美希「もうダメなの」  修造P「諦めんなよ!!!」(267)

時系列的にはアニマスの後

――空港――

春香「それじゃプロデューサーさん、向こうでも頑張ってください」

雪歩「はぅぅ……お別れするのは寂しいですけど、私たちも頑張りますぅ」

やよい「うっうー! プロデューサー! ご飯はしっかり食べてくださいねー」

亜美「んっふっふ~、兄ちゃんが帰ってくるころには、亜美たちチョー成長してるかんね!」

真美「この年頃の一年はおっき→よ、きっとスーパーナイスバッディーに……」

伊織「まあ、竜宮小町に関しては心配いらないわ。なんてたってこの伊織ちゃんがリーダーなんだから」

あずさ「私たちは変わらずやっていきますからぁ、どうかお身体には気を付けてくださいねぇ」

貴音「あずさの言う通りです、ご自愛を、貴方様」

真「プロデューサーがいない間にも、ボク達、ジャンジャンバリバリ仕事して、レッスンして……」

響「今以上に完璧になってやるさー」

千早「本場アメリカのショービジネスについて、帰ってきたら色々と教えて下さい。楽しみにしてます」

赤羽根P「ああ、みんなありがとうな」

律子「後のことは私たちに任せて、思う存分学んできてください。

  一年で追いつけるように、私もこっちで頑張ります」

小鳥「プロデューサーさんの机、綺麗にしておきますから、いつでも戻ってきてください」

赤羽根P「律子も音無さんも、ありがとうございます。

  最後までみんなの面倒を見れなかったのが心残りだけど……」

小鳥「後任のプロデューサーさんとの顔合わせも、けっきょく間に合いませんでしたね」

律子「まあお互いに忙しい身分だから、仕方がないですね」

赤羽根P「きっとあの社長が見込んだ人だから、優秀な人のはずです。

  みんな、ちゃんとその人の言うこと聞くんだぞー」


アイドル一同 『  はい!! 』

赤羽根P(ふう、これで別れの挨拶は済んだか……けど)

小鳥「美希ちゃん、来ませんでしたね」

律子「ほんと、こういう時まで、あの子は……」

赤羽根P「いや、良いんです。美希には、人一倍辛い思いをさせてしまいましたから」

伊織「全く、これから旅立つって時に、なに辛気臭い顔してるのよ。それにもう時間よ、時間!」

赤羽根P「わ、もうこんな時間」アタフタ

千早「ふふ、美希のことは私たちがケアしておきますから、行ってください、プロデューサー」

響「ほら急いで急いで」

春香「じゃあ皆、いつものあれ、いくよ……せーのっ、765プロー」

一同『 ファイトー! プロデューサー! 行ってらっしゃい! 』

赤羽根P「ああ、ありがとう! それじゃあ、またな!」


赤羽根P(美希……)

こんにちは、天海春香です!

765プロ2ndライブから、一年近くが経ちました
あれからまた、本当に色んなことがあったんです

とうとう私たち765プロに、アイドルアカデミー大賞の案内が来て、

プロデューサーさんは、私と、美希と、千早ちゃんの3人ユニット「765 Angels」を結成
……竜宮小町と一緒に、2組がノミネートされることになりました。

生っすか!?サンデー!のMC3人ということで、
知名度はバッチリ!満を持してのユニット活動です。

みんな、今まで以上に活動に精を出すようになって、
特に美希なんか、

「ハニーに、ぜーーったいIA大賞をプレゼントするの!!」

って何回も言ってました。

周りがびっくりするくらい、仕事をたくさん入れて、
もう、テレビで美希を見かけない日は無いんじゃないか、ってくらい頑張ってて。

美希「ミキね……春香と舞台やってるとき、
   忙しくて、正直ちょっとツラいかも、って思ってたけど、
   今に比べれば、ぜーんぜん余裕だったなって思うな」

なんて呟いてたくらい。

千早「美希、本当に変わったわね。私も負けてられないわ」

美希「……千早さん。ミキね、まだまだ千早さんの歌には全然かなわないって思うから、」

   もっともーっとレッスン頑張りたいの!」

春香「最近の美希は本当に凄いよねえ。無理しちゃダメだよ?」

美希「むー。ミキはそんなヤワじゃないの」

千早「焦りは禁物よ。いっぱいいっぱいにやってると、何かの拍子にはじけてしまうわ」

美希「はいなの、千早さん」

春香(もう、千早ちゃんの言うことはすぐ聞くんだから……)

――アイドルアカデミー大賞、授賞式――

司会「それでは、いよいよIA大賞の発表です。

   私の手元には、その結果が書かれた紙が送られてきました。

   この封筒の中に、今年のアイドルの覇者が……おおっ」


赤羽根P(い、いいから早く言ってくれ……)


~ドラムロール~


司会「それでは、発表します。本年度のIA大賞受賞者は……」

司会「――エントリーNO.9、765Angels!!」


「――や、」


赤羽根P「やった!」
春香「やったぁ!」
美希「やったやったやったー!」
千早「やったわ!」


美希「千早さん!」ダキッ

千早「きゃっ! ……美希、一番プレッシャーのかかるセンターで、よく頑張ってくれたわね」

美希「そんなことないの、千早さんがサイドにいるから、ミキは安心して真ん中を張れるの」

春香「あっずるい二人とも、私も!」タタッ

春香「……きゃっ!あああぁ~」ドンガラガッシャーン

春香「…………痛たたた」

このとき、私は会場中の人から笑われちゃったけど。

美希「あはっ、実に春香らしいの」

転んだ私に手を出してくれたのは、美希でした。

美希「春香は、ちょーっと普通なトコあるけど、

   春香がいてくれたから、ミキたち諦めずにやってこれたって思うな」

春香「美希……」ジーン

美希「でも、こんな所でも転ばれると、さすがにカッコつかないの」

春香「ええっ!?」

千早「ふふっ、ふふふふっ」

春香「千早ちゃん笑いすぎだよぉ……」

いま思えば、このときの私たちは、本当に前だけを見て、まっすぐに進んでいました。

この先に何があるかなんて全然わからなかったけど、怖いものなんてありませんでした。

美希と千早ちゃんと、プロデューサーさんが一緒なら、どこまでだって行ける気がしたから。

でも、そのすぐ後、楽屋で、プロデューサーさんは真剣な顔をして、私たちに言いました。


――765プロ楽屋――


千早「ハリウッド留学?」

赤羽根P「……そうだ」

私と美希はしばらく言葉を失っていました。

赤羽根P「今まで黙ってたのは悪かったって思ってる。

     でも、ノミネートされるまではわからなかったことだし、

     何よりも、頑張っている皆にとって、雑音になるようなことは言いたくなかった」

春香「……プロデューサーさん」


ダメだ、泣きそう。だけど、泣いたらダメだ。

プロデューサーさんが飛び立てなくなっちゃう。

私にとっては寂しいけど、プロデューサーさんにとってはまたとないチャンスなんだから。


春香「えへへっ、アメリカに一年もいられるなんて羨ましいですねっ♪」

   おみやげ期待してますよ、プロデューサーさんっ」

赤羽根P「春香……」


このときのプロデューサーさんの表情を見て、あっ、また失敗しちゃったって思いました。

私の笑顔、やっぱり引きつってたのかなって。


千早「プロデューサー、私たちと3つ約束してもらえますか」

P「約束? ああ、何でも言ってくれ」


千早ちゃんの目は真剣だったけど、声は温かいものでした。


千早「必ず一年で帰ってくること」

千早「向こうで大きくレベルアップしてくること」

千早「帰ってきても、また私たちをプロデュースしてくれること」

赤羽根P「ああ、約束するよ。さすが千早だな!」

千早「一回り成長したプロデューサーと、またお仕事できるのを楽しみにしています」


私とは逆に、千早ちゃんは、自然に微笑んでたなって思います。

美希「……イヤなの」


それまで沈黙していた美希が口を開いたとき、

その冷たい声色を聞いて、たぶん皆凍りついていました。


美希「一年もお別れなんてイヤだよ! 美希には耐えられないの!」

美希「なんで春香も千早さんも平気そうな顔してるの? こんなのおかしいの!」

美希「なんで、なんで……」ポロポロ

赤羽根P「……美希」

美希「ハニー、またウソついたの」

赤羽根P「えっ」

美希「もうウソはつかない、ってあのとき約束したのに」

千早「美希、プロデューサーは嘘をついてたわけじゃないわ。“言ってなかった”だけ」

美希「そんなの、ミキにとってはウソと同じなの……」

春香「美希、プロデューサーさんだってきっと……」

美希「春香は黙ってて!」

春香「ええっ!?」

美希「春香にミキの気持ちはわからないよ!」

春香「そんな、私だって寂し……」

美希「ミキの方がハニーのこと大好きだもん!」

カチン

春香「何、それ?」

春香「私だって寂しいよ! 離れたくないよ!

   でもお互いのために、それをガマンしなくちゃいけない時だってあるでしょ?」

美希「そんなお説教、美希のキモチとは関係ないの!」

春香「ワガママ言わないで」

美希「ワガママじゃないの。だから、春香にはわからないって思うな。

   ミキほどハニーのこと好きな人じゃないと……」


春香「 ふ ざ け な い で !!」

美希「」ビクッ

千早「」

赤羽根P「」

春香「自分だけ言いたい放題言って!

   そのうえ私にはミキの気持ちがわからないって、何それ。

   いくら美希でも酷い……あんまりだよ。

   美希はずるい、勝手に一人で悲劇のヒロインになって……

   私だって、私だって、プロデューサーさんのこと……」ポロポロ

美希「……」

春香「うっ、えぐっ、ううっ……」

赤羽根P「」オロオロアタフタ

赤羽根P「……と、とにかく二人とも落ち着け、な?」

千早(溜息)

千早「……美希、今のはあなたが悪いわ」

美希「ごめんなさい。ミキ、ちょっと言い過ぎたの」

春香「えぅっ……私もっ、ごめ……なざいっ」

美希「せっかくIA大賞を取れた、最高の日なのに、

   こんな空気にしちゃって、本当にごめんなさいなの」

赤羽根P「いや、俺も悪かった。ごめん、美希! また約束破って、本当にすまん!」

美希「やめて、ハニー……余計に切なくなっちゃうの」

美希「ミキ、今日はもう帰るね」

千早「あっ、ちょっと美希!」


バタン!タッタッタッ……


赤羽根P「うあああ、最後の最後でまた、やってしまった……」

千早「プロデューサー……」

春香「プロ゛デューサーさぁ゛ん……」ヒシッ

赤羽根P「ごめんな、春香」ポンポン

赤羽根P「誰も悪くない……悪いのは、俺だけだ」

赤羽根P「だから、明日からは、美希と今まで通り、な?」

春香「ヴぁい……ヴぁい……」

千早(まあ、大丈夫だとは、思うけど……)

投下してみると思った以上に頭重かった 7レスくらい後に修造来る

――ふたたび、空港――

キーン……

春香「行っちゃったね」

千早「そうね」

律子「これから後任のプロデューサーが来るまでのあいだ、

   竜宮小町は私が引き続きプロデュースするけど、

   それ以外のユニットは、基本的に自分たちだけで活動してもらうことになるわ」

やよい「けっこう時間かかりそうなんですか?」

律子「いや、一週間くらいで来るそうだから、しばらくの辛抱って所ね」

伊織「ま、それくらいなら問題無さそうね」

響「完璧な自分たちならなんくるないさー」

雪歩「あのぅ……次のプロデューサーって」

律子「男性よ」

雪歩「はぅぅ!やっぱりぃぃ」

真「大丈夫、今の雪歩なら、きっと大丈夫だよ」ニコッ

雪歩「そうかなぁ?」

貴音「高木殿の見込んだ方です……必ずや誠実な殿方が来ることでしょう」

雪歩「で、ですよね! ありがとうございます四条さん!」

亜美「ははーん新入りフゼーに兄ちゃんの代わりが務まるかなぁん」

真美「んっふっふ~いっちょ揉んでやるとするか」

あずさ「あらあらマッサージですかぁ、楽しそうねぇ~」

伊織(あずさ、いくらなんでも大ボケかましすぎよ……)

律子「こーらー、亜美も真美もそういうのはやめなさい」

千早「あずささん、ここで言う揉んでやるっていうのは、

   新しく入った人に色々教えてあげるっていう意味ですよ」

あずさ「あらぁ、そうなんですかぁ。……えぇっと、それの何がいけないのかしら?」

伊織「要はパワハラね」

やよい「伊織ちゃん、ぱわはら、って何ですか?」

貴音「私にとっても耳慣れぬ言葉ですね」

伊織「ああああもう! いちいち面倒ね! とにかく帰るわよ、仕事が控えてるんだから」

やよい「じゃあ伊織ちゃん、帰り道でいろいろ教えてねー」ニコニコ

伊織「わかったわよ、もう……しょうがないんだから」

律子「それじゃあみんな帰るわよー」

一同『はーい!』

あれからあっという間にプロデューサーさんは行ってしまって……

こうして私たちは、

プロデューサーさんのいない事務所に帰ることにしました。

そう、プロデューサーさんのいない……



――765プロ事務所――

律子「ただいま戻りましたー」

小鳥「お帰りなさ~い」

美希「……」

小鳥さんの出迎える声と共に、入り口で私たちを待っていたのは、美希でした。


真「あれっ、美希?」

響「けっきょく事務所には来たんだなー」

貴音「何か、あったのですか?」

春香「美希……」

美希「……」


美希はいつになく何かを思いつめた表情で立っていました。


千早「」

千早「小鳥さん、いま社長室は空いていますか?」

小鳥「うふふ、空いてますよ」

千早「お借りします」

小鳥「はい、どうぞ」

千早ちゃんはいつもどおり冷静でした。

私と美希を社長室に入れて、自分はすぐに出て行きました。

外ではワイワイガヤガヤと、みんなが騒ぐ声が。

そりゃ目立つし気になるよね……。

でもそれは千早ちゃんが制してくれてるんだろうな。

そして、部屋には私と美希の二人っきり。

美希「……」

春香「……」

美希「……あの、春香!」

美希「ごめんなさいなの!」

春香「!!」

美希「ミキ、ハニーがいなくなるって聞いてショックだったとはいえ、

   春香にひどいこと言っちゃったの。だから、本当にごめんなさいなの」

春香「わ、私は全然気にしてないから、頭を上げてよ、ね?」

春香「……今日ね、いつものクッキーのかわりに、

   美希の大好きないちごババロアを作ってきたんだ。

   だから、あとで一緒に食べよ?」

美希「春香……ありがとうなの」

春香「……」

美希「…………」

春香「こんな風に、美希とケンカみたいになったのって、久し振りだね」

美希「あそこまで言い合ったのは、たぶん初めてなの」

春香「でも、私たちは同じユニットの仲間だから」

美希「……そうだね」

春香「美希、明日からもガンバろうね」

美希「春香、765Angelsの仕事は今日から入ってるの」

春香「そうだったね……えへへ」

美希「実に春香らしいの」

美希と仲直りできたこの日から、あっという間に一週間が経ちました。

なんと今日、ついに新しいプロデューサーさんが来るそうなんです!

だから、いつもよりちょっと早く、事務所に来ちゃったりして。

どんな人なんでしょうか。

少しだけの不安と、溢れそうな期待で、朝からずっとドキドキしてます!


律子「みんなー集まって!」

一同『 はーい! 』


あっ、どうやら来たみたいです。

それでは皆さん、またお会いしましょう!

律子「じゃあ、新しいプロデューサーを紹介するわね」

千早(随分しっかりした体格の人ね)

春香(あれっ、この顔どこかで見たことが……)

P「初めまして、待丘修造です」

真「……やっぱり修造さんだ!」

響「来てくれたんだ! 自分、すっごく嬉しいぞ」

P「うん、響とは番組で一緒になったことがあったね」

伊織「えっ、アンタたち知り合いなの?」

響「そうだぞ! 修造プロデューサーは、すごく情熱的な先生なんだー」

律子「以前はテニスをやっていたそうよ」

P「まあ、それはちょっとしたもので、今はこっちの仕事が完全にメインですよ」

真(うわあ本物だ……)

社長「ウォッホン、では、早速、みんなに向かって挨拶をしてくれたまえ」

P「今日から、一年間の契約で、僕は君たちをプロデュースすることになります。

 今年の僕のテーマは「本気」。

 本気になれば自分が変わる、本気になれば全てが変わる。

 ……さあ皆さん、今年は本気になって頑張っていきましょう」ニカッ


真・響「「はい!!!」」

他(……?)

亜美「亜美たちいつだって本気だよ?」

美希「そうなの、ミキたち、とーってもガンバってるの」

伊織「ま、その辺は今まで通りで問題ないんじゃないかしら」


ダヨネー……デスゥ……ワタクシモ……ウッウー……ウンメイノヒトハァ……

P「……君たち」

一同『 はい? 』

P「もっと熱くなれよおおおおおおおおおおお!!!」

ビクッ

P「もっと熱くなれよ! 熱い血燃やしていけよ!!」

P「人間熱くなった時が本当の自分に出会えるんだ」

貴音「お言葉ですが、プロデューサー殿、闇雲に熱くなっても仕方がないのでは?」

P「違う、俺が言いたいのはそうじゃない」

P「君たちは、昨年ブレークして、いま実質的な二年目を迎えている」

P「しかし、この業界には“二年目のジンクス”という言葉がある」

P「一年目がどんなにうまく行ってても、

 二年目でサッパリになってしまうことなんて、ザラにあるんだ」

P「……萩原雪歩、どうしてかわかるかい?」

雪歩「は、はひぃ!?」ビクッ

雪歩「……ええと、あのぅ(うぅ、やっぱりちょっと怖いかも)」

P「」ジッ

雪歩(あ、私の目を見てる……)

P「……」

P「ドント ウォーリィ、 ビー ハッピー」ニカッ

雪歩「」バタッ

真・春香「雪歩!!」

PΣガーン

伊織「ちょっと何てことすんのよ! アンタ雪歩を殺す気?」

P「いや、男性が苦手とは聞いてたけど、これほどとは……」アタフタ

伊織「こんな暑苦しい男の顔面ドアップとか、いきなり無理に決まってるでしょ!!」

P「えっ」ガガーン

真「とりあえず、雪歩をソファーへ」

あずさ「ここで寝かしといてあげましょう」

真美「おおぅ、あずさおねぃちゃんの膝枕……」

亜美「んっふっふ~漢の夢が膨らみますなあ」

P「んんっ、んんっ!」(咳払い)

P「とにかく、アイドルのみならず、芸能界は常に戦いの世界だ」

P「闘争心や向上心を失ったら、すぐさま落ちてしまうと言っても過言ではない」

P「それを忘れないよう、いや、これまでよりもっと熱くなって、これから共に活動して欲しい」

P「というわけで、(雪歩不在だけど)これから一年、よろしくお願いします」

一同『 よろしくお願いしまーす !! 』

真「なんか気合入ってきたよ……よーし、これからもジャンジャンバリバリ活動して行きますよ!」

響「二年目のジンクスも、みんなとプロデューサーがいればなんくるないさー!」

伊織(単細胞組はお気楽ね……)

千早(正直、不安だわ……)

やよい「うっうー! みなさんがんばっていきましょう!」

伊織・千早「!」

やよい「プロデューサー、みんなといっしょに、あれやってもいいですか?」

P「あ、ああ(アレって何のことだ……?)」

やよい「せーのっ……はい、」

『 ターッチ!! いぇい! 』

パチパチパチ……

P(なんだこの雰囲気……凄く良い感じにまとめてくれた)

伊織(まあ、一年くらいならああいうノリも悪くないかもしれないわね)

千早(高槻さんがうれしそうなら、何だっていいわ)


・1週間後

――765プロ近辺の喫茶店――

美希「おはようございますなの~」

春香「あっ来たきた」

千早「これで全員揃ったわね」

春香「なんか久しぶりだね、このプチ・ミーティング」

千早「私がやろうって言い出しておいて何だけど、最近忙しかったから……」

美希「ジッサイはお茶飲んでテキトーに喋ってるだけな気がするんだけど、

  ミキ的にはそれくらいが良いって思うな」

千早「そうね、ちょっとした息抜きと考えてもらえればいいわ」

春香「なんとなくお仕事の話してて、気づいたら全然関係ない話になってるのとか、面白いよね」

千早「新しいプロデューサーが来てからそろそろ1週間だけど、みんな調子はどう?」

美希「そうだね……」

美希「こないだ、生っすかの収録があったときは、なかなか話がわかるってカンジだったの」

春香「えっ」

千早(溜息)

千早「美希、あれはね……」

――BBS赤坂スタジオ――

美希「zzz……zzz……」

春香「もう、美ー希ー! 本番30分前だよ!」

美希「……((はにぃぁんしょうれはまだ早いのぉ))……」

春香「何言ってんだかぁ……」

千早(溜息)

千早「こうなったら、何をやってもダメね」

千早「自然に起きるまで、待つしか……」

春香「千早ちゃん……」

コンコン

P「入ってもいいか?」

春香「あ、大丈夫です!」

ガチャ

P「……」

P「美希はまだ寝ているのか」(溜息)

春香(あわわ……プロデューサーさん来て早々にこれはマズいよぉ)

春香「あの、これはその……」

千早「み、美希流の調整法なんです」

千早(苦しいわね……)

P「そうか、なら仕方ないな」

春香「へ?」

P「本番でしっかりやってくれるならいいよ」

千早(もっと厳しいかと思ってたのに、意外だわ)

P「ただ、たとえば寝起き直後は声が出にくくなったりするけど」

P「そういったことが影響して何かやらかすようだったら、色々と考えさせてもらう」

P「うまくやってるうちは、僕は何も言わない」

春香「そうですか……」

千早(やっぱり、熱心な反面、厳しい人なのね)

美希「むにゃ……あ、プロデューサー、おはようなの」

P「おはよう、美希。よく寝れたかい?」

美希「はいなのー……」

P「そろそろ本番だからな」

美希「うん、ガンバるの~」

春香(爽やかさが一周して怖いですよ……)



美希「ええっ!? あれってそういう話だったの……」

千早「そうよ、だから気を抜いてはいけないわ」

美希「怖いの……けっこうキビシい人なんだね」

千早「でも熱心なのは間違い無いわ。レッスンも良いみたい」

春香「そういえば、こないだ響ちゃんから聞いたんだけど……」

――レッスンスタジオ――

♪オンナナラ タッエ ラレッマッス ツヨイカラー~

ダンス講師「はい、じゃあ一旦休憩ね」

『 はーい! 』

P「みんな、お疲れ、ドリンク持ってきたぞ」

やよい「うっうー! ありがとうございますー!」ガルーン

響「ありがとう、プロデューサー。どう、どう? 自分たちのレッスンは?」

P「ああ、響はさすがダンスの看板だな。やよいも元気があって良かった」

響「でしょでしょ、自分凄かったでしょ?」

P「ただ、(響は)自信が先行してちょっと走りすぎな所があるから、連携も考えてな」

響「……気をつけるぞ」

雪歩(うぅ……プロデューサーに見られてると思うと、ちょっと緊張するよぉ)

P「雪歩、ちょっと良いか」

雪歩「は、はぃぃぃ!」ビクビク

響(雪歩、まだプロデューサーにビビってるぞ……)

P「良くない言い方だけど、雪歩は消極的になってるな。全てのものをマイナスに考えてる」

P「マイナスに考えたら身体に出ちゃうんだ」

P「ミスを恐れて、思い切りのあるパフォーマンスができてない」

P「それでお客さんの心を掴めると思うか?」

雪歩「……思わないですぅ」

P「だったら変えるしかねぇだろ、考え方を」

P「すべてにおいて、できる!やれる!大丈夫! そう思うしかない」

P「気持ちはすぐに切り替えられるものじゃないから、まず言葉に出そう」

P「できる!やれる!大丈夫!」

雪歩「できます、やれます、大丈夫です」

P「本気で言ってごらん!」

雪歩「……できます! やれます! 大丈夫です!」

P「歌やダンスが難しいな、と思ったとき、今のを心の中で言うんだ」

P「開き直った雪歩は敵なしだ。だから絶対諦めんな!」

雪歩「はい!」


――15分後――

ダンス講師「じゃあ再開しましょうか」


◆◇ 愛 LIKE ハンバーガー ◆◇ 作詞:白瀬彩 作曲:田島勝朗 BPM:192

♪ソレデイテ パワフルナハンバーグ ス・テ・キ

やよい「でもなんだかほら お腹空いたわ」

響「お料理しちゃおう」

 『 そうしよう!! 』(そうしよう!!)

雪歩(うぅ……速くてついていくのがやっとだよぉ)

P「ガンバレガンバレできるできる絶対できるガンバレもっとやれるってやれる気持の問題だガンバレそこだ諦めんな絶対諦めんなポジティブに積極的にガンバル頑張るやよいだって頑張ってるんだから!!」

雪歩「!!」

響(プロデューサー、正直うるさいぞ……)

やよい(き、曲が聞こえないです……)

雪歩(……できる!やれる!大丈夫!!)

雪歩(がんばります!)

雪歩「じんわりこんがりバンズを」

雪歩「きちんとケチャップで塗れば」

雪歩「具にはレタスとビーフパティ」

雪歩「大好き好きハンバーガー」

全員「ステキ ILIKE HAMBERGER!」ビシッ

ダンス講師「はい、そこまで!」

雪歩「で、できた! できましたぁ!!」

ダンス講師「良かったわよ、萩原さん」

P「今の感覚を忘れないようにな」

雪歩「はい!ありがとうございました!プロデューサー」

響「雪歩がこの調子なら、どんなこともなんくるないさー!」

やよい「うっうー! 楽しいですー!」

雪歩「響ちゃん、やよいちゃん、ありがとう!」



美希「へー、雪歩をソノ気にさせるって、なかなか凄いの」

千早「どうりで最近打ち解けてると思ったわ」

春香「こないだ雪歩からお茶を入れにいってたよ」

美希「雪歩もシンポしてるのー」

春香「そういえば、今日は私たちのレッスンだったね」

千早「ちょっと緊張するわね」

美希「千早さんが? 珍しいの」

千早「話を聞いてると、楽しみでもあるわ」

春香「うん、がんばろう!」

美希「だねー」


♪ヒトリデハ デキナイコト ナカマトナラ デキルコト

P「はいちょっと中断」

P「春香、」

春香「はい!」

P「春香は、ちょっとうまく見せようとしすぎてるというか、力んでいる所があるな」

春香「私ふだんよく転ぶから……その、転ばないようにって、思ってるのかもしれません」

P「でもそれじゃお客さんに響かないぞ」

春香「はい……」

P「春香、君がアイドルをしている理由は?」

春香「え? 理由、ですか……」

P「そう、まとまってなくてもいいから、自分の言葉で言ってごらん」

春香「私、みんなと楽しく、歌ったり踊ったりしたくて……それが子供の頃からの憧れで」

春香「でも、その夢が叶ったあとで、一回調子を崩したことがあったんですけど……」

春香「そのときに、1stライブのことを思い出して」

春香「やっぱり、応援してくれるファンの前で、みんなで何かをするのが好きなんだなって」

P「……たぶんそれが君の理由なんだ」

P「今ちょっと忘れてたんじゃないか?」

春香「そうかもしれません」

P「そういう時はイメージするんだ」

P「君たちが好きで観に来てくれてるファン。横には苦楽を共にした仲間」

P「そんな環境で、君はステージに立ってる」

P「君は今どんな気分だい」

春香「……すごく、嬉しいです」

P「その嬉しさを全て受け入れて、踊るんだ」

P「練習で大切なのはイメージだ」

P「何をするにしても、実戦の強いイメージを持ってやることが大切なんだ」

春香「はい!」


♪ノリコエラーレルノッハ ユーニティ ストレーングス!


千早(春香……見違えるように動きが良くなったわね)

千早(噂通り、さすがだわ、プロデューサー)

P「美希、力抜くな!そういうのはすぐわかるぞ」

美希「は、はいなの!」

P「千早、笑顔!」

千早「はい!」

P「次のコーラスでラスト、いくぞ!」


♪ ザ ワールディズ オール ワン! ユーニティマインッ!


春香「おつかれさまでしたー」
千早「お疲れさまです」
美希「お疲れさまでしたなの」

P「はい、お疲れさま」

P「各自、明日以降のスケジュール確認しておくように」

春香「はい!」
千早「わかりました」
美希「はいなの」

P(……)

3週間後

P(気づいたらもう1ヶ月か)

社長「どうだね、この1ヶ月、ひとしきりアイドル達と仕事をしてみて」

P「……正直言って、良い状態とは言えません」

律子「えっ?」

社長「それはどういうことかね、君ぃ」

P「みんな仕事ぶりは悪くないんです。スタッフからも変わらず評価されてる」

P「しかし、ファンの心は難しい」

P「挨拶のとき言いかけたことですが、

  今あの子たちは2年目のジンクスに直面しようとしています」

P「特に、765Angelsが危ない。黄信号です」

律子「先月出したCDの売上は悪くないはずですが……」

P「まだ表には出てきてないけど、確実に兆候はある」

P「ずっと右肩上がりだったファンクラブ人数が、ここしばらくは平行線になっているし、」

P「あの子たちが出てる番組の視聴率も、思ったほどは取れていない」

P「昨年、前任のプロデューサーが特に力を入れて売りだしたのがあの三人だった」

P「それ自体は素晴らしい戦術だったし、実際に頂点まで上り詰めた」

P「今度はそれを維持するのが課題になってしまったんです」

P「他の子たちはまだその域には達してませんから、

  当面はこれまでと同じように、着実にファンを増やす方向で良いんですが……」

律子「竜宮小町はどうなんでしょうか」

P「律子の戦略通りで問題ないと思う。

  ライブを多めにこなして、ファンとの接点を重視する、あのやり方で」

律子「……はい」

社長「で、具体的な打開策はあるのかね?」

P「……あります」

P「ですが、このやり方は痛みを伴います」

律子「!」

社長「ほほう」

P「事務所としては、一つのバクチでもありますが……」

社長「ふむ。ぜひ聞いてみたいね。話してくれたまえ」

P「……律子」

律子「はい」

P「覚悟して聞いてくれ」

律子「……わかりました」

P「春香、美希、千早を今後も生かしていくための策、それは……」


――BBS 赤坂スタジオ――

♪メーザセー アーイドール ナーンバーワーン コレゾ プロデショ!!

千早「それではまた来週」

春香「よろしくお願いしますっ」

美希「まったね~☆」

コノ バングミ ハ ゴランノ スポンサー ノ テイキョウデ オオクリシマシタ ナノ!

(CM)

スタッフ「はい、お疲れ様でーす!」

『 お疲れさまでしたー! 』

伊織「今日の収録も、なかなかタフだったわね」

春香「響ちゃん、どこまで泳いで行ったんだろう……」

美希「ま、響は沖縄の人だから、ずっと泳いでてもヘーキなはずなの」

春香「えええっ、そんなはずないでしょ!」

真美「そ→なの?」

千早「遠泳ってすごく大変なのよ」

亜美「まーひびきんなら大丈夫っしょ→。そのうちシャチにでも載せてもらえるって」

春香(響ちゃん……)

千早(我那覇さん……)

P「はい、みんなお疲れさん」

『 おつかれさまでーす! 』

P「今週も大変だったろう? 差し入れ持ってきたぞー」

ワーイ!

アリガトーゴザイマース!

イッタダキマース! アッコラ! ジャワタシモ! ワタシモ-!

亜美「これ428駅前のサクサクシュガードーナツじゃん! 修造兄ちゃんさすが!」

伊織「ま、なかなか上等じゃない!」

貴音「真これは……美味でございます」

春香「」

P「どうした春香?」

春香「……じ、実は」

春香「私も、ドーナツ作ってきちゃったんですよ…」

あずさ「あらあら~じゃあこちらも皆でいただきましょうか」

あずさ「……ん~。こっちも手作り感があって、とっても美味しいわねぇ春香ちゃん」

春香「あ、ありがとうございます」

P「まさか、こんな所でかぶるなんてな」

春香「奇遇ですねっ、えへへ……」

P「」ズキン

春香「? プロデューサーさん?」

真美「んっふっふ~」ヒョコッ

真美「奇遇ですねとは……はるるん、なんだかあざといですなぁ」

春香「わゎゎっ!? もう、真美、からかわないでよ!」

ンッフッフー モー!

P(春香……すまない)


――765プロ事務所――


春香「おはようございまーす」

千早「おはよう春香」

美希「おはようなのー」

響「はいさーい!」

やよい「おはようございますー!」

ガヤガヤ……

ガチャ

P「お、春香が来たな」

春香「おはようございます、プロデューサーさん」

P「おはよう。来て早々で悪いんだけど、

  春香、千早、美希、響の4人は、ちょっと社長室に来てくれないか」

春香「は、はい、わかりました」

美希「はいなのー」

響「了解だぞ」

千早(これまでに無かった4人組ね……何かしら)

やよい「……?」

やよい(どうしたんでしょうか……)

真「おはよー」

雪歩「おはようございますぅ」

やよい「真さん!雪歩さん!おはようございますー!」

真「あれっ、やよいだけ?」

やよい「ええと、伊織ちゃんたちは竜宮の早朝ロケがあるとかで……」

やよい「春香さんたちは、いまプロデューサーに呼び出されて社長室に」

雪歩「春香ちゃんと?」

やよい「美希さん、千早さん、響さんです」

真「765Angelsと響か。珍しいね」

ソウダネー デスヨネー

……

…………

真「……ずいぶん長いね」

雪歩「そうだね」

やよい「たぶん30分は経ってるかなーって」

ガチャ


P「とりあえず今は目の前の仕事を片付けていこう、な」

4人『 はい…… 』

春香「……」

千早「……」

美希「……」

響「……」

雪歩(な、なんだか空気が重いですぅ……)

真(まるでお通夜じゃないか)

やよい(春香さん、目が真っ赤です……)

真(とりあえず挨拶しないと)

雪歩(そうだね)

真「おはようございます!プロデューサー!」

雪歩「おはようございますぅ」

P「おはよう二人とも」

P「そろそろ生っすかの現場入りだから、みんな準備してくれ」

真「あっホントだ! わかりました」

雪歩(うぅ……聞くタイミング逃しちゃったなぁ)

真(でも聞くに聞けないよね)

やよい(いったい何があったんでしょうか……)



――1週間後


キャスター「では今日の芸能スポーツ紙の一面を見ていきましょう」

コメンテーター「おおっ、やっぱりどこもこのニュースですか」

【765Angels 電撃解散、新ユニット結成】(ニッカン芸スポ)

 人気アイドルグループ「765Angels」が昨日、新曲CD「my song」の発売記念イベントで、ユニット活動に終止符を打つことを発表した。
 所属事務所の765プロダクションによると、同グループでの活動は6月中までとし、7月以降は従来メンバーの星井美希、如月千早に、同事務所所属アイドルの我那覇響を加えた新ユニット「SUMMIT」として再始動するとしている。
 天海は「みんなで話し合って決めたこと」と切り出し、「少し早いけど、お互いに新しい可能性を模索する時期にきた」と説明。
 メンバーが沈痛な面持ちで見守る中、「活動が別々になっても、私たちは同じ事務所で、毎日のように顔を合わせる、かけがえのない仲間です」と涙ながらに報告した。

 突然の発表に、会場に駆けつけた1,000人のファンは騒然。
 真剣な表情で、ゆっくりと口を開いた如月は「この曲を録っていた時は、今みたいなことになるとは思いもよりませんでしたが、
「my song」は、新しい道を歩きながら、離れた所にいる仲間への想いを歌った曲です。当初の思惑とは違いますが、
私達の最後を飾る、本当に心のこもった一曲になりました。今まで皆さんと過ごした時間と、これから過ごす時間を、共に大切にしていきたいと思います」と万感の思いを語った。


キャスター「人気絶頂での解散ということで波紋を呼んでいます」

コメンテーター「何かいきさつがあってのことかもしれませんが、ファンは戸惑うでしょうね」

キャスター「一方、芸能報知ではこのように報じられています」

【天海春香、ユニット脱退】(芸能報知)

 (……)事実上、天海春香の脱退、および我那覇響の加入という、765プロダクション内の「人事異動」である。
 業界関係者は、ダンス技術に定評のある我那覇響が加わることで、ライブで1ランク上のパフォーマンスを見せるのが狙いではないかとしている。
 いずれにせよ、ファンとの接点を大事にしてきた天海春香が抜けることは、大いに波紋を呼びそうだ。

コメンテーター「なるほど、かなり踏み込んだ見解ですね」

マシコ・デンジャラス「フンッ、モロにアイドルオタクな記者が書いてるのね」

キャスター「……お騒がせ事務所、765プロ。話題に尽きることがなさそうです」

キャスター「さて、次のニュースですが……」



――765プロ事務所――

伊織「どういうことなのよ!」

亜美「ちょっといおりん、落ち着いて」

P「……」

伊織「黙ってないで何か言いなさいよ!!」

あずさ「伊織ちゃん……」

P「……次のステージに行くためだ」

伊織「だからその意味がわからないって言ってるの!」

P「今は、それしか言えない」

P「もう、決まったことなんだ」キッ

亜美(修造兄ちゃん、すごい迫力だよ……)

伊織「……何よ、うまくやってきてたじゃない」

伊織「日曜午後を丸々使った生放送番組のMC3人なのよ、」

伊織「これ以上何があるって……」

P「それはこれからの俺の仕事が示していくことだ」

P「もう後には引けない」

伊織亜美あずさ「……」

律子「……」

春香「かいさん?」

美希「765Angels、が?」

響「!?」

千早「プロデューサー、何かの間違いでは」

P「俺は本気だ」

P「先週出たCDの初動売上を見て確信した」

P「もうこれ以上の上昇は見込めない」

P「あと、俺はみんなと二ヶ月ちょっとしか仕事をしていないけど」

P「君たち3人の関係は、ぬるくなってきている気がする」

千早「!」

春香「そんな!」

美希「ミキたちだってガンバってるの!」

P「本気でそう言い切れるか?」

春香「えっ」

千早「……そうかもしれません」

美希「千早さん!?」

千早「私たちはお互いを深く知りすぎている」

千早「それが何らかの緊張感の欠落というか、

   馴れ合いみたいになっている部分が、少なからずあったことは……」

春香「そんな、千早ちゃん……」

美希「……ミキもちょっと悪かったかもしれないの」

春香「美希?」

美希「ここ最近は、前よりも寝てる回数が増えてたの」

春香(えっ)

美希「だから、油断してるってのは、あったかもしれないなーって」

響(そうだったのか……)

春香(寝てる回数なんて、そんな増えてたっけ)

千早(さすがにそれは知らないわ)

P「みんな、俺が就任当初に言ったこと、覚えてるか?」

春香「のワの? えーと……」

美希「なんだっけ?」

千早「テーマは本気だ、って話ですか」

P「そう、俺はいつだって本気だ」

P「だからこれは冗談でも何でもない」キリ

春香「……」

美希「もうそこまで決めちゃってるんだね」

千早「……私達が解散するのはわかりました」

千早「それで、今後の音楽活動はどうしていくんですか?」

P「そう、それが2つ目の話だ」

千早「……!」ハッ

千早「それで、我那覇さんが」

響「へっ!?」

P「さすが、千早は察しが良い」

美希「どういうことなの?ミキにもわかるように説明して欲しいの」

響「そうだぞ、自分、さっきからなんでこの場にいるのか、よくわかってないさー」

P「この紙を見てくれ」バッ

P「響、なんて書いてある?

響「“SUMMIT”……サミット?」

P「美希、意味は?」

美希「えっとぉ、アレだよね、世界中の偉い人が集まって、ホームルームみたいにするやつ!」ミキッ

千早(溜息)

千早「それもあるけど、頂上とか、頂点っていう意味で、普通は使うわ」

P「そう、目指すは本当の頂点だ」

P「如月千早、星井美希、我那覇響」

P「君たち3人には、新しくユニットを結成してもらう」

『!』

P「ユニット名はこの“SUMMIT”」

P「コンセプトはシンプルに、“最高のステージパフォーマンス”を目指すユニットだ」

P「ボーカルの千早、ビジュアルの美希、ダンスの響」

P「あえて純粋に能力だけでこの3人を選んだ」

P「アイドルの新しい可能性を、おれはみんなと作って行きたい。よろしく頼む」

美希(えっ、でもそれって……)

千早「……」

春香「私、外れちゃったんですね」

千早「春香、」

春香「いいの!」

千早「」

春香「今のプロデューサーさんの話聞いてて、仕方ないなって、思っちゃったから」

春香「この3人に比べたら、私なんてまだまだ実力不足だし」

春香「こうなっても仕方ないなって、思ったんです」

響「春香ぁ……」

美希「……」

春香「えへへ……仕方ない、よね」

春香「でも私、もう少しだけ、あとちょっとだけ」

春香「この3人でお仕事したかったかな……」

春香「あああウソウソ今のなし! 何いってんだろ」ポカッ

千早「春香……」ギュッ

春香「えっ、千早ちゃん……」

千早「今は、無理しなくていいのよ」

春香「」ブワッ

春香「そんな……」ポロポロ

美希「うぅ、春香ぁ……」グスン

響「自分も、自分も……春香の分まで頑張るからあ」ジワッ

P「全ての責任は俺にある」

P「みんな、すまない」

P「でも、俺はその涙を絶対に無駄にはしない」

P「必ずみんなを本当のトップアイドルにするから」

P「だからあと少しだけ、ついてきてくれ」


千早「はい」
春香「ヴぁい……」
美希「はいなの」
響「わかったぞ」


P「それで春香、泣いてる暇はないぞ」

春香「ふぇっ?」

P「君には新しい役割がある」

春香「!?」

響「どういうこと?」

P「それは……」

結局●使ってて、30秒~1分間隔くらいで大丈夫そうなんだが、
それでもサクっと猿くらったりするものなん?
(こんな連投したことないのでその辺考えたこともなかった。アホな質問ですまん)

一ヶ月後


社長「……なるほど」

社長「これが君の狙いだったわけだね」


■天海春香 スケジュール 7月第3週

・月曜 「東京フレンドワールド」ゲスト

・火曜 「じっぷ!」番組内コーナー

・水曜 「リリカル頭脳パワー」レギュラー

・木曜 「いずれの料理ショー」ゲスト

・金曜 「あず散歩」ゲスト


小鳥「……春香ちゃん、出ずっぱりですね」

P「彼女にはバラエティの方が向いていると思ったんだ」

P「ならばそっちに特化してもらおうかと」

律子「昨日収録したフレンドワールドでも大ウケでしたね」

P「あの、マジップテープの手袋はめて壁に張り付くやつで、」

P「あろうことか壁に頭からダーイビーン」

律子(……)

P「リトライしたら、今度は手袋を逆にはめていて、マットに華麗なムーンサルト・プレスだ」

P「あれはさすがに予想外だった。一緒に出てた千早が笑いすぎて危なかったけど」

律子「朝の番組でコーナー持たせてもらえたのも大きいですね」

P「あの仕事は取るの大変だったけど、見返りも大きかったな」



春香「天海春香のクエスチョン・タイム!」

春香「このコーナーでは毎回有名人の方に来ていただいて、

   究極の質問に答えてもらいます!」

春香「今回のゲストは……この人!」

――そう、僕だ。


春香「なんと、武田蒼一さんです!」

武田「久しぶりだね、天海くん」

春香「ご無沙汰してます、武田さん!」

春香「876プロの秋月涼ちゃんに、新曲を書いてあげたそうですね」

武田「彼女は光るものを持っていた。将来が楽しみなアイドルだよ」

春香「武田さんの手がける新曲、「Dazzling World」、7月28日発売予定です!」

春香「では早速ですが、究極の質問です」


2つの能力、選ぶならどっち?

A.未来が見える

B.過去を変えられる

武田「……難しい質問だね」

武田「でも僕は迷わない」サッ

春香「Bですか! なんだか意外ですね」

武田「後ろ向きに思われるかもしれないが、

   僕は未来を知らないほうが幸せになれる気がするんだ」

春香「先がわかっちゃうと、便利だけど、いつか退屈になっちゃうかもしれませんね」

武田「過去を変える力は、本当にどうしようもないとき、人生で一回だけ使うようにしようかな」

春香「……かっこいいです、武田さん……」

武田「君みたいな人気アイドルに褒めてもらえるなんて光栄だよ」ニコッ

春香「そんな、私なんてまだまだ……」ズルッ

春香「ってアーーーー」ドンガラガッシャーン

武田「……見なかったことにしよう」

春香「イテテテ……なんでイスの足が曲がってるの……」

春香「い、以上、天海春香のクエスチョン・タイムでした!」

P「これを毎週やるようになってから、特に地方での認知度が爆発的に上がりました」

P「ふだんバラエティを見ていない中高年層にも人気が出てきたと聞いています」

小鳥「BGMに使ってる「太陽のジェラシー」、最近リバイバルでまた売れてるそうですよ」

P「それは思わぬ収穫だったな……」

社長「君は天海君のこの才能を見込んでたんだね」

P「春香はアーティストというよりはエンターティナーです」

P「そして、765プロみんなの精神的主柱でもあります」

P「だから事務所の誰とでもつながれるポジションで仕事をしてもらおうと」

P「彼女が色んな番組に出ていることで、他の子にもバラエティの仕事が回ってきやすくなりますから」

小鳥「なるほど。それでこの選択だったんですね」

律子「よく見てますね……流石です」

P「ただ、問題はもうひとつの……」

律子「アーティストの方ですね」

P「正直、SUMMITはかなり伸び悩んでます」

P「まず例の発表でファン人数が25%減」

P「厳密に言うと、765Angelsのファンを4分の3しか引き継げなかった」

律子「それは……」

P「いや、思ったよりマシではあったんだ」

P「単純計算で3分の1、それよりもっと減ったっておかしくないんだから」

P「ただ、そこからの伸びが思ったようにいってない」

P「今が一番キツい時期です」

社長「……勝算はあるのかね」

P「あります」

P「……キーマンは、美希です」

P「次の初ライブが勝負所になる」

律子「……765プロ1stライブを思い出しますね」

小鳥「あの時も、「マリオネットの心」で、お客さんを一気に引き寄せましたから……」

P「そう、美希は何かを“持ってる”アイドルだ」

P「そこに賭ける」メラメラ

律子(すごく熱い目だわ……)

社長「ふふ、君はやはり私が見込んだプロデューサーだ」

社長「ぜひとも彼女たちを導いてくれたまえ」

P「……はい」

P(溜息)

P「とは言ったものの、そううまくはいかないんだよな」

律子「そうなんですか?」

P「ファン人数はなかなか増えないし、ネットでもそれなりにバッシングされてる」

P「ごくごく一部の心ない元ファンのネガキャンだって話だが……それでも良い影響はないからな」

P「だからあえて今はメディア露出を控えめにして、CDのリリースもしていない」

律子「ライブへの注目を高めるため、ですか?」

P「そう、まずはここからだと思ってる」

P「幸いチケットは完売したから、勝算はある」

P「しかし、そこで良いパフォーマンスを見せれなかったら……」

律子「……」

P「いや、そんなことを考えても仕方ない」

律子「そうですね、今はライブに集中、ですよね」

ガチャ

千早「おはようございます」
美希「おはようございますなの」
響「おはようございまーす!」


P「おはよう、みんな」

響「プロデューサー、今日もレッスンなのか?」

美希「ミキたち、テレビとか出なくていいのー?」

P「そっちは普段どおり、生すかと、いくつかのゲスト出演だけで良い」

P「ライブが近いからな。今はレッスン中心だ」


千早「はい」
美希「はいなの」
響「わかったぞ!」

――ダンススタジオ――


♪ホンノ ササイナ コトバニ キズツイター


P(やはりこの3人の組み合わせは良い)

P(可愛い曲も、カッコイイ曲も、硬軟織り交ぜたハイレベルな表現ができる)

P(ただ、不安材料がひとつ)

P(おれの杞憂だと良いんだがな……)

・2週間後  リハーサル→最終MTG 


P「いよいよ明日は本番だな」

響「あっという間だったぞー」

P「みんな、ここまでよく頑張ってくれた」

美希「ほんともう、クタクタってカンジ……」

千早「美希、疲れるのはまだ早いわよ」

P「泣いても笑っても明日がライブ本番」

P「このユニットの命運がここで決まると言っても過言じゃない」

千早(頷き)
美希「……」
響(ゴクリ)

P「さあ最後に色々確認しておこう」

■セットリスト

1.THE IDOLM@STER 響・美希・千早
2.Brand New Day!    響
3.涙のハリケーン          美希
4.蒼い鳥              千早
5.SMOKEY THRILL  響・美希・千早
~トークパート~
6.チェリー            響・美希
7.Inferno         千早・響
8.思い出をありがとう       美希・千早
9.KISS            美希・響
10.眠り姫              千早
11.マリオネットの心       響・美希・千早
12.キミはメロディ        響・美希・千早
~トークパート~
13.自分REST@RT      響・美希・千早
(アンコール)
14.GO MY WAY!!      響・美希・千早

P「正直、3人で2時間強、これをやるのは相当ハードだ」

美希「こんなにいっぱい歌ったり踊ったりするの、初めてかもしれないの……」

P「でも、みんなこれまで本当に頑張ってきた」

千早「そうですね。最近のレッスンは本当に熱の込もった内容でした」

P「だから君たちはきっとできる、絶対できる!」

響「あれだけやったんだ。なんくるないさー!」

P「ステージの上で信じられるのは自分と相方だけだ」

P「みんな、負けるんじゃないぞ!」

響「はい!」
美希「はいなの!」
千早「はい」

P(……頼んだぞ)

オツカレサマデシター!

テクテク……

響「いよいよ明日だなー」

響「自分、楽しみで今日は眠れそうにないさ」

美希「ミキは一秒でも早く寝たいの」

千早「ふふっ、」

響「笑わないでよー千早ぁ」

千早「ごめんなさい……我那覇さん、しっかり寝ないとダメよ」

千早「美希は寝すぎないようにね」

響「も、もちろん何とかしてちゃんとグッスリ寝るさ!」

美希「千早さん、なんだかミキたちのお姉さんみたいなの」

響「千早は本当にしっかりしてるよね。自分も美希も頼りにしてるぞー」

千早「もう、二人とも……」

千早(……こういうのも、悪くないわね)

響「おっ、もう駅に着いたぞ」

美希「ミキは二人と方向逆だから、ここでお別れだね」

響「じゃあ美希、お疲れさまだぞ!」

千早「明日もよろしくね」

美希「はいなの!」


――電車内――

千早「……ねえ、我那覇さん」

響「なんだ千早?」

響(こういう風に千早から話を振ってくるなんて、珍しいな……)

千早「私、ユニットが今の形になった時、正直不安だったわ」

響「……自分もだぞ」

千早「もちろん我那覇さんの実力は知っていたけど、

   今まで一緒にやってきた仲間と離されてしまうというのは、正直ショックだった」

千早「プロデューサーの判断に疑いを持ったこともあったわ」

響「自分も、これまで3人が作ってきたものに、途中から入る、ってなって」

響「……プレッシャーとか、凄く感じてたさ」

千早「やっぱりそうだったのね」

千早「でも私は、今日までやってきて、その考えが変わってきたって思うの」

響「……うん」

千早「それぞれ違う個性を極めた3人のレッスンは、これまでにない張り合いがあって」

千早「お互いの足りないところを補い合って、長所は活かしあって」

千早「自分だけでは気付けないことに、たくさん気づけた」

響「そうだね! 自分も千早と美希とレッスンしてて、すっごく楽しかった!」

千早「今では明日が楽しみで仕方ないわ」

千早「この3人の可能性を、もっと試してみたい」

響「うんうん!」

千早「その先に、本当のトップアイドルがあると思うから……」

ガタガタン……ゴトゴト……


響「……なあ、千早」

千早「?」

響「その……千早って自分のこと苗字で呼ぶよね?」

千早「えっ……、ええ、そうね」

響「……悪気がないのは知ってるんだけどね、」

響「美希のことは美希って呼んでるのに、自分だけ名前にさん付けだと、」

響「正直、他人行儀に感じるさ」

千早「ごめんなさい。自覚はしていたのだけど、タイミングが掴めなくて……」

響「これからは、自分のことも名前で呼んで欲しいさ」

千早「……わかったわ」

千早「が、……じゃなくって、ええと」

響「」

千早「……ひ、響?」

響「」ニッコリ

響「千早、もう一回言って!」

千早「響!」

響「うんうん!やっぱりそうでないと!」

響「これからもよろしくね、千早!」ニコッ

千早(!)

~アナウンス「ご乗車ありがとうございます、E駅に着きました。次はー……」~

響「それじゃ、自分ここで降りるから、また明日なっ!」

千早「え、ええ」

プシュー ガタンガタン……


千早「」

千早(……我那覇さん、じゃなくて、響……)

千早(なんて可愛い笑顔なのかしら)

千早(溜息が出るわ……)

美希「はーい!」

響「みんなー盛り上がってるかーーー!!」

\ハーーーイ!!!!/

響「ここまで、「Brand New Day!」、」

美希「涙のハリケーン」

千早「蒼い鳥」

響・美希・千早「SMOKEY THRILL」

響「……を、聞いていただきました!」

\ワァァァーーー!!!/

美希「ミキたち、今日のためにいっぱい、いーっぱい練習したから、

  チョー巧くなってるって思うんだけど……どうかなー!?」

\ワァァァァーーー---!!!/

美希「うんうん、良い返事なの」

美希「じゃあミキちょっとだけ寝てもいいよねー」

\エェェェーーー/


――ライブ本番 トークパート――

千早「冗談に聞こえないのが怖いわ……」

千早「皆さん、私たちSUMMITは、色んな逆境を乗り越えて、この日を迎えました」

千早「今日来て下さったファンの皆さんには、感謝してもしきれません」

千早「私たちのコンセプトは“最高のライブパフォーマンス”です」

千早「それは今までのアイドル像を覆すような……」

美希「あふぅ」

千早「765プロの中でも、とりわけ技術に定評のある3人が……」

美希「Zzz……」

響「ちょっ、美希! 本当に寝たらダメだってばー!」

美希「だって、千早さんの話カタイのー」

\アハハハハハ!/

千早「くっ」

千早「……立ったまま寝るくらいだから、間違い無いですね」ニコッ

\ワァァァーーー!!!/

響(千早、本当に変わったな……)

美希「むー、ミキが寝ている間に、次の曲の準備ができたみたいなの」

響「ちょっ、自分、全然喋れてないぞ!」

美希「巻きでって指示が出てるから、響のトークはもう仕方ないの」

美希「みんなー、次のトークパートをお楽しみにねー」

千早「それでは、次の曲です」

千早「もう季節は夏ですが、皆さん暑さに疲れてはいませんか?」

千早「そんなときは、あえて春の初々しい気分に戻ってみるのも良いかもしれません」

千早「我那覇響・星井美希で、“チェリー”、聞いてください」サッ


\ワァァァァァーーーー!!!!/


◆◇チェリー◆◇ 

美希「みんな歌ってー!」

響・美希『青春初めまして』

\ホップ!ステップ!ジャンプスプリングッ!!/

◆◇Inferno◆◇

千早「インフェルノーーーーー!」

\フゥゥゥゥゥゥゥ!!/

千早・響『全て燃えて灰になれ 赤裸に今焦がして……』


◆◇思い出をありがとう◆◇

千早「……今、この気持ちを伝えるなら」

美希「ありがとう、かな?」

\ワァァァァァーーーー/


◆◇KISS◆◇


響・美希『どこにキスして欲しい?』

\オォォォオォォ!!/

◆◇眠り姫◆◇

千早「誰も明日に向かって生まれたよ 朝に気づいて目を開け」

千早「きっと涙を希望に変えてくために」

千早「人は新たに 生まれ変わるから……」

パチパチパチパチ……


――ステージ裏――


P(凄い……)

P(おれの目指したものは、間違いじゃなかった)

P(お客さんはのボルテージは最高だ!)

P(千早のバラード「眠り姫」の後に、次は美希の本気曲「マリオネットの心」)

P(ダンスの激しい曲だが、今の皆なら大丈夫だろう)

P(美希、頼んだぞ……)

◆◇マリオネットの心◆◇


美希「……ねえ消えてしまっても探してくれますか?」

\ワァァァァァァァァァ!!/


美希「きっと忙しくて メール打てないのね」

美希・響『寂しい時には 夜空見つめる』

美希・千早『もっと振り向いて欲しい 昔みたいに』

美希「素直に 言いたくなるの」

\ダーケード イーエナイノー!/


P「ん? これは……」

千早(美希、リズムがタメ気味になってるわ……)

美希「ZUKI ZUKI ZUKI 痛い」

美希「DOKI DOKI DOKI 鼓動が身体伝わる」

響(美希?)

響(ステップが遅れてるぞ……)

P「!」

P「まずい!!」

美希(あれっ?)

美希(なんだか、さっきからおかしいの)

美希(身体が思うように動かない、ってカンジ)

美希(ミキ、どうしてこんなに疲れてるんだっけ)

美希(あっ、ちょっとクラクラしてきたの……)

美希(千早さん、響、プロデューサー、……春香、)

美希(……ハニー)

美希(ミキ、ちょっとだけ、寝るね)

美希「……ぁ、ふぅっ」

バタッ

響「?」

千早「!! 美希!」

響「!」ダッ

P「すいません、オケ止めて下さい! 照明も全てオンで!」

響「美希、大丈夫か、美希!」

千早「あまり揺すってはだめ! 早く、医務室へ」


(観客)ザワ……ザワ……

ファンA「おい、美希ちゃん倒れたぞ」

B「大丈夫かよ」

C「どうなるんだ、これ……」

……ザワ……ザワ

――765プロ事務所 2週間前――


P「……美希には一つ、弱点があります」

社長「弱点?」

律子「どういうことですか?」

社長「見たところ、彼女はとにかくアイドルとしての才能に恵まれた存在だと思うがね」

律子「天性のビジュアルとカリスマ性に加え、歌やダンスもできるのに……一体何が」

P「そう、確かに美希は、アイドルとして何も不自由しないような能力があります」

P「そんな彼女のたったひとつの弱点、それは……」


――ライブ会場 医務室――

千早「――スタミナ不足、ですか?」

P「そうだ、美希は、君たち二人と比べると、スタミナでかなり見劣りする」

響「たしかに、昔の美希は練習サボり気味なところがあったけど、

  ここ最近はずっと頑張ってたぞ」

千早「レッスンでも、あまりバテているようには見えませんでしたが……」

P「美希は典型的な天才型だからな。あまり体力を使わなくてもやっていける所がある。

  レッスンの時も、無意識にちょくちょく力を抜いてるんだよ。疲れ切らないように」

響「確かに、自分や真ほどじゃないけど、息が上がるのは遅いほうだと思うぞ……」

千早「器用で力配分が得意なのは、あるかもしれませんね」

P「それが美希の体力的な限界を見えにくくしていた」

P「いや、今まではそれでも十分通用したんだ」

響「自分たちのレベルが上がったから、ってこと?」

千早「ファンが求めるものもどんどん大きくなっていって、

   これからもっとハードルが上がっていく……」

P「そう、さらに上に行くには、まず基礎体力を底上げしないといけない」

千早「なるほど」

P「まあ、それはまだどうにかなる問題なんだが……」

響「他にも何かあるの?」

P「たぶん美希は今、迷っている」

千早「迷い、ですか」

P「かつて美希は「もっとキラキラしたい」というのが一つの目標だった」

P「前のプロデューサーに褒めてもらう、というモチベーションの源もあった」

P「キラキラの頂点に最も近い所に既に立ち、前プロデューサーもいない今……」

千早「美希は目標を失っている、と」

P「美希はここぞという時の集中力が凄い反面、モチベーションにムラがある」

P「上がるのも、下がるのも速い」

P「体力はレッスンで強化できなくはないが、こっちはな……」

響「うう……自分には難しい話だぞ」

千早「私も、そういったことについては……」

P「けっきょく自分で見つけるしかないからな、こういうのは」

P「だから二人とも、今はとにかく美希の支えになってくれないか」

P「2回目のトップを取るために」

P「さらに上へいくために」

P「そして何より、君たちと、君たちの仲間が、今よりもっと輝くために」

響「」

千早「」

響「……わかったぞ。自分なりに頑張ってみるさ!」

千早「私も、リーダーとして最善を尽くしていこうと思います」


――1時間後――

美希「……ん、あれ? ここは……」

千早「美希! 目が覚めたのね」

響「良かっだぞぉ~み゛きぃぃ~~」ダキッ

美希「響……?」

美希「そっか、ミキ、ライブ中になんだか凄く眠くなっちゃったの……」

千早「過労から来る貧血だそうよ」

美希「あれっ、プロデューサーは?」

響「ちょっと前まではいたんだけど……」

千早「片付けなきゃいけない仕事があるから、って」

美希「……そうなの」

美希「ライブ、中止になったの?」

千早「」

響「」

美希「……そっか。ならプロデューサーも大変だよね」

美希「ミキ、みんなにすっごくメーワクかけちゃったの」

千早「そ、そんなことないわ! これは私の責任でもあるわ」

響「自分もだぞ! 美希がこんなに疲れてるなんて、気づいてあげられなくて、その……」

美希「……あはっ。自分でも気づけなかったのに、千早さんや響がわかるわけないの」

響「」

千早「美希……」

美希「ミキたち、これからどうなるのかな」

千早「今は、私たちのプロデューサーを信じましょう」

響「そうだね……」



――765プロ事務所 社長室――

社長「なかなか大変なことになってしまったね」

P「……返す言葉もございません」

小鳥「……」

社長「いや、君を責めているわけではないんだよ?」

律子「そうですよ、今回のことは誰も悪くないじゃないですか」

P「いえ、私は美希の体力面を前々から不安に感じていました」

P「でも彼女なら大丈夫、とどこかでタカを括っていたんだと思います」

律子「あの子、やる気さえノれば、大抵のことはセンスで何とかしちゃいますから……」

P「良い方に考えようとばかりして、詰めが甘くなって、この有り様です」

P「もっとちゃんと考えておくべきでした」

小鳥「……」

社長「君の反省は十分に伝わった」

社長「でも、舞台や仕事は彼女たちを待ってはくれない……悲しいことにね」

社長「君はこれから、どうしていくつもりだね?」

P「私の目的は変わりません。彼女たちを本気でトップアイドルに導いていきます」

小鳥「プロデューサーさん……」

社長「そうか、安心したよ」

P「千早と響はこれまでと同じようにやらせます」

P「美希は……今までの仕事を減らして、基礎体力の強化と、

  ファンとの接点を重視したイメージアップを小出しにしていくつもりです」

P「そして、このような事のあとで非常に申し上げにくいのですが……」

社長「私は何が来ても構わんよ、話してみたまえ」

P「私と、あの子たちに、もう一度、勝負をさせてください」

律子「……またライブ、ですか?」

P「アーティストとしてこの事態を覆すには、結局それしかないと思うんだ」

P「パフォーマンスそのものは思った以上のものができてたし、お客さんも盛り上がってた。調整さえ間に合えば、きっとうまくいく」

律子「確かにそうかもしれませんが、いつやるんですか?」

P「鉄は熱いうちに打たないといけない」

P「……2か月後だ」

律子「そんな! 急過ぎます」

P「それでもギリギリだと思ってるんだ」

P「彼女たちが本当の頂点にいくための波を逃したくない」

P「ウルトラCを描くような挽回の機会なんて、一度逃したら、二度と訪れないよ」

律子「……」

社長「……わかった。君の思うようにやりたまえ」

P「ありがとうございます!」

小鳥「社長……」

――後日――


P「美希、行くぞ」

美希「はいなの」

バタン

春香「プロデューサーさん、最近美希につきっきりだね」

千早「体力強化の特訓中だそうよ」

真「へー楽しそうだね!今度僕も連れてってもらおうかな!」

春香(たぶんそれは真と響ちゃんしか喜ばないと思うけど……)

千早「前に美希から聞いたんだけど、かなりハードみたいね」

春香「プロデューサーさん、元アスリートだもんね」

千早「それにあの子、走り込みとか、地道にやるタイプの練習、苦手だから……」

真「く~羨ましいな~! 美希の次はぜーったい稽古つけてもらおうっと」

千早「」ハァ……

千早(美希、大丈夫かしら……)

一時間後

P「」ハッハッ フッフッ

美希「」ゼェハッ ハーハッ

P「あと少しだ! 頑張れ!」

美希「」ゼェッ、ゼェーッ

P「ゴールまで後10秒だ! 10!9!8!7!……」

美希(プロデューサー、うるさいの……)

P「3,2,1! ゴール!!」

美希「はぁ……はぁっ」ドサッ

美希「つ、疲れたー」

P「美希がペースを維持できるギリギリの所でやってるからな」

美希「プロデューサー、厳しいの……」

美希「どうしてミキだけ、こんな辛いこと……」

P「……またあの時みたいに倒れるか?」

美希「それはイヤなの」

P「なら、もう少しだけおれについてきてくれ」

美希「……はいなの」


後日


美希「おはようございますなのー」

小鳥「おはよう、美希ちゃん」

小鳥「今日は久しぶりにイベントのお仕事が入ってるわよー」

美希「へ、あれ今日だっけ?」

P「美希がモデルとしてよく出ているファッション誌、

 “eighteen”主催のファン感謝イベントだ」

美希「あ、プロデューサー」

P「女の子限定の握手会の後に、屋外ステージでのミニライブがあるぞ」

美希「へー、けっこう楽しそうだねー」

P「まあ美希ならいつもどおりやれば大丈夫だろ」

P「時間もけっこう早めだからな、行くぞ」

美希「はいなの!」


――イベント ライブパート――

美希「みんな~今日は集まってくれてありがとうなのー」

\キャーー/ \フゥゥゥーーー/

美希「これ女の子の雑誌のイベントなのに、気づいたら男の子がいっぱい来てるの」

\ウォォォォーー!!/

美希「でもミキにとってはみーんな大事なファンだから、カンケーないの、あはっ☆」

\ワァァァァァァァァァ!!/

美希「あ、そこの隅でアシさんが巻いてって言ってるから、そろそろ歌うねー」

美希「曲は……“すいみん不足”なのー」

\オォォォォォ!/

◆◇ すいみん不足 ◆◇  詞曲:CHICKS

♪ ジャカジャーン ジャカジャーン

美希(……!)

美希(何なの……この感じ)

美希(よくわからないけど、歌うのがなんだか怖いの……)

美希(このイベントで倒れるなんて、絶対ありえないのに、イヤな感じが……)

美希「きょ、ぉ、はー! いつーものすいみん不足♪」

P(美希……?)

美希「ああ そーらはこんなに青いのに♪」

P(体調は特に問題無さそうだったが……)

P(なんだ、この違和感は?)

美希「どーして、こんーなに眠いの~♪」

P(……曲は問題なく歌えてる、ステップもちゃんとしてる)

P(けど、響いてこない)

P(たぶん、お客さんもそれを感じている……)

美希「すいみんすいみんすいみんすいみん、すいみん不足!」

\ワーーー/

P(美希……)


2週間後 765プロ事務所

P「……ふぅ」

律子「どうしたんですか、溜息なんかついて」

P「いや、状況がなかなか良くならなくてな」

律子「……やっぱりそのことですか」

P「ついにはこんな風に書かれる始末だよ」


【星井美希、活動休止か】(芸能報知)

 アイドルグループ「SUMMIT」のメンバー・星井美希が事実上の活動休止状態に入っている。先日行われたライブで、公演中に突然気を失って倒れたことが報じられたが、それ以来仕事のキャンセルが相次いでいる。
 所属事務所は「あくまで一時的な体調不良によるもの。回復次第また徐々に再開していく」としているが、今や国民的アイドルの一角となった星井を心配する声も多く、波紋を呼んでいる。

【星井美希の不調と天海春香の黒い関係】(雑談ポスト) 文:悪徳

 星井美希と天海春香の“不仲説”が囁かれている。先月の大騒動の原因となった天海春香の脱退の背景には、星井美希との不和が原因にあるとする説が濃厚だ。関係者は次のように語っている。
「星井は以前、ミュージカルの主役の座を争って、天海に負けた過去がある。表向きは仲の良さをアピールしているが、それは今もわだかまりになっているはずです」
こうした裏話は枚挙にいとまがない。某テレビ局の関係者で、765プロと仕事をしたことのある人物もまた、星井と天海の関係について、苦笑交じりに語っている。
「星井は如月(千早)を除いて、年上だろうが目上だろうが構わずタメ語。如月と同学年の天海からすれば、星井に他意がないのはわかっていても、内心穏やかでないものがあるでしょう。765AngelsがIA大賞をとった当時も、楽屋裏では口論が起きていましたし」
 天海脱退の裏側には、このような遺恨が根を張っていそうである。いま落ち目を迎えている新ユニット「SUMMIT」を見て、天海はどのように考えているのだろうか。■



律子「……これはまた、酷い記事ですね」

P「美希もな、ちょっと焦れてきているんだ」

P「あいつにとっては苦手で退屈な練習ばかりさせているから」

律子「……」

P「次のライブがダメだったら、本当に……」

律子「プロデューサー殿!」

P「おっと……すまん」

律子「らしくないですよ」

P「そうだな」

律子「あの子を導けるのは、うちであなただけなんです」

律子「……頼みますよ?」

P「ああ、任せてくれ」


ガチャ  オハヨーゴザイマース!

P「おはよう」

律子「おはよう3人とも。今日は一緒に来たのね」

響「自分たち、昨日千早の家にみんなで泊まって来てね、」

響「自分、千早に沖縄料理の作り方教えてあげたんだー」

美希「とーっても美味しかったの」

律子「へー、良かったじゃない」

千早「我那覇さん、本当に料理が上手だったわ」

響「もーここに来てまで褒めないでよー!照れるさー」

P(ユニットの関係は良いみたいだな……)

社長「おはよう、諸君」

『 おはようございます 』

社長「君たちに言い知らせがある」

P「何ですか?」

社長「……如月千早くん」

千早「はい?」

社長「Sランク昇格、おめでとう」

千早「へっ?」

社長「わが事務所始まって以来の快挙だ。心から祝福させてもらうよ」

美希「……や、やったやったやったぁ!」

響「おめでとう千早!自分も負けてられないさー」

社長「我那覇君、君はAランク昇格だ。この調子で頑張ってくれたまえ」

響「ええっ、本当か社長!?」

社長「私が嘘を言うとでも?」

P「冠番組の“響ストリート”の効果かもしれないな」

P「深夜番組だけど、色んな高校のダンス部を呼んで

  パフォーマンスを見せ合うっていう内容が、高校生に反響を呼んでるそうだ」

P「正直Aランクは時間の問題だと思ってたよ」

響「本当なんだ……自分、嬉しいぞ」

美希「響、おめでとうなの」

響「……美希、これで美希と同じフィールドに立ったぞ!

美希「え?」

響「まだ自分はAランクに来たばっかりだけど、すぐに追いついて見せるからね!」

美希「……」

美希「……今の響になら、すぐに追いつかれちゃうね」ボソッ

響「ん、なんか言ったか?」

美希「なんでもないの……」

P(美希……)



P「」ハッハッ

美希「」ハッハッ フーフッ

P「今日はあの公園がゴールだ!」

美希「はいなの!」

P「よし!もう少しだ!!頑張れ!!!」

美希(……見えてるからそんなのすぐわかるの)

P「10!9!8!……」

美希(正直これだけは何とかしてほしいの……)

P「3!2!1!ゴーーール!!」

美希「はぁぁ~疲れたのー」バタッ

P「おい走ったあとすぐに座るんじゃない」

P「とりあえず身体が冷えるまで、あの池の周りを歩くぞ」

美希「……はいなの」


テクテク……


美希「あ、ここ昔ハニーと来た所だ。懐かしいの……」

P「ハニーって、前のプロデューサーか?」

美希「そう、もう1年以上も前のことだよ」

美希「あれから皆、ちょっとずつ変わっていったんだね……」

P「美希は何が変わったと思う?」

美希「んー、自分じゃよくわからないの」

P「……そうか」

美希(でも、あの時の方が、今より楽しかったかもしれないって思うな……)

P「……」テクテク

美希「あ、先生なの!」

P「先生?」

美希「そういえば、プロデューサーにこの話するの初めてだね」

美希「あれが美希の先生」

P「あれって、あのカモがか?」

美希「そう、あんなふうにプカプカーって、ゆるーく生きていけたらいいなって、ずっと思ってて」

P(なんて中学生だ……)

美希「でもハニー……前のプロデューサーに出会って、その考えも変わってきたの」

美希「辛そうなことでも、もっとキラキラするためにガンバってやって、初めてわかることがあって……」

美希「そのためだったら、一生懸命走るのも、悪くないかなって……」

P「今はどうなんだ?」

美希「」

P「……」

美希「…………」

美希「プロデューサー、」

P「」

美希「あのね」

美希「ミキね、正直もう疲れちゃったかもなの」

P「疲れた?」

美希「レッスンしててもあんま上達した気がしないし、ランクもなかなか上がらないの……」

美希「もう半年以上ずっとAランクのままで、いつSにいけるか全然わからないってカンジ」

美希「ミキはもう十分ガンバったんだから、

  あとは先生みたく、ゆるゆるってやっていけたら良いって思うな……」

P「……」

美希「プロデューサー?」

P「……諦めんなよ」

美希「へ?」

P「諦めんなよ!どうして諦めんだそこで!!」

美希「」キーン

美希「もう、プロデューサー、声大きいの。そんなに叫ばなくても聞こえるの」

P「これが大声出さずにいられるか」

美希「むー、暑苦しいの」

P「……何迷ってんだ? 中途半端な気持ちでやるんだったら今すぐ辞めたほうが良い。遊びじゃないんだ」

P「その代わり、辞めたらもう二度とファンの前には立てない」

P「アイドルとして星井美希がキラキラする資格は、永遠になくなる」

美希「……」

P「でもな、諦めずにあと少しだけ頑張れば、美希はもっとキラキラ……」

美希「お説教は、や!」プイ


P「 俺 は 本 気 で 言 っ て ん だ よ !! 」


美希「!」ビクッ

P「技術が上達しない、曲が思ったように売れない、ファンが減った、ランクが上がらない……」

P「その壁を見たとき、君の心はなんて言った?」

美希「」

P「本心で答えてごらん」

美希「……もうムリかなって、思ったの」

P「ああ、」

P「それが本当じゃないか。諦めたんじゃないか?」

P「無理だと思うんだったら、辞めたほうが良いと、俺は思うよ。時間が勿体無い」

P「普通に学校行って、

  ダンスやるなり、友達とカラオケ行くなり、クラスのアイドルになるなり、

  思う存分遊べば良い」

美希「……」

美希(そんなの、そんなのちっとも……)

P「でも」

P「君が今よりもっと輝くために、アイドルとして戦っていきたいと思うんだったら、

  自分で限界を作るなよ」

美希「!」

P「千早みたいに歌手顔負けの歌で圧倒したり、響のように絶対的なダンスを見せることは、できないんだ」

P「美希、君の魅力はなんだ?」

美希「……びじゅある?」

P「そう、ビジュアルと」

美希「胸おっきい」

P(溜息)「……抜群のプロポーション、と」

美希「アイドル始めてからずっと、センターに向いてるって言われて、いっぱいセンターやって……」

P「それは何故だ? 始める前はどうだった」

美希「毎日30人に告白されて、気づいたら学年の男の子はみんな来てたの……」

P「それだよ! 周りの人を圧倒的に惹きつける力……それを何て言う?」

美希「えっと……」

P「頑張れ」

美希「ううんっと……、……ヒント!」

P「カタカナ4文字」

美希「カタ、カナ?」

美希「……あっ、わかったの! そういうの、カリスマ、って言うんだよね」

P「そう、君はカリスマ性に溢れてただろ、違うか?」

美希「自分ではよくわからないけど、周りがそう言ってくれてたから、たぶんそうなの」

P「律子や音無さんから聞いたけどな」

P「君はアイドルを始めたばかりのころ、寝てばかりだった」

P「どう見てもやる気があるようには見えないのに、ここぞという場面では驚きの集中力を見せて、

  代役に行った現場で、ダンスのフリを一発で覚えて仲間のピンチを救ったり、

  カメラマンを魅了して撮影時間を伸ばして、あずささんが来るまでの時間稼ぎをしただろ?」

美希「……そんなことも、あったね」

P「何で、それができたと思う?」

美希「!」

美希「……ミキなら、これくらいできる、って思ってたから」

P「ああ、そうだ」

P「自分に自信があったからだろ?」

P「自分ならきっとこれができる、って信じてたからだろ?」

P「君はこのユニットのセンターなんだ」

P「765プロ始まって以来、最高の実力を誇るユニットの、

  いちばんスポットライトが当たる所に、満場一致で立っているんだ」

P「だから、もっと自分を信じろ!」

P「……俺は君よりもっと美希のことを信じてるけど、」

P「それよりさらに、もっと自分を愛してみせろ!!」

美希「!」

美希「……プロデューサー」ポロポロ

美希「あれっ、ヘンだね、すごく嬉しいこと言ってもらえたのに、涙が止まらないの……」

P「……」

美希「……えへへ」

P「765プロ所属ユニット「SUMMIT」、センター、星井美希。これからもよろしく」スッ

美希「ガッテン承知、なの!」ガシッ

P「俺も、もっと頑張るからな! 絶対に諦めないからな!!」ブンブン

美希「はいなの! はいなの!」

美希(なんだかフシギな感覚なの)

美希(忘れてたと思ってた、胸の中のキラキラーってカンジが、また……)

美希(プロデューサー、ちょっと手が痛い、なんて言えないよね……あはっ)


――数日後――

千早「特訓、ですか?」

P「ああ、前に言ってた、美希の体力強化を目指してな」

P「海沿いの山間にある合宿所を使う」

P「良い設備のあるトコを知ってるんだ」

響「へー。さすが元アスリートだね」

千早(……美希、大丈夫かしら)

P「……心配はいらない」

P「美希が前回のようなことにならないために、

  みんながさらに上にいくためにやることなんだ」

P「無理はさせない」

P「けど、今の限界は超えてもらう」

千早(この人、さらっと凄いことを言ってるわ……)

響(今までで一番気合入ってるぞ……)

P「基本的に俺と美希のマンツーマンが中心だが、

  二人にこの話をしたのは他でもない」

P「ちょっと頼みたいことがあってね」

響・千早『?』

――合宿所――


P「さぁ、合宿だ」

美希「ここ良い所だね~風が気持ちいいの」

P「初めに言っておくが、今回の練習はキツいぞ?」

美希「う……気分ダイナシなの」


――MTG――

P「スタミナには、大きく分けて二つある」

P「無酸素系のスタミナと、有酸素系のスタミナだ」

美希「?」

P「これまでは有酸素系を主に鍛えてきた」

P「マラソンのように、長い時間身体を動かす時に使う力だ」

美希「へー」

P「この合宿では、無酸素系のスタミナを重点的に強化する」

美希「なにそれ?」

P「瞬発力を使う運動を繰り返し実行するために必要な……」

美希「あふぅ」

P「寝るな!」

美希「だって、プロデューサーの説明、難しい言葉がいっぱい並んでて、

  ミキにはよくわかんないの……」

P「……わかった」

P「じゃあ実戦あるのみだ」


――テニス――

P「まずはテニスからだ」キリッ

美希「テニスなら体育の授業でやったことあるの」

美希「ミキ的にはけっこう楽しかったって思うな」

P「もちろん手加減はするが……6ゲーム3セットだ」

美希「? ちょっと昔のゲーム機が3台もらえるってこと?」

P「……じきにわかるよ」

・3セット目

P「打ったあとは真ん中だ!気が抜けてきてるんじゃないか!?」パコッ

美希「」ゼェッ、ゼェッ……

美希「えいやっ、なの……」ポン!

P「そんな球でセンターが張れるか!」パァン!

美希「あぁぁぁぁ!」スッパーン!

P「よっしナイスショット!」

美希「はぁっ、はぁっ……」

P「お疲れさま」

美希「」バタッ

美希「これ、色々とやばいの……」

P「足が動かないだろ?」

P「サッカーとかもそうなんだけどな」

P「ダッシュを何回もやるスポーツは、

  息が持ってても足が動かなくなることがよくあるんだ」

美希「よ、よーく、わかったの……」

P「さっき言った無酸素系のスタミナっていうのは、

  こういうときにバテにくくするための力だ」

美希「……へー」

P「とは言っても、スタミナは一朝一夕に身につくもんじゃない」

P「だから、この合宿では、とにかく自分の限界を知ってもらう」

P「めいっぱい動かすと身体がこうなるんだ、

  っていうのを知るだけでだいぶ変わるからな」

美希(始めからこれとか……プロデューサー怖すぎるの)


――100Mインターバル走――

P「次の100Mに備えて手を抜くんじゃないぞ!」

美希「はいなの!」

美希(100M走はやったことあるけど、こんなに何本も……)

美希(2本目からメチャクチャきついの……)

――砂浜ランニング――

P「あと2往復で終わりだ!頑張れ」ハッハッ

美希(何これ、足がチョー重いの!!)ハァッ、ハァァッ!

美希(砂浜を走るって聞いて、これはちょっと楽しそーだね

   って言ってた30分前のミキは一体何だったの……)


――浴場――

美希(や、やっと解放されたの……)

美希「あ、いい湯加減ってカンジ!」チャポン

美希「あああ気持ちいいの~」プカプカ


――食堂――

美希「プロデューサー、ここのご飯すっごく美味しいの!」

P「だろ?栄養バランスもしっかり調整されてるから遠慮無く食べていいぞ」

美希「疲れてるからいっそう美味しさが引き立つの」

美希「幸せ……」モグモグ

・食後

美希「明日もあるんだし、もうお布団敷いて寝ちゃってもいいよね?」

P「それなんだがな」

P「寝るのはここで、だ」

美希「え?何これ!?」

P「高酸素カプセルだ。凄く疲れが取れるぞ」

美希「なんか映画に出てきそうだねー」

P「この中で1時間睡眠を取ると、

  普通に寝た時の4時間分の睡眠効果があるって言われてるくらいだ」

美希「!」

美希「それは……サイコーなの……!」

美希「じゃー早速、おやすみなさいなの、あふぅ」

P「おい、ってもう寝てる……」

P(まあ、疲れてるよな……)

P(おやすみ、美希)

――3日後――

P「さあ、いよいよ最終日だ」

美希「今日は何するの?」

P「この山の道路をずっとランニングで登ってもらう」

美希「ここに来る前、プロデューサーとやってたアレみたいなカンジ?」

P「ああ、だいたいそれで合ってるよ」

P「ただ、今回のパートナーは俺じゃない」

P「同じユニットのメンバーだ」

美希「!」

ガチャ

響「はいさーい!」

千早「おはようございます」

美希「千早さん、響! 来てくれたの!?」

響「美希ひとり放ってはおけないさー」

千早「1人では辛いことでも、3人なら頑張れるはずよ」

美希「まさに The World is All One! だね!」

P「適当にストレッチしたら始めてくれ」

P「中腹に赤い自販機がある。そこがゴールだ」

P「長い道のりになるが、3人でペースを合わせあって完走するんだぞ」

響「オッケー!」
千早「全力を尽くします」
美希「はいなの」


――2時間後――

響「」ハッハッ

千早「」フッフッ

美希「」ハァッ、ハ、ハァッ

響(美希、顎が上がってるぞ……)

千早(ストライドも乱れて来てるわね)

響「プロデューサーが言ってた自動販売機じゃないかな!?」

千早「美希、あと少しよ!」フッフッ

美希「はい、なの……」ハァッ、ハァーッ


響「」ハッハッ

千早「」フッフッ

美希「」ハァーッ、ハ、フーッ


響「」ハッハッ

千早「」フッフッ

美希「」ハッ、ゼェッ、ハー


千早「……ふう」

美希「や、やっと着いたの……」

響「さすがに自分でも、この距離はちょっと長かったさー」

千早「美希、よく頑張ったわね。お疲れさま」

美希「ありがとうなの、千早さん……」

美希「とりあえず、ノド乾いて死にそうなの」

千早「水分補給しないといけないわね」

響「なるほど、プロデューサーはこれを見越して自販機を目的地にしたんだなー」

響「……あれ、この自販機、壊れてるぞ」

千早「本当ね。電源が入ってないわ」

美希「そ、そんなのってないの……」ジワッ

ハム蔵「ぎゅっ」

響「お、どうしたハム蔵?」

美希(えっ、ハム蔵どこにいたの!?)

千早(気付かなかったわ……)

公「ぎゅぎゅ!」

響「えっ、あっちに滝があるって?」

千早「そういえば、どこからかせせらぎの音が聞こえる気がするわ」

公「ぎゅ!」

響「行ってみようか?」

千早「美希、大丈夫そう?」

美希「水を飲むまで倒れるわけにはいかないの……」


ザッ、ザッ、ザッ……


響「ほ、本当に滝があったぞ」

千早「高さはあるけど、細いわね。これは自力じゃ気付けないわ」

美希「へへー。ハム蔵、お手柄なの!」

公「ぎゅーー!」

美希「アーー水がおいしいのー」

響「生き返るぞー!」

千早「都会では絶対に飲めない味ね」

千早「……さて、一息ついたら、戻りましょうか」

響「わかったぞ!」
美希「はいなの千早さん!」


――20分後――

響「……で、」

響「なんで自分たち、道に迷ってるんだ?」

千早「おかしいわね、確かに来た道を戻ってたはずなのに」

美希「たぶん初めのほうの分かれ道で間違えたの」

響「美希!気づいてるなら何で言わなかったんだ!?」

美希「……ミキだってそのときは全然自信なかったの」

千早「響、美希に当っても仕方ないわ」

響「うう……ごめん」

千早「その分かれ道がどこかももう、わからないわね」

美希「……そうだね」

千早「とりあえず、道路に出ないと」

千早「……その目処が立つまでは、とにかく上へ行きましょう」

響「わかったぞ」


ザッ、ザッ、ザッ……

響「うう、けもの道ばっかりだぞ……」

千早「さすがに長いわね」

美希「どんどん奥へ行っている気がするの」


ザッ、ザッ、ザッ……

千早「」

響「」

美希「」ハァッ、ハァッ

千早「美希、大丈夫?」

響「山道を歩くのは大変さー」

千早「少し休憩しましょうか……」

美希「それはイヤなの!」

響「!?」

千早「でも、あなたの体力が心配だわ」

美希「ミキ、二人の足手まといになるのは、や!」

響「何言ってるんだ、美希? 休むときには休まないとダメさ」

美希「でも、日が陰ってきたし、早く戻れそうな道を見つけないとマズイの」

千早「だからこそよ。焦って体力を消耗したら余計に事態が悪くなるわ」

美希「でも千早さんと響はまだ大丈夫そうなの……」

美希「ミキのせいで、ミキのせいで、また二人にメーワクが……」ジワッ

千早「……」

響「……」

美希「これ、ソーナンってやつなのかな」

響「え、縁起でもないこと言わないでよ!」

美希「もし、ミキが先に力尽きたら、そのときは……」

千早「馬 鹿 な こ と 言 わ な い で !!」

美希「」ビクッ

千早「みんなで一緒に帰るの!諦めるなんて私が絶対に許さないわ」

千早「この3人はユニットの仲間。誰が欠けてもダメなの」

千早「あと、これは個人的な話だけど……」

千早「美希、あなたは私にとって妹のような存在なの」

千早「周りに対して壁を作ってた昔の私を、千早さん、千早さんって慕ってくれて」

千早「あのとき、あなたの好意にどれだけ答えられてたかはわからないけど」

千早「その無垢な視線が、素直に嬉しかった」

千早「私が“約束”を歌いきった時も、真っ先に駆けつけてくれて」

千早「どれだけ美希に救われてきたことか……」

千早「だから私はあなたを絶対に見捨てたりしないわ」

千早「もし何かあっても、そのときは一緒よ?」

美希「ち、千早さん……」ポロポロ

響「み゛きぃーーー」ダキッ

美希「きゃっ、響!?」

響「み゛きはぁ、事務所に入って二番目にできた友達さぁ゛~」シクシク

響「もぢろん皆のこと好きだげどぉ、美希は特別さぁ゛~」ゴシゴシ

響「だから、自分を置いてけなんて、えぅっ、言わないでよぉ~」

美希「響……」

美希「……ごめんなさいなの、ミキ、色々間違ってたの」

美希「ぜーったい、この3人で、ライブに出るの!」

千早「ええ」
響「うん!」

P「おぉーーーーい!」

『!?』

P「やっと見つけたあああ!」ザッザッザッ……

P「ふう、さすがにタフだったな」

美希「プロデューサー!」

響(か、完璧すぎるほどの登山装備だぞ……)

千早「プロデューサー、なぜここが?」

P「ああ、皆のジャージにGPS発信機付けといたからな」

P「コースから外れてたから、どこか迷い込んでるんじゃないかと思って」

美希「た、助かったのー」

P「ここは割と道路に近づいててな。車で先回りして逆側から来たんだ」

P「すぐ帰れるぞ」

美希「やったやったやったぁ!」

響「よ、良かったぞぉ」ウルウル

千早(ふぅ、本当に何よりのことだわ。良かった……)

・車中

ヴーーー


P「あと20分くらいで着くからなー」

響「……」

美希「……」

千早「……」

P(あれっ、返事がないな)チラッ

P(はは、3人で寄りかかり合って寝てる)

美希「えへへ……響ぃ、千早さぁん……」zzz

響「うー……」zzz

千早「ふふっ……」zzz

P(何かあったのかな)

P(仲がよさそうで、俺は何よりだよ)

P(……おつかれ、美希)

P(今のお前なら、きっと何が来ても大丈夫だ……)

――ライブ当日――

P「さて、いよいよこの日が来た」

響「」
千早「」
美希「……」

P「もう俺にできることは何もない」

P「あとはステージ上のみんなを信じるだけだ」

P「大丈夫、あれだけやったんだ。絶対にうまくいく」

P「……響、」

響「はい!」

P「響は全国のダンス部の高校生たちの憧れだ」

P「胸を張って、その完璧なパフォーマンスを見てもらえ」

響「もちろんだぞ!」

P「千早、」

千早「はい」

P「思う存分、飛ぶんだ……」

千早「全てを、出し切ります」

P「……美希」

美希「はいなの!」

P「センターに必要なものは?」

美希「自信、だよね」

美希「ミキね、前に倒れてから、実はステージに立つのがちょっと怖くなってたんだ」

美希「でも、今は……」

美希「千早さんと、響がとなりにいて、プロデューサーが後ろにいるって思ったら」

美希「ぜーったい、大丈夫って思うな!」ニッ

P「」

P(良い表情だ……何かを掴んだか)

P(……俺の心配なんてどこ吹く風だな)

P「やっぱり、センターはそうでないとな!」

P「よしみんな、行ってこい!」

響「3」 千早「2」 美希「イチ!」

『 トップアイドルー! 』

P(頼んだぞ……)



◇◆ 1.READY!! ◇◆  響・美希・千早

『ALREADY!! WE'RE ALL LADY!! 始めたい』

『行けばなれる もっと』

『全体 みんな ONLY1』 

\フゥゥゥゥゥゥゥウ!!/





♪パパラッ パッ パラッ パラッ パパパパ

\オォォォォォォ!!/

◇◆ 2.乙女よ大志を抱け! ◇◆  天海春香(シークレット・ゲスト)


春香「みんなー、応援に来たよーーー!!」

\ワァァァァァァァァァ!!/

響「えぇえっ!?」

美希「き、聞いてないの!」

千早「とりあえず、ステージ脇に行きましょう」


\ゴーゴーガール!/

春香「乙女よ大志を抱け!」 \フフゥ!/


響「ほ、本当に誰も聞いてなかったのか?」

千早「たぶん、私たちには伝えてなかったのね……びっくりしたわ」

美希(春香……)

\レベルアーーップ!!/

春香「みんな一緒にーー!!」グイッ

美希「きゃっ」タタタッ

春香「乙女よ大志を抱け!」\フフゥ!/

春香「授業中Zzz…っと夢見ちゃえ!」

美希「乙女よ大志を抱け!!」\フフゥ!/

美希「遊びも学びなんだよ」

響「立ち上がれ」

『女諸君』 \ハァイ!/

千早「言えない言葉がずっとあったの……」

春香「みんなに私 いつもありがとう……」\ワァァァァァァァァァ/

美希(春香……)

美希(ありがとう、なの……)

◇◆3.太陽のジェラシー  ◇◆  我那覇響


響「いまダーイビーン!」

響「春香ぁ、ありがとぉ!!」

\ワァァァァァァァァァ!!/

響(そうか……それでこの曲だったんだな……)


4.ふるふるフューチャー  美希
5.目が逢う瞬間      千早
6.MEGARE!     響・美希・千早 


~トークパート~

春香「応援に……来ちゃいました」テヘペロ  \ワァァァァァァァァァ!/

美希「ミキたち本当に何も聞かされてなかったんだよー」

千早「春香、ありがとう」

響「自分、春香の後に太陽のジェラシー歌ったの、なんだかすっごく楽しかったぞ!」

春香「響ちゃん本当に上手かったよね!私よりモノにしてるんじゃないかってくらい……」

美希「……」

千早「……」

春香「ちょっと何でそこで二人とも黙るのー!」   \アハハハハ/

美希「あっ、次の曲の準備ができたみたいなの!」

響「それじゃあ、中盤戦だな」

春香「ええっ、これで私の出番終わり!?」

美希「ステージで進行表は絶対なの」ミキッ 

春香「じ、じゃあ、皆この後も頑張ってねー」スタスタ……

『はーい!』

美希「さーて、春香に元気をもらった所で、次の曲、いっくのー!!

\ワァァァァァァァァァ!!/

7.CHANGE!!!!     響・美希・千早
8.オーバーマスター        響・美希
9.約束               千早
10.Little Match Girl      響・美希・千早

◆◇ 11.Relations ◆◇    千早・美希

千早「壊れる くらいに……」

美希「愛して」

千早「Wo……wo……」

\フォォォォォオォ!!/  \ミキミキー!/ \チーチャーン!/


P(よし、ここまでファンのボルテージは最高潮だ!)

P(次だ、次が鬼門……そして、正念場だ……)

美希「……ねえ消えてしまっても探してくれますか?」

\ワァァァァァァァァァァァ!/

◆◇ 12.マリオネットの心 ◆◇  響・美希・千早

\ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!……/


美希「切れそうになった糸は もう戻らないよ」

美希「だけど勇気なくて認めないの すでに醒めてしまったこと」


\ワァァァァァァァァァ/

P(美希……凄い!ここまで非の打ち所がない!)

美希(すごいの……全然疲れないの……)

美希(プロデューサーのおかげかな? あはっ☆)

美希「ねえまだ私のこと見つめてくれますか?」

美希「何もできない それが……」  \マリオ・ネッ・ト!/

美希「貴方に気持ち届かない Ahもどかしい」
美希「ほらね 涙 ひと粒も出ない」

美希「心が壊れそうだよ」

ジャラジャジャージャジャン!♪

\ワァァァァァァァァァァァァァァァァァッァァァ!!!!!/

美希(や……やったの……!!)

響(美希……すごいぞ……凄すぎるぞ!!)

千早(まるで別人だわ……これまで美希の良い時をたくさん見てきたけど、そのどれとも違う……)

P「……」ゾクッ

P(俺は、とんでもないものを生み出してしまったのかもしれない……)

P「最高だよ、美希」ニカッ

13.The World is All One!    
(アンコール)

14.GO MY WAY!     
15.THE IDOLM@STER 

♪オンナナラ タエラレマス ツヨッイッカッラー    \ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!/

\ワァァァァァァァァァァァァァァ!!!!/

後日

【完全復活 星井美希】日刊エンタメ 文:善澤

 これが本当にたった3人のライブだろうか――先日行われたアイドルグループ「SUMMIT」のライブは、そう驚かされるほどの熱気に包まれていた。
 我那覇響・星井美希・如月千早……奇跡の少女3人組が見せる圧倒的なパフォーマンスに、その場にいた全ての観客が我を忘れ、サイリウムを一心不乱に振っていたのだ。
 何よりも驚かされたのは、星井美希の完全復活だ。ライブ前にあった大小の騒動から、活動休止説まで囁かれていた星井であったが、そんなのどこ吹く風と言わんばかりに、彼女はセンターでひときわ輝きを放っていた。
 あの場所にいたファンたちは、死ぬまで忘れることはないだろう。彼女の「マリオネットの心」を。
 たった一曲だけで、彼女は、その場にいた観衆を、永遠のファンにしてしまった。
 身にまとうは、王者の威厳。「SUMMIT」は、これからも随分と、私たちを楽しませてくれるだろう。

――半年後――

司会「それでは、発表します。本年度のIA大賞受賞者は……」

司会「――エントリーNO.1、SUMMIT!!」

「――や、」

響「やったぞぉぉぉーー!!」
美希「やったやったやったー!!」
千早「やったわ!」


司会「な、ななななナント! 如月千早さんと星井美希さんは、

   この賞始まって以来の、2年連続受賞! 連覇を達成しました!」

司会「新たな伝説の幕開けです!」

司会「どうですか? 受賞された気分は」

響「へへー自分は初めてだけど、この場所に立てて本当に嬉しいぞ!」

千早「私は、今年、もう一度この場所に立つために、これまでやってきました」

千早「支えて下さったファンの皆さんに、心から感謝したいです」

美希「ミキはねー……うーんと……」

美希「あれ、何言おうとしたんだっけ……まあいいや」

ザワ……ザワ……

美希「とりあえず、来年もまた来るから、みんなよろしくね~ あはっ☆」

司会「おおっと、ここで意外や意外のビッグマウスが飛び出しました!」

冬馬「……けっ、上等じゃねーか」

のぞみ「な、何よアイツ!」

涼(凄いな……美希さん。来年は、僕たちも……)

伊織「あんの、バカッ!」

春香「まぁまぁ、そう言わずに♪ ……あれが美希だよ」

伊織「……そんなの、知ってるわよ……フンッ」

――発表式 終了後――

響「IA大賞もらった瞬間、凄いフラッシュたかれてたな。夢のようさ……」

千早「早々に余韻から冷めたけどね。誰かさんのせいで」

美希「んーおにぎり美味しいのー」

響「こら美希!おにぎり会場から持ってきちゃダメだぞ!」

美希「もー響はカタいのー。あんなにいっぱいあったんだから、ちょっとくらい持って行っても、バレないって思うな」

千早(溜息)

千早「……まあ、これが一番、私たちらしいのかもね」

千早「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

千早「私たちが真っ先に、この受賞を報告するべき、あの人の所へ……」

響「そうだな!」
美希「モチロンなの!」

みんなーミキだよー!

ライブが終わってから、色々あったんだけど……

いちばんおっきな出来事は、プロデューサーが倒れて入院しちゃったことかな?

なんか、フセーミャクとかいう病名で、けっこうヤバいカンジだったみたい。

でも、ミキたちが病院に行ったら……


美希「プ、プロデューサー!」

看護師「静かにしてください!」

美希「あ、ごめんなさいなの……」

P「おっ、美希じゃないか、おはよう!」

美希(あれっ、意外と大丈夫そうなの……)

響「プロデューサー、その、体の具合は……?」

P「ああ、この通りピンピンしてるぞ!」

P「いやーしかしこの寝たきりってやつは身体がなまって仕方ないな!」

P「せめて上半身だけでも動かさないとな!」ハッハッ

看護師「ちょっと松岡さん、ダンベルなんてどこから持ち込んだんですか!」

看護師「没収です!没収!」

P「えぇえっ!?」Σガーン

響「プロデューサー、ひょっとしてバカなのか?」

P(ひ、響にバカって言われた……)Σガガーン

千早「……ふぅ、色々と杞憂だったようね」

美希「……実にプロデューサーらしいの、あはっ☆」


この時は、なーんだ全然ヘーキじゃん、って思ってたんだけど……

ホントはなかなか大変らしくて、未だに入院中なの。

でも、事務所のみんなで代わる代わるお見舞いに行ってるし、

ミキは毎日通ってるから、たぶん大丈夫なの!

それじゃあ、そろそろ例の報告に行くのー!

P「……そうか、おめでとう、みんな」

美希「」

響「」

千早「」

P「……良かったよ。皆を最後まで見届けることができて」

美希「な、なんでそんな言い方するの?」

響「そうだぞ!自分たち、まだプロデューサーに教わってないことたくさんあるぞ!」

P「いや、始めに話しただろ? 俺の契約は1年」

P「それ以上にも、それ以下にもならない」

P「だいたい、この身体じゃあ、もう以前みたいにはできないよ……」

美希「」

響「」

千早「……これからどうなさるおつもりで?」

P「とりあえず身体を治して、少しずつ仕事を始めていくつもりだ」

P「俺の後任も決まっている。君たちとは、もう、別々の道を歩くんだ」

響「えっ、後任って……」

美希「まさか、ハニーなの?」

P「そうだ」

P「君たちがこの1年で大きく成長したのと同じくらい、彼もたくさんの経験を積んできたはずだ」

P「次は彼が君たちを導いてくれるさ」

響「そんな、これでお別れなんて、自分イヤだぞ!」

千早「響、何もこれっきりとは限らないわ」

美希「そうなの! 美希はまた毎日だってお見舞いに来るよ」

美希「……その、美希も色々とメーワクかけちゃったしね」

P「ははっ、本当だよ」

P「お前は本当に手のかかるアイドルだった」

P「……だけど俺が見てきたなかで、最高のアイドルだ」

美希「!」

美希「……ミキにとって、プロデューサーは最高の先生だったの」

美希「厳しくて、うるさいこともあったけど……」

美希「ハニーとは違う意味で、最高の人だったって思うな。あはっ☆

響「……」

千早「美希……」

看護師「面会時間、終わりでーす!」

P「さぁ、行くんだ」

P「君たちを待ってる人がいる」

美希「……」

プロデューサーの優しい声に促されて、ミキたちは病院を後にしたの。

バイバイ、プロデューサー……

P「……って、なんでお前は翌日も来てるんだ!」

美希「だから、毎日お見舞いに来るって、何回も行ってるの!」

P「それじゃあ色々と示しがつかないだろ! 

  その、ハニーって呼んでるプロデューサーにも、俺と事務所にも!」

美希「そーんなの、美希にはカンケーないの!」

美希「プロデューサーが完全に治るまで、ずっと見ててあげるから、

   まだまだ、色々と教えてよね、プロデューサー! あはっ☆」


~FIn.

終わりです。最後まとめきれんかった。導入長すぎた。

SS投下とか初めてで色々とわかってなかった。すまん。

そして接客業の早番で8時半に店入りなのにこの時間までやってしまった……オワタ

支援してくれたみんなありがとう。

次はもっとコンパクトに面白いのが書けるように、修行してくる。

ノシ

みんなありがとう。
補足:修造がカッコいいこと言ってる場面は修造チャレンジを元にしてます。
最近はなんだかイロモノに見えるけど、世界を知る指導者としての修造が凄く良いなって思ってね……

たとえばこんなの。 http://www.youtube.com/watch?v=q3KuRyXKLww&feature=related

じゃあ本当に寝るわ。おやすみ

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