を立ち上らせ、


マミ「ティロ・……」


そして、その砲煙の中から


何本もの巨砲が現れた。

マミ「フィナアアアアァァァァァァァ レエエエエェェェェェェェ!!!!!!!!!」


パンツァー・ハイとなったマミは、
渾身の一発を放ち、


それは、魔女要塞の上半分を消しとばした。


マミ「イヤッホォォォォ……!あら、
いけない。」

魔女要塞は死んではいないものの
かなりの損害だ。

しばらく動けないだろう。


左衛門佐『このまま突っ込め!出口はどこだ!?」


梓『隊長!前方に何か見えます!』


確かに三キロほど離れた所に何かある。


マミ『結界の出口です!』


みほ『全車突撃!帰ろう、大洗へ!!』


我先に戦車が詰め寄る。


みほたちは安心し切っていた。


その時だった。



陣形右側の戦車、即ち


三号突撃砲 M3 ポルシェティーガー


三台の戦車が忽然と姿を消したのだ。



巴マミとともに。

今日はここまでにしておきます

何が起きたのかわからなかった。

やがて、エルヴィンは乗っている
三号突撃砲がひっくり返っていることに
気付いた。


エルヴィン「おい、しっかりしろ!」


気絶していた仲間を起こしつつ、
戦車の外にでる。


カエサル「戻れたのか?」


エルヴィン「いや…違う。」


少し離れた所に、ポルシェティーガーが
同じくひっくり返っている。


そして、そこは異形の世界だった。


マミ(いけない、いけない、いけない!)


巨大な柱が等間隔に並ぶ中を
マミは走っている。

マミ(はぐれてしまうなんて、早く合流
しないと!)


建物の中らしいが、奥が霞むほど広い。


マミ(まさか、結界の中に結界ができる
なんて…)


ふと、行方不明の大洗生徒を思い出した。


使い魔は、人を食べて魔女になる。

嫌な予感を振り払い、マミは先を急いだ。

残りのM3は比較的無事だった。

しかし、他の仲間は見当たらない。

さらには、


梓「桂利奈ちゃん、動く!?」


桂利奈「ダメッ!全然!」


優季「通信もできないよ!」


紗希「……………」


あや「なんだよ…来るならこいよ!
化け物!」


あゆみ「かかってこい!相手になってやる!」


梓は状況を確認しようとハッチから
身を乗り出した。


それがいけなかった。

初めに気付いたのは、大野あやだった。

横にいた梓が、フッと消えたのだ。


あや「あ、梓ちゃん?」


あゆみ「あ……あああ……。」


山郷あゆみが、車体の前に何かいるのに
気づく。


紗希「………!」



それは、手足が長く、大きな目と口を
した猿のような怪物、もとい魔女だった。

そして、そいつの口からは人間の足が
飛び出ていた。


優季「梓…ちゃん?」

梓「ーーーーーー!ーーーーーー!」


澤梓は頭からくわえられ、右へ左へ
振り回されている。


全員、どうすることも出来なかった。


ただ、固まっていた。


しかし、絶望だけでは無かった。




ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!



どこからか、銃声が響く。

エルヴィン「うおおおおおお!!!!!」


ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!


エルヴィンの放つMG34が魔女の腹に
ことごとく命中する。

その衝撃で、魔女は梓を離した。


エルヴィン「カエサル!おりょう!
左衛門佐ぁ!!!!!」


かけ声とともに左衛門佐が弓を放ち
魔女の片目を潰す。

ひるんだスキにカエサルが槍を魔女の
腹に突き刺し

なおも梓につかみかかるその手を
おりょうの刀が一閃し切り落とす。

ナカジマ「M3だ!無事だ!」


ホシノ「動く?」


スズキ「あれ?澤さん?」


自動車部の面々も駆けつけ、梓を見つけた。

その体は舐め回され、服は裂かれ、
ヨダレまみれである。


ツチヤ「ひどい…」


エルヴィン「籠城だ!M3に乗って、
隊長を待つんだ!」


遠くから銃声が聴こえる。
エルヴィンの銃だ。


マミ(あそこに、!)


しかし、それは彼女たちが危険に
さらされている証拠でもあった。

マミ(急がないと……あれ?)


