魔法使い「くっ、殺せ!」オーク「……」女騎士「おばあちゃん!!」 (34)

魔法使い「女騎士や、お前は早くお逃げ」

魔法使い「私は弓矢に足をやられてもう動けないよ」

女騎士「おばあちゃんを置いて私だけ逃げられるわけないよ!!」

魔法使い「折れた剣とボロボロの体で何をするつもりだい?」

魔法使い「逃げるだけならなんとかなる、早く逃げるんだよ……」

女騎士「ううう……ごめん、ごめんねおばあちゃん!」ダッ

オーク「……」

魔法使い「さあ魔獣や、私を慰み物にでもするのかい?」

オーク「……」スッ

魔法使い「……え?」

魔法使い(これは薬草?)

オーク「……」クルクル

魔法使い「なんだいお前、私の足を治してくれてるのかい?」

オーク「グフォ」コクコク

オーク「……」ひょい

魔法使い「あ」

魔法使い(大きくて……温かい背中じゃ)

若魔法使い『悪かったわね、前に出過ぎて迷惑かけて』

重騎士『俺たち前衛の守りが悪かったんだ、気にすんな』

若魔法使い『……つう』

重騎士『ほら、傷口が痛むんだろ?少し黙っとけ』

若魔法使い『……うん』


魔法使い(あの頃を思い出すねえ)

オーク「ブゴオ?」

魔法使い「なんでもないさ、詰まらない年寄りの思い出し笑いだよ」

オーク「……」テクテクテク

魔法使い「……」テクテクテク

魔法使い(こんなことなら魔獣と会話できる呪文をちゃんと覚えておけば良かったさね)

魔法使い「ここは?」

オーク「ブオオオオオ!」

オーク2「ブフォ」

オーク3「ブヒッ」

魔法使い(そうか、ここがオークたちの集落か)

尖兵「また人が連れてこられたよ」

突撃隊長「クソっ、奴らは我々を集めてどうするつもりだ!」

僧侶「ひいっ……怒鳴らないでくださいよぉ」

魔法使い(そしてここは捕虜の収容所かね)

尖兵「ばーさん、足大丈夫か?」

魔法使い「痛みはもうないし無理をしなけりゃ歩けるよ」

魔法使い(あのオークにずっとおんぶされてたからね)

僧侶「よかったぁ……私杖を無くして回復呪文も唱えられないの」

僧侶「ごめんね……僧侶なのに役立たずでごめんね……」

魔法使い「あんたみたいな若い娘がそんなこと言うもんじゃないよ」

突撃隊長「忌々しいケダモノどもめ、こんな老人まで捕まえおって……」

魔法使い(この男には何言っても通じなさそうさね)

尖兵「戦場で動けなくなったときは『俺死んだわ』ってなったけどさ」

尖兵「ここに連れてこられて休まされて、俺もずいぶん楽になったよ」

突撃隊長「フン、命拾いしたな小僧」

オーク「……」スッ

尖兵「おー、飯だ飯」

突撃隊長「ケダモノの施しなど受けん!」

尖兵「……食って体力つけといた方がいいんじゃないの、隊長さん?」モグモグ

魔法使い(食材を蒸し焼きにして塩を振っただけなのにうまいのお)モグモグ

僧侶「わあ、これおいしいですよ」モグモグ

僧侶「たいちょーさんは食べないんですか?」モグモグ

突撃隊長「……」

僧侶「じゃあ私がたべちゃいますね」ヒョイ

尖兵「あ」

突撃隊長「……!」

魔法使い(この僧侶は末恐ろしいねえ)

~数日後~

子供オーク1「フギャ」

子供オーク2「ブゴオ」

僧侶「平和ですねぇ」

尖兵「だな、飯は美味いしオークたちも親切だし」

僧侶「オークの子供ってかわいいですね」

魔法使い「子供はみんなかわいいもんさ」

オーク「ブフォオオッ!!?」

僧侶「え、なになに!?」

突撃隊長「動くな」

子供オーク1「ピギャア!」ジタバタ

尖兵「なっ!」

魔法使い(子供を人質に……?なんてことを!)

突撃隊長「私は一刻も早く王国に戻らなければならないのだ……」

突撃隊長「ケダモノどもに囲まれた生活など、これ以上耐えられん!」

魔法使い「およし」

魔法使い「このオークたちが危害を加える気が無いのは、この数日で分かったろ?」

突撃隊長「バケモノどもの考えることなど分からんよ」

突撃隊長「家畜として飼われていつか喰われるかも知れんのだぞ?」

魔法使い「……どうしようもない馬鹿だねえ」

魔法使い「かまわないよ、やっておしまい」

突撃隊長「なにを……ぐあっ!」

僧侶「たいちょーさんの……ばかあ!!」ガンッ

尖兵「子供は確保したッス、もう大丈夫ですよ」

子供オーク1「プギイ!」

魔法使い「よしわかった、後は私におまかせ」ゴゴゴゴゴゴゴ

突撃隊長「な、何をしている!」

突撃隊長「私は人間だぞ、敵はこのケダモノどもの方だろう!」

魔法使い「そんなのは関係ないね」キュイーーン

魔法使い「私の敵は、心無い大馬鹿者だけだよ!」ドゴオオオオオオオ

突撃隊長「ぐああああああああああああ!!!」バタリ

魔法使い「……僧侶ちゃん、私の杖を使っていいから治療してあげな」

僧侶「は、はい!」

尖兵(このばーさんだけは怒らしちゃ駄目だな)