地響きを感じ、マミは立ち止まった。


キュラキュラキュラキュラキュラ……


マミ(キャタピラの音?西住さんたち?)


やがて、柱の陰から巨大なモノが現れた。

ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!


エルヴィンは魔女を近づけさせまいと
銃を撃ちまくる。

しかし、魔女も素早い動きで弾丸を避け
じりじりと距離を詰めていく。


ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!


ウサギさんチームは変わり果てた梓の
姿を見て絶句し、
次は自分かと恐怖にふるえている。


エルヴィンがちらっとその様子を見て瞬間、
魔女が戦車に掴みかかった。


エルヴィン「しまっ・・・」



ズガーーーーーン!!!!!

何かが横から飛来し魔女を弾き飛ばす。

砲声がした方向をみると、
鉄の塊がエンジン音と砲煙を上げていた。


カエサル「89式…アヒルさんチーム?」


マミ『みなさん大丈夫ですか!?』


典子『おーい、助けにきたぞー!!』


アヒルさんチーム、89式中戦車である。

そして、その上にマミが乗っている。

89式はM3と未だ横たわる魔女の間に
割り込んだ。


妙子『みんなー!久しぶりー!』


おりょう『生きちょったか、おんしら!」


マミ『さっきそこで出会ったんです!
無事で良かった!』


エルヴィン『巴さん、後ろ!』


魔女が息を吹き返し、起き上がる。


典子「佐々木ぃ!」


あけび「はいっ!キャプテン!」

油断なく魔女に砲塔を向けていた89式は
徹甲弾を叩き込む。


ズガーーーーーン!!!!!


魔女はたまらず退却を始めた。


典子「逃がすな!追え!」


忍「了解!」


典子「巴さん、あれが魔女って奴か?」


マミ「そうです!」


典子「他にも色々聞きたいけど後だ!
今は、あいつを倒す!」


「「「「それそれそれーーー!!」」」

遁走する魔女をマミと89式が追いかける

やがて、それらは見えなくなった。


エルヴィン「巴さんも89式もきた、
これで一息つける。」


カエサル「隊長も喜ぶぞ、いい土産と
共に帰れる。」


左衛門佐「勝利をそえてな!そうだろ、
おりょう。」


おりょうは何も答えず、黙って左衛門佐に
寄りかかった。


左衛門佐「おりょう?」


その胸からは、彼女の愛刀が生えていた。



梓「・・・・・・・・・」


ウサギさんチームも嫌に静かだった。

一つ心配事が消えると、また一つ
心配事ができる。


マミ(いそげ!いそげ!いそげ!)


今度は結界の外のみほたちが気になる。

ソウルジェムの濁りは、その気持ちに
反応してか、無視できないほどになっている。


忍「アターーーーーック!!!!!」


89式は柱の一つに魔女を押し付け、
動きを封じる。


典子「佐々木!巴さん!今だ!」


マミ「ッ!!」


ドンッ!ドドンッ!


ズガーーーーーン!!!!!


89式とマミの攻撃により、
魔女はこと切れた。

マミは焦っていた。

魔女を倒した。早く合流せねばの思いだけだった。

だからこそM3に帰った時、
嫌にひっそりしていても、

魔女を倒したのに結界が消滅しなくても
変に思わなかった。


砲塔からは梓が顔を出している。

マミは、M3に駆け寄った。


マミ「澤さん!魔女を倒しました!
もう安心です!」


梓「・・・・・・・・」


マミ「澤さん…?」


梓は微笑みを崩さず、黙っている。

マミは、その首筋に何かを見つけた。


マミ「澤さん!」


梓「うわああああああ!!!!!!!」


ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!

エルヴィンの銃で、マミは梓に撃たれ
倒れ伏た。


マミ(魔女の…口づけ…?)


迂闊だった。油断していた。安心し切っていた。


マミ(魔女は…倒した…のに、結界も…)


暗くなっていく視界の先で、梓が
89式の中にMG34を突っ込み、
撃ちまくっている。


マミ(なん…で…)


マミの視界は闇に覆われた。

梓「あはは…あんなのイヤ…死ぬより…
イヤ…」


体じゅうまさぐられ、もてあそばれ、辱められ、


梓「だから…その前に死んだほうが…
いいよね?」


梓は喉元に銃口を当て引き金を引き、

仲間の亡骸に囲まれ、絶命した。

QB『マミ、君はまだ死んでいない、目を
覚ますんだ。』


暗闇の中、キュゥべえの声がする。

目を開けると傷は完全に塞がっていた。


QB「無意識のうちに治癒魔法を使ったんだ。
大したものだよ君は。」


マミ「私…どうしたの?死んだんじゃ…」


マミの目が倒れている梓を捉える。


マミ「澤さん…みんな…!」

マミは梓の体を揺さぶる。


QB「ムダだよ、君も分かっているだろう?
彼女たちは…」


マミ「うぅ…うううううぅぅ…」


守れなかった後悔と絶望がマミの心を
満たしていく。

ソウルジェムの濁りが限界寸前だ


QB「そろそろだね。でも、まだダメだ。」


マミ「何の…こと?」


QB「君はもうじき魔女になるということさ。
それをもう少し待って欲しい。」


マミ「変な冗談はやめて!どういうこと?
だって、魔女は使い魔が人を食らって
成長したものでしょう!?」


QB「その他に魔法少女由来の魔女も
いるということさ。
まず、ソウルジェムについて説明するよ。
それは、君たちの魂を物質化したものだ。」


マミ「え…」


QB「つまり、ソウルジェムが君の本体で
その体はソウルジェムによって
操られている死体ということだよ。」


マミ「なな…な…」

QB「ソウルジェムが壊れない限り、
死ぬような傷を負っても平気だ、
今の君がそうだろう?」


マミ………百歩譲ってそうだとしましょう。
ねえ…魔女になるなんて嘘でしょう?
だって、あなた言ったじゃない!」


QB「人としての死、魔法少女としての死
そして、魔女としての始まりという訳だよ。
ソウルジェムに濁りが溜まり切ると
魔女になる。だからこそ、魔女を倒しても、
魔女の口づけの効果が続いたり、この
結界が維持されたりしている。
君がそうしているんだ。」

マミ「私が…魔女になりかけているから?」


QB「その通りさ。」


マミ「ならなくちゃいけないの?」


QB「それが、君たちの運命だ。」


マミ「それなら!」


マミは、濁り切ったソウルジェムを出し
同じく召還した拳銃を向けた。

QB「自害するつもりかい?」


マミ「ええ、ソウルジェムを壊せば
いいのでしょう?」


QB「そうだけど、君が魔女になる瞬間を
みほに見てもらわないと困るんだ。」



マミ「え!?」



杏子「マミィィィィィ!!!!!!」


杏子のかけ声と同時に赤い鎖がマミを拘束する。


杏子「キュゥべえが、マミが自殺しようと
してるっていうから急いでみたら…
何やってんだ!!」

マミのそばに四号戦車とヘッツァーが
停まる。


みほ「巴さん!何があったの!?」


沙織「はやまらないでマミちゃん!」


華「死んで花実は咲きません!巴さん!」


必死にマミを止めようと、仲間たちが
叫ぶ。

その横で、優花里が梓の死体を見つけた。


優花里「澤さん!そんな…なんで!?」


麻子「何がどうなってる…?」


あまりの惨状に、全員言葉を失う。


杏子「マミ!なんか言え!何があった!?」


マミ「ちがう…ちがうの…」






ソウルジェムの濁りが限界を超えた。


マミ「イヤァァァァダァァァァァ!!!!!!!!!」


マミの絶叫が響き渡り、同時に起こった
凄まじい風に、
全員たまらず目を閉じ、収まりを待つ。


風が止み、目を開けると


杏子「なんだ…これ…」



様々な色が混じった絨毯。
山と積まれたプレゼントの箱。

それらに囲まれた大きな机には茶会の
準備ができており、その席には


みほ「みん…な?」


すでにこと切れたマミと、
あんこう、カメさん以外の仲間全員が
座っていた。

ウサギさん カバさん アヒルさん アリクイさん レオポンさん カモさん

ぴくりともうごかない。

麻子「そど子!」


駆け寄ろうとした麻子を杏子が止める。


麻子「はなせ…」


杏子「何考えてんだ!あいつらどうみてももう…」


麻子「………」


柚子「ねえ、あれなんだろう?」


柚子が上を指さした。

キャンデロロ「~♪」


天井近くを小さな黄色いものが飛んでいる。


杏子「あれは?」


QB「かつて巴マミだったものだよ、
立派な魔女になったようだね。」


沙織「そんな、ウソでしょ!ねえ!」


QB「ウソじゃないよ、魔法少女は魔女に
なる運命なんだ。」


華「・・・!!!」


QB「君たち人間は、実際にその目で
見ないと信じないから苦労したよ。」


桃「うわあぁぁ!!なんだこれぇ!!」


桃の悲鳴に、あんこうチームは
ヘッツァーのほうを見た。


柚子「いやっ!やめて!」


杏「この!はなせ!こらあ!」


黄色いリボンが生徒会の三人と
ヘッツァーの車体を、包み込んでいく。

履帯の代わりとしていたリボンが
増殖しているのだ。


みほ「会長!」


やがて、全身が包まれると
魔女キャンデロロがヘッツァーの中に
入り、エンジンがかかる。



ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー


茶会場を出ると、長い廊下になっていた。

一直線にどこまでも続いている。

そこを四号戦車は逃げ回っている。


ズガァァァァァァァン!!!!


ヘッツァーの砲撃を受けながら。

ズガァァァァン!!ズガァァァァン!!


逃げる四号をキャンデロロ・ヘッツァーが
追いかける。


QB「すばらしい魔女だね。かなりの
エネルギーを回収できた。」


杏子「うるさい!おい、マミ!しっかり
しろ!」


沙織「マミちゃん!正気に戻って!」



華(こんな…こんなものに私は…なろうと?)

戦車道で使われる戦車の内壁は
カーボン加工により、安全性が保たれている。

しかし、追うヘッツァーの砲撃は、
魔女により何倍にも強化されており。

ズガァァァァァァァン!!!!

一発でも致命傷となる。


杏子「このぉ!!」

杏子は多節槍を展開し、放たれる砲弾を
はじく。


廊下の幅はいつかの土手と同じく
車幅二台分

高い垂直な壁に挟まれ、回り込めない。

沙織「マミちゃん!会長!もうやめてぇ!!」


QB『ムダだよ、彼女たちは完全に
魔女に取り込まれた。』


杏子「魔女じゃねぇ!マミだ!」


沙織「キュゥべえ!元に戻せるんでしょ!?
キュゥべえ!」


QB『できないよ。
そんなの不可能に決まってるじゃないか。』

杏子「マミは知ってたのかよこのこと!」


QB『知らなかったよ。教えたところで
証拠がなければ信じなかったろうし
知られてさっきみたいに自害
されそうになっても困るしね。』


杏子「ってことは、私…」


QB『君がマミを止めてくれたおかげで
マミは無事、魔女となり、僕らは
エネルギーを回収できた。』


沙織「そんな言い方ないじゃない!
佐倉ちゃんはマミちゃんを思って…
ていうか、エネルギー回収とか
なんなの!?」

全員の脳内にキュゥべえの声が響く。


QB『僕たちが契約を迫るのはね、
この宇宙を維持するためなんだよ。」


杏子(…………)


QB『この宇宙に存在するエネルギーは、
形を変えるごとにロスが生じ、 全体的に目減りしていく一方なんだ。』


みほ(…………)


QB『魔法少女がソウルジェムに濁りを
溜め切って魔女になる時、熱力学の
法則を無視して莫大なエネルギーが
生まれる。』


沙織(…………)


QB『僕らはそれを回収してこの宇宙を
維持しているんだ。』


華(…………)

QB『ごく少ない犠牲だけで、この宇宙は
維持され、より多くの生命を育む
ことになる。』


麻子(…………)


QB『この国では、自己犠牲が美徳とされて
いるから、理解できるだろう?
だから、みほ。僕と…』



優花里「うああああああああああっっ!!!!」


優花里の発した大声に驚き、杏子は
スキを作る。


何故か魔女は攻撃してこなかった。

優花里「戦いましょう西住殿!
四号の主砲をもってすればヘッツァーなんて!」


杏子「おい、何言ってんだ!諦めんのかよ!」


沙織「そうだよ、ゆかりん!マミちゃん
だけじゃなく、会長たちも乗ってるんだよ!?」


優花里「いまは敵です!命を脅かす敵です!
生き残った者が生き残ろうとするのは、
義務であります!」


杏子「何だとテメェ!私とマミはなぁ!」


華(そうですよ…あんなの認めない!)

鉄のきしむ音と共に砲塔が真後ろを向く


沙織「華!?」


華「戦いましょう。敵は攻撃をやめています。
チャンスです。」


沙織「敵ってそんな…麻子、何か行ってよ!」


麻子「隊長は西住さんだ。私が何言っても
無駄だ。」


優花里「西住殿!」


全員の視線がみほに集中する。

みほ(…………………





杏子「おい、戦うとか言わねえよな?」


みほ(………どう言えばいいの?)


華「みほさん、このまま何もしないおつもりで?」


みほ(………どうすればいいの?)


沙織「何か言ってよみぽりん!」


みほ(………どう言えばいいの?)


麻子「どこにでも行ってやる。」


みほ(わからない、わからないよ…!)


優花里「ええい!装填よぉし!」


みほ「!」


優花里「五十鈴殿ぉ!!」

華(認めない……あんなのが巴さんだなんて!)


華は主砲の引き金を引いた。



カチッ



華「?」



カチッ カチッ



華「不発…?」


優花里「そんな…」


みほ「ー!みんな逃げて!!不発弾が
爆発する!!!」

ヘッツァーの主砲が火を吹いた


吐き出された砲弾は、今まさに
爆発しそうな四号戦車の砲塔を直撃し、


乗員ごと吹き飛ばした。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー

優花里「う……ん」


杏子「気が付いたか?」


気絶していた優花里は、杏子の作った
防御陣の中で目覚めた。


杏子「まだ動くな、ここは安全だから。」


優花里「みんな…は?」


杏子「………………あきらめな。」


優花里「そんな…いやだ…」


杏子「西住って奴に感謝すんだね。
そいつがあんたを庇ったから。
助かったんだ。」


QB「その通りさ。」

杏子はキュゥべえを掴み上げた。


杏子「テメェ…どうして契約する前に
魔女になるって言わなかった?」


QB「聞かれなかったからさ。でも、
マミには言ったよ、証拠を揃えてね。
みほに魔女化の瞬間を見せたかったから
少し強引になったけど。」


杏子「一体何が目的何だ、西住みほに
目をつけときながら、全然勧誘しねえし
そんなの見せたりするし。」


QB「末路をしれば、普通は契約してくれない。
でも、みほは仲間のほとんどを失い、そして
その状況を逆転できる立場にある。」


杏子「何…言ってやがる。」

QB「昔、よく使っていた手を用いたまでさ。
まあ、今時ここまで条件がそろうなんて
稀だけどね。」


優花里「…………」


QB「僕らが契約をもちかければ、仲間
思いのみほのことだ、その復活を、
ほぼ確実に願うだろう。
そうすれば、いずれ魔女になるかも
しれない事を知っているけど、
そうせざるを得ない。」


優花里「……………」


QB「そのおかげで、今、みほの魂は
絶望と無力感で満ちている。
僕らはそうなるまで勧誘を控えていたんだ。
その状態で契約すれば、すぐ濁り切った
ソウルジェムができる。」


杏子「まてよ、オイ。ソウルジェムと魂に
何の関係があるって言うんだ!」

QB「君には言ってなかったね。
ソウルジェムは君たちの魂を物質化した物
その魂に絶望という濁りが溜まりきると
魔法少女は魔女になる。」


杏子「な………?」


杏子は言葉を失い、掴んでいたキュゥべえを離す。


QB「黙っていてくれると助かるよ。
やっと説明ができるじゃないか。」

僕たちは、魔法少女が魔女になる時に発生する
エネルギーを回収している。


でも、確実に回収できるとは限らない。
魔女化前に戦死してしまうことがあるからね。


こんな非効率的な方法では、安定して
エネルギーを回収できない。
そこで僕たちは考えたんだ。



ソウルジェムの元となる魂が、あらかじめ
絶望で満ちていれば、契約と同時に
魔女となり、

確実かつ迅速にエネルギーを回収できるんじゃないかとね。

QB「契約の末路を知らせ、
呪いを振りまく存在になると知りつつも
契約せざるを得ない状況に追い込む。」


QB「絶望に満ちた魂に契約を迫る。
これが僕たちの考えた新しい方法だ。」


QB「結果は大成功だったよ。」


QB「昔はやりやすかった、相次ぐ戦争や
災害で、都合のいい条件が集まりやすかったからね。」


QB「絶望に身を浸しても叶えたい願いが
ごまんとあった。」


QB「でも、今ではこっちが非効率的な
ものになってしまった。
元々、兵器だった戦車を使うスポーツが
出来るくらい平和になったしね。」


QB「いくらかの演出と、なにより運が
必要なこの方法は、今ではほとんど
使われなくなくなった。」

QB「でも、今回みほに出会って驚いた
この方法が使えそうな条件がそろって いたんだ。」


QB「彼女が結界に入った時点で仲間の
一部は、既に食べられていた。
絶望させるには丁度いい。」


QB「でも、出来れば残りの仲間を全滅
ぐらいしてほしかった。自分一人で 無力感と絶望を感じて欲しかったんだ。」


QB「苦労したのは、契約の末路をどう
知らせるかだった。
こればかりは直接見せたほうがいいからね。」


QB「それについてはマミが役だ…」


杏子「いうな!」


マミの名が出ると同時に、京子の槍が
キュゥべえを貫いた。


杏子(これで……)


QB「ムダだよ。」

周囲からの視線に気付いた杏子は
周りを見渡した。


杏子「何だよ、これ…」


防御陣はたくさんのキュゥべえに囲まれていた。


QB「僕らは一つの意識を多数の個体で
共有している。
何体潰されても平気さ。」


杏子「…………クソっ」


QB「もういいかい?これからみほと
契約しなきゃいけないんだ。」


杏子「何言ってんだ、西住みほはもう…」


QB「彼女の命は僕ら維持している。
そして、僕らのテレパシーでだけ会話
できるようにしているんだ。」

QB「これなら、君たちに邪魔されず
ゆっくり説得できる。
こんな手間暇かけてもいいくらい、
彼女の素質は素晴らしいんだ。」


杏子「やめろ!」


杏子は目の前のキュゥべえを潰した。


QB「ムダだと言っているのに…では。」



キュゥべえはみほにテレパシーを送った。




QB『みほ、聞こえるかい?』



今日は一旦ここまでにします


明日全部書きます

時間ができたので書きます


ご指摘ありがとうございます

多分に独自設定が盛り込まれています


ご了承ください

みほ『……………』


QB『みほ、君の仲間はほとんど全滅だ』


みほ『……………』


QB『でも、君が契約してくれれば、
こんな状況、簡単にひっくり返せる。』


みほ『……………』


QB『だから、僕と契約して、魔法少女に
なってよ!』


みほ『……………いらない。』


QB『!?』

みほ『こんな私…いらない。みんなを
守れなかった私なんて…いらない。』


QB『みほ?』


みほ『魔女になりたくない…
みんな、生き帰って欲しい…』


QB『落ち着くんだ、みほ!』


みほ『ああ…そうだ…こうすれば…』

廊下の彼方、魔女キャンデロロが
死んだ仲間を取り込み去った方。


そこから、まばゆい光が溢れ、

杏子と優花里のいるところまで達した。


杏子(契約の光……やりやがった!)


優花里「…………」

やがて、光がさす方から、杏子は
微かな魔女の反応を捉えた。


杏子(全部あいつの思い通りかよ…)


QB「やれやれ、まさか、あんなことを
願うなんてね、」


杏子「キュゥべえ!テメェ、何叶えたんだ!」






QB「…………この世界を、自分が最初から
存在しなかった世界にしてくれってさ。」


杏子「何だと?」


QB「要は歴史を書き換えるんだ。
そうすれば、仲間全滅の結果は確かになくなる。
自分が存在しないのだから、魔女になる
こともないと考えたんだろうね。」


杏子「でも、反応が…」


QB「世界を変えようと、魔女化は避けられない
そんなうまい話あるわけないじゃないか。」


杏子「……あいつ、どうなるんだ?」


QB「まだ完全にではないけど、
じきに人の心を失い、改変された世界で
生き返った仲間すら食らって、
魔女として生きていくだろう。」


優花里「…………」


QB「途方もない願いだから、完成まで
もう少し時間がかかる。
記憶も消えるだろうから、このデータを
今後に活かせないのが残念だ。」


優花里「…………」


優花里は音もなく立ち上がり
おもむろに口を開いた。

優花里「そうだよ…人間のままだと
いつか、死に別れるんだよ…」


杏子「お、おい。あんた…」


優花里「今って、絶好の好機…ずっと一緒に…」


優花里は、キュゥべえの方を向いて言った。


優花里「キュゥべえ!私の願いを叶えろ!」

杏子「なに言ってんだ!今の話聞いてたのか!?」


杏子を無視し、優花里は叫んだ。


優花里「西住殿が人の心を無くし、
災いをバラまくなら、無くさなければいい!」


QB「……………」


優花里「西住殿の心を消さないで!
魔女になっても、西住殿の心をそのままにして!」


QB「………それが、君の願いかい?」


優花里は、無言で大きく頷いた。

ソウルジェムが形成された。



優花里の手に握られたそれは、
オリーブドラブ色に輝き、

魂が、喜びに満ちていることを表した。


そして、優花里は今だ輝く光のほうへ
歩き出した。


杏子「おい、どこ行くんだ。そっちは…」


またも、優花里は耳をかさない。

優花里の目は光を失い、反面、
口元には笑みが浮かぶ。

そして、輝く光源のすぐ前で立ち止まった。


優花里「西住殿……ずっと一緒ですよ。」


そう言うと、優花里は光の中へ飛び込んだ。


魔女、いや、西住みほに自ら取り込まれたのだ。

優花里が取り込まれてから、杏子は
ただ座ってうつむいている。


それはキュゥべえにとって、なんら
関心を寄せるものでなく。


頭にあるのは、どうにか記憶を改変後の
世界へ持ち込めないかということだった


QB(願いの完成まで、まだかかる。ここは
じっくりと……あれ?)




キュゥべえは異変に気付いた。

杏子もそれに気づく。


杏子「なんだ…?、グリーフシードの反応?」


QB(それだけじゃない、魔女の反応もだ!
これは…)



ゴオオオオオオ!!!!!!


杏子「っ!!」


轟音と共に、黒い煙がいく筋も宙を蛇行し、
みほが契約した、光をはなつ所へむかう。


QB(あれは魔女?結界の外から来たのか!?)


より集まった煙は、完全に光を包み、
黒い魂を形作った。


『キュゥべえ、いやインキュベーター、
聞こえる?』


QB『みほなのかい?これは一体…』


『あなた、相当恨まれているんだね。
あなたに報復する同氏を集めたら
こんなにたくさんになった。』


『みんな、微かに意識が残っている。
それに私は呼びかけたの。』


『体は無くなって、もう人としても、
魔法少女としても生きていけない。』


『でも、私たちはあなたを許さない。
エネルギー回収なんてさせない。』


『魔女になってなお、消えなかった
あなたへの恨み、思い知りなさい。』

『一緒になった人たちが、
色々教えてくれる。力を貸してくれる。どんな相手にも負けないよ。』


QB『まさか…』


『そう、私たちは魔法少女を
魔女になる前に殺していくことにする。』


『そうすれば、あなたはエネルギー回収が
できなくなる。』

杏子『ふざけんな!どうしちまったんだよ
アンタ!』


『佐倉さん、私たちを身勝手だと思う?』


『その通りだよ、でも、仕方ないことなの。』


『だって、私たち魔女だもん。』


杏子『させねえ!ここでブッ潰してやらぁ!』

杏子は勇ましく槍を構えるも、足元が
フラつく。


地面が激しく揺れ出したのだ。


QB(地面だけじゃない、時間まで不安定に
なっていく!)

『あなたの相手をする気はないの佐倉さん、
私たちの相手は歴史のあちこちにいるからね。』


QB『君は…時間を超えるつもりかい?
そんなことしたら、歴史がめちゃくちゃに…』


『そうはならないよ、私たちのすることは
みんな、必然なこと。
これから改変される世界はそういうものに
なるの。』


『それに、今の私たちは何でもできるの
そして、どんな手を使ってでも
目的を果たす!』


『あなたの思い通りになんかさせない!』


黒い球体にヒビが入り


中から異形の存在が産まれた。


『巴さんは連れていかないよ。
インキュベーターに恨みはないって。
改変された世界で生き返るから
佐倉さん、今度は仲良くしてね。』


青と白のツートンカラードレスを
身にまとい。

巨大な歯車のような形をした駆動輪が
飛び出している。

小さな頭を下に駆動輪を上にした姿勢で
宙を舞うそれは、


杏子「魔女?いや違う、あれは…」


地震、もとい時震は、とうとう二人を
飲み込み、しかるべき場所へ運んだ。



『さあ、優花里さん、みんな、いこう。』

その身にあわぬ願いを秘めて

そいつはみんなで旅だった

改変された歴史のなかで

永く伝えて残される

そいつはどこからやってきた?

そしてどこへと去っていく?

誰もご存知ありません

強大過ぎる御前では

神仏ですら一要素

下手な舞台を盛り立てる

そんな役しか務まらぬ

名無しのそれを呼ぶならば

この名前こそふさわしい

世界のすべてはこれ戯曲

『舞台装置の魔女』と呼ぼう

ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー


ポンポンと肩を叩かれ、麻子は我に帰った。

目の前に誰か立っている。


「四号の操縦はあなたが?」


思い出せない、だれだこいつは?


沙織「ほら、麻子しっかり、決勝で戦った
黒森峰の西住まほさんだよ。」


麻子「ああ…」

まほ「素晴らしい足さばきだった、完敗だよ。」


思い出した

私たちは戦車道全国大会で優勝したんだった。

学園艦の存続をかけて、ド素人の集まりが
やってのけたのだ。


杏「武部ちゃーん、冷泉ちゃーん
そろそろ帰るぞー。」


華「今日は車長が自慢のあんこう鍋を
振舞ってくれるそうですよー!」


桃「お"お"ーい"、早く"こ"ーい"」


柚子「泣きすぎだよ桃ちゃん!」


桃「桃ちゃんいうな!
マネージャーの分際でぇ!」


まほ「あの人たちが車長と装填手と砲手か
呼んでるぞ、早く行ったほうがいい。」


沙織「はーい!いま行きまーす!」


沙織が駆け足でむかった先で
大洗の仲間たちが手を振っている。


まほ「ほら、あなたも。」


麻子「…なあ、西住さんて」


まほ「ん?」


麻子「妹とかいないか?」

まほ「いや、私は一人っ子だが…まあ
同い年だが妹がわりならいる。
副隊長の逸見エリカという奴だ。」


麻子「そうですか。」


まほ「なぜ、そんなことを?」


麻子「いえ、別に。変なこと聞いて
ごめんなさい。」

麻子はまほに謝ると、沙織のあとを
追いかけた。


何かが引っかかる。


誰かが足りない気がする。


でも、今は素直に喜ぼう。


麻子はそう思うことにした。




~♪



沙織「あっカレからメールだ♪」



おわり

『これが、私が人間であることをやめ
永遠に戦い続ける存在になったお話です。』


『これまでに何人もの魔法少女を倒し
取り込んできました。』


『いまでは、みんな立派な戦友です。』



『次は、あの桃色の服を着た人と戦います。』



『あの人とも、仲間になれたらいいな?』



真のおわり

終わりました

ガルパンにまどマギの要素を組み込んだら

こうなりました

長くなってしまい

もっと短くまとめたかったです


長々とつけたにもかかわらず
読んでくださった方々に感謝感激です


本当にありがとうございました


今日はもう遅いので 夜があけたら
落とし方を調べ直して落とそうと思います

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