魔法使い「というわけで、私たちで懲らしめたから許してやってくれんか?」

オーク「……」チラッ

子供オーク1「プギイ」ニコッ

オーク「ブフォ」コクコク

僧侶「たいちょーさんのこと、許してくれた見たいですね」

尖兵「あの惨状を見るに、異属とはいえ憐みの方が勝ったんじゃないッスかね?」

オーク「……」スッ

魔法使い「なんだいこれは?」

僧侶「あれ、ご飯はさっきもらったばっかりでしたよね?」

オーク「……フゴ」ビシッ

魔法使い「僧侶ちゃん、だからね」

魔法使い「もう出ていけってことさ」

僧侶「そんな!やっぱり許して貰えてないんじゃないですか!」

尖兵「違うッスよ、僧侶ちゃん」

尖兵「これは、もう捕虜じゃなくなったってことだよ」

魔法使い「そういうことじゃ」

魔法使い「私らの傷も癒えたし、捕虜として利用する気がないのなら」

魔法使い「もうそろそろ旅立たねばならぬ時がきたんじゃよ」

尖兵(来た時よりボロボロになってるヒトもいるけどね)

突撃隊長「」

僧侶「ううう……せっかく仲良くなったのに、なんか残念ですう」

魔法使い「もともと住む世界が違ったのさ、無理を言うんじゃないよ」

僧侶「ばいばーい!ありがとーねー!!」ブンブン

突撃隊長「……」

尖兵「ほら、僧侶ちゃんに治療してもらったんだからキリキリ歩く」

突撃隊長「……貴様……いったい誰に口利きを……」

魔法使い「……」ギリッ

突撃隊長「ひいっ!」ガクガクガク

尖兵(こりゃ便利ッスねえ)

僧侶「あれ、あっちから誰かくるよ」

魔法使い「ん……あれは」


女騎士「おばあちゃん!!!」

女騎士「よかった……生きてた……無事だったんだ」ぎゅうう

魔法使い「これこれ、そんなに強く抱きしめられると苦しいよ」

女騎士「はっ……ごめん、おばあちゃん」

女騎士「おばあちゃんが無事だと分かったら安心して、それで……」ポロポロ

魔法使い「よしよし、折角の再会だ、泣くんじゃあないよ」なでなで

オーク「グフォ?」

僧侶「あれ、ここまで見送りにきてくれたの?」

女騎士「貴様は……あの時の!」

女騎士「許さん、おばあちゃんの受けた痛みは百倍にして返してやろう!!」

オーク「!?」ビクッ

女騎士「待てええええ!!コラ待たんかああああああああ!!」ダッ

僧侶「……行っちゃった」

尖兵「大丈夫ッスか、オークの村は」

僧侶「あれって、あの女騎士さんですよね」

突撃隊長「なに、彼女が誉れ高き彼の女騎士殿であったか!」

魔法使い「でも見た所まえの傷も癒えてないし、装備も壊れたまま」

魔法使い「折れた剣も安物で代用しているようだしね」

魔法使い「私を助ける一心で、碌に休みもせずに戻ってきたんだろうさ」

尖兵「じゃあ、そんな状態じゃ流石の女騎士さんでも……」

魔法使い「一度あれほど苦戦した相手だしね」

魔法使い「まあ、あのオークたちなら負けても悪い様にはされんだろう」

僧侶「で、でも私たちも戻って事情を説明した方がいいんじゃ?」

魔法使い「この男もいることだしねえ……帰りを急いだ方がいいじゃろ」

突撃隊長「くっ」

尖兵「えらく信用してるんッスね、あのオークたちのこと」

魔法使い「女騎士のこともじゃよ」

魔法使い「あの子なら、私たちがオークにどういう扱いを受けたかすぐ理解するじゃろて」

僧侶「そうかあ……じゃあ早く王国に帰った方がよさそうだね」

尖兵「了解、じゃあ先を急ぎましょう」

尖兵「俺たちの無事も早く知らせなきゃ」

僧侶「ですです」

魔法使い「そして呼びかけてやらなきゃならんねえ」

魔法使い「オークたちの縄張りへの、人間側からの一方的な侵略戦争」

魔法使い「その是非について、一度ね」

~数週間後~

魔法使い「うーむ」

魔法使い「僧侶ちゃんが枢機卿殿の娘だったおかげで侵略はすぐに止まったものの」

魔法使い「何故かあれから女騎士は帰ってこない」

魔法使い「あっちも平和になったハズだというのに、何をしておるのやら」

魔法使い「そういうワケで念写師や、女騎士の行方を写してはくれんかの?」

念写師「魔法使いさんの頼みごとなら仕方ないですね、サービスしますよ」

念写師「はあ………!」パアアア

魔法使い「………こ、これはっ!!?」




女騎士&オーク『わたしたち結婚しました』


おわり

タイトル詐欺みたいな終わり方でスマン
俺にはほのぼの系しか書けんようだ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年02月05日 (水) 14:56:13   ID: EU62eULP

くそっ悔しいでも…面白い

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